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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】

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202 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 17:25:36.84 ID:KHbMwCItO
1
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 17:26:56.76 ID:/hO52G1B0
1
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 17:27:03.43 ID:KSULtg9H0
2
205 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 18:14:41.86 ID:+ZQaYR6Qo

陽乃「諏訪大社はどう? 私がいても平気そうだった?」

『ほう?』

陽乃「神様によっては、自らが治める地に踏み入られたくないって思う相手もいるはずよ
    特に、私みたいに穢れた身ならなおのことね」

陽乃の身が穢れていることもそうだが、

仮に同じ神格であったとしても神様同士の対立は存在する

その場合は同じだからこそとも言えるかもしれないけれど

陽乃「場合によっては私、祟られるでしょ?」

『そうじゃな……相容れぬのならば、排除すべく祟られ朽ちることもあろう』

天井の暗闇が、揺らぐ

窓の外から流れ込む白んだ月明かりによって産み落とされた陽乃の影が混じっているのか、

狐の形こそしていないが、そこからは九尾の気配が感じられた

『じゃが、諏訪大社に入っても体調を崩すことはなかったであろう』

陽乃「ええ、まぁ」

『ならば問題はなかろう』
206 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 18:32:05.15 ID:+ZQaYR6Qo

陽乃は諏訪を守る気がない

結界を破壊させ人々の隠れ潜む場所を奪わせようとしている。

神様であれば、陽乃が抱えている穢れも、

抱え込んでいる危険な存在も、

諏訪の破滅を目論んでいることも

全て分かっているはずだ

それでも、弾かれない

――諏訪崩壊は決定事項だからかもしれない

『不安ならば身を清めてみればよい。我らの神社はすでに失われたがここにもそのための場所はあったであろう?』

陽乃「斎館のこと? お湯が出るようになっちゃってるみたいだけど、機能してると思う?」

『妾に問うでない』

陽乃が巫女として神社での催しに参加していた時にも使っていた斎館と呼ばれる施設

本来は神事を行う際に身を清める場として用いられたりするものだが、

諏訪大社の斎館は入浴施設へと若干の改装が行われたらしい。
207 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 19:16:52.87 ID:+ZQaYR6Qo

陽乃「……最悪、内側にある手水舎を使って水浴びするか、諏訪湖を沐浴のための場として使うか」

諏訪湖は結界の中に含まれているというだけで

それをするような場所ではない

だから、最悪の場合だ。

陽乃「神楽殿も使えると良いのだけど」

『巫女舞でもするつもりかや?』

陽乃「……舞い方を覚えていたらね」

力を使うこと

それ自体が憑依――神がかりであるならば、

巫女舞をすることによって、その影響を最小限に抑えられるかもしれない

正式に言えば、巫女神楽

それを奉納することによる、ただしい手順での神がかり

陽乃「少し、試してみたいことがあるの」

『余計なことはせぬ方が良かろうに』
208 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 19:28:14.22 ID:+ZQaYR6Qo

陽乃「巫女神楽は天逆鉾のように不確かな遺物ではないのよ?」

『だとしても、主様に影響があろう?』

あるかは分からない。

ある可能性は低くはないけれど、

少なくとも、天逆鉾に触れるよりは確実に良い影響がある。はず。

とはいえ、

今の疲弊した体で巫女神楽を最後まで治められるのかは、微妙ではある。

回復したのは傷であって、体力ではない

陽乃「藤森さん達に知られたら、絶対に止められるわね」

『じゃろうな』

悪態をつくように返した九尾は、

天井に広がる影を巨大な狐の形へと変貌させて、陽乃を見下ろす

『死にたくないのであろう? 生きていたいのじゃろう? なれば、無理はすべきでは無かろう』

陽乃「ええ……分かってるわ」

陽乃は目を瞑る。

生き抜くことが、陽乃の目的だ

壊れ切っていて、

誰しもが憎み、恨んでいる……そんな世界で生きている意味があるのかは、分からないけれど。
209 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 19:39:07.18 ID:+ZQaYR6Qo

1日のまとめ(四国組)

・ 乃木若葉 : 交流有(ひなたについて)
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・  郡千景 : 交流無()

√ 2018/08/13まとめ

 乃木若葉との絆 62→63(普通)
上里ひなたとの絆 56→??() 
 高嶋友奈との絆 52→??()
  郡千景との絆 21→??()


1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流有(諏訪大社、通信設備、退院後、別にいい)
・ 藤森水都 : 交流有(お出かけ、諏訪大社、触れない、退院後、別にいい)
・ 土居球子 : 交流有(諏訪大社、退院後、別にいい)
・ 伊予島杏 : 交流有(お出かけ、諏訪大社、退院後、別にいい)
・   九尾 : 交流有(陽乃と諏訪大社)

√ 2018/08/13 まとめ

 白鳥歌野との絆 48→50(普通) ※特殊交流1
 藤森水都との絆 62→65(良好) ※特殊交流3 
 土居球子との絆 57→59(普通) 
 伊予島杏との絆 67→70(良好) 
   九尾との絆 65→66(良好)
210 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 19:41:46.73 ID:+ZQaYR6Qo

√ 2018年 8月14日目 朝:諏訪

01〜10 杏
11〜20 球子
21〜30 水都
31〜40 歌野

↓1のコンマ

※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常(全員)
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 19:43:58.40 ID:KHbMwCItO
あ
212 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 19:45:33.81 ID:+ZQaYR6Qo

では少し中断いたします
再開は21時頃を予定しています
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 19:52:40.64 ID:KHbMwCItO
一旦乙
214 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 21:54:44.49 ID:+ZQaYR6Qo
ではもう少しだけ
215 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 21:56:41.31 ID:+ZQaYR6Qo

√ 2018年 8月14日目 朝:諏訪


退院当日の朝

昨日よりもずっと軽い目覚めに、陽乃は深く息を吐く

手も、腕も、足も、しっかりと動かせる

布団の重みも気にすることなく寝返りを打つことができるし、

払い除けることだって簡単だ

陽乃「……それで?」

上半身を起こし、ベッドの上半分を傾けさせながら

陽乃は傍らにいる歌野へと声をかける

目を覚ます前から、歌野はそこにいたようだ

歌野「ほら、久遠さん退院でしょ? 一緒に居ようと思って」

陽乃「朝は検査だし、出るのはお昼になるわよ?」

歌野「ええ。分かってるわ」

にこやかに笑う歌野に、陽乃は訝し気な視線を向ける

何か企んでいるのだろうか。なんて
216 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 22:17:18.62 ID:+ZQaYR6Qo

歌野「身体……は、本当にもう大丈夫そうね」

腕を動かし、握り拳を何度か作ってみる

ベッド脇に足を降ろすのも、昨日よりずっと楽に出来た

陽乃「ええ。もう車椅子なんていらないわ」

歌野「私達としては、久遠さんにはあともう一日くらい車椅子を使って貰いたいわ」

陽乃「迷惑をかけるのに?」

歌野「あのくらい、腐葉土を積んだ台車を押すよりもずっと楽よ」

歌野はそう言うと、

自慢だとでも言いたげに袖を巻くって、腕の筋肉を見せる

農作業を日常の一つとしている歌野は

同年代と比べて、筋力がある

それがあったからこそ、3年間を戦い抜けたのかもしれない

歌野「触ってみる?」


1、嫌よ。気持ち悪い
2、はぁ? なんで
3、突く
4、何も言わない

↓2
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 22:18:29.76 ID:/hO52G1B0
3
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 22:18:53.39 ID:0aHUiaGDO
4
219 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 22:49:48.01 ID:+ZQaYR6Qo

陽乃は何も言わず、

ただ一目歌野を見ただけで、背ける

歌野「そんな、冷たい態度とらなくたっていいじゃない」

陽乃「何言ってるのよ」

寂しげな歌野の声色からは嘘っぽさはないが、

無駄な明るさが、お茶らけているように感じる

触ってみてと言うなんて、

それほど自信があるのだろうとは思うけれど、

それは親しい相手に向けるべき言葉だ

歌野「久遠さんは、身体を触らせてくれたじゃない」

陽乃「必要があっただけの話……今の貴女に触れる理由がないわ」
220 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 23:15:16.84 ID:+ZQaYR6Qo

歌野「……そう」

陽乃「それで? なんの為にここに来たの?」

歌野「久遠さんがここに居るから、かしら?」

悪戯っぽさもない、歌野の表情

陽乃は見抜こうと目を細めるけれど

歌野の顔色には照れくささが増すばかりで、塗り替えられてしまう

歌野「そんなにじーっと見つめられると、流石に照れくさいわ」

陽乃「貴女が何か企んでいるんじゃないかって、思っただけよ」

歌野「企むことなんて何もないわ。それこそ、理由がないでしょ?」

そう聞かれても、陽乃は肯定することしかできない。

疑おうと思えばいくらでも疑うことは可能だ

しかしながら、そこに確固たる証拠が出せないのなら、

それはただの推察……それに満たない、妄想

だから聞かれても困る

妄想をあえて口にしてみるのも、ゆさぶりとしては有効かもしれないが。


1、私達は友人でも何でもないのよ?
2、ほかの人達が、何か余計な事やっているんでしょう?
3、農作業は良いの?
4、少し歩くわ。手を貸して

↓2
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 23:17:20.34 ID:Zw7mKe7YO
2
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 23:17:51.27 ID:KSULtg9H0
2
223 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 23:27:21.58 ID:+ZQaYR6Qo

↓1 コンマ判定


奇数 陽乃「貴女しかいないなんて、おかしいもの」

偶数 歌野「何もないわ」
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 23:28:06.60 ID:/hO52G1B0
あ
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 23:28:31.42 ID:gn8TDYwfO
あ
226 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/28(日) 23:37:10.42 ID:+ZQaYR6Qo

ではここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みになるかと思いますが、可能であれば22時頃から少しだけ
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/28(日) 23:47:56.93 ID:gn8TDYwfO
乙
陽乃さんようやく退院かー
あとは同居生活でどこまで仲良くなれるかだな
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/29(月) 06:48:37.47 ID:vvV6qU0fO
乙
四国に戻るまでの体力が心配だなぁ
229 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 21:12:11.28 ID:1f1thikEo

では少しだけ
230 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 21:15:28.59 ID:1f1thikEo

陽乃はしばらく歌野を見つめると、

小さく息を吐いて、首を横に振る

陽乃「ほかの人達が、何か余計な事やっているんでしょう?」

歌野「何にもないわ」

にこやかな笑顔は嘘っぽい

というわけでもないけれど……やはり何かありそうで

けれど、陽乃はそれ以上追及する気はなかった

陽乃「そう。まぁ、別にどうでもいいけど……」

あれだけ一緒に居ようとしていた杏と水都がいないこととか、

農作業があるはずの歌野がその代わりにいることだとか

気になる点はあるけれど、何か仕掛けてくるというのなら力づくで排除するのみだ。

九尾が大人しいなら、とりあえず命の危険はないだろう。

歌野「そうそう。参集殿の使用許可は難なく下りてるから
   退院後はまず参集殿の借りた部屋にみんなで集合したいわ」

陽乃「今はもう使っていない場所だし、簡単に許可が下りたでしょう」

歌野「ええ。勇者様方のためならって快く開いてくれたの。かなり広い部屋……えぇっと、30畳くらい?」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/29(月) 21:18:35.84 ID:1giNaAbCO
やったぜ
232 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 22:02:31.35 ID:1f1thikEo

参集殿の一室は、何か理由がなければ和室である

30畳……は誇張と言うか、適当だとしても、

恐らく20畳以上の広間だろう

参集殿はそのまま人が集まる場所なため、大人数が入ることができるように設計されているはずだからだ。

それに加えて、一般的な家屋の20畳と違ってキッチンだとかお手洗いだとか

そういうものを含まないものであり、よりいっそう広く感じられたに違いない

歌野の30畳が勘違いでなければ、5人には広すぎるまである

歌野「久遠さんは、布団で寝るのも平気?」

陽乃「ベッドだろうと布団だろうと、体育座りだろうと……寝ようと思えば寝られるわ」

歌野「体育座り……?」

疑問符の浮かぶ歌野を横目に、

身体を這いあがってくる悍ましい感覚を思い出して、陽乃は身震いする

あれは慣れない。

我慢は出来るが、したくはない。
233 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 22:05:33.40 ID:1f1thikEo

↓1コンマ判定 一桁

奇数 歌野「向こうでのこと……聞いてもいいかしら?」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/29(月) 22:08:49.80 ID:1giNaAbCO
あ
235 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 22:59:06.97 ID:1f1thikEo

歌野「………」

歌野は、何かを言いたげに陽乃へと視線を送るものの

陽乃が目を向けると、気まずそうに笑う。

言いたいことがあるなら言えばいいのにと陽乃は思うけれど、

それを口にはしない。

そのせいか、

少しばかり居心地の悪い空気になって――ノックが空気を叩き割る

「久遠さーん」

軽いノックの後に聞こえてくる声

当たり前のように答えると、

今日の検査を補助してくれる看護師が入って来た

「あぁ、歌野ちゃん」

歌野「あ……検査の時間かしら?」

陽乃「ええ」
236 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 23:06:15.71 ID:1f1thikEo

歌野「そう……じゃぁ、私ここで待ってるわね」

陽乃「ついてきたりはしないのね」

歌野「流石に、邪魔になっちゃうでしょ?」

検査結果を聞くとか

どこかに出かけるという話ならついて行くこともあるが、

検査室に行く、検査をする

そういう話なら、無理について行っても邪魔になるだけだ

歌野「久遠さんは大荷物もあるわけじゃないから、飲み物とか、簡単に荷物をだけ纏めておくわ」

陽乃「任せるわ」

見られて困るものも何もない

念のためにと歩かせて貰えず、

車椅子に乗るのだけ歌野に手伝って貰い、陽乃は検査へと向かう


もちろん――すぐに分かる結果においては、何の異常もなく退院が可能になった
237 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 23:14:40.35 ID:1f1thikEo


√ 2018年 8月14日目 昼:諏訪

01〜10 通信

↓1のコンマ

※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常(全員)
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/29(月) 23:15:19.82 ID:fp5aDaAB0
あ
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/29(月) 23:17:15.32 ID:evRnGqvj0
あ
240 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/29(月) 23:38:44.29 ID:1f1thikEo


では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/29(月) 23:49:42.86 ID:QwLEMkw+O
乙
一人で野宿は大変だったもんな…
新生活はどうなっていくのだろうか
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/30(火) 01:22:39.74 ID:XW3q/j6SO
乙
ウキウキお泊りハウスだな
243 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 21:31:12.16 ID:htF4e/dZo

では少しだけ
244 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 21:31:56.94 ID:htF4e/dZo

√ 2018年 8月14日目 昼:諏訪


また後日、念のために健診を受けに来て欲しいというお願いこそあったが

無事に退院となった陽乃は、退院する時間になって合流した歌野以外のみんなと共に

諏訪大社の一角、参集殿に来ていた。

勇者達にと宛がわれた部屋は、実際には24畳ほどのものだった

もちろん、それでも広すぎるのだけれど。

陽乃「ずいぶんと……立派な部屋を与えられたわね」

水都「参集殿の中では、一番広い部屋だそうです」

どうせ、今ではそこまで大広間は使われないから

だからいつも頑張ってくださっている勇者様に開いてしまった方が

神様も、人々も、参集殿も、

みんなが嬉しいだろうとのことらしい。

杏「朝はすみません。ここのお掃除とか……やっておきたくて」

陽乃「別に気にしてないけど」

水都「えぇっと、その……神社の人がやってくれるって言ってくれたんですけど
   さすがにそこまでお世話になるのもなって思って、あの……」
245 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 21:50:53.28 ID:htF4e/dZo

気にしていないと言ったのに、

なぜだか取り繕おうとする水都を一瞥して、

陽乃はゆっくりと座布団に腰を下ろして、畳みを指で押す

畳独特の匂いと感触

子供の頃は、この畳の跡が指先につくのが変に面白かった――なんて

どうでもいいことを思い出してしまう

――普通は、使っていない部屋も掃除してあったはず

なんてつつくのは、意地悪だろうか。

球子「ベッドはないからな? 全部敷布団だ」

陽乃「別に平気よ」

球子「もしあれなら……シュラフもあるぞっ」

陽乃「平気だってば」

バサッっとシュラフと呼ばれた何かを広げて見せようとした球子を無視する。

あからさまに、気遣われている。

陽乃はもう万全に近いと思っているが、

それでもみんなからしてみれば病み上がりの仲間だ

あの惨状を目の当たりにしてしまった以上

気遣うなというのは無理な相談なのかもしれない


1、通信しないの?
2、あんまり気遣わないで
3、じゃぁ私……散歩に行くから
4、私、ちょっと斎館に行くわ
5、少し体を動かしたいわ。誰か付き合って


↓2
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/30(火) 21:52:29.40 ID:xttgaQ37O
2
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/30(火) 21:53:02.13 ID:E9nrCoru0
4
248 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 22:18:45.97 ID:htF4e/dZo

陽乃「私、ちょっと斎館に行くわ」

球子「なんだそれ」

水都「身を清めるために使う建物のことだよ」

水都の簡単な説明に頷く球子だけれど、

聞いた話を全部わかっているわけではなさそうだ

杏「何かするんですか?」

陽乃「沐浴をするのよ。別に貴女達はついて来なくていいから」

杏「そんな……」

突っ撥ねるような陽乃の物言いに、

杏は悲しそうな顔を見せたけれど……グッと飲み込む素振りを見せる

杏「斎館って、どこにあるんですか?」

歌野「えっと……?」

水都「うたのんは知っててよ〜」
249 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 22:54:53.39 ID:htF4e/dZo

参集殿の中からも直接行くことのできる、すぐ近くの場所

それを聞いてか

杏は安心したようにほっと息を吐くと陽乃を見る

杏「近くなら、大丈夫です」

陽乃「なによ……」

歌野「目を離してる間に何かあったら怖いじゃない?」

みんなからの陽乃のイメージ的には、目を離せないほどの病弱さだ

遠くに行くなら是が非でもついて行くと言いたいが、

すぐ近く

それも、家の中の移動くらいの距離なら……少しは安心できる

球子「すぐに体調崩すからな。放っておくわけにはいかないだろ」

陽乃「力使わなければ大丈夫だって分かってるでしょ?」

水都「でも、あの……悪化しちゃいましたし」
250 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 23:09:47.05 ID:htF4e/dZo

それを言われてしまうと、困る

原因は水都だったが、

あの時は力を使っていなかったから、

力を使っていなくても安心はできないと思わせてしまったのだろうし

陽乃はそれを振り払うことは出来ない

歌野「何かあったら、恥ずかしがらずに大声で呼んでね?」

陽乃「何もないわよ」

悪化した時みたいに、興奮したりするようなこともないだろうし

力だってきっと、使わずに済むはずだから

陽乃「白鳥さんは通信があるでしょ? 上里さんが出たら呼んで頂戴」

歌野「ええ。任せて」

歌野が頷くのを見て、陽乃はゆっくりと立ち上がる

すぐにカバーしようと周りが動くのも気にせずに、一人で立って歩く

陽乃「じゃぁ、行ってくるから」
251 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 23:11:02.94 ID:htF4e/dZo

↓1コンマ判定 一桁

13 水都
69 杏

※ぞろ目特殊
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/30(火) 23:12:21.76 ID:f4XAp/PAO
あ
253 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/30(火) 23:17:38.69 ID:htF4e/dZo

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/30(火) 23:28:25.64 ID:f4XAp/PAO
乙
諏訪での待遇が全体的に四国とは段違いだ…
そして杏も一緒に沐浴行くのかな
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/03/31(水) 07:11:16.91 ID:iETtxWYpO
乙
みんな優しいなぁ
256 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/03/31(水) 23:31:26.62 ID:wf0yNWuao

すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/01(木) 02:54:43.17 ID:16hM++ufO
乙です
258 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/01(木) 22:44:38.86 ID:q0hEsxnYo
では少しだけ
259 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/01(木) 22:45:10.98 ID:q0hEsxnYo

杏「あ、待ってください。やっぱり私も行きます」

陽乃「貴女が来てどうするのよ」

杏「沐浴……ですよね? 私も一緒にしようかと」

杏のことだ

陽乃の言った沐浴が普通の入浴とは違うことくらいは分かっているだろう。

本当に沐浴がしたいとかではなく

単に陽乃が行くからついて行こうという考えだろうか。

どちらにしろ

陽乃が断ったところで体の弱さを指摘して付いて来るはずだ

陽乃「勝手にしなさい」

杏「勝手にしますっ」

部屋を出て左側の通路を進む。

杏は本当に後ろからついてきて、斎館まで辿り着く
260 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/01(木) 23:02:45.93 ID:q0hEsxnYo

斎館の一部は説明があった通りに多少の改装が施されていて

勇者達が使う部屋にはない調理場や入浴用の施設などが使い勝手よく整備されていて、

神聖さは少々失われているように感じられた

杏「珍しい、ですか?」

陽乃「別に……本来の使い方が必要無くなっただけでしょ」

完全に普通のお風呂場となり果てている、沐浴に使われていたであろう部屋に入る

水も出せるが、お湯を出せるようになっていて

シャワーと、浴槽と……

陽乃が知っているところとはまるで違う

陽乃「貴女もやるの? 意味はないと思うけど」

ただ体を綺麗にするのではなく、

しっかりと身を清めるために行うものだ

巫女である水都ならともかく、杏は別に関係がない
261 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/02(金) 00:03:01.21 ID:uBPgxk+co

杏「神様の力をお借りしている以上、身を清めるのは大事なことかもしれませんし……
  それで親和性が高まってより力をうまく、強力に扱える可能性もありますから」

陽乃「……私の惨状を知ってて、よく言えるわね」

杏は陽乃の呟きが聞こえたものの、

小さく笑う程度で、特には何も言わなかった

その笑みは少し罪悪感が感じられたけれど、

陽乃もまたそれに対しては何も言わない。

杏が勝手に感じているものだ

大方、陽乃にばかり負担をかけてしまうことになるから

少しでも強くなれればそれでいいとでも考えているのだろう……なんて考えてるのかもしれないとは、思うけれど。

だからと言って、それには苦言もない。

そうしたいなら、したらいい

他の勇者が力を突ければ、必然的に陽乃の生存率は上がるからだ

もっとも、千景に関しては……強くなられると怖いが。


1、諏訪の生活はどう?
2、諏訪の結界、壊すって言ったら止める?
3、無駄なことはしない方が良いわよ
4、何も言わない


↓2
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/02(金) 00:06:01.82 ID:lkJTWVh+0
1
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/02(金) 00:34:14.52 ID:KNe++xAIO
1
264 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/02(金) 01:03:04.04 ID:uBPgxk+co
遅くなりましたが、本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/02(金) 01:35:41.19 ID:d02V8GKFO
乙
先進むためにもそろそろ結界壊す相談したいがどうだろ
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/02(金) 06:13:31.79 ID:YyrPGf8uO
乙
杏もかなり責任感じてるのもあるかもな
とりあえず一緒に温まろうか
267 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/03(土) 23:24:49.61 ID:TeVq6Ojeo

すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/03(土) 23:28:45.51 ID:P2WQunQQO
乙です
明日の更新に期待
269 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 19:03:18.64 ID:+cG+K8p+o
遅くなりましたが、少しだけ
270 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 19:05:33.44 ID:+cG+K8p+o

陽乃「諏訪の生活はどう?」

杏「諏訪の生活……ですか?」

陽乃「別に話したくなければ言わなくていいわよ」

無駄についてきたのだから、

ただただ、黙っているのも居心地が悪い

1つや2つ、話くらいはしたってかまわない

杏「あ、いえ……その」

杏は、まさか陽乃から話題を振られるとは思っていなかった

振られたとしても

あまり、良くない話をされるのではとも思った

陽乃が好んで嫌な話をするとは思っていない杏だが

しかし、無理についてきた自分を追い返そうと

そんな話をしてこないとも限らなかったからだ
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 19:14:02.26 ID:Fnk+IDrSO
来てたか
272 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 19:38:30.82 ID:+cG+K8p+o

陽乃「この前、少しは話を聞いたけれど、貴女自身としてはどうなの?」

杏「簡潔に言うなら、とてもいい場所だと思います」

この前話した通り、

物資の不足感は拭えないが、

人々はみんな優しく温かい人たちだ

物資が不足しているからと奪い合うのではなく

だからこそ、協力し合って補おうとしている

これもすべては、白鳥歌野と言う勇者が成し遂げたことだろう。

本当に、凄いことだ

杏「このままここで生きていけるのなら、それが一番だって思うほどです」

特に、陽乃にとってはこれ以上ない環境だ

醜聞の一つもなく

体調とバーテックスにさえ気を付けていれば、

安心して暮らすことができる

杏「凄く、惜しい」
273 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 21:04:55.25 ID:+cG+K8p+o

諏訪が失われる以外に道がないことが

ここから出て、また、あちら側に戻らなければならないということが。

杏には帰りを待つ両親がいる

けれど、あの二人だって陽乃が心安らぐ場所で生きていけることを望んでいる

自分達の行いで、より陽乃の立場が悪くなってしまったこと

それを凄く悔やんでいるから

だから、もし、諏訪がこのまま永遠に続いていくなら

そこで暮らし続けるという決断をしたとしても

両親は杏を咎めたりはしないはずだ

杏「どうにかして、ここを残す方法がないか調べてますけど……どうにも」

犠牲がなければ難しそうな気がしてならない

人身御供

それこそが、神々に対する人間が行える最大限の助力ではとさえされているからだ
274 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 21:30:32.54 ID:+cG+K8p+o

杏「はっきり言って、久遠さんはここで生きていくのが一番いいって思います」

陽乃「ここで死ねって?」

杏「老衰と言う意味なら、そうです」

戦って死ぬでも、

結界が消えて蹂躙されるであろうこの土地と心中しろと言うでもなく、

ただ、本当に

普通に生きて……全うして死ぬことができるなら

ここで生きていくべきだと、杏は本当に思う

杏「みんな優しいです。温かいです……久遠さんを、傷つける人なんていないんです」

誰も裏切ろうだなんて考えない

みんながみんな協力し合って生きていこうとしている

だから、ここでは人を信じられる

杏「ここでなら、信じてもいいんです」



1、何言ってるのか分からないわね
2、そう。
3、でも、消えるのよ
4、悪いわね。私はここを守る気はないの
5、何も言わない


↓2
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 21:34:54.83 ID:7LyIIY75O
2
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 21:35:17.08 ID:k5uDtKeO0
2
277 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 22:30:24.42 ID:+cG+K8p+o

陽乃「そう」

杏「そう、ですよ」

強要はしない

押せば陽乃は応えてくれるかもしれない

けれど

それはただ投げやりなだけで、信頼とは言わない

杏「久遠さんだって、今のところ悪いとは思ってないですよね?」

陽乃「さぁ? どうかしら」

歌野も水都も

ややお節介なところはあるが、向こうでの人々のような感じはしない

以前は友人だったあの子のような感じも

だから――そう、突っ撥ねる必要はないのかもしれない

けれど、だとしても。

陽乃「考えたこともないわね」
278 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 22:56:31.48 ID:+cG+K8p+o

杏「なら、これから考えてみてください」

時間はきっと、殆ど残されていない

でも、まだもう少し

総攻撃が行われるまでは、時間がある

多少の襲撃ならば、

以前から戦い続けてきた歌野と杏と球子の3人もいれば対抗できる

だから、その分も。

杏「ちなみに、私達はもう……久遠さんを信じてますから」

陽乃「………」

自信満々に

はっきりと言って見せる杏は、笑顔を浮かべている

決して謀っているわけではないと示すようなその表情に

陽乃はあいまいな表情を浮かべて、顔を背けた
279 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 23:13:59.54 ID:+cG+K8p+o

↓1コンマ判定 一桁

0,3,5,7,9 杏「ところで、身を清めるって具体的にどうしたらいいんですか?」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 23:14:53.23 ID:Yt7jphqU0
あ
281 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 23:47:48.54 ID:+cG+K8p+o

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 23:56:30.92 ID:RFMPFBC2O
乙
こう考えると結界をわざと壊すより出来うる限りこっちで暮らす選択肢もありな気がしてきた
そして陽乃さんの清めのレクチャーにちょっと期待
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/05(月) 01:03:26.62 ID:vCzQZRlTO
乙
久遠さんのお清め講座だな
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/06(火) 22:10:53.22 ID:fZ7ylCLwO
今日は大丈夫だろうか
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 12:39:04.00 ID:qoncDc/8O
復旧したってよ!
286 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 21:44:45.52 ID:SEsKPj22o
では少しだけ
287 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 21:45:34.72 ID:SEsKPj22o

杏「ところで、身を清めるって具体的にどうしたらいいんですか?」

陽乃「別に大したことはしないわよ」

陽乃はそう良いながら、

バスタオルが置かれている棚に触れる

本来は、違うものが置かれていたはずだ

陽乃「見ればわかるけど……ただのお風呂になっているでしょ?」

杏「そう、ですね」

陽乃「普通と違う点といえば、浴槽に溜めるのは水にするくらいかしら」

杏「それだけ、ですか?」

陽乃「それだけしかできないのよ。ここに残ってるものだとね」

沐浴の際に羽織るものもなければ、榊だってここにはない

普通に衣服をまとわずに汚れを流して

沐浴……という程度になるだろう
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 21:46:10.83 ID:I/npeF/UO
一週間長かった…
289 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 22:25:34.90 ID:SEsKPj22o

陽乃「正直、ここまで出来なくなってると水じゃなくてお湯でも問題なさそうではあるわね」

杏「……」

浴槽を一瞥して、

着替えを入れる棚を見る陽乃を、杏は黙って見つめる

陽乃はもともと神社の娘だ

歌野には詳しく説明していたし

もちろん、このお清めだって詳しく知っているだろう

けれど陽乃は、簡単にやることくらいしか言わなかった

確かに、方法を聞いただけなのは聞いただけなのだが

杏はちょっぴり……歌野を羨む

杏「あの、久遠さん」

陽乃「なに? 水が嫌なら、出ててくれていいのだけど」

杏「それは、えっと」

もともと体の弱かった杏

サウナはもちろん、水風呂なんて未経験だ

今の体なら耐えることは可能だろうけれど、怖くないといえばウソになる

けれど、杏は首を振る

杏「それは……大丈夫です」
290 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 22:54:19.58 ID:SEsKPj22o

杏「お清めの方法、本来はどのようにやるんですか?」

本当は、お清めの方法ではなくてもよかった

けれど陽乃は普通の話をあまりしない

杏たちから一方的に話すことならできるが、

自分から好んで会話はしてくれない

それなのに、歌野の疑問に関しては詳しく話してくれたのだ

だから、同じように

陽乃の方から積極的な話をして欲しいと……杏は少し、望んでみる

陽乃「その話、必要?」

陽乃が小学生の頃は装束を用意していたし、榊だってあったし、

祝詞を唱えることもあったし……

いろいろと手順を踏んだりもしていた

けれど。

今はそれらができる状況にはないし、説明の必要があるとは思えなかった


1、知る必要のないことよ
2、そんな無駄話するためについてきたわけ?
3、簡単なことよ。神聖な泉に身を置くことで汚れを取り除くのよ
4、何? 何か、気に入らないことでもあるの?


↓2
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 22:55:52.57 ID:I/npeF/UO
3
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 22:56:24.76 ID:MbWOvL5O0
3
293 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 23:09:12.76 ID:SEsKPj22o

陽乃「簡単なことよ。神聖な泉に身を置くことで穢れを祓うの。
    もちろん、泉でなければいけないなんてことはないわ。川だっていい」

杏「身を置くだけでいいんですか?」

陽乃「身を置くのが重要なんじゃなくて、流れがあることが重要なのよ」

穢れを洗い流すというのが一般的かもしれないが、

人が生まれ、老い、死にゆくこと

仏教にもある、輪廻転生もまた、流れによるものである

陽乃「手水舎は、あなたも知っているでしょう?」

杏「あ、はい。あれも身を清めるためにあるんですよね?」

陽乃「ええ……その手水舎だって、ずっと流れ続けているでしょう?」

止めている場所もあると聞いたことはあるが、

あれは本来、止めていいものではない

陽乃「流れることは祓うということであって、その場に留めてしまうと払われずに穢れがたまっていくことになるからよ」
294 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 00:03:01.07 ID:zr5qQ2AMo

杏「小さいころ、体が弱くて初詣とかはできなかったんですが
   神社に行ったときにお水もったいないなって思ったことがあるんですけど……意味があったんですね」

陽乃「そうね」

陽乃は一息ついて、

身に着けていた衣服のボタンをはずしていく

陽乃「私のところでは沐浴の後に榊で払ったり、祝詞を唱えたりもしていたわ」

杏「祝詞なら、唱えられるのでは?」

榊を扱うのはともかく

祝詞に関しては陽乃のところで奉っている神々に対するものであるため、

信仰の対象が違うこの場ではいささか不適切だといえる

陽乃「信仰対象が違うから駄目よ。天の神と地の神が一番わかりやすいかしら
    あんまり……ううん、すごくよくないわ」

杏「そうなんですね……」

陽乃「だから、ここではただ清めるだけ。わかったらさっさと済ませるわよ」

295 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 00:15:13.96 ID:zr5qQ2AMo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/14(水) 00:23:19.62 ID:XKGEyVLvO
乙
杏の質問にきちんと答えてくれる陽乃さんの隠しきれない良い人感
このまま気軽に話せるような関係にもっていけるといいな
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/14(水) 00:49:47.04 ID:fwyd1tkSO
乙
こうしてると姉妹みたいなだな
杏ちゃんの妹感がすごい
298 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 22:27:16.91 ID:zr5qQ2AMo

遅くなりましたが、少しだけ
299 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 22:27:54.93 ID:zr5qQ2AMo

杏「……冷たっ」

陽乃「向こうで同じことをやるなら、きっと……この比ではないはずよ」

足の指先を軽く触れさせるだけで小さな悲鳴を上げた杏をよそに、

陽乃は気にすることなく、冷水の中に身を置く

人工的に調整された浴槽の中の水は体感的に冷たくは感じるが、刺すような冷たさがあるほどにも感じられない

向こうにいる巫女がどのようなお清めを行っているのかは知る由もないが、

神樹様としている大木か、その周囲

とにかく大社保有の土地として禁制としている場所には自然が多く

当然ながら、聖域として身を清められるような場もある

それが自然由来の冷水――正しくは霊水と呼ぶべきものであるなら

今杏が悲鳴を上げているものとはまるで感じるものが変わってくるはずだ

陽乃「無理に入れとは言わないわ」

杏「い、いえ……頑張ります」

陽乃「清めは頑張るものではないのだけど」
300 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 22:41:36.85 ID:zr5qQ2AMo

陽乃は後ろで頑張ろうとしている杏に体を向けると、

少しずつ体を慣らそうとしているその姿に、眉を顰める

滝行もそうだが、そのことに努めようとする意識がある時点であまりうまくいかない

やり終えた後に、頑張った。なんていう達成感があるのもおかしな話だ

それがあったとしたら、成功ではなく失敗であると陽乃は思っている。

本気でやる必要のない――一般の人は、別にそれで何の問題もないけれど。

陽乃「無駄な考えも、力も、何一つ持たずに行いなさい。貴女は何をするためにここに来たのよ」

杏「……えぇと、それは」

言い淀む杏の視線は、さっきまでのように陽乃を見ていない。

何も身に着けていないことを気にしているわけではないだろう

何か後ろめたいことがあるのかと少し顔をしかめはしたが

陽乃はすぐにいつもの無感情さを表に引っ張り出す。

陽乃「貴女が何をしたくてここに来たのか、私は聞く気はないし言ってくれとも思わない。ただ自覚して欲しいだけ
   それと……それが身を清めることなら雑念は捨てるべきだし、そうではないなら私の邪魔にしかならないから出て行って貰いたいわ」

杏「……すみません」

影の差した顔、悲しそうな声

杏の露骨な様子から目を背けた陽乃は、くるりと身を翻して背中を向ける
301 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 23:18:10.18 ID:zr5qQ2AMo

水都もそうだが、杏も大概である。

向こうにいた時から、恩人だから……というだけでやたらと構ってきてはいたが、

ここに至っては、水都と歌野の影響もあってかさらに押しが強くなったように感じる。

ついて早々に吐血して意識不明になったり、

治りかけの時にまた悪化したりと、一方的かつ不可抗力だったとはいえ心労をかけた結果だろうか

陽乃「……」

背中に触れる水が揺れる

陽乃の横を通って、波紋が渡っていく

少しずつ、入ってこようとしているのだろう

最初は悲鳴を上げていたのに、今は微かなくぐもった吐息くらい。

手で押さえても、我慢していることに変わりはないけれど。

陽乃の体調が不安なら、

別にこの中にまで入ってくる必要はない

外で待機して、何か危うげな雰囲気があったら中に飛び込めば済むことだから。

それはきっと、建前にしかならない。


1、無理する必要はないのよ?
2、どうしてそこまでするの?
3、私に関わったところで、貴女が損をするだけよ
4、さっきの話だけど……私は信じるつもりなんてこれっぽっちもないわ
5、何も言わない

↓2
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