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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】

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272 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 19:38:30.82 ID:+cG+K8p+o

陽乃「この前、少しは話を聞いたけれど、貴女自身としてはどうなの?」

杏「簡潔に言うなら、とてもいい場所だと思います」

この前話した通り、

物資の不足感は拭えないが、

人々はみんな優しく温かい人たちだ

物資が不足しているからと奪い合うのではなく

だからこそ、協力し合って補おうとしている

これもすべては、白鳥歌野と言う勇者が成し遂げたことだろう。

本当に、凄いことだ

杏「このままここで生きていけるのなら、それが一番だって思うほどです」

特に、陽乃にとってはこれ以上ない環境だ

醜聞の一つもなく

体調とバーテックスにさえ気を付けていれば、

安心して暮らすことができる

杏「凄く、惜しい」
273 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 21:04:55.25 ID:+cG+K8p+o

諏訪が失われる以外に道がないことが

ここから出て、また、あちら側に戻らなければならないということが。

杏には帰りを待つ両親がいる

けれど、あの二人だって陽乃が心安らぐ場所で生きていけることを望んでいる

自分達の行いで、より陽乃の立場が悪くなってしまったこと

それを凄く悔やんでいるから

だから、もし、諏訪がこのまま永遠に続いていくなら

そこで暮らし続けるという決断をしたとしても

両親は杏を咎めたりはしないはずだ

杏「どうにかして、ここを残す方法がないか調べてますけど……どうにも」

犠牲がなければ難しそうな気がしてならない

人身御供

それこそが、神々に対する人間が行える最大限の助力ではとさえされているからだ
274 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 21:30:32.54 ID:+cG+K8p+o

杏「はっきり言って、久遠さんはここで生きていくのが一番いいって思います」

陽乃「ここで死ねって?」

杏「老衰と言う意味なら、そうです」

戦って死ぬでも、

結界が消えて蹂躙されるであろうこの土地と心中しろと言うでもなく、

ただ、本当に

普通に生きて……全うして死ぬことができるなら

ここで生きていくべきだと、杏は本当に思う

杏「みんな優しいです。温かいです……久遠さんを、傷つける人なんていないんです」

誰も裏切ろうだなんて考えない

みんながみんな協力し合って生きていこうとしている

だから、ここでは人を信じられる

杏「ここでなら、信じてもいいんです」



1、何言ってるのか分からないわね
2、そう。
3、でも、消えるのよ
4、悪いわね。私はここを守る気はないの
5、何も言わない


↓2
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 21:34:54.83 ID:7LyIIY75O
2
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 21:35:17.08 ID:k5uDtKeO0
2
277 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 22:30:24.42 ID:+cG+K8p+o

陽乃「そう」

杏「そう、ですよ」

強要はしない

押せば陽乃は応えてくれるかもしれない

けれど

それはただ投げやりなだけで、信頼とは言わない

杏「久遠さんだって、今のところ悪いとは思ってないですよね?」

陽乃「さぁ? どうかしら」

歌野も水都も

ややお節介なところはあるが、向こうでの人々のような感じはしない

以前は友人だったあの子のような感じも

だから――そう、突っ撥ねる必要はないのかもしれない

けれど、だとしても。

陽乃「考えたこともないわね」
278 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 22:56:31.48 ID:+cG+K8p+o

杏「なら、これから考えてみてください」

時間はきっと、殆ど残されていない

でも、まだもう少し

総攻撃が行われるまでは、時間がある

多少の襲撃ならば、

以前から戦い続けてきた歌野と杏と球子の3人もいれば対抗できる

だから、その分も。

杏「ちなみに、私達はもう……久遠さんを信じてますから」

陽乃「………」

自信満々に

はっきりと言って見せる杏は、笑顔を浮かべている

決して謀っているわけではないと示すようなその表情に

陽乃はあいまいな表情を浮かべて、顔を背けた
279 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 23:13:59.54 ID:+cG+K8p+o

↓1コンマ判定 一桁

0,3,5,7,9 杏「ところで、身を清めるって具体的にどうしたらいいんですか?」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 23:14:53.23 ID:Yt7jphqU0
281 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/04(日) 23:47:48.54 ID:+cG+K8p+o

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/04(日) 23:56:30.92 ID:RFMPFBC2O

こう考えると結界をわざと壊すより出来うる限りこっちで暮らす選択肢もありな気がしてきた
そして陽乃さんの清めのレクチャーにちょっと期待
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/05(月) 01:03:26.62 ID:vCzQZRlTO

久遠さんのお清め講座だな
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/06(火) 22:10:53.22 ID:fZ7ylCLwO
今日は大丈夫だろうか
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 12:39:04.00 ID:qoncDc/8O
復旧したってよ!
286 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 21:44:45.52 ID:SEsKPj22o
では少しだけ
287 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 21:45:34.72 ID:SEsKPj22o

杏「ところで、身を清めるって具体的にどうしたらいいんですか?」

陽乃「別に大したことはしないわよ」

陽乃はそう良いながら、

バスタオルが置かれている棚に触れる

本来は、違うものが置かれていたはずだ

陽乃「見ればわかるけど……ただのお風呂になっているでしょ?」

杏「そう、ですね」

陽乃「普通と違う点といえば、浴槽に溜めるのは水にするくらいかしら」

杏「それだけ、ですか?」

陽乃「それだけしかできないのよ。ここに残ってるものだとね」

沐浴の際に羽織るものもなければ、榊だってここにはない

普通に衣服をまとわずに汚れを流して

沐浴……という程度になるだろう
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 21:46:10.83 ID:I/npeF/UO
一週間長かった…
289 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 22:25:34.90 ID:SEsKPj22o

陽乃「正直、ここまで出来なくなってると水じゃなくてお湯でも問題なさそうではあるわね」

杏「……」

浴槽を一瞥して、

着替えを入れる棚を見る陽乃を、杏は黙って見つめる

陽乃はもともと神社の娘だ

歌野には詳しく説明していたし

もちろん、このお清めだって詳しく知っているだろう

けれど陽乃は、簡単にやることくらいしか言わなかった

確かに、方法を聞いただけなのは聞いただけなのだが

杏はちょっぴり……歌野を羨む

杏「あの、久遠さん」

陽乃「なに? 水が嫌なら、出ててくれていいのだけど」

杏「それは、えっと」

もともと体の弱かった杏

サウナはもちろん、水風呂なんて未経験だ

今の体なら耐えることは可能だろうけれど、怖くないといえばウソになる

けれど、杏は首を振る

杏「それは……大丈夫です」
290 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 22:54:19.58 ID:SEsKPj22o

杏「お清めの方法、本来はどのようにやるんですか?」

本当は、お清めの方法ではなくてもよかった

けれど陽乃は普通の話をあまりしない

杏たちから一方的に話すことならできるが、

自分から好んで会話はしてくれない

それなのに、歌野の疑問に関しては詳しく話してくれたのだ

だから、同じように

陽乃の方から積極的な話をして欲しいと……杏は少し、望んでみる

陽乃「その話、必要?」

陽乃が小学生の頃は装束を用意していたし、榊だってあったし、

祝詞を唱えることもあったし……

いろいろと手順を踏んだりもしていた

けれど。

今はそれらができる状況にはないし、説明の必要があるとは思えなかった


1、知る必要のないことよ
2、そんな無駄話するためについてきたわけ?
3、簡単なことよ。神聖な泉に身を置くことで汚れを取り除くのよ
4、何? 何か、気に入らないことでもあるの?


↓2
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 22:55:52.57 ID:I/npeF/UO
3
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 22:56:24.76 ID:MbWOvL5O0
3
293 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/13(火) 23:09:12.76 ID:SEsKPj22o

陽乃「簡単なことよ。神聖な泉に身を置くことで穢れを祓うの。
    もちろん、泉でなければいけないなんてことはないわ。川だっていい」

杏「身を置くだけでいいんですか?」

陽乃「身を置くのが重要なんじゃなくて、流れがあることが重要なのよ」

穢れを洗い流すというのが一般的かもしれないが、

人が生まれ、老い、死にゆくこと

仏教にもある、輪廻転生もまた、流れによるものである

陽乃「手水舎は、あなたも知っているでしょう?」

杏「あ、はい。あれも身を清めるためにあるんですよね?」

陽乃「ええ……その手水舎だって、ずっと流れ続けているでしょう?」

止めている場所もあると聞いたことはあるが、

あれは本来、止めていいものではない

陽乃「流れることは祓うということであって、その場に留めてしまうと払われずに穢れがたまっていくことになるからよ」
294 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 00:03:01.07 ID:zr5qQ2AMo

杏「小さいころ、体が弱くて初詣とかはできなかったんですが
   神社に行ったときにお水もったいないなって思ったことがあるんですけど……意味があったんですね」

陽乃「そうね」

陽乃は一息ついて、

身に着けていた衣服のボタンをはずしていく

陽乃「私のところでは沐浴の後に榊で払ったり、祝詞を唱えたりもしていたわ」

杏「祝詞なら、唱えられるのでは?」

榊を扱うのはともかく

祝詞に関しては陽乃のところで奉っている神々に対するものであるため、

信仰の対象が違うこの場ではいささか不適切だといえる

陽乃「信仰対象が違うから駄目よ。天の神と地の神が一番わかりやすいかしら
    あんまり……ううん、すごくよくないわ」

杏「そうなんですね……」

陽乃「だから、ここではただ清めるだけ。わかったらさっさと済ませるわよ」

295 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 00:15:13.96 ID:zr5qQ2AMo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/14(水) 00:23:19.62 ID:XKGEyVLvO

杏の質問にきちんと答えてくれる陽乃さんの隠しきれない良い人感
このまま気軽に話せるような関係にもっていけるといいな
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/14(水) 00:49:47.04 ID:fwyd1tkSO

こうしてると姉妹みたいなだな
杏ちゃんの妹感がすごい
298 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 22:27:16.91 ID:zr5qQ2AMo

遅くなりましたが、少しだけ
299 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 22:27:54.93 ID:zr5qQ2AMo

杏「……冷たっ」

陽乃「向こうで同じことをやるなら、きっと……この比ではないはずよ」

足の指先を軽く触れさせるだけで小さな悲鳴を上げた杏をよそに、

陽乃は気にすることなく、冷水の中に身を置く

人工的に調整された浴槽の中の水は体感的に冷たくは感じるが、刺すような冷たさがあるほどにも感じられない

向こうにいる巫女がどのようなお清めを行っているのかは知る由もないが、

神樹様としている大木か、その周囲

とにかく大社保有の土地として禁制としている場所には自然が多く

当然ながら、聖域として身を清められるような場もある

それが自然由来の冷水――正しくは霊水と呼ぶべきものであるなら

今杏が悲鳴を上げているものとはまるで感じるものが変わってくるはずだ

陽乃「無理に入れとは言わないわ」

杏「い、いえ……頑張ります」

陽乃「清めは頑張るものではないのだけど」
300 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 22:41:36.85 ID:zr5qQ2AMo

陽乃は後ろで頑張ろうとしている杏に体を向けると、

少しずつ体を慣らそうとしているその姿に、眉を顰める

滝行もそうだが、そのことに努めようとする意識がある時点であまりうまくいかない

やり終えた後に、頑張った。なんていう達成感があるのもおかしな話だ

それがあったとしたら、成功ではなく失敗であると陽乃は思っている。

本気でやる必要のない――一般の人は、別にそれで何の問題もないけれど。

陽乃「無駄な考えも、力も、何一つ持たずに行いなさい。貴女は何をするためにここに来たのよ」

杏「……えぇと、それは」

言い淀む杏の視線は、さっきまでのように陽乃を見ていない。

何も身に着けていないことを気にしているわけではないだろう

何か後ろめたいことがあるのかと少し顔をしかめはしたが

陽乃はすぐにいつもの無感情さを表に引っ張り出す。

陽乃「貴女が何をしたくてここに来たのか、私は聞く気はないし言ってくれとも思わない。ただ自覚して欲しいだけ
   それと……それが身を清めることなら雑念は捨てるべきだし、そうではないなら私の邪魔にしかならないから出て行って貰いたいわ」

杏「……すみません」

影の差した顔、悲しそうな声

杏の露骨な様子から目を背けた陽乃は、くるりと身を翻して背中を向ける
301 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/14(水) 23:18:10.18 ID:zr5qQ2AMo

水都もそうだが、杏も大概である。

向こうにいた時から、恩人だから……というだけでやたらと構ってきてはいたが、

ここに至っては、水都と歌野の影響もあってかさらに押しが強くなったように感じる。

ついて早々に吐血して意識不明になったり、

治りかけの時にまた悪化したりと、一方的かつ不可抗力だったとはいえ心労をかけた結果だろうか

陽乃「……」

背中に触れる水が揺れる

陽乃の横を通って、波紋が渡っていく

少しずつ、入ってこようとしているのだろう

最初は悲鳴を上げていたのに、今は微かなくぐもった吐息くらい。

手で押さえても、我慢していることに変わりはないけれど。

陽乃の体調が不安なら、

別にこの中にまで入ってくる必要はない

外で待機して、何か危うげな雰囲気があったら中に飛び込めば済むことだから。

それはきっと、建前にしかならない。


1、無理する必要はないのよ?
2、どうしてそこまでするの?
3、私に関わったところで、貴女が損をするだけよ
4、さっきの話だけど……私は信じるつもりなんてこれっぽっちもないわ
5、何も言わない

↓2
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/14(水) 23:24:08.67 ID:Nb7vtgfKO
1
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/14(水) 23:24:20.56 ID:gMEsd26tO
2
304 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 00:09:33.89 ID:0IOUZylVo

陽乃「……ねぇ。どうしてそこまでするの?」

杏「え?」

陽乃「この前のことを気にしてるなら、気にする必要はないわ」

陽乃の評判をどうにかしようとした杏の両親の助力

それによって起こった惨劇

結局、陽乃の評判は悪くなっただけだった。

もしもそれの責任を感じているのだとしたら、陽乃は別に必要がないと首を振る

あの場に連れて行こうとしたのは杏の両親だが、

それを引き受けたのも

あの場で騒動を起こしたのも、ほかでもない陽乃だからだ

陽乃「あれは、私が自分で選んだ結果よ」

陽乃がそう続けると、

杏の動きが水面を伝って肌に触れる

冷水の中に置いて熱を帯びた体の、水に触れていない部分に水が跳ねて少しだけひやりとする
305 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 00:11:27.45 ID:0IOUZylVo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 00:34:33.30 ID:qew2i2PPO

今更だけど復旧してよかった
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 00:36:00.18 ID:rYtkstsfO

杏の反応やいかに
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 06:46:55.47 ID:vQMbbJOzO

陽乃さんの態度にだんだん軟化の兆候が出てきてる気がする
もう一息かな
309 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 22:06:11.33 ID:0IOUZylVo
では少しだけ
310 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 22:06:51.25 ID:0IOUZylVo

杏「あの件は……本当に申し訳なかったと思ってます」

杏は絞ったような声で言う。

股下のあたりにまで迫っている水の冷たさに身震いしながら、

同じものを感じているはずなのに、身じろぎ一つしない陽乃の背中

白鳥歌野を含めてなお、勇者の中でも二番目に背の高い陽乃の背中は、

こう言っては失礼だが、女の子らしくはない。

神々の力を借り受けることで、そのままでも超人的な力を発揮することができるのに、

陽乃は当然のように鍛えてしまっているからだ。

ただそれも、まだ寄宿舎にいたころと比べると、少し衰えたように見えるのが痛々しい。

その引き金がこの前の一件であり、そこには杏も深くかかわっている

だから……罪悪感は抱かざるを得ない

杏「……久遠さん、体はもう、大丈夫ですか?」

陽乃「大丈夫だから、こうして貴女には辛いことも平気でしているのだけど」

杏「そう、ですよね」

陽乃の反応は、基本的に冷たい

今こうして足を踏み入れている冷水のように、人によっては拒否してしまいたくなるようなものがある

けれど、陽乃は聞けば応えてくれる

最近も、やっぱり距離を置こうとしているようなそぶりは見せるけれど

近づいた距離を突き放したりしようとはしない。

勝手にしたらいい。と、我関せずというように見逃してくれる。

しかし――それでも陽乃は心を許してくれたようには感じられない
311 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 22:15:33.44 ID:0IOUZylVo

↓1コンマ判定 一桁

1,3,5 杏「な、仲良くなりたいですっ!」
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 22:16:42.49 ID:33MkEaJe0
313 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 22:29:59.91 ID:0IOUZylVo

杏「……一緒にいられるのは嫌ですか?」

陽乃「はぁ?」

杏「だって……」

杏の声が途絶える

水面が揺れることもなくなって

杏が微動だにしなくなったのだと陽乃は察して少しだけ前へと進む

静かに体を回して、振り返ると

下ろした手から垂れるタオルの半分ほどが水面に浮いてしまっていた

それさえ、杏は気づいていないようだ

陽乃「貴女……」

つい最近も、杏はそばにいたいと言ってきたばかりだ。

拒絶したって無駄だからと勝手にしたらと答えたけれど

杏はそれでも嬉しそうにしていたし、

そんな態度でさえ、優しくした。などと言っていた

正直に言わせて貰えば

いや、何度も言っているように――一緒に居られても迷惑なだけだ



1、嫌と言ったら離れてくれるわけ?
2、そこで引き留めるような人間じゃないわよ? 私は
3、ええ。迷惑だわ
4、好きにしたらいいじゃない。ついてくるも離れるも。貴女の自由よ


↓2
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 22:33:58.33 ID:faMn9s2c0
1
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 22:34:30.41 ID:+oz7ssZ9O
4
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 22:34:53.64 ID:qew2i2PPO
2
317 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 22:50:24.36 ID:0IOUZylVo

陽乃「好きにしたらいいじゃない。ついてくるも離れるも。貴女の自由よ」

杏「でも……」

陽乃「私がどうして欲しいかなんて、貴女たちには散々伝えたはずだわ」

ここに来てからも

ここに来る前も

何度も伝えたはずだった

なのに今ここに一緒に来ているような状態なのに。

奥歯がかみ合って、音が鳴る

冷たい水に晒されたことによる発熱以外の熱量が奥底から湧き上がってくるのを感じる

陽乃「ここまで……」

心以上に体は正直に揺れる

穏やかだった水面が慌ただしく波打って

鏡写しのように見えていた自分の顔が見えなくなる

陽乃「ここまで来たのは……私に拒まれても踵を返さなかった貴女の意志じゃなかったの?」
318 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 23:02:06.46 ID:0IOUZylVo

↓1コンマ判定 一桁

2,4,6 ぞろ目 特殊

※それ以外通常
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 23:03:58.23 ID:CGa/1UVDO
はい
320 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 23:21:52.63 ID:0IOUZylVo

杏「私の……意志です」

陽乃「だったら、一緒にいられるのが嫌かどうかなんて関係ないでしょう」

杏「……」

陽乃は怒っているかのような表情ではあるけれど

怒鳴ったりはしない。

無理についてきているのに

最初はそれに不満を言っていたのに

拒んでいたのに

なのに、この……突き放す絶好の機会を

陽乃は説得に費やした

陽乃「……馬鹿なの?」

杏「すみ、ません……」

悲しいことなんて一つもない。

ただ、心には余るほどに嬉しかった

その収まりきらなかった分が――瞳から零れ落ちてしまった

杏「私……その……だって……」

陽乃「そのままだと冷えるだけよ。邪魔だから出ていきなさい」
321 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 23:29:13.07 ID:0IOUZylVo

杏「……すみません」

陽乃「謝られても困るわよ」

陽乃はそういうや否や、また杏へと背中を向けてしまう

けれど、杏は今度はもう無理をせずに水のたまった浴槽から出て

暖かいシャワーを自分の頭からかけ流していく

陽乃は出て行けと言ったりするけれど、

ここぞという場面では離れるように言わなかった

だから

無理をしなくても陽乃は二度と来るなと突き放したりはしないと思ったからだ

何より。

今の言葉はとても優しく感じた

陽乃「……」

陽乃はそんな杏を横目に見て、ため息をつく

これは――間違いなく失敗だ
322 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 23:31:10.39 ID:0IOUZylVo

√ 2018年 8月14日目 夕:諏訪

01〜10 杏
11〜20 球子
21〜30 水都
31〜40 歌野

89〜98 九尾

↓1のコンマ

※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常(全員)
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 23:32:54.24 ID:+oz7ssZ9O
324 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/15(木) 23:39:12.57 ID:0IOUZylVo

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/15(木) 23:51:26.90 ID:+oz7ssZ9O

今作は杏が凄くヒロインしてるなぁ
陽乃さんももっと素直になってあげて欲しい
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/16(金) 00:30:26.22 ID:J40ZxTX0O

杏コンマ弱いのが玉に瑕
327 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/04/16(金) 07:03:30.20 ID:Mx/MRXvF0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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328 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/16(金) 23:46:01.85 ID:LPMJSJ9Eo
すみませんが、本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 00:06:16.31 ID:q0dtrfOkO
乙ですー
お昼楽しみに待ってます
330 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 16:30:50.04 ID:R1jk1tvko
では少しずつ
331 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 16:31:34.27 ID:R1jk1tvko

√ 2018年 8月14日目 夕:諏訪


襲撃もないまま、諏訪には平和な時間が流れる

夕方になって日が傾き始めると、

ただでさえ静かな場所がより一層静まって感じる

神社だからか、その静けさは厳粛さがあった

陽乃「……」

陽乃にとっては、それこそが日常だった。

生まれてから、あの時まで

陽乃に寄り添い続けてきた空気

神々の御力に満ち満ちているかのような、厳かな空間

そして――陽乃が奪われたもの。

陽乃「ん……」

参集殿の一室

使う人間がいなくなってからも清潔に保たれていた小さな和室で一人になっていた陽乃は

足音が近づいてきたのを感じて、顔を上げた

水都「久遠さん、ここにいたんですね」
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 16:51:29.86 ID:5sJP32KhO
来てたか
333 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 17:12:59.06 ID:R1jk1tvko

陽乃「なに? 立ち入り禁止だった?」

水都「いえ、大丈夫ですよ」

陽乃を含めた勇者たちに居住区画として貸し出されたのは一部だが、

ほかの部屋には立ち入ってはいけないなんて言う制限は設けられていない

陽乃達の要求であれば本殿の奥にだって入れてもらえる

水都「えっと、例の話聞いてますか?」

陽乃「例の話って? 分かると思う?」

水都「あの……向こうの通信担当のおhなしです。上里さんを呼んで欲しいっていう」

陽乃「ああ……駄目だったんでしょう?」

聞かなくてもわかる

もしひなたが呼ばれていたなら、

歌野が陽乃に声をかけてきてるから、

その時に水都が呼びに来ていたはずだからだ

そうならなかった時点で、今日の通信にひなたは参加しなかったということだ

水都「はい……一応、乃木さんではあったんですが、ひなたさんは呼べなかったそうです」
334 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 18:01:55.36 ID:R1jk1tvko

陽乃「乃木さんだったのね」

水都「あ、はい……ただ……」

水都は言いよどむ。

この前の時点で若葉が言っていたことだけれど、

通信担当は若葉から別の人に代わってしまう。

今日はまだ平気だったが

水都「明日、正式に切り替わるそうです」

陽乃「そう」

水都「明日、上里さんを連れ出せなければ無理ですね」

陽乃「そうね。乃木さん何か言ってなかった?」

水都「……おそらく無理だって言っていました」

今日無理だった時点で

可能性はほとんどないかもしれない

陽乃「まぁ、でしょうね」



1、そういえば、貴女って巫女として何かしているの?
2、その時はそのときね。諦めるしかないわ
3、神託はどう?
4、何も言わない


↓2
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 18:05:18.58 ID:87OeZGhY0
1
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 18:06:09.86 ID:xRnxcCaDO
3
337 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 19:02:05.92 ID:R1jk1tvko

陽乃「藤森さん、神託はどう?」

水都「えっと……すみません」

水都は、巫女としての力を与えられただけで、

もともとは一般の女の子でしかなかった。

だからというわけではないが、

本当に……ギリギリにしか神託を受けたことがない。

水都「今のところ神託はなくて……その、やっぱり、襲撃がある直前くらいにならないとだめだと思います」

神社に来たからと言って

神託がすぐに来てくれるわけではない

水都は申し訳なさそうに頭を下げる

陽乃は神社の娘だった

けれど、今は巫女というよりも勇者側の立場で

神託を受ける役目は水都に任されている
338 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 19:06:44.65 ID:R1jk1tvko

陽乃「別に、責めるつもりはないけど」

水都「すみません」

水都はもう一度頭を下げる

陽乃は謝れだなんて言っていないし

言葉は水都を責めるようなものでもない

けれど、水都は勇者のみんなに申し訳ないと思う。

ないものねだりではあるけれど

陽乃のように、正しく巫女として生きていた人がいたら

もっと適性のある人が他にいたなら、

ちゃんと神託を受けて、みんなの助けになれていたはずだと思うからだ

直前にしか神託を受けられないのは、

自分の力不足のせいだと……水都は思っていた
339 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 19:07:32.16 ID:R1jk1tvko

↓1コンマ判定 一桁

0、2,4,8 水都「あの……お願いがあります」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 19:09:37.42 ID:qLrQUzboO
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 20:03:36.63 ID:5s6wDhNnO
みーちゃん相変わらずコンマ強いな
342 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 21:44:32.95 ID:R1jk1tvko

水都「あの……お願いがあります」

陽乃「なに?」

水都「私を巫女にして欲しいんです」

陽乃「貴女は巫女でしょう?」

水都「そうですけど、そうじゃなくて」

水都は陽乃のいる部屋の中に一歩踏み込む。

電気がついていないせいで、外からの明かりしかない暗い部屋

陽乃の瞳の光を感じて、少し怯んでしまう

水都「あの……巫女の修業的な、鍛練的な……そういうことをしてもらいたいんですっ!」

陽乃「私が、貴女に?」

水都「……はい」
343 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 22:05:26.23 ID:R1jk1tvko

今の諏訪には、それができるような人が残っていない。

資料のようなものがあるにはあるけれど、

それだけで素人がどうにかしろというのは無理があった。

水都「それっぽく巫女装束を着てはいますけど、それくらいで……」

陽乃「穢れを祓ったりは?」

水都「体を綺麗にしてはいます」

陽乃「それだけ?」

水都「……お、お祈りとか」

お祈りというか、参拝だろうか。

しっかりとお金を投げ入れていたら所持金が底を尽きる―あって意味あるのかはともかく―ため、

基本的にはお金を入れていないのだけれど

陽乃「祝詞は?」

水都「えっと……」


1、無理。面倒だわ
2、自力でどうにかしなさい
3、教えてあげたとして、見返りは?
4、3年間で何をしてきたのよ
5、何も言わない


↓2
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 22:13:15.76 ID:barTl7ruO
1
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 22:13:38.27 ID:7/G2WAN+0
4
346 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 22:42:02.30 ID:R1jk1tvko

陽乃「3年間で何をしてきたのよ」

水都「それは……」

何をしてきたのかといわれると、水都ははっきりと胸を張れなかった

歌野はすごく頑張っていたけれど

水都はそれについていっていただけ

巫女に選ばれたからと言って、特別何かをしてきたわけではなかった。

だから。

水都「ごめん、なさい」

陽乃「謝ってどうするのよ」

水都「だって、私……何にも……」

お清めと呼ばれるものだって、

ただ体を綺麗にするくらいしかしてこなかったし、

陽乃が言った祝詞なんて、唱えたこともない。

言葉では知っているが、それだけ
347 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 22:59:41.47 ID:R1jk1tvko

水都「全部、うたのんがやってきてくれたんです」

水都が何もしなくても、歌野がやってくれていた

水都が何もしなくても、

ほかの誰かが何か困るなんてこともなかった。

ただ、襲撃が起こる直前になって神託を受けて、

どの方向に向かえばいいのかとか

規模がどのくらいなのかとか

それがわかるくらいで。

水都「私、思えば何にもしてこなかったんだって――」

陽乃「貴女が役立ったか、立ってないかなんて私はどうでもいいの」

水都の話を遮って、陽乃は眉を顰める

陽乃「巫女としての勉強とか、それらしいことをしてきたのかって話」

水都「……む、難しい言葉ばっかりで」
348 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 23:27:05.12 ID:R1jk1tvko

正直に言って、何にもわからなかった

巫女になるための参考書なんてものは諏訪には存在していなかったから、

神社にある小難しい書物に目を通したくらい。

何も、頑張っていなかった

水都「全然、勉強とかできてません」

陽乃「それで、自分が役に立ってないとかよく言えるわね」

水都「っ……」

陽乃「……」

何かを頑張っていれば、

役立たずだなんて思う必要もなかったかもしれない

それをせずに自分を卑下するなんて無駄もいいところだ

水都「だ、だから……その、経験がある久遠さんにお願いしたいんです」


1、お断りよ
2、時間があるときだけよ
3、難しい書物ってどこにあるの?

↓2
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 23:28:54.13 ID:xRnxcCaDO
2
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 23:28:59.99 ID:5s6wDhNnO
2
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 23:30:50.87 ID:7/G2WAN+0
1
352 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/17(土) 23:42:58.94 ID:R1jk1tvko

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/17(土) 23:50:31.74 ID:0lQn5n1ZO

みーちゃん弟子入りするのか
陽乃さんの鍛練とかなんだか過酷そう
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 00:07:22.97 ID:GLO+K8cnO

圧迫面接みたいになっちゃったな笑
355 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 13:02:28.55 ID:As1VTo1So
では少しずつ
356 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 13:03:01.91 ID:As1VTo1So

陽乃「はぁ……時間があるときだけよ?」

水都「全然大丈夫ですっ」

陽乃「もう……」

杏も杏だし、水都も水都だ

杏に関しては……確実に追い出すチャンスを棒に振ってしまったけれど、

こうやって自分から離れて行きたくなるような態度をとっても、

離れて行ってはくれなくて。

……そこでもう一歩追い払うことが出来ないのも悪いのかもしれない。

水都「お願いします」

陽乃「どうして……」

水都「はい?」

陽乃「なんでもない」

陽乃はため息をつきながら水都から顔をそらして、

目の前のテーブルにふて寝する

肩のあたりまで伸びている髪がさらりと流れていく
357 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 13:16:22.62 ID:As1VTo1So

部屋の中が暗いせいか、

どこか鬱屈としたものを感じる陽乃の雰囲気

杏と一緒に沐浴に向かって、

帰ってきたかと思えば、一人で出て行ってしまったし

いや、団体行動をあまり好まないから、

単独行動自体は別におかしいことでもないけれど。

水都「……あの」

陽乃「なに?」

水都「巫女のお勉強を教えてもらう代わりって言うと、あれですけど……」

なんていえばいいか。

マッチポンプ? のような感じがする

水都がそんなことを考えていると

陽乃からの視線を感じて、はっと顔を上げる

陽乃「まだ何かあるの?」

水都「えっと……わ、私に何かできることありますか?」

陽乃「急に何?」

水都「お礼です。お礼……私のお願いを聞いて貰うので、久遠さんのお願いも何かあればと思って」


1、何もないわよ
2、なら放っておいてくれない?
3、別に見返りなんて求めてないから
4、察してくれればそれでいいわ
5、何も言わない

↓2
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 13:20:16.04 ID:wXu5tU9xO
5
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 13:21:47.15 ID:xNjKxHf2O
2
360 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 13:42:35.52 ID:As1VTo1So

陽乃「なら、放っておいてくれない?」

水都「っ……」

陽乃「私が望んでることなんて、わかってるでしょ?」

水都「……」

陽乃の声は、怒りを感じるものではない

けれどそれは確かに拒絶で、触れることのできない冷たさがあって。

水都は立ち尽くしてしまう

陽のが動く微かな服の擦れる音だけが聞こえる室内

やがてそれさえもなくなって静寂に包まれると、

少し離れたところにいるみんなの、声が聞こえる

水都「……わ、わかりました」

それは駄目なんて言えない

それは嫌なんて言えない

水都は答えて……でも、足は引けない
361 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 13:56:18.63 ID:As1VTo1So

↓1コンマ判定 一桁

0 またはぞろ目 特殊
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 13:57:53.18 ID:zr0WBAxD0
363 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 14:20:58.69 ID:As1VTo1So

水都「あのっ」

陽乃「まだ何かあるの?」

水都「……私は……久遠さんのこと……」

水都はそこまで言いかけて、ぐっと飲みこむ。

放っておいてといわれてしまった。

それでも……と、踏み込めない。

踏み込んだ方がよさそうな気がしても、

お願いを聞くという流れで拒絶されてしまっては、

さすがにもう――

水都「すみません。巫女の件は……お願いします」

陽乃「……」

それだけ言って、

水都は踏み込んだ一歩を引き返して、部屋から出ていく

陽乃はそれを目で追うだけで、

遠ざかっていく足音を聞きながらゆっくりと目を閉じる
364 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 14:33:19.16 ID:As1VTo1So

水都が言いかけたのは、きっと、本当に言いたかったことだろう。

けれど陽乃はそれを聞く気はないし、聞きたくもなかった

聞いたからって何かができるわけじゃない

言って貰えたからって何かを返せるわけでもない。

陽乃「……なによ」

杏も、水都も

陽乃が拒絶していることなんてわかっていることのはずなのに、

どうして……辛そうな顔をするのか。

陽乃「馬鹿じゃないの……?」

聞く相手もいない、暗い部屋

陽乃は独り言ちて、ため息をつく

部屋が静まり返っているから、どこからともなく球子や歌野の声が聞こえてくる

陽乃「はぁ……」

陽乃はため息をついて、仰向けに体を倒す。

畳特有の匂いに包まれながら、深呼吸をした
365 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 14:50:11.29 ID:As1VTo1So

√ 2018年 8月14日目 夜:諏訪

01〜10 杏
11〜20 球子
21〜30 九尾
31〜40 歌野

↓1のコンマ

※それ以外は通常
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 14:52:13.64 ID:jvz6WOqxO
367 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 15:59:21.38 ID:Yf+Q/O32O
√ 2018年 8月14日目 夜:諏訪


夕食を終えた後も、

陽乃は一人で部屋を出ていく。

誰かにかかわることもなく、

黙々としている姿を球子達は気にしていたけれど

なかなか声をかけられなかった

陽乃「……」

すっかり暗くなった外

陽乃達を除けば生活している人のいない参集殿は

一部以外の電気は消えている

真っ暗な通路は神聖というよりも、おどろおどろしい雰囲気に満ちているが

陽乃は気にすることなく歩く。

暗く静まった神社の空気感は、陽乃にとって慣れ親しんだものだ



1、九尾を呼ぶ
2、一人で過ごす
3、外に出る
4、イベント判定


↓2
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 16:02:03.00 ID:zr0WBAxD0
3
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 16:02:31.99 ID:jvz6WOqxO
3
370 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 16:37:11.45 ID:Yf+Q/O32O

陽乃「……ふっ」

小さな埃、小さな虫

軽く吹き払って……陽乃はすぐそばの外につながる扉を開く。

古い日本家屋めいたつくりの参集殿

ぎしぎしと軋んだかと思えば、はめ込まれたガラスががたがたと音を立てる

蒸し暑い空気は少し不快

人一人が出られるくらいの隙間を開けて、陽乃はそうっと外に出る

近くにあった外履きはちょっぴり古ぼけていたが、

履けないようなものではなかった

陽乃「……変な感じ」

しっかりと扉を閉めてから進む。

歩きなれない、諏訪大社の本宮

出てきたのは社務所側の出口、

すぐ左手には蓮の葉が並ぶ蓮池がある
371 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 17:04:42.14 ID:Yf+Q/O32O

まっすぐ行けば、本宮に設置されている御柱の一つがあり、

その近くには御沓石と呼ばれる諏訪七石があって、

その傍らに……陽乃が触れようと考えた天之逆鉾がある。

陽乃「……」

けれど、正直言って暗すぎてすぐ目の前の足元が見えるくらいでしかない

下手に歩けば、躓いたり池に落ちるかもしれない

陽乃の神社なら、

目を瞑っていても問題ないけれど。

ここはそうとはいかなそうだ

夕食前の暗い部屋

あれで夜目になれられるかと思ったが、そう甘くなかった

陽乃「……こっちが、北参道」



1、御柱
2、天之逆鉾
3、北参道
4、夜目に慣らす

↓2
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