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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
- 372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 17:09:53.76 ID:yIikTvrDO
- 4
- 373 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 17:09:57.65 ID:LNfACJi20
- 1
- 374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 17:10:18.98 ID:3kH7j+m6O
- 3
- 375 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 17:43:52.07 ID:Yf+Q/O32O
-
陽乃「……」
生温い、夏場の空気が肺の中に入ってくる
どこからともなく羽虫の音も聞こえてきて
時折、手や首元のあたりに感じて……身じろぎする。
トラウマというほどではない
けれど、あの日の野宿の経験のせいか、
体が震えてしまう
陽乃「駄目ね……」
戻っても邪魔な人たちがいるし、
立ち止まっていたら虫がたかってくる
だから……動く
ややすり足気味に歩いて、
大きな石や、
突然の階段で転倒したりしないように警戒する
- 376 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 18:18:20.14 ID:Yf+Q/O32O
-
向かうのは御柱
陽乃が出た場所から、まっすぐ歩けばいいだけだ
陽乃の本来の歩く速さならすぐにたどり着ける
けれど、この暗い道では倍以上の時間がかかるだろう
陽乃「……」
じめじめとした空気
虫の声も極まって、不快感が募る
じゃりじゃりと小石を踏みしめて歩く
陽乃「……この先、よね」
だんだんと、夜目になれてきてはいるが
それでも道は暗い
杏や水都が見ていたら、
すかさず駆け寄ってきて手を貸してきそうなおぼつかない足取り。
陽乃「……見えた」
囲いのある、縦に延びた黒い影
近づくにつれて、それがただの木ではなく御柱だとはっきりする
- 377 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 19:02:02.67 ID:Yf+Q/O32O
-
陽乃「……諏訪の御柱」
陽乃の神社にも祀っているものはあるけれど
御柱のようなものはなかった。
世界が壊れる以前から、
諏訪大社の御柱は有名なものだった。
同じ神社の関係者として、
陽乃もそれについては話に聞いたことがある。
陽乃「……」
古来より、神々は自然界に宿っているとされ、
それらは八百万の神とも言われてきた。
当然ながら、木々にも髪は宿るといわれており、
一説では、大地より伸びるそれは神の御手であるとも言われていた。
そのご神木を用いて作り出された御柱
崇め、奉られ、それが正しく信仰を得ていたからこそ、
これらは結界の要として機能することができたのだろう
陽乃「……もう、限界が近そうね」
陽乃はその御柱を見上げて、呟く
- 378 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 19:10:12.56 ID:Yf+Q/O32O
-
陽乃「えっと……」
数は少なくなっても、より厚い信仰心を得てきたであろう諏訪大社の主祭神
それが誰だったかと小首をかしげた陽乃は
小さく息を吐いて、はっとする
諏訪大社は本宮とそれに付き添うものとして上社前宮などがある
詳しく知っているわけではないが、
それゆえに本宮とそれ以外では主祭神が別である。というのを聞いた覚えがある
陽乃「本宮……確か、建御名方神」
そして、上社前宮などでは、その妃とされている神だったはず。
いや、両方とも両神だったか。
陽乃「だめね……3年も前だとあやふやだわ」
少し調べれば、わかることではあるけれど。
1、御柱に触れる
2、九尾を呼ぶ
3、何もしない
↓2
- 379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 19:12:27.28 ID:3kH7j+m6O
- 1
- 380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 19:13:10.33 ID:zr0WBAxD0
- 1
- 381 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 19:32:54.64 ID:Yf+Q/O32O
-
陽乃「……失礼」
ここにある御柱は、本来触れることが許されないものになっている
いくつかある宮の、どこかなら触ることが許可されていたはずだけれど
それがどこかは陽乃の記憶にはない
周囲を囲う、強制力のない簡易結界の上から、陽乃は御柱に触れる
人の手でご神木から作り出された御柱
少し触っただけで、ポロポロとかけらが落ちていく
陽乃「相当、頑張っているみたいね」
陽乃は、神々の力をその目に感じ取ることができる
直接手で触れてみると、
御柱がどんな状況なのかがより鮮明にわかるような気がする。
厚い信仰によって、どうにか力を保つことができているが、
消費されていく力の方がはるかに多い
諏訪の人々による信仰心は、もはや、消費を軽減する程度にしかなっていない
だが、それがあったからこそ3年間も保ち続けられたのだろう。
陽乃「……白鳥さんがそれだけ、力を尽くしたってことね」
- 382 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 19:43:52.76 ID:Yf+Q/O32O
-
歌野が神々の力を借りて諏訪を守護し続けることで
勇者である歌野と、それに力を貸し出しているとされていた諏訪の神々にも恩恵があったはず。
それがなかったらもっと早く、ここはバーテックスに飲み込まれてしまっていた。
陽乃「……だから、ここを護ってあげていたの?」
陽乃は、人間が自分の命を削ってまで護るようなものではないと思う。
みんなは、陽乃はだとしても護ってしまうような人だ……なんていうけれど。
陽乃「神様にとって、信仰は力であり存在でもあるものね」
人間の信仰があるからこそ
神々は力を持ち、己を神として存在していることができると、何かで聞いたことがある。
それが事実なら諏訪の神々が行っていることは、
過去の人々の信仰、そして、今をもがく人々の信仰
その願いを聞き届けているからこその恩返しとも言える
陽乃「……でも、護るのは不可能だわ。このままではあなたが朽ち果てる。あなたでは力不足」
いいや、無意味に人間を護ろうなどとするからこうなる。
結界なんて張らずに、勇者である歌野とそれを手助けする巫女である水都にだけ力を授けてここから逃がしてしまうべきだった。
それなら、少なくとも二人は死なずに済んでいたはずなのだ
- 383 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 19:44:47.34 ID:Yf+Q/O32O
- ↓1コンマ判定 一桁
0、2、6 ぞろ目 特殊
- 384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 19:45:12.46 ID:LNfACJi20
- あ
- 385 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 19:50:33.43 ID:Yf+Q/O32O
-
では少し中断させていただきます
再開は21時ころから
- 386 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 20:02:57.62 ID:W93BUajaO
- 一旦乙
- 387 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 21:26:30.67 ID:As1VTo1So
-
陽乃「っ!」
ふと、御柱がまばゆく光る
あたり一面を照らすかのような強い光は、まぶしくも神々しく
瞬く間に中心部へと収束していき、
陽乃が触れている部分へと下り――そして、陽乃の体へと流れ込む
陽乃「……っ」
痛みはないし、吐き気もない。
ただ、何かが流れ込んできたという感覚だけが体の中から湧き上がってくる
陽乃「あなた」
それは、間違いなく神様の力だ
諏訪大社、そのかなめともいえる本宮に残された御柱に宿っていた貴重な力。
失われれば結界が崩壊し、
今すぐにでもバーテックスが流れ込んでくる力
陽乃「なに、してるのよ……」
それが今、陽乃の方に駆け込んできたのだ
- 388 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 21:31:16.14 ID:As1VTo1So
-
陽乃が御柱から手を離すと、
お役目を終えたとでもいうかのように、その御柱はその場に崩れ落ちていく
ガラガラと騒音と土煙を立てながら、
枯れ木のように朽ちて……あたりに散らばる
陽乃「ば……馬鹿じゃないの!?」
陽乃は思わず怒鳴ってしまう。
御柱に宿っていた力は、陽乃へと譲渡された
それはつまり、
諏訪の結界、その最終的な主導権が諏訪の神々から陽乃へと移ったということだ。
諏訪にいながら、
諏訪の結界を破壊することを考えていた陽乃に。
その空気にもなっていた神々ならば、
陽乃の目論見など、すでに知っているはず。
なのに――陽乃に託した
陽乃「私が……私が貴方達の意志を継ぐだなんて思ってるの!?」
- 389 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 21:38:39.47 ID:As1VTo1So
-
歌野へと力を貸し与えて、結界となって人々を守っていた諏訪の神々
その力はもはや消えかけといえるほどに微弱だった。
それは諏訪の人々を守ることだけを目的として消費され続け
やがて潰えるはずだった希望
そんなものを譲渡された陽乃は、
諏訪の神々から " 頼む " と、願われたようなもので。
だから、苛立つ
陽乃「私は……私はっ!」
歌野「久遠さん!?」
球子「何があったんだ!?」
あたりを照らした光、
御柱が崩れ落ちた騒音……みんなが出てくるのは当然だった。
- 390 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 21:44:01.19 ID:As1VTo1So
-
懐中電灯を持って駆け寄ってきた歌野は、
その崩れた御柱のそばに立ち尽くす陽乃に、何があったのかと問う
水都と杏は、見るも無残に崩れ落ちた御柱を前にして、呆然としていた。
球子「なんっだ……これ」
水都「御柱……諏訪を、諏訪を守る結界の要が……」
杏「久遠さん……?」
枯れ木となった御柱は、
しゃがんで触れた水都の弱い力でも、簡単に砕け散ってしまう
歌野「久遠さん答えて……何があったの?」
陽乃「……っ」
陽乃乃の肩を掴んで、
自分を向くようにした歌野は、陽乃へと詰め寄る
歌野「これ……久遠さんがやったの?」
1、だったら、なんだっていうのよ
2、うるさい!
3、知らないわよ……
4、どっか行って!
5、何も言わない
↓2
- 391 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 21:46:27.96 ID:LNfACJi20
- 1
- 392 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 21:46:45.97 ID:yIikTvrDO
- 5
- 393 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 21:52:42.66 ID:As1VTo1So
-
歌野「久遠さん!」
陽乃は何も言わない
その黙秘している態度に、歌野は焦った様子で体を揺さぶる
水都が言ったように、諏訪の各社にあった御柱は、結界の要だ
それが崩れたということは、
最悪の場合結界が壊されたということに他ならない
歌野「黙っていないで答えて!」
球子「ここにいたってことは、何かしたのか?」
杏「ま、待ってっ! 久遠さんは――」
御柱の惨状に固まっていた杏が、傍らの騒がしさにはっとして、
陽乃と歌野の間に割って入ろうと体を差し込む
歌野「久遠さんが悪さをするとかしないとか、そういう話をしてる状況じゃないの!」
杏「で、でもっ」
歌野「結界の要だって……話をしたでしょう? それが、一瞬輝いたかと思えばこんな風に崩れ落ちたのよ?
その瞬間に久遠さんが立ち会ったのは間違いないの……話を聞かないわけにはいかないわ」
- 394 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 22:01:43.74 ID:As1VTo1So
-
考え方によっては、
あの輝きは爆破されたとか、燃やされたとか
そういうものだと思われても仕方がないものだった。
御柱が崩れ落ちた騒音のせいで、爆破したといわれても言い逃れはできない。
それほど、御柱は粉々なのだ
歌野「お願い……黙っていられてもどうしようもないのよ」
あんなにも強い輝きがあって、
それに続いた地揺れも引き起こすような騒音があった。
しばらくしたら、多くの人々がここに集まってくることだろう。
歌野「久遠さんが悪いって言いたいわけじゃないの。でも、何があったか教えてくれなきゃ……」
歌野達は、その場にいた陽乃を拘束しなければならない。
最悪の場合は、何があったのかを力づくで話してもらわなければならない
歌野は勇者として、
諏訪の人々の不安の種を取り除かなければならないからだ
- 395 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 22:08:17.55 ID:As1VTo1So
-
水都「久遠さん……お願いします。教えてください」
杏「久遠さん……」
陽乃「……」
諏訪の神々から力を託されたと言って誰が信じるだろうか。
陽乃は力を感じ取れるが、
ほかのだれにも、それはできない。
客観的に見て、陽乃が御柱に何かして壊したとしか思えないのだ
球子「黙ってるのは、さすがにまずいんじゃないのか?」
歌野「……最悪、力づくで話を聞くことになるわ」
杏「そんなっ……」
割って入ろうとする杏をものともしない歌野の力
本気で戦うとなったら、
それ相応のダメージは覚悟する必要があるかもしれない
1、勝手にしたら?
2、どうせ信じないじゃない
3、諏訪の力を託されたのよ
4、何も言わない
↓2
- 396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 22:10:44.33 ID:zr0WBAxD0
- 1
- 397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 22:11:18.10 ID:vWjdg4eEO
- 4
- 398 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 22:19:41.65 ID:As1VTo1So
-
陽乃「っ……」
言ったところで、どうせ信じて貰えるわけがない
向こうでそうだった。
言っても、言わなくても
信じて貰えなかった結果が今だから。
なにせ、陽乃には証明する手立てがない
御柱が砕け散ったという物証が目の前に転がっているだけ。
歌野「っ……久遠さん!」
杏「ダメッ!」
歌野「邪魔しないで!」
懐中電灯を投げ捨て、
陽乃を掴もうとした歌野のもう一方の腕を杏が掴んで抑え込む
杏「久遠さんには私が話を聞きますからっ!」
歌野「それでどうにかなる問題じゃないの!」
歌野は陽乃を掴んでいた手を離すと
杏に掴まれた腕を引いて距離を詰め、杏の胸元にその右手を打ち込んで突き飛ばす
- 399 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 22:25:22.51 ID:As1VTo1So
-
杏「っあ゛!」
球子「杏!」
突き飛ばされ、歌野の腕を放してしまった杏はそのまま尻もちをつく
杏が傷つけられて目を見開いた球子が今度は歌野を抑えようと動くが、
戦いの経験がはるかに勝る歌野の方が動きが速い。
球子「この――」
歌野「し――っ」
一歩踏み込んできた球子の足を内側から払うと
球子「ぅ゛あ゛っ!?」
バランスを崩した球子の背中に肘を打ち込んで、勢いよく地面にたたき伏せさせる
歌野「っ……悪く思わないで」
歌野は申し訳なさそうに呟いて、首を振る
歌野は、諏訪の勇者としての責務がある
同じ勇者だからと言って、
御柱を崩した可能性のある陽乃を黙認はできないし、それを助けようとする二人を打たなければならなかった
- 400 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 22:26:08.02 ID:As1VTo1So
-
↓1コンマ判定 一桁
1,5,9 水都「うたのんお願いっ!」
ぞろ目特殊
- 401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 22:28:03.41 ID:nALkcKbFO
- あ
- 402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 22:32:37.78 ID:/bVnl9uTO
- みーちゃんのコンマの強運凄すぎるな…
- 403 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 22:44:52.72 ID:As1VTo1So
-
水都「うたのんお願い!」
歌野「っ……み、みーちゃん……」
球子はもちろん、
勇者の中でも非力とされている杏よりも、
ずっと非力な水都が、歌野の体にしがみつく
歌野「駄目よみーちゃん……離れて」
水都「お願いうたのん……やめて……」
歌野の力なら水都を振りほどくなんて簡単だった
けれど、力で簡単なだけで、
歌野には絶対に振り払うことの出来ない最弱の力だった。
水都「久遠さんは話せない理由があるんだと思うから……だから……」
歌野「そんなこと言ったって……」
水都「私は何も神託受けてないッ!」
歌野「!」
水都「何か、よくないことがあったら……私が神託を受けてるはずだよ……」
- 404 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 22:49:10.14 ID:As1VTo1So
-
水都は巫女としても非力ではあるが、
何かが起こったときには必ず、神託を受けていた
すでに失われたほかの御柱が崩壊してしまった時だって、
水都はその際にその崩壊の知らせを受けた。
だが、今回はそれがなかったのだ
歌野「でも……御柱が」
水都「それは、見ればわかるよ……」
明らかに、御柱は力を失っている。
朽ち果てて、触れば簡単に砕け散るほどに抜け殻だ
水都は歌野の体にしがみつきながら、首を振る
水都「でも、結界が壊れた感じがしない……だって、壊れてたら襲来の警報が鳴り響いてるはずだよ」
歌野「……」
水都「事情は分からないけど……御柱は壊されたんじゃなくて、壊れたんだと思う」
- 405 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 23:02:10.67 ID:As1VTo1So
-
杏「……!」
球子「……それの何が違うんだ?」
水都の解釈に驚いた表情を浮かべる杏と、
戸惑う球子と歌野
水都は慎重に言葉を選ぼうとして黙り込んでしまう
一歩間違えればまた、争いになってしまうから
けれど、それを引き継いで杏が口を開く
杏「壊された。なら、外因……誰かに何かされたってなる
でも、壊れた。なら……自分から望んでそうなったとも言える」
水都「そう……だから、久遠さんを責める理由はないよっ」
歌野「そんな、曖昧な……」
歌野はそう呟きながらも、
両腕を下ろして、体に入っていた力を抜いていく
水都の言葉を疑いたくなかった。
水都の、強い意志での行動に反発したくなかった。
歌野「……分かった。わかったわ」
歌野は両手を降参というように上げて、ため息をつく
歌野「影響はないって思っておく……でも、久遠さん」
陽乃「……」
歌野「みーちゃんに免じて、よ。この後、ちゃんと話を聞かせてもらうわ」
歌野は水都の頭を撫でて、苦笑いを浮かべる
歌野「みーちゃんは、久遠さんを信じた責任を持って、みんなにひとまず安心するように通達を出して頂戴」
水都「うん……ありがとう。うたのん」
歌野の指示を受けて、水都は陽乃に何も言わずに走っていく
歌野「それじゃ、私たちは部屋に戻りましょ。良いわよね? 久遠さん」
陽乃は、球子と歌野に引っ張られる形で、参集殿へと連れ戻された
- 406 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 23:03:03.96 ID:As1VTo1So
-
↓1コンマ判定 一桁
0,2 九尾
ぞろ目 特殊
- 407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 23:03:19.87 ID:GLO+K8cnO
- あ
- 408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/18(日) 23:05:06.69 ID:As1VTo1So
- では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
夜延長、事情聴取
- 409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/18(日) 23:12:56.28 ID:/bVnl9uTO
- 乙
やっと退院したと思ったらその日の内にまさかの急展開になるとは…
みーちゃんが止めなかったら珍しく焦るうたのんと殴り合うことになってたのだろうか
- 410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/19(月) 00:26:19.83 ID:Woj5I4oPO
- 乙
そういや久遠さんって人柱だから御柱の代替として最適なのかも
あとみーちゃんコンマ強すぎってか健気過ぎる
- 411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/19(月) 00:34:47.77 ID:TRad/McIO
- 乙
みーちゃんがコンマ強すぎてもうオカン感すらある
結界なくなっちゃった?ってことだろうからこれから即断即決で動かないといけないな
- 412 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/19(月) 22:27:56.71 ID:ckoxZCXno
- では少しだけ
- 413 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/19(月) 22:28:32.23 ID:ckoxZCXno
-
歌野達に拘束されるような形で部屋に戻ってきた陽乃
そして陽乃を囲むようにして歌野達が座る
本来なら、縄でも使って拘束するべきだけれど
勇者である陽乃には簡易な高速具なんて何の意味もないだろうと、自由なままだ。
歌野「……みーちゃんに、感謝してね? 私は諏訪の勇者として、久遠さんをたたかなければいけなかったんだから」
力づくでもたたき伏せさせてから、
何があったのか、何をしたのか。
それを聞きださなければならなかった。
けれど、巫女である水都がその必要ではないと判断したから歌野は止まらざるを得なかった
もっと言えば、止まる理由を得られたのだ。
そうでなくても、あれほど必死に
それも歌野に反発するような感じで来るなんて、3年間連れ添った中でも見た覚えがない
歌野「でも、話せない理由があるなんて言われても、通用しないわ」
陽乃「……諏訪の御柱のことだものね」
歌野「ええ、そう」
結界の要である御柱
その倒壊に関してのことを、陽乃が黙秘できる権利は存在していない
無論、黙秘する権利はないが黙秘することは可能だが
その時は水都の努力もむなしく……勇者同士での戦いに発展するだろう。
- 414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/19(月) 22:31:38.24 ID:VMzAKvNoO
- きてた
- 415 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/19(月) 22:58:13.47 ID:ckoxZCXno
-
歌野「正直、最悪の状況だといえるわ」
球子「結界は何ともないんだろ?」
歌野「ええ、まぁ……そうだろうってみーちゃんは言ってるけど、その象徴が倒れてしまった以上
市民の不安は計り知れないものになってくるとみて間違いないと思うの」
歌野は顔をしかめる
3年前も酷かったが、一度は安寧を得られたからこそ、
突然希望が崩れ去ってしまったというのが……どれだけの影響を及ぼすのかが不安だった。
みんな覚悟してくれているといっていてくれたけれど
こんな急に……前触れもなく
そんなのは想定も覚悟もしていないはずだ。
そして、それが陽乃が退院してすぐ……その行先で、しかもその場にいたっていう狙いすましたかのようなタイミング
最悪、陽乃がバッシングを受けてもおかしくない。
歌野「だから久遠さん。正直に話して……あの場で一体何があったのか。久遠さんは何をしたのか」
1、諏訪の力を託されたのよ
2、何もしてないわ。触っただけよ
3、私が壊したわ。もともとそのつもりだったのよ
4、言ったって、どうせ信じないじゃない
5、私も音に気づいて駆け寄っただけよ
↓2
- 416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/19(月) 23:00:02.62 ID:VMzAKvNoO
- 2
- 417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/19(月) 23:01:16.41 ID:j8AzvNCy0
- 1
- 418 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/19(月) 23:28:09.15 ID:ckoxZCXno
-
陽乃「諏訪の力を託されたのよ」
杏「諏訪の力……ですか?」
陽乃「ええ」
諏訪の力……諏訪の神々の力
それはこの地域一帯を守護する結界の源であり、
そして、今まさに目の前にいる白鳥歌野が扱う勇者としての力の供給源でもある。
陽乃がそれを話すと、
杏はもちろん、歌野も……球子でさえも笑ったりしなかった。
信じられるような話ではないけれど、
笑えるような話でもない。
歌野「……正直に言うと、信じがたい話だわ」
陽乃「でしょうね」
杏「でも、久遠さんは巫女の家系だから十分にあり得る話です」
球子「そういや、そうだよな」
杏「もしかしたら、お昼にお清めを行ったのが原因かもしれません」
- 419 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/19(月) 23:43:08.10 ID:ckoxZCXno
-
歌野「そんなことしてたのね」
陽乃「……まぁね」
杏は、陽乃が神社の生まれで
勇者でありながら、巫女としての素養があること
巫女はお清めを行うことで、神降ろしなどを行ったりするという……
本から得た知識を引っ張り出す。
杏「久遠さんには神降ろしに似た何かが起こった可能性が高いかと思います」
歌野「それって、どうにかなるの?」
陽乃「本来の神降ろしなら、お帰り頂くのが手順よ」
歌野「なら――」
陽乃「私は神降ろしの儀式を何一つ行っていないのよ。これは、諏訪大明神からの一方的な力の譲渡」
球子「何か違うのか?」
陽乃「解らない?」
陽乃は自嘲気味に笑って、首を振る
陽乃「返す先がない。つまり、私が死ぬまでこれを預かっていなければならないの」
- 420 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 00:07:22.85 ID:fY2+hvAho
-
これは陽乃に同意を求めない強制的なもの。
陽乃は人間の中では特殊な力を持っているが、
それでも、神々から見れば人間であることに変わりがない
それゆえに、諏訪の神々は陽乃を自らの力の器とした。
このままでは消費され続けて朽ち果てるだけでしかなかったのに、
人間としての生命力を持つ陽乃に委ねることで、消耗した分を補うことができるようになるからだ。
もちろん、
ただ人に同じことをしたら耐えられなくて即死する可能性がある。
それは、九尾がひなたに力を与えたらどうなるか。というものと変わりがない。
九尾は神獣ではあるが、神ではない
そのため、もっとひどいことになる可能性だってある。
その血筋であること
神々の寵愛を受け、その力に馴染み深いこと
それがあってこそ、陽乃は諏訪の神々の力を受けてなお耐えられている。
歌野「えぇっと、つまり?」
陽乃「諏訪の最終防衛ラインは私になったってこと。嫌でも私を守らないと……諏訪の結界が崩壊する」
球子「……まじか」
陽乃「もちろん、維持も消失も私の一存で決められるわ」
歌野「維持して貰えるかしら? 少なくとも、今しばらくは……ね?」
- 421 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 00:10:50.55 ID:fY2+hvAho
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 00:17:43.69 ID:Tn33aqAsO
- 乙
陽乃さんが死なない限り半永久的に諏訪を守れる感じか
でもそんな重い責任背負わせたらますます精神的に不安定になるんじゃ…
- 423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 00:49:47.42 ID:1CIZE6x3O
- 乙
だから久遠さんブチキレてたんだな
- 424 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 01:12:00.93 ID:jnoxGf/uO
- 乙
でもこれで陽乃が自分を犠牲にするような無茶は出来なくなったな
陽乃が弱る=結界維持できない、だから
そういう意味じゃプラスに捉えていいのかも
- 425 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 21:52:33.14 ID:fY2+hvAho
- では少しだけ
- 426 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 21:53:10.43 ID:fY2+hvAho
-
杏「あの、久遠さん。気になることがあるんですが」
陽乃「なに?」
杏「久遠さんがこの前みたいに意識を失うほど力を使った場合、結界に影響はあるのでしょうか?」
陽乃「さぁ?」
陽乃が意識を失うのは力を消費しきったからではなく、
力を使ったことによる副作用……代償のようなものだ
力が残っているのなら、
結界の維持には影響が出ないかもしれないし
陽乃が弱ったことで結界も弱まってしまうかもしれない
陽乃「試してみる?」
杏「駄目に決まってます!」
歌野「それで弱まったら目も当てられないわ」
陽乃「けれど、私も勇者よ? 戦わざるを得ないことがあると思うのだけど」
球子「そりゃそうだけどさ……駄目だろ」
- 427 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 21:59:45.79 ID:MA1Ikf/2O
- よしきた
- 428 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 22:11:20.62 ID:fY2+hvAho
-
どうなるのかを知っておくべきことではあるかもしれないが、
そのテストを実施した際の結果によっては、
被害が大変なことになるため、
残念ながら、やるべきではないと陽乃以外の三人は首を横に振る
歌野「久遠さんがここから離れたらどうなるのかしら?」
陽乃「結界は残るでしょうね」
陽乃がここから離れても、結界自体は消滅せずに残る可能性が高い
だが、結界に供給される力の源が離れれば離れるほど
結界は弱くなるはずだ
それは、球子達のことを考えての推測だ
弱まることはないが、陽のが余計に力を消耗するだけかもしれない
それももちろん、試すわけにはいかない
歌野「……久遠さん次第になるわね」
陽乃がここにいたいというのなら今までの予定で問題はないが、
陽乃がここから離れたいというなら、みんなも一緒に離れる必要がある
そうしないと、結界がすぐにでも破られる可能性があるからだ
1、なんで、信じてるの?
2、私は出ていくわよ
3、私はここに残るわよ
4、何も言わない
↓2
- 429 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 22:15:33.27 ID:R1ZBSCPh0
- 3
- 430 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 22:15:40.72 ID:Iobji1fM0
- 4
- 431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 22:16:11.42 ID:MA1Ikf/2O
- 1
- 432 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 22:30:24.97 ID:fY2+hvAho
-
陽乃は黙って、眉を顰める
陽乃は別に嘘をついていない
嘘をついていないから信じられても別に何も影響はないのだが、
疑い一つもなく、うのみにしていることが少し気になったのだ。
この状況では、
あえて自分から不和をもたらすようなことを言わなくてもいいだろうから、
さすがに " 疑わないのか " なんて無意味なことは言わない
歌野は神妙な面持ちで、うつむく
考え込むように口元にあてがわれた人さし指の第二関節部分には唇が引っ付いている
杏「久遠さんを総攻撃に参加させるのはまずい気がします」
歌野「ん……あ、そう、ね」
球子「いやいやいや! 待て待て」
杏の発言に、珠子が食いつく
球子「言いたくないが、タマ達だけでどうにかできるなんて思えない」
杏「でも……」
球子「今までタマ達が相手にした数の数倍、数十倍、数百倍……そのレベルで来るって杏が言ったんだぞ?」
- 433 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 22:42:39.21 ID:fY2+hvAho
-
歌野「問題は、久遠さんが参戦した瞬間に、敵の狙いが全部久遠さんに行く可能性もあるっていうところよ
結界の要ってばれてるかはともかく、諏訪の神様の力を持ってることはカンパされるはず」
杏「そうです。それなんです」
歌野の不服そうな言葉に杏は同調して陽乃を見る
陽乃が本気を出せば、きっとそのすべてを葬り去ることができるだろう。
だが、陽乃はまた意識不明に陥ることになる
今度はそれで済まないかもしれない
たった数日では回復しないほどに傷ついてしまうかもしれない
球子「そんなこと言ったって、それで温存してどうなるのさ」
杏と歌野の二人が悩みながら言うのに対して、
球子はやや直情的に口を開く。
球子「タマ達だけで総攻撃をしのげるか? 出来たとしても、誰か死ぬんじゃないのか?」
杏「うん……可能性はあると思う」
球子「だったら出し惜しみなんて――」
歌野「けれど、土居さん。久遠さんは要よ? 最終兵器でもある……誰か死ぬほどの被害でもない限り、出していい手札ではないわ」
- 434 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 22:55:46.09 ID:fY2+hvAho
-
歌野も、もちろん誰かが死んでいいなんてこれっぽちも思っていない。
しかしながら、
陽乃の役割が諏訪の存続にまで関わってくる以上は、
簡単に戦わせていいとも思えないのだ。
誰かを失うくらいなら、
誰も失っていないうちに投入して、
全体的な被害を軽減するべきではないか。というのも考えれられる
けれど、そうした場合に、
歌野達の妨害をする戦力以外のすべてが陽乃に投入されても困る
陽乃なら対応できるという杏たちの言葉を信じるとしても
力の消耗による陽乃への副作用によって意識の消失が起こり
それが起因となって結界の弱体化、または消滅が起こったら大惨事だ
歌野「どうしてこう……何もかも久遠さんなのよ」
歌野は悪態ともとれる様子で、頭を抱える
歌野「少しくらい、私たちに回ってきてくれてれば……」
リスクの分散ができていれば、もっといろんな手があるのに。
今はすべてが陽乃に集約している
1、私は戦うわよ? 任せてられないもの
2、私は人身御供みたいなものだから。依り代なのよ
3、白鳥さんの力を強化するくらいなら、できると思うけど
4、忘れてるけど、病み上がりなのよ……寝ていいかしら
5、何も言わない
↓2
- 435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 23:03:07.78 ID:Iobji1fM0
- 1
- 436 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 23:03:11.94 ID:jnoxGf/uO
- 3
- 437 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 23:03:28.26 ID:MA1Ikf/2O
- 1
- 438 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 23:10:31.21 ID:fY2+hvAho
-
陽乃「白鳥さんの力を強化するくらいならできると思うけど」
歌野「私の力?」
陽乃「言ったでしょ? 貴女に与えられてる力も私からのものになるって」
諏訪の力を譲渡されるということは、
当然、諏訪の勇者として活躍している歌野への供給も行うことになる
それなら、その力の供給だって陽乃の自由になるはずだ
もちろん、与えすぎても毒になるが、
そうならない程度にまでなら引き上げることだって可能なはず
陽のがそういうと、
歌野は唖然として……おもむろに、額を手で押さえる
歌野「だったらなおさら、久遠さんは戦いに出せないわね」
杏「……ですね」
- 439 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 23:21:29.58 ID:fY2+hvAho
-
陽乃が倒れた場合、
歌野まで弱体化する可能性があると思ったのだろう
歌野と杏は頷いて、今度は球子もそれを否定はしなかった。
勇者二人が共倒れなんて絶望的にもほどがある
しかも、
もっとも戦闘経験のある歌野が戦力外になるのだから、最悪だ
歌野「それで、その強化ってどのくらい可能なの?」
陽乃「貴女の許容量にもよるけど……今までの比にはならないと思うわ」
今までは結界の維持、地域への恩恵、そして歌野への供給
限られた力だけで幅広く手を出していたが、
陽乃にそれが譲渡されたことで、供給可能な力は大幅に上がっている……はずだ。
陽乃は否応なく代償があるが、
歌野達はそれがない分、比較的弱い力での戦いを強いられている
それがある種のリミッターだとして、
そのリミッターの役割を陽乃が請け負うことで、
歌野に負担がかからない限界までの力を供給することができるのが今の状況だ。
その状態なら、通常の陽乃をたたき伏せられる可能性もある。
陽乃「私も、敵わないかもしれないわね」
歌野「凄いじゃない!」
陽乃「言っておくけど、私が一切戦わないこと前提よ?
貴女に副作用がないような調整しながら戦うなんて器用なこと私無理だもの」
少なくとも、今は。
- 440 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 23:37:25.95 ID:fY2+hvAho
-
そもそも、今はまだ力を強制的に譲渡されただけで
しっかりと把握しきれているとはいいがたい。
陽乃がもともと所持している力との衝突などが起こった場合、
陽乃がそれに慣れるまでは苦しむことになるかもしれない。
陽乃「……悪いけど、休ませて頂戴」
杏「あ、そう。ですね……大丈夫ですよね?」
歌野「明日、また話を聞かせてくれる?」
陽乃「別に逃げたりしないから心配しなくていいわよ……」
明日は九尾を呼んで話を聞いた方がいいかもしれない。
陽乃に加わった力の影響を大きく受ける一人が九尾だ
陽乃の憶測で話すより、
九尾から話を聞いて、もっとしっかりと把握するべきだろう
杏「久遠さん――」
陽乃はもうすでに用意されていた、部屋の隅に用意された布団の方に向かう。
杏が手を貸そうと動いたけれど、それを断る
そこまで弱っているわけではない。
陽乃「……っ」
厄介なことをされたと。
陽乃は身勝手に力を放り投げてきた神々への苛立ちを捨てきれなかった
- 441 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 23:39:29.25 ID:fY2+hvAho
-
√ 2018年 8月15日目 朝:諏訪 ※延長1
05〜14 水都
41〜50 杏
76〜90 襲撃
↓1のコンマ
※それ以外は九尾
- 442 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 23:40:21.62 ID:MA1Ikf/2O
- あ
- 443 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/20(火) 23:46:30.68 ID:fY2+hvAho
- では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
再開時に1日のまとめ
九尾と諏訪の力についての話
- 444 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 23:59:35.86 ID:MA1Ikf/2O
- 乙
確かに九尾の見解を聞かないことには判断しづらい問題だな
ただできれば陽乃さんも一緒にいてくれた方が心強いけど
- 445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/21(水) 00:24:19.16 ID:DnLenzNSO
- 乙
久遠さんも出て頑張るかスーパーうたのんに頑張ってもらうか
どちらにしても原作の諏訪の状況よりは万倍いい状態だけどどうするかな
- 446 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 22:17:04.61 ID:XsN5xqsAo
- では少しだけ
- 447 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 22:17:38.73 ID:XsN5xqsAo
- √ 2018年 8月15日目 朝:諏訪
馴染み深い畳の、ややしん……っとした匂いを感じながら陽乃は目を覚ます。
つい昨日までは入院し、苦しんでいたとは思えないほど軽い意識と体
一度ゆっくり瞬きをしてから、もう何度か瞬きをして
もう眠気がすっかりぬけてしまっているのを確認する。
部屋はかなり広く、
5人が横並びになっていても問題なかったりするが、
それはどうだろう。と、
歌野と水都の二人、球子、陽乃、水都の三人として、二段に分かれて位置取った
左隣に目を向ければ球子がいて
右隣に目を向ければ杏がいて
上を向けば、歌野と水都の布団に境目が見える
陽乃「……」
小さく息を吐いて、陽乃は体を起こす。
杏と球子とは部屋を同じくしたことはあるが
ここまでまとまって寝たのはいつ振りかと、顔をしかめる
交流をする気なんてなかったのに、
気付けば周りに人がいる。
良くも悪くも、断ち切れないものだと……陽乃は首を振って、軽く体を伸ばした
- 448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 22:23:34.87 ID:XsN5xqsAo
-
みんなを起こさないようにしながら布団をどかし、
一人分の布団をその場に畳んで……部屋を出る
陽乃「ん……っ」
久しぶりの自由だ。
まるで動かせなかった体も、今は十分に動かすことができる。
いや――むしろ、奇妙なほどだ
『主様』
陽乃「……来ると思ったわ」
『うむ……主様は、相も変わらず、引き寄せるのう』
ややあきれた声の九尾
外から差し込んでくる光で伸びた陽乃の影が狐の形に変わって、
陽乃の隣に並ぶ
『この土地に住まう神々の代行として見初められたがゆえに、気分もよかろう?』
陽乃「気分は最悪よ……調子は、いいけど」
- 449 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 22:28:44.58 ID:XsN5xqsAo
-
考えるまでもなく、厄介なことに巻き込まれたというか
厄介なことを押し付けられてしまったのだ。
諏訪の結界を破壊させるつもりだったのに、
それを維持する権利と崩壊させる権利の両方を与えられてしまった。
まるで、自分たちの意志を継いで、人々を守護してくれると信じているかのように。
『土地そのものが、主様に力を与えている状況じゃからのう。下手なことをしなければ不調にはならぬ』
陽乃「……そう」
『不服かや?』
陽乃「当たり前でしょ……こんなの」
『はて? むしろ僥倖と言えるのではないかや?』
九尾はとても不思議そうに言うと、
影の姿を揺らめかせる
『迷わず結界を崩壊させて、予定通りに人間どもを叩き出せばよいではないか』
陽乃「簡単に言わないで……他人の力ならともかく、自分のものになった以上は、下手したらもっと厄介ごとになるんだから」
- 450 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 22:44:13.85 ID:XsN5xqsAo
-
御柱が倒壊した……というだけで、
歌野はあんなにも激しく詰め寄ってきた。
普段は温厚ではあるが、
護るべき物を正しく理解しているからこそ、
それが脅かされた時……歌野は間違いなく陽乃の敵になる。
力の供給が陽乃であるため、
それを絶ってしまえばしまえばいいのだけれど、
それをすると、この場の勇者と巫女を皆殺しにでもしない限りは、
永続的に居心地が悪くなる。
陽乃「……」
『しかし、諏訪の神々にとってはこれ以上ないほどの幸運であったろうな』
陽乃「……どうして?」
『主様には妾やかの死の神の力があるが、それ以外にも最たるものとして稲荷がおる』
陽乃「稲荷って……宇迦之御魂神様?」
『うむ。あやつならばこの地を潤すこともたやすかろう』
永年、潤し続けるのはさすがに異常かもしれないが、
人々が満足に作物を得られる程度の施しは容易に行えるはずだと九尾は言う
それだけでも、諏訪の神々が陽乃を選んだ理由になるらしい。
- 451 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 22:58:59.32 ID:XsN5xqsAo
-
『主様は人間にしては……神に近い、寵愛を受けた身じゃ』
陽乃「……前に似たようなこと言ってたわよね。そのせいで見初められたの?」
『そうじゃな』
九尾は小さく鼻を鳴らすような音を立てる
影しか見えないせいで、実際はどうなのかわからない。
『人間の許容量を超えて力を与えれば確実に死に至る
その点、主様は代償こそあるが、ただ人には持ちえぬ器を持っておるからな……消えゆく力を延命させるには最適じゃ』
陽乃「体よく、利用されたってことね」
『その分、恩恵もあろう。その一つとして、主様調子が良いであろう?』
陽乃「……」
体が軽い
言い換えれば、生命力に満ち溢れている
この地の神の代行者として見初められたため、
この地にいる間はめったなことがなければ、この前みたいなことにはならないという。
『主様が不調に陥らぬのならば、かの神が出てくることもあるまい』
陽乃「だといいけど……」
1、ねぇ、白鳥さんを強化することって……できるの?
2、私がここから離れたらどうなるの?
3、この土地を奪われたら、どうなるの?
4、この力、返すことってできないの?
5、何も言わない
↓2
- 452 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/21(水) 23:01:33.87 ID:uZufFBHR0
- 2
- 453 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/21(水) 23:01:39.47 ID:mRdUATktO
- 4
- 454 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 23:16:43.64 ID:XsN5xqsAo
-
陽乃「この力、返すことってできないの?」
『ふむ……主様ならばわかると思うが、そうじゃな。白羽の矢が立った家の娘が、容易に逃げ出せると思うかや?』
陽乃「……駄目なのね」
『そこは主様の血筋の問題じゃな。
人身御供として最適な末裔……それこそが、主様が選ばれた最大限の理由じゃからな』
九尾はそういうと、
くつくつと、のどを鳴らすような笑い声をあげる
『そもそも主様は御柱に触れた。誘われたのではなく、自ら触れた
己からつながりを持った以上、契りとして委ねられた力を放棄するのは祟られても文句は言えぬぞ』
触れねばよかったものを。と
九尾はため息交じりに言うが、まさにその通りだから反論ができない
『天之逆鉾には触れぬとしたくせに、愚かなことをしおって』
陽乃「……ええ、そうね。軽率だった」
『じゃが、神格を得たことで、力を使ってもそう大きな代償を払わずに済むようになっておるはずじゃ
多少、無理をしても以前のようにはなるまい。なっても、すぐに回復するじゃろう』
陽乃「なら、私……もう大丈夫なの?」
『使い続ければ早死にするのは変わらぬぞ。ただ人が振るっていいものではないからのう』
- 455 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 23:38:24.98 ID:XsN5xqsAo
-
陽乃「……そう。そうよね」
この力が無尽蔵に使えてしまったら、それこそ本当に化け物でしかない。
別に期待したわけじゃない。
『主様が戦わぬ……というのならば、長生きもできよう』
陽乃「結界の維持と、白鳥さんに力を貸すくらいならってこと?」
『うむ。大地の生命力が尽きることがなければ
そして、諏訪の神々を信仰する人間が多くいるという条件はあるが』
諏訪は神樹様からは隔離されているため、
統一されているかといえば、そういわけでもない。
この地の神様のおかげであるとされている
陽乃「……それって、私向こうに帰ったら大変なことになるわよね?」
『この地に生きる人間を連れ帰ればよい。生きたまま』
陽乃「簡単に言ってくれるじゃない」
『ならば残ればよい。妾はどうであろうと構わぬ』
1、薄情ね
2、白鳥さん、どれくらい強化できるのかしら
3、私が結界を壊すことを選んでも、祟られない?
4、何も言わない
↓2
- 456 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/21(水) 23:40:57.52 ID:je52JODPO
- 3
- 457 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/21(水) 23:41:14.32 ID:zHTySDEp0
- 3
- 458 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/21(水) 23:41:15.52 ID:uZufFBHR0
- 3
- 459 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/21(水) 23:59:59.22 ID:XsN5xqsAo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 460 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/22(木) 00:12:25.49 ID:vtTXr3Z9O
- 乙
つまり基本的に諏訪でなら相当無茶やってもなんとかそう?
出してるだけで大ダメージだった死神の力を使ったらどうなるんだろうか
- 461 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/22(木) 03:32:37.21 ID:WWOiYOknO
- 乙
メタ的なこと言えば帰らないと四国がヤバそうなのがな
杏球子抜きだし千景はもちろんのこ下手しい若葉も死ぬんじゃね?っていう
- 462 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/22(木) 23:30:54.31 ID:Bb/+IrOKO
-
本日は時間も遅いのでお休みとさせていただきます。
PCの方の回線では繋がらないみたいですが、
こちらでは繋がりそうなので、書き込みテスト
- 463 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/23(金) 05:56:55.02 ID:vQtzXaqV0
- 乙
またしても謎の現象が…
- 464 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/27(火) 23:00:13.31 ID:TqtfaVxRO
- 復活しとるな
- 465 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/27(火) 23:01:32.25 ID:moW+mgpLo
- では少しだけ
- 466 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/27(火) 23:02:07.76 ID:moW+mgpLo
-
陽乃「私が結界を壊すことを選んでも、祟られない?」
『ふむ……主様が諏訪の人間共を救う手段としてそれを用いるならば、祟られはしまい』
陽乃「なにそれ。向こうに連れ帰れってことでしょ?」
『人間を護れということじゃろう』
陽乃「……」
陽乃は不服そうに顔をしかめる。
神様から人を護れと言われても、陽乃は困る
神様に言われたわけでもなく、
自分からやった結果が三年前だ
それなのに、神様の言う通り――なんて言われたからどうだって言うのか
陽乃「最悪だわ」
『そうじゃな』
御柱に触れただけで、
厄介ごとを押し付けられた上に、拒否権はない可能性がある
下手をすれば祟られるというのだから酷い話だ
『無論、救いきれなかったのならば仕方があるまいと思うが』
- 467 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/27(火) 23:23:02.02 ID:moW+mgpLo
-
陽乃「故意に見捨てるのは許されないってわけなのね」
『うむ』
今までのように、
素知らぬ顔をして素通りというのはできないというわけだ
もともとしていたかどうかは別として。
『じゃが、諏訪の人間ならば護っても問題はあるまい』
諏訪の人々は、
陽乃が何か問題を起こさなければ、
陽乃のことを警戒することも毛嫌いしたりすることもない
勇者として生き、
それ以外は普通の少女でさえいれば、
彼らは陽乃を愛してくれることだろう。
向こうに帰ったとき
それが変わらない保証はないけれど
ここでの生活がしっかりとしていれば、噂に流されたりしなくなるかもしれない
- 468 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/27(火) 23:51:03.14 ID:moW+mgpLo
-
『これからの主様次第じゃな』
陽乃「はぁ……」
つまり、諏訪の神様からの試練のようなものということと考えるべきだろうか。
陽乃が更生するかどうかの試練
もはや取り返しのつかない向こう
それを捨ててやり直すことのできる諏訪
その追い詰められているような状況もまた
陽乃が選ばれた理由になるかもしれない。
『主様が選ぶしかないのう』
陽乃「……そう、ね」
九尾に選んでもらうわけにもいかないし、
この重責を誰かに委ねることもできない
だから、陽乃自身がどう生きていきたいかを選択するしかないのだ
陽乃「いまさらそんなこと言われたって困るのだけど」
それも、
こんないつ崩壊するともしれない環境で。
だがもう、押し付けられてしまった以上は、どうにもならない
- 469 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/27(火) 23:54:39.27 ID:moW+mgpLo
-
√ 2018年 8月15日目 昼:諏訪
01〜10 杏
23〜32 球子
34〜43 水都 ※ひなた
67〜76 歌野 ※ひなた
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常
- 470 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/27(火) 23:55:38.14 ID:ut5cqbaMO
- あ
- 471 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/28(水) 00:05:34.82 ID:i5rtdjXqo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
通信担当はひなた以外
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