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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/28(水) 00:14:05.17 ID:bEyjPV/GO
- 乙
諏訪を滅ぼして住人を助けようとした陽乃さんより諏訪の神様の方がもっとスパルタだったとは…
まあせっかく神様の力も使えるなら総攻撃のときにフル活用したいところだな
- 473 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/28(水) 06:10:03.13 ID:GB3MLDZGO
- 乙
これからの方針どうしようか
- 474 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/28(水) 22:42:22.46 ID:i5rtdjXqo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 475 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/28(水) 22:42:54.17 ID:i5rtdjXqo
- √ 2018年 8月15日目 昼:諏訪
どうやら向こう側の通信担当は、ひなたにはならなかったようだ。
若葉たちとやり取りするうえで、
長く一緒にいたひなたの方が都合は良いはずだが、
勇者を裏切ったとされている陽乃達を黙認したとされている若葉の親友となれば、
代理人に任命される可能性はまるでなかった
陽乃「……はぁ」
陽乃のことを警戒するなら
その協力者とも言える状態にある若葉を警戒するのは仕方がない
そして若葉を警戒すれば、
同じようにひなたを警戒しなければならない
万全を期すなら、それしかない
陽乃「こうなるわよね……」
大社は責められない
陽乃だって、疑わしいものは排する
陽乃が大社の立場なら、若葉もひなたも当てにしないし、
陽乃には千景をぶつけていく
千景なら、陽乃に関しては裏切る可能性が極めて低いからだ
- 476 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/28(水) 22:50:22.17 ID:frvrDnyxO
- きてたか
- 477 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/28(水) 23:39:03.85 ID:i5rtdjXqo
-
ただ、こうなってくると球子と杏が不安だ
今すぐ力尽きるわけではないけれど、力が弱っていく
どうにかしなければ総攻撃にも影響が出るかもしれない
けれど、
そのどうにかするための手段の一つが失われた
陽乃が諏訪の神々の力を押し付けられたことによって
そこにもまた、活路があればいいのだが。
陽乃「……」
今の陽乃は、どこまでが自分の限界かを測りかねている
全力で力を使えば、
球子と杏の弱体化した分を補って余りあるかもしれない
もちろん、そこまで行くと
さすがに無事では済まないかもしれないが
以前ほどではないはずだ
- 478 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/29(木) 00:26:35.60 ID:D0hY6CFyo
-
陽乃は、昨日も一人でいた部屋で横になりながらため息をつく
これからどうするかを考えなければならない
向こうに戻るかどうか、
諏訪を守るかどうか
守るとして、どのようにするか
九尾が言うように諏訪ならば安心して暮らせる
陽乃が下手なことをしなければ
歌野達に対して、新しい担当者が余計なことを言ったりしなければ
陽乃はバーテックスの襲撃を除いて問題なく生きていける
常に力を使っていかなければならないが
その分の回復は問題なくできる……らしいし
むしろ今は力が有り余っている状態でさえある。
陽乃「……ん」
球子に頼めば、軽く一発殴らせてくれるだろうか。
あるいは歌野に力を与えて、どれくらいの強化が可能かを確かめるのもありだ
もしくは……諏訪の街を散歩でもするか
1、歌野交流
2、球子交流
3、杏交流
4、水都交流
5、九尾交流
6、諏訪散歩
7、イベント判定
↓1
- 479 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 00:30:57.46 ID:zEdfstz2O
- 1
- 480 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/29(木) 00:35:10.67 ID:D0hY6CFyo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 481 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 00:38:04.68 ID:Nyxx7N/1O
- 乙
とりあえずうたのんとどうするか相談か
- 482 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 00:41:08.85 ID:zEdfstz2O
- 乙
杏とタマがだんだん弱体化していくとなると神様の力次第では結局ジリ貧もありそうだな
うたのんと色々相談しないと
- 483 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/29(木) 22:49:26.31 ID:D0hY6CFyo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 484 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/29(木) 22:52:42.46 ID:D0hY6CFyo
-
出来る限り他人との関わり合いは避けていきたい陽乃だが
うだうだしていても何も始まらないと、部屋を出る
共同の部屋を覗いてみるが、誰もいないようだ。
陽乃「白鳥さんと藤森さんは通信だとして……」
球子と杏はどこに行ったのか。
共同の部屋から出るときに杏と球子はどこかに行くとは言っていなかったので、
そう遠くに出かけたわけではないだろう。
陽乃「……畑?」
それとも、崩壊した御柱の確認に行っているのか
少なくとも襲撃が来たわけではないから心配じゃいらないはずだ
歌野「……久遠さん?」
水都「中に何か?」
陽乃「むしろ誰もいないわ」
陽乃はそう答えると、
小さく息を吐いて、歌野へと目を向ける
陽乃「白鳥さん、ちょっと時間貰えるかしら」
- 485 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/29(木) 23:21:13.80 ID:D0hY6CFyo
-
歌野「私……? みーちゃんじゃなくて?」
陽乃「二人が姉妹でもなければ、白鳥さんはあなただけだと思うけど」
歌野「そう、なんだけど」
歌野は少し戸惑った様子で陽乃を見ると、
水都に向き直って、笑みを浮かべる
歌野「せっかくのお誘いだから、ちょっと行ってくるわね」
水都「え、でもっ」
歌野「大丈夫よ、みーちゃん!」
にっこりと笑顔を見せる歌野
水都はそれでも不安そうな顔をしたが、陽乃を見て、頷く
水都「もう大丈夫だから、声を荒げちゃだめだよ。うたのん」
歌野「解ってるわ。大丈夫」
もう、特に責める理由はないわ。と、歌野は答える
昨日はいろいろあったが、
その話が終わってはないにしても、ひと段落ついている
無駄に事を荒立てることもないだろう
- 486 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/29(木) 23:50:19.35 ID:D0hY6CFyo
-
陽乃達は、陽乃が一人になりたいときに使っている部屋に二人で入る
部屋の中は障子の扉が閉められていることもあって、少し薄暗い
陽乃の後に続いた歌野が電気をつけると、一気に部屋が明るくなった
歌野「電気……つけない方がよかった?」
陽乃「別にいいけど」
興味なさげに答えて、陽乃はテーブルのそばに座布団を置いて座る
その対面に同じように座った歌野は
わずかな躊躇いをかみ殺して陽乃をまっすぐ見る
歌野「……さっき、みーちゃんじゃないかって思ったのは、昨日のことがあったからよ」
陽乃「昨日のこと?」
歌野はいままでに比べると、酷くよそよそしさを感じる
昨日はそうせざるを得ない理由が歌野にはあったはずだけれど、
それでも責める口調だったことに後ろめたいものがあるのかもしれない。
正直、陽乃はあの程度の敵意は何とも思わないのだが。
歌野「久遠さん、私のこと嫌いになったと思ったから」
陽乃「はぁ?」
歌野「だってもう、敵意しか感じなかったでしょう?」
1、殺意でもなければ、私は気にしないわよ
2、それで? 罪悪感でもあるわけ?
3、別にいいわよ。勇者としてすべきことをしただけでしょ
4、だから何だって言うのよ
5、そんなことより、今後の話をしましょう
↓2
- 487 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 23:51:57.23 ID:WKBKI6Js0
- 5
- 488 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/29(木) 23:52:30.26 ID:G+hRi12aO
- 3
- 489 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/30(金) 00:34:08.05 ID:XqQdrIggo
-
陽乃「別にいいわよ。勇者としてすべきことをしただけでしょ」
歌野「そうなんだけど――」
陽乃「それ以上は必要ないわ」
陽乃からしてみれば、その態度に理由があるだけましだった。
理不尽に責められたわけではない
歌野には守らなければならないものが多く、そうしなければならない理由があったのだ
結界の要である御柱
その崩壊の原因かもしれない―実際に陽乃が原因だが―陽乃を責めるのは何の問題もない
歌野の心情的には理由があってもという感じなのだろうか。
陽乃「すべきことをしたと思うなら、罪悪感なんて抱かない方がいいわ」
歌野「……久遠さんは、平気なの?」
陽乃「私に聞く?」
歌野「久遠さんは平気そうに見えて平気じゃない可能性もあるって、伊予島さんが言っていたわ」
- 490 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/30(金) 01:01:07.40 ID:XqQdrIggo
-
陽乃「……また勝手なこと言って」
誰も彼もが勝手なことを言う
良いことも悪いこともなんでもかんでも言いふらしている
歌野「それと、新しい通信担当から言われたことがあるの」
その話もしたかったのよ。と、歌野はつぶやく
その目は陽乃を見ていない
少なくとも良いことではなさそうだ
歌野「久遠さんがもしいるなら、貴女のことは信用しない方がいいって」
陽乃「あら……それいっていいの?」
歌野「もちろん口止めされたわ」
黙っておく理由もなかったけど。
歌野はそうこぼして、苦笑する
陽乃が思っているよりも、歌野からは気に入られているのかもしれない
水都も、杏も、球子も。
みんなそうだ
突き放したはずなのに、気付いたらこうなっていた
- 491 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/30(金) 01:01:33.84 ID:XqQdrIggo
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
- 492 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/30(金) 05:55:05.06 ID:B/royJnWO
- 乙
心にちょっとだけ余裕ができたのか陽乃さんが大分つんけんしなくなってきてて嬉しい
- 493 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/30(金) 08:28:06.42 ID:usLklTWoO
- 乙
- 494 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/04/30(金) 23:45:37.88 ID:XqQdrIggo
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば早い時間から
- 495 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/30(金) 23:55:22.24 ID:4NKEgLytO
- 乙ですー
- 496 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/01(土) 22:38:22.98 ID:mQG2AM7go
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 497 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/01(土) 22:39:54.76 ID:mQG2AM7go
-
陽乃「御柱を破壊したことは伝えたの?」
歌野「まさか。伝えられないわ……伝えたって、向こうがこっちに手出しできるとは思えないけど
それで、また久遠さんが悪く言われるのは明らかだったもの」
陽乃「私をかばうの?」
歌野「……」
歌野は眉をひそめて、肩をすくめて見せる。
そんなつもりはないと言うような反応に、陽乃は顔を顰めた。
今の歌野は陽乃に肩入れしているような状態だ。
若葉がどうなったかを知っていて、それでもその姿勢というのは喜べない。
歌野「そんな顔しないで。みーちゃんと話して決めたのよ。
諏訪の神様が信じた久遠さんを信じるか、その久遠さんを悪く言う大社の人を信じるか」
陽乃「なるほど……それも諏訪の神様の恩恵ってわけね」
陽乃がそう言うと、歌野は笑って。
歌野「みーちゃんの言った通りね」
陽乃「……何?」
歌野「ふふっ、少なくとも悪いことじゃないわ」
1、気に食わないわね
2、まぁいいわ。今後どうすべきかを話したいのよ
3、何なのよ。貴女達
4、結界壊すわよ?
↓2
- 498 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/01(土) 22:47:00.28 ID:9UcbeBWVO
- 2
- 499 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/01(土) 22:47:21.95 ID:ZR0xsDAs0
- 2
- 500 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/01(土) 23:18:32.19 ID:mQG2AM7go
-
陽乃「まぁいいわ。今後どうすべきかを話したいのよ」
歌野「久遠さんのことなんだから、久遠さんが自由に決めてもいいはずなのに」
陽乃「本気でそう言ってるわけじゃないわよね?」
歌野「……ええ。まぁ」
陽乃には諏訪の神々から託された力がある。
それを自由に扱っていいはずがない。
歌野もそれは解っているはずだ。けれど、なぜだかその当たり前を喜んでいるように見える
歌野「でも、もし大社が言うような人だったら私の自由よ。って、振り払うから。
そうしないって、久遠さんが示してくれたのは、嬉しいわ」
陽乃「やめて」
陽乃は不服そうに手で振り払うような仕草をして、ため息をつく。
歌野に喜ばれるようなことをしたつもりはない。
下手に混乱させたり、敵対したりしたくはないだけ。
せっかく、九尾でさえ認める安寧の地なのだから、
完全に切り捨てると決めるまでは、常識的な行動に落ち着くのは当然だ
- 501 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/01(土) 23:37:13.33 ID:mQG2AM7go
-
陽乃「曲がりなりにも、諏訪の地の神々から力を与えられたんだもの。それを持ったまま、祟られるようなことは控えたいわ」
歌野「なるほどね」
歌野は軽く頷いて、陽乃を見る。
その瞳には信頼が感じられた。
昨日はあんなやり取りをすることになったが、それはそれ、これはこれだ。
だが、陽乃としてはその視線は痛い。
歌野「久遠さんとしては、どうしていこうって考えているの?
諏訪を出たい? 諏訪に残りたい? 大きな話としてはそれになるんだけど……どう?」
陽乃「諏訪を出たいって言ったらどうするのよ。私は結界の要よ?
残りたいって人もいる中で、そんな選択したらどうなると思う?」
歌野「ん〜……」
歌野は少し考えて
歌野「大変ね。残りたい人の説得とかもしないといけないし……私たちだけ残って戦い続けるってわけにもいかないから」
陽乃「私についてくるってこと?」
歌野「そうなるわね。だって、私が戦えるのは、今や久遠さんのおかげなんでしょ? 離れるわけにはいかないわ」
- 502 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/01(土) 23:57:12.64 ID:mQG2AM7go
-
陽乃「……たしかに」
結界のことばかり考えていたが、
杏と球子の使える力が弱くなっていくのと同じように、
歌野だって陽乃と離れれば離れるほど、弱体化していくはずだ。
当初の予定では、陽乃達が向こうに戻るつもりだろうと、
諏訪に残るつもりがある人々がいるなら、歌野は最期まで残るつもりだった。
だが、戦うことさえできなくなるって言うなら、話は別。
少しでも長く守れるなら――どころか、
すぐにでも囲い潰されるとなっては、自分を希望にして残らせるなんてできない。
歌野「出て行くなら、私達も久遠さんについていくわ。出て行かないなら、今までとほとんど変わらないけどね
ただ、やっぱり……要である久遠さんには戦いに出てほしくないって思ってる」
陽乃「そればっかりね」
歌野「それはそうだわ。わからないなんて、言わないでしょ?」
歌野の笑みが混じった問いかけ。
解らないと言ったって、歌野は笑ってすましそうだ。
- 503 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/02(日) 00:13:01.45 ID:3KPQI2+oo
-
諏訪から出て行くか、諏訪に残るか。
大きな分岐点としては歌野が言った通りそれになる。
細かく考えると、陽乃乃生き方とかにもなっていくが、
歌野にはそれを話す必要はないだろう。
話したって、何が解決するわけでもない。
歌野なら……いいや、杏だろうが球子だろうが水都だろうが
それの相談をしたら、乗ってくれそうだけれど。
とにかく、残るか否かということだけは、早めに決めた方がいい
総攻撃だって、近いはず。
それ次第で、総攻撃に全力で挑むこともあるし
戻るために力を最低限温存する必要が出てきたりもする
陽乃「……決定権は、私にあるのね」
歌野「だからって、気を使わなくていいし、不本意に任されたことなんだから……久遠さんはこうした言って言えばいいと思うわ」
そうは言ったって、諏訪の神々から要求はそんな簡単な話ではなさそうなのだが。
1、諏訪に残る
2、諏訪を出る
3、貴女達としてはどうなの?
↓2
- 504 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/02(日) 00:15:50.54 ID:gODdXfe7O
- 3
- 505 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/02(日) 00:17:10.63 ID:K0LyvUpkO
- 2
- 506 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/02(日) 00:27:57.00 ID:3KPQI2+oo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
- 507 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/02(日) 00:30:51.19 ID:XbLNiCuPO
- 乙
出ることにしたのか
まあ若葉たちも心配だしな
- 508 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/02(日) 00:40:51.53 ID:q1YYaXNUO
- 乙
これもし諏訪の神様の力をもらってなかったらうたのん達助けられなかったのかも…
- 509 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/02(日) 21:36:47.01 ID:3KPQI2+oo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 510 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/02(日) 21:37:20.96 ID:3KPQI2+oo
-
陽乃「……諏訪を出る予定よ」
歌野「良いの? 向こうでは久遠さんの扱いが悪いでしょう?」
陽乃「そんなの、今に始まったことではないし」
陽乃の何とも思っていないような返し
歌野は寂しげにほほ笑むと、少し目線を下げる。
手持ち無沙汰な陽乃の手
歌野の手はやり場のない秘めた思いに躊躇っているのに。
陽乃「同情なんて、されても困るわ」
歌野「ん……」
陽乃は歌野を睨んで、くぎを刺す。
けれど、歌野は申し訳なさそうに首を振った。
歌野「同情なんて、私にはできないわ」
- 511 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/02(日) 21:38:20.95 ID:q1YYaXNUO
- よっしゃ
- 512 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/02(日) 23:36:47.56 ID:3KPQI2+oo
-
歌野「久遠さんの境遇は、聞いただけの私でも酷いって言いたくなるもの」
歌野は陽乃側の人間による話しか聞いていない。
もしかしたら多少は誇張だってされているかもしれない。
だが、大社からの陽乃は信用すべきではないという言葉を聞いてしまうと、
歌野はどうも、脚色があろうがなかろうが酷いと思う。
大社は明らかに敵視している。
陽乃の特異性を踏まえれば、致し方がないことだとも思わないでもないが。
それでも、友好的な方がいいのではないだろうか?
陽乃自身が友好的ではないという問題もあるけれど。
歌野「3年間……でしょう? 正直、私は辛かった」
歌野も、決して恵まれているとは言えない3年間だった
孤立無援、たった一人の勇者として守らなければならないという重圧
しかし……むしろ、それでも、みんなが強く反発し、
勇者がいなければ狙われないのではないかなんてことを言いだしたりする人は一人もいなかった
歌野「でも、私は恵まれてたと思った。だって、みんな、多かれ少なかれ協力してくれていたし、
そもそも、私の力を疑いながらも、敵視するようなことは誰もしなかったんだもの」
もし、守り抜いた挙句に、
お前が死んでくれればみんな助かるんだ。などと言われたら……なんて、考えるのも恐ろしかった。
- 513 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 00:11:31.74 ID:BT4AYxH9o
-
陽乃「同情しないでって、言ったはずだけど」
歌野「……ごめんなさい」
出来ないといいつつ、してしまう。
陽乃の味わった苦しみを共有することなんて出来ないから、してはいけないと思うのに。
うまく制御できないのは、まだ歌野が子供だからだろうか。
歌野「でも、だから、不思議だわ」
そんな場所に戻りたいだなんて、
歌野は自分ならできないと、首を振る。
水都がいるなら、それもあり得るかもしれないが。
歌野「もしかして、向こうに誰かいるの? 大切な人とか」
陽乃「聞いてどうするのよ。それで、何かできるわけ?」
歌野「ここからでは、どうしようもないけれど……」
歌野は気まずそうに、目を伏せる
1、母がいるだけよ
2、そうね……恋人がいるわ
3、何もできないなら聞かないで
4、なんなの? そんなに、戻ることが不満なの?
↓2
- 514 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 00:16:56.40 ID:HTYTsc8sO
- 1
- 515 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 00:17:16.84 ID:I/XOEX5Q0
- 4
- 516 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 00:37:11.52 ID:BT4AYxH9o
-
↓1コンマ判定 一桁
1,5,9 歌野「不満じゃないけど……」
- 517 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 00:39:38.93 ID:HTYTsc8sO
- あ
- 518 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 00:52:18.74 ID:BT4AYxH9o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 519 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 00:57:33.17 ID:HTYTsc8sO
- 乙
お互いそれぞれの事情で孤立無援だったけど陽乃さんとうたのんの三年間の差がエグいなぁ…
- 520 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 07:31:14.57 ID:sHIDevd/O
- 乙
お母さんの他にも心の支えになる人が欲しいな
- 521 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 18:26:05.36 ID:BT4AYxH9o
- では、少しずつ
- 522 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 18:27:57.59 ID:KT5dJVd5O
- おk
- 523 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 18:33:40.58 ID:BT4AYxH9o
-
陽乃「なんなの? そんなに、戻ることが不満なの?」
歌野「そういうわけじゃないの……」
陽乃「でも、貴女達にとってはここが故郷でしょう?」
生まれ育った場所
3年間、死に物狂いで守り抜いた故郷
そこを守る要に成り代わった陽乃が離れることを不満に思うのが普通だ。
陽乃だってそう考えていたし、
歌野達がそう考えていて、不満に思われ、腹立たしさを見せられても仕方がないと思っている。
むしろ、そうされないと、気味が悪い
陽乃「本来なら、私が離れようが離れまいがどうでもよかったじゃない
なのに、こんな……余計なことされて私が結界の要になりました。でも離れます。って言われたら誰だって待ったをかけるわ」
歌野「……それは」
それは、そうだろう。
歌野は反論できなくて歯を食いしばる。
歌野も水都も、そんなことはこれっぽっちも思ってはいない
だが、
諏訪の人々を説得するための手札の一つとして、陽乃が要であり、
彼女が離れれば、すぐにでもここはバーテックスに蹂躙されるということを離したとき、
はたして、人々がそれを受け入れてくれるだろうか?
今までは何も問題なかったのに、お前が来なければ。と、ならないだろうか。
- 524 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 19:06:38.48 ID:BT4AYxH9o
-
陽乃「曖昧なのが一番嫌なのよ。不満なら不満だって言えばいいじゃない」
察してくれ。みたいな態度は、嫌いだ。
察することもできる。けれど、絶対じゃない
そもそも、察してあげる気なんてない。
歌野「落ち着いて、ね?」
陽乃「……私は落ち着いてるわよ」
歌野「……」
怒っている自覚がないのか
本当に、怒っているわけではないのか
もし後者なら、陽乃はかなり誤解されやすいのではと、歌野は顔を顰める。
歌野「はっきり言うわ。私とみーちゃんには、まったく不満はない」
陽乃「なら、私に大切な人がどうとか聞く必要なんてないと思わない?」
歌野「それは……」
歌野は少し躊躇って
歌野「そう、ね。ごめんなさい」
言葉を飲み込む。
それでも歌野は少し、気まずそうで、
陽乃はまた少し、苛立ってしまう。
- 525 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 19:33:57.23 ID:BT4AYxH9o
-
歌野「……久遠さんって、人が嫌いなの?」
陽乃「私のことを少しでも知ってるなら、そんなこと聞くまでもないってわかると思うけど」
歌野「それでも、聞きたいわ」
陽乃「……」
陽乃の睨むような視線にも、歌野は耐える。
冗談とか
からかうために聞いているわけではないというのは、歌野の目から伝わってくる
陽乃は面倒くさそうに、平たいテーブルに突っ伏すように顔を伏せる
お茶菓子の一つでも置いてありそうなのに、今はお茶すらない。
人が嫌いか、嫌いじゃないか。
それがそんなに重要なことかと、陽乃は目を細める
陽乃「嫌いって言ったら、態度を改めてくれるのかしら」
歌野「そうね。改める必要は、あると思うわ」
陽乃「含みのある答えね……」
1、嫌いよ
2、好きではないわ
3、答えない
↓2
- 526 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 19:37:04.68 ID:KT5dJVd5O
- 3
- 527 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 19:41:46.62 ID:I/XOEX5Q0
- 3
- 528 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 20:25:17.57 ID:BT4AYxH9o
-
歌野「私にはまだ、話せない?」
陽乃が答えずに黙っていると、歌野は諦めたのか、残念そうにつぶやく。
独り言ではないだろう。
陽乃「貴女だろうと、藤森さんだろうと話す気はないわ」
歌野「……嫌いだから?」
陽乃「探ろうとしたって、無駄だわ」
陽乃の答えは、素っ気ない。
態度だけ見ていれば、
返ってくる言葉だけ聞いていれば、
陽乃が人を好きなわけがないと思わざるを得ない。
けれど、嫌いなら。
神社に来た時にちゃんと教えてくれたりしたのは何だったのか。
気まぐれと言われればそれまでだ。
でも、そうではないと、歌野は思いたかった。
- 529 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 20:42:30.79 ID:BT4AYxH9o
-
↓1コンマ判定 一桁
5,8,0 歌野「なら、私は久遠さんを信じてるわ」
ぞろ目 特殊
他、終了
- 530 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 20:43:41.97 ID:U35FdsVNO
- あ
- 531 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 21:39:09.51 ID:BT4AYxH9o
-
陽乃「なに?」
歌野「ううん、なんでもないわ」
歌野は首を振って、笑う。
歌野が何か言いたそうなことくらい、陽乃でも察しが付く。
けれど、だからどうしたのか。
陽乃は、それを追求する気はなくて。
陽乃「そう。ならいいわ」
歌野を視界から外して、陽乃はゆっくり目を閉じる
陽乃「私の予定は話した通り諏訪を出て行く。お荷物を持って帰るかどうかは任せるわ」
歌野「お荷物……?」
何のことかと逡巡した歌野だが、すぐに理解して頷く
言い方は厳しいというか、間違っている。
だが、持ってくるなとは言わないのが、優しさだろう。
歌野「ええ、話はしてみるわ……残ったって、すぐに死んでしまうことになるって考えれば、もう少し、連れ帰れると思うから」
- 532 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 21:57:58.93 ID:BT4AYxH9o
- √ 2018年 8月15日目 夕:諏訪
01〜10 杏
11〜20 球子
31〜40 水都
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常
- 533 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 21:59:25.41 ID:3wzP6Uh50
- あ
- 534 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 22:26:10.91 ID:BT4AYxH9o
- √ 2018年 8月15日目 夕:諏訪
陽乃「……」
歌野が、戻ると言った後も陽乃は独りになるために、部屋に残っていた。
力は有り余っていて、調子も十分
けれど、その力をふるうには、相手がいなければ危険極まりない
なにより、勝手に力を使って、
杏たちにいろいろと言われるのも面倒だった。
諏訪の神々の恩恵で調子はいいし、今後も問題ないと言ったって
杏たちが納得してくれるとは思えない。
陽乃は、明かりを失っていく窓の外を眺めながら、ため息をつく。
体調がいいのは、嬉しい
けれど、だからってこんな厄介なことになるのは、ごめんだ
選べたのなら、間違いなく拒否していただろう。
1、交流 ※再安価
2、歌野について
3、歌野に力を与えてみる
4、イベント判定
↓2
- 535 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 22:26:27.22 ID:42CozPMhO
- 3
- 536 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 22:27:23.48 ID:h0zge7Y2O
- 2
- 537 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 22:50:35.26 ID:BT4AYxH9o
-
歌野は大切な人はいるのか。なんて無駄なことも聞いてきたし、
何かを言いかけた。
不満があるのかと思えば、そうでもなかった。
なら、何を考えていたのだろう。
不満はないとあそこまで力強く断言したなら、
嘘ではないと仮定しても問題はないはずだ。
陽乃「……」
歌野も水都のような人ならどうだろうか。
ここにいたのが水都だったなら、
あそこで言い躊躇うことなんてなかったかもしれないが、
考えることは似ているような気がする。
陽乃「……藤森さん。ね」
昨日、突き放したにもかかわらず、陽乃をかばったのが水都だった
しかも、歌野に反してまでだ。
巫女として、ちゃんとした理由あってのことだから
本人にそんなつもりはないかもしれないが。
陽乃「……ん」
その水都が考えること――
1、陽乃が途中で倒れると思ってる
2、陽乃にはここにいてほしいと思っている
3、諏訪を失いたくない
4、陽乃を信頼していない
↓2
- 538 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 22:56:55.78 ID:h0zge7Y2O
- 1
- 539 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/03(月) 22:57:08.77 ID:I/XOEX5Q0
- 1
- 540 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/03(月) 23:33:56.65 ID:BT4AYxH9o
-
陽乃「……どうせ、私の心配よね」
悪化したことも含めて、
あんなにも苦しむ姿を見られてしまった。
杏と球子もそうだろうし、
歌野と水都だって、心配になったことだろう。
何せ、付きっ切りを申し出るほどだったのだから。
歌野が水都ほどではないにしても、
気にかけているとすれば……そう、
陽乃の体調面を考えての発言だったと考えられる。
大切な人がいないのなら、
そこまで無理しなくてもいいのではないか。と。
陽乃「余計なお世話よ……」
- 541 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/04(火) 00:01:27.91 ID:sqTsQTioo
-
陽乃にとって、向こうに残っている人の中で大切な人は母親くらいだ
少し前までは、
暫く音信不通になってしまった友人がいる……なんてバカみたいなことも考えてはいたけれど、
今はもう、それさえも考えてはいない。
母は、陽乃がどんな目に合っているかなんてほとんど知らないだろう。
陽乃の抑止力として大社預かりになっているが、
会うことだって、全然できていない。
陽乃「そういえば……」
同じく、大社預かりになったひなたはどうだろうか。
個別に管理していたら駄目だが、
そうではないなら、接点は今頃増えているかもしれない。
陽乃「……」
自分のことで、
何か、余計に居心地が悪くなっていないか。
陽乃はそれを不安に思って、顔を伏せた
- 542 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/04(火) 00:06:36.21 ID:sqTsQTioo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
- 543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 00:20:12.33 ID:beK2U7QXO
- 乙
こうなってくると四国に戻った後にお母さんと再会しないとメンタルがどのみち持たなさそうだな…
- 544 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 00:27:13.46 ID:VqDAZE9aO
- 乙
杏とみーちゃんが支えになってくれ……
- 545 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/04(火) 22:09:57.25 ID:sqTsQTioo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 546 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/04(火) 22:11:16.65 ID:sqTsQTioo
-
杏たちといった諸問題はあるが、
それ以外の人々による敵意が感じられない分、
環境的……あるいは、人間関係的に諏訪は陽乃にとって居心地のいい場所になりえるだろう。
だが、向こうには母がいるのだ。
面倒な柵しかない向こうに戻る理由はそれだけで、
けれど、それだけで十分だった。
陽乃にとっては、唯一の人だから。
陽乃「……っ」
母を守れていなかったら、陽乃は3年前のあの時すでに、向こうを出ていたかもしれない。
常日頃からそばにいて貰えて、諏訪に連れてこられていたら……きっと。
もう、向こうには戻らなくていいのでは? なんて、思わないこともない。
- 547 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/04(火) 22:34:53.97 ID:sqTsQTioo
-
向こうで、陽乃は化け物と呼ばれることもある。
実際にそう呼ばれてもおかしくない力を持っているし、
そんな存在がそばに控えている。
けれど、だからと言って陽乃が辛くないわけではない。
無関心そうに見えたって、
何でもないようなそぶりを見せていたって、
人がそういうものだって、陽乃が諦めていたって
ずっとそればかりで陽乃が傷つかないわけではない
もちろん、そんなところなんて表に出す気はないし、
誰かにそれを気遣って欲しいと思わない。
その誰かがまた、同じようにならないとは限らないからだ
陽乃は憂鬱そうに、ため息をつく。
部屋が静かだと、別室にいる球子たちの声が聞こえてくる。
通信担当が結局、ひなたではないこと
その新任から陽乃のことについて大まかに話を聞いたことを歌野が話しているようだ。
1、少し外出する
2、みんなのところに行く
3、九尾を呼ぶ
4、イベント判定
↓2
- 548 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 22:36:54.77 ID:M5BuWlZ40
- 1
- 549 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 22:37:07.25 ID:kZ0Rz3PnO
- 2
- 550 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/04(火) 23:18:06.31 ID:sqTsQTioo
-
陽乃「……」
歌野の話に、球子と杏が少し声を荒げている。
陽乃達がいないと判断しているはずなのに、
陽乃のことは信用するなというのは、意味が解らない。と。
冷静に考えるまでもなく、それはおかしい。
陽乃は指摘しなかったが。
『主様の前でだけ。というわけではないのじゃろう』
陽乃「なに……? 肩を持つの?」
『妾はそんな愚かなことはせぬ。が、主様がそれを望むならしてやらぬこともないぞ?』
伸びて広がる狐の形をしている自分の影を睨んだ陽乃は、
頭の中に響くような声に眉を顰めると、ふっと息を吐いて立ち上がる
『主様?』
陽乃「行くわ」
『行ってどうなるものでもあるまい』
陽乃「話すべきこともあるから」
これからの予定とか。
歌野に話して水都達には話さない理由もない。
意図的に結界を壊さなくてよくなった分、比較的穏便に済みそうなのはありがたい話だ。
無論、迷惑なことに変わりはないが。
- 551 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/04(火) 23:54:05.19 ID:sqTsQTioo
-
みんなで寝るときにも使っている大広間
その近くまでくると、声がよりはっきりと聞こえる。
歌野「だから、私も正直……大社には不信感があるわ」
杏「わたし達がいることを信じてくれないのに、久遠さんを疑えって言うのは明らかにおかしいですから」
球子「なんでそんな変なことになったんだ?」
水都「……そう言えって言われたから。じゃないかな?」
引っかかった点について、話し合っているようだ。
水都は自分も、言えと言われてたら言っちゃうかも。と、
新任の通信担当の発言は仕方がないと思っているらしい。
杏は「もしかしたら」と、神妙な声で言う。
杏「新しい人は、私達がここにいるかもしれないって話を聞いていないのかも……」
球子「若葉がわざと引き継がなかったってことか?」
歌野「そんなことするかしら?」
杏「ひなたさんに、久遠さん。意趣返しを目論んでも不思議じゃないです」
このままだと、諏訪の二人が大社への不信感を高めるだけだ。
陽乃としては、好都合……だろうか?
1、入る
2、盗み聞きしておく
↓2
- 552 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 23:58:17.68 ID:M5BuWlZ40
- 1
- 553 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 23:58:38.86 ID:mB1mJQDW0
- 1
- 554 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/04(火) 23:59:34.52 ID:qYRd3/aBO
- 1
- 555 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/05(水) 00:26:29.25 ID:CvkAQbIfo
-
このまま、陽乃がいない時の話を聞いておくのも悪くはないが、
ここに来たのは話をするためだ。
いつ、総攻撃があるともわからないのだから、
話すべきことはさっさと話しておいた方がいい。
陽乃「大社に聞かれたら、面倒なことになるわよ」
水都「久遠さん……」
襖をあけて、言葉を投げ入れる。
みんなの視線が陽乃へと向かう中で、水都だけは少し気まずそうな顔をする。
球子「そう言ったって、いないじゃんか」
陽乃「それに慣れたら、向こうでぼろを出すじゃない」
杏「そう、ですけど……でも、まったく話題に出さないのは無理ですよ」
歌野「それを言いに来たの?」
陽乃「そんなわけないでしょ」
歌野の、本気の言葉に陽乃はややあきれ気味に首を振る。
歌野のそれは冗談や皮肉じゃないから、困る
- 556 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/05(水) 00:27:10.32 ID:CvkAQbIfo
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば早い時間から
- 557 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/05(水) 00:36:35.53 ID:MCQpvpoQO
- 乙
とりあえず総攻撃に備えて一緒に作戦会議だな
- 558 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/05(水) 00:38:01.03 ID:xGY35lREO
- 乙
四国に帰るプランも考えなきゃ
- 559 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/05(水) 21:07:29.17 ID:CvkAQbIfo
-
杏「久遠さん、一つ確認したいことがあるんですけど……」
陽乃「なに?」
杏「通信のことです」
杏はわずかに渋い顔をして、切り出す。
結局、通信担当はひなたにはならなかった。
陽乃が行おうとしていた通信の修復も、それで頓挫してしまったのではないかと、気にしているようだ。
杏「久遠さんが、諏訪の神様に見初められたことで、ひなたさんがいなくてもどうにかなるとか……」
陽乃「なるほど」
陽乃は頷いて、少し考える。
確かに、それはどうなのだろうか。
もともとは、陽乃は自分の力のみでどうにかしようとしていた。
だが、今は杏の言ったように諏訪の神々に与えられた力がある。
それがあれば、通信もどうにかできる可能性はある……だろうか?
陽乃「それは、考えてなかったわね」
球子「それもそうだし、これからどうするかも考えなきゃだろ」
歌野「……」
水都「うたのん?」
- 560 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/05(水) 22:00:46.82 ID:CvkAQbIfo
-
歌野の表情にそこまで変化はなかったように見えたが、
水都は黙り込んだ歌野から何かを察したのか、不安そうに呼ぶ。
陽乃が、ついさっき歌野だけを呼び出したことを知っているからだろうか。
杏「少なくとも、総攻撃をしのいでからでないと出るのは難しいと思いますが……」
総攻撃があった後でも、厳しいことは厳しい。
みんな消耗しているだろうし、最悪療養が必要な状態な子だってその時はいるかもしれない。
だが、総攻撃を行う準備がされている外
そこに、一般人を連れて出て行くなんて餌を投げ込むようなものでしかない。
陽乃「そうね……」
心配なのは、総攻撃を凌いだあとの、杏と球子だ
力を使い果たしていたら、帰り道で戦えない。
歌野は、どうにかなるかもしれないが。
1、少なくとも、帰る予定ではあるわ
2、白鳥さんは、帰ることに不満があるらしいのだけど、どう思う?
3、貴女達の力が持つかが問題だわ
4、今のうちに、私が単身で突っ込んでみる?
↓2
- 561 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/05(水) 22:03:00.66 ID:gaTqBjCqO
- 4
- 562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/05(水) 22:03:12.63 ID:9U2YXzjQ0
- 4
- 563 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/05(水) 22:32:49.23 ID:CvkAQbIfo
-
陽乃「今のうちに、私が単身で突っ込んでみる?」
球子「はぁ!?」
杏「なに言ってるんですか!」
水都「駄目に決まってるじゃないですか!」
歌野「久遠さんは要なのよ!?」
思ってもいなかったのだろう。
みんな驚いて、そして、叫ぶように拒絶する
結界の要であることは、もう、自覚しているはず。
それなのに、バーテックスの大群の中に単身で突っ込むなんてあまりにも酷い話だ。
冗談でも笑える話じゃない。
陽乃「えっと――」
杏「久遠さんは、結界の要なんですよ? それでなくても、切り札として扱うべきなのに」
歌野「わざと、言ってるの?」
陽乃「その方が手っ取り早いでしょう?」
水都「本気で言ってますか?」
陽乃「なによ」
みんな、不満があるようだ。
- 564 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/05(水) 22:39:26.47 ID:CvkAQbIfo
-
↓1コンマ判定 一桁
1,3,5,7 水都「冗談でもやめてください」
ぞろ目 特殊
- 565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/05(水) 22:39:51.35 ID:xGY35lREO
- あ
- 566 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/05(水) 22:43:29.48 ID:TsW+Iyk/O
- みーちゃんどんだけコンマの神様に愛されてるのか…
- 567 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/05(水) 23:27:20.45 ID:CvkAQbIfo
-
水都「冗談でもやめてください」
陽乃「藤森さ――」
水都「久遠さんはもう、わたし達にとってはいなくてはならない人なんです」
水都が、詰め寄ってくる。
つい数分前、気まずさを携えていた表情には怒りがあって
それは間違いなく陽乃に向けられている。
水都「みんな言っている通り、結界の要ですし……」
水都は、そこで言葉を切る。
何か言いたげで、でも、言ってはいけないというような表情を浮かべて首を横に振った。
水都「体を大事にして下さい。四国から諏訪まで……その移動であんなことにまでなったんですから」
陽乃「それはそうだけど」
今はもう、諏訪の神々の恩恵で簡単にそんなことになったりしない。
だが、なんとなく、水都はそれを言いたかったわけではないように見える。
陽乃に強く突き放されたから、飲み込んだのかもしれない。
- 568 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/06(木) 00:17:11.61 ID:68a4IImxo
-
陽乃「私の体のことなら、心配はいらないわよ? 諏訪の神々の恩恵で影響が出にくくなったわ」
球子「だからって無理したら変わんないんじゃないか?」
少なからず影響が出てしまっていたが、
今までは、力の副作用が心配で控えめだった。
その心配がいらなくなったからって、
無理をしたら結局、
影響が出てしまうようになってしまうのではないかと、球子は顔を顰める
杏「そうですよ」
陽乃「そうならないように、ある程度抑えるわよ」
歌野「そもそも、どうして久遠さんが無理をする必要があるの?」
陽乃「無理ってほどじゃ――」
水都「無理ですよ」
歌野「無茶でもあるわ」
杏「さすがに、無謀でもあるかもしれません」
- 569 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/06(木) 00:17:37.42 ID:68a4IImxo
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 570 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/06(木) 00:23:10.99 ID:DT4P6R3UO
- 乙
みーちゃんしか勝たん
- 571 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/06(木) 00:28:05.56 ID:NP+SeWy2O
- 乙
さすがにこれはみんな心配してくれてるな
反動ダメージをどこまで軽減できるかは気になるけど
- 572 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 21:14:13.49 ID:A17Jm63to
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 573 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 21:15:57.61 ID:A17Jm63to
-
進化体が出てきた場合は普通のバーテックスと戦うより力を必要とするかもしれない。
だが、無理ではないし無謀ではないと陽乃は思う。
今の体の状態なら、例の……伊邪那美命だって、呼び出しても耐えられそうな感じがする。
もちろん、無駄に使う気はないが。
水都「絶対にダメです」
陽乃「それが一番被害が少なく済むのだけど……」
杏「それは確かにそうかもしれません。けど、それはダメです。絶対に」
水都も杏も、猛反対のようだ
球子と歌野も同意見のようで、頷いている。
歌野「諏訪の神様の力があるから、一番、力があるのは間違いなく久遠さん
でも、だからって全部を久遠さんに押し付けるなんてしたくないわ」
歌野は陽乃をまっすぐ見つめている。
牽制するかのような鋭い目つき。
それは絶対に許さないと、言っているようだ。
陽乃「貴女達に被害が出ると、私がまた面倒なことになるのよ」
球子「あー……」
球子が察して声を漏らす。
球子「四国戻ったときに、大変なことになるな……」
- 574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 21:49:11.38 ID:A17Jm63to
-
戻れたらの話ではあるけれど、
どうにか戻れても、勇者側に被害があったら、糾弾されるのは陽乃だ。
ただでさえ、今の陽乃は立場が悪い。
今も杏と球子が陽乃に害されているのではないかなんてうわさが流れているのだから
実際に被害があったら終わりだ
球子「けど……だめだろ」
陽乃「けがの一つもしない自信があるの?」
球子「……ないな」
あると断じたい
だが、数回戦って、思った。
守る力なんて大したものじゃない。
そんな自負なんて楯とともに投げてしまった方がいいと。
球子「でも、それは駄目だ」
陽乃「……」
球子「そんな顔したって、駄目なものは駄目だ」
- 575 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 22:57:16.09 ID:A17Jm63to
-
陽乃「そんな顔……?」
陽乃は静かに、噛みしめるようにつぶやく。
陽乃「私がどんな顔してるって?」
球子「めちゃくちゃ不満そうな顔してるぞ」
杏「でも、私達も嫌ですから」
球子は困り果てた表情
杏と歌野は不安そうな表情
水都に至っては、まだ、ためらいを感じる表情を浮かべている。
陽乃はそれらを一瞥すると、息を吐く
陽乃「私一人で、可能限りの力を使って戦う方が、合理的じゃない?」
水都「合理的だから、何なんですか?」
歌野「みーちゃんっ」
水都「合理的だから、久遠さんが全部、引き受けるんですか?」
1、そうよ
2、何で怒ってるのよ
3、必要のない犠牲なんて、馬鹿みたいじゃない
4、だったら何なの?
5、何も言わない
↓2
- 576 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/07(金) 22:58:28.74 ID:0IVtyv/WO
- 3
- 577 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/07(金) 22:59:05.99 ID:bQd0d42/0
- 1
- 578 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 00:22:45.40 ID:CgVllCxNo
-
陽乃「そうよ」
球子「そうって……」
球子は不快そうに呟く。
表情も、気持ちがあらわになって渋い感じだ。
空気がひんやりとして……部屋が静まり返る。
唖然とする水都は見開いた瞳の中に、陽乃を映して
そうして、くっっと、唇をかむ。
杏「確かに、久遠さんがわたし達を考えずに力を使うのが一番合理的かもしれません……」
陽乃の力はそれだけ特殊で、強い。
余計なことに気を取られず、
ただその力をふるうことができるのが、一番なのは間違いなかった。
球子「あんずっ」
杏「解るけど、でも、その通りだと思う」
球子の声に、杏は悲しそうに首を振った
- 579 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 00:29:33.32 ID:CgVllCxNo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 580 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 00:31:14.58 ID:vy0CCAjCO
- 乙
杏ちゃんなんとかしてくれ
- 581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 00:35:43.62 ID:N07nBIYYO
- 乙
もし陽乃さんが一人で大暴れしたら後で諏訪の神様の力がどれだけフォローしてくれるかが鍵になりそうだな…
- 582 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 22:43:38.08 ID:CgVllCxNo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 583 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 22:44:50.64 ID:CgVllCxNo
-
杏「久遠さんの力は、私たちも巻き込んじゃう可能性がある……たまっち先輩も知ってるよね?」
球子「そりゃ……だけど」
球子たちは陽乃自身から、陽乃の力による影響は聞いている。
本気を出せるが、出せなかった今までと違って、
以前の本気くらいなら、簡単に出せてしまいそうな状態であることに偽りがなければ、
戦闘中に、周囲の勇者にまで影響が出る可能性はゼロとは言えない。
それを気にすることなく力を使い、バーテックスと戦えるのなら、
周りが手を貸さなくても、総攻撃をしのげるかもしれない。
その結果、陽乃だけが著しく消耗することになるかもしれないが、
被害は……きっと、それだけで収まるはずだ。
歌野「久遠さんって、そんなに危険なの?」
球子「ヤバいな。本気を出されたら、バーテックスの総攻撃なんて比じゃないくらいに被害が出るだろ」
球子はわざと誇張しているかのような表情で言うが、
陽乃は否定できなかった。
陽乃「前はともかく、今の私なら結界については問題はないはずよ」
歌野「前のまま総攻撃で力使ってたら、久遠さんの力で結界が壊れる可能性があった……?」
陽乃「そうね。否定はできないわ」
力加減にもよるが、最悪の場合には壊れていた可能性がある
- 584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 22:45:56.47 ID:Q68hhj2YO
- よしきた
- 585 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 23:00:41.14 ID:CgVllCxNo
-
歌野「神様が力を与えたのはそれも理由の一つだったりするのかしら」
陽乃「そんな優しさなんて、ないと思うけど」
有無を言わせずに無理矢理に与えてきたものだし、
少なくとも九尾はそんなこと言っていなかった。
もちろん、そんな理由があったとして、九尾が言うとも限らないけれど。
水都「じゃぁ、伊予島さんは久遠さんに戦ってもらうつもりですか?」
杏「あくまで、合理的ってことの否定はできないなってだけ……です」
水都の視線に、杏は肩をすくめて答える。
杏「私も、久遠さんに一人で戦うなんてして欲しくないです」
球子「もちろん、タマもだぞ」
歌野「私もよ」
陽乃「……なによ」
全員の目が向けられる。
みんな、陽乃がたった一人で戦うことなんて受け入れるつもりはないという感じだ。
- 586 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 23:01:50.42 ID:CgVllCxNo
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3 歌野
5,8 水都
ぞろ目 特殊
- 587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 23:03:14.19 ID:miLYvMfIO
- あ
- 588 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 23:21:26.08 ID:CgVllCxNo
-
球子「というわけで、合理的とかそういうやつはなしだ」
陽乃「死にたがりなのね」
球子「……言われたくないな」
陽乃には言われたくないと、眉を顰める球子。
杏たちも同意だと頷いて
水都「正直、一番死にたがってるのは久遠さんだと思います」
陽乃「はぁ?」
歌野「だって、あんな代償のある力を平気で使うし……バーテックスと単身で戦うのが合理的だって言うし」
球子「な?」
同意を求めてくる球子に、陽乃は不快な表情を浮かべる。
陽乃は死にたいわけじゃない。
むしろ、生きていくために必死だ
その過程で、力が必要なら使うというだけのこと。
単身で戦うことについてだって、
珠子達を生存させるのが今後につながるのは間違いないから、
犠牲が出ない方を選びたいというだけである。
1、分かったわ
2、どうしてもというなら、私と戦ってでも止めてみる?
3、言っておくけれど、私は誰も守る気なんてないからね
4、何も言わない
↓2
- 589 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 23:24:51.82 ID:9jFZBGuNO
- 1
- 590 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 23:25:10.68 ID:sB0ANJcy0
- 2
- 591 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 00:04:07.54 ID:Zm1Daanno
-
陽乃「どうしてもというなら、私と戦ってでも止めてみる?」
歌野「戦ってでもって……本気?」
呆れてるかのような表情を浮かべる歌野の傍ら、
また変なこと言ってるよ。なんて呟く珠子に、歌野は唖然と振り返って
歌野「また?」
杏「……本末転倒では?」
陽乃「私なら、殺さないようにすることはできるわ」
バーテックスが相手なら、殺されることがある。
腕や足を食いちぎられることだってある。
けれど、陽乃ならそこまでいかないようにできる。
陽乃「多少、入院してもらうようになるかもしれないけど」
珠子とやったように
一撃決着なんて形式にしてしまえば、より安全に終わらせられると思うが。
- 592 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 00:10:05.07 ID:Zm1Daanno
-
↓1コンマ判定 一桁
2,5,9 水都「……ふざけないでください」
0 歌野「さすがに、ありえないわ」
ぞろ目 特殊
- 593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 00:11:21.99 ID:yb6RwIag0
- あ
- 594 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 00:16:28.81 ID:Zm1Daanno
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
- 595 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 00:17:53.80 ID:yb6RwIag0
- 乙
- 596 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 00:18:02.83 ID:VXtW94XzO
- 乙
サンキューコンマ
- 597 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/05/09(日) 03:01:52.67 ID:rWVvZqyf0
- VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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- 598 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 05:28:18.03 ID:GUtuS8XgO
- 乙
ここでまさかのゾロ目…
一体何が起こるのだろうか
- 599 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 19:40:21.81 ID:Zm1Daanno
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 600 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 19:41:16.90 ID:Zm1Daanno
-
水都「いい加減にしてください!」
部屋に怒号が響く。
声を張ることに慣れていない、無理をしている大声。
迫力も足りなくて、まったく怖いだなんて思えない。
けれど、その場にいたみんなが言葉を失って、静まり返る。
水都「……分かってよ……」
歌野「みーちゃん?」
水都「分かってよッ!」
陽乃「……っ」
ぐっと、水都が陽乃へと詰め寄る。
水都「あんなお願いなんて嫌です、あんなのお願いなんかじゃないです……」
陽乃は昨日、放っておいてと水都に言った。
だからだろう、水都は怒っていてもばつが悪そうで。
今までずっと水都と一緒にいた歌野は今まで見たこともない水都の様子に呆然としていて、
杏と球子も、口をはさむべきではないと思っているのか、黙り込んでしまっている。
水都「放っておくなんて、できるわけがないじゃないですか!」
陽乃「私――」
水都「久遠さんなら傷ついてもいいなんて思ってる人は、ここにはいないんだよっ!」
- 601 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 20:08:02.11 ID:Zm1Daanno
-
水都「久遠さんが向こうでどんな扱いされてるとか、どんなこと言われてるとか、何があったのかとか、知らないよ……」
少しは聞いている。
けれど、知らない。
はっきり言ってしまえば、知ったことではない。
陽乃は人付き合いを好まない人で、
けれど、内容によっては親切に答えてくれるくらいには優しい人
自分の力に副作用があるにもかかわらず、
四国から諏訪まで力を使い続けてしまうような人
そして――諏訪の神々が力を授けてくれるような人
水都「私達は、久遠さんを傷つけたいなんて思わないし、傷ついていいとも思わないし、いなくなってもいいとも思いません」
陽乃「……そんなこと言われたって」
杏「久遠さん、ここは大丈夫です。ここなら、大丈夫なんですよ」
陽乃の事情を、きっと、この中では一番よく知っている杏
その杏が、大丈夫だと言う。
あの九尾でさえ、こ個なら問題ないというようなことを言っていた。
だから、本当に、諏訪は大丈夫なのだろう。
陽乃にとって、温かい場所なのだろう。
歌野「ここなら、そんな気を張らなくていいの。だから、結界さえ保つことができるなら、私はここにいて欲しいって思ってるわ」
- 602 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 20:25:14.08 ID:Zm1Daanno
-
陽乃「貴女が言いたかったのは、それなのね」
昼間、歌野が言おうとして言わなかったこと。
陽乃は体調を気にしているのかと思っていたが、
そんなことではなかったらしい。
歌野「久遠さんは出て行くって言うし……正直、あまり楽しめるような環境ではないから言うのはどうかと思ってたけど」
歌野はそう言って、陽乃ではなく水都を一瞥する。
困ったような、でも、喜んでいるかのような
ちょっぴり複雑な表情
歌野「せっかくだから、検討してくれないかしら?」
珠子「まぁ、四国には若葉たちを残してきてるからな……」
ただでさえ少ない勇者を分断した状態。
人数的には、諏訪の方が多いくらいだ
水都「残る気は、ないんですか?」
1、ないわ
2、あると思ってるの?
3、何も言わない
↓2
- 603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 20:31:59.20 ID:gSMbYstk0
- 2
- 604 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 20:33:04.70 ID:yb6RwIag0
- 3
- 605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 20:33:39.02 ID:+B+CzsihO
- 3
- 606 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 20:58:07.11 ID:Zm1Daanno
-
珠子「おっ?」
陽乃が何も言わないでいると、珠子がにやりと笑う。
言うまでもなく不快そうな表情をい浮かべた陽乃だが、
珠子はそれでも「はははっ」と、むしろ声を出して
珠子「ないって言わないんだな」
陽乃「……いちいち、言う必要ある?」
珠子「あるだろ。タマでもそんなことくらいわかる」
珠子の陽気な反応が返ってくる。
水都の迫力のない勢い
それに便乗してきた歌野の本音
それに対して、すぐには答えなかった言い訳に「言う必要があるか」なんていうのは物足りない。
杏「勇者を各個撃破されないように、一つの場所でまとまるというのは大事なんじゃないかなって私は思う」
ここから出て行かなくてもいいのではと思う、諏訪の二人
それに対して、杏は静かに切り出す
杏「四国なら、神樹様の恩恵もあるし、勇者が7人にもなれば絶対に守り抜くことができるはずだから……」
進化体がいたって、総攻撃があったって、協力し合っていけばどうにか乗り越えられるはずだろう。
けれど。
杏「でも、久遠さんさえよければ、ここにいる方が良いと思います」
杏も、結局はそう思っているようだ
- 607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 21:23:36.28 ID:Zm1Daanno
-
虐げられるってわかりきっている場所に戻るよりは、
多少の不自由さなどはあっても、
温かく迎え入れてくれる諏訪にいる方が良い。それは、精神的には間違いない。
杏と球子が消息不明になってしまっているという問題もあるけれど、
通信担当が若葉から、大社から派遣されてきた人になったのだから、
杏たちに参加させればどうにかなるかもしれない。
だが、それでいいのだろうか?
四国は本当に守り切れるのだろうか
諏訪は本当に不滅なのだろうか
それらがなかったとしても……向こうには母がいる。
陽乃を唯一、四国に縛り付ける存在
『下手に救ったのが仇になったのかや?』
陽乃「……やめて」
母がいなければそもそも、あの日から生きている理由さえなかったかも知れないのだから。
1、向こうには母がいるのよ
2、残りたければ残ればいいわ。私は戻る
3、……考えておくわ
4、何も言わない
↓2
- 608 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:24:43.28 ID:CWIKqnpiO
- 1
- 609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:25:04.03 ID:gSMbYstk0
- 1
- 610 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 21:43:16.50 ID:Zm1Daanno
-
陽乃「向こうには母がいるのよ」
珠子「タマ達だって――」
陽乃「母しかいないのよ」
両親がいる。ではない。
母しかいないのだ。
バーテックスに襲撃されて亡くなったのではなく、
人々の手によって、父を失って母親だけが残った。
陽乃に母しかいないように、
母には陽乃しか残されていない。
陽乃「大社は私がいるから、母をどうにもできない。預かることを容認しているの」
陽乃が身勝手なことをしても、
母を人質にとって行動しようとしてこないのは
それが逆に、逆鱗に触れることになるとわかっているからだ。
けれど、すぐには手をだせないこの遠距離
母に何もないなんて保証はない
陽乃「母まで失うわけにはいかないのよ。わかるでしょう?」
- 611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 21:55:39.12 ID:Zm1Daanno
-
歌野「……なるほど、だったら止められないわね」
黙ってしまったみんなの中で、言いだした歌野自身が首を振る。
可能なら諏訪に残ることを選んで欲しいと思っていても、
陽乃がそうしたくないのなら、仕方がないと歌野は考えているようだ。
歌野「みーちゃんも、無理強いは駄目よ?」
水都「私は……私は別に、諏訪に残ることが重要だとは思ってない」
歌野と同じように、そうして貰えたら嬉しいとは思う。
だが、それが絶対だなんて思っていないし、
一番重要に考えているのは、諏訪か四国かという問題ではない。
珠子「そういうことなら、残れないな……悪い」
杏「もともと、諏訪の人たちを連れ帰るって予定だったわけだし……」
陽乃の事情も事情で、だから、みんなトーンダウンする
これ以上、ここに残った方が良いだなんて言えなかった。
陽乃「そういうわけだから、私は向こうに帰る予定。総攻撃については――」
正直、陽乃が単独で力を使うのが手っ取り早くて合理的
だが、みんなはそれを望んでいないようだ
1、いいわ。貴女達も勝手にして
2、やっぱり、私が一人で担当するわ
↓2
- 612 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:58:53.97 ID:gSMbYstk0
- 1
- 613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:59:06.13 ID:KVg2xD8TO
- 2
- 614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:04:37.11 ID:F2TtaE+9O
- 1
- 615 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:15:11.89 ID:Zm1Daanno
-
陽乃「やっぱり、私が一人で担当するわ」
珠子「それは駄目だって」
陽乃「伊予島さんだって、合理的だって言ってるわよ」
陽乃は呆れたように言って、珠子を見る。
優しくない、鋭い視線に球子は目を見開いて睨み返す。
陽乃「言ったはずよ。どうしても止めたいなら、戦いましょうって」
歌野「みーちゃんの気持ち、わかってもらえない?」
陽乃「知らないわ」
歌野も、やや苛立ちを感じる声色で言うが、陽乃は態度を変えない
歌野「久遠さん一人に任せて、傷ついて欲しくないのよ」
陽乃「だから、何? 私以外の人が参加したら誰も傷つかないとでも?」
水都「でも、久遠さん一人よりは被害が少ないと思います」
陽乃「どうだか、ね。個別に傷を負う分、被害はむしろ多いと思うのだけど」
陽乃はもう話は終わったとでもいうかのような様子で、
小さく、ため息をつくようにしてみんなを見る
陽乃「向こうに戻るなら、無駄に戦力減らさずに最低限で対処するべきじゃないかしら?」
- 616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:23:03.84 ID:Zm1Daanno
-
杏「……そうですね」
それは間違いない。
そして、陽乃なら単独で総攻撃をどうにかできるだけの力があるのも事実。
人数的には、それが最低限だ。
戦力としては過剰だが。
一般の人々を守りながらの道中となるのなら、
戦力重視ではなく、人数的な温存を目標にして総攻撃を乗り越えるのが一番だ。
陽乃のやろうとしていることは間違っていない。
感情的に受け入れがたくても、正しい。
水都「なら、せめてうたのんと協力するとか」
陽乃「いらない」
水都「っ……」
陽乃「とにかく、私一人でやるから。出てくるなとは言わないけど、貴女達の安全は保障しないわ。巻き込むからね」
- 617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:27:09.62 ID:Zm1Daanno
-
珠子「本気なんだな」
陽乃「当たり前でしょう。冗談で言う必要あるの?」
珠子「ないけどさぁ……」
珠子は諦めたのか、首を振る。
陽乃はこうと決めたら実施する。
それは人を殺すこ都もあるし、単身で逃げ出して野宿することもあるし、
こうして、諏訪にまでくるようなこともある。
それを見てきたからこそ、珠子と杏は止められないと思わざるを得ない。
なにより、
それが実際問題一番いい結果が得られると……分かっているからだ。
反対理由なんて、感情以外の何物でもなかった。
陽乃「話は終わりね。止めたければ力づくでどうぞ」
自分より強い人がいるなら、
陽乃の言っていることは誤りだ。
素直に引き下がるしかない
だが、それを証明できないのなら、考えは変わらない
- 618 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:29:40.84 ID:Zm1Daanno
-
↓1コンマ判定 一桁
0,4,7 歌野「なら、私と戦いましょう」
※それ以外は交流終了
- 619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:32:10.06 ID:RUHeMCfMO
- あ
- 620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:36:05.18 ID:Zm1Daanno
-
√ 2018年 8月15日目 夜:諏訪
01〜10 杏
12〜21 球子
34〜43 九尾
56〜65 水都
89〜98 歌野
↓1のコンマ
※ぞろ目 全員(九尾を除く)
※それ以外は通常
- 621 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:37:07.43 ID:F2TtaE+9O
- あ
- 622 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:52:04.78 ID:Zm1Daanno
- √ 2018年 8月15日目 夜:諏訪
どこかで、虫が鳴いている。
夏の風物詩といえば、季語にでさえ選ばれる蝉だろうけれど、
夏の夜に聞こえる声はそれだけではない。
蚊取り線香の煙が漂う。
時々、風に流されていくのを横目に、陽乃は明かりのない夜の自然に目を向ける
陽乃「……なに?」
九尾「主様が力を本気で扱うなら、あんな娘ども死ぬぞ」
陽乃「もちろん、手は抜くわよ」
すぐ隣に腰掛ける、金色の長い髪をなびかせる和装の女性
赤い瞳は陽乃を見ずに、手元の小さな器に向いている
陽乃「なにそれ」
九尾「くふふっ、飲むかや?」
陽乃「……お酒は嫌いだわ」
近づけられた器に揺れる水面
感じた鼻をつくようなにおいに、陽乃はさっと顔を背けた
- 623 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:57:09.46 ID:Zm1Daanno
-
九尾「眠らぬのかや?」
陽乃「眠くないのよ」
夜だって言うのに、陽乃は全く眠くなかった。
体の中に有り余る力が、睡眠欲求をはじいてしまっているらしい。
その原因とも言える諏訪の神々のおかげで、力はほとんど自由に使える
だからと言って、全力行使などは行うつもりはない。
殺して、どうするのか。
陽乃の力は、代償がある分強力だった。
その代償の部分が取り除かれたのだから、
もはや、化け物という言葉が完全に否定できなくなった。
陽乃「挑んでくると思う?」
九尾「ふむ……」
九尾は手の中の器に口をつけて、小さくのどを鳴らす。
九尾「主様の判断は誤っておらぬ。きゃつらが愚か者でなければ、挑むこともあるまい」
陽乃「そう……」
1、貴女なら、ここに残る?
2、どうしたらいい?
3、お母さんは無事だと思う?
4、通信設備、どうにかできるかしら
5、できるだけ突き放してきたのに……
↓2
- 624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:00:06.97 ID:RUHeMCfMO
- 2
- 625 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:00:09.95 ID:F2TtaE+9O
- 5
- 626 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 23:02:26.56 ID:Zm1Daanno
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、通常時間から
- 627 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:13:04.92 ID:RUHeMCfMO
- 乙
ちょっと心が痛むけどお互いに考えをぶつけ合えるようになっただけ一歩前進と見るべきか
ただあとで仲直りはしておきたいな
- 628 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 06:04:51.30 ID:jGUECwwcO
- 乙
九尾との交流が終わったらいよいよ総攻撃回になるの?
- 629 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:05:56.15 ID:bHUA9sIjo
- では、少しだけ
- 630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:06:22.16 ID:bHUA9sIjo
-
陽乃「できるだけ突き放してきたのに……」
どうしてこうなったのか。と、
疲れたように吐き出す陽乃は、窓の縁に腕を敷いて、顔を伏せる。
九尾「むしろ、そうしてきたからじゃろう」
九尾は一口お酒を含んでから、静かに答える。
こくりと、のどをお酒が通っていく音が、はっきりと聞こえた。
九尾「真に拒むならば、突き放すことさえ不要じゃ。出方を待たずに己から手を出してもよかったやも知れぬ
主様の境遇を最初から告げて、関わるなというてもよかったやも知れぬ」
風が吹いて、九尾の不可思議な匂いを感じる。
あまり嗅いだことのない匂いだけれど、嫌ではなく
むしろ、好ましく感じられる匂い。
陽乃「なら、今からでも間に合うかしら」
九尾「無駄じゃろうな。あの小娘どもの様子を見たであろう? すっかり、入れ込んでおるな」
くつくつと、小ばかにしたように九尾は笑って
九尾「あの日、すぐにでもあの地を出て行くべきじゃったな。そうすれば、主様自身の考えそのものに違いがあったはずじゃ」
陽乃「他人を受け入れられるように?」
九尾「ふむ……そうじゃな」
- 631 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:25:24.04 ID:bHUA9sIjo
-
陽乃「私が望んでることじゃないわ」
九尾「その望みそのものが変わる」
陽乃「………」
例えば、3年間を諏訪で過ごしていたらどうだっただろうか。
きっと、陽乃にとってはとても穏やかで優しく、温かいものになっていたことだろう。
最初の内は大変だったかもしれないが、
次第に、楽になっていたことだろう。
歌野一人で3年間も生き抜けたのだ
陽乃が加わっていたらもっと楽で、確実だったはずだから。
陽乃「やめてよ。今更だわ」
久遠家を差し出した人々による悪意による、歪み
それさえなければ、向こうだってここまで生き辛くなかったはず。
陽乃のその考えを悟ってか、九尾は「主様」と呼ぶ
九尾「妾は、あ奴らはみな、殺してしまうべきじゃと思うておった。にもかかわらず、主様はそれを拒んだであろう」
陽乃「……なによ。私が悪いって言いたいの?」
九尾「邪魔ならば消せばよい。利用できるものは利用すればよい」
しかし……と、九尾は深く息を含む。
九尾「主様はあまりにも、生温い」
- 632 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 23:17:17.57 ID:bHUA9sIjo
-
九尾「そんな主様じゃからこそ、あの小娘どもがついて回るのじゃろう」
陽乃「なら、今から変わればいい?」
九尾「さて……それでどうにかなるものとは思えぬがのう」
陽乃は腕に伏せながら、九尾の方に顔を向ける。
九尾は、含みのある表情を浮かべていて、
いつ出したのかも分からない、お酒の入った瓢箪のようなものから、器に注ぐ。
九尾「主様は強く拒み、望んだ藤森水都からあんなにも詰め寄られたからのう」
陽乃「……ええ」
九尾「あの小娘にとって主様は放っておけぬ存在になっておる。おそらく、ほかの小娘どもにも」
九尾の赤い瞳がようやく、陽乃へと向けられる
人工的な、淡い光だけの室内にぽぅっと……金色の光が浮かぶ。
それに、意識が持っていかれそうになる
九尾「妾が手を打ってやってもよいぞ?」
九尾は、怪しい笑みを浮かべて
九尾「無論、主様が諦めるというのも手じゃが」
1、諦めるなんて無理よ
2、貴女、何するの?
3、貴女に任せたら、それこそ終わりよ
4、そうね、諦める方が、楽かも
5、何も言わない
↓2
- 633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:21.31 ID:lRA+V7I+0
- 2
- 634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:21.98 ID:Z9BazS/DO
- 3
- 635 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:25.46 ID:zjUy5x/I0
- 4
- 636 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:43.05 ID:5smNC3940
- 4
- 637 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:20:09.92 ID:32EDvYvkO
- 4
- 638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 23:38:35.66 ID:bHUA9sIjo
-
陽乃「貴女に任せたら、それこそ終わりよ」
陽乃は睨むように言ったが、
九尾はまるで気にしていないのか、平然と笑う。
九尾「主様が望む、静寂を与えるだけじゃ。終わることは終わるが、なに、主様に害はない」
陽乃「本気で言ってるの?」
九尾「いかにも」
九尾は、本気だ。
他愛もないことを語っているみたいに、表情は柔らかい。
そうして、こくりと、お酒を口に含む
九尾「ふむ……やはり、ただ酒は口に合わぬな」
器が消え、瓢箪が消え、
そして、九尾の女性としての姿が狐へと変わる。
九つの尾をもつ、妖狐に。
九尾「主様は人間じゃな。あまりにも、人間じゃ。有象無象が主様を化け物と呼ぶ意味が解らぬ。愚者然とした、見事なまでに生易しい小娘でしかないというのに」
- 639 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 00:07:56.20 ID:tdD/zRTwo
-
金色の毛並みは、不自然なまでに輝いて見える。
それに隠れる、深紅のルビーのような瞳が陽乃へと向く
九尾「妾ならば排除できる。主様が望んでやまぬ、静寂を与えられる。だというのに、拒むのかや?」
陽乃「ろくなことにならなそうだし」
九尾「くふふっ、望むものを手に入れるためじゃぞ? 多少はよかろう」
九尾は笑っているが、冗談で笑っているわけではない。
九尾なら本当にろくでもないことをする。
しかも、九尾自身はそれを、当たり前で、必要なことだと思っている。
九尾「何もせずにいたおかげで、今、主様が逃げることになっておるのじゃろう?
本当に、現状を変えたいのであれば、行動すべきではないかや?」
陽乃「それはそうだけど……戦力を削られても困るのよ」
九尾「ふむ。それが言い訳かや」
陽乃「言い訳って」
九尾はぺろりと舌を出して、目を細める。
からかっているのだろうか。
陽乃「私は生きていきたいの。死にたくないのよ。そのために利用できるものは利用するの」
九尾「じゃが、総攻撃は主様が一人で対応するのじゃろう?」
くくっっと、九尾ののどが鳴る
九尾「主様は言い訳ばかりじゃな。素直に言えばよい。守ってやれぬと、死なれたくないと」
陽乃「そんなじゃないから」
九尾「じゃが、小娘どもは……妾と同じように考える。主様が何を言おうと、もう遅かろう」
- 640 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 00:11:23.57 ID:tdD/zRTwo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 00:18:10.57 ID:aV/H/nOMO
- 乙
総攻撃が近いのか
どういう風に転がって行くのか気になるな
- 642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 00:20:13.16 ID:oqdCTzrLO
- 乙
陽乃さんもそろそろ心を開かないといけない時が来てるな
いっそ単独戦闘も撤回して協力を求めるか
- 643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 21:10:45.16 ID:tdD/zRTwo
- では少しだけ
- 644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 21:13:42.98 ID:RAPpnmjVO
- かもん
- 645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 21:13:56.66 ID:tdD/zRTwo
-
陽乃「……もう遅いんだ」
九尾「さっきの反応を見れば、言うまでもなかろう」
陽乃が単身で対応するという話。
明らかに、それが合理的だとわかっているのに、
みんなは感情でそれを拒んでいた。
みんな、陽乃に寄り添うつもりなのだ。
陽乃は鬱屈な様子で、ため息をつく
陽乃「どうして、こうなっちゃったのよ……」
九尾「また繰り返すかや?」
陽乃「もういいわよ」
九尾は陽乃がそうしてきたからこそだといった。
突き放すような姿勢が、
むしろ、杏たちの気を惹いてしまった。
いいや、杏に関しては、助けてしまった時点で駄目だっただろうか。
かといって、見捨てられる陽乃でもない
- 646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:01:30.05 ID:tdD/zRTwo
-
九尾「本当に突き放したいならば、生半可に付き合わぬほうが良い」
陽乃「解ってるわよ」
好きにしたら? とか、勝手にしてとか、
そういう態度をしていたのがダメだったらしい。
そういうのも含めて、初めから突き放しておくべきだったし、
諏訪に来るとき、何が何でも球子たちを置いてくるべきだった。
陽乃「……貴女のせいだわ」
陽乃は、おもむろにそう呟く。
陽乃「貴女が、向こうにたどり着けるかわからないなんて脅すから」
九尾「くふふっ、そうじゃったのう」
九尾はあくまで忠告をしただけだ。
そういわれたからって、気にしなければよかったのにと言われれば、それで終わってしまう。
陽乃「でも、それでも藤森さんたちはどうしようもなさそう」
諏訪の人々は、向こうでの陽乃を知らなかったから
説明したって、理由があった。なんて、言われる始末だし。
1、なるようになるしかないわね
2、九尾は諦めた方が良いって思う?
3、私が、死なせたくないからって言ったって、逆に言われるだけでしょう?
4、何も言わない
↓2
- 647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 22:03:55.21 ID:RAPpnmjVO
- 1
- 648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 22:04:14.33 ID:3YU3I4hZ0
- 3
- 649 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:44:36.43 ID:tdD/zRTwo
-
陽乃「私が、死なせたくないからって言ったって、逆に言われるだけでしょう?」
投げやり気味に、陽乃は漏らす。
九尾は死なせたくないと素直に言えばいいと言ったけれど、
陽乃はそうは思わなかった。
歌野達だって、同じように返してくる。
死なせたくないなんて、言わなくてもあれだったのだから。
九尾「そうじゃな。そうなるやもしれぬ」
九尾の尻尾がふぁさりと、風を巻き起こす。
九尾「じゃが、少しは思いとどまらせることもできるじゃろう」
陽乃「そうかしら」
九尾「小娘どもが、主様に抱いていることと同様のことを主様が述べることに意味がある」
- 650 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:56:19.38 ID:tdD/zRTwo
-
九尾はそういうと、九つの尾を陽乃の体を囲うように動かす。
金色の毛並みがきれいな九尾の尾
暗い部屋の中でも、それ自体が発光しているかのように、明るく見える。
それは、とても暖かい。
陽乃「なに? 何か、変じゃない?」
九尾「妾は何も変わらぬ」
陽乃「……そう?」
九尾の赤い瞳を見るが、九尾はその瞳を陽乃へとむけてはいない。
1度、2度、瞬きをして。
九尾「単身で対応しようと、主様が死ぬことはなかろう」
陽乃「ええ」
九尾「じゃが、問題は主様の影響を結界が受けていることじゃな」
陽乃「壊れる……わけではないんでしょう?」
九尾「うむ」
九尾は息を吐くように頷く。
九尾「主様のおかげで、十分に強固な結界となっておる。
それゆえに、ここには手を出せなくなるやもしれぬと、思うてな」
- 651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:05:22.33 ID:tdD/zRTwo
-
九尾の赤い瞳は、外の暗闇を見つめている。
細く、鋭く、じっっと……見つめている。
その先に何かあるのかと陽乃は顔を顰めて目を向けたが、
光のないその場所には何も見えなかった。
九尾「四国の方に、きゃつらが手を出す可能性がある」
陽乃「諏訪を諦めて、四国を攻める可能性があるのね……」
バーテックスは総攻撃の準備を進めてきていた
だが、それは陽乃達がいなかった頃からの計画だろうし、
結界がだんだんと弱まりつつあったからこそ、実行できたことなのだろう。
諏訪の神々から陽乃へと力が移ったことで、
もしかしたら、総攻撃を諦めて、諏訪を諦めて、
戦力の削がれた四国を襲撃するのではないかと、九尾は考えているようだ。
九尾「バーテックス……じゃったか。きゃつらが、主様の力が四国から諏訪へと移動したことを察知しておるならば、
明らかに異質な力を帯びている場所に手を出すのは控える恐れがある」
もちろん、いろいろと考える知能があるなら。と、九尾は言うが、
その表情はいたって真剣だ。
やがて、赤い瞳が陽乃へと向けられる。
九尾「主様一人にせよ、小娘どもを連れるにせよ、もし、しばらく襲撃がなければ、先手を打つ方がよいやもしれぬ」
陽乃「……そう、ね」
九尾の忠告
それは、頭の片隅に置いておかなければならないものだ
- 652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:12:02.03 ID:tdD/zRTwo
-
√ 2018年 9月1日目 朝:諏訪
01〜10 水都
34〜43 杏
56〜65 歌野
67〜76 襲撃
87〜98 球子
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常
- 653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 23:12:50.48 ID:RAPpnmjVO
- あ
- 654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:20:56.94 ID:tdD/zRTwo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
1日のまとめは再開時
9月突入
- 655 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 23:31:29.54 ID:RAPpnmjVO
- 乙
長くて濃い8月がようやく終わったけどまさか総攻撃こないままだとは…
そして早く四国に戻らないと大変なことになりそう
- 656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 01:44:44.36 ID:Cxoqs5vMO
- 乙
待つか仕掛けるか
それともいっそ一息に四国まで移動するか
- 657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:06:06.03 ID:R1eDlF6/o
-
では少しだけ
- 658 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:08:25.02 ID:R1eDlF6/o
-
■2018/08/14 分
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(触らない、余計な事、単独行動、御柱倒壊)
・ 藤森水都 : 交流有(単独行動、神託、特殊1、3年間、時間があれば、放っておいて、御柱倒壊、特殊2)
・ 土居球子 : 交流有(単独行動、御柱倒壊)
・ 伊予島杏 : 交流有(単独行動、特殊1、諏訪の生活、そう、特殊2、説明する、どうしてそこまで、好きにしたら、御柱倒壊)
・ 九尾 : 交流無()
√ 2018/08/14 まとめ
白鳥歌野との絆 50→52(普通) ※特殊交流1
藤森水都との絆 65→68(良好) ※特殊交流5
土居球子との絆 59→59(普通)
伊予島杏との絆 70→75(良好) ※特殊交流2
九尾との絆 66→66(良好)
■2018/08/15 分
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(勇者としてすべきこと、今後、諏訪を出る、不満、単身突撃、合理的だから、特殊2、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 藤森水都 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊6、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 土居球子 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊1、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 伊予島杏 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊3、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 九尾 : 交流有(力の返却、祟り、突き放してきたのに、任せられない、死なせたくないといっても)
√ 2018/08/15 まとめ
白鳥歌野との絆 52→55(普通) ※特殊交流2
藤森水都との絆 68→70(良好) ※特殊交流6
土居球子との絆 59→60(普通) ※特殊交流1
伊予島杏との絆 75→76(良好) ※特殊交流3
九尾との絆 66→68(良好)
- 659 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:17:45.25 ID:yV9+MiRsO
- 絆値下がってなくて良かった…
- 660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:20:37.66 ID:R1eDlF6/o
-
√ 2018年 9月1日目 朝:諏訪
陽乃は、一人、いつもの空き部屋の畳の上で寝転がる。
天井を見つめ続けて数分、ゆっくりと目を閉じる。
陽乃「……」
9月に入っても、バーテックスによる襲撃は一度もなかった。
水都はもちろん、諏訪の神々の代理となった陽乃にも、襲撃が行われるような兆候の一切も感じられず、
杏達が様子見で結界の外に出てみたこともあるが、無数のバーテックスの姿はあっても、
襲撃してくるような様子は見られなかった。
だが、その数は増えて行っている。
歌野と水都を加えて、勇者と巫女で移動するなら切り抜けることも可能かもしれない。
だが、一般人を連れてとなると、突破はまず間違いなく被害が出ることになるだろう。
日に日に、通信の状態も悪くなってきている。
陽乃が代理となったことで諏訪の力こそ強くなったが、
改善には至っていない。
陽乃が単独で攻めに転じる……という話は、
みんなから反対されてしまっている。
- 661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:52:15.50 ID:R1eDlF6/o
-
九尾が言っていたように、諏訪の残された土地に対する恩恵は、通信状況の悪化に反して豊かになっている。
豊穣の神とされている宇迦之御魂神の力による影響だ。
陽乃は常に力を使うことになってしまっているが、
その分、諏訪の神々に対する信仰心が回復を促進させて、陽乃に影響は出ていない。
それどころか、力が有り余っている。
その余剰な力が、さらに結界を強めているのだろうか。
守りたいだなんて、これっぽっちも思っていないのに。
陽乃「……ん」
歌野と水都は畑仕事に出ていて、
珠子と杏は、襲撃が来ても平気なようにと、待機している。
待機は交代制だ。
だが、陽乃は基本的に参集殿の中にいる。一度、歌野と水都に無理矢理、畑に連れ出されたが、それくらい。
陽乃「……」
今の諏訪は、平穏そのものだ。
外の世界では白い異形が、手から離れた風船のようにうようよと漂っているけれど。
だけど、絶対に続かない。陽乃はなぜか、そう思う。
四国もまだ、襲撃を受けていないようだが、今日も何もないとは限らない。
1、杏、珠子と交流
2、歌野、水都と交流
3、九尾を呼ぶ
4、出かける
5、イベント判定
↓2
- 662 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:53:23.18 ID:rKTf7IU50
- 5
- 663 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:53:49.46 ID:yV9+MiRsO
- 1
- 664 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 21:34:52.29 ID:R1eDlF6/o
-
杏と球子は参集殿の中、みんなで共有している部屋で待機している。
陽乃がいる部屋から、少し離れた場所にあるその部屋からは微かに声が聞こえる。
陽乃「……」
陽乃は暇を持て余しているが、杏と球子も同じようだ。
部屋から出て、やや狭い廊下を進む。
通路の、ガラス張りのドアからまばゆい光が差し込んでいる。
9月になっても、まだ温かい。
球子「このままだといいんだけどなぁ」
杏「うん……でも、何もないのが逆に怖いよ」
部屋から聞こえてくる二人の声
気にせず、部屋のドアを開けると、二人が振り返った。
球子「またいたのか」
陽乃「行く場所もないし」
杏「なら、どこか散歩に出てもいいんですよ?」
行先なんて考えずに、ぶらぶらと。
そうしてもよかったという杏の困った表情に、陽乃は首を振った。
- 665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 22:01:23.75 ID:R1eDlF6/o
-
陽乃「適当に歩くなんて、浪費もいいところだわ」
球子「元気が有り余ってるくせに、何が浪費だよ」
杏「たまっち先輩っ」
球子は悪びれた様子もなく、
畳の上に四肢を投げ出し、ごろんっと転がって
球子「昨日も、結構な時間まで起きてたろ」
陽乃「そんなことないわ」
球子「……2時は過ぎてたぞ」
陽乃「……」
じっと、球子は陽乃を見つめる。
陽乃はそれをまっすぐ見返して、見下ろして、息を吐く。
陽乃「だから?」
球子「浪費した方が良いんじゃないのかって話」
杏「久遠さん、そんな時間に寝てるんですか?」
陽乃「まぁ、そうね」
杏「それで、いつもわたし達より早く起きてるって……」
- 666 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 22:24:55.80 ID:R1eDlF6/o
-
陽乃「そこまで早くはないわよ」
早いといっても、歌野と水都が起きる時間とそんなに変わりがない。
畑の手入れをするために起きる二人と同じか、少し遅い程度。
少なくとも、二人が出て行くのを見送れるくらいの時間には目が覚めている。
睡眠時間は……口にすると、杏は怒るだろう。
陽乃「そうね……じゃぁ、一人で結界の外に出てもいい?」
球子「いいわけないだろっ」
陽乃「でしょ?」
球子「結界の中で散歩するとか、いろいろあるじゃんか」
陽乃「ないから、ここにいるのよ」
球子は言い返す代わりに、むっとする。
何か言っても、また何か言い返されるだけだ。
杏は、そんな球子を見てちいさく笑う。
諏訪に来てからも、何度か見た光景。
杏「久遠さんはやっぱり、一人で戦うつもりですか?」
陽乃「それが一番だって、貴女もわかってるでしょ?」
杏「被害が最小限なのは間違いないですけど、でもやっぱり、さすがに総攻撃すべてを委ねるのはないと思います」
1、心配ないわ
2、適材適所よ
3、それで、貴女達の誰かに死なれても困るわ
4、その総攻撃自体が、起こりそうにないのだけど
↓2
- 667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 22:30:02.80 ID:pVgm5o/6O
- 3
- 668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 22:31:11.13 ID:rKTf7IU50
- 3
- 669 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 23:05:18.06 ID:R1eDlF6/o
-
陽乃「それで、貴女達の誰かに死なれても困るわ」
球子「……死ぬと思うか?」
陽乃「最悪の場合は」
いくら勇者とはいえ、
バーテックスに殺されてしまう可能性があるのは、球子もわかっていることだろう。
陽乃は、冗談でもなくまじめに頷く。
諏訪に来る際に戦ったし、
陽乃が寝込んでいるときにも球子達はバーテックスと戦っている。
大したけがもなく、快勝だった。
だが、それが総攻撃ともなれば、余裕など持てるはずがない。
多勢に無勢、物量で押しつぶされることは間違いない。
それは陽乃にも言えることだが、
神々に対して、悪影響を与えられる陽乃の力なら、多勢に無勢な状況を打破できる。
素の状態でそれを頼れば、反動で陽乃が大変なことになるが、今はその心配はいらない。
陽乃「特に、二人なんて懐に潜り込まれたら終わりでしょう?」
球子「うぐっ」
杏「たまっち先輩は、投げてなければどうにかできるかもしれないけど……」
球子よりも杏が、辛い。
中遠距離な二人は後方支援が最適だが、総攻撃のような状況ではそんな余裕はないだろう
- 670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 23:19:17.27 ID:R1eDlF6/o
- では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 671 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 23:34:35.82 ID:MBxvBnONO
- 乙
9月に入って数日たってるからか陽乃さんの反応が多少柔らかくなってる気がする
あとはこの平穏がいつまで持つかだな
- 672 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 00:07:39.77 ID:K8cx7zhK0
- 乙
もっと素直に私もみんなに傷ついて欲しくないってことを主張していこう
- 673 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 21:30:45.05 ID:FzNzQXWXo
- では少しだけ
- 674 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 21:33:47.56 ID:FzNzQXWXo
-
陽乃「言っておくけれど、近づかれても私は守ってあげる気はないわ」
総攻撃では、
勇者の人数に比べて、バーテックスの数は倍なんて話ではない。
一人当たり、とてつもない数を討伐する計算になる。
足手まといに構っている余裕はないと、陽乃は首を振る。
なにより、陽乃が単身で対処すると言っているのに、
それに反して、出てきたのならなおのこと。
自分から、死ぬことを選んだ人を守ってあげる義理はない。
陽乃「あっという間に囲まれてなぶり殺しにされるわよ」
気を抜いても抜かなくても、関係なく。
圧倒的な物量に、なすすべなく飲み込まれる。
上から押しつぶされ、頭を食われ、腕を食われ、足を食われる。
それも、生きたまま。
陽乃は、ふと、顔を顰める。
その光景は紛れもない、地獄だ。
陽乃「私は、生き残るために最善を尽くしたいと思ってる
貴女達は違うと言うけれど、私は死ぬ気はないし、今後も含めて確実な生存戦略を立てているだけよ」
陽乃一人で対処不可能だというなら、球子たちの参戦も致し方がない。
だが、そうではないのに、無理に参戦させて今後の生存率を低下させるのは好ましくない。
- 675 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 21:57:19.15 ID:FzNzQXWXo
-
陽乃「解っていると思うけど、貴女達が死ぬと完全に取り返しがつかなくなるの」
今でも取り返しがつくとは思っていないし、
大社や人々からの印象を少しでも良くしたい……なんて、甘い考えはもう、捨てたつもりだ。
だが、それでも。
陽乃は、2人に死なれては困るのだ。
ただでさえ少ない戦力が、より少なくなってしまうから。
球子「そりゃそうだけど」
球子にしては、小さな声。
球子は寝転がってだらしなかった姿勢を正して、顔を上げる
球子と杏は、大社からしても死なれては困る存在だ。
けれど、陽乃は。
陽乃が死んだ場合、悲しむ人は少ない。
むしろ、ようやくかと、祝杯が挙げられるのではないかとさえ、思える。
今の、壊れてしまった世界はそうなってしまっている。
3年前、陽乃が見逃した人々の流布した悪意はもはや絶つことができないほどに広がってしまったから。
- 676 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 22:43:49.25 ID:FzNzQXWXo
-
杏「もし、私たちのどちらかが命を落とせば、久遠さんは勇者殺しの汚名を着せられることになるかもしれません」
陽乃の体面……は、もう、どうにもならない可能性はある。
歌野達を四国に連れ帰ったとしても
その功績は……杏と球子、そして歌野と水都のものになるかもしれない。
杏「でも……正直、戦力的には久遠さんを失うのが、最も大きな損失です。それこそ、取り消しがつかないことになります」
球子「諏訪の神様の力さえ、貰えるような勇者だもんな」
陽乃「欲しければあげるわよ。あげられればね」
ため息をつく陽乃を、球子は心配そうに見つめる。
冗談めかした声色ではあるが、本当に、理不尽に授けられた力だ。
選べるなら、受け取らなかったと言うくらいに。
陽乃「で、だから、なに? 私を温存して貴女達が死ぬって?」
杏「っ……」
球子「死ぬとは、言わない」
悔やむ表情を浮かべた杏を一瞥し、球子が代わりに答える。
もちろん、死ぬ気なんて微塵もない。
だが、総攻撃で無事で居られる保証はない。
だから、悔しいのだ。
陽乃に及ばずとも……優れてさえいれば、陽乃に死ぬと言われなかったかもしれないから。
球子「……模擬戦、タマ達とやってくれないか?」
1、嫌よ
2、私に殺されたいの?
3、白鳥さんに頼みなさいよ
4、どうして?
↓2
- 677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 22:46:22.89 ID:esc1Ha4l0
- 4
- 678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 22:47:16.12 ID:AXbj0kvAO
- 4
- 679 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 23:06:21.63 ID:FzNzQXWXo
-
陽乃「どうして?」
球子「どうしてって、そりゃ……少しでも長生きしたいからだよ」
陽乃「嘘ね」
陽乃は、球子の目をまっすぐ見つめて断言する。
見透かすような瞳と、力強い言葉
球子は少し物怖じして、目を逸らすまいと歯を食いしばった。
球子「嘘なんてついてないぞ」
陽乃「……そう」
陽乃は、再度否定することなくため息交じりに目を閉じる。
否定はしていない。だが、信じていない。
陽乃は、死にたくないと思っている。生きていたいと思っている。
だが、そんな雰囲気が、球子からは感じられなかったのだ。
生き延びたいというよりも、死に急いでいるような。
陽乃「少しでも長生きしたいなら、勇者なんて肩書を捨てて一般人として生きる方が良いわ。
特に、今回の総攻撃に関しては私に一任するべきよ」
- 680 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 23:36:13.71 ID:FzNzQXWXo
-
球子「それとこれとは、別だ」
陽乃「一緒よ」
杏「少しでも、生存率を上げるため……久遠さんが言った、生存戦略です。私たちなりの」
答えに迷う球子の代わりに、杏が答える。
杏は顔を上げている。
陽乃の視線を避けることはせずに、堂々と見つめ返していた。
杏「久遠さんの負担を少しでも軽減し、力を温存させるのが、私たちの生存につながると思います。そのために、強くなりたいんです」
球子「歌野も強いけど、タマたちにとっての脅威になる陽乃に手を借りた方が、経験が積める」
杏の言葉に、球子が乗る。
下手したら、バーテックス以上に陽乃の力は勇者にとっての脅威である。
その力に、しっかりと対抗できるようになれば、
杏達は、バーテックス相手にも優位に立てることだろう
陽乃「……なるほどね」
1、嫌よ
2、白鳥さんに合格を貰ってからにしなさい
3、一理は、あるわね
4、死ぬ覚悟もあるのね?
↓2
- 681 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 23:38:25.71 ID:4i7YwAB3O
- 4
- 682 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 23:39:08.90 ID:esc1Ha4l0
- 3
- 683 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 23:56:15.31 ID:FzNzQXWXo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 00:05:45.81 ID:JH0lVdQcO
- 乙
陽乃さん無意識に死に場所を探してるかもしれないのか…
死なせない程度に杏たちも戦闘に出さないと陽乃さんが危なそう
- 685 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 04:09:16.06 ID:/xz8G4bM0
- 乙
死に急いでる疑惑は球子では?
- 686 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 20:53:02.50 ID:rkGFjp/2o
- では少しだけ
- 687 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 20:53:39.34 ID:rkGFjp/2o
-
陽乃「一理は、あるわね」
今後も、杏達が勇者として戦っていくつもりなら、
経験を積んで貰って足手まといにならないようになって貰う方が好ましい。
そうして、戦い続けられるようになれば、
結果的に陽乃の生存率が高まる。
当然、負担も減る。
陽乃「正直、手間だから私じゃなくてほかの人でやってもらいたいけれど……」
杏「水都さんの巫女教育もあるんですよね?」
陽乃「……ええ」
球子「水都には優しいのに、タマ達には優しくしてくれないのか?」
陽乃「別に、優しくしてるわけじゃないんだけど」
どうしてもというから、暇なときに付き合ってあげているだけだ。
水都が神託を受けるべき諏訪の神々は、もう、その仕事を陽乃に委ねているため、
水都の巫女としての仕事は、ないといえばない。
陽乃「巫女はともかく、模擬戦なんて疲れるもの」
球子「暇なんだろ?」
球子の突くような視線を、陽乃は睨み返す。
- 688 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 21:10:27.46 ID:rkGFjp/2o
-
陽乃「暇であることと、疲れることをするかは別問題だわ」
杏「ですが、少しは力を使った方が体にいいと思います」
危険なことはして欲しくないけれど、
遅く寝て早く起きる今のような生活は、いずれ体を壊してしまうのではないかと、杏は気にしていた。
諏訪の神々の恩恵によって、体が壊れる心配は、実際にはないのかもしれないが。
杏「わたし達と、久遠さんそれぞれのためになることだと思いませんか?」
陽乃「……」
なることは、なる。
だが、
水都の巫女の件もそうだが、
あれもこれもと引き受けていたら、逆に暇なしになるかもしれない。
最も、生き抜くことを優先するなら、暇なんていらないだろうけれども。
素直に応じて、距離が縮まっただなんて二人が勘違いしてしまうのが、気に入らない。
とはいえ、メリットはある。
1、暇があるときだけよ
2、連日やるのは嫌よ
3、じゃぁ、まずは白鳥さんを倒してからね
4、わかったわ。仕方がないから受けてあげる
↓2
- 689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 21:12:09.79 ID:HjsuW4s70
- 1
- 690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 21:13:27.17 ID:AoeLRTNeO
- 1
- 691 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 21:38:49.44 ID:rkGFjp/2o
-
陽乃「暇があるときだけよ。それ以上は譲歩しないわ」
球子「……それって、毎日?」
陽乃「あら、毎日サンドバッグになってくれるなんて、貴女ってばとっても優しいのね」
球子「ひぇっ」
陽乃は、笑顔を浮かべている。
もちろん、作り物のような笑顔でしかなくて。
それを肌に感じてか、球子は少し青ざめた表情で仰け反る
球子「は、陽乃が暇でも、タマ達はほら、暇じゃないこともあるし?」
杏「久遠さん、模擬戦では本気は出さないで貰えますか?」
陽乃「そこは出してもらえますか? って、言葉が聞きたいわね」
陽乃は、神々に対しての、切り札とも言える力を持っている。
本気を出せば、杏達が所持している神樹様の加護を打ち破って直接的にダメージを与えることが可能だ。
とはいえ、それをしたら、軽傷では済まない。
陽乃「伊予島さんはともかく、土居さんは手加減いらないわよね? 前回、私に勝ってるんだもの」
球子「それはそうだけど……殺す気か?」
陽乃「貴女が頑張れば、死にはしないでしょ?」
球子「いやいやいやいや!」
絶対に無理だ! と、球子が叫んだ
- 692 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 22:15:21.62 ID:rkGFjp/2o
-
球子「まず、タマ達が待機の日は駄目だな。いざって時に動けなきゃまずい」
杏「それを言うと、総攻撃がいつ来るかわからないから、できなくなっちゃうけど」
杏は、神妙な面持ちで呟く。
杏「久遠さんも、総攻撃がいつ来るかは、わからないんですよね?」
陽乃「そこまで万能じゃないもの」
神様ではなく、
神様の代理でしかない。だから、いつ襲撃されるかなんて未来予知は、たぶん不可能だ。
陽乃は首を横に振った。
陽乃「このまま、総攻撃がない可能性だってあると思うけど」
球子「だったらいいんだけどな」
陽乃「代わりに、四国が襲撃を受けることになるかもしれないけどね」
球子「だよなぁ……」
どちらにも手を出さないなんてことが、あるのだろうか?
あったらあったで、それは逆に怖い。
何か企み、準備している可能性があるからだ。
陽乃「とりあえず。待機じゃない日に、声をかけてくれればいいわ。場合によっては、私が断るけど」
球子「毎回断るのは駄目だからなっ?」
陽乃「解ってるわよ」
一応は、命にかかわることだ。
適当な対応をする気はなかった。
- 693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 22:20:25.92 ID:rkGFjp/2o
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 杏「久遠さんって、藤森さん都は親しいですよね」
ぞろ目 特殊
※他は交流終了
- 694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 22:21:21.74 ID:e5QcdhFLO
- あ
- 695 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 22:28:24.91 ID:rkGFjp/2o
-
√ 2018年 9月1日目 昼:諏訪
01〜10 歌野
34〜43 襲撃
67〜76 九尾
87〜98 水都
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常
- 696 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 22:28:52.52 ID:Or6mh3+s0
- あ
- 697 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 23:06:29.04 ID:rkGFjp/2o
-
√ 2018年 9月1日目 昼:諏訪
陽も登ったお昼時、陽乃は部屋でまた一人になっていた。
杏や球子は一緒にと言っていたが、断った。
水都のこともそうだが、
厄介なことを頼まれすぎている気がする。と、陽乃はため息をついた。
水都からの、巫女教育のお願い
諏訪の神々からの力の譲渡
杏や球子との模擬戦
九尾は何も言ってきていないけれど、
嫌なら嫌といえばよかろう。なんて、影で呆れているに違いない。
陽乃「……ぐうの音も出ないけど」
暇があれば、なんて、意味もない言葉を返し、
そうやって関わり合いを持っている。
陽乃「……」
水都は、毎日のように頼みにきたりはしない。
いつならいいかと聞いてきたりして、ほとんど決まったスケジュールになっている。
球子と杏は、どうだろうか。
陽乃は考えそうな頭を振って、振り払う。
- 698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 23:41:10.52 ID:rkGFjp/2o
-
いつあるのかもわからない総攻撃
諏訪ではなく四国が襲撃される可能性さえある。
しかし、現状は諏訪の周囲にはおびただしい数のバーテックスが集結してきており、
一般人を守りながらの突破はほとんど不可能だと言えるわけで。
かといって、陽乃一人で出て行くのは、みんなが許さない。
陽乃「……」
猶予はきっと、もうない。
後手に回るのは、悪い予感しかしない。
けれど……どうすべきか。
諏訪に籠れるなら、それが一番なのは陽乃もわかっている。
だが、母親が向こうにいる以上はその選択はない。
1、通信の様子を見に行く
2、外出
3、九尾を呼ぶ
4、こっそり、結界の外に出る
5、イベント判定
↓2
- 699 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 23:43:19.08 ID:e5QcdhFLO
- 4
- 700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 23:47:42.34 ID:HjsuW4s70
- 2
- 701 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 00:00:09.68 ID:KsGmZGnIo
- ↓1コンマ判定 一桁
1,7 杏
4,8 水都
※ぞろ目特殊
※他はなし
- 702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:00:43.19 ID:N8N2snAv0
- あ
- 703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 00:05:51.62 ID:KsGmZGnIo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
- 704 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:07:07.56 ID:N8N2snAv0
- 乙
- 705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:09:21.77 ID:6vSLx9Li0
- 乙
猶予があるのかもわからん状況だから悩むよな
- 706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:17:03.62 ID:w3arOD92O
- 乙
なんだかんだ言ってやっぱりお人好しなところが見え隠れしてる陽乃さん
そろそろ誰か一人くらい仲良くなって欲しいけど
- 707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 21:20:16.38 ID:KsGmZGnIo
- では少しだけ
- 708 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:25:47.61 ID:YnAKmBn4O
- よっしゃ
- 709 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 21:29:05.55 ID:KsGmZGnIo
-
廊下に出ると、虫の声がより騒がしくなる。
朝は聞こえた球子たちの声も聞こえないので、
歌野と水都の定期通信に同行しているのだろう。
日々悪化していく通信状態に、まだ、向こうに杏たちの状況は伝えられていない
いや、もう、すでに伝わっていて、この状況なのかもしれないが。
陽乃「……」
みんながいるのは、参集殿の一室
そこから、一番離れた出入り口の方に回って、音を立てないように出て行く。
『盗人のようじゃな』
陽乃「……気づかれたら面倒だから」
球子や歌野は解らないが、
杏と水都は間違いなく、ついていきたいと言ってくる
断っても、ついてくる可能性があるから
見つかるのは避けたかった。
- 710 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 21:46:51.25 ID:KsGmZGnIo
-
社務所側の出入り口から出て、北側の参道の方に向かう
大鳥居をくぐって、敷地の外へ
住む人のいなくなってしまって、雑草が生い茂る住宅
閉まって開くことのない、土産屋
狭い結界の中でも、かなりの土地が、住人を失ったままなのだろう。
陽乃「……体は、平気そうね」
神社から離れても、体調には問題がなく、
地縛霊のように、神社から離れられないなんてことはないようだ。
もし、万が一そうだったら、大変なことになるけれど。
『主様、目的はあるのかや?』
陽乃「別に、何もない」
『小娘らに、絆されたのかのう』
陽乃「そういうわけじゃないけど」
じっとしていても仕方がない。という点については、陽乃もそう思っていた。
少しくらいの散歩では、体は疲れそうにもないが。
1、諏訪湖の方へ
2、諏訪大社 上社前宮へ
3、学校を覗く
4、適当に歩く
↓2
- 711 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:49:13.78 ID:YnAKmBn4O
- 1
- 712 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:50:03.57 ID:eTMKo6760
- 2
- 713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:50:20.61 ID:Eg1ftFkMO
- 2
- 714 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 22:21:50.92 ID:KsGmZGnIo
-
陽乃「もう一つの方、行ってみましょ」
陽乃達がいるのは諏訪大社の中の一つ、諏訪大社本宮と呼ばれているところだ。
ほかに上社前宮、下社秋宮、下社春宮と呼ばれる境内がある。
すでに下社の方はバーテックスの襲撃に耐えられず崩壊し、
結界の外になってしまっているため、近づくことはできない
陽乃「……」
陽乃なら強行することも可能だが。
『神としての自覚でも芽生えたかや?』
陽乃は、揺れる自分の影を見つめて、ため息をつく
狐の形をしたその影は、
降り注ぐ陽の光など関係なく、動いている。
陽乃「まさか」
神様としての仕事なんて、結界の維持以外をする気は毛頭ない。
陽乃「でも、次に壊されるとしたら間違いなくそっちになるでしょ? 状態を見ておきたいわ」
『状態なら、外に出る方がよいと思うが』
陽乃「まぁ、そうなのだけど」
『心労はかけたくないと?』
陽乃「……後々、面倒なことになるのを避けたいだけ」
- 715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 22:44:57.66 ID:KsGmZGnIo
-
民家の立ち並ぶ県道をまっすぐ歩く
ここに来るまでは、諏訪は建物よりも畑が多い。なんて、
意味の解らない考えも片隅にあったが、見渡す限り家ばかり。
そのほとんどが、無人化している。
結界の外に家を置いてくることになった人々が、
家主を失った家を利用していることもあるらしいけれど、それでも、大部分がもぬけの殻だ。
陽乃「……」
『人間の気配が少ないのう』
陽乃「ええ」
諏訪の神々の代理となってからというもの、なぜだか、そういった感覚が強くなった。
気配というか、命というか
そこに存在している力を、感じる。
「おや、見ない子だねぇ」
陽乃「……ん」
ふと、声をかけられて顔を上げる
高齢の女性
腰もやや曲がった感じのおばあさんは、
陽乃のことをじぃっと見つめて「あぁ」と得心が言ったように声を漏らす。
「歌野ちゃんが言ってた、四国の方から来た勇者様」
- 716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:01:06.96 ID:KsGmZGnIo
-
「えぇっと……そうそう。久遠陽乃さん。だったかねぇ」
陽乃「名前、知ってるんですね」
「どんな子かって話は、聞いてたの」
杏と球子については、何度も外に出ているし
四国の状況などの話も担当していたから、容姿を知っているらしい。
名前も併せて知っているから、
まだ見たことのない少女、久遠陽乃というのが3人目だと考えたのだろう。
「本当に、きれいな桜色の髪をしているわねぇ……染めているの?」
陽乃「は、え、あ、いえ……これは、元からです」
おばあさんの、やせ細った手が陽乃の髪に触れる
嫌だと振り払うわけにもいかず、軽くうなずいて答える。
これは地毛だ。
どうあがいても変えられない、桜の髪
「ここにきてすぐ、入院したって聞いていたけど……もう、大丈夫なの? 休んでいなくて平気?」
陽乃「……大丈夫です」
- 717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:22:47.44 ID:KsGmZGnIo
-
「そう、よかったわ。元気になって」
嬉しそうに笑うおばあさんは、陽乃の髪から手を離す。
「一人?」
陽乃「ええ、少し散歩を」
陽乃は、少し困った笑みを浮かべて答える。
陽乃「上社前宮に……参拝をしに行こうかと」
「そう……大丈夫? 道分かるかしら」
陽乃「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
敵意は感じられないし、ただの一般人
突っ撥ねる必要もないだろうと、
陽乃は、努めて柔らかく答える。
上社前宮に行ったことはないが、
感覚で、位置がなんとなくだがわかっている。
そう遠くはないし、道なりに行けば問題はなさそうだ。
陽乃「では失礼します」
「あぁ、はい。気を付けてね。無理は、しないでね」
陽乃「……大丈夫です」
陽乃は、どうにか笑みを浮かべた。
- 718 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:45:49.23 ID:KsGmZGnIo
-
上社本宮を出てから、道なりに歩いて約30分程度
距離としては2キロくらいだろうか
民家に囲まれた道、
それなりに開けた道
ゆっくりと歩いてたどり着いた、諏訪大社の上社前宮
本宮に比べれば、やや控えめに見える社殿
参拝客は、今はいないようだ
陽乃「……」
『だいぶ、弱まっておるのう』
陽乃「そう、みたいね」
上社本宮と同じように、上社前宮にも御柱がある
だいぶ、力は弱まってしまっているようだが。
『参拝、するのじゃろう?』
陽乃「神様が、参拝するの?」
1、参拝
2、御柱へ
3、拝殿へ
↓2
- 719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:47:55.05 ID:eTMKo6760
- 1
- 720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:48:43.05 ID:YnAKmBn4O
- 1
- 721 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 23:48:54.78 ID:83lKEGpDO
- 1
- 722 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 23:55:06.46 ID:KsGmZGnIo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
- 723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 00:04:09.82 ID:pOTIqBaFO
- 乙
おばあさんに見せた優しさを杏たちにも見せられたらいいのになぁ…
- 724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 00:49:38.11 ID:ZkYemofQO
- 乙
優しさは伝わってると思うけどな
- 725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 17:07:41.66 ID:Nw76iqsHo
- では少しずつ
- 726 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 17:08:13.56 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「まぁ、参拝するって言っちゃったものね」
陽乃はそういって、鳥居の前で立ち止まる
陽乃「私、一応神様の代理だし……手順を省いても怒られないかしら」
『妾が知るわけなかろう』
陽乃「冗談よ」
九尾の素っ気ない答えに陽乃は苦笑して、一度頭を下げる。
こんな世界になる以前から、陽乃は参拝に行くこともあれば、参拝に来る人を多く見かけてきた。
それでも、鳥居をくぐる前に一礼をする人はそう多くはなかった覚えがある。
絶対にしなければならないという、決まりがあるわけではない。
あくまで、そういった所作もある。といった程度のものだ。
陽乃「……神降ろしをしたからって、人が神様になれるわけではないもの。
あくまで、私は神職を担う巫女として、一線の外側だって自覚を持っているべきだわ」
『面倒なものじゃな』
陽乃「でも、久遠という姓が代々受け継いできた巫女としての役割を担う人はもう、あとは私しかいないでしょ?
その私が、いくら、不満があるからって捨てるわけにはいかないじゃない?」
陽乃はそう言って、困ったように笑う。
九尾はいるが、周りにだれもいないからか、
普段より一段と、声色は柔らかい。
- 727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:02:04.88 ID:Nw76iqsHo
-
木々の多い境内、虫の声もせわしなく、
皮膚を焼くような木漏れ日を感じながら、
略式的なお清めの手水舎を過ぎて、内鳥居の方に近づく
陽乃「ねぇ、貴女ならミシャグジ様がどういうものなのか、知ってるんじゃない?」
『知らぬ』
陽乃「そう……」
諏訪の土着の神として、ミシャグジ様と呼ばれる存在がある。
神様とは言うが、本当に神様なのかどうかも不確かだというのは、
人を誑かす妖狐と、神獣としても考えられている九尾と、少し似ている。なんて、陽乃は小さく笑う
陽乃「石の神、木の神。九尾はどっちだと思う?」
『ふむ……木じゃな』
陽乃「どうして?」
『白蛇は屋根に住むといわれておるじゃろう? 石の屋根に取り込まれた蛇は死骸となるが、木ならば、死することも少なかろうて』
陽乃「なにそれ」
くつくつと、九尾はのどを鳴らして笑う。
『ご神体など、関係はなかろう。妾がそうであるように、宿れるものあればそれに宿る。それだけじゃ』
- 728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:20:45.98 ID:Nw76iqsHo
-
石段を進んで、少しばかりの登り道を歩く。
上社前宮の拝殿と、
それを囲むように点在している御柱が見える
陽乃「……弱いわね」
『言うたであろう』
陽乃「でも、思った以上だわ」
力もそうだが、
見た目からして、今にも崩れてしまいそうなほどに、御柱は弱っている。
綺麗に整えられているはずの表面には苔が生え、一部が腐り、
前宮……の部分から先の文字はすでに消えてしまっている。
子供の力で押せば、へし折れてしまいそうな感じだ
陽乃「御柱が、その役目を担い切れてない」
『そのために、主様を頼ったのじゃろう』
陽乃「……」
本宮の方は、どちらかといえばまだ無事だった。
だが、前宮の方はもうすでに限界が来ていて、無理矢理に支えったされているような雰囲気さえある。
陽乃「……これ、私が維持しているってことでいいのかしら」
『触れてみればよかろう』
陽乃「どうせまた、崩れ落ちるんでしょう?」
1、御柱に触れる
2、拝殿の方へ
3、清流の方に向かう
↓2
- 729 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 18:22:14.53 ID:ZkYemofQO
- 1
- 730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 18:22:55.27 ID:IamtyawgO
- 2
- 731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:47:48.51 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「力の引継ぎはもう完了してるし、これまで崩しても面倒なことになるだけだわ」
『それもそうか』
御柱には触れずに、拝殿の方に向かう。
『主様、賽銭はあるのかや?』
陽乃「一文無しよ」
陽乃は意味もなくポケットをまさぐって、首を振る
拝殿にきて、お賽銭なしというのも変だが、
ないものはない。
ポケットを叩いても、増えたりしない。
『仕方があるまい』
九尾がそういうと、影が揺れて女性が現れる。
長い金色の髪に日が当たって……少しまぶしい。
九尾「ここは妾が貸してやろう」
陽乃「貴女、お金あるの?」
九尾「くふふっ、いくらでもあるぞ」
九尾はそういって、手のひらに一万円札を出す。
1枚、2枚、3枚……次から次へと、どこからともなく見せる。
陽乃「人は化かせても、神様は無理だと思うけど」
- 732 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 18:54:43.43 ID:Nw76iqsHo
-
払いのけると、
散らばっていく紙幣は、瞬く間に木の葉へと姿を変える
陽乃がお金を持っていないのだから
九尾だって、持っているわけがない。
素直に諦めて、鈴を鳴らして、基本のあいさつ
お賽銭がないことの謝罪をお祈りの代わりとした。
九尾「欲がないのう」
陽乃「無駄な希望を抱かないだけよ」
九尾「じゃから、小娘どももあしらうと?」
陽乃「理由の一つでは、あるわね」
陽乃は軽く答えて、九尾を置いて拝殿を離れる。
- 733 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:29:41.39 ID:Nw76iqsHo
-
拝殿の隣には、清流が流れているとされていた。
だが、今はもうその流れはほとんど感じられない。
晴れていてもしっかりと流れていたはずなのに、
干乾びてしまったかのように、ほとんどの土が乾いている。
本来流れている分の、半分程度だろうか。
陽乃「……流れが、止まりそうね」
九尾「主様がおれば、元に戻るじゃろうが、時間は少しかかるやもしれぬな」
陽乃「だから残る。なんて、私は言わないわよ」
九尾「妾も、残れとは言わぬ」
陽乃の少し冷めた声に、九尾は顔色一つ変えずに返す。
二人の空気にまわりが静まり返って
九尾「主様には残れぬ理由があるのじゃろう? ならば、思うがままに行動するがよい」
陽乃「言われなくても、そのつもりよ」
諏訪を出て行く。
誰がなんて言おうと、関係ない。
ここに残りたい人がいようと、置いてでも向こうに帰らなければならない。
そうしなければ、陽乃の母親が危ういからだ。
九尾「……」
九尾は、弱い流れのそばに腰を下ろしている陽乃を一瞥して、何も言わずに姿をまた影へと消した
- 734 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:30:48.65 ID:Nw76iqsHo
-
√ 2018年 9月1日目 夕:諏訪
01〜10 水都
34〜43 杏
67〜76 歌野
87〜98 球子
↓1のコンマ
※ それ以外通常
- 735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 19:36:04.70 ID:VYeHfS11O
- あ
- 736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 19:57:33.32 ID:Nw76iqsHo
-
√ 2018年 9月1日目 夕:諏訪
諏訪大社の、上社本宮
陽乃達が今住んでいる神社へと戻ると、
参集殿の近くにいた人影が、陽乃に気づいたのか駆け寄ってきた。
歌野「久遠さん!」
陽乃「……なに?」
歌野「どこに行ってたの? いつもの部屋にいないし、誰も何も聞いてないしで心配したのよ?」
陽乃「少し散歩をしていただけよ」
上社前宮に行った後に、
暫く、適当にふらついていただけだ。
自転車も車もなく、
徒歩だったから少し時間はかかったが、そのくらいでしかない。
陽乃「部屋に引きこもっていたって、暇だったんだから……結界の外に出なければ何していたっていいでしょう?」
歌野「それは違いないけど、久遠さんの場合結界の外にもいきそうだから」
陽乃「否定はできないわね」
- 737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 20:16:14.80 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「まぁ、勝手に単身突撃する気はないわ。今のところはね」
この状況で、わざわざ禍根を残すようなことをする気はない。
何の知らせもなしに単身で周囲のバーテックスをせん滅しても、
次の動きが遅れることになる。
その遅れが、四国までの道のりを険しくさせる可能性があるのだ。
陽乃「その様子だと、それを疑って結界の外にまで見に行ったわけじゃないんでしょう?」
歌野「ええ」
歌野は頷いて、ほっと息を漏らす。
歌野「伊予島さんたちが、散歩を勧めたって言っていたから、そうだろうと思ってたし……」
歌野は、自分の胸のあたりに手を当てて、少し悩ましそうな顔をする。
ちらっと陽乃を見たかと思えば、胸元の手に、ぎゅっと力がこめられた。
歌野「なんとなく、久遠さんのことを感じられる……気がしたから」
陽乃「そう……力のつながりかしら」
歌野「みーちゃんも、同じような感覚があるって言ってたわ。久遠さんがどこにいるのかまでは解らないけど
でも、少し遠くとか近いとか、そういうのは解るって、私と同じように」
- 738 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 20:59:41.20 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「久遠さんのことを考えた時に、そういうのを感じるわ」
陽乃「……そう」
陽乃は特に意識しなくても、みんなのことを感じ取ることができる
みんなよりも、歌野や水都
もともと諏訪の神々とのつながりを持っていた二人は特に感じやすい
だが、それは神様の力を授かった恩恵で歌野や水都にはないと思っていたが、
そういうわけでもないらしい。
力の繋がりを逆探知している……といえばいいのか、
とにかく、その力の主である陽乃を意識していると、感じ取れるようだ。
歌野「それはそれとしても、心配したわ。無事……だろうとは感じていたけれど
ほら、久遠さんんってば、何があるかわからないから」
陽乃「だから、もう体に問題はないって言ったじゃない」
歌野「でも、万が一があるわ」
陽乃「……」
もとはといえば、消えかけていた神様の力だ。
それが加わったからと言って、
もう全く心配いりません。というのは、歌野的には無理があるらしい
1、散歩くらい、一人でいいでしょう?
2、過保護ね
3、放っておいて
4、感じられるなら、それでいいじゃない。
5、はいはい。悪かったわね
↓2
- 739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:06:51.69 ID:cO4PAH8l0
- 5
- 740 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:07:04.97 ID:VYeHfS11O
- 2
- 741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 21:07:16.71 ID:ZkYemofQO
- 4
- 742 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:02:19.81 ID:Nw76iqsHo
-
陽乃「過保護ね」
歌野「久遠さんは私たちの全てだから」
結界を維持するための要であり、
歌野に力を与えている根源でもある。
陽乃が死ねば結界は一瞬で食い破られ、
歌野は諏訪を守る力を失い、ただの少女に戻ることになる。
歌野「万が一も何もないようにしたいの。過保護……だとは思うわ。でも、そうしなきゃ」
歌野は、少し申し訳なさそうにしながらも、笑みを浮かべる。
不安の色が、見え隠れしている。
歌野はポジティブな子だと聞いたが、
陽乃の前では、その印象はやや薄い。
歌野「久遠さんから感じる力は、何も問題ないわ。むしろ、強いくらい」
陽乃「なら心配しなくていいじゃない」
歌野「久遠さんってば、意地悪だわ」
歌野はそう言って、困ったような笑い声を漏らす。
歌野「その強い力も、久遠さんがいなければ消え失せちゃうでしょう?」
- 743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:33:22.37 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「だから、過保護でも許して欲しいわ」
お願い。と、続きそうな歌野の表情
それに対する陽乃の表情は、少し、申し訳なさそうで。
けれど、閉じた歌野の瞼の奥、瞳にその姿は映らない。
歌野達にとって、なくてはならないもの
神様によって、無理矢理に作り替えられたものだ。
陽乃「……そうね」
歌野「でも、安心して? 四国に行けば多少は緩くできると思うから」
諏訪の結界維持という、重大な要素が無くなれば、
健康になった陽のなら、そこまで過保護にならなくてもいいのではと、歌野は思う。
陽乃「諏訪を捨てること、恨まないの?」
歌野「今更だわ。久遠さんには久遠さんの目的と理由があるでしょう?」
歌野は優しく、応えて。
歌野「何より、それがあって、単独で突破できるだけの力があって、一人でさっさと出て行かずにいてくれてるだけ、感謝だわ」
歌野は、そう言った
- 744 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 22:35:41.60 ID:Nw76iqsHo
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 歌野「なんだかんだ言って、みんなのことを考えてくれてるのよね」
ぞろ目 特殊
- 745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 22:39:20.13 ID:ZkYemofQO
- あ
- 746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:10:22.45 ID:Nw76iqsHo
-
歌野「なんだかんだ言って、みんなのことを考えてくれてるのよね」
陽乃「別に、考えてるわけじゃないわ」
陽乃はその好意的な言葉に対して、首を横に振る
陽乃「ここには勇者が3人いる。それを捨てるわけにはいかないだけ」
歌野「3人じゃないわ。5人よ。久遠さんとみーちゃんがいるから」
陽乃「なら、4人ね。そこに私を数える必要はないもの」
陽乃は、笑みを浮かべる。
水都は巫女だが、
彼女を勇者と言いたいのなら、それで構わない。
だが、自分を加える必要はないと。
陽乃「いずれにしろ、それが理由よ。私が、理由なしに他人を助けるなんてないわ。一般の人は、あくまでついでよ」
歌野「……」
陽乃のそれは、謙遜ではない。
拒絶だ。
歌野「ついででも十分よ。おいて行けって、言わないんだから」
- 747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:30:36.22 ID:Nw76iqsHo
-
歌野も、杏も球子も
みんなが諏訪の住民たちを一緒に連れ出そうとしているから、仕方がない
そう言われるかもしれないが、だとしてもだ。
歌野「そもそも、お母さんのために向こうに戻りたいって言うんだから、それ以外は必要ないわ」
陽乃「そう」
素っ気ない返し
でも、その口で母親がいるから戻らなければいけないと、言ったのだ。
少なくとも、大切な人がいて
何があっても、そのために行動できる心がある
なのに、今すぐに……とは言わないでいてくれている。
十分だ。
陽乃の態度がどうであれ、それだけで。
歌野「……」
歌野は、小さく笑う。
声に出さずに、口元だけ。
歌野「ねぇ、お夕飯は一緒におそばを食べに行くのはどうかしら。おすすめがあるの」
1、お断りよ
2、別に、いいけど
3、勝手にしたら?
4、何も言わない
↓2
- 748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:30:51.24 ID:yiweYbBN0
- 2
- 749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:36:26.18 ID:cO4PAH8l0
- 2
- 750 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/16(日) 23:43:36.84 ID:Nw76iqsHo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 23:50:16.97 ID:VYeHfS11O
- 乙
あれだけ突っぱねたり問題起こしたりしても信じてくれるうたのん優し過ぎる…
- 752 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/17(月) 01:13:46.71 ID:HDS9blGeO
- 乙
みんなでお蕎麦イベントか
馴染んできたな
- 753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 22:33:10.37 ID:/RCL9s8jo
- では少しだけ
- 754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 22:36:57.70 ID:/RCL9s8jo
-
陽乃「別に、いいけど」
歌野「えっ、いいの!?」
陽乃「冗談じゃないならね」
歌野の思ってもみなかった反応に、陽乃は顔を顰める。
歌野「冗談なんかじゃないわ! ただ、久遠さんのことだから断ると思ってただけで」
陽乃は、よくよく突っ撥ねる
水都には時々付き合っているのは見かけるが、
巫女として、必要だからという理由がある。
必然じゃない夕食の同伴なんて、9割断られてもおかしくはなかった。
歌野「だから……ふふっ、嬉しいわ」
陽乃「……そっ」
陽乃への弁明のような形になった、困り顔
けれど、そこには笑みもあった。
陽乃はいつも通り素っ気なく返して。
陽乃「で? ほかの人には言ってあるの?」
歌野「これから言うわ。でも、大丈夫よ」
絶対にみんな来てくれる。
歌野はその確信があった
- 755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 23:16:40.87 ID:/RCL9s8jo
-
歌野が思っていた通り、みんなは二つ返事で外食を決定した。
普段は、蕎麦よりもうどんだという球子も、さすがに文句ひとつ言わなかった。
陽乃「お蕎麦しかないって、話だけど」
球子「たまには、悪くない」
陽乃「そう」
杏「私、こんな時間に子供だけで外食するのって、初めてです」
水都「私は……うたのんとだったら、何回もあるよね」
歌野「ふふっ、そうね」
数えられないくらいあった。と、歌野が嬉しそうに言うと
水都も併せて、笑みを浮かべる
球子「タマもないな……普通に中学生だったら、部活に入ったりして、部の仲間と打ち上げみたいなのもあったかもしれないけど」
杏「四国だと……夕方以降は基本的に寄宿舎待機だったもんね」
指示が出ていたわけではない。
けれど、不思議とみんな、そうだった。
それと比べると、諏訪はあまりにも自由だ
- 756 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/17(月) 23:50:52.57 ID:/RCL9s8jo
-
球子「そうだなぁ……千景は、夜出歩くと久遠さんに何されるかわからないわって、言ってたな」
陽乃「へぇ」
球子「陽乃の噂は、結構……なんていうかな」
杏「声が、大きかったからね」
言葉に迷う球子の隣にいる杏が、代わりに言う。
千景は当然のように知っていたし、
球子や杏達だって、悪い話ばかり聞いていた。
もちろん、杏はそれを鵜呑みにはしなかったし、若葉や友奈は慎重だった。
歌野「でも、実際に生活してて久遠さんが残虐な人だって感じることはなかったでしょ?」
球子「残虐かはともかく、油断できないやつだとは思ってた」
水都「……積極的に声をかけたりとか」
球子「しなかったな。避けられてるなーって感じはあったし、タマも避けてた。若葉は、ちょくちょく絡んでたけど」
球子は、あの頃は悪かったなと、困り気味に笑って。
球子「陽乃の分は、タマがおごってやるぞ!」
陽乃「はぁ?」
杏「たまっち先輩……」
球子が奢らなくても、ここは奢りだ。
球子が奢る隙はない
1、向こうに戻ったら、そばは食べにくくなるわよ
2、白鳥さんたちは食べ納めしておくことね
3、別に気にしてないわ。事実、避けていたし
4、今はこうでも、貴女達も、向こうでの私の評判を聞いたら怖くなるわよ。
↓2
- 757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/05/17(月) 23:51:25.96 ID:TtfSK4n00
- 踏み台
- 758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/17(月) 23:53:10.85 ID:HDS9blGeO
- 4
- 759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 00:12:09.68 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「今はこうでも、貴女達も、向こうでの私の評判を聞いたら怖くなるわよ」
水都「久遠さん自身から、話を聞いてるのにですか?」
陽乃「私が本当のことを語ってるって?」
水都「うん、信じてる」
客観性がないと陽乃は言いたくなったが、
その部分はもう、杏達が埋め合わせしてしまっている。
それはきっと、じゃっかん陽乃寄りの話だろうけれど
でも、それでも水都の返事は変わらないだろう。
「みんな、おまたせ〜」
空気を割くように、お蕎麦が運ばれてくる。
歌野達行きつけのお蕎麦屋さんで
夏場には決まってこれ。となる、ざる蕎麦
天ぷらだったり、とろろだったり
付け合わせは様々だが、基本は一緒だ。
水都「わたし達は、向こうでのうわさがどうであれ……ここで見てきた久遠さんを信じる」
歌野「そうね。自分で見聞きしたものを信じる。それだけよ」
- 760 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 00:18:08.83 ID:OBe6ft3Go
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 761 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 00:23:18.74 ID:PRs0j5HnO
- 乙
仲良しパートが続いててほっこりする
- 762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 00:26:35.19 ID:I1X/wmbNO
- 乙
陽乃さん編になってからこういう日常シーンがすごく貴重に感じる
四国に戻っても平和な場面ができるようになるといいな
- 763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:07:30.74 ID:OBe6ft3Go
- では少しだけ
- 764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:08:04.50 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「言っておくけれど、私の味方をしたところで、いいことなんて何一つないわよ」
諏訪でなら、何にもないが
向こうで陽乃の味方なんて姿勢を見せていたら、石を投げられるだけで済めばいい方だ
杏達が、実際に被害にあいそうだったし
絶対に無理だったが、陽乃を殺そうとしているような状態だった。
陽乃「今のうちに、あらためておいた方が良いわ」
歌野「……そうねぇ。じゃぁ、ナスの天ぷら上げる」
陽乃「は?」
水都「山芋の天ぷらもどうぞっ」
陽乃「ちょっと……」
陽乃の天ぷらの小皿に、歌野と水都から一つずつ加えられて。
歌野「山芋は違うけど、ナスは私が育てたの。食べて食べて」
考えを改めるべきだといったのに、
そんなこと気にも留めていないかのようだ。
歌野「少なくとも、今の私たちには無理よ。今だって、十分に考えての上なんだから」
そんなことより。と、歌野と水都は「いただきます」と手を合わせる
歌野「食べましょ。伸び……ないけど、新鮮なうちにね」
- 765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 22:51:12.15 ID:OBe6ft3Go
-
球子「それにしても、陽乃って捻くれてるくせに、ちゃんとしてるよなー」
陽乃「貴女とは育ちが違うのよ」
水都「土居さんにも、当たり強いですよね……」
なぜだか、ちょっぴり羨ましそうな物言いの水都
一瞬迷って、手を止める。
水都「でも、確かに久遠さんって色々……なんていうか、丁寧ですよね」
言葉遣いや人付き合いは粗いが
布団を畳んだり、衣類を畳んだり、球子が見ていた食べ方とかだって、そう。
しっかりとしている
水都「やっぱり、巫女として勤めていたからですか?」
陽乃「……そうね」
球子「なのに、野宿だって平気でするんだからすごいよな」
陽乃「野宿くらい、貴女だってするでしょ」
球子「タマがするのはキャンプだ! いや、野宿も……まぁ、悪くはないけど」
杏「……」
賑やかな隣の球子をよそに、杏は悩まし気に手元に視線を落とす。
初めから野宿が平気だったわけではないはずだ。
だから、それをできなければならないくらいの変化があったということだろう。
それが、勇者に選ばれたから。というものであればいいが、きっと、そうではないと杏は考えて。
杏「そういえば、諏訪から四国に戻るときは……どうしますか?」
- 766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:04:19.73 ID:OBe6ft3Go
-
歌野「ん〜……車は無理なのよね?」
陽乃「無理ね。徒歩で行くしかないわ」
勇者が一人一台、持ち上げて歩くことはできるかもしれないし、
九尾の手を借りれば、バスくらいどうにかなるかもしれない。
だが、勇者の手をふさぐわけにはいかないし
九尾はさすがに、そんなことに手を貸してはくれないだろう。
水都「まず、何日くらいかかるかを計算して、食料がどのくらい必要かとかも考えて……」
陽乃「自分の食糧は自分で持ってもらうべきね」
球子「でもさ、もてない人もいるんじゃないか?」
陽乃「……足手まといね」
杏「久遠さんっ」
陽乃「事実でしょ」
自力で荷物が持てないとなると、誰かが肩代わりしなければならない。
なにより、自分で荷物を持てない人が一緒だと、それだけ余計に時間がかかる。
自分で荷物を持てないだけならまだいい、まともに歩けない人もいるとしたら……
歌野「……」
1、前から四国行きを決めてた人たちはどうするつもりだったの?
2、そこは、貴女達がどうにかしなさい
3、それも救いたいなら、頑張って
4、自分で代理を探してもらえばいいんじゃない?
↓2
- 767 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:05:24.09 ID:PRs0j5HnO
- 1
- 768 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:05:55.22 ID:q4eH1uQKO
- 1
- 769 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:54:16.82 ID:OBe6ft3Go
-
陽乃「前から四国行きを決めてた人たちはどうするつもりだったの?」
歌野「自力でどうにかできない人は躊躇ってたわ……それもあって、
家財を失いたくないからって言い訳にしてた人も中にはいると思う」
いつ起こるかわからない総攻撃
それの後に移動する予定のため、答えは変わるかもしれないが、
完全に撤退すると言っても、ここに残るつもりの人は少なくないかもしれない。
陽乃「……」
出かけた時に、声をかけてきた人
ただ見かけただけの人
普通に歩けてはいるが、重い荷物を背負って四国までの道のり……と考えると、
難しい人が多かったように思う
水都「何か気になりますか?」
陽乃「別に……自分でどうにもならないって諦めてるならそれでいい
私は助けるつもりなんてないし、予定になったら気にせずここを離れるわ」
歌野「久遠さん……」
陽乃「冗談では言ってないわよ? 私には他人にかまけてる余裕なんてないんだから」
- 770 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/18(火) 23:57:06.89 ID:OBe6ft3Go
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3 杏「もし、助けてくださいって言われてもですか?」
5,8 水都「本当に、見捨てますか?」
- 771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/18(火) 23:58:09.34 ID:q4eH1uQKO
- あ
- 772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/19(水) 00:28:32.54 ID:HyTR2RJOo
- では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/19(水) 00:33:14.71 ID:z0xjt9M3O
- 乙
不穏な空気に
- 774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/19(水) 00:48:07.48 ID:HafthrRnO
- 乙
住人の全員避難はかなり厳しいか…
諏訪の神様の力でどうにかならないかな
- 775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/19(水) 23:52:04.11 ID:HyTR2RJOo
- すみませんが本日はお休みとさせていただきます
再開は明日、可能であれば通常時間から
- 776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 00:28:18.19 ID:hO3EqLW3O
- 乙
- 777 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:20:54.10 ID:x54E8tI2o
- では少しだけ
- 778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:21:42.07 ID:x54E8tI2o
-
球子「それでも、本当に見捨てることなんて出来ないだろ」
陽乃「母親以外を置いてきた私が、赤の他人を見捨てることに抵抗がないとでも?」
陽乃は球子を見ずに答える。
本当は置いてきたわけじゃない。
母親を救えた時点で、そこにはもう、母親しか残っていなかっただけ。
置いていったんじゃない、置いていかれたのだ。
陽乃「平気よ。自分の手で殺すよりは楽だわ」
杏「……っ」
実際に陽乃は、人を殺したことがある。
球子と杏そして、杏の両親
その他多くの人たちの前で、一人の命を奪った。
あれは、明らかに過剰だった。やりすぎだった。
……けれど。
武器をもって立ち向かってきた人への、抵抗
その結果だった。
殺したくて、殺したわけではないはずだ
杏「でも、久遠さんの意見は一理あります。正直な話、他人に他人の分を背負って欲しいというのは状況的に難しいですから」
- 779 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 21:44:38.76 ID:x54E8tI2o
-
球子「杏まで」
杏「でも、現実的に考えるとそうなると思う。もちろん、私だってみんなが助かるようにしたい。けど……」
杏は、竹ざるの隅に残る細かい蕎麦を見つめる。
多くを救っても、どうしても救いきれないものはある。
それが絶対に救えないというわけではないが、
このひとかけらのためにもう一度手を動かさないといけないように
もう一度、諏訪と四国を行き来しなければならないのではないだろうか。
だとしたら、それはあまりにも非現実的だ。
理想を語れなくなったら、勇者としては終わっている。杏は、少しだけそう考えているけれど、
小説の物語ではないのだ
勝利が約束された主人公ではないのだ。
現実で、非現実的な理想を語り続けるのは容易なことではない。
杏「どうしても、見切りをつける必要があると思う」
水都「……」
歌野「現実を見れば、確かにそうなるわ」
出来る限り諦めたくないけど、と、歌野は小さく付け加える。
- 780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 22:11:27.75 ID:x54E8tI2o
-
球子「歌野もあきらめるのか?」
歌野「私一人残って守れるならいいけど、でも、そうもいかないじゃない?」
歌野一人残っても、
陽乃が離れれば、諏訪は終わりだ
だからと言って、諏訪に残ってくれ。なんて強要も歌野はできない。
いや、しようとはしたが、
向こうに大切な人がいる以上、やはり、できない。
杏「久遠さんが離れると、結界も、白鳥さんの力も……」
球子「いや、歌野が残る以外にも何か……ほら、どうにかして、動けない人連れていくとか」
陽乃「貴女がバスでも背負って行けばいいのよ」
球子「無理言うな!」
杏「どうだろう? バーテックスを投げ飛ばしたりできるなら、バスも……無理かな?」
水都「体力的に無理……じゃないかな」
1、私を説得するって言う手もあるわよ
2、諦めなさい。諦めてる人なんて
3、恨んでもいいのよ? 私のせいだもの
4、何も言わない
↓2
- 781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 22:13:00.88 ID:hfhZGk01O
- 1
- 782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 22:13:41.69 ID:q4wF335x0
- 1
- 783 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 22:34:01.95 ID:x54E8tI2o
-
陽乃「私を説得するっていう手もあるわよ」
水都「説得、されてくれるんですか?」
陽乃「話は聞いてもいいわ。応えるかは別だけど」
球子「うわっ」
聞く気ないな。と、あからさまに嫌そうな顔をする球子から顔を背ける
向こうには母がいる。
簡単にそれを覆す気はないし、
何を言われようがされようが、ここを出て行くつもりだ。
陽乃「説得しないの?」
杏「久遠さんのお母さんが向こうにいるんですよね? なのに、ここにいてくださいなんて言えません」
向こうに、その母の支えとなってくれる人物がいるなら、少しは話も変わってくる。
杏の母親などは、それがいる。あるいは、ある。
だから、顔を合わせられないことは少し不安にもなるけれど、大丈夫だと思っている。
けれど陽乃の母には、それがない。
そして、陽乃は自分以外の人々を信用していない。
それなのに、目も声も何も届かない距離の場所に残したままなんて、無理だ。
- 784 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:02:53.77 ID:x54E8tI2o
-
歌野「じゃぁ、久遠さんにここにいる間に恋人でも出来たらどうなる?」
陽乃「はぁ? 出来るわけないじゃない」
向こうに比べれば、諏訪の人々からの印象はいいものだ。
それが異性的な好意であるのかは別の話だが、
もし、中にそんな好意を持ってくれている人がいたとしても、
陽乃は、その人を信用できないし愛せない。
陽乃「無理よ。私には」
球子「わかんないだろ、好きになってくれる人いるかもしれないぞ?」
陽乃「そもそも、恋愛なんかにうつつを抜かしている場合じゃないでしょ
どこぞの男の子が、ピンチに現れてあとは任せろ。なんて言ってくれたって私は恋もできないわ」
杏「現実ですからね」
以前は、自衛隊の人たちがバーテックスに対抗しようとしてくれていたが、
そういったものではほんの少しの足止めになるかどうかという程度。
格好良く守ってくれるような何かなんて存在しない。
なにより、勇者は今のところ数人で、それもみんな女の子だ
陽乃「いずれにせよ、私には……無理よ」
- 785 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:19:53.92 ID:x54E8tI2o
-
水都「でも、いつかまた、そういう余裕がある世界を取り戻したい……かな」
歌野「あら。だれか気になる人でもいるの?」
水都「そういう意味で気になってる人はいないけど、でも、そう思わない?」
一般の人々もそうだが、
何より、勇者に選ばれた少女たちが普通に恋をできるような世界
それはきっと、間違いなく、平穏な世界だ
水都「うたのん……は、そっか。野菜か……」
歌野「ワッツ……こほんっ。解らないでしょ?」
球子「いいや、何か想像つかない」
杏「たまっち先輩だって、想像つかないけど」
球子「なんだとぉっ!」
さっきまでの、真剣な話がそっちのけで始まるどうでもいい話。
陽乃はそれに耳を傾けることなく、増えたせいで残っていた天ぷらをつまむ。
陽乃「……ばかみたい」
陽乃は、たとえ平穏な日常が戻ってきたとしても、無理だと思う
- 786 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:23:22.98 ID:x54E8tI2o
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 水都「久遠さんは、どんな男の子が好みなんですか?」
ぞろ目 特殊
※そのほか交流終了
- 787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:25:21.11 ID:hfhZGk01O
- あ
- 788 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/20(木) 23:40:30.62 ID:x54E8tI2o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:45:35.81 ID:hO3EqLW3O
- 乙
相変わらずみーちゃんコンマ強いな
- 790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/20(木) 23:46:45.87 ID:hfhZGk01O
- 乙
そういえばここまでシリアス続きで恋バナのこの字もしてなかったな
そしてゾロ目補正でどんな話題になるのだろうか
- 791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 22:10:31.80 ID:eLxkLxlio
-
では少しだけ
- 792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 22:11:13.06 ID:eLxkLxlio
-
水都「もしも勇者が、うたのん達みたいな女の子じゃなくて、物語によくあるような男の子だったら
そうしたら、何か、もっといい方に変わってたのかな」
陽乃「私みたいな面倒くさいのはいないかもって?」
水都「そ、そうじゃなくて……」
困り顔の水都は、ちいさくため息をつく。
面倒くさいのは、否定できない。
陽乃からしてみれば水都達も面倒な人たちに思えて仕方がないのだろうから
おあいこ……だなんて、心に思って。
水都「もっと、救いがあったのかなって」
歌野「女の子から男の子に変わったとして何かあるかしら?」
杏「意志とか、力そのものとかは違うかもしれません」
熱血な人とか、正義感の強い人とか、
逆に血気盛んだったり……と、杏は候補を引き出す。
杏「久遠さんみたいに事情がなくても、アウトローな人はいたかも」
球子「逆に悪用するやつとか?」
陽乃「そんなの、男女関係ないじゃない」
九尾「そもそも、主様は神樹とは関係がないからのう。むしろ、討伐対象として付け狙われておったかもしれぬぞ」
陽乃「は?」
水都「えっ!?」
- 793 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:00:31.57 ID:eLxkLxlio
-
5人で座っているため、
蕎麦屋の中でも広い座敷を利用していた陽乃達。
その、余っていたはずの場所に座っている金色の長い髪の女性
真横にいた水都でさえ、それがいつ来たのかもわからずに、
思わず声を上げて、歌野の方にぐっと身を寄せてしまう。
歌野「……だれ?」
九尾「ふむ……妾にも蕎麦を頼む」
陽乃「私はお金ないからね」
九尾「窮乏じゃな……まったく」
ため息をついた女性――九尾は、歌野の質問に答えもせずに、
陽乃の小皿の上に残っていた、山芋の天ぷらを指でつまんでかじる。
球子「……陽乃の知り合いか?」
杏「もしかして、九尾さん?」
九尾「うむ。さっきの話じゃが、主様はまた別の存在じゃからな。
たとえ、勇者に男が選ばれようと主様が妾らの力を与えられることに変わりはなかろう」
それは、陽乃が拒絶でもしない限り変わらなかっただろう。と、九尾は言う。
九尾「なにより――あの場に、たどり着ける勇者はおらぬ」
- 794 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:36:43.42 ID:eLxkLxlio
-
九尾の言葉に、水都がびくっと体を揺らす。
九尾「それに、変えられぬものを仮定する意味などなかろう」
水都「そう、ですけど……」
球子「そんないい方しなくたっていいじゃないか」
むっとして、反論する球子を九尾は横目に見て、
口元だけで、ふっと笑う
球子「何で笑うんだっ」
九尾「得られぬものを望んで何の意味がある? まだ、小娘が勇者として戦えるようになりたいと望む方がよかろうに
変えられぬ過去より、いかようにでもできる未来をどうにかしようと話すのが普通じゃろう?」
陽乃「そうね」
杏「なら、藤森さんが勇者として戦うことも可能だと?」
九尾「ふむ……」
陽乃「食べたければどうぞ」
陽乃から手渡された皿を受け取って、
九尾はまた一つ、天ぷらをつまんでかじる。
九尾「巫女になれたならば、勇者になることも不可能とは言えまい。無論、容易ではないが
主様が諏訪の神の代行者ならば、少しくらい、その遊びもできるじゃろうな」
- 795 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/21(金) 23:55:49.71 ID:eLxkLxlio
-
水都「遊び……でも、可能なんですか?」
陽乃「どうせ、死ぬやつでしょう?」
九尾「くふふっ」
ひなたがそうであるように、
許容量を超えた力の譲渡は、最悪死に至る。
九尾の力ほどではないにしても、
普通の力だって、普通の巫女である水都二はきっと、耐えられない
耐えられる可能性もないとは言えないが、試すわけにはいかないだろう。
九尾「そうじゃな。間違いなく死ぬな」
歌野「だったら、それも無駄な話じゃないかしら」
九尾「一度きりで死ぬとしても、その瞬間に役立つならばそれでよかろう? 出来もしない過去の変化を望むよりはのう?」
球子「二人そろって……」
意地の悪い奴だなとでもいうかのような球子に
それでも、九尾は笑って。
九尾「それと同じように、主様の説得も無意味じゃぞ」
水都「……」
九尾「無駄な時を過ごさぬようにと、心優しい妾からの助言じゃ」
- 796 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 00:16:24.36 ID:6rcIRENLo
-
心優しくない九尾の笑み
だが、実際に無意味なことには変わりがなく、
それが、もし仮に可能であっても途方もないことだとわかっているみんなは、
九尾の意地の悪い話に、強く言い返したりはしなかった。
向こうに、大切な人がいる。
それを、捨てろというなんて、誰にもできることではないからだ。
歌野「それは、わかってるわ。大丈夫よ」
水都のこともあってか、歌野の声はやや冷たい。
九尾「ならば、なすべきことをなすのが先決じゃろうて」
陽乃「……貴女、何のために出てきたのよ」
前触れもなく、
意地悪いことを言って。
ただ、陽乃が余していた天ぷらを食べに来たわけではないはずだ
九尾「主様、覚悟はしておく方がよいぞ。時間は、なさそうじゃ」
陽乃「総攻撃が、起きるの?」
九尾「いいや、起きぬやもしれぬ……起こるとしたら、向こうじゃな」
そう答えた九尾は、指をぺろりと舐める
九尾「あやがあるか……。総攻撃ほどではなかろうが、間違いなく向こうに何か起こる」
1、冗談や嘘じゃないのよね?
2、どうして?
3、なんでそう思ったの?
4、今すぐ、帰るわ
↓1
- 797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:17:34.98 ID:jTB7PFH8O
- 2
- 798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:18:36.72 ID:TdYngnZAO
- 3
- 799 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 00:23:09.15 ID:6rcIRENLo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日は、可能であればお昼ごろから
- 800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:25:05.30 ID:TdYngnZAO
- 乙
若葉と千景がピンチだなこれ、勇者二人しかいないし
考えようによっては向こうに意識が向いてる今こそみんな連れて移動する好機なのかも
- 801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 00:28:25.79 ID:jTB7PFH8O
- 乙
珍しく人間体の九尾がみんなの前に出てきたと思ったら不穏な情報が…
そろそろ四国に戻らないとマズいか?
- 802 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 20:33:46.95 ID:6rcIRENLo
- では少しだけ
- 803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 20:34:23.61 ID:6rcIRENLo
-
陽乃「どうして?」
九尾「それは無論、主様がここにいるからじゃろうな。告げたろう?」
陽乃が来たせいかおかげか、
諏訪の結界はいぜんよりも強固なものになったという話だった。
それがきっかけとなり、
諏訪には手を出さない……出せなくなった。という可能性があるというのは九尾も言っていたことだ。
あくまで可能性だったが、現実味を帯びてきたからこそ九尾は姿を見せたのだろう。
杏「じゃぁ、今も……」
歌野「少なくとも今は無事なはずよ。いくら、久遠さんに不信感を抱いているとはいえ、そういう情報を伝えてこないとは思えないから」
水都「うん。通信の状況はあんまりよくないけど、間違いないと思う」
だが、今は。と、歌野と水都は神妙な面持ちで目を細める。
水都「通信はともかく、内容は"異常なし"だったんです」
歌野「乃木さんほど多くは語らないというか、乃木さん以上に淡白で義務的、まるでコールセンターにつなぐ機械音声を相手にしているみたいで」
うたのん。と、水都に突かれて歌野の愚痴が止まる
九尾「特に、外に警戒に出ているわけでもなかろうからのう」
- 804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 21:12:25.08 ID:6rcIRENLo
-
杏「四国が襲撃されるまでの猶予は解りませんか?」
九尾「向こうにつながっているならばともかく、今の状況では不可能じゃな」
素っ気ない返しをする九尾は、そもそもまだ絶対ではないと続ける。
九尾「じゃが、襲撃が行われる可能性は低くはなかろうて」
球子「なら、戻るしかないんじゃないか?」
九尾「ふむ……人間を連れてかや? それではつく前に襲撃されるぞ?
なにより、連れ出した人間の幾人かは命を落とすことになる。それでも戻るかや?」
九尾は、にやりと嫌な笑みを浮かべる
悪だくみをしているかのような、ほほ笑み。
間違いなく面白がっている。
その目は、陽乃に向いていた。
陽乃「……私を見ないでよ」
九尾「主様じゃろう。鍵は」
陽乃は四国に戻りたいと考えていた。
一般の人々を連れ帰るのはあくまでついでという考えで
今回、一般人を連れ帰る場合、四国が襲撃されるまでには間に合わない可能性が高い。
だが、陽乃が一人で出て行けば諏訪の結界が消えてしまう。
つまり、
四国を諦めるか、諏訪を諦めるか。陽乃次第ということになる。
しかし、諏訪を諦める場合は、そこに住む人々を諦めるということでもある
- 805 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 21:40:41.62 ID:6rcIRENLo
-
球子「タマ達だけで戻るっていうのはどうなんだ?」
杏「戻れる、かな……」
歌野「久遠さんが離れられないなら、私も離れられないわ」
水都「人数的には2人ずつでちょうどいいけど……でも」
外は今、バーテックスが溢れている。
総攻撃を行うために準備されてきた、かなりの数が。
その一部が四国の方に向かったとしても、たった二人でどうにかできる数ではないだろう。
陽乃「……」
四国が落とされたら、疎ましい人々を一掃できる。
だが、あそこには母がいる。
放っておくことなんて出来るわけがない。
99が不快でも、1がそうではないから救わないわけにはいかない。
球子「陽乃、タマ達に任せてくれないか?」
杏「たまっち先輩、戻るの?」
球子「戻るしかないだろ……どう考えても」
向こうには友奈、若葉、千景の三人がいる。
しかし、いきなりの大規模な襲撃に耐えられる保証はない。
球子「こう、前と後ろから……バンッって感じでバーテックスを叩く」
球子は強く両手を叩き合わせる。
1、任せられるわけないじゃない
2、諏訪を諦めるわ
3、少し、時間を頂戴
4、2人でどうにかなるとは思えないわ
5、諏訪周辺なら、私が潰してあげてもいいわ
↓2
- 806 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 21:44:23.67 ID:tO6yh9Ip0
- 5
- 807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 21:44:24.36 ID:TdYngnZAO
- 3
- 808 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:33:07.52 ID:6rcIRENLo
-
陽乃「少し、時間を頂戴」
九尾「時間はないと思うが」
陽乃「……分かってるわよ」
悩む時間を作れば作るだけ、
向こうに戻るのが遅れ、そして、その分だけ被害が拡大する可能性がある
九尾の意地悪な忠告なんて必要ない。
解っている。
自分の都合のみを考えるなら、
迷わず諏訪を捨てていくべきだと。
九尾がいやらしいことを言ってくるのは、
陽乃が普段はそんな姿勢であるくせに、ここで躊躇っているからであることも。
陽乃「すぐに答えは出すわ。私が決めるしかないんだから」
歌野「……そうね。でも一人で悩まなくてもいいのよ? 私たちだって無関係じゃないんだから」
陽乃「貴女達の答えなんて、聞くまでもないわ」
杏と球子を信じろとか
あるいは、向こうに残した勇者たちを信じろだとか
そんな "信じて" だろうと陽乃は首を振る
陽乃「聞くだけ無駄だわ」
- 809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:49:30.27 ID:6rcIRENLo
-
球子は念押ししなくてもみたいな表情をしてはいるが、何も言わない。
杏も、歌野も、水都も
みんな、口を閉ざしている。
説得を聞かないのとは話が違う。
でも、確かに、無駄だろうとみんなわかっていた。
みんな、信じて欲しいからだ
陽乃以外の勇者を、人々を。
それが難しいことをわかっていながら、それでも。
歌野「じゃぁ、そろそろお開きにしましょうか」
歌野はテーブルの上のお皿がきれいになっているのを見て、笑顔で言う。
食べている途中でも、今のこの話は中断すべきだ
歌野「久遠さん、答えはちゃんとみんなに教えて欲しいわ」
一人で行くなんて言えば、確実に反対されるし止められる
だから、陽乃的には何も言わない方が楽といえば楽なのだが。
陽乃「……それも、考えておくわ」
陽乃はそう答えて、まだ手に持っていた箸をおく。
陽乃「ご馳走様」
- 810 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 22:54:18.45 ID:6rcIRENLo
- ↓1コンマ判定 一桁
5,8 水都「久遠さん、食後のお散歩はどうですか?」
2,9 杏「久遠さん、少し時間を貰えませんか?」
※その他、交流終了
- 811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 22:55:44.97 ID:wQiJwJ5B0
- あー
- 812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 22:55:59.78 ID:TdYngnZAO
- あ
- 813 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 23:01:59.30 ID:6rcIRENLo
-
√ 2018年 9月1日目 夜:諏訪
05〜14 球子
27〜36 杏
41〜50 歌野
52〜61 水都
↓1のコンマ
※それ以外は通常
- 814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 23:02:40.74 ID:OA16KQKWO
- あ
- 815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 23:06:41.82 ID:TdYngnZAO
- あ
- 816 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/22(土) 23:38:14.14 ID:6rcIRENLo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 817 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 23:46:18.50 ID:OA16KQKWO
- 乙
みんなを信じることが困難突破の近道な気がするけど
肝心の陽乃さんの心を開くにはどうすれば良いんだろう…
- 818 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 00:04:45.21 ID:1YjnlgOXO
- 乙
球子たちに先行して四国に向かって貰って陽乃たちは諏訪のみんなと一緒に後追いが無難かなあ
もしかしたらピンチになってても粘ってるところに間に合うかもしれないし
なんにせよ早く決めなきゃな
- 819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 18:32:49.36 ID:hWsNg6FAo
- では少しだけ
- 820 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 18:35:36.28 ID:hWsNg6FAo
- √ 2018年 9月1日目 夜:諏訪
陽乃はいつもの部屋で、一人テーブルに突っ伏す。
暗い部屋は影と影も交じり合って、一つの深い闇のように感じる。
そんな黒々とした場所を、睨む。
諏訪を見捨て、人々を捨て、四国に向かうか
母を諦め、四国を委ね、諏訪に残るか
陽乃「……信じる。ね」
杏達は間違いなく、自分を信じて欲しいというはずだ。
そして、四国に残してきた勇者たちのこともまた、信じて欲しいと
信じたら、何があるのか。
最良の結果が返されるとでもいうのだろうか?
いいや、陽乃にとっての最良は母の無事以外にはなく、
それが最も確実なのは陽乃が四国に戻ることだ。
しかし、ここで諏訪を捨てれば、
杏と球子の目の前で人を殺したことよりも酷いことになる。
そしてそれは、言い訳のしようもないほどに、陽乃の責任。
陽乃「……はぁ」
間違いなく、優柔不断だと陽乃はため息をついた
- 821 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 19:31:52.14 ID:hWsNg6FAo
-
だれも信用できない、
誰も自分には関係ない
そうやって切り捨てていくなら、迷う必要はない。
だが、陽乃は答えをためらった。
関係ない、今すぐ四国に戻るわ。そう、言えなかった。
陽乃「迷ってるの……? ここの人を見捨てるかどうか」
来る前も、来た当初も
歌野と水都はともかくとして
ほかの人は見捨てるつもりでいた。
なのに、ふたを開けてみればこれだ。
陽乃「……」
みっともないというべきか
情けないというべきか
陽乃「……みんなには、聞くだけ無駄なのよね」
信じて欲しい。そういわれるだけだから。
九尾に関しては、少なくともからかい半分で来るだろう
- 822 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 20:03:49.45 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃の行動ですべてが決まる。
諏訪の神々の嫌がらせによって、諏訪の結界の要になってしまった結果だ
陽乃が望んだわけでもないのに押し付けられた役目。
陽乃「あぁもう……」
可愛さも余らずに、憎さが増すばかり。
この押し付けさえなければ、
何も迷うことなく、出て行くことができた。
陽乃「……」
まるで、試されているみたいだ
人を救う勇者たり得るか
それとも、そんなこともしない、勇者なり得ない存在なのか。
もしここで、
神々を裏切って諏訪の人を見捨てたら、祟られるのだろうか?
陽乃「厄介だわ」
- 823 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 20:20:47.47 ID:hWsNg6FAo
-
これで祟られるのならあまりにも理不尽だが
それが神様というものだろう。
もう諦めるしかない。
だが、人は。
陽乃「……っ」
悩む時間は短い方が良い。
早ければ今すぐにでも四国に発っておくべきだ。
球子と杏に委ねるのなら、なおさら。
陽乃のように、半日でたどり着けるわけではないのだから。
陽乃「……九尾が、送り迎えだけしてくれる。わけがないし」
九尾が可能なら、
球子と杏を四国に送ってもらえばいい。
何が起こるかはわからないが。
道中の安全と、長い距離はそれで解消できる。
陽乃「……どうせみんな、私が優しいから悩んでるんだとか、変な誤解するんだわ」
1、九尾を呼ぶ
2、伊邪那美を呼んでみる
3、みんなのところへ
4、陽乃が四国に向かう
5、任せる
↓2
- 824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 20:24:36.90 ID:PQppQQvIO
- 1
- 825 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 20:25:02.02 ID:5zCyBKyI0
- 1
- 826 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 20:48:19.94 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「九尾、どうせいるんでしょう?」
陽乃がそう声をかけると、
暗闇の中に一人分の形が浮き上がって、女性の姿で九尾が姿を見せる。
相変わらず、自然発光しているかのように目に悪い。
九尾「何を悩む必要がある」
陽乃「言いたいことは解るけど」
九尾「勇者の不興を買うのが怖いのかや?」
九尾はそう言っておきながら、いいや違う。と否定する。
陽乃は目を向けたが、
暗い部屋の中では、九尾の表情の変化まではつかめない
九尾「捨てきれておらぬのじゃろう? 無駄な情を」
陽乃「……私は」
向こうで散々な目に合った。
だから、諏訪の人々もみんな同じような人々。
そうやって一くくりに出来ればいいのに、
陽乃はそれができていない。
九尾「主様は、人を憎むことができておらぬのじゃな。できておるならば、悩むはずがない」
- 827 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 21:37:22.11 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「憎んでるわよ」
九尾「ならばなぜ見逃し、悩み、躊躇う? 人が憎いならば、みな同じであると見限ることができるならば今ここでそうしている主様はおらぬはずじゃろうて」
九尾は息を吐く。
ため息ではないのに呆れている感じが強い。
九尾「だれに止められるでもなく、むしろ妾を止めるであろう?」
陽乃「……でも」
九尾「憎いかや? なら、人間など救う価値がないと切り捨てればよい」
助けた結果があれなのだから。
救ってあげたところで、
噂に流されて陽乃を悪く言う人も少なくなかった。
救えば救うほどその声が大きくなると思えば、
九尾が言うように、切り捨ててしまうべきだ。
九尾「主様、ここが分岐点じゃぞ。他人を諦めるのか、救ってしまうのか」
母親と、赤の他人
ここで母親をとれなかったのなら、陽乃は他人を諦めることができないことの証になる。
杏も、球子も、歌野も水都も
きっと、目障りだなんて突っ撥ねることが難しくなるかもしれない。
何を言ったって結局、陽乃は他人を思うことのできる少女だと、言い返されるだろうから
1、諦める
2、諦めない
3、貴女なら、どうする?
↓2
- 828 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 21:40:22.10 ID:5zCyBKyI0
- 2
- 829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 21:41:19.92 ID:PQppQQvIO
- 3
- 830 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 22:24:43.52 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「貴女ならどうする?」
九尾「くふふっ、愚問じゃのう」
九尾が笑うと、女性には似つかわしくない牙が見える。
段々と夜目にもなれて、顔がやんわりとわかる。
赤い瞳は細く、口元はニヤリとしていて
九尾「妾は人間など救わぬ。有象無象など投げ捨て己の欲に従う」
陽乃「諏訪が滅ぶとしても?」
九尾「妾に関係があるかや?」
陽乃「いろいろお世話になったとしたら?」
九尾「人間が自分勝手に行ったことじゃろう? 妾が望まぬともそれを行い、見返りがなければ悪だと言う。そんな人間など捨て置けばよい」
九尾は悩むことはない。
それが当然だと疑っていないのだ。
九尾「何じゃ主様、世話になったなどと気にしておるのかや?」
陽乃「多少はね」
九尾「向こうでは、世話になった主様を邪険にしているというのに?」
- 831 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 22:51:22.44 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「だからって同じことしたら、私も同じ人間になっちゃうじゃない」
九尾「そういう言い訳かや?」
陽乃「そんなつもりはないけど」
九尾「主様はやはり、甘いな」
九尾の声は不審なほどに柔らかい。
九尾は陽乃が人間を見限ることができないと思っているようだ。
それを悪いとは言わないが、悪いと思っているかもしれない。
闇の中の赤い瞳が消える
九尾「主様が、人間を諦められないというならばそれでも良い。妾は、救う価値などないとは思うがのう。
妾は妾、主様は主様じゃ。その選択によって、後悔するのもまた、主様じゃ」
陽乃「貴女、後悔するって思ってるのね」
九尾「うむ。以前の主様はそうじゃろう?」
- 832 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 23:11:58.72 ID:hWsNg6FAo
-
九尾「人間を救ってどうする。あの場所に連れ帰ってどうなる。人間など、間引いてもよかろう」
陽乃「……間引く、ね」
九尾は人間ではない。
人の形をしてはいるが妖狐だ
だから情なんてなく、非情なことでも決断できる
九尾「これ以上、余計なものは抱え込まない方がよいと思うが」
九尾はのどを鳴らす。
九尾「なにより人間を連れ出すならば時間が足らぬ」
その場合は杏と球子
そして、向こうに残してきた勇者たちに委ねなければならないと、九尾は言う。
陽乃もそれは解っている。
九尾「妾はあの小娘らよりも、聞くだけ無駄であろう? なにせ救う気などないのじゃからな」
陽乃「ええ」
全くの無駄だったわと、陽乃は首を振る。
- 833 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 23:24:14.33 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃の反応を見て九尾はくつくつと笑う。
口元に手をあてがって隠す少し上品ぶった仕草をして
細められた赤い瞳が陽乃を見据える
九尾「諏訪を捨てるならば妾も手を貸そう。じゃが、主様は小娘どもから睨まれることになろう」
陽乃「なのに見捨てるべきだってあなたは言うんでしょ?」
九尾「無論じゃ。主様にとっての母のような存在がおるならば他人のことなど気にする必要もない」
そして、本当に突き放したいなら
あえて恨まれる選択をするべきだ。
みんなは諏訪のことを考えてくれるようにと思っている。
だが、そうすれば母が助かる可能性は、低くなるかもしれない。
最悪、四国が崩壊してしまう可能性だってある。
陽乃「っ……」
杏と球子は、一応ここに来てから実戦経験を積んでいる。
模擬戦の約束ははたしていないけれど。
陽乃「私は……」
1、杏達に任せる
2、杏達に任せない
3、みんなのところへ
↓2
- 834 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 23:27:33.19 ID:72OKy929O
- 3
- 835 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 23:28:40.94 ID:1YjnlgOXO
- 1
- 836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 23:28:55.66 ID:5zCyBKyI0
- 3
- 837 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/23(日) 23:49:45.11 ID:hWsNg6FAo
-
陽乃「いいわ。あの子たちに任せる」
九尾「ほう?」
陽乃「白鳥さんが3年間耐えられたんだから、2人を含めた5人での防衛なら凌げるはずだし
なにより、私がこの先もお母さんと生き残ることを優先するなら、無駄に不興を買う必要はないわ」
そして、2人がいなくても諏訪の防衛はできる。はずだ
陽乃「それに、通信に上里さんを引き出せる可能性もある」
九尾「四国に戻るならば、不要じゃが」
陽乃「今回の件で、バーテックスの動きに変化があって諏訪に長く残る必要ができるかもしれないじゃない」
九尾「ふぅむ……そうじゃな」
九尾は納得したようにうなずく。
九尾「ならば、小娘に主様の母親をこっちに連れてこさせるのはどうじゃ?」
陽乃「そこまでの信頼はしてないわ」
九尾「そうか」
陽乃は九尾を睨んで、拒絶する。
平和だったころならまだしも、そうではない陸路の旅路
多少の実戦経験があろうと、許せない
陽乃「それはそれ、これはこれ。四国を任せるだけで母の身の安全まで任せる気はないわよ」
- 838 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 00:24:34.40 ID:iSEXsu9wo
-
九尾「みなの意を酌んだと思われて厄介なことになるやもしれぬぞ?」
陽乃「別にいいわよ」
事実を言ったって、
どうせ、みんなはそれを曲解する
今まで厄介だったのだから、これからも厄介になろうと関係はない。
陽乃「2人を四国に戻せば、2人まで手にかけた話も消えるだろうし」
九尾「そんなこともあったのう」
千景はその噂を信じているのだったか
どちらにせよ、陽乃への憎さは変わらないだろうが、
勇者を手にかけたという噂一つ減れば
ほかのうわさも……と、連鎖するかもしれない。
とはいえ、人一人殺した事実がある以上はどうにもならない。
九尾「まぁよい。主様がそうするならば、妾は従おう」
陽乃「天ぷらあげたんだから、そうじゃなきゃ困るわ」
九尾「くふふっ、次は蕎麦で頼む」
九尾のからかうような声に何も言わずに、
陽乃はさっと、部屋を出て行く
- 839 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 00:28:50.21 ID:iSEXsu9wo
-
では途中ですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 00:48:29.63 ID:YH32QPXyO
- 乙
諏訪の人たちを裏切れないしな……
- 841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 06:10:39.35 ID:fCgq3hjvO
- 乙
とりあえず陽乃さんが諏訪を出るのは頃合いを見てという感じかな
- 842 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 22:51:02.80 ID:iSEXsu9wo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 843 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 22:53:32.29 ID:iSEXsu9wo
-
陽乃「というわけで、貴女達の案に乗ってあげるわ」
球子「上からだなぁ……」
陽乃「母のことを任せられるとは思っていないけど、でも、貴女達が生きていることの証明もできるし
私の評判はともかく諏訪との往復が可能なこと、諏訪にはまだ生存者がいること。伝えるべきことが多いから」
陽乃は少し考えて、球子を見る
陽乃「とはいっても、貴女達が向こうにたどり着けなければ意味がないわ」
九尾の力を借りなければ、どう頑張っても半日で戻るのは不可能だ
不眠不休で、全力
それならどうにかなるかもしれないが、それはバーテックスがいないこと前提になる。
途中で戦闘する危険性を考慮すると、
注意力をそぐようなリスクをわざわざ背負う必要はない
陽乃「絶対に生きて戻ることができるのよね?」
球子「でき――」
杏「……外の状況次第です」
出来ると言おうとした球子
それを、杏は遮って偽りなく答える。
自信満々に言うべきだっただろうか。なんて、迷っていない。
杏「約束したいです。気持ち的には絶対だって言いたいです。でも、その約束はできません」
- 844 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 23:13:32.72 ID:iSEXsu9wo
-
球子「杏はタマが守るぞ」
杏「ありがと……もちろん、たまっち先輩のことは信じてる。でも、諏訪の周辺で数回戦って思ったんだ
どれだけ力があっても、やっぱり、物量で押し込まれることがあるんだって」
歌野と球子、そして杏
三人で、襲撃に対応したこともあった。
その時も一人当たり数えるのも手間なほどだったが、
想像以上に力のある歌野を起点に、それをカバーするような形でどうにか切り抜けることができたというだけ。
今回は、その歌野さえいないのだ
歌野「道中、無理に戦う必要はないと思うけど」
杏「もちろん、可能な限り戦闘は避けようと思ってます。だけど、総攻撃の準備が行われた諏訪周辺
襲撃の可能性が控えている四国周辺。そして、その中間地点。どこも安全な場所がないと思っておいた方が良いと思います」
球子「ならどうするんだ?」
杏「……頑張るしかない。と、思う」
球子「そんな根性でどうにかなんて、言う方がおかしくないか?」
杏「本来の時間よりも、かなり時間をかければ安全に行けるかもしれない。でも、それだと間に合わないから急がないといけない
なのに、一度戦いになれば次から次へとバーテックスが来るかもしれない」
水都「九尾さんは、力をお借りできないんですか?」
- 845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 23:28:41.97 ID:iSEXsu9wo
-
陽乃「あのひねくれ者が力を貸してくれると思う?」
飼い主に似るんだな。なんてつぶやきが聞こえたが、
聞こえなかったふりをして球子を一瞥する。
にこりとしたつもりだったが、球子はさっと顔を背けてしまった。
陽乃「私になら力を貸してくれる。でも、貴女達のために力を貸してくれるとは思えないけど」
聞くだけ、聞いてみようか?
なんて、どうせ聞いているだろうけれど、思ってみる。
聞いているならさっきみたいに口挟んでくれてもいいものだが。
諏訪周辺だけでも、陽乃が蹴散らしてしまうのも一つの案だ
水都「そもそも、久遠さんから離れたら逆に久遠さんが力を使えなくなっちゃったりするとか」
陽乃「それは、ないと思うわ」
九尾以外にも力はある。
今の状況なら扱えるという話だが、あまり確かめたくない力が。
1、九尾を呼ぶ
2、諏訪周辺は、私が蹴散らしてあげるわ
3、自信がないなら、私が行くけど?
↓2
- 846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 23:30:00.41 ID:huUzHgVQO
- 1
- 847 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/24(月) 23:30:34.36 ID:ynMoTjBf0
- 1
- 848 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/24(月) 23:55:53.92 ID:iSEXsu9wo
-
陽乃「九尾、どうせ聞いてるんでしょ?」
陽乃が呆れながら言うと、足元から延びる影が歪んで、揺れて
不自然に盛り上がったかと思えば、人の形に変わって、生まれる
歌野「わぁお……」
九尾「くふふっ、妾はめのこでも構わぬぞ」
なびく金色の髪、深紅の瞳、色白の肌
スタイルもいい女性としての姿に感嘆の声を漏らした歌野を、九尾は悪い目で見る
陽乃「そういうのはいいから」
九尾「ふぅむ……」
九尾は肩を落として見せるものの、顔つきは全然だ
九尾「まぁよかろう。じゃが、妾は小娘を運ぶなどしてやるつもりはないぞ」
歌野「どうしても?」
九尾「今の主様ならば、小娘二人減っても問題はなかろう」
球子「なっ!」
九尾「それと結論から言えば、主様は妾がいなくとも力の行使は可能じゃ。もっとも、必要な場合を除いて使うべきではないがのう」
- 849 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 00:00:03.22 ID:CYW+9YxIo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 850 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 00:10:44.72 ID:WGQ/5I0CO
- 乙
できたら九尾の説得したいけどダメなら諏訪周辺をなんとかするのが先かな
- 851 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 01:36:50.71 ID:72bwNrPBO
- 乙
少しでもいい方向に向かってくれることを祈るしかない
厳しいと思いつつも前向きなあたりは球子と杏もさすがに諏訪の人々見殺しにするのはと思ってくれてるんだろうか
- 852 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 21:08:27.13 ID:CYW+9YxIo
- では少しだけ
- 853 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 21:12:34.34 ID:CYW+9YxIo
-
水都「それで久遠さんがまた倒れる可能性もあるということですか?」
九尾「ある」
心配そうな水都に、九尾は断言する
今の陽乃はちょっとやそっとのことでは影響を受けない
しかし、それはあくまで九尾の力であればという話だ。
もう一体の、切り札ともいうべき存在の力は九尾のそれをはるかに凌駕している。
力を使うでもなく、ただ姿を見せた状態で陽乃が昏倒するほどだったのだから
実際に力を使った場合の影響は使ってみなければわからない。
だが、ないことだけはありえない。九尾がそう、判断したということだ。
水都「なら、久遠さんにその力を使ってもらうわけにはいかない」
歌野「そう、ね。九尾さんはそもそも嫌だと言うし、残念だけど四国には二人でどうにか戻ってもらうことになるわ」
杏「もともと、そのつもりです」
球子「楯をぶん投げて乗り物に出来たりしたらいいんだけどなぁ……あの、なんか、投げた丸太に乗る的な」
歌野「その楯の大きさじゃ、ちょっとね」
- 854 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 21:51:31.52 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「楯を大きくしたらいいじゃない」
球子「平然と無茶言うなよ」
陽乃「九尾は大きくも小さくも人間にもなれるから、貴女もどうにかしなさい」
球子「だから無理だって!」
声を上げて頭を抱える球子は、
それが出来たら苦労しないんだよと、テーブルに額を叩きつける
陽乃「伊予島さん、ルートは?」
杏「えぇっと……たまっち先輩どいて」
球子「ぉぁっ」
球子の頭をグイっと押しのけて、
陽乃が考えている間に用意していた地図をテーブルに広げる。
杏「まっすぐとはいきませんが、九尾さんの力で飛び越えてきた道の下を進もうかと思ってます」
陽乃「……京都じゃなくて奈良側を通った方がいいんじゃない?」
歌野「それだと時間がかかるわ。敵が多いのは承知の上で、可能な限り見つからないように行くしかないって言うのが私たちの考えよ」
- 855 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 22:23:29.96 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「兵庫岡山ルートよりは時間もかからないのに……まぁいいわ。大きく遠周りしてもたどり着けるとは限らないし」
陽乃は地図に影を落として、ふっと息を吐く
陽乃「九尾はどう思う?」
九尾「手堅い道などあるまい。ならば、時を重んじるのはむしろ堅実とも言える。問題はなかろう」
陽乃「そう……」
問題は、それで本当に無事にたどり着けるかということ
それだけはもう運だ。
そして、球子と杏の戦闘における実力次第。
残念ながら、不安しかない。
陽乃「九尾――」
九尾「断る。妾は小娘どもを背に乗せる気はない」
水都「久遠さんが倒れるかもしれないので、それは大丈夫です」
水都は陽乃に首を振る。
そんなことはされても困ると。
陽乃に万が一のことがあれば、歌野まで駄目になる。
そんな危険は冒せない。
陽乃「……」
1、諏訪周辺、私が潰すわ
2、いいわ。ならそれで頑張りなさい
3、出発は?
↓2
- 856 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 22:23:59.38 ID:72bwNrPBO
- 1
- 857 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 22:24:53.09 ID:E7+vm2nF0
- 1
- 858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 22:45:44.48 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「諏訪周辺、私が潰すわ」
水都「えっ」
陽乃「予定通り、私が単独で諏訪周辺のバーテックスを一掃してあげる」
歌野「それなら私も!」
陽乃「貴女は駄目よ。温存させてもらう」
手を挙げた歌野を、陽乃は制止する。
歌野は3年間を戦い抜いたうえ、
今では陽乃の力で強化まで施せる
勇者の中で一番力があるのは、歌野だ
それなら、総攻撃にだって耐えうるかもしれない
陽乃「私の力で諏訪周辺を一掃してバーテックスの注意を引くわ。白鳥さんはそのあとの対処に回ってもらう
伊予島さんたちはその隙に、抜け出していきなさい」
杏「久遠さんを囮にしろと?」
陽乃「野宿で虫には慣れたから、誘蛾灯くらいにはなってあげるわ」
球子「大丈夫なのか?」
陽乃「貴女達よりはずっと問題ないと思うけど」
- 859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 23:05:59.30 ID:CYW+9YxIo
-
球子はそりゃそうだとうなづく。
諏訪にいる勇者……陽乃は自分を数えないが、
数えた4人の中で1番と2番の2人と3番4番の2人
どちらがより問題なのかは明白。
否定する理由もなくて、球子は笑う。
球子「良いよ。わかった。でも、やりすぎないでくれ」
陽乃「……以外に素直ね」
球子「陽乃の力は認めてるし、必要なことだから仕方がない」
球子はそういって。
球子「それにさ、陽乃が自分の力を認めてるってことだからな」
杏「その代わり、絶対に四国にたどり着きます」
陽乃「……約束なんてしなくていいわ」
約束しますと、胸に手を当てた杏に陽乃は冷たく言い返す。
けれど、杏は笑って。
杏「約束は出来ないって言ったじゃないですか」
陽乃「そうね」
杏「だから、結果で示します。私達が信じるに値する友人だってことを」
陽乃「……」
球子「任せろ。うまくやってみせるさ」
- 860 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 23:35:53.60 ID:CYW+9YxIo
-
陽乃「……変わらず勝手なこと言ってくれるじゃない」
陽乃は呆れたように言って、球子たちから目を離す。
こんなのはまるで、約束すると言っているようなものだ。
陽乃「やるというならやり遂げて見せなさい」
杏「はいっ」
水都「久遠さん、殲滅はいつ行いますか?」
陽乃が行動してからの移動になるから、
やはり、これもまた陽乃次第になってくる。
あれもこれも決定権を与えられると困ると陽乃は顔を顰めたが
自分が言い出したことだ。
陽乃「そうね……」
なるべく早い方が良い
陽乃が一掃した後、2人の移動がある。
陽乃が1日後に行えば、球子たちの到着が1日遅れる
1、明日早朝
2、明日昼
3、明後日早朝
4、明後日昼
5、それ以外 ※再安価
↓2
- 861 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 23:36:59.60 ID:WwfpkGlFO
- 2
- 862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 23:37:02.67 ID:72bwNrPBO
- 1
- 863 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/25(火) 23:39:13.22 ID:CYW+9YxIo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/25(火) 23:48:13.71 ID:WwfpkGlFO
- 乙
最終的に陽乃さんたちもいつか諏訪を出るだろうし次の日早々に動いたほうがいいか
それにしてもやっとのことで団結して役割分担できるようになって嬉しい
- 865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/26(水) 00:17:46.88 ID:B9FoOLikO
- 乙
朝飯前という具合で片付けてしまおう
諏訪の人たちもいつか大移動しなきゃいけないし杏たちが頑張ってる間こっちも移動できるように準備がんばろう
- 866 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/26(水) 23:38:26.79 ID:gY6RsURNo
- 遅くなりましたが少しだけ
- 867 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/26(水) 23:39:07.96 ID:gY6RsURNo
-
陽乃「明日の早朝、さっそく出てくるわ」
球子「準備はいいのか?」
陽乃「必要ないわ。十分、ため込んだもの」
杏「なら、早く休まないとですね」
杏は少し残念そうに笑う。
もう少しここで、みんなで過ごしていけると思っていたのが、
急に、明日別れなければならなくなったからだ
歌野は少し悩んで、頷く
歌野「そうね。早く寝なきゃ。久遠さんも今日はさすがに寝るでしょう?」
陽乃「ん……」
正直眠くはない
相変わらず、覚めきっている
九尾「今の主様なら、寝ずともよかろう」
水都「駄目です。体は人間なんですから、精神的に問題がなくても、体が壊れます」
九尾「ほう? 小娘が妾に言うか」
水都「明日の朝、すぐに決行するなら休んでください。無理にでも」
九尾の視線を受けても、
水都は怯むことなく、陽乃へと目を向ける。
- 868 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/26(水) 23:58:33.60 ID:gY6RsURNo
-
水都「今は平気でも、時間になって何かがあったら困ります」
陽乃「解ってる」
今まで、遅寝早起きで何か問題が起こったなんてことは一度もなかった。
だが、明日もないとは言えない。
陽乃「仕方がないわね。従っておくわ」
球子「……意外だな」
陽乃「言ってることは正しいわ。早く起きる分には問題ないし」
杏「ですね。私たちも早起きしないといけないし……久遠さんが起きてくれたら、一緒に起きられそうな気がする」
球子「早起きは問題ないだろ。もう、みんな慣れっこだ」
球子の笑い交じりの言葉に、水都は同意して笑って歌野に目を向ける。
朝早くから畑に出向くことも多い歌野
それについていく水都、そして水都と同じように手伝いを買って出て早起きしていた杏と球子
陽乃はそもそも、歌野と同じかそれ以上に早起きだったため、
ここにいるみんな朝が早い。
- 869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 00:20:12.85 ID:x02yumYuo
-
杏「今日で、ひとまずみんなが揃うのは最後ですね」
球子「タマたちがいないからって、だらけるなよ?」
陽乃「貴女ね……」
九尾「あまりに程度が過ぎるならば、食らうぞ」
そう言って……一瞬にして美しい女性の顔立ちが狐に変わる。
体は人間、頭は狐
その歪で異様な姿に、九尾に慣れかけていた水都も体を震わせて、
威嚇された球子は目を見開いて口元をひくつかせる
球子「……ごめん」
水都「この部屋も、また余計に広くなっちゃうかな」
球子「心配すんな。すぐに、5人で戻ってくるよ」
いや、それは難しいか? と、球子は自分で訂正しかけて、笑顔でごまかす。
球子「とにかく寝るなら布団敷くぞ……いつもの感じでいいか?」
杏「うん、いいと思う」
水都と歌野が横並び、
その下で、球子と陽乃と杏で並ぶ二段の敷き方
最初は、陽乃がこっそり逃げ出さないようになって、囲む算段だったそれも、
早々に無意味とわかって、形だけが残った
陽乃はその細やかではあるが、せわしない5人の空気を眺めて、小さく息を吐く。
これで、それも最後だ。
- 870 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 00:26:26.95 ID:x02yumYuo
- √ 2018年 9月2日目 朝:諏訪
↓1コンマ判定 一桁
0,9 球子
1,8 杏
2,7 歌野
3,6 水都
ぞろ目 特殊
※そのほか 通常
- 871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 00:27:12.63 ID:FRXUlxyNO
- あ
- 872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 00:34:01.03 ID:x02yumYuo
-
ではここまでとさせていただきます
1日のまとめは明日、再開時
水都単独交流→殲滅戦
- 873 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 00:54:00.98 ID:FRXUlxyNO
- 乙
陽乃も独りよがりにならずにきちんとみんなやれることやってる感じでようやく一つのチームに慣れた気がするな
- 874 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 06:12:48.09 ID:akQVKU99O
- 乙
あとは杏たちを行かせた後どのタイミングで諏訪を脱出するかだな
- 875 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 21:14:16.33 ID:x02yumYuo
-
では少しだけ
- 876 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 21:15:42.09 ID:x02yumYuo
-
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(過保護ね、一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 藤森水都 : 交流有(一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 土居球子 : 交流有(死なれても困る、模擬戦、一理ある、暇な時、一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 伊予島杏 : 交流有(死なれても困る、模擬戦、一理ある、暇な時、一緒に外食、怖くなる、住民の処遇、陽乃を説得、特殊、時間、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
・ 九尾 : 交流有(四国襲撃、九尾なら、杏達に任せる、諏訪周辺をつぶす、最速)
√ 2018/09/01 まとめ
白鳥歌野との絆 55→63(普通) ※特殊交流3
藤森水都との絆 70→78(良好) ※特殊交流7
土居球子との絆 60→70(良好) ※特殊交流2
伊予島杏との絆 76→86(良好) ※特殊交流4
九尾との絆 68→70(良好)
- 877 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 21:46:06.64 ID:x02yumYuo
- √ 2018年 9月2日目 朝:諏訪
まだ、朝とも言えない4時頃
陽乃は目覚ましの音もなく目を覚ます。
陽乃「ん……」
歌野達も起きていない中、水都の布団だけが空になっているのが見えた。
テーブルの方にも、窓際にもいない。
陽乃「人に寝ろとか言っておいて」
自分はただの人間のくせに、
陽乃よりもずっと早く起きて、どこかに出ている。
いや、どこかではない。
陽乃「……まったく」
布団を自分の分だけまとめて、
畳むのは後回しにして、身支度を整える
部屋を出て左に曲がり、突き当りをさらに曲がる
参集殿から繋がっている、斎館へ向かう
- 878 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 22:15:17.37 ID:x02yumYuo
-
棚には一人分の着替えとバスタオルが用意されていて、
浴室からは、入浴中の音が聞こえる。
ただ入浴しているわけではないだろう。
扉を軽くたたく
陽乃「一人でやるのは危険だって、話したはずだけど」
ばしゃんっと水が跳ねる音が聞こえて、静まり返る
少しの沈黙ののちに、浴室特有のくぐもった声が返ってきた。
水都「やっておいた方が良いと思って」
陽乃「神託は来ないわよ」
水都「神託がなくても、やっておきたいんです」
陽乃「伊予島さん達の無事を祈ってるって? それなら沐浴じゃなく水垢離の方にしなきゃだめよ
貴女、浴槽に水を貯めて浸かっているだけでしょう? それじゃやり方が間違ってるわ」
水都「そ、そうなんですね……」
- 879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 22:36:42.79 ID:x02yumYuo
-
陽乃「まぁ、穢れているよりはいいわ」
沐浴……禊を行っておくのは決して悪いことではない。
水垢離という、祈りのために行う行為とは別になるが、
この後に、儀式として巫女舞を行うなどするのなら、むしろ正しい。
陽乃「で、いつ起きたの?」
水都「……30分くらい前、ですね」
水都は少し申し訳なさそうに言って
水都「ぱっと目を覚ましちゃって……そのままこっちに来ちゃいました」
陽乃「私より先に起きるなんて異常だわ。貴女こそ、体調崩すんじゃない?」
水都「私が崩すのはいいんです。ただの巫女ですから」
陽乃「……」
水の中で動く音がする。
滴り落ちる音、排水溝に飲み込まれていく音、水都の深い吐息
黙っていると、いろんな音が聞こえてくる
水都「……すみません。よくないですよね」
1、さぁ? 私は別に
2、白鳥さんとしてはよくないと思うわ
3、そうね。
4、中に入る
5、何も言わない
↓2
- 880 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 22:38:47.15 ID:OCW+qBXe0
- 2
- 881 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/27(木) 22:39:09.80 ID:pGfa5oyrO
- 4
- 882 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 23:17:39.80 ID:x02yumYuo
-
陽乃「……」
棚の方を見て、バスタオルなどが一式予備であるのを確認する。
普段から、禊のためにこの場を利用することの多い水都や陽乃の分に始まり、
楽をしようと考えた球子の分まで、ある程度の予備がしまわれている棚。
自分たちしかいないからと言って、やや自由が過ぎるだろうか。
陽乃「まぁ……」
服を脱いで、畳んで収める
代わりに、白衣を身に纏う
水都「……久遠さん?」
会話が途切れたからか、確認するように水都が名前を呼ぶ。
それに答えず、応えのように扉を開けて中に入っていくと、
水都は顔を上げて、すぐに、陽乃に背中を向けた
陽乃「何してるの?」
水都「く、久遠さんこそっどうして……」
陽乃「日課よ」
水都「私が出てからでも……」
陽乃「そんなに時間があるわけでもないから」
水都「……そう、ですよね。すみません」
陽乃「そんなに照れる必要はないと思うけど」
- 883 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/27(木) 23:38:14.31 ID:x02yumYuo
-
陽乃に背中を向けたままの水都を一瞥して、さっと水を浴びる
冷たい水が、肌を流れていく。
ついさっきまで温もりに包まれていた体への、刺すような刺激
体の内側から外側へと湧き出るような熱量を感じながら、
それを二回、三回と繰り返して。
陽乃「……ん」
流し終えてから、浴槽にたまった水に触れる。
陽乃「いつもより水温が高いわね」
水都「あっ……」
水都は肩を震わせて、ゆっくり陽乃へと振り向いた
水都「すみません……自分しか使わないと思って、ちょっとだけ」
陽乃「……別にいいわ。このくらいなら大差ないから」
水都「……」
- 884 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/28(金) 00:02:26.16 ID:B9Ff/cJYo
-
水都「……しばらく、一緒に沐浴をするのもなくなりますね」
陽乃「そうなの?」
水都「土居さんたちがいなくなる分、久遠さんも歌野んも警戒する必要があるじゃないですか。
今までと違って、あえて陽動するわけですし……襲撃への警戒は強める必要がありますよね?」
陽乃「警戒は今までだってしっかりしてたでしょう? 大して変わらないわ」
陽乃は常に参集殿にいたし、
歌野は隔日で控えていたりした。
球子達の部分を陽乃がカバーするだけ。
今までと何一つ変わらない。
もちろん、襲撃があった場合はその対応をしなければならない。
たった2人で。
それによる疲労も考慮して、水都は時間が無くなると考えているようだ。
水都「……ありがとうございます」
陽乃「何よ急に」
水都「諏訪のみんなを、見捨てずにいてくれたじゃないですか」
- 885 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/28(金) 00:02:53.92 ID:B9Ff/cJYo
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 00:15:19.46 ID:4cfe1NkBO
- 乙
今作のみーちゃんはメンタルが超強化されてて精神面で頼もしいよなぁ
- 887 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 00:16:44.04 ID:LbnXZ7p70
- 乙
諏訪来てから陽乃が前よりずっと優しくなったのほんとみーちゃんのおかげだよな
- 888 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 01:38:40.62 ID:k87VISWtO
- 乙
陽乃の物腰も柔らかくなったし本当に助かる
- 889 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/28(金) 23:39:21.59 ID:B9Ff/cJYo
-
すみませんが、本日はお休みとなります
明日は、可能であれば早い時間から
- 890 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/28(金) 23:41:20.55 ID:KsULZKMxO
- 乙ですー
- 891 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 21:22:18.63 ID:TvXvk1u/o
- では少しだけ
- 892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 21:22:51.23 ID:TvXvk1u/o
-
陽乃「別に、そう思ってくれてもいいわ」
水都「否定しないんですね」
陽乃「私が否定したって、貴女達はそう思うでしょ? 無駄な労力を使う気はない」
水都「……そうですか」
水都はやや素っ気ない返しをされても嬉しそうに笑うと
体に馴染んだ水の冷たさを手に受け止めて、顔にぶつける。
水都「そうですね。そうだと思います。久遠さんには何か別の考えがあって、
諏訪を見捨てないのは、ここに残ってくれるのは……そのついでだとしても」
水都はちいさく息を吐く。
前髪の先から、一滴が水面へと落ちる。
水都「結果的に諏訪に残ってくれたから、否定しても変わらないと思います」
陽乃は思った通りの返しに返事もなく、黙っていて。
水都の周囲と違って陽乃の体の周りはまるで揺れない。
その微動だにしない沈着冷静な様子は、水都がいつもこの場所で見ているものだ。
実際に戦わない水都ですら、これから大きな戦いがあると緊張しているのに
陽乃はいたって、いつも通り。
水都はその堂々とした姿勢に羨望のまなざしを向けて
水都「久遠さん覚えてますか? 前に、放っておいて欲しいって言ったこと」
- 893 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 22:12:04.41 ID:TvXvk1u/o
-
水都「今みたいな……巫女としての所作を教えてくださいってお願いを引き受けてもらう代わりに
何か、久遠さんにはお願いありますかって聞いた答えが、それだったんですよ?」
先月のことだ。
それを忘れるほど記憶力に問題は出ていない。
かといって、覚えておくほどのこととも思わない。
いつも陽乃が思っていたことだし、求めていたこと
特別なことではなかった。
水都「あの時は、少し怖かったです」
陽乃「……」
怖かったと言う割には、
怯えているのではなく、申し訳なさを感じる水都の表情
じっとみると、顔を背けられた
陽乃「そう……」
1、覚えてないわ。
2、そのお願い、結局聞いてくれなかったわよね
3、謝らないわよ
4、それが?
↓2
- 894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 22:12:52.83 ID:fgatdJSUO
- 2
- 895 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 22:13:13.22 ID:LgO5Q0QJ0
- 2
- 896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 22:47:49.57 ID:TvXvk1u/o
-
陽乃「そのお願い、結局聞いてくれなかったわよね」
水都「す、少しは久遠さんのこと気にしないようにしてたと思いますけど」
水都はそう言ったが、
すぐに、首をかしげて思い出したように苦笑する。
水都「そういえば、全然だったかもしれません。
でも、それはあれですよ。久遠さんが御柱に触れてあんなことになったから……」
陽乃「言い訳?」
水都「それは狡くないですか? あのお願いの後だとしても、あんなことがあったら放っておけないよ」
陽乃半分、自分半分
水都のその呟きは水風呂の中に消えていく
水都「久遠さん自身、私たちにかかわってきましたよね?」
陽乃「そうだったかしら」
水都「自分から会いに来たじゃないですか……それで、自分一人で戦いに行くなんて危ないこと言いだして」
陽乃「……そんなこともあったわね」
水都「みんな止めたのに、結局、それ頼りになっちゃいましたね」
- 897 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 23:07:00.17 ID:TvXvk1u/o
-
陽乃「別に、私じゃなくたって白鳥さんならできるはずよ。それでも、単身でやってもらうけど」
水都「うたのんのこと、信頼してるんですか?」
陽乃「3年間の実績に私の力を貸し与えられるんだから、そうじゃなきゃおかしいってだけよ」
水都「それも、信じてるって言えるような気がしますけど」
陽乃「私は……」
水都はただ、思っていることを口にしているだけだろう。
歌野なら、同じように単独で戦闘しても問題ないと考えている。
そこに実績があり、唯一信頼している自分の力が加わればとは言うけれど、
だとしてもそれはやっぱり "歌野が勝つと信じている" のではないかと。
陽乃は顔を顰めて、すぐに、その感情を鎮める
陽乃「私は誰も信じようなんて思ってないし、信じる気もない」
水都「結果を示してもですか?」
陽乃「頼る気はないから」
水都「でも、頼ってくれたじゃないですか」
水都はそう返して、下を向く。
水都「……頼ったじゃないですか。伊予島さん達のこと」
陽乃「頼ったわけじゃないわ。あの子たちがそうしたいって言うからそうさせてあげるだけ」
水都「……言葉の綾では?」
陽乃「言った本人が使わないのは初めて聞くわね。それ」
- 898 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 23:29:37.22 ID:TvXvk1u/o
-
水都「事実じゃないですか」
陽乃「そう?」
水都「そうですよ」
陽乃は拒絶することもあるが、
完全な拒絶は、あの1度きり。
それ以外は勝手にしたら? と言ってくれるし、
やや放置気味ではあるけれど、許してくれている。
信頼しないとは言っているけれど、
でも警戒だってそこまで強くしていない。
だけど――信頼しないと言い切る。
行動が、考えが、言葉が、
信頼の上に成り立つものであっても、陽乃はそれを信頼ではないと否定する。
信じる気はないと首を横に振って、認めない。
だから、言葉の綾
もう、ただそういう言い回しをしているだけというか。
水都はそう思って、思わず笑ってしまう
1、そう思いたければ思っていればいいじゃない
2、私はお願いを聞いて、貴女は聞かずに不履行なのは問題よね
3、あまり、調子に乗らない方が身のためよ
4、何も言わない
↓2
- 899 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 23:31:10.93 ID:LgO5Q0QJ0
- 2
- 900 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 23:32:12.00 ID:fcatyV2PO
- 3
- 901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/29(土) 23:57:43.22 ID:TvXvk1u/o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日は能であればお昼ごろから
- 902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 00:04:28.70 ID:7GecOfb/O
- 乙
みーちゃんの勢いに陽乃さんが普通に押し負けてる感じがする
早く心を開く日が来るといいな
- 903 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 01:10:27.79 ID:TT4N8EDyO
- 乙
陽乃も久遠さんみたいに押しに弱そうだからな
押せ押せ
- 904 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 18:31:47.53 ID:MOqeND+zo
-
では少しずつ
- 905 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 18:34:35.12 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「あまり、調子に乗らない方が身のためよ」
水都「すみません」
水都は素直に、答える。
今までの自分と比べて明らかに積極的になっているのはわかっていたことなのだろう。
少し罪悪感を抱いているような視線が、陽乃に向けられた。
水都「でも、そのくらいじゃないと久遠さんと関われないですよね?」
陽乃「関わらなくていいって話、忘れたの?」
水都「覚えてます」
残念そうに言った水都は、困って顔を顰める
それは覚えている
覚えているから、申し訳ない。
陽乃が起こした御柱の崩壊と、諏訪の神々の力の継承
陽乃にとって不幸なそれがあったからこそ、それをなかったことのように接することができているからだ。
水都「でも、久遠さんはいまや諏訪の神様のようなものですし、巫女である私はつかず離れずでいた方が良いと思いませんか?」
- 906 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:02:03.29 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「そういうのが調子に乗ってるのよ」
水都「でも、久遠さんはそこにいてくれているじゃないですか」
ここには一人で来た。
朝早く……とさえも言えないような早起きをして
眠れないからと、沐浴に来た
なのに、今は陽乃がいる。
呼んでいないしお願いしてもいないけれど、
同じ水風呂に入っている。
陽乃「私の対応が悪かったって言いたいのね」
水都「別にそうじゃないですよ」
陽乃「そうとしか受け取れないわ」
水都「久遠さんには少し積極的な方が良いって、土居さんも言ってましたし」
陽乃「……やっぱり、私の対応が悪かったんじゃない」
- 907 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:10:53.74 ID:MOqeND+zo
-
水都「え?」
陽乃「甘やかしすぎたのね」
水都「あんまり、甘やかしてはないと思いますよ」
陽乃「貴女のことじゃない」
水都「?」
甘やかしているというには、陽乃の態度はややきつめだ
根気強さがなかったり、
球子からの"積極的に"という話がなければ、早々にリタイアしているくらいには。
だが、放っておいてといいつつ、
好きにしたら、勝手にして、なんて許しを与えていることは、
甘やかしていると言えなくもないだろうか。
水都は話題に対して、まだ穏やかな陽乃を見て笑みを見せる。
水都「なら、土居さんですか?」
陽乃「そうね」
あの時、友達などと騙って接触したのが間違いだった。
それがなければ、球子がこれまで強く接してくることも、
水都に勢いつけさせるような助言をすることもなかったはずだ。
それなら、今、水都は隣にいなかったかもしれない。
陽乃「選択を誤ったわ……ほんと」
- 908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:25:06.55 ID:MOqeND+zo
-
疲れた口ぶり、後悔を感じる表情
球子と何かあったのは明白
水都は、そんな陽乃を見て……躊躇って口を閉じる。
そこに首を突っ込むのは、調子に乗るどころか飛び越えているというものだ。
水都「緊張してないんですか?」
陽乃「緊張? なにに?」
水都「この数時間後には、戦いじゃないですか」
陽乃「何があってもやれるって確信があってこそのことよ。それに緊張する方がおかしいわ」
水都「……なにが、あっても?」
陽乃「ええ。バーテックスの数が想定より多かろうと、なにか奇策を用意していようと、何があろうと」
水都「そうですか」
水都は、思わず笑ってしまう。
陽乃にとって当然の答えに対しての水都の笑みは、嬉しさから来るものだった。
1、なにがおかしいの?
2、貴女が喜ぶこと?
3、雑念が多すぎるわよ
4、怒らせたいの?
↓2
- 909 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 19:27:12.96 ID:G/HKcNUPO
- 3
- 910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 19:28:45.06 ID:cqHj336O0
- 4
- 911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:40:48.65 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「怒らせたいの?」
水都「あ……いえ、すみません」
水都は首を振って、否定する。
怒らせたいわけじゃない。
水都「久遠さんが自信を持ってくれているから、私たちも安心できるなと、思って」
水都が嬉しかったのは、陽乃が一切の不安も緊張もなく、
何があろうと間違いなく成し遂げられると言っている分の安心感があってこそだ。
実際に戦っているところを見た覚えはない
だけど、杏も球子も実力に問題はないと言っている。
なにより、諏訪の神様ですら認めた人だ。
そんな人が、自分に任せろと言い、何も問題はないと言い切っている。
ネガティブに考えれば、失敗の予兆ともとれるが、
ポジティブに考えれば、そんなことはない。
水都「今、諏訪にいる人たちはうたのんがいても、不安がないと言えばウソになると思います。
御柱が崩壊したこともあって、余計に不安になっているだろうし、怖いと思うんです」
陽乃「……私だって、壊したかったわけじゃないわ」
水都「知ってます。ただ、現実はそうなんです。
結界は壊れていない、歪んでもいない、大丈夫ですって説明で落ち着いたように見えても、不安は拭えません」
- 912 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 19:59:20.09 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「貴女も不安になった?」
水都「そうですね。申し訳ないですけど……不安になりましたし、怖かったです」
結界を支えている要とも言える御柱の崩壊
襲撃ではなく、
陽乃が触れたことによる崩壊ということ
以前までと違って、結界までも砕けたわけではないため、
多少の抑制はあったが、それでも不安はあった。
水都「でも、神様が久遠さんの力を頼って委ねたって聞いて、大丈夫だって思いました」
陽乃「意味不明ね」
水都「そんなことないですよ。突き放されたこともありましたけど、それ以前から思ってた久遠さんの印象を神様が保証してくれたようなものなので」
陽乃の眉がぴくっと動く。
また怒らせたいのかと言われるかと水都は一息飲む。
水都「とにかく、だからこそ久遠さんの自信がある態度で安心できるんです。
住民の人たちには、久遠さんの戦いを間近で見せることはできないですけど、でも、勇者の自信は安心につながるんです」
水都は嬉しそうに語って。
水都「私だったら、不安で、怖くて、緊張していると思います。
それしかない。そう思って陽動作戦に立候補したとしても、今ここにいるのは恐怖と不安を落ち着けるためだったと思います」
陽乃「……そう」
水都「そうなんです。久遠さんがそう思っていなくても、久遠さんが自信を持ってくれているだけで助かります」
- 913 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 20:03:40.28 ID:MOqeND+zo
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,9 水都「だから、嬉しいです。感謝しています」
- 914 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 20:05:52.03 ID:0FjXhuAAO
- あ
- 915 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 20:28:22.44 ID:TT4N8EDyO
- みーちゃんマジでつよい
- 916 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 20:39:41.68 ID:MOqeND+zo
-
水都「だから、嬉しいです。感謝しています」
陽乃「感謝なんて」
水都「久遠さんたちが来てくれるまでは、内心、もうダメだと思っていたんです」
約3年前
諏訪が結界に覆われたころの話になるが、
その時は、いつか準備が整ったら救援が来るという話だった。
なのにこれだけ時間がたっても誰かが訪れることも、
四国との通信で吉報が告げられることもなかった。
だから、もう、限界だと。
水都「住民の人たちもそうです。うたのんが頑張ってくれているからというだけで
外部からの救助を期待している人なんていないと言ってもいい状態でした」
陽乃「……」
水都「でも、久遠さんたちが来たんです。外界の危険な道のりを超えて、久遠さんがその命を懸けて
こんな隔離された、最前線に来てくれたんです。うたのんに、私に、住んでいる人たちに、希望を与えてくれたんです」
今にも感涙を流しそうな様子で水都は言葉を紡ぐ。
ああいえばこういうな陽乃も、口を閉じて水都を見る。
水都「だから私も、変わろうと思って……その一歩が、命がけで勇者を連れてきてくれた久遠さんに接することでした。
もちろん、いろいろと気にかかってた部分があったのもありますけど」
水都は照れくさそうに笑う。
水都「2人が言ってました。久遠さんは大社の反対を押し切ってここに来てくれたって
たとえ、そこに何か裏の理由があったとしても、来てくれたことには変わりがないから」
だから、ありがとうございます。と、水都は言った。
- 917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 21:03:45.71 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「結果的に、貴女達の得になったから裏があろうと関係ないと?」
水都「はい」
陽乃「私が勇者である白鳥さんだけいれば十分だと思っていたとしても?」
水都「だとしても、現実はその思いの通りではなかったみたいなので」
歌野だけいればいい。
そうして体調が戻ったら歌野を連れて出て行く。
なんてことにはならなかった。
だから、陽乃のその返答は水都にとって話半分
いいや、半分ですらないかもしれない。
水都「そのうえ、諏訪の神様が結界を維持させるために久遠さんに代行を求めたりして
久遠さんは不本意だったかもしれませんが、そのおかげで安心できています」
陽乃が倒れさえしなければ結界には影響が出ないという話。
バーテックスが大挙してきても、やすやすと押し返せそうな陽乃の自信。
水都「感謝してもしきれません……けど、そのお礼を聞くと、久遠さんはまた、放っておいてって言うんですよね?」
1、間違いないわ
2、言ったって無駄でしょう?
3、まずは前の分をどうにかしなさい
4、だったらなに?
↓2
- 918 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 21:06:41.04 ID:cqHj336O0
- 4
- 919 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 21:07:47.09 ID:0FjXhuAAO
- 1
- 920 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 21:48:21.65 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「間違いないわ」
水都「よかったです」
拒絶にもなる、放っておいて欲しいという願い
その予測が間違っていないという答えに対する、水都の笑み。
その意図は解るが、
拒絶される結果になるということを気にしていないかのようで、陽乃は顔を顰める
陽乃「……馬鹿なの?」
水都「馬鹿かもしれません」
冷たくあしらわれたり、
強く突き放されたり、
なのに今もこうしているのだから、馬鹿といえば馬鹿なのだろうと水都は認める。
水都「……」
陽乃は冷たいことがある。
けれど、それも、慣れてしまえば実は温もりがあるような気がしてくる。
突っ撥ねたり、勝手にしてと許してくれたり、冷たいのか何なのか。
水都「私は……」
水都は一度言葉を飲み込んで、小さく笑みを浮かべて。
水都「みんなを守ってくれて、こうして巫女についてのことも教えてくれていますし
結果論というか、現実をちゃんと見てもやっぱり……私は、陽乃さんが優しくて良い人だって思います」
- 921 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 22:26:30.24 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「そんな期待されても、私は応える気はないわよ」
水都「期待じゃないです。結果論です」
水都は、あえてそんな言葉を使ってみる。
結果的にそうなっただけ。
でも、だとしたら結果的にそう思えるだけだと返す。
陽乃は怒らせたいのかと言ってくるかもしれないけれど。
陽乃「調子に乗らない方が良いって、言ったばかりよね?」
水都「事実を言ってるだけでも、駄目ですか?」
陽乃「……」
最初に比べると、
だいぶ、強かになったものだと陽乃は水都を見つめる。
最初はすぐに謝ったりなんだりと、弱弱しい印象だった
だが、今に至ってみれば、これである。
陽乃「もう、勝手にしたら?」
水都「今まで通りですね」
陽乃「……そうね」
- 922 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 22:37:31.55 ID:MOqeND+zo
-
今日、杏と球子の二人が四国へと発つ
陽乃はその移動を悟られないよう、そして、道中が少しでも楽になるように
陽動として、諏訪周辺のバーテックスを一掃する手はずになっている。
陽乃の役割は重要だ。
ここで失敗すると後発に響く。
球子と杏の出発ができたとして、
陽乃に被害が及んだ場合、諏訪はもちろん、歌野の戦闘力にまで影響が出る。
陽乃「今まで通り、いつも通り。それでいいのよ」
緊張せず、不安も恐怖もない。
淡々と、バーテックスを屠って終わる。
一人で戦うのは約3年ぶりになるが、今の体の調子を考えれば問題はないだろう。
水都「今日は、お願いします」
陽乃「期待に、応える気はないからね」
頑張ってとも言わず、
軽く頭を下げるように言った水都を一瞥して陽乃は繰り返す。
陽乃「沐浴にしては、雑念が多すぎるわ」
水都「すみません……嬉しかったので、つい」
初めからその予定があったのではなく、偶然
それも、陽乃から近づいてきてくれたことが。と、水都は心の中だけで思った。
- 923 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:02:40.53 ID:MOqeND+zo
-
√ 2018年 9月2日目 朝:諏訪
歌野「じゃぁ、改めて……準備はいいかしら」
水都との沐浴を終えてから、少し経って
みんなが起き、準備と確認そして朝食を終えた後
ようやくと、歌野が切り出す。
行きの時よりも、やや重装備な杏と球子
普段通りの陽乃、巫女装束に身を包んでいる水都
見回して、一息。
歌野「久遠さん、もしあれなら助っ人を呼んで」
陽乃「必要ないわ。終わるまで絶対に出てこないで」
邪魔だから。と続きそうだが、実際には、陽乃の力の影響を受ける可能性があるからだ。
歌野と結界は、諏訪の神々の代行となっている陽乃の力の影響を受けずに済むだろうが、
杏と球子に関しては受けかねない。
杏「私たちの方も大丈夫です。サバイバル……というか、野宿とかについては、たまっち先輩もいるし」
球子「任せタマえ」
自信満々に言う球子に、杏は軽く笑う。
やや、緊張しているようだ。
- 924 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:17:32.04 ID:MOqeND+zo
-
陽乃「2人は私が周りを一掃してから出て頂戴。タイミング外して巻き込まれても責任は取らないわ」
球子「怖いこと言うなよ……分かるけど」
杏「大丈夫です」
陽乃「白鳥さんは藤森さんと一緒に行動して」
歌野「申し訳ないけど、わかってるわ」
本当なら、手を貸したい。
けれど、陽乃が全力で力を使うというし、
万が一の保険として控えは必要だから出るわけにはいかない。
水都「私たちは各区の班長に話を通して住民を本宮の方に集めておきますね。何もなければそれでいいですけど……」
陽乃「それでいいわ」
今後のことについてもそうだし、
杏と球子のことなども話しておく必要がある。
杏「四国は任せてください」
歌野「私が言えた義理じゃないかもしれないけど、乃木さんたちをお願いね」
球子「大丈夫だ。どうにかなる」
それより。と、
球子は陽乃を見て。
球子「そっちこそ頼む。扱いは面倒だけど、悪い奴じゃないからな」
陽乃「結界の外に蹴飛ばすわよ。貴女」
- 925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:27:44.83 ID:MOqeND+zo
-
陽乃はそういいつつ、深く息を吐いて目を閉じる。
力は十分に満ちている。
四国にいたころとは比べ物にならないほど調子もいい。
これなら存分に力をふるうことができる。
諏訪の神々の恩恵
戦闘面においては、陽乃のデメリットを補って余りあるものだ。
歌野「ふぅ……ちょっとドキドキするわね」
水都「今まで、襲撃されることはあっても奇襲をするなんてなかったもんね」
球子「タマ達は奇襲したことあるぞ」
杏「奇襲……かなぁ?」
今まで通りを装いつつ、緊張を感じる空気。
陽乃は、それでも冷静に目を瞑る。
やることは単純だ。
あとは、力をどう扱うか
1、伊邪那美命の力を借りる
2、九尾の力のみを借りる
↓2
- 926 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 23:34:55.47 ID:iEzPZ8OEO
- 1
- 927 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/30(日) 23:35:22.77 ID:cqHj336O0
- 1
- 928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/30(日) 23:46:06.26 ID:MOqeND+zo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 929 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/31(月) 00:01:15.01 ID:gsxSv+K4O
- 乙
最早否定する言葉が何一つ通用しないみーちゃん強すぎる…
そしていよいよ殲滅作戦だけど伊邪那美命の力の反動は大丈夫だろうか
- 930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/31(月) 01:54:28.75 ID:CiA/u1RlO
- 乙
みーちゃんこれからもグイグイといってほしい
力の方は不安は不安だけどこうなっても諏訪の力で強化されてるから多少は大丈夫なんじゃないかなあ
- 931 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 21:51:06.64 ID:+4S7IN/Jo
- では少しだけ
- 932 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 21:52:02.85 ID:+4S7IN/Jo
-
陽乃「……本気で、つぶしに行ってみるか」
水都「え?」
陽乃「こっちの話」
この万全な状態は、おそらく諏訪限定だ。
ここにいるから、ここがあるから
諏訪の土地と、そこに住む人々の信仰
それがあるからこそ得られる恩恵
向こうにみんなを連れ帰ったところで、
今のように、何をしても問題がなさそうな体にはならないはずだ。
だからこそ、使ってみるべきかと思う。
想像しえない代償を払うことになりかねないが、
ここに多くの戦力を割り振らなければならないという印象をバーテックスに与えられる力の誇示としては、最適。
なにより、今しか使えそうにない力だ。
――伊邪那美命
彼女の力はどれほどのものか。
かの神は死の力を持っていると九尾は言った。
九尾も似た力を持っているが、それなど比にならないほど強い力を持っていると。
水都「陽乃さん?」
歌野「陽乃さん? えっ?」
陽乃は水都の疑問の声にはっとして、笑みを噛む。
陽乃「何でもないわ」
- 933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 22:04:06.63 ID:+4S7IN/Jo
-
無意識に目を向けてしまっていたらしい。
場合によっては……いいや、それなりに低くくない確率で陽乃は何らかのダメージを負うことになる。
その結果一番騒ぐのは水都だから、意識が行ったのだろう。
陽乃「白鳥さん」
歌野「は、えっ? 私?」
陽乃「貴女以外にいないでしょ」
なぜか驚く歌野に陽乃は淡々と言って。
陽乃「私の後は貴女がどうにかするんだから、しっかりして頂戴」
歌野「ええ、任せて頂戴」
歌野は戸惑いながら答えたものの、すぐに「あれ?」とこぼす。
斜め下に向かっていた視点が陽乃の方に向く
歌野「え、それだけ?」
陽乃「それだけよ。他意はないわ」
歌野「そう……? ん〜……そっか」
水都「うたのん、何か気になるの?」
歌野「大したことじゃないんだけど……陽乃さんって呼ぶようにしたのね」
水都「あっ、うん」
球子「ははぁ……なるほどなぁ」
自分は少し前からだと、自慢げな球子
私もまだ呼んでいないのにと、陽乃に視線を送ってくる杏
ちょっぴり困った様子でありながらはにかむ水都
これから有事を引き起こそうというのに、緊張感はどこかへと跳ねのけられている。
陽乃「それじゃ、私はもう行くから」
陽乃はそう切り込んで、立ち上がる。
- 934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 22:11:10.27 ID:+4S7IN/Jo
-
まだ7時にもなっていない、朝早い時間
二度と帰れないかもしれない戦いの場に行くはずのその姿は、ただコンビニに買い物行くかのように軽やかだった。
杏「久遠さん」
陽乃「今更、止めるのは無しよ」
杏「体に気を付けてください。私たちがいないから、諏訪の神様の恩恵があるからとか、関係なく、一人の人間として気を付けてください」
陽乃「今言うこと?」
杏「一旦、お別れなので」
杏は寂しげに笑う。
杏「久遠さんには元気でいて貰いたいんです」
陽乃「貴女に気遣われるまでもなく私は健康でいるつもりよ。そうじゃなきゃ早死にするだけじゃない」
杏「そう、ですね」
寂しさは残ったまま、でも、どこか嬉しさのにじむ杏の表情。
ここで暫く分かれることになるのが、そんなに気がかりなのだろうか。
陽乃は、思考でとぼける。
そうではないことくらい、わかってしまう程度には人間観察の力があるつもりだ。
陽乃「私を案じるよりも貴女には考えるべきことがあるはずよ。余計なことに使わないで必要なことだけに注ぎなさい」
球子「つまりあれだろ? 集中しろってことだろ? 変な言い方するなって」
水都「心配しないでって言ってるとも取れるけど……」
陽乃「……勝手にして」
陽乃は吐き捨てるように言って、部屋を出る
伊邪那美命の力を借りることは、やはり、言わないでおくべきだ
- 935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 23:19:58.51 ID:+4S7IN/Jo
-
諏訪の結界の外にまで来て、陽乃は深く息を吐く。
九尾なら、九尾と声をかければ出てきてくれる。
だが、伊邪那美命はそうとは思えない。
以前出てきたのは、陽乃の要求でなく、彼女の独断だ。
陽乃「……さて」
九尾の時とは違って、一応は本格的な神降ろしになる
失敗は……最悪酷いことになるが、
運よく何もなければ、九尾に変わりを願うしかない
陽乃は諏訪大社から拝借した扇を取り出す。
もっといろいろと拝借したかったが、見当たらなかった。
陽乃「ふぅ」
右手に扇を持ち、ゆっくり開きながら左肩から手先の方へと動かして、
翻しながら、右側へと動かす。
音も何もない、略式の神楽
それがどこまで許されるか。
陽乃「掛けまくも畏き 伊邪那美大神……」
祝詞を唱えながら、一手一手、納めていく
神降ろし――それに応えるように、体からどんどんと力が抜けていくのを陽乃は感じた
- 936 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/31(月) 23:44:31.54 ID:+4S7IN/Jo
-
陽乃「っ……は……」
九尾を呼ぶのとは比べ物にならない、息苦しさ
諏訪の神々の恩恵があってなお、重くのしかかって、眩暈がする。
陽乃「っ……」
向こうが勝手に姿を現したとはいえ、
一度は呼び出したことのある神
前回よりは負担も軽いはずなのに、
それがまるで感じられない辛さに陽乃は噴き出す汗を振り払いたい気持ちを抑えて、舞いを続ける
途中で止めていいものではない。
私事を優先していいことではない。
巫女神楽の奉納も終わりが近づいたころに、ようやく、それは姿を現す。
まるで、陽乃が苦しんでいるのを傍で眺めていたかのように、
柔らかに、自然に、そこに初めから存在していたかのように
陽乃「っ……」
乱れる息を整えて、陽乃は現れた女性に頭を下げる
陽乃「諸諸の禍事、罪、穢を祓い給え清め給えと白す事を……聞こし食せと恐み恐みも白す」
女性は何も言わない。
ただただ、陽乃を見つめて……陽乃の頬に触れる。
顔をあげさせ、目を合わさせ――溶け込む
陽乃「っあ……ぅ゛っ」
抜け出ていた力が、けた違いに膨れ上がって押し返された感覚
瞬く間に体の熱が上がって、のどが焼けるように痛んで、どこかが切れたのか吐血する
- 937 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:01:04.62 ID:pJHqbQGwo
-
諏訪の周囲に漂うだけだった白い塊たちが、一斉に向きを変える。
何かしているぞと、遠巻きに見ていた少女の異質さが跳ねあがったからだろう。
見逃してはいけないと、
許してはいけないと、
惹かれたように、導かれたように、
白い粒は一つの大きな塊ともとれるほどに群がって、
諏訪の結界の手前に立つ赤黒い巫女装束に身を包んだ ” 異物 ” へと降り注いで――
陽乃「そうそう……それでいいのよ。それで」
陽乃は、体の中にたまった力を一気に解き放つ。
辺りを埋め尽くしていたバーテックスの白さが消え失せて、黒く染まる。
見えていたはずの太陽さえも見えなくなるほどの暗闇。
朝から夜へと、時が飛んだかのような静寂さに包まれて
ふっっと、陽乃の体から力が抜けて膝をつく
陽乃「っ……あっ、痛っ……」
ごつんっと膝を強打した猛烈な痛みを感じて陽乃は呻いて、顔を上げる。
陽乃「……なる、ほど」
群がっていたバーテックスは影も形もなく消え失せて、
生い茂っていた草木さえも、不自然にその生命力を失って枯れ果てていた。
周囲に死を与える、非常識なほど凶悪な力。
振り返ってみれば、わずかに結界が揺らいでいるのが見えたが、すぐに持ち直す。
体の痛みも、徐々に和らいでいく
陽乃「これは――」
これは間違いなく、勇者の命さえ奪いかねない力だ。と、
改めて自覚すると、ぐらりと体が揺れ落ちて、誰かに抱きかかえられる。
一人か、二人か、三人か
うすぼんやりとした視界の中に、人影が見えたところで陽乃は気を失った
- 938 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:02:49.62 ID:pJHqbQGwo
-
√ 2018年 9月2日目 昼:諏訪
05〜14 67〜76 水都
27〜36 89〜98 歌野
45〜54 九尾
↓1のコンマ
※ぞろ目特殊
※そのほか通常
- 939 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:04:15.09 ID:GOwvYtnMO
- あ
- 940 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:12:54.21 ID:pJHqbQGwo
- √ 2018年 9月2日目 昼:諏訪
陽乃「……」
目を覚ますと、見慣れた景色が映って
視界の端に引っかかっていた時計に焦点を合わせる。
壁掛けの丸い時計
真ん中のあたりにある、月日と曜日の表示を見てみると、
戦いからそんなに時間が経っていないのが分かった。
水都「……約4時間です」
陽乃「ん……」
声がした方向に体を向かせると、
陽乃とは違って、正しく巫女装束に身を包んだ水都がいた。
ややご立腹なのが、表情から見て取れる。
水都「陽乃さんのおかげで、周辺のバーテックスが一掃されたのは、うたのんが確認してくれました。
伊予島さんたちも問題なく出発して、おおむね予定通りに進んでます」
陽乃「……怒ってる?」
水都「怒ってます」
- 941 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:21:07.67 ID:pJHqbQGwo
-
水都が言うには、陽乃が力を使ったのとほぼ同時刻、
諏訪は大きな地震に見舞われたそうだ。
その結果、諏訪大社の前宮に合った御柱が倒壊してしまったらしい。
幸いにもけが人などはおらず、
結界の規模などの縮小なども起こってはいないが、
もしかして。と、
焦った歌野達が飛び出してみれば、陽乃がちょうど気を失う寸前だったとのこと。
陽乃「……なるほど」
水都「なるほど。じゃありません!」
陽乃「っ……」
水都「心配したんですよ? 伊予島さん達は陽乃さんがそこまでしてくれたからって、私たちに任せて発ってくれたからいいですが
本当に、また、酷いことになるんじゃないかって、私……」
水都は、怒鳴ったかと思えば、ぽろぽろと涙をこぼす。
横になっている陽乃を見下ろしているせいか、涙が早く落ちてくる。
1、結界なら、大丈夫だったでしょ?
2、目を覚ましたんだから、いいじゃない
3、もう少し、大丈夫だと思ってたのよ
4、大げさね
5、悪かったわね。想定外だったのよ
↓2
- 942 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:23:57.75 ID:fGfChIErO
- 下1じゃないんやな
安価下
- 943 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:24:09.33 ID:JXdvZ6d4O
- 3
- 944 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:24:31.55 ID:GOwvYtnMO
- 4
- 945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 00:27:50.52 ID:pJHqbQGwo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 946 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 00:33:40.16 ID:GOwvYtnMO
- 乙
戦闘シーンがコンマ判定すらなく瞬殺とは恐るべし…
諏訪の神様のおかげか反動もなんとかなりそうだな
- 947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 02:11:19.41 ID:JXdvZ6d4O
- 乙
相変わらずみーちゃんにコンマが吸い寄せられてくな
- 948 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 21:34:54.90 ID:pJHqbQGwo
- では少しだけ
- 949 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 21:36:02.78 ID:pJHqbQGwo
-
陽乃「もう少し、大丈夫だと思ったのよ」
水都「そんな軽い気持ちで命を懸けないでくださいっ!」
陽乃「……」
水都「忘れちゃったんですか? あんなに苦しんで、辛そうで、痛そうなことになったこと」
陽乃「忘れてはないけど……でも」
水都「でもじゃないんです」
水都は陽乃を声で押さえつける
でも、だけど、そんなのは聞いていられないと言わんばかりだ
水都「こんな無理をしないといけないほどぎりぎりだったんですか?」
陽乃「使っておく必要があったのよ」
諏訪でしか使えない可能性がある力。
諏訪の土着神というわけではなく、
単純に、普通では陽乃の体が持たない超常的な神の力だからである。
陽乃「私の中にある力だから知らぬ存ぜぬではいられないし、確認しておくべきでしょ?」
水都「なにも、こんな大事な時にしなくたって」
陽乃「今だからこそよ」
- 950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 21:53:10.03 ID:pJHqbQGwo
-
守る必要のある結界は、陽乃の保護下にあって
周りにはほかの勇者が控えていることもない。
万が一力が暴走して、周囲一帯を巻き込んだとしても大きな被害を出さずに済む可能性が極めて高かった。
その目論見通り……とはいかなかったが、
結界内の御柱の倒壊と地震が起こる程度で済んだ。
水都は周りを巻き込む力だと聞いてもやや不満そうだったけれど、
わかりました。と、軽く頷いた。
水都「体はどうですか?」
陽乃「……平気」
水都「声もはっきりしてるみたいで、よかったです」
断続的な枯れた声、寝返りもままならず、すぐに悪化したり、吐血したり
凄惨だった先月の陽乃を思い返してか、水都は物憂げながらほほ笑んだ
水都「でも、二度としないでください。せめて、ひとこと言ってください」
陽乃「言ったら止められるじゃない」
水都「なら、説得してくれたらいいんですよ」
水都は満面の笑みで言う。
昨日のことをそっくりそのまま投げ返せたのが嬉しいのだろうか。
それに対しての定型句を返せば、
また、陽乃と似たようなことを返してくるだろう。
調子に乗るなと今朝言ったばっかりだったはずなのに。
陽乃は少し顔を顰めた。
陽乃「調子に乗らない方が良いわよ」
- 951 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 22:02:57.39 ID:pJHqbQGwo
-
水都「今回は、陽乃さんが悪いと思いませんか?」
陽乃「やるべきことをしただけだわ」
諏訪の神々の恩恵があること前提での行為だったが、
結果的には体調も問題がなさそうだし、バーテックスも一掃できた
心配して欲しいと頼んだ覚えはない。
むしろ放っておいて欲しいと願っていたくらい。
勝手に心配して、それは陽乃のせいだというのは理不尽だ。
陽乃「……理不尽」
水都「へ?」
陽乃「こっちの話よ」
随分と振れ幅の大きい言葉だ
かつて受けた理不尽な仕打ちから、今水都から押し付けられている理不尽な責任
どちらも同じ理不尽などと、何とも康寧な話ではないか。
1、私が倒れてから問題は?
2、白鳥さんは?
3、悪いとは思ってないわ
4、定期連絡は?
↓2
- 952 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 22:07:04.64 ID:QCnsox1HO
- 1
- 953 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 22:08:01.83 ID:T18sBNc70
- 2
- 954 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 22:38:58.84 ID:pJHqbQGwo
-
陽乃「白鳥さんは?」
水都「うたのんなら、定期連絡してます」
陽乃「伊予島さん達のこと、話すの?」
水都「聞き入れて貰えるかはともかく、連絡はしておくって言ってました」
報連相は大事だ
相談……は、していないけれど。
若葉から大社から派遣されてきた担当の人に変わってしまった通信
陽乃に対する忠告をするが、陽乃達がこちら側にいるという話を信じては貰えていない
陽乃「向こうが襲撃される可能性については?」
水都「それも話すそうです」
陽乃「……」
陽乃の怪訝な表情に水都ははにかむ
気持ちはわかるとでもいうようで。
水都「乃木さんではないので、襲撃のご神託が下っていても知らされていない可能性はありますね」
- 955 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 23:03:39.73 ID:pJHqbQGwo
-
こちら側の話が信用されないのは前提
酷い話だけれど、襲撃を受けたなどの話は受けてくれるように感じるが、
陽乃や杏達の件については、話半分。
だから、こちらから情報を提供することより
向こうの情報を仕入れるというのが目的になっている。
しかし、それもままならなそうだ。
陽乃「せめて襲撃があるのかどうかだけでも把握してくれていると助かるんだけど」
水都「うたのんの交渉術次第ですね」
陽乃「そうね」
一度でもひなたさえ引き摺り出せていれば、
九尾とのパスを繋げて神託を受け取ることが出来ていたかもしれない。
陽乃「白鳥さんの交渉術がどうであれ、向こうの担当にそこまでの権限がなければどうにもならないわ」
水都「勇者と接することが可能なくらいには、位が高いと思いますけど」
陽乃「神託は最高機密だと思うから、勇者と接することができるかどうかではないと思う」
- 956 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 23:52:07.66 ID:pJHqbQGwo
-
水都「そうですよね……私は独りしかいないから特別なだけですよね」
自分が関われているから誰でも関われている
そう考えていたらしく、傲慢だとでもいうかのように肩をすくめた。
水都「実は、陽乃さんに安静にしていて貰うために、ずっとそばにいたんです」
陽乃「それが?」
水都「でも、体調には問題がなさそうですし……今からでも、通信施設のところに行きますか?」
陽乃「もうすぐ終わりじゃない?」
水都「いつもと違って報告もあるので、まだ終わっていない可能性もあります」
陽乃「で、私に話をしてみろって?」
水都「そうですね……通信の状態もかなり酷くなっていてもしかしたらもう、通信が途切れてしまう可能性さえあるので必要であれば」
陽乃「聞いて貰えるとは思えないし話すこともないのだけど」
上里ひなたを連れてこい。なんて言うだけ無駄だろうから。
力を使って、通信回復を試みてみるのもいいだろうか
1、わかったわ。行ってみましょう
2、通信回復を試みるわ
3、やめておくわ。どうにもならないし
4、九尾を呼ぶ
↓2
- 957 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 23:55:37.92 ID:T18sBNc70
- 1
- 958 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/01(火) 23:56:17.74 ID:zRNi7qpbO
- 2
- 959 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/01(火) 23:59:40.18 ID:pJHqbQGwo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 960 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 00:09:51.52 ID:OAsBe+cpO
- 乙
後々の事を考えながらみーちゃんと相談してるところを見るに陽乃さんの素はかなり真面目だよな
- 961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 01:27:49.75 ID:2GDin3s2O
- 乙
みーちゃんの努力の賜物だなそこは
- 962 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 20:37:26.05 ID:q+hJpbORo
-
では少しだけ
- 963 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 20:37:52.30 ID:q+hJpbORo
-
陽乃「通信回復を試みるわ」
水都「また力を使うんですか?」
陽乃「反動があるような力を使う気はないわよ」
またむっとする水都に陽乃は呆れたように首を振る。
今の陽乃にとっての脅威は伊邪那美命の力による反動
九尾の力を使うくらいなら何も問題はなかった。
水都はそれでも心配なようで、陽乃をまじまじと見つめる
水都「いつもはそうでも、消耗した今の状態でも同じ保証はありますか?」
陽乃「証明のために力を使えばいいの?」
水都「……そうじゃないですけど」
証明のために消耗させていては、
ならその次は大丈夫なのかと気になってしまう。
陽乃は自分に問題がないと確信があるからいいが、水都の中では勝手に堂々巡りである。
陽乃「貴女から見て私と通信どっちが余裕がないのよ」
水都「それは通信ですけど」
けど。と、水都は渋った。
水都「大事なのは、陽乃さんの方です」
- 964 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 20:52:53.13 ID:q+hJpbORo
-
陽乃「はぁ」
水都「本気で言ってるんですよ……?」
陽乃「それはそうでしょ。私がいなくなったら諏訪が終わるんだから」
不満げな水都を一瞥する陽乃の呆れた反応には、
水都もまた深く、顔を顰める
陽乃はどちらかといえば察しが良い
しかし、察したからと言って寄り添ってくれるというわけでもなく。
水都「諏訪の代行じゃなくてもですよ」
陽乃「貴重な戦力だもの。分かってるわよ」
水都「……」
利用価値があるから。
それを大前提とした陽乃の答え。
水都はそうっと手を伸ばして、陽乃の頬をつまむ
陽乃「……なに?」
水都「なんとなく、うたのんの気持ちが分かった気がして」
陽乃「なんなのよ」
水都「こっちの話です」
にこやかな水都の反応は、やはり、さっきの仕返しか
陽乃は目を細めたが、水都は気にせず陽乃の頬を手放す。
水都「……似てるなと」
陽乃「私が? 白鳥さんに?」
水都「どうでしょう?」
- 965 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 21:07:51.75 ID:q+hJpbORo
-
陽乃は暫く水都を見つめていたが、
ため息をつくと、さっと目を逸らして自分の手を動かす。
握る力、持ち上げる力、曲げる力何一つ不自由はない。
陽乃「似てないわよ」
水都「え?」
陽乃「以前ならともかく、今は」
歌野と水都、どちらに似ていると誰が言ったか。
思い返した陽乃はそれを不鮮明に否定する。
今は到底似ていない。
陽乃「貴女は代わりに寝ててもいいわよ」
体を起こし、手足の不自由がないのを確認して、服の皴を伸ばす。
私服ではなく、寝間着
着替えさせられたのだろう。
水都「え、そのまま行くんですか」
陽乃「外に出るでもないし、これでいいわ。見るのは白鳥さんくらいだし」
水都「だ、だめですよ! 万が一があるかもしれないですから着替えてください!」
水都が回り込んで陽乃を阻む。
陽乃「……何か企んでるの?」
水都「ないですけど、とにかく、駄目です」
水都は企んでいない
企んでいないが、御柱の倒壊と地震はけたたましい警報の後に起こった災害である。
それ以前に人々を神社に集めていたので人的被害は皆無だったが、問題はそこだ。
参集殿は立ち入り禁止となっているが、境内には人が多い。
焦る水都を陽乃は睨むように見て、渋々と着替えを手に取った。
- 966 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 21:13:51.39 ID:q+hJpbORo
-
↓1コンマ判定 一桁
1,4,9 通信終了
- 967 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 21:19:48.20 ID:TyVoPUIGO
- あ
- 968 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 22:05:25.59 ID:q+hJpbORo
-
歌野『ですから、何度も言っているようにこちら側にも巫女がいるんです!』
陽乃達が通信施設に向かうと、まだ通信中の歌野の声が聞こえてきた。
口調こそ礼儀を感じるが、声はひどく荒々しい。
苛立っているのを感じるそれに、陽乃の傍らにいた水都が肩を震わせる。
陽乃「……」
歌野『その巫女が神託を受けたんです!』
歌野の言う巫女と言えば水都のことのはずだが、陽乃が振り向くと水都は首を振る。
水都が嘘をついていなければ神託を受けていない
なら、歌野が言う神託を受けた巫女というのは陽乃のことだ。
陽乃がそう言っていた、陽乃の使役している精霊がそう言っていたと伝えるより、
明言せずに巫女という枠を使った方が良いとの判断だろう。
しかし、向こうはそれを素直に受け止めてはいないように感じる。
陽乃「なるほど」
水都「え?」
陽乃「向こうはその神託を受けていないって返答をしたのね」
- 969 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 22:13:27.80 ID:q+hJpbORo
-
向こうの巫女が神託を受けたか否かを把握していなければ、歌野からの情報を受け止めて上に伝えるだけでいい
だが、そうはしていない
していれば歌野が声を荒げるはずがないからだ。
なら、どうなっているか。
通信の相手は神託の有無を把握しており、歌野が言う神託が偽りであるのではないかと考えている。
だから歌野が怒鳴った。
陽乃「……私か」
水都「陽乃さん?」
陽乃「こっちの話」
陽乃に何かされたとか、
あるいはそもそも、連絡しているのが陽乃で混乱させようとしていると疑っているのではないだろうか。
四国が襲撃されるかもしれないという重大な話。
それが、諏訪で行われて四国で行われていないというのは確かに奇妙な話である。
1、ノックしてはいる
2、忍び込む
↓2
- 970 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 22:15:18.08 ID:TyVoPUIGO
- 1
- 971 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 22:18:16.97 ID:TyVoPUIGO
- 1
- 972 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 22:20:14.74 ID:dR9Y9S110
- 1
- 973 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 22:41:48.48 ID:q+hJpbORo
-
軽く息を吐いて、コンコンコンッっと、三度扉を叩いて引き戸を開く。
和室として作られ、一部を通信用の設備によって作り替えられている部屋
その中央にいる歌野は驚いた様子で振り返っていた。
陽乃「失礼するわよ」
歌野「な、え、みーちゃんっ」
水都「体は問題なさそうだったから」
陽乃は水都と歌野のやり取りを無視して、
通信ようの機械から延びるコード、その終点にあるヘッドセットに目を向ける
歌野の頭から離れたそのヘッドホン構造の部分からは、かすかに声が聞こえる。
四国側の通信担当だろう。
歌野「久遠さん、どういうつもり?」
陽乃「あら、来たら行けなかった?」
歌野「そういうわけじゃ……」
- 974 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 23:11:59.77 ID:q+hJpbORo
-
歌野は少し気まずそうな顔をしている。
水都も察して困った表情になっていたが、陽乃はヘッドセットを手に取って半分を耳に当てる。
『勇者様。ご返答ください』
聞いたことのない男の声
若葉でも千景でも友奈でもないし、ひなたでもない。
女性でなく、男性であることに疑問を覚えたが、別におかしなことではないと思い直す。
『勇者様』
歌野「……」
男性の呼び声
歌野は陽乃を見る。
自分が続けるのかそれとも陽乃が変わるのか
どうするのかと問うような視線。
いくら生の声ではないと言っても、
さっきまで聞いていた声と、陽乃の声が違うという判別くらいはできるだろう。
1、杏と球子を送ったことを話す。
2、陽乃のことを通信担当に話す。
3、呪い殺されたいの? と、脅す
4、歌野に任せる
5、何も言わない
↓2
- 975 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 23:14:00.32 ID:21xZzaypO
- 1
- 976 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 23:14:12.94 ID:2GDin3s2O
- 1
- 977 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/02(水) 23:17:34.34 ID:q+hJpbORo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 978 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/02(水) 23:37:17.86 ID:eUletyuYO
- 乙
今の大社の人が陽乃さんとの対話でどんな反応するんだろうか…
あと普段温厚なうたのんがキレ気味で怒鳴るとは結構珍しいシーンでは
- 979 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 02:04:02.29 ID:QGN7+Dh0O
- 乙
まあもうこちら側から出来ることこれくらいしかないしな……
- 980 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 22:36:53.31 ID:oGugrJ6Vo
- では少しだけ
- 981 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 22:39:17.00 ID:oGugrJ6Vo
-
陽乃「代わるわ」
歌野を制すように手を差し向けて、マイクを自分の口に近づける。
歌野がいくら言ってもダメだったなら、陽乃が言ったところで変わりはあるのかと疑問ではあるが、
直接、どういう対応かは身に感じておきたかった。
『勇者様? 何か――』
陽乃「伊予島杏と土居球子をそっちに送還したわ」
問題があったのか。そう続きかけた通信手の声を遮る。
『は……白鳥様?』
陽乃「聞いてる? 二人をそっちに送り返したと言ったのだけど」
水都「……陽乃さん」
水都が、普段から接している陽乃とはまるで違う冷たい声
威嚇し、軽蔑し、相手の恐怖心を煽る陽乃の雰囲気に水都は息をのんだ
『藤森水都さん。でしょうか』
陽乃「はぁ……」
会話の内容よりも、相手が気になっているようだ。
顔の見えない相手。警戒するのは解るが、曰く"陽乃はいない"のではなかったか。
1、冷たく接する
2、自分が陽乃だと告げる
3、話を続ける
↓2
- 982 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 22:40:54.94 ID:6pEFNWhDO
- 3
- 983 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 22:42:10.14 ID:l3VZzIJm0
- 2
- 984 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:12:11.11 ID:oGugrJ6Vo
-
陽乃「陽乃。久遠陽乃」
『そんな、まさか』
陽乃「信じるも信じないも結構だけど、ここ半月の捜索で成果は得られたのかしら」
『……本当に、ご本人なのですか?』
陽乃「貴方達にとって災厄以外の何物でもない名を騙るもの好きがいるとでも?」
『……』
通信手からの声が途切れる。
深く考え込んでいるかのような沈黙の後、通信手側からため息のような音が漏れてきた。
『本当に久遠様なのですね?』
陽乃「ご自由にどうぞ」
判断は委ねるという陽乃の姿勢。
一転して、怒っていないし呆れてもいないが、関心もないといった様子の陽乃
水都と歌野は固唾をのんで見守る。
『では、そこには白鳥様はいないと?』
陽乃「さっきまでと声は違うと思うけど、通信じゃ不鮮明かしら」
『……先ほどまでは』
- 985 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:23:22.59 ID:oGugrJ6Vo
-
陽乃「じゃぁつまり、さっきまでは勇者ともわからない誰かと情報のやり取りをしていたってわけね」
『そ、そういうわけでは! 以前から担当させて頂いており、白鳥様ご本人だと認識して――』
陽乃「最初に白鳥歌野以外が、白鳥歌野を名乗っていたとしたらどうなのかしら」
歌野「ちょっと、久遠さん!」
さすがにかく乱のし過ぎだと歌野が口を挟む。
声が向こうに届いてしまったらしく、「白鳥様」と、通信手の声が聞こえた。
当初から歌野ではなかったかもしれないという疑念
それを植え付けてしまったら、今後の通信に支障が出かねない。
いや、あるいは、通信手が疲れているのだと、別の人に変わるかもしれない。
陽乃「分かってるわよ。あまりにも、話を聞いてくれないんだもの」
歌野「だからってこれはよくないわ」
陽乃「……はいはい」
素知らぬ顔で答えた陽乃はため息をつく。
限度くらいは解っている。
陽乃「四国から、久遠陽乃、伊予島杏、土居球子がいなくなっていたことは把握しているでしょう?」
『存じております』
陽乃「三人で諏訪に来ていたのよ。無理だと思っているのだろうけど、本当にね」
- 986 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:32:37.64 ID:oGugrJ6Vo
-
若葉からの報告を受けていたはずだが、
通信の不調などを理由にそれを完全に信じてはいなかった大社
今回のやり取りでも、信じてくれると思っていないが
言うだけは言っておくと、陽乃はつづけた。
陽乃「でも、事情が変わった。白鳥さんが言っているように、こっちよりもそっちが危ないと神託が下ったのよ」
神託などなく、九尾がその可能性が高いと言っただけ。
九尾が神獣として知らせを持ってきたと思えば
神託と言えなくもないが。
陽乃「だから二人をそっちに送り返したの」
『ですが、白鳥様にお伝えした通り我々にはそのような神託は下っておりません。最も巫女としての適性をお持ちである、上里様にでさえ、そのような神託は下っていないと伺っております』
陽乃「なるほど……」
想定内の返し。
神託を受けるべき側が神託を受けていない
だから、その神託は信ぴょう性に欠けている。というのは、決して間違っていない考えだ。
特に、陽乃を警戒しているのならなおのこと。
向こうに、上手く言う方法はあるだろうか
――そもそも、言ってやる必要は。
1、信じなくて結構よ
2、こっちの方が優秀だとは思わないわけ?
3、そうね。実際は " 諏訪の危機は遠のいた " という神託だとしたら?
4、何も言わない
↓2
- 987 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 23:35:29.77 ID:hRCQGhrHO
- 3
- 988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 23:37:07.27 ID:RZZMlcHIO
- 3
- 989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/03(木) 23:38:08.97 ID:oGugrJ6Vo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 990 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/03(木) 23:47:48.62 ID:RZZMlcHIO
- 乙
伝えるべきことをきちんと伝える姿勢を見せていい方向に転がってくれるといいなぁ
これで後で仇で返されたらもうどうしようもないけど
- 991 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 01:54:44.83 ID:ebOCihHdO
- 乙
そもそも球子たちすら間に合う保証はないもんな
- 992 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 22:14:44.48 ID:zaoAiUXvo
-
では少しだけ
- 993 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 22:15:34.70 ID:zaoAiUXvo
-
陽乃「そうね。実際は”諏訪の危機は遠のいた”という神託だったとしたら?」
『……言い換えれば信憑性が増すと?』
陽乃「むしろ逆。ことが重大だと思ってもらえるようにわざわざそっちが危険だって言っていたのに
神託が来ていないからありえないって跳ねのけられちゃうんだもの」
陽乃はわざとらしく苦笑する。
その笑い方は、知っている人が聞けば九尾の嘲り笑うようなものに通ずるものがあって、
歌野はやや緊張してしまう。
目の前で通信を代わった陽乃が張るのではなく九尾だったら、どうなってしまうのか。
水都が連れてきたから、陽乃本人であると思いたいけれど、
そもそもから切り替わっていたりしたら、水都でも気づけないのではないだろうかと。
陽乃「その神託の後、諏訪周辺からバーテックスの数が減っているのを確認したし、そっち側に移動しているような形跡も感じられた。
提示できる証拠はないし、信じなくても結構よ。これはあくまで形式的な報告でしかないんだから」
ほとんどでっち上げである。
神託は誇張で、数の減少もちゃんと確認したわけではないし、形跡なんて調べてもいない。
陽乃が外に出た時、来た時より明らかに数が多いのは感じたが、減ったという印象はなかった。
そんな口から出まかせ状態の陽乃から水都へと視線を移動した歌野は、小さく笑う。
- 994 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 22:26:48.09 ID:zaoAiUXvo
-
水都「……」
水都は黙っているが、その表情は穏やかだ。
陽乃が九尾である可能性なんて微塵も疑っていない。
陽乃「だけど、私たちは言うだけは言ったわ。取り合わなかったのはそっち。どれだけの損害が出ようが自己責任で処理して欲しいの」
陽乃はそういって顔を顰める。
大社は自己責任とするかもしれないが、民衆は違うだろう。
実際に人を殺めてしまった影響が大きく出てくるはずだ。
やはりあの娘を差し出さなかったからだと、余計に荒れるかもしれない。
それこそ自己責任ではないだろうか。
『本当に諏訪の安全が確保されたと?』
歌野「ええ。諏訪周辺のバーテックスは一掃されました。そこは、諏訪の勇者、白鳥歌野が保証いたします」
陽乃に顔を近づけて、歌野が答える。
瞬時に入れ替わっているだけと思われたら反論の余地もないが、
陽乃が認めるよりは歌野が認める方がまだいいだろうとの判断だ。
『……承知いたしました』
- 995 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 23:03:58.15 ID:zaoAiUXvo
-
考えるように、通信担当は答える。
歌野が証言しているとはいえ、歌野が陽乃に何かされていないとは限らない。
もちろん、この場にいる誰もそれは疑わないが、
顔の見えない向こう側は、疑わざるを得ないのだろう。
陽乃のことを警戒しているなら、仕方がないことだ。
陽乃「それと二人を帰しはしたけれど、間に合う保証はないから」
『どれほどの時間がかかると?』
陽乃「さぁ? そこは二人の頑張り次第ね」
『……承知いたしました。お伝えいたします』
歌野「通信、調子いいわね」
陽乃「私だから」
向こうからのつながりはともかく、
こっち側からのアクセスは陽乃の力で補強されている。
それでも、十分とは言えない
1、上里さんを呼んで貰える?
2、そっちの勇者の状況は?
3、私の扱いはどうなってるの?
4、終了する
↓2
- 996 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:05:06.46 ID:nI0VOlHNO
- 2
- 997 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:07:10.13 ID:gmxgEi/a0
- 1
- 998 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/06/04(金) 23:15:36.82 ID:zaoAiUXvo
-
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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【4頁目】
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- 999 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:16:19.12 ID:nI0VOlHNO
- 了解ですー
- 1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/04(金) 23:58:58.66 ID:BDhqnAdKO
- 乙
- 1001 :1001 :Over 1000 Thread
- / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| アパム!アパム!次スレ建てて来い!アパーーム!
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全レスする(´;ω;`)part40 埋められ気味 @ 2021/06/04(金) 07:10:56.72 ID:Y35f7p1zo
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酒飲みJJIやBBA酒の海へどんぶらこっこ @ 2021/06/04(金) 04:47:17.16 ID:9KEoKD560
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雲消霧散 @ 2021/06/03(木) 22:58:15.11 ID:cT+7OnOyo
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エーザツディヴィジョン @ 2021/06/03(木) 20:54:30.17 ID:7Npgws89o
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タワーリシチ(総合) @ 2021/06/03(木) 20:41:40.37 ID:6QGuVzgHo
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古き良きAA雑談 @ 2021/06/03(木) 20:12:43.85 ID:3rjFeyP6O
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