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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】

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572 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 21:14:13.49 ID:A17Jm63to
遅くなりましたが、少しだけ
573 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 21:15:57.61 ID:A17Jm63to

進化体が出てきた場合は普通のバーテックスと戦うより力を必要とするかもしれない。

だが、無理ではないし無謀ではないと陽乃は思う。

今の体の状態なら、例の……伊邪那美命だって、呼び出しても耐えられそうな感じがする。

もちろん、無駄に使う気はないが。

水都「絶対にダメです」

陽乃「それが一番被害が少なく済むのだけど……」

杏「それは確かにそうかもしれません。けど、それはダメです。絶対に」

水都も杏も、猛反対のようだ

球子と歌野も同意見のようで、頷いている。

歌野「諏訪の神様の力があるから、一番、力があるのは間違いなく久遠さん
    でも、だからって全部を久遠さんに押し付けるなんてしたくないわ」

歌野は陽乃をまっすぐ見つめている。

牽制するかのような鋭い目つき。

それは絶対に許さないと、言っているようだ。

陽乃「貴女達に被害が出ると、私がまた面倒なことになるのよ」

球子「あー……」

球子が察して声を漏らす。

球子「四国戻ったときに、大変なことになるな……」
574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 21:49:11.38 ID:A17Jm63to

戻れたらの話ではあるけれど、

どうにか戻れても、勇者側に被害があったら、糾弾されるのは陽乃だ。

ただでさえ、今の陽乃は立場が悪い。

今も杏と球子が陽乃に害されているのではないかなんてうわさが流れているのだから

実際に被害があったら終わりだ

球子「けど……だめだろ」

陽乃「けがの一つもしない自信があるの?」

球子「……ないな」

あると断じたい

だが、数回戦って、思った。

守る力なんて大したものじゃない。

そんな自負なんて楯とともに投げてしまった方がいいと。

球子「でも、それは駄目だ」

陽乃「……」

球子「そんな顔したって、駄目なものは駄目だ」
575 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/07(金) 22:57:16.09 ID:A17Jm63to

陽乃「そんな顔……?」

陽乃は静かに、噛みしめるようにつぶやく。

陽乃「私がどんな顔してるって?」

球子「めちゃくちゃ不満そうな顔してるぞ」

杏「でも、私達も嫌ですから」

球子は困り果てた表情

杏と歌野は不安そうな表情

水都に至っては、まだ、ためらいを感じる表情を浮かべている。

陽乃はそれらを一瞥すると、息を吐く

陽乃「私一人で、可能限りの力を使って戦う方が、合理的じゃない?」

水都「合理的だから、何なんですか?」

歌野「みーちゃんっ」

水都「合理的だから、久遠さんが全部、引き受けるんですか?」



1、そうよ
2、何で怒ってるのよ
3、必要のない犠牲なんて、馬鹿みたいじゃない
4、だったら何なの?
5、何も言わない


↓2
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/07(金) 22:58:28.74 ID:0IVtyv/WO
3
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/07(金) 22:59:05.99 ID:bQd0d42/0
1
578 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 00:22:45.40 ID:CgVllCxNo

陽乃「そうよ」

球子「そうって……」

球子は不快そうに呟く。

表情も、気持ちがあらわになって渋い感じだ。

空気がひんやりとして……部屋が静まり返る。

唖然とする水都は見開いた瞳の中に、陽乃を映して

そうして、くっっと、唇をかむ。

杏「確かに、久遠さんがわたし達を考えずに力を使うのが一番合理的かもしれません……」

陽乃の力はそれだけ特殊で、強い。

余計なことに気を取られず、

ただその力をふるうことができるのが、一番なのは間違いなかった。

球子「あんずっ」

杏「解るけど、でも、その通りだと思う」

球子の声に、杏は悲しそうに首を振った
579 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 00:29:33.32 ID:CgVllCxNo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 00:31:14.58 ID:vy0CCAjCO

杏ちゃんなんとかしてくれ
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 00:35:43.62 ID:N07nBIYYO

もし陽乃さんが一人で大暴れしたら後で諏訪の神様の力がどれだけフォローしてくれるかが鍵になりそうだな…
582 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 22:43:38.08 ID:CgVllCxNo
遅くなりましたが、少しだけ
583 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 22:44:50.64 ID:CgVllCxNo

杏「久遠さんの力は、私たちも巻き込んじゃう可能性がある……たまっち先輩も知ってるよね?」

球子「そりゃ……だけど」

球子たちは陽乃自身から、陽乃の力による影響は聞いている。

本気を出せるが、出せなかった今までと違って、

以前の本気くらいなら、簡単に出せてしまいそうな状態であることに偽りがなければ、

戦闘中に、周囲の勇者にまで影響が出る可能性はゼロとは言えない。

それを気にすることなく力を使い、バーテックスと戦えるのなら、

周りが手を貸さなくても、総攻撃をしのげるかもしれない。

その結果、陽乃だけが著しく消耗することになるかもしれないが、

被害は……きっと、それだけで収まるはずだ。

歌野「久遠さんって、そんなに危険なの?」

球子「ヤバいな。本気を出されたら、バーテックスの総攻撃なんて比じゃないくらいに被害が出るだろ」

球子はわざと誇張しているかのような表情で言うが、

陽乃は否定できなかった。

陽乃「前はともかく、今の私なら結界については問題はないはずよ」

歌野「前のまま総攻撃で力使ってたら、久遠さんの力で結界が壊れる可能性があった……?」

陽乃「そうね。否定はできないわ」

力加減にもよるが、最悪の場合には壊れていた可能性がある
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 22:45:56.47 ID:Q68hhj2YO
よしきた
585 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 23:00:41.14 ID:CgVllCxNo

歌野「神様が力を与えたのはそれも理由の一つだったりするのかしら」

陽乃「そんな優しさなんて、ないと思うけど」

有無を言わせずに無理矢理に与えてきたものだし、

少なくとも九尾はそんなこと言っていなかった。

もちろん、そんな理由があったとして、九尾が言うとも限らないけれど。

水都「じゃぁ、伊予島さんは久遠さんに戦ってもらうつもりですか?」

杏「あくまで、合理的ってことの否定はできないなってだけ……です」

水都の視線に、杏は肩をすくめて答える。

杏「私も、久遠さんに一人で戦うなんてして欲しくないです」

球子「もちろん、タマもだぞ」

歌野「私もよ」

陽乃「……なによ」

全員の目が向けられる。

みんな、陽乃がたった一人で戦うことなんて受け入れるつもりはないという感じだ。
586 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 23:01:50.42 ID:CgVllCxNo

↓1コンマ判定 一桁

0,3 歌野
5,8 水都

ぞろ目 特殊
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 23:03:14.19 ID:miLYvMfIO
588 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/08(土) 23:21:26.08 ID:CgVllCxNo

球子「というわけで、合理的とかそういうやつはなしだ」

陽乃「死にたがりなのね」

球子「……言われたくないな」

陽乃には言われたくないと、眉を顰める球子。

杏たちも同意だと頷いて

水都「正直、一番死にたがってるのは久遠さんだと思います」

陽乃「はぁ?」

歌野「だって、あんな代償のある力を平気で使うし……バーテックスと単身で戦うのが合理的だって言うし」

球子「な?」

同意を求めてくる球子に、陽乃は不快な表情を浮かべる。

陽乃は死にたいわけじゃない。

むしろ、生きていくために必死だ

その過程で、力が必要なら使うというだけのこと。

単身で戦うことについてだって、

珠子達を生存させるのが今後につながるのは間違いないから、

犠牲が出ない方を選びたいというだけである。


1、分かったわ
2、どうしてもというなら、私と戦ってでも止めてみる?
3、言っておくけれど、私は誰も守る気なんてないからね
4、何も言わない


↓2
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 23:24:51.82 ID:9jFZBGuNO
1
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/08(土) 23:25:10.68 ID:sB0ANJcy0
2
591 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 00:04:07.54 ID:Zm1Daanno

陽乃「どうしてもというなら、私と戦ってでも止めてみる?」

歌野「戦ってでもって……本気?」

呆れてるかのような表情を浮かべる歌野の傍ら、

また変なこと言ってるよ。なんて呟く珠子に、歌野は唖然と振り返って

歌野「また?」

杏「……本末転倒では?」

陽乃「私なら、殺さないようにすることはできるわ」

バーテックスが相手なら、殺されることがある。

腕や足を食いちぎられることだってある。

けれど、陽乃ならそこまでいかないようにできる。

陽乃「多少、入院してもらうようになるかもしれないけど」

珠子とやったように

一撃決着なんて形式にしてしまえば、より安全に終わらせられると思うが。
592 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 00:10:05.07 ID:Zm1Daanno

↓1コンマ判定 一桁

2,5,9 水都「……ふざけないでください」

0 歌野「さすがに、ありえないわ」

ぞろ目 特殊
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 00:11:21.99 ID:yb6RwIag0
594 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 00:16:28.81 ID:Zm1Daanno

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 00:17:53.80 ID:yb6RwIag0
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 00:18:02.83 ID:VXtW94XzO

サンキューコンマ
597 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/05/09(日) 03:01:52.67 ID:rWVvZqyf0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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598 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 05:28:18.03 ID:GUtuS8XgO

ここでまさかのゾロ目…
一体何が起こるのだろうか
599 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 19:40:21.81 ID:Zm1Daanno
遅くなりましたが、少しだけ
600 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 19:41:16.90 ID:Zm1Daanno

水都「いい加減にしてください!」

部屋に怒号が響く。

声を張ることに慣れていない、無理をしている大声。

迫力も足りなくて、まったく怖いだなんて思えない。

けれど、その場にいたみんなが言葉を失って、静まり返る。

水都「……分かってよ……」

歌野「みーちゃん?」

水都「分かってよッ!」

陽乃「……っ」

ぐっと、水都が陽乃へと詰め寄る。

水都「あんなお願いなんて嫌です、あんなのお願いなんかじゃないです……」

陽乃は昨日、放っておいてと水都に言った。

だからだろう、水都は怒っていてもばつが悪そうで。

今までずっと水都と一緒にいた歌野は今まで見たこともない水都の様子に呆然としていて、

杏と球子も、口をはさむべきではないと思っているのか、黙り込んでしまっている。

水都「放っておくなんて、できるわけがないじゃないですか!」

陽乃「私――」

水都「久遠さんなら傷ついてもいいなんて思ってる人は、ここにはいないんだよっ!」
601 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 20:08:02.11 ID:Zm1Daanno

水都「久遠さんが向こうでどんな扱いされてるとか、どんなこと言われてるとか、何があったのかとか、知らないよ……」

少しは聞いている。

けれど、知らない。

はっきり言ってしまえば、知ったことではない。

陽乃は人付き合いを好まない人で、

けれど、内容によっては親切に答えてくれるくらいには優しい人

自分の力に副作用があるにもかかわらず、

四国から諏訪まで力を使い続けてしまうような人

そして――諏訪の神々が力を授けてくれるような人

水都「私達は、久遠さんを傷つけたいなんて思わないし、傷ついていいとも思わないし、いなくなってもいいとも思いません」

陽乃「……そんなこと言われたって」

杏「久遠さん、ここは大丈夫です。ここなら、大丈夫なんですよ」

陽乃の事情を、きっと、この中では一番よく知っている杏

その杏が、大丈夫だと言う。

あの九尾でさえ、こ個なら問題ないというようなことを言っていた。

だから、本当に、諏訪は大丈夫なのだろう。

陽乃にとって、温かい場所なのだろう。

歌野「ここなら、そんな気を張らなくていいの。だから、結界さえ保つことができるなら、私はここにいて欲しいって思ってるわ」
602 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 20:25:14.08 ID:Zm1Daanno

陽乃「貴女が言いたかったのは、それなのね」

昼間、歌野が言おうとして言わなかったこと。

陽乃は体調を気にしているのかと思っていたが、

そんなことではなかったらしい。

歌野「久遠さんは出て行くって言うし……正直、あまり楽しめるような環境ではないから言うのはどうかと思ってたけど」

歌野はそう言って、陽乃ではなく水都を一瞥する。

困ったような、でも、喜んでいるかのような

ちょっぴり複雑な表情

歌野「せっかくだから、検討してくれないかしら?」

珠子「まぁ、四国には若葉たちを残してきてるからな……」

ただでさえ少ない勇者を分断した状態。

人数的には、諏訪の方が多いくらいだ

水都「残る気は、ないんですか?」



1、ないわ
2、あると思ってるの?
3、何も言わない


↓2
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 20:31:59.20 ID:gSMbYstk0
2
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 20:33:04.70 ID:yb6RwIag0
3
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 20:33:39.02 ID:+B+CzsihO
3
606 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 20:58:07.11 ID:Zm1Daanno

珠子「おっ?」

陽乃が何も言わないでいると、珠子がにやりと笑う。

言うまでもなく不快そうな表情をい浮かべた陽乃だが、

珠子はそれでも「はははっ」と、むしろ声を出して

珠子「ないって言わないんだな」

陽乃「……いちいち、言う必要ある?」

珠子「あるだろ。タマでもそんなことくらいわかる」

珠子の陽気な反応が返ってくる。

水都の迫力のない勢い

それに便乗してきた歌野の本音

それに対して、すぐには答えなかった言い訳に「言う必要があるか」なんていうのは物足りない。

杏「勇者を各個撃破されないように、一つの場所でまとまるというのは大事なんじゃないかなって私は思う」

ここから出て行かなくてもいいのではと思う、諏訪の二人

それに対して、杏は静かに切り出す

杏「四国なら、神樹様の恩恵もあるし、勇者が7人にもなれば絶対に守り抜くことができるはずだから……」

進化体がいたって、総攻撃があったって、協力し合っていけばどうにか乗り越えられるはずだろう。

けれど。

杏「でも、久遠さんさえよければ、ここにいる方が良いと思います」

杏も、結局はそう思っているようだ
607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 21:23:36.28 ID:Zm1Daanno

虐げられるってわかりきっている場所に戻るよりは、

多少の不自由さなどはあっても、

温かく迎え入れてくれる諏訪にいる方が良い。それは、精神的には間違いない。

杏と球子が消息不明になってしまっているという問題もあるけれど、

通信担当が若葉から、大社から派遣されてきた人になったのだから、

杏たちに参加させればどうにかなるかもしれない。

だが、それでいいのだろうか?

四国は本当に守り切れるのだろうか

諏訪は本当に不滅なのだろうか

それらがなかったとしても……向こうには母がいる。

陽乃を唯一、四国に縛り付ける存在

『下手に救ったのが仇になったのかや?』

陽乃「……やめて」

母がいなければそもそも、あの日から生きている理由さえなかったかも知れないのだから。


1、向こうには母がいるのよ
2、残りたければ残ればいいわ。私は戻る
3、……考えておくわ
4、何も言わない


↓2
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:24:43.28 ID:CWIKqnpiO
1
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:25:04.03 ID:gSMbYstk0
1
610 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 21:43:16.50 ID:Zm1Daanno

陽乃「向こうには母がいるのよ」

珠子「タマ達だって――」

陽乃「母しかいないのよ」

両親がいる。ではない。

母しかいないのだ。

バーテックスに襲撃されて亡くなったのではなく、

人々の手によって、父を失って母親だけが残った。

陽乃に母しかいないように、

母には陽乃しか残されていない。

陽乃「大社は私がいるから、母をどうにもできない。預かることを容認しているの」

陽乃が身勝手なことをしても、

母を人質にとって行動しようとしてこないのは

それが逆に、逆鱗に触れることになるとわかっているからだ。

けれど、すぐには手をだせないこの遠距離

母に何もないなんて保証はない

陽乃「母まで失うわけにはいかないのよ。わかるでしょう?」
611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 21:55:39.12 ID:Zm1Daanno

歌野「……なるほど、だったら止められないわね」

黙ってしまったみんなの中で、言いだした歌野自身が首を振る。

可能なら諏訪に残ることを選んで欲しいと思っていても、

陽乃がそうしたくないのなら、仕方がないと歌野は考えているようだ。

歌野「みーちゃんも、無理強いは駄目よ?」

水都「私は……私は別に、諏訪に残ることが重要だとは思ってない」

歌野と同じように、そうして貰えたら嬉しいとは思う。

だが、それが絶対だなんて思っていないし、

一番重要に考えているのは、諏訪か四国かという問題ではない。

珠子「そういうことなら、残れないな……悪い」

杏「もともと、諏訪の人たちを連れ帰るって予定だったわけだし……」

陽乃の事情も事情で、だから、みんなトーンダウンする

これ以上、ここに残った方が良いだなんて言えなかった。

陽乃「そういうわけだから、私は向こうに帰る予定。総攻撃については――」

正直、陽乃が単独で力を使うのが手っ取り早くて合理的

だが、みんなはそれを望んでいないようだ


1、いいわ。貴女達も勝手にして
2、やっぱり、私が一人で担当するわ

↓2
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:58:53.97 ID:gSMbYstk0
1
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:59:06.13 ID:KVg2xD8TO
2
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:04:37.11 ID:F2TtaE+9O
1
615 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:15:11.89 ID:Zm1Daanno

陽乃「やっぱり、私が一人で担当するわ」

珠子「それは駄目だって」

陽乃「伊予島さんだって、合理的だって言ってるわよ」

陽乃は呆れたように言って、珠子を見る。

優しくない、鋭い視線に球子は目を見開いて睨み返す。

陽乃「言ったはずよ。どうしても止めたいなら、戦いましょうって」

歌野「みーちゃんの気持ち、わかってもらえない?」

陽乃「知らないわ」

歌野も、やや苛立ちを感じる声色で言うが、陽乃は態度を変えない

歌野「久遠さん一人に任せて、傷ついて欲しくないのよ」

陽乃「だから、何? 私以外の人が参加したら誰も傷つかないとでも?」

水都「でも、久遠さん一人よりは被害が少ないと思います」

陽乃「どうだか、ね。個別に傷を負う分、被害はむしろ多いと思うのだけど」

陽乃はもう話は終わったとでもいうかのような様子で、

小さく、ため息をつくようにしてみんなを見る

陽乃「向こうに戻るなら、無駄に戦力減らさずに最低限で対処するべきじゃないかしら?」
616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:23:03.84 ID:Zm1Daanno

杏「……そうですね」

それは間違いない。

そして、陽乃なら単独で総攻撃をどうにかできるだけの力があるのも事実。

人数的には、それが最低限だ。

戦力としては過剰だが。

一般の人々を守りながらの道中となるのなら、

戦力重視ではなく、人数的な温存を目標にして総攻撃を乗り越えるのが一番だ。

陽乃のやろうとしていることは間違っていない。

感情的に受け入れがたくても、正しい。

水都「なら、せめてうたのんと協力するとか」

陽乃「いらない」

水都「っ……」

陽乃「とにかく、私一人でやるから。出てくるなとは言わないけど、貴女達の安全は保障しないわ。巻き込むからね」
617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:27:09.62 ID:Zm1Daanno

珠子「本気なんだな」

陽乃「当たり前でしょう。冗談で言う必要あるの?」

珠子「ないけどさぁ……」

珠子は諦めたのか、首を振る。

陽乃はこうと決めたら実施する。

それは人を殺すこ都もあるし、単身で逃げ出して野宿することもあるし、

こうして、諏訪にまでくるようなこともある。

それを見てきたからこそ、珠子と杏は止められないと思わざるを得ない。

なにより、

それが実際問題一番いい結果が得られると……分かっているからだ。

反対理由なんて、感情以外の何物でもなかった。

陽乃「話は終わりね。止めたければ力づくでどうぞ」

自分より強い人がいるなら、

陽乃の言っていることは誤りだ。

素直に引き下がるしかない

だが、それを証明できないのなら、考えは変わらない
618 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:29:40.84 ID:Zm1Daanno

↓1コンマ判定 一桁

0,4,7 歌野「なら、私と戦いましょう」 

※それ以外は交流終了
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:32:10.06 ID:RUHeMCfMO
620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:36:05.18 ID:Zm1Daanno

√ 2018年 8月15日目 夜:諏訪

01〜10 杏
12〜21 球子
34〜43 九尾
56〜65 水都
89〜98 歌野

↓1のコンマ

※ぞろ目 全員(九尾を除く)
※それ以外は通常
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:37:07.43 ID:F2TtaE+9O
622 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:52:04.78 ID:Zm1Daanno
√ 2018年 8月15日目 夜:諏訪


どこかで、虫が鳴いている。

夏の風物詩といえば、季語にでさえ選ばれる蝉だろうけれど、

夏の夜に聞こえる声はそれだけではない。

蚊取り線香の煙が漂う。

時々、風に流されていくのを横目に、陽乃は明かりのない夜の自然に目を向ける

陽乃「……なに?」

九尾「主様が力を本気で扱うなら、あんな娘ども死ぬぞ」

陽乃「もちろん、手は抜くわよ」

すぐ隣に腰掛ける、金色の長い髪をなびかせる和装の女性

赤い瞳は陽乃を見ずに、手元の小さな器に向いている

陽乃「なにそれ」

九尾「くふふっ、飲むかや?」

陽乃「……お酒は嫌いだわ」

近づけられた器に揺れる水面

感じた鼻をつくようなにおいに、陽乃はさっと顔を背けた
623 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:57:09.46 ID:Zm1Daanno

九尾「眠らぬのかや?」

陽乃「眠くないのよ」

夜だって言うのに、陽乃は全く眠くなかった。

体の中に有り余る力が、睡眠欲求をはじいてしまっているらしい。

その原因とも言える諏訪の神々のおかげで、力はほとんど自由に使える

だからと言って、全力行使などは行うつもりはない。

殺して、どうするのか。

陽乃の力は、代償がある分強力だった。

その代償の部分が取り除かれたのだから、

もはや、化け物という言葉が完全に否定できなくなった。

陽乃「挑んでくると思う?」

九尾「ふむ……」

九尾は手の中の器に口をつけて、小さくのどを鳴らす。

九尾「主様の判断は誤っておらぬ。きゃつらが愚か者でなければ、挑むこともあるまい」

陽乃「そう……」



1、貴女なら、ここに残る?
2、どうしたらいい?
3、お母さんは無事だと思う?
4、通信設備、どうにかできるかしら
5、できるだけ突き放してきたのに……

↓2
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:00:06.97 ID:RUHeMCfMO
2
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:00:09.95 ID:F2TtaE+9O
5
626 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 23:02:26.56 ID:Zm1Daanno

ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、通常時間から
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:13:04.92 ID:RUHeMCfMO

ちょっと心が痛むけどお互いに考えをぶつけ合えるようになっただけ一歩前進と見るべきか
ただあとで仲直りはしておきたいな
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 06:04:51.30 ID:jGUECwwcO

九尾との交流が終わったらいよいよ総攻撃回になるの?
629 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:05:56.15 ID:bHUA9sIjo
では、少しだけ
630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:06:22.16 ID:bHUA9sIjo

陽乃「できるだけ突き放してきたのに……」

どうしてこうなったのか。と、

疲れたように吐き出す陽乃は、窓の縁に腕を敷いて、顔を伏せる。

九尾「むしろ、そうしてきたからじゃろう」

九尾は一口お酒を含んでから、静かに答える。

こくりと、のどをお酒が通っていく音が、はっきりと聞こえた。

九尾「真に拒むならば、突き放すことさえ不要じゃ。出方を待たずに己から手を出してもよかったやも知れぬ
    主様の境遇を最初から告げて、関わるなというてもよかったやも知れぬ」

風が吹いて、九尾の不可思議な匂いを感じる。

あまり嗅いだことのない匂いだけれど、嫌ではなく

むしろ、好ましく感じられる匂い。

陽乃「なら、今からでも間に合うかしら」

九尾「無駄じゃろうな。あの小娘どもの様子を見たであろう? すっかり、入れ込んでおるな」

くつくつと、小ばかにしたように九尾は笑って

九尾「あの日、すぐにでもあの地を出て行くべきじゃったな。そうすれば、主様自身の考えそのものに違いがあったはずじゃ」

陽乃「他人を受け入れられるように?」

九尾「ふむ……そうじゃな」
631 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:25:24.04 ID:bHUA9sIjo

陽乃「私が望んでることじゃないわ」

九尾「その望みそのものが変わる」

陽乃「………」

例えば、3年間を諏訪で過ごしていたらどうだっただろうか。

きっと、陽乃にとってはとても穏やかで優しく、温かいものになっていたことだろう。

最初の内は大変だったかもしれないが、

次第に、楽になっていたことだろう。

歌野一人で3年間も生き抜けたのだ

陽乃が加わっていたらもっと楽で、確実だったはずだから。

陽乃「やめてよ。今更だわ」

久遠家を差し出した人々による悪意による、歪み

それさえなければ、向こうだってここまで生き辛くなかったはず。

陽乃のその考えを悟ってか、九尾は「主様」と呼ぶ

九尾「妾は、あ奴らはみな、殺してしまうべきじゃと思うておった。にもかかわらず、主様はそれを拒んだであろう」

陽乃「……なによ。私が悪いって言いたいの?」

九尾「邪魔ならば消せばよい。利用できるものは利用すればよい」

しかし……と、九尾は深く息を含む。

九尾「主様はあまりにも、生温い」
632 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 23:17:17.57 ID:bHUA9sIjo

九尾「そんな主様じゃからこそ、あの小娘どもがついて回るのじゃろう」

陽乃「なら、今から変わればいい?」

九尾「さて……それでどうにかなるものとは思えぬがのう」

陽乃は腕に伏せながら、九尾の方に顔を向ける。

九尾は、含みのある表情を浮かべていて、

いつ出したのかも分からない、お酒の入った瓢箪のようなものから、器に注ぐ。

九尾「主様は強く拒み、望んだ藤森水都からあんなにも詰め寄られたからのう」

陽乃「……ええ」

九尾「あの小娘にとって主様は放っておけぬ存在になっておる。おそらく、ほかの小娘どもにも」

九尾の赤い瞳がようやく、陽乃へと向けられる

人工的な、淡い光だけの室内にぽぅっと……金色の光が浮かぶ。

それに、意識が持っていかれそうになる

九尾「妾が手を打ってやってもよいぞ?」

九尾は、怪しい笑みを浮かべて

九尾「無論、主様が諦めるというのも手じゃが」


1、諦めるなんて無理よ
2、貴女、何するの?
3、貴女に任せたら、それこそ終わりよ
4、そうね、諦める方が、楽かも
5、何も言わない

↓2
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:21.31 ID:lRA+V7I+0
2
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:21.98 ID:Z9BazS/DO
3
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:25.46 ID:zjUy5x/I0
4
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:43.05 ID:5smNC3940
4
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:20:09.92 ID:32EDvYvkO
4
638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 23:38:35.66 ID:bHUA9sIjo

陽乃「貴女に任せたら、それこそ終わりよ」

陽乃は睨むように言ったが、

九尾はまるで気にしていないのか、平然と笑う。

九尾「主様が望む、静寂を与えるだけじゃ。終わることは終わるが、なに、主様に害はない」

陽乃「本気で言ってるの?」

九尾「いかにも」

九尾は、本気だ。

他愛もないことを語っているみたいに、表情は柔らかい。

そうして、こくりと、お酒を口に含む

九尾「ふむ……やはり、ただ酒は口に合わぬな」

器が消え、瓢箪が消え、

そして、九尾の女性としての姿が狐へと変わる。

九つの尾をもつ、妖狐に。

九尾「主様は人間じゃな。あまりにも、人間じゃ。有象無象が主様を化け物と呼ぶ意味が解らぬ。愚者然とした、見事なまでに生易しい小娘でしかないというのに」
639 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 00:07:56.20 ID:tdD/zRTwo

金色の毛並みは、不自然なまでに輝いて見える。

それに隠れる、深紅のルビーのような瞳が陽乃へと向く

九尾「妾ならば排除できる。主様が望んでやまぬ、静寂を与えられる。だというのに、拒むのかや?」

陽乃「ろくなことにならなそうだし」

九尾「くふふっ、望むものを手に入れるためじゃぞ? 多少はよかろう」

九尾は笑っているが、冗談で笑っているわけではない。

九尾なら本当にろくでもないことをする。

しかも、九尾自身はそれを、当たり前で、必要なことだと思っている。

九尾「何もせずにいたおかげで、今、主様が逃げることになっておるのじゃろう?
    本当に、現状を変えたいのであれば、行動すべきではないかや?」

陽乃「それはそうだけど……戦力を削られても困るのよ」

九尾「ふむ。それが言い訳かや」

陽乃「言い訳って」

九尾はぺろりと舌を出して、目を細める。

からかっているのだろうか。

陽乃「私は生きていきたいの。死にたくないのよ。そのために利用できるものは利用するの」

九尾「じゃが、総攻撃は主様が一人で対応するのじゃろう?」

くくっっと、九尾ののどが鳴る

九尾「主様は言い訳ばかりじゃな。素直に言えばよい。守ってやれぬと、死なれたくないと」

陽乃「そんなじゃないから」

九尾「じゃが、小娘どもは……妾と同じように考える。主様が何を言おうと、もう遅かろう」
640 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 00:11:23.57 ID:tdD/zRTwo

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 00:18:10.57 ID:aV/H/nOMO

総攻撃が近いのか
どういう風に転がって行くのか気になるな
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 00:20:13.16 ID:oqdCTzrLO

陽乃さんもそろそろ心を開かないといけない時が来てるな
いっそ単独戦闘も撤回して協力を求めるか
643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 21:10:45.16 ID:tdD/zRTwo
では少しだけ
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 21:13:42.98 ID:RAPpnmjVO
かもん
645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 21:13:56.66 ID:tdD/zRTwo

陽乃「……もう遅いんだ」

九尾「さっきの反応を見れば、言うまでもなかろう」

陽乃が単身で対応するという話。

明らかに、それが合理的だとわかっているのに、

みんなは感情でそれを拒んでいた。

みんな、陽乃に寄り添うつもりなのだ。

陽乃は鬱屈な様子で、ため息をつく

陽乃「どうして、こうなっちゃったのよ……」

九尾「また繰り返すかや?」

陽乃「もういいわよ」

九尾は陽乃がそうしてきたからこそだといった。

突き放すような姿勢が、

むしろ、杏たちの気を惹いてしまった。

いいや、杏に関しては、助けてしまった時点で駄目だっただろうか。

かといって、見捨てられる陽乃でもない
646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:01:30.05 ID:tdD/zRTwo

九尾「本当に突き放したいならば、生半可に付き合わぬほうが良い」

陽乃「解ってるわよ」

好きにしたら? とか、勝手にしてとか、

そういう態度をしていたのがダメだったらしい。

そういうのも含めて、初めから突き放しておくべきだったし、

諏訪に来るとき、何が何でも球子たちを置いてくるべきだった。

陽乃「……貴女のせいだわ」

陽乃は、おもむろにそう呟く。

陽乃「貴女が、向こうにたどり着けるかわからないなんて脅すから」

九尾「くふふっ、そうじゃったのう」

九尾はあくまで忠告をしただけだ。

そういわれたからって、気にしなければよかったのにと言われれば、それで終わってしまう。

陽乃「でも、それでも藤森さんたちはどうしようもなさそう」

諏訪の人々は、向こうでの陽乃を知らなかったから

説明したって、理由があった。なんて、言われる始末だし。


1、なるようになるしかないわね
2、九尾は諦めた方が良いって思う?
3、私が、死なせたくないからって言ったって、逆に言われるだけでしょう?
4、何も言わない


↓2
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 22:03:55.21 ID:RAPpnmjVO
1
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 22:04:14.33 ID:3YU3I4hZ0
3
649 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:44:36.43 ID:tdD/zRTwo

陽乃「私が、死なせたくないからって言ったって、逆に言われるだけでしょう?」

投げやり気味に、陽乃は漏らす。

九尾は死なせたくないと素直に言えばいいと言ったけれど、

陽乃はそうは思わなかった。

歌野達だって、同じように返してくる。

死なせたくないなんて、言わなくてもあれだったのだから。

九尾「そうじゃな。そうなるやもしれぬ」

九尾の尻尾がふぁさりと、風を巻き起こす。

九尾「じゃが、少しは思いとどまらせることもできるじゃろう」

陽乃「そうかしら」

九尾「小娘どもが、主様に抱いていることと同様のことを主様が述べることに意味がある」
650 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:56:19.38 ID:tdD/zRTwo

九尾はそういうと、九つの尾を陽乃の体を囲うように動かす。

金色の毛並みがきれいな九尾の尾

暗い部屋の中でも、それ自体が発光しているかのように、明るく見える。

それは、とても暖かい。

陽乃「なに? 何か、変じゃない?」

九尾「妾は何も変わらぬ」

陽乃「……そう?」

九尾の赤い瞳を見るが、九尾はその瞳を陽乃へとむけてはいない。

1度、2度、瞬きをして。

九尾「単身で対応しようと、主様が死ぬことはなかろう」

陽乃「ええ」

九尾「じゃが、問題は主様の影響を結界が受けていることじゃな」

陽乃「壊れる……わけではないんでしょう?」

九尾「うむ」

九尾は息を吐くように頷く。

九尾「主様のおかげで、十分に強固な結界となっておる。
    それゆえに、ここには手を出せなくなるやもしれぬと、思うてな」
651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:05:22.33 ID:tdD/zRTwo

九尾の赤い瞳は、外の暗闇を見つめている。

細く、鋭く、じっっと……見つめている。

その先に何かあるのかと陽乃は顔を顰めて目を向けたが、

光のないその場所には何も見えなかった。

九尾「四国の方に、きゃつらが手を出す可能性がある」

陽乃「諏訪を諦めて、四国を攻める可能性があるのね……」

バーテックスは総攻撃の準備を進めてきていた

だが、それは陽乃達がいなかった頃からの計画だろうし、

結界がだんだんと弱まりつつあったからこそ、実行できたことなのだろう。

諏訪の神々から陽乃へと力が移ったことで、

もしかしたら、総攻撃を諦めて、諏訪を諦めて、

戦力の削がれた四国を襲撃するのではないかと、九尾は考えているようだ。

九尾「バーテックス……じゃったか。きゃつらが、主様の力が四国から諏訪へと移動したことを察知しておるならば、
    明らかに異質な力を帯びている場所に手を出すのは控える恐れがある」

もちろん、いろいろと考える知能があるなら。と、九尾は言うが、

その表情はいたって真剣だ。

やがて、赤い瞳が陽乃へと向けられる。

九尾「主様一人にせよ、小娘どもを連れるにせよ、もし、しばらく襲撃がなければ、先手を打つ方がよいやもしれぬ」

陽乃「……そう、ね」

九尾の忠告

それは、頭の片隅に置いておかなければならないものだ
652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:12:02.03 ID:tdD/zRTwo

√ 2018年 9月1日目 朝:諏訪


01〜10 水都
34〜43 杏
56〜65 歌野
67〜76 襲撃
87〜98 球子

↓1のコンマ


※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 23:12:50.48 ID:RAPpnmjVO
654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:20:56.94 ID:tdD/zRTwo

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から


1日のまとめは再開時
9月突入
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 23:31:29.54 ID:RAPpnmjVO

長くて濃い8月がようやく終わったけどまさか総攻撃こないままだとは…
そして早く四国に戻らないと大変なことになりそう
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 01:44:44.36 ID:Cxoqs5vMO

待つか仕掛けるか
それともいっそ一息に四国まで移動するか
657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:06:06.03 ID:R1eDlF6/o

では少しだけ
658 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:08:25.02 ID:R1eDlF6/o

■2018/08/14 分

1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流有(触らない、余計な事、単独行動、御柱倒壊)
・ 藤森水都 : 交流有(単独行動、神託、特殊1、3年間、時間があれば、放っておいて、御柱倒壊、特殊2)
・ 土居球子 : 交流有(単独行動、御柱倒壊)
・ 伊予島杏 : 交流有(単独行動、特殊1、諏訪の生活、そう、特殊2、説明する、どうしてそこまで、好きにしたら、御柱倒壊)
・   九尾 : 交流無()

√ 2018/08/14 まとめ

 白鳥歌野との絆 50→52(普通) ※特殊交流1
 藤森水都との絆 65→68(良好) ※特殊交流5 
 土居球子との絆 59→59(普通) 
 伊予島杏との絆 70→75(良好) ※特殊交流2
   九尾との絆 66→66(良好)


■2018/08/15 分

1日のまとめ(諏訪組)

・ 白鳥歌野 : 交流有(勇者としてすべきこと、今後、諏訪を出る、不満、単身突撃、合理的だから、特殊2、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 藤森水都 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊6、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 土居球子 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊1、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 伊予島杏 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊3、戦う、母、やっぱり一人で)
・   九尾 : 交流有(力の返却、祟り、突き放してきたのに、任せられない、死なせたくないといっても)

√ 2018/08/15 まとめ

 白鳥歌野との絆 52→55(普通) ※特殊交流2
 藤森水都との絆 68→70(良好) ※特殊交流6
 土居球子との絆 59→60(普通) ※特殊交流1
 伊予島杏との絆 75→76(良好) ※特殊交流3
   九尾との絆 66→68(良好)
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:17:45.25 ID:yV9+MiRsO
絆値下がってなくて良かった…
660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:20:37.66 ID:R1eDlF6/o

√ 2018年 9月1日目 朝:諏訪


陽乃は、一人、いつもの空き部屋の畳の上で寝転がる。

天井を見つめ続けて数分、ゆっくりと目を閉じる。

陽乃「……」

9月に入っても、バーテックスによる襲撃は一度もなかった。

水都はもちろん、諏訪の神々の代理となった陽乃にも、襲撃が行われるような兆候の一切も感じられず、

杏達が様子見で結界の外に出てみたこともあるが、無数のバーテックスの姿はあっても、

襲撃してくるような様子は見られなかった。

だが、その数は増えて行っている。

歌野と水都を加えて、勇者と巫女で移動するなら切り抜けることも可能かもしれない。

だが、一般人を連れてとなると、突破はまず間違いなく被害が出ることになるだろう。

日に日に、通信の状態も悪くなってきている。

陽乃が代理となったことで諏訪の力こそ強くなったが、

改善には至っていない。

陽乃が単独で攻めに転じる……という話は、

みんなから反対されてしまっている。
661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:52:15.50 ID:R1eDlF6/o

九尾が言っていたように、諏訪の残された土地に対する恩恵は、通信状況の悪化に反して豊かになっている。

豊穣の神とされている宇迦之御魂神の力による影響だ。

陽乃は常に力を使うことになってしまっているが、

その分、諏訪の神々に対する信仰心が回復を促進させて、陽乃に影響は出ていない。

それどころか、力が有り余っている。

その余剰な力が、さらに結界を強めているのだろうか。

守りたいだなんて、これっぽっちも思っていないのに。

陽乃「……ん」

歌野と水都は畑仕事に出ていて、

珠子と杏は、襲撃が来ても平気なようにと、待機している。

待機は交代制だ。

だが、陽乃は基本的に参集殿の中にいる。一度、歌野と水都に無理矢理、畑に連れ出されたが、それくらい。

陽乃「……」

今の諏訪は、平穏そのものだ。

外の世界では白い異形が、手から離れた風船のようにうようよと漂っているけれど。

だけど、絶対に続かない。陽乃はなぜか、そう思う。

四国もまだ、襲撃を受けていないようだが、今日も何もないとは限らない。


1、杏、珠子と交流
2、歌野、水都と交流
3、九尾を呼ぶ
4、出かける
5、イベント判定


↓2
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:53:23.18 ID:rKTf7IU50
5
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:53:49.46 ID:yV9+MiRsO
1
664 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 21:34:52.29 ID:R1eDlF6/o

杏と球子は参集殿の中、みんなで共有している部屋で待機している。

陽乃がいる部屋から、少し離れた場所にあるその部屋からは微かに声が聞こえる。

陽乃「……」

陽乃は暇を持て余しているが、杏と球子も同じようだ。

部屋から出て、やや狭い廊下を進む。

通路の、ガラス張りのドアからまばゆい光が差し込んでいる。

9月になっても、まだ温かい。

球子「このままだといいんだけどなぁ」

杏「うん……でも、何もないのが逆に怖いよ」

部屋から聞こえてくる二人の声

気にせず、部屋のドアを開けると、二人が振り返った。

球子「またいたのか」

陽乃「行く場所もないし」

杏「なら、どこか散歩に出てもいいんですよ?」

行先なんて考えずに、ぶらぶらと。

そうしてもよかったという杏の困った表情に、陽乃は首を振った。
665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 22:01:23.75 ID:R1eDlF6/o

陽乃「適当に歩くなんて、浪費もいいところだわ」

球子「元気が有り余ってるくせに、何が浪費だよ」

杏「たまっち先輩っ」

球子は悪びれた様子もなく、

畳の上に四肢を投げ出し、ごろんっと転がって

球子「昨日も、結構な時間まで起きてたろ」

陽乃「そんなことないわ」

球子「……2時は過ぎてたぞ」

陽乃「……」

じっと、球子は陽乃を見つめる。

陽乃はそれをまっすぐ見返して、見下ろして、息を吐く。

陽乃「だから?」

球子「浪費した方が良いんじゃないのかって話」

杏「久遠さん、そんな時間に寝てるんですか?」

陽乃「まぁ、そうね」

杏「それで、いつもわたし達より早く起きてるって……」
666 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 22:24:55.80 ID:R1eDlF6/o

陽乃「そこまで早くはないわよ」

早いといっても、歌野と水都が起きる時間とそんなに変わりがない。

畑の手入れをするために起きる二人と同じか、少し遅い程度。

少なくとも、二人が出て行くのを見送れるくらいの時間には目が覚めている。

睡眠時間は……口にすると、杏は怒るだろう。

陽乃「そうね……じゃぁ、一人で結界の外に出てもいい?」

球子「いいわけないだろっ」

陽乃「でしょ?」

球子「結界の中で散歩するとか、いろいろあるじゃんか」

陽乃「ないから、ここにいるのよ」

球子は言い返す代わりに、むっとする。

何か言っても、また何か言い返されるだけだ。

杏は、そんな球子を見てちいさく笑う。

諏訪に来てからも、何度か見た光景。

杏「久遠さんはやっぱり、一人で戦うつもりですか?」

陽乃「それが一番だって、貴女もわかってるでしょ?」

杏「被害が最小限なのは間違いないですけど、でもやっぱり、さすがに総攻撃すべてを委ねるのはないと思います」


1、心配ないわ
2、適材適所よ
3、それで、貴女達の誰かに死なれても困るわ
4、その総攻撃自体が、起こりそうにないのだけど


↓2
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 22:30:02.80 ID:pVgm5o/6O
3
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 22:31:11.13 ID:rKTf7IU50
3
669 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 23:05:18.06 ID:R1eDlF6/o

陽乃「それで、貴女達の誰かに死なれても困るわ」

球子「……死ぬと思うか?」

陽乃「最悪の場合は」

いくら勇者とはいえ、

バーテックスに殺されてしまう可能性があるのは、球子もわかっていることだろう。

陽乃は、冗談でもなくまじめに頷く。

諏訪に来る際に戦ったし、

陽乃が寝込んでいるときにも球子達はバーテックスと戦っている。

大したけがもなく、快勝だった。

だが、それが総攻撃ともなれば、余裕など持てるはずがない。

多勢に無勢、物量で押しつぶされることは間違いない。

それは陽乃にも言えることだが、

神々に対して、悪影響を与えられる陽乃の力なら、多勢に無勢な状況を打破できる。

素の状態でそれを頼れば、反動で陽乃が大変なことになるが、今はその心配はいらない。

陽乃「特に、二人なんて懐に潜り込まれたら終わりでしょう?」

球子「うぐっ」

杏「たまっち先輩は、投げてなければどうにかできるかもしれないけど……」

球子よりも杏が、辛い。

中遠距離な二人は後方支援が最適だが、総攻撃のような状況ではそんな余裕はないだろう
670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 23:19:17.27 ID:R1eDlF6/o
では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 23:34:35.82 ID:MBxvBnONO

9月に入って数日たってるからか陽乃さんの反応が多少柔らかくなってる気がする
あとはこの平穏がいつまで持つかだな
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