【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【7頁目】

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608 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/19(月) 23:15:33.97 ID:RaXb4RxV0

そもそも、両親を治してあげたところで、千景が平静さを取り戻せるとは思えない。
だから何だと、今更何なんだと。
千景が余計に荒れてしまう可能性もある。

陽乃「まったく、どこに逃げたんだか」

ひなた「現在の四国内には、空き家が多く点在していますから、そのいずれかを間借りしているかもしれないと、大社は考えているようです」

陽乃「普通に考えたらそうよね」

千景が行きそうな場所は皆目見当もつかないが、どこかに身を潜めておく必要がある。
大社がそれをしらみつぶしに探しているというなら見つかるのは時間の問題かもしれない。

けれど、今の千景を追い詰めるべきではないだろう。と、陽乃は目を細める。

陽乃「いっそのこと、襲撃が起きたら郡さんを叩き伏せるべきかしら」

ひなた「……危険です」

陽乃「私が? 郡さんが?」

ひなた「もちろん、久遠さんが」

迷うことのない答えに、陽乃は少し呆然として、それから少しだけからかうように笑う。

陽乃「私が郡さんに殺されるとでも?」

ひなた「今の千景さんは、久遠さんと違って手加減をしませんから」

陽乃「私もしないわよ。殺す気で来るならね」
609 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/19(月) 23:37:33.00 ID:RaXb4RxV0

殺意をもって近づいてくる相手にまで手加減をしてあげる義理はない。
だから、もしも本当に戦いになるのだとしたら、遠慮なく叩きのめすと陽乃は言うが、
ひなたはそれを、本気とは思えなかった。

陽乃はどうせ、不可抗力でない限り殺せないと。

陽乃「それよりも高嶋さんだわ。いつ頃復帰できるのよ」

ひなた「……それは」

ひなたの反応から暫く難しいと察して、陽乃はため息をつく。
歌野の力があればどうにかなるかもしれないが、
歌野は歌野で追い詰められている。

陽乃「そもそも本当に状況が悪いのかも分からないわよね。大社発表なんでしょ?」

ひなた「そうですけど」

それまで疑いますか? と言いたげなひなたの反応に、
陽乃は当然だと笑う。

陽乃「高嶋さんの居場所って、外に漏れてる?」

ひなた「そこまでは分かりませんが……」

まさか。なんてひなたは目を見開く。

ひなた「直接攻め込むと?」

陽乃「ないとは限らないじゃない」

ひなた「もし仮にそうなのだとしたら前代未聞――」

じゃない。のは、目の前にいる人物がすでに示しているし、
その被害者はひなただ。

陽乃「少なくとも私なら――そうするわ」
610 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/19(月) 23:39:12.59 ID:RaXb4RxV0
√ 2018年 10月11日目 昼:病院

↓1コンマ判定 一桁

1 ひなた(継続)
4 若葉
5 襲撃
7 球子

ぞろ目 特殊
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/19(月) 23:41:22.01 ID:KTyUJtmPO
612 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/19(月) 23:44:03.27 ID:RaXb4RxV0

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/19(月) 23:50:16.45 ID:KTyUJtmPO

千景関連については高嶋さんの復活が鍵になりそうだな
どうにか居場所が分かればいいんだけど…
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/20(火) 06:56:14.99 ID:BROi83JwO
おつ
615 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/20(火) 23:16:23.99 ID:s9KkND9g0
√ 2018年 10月11日目 昼:病院


ひなたはあれから陽乃のところに留まり、様子を見守っていた。

水都のおかげで陽乃の体調は見違えるほどに良くなったものの、余談を許さないのが陽乃の力だ。
バーテックスとの戦闘さえなければ問題はないはずではあるけれど、何が起こる変わらない。

とはいえ……と、ひなたは考える。
せっかくある程度体の自由を取り戻したのに、いつまでもベッドの上で良いのだろうか。
少しくらいは外の風に当たるのもいいのではないだろうか。

ひなた「大社や病院の監視はつくかもしれませんが、気分転換に外出しませんか?」

陽乃「……監視されるって分かってて気分転換になると思う?」

ひなた「そこは、気にしないというのはどうでしょう」

おちゃらけたように笑うひなたを一瞥して、陽乃は鼻で笑う。

陽乃「ある程度なら九尾が補佐してくれるから、どこか行きたいなら行ってきたらいいじゃない」

ひなた「私は、陽乃さんと一緒に行きたいんです」

シンプルに。けれど……いや、だからこそだろうか。
ひなたは陽乃をまっすぐ見つめて答える。


1、良いわ。屋上に出られるかしら
2、乃木さんのところにでも行きましょ
3、白鳥さんのところに行きましょ
4、伊予島さんのところに行きましょ
5、気分じゃないわ。

↓1
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/20(火) 23:22:02.47 ID:3QBfAiWIO
4
617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/21(水) 00:02:18.59 ID:JX/bW33a0

陽乃「そうね……なら、伊予島さんのところに行きましょ」

ひなた「……杏さんのところですか? 何かご用事でも?」

陽乃「大した用事があるわけでもないけど、せっかく動けるのなら行っておきたいじゃない」

別に杏である必要はないし、確認するのなら儀式を終えたばかりの若葉の様子を見に行く方が良いかもしれない。
だが、何かと話をするなら杏の方がはかどりそうではある。
球子からのご使命でもあるし。

千景のことなら友奈が良いかもしれないが、
友奈は今、どこかの大社関連施設に軟禁あるいは監禁中で接触は難しい。

ひなた「……そうですね」

少し、乗り気ではないような声色で、ひなたは呟く。

陽乃「何? 貴女と伊予島さんって、仲が悪いの?」

ひなた「いえ、そういうわけでは……そう、見えますか?」

陽乃「ほとんど見たことがないから何とも」

ひなたと杏の関係なんて、陽乃はほぼ知らない。
杏の性格上、嫌うというのはあまりなさそうだし、それはひなたも同じようなもののように思える。
とはいえ、絶対にそうとも言い切れない。

陽乃「貴女とあの子が仲たがいしていようと私には関係がないことだわ。貴女が行かなくても、私は行くわ」

ひなた「ご一緒します。病室の場所、知っていますから」
618 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/21(水) 00:14:17.35 ID:JX/bW33a0
ある程度体の自由を取り戻したと言っても、
松葉杖を使って自由に歩き回れるというほどではなく、仕方がなく車椅子に乗る。

九尾の力を借りて周囲の目をくらませながら、
ひなたの案内で病院を進み、杏のいる病室を目指した。

現在、暴走の心配のない杏と球子は同室、少し悪化しかけていた若葉と、完全に異変のおこっていた歌野は別室。
水都はさらに、また別の部屋を宛がわれているという話だ。

陽乃「私を伊予島さんのところに案内したら、乃木さんのところに言っていても大丈夫よ」

ひなた「大丈夫ですよ。仲違いしているわけではないので」

陽乃「場の空気を悪くされたくはないのよ」

今のところ、陽乃にことを荒立てるような思惑はない。
杏に対して厳しい物言いをするつもりもないし、単に、話があるからと言うだけだ。

ひなたがいた方が良いかもしれないけれど、
杏とあんまり……と言うのなら、無理に同席して貰う必要もなかった。

ひなた「……大丈夫です」

繰り返して答えるひなたの握る車椅子の持ち手が、小さな音を立てる。
陽乃は振り返ることもせずに「貴女が良いならいいけど」と、素っ気なく返した。
619 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/21(水) 00:15:18.29 ID:JX/bW33a0
では短いですがここまでとさせていただきます。
明日も可能であれば通常時間から
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/21(水) 00:23:37.94 ID:Ax1EKJFbO

これまた久々の杏回か
一方でひなたの変な反応が気になる…
621 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/09/21(水) 02:29:25.12 ID:HOBlcSCI0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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622 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/21(水) 23:55:39.80 ID:eRJb9OXVO
今日は休載?
623 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/21(水) 23:56:33.03 ID:JX/bW33a0
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/21(水) 23:59:22.05 ID:eRJb9OXVO
つい先走ってしまった…
いつも連絡乙です
625 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/23(金) 06:36:56.64 ID:MKP9B0sQ0
落ちてしまったので、本日は可能であればお昼過ぎから再開予定になります。
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/23(金) 07:37:33.59 ID:3g2dLdQwO
了解
楽しみに待ってます
627 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/23(金) 19:58:01.21 ID:MKP9B0sQ0

以前は杏一人だったが、千景の犯行と逃走が起こったことで球子との相部屋になっており、
球子は基本的に、杏と一緒に行動するようにしている。

殺されかけたのは陽乃で、狙われているのも陽乃だけであるかもしれないともされているが、
陽乃が狙われたのなら、その味方とも言える球子と杏も狙われる可能性は十分にあった。

もっとも、陽乃はあまり、味方だと認めてはいないが。

陽乃「入るわよ」

扉前で一声かけてから病室に入る。
球子も杏も目を覚ましていて、球子は陽乃が自分から病室に来たことに驚いて素っ頓狂な声を漏らした。

球子「なっ……なんだ? 何か悪いことでも起こるのか……?」

陽乃「なんで?」

球子「なんで? はタマが聞いてることだろ」

呆れたように陽乃を見つめる球子は、陽乃が答える気がないとみてか、「はぁ……」とため息をつく。

球子「動いて大丈夫……いや、そもそも動けるのか? 車椅子」

陽乃「平気だからここにいるのよ」
628 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/23(金) 20:21:05.98 ID:MKP9B0sQ0

実際には8割ほどひなたに頼って動いてるのだが、そのひなたが今は2人に見えていない。
だから一見、陽乃が自分で車椅子を動かしているように見えているのだろう。
陽乃が目を細めると、球子は「無理してなきゃいいんだ」と、視線を払うように手を振る。

思えば、ひなたがいることは2人には明かしていない。ような気がする。と、陽乃は目を伏せた。

明かしたような気もするけれど、それは歌野と水都……それと若葉くらいで、殆ど接触の機会がなかった杏と球子には隠したままだった。かもしれない。

ひなた「――陽乃さん」

陽乃「っ」

耳元でひなたの声が聞こえ、微かに漏れた吐息に擽られて、陽乃は思わず跳ねるようにして大げさな反応を見せてしまう。
陽乃が振り返ると、ひなたは「ごめんなさい」と言いつつ、正面を指さして「杏さんが」と誘導する。

杏「久遠さん?」

陽乃「え? あぁ……何?」

杏「この前話していた件について話にきたのかと……」

大丈夫かと心配そうな杏に目を向ける。
ひなたが見えていないから、不意に驚いて、振り向いて……と、2人から見た陽乃は挙動不審だったに違いない。



1、その前に紹介しておくわね。上里さん
2、そうね。その続き
3、大丈夫よ。気にしないで頂戴

↓1
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/23(金) 20:22:54.03 ID:WiScVVQQO
1
630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/23(金) 21:33:04.48 ID:MKP9B0sQ0


正直に言うと、ひなたがここにいることはあんまり周囲に広めたくはないものだが、
現在この病院で生活している杏、球子、水都、歌野、若葉の中で、
すでに半数以上が知っていることだし、
球子はともかく、杏なら知っていても問題ないだろう。

それにそもそも考えてみれば、敵対している千景がひなたの存在を知ってしまっている為、杏や球子に黙っていたところで。と言うのもある。

陽乃がひなたに目を向けると、ひなたは意を酌んでか頷く。

陽乃「その話もあるけれど、その前に」

陽乃がそういうと、九尾の力が薄れて行ってひなたの姿があらわになっていく。
陽乃視点では何も変わらないが、2人は少しだけ驚いて。
杏が「やっぱり」と呟いた。

杏「そうですよね……そうなりますよね」

陽乃「何が?」

杏「いえ……タマっち先輩から聞いてた限りでは、まだまともに動けないはずだったから、無理しているのでは。とも、思ったんですが」

ひなたさんが一緒なら納得です。と杏は言うものの「無理していませんか?」と念をおしてくる。

陽乃「大丈夫よ。車椅子くらいなら、この子がいなくても動かせる程度にはね」
631 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/23(金) 22:50:19.83 ID:MKP9B0sQ0

球子「ひなたが何かしたのか?」

ひなた「いえ、私にはなにも……藤森さんと白鳥さんです」

残念そうに言うひなたは、少し肩を落としたように見える。

ひなたを庇ったために負傷した左手の代わりを務めるとは言ったものの、大したことは出来なかったと思っているからだろう。
聞いた球子も少しばつが悪そうに目を細めて「まぁ陽乃だからな」と、息をつく。

陽乃「私だから何なのよ」

球子「普通じゃどうにもならないだろ。陽乃の場合」

陽乃「それは間違いないわ」

陽乃の症状は医者にでさえどうにもできないことがあるし、死んでもおかしくない状態にもなることがあるため、神々に愛されている少女だからと言って、何かが出来るかと言うと、そうでもないのが現実だ。

陽乃の後ろで、まるで傍仕えのように控えるひなたは「そうですが」と、あまり納得は言っていないような呟きを漏らす。

あんまり、良い空気ではないと察してか、杏が陽乃を呼ぶ。

杏「例の、真鈴さんにお願いする件ですが、藤森さんにお話しはしてあります」


632 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 00:15:45.38 ID:wLja98K10

陽乃「真鈴……?」

誰だったかと、少しだけ考える。
確か、少し前に話し合った杏達にとって仲の良い巫女の少女だ。と、陽乃は思い出して。

陽乃「そう。でもすぐには不可能でしょうね。それまでに襲撃がなければいいのだけど」

それに関してはバーテックスの気分……気分なんてものがバーテックスにあるのかは知らないが、それ次第になってしまう。
とはいえ、若葉と歌野は済ませてあるし、陽乃も多少は回復しているから完成型が現れなければ大した被害も出ずに済むはずだ。

球子「けど、本当にやるつもりなのか? 危険なんだろ?」

ひなた「私と藤森さんは済ませましたけど、大きな副作用などは出ていません」

ひなたは儀式については。と、後付けで加えると、実際に襲撃が起こり精霊を使った場合には相応のものはあるようです。と、水都のことを踏まえて、神妙な面持ちで答える。

ひなた「儀式については、巫女と勇者の繋がりが重要なのは確実と見ていいかと」

球子は悩まし気に唸るとやや不安の残る様子で顔を顰め、杏に目を向ける。

球子「ますずなら大丈夫だと思うか?」

杏「真鈴さんなら……とは思うけど、実際にどのくらい影響出ちゃうかは心配かな」


1、よく話し合うと良いわ
2、不安ならやめておく方が良いわ
3、ある程度なら白鳥さん達でどうにかできるわ
4、別に貴女達が死にたければそれでもいいのよ


↓1
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 00:17:42.34 ID:GAhgvy5uO
3
634 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 00:24:05.19 ID:wLja98K10

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 00:27:49.14 ID:GAhgvy5uO

そういえば安芸先輩の場合は杏とタマの二人分あるけど大丈夫なんだろうか
636 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/09/24(土) 02:44:04.72 ID:VsrGL3oh0
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637 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 17:04:07.08 ID:wLja98K10
遅くなりましたが、少しずつ
638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 17:15:28.12 ID:wLja98K10

陽乃「ある程度なら、白鳥さん達でどうにかできるわ」

球子「そりゃそうだろうけど、それだけじゃ危ないからってこういう話になったんじゃないのか?」

陽乃「だからと言って無理強いさせる気はないってだけよ。そんなことしたところで犬死するだけだもの」

球子「そうは言ったって、危ないんだろ?」

陽乃「どっちも変わらないわ」

杏や球子、そして安芸真鈴という巫女が侵す危険も、歌野と水都が侵す危険もどちらも命にかかわることであり、ちょっとしたことで死に至るものだ。

であるならば、無理強いしてそのリスクを高めるよりも、それを覚悟のうえで合意し、踏み込んでいってくれる方が圧倒的にマシになる。

両者の感覚にも左右されることならば、なおのこと。

陽乃「生半可な覚悟で来られたって意味がないのよ」

杏「それは承知しています」

陽乃「貴女達はいいわ。どうせそもそも死ぬ覚悟があるんだから」

球子「そんなわけないだろ。出来るなら死にたくないに決まってる」

だけど。と、球子は続ける。

球子「いつかはそうかもしれないって、思わずにはいられない。だから、少しでも希望がある方に懸けたいって思う」
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 17:17:46.07 ID:rBU0bQaXO
来てたか
640 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 17:53:19.61 ID:wLja98K10

杏「私達は覚悟できています……タマっち先輩が言うように、出来る限り避けたいとは思っていても、現状、それが難しいことは分かっていますから」

以前は陽乃を含めても6人しかいなかった勇者が6人になった。
それも、本来なら失われていてもおかしくなかった諏訪の勇者が加わってくれたのだから、
士気は高まる……はずだった。

けれど、諏訪から勇者と生存者を連れ帰ってくるという功績に四国のリーダーとしての役目を与えられていた千景は嫉妬して歌野に厳しく接し、
それに加えて、完成型のバーテックスの出現による被害や、陽乃の件、家庭の事情など
不幸が重なって勇者達はボロボロになってしまったし、千景は反旗を翻してどこかへと行方をくらませてしまった。

安易な希望なんてものは抱くべきではないと、まさに、現実が知らしめていた。

杏「真鈴さんに関しては、水都さんに確認を取って貰ってからです。もし、真鈴さんが怖がったり、難しいと思っていたりするなら、諦めるしかないとも思っています」

杏はそう言いつつも、少しだけ不安そうな表情を見せる。
断られてしまう可能性が高く、今後に不安を覚えているのだろうか。
それとも、その真逆で、安芸真鈴が勇んで踏み込もうとしてくるだろう。と、思っているからだろうか。
641 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 18:57:06.38 ID:wLja98K10

杏が言うように、巫女の意思次第なのは事実だ。
陽乃達だけであれこれと語っていても、結局のところ巫女である安芸真鈴が受け入れてくれなければやるだけ無駄、語るだけ無駄な話でしかない。

陽乃「まぁ、そうね。その巫女次第だわ」

ひなた「……何か、気になることでも?」

陽乃「?」

後に控えていたひなたには表情も見えていないはずなのに、
なぜだか、気がかりなことがあると確信しているかのような声色で、ひなたは訊ねてくる。

振り向けばひなたがいて、その表情はいつもと何ら変わりがない。
陽乃は、もしかしたら九尾が化けているのかもしれないと今更ながら目を細めたが、
ひなたは困ったように「陽乃さん?」と呟くくらいだった。

陽乃「気になることと言うほどでもないのだけど」

安芸真鈴が承諾しなければ無駄になる話だ。
今する必要もないことだが、おそらく、安芸真鈴には2人分を補えるほどの地力はない。
杏か球子どちらかを支えるので精いっぱいだろうし、もしもその限界を超えたいというのなら、
それはやはり、ひなたや水都のように陽乃との関わり合いが必要になってくるだろう。

もちろん、それでも一般の巫女であろう安芸真鈴には耐えがたい苦痛を伴う可能性はあるのだが。


1、伊予島さんと土居さん。どっちが助けて貰うつもりなの?
2、何もないわ
3、貴女、本当に上里さんなの?
4、郡さんの件よ。アレ、どうするのか考えてる?


↓2
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 18:58:59.64 ID:+ld8oaNAO
1
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 19:02:11.66 ID:Dxk7166oO
1
644 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 19:39:52.02 ID:wLja98K10
陽乃「伊予島さんと土居さん。どっちが助けて貰うつもりなの?」

陽乃がそう問いかけると、杏と球子は揃って互いの名前を口にする。
分かってはいたことだが、球子は杏を救いたいと考えているし、
杏は球子を救いたいと考えている。
そうして恐らくだが安芸真鈴が承諾した場合、彼女は2人を助けたいと思っているだろう。

けれど、それは不可能だろうからどちらかに決めなければならない。
しかし、2人は互いを救いたいと言う。

陽乃「言っておくけれど、不可能よ」

球子「そりゃわかってるさ……ひなたも無理なんだろ?」

ひなた「私の場合、陽乃さんと若葉ちゃんだったので」

得心がいったかのように声を漏らす球子を一瞥した杏は、小さく笑って「重いですから」と呟く。
症状が重いのは間違いないと陽乃は思って。

陽乃「私は別に頼んでないし、断ったわよ」

球子「まぁだろうな。水都もおんなじ……というか、歌野の場合若葉以上だもんなぁ」

ひなた「そうですね……」
645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 20:22:47.38 ID:wLja98K10

陽乃「それで?」

球子「そう言われてもなぁ、あんず〜」

杏「タマっち先輩の方が前に出て行くんだから、タマっち先輩の方が良いと思う」

球子「いやいや、タマは丈夫だからな。全然へっちゃらだぞ」

杏「ただ我慢強いだけのくせに……」

なにおう。と、憤慨する球子と、本当のことだって言い返す杏。
2人からかやの外に追いやられた陽乃は、それを疎まし気に見つめてため息をつく。

ひなた「互いを思うが故、ですよ」

陽乃「そんなことは分かってるわよ。それとこれとは別の話だわ」

互いをどれだけ思いやっていようが、それが結局は足かせになる。
今はそういう状況なのだ。

ひなた「……陽乃さんは、どちらにすべきか考えはあるんですか?」

陽乃「私は別にどっちだって構いわしないわ」
646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 21:26:44.18 ID:wLja98K10

杏は遠距離タイプの戦闘スタイルで、球子も似たようなものではあるが、中距離の戦闘スタイルだ。
しかも球子に至ってはどんどんと前に出て行こうとする。

その為、杏が懸念するのも理解はできる。

――が、ひなたが聞きたいのはそうではないだろう。

陽乃はどっちもどっちな言い合いを繰り広げる2人から目を逸らすように目を瞑る。
どちらの方がより、優先されるべきか。
陽乃としては、何度も言うようにどっちだって構わない。
背中を預けて戦うわけではないし、どちらとも戦い方が違うからだ。

とはいえ。

見ていても仕方がない2人ではなく、ひなたの方に首を傾けると、ひなたは心配そうな表情を浮かべていた。
あのまま2人と安芸真鈴がすれ違っていたら上手くいくものもいかないだろう。
最悪の場合、死に至ることもあるため、ひなたは案じているのかもしれない。



1、伊予島さんね
2、土居さんだわ
3、貴女が仲裁に入ってあげたら?
4、2人の問題よ。私達が首を突っ込むことじゃないわ

↓2
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 21:29:12.48 ID:eSMO9ZbJ0
2
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 21:31:37.08 ID:i7SuBCz4O
2
649 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 22:02:41.20 ID:wLja98K10
陽乃「個人的に……で、良いならだけど」

陽乃はあんまり言いたくはないと思わせるような前置きをしながら、杏達の方に目を向ける。

陽乃「どちらかと言えば土居さんだわ」

ひなた「それは、守ってくれ――」

陽乃「違うわ」

聞かれるだろうと思っていた陽乃は、ひなたに言い終わらせることなく否定する。
球子の武器は確かに楯だが、別に、それに守られたいとも、守ってくれそうだとも思っていない。

思っていようといまいと、ある程度庇ってくれようとするだろうとは思うけれど、それは関係がない。

陽乃「伊予島さんと一緒よ。土居さんは躊躇なく力を使うわ。白鳥さんと同じくらいに」

それがどれだけ傷つくことか言って聞かせたとしても、
使わざるを得なかったのだと、球子は堂々と力を使おうとするだろう。

それをしなければ杏達を守れなかったかもしれない。ただその可能性だけで、躊躇をしない。
650 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 22:35:56.22 ID:wLja98K10

杏はそもそも球子が少しでも無事でいられるようにと思ってのことだろうけれど、
きっと、球子が精霊の力を安易に使えないように制限したいと考えているだろう。

自分の命だけならば躊躇しないが、それが安芸真鈴の命もかかわってくるとなったら、
球子は本当に必要な時にしか精霊を使えなくなるだろう。
もちろん、その一瞬の躊躇いが命取りになりかねないのがバーテックスとの戦いであるため、
正直に言ってしまえば、デメリットしかないとも言える。

けれど、それはあくまで、人の命を軽んじた場合だ。

陽乃「土居さんが死のうが、伊予島さんが死のうが、私にとっては……」

――どうだっていい。

そう言いかけた陽乃は、口を噤んで飲み込む。
一応は気遣ってあげるとしたのだから、多少は言葉を選んであげるべきだと思って。

陽乃「大して影響がないけれど、まぁ、土居さんはともかく、伊予島さんのご両親には恩もあるから」

そののちに色々とあったものだから、帳消しになったと吐き捨てても構わないとは思うものの、
それはそれ、これはこれだ。

陽乃「だから、伊予島さんの味方をしてあげるのよ」
651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 23:15:24.92 ID:wLja98K10

球子はどうしても杏を優先させたいと言った様子だが、
杏だけでなく陽乃からも言われれば、さすがに大人しくなって――

球子「……なんだよ。狡いじゃないか!」

大人しくはならなかったが、何が何でも杏が庇護下に入るべきだと、強気で来ることはなかった。

球子ももう少し力の使い方を考えるべきだと
使うべきタイミングを見極められるようになるべきだと、
そう言われれば、そうかもしれない。なんて、球子は居住まいが悪そうに目を背ける。

陽乃「貴女の代わりがいるならともかく、いないのよ。分かるでしょ」

球子「それは陽乃だってそうだろ」

陽乃「私は代わり以前に私自身が存在していてはいけないのよ。だからと言って死ぬ気はことさらないけれど、でも、私が死んだところでこの世界に悪い意味で大きな影響はないじゃない」

住民たちは喜ぶだろうし、大社は肩の荷が下りたと安堵するかもしれない。
暴走している千景だって、やっと消えてくれたと正気に戻る可能性さえある。
むしろ、いいことづくめだとも言える。

陽乃「だけど、貴女は違――って、何よその顔」

球子「いや、何にもわかってないんだなと思って」

杏「タマっち先輩、若葉さん、歌野さん、水都さん、ひなたさん……私達に多大な悪影響があることは、理解していただきたいです」

今にも涙を流しそうな面持ちで言う杏に、ひなたは同意して。
そんなこと言われても困ると、陽乃はため息をつく。

陽乃「とにかく、よくよく考えておくことね」

そう言い残し、ひなたと共に病室を後にした。
652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 23:17:16.66 ID:wLja98K10

√ 2018年 10月12日目 夕:病院

↓1コンマ判定 一桁

1 ひなた(継続)
3 若葉
5 水都
9 大社

ぞろ目 特殊
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 23:18:17.56 ID:i7SuBCz4O
654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/24(土) 23:30:58.38 ID:wLja98K10

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 23:38:10.25 ID:i7SuBCz4O

とりあえずはタマを強化する方針に固まったか
できれば杏も陽乃さんの力を多少借りて強化できたりしたらなお良いんだけども
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 01:28:54.91 ID:vaqitcab0

出来るかわからんけどむしろ陽乃が巫女代わりに杏のブースターになってちょっと控えていてほしい
戦場に出るたびに死にそうだし
657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 22:58:11.30 ID:tOJm3ttM0
遅くなりましたが、少しだけ
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 23:00:22.31 ID:BZ8u0XryO
あいよ
659 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 23:08:50.21 ID:tOJm3ttM0
√ 2018年 10月12日目 夕:病院


ひなたはいったん、若葉の様子を見てくると言って陽乃のそばを離れた。
そのまま若葉のところにいるわけではなく、夜には戻ってくる予定らしい。

若葉のことが心配ならそのまま傍にいてくれても構わないと陽乃は言ったけれど、
ひなたは「それこそ陽乃さんの傍を離れられなくなりますね」と、笑みを浮かべただけだった。

ひなたと若葉の契りが済んだのなら、
その繋がりを通して、若葉の状態はある程度感じ取ることが出来るはずだ。

歌野と水都、陽乃と歌野……そこまでは深くないにしても、ある程度は。
だからこそ、ひなたは若葉の様子はそれなりで、また戻ってくるつもりなのだろう。と、陽乃はため息をつく。

動けるようになったと言っても、人並だ。
人並と言っても、幼い子供くらいのもので、元気よくと言うわけにはいかない。

――だとすれば、幼い子供と言うよりはご老人だろうか。

陽乃「はぁ」

陽乃はまだ夕方にも関わらず、疲れ切ったようにベッドに横になった。
660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 23:21:32.40 ID:tOJm3ttM0

考えるべきことが山済みだ。
千景のこと、歌野のこと、バーテックスのこと、母親のこと、大社のこと……諏訪のこと。

陽乃の回復力が普段に比べて衰え、疲労がたまりやすい要因の一つが諏訪の件だ。
諏訪から脱出する際に、自分たちは足手まといになるだろうからと、
自らその場に残ることを決めた人々がいた。

皆が名残惜しみ、けれど、致し方がなく捨てるしかなかったその多くの命を、陽乃は今もなお、守護している。
九尾はくだらないと言い、切り捨てるべきだとも言っていたが、
遠ければ遠いほど消耗の激しい力を惜しみなく使い、まだ、諏訪を存続させている。

陽乃「……」

そうして、一番の悩みの種はやはり、千景の件だろう。
彼女がどこかへと消えたおかげで、警戒を解くことが不可能になった。
正直、九尾に全部任せてしまえばどうとでもなるものの、
そうした場合、千景が本当に消息不明になる。
最悪の場合、彼女がいたことさえもこの世から消え去ることになりかねない。
あるいは、その存在を九尾が乗っ取るかもしれない。

とにかく、いい結果が得られないのは確実だった。



1、九尾を呼ぶ
2、少し休む
3、イベント判定

↓1
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 23:29:52.79 ID:BZ8u0XryO
2
662 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/25(日) 23:56:06.42 ID:tOJm3ttM0

考えるべきことはたくさんある。
……沢山あるものの、今考えてもどうしようもないものばかりだ。

歌野と水都は聞きわけがないし、千景は消息不明、
バーテックスは向こうの出方次第で、母親に関しては大社の施設のどこか。
諏訪の件は現状、今のスタンスを変えるつもりはない。

そうして、陽乃は手持ち無沙汰だと無理矢理に切り替えて重い瞼を閉じる。
けれど休まるのは身体ばかりで、精神的にはさほど良くはならない。

心地よく眠ることが出来たのも、
良い夢が見られたと感じられたのも、
全ては世界が変わってしまう以前の話で、それ以降、陽乃は休まった覚えがなかった。

けれど、四六時中起きているというわけにもいかず、眠るしかなくて。

人の気配のない、病室。
けれど、どこかでは誰かの足音が響き、院内の放送らしきものが聞こえる。

それがもう少しだけ気を惹いて、寝かせずにいてくれるのかもしれないと思いながら、
陽乃は少しずつ、眠りに落ちていく。
663 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/26(月) 00:02:49.47 ID:NbB7prH60
↓1コンマ判定 一桁

0 ひなた
2 水都
5 大社
7 九尾

それ以外、なし。
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 00:03:42.36 ID:/I/jRpANO
665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/26(月) 00:08:20.04 ID:NbB7prH60
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 00:14:34.96 ID:/I/jRpANO

束の間の休息で出来るだけ体の調子を回復させたいところだな
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 06:50:41.55 ID:LSHvMtXAO
668 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/26(月) 23:10:03.23 ID:NbB7prH60
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 23:11:44.91 ID:VgWgDpazO
乙ですー
670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/27(火) 21:59:57.69 ID:G2mzXDds0
では少しだけ
671 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/27(火) 22:01:10.52 ID:G2mzXDds0

√ 2018年 10月12日目 夜:病院

↓1コンマ判定 一桁

2 水都
4 若葉
7 九尾
9 千景


ぞろ目 特殊
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 22:02:37.49 ID:P6Oao80iO
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 22:03:49.45 ID:P6Oao80iO
うそーん…
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 22:14:49.16 ID:LeK9c3b+0
きちゃった?
675 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/27(火) 22:48:20.36 ID:G2mzXDds0
√ 2018年 10月12日目 夜:


以前、久遠陽乃も同じように行方をくらましたことがある。
その時はまだ勇者にも大社にも余裕があって、勇者全員が捜索に駆り出されるほどだった。

久遠陽乃は勇者として秀でているからだ。なんて話もあったし、
それに賛同する勇者もいないわけではなかったけれど、
実際には、ただ、あの女狐の力が未知数だったから勇者で対応せざるを得なかっただけだ。

勇者に与えられた端末の補助なしに勇者としての力を発揮することが出来るところか、
精霊を具現化することさえできてしまうほどの異質な力。
それもゲームにおいては、よくよく強キャラとして扱われる九尾の狐を。

最初から気に入らなかった。
自分には力があるからと、周りを見下しているような態度が不愉快だった。
高嶋さんが一生懸命に気に懸けようとしているのに、
放っておいてと突っ撥ねて、行く姿が、憎たらしかった。

私が勇者になって、誰もが私を敬い、崇め、見上げるようになって、
同じ勇者である高嶋さん達が同等だとしてくれている中で、たった一人、孤高だとでも言うかのような姿が、気に喰わなかった。

そのくせに、勇者としての評価を貶めるような汚点に塗れているというのが、余計に腹立たしくて。
人殺しと言われ、否定もせず、
そうして結局は人殺しとなって逃げだしたと聞いて、どれだけ喜ばしかっただろう。

――なのに。

野垂れ死ぬこともなく、
見捨てられるはずだった諏訪の人間を連れ帰ってくる偉業を達成し、
私が乃木若葉から引き継ぎ、務めを果たし守っていた勇者リーダーという地位を、
その諏訪の勇者である白鳥歌野に明け渡すべきではないかとさえ、大社に言わしめた。

――ずっと、気に入らなかった。
676 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 00:10:42.28 ID:7mJHYRNa0

その苛立ちが抑えきれなくて、同じ病院にいた久遠陽乃を殺そうとし、
仕留めることが出来ないどころか返り討ちになった。
悔しいけれど、力は本物で抗いようがないほどに凶悪で。

そのせいで自宅謹慎を言い渡されることになった。
それでも勇者の力を効率よく発揮するための端末を没収されなかったのは僥倖だと思う。
いや、大社が間抜けだったと思う。

もちろん、たった数人の勇者が半壊している状態で権利をはく奪することが難しかったことは理解している。
それでも自宅謹慎だなんて――。

滑稽にも"現実を知らない夢物語"を期待してくれていた大社には、
乾いた笑いさえも出なかった。
疲れ果てた父親、生きているとも死んでいるとも言えない母親。
父親足り得なかった男と、母親足り得なかった女。
どちらもバーテックスの襲撃からは済んでのところで難を逃れたという。

――忌々しくて堪らない。

死んでくれていた方が良かった。
人知れず……いや、私の知らないどこかで、奴らに喰われてしまっていれば、
こんな気持ちになることもなかった。

世界が一転したあの日。
救う価値もない人間を救ったのは、久遠陽乃だった。
称賛を拒むのなら、どうして人助けをしてくれたのかと。

――どうしようもなく、憎かった。
677 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 00:38:16.87 ID:7mJHYRNa0

だから、先日の戦闘を終えた後に家には戻らなかった。
戻りたくなかった。
あんな場所にいたって息が詰まるし気分が悪くなるから。

でも、だからってどうしたかったわけじゃない。

どうしたいもこうしたいもなく、
ただただ、彷徨って……そうして、また病院に行きついた。

まるで家であるかのように過ごした病院。
大社によって軟禁されているようなものではあったけれど、自由で、そして高嶋さんがいてくれた場所。

大社に見つかれば連れ戻され、
どこか、今度は家ではないどこかに軟禁、あるいは監禁されると分かっていても、
私の足は進んだ。

疲れ切った心も身体も、
高嶋さんなら……と、思わずにはいられなくて。

――なのに。

なのに、今まで高嶋さんがいた病室はもぬけの殻だった。
退院したわけではないのはすでに見てきた勇者の宿舎で分かっていたし、
集中治療室にいないことも、すでに確認して。
それでも、高嶋さんは見当たらなかった。

千景「……」

ひえびえとしていたものが、ふつふつと再燃していく。
もしかしたら、今度こそ、邪魔な存在を消してしまえるのではないかと。
678 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 00:38:42.97 ID:7mJHYRNa0
では短いですがここまでとさせていただきます。
明日も可能であれば通常時間から
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/28(水) 00:48:50.83 ID:p7SHY9UmO

千景の独白の闇が陽乃さんとは別の意味で深すぎる…
救われたことでむしろ拗れるとかどうすればいいんだろう?
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/28(水) 06:22:37.95 ID:Gz7g8Ns8O

高嶋さんが病院に不在なのもタイミング悪いよな…
681 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/09/28(水) 23:58:28.62 ID:7mJHYRNa0
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/29(木) 00:00:38.60 ID:ahkOeLKUO
乙です
683 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/09/29(木) 02:39:04.12 ID:VOUA9mK90
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/29(木) 19:48:46.64 ID:8r/vWR8JO
ここに書き込んでいいかは分からんけどゆゆゆいにて最後の最後に衝撃の事実が判明した模様
くあゆシリーズでもいずれ触れられることになるのだろうか…
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/09/30(金) 12:36:36.46 ID:RnvN3cHPO
昨日も休みだったか

例のアレを見て前作における四年後(卒業から結婚式の間)がどうなってたのかできれば鍛練記録的な短編で見たくなってきたな
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 00:13:15.95 ID:t9XXuZNhO
またもや休載か…
あんまり長くなるようなら出来るだけ連絡してくれるとありがたいんだけど…
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 00:45:31.63 ID:HlFZ4HkU0
安価スレって趣味で適当にぶらっと書いて趣味でぶらっと参加するもんだし別にいいんじゃね?
エタりかけたくらいだしあんま圧かけてエタるより展開思いついたときに気楽に書いてほしいわ
688 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 22:12:42.27 ID:Dj7FRa1nO
暫くできませんでしたが、少しだけ
689 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 22:14:36.92 ID:Dj7FRa1nO

夜の病院の静けさは、深い孤独を感じられる。
煩わしかった日々から解放され、
薄暗く、話声は聞こえず、自分一人の足音だけが遠くへと延びていく。

まるで、ゲームの中に入ったかのようだ。

どちらかと言えばあまり趣味ではないけれど、
ホラーゲームの探索パート……舞台は廃病院とでも言ったところだろうか。
なんて、千景は考えながらゆっくりと奥に向かう。

以前友奈がいた病室に友奈はいなかった。
もしかしたら友奈の病室が変わっているかもしれないと千景は思ったが、
記憶が正しければ、勇者の病室はそうそう変わらない。

というのも症状が悪化した場合を除き、機密性の高い情報である勇者の所在が移るというのは、それなりにリスクがあるからだ。
国民から慕われているが、特別嫌われている者もいる。
中には殺すべきだとさえ言われている勇者だっているのだから。

万が一のことを考慮して、かなりの情報統制が行われており、
それゆえに、勇者の移動範囲は大幅に制限されるし、
病院内だってすべての場所を自由に移動できるかと言うとそういうわけでもない。

だからこそ、ほぼほぼ集中治療室から出られない久遠陽乃の所在は掴みやすい。
必要機材等の条件から移送は容易くなく、そもそも逃走の可能性がある危険人物である以上、その管理は厳しくなる。

千景は病院の中を迷わず歩く。

そうして――。

コツッ……コツッ……コツッ……っと。
足音が聞こえてきて、千景はその影のような容姿を活用して闇に潜む。
足音の聞こえる方角から段々と灯りが伸びてくる。

近付いてきた足音の主は白い衣装を身に纏った人の形をした何か――いや、人間だった。
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 22:24:16.11 ID:Xf6I+KWeO
来てたか
691 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 22:38:27.73 ID:Dj7FRa1nO

白い衣装は病院で良く良く見かける看護婦のもので、見えた灯りは懐中電灯のようだった。
時間も時間のため、巡回をしているだけだろうと、千景はほっと胸を撫でおろす。

ホラーゲームの廃病院とでも考えたからだろうか。
どうしてだか、その姿を見るまで背筋が凍る感覚を覚えてしまったからだ。
勇者として情けない。まるで、底知れない恐怖を味わってこびり付いたトラウマのような悪寒。

その足音は少しずつ、千景の方へ向かってくる。
千景は陽乃とその精霊である九尾と違い、人を化かす力を持ち得ていない。
光を当てられれば姿が露わになってしまう。

息を潜めれば回避できるかもしれない。
そう思って口に手を当てて呼吸を止めた千景のすぐ隣を歩いていく看護師は、千景に目もくれずに歩いていく。
見つからなくてよかったと思う反面、
巡回としてそんな節穴で良いのかと看護師の背中を見送ってから、また陽乃の病室を――。

「――あら」

頭の中に直接響くような声がすぐ真後ろから聞こえ、千景はとっさに飛びのいて壁に背中をぶつける。
その痛みに呻きながらも、どうにか声の主を見上げると、先ほどの看護婦が千景を見下ろしていた。

「消灯時間は過ぎていますよ? えぇと……」

看護婦は千景をまっすぐ見つめて、暗がりの中で思案するようなそぶりを見せて「郡さん」と呟く。

「郡千景さん。ですよね? 病室はこちらではありませんよ」

千景「そう、だったかしら。暗くて迷……」

千景は迷ってしまった。と、安易な嘘をつこうとして言葉を飲み込む。
692 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 23:03:21.04 ID:Dj7FRa1nO
何かがおかしい。
勇者がここにいることに驚いていない、入院していることを知っている。

それは何も問題ないけれど、であれば、
千景がここにいることを不思議に思わないわけがない。
自宅謹慎を言い渡され、なおかつ、そこから逃げ出したからだ。

それも、この病院に入院しているはずの久遠陽乃を殺そうとしたために。

なのに、看護婦はまるで動揺していない。
ここにいることをおかしいだなんてこれっぽっちも思っていない。
陽乃を殺そうとしたことは、もしかしたら情報規制され、知らないのかもしれない。

だとしても千景が入院していない以上、病室はここではないというはずがない。
言うなら、そう、面会時間は過ぎていますよ。だろう。

千景は、先ほども感じた不安を覚えて、少し離れたところに見える窓を確認しつつ看護婦を睨む。

「――郡さん?」

看護婦の声は、感情が感じられるのに酷く冷めているようにも感じる。
頭の中に響くと言うべきか、身の毛もよだつというか。

千景「……っ」

千景はぐっっと唇を噛んで、顔を顰めた。
693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 23:07:08.49 ID:Dj7FRa1nO
判定

↓1コンマ

01〜00 ※悪〜良
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/02(日) 23:16:10.22 ID:Xf6I+KWeO
695 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/02(日) 23:57:58.24 ID:Dj7FRa1nO

陽乃「っ!?」

どこかで、何かが砕け散る音が響いたように聞こえて、陽乃は跳び起きる。
陽乃のいる病室からは遠くもなく近くもない、そんな感じの距離。

侵入者か、それとも、ただの事故か。侵入者であれば千景の可能性があると陽乃は力を感じ取ろうと目を閉じ、集中する。
繋がりの深い九尾や、歌野と水都、それにひなたのことは集中力が欠けていても感じられるが、
その他は、難しい。

それでも勇者として神樹様とのつながりがあるため、感じ取れないこともなく、
千景だったらどうにか対処法を考えなければならないと思ったからだ。
しかし、千景らしき気配はとても弱弱しく感じられる程度で、本当にそうなのか定かではなかった。

陽乃「……なんなのよ」

勇者の中の誰かが寝ぼけて花瓶でも割ったのだろうか。
だとしたら球子……というのはともかく、精神が若干不安定だったらしい若葉が暴れた可能性もある。
そういえば、ひなたが帰ってきていない。

陽乃「……でも、だとしたら九尾がもっと荒れてるだろうし」

九尾はひなたを守るだろう。
例え若葉であっても容赦なく力を使って捻じ伏せようとするはずだ。
若葉の力なら多少抵抗されるかもしれないが、それでも。

陽乃「……」


1、気のせい
2、九尾を呼ぶ
3、外に出てみる


↓2
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 00:00:43.05 ID:VqLaIOXtO
3
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 00:04:21.09 ID:Q8WaMLfxO
3
698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/03(月) 00:06:14.11 ID:nHefF4CGO

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 00:14:53.68 ID:Q8WaMLfxO

千景が暴走してそうな上にホラー色も強めで怖い展開だな…
九尾のやらかしなら全力で止めないと
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 07:01:32.99 ID:18Dn36xlO
701 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/03(月) 23:17:51.15 ID:nmfIOkFdo
すみませんが本日はお休みとさせていただきます明日は可能であれば通常時間から
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 23:23:06.19 ID:PrlDt7PsO
いつも乙ですー
703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/04(火) 23:50:06.11 ID:rAWP9FFZ0
遅くなりましたが、少しだけ。
恐らく安価まではいきません。
704 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/04(火) 23:51:26.03 ID:rAWP9FFZ0
お化けが怖いからと、布団にくるまって見えない聞こえないとしても、
もし万が一千景だった場合、また殺しに来る可能性がある。
放っておくのが賢いとは思うが、
病室からそれなりの距離ともなるとさすがに気づかなかったふりは出来ない。

陽乃「っ……」

ベッド脇に置かれていた車椅子に手を伸ばし、
どうにかベッドから乗り移って、ゆっくりと動かす。

陽乃に与えられた車椅子は勇者だからなのかかなりしっかりしたもので、
一般の患者に貸し出されるようなものとはまるで違う。
少しの力で動かすことが出来るし、動く音もほとんどしない。

ここまでするなら電動のものにしてくれてもよかったのではと思いつつ、
病室と廊下を隔てる扉に耳を当てて外の音を確認する。

陽乃「……静かね」

陽乃にとっては大きな音だったが、
寝静まった人々の耳には些細な音だったのか、それとも、気のせいだと割り切ってまた眠ったのか。

九尾が何か細工をした可能性を考慮しつつ、陽乃は可能な限り静かにドアを開け、
左右の通路を確認してから、廊下へと出る。
705 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 00:56:31.62 ID:gaL4j6Ha0

確かこっちの方から音がしたはず……と。
定かではない感覚の残る頭を振って、千景らしき気配が感じられる方へと向かう。

千景が本当にいるなら危ないところだが、
千景がいるならいるで、何かが砕けた音がしたのは気がかりだ。

人ではなく物に怒りをぶつけた程度なら構わないが、
もしも勇者に出会ったり、大社の関係者に出会ったり
あるいは、ひなたに出くわしたりしていたら……大変なことになっているかもしれない。

陽乃「……まぁ、上里さんではなさそうだけど」

九尾の反応がそこまで荒れていない為、
ひなたに何かがあったわけではないと陽乃は思っているが。

絶対とは言い切れないから。なんて、
一応は身を案じて進むと、どこからともなく、
冷めた空気が勢いよく流れ込んできたのを肌に感じて、目を細める。
706 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 01:14:13.30 ID:gaL4j6Ha0
風が吹き込んでくる音がする。
どこかを走る車の音が、はっきりと聞こえる。
窓でも開いているのかとさらに進んでいった陽乃は、
通路の途中にある窓の一部が完全に割れて無くなっていることに気づいて、ゆっくりと近づく。

床に細かい破片が散らばっているのか、
車椅子のタイヤがじゃりじゃりと音をたてたものの、
大きな破片はなく、全て外側に散っていったのだろうと陽乃は割れた窓ガラスを見つめる。

陽乃「……入ってきた。わけじゃなさそうね」

刺々しく割れた窓ガラス
その縁側の辺りから壁、そうして床へと……点々と赤い色が続いていて、
窓から少し離れたところには少量の血だまりのようなものもある。

窓ガラスは外側に割れているけれど、病院の中には争った形跡。
侵入してきたのは大社の人間か、それとも千景か。
あるいは、危害を加えるつもりの一般人か。

少なくとも、悪意があって。
それに気づいた何かが、それを追い払ったのだろう。

――十中八九、九尾だ。

若葉らしくないし、球子や杏も違う。
歌野だって違うだろうし、巫女であるひなたや水都には無理だ。
かといって、大社の人間や病院関係者にも出来ることは限られる。

そう考えれば――いや。
この惨状を見れば、答えはその1つしかなかった。
707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 01:17:39.49 ID:gaL4j6Ha0

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/05(水) 01:27:32.23 ID:vL4Knfjw0

せっかく話す機会だと思ったけど下手したら千景ここで退場か
709 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/10/05(水) 02:43:25.25 ID:hRR4jIA60
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710 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/05(水) 06:04:57.67 ID:ogDyGHuIO

不味いことになってきたな…
なんとか千景を助けたいんだけど
711 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/05(水) 23:23:33.18 ID:gaL4j6Ha0
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/05(水) 23:36:33.85 ID:qmmQO+HzO
連絡乙です

どうやら公式に新しい動きがあるそうで改めてくあゆシリーズも一緒に長く続いて欲しいな
713 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/06(木) 23:51:56.44 ID:3wNJfQej0
すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/06(木) 23:53:05.75 ID:6dcp/CLDO
715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/09(日) 23:07:41.36 ID:TYxW3c520
遅くなりましたが、少しだけ
716 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/09(日) 23:10:03.14 ID:TYxW3c520

血だまりと言っても少量のため、そこまで傷が深いわけではないだろう。
だが、怪我を負ったことに変わりはない。
本当に千景だという確証はないものの、ほんのりと千景らしい感じが残っているし、
相対したのは誰が何と言おうと確実に九尾だ。

陽乃「……何をやってるのよ」

ひなたに危害が加えられそうになったならともかく、そうでもなさそうな状況での流血沙汰は完全にアウトだ。
もしかしたら陽乃の部屋に向かっているのだと判断してのものだったのかもしれないが。

だとしても、これはやりすぎだと陽乃は思う。
ひなたが殺されかけ、庇った陽乃が左手を負傷したし、その仕返しとしての行為だとしても、千景は勇者だ。
それも、ただでさえ人手が足りない中での無敵とも言える力を使える貴重な勇者。

なにより、今の千景は刺激すればするほど危うくなる。
それが分からない九尾ではないだろうに。

割れた窓に近づき、破片で手を傷つけないようにと気を付けながら外を覗いてみる。
真っ暗で人影は見えず、当然ながら血の匂いが感じ取れるわけもなく、
諦めて身を引くと、足音が近づいてきたのを耳にして動こうとタイヤを掴む。

べちゃりと音がした手を見れば、タイヤの赤い線が手のひらにべったりと付いていて、
逃げてもタイヤの跡を追われて見つかるのは時間の問題だと陽乃は目を細めて――ため息をつく。

陽乃「はぁ……」

逃げたり隠れたりしたって、意味がない。
むしろ疑われるだけだろうとその場に留まっていると、当直らしき看護師が2人、駆け寄ってきた。
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/09(日) 23:17:16.59 ID:4bh6yHbIO
来てくれたか
718 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/09(日) 23:57:02.15 ID:TYxW3c520

「これは……っ」

血を見て叫んだり腰を抜かしたりとしないのはさすが医療従事者と言うべきなのだろうか
それとも、バーテックスの襲撃による惨状を経験して、耐性がついたからなのか。

駆け寄ってきた2人は血を踏まないよう跳ねるような足取りで陽乃に近づく。

「お怪我は?」

陽乃「……別に」

「これは、その……久遠様が?」

陽乃「私が出来ると思う?」

車椅子でどうにかと言った状態の陽乃。

陽乃自身が怪我をしているならともなく、
そうではない誰かの血が流れている通路を見てよく聞けたものだと睨むような眼をした陽乃だったが、
突っかかるようなことを言わずに首を振る。

陽乃「私が来た時からこの状態だったわ。貴女達こそ何か見ていないの?」

「いえ、なにも……大きな音がして、急いで戻ってきたので」

陽乃「……大きな音。ね」

陽乃もはっきりと聞こえたため、間違いなく周囲に響き渡っただろう。
響き渡ったはずなのに、すぐ近く病室から人が確認に出てくるようなこともないのは、勇者のための隔離措置が取られているからだろう。

「とにかく、ここにいるのは危険ですから、病室にお連れします」

看護師の1人はそういうと、陽乃の乗る車椅子の持ち手を掴んで、
病室の方へと反転させる。



1、任せる
2、そんなことより、乃木さんの病室にお願い
3、白鳥さんのところにお願い
4、暫くここにいるわ

↓1
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/09(日) 23:58:15.68 ID:4bh6yHbIO
2
720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/10(月) 00:39:09.87 ID:7aqqXd1Y0
陽乃「そんなことより、乃木さんの病室にお願い」

「ですがそれは……」

陽乃「良いから。大事なことなのよ」

若葉のところにはひなたがいる。ひなたがいるなら、九尾もいるだろう。
ひなたが負傷しているなら歌野か水都のところに連れて行く方が良いし、もしもそうではないなら、
九尾に今回の件を問いたださなければならない。

悠長に部屋に戻っておやすみなさいとはしていられない。

陽乃「それとも、私を他の人のところにはいかせるなと?」

陽乃は冗談でも言うかのように訊ねたが、看護師の眉がぴくりと動いたのをみて……察する。
どうしてそのことを。なんて驚きを示す眉の動き。
ほんの少し見開き、すぐに取り繕って、けれど、その返答前の沈黙が答えだった。

陽乃「今は有事でしょ。勇者としてすべきことがあるのよ」

「だめですよ」

「あっ……」

躊躇う看護師の横から割り込んだもう一人の看護師は、陽乃の車椅子の持ち手を変わって、ぐっっと押して歩く。
陽乃が「ちょっと」と声をかけても、その看護師は「駄目です」と取り付く島もない。

陽乃「大事なことなんだって言っているでしょう」

「有事だからこそ、久遠様含め、勇者の方々の安全が最優先です。それこそ、一度襲撃をされている久遠様は特に警戒しなければなりません」

そもそも一人でここまで来ていること自体が問題だという看護師は、
最悪の場合、病室に鍵をかけなければならないようなことをしているんですよ。とまで言う。

「大人しく病室にお戻りください。出ないと、強制させていただくことになります」

陽乃「……もう、強制しているじゃない」

車椅子の主導権を奪い、病室への連行。
これが強制ではないのなら何だというのかと不満げに言う陽乃だが、どうにかするわけにもいかなかった。
721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/10(月) 00:47:46.13 ID:7aqqXd1Y0

では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/10(月) 00:52:20.14 ID:WtJuojJmO

こういう非常事態にこそみんなと相談したいけどなぁ…
あと九尾も問い詰めないと
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/10(月) 07:30:33.37 ID:pglnR+aEO


見返してる時に気付いたけど途中で日数がずれてる気がする
724 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:11:45.06 ID:fNGsQDcFO
遅い時間のため、安価は後日
725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:14:57.04 ID:fNGsQDcFO

「久遠様のご心配は無用ですよ。皆様ご無事であることは確認しております」

陽乃「無事、ねぇ」

「はい」

大丈夫ですよと繰り返す看護師に連れられて、陽乃は自身の病室へと戻り、
看護師がいなくなったのを見送ってから、ひと息つく。

流血沙汰があったし、勇者の誰かが傷ついたのではないか、
あるいは、勇者の誰かがそんなことをしたのか。

それを気にしていると考えてのことの可能性もあるが、
勇者のことを知っているとなると千景の暴挙も知っているだろうし、
すでに確認済みなのかもしれない。

いや、最優先で確認しているだろう。

ひなた「若葉ちゃんのところにも確認しに来られましたよ」

陽乃「まぁ、そうよね……私のところにも来たのかしら」

いつの間に戻ってきたのか、
陽乃の隣で座っているひなたからの一言に、静かに答える。

勇者のことを知っているから千景のことも知っている。
だからこそ、勇者の安否は最優先に確認するようにしていても不思議ではない。

命を狙われたと思われている自分のことも気にかけているのだろうか。と、
それとなく言うと、ひなたはあんまり喜ばしくないと言った様子で。

ひなた「いえ、おそらく監視……防犯カメラで見ていたんだと思います」

陽乃「まぁ、そうよね」

さっきと打って変わって、陽乃は嘲笑するように呟いて鼻で笑う。
726 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:35:14.03 ID:fNGsQDcFO

九尾の力を使っていれば別だが、
使っていなければ、陽乃の姿は防犯カメラにはっきりと映ってしまう。
それで安否確認とアリバイ確認くらいはしていたはずだ。

とはいえ、看護師は「大きな音がした」と言っていたため、
陽乃を追ってきたわけでもなかった。
連絡用の端末をそれぞれ持っているようだったし、
それで他の看護師、あるいは医師と確認を取ったのだろうか。

陽乃「それで? 貴女はいつ戻ってきたのよ」

ひなた「少し前です。若葉ちゃんのところにお医者様が来て……巡回とは言っていましたけど、少し慌てているようにも見えて……」

だから、何かあったのだろうと急いで戻ってきたのだとひなたは言う。
危機が迫っているという確証はなかったけれど、
その焦り具合からして、少なくともいいことではないとみて、走ったらしい。

ひなた「若葉ちゃんが、いつもの巡回とは違うって言っていましたし……」

そう呟いたひなたは「千景さんですか?」と、心配そうに問う。

陽乃「さぁ? 誰と何があったのかまでは知らないわ」

見たのは少量の血痕。
浅くはないが、致命傷とまでは言っていなさそうな出血量
もちろん、急所に傷を受けていたとしたらその限りではないが。

争ったのは間違いない。
727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:51:20.36 ID:fNGsQDcFO

ひなたは、千景が来た可能性を考えている。
若葉と一緒にいたのだから、バーテックスの夜間襲撃ではないことは確信しているだろうし、
看護師に聞こえたなら、ひなたにもあの音が聞こえていたかもしれない。
それでも窓のところではなく陽乃のところへ来たのはなぜだろうか。

陽乃「……音、聞こえたんじゃないの?」

ひなた「何かが砕けるような音ですか?」

ガラス製の何かを勢いよく叩き割ったような大きな音。
若葉とひなたにも聞こえていたようで、
その後に巡回の医師が来て、ひなたは一目散に陽乃の病室に来たらしい。

ひなた「もしかしたら陽乃さんを狙って来たのかと思って……ここに来たのですけど」

肝心の陽乃はいないし車椅子もない。
争った形跡は見当たらないから自分の意思で出て行ったのだろうと、
後を追おうとしたところで、陽乃が看護師に連れて来られたというのが、ひなた側の経緯らしい。

ひなた「陽乃さんが無事で何よりです」

ほっと安堵したように胸を撫でおろすひなたは、
あんまり、無理に出歩かないでください。と、掛布団を少しだけ引き上げて、陽乃の動きを鈍らせる。

ひなた「……大丈夫そうなら、ゆっくり休んでください。心配なら、私が見ていますから」
728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/13(木) 00:52:06.84 ID:fNGsQDcFO

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/13(木) 06:39:03.40 ID:EfYqZ9aLO

千景の安否がますます心配だな…
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 23:59:00.12 ID:B76IdMlIO
忙しいのか更新回数がすっかり減ってきて寂しい…
731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/16(日) 23:40:21.69 ID:E/PyZdrB0
遅くなりましたが、少しだけ
732 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/16(日) 23:40:57.55 ID:E/PyZdrB0

陽乃「……子供のように諭そうとするのね」

ひなた「そんなつもりはなかったのですが……」

別に怒りを覚えているわけではない。
ひなたはいつもそのような雰囲気を醸し出しているし、
若葉も特殊ではあるが、球子達と比べれば、一歩引いた視点を持っているようにも見える。

なにより、そんな些細なことで腹を立てるほど、余力がない。
いや、気力がないというのが正しいだろうか。

陽乃「別に構わないわよ。私も貴女も、乃木さん達だってまだ、子供なんだもの」

全員が同じ年齢ではないし、
多少の差はあるけれど、どうしたって、まだ中学生の子供でしかなかった。
そんな少女の集まりが勇者であり、陽乃達だった。

陽乃「もっとも、何を持ってして子供だって定義するかにもよるんだろうけど」

ひなた「……子供で良いじゃないですか」

陽乃「そういう扱いをして貰えるなら、ね」

陽乃が嘲笑を含んで答えると、ひなたは悲し気に目を細める。
年齢だけで言えば子供だが、
今までの経験も人々からの扱いも、抱いている覚悟も。
何もかもが子供のそれではなくて。

陽乃「……だから、貴女も休みなさい。貴女が見張りをしていたって何の役にも立たないんだから」

そう言いながらひなたの頭に触れて、ぐっっと隣に抱き寄せる。


1、貴女は子供であるべきだわ。守られる側の、子供でいるべきなのよ
2、もう休みましょう
3、私が見張っておいてあげるわ

↓1
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:50:27.58 ID:Q6j0VgQGO
1
734 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/17(月) 00:24:05.34 ID:mSX92kEf0
ひなたはそうされるとは思っていなかったようで、
驚きに目を見開いて、困ったように笑みを浮かべる。

本来なら、巫女だからとその身を犠牲とした関わり方なんてするべきではなかった。
無垢であり、少女である方が良いとされるものではあるけれど。

だからと言っても。

追い込まれた末で、主観的にはそれ以外の道はなかったのかもしれない。
とはいえ、そうすることを選んだのはひなただったし、
それを選ぶほどにはひなたも子供としての枠組みから外れているということなのだろう。

けれど。

陽乃「貴女は子供であるべきだわ。守られる側の、子供でいるべきなのよ」

ひなた「……陽乃さんは」

陽乃「子供と言える時期はもう過ぎたのよ。私はね」

自虐で言うことはあっても、本気でそうだと思うことはきっと、もう二度とない。

陽乃が子供だと無邪気になれるほど、
陽乃の過去も、今も、未来も、何もかもが闇に包まれ過ぎている。

陽乃「だから、貴女が大人ぶっていることが腹立たしいわ。子供のくせに」

ひなた「そんなつもりはないって言っているじゃないですか……理不尽です」
735 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/17(月) 00:42:44.01 ID:mSX92kEf0

腹立たしいと言いながらも、これと言って苛立っている様子のない陽乃に対して
ひなたはちょっぴりむくれたような様子で反論しつつ、頭に触れている陽乃の手に手を重ねる。

陽乃「……何?」

ひなた「いえ……」

良い子だと言われることはあるし、年齢の割には落ち着きがあって、
大人びていると評されることも多々あった。

ひなた自身がそう思っていても思っていなくても周りはひなたをそう見ていたし、
本意不本意いずれにせよ、それにあやかっていて、
ひなたはそれを苦とせずに受け止めて生きてきた。

だけど、陽乃はひなたをそう見ない。
陽乃は自分を子供ではないと自嘲するが、確かに、陽乃に比べれば子供だ。

大社の大人達の中にも、
年齢以外は足元に及ばない人がいるかもしれない。
陽乃はそう評価されるだけの苦痛を味わいながら、ここにいるのだから。

ひなた「今の世界は、子供らしい子供なんて求めていません。勇者やそれに係わる者には特に。聞き分けの良さを求めているんです」

陽乃「知ったことじゃないわよ。そんなこと。誰が何をどう求めていようが、貴女は貴女でいいのよ」

ひなた「……それなら、陽乃さんが求める私でいなくても良いんですか?」

陽乃「貴女がそうしたいなら止める気はないわよ。私」

そうしたいという意思があるのなら、それで構わない。
それが命を捨てるものでも、陽乃はその覚悟がるのなら勝手にしたらいいと言うだろう。
そのうえで、陽乃がやりたいことがそれを阻むという結果に至るかもしれないが。

ひなた「……いえ。子供で良いです。子供らしく、わがままでいさせてください」

ひなたは自分の身体を陽乃を覆う掛布団の中に忍ばせると、陽乃の手を離す気はないとでも言うかのように握る。

ひなた「今日は一緒に、いさせて貰いますね」

陽乃「今日も。でしょうに」

呆れたもの言いながら、やっぱり、陽乃は拒絶するでもなく。
ひなたは小さく笑い声を零すと「そうですね」と、呟いた。
736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/17(月) 00:43:38.85 ID:mSX92kEf0
では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/17(月) 06:08:44.54 ID:SflD2oz1O

陽乃さんの対応が大分優しくなってきてる気がする
いつか子供の心も取り戻せるといいな
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/20(木) 23:50:58.38 ID:PB5nbYLKO
今日も全然反応ないけど大丈夫かな…?
739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/23(日) 23:03:46.86 ID:YyDTTc0g0
暫くできませんでしたが、少しだけ
740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/23(日) 23:07:38.35 ID:YyDTTc0g0
√ 2018年 10月13日目 朝:病院


数日間感じることのなかった、他人が介入してきている熱に浮かされるようにして陽乃は目を覚ました。

昨夜、千景か誰かが病院に侵入してきて、
そのまま排除されたであろう事件が起こったにしては、病院は静まり返っている。

とはいえ、常日頃の朝の喧騒と言うものはいつも通りで、
しかしながら、つい先日までまともに耳が聞こえていなかった陽乃としては新鮮で、騒々しく感じる。

陽乃「……呑気なものね」

すぐ隣でまだ寝息を立てているひなたの髪を優しく払ってあげながら、
陽乃は小さく、独り言ちる。

何があったのかと騒がしくなるべきだ。とは思わないが、
普段通りを心がけている病院側の対応も、
こうして、朝まで平然と眠っていられた自分自身も。

何もかもが、呑気なものだと……陽乃は不満げに顔を顰めた。

以前の陽乃だったなら、もう数時間は早く目を覚ましていただろうし、
大きな音がしたから。なんて事後に侵入を察知するなんてこともなかったはずだ。

現場から距離があったとはいえ、あんまりにも体たらくではないかと、陽乃は思う。
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/23(日) 23:10:23.75 ID:Fv7poviuO
来てたか
一週間更新無くて心配したぞ…
742 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/23(日) 23:18:18.20 ID:YyDTTc0g0
バーテックスの襲撃が起こってから3年、不幸な事故が起こってから、約2ヶ月
散々な目に遭ってばかりで、身体を酷使してばかりで、
いつ死んでもおかしくないような状況に何度も陥っては、無様に生き延びて……。

身体はもう、壊れ切きっているはずだ。

陽乃「……っ」

ある意味では、ゾンビのようなものではないかとさえ、感じられる。
身体の痛みや苦しみなんて、人間だと思っているからこその幻肢痛に似た現象で、
本当はもう、なんにもないのかもしれない。

あるいは、寿命でも切り取って補っているとか。

ひなた「ん……」

陽乃「……」

陽乃の側に、ほんの少しだけ踏み込んできたひなたと水都。
もちろん、陽乃ほど壊れることはないはずだが、
場合によっては、一瞬で命を落としかねない状況にあるのは変わらない。
本当なら知らなかったこと、知る必要がなかったこと。

その道を教えてしまった責任は――。

陽乃「……知ったことじゃない」

責任なんてとらない。
踏み込むかどうかはひなた達に託され、そうして、ひなた達は自分で選んだことだ。
743 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/24(月) 00:00:13.09 ID:5UQ63xyY0

今ここで血反吐を吐いて息絶えようと、
急激に血の気が失せて、呼吸が止まったとしても、
枯れ木のように痩せこけて、精気が失われていったとしても、陽乃には何にも関係がないことだ。

バーテックスの襲撃がなければ勇者の力は必要ないし、
その中でも、進化型や完成型といったタイプが出て来なければ、ひなたや水都がそうなるほどの力は使わずに済むだろうし、
そもそもの襲撃時、陽乃も勇者として参加しなければならない。

その際、巫女が命を落とすほどの力を使わなければならないほど苦戦したというなら、
勇者に数えられる人員の中で最も力のある陽乃がさほど役に立たなかったということになるのだが、
陽乃だって、自分の命を削って戦っている以上限界がある。

それでもきっと、被害が出た際に責められるのは勇者であり、
その責任を問われるのは、人殺しでもある陽乃だろう。

陽乃「……この子」

律儀に……と言うべきか、それとも、いやらしくと言うべきか、
ひなたは、陽乃が使う車椅子がある側に横になっているため、こっそりとどこかに出かけることは出来ない。

眠る前は別のところにいたはず。
ということは、あえてこちら側に来たのか、それとも偶然か。
とにもかくにも、起こさずにどこかに行くのはちょっと難しい。


1、九尾を呼ぶ
2、ひなたにちょっかいを出す。
3、大人しくしておく
4、イベント判定


↓1
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/24(月) 00:00:58.43 ID:G3C+K+Jr0
1
745 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/24(月) 00:04:16.32 ID:5UQ63xyY0

では短いですが、本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/24(月) 00:11:08.20 ID:khJzIcbUO

とりあえず九尾のやらかしについて問い詰めないとだな
千景が関わることに限って足引っ張ってる気がするし
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/24(月) 00:15:48.30 ID:G3C+K+Jr0
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/28(金) 06:48:22.14 ID:uFFh9pFZO
いよいよ今日がゆゆゆい最終日か…
一応CS移植やふゆゆもあるけど当面このスレが拠り所になりそうだしより一層応援していきたいなぁ
749 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/30(日) 20:41:51.92 ID:nCoL5h/f0
遅くなりましたが、少しだけ
750 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/30(日) 20:42:28.99 ID:nCoL5h/f0

ひなたがいない場合には、時々、ひなたの方に行っていることもあるが、
今はひなたも一緒にいるため、すぐ近くに九尾の気配を感じる。

陽乃「……九尾、いるんでしょ?」

呼べば応えてくれるだろうと陽乃が声をかけると、
九尾は予期していたとでも言うかのように、あっさりと姿を見せた。

九尾「何用じゃ」

陽乃「とぼけてるの? それとも、本当に知らないわけ?」

昨夜、千景が来たことは間違いない。

そして、忍び込んできた千景が陽乃を目指し、
その結果、九尾と出くわして流血沙汰にまで至ったのではないかと陽乃は思っているが、

実際にそうだったのか知っているのは九尾と千景だけだ。

陽乃「昨日の夜のことよ。郡さんが来たんでしょ? たぶん、私を殺すために」

九尾「……ほう」

九尾は赤い瞳を細めると、うっすらと笑みを浮かべる。

九尾「それが妾に関係あるのかや?」

陽乃「関係あるから聞いているのよ。貴女でしょ。郡さん追い出したの」
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/30(日) 20:47:52.67 ID:L1eeFqvwO
よっしゃ
752 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/30(日) 22:10:17.71 ID:nCoL5h/f0

陽乃の病室までの途中の通路で千景を見つけたのか、
千景が運悪く出くわしてしまったのかはどちらでも構わないが、
看護師達や入院患者、若葉達お誰かであれば、血を流すまでには至ら愛はずだし、
若葉達とのいざこざでそうなったのだとしたらもっと騒ぎになるし、ひなたから聞かされるだろう。

なにより、昨夜陽乃が会った看護師達が無事を確認したとは言わない……はず。

いや、陽乃が一番厄介だと思っているなら、
あえて何もなかったと嘘をつく可能性は残念ながら、ある。

陽乃「違うの?」

嘲笑にも思える笑みを浮かべる九尾に再度確認を取る。
九尾は表情をあまり変えることなく、ひなたを一瞥した。

九尾「ふむ……あの娘を追い出したのは妾じゃ」

陽乃「怪我をさせたのは?」

九尾「いいや、妾ではない」

はっきりと九尾は首を振る。
看護師としての衣装に身を包んでいる九尾は、
普段は長いはずの金色の髪を軽く撫でて、陽乃へと目を向ける。

九尾「そもそも、あれはあの娘のものではないぞ。無論、妾のものでもないが」

陽乃「どういう――」

九尾「あの娘、もう救いようはなかろう」
753 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/30(日) 22:30:54.08 ID:nCoL5h/f0

質問に答えてくれないのかとにらみを利かせた陽乃は、
九尾が言いたいことを組んで、ため息をつく。

陽乃「もし仮に、無関係の人を傷つけたから救えないというなら、私はどうなるのよ」

九尾「救われないな」

九尾はただ冗談でそう言っただけだったのだろう。
くつくつと喉を鳴らして笑うと「主様とは状況が違った」と、添える。

九尾「あの娘、主様よりも高嶋友奈の方を目的としていたようじゃが、あの小娘は小娘で、今はどこぞの施設とやらに放り込まれておるじゃろう?」

陽乃「だからって一般の人に詰め寄ったってこと?」

いくら何でもそんなことはしないと思いたいが、
もしかしたら、看護師達に詰め寄って、どこに送られたのか問い詰めようとしたのかもしれない。
そう思う陽乃に対して、九尾は否定する。

九尾「当然、狙われたのは主様であって他の何者でもないが、巡回の時間ゆえ、通りがかった看護師がおってのう……」

疑心暗鬼に陥っていたとでも言うべきなのか、
それとも、思考が鈍り、直情的で、人の言葉が耳に入らなくなっていたのか。

陽乃「殺したの? それを貴女が隠したの?」

九尾「殺めるには至っておらぬ。せいぜいが軽傷で済んだことじゃ。人間の尺度では軽傷とは言えぬやもしれぬが、問題はあるまい」

陽乃「生きてるの?」

九尾「ふむ……気になるならば、連れて行ってやってもよいぞ」


1、いいわ。それより郡さんはどうなったの?
2、そうね……本当に無事か確かめておきたいわ
3、貴女が何かしたわけじゃないの?
4、貴女が消さないだなんて……。


↓1
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/30(日) 22:36:29.96 ID:MnJUZx/fO
1
755 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/30(日) 23:48:47.40 ID:nCoL5h/f0

気にならないといえばウソになるが、あの出血量なら死んではいないはずだ。

大騒ぎになっていない辺り、九尾が的確に手を打ったってことだろう。
出来れば血痕も隠して欲しかったところだが、
怪我をさせられた一般人をどうにかすることを優先したから甘かったのかもしれない。

陽乃「いいわ。それより郡さんはどうなったの?」

九尾「それなら主様も知っておるじゃろう? 窓から逃げ出してどこぞに帰って行ったぞ」

九尾は逃げるところを見送っただけで、そこから先は見ていないらしい。

陽乃「それはそう、だけど。看護師を怪我させた後よ」

九尾「ふむ……正気ではないように思えたが」

九尾はそれ以上語る必要がないと言った様子だ。
看護師を傷つけたことで、より余裕がなくなってしまったのだろうか。

陽乃「また、戻ってくると思う?」

九尾「さてのう……あの娘のことは妾には分からぬ」

あの家に戻るのだろうか? いや、戻る可能性は限りなく低いはずだ。
四国のどこかに隠れ潜んでいるのか、
友奈を探し求めて彷徨って、襲撃を繰り返すか。
とにかく、放置しておくのはあんまりよくないように思える。

陽乃「でも、殺さずにいてくれただけよかったって思っておくべきかしら」

九尾「主様は妾を何だと思っておる」

陽乃「貴女、殺そうとした前科があるでしょ。何言ってるのよ」

陽乃がそういうと、九尾は「そうじゃな」と、喉を鳴らして笑った
756 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/10/30(日) 23:51:58.49 ID:nCoL5h/f0

では短いですが本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/30(日) 23:58:46.48 ID:MnJUZx/fO

つまり千景視点の独白って千景の幻覚だったってことか?
みんなで探しに行かないと取り返しがつかなくなりそう
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/31(月) 06:16:30.11 ID:xwyvVUOcO

九尾疑ってすまんかった…
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/10/31(月) 09:20:26.97 ID:s180K2GgO
まぁ確かに千景がそう感じるってしか書かれてなかったしな
760 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/11/03(木) 21:41:18.16 ID:l1GZHtCeO
遅くなりましたが少しだけ
761 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/11/03(木) 21:46:49.25 ID:l1GZHtCeO

√ 2018年 10月13日目 昼:病院

↓1コンマ判定 一桁

2 水都
4 若葉
7 杏
9 大社
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/03(木) 21:47:30.98 ID:dG6RHnovO
763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/11/03(木) 22:17:04.10 ID:l1GZHtCeO
√ 2018年 10月13日目 昼:病院


ひなた「なるほど……だとすると、千景さんが心配になりますね」

千景の侵入と流血沙汰に関わっているものの、九尾が傷つけたわけではないらしいことを伝えると、
ひなたは、心配そうに答えて、もちろん、怪我をした看護師さんも……と付け加える。

九尾曰く、昨夜の段階で最早、手の施しようがないような状態だったらしい千景。
1人きりでは、余計に沈んでいく一方なのではないかとひなたは案じる。

ひなた「せめて、お話しすることが出来ればいいのですが……」

陽乃「殺されかけたでしょ。貴女」

ひなた「それはそう、ですが」

陽乃「次は殺されるわよ」

ひなたではなく、千景が。と、陽乃はため息交じりに脅しをかける。

ひなたがお気に入りの九尾は1度は見逃したとしても、
2度目は確実に消そうとすることだろう。

お気に入りのひなただけでなく、陽乃が左手を失いかける事態にまで陥った以上、次はないはずだ。

陽乃「今のあの子に話が通じるとは思えないわ。高嶋さんでもね」

ひなた「友奈さんは友奈さんで、現状、とても追い詰められてしまっているらしいですから……」
764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/11/03(木) 22:52:33.79 ID:l1GZHtCeO

友奈は前回の戦闘でかなりのダメージを負っていたし、当然ながら、力も多く使っていただろう。
そして、それを理由に別の場所に移されている状態だ。

若葉は軽かったが、千景に近い状態になっている可能性も否定はできないし、
そうではなかったとしても、他の人に気を回す余裕があるのだろうか。

力を使う副作用のせいではあるが、
千景がそんな理由があるから……と、受け止められるとは到底思えないし、
友奈にまで拒絶された場合、千景はもう、本当に後戻りできないところまで行ってしまうかもしれない。

ひなた「陽乃さんならなんとかなりますか?」

陽乃「私というより、九尾ならどうとでもできるわよ」

千景の両親の状態を改善できるし、
千景の今の状態を完全に取り除いて、人格そのものを矯正することだって可能なはずだ。
けれど、それでどうにかしたとして、果たして……いいのだろうか。

陽乃「別の意味で壊れるわよ。たぶん……高嶋さんのような郡さん。どう思う?」

ひなた「……」

友奈のように、快活な笑顔と行動力の千景。
あの端麗な容姿でのそれは中々に破壊力があるとは思うものの、急にそうなったとしたら――。

陽乃「でしょう?」

困惑一色の表情を見せたひなたにそう言って、ため息をつく。


1、ひとまず乃木さんのところに行きましょ
2、ひとまず藤森さん達のところに行きましょ
3、ひとまず土居さん達のところに行きましょ
4、それで、貴女ずっとここにいるつもり?
5、イベント判定

↓1
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/03(木) 22:56:17.60 ID:6uLypyffO
3
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/03(木) 22:57:57.87 ID:4lRo6VGwO
1
767 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/11/03(木) 23:25:51.77 ID:l1GZHtCeO

陽乃「ひとまず、土居さん達のところに行きましょ」

ひなた「球子さん達ですか? 何かご用事でも?」

陽乃「乃木さんは貴女がいたし、白鳥さん達は繋がりがあるけれど、2人は何もないから」

陽乃がそういうと、ひなたは「あぁ」と得心が言ったように声を漏らした。

ひなた「心配なんですね」

陽乃「違うわよ。話を聞いておきたいの」

ひなた「ふふっ」

分かってますよ。とでも言うかのようなひなたの反応に、
陽乃は特に反論もせずに、ため息だけをつく。

別に心配はしていない――と、そう言ったところで、
ひなたはどうせまた、そうですね。としか言わないだろうから。

陽乃「興味がないなら私1人で行くわ」

ひなた「あっ、待ってくださいっ」

慌ててベッドから飛び起きたひなたは、
1人で車椅子に乗り込もうとしていた陽乃を制して車椅子を抑える。

ひなた「私がいるときは、私を頼ってください」

出来ることには限りがあるけれど、出来ることであれば、必ず手伝いますから。
そう笑みを浮かべるひなたに、陽乃は必要があったらね。と、呟いた。
768 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2022/11/03(木) 23:32:26.80 ID:l1GZHtCeO

では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/03(木) 23:41:04.81 ID:4lRo6VGwO

最低でも千景が話を聞いてくれる状態にならないとどうにもならないからなぁ
現状は九尾になんとかしてもらうしかないか
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/04(金) 06:01:57.14 ID:Sf3INjUSO
おつ
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/06(日) 13:05:36.56 ID:h+AaQfoXO
突然の質問で申し訳ないのですが前作の短編の件は今どういう状態なのでしょうか?
長期休載から再開してくれて有り難かった手前質問しづらいとは思いつつも完結から二年経っててどうしても気になってしまったもので…
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/13(日) 23:35:09.67 ID:RAQlorgrO
こうも休載が長いと大丈夫なのか心配になってくるな…
最近はアナウンスもしなくなってるし
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/14(月) 01:08:54.46 ID:sMAhPe/n0
ただでさえエタりかけたくらいなんだから来てればいいなくらいで気長に待ちなよ
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/19(土) 23:28:46.90 ID:8cNK1aXCO
道のりは長そうだけどきちんと完結までは頑張って欲しいなぁ
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/11/28(月) 23:52:15.37 ID:+aKo0zNQO
これはまたしても失踪かな…
もうすぐこのシリーズも8周年でお祝いしたいしこの前のように戻ってきて欲しいけども
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/12/08(木) 23:42:24.22 ID:6CADdpNoO
続きが気になるしまたいつか再開するといいな
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2022/12/10(土) 15:44:54.47 ID:o4FE1CcP0
ウェンズデー見終わったけど、久遠さんを思い出した
我を貫いて自分も周囲も傷つけるし、安価スレかと思うくらい失敗する
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/12/22(木) 02:56:37.52 ID:PtQ5IuIT0
伸びてたから久しぶりに開いたら、復活した後に死んでた
もう終わりだとしてもこのスレまだ見てるならプロットだけでも教えて終わりにしてくれねえかな
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/12/22(木) 06:52:45.15 ID:FRU36x7WO
今日でくあゆシリーズも8周年か
長年頑張ってきたしまた戻ってきてくれると信じたいけどな
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/12/28(水) 23:53:53.52 ID:6a0PhmYHo
気長に待ってるぞー
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2023/01/28(土) 20:01:50.02 ID:igmJuM9C0
いつかまた戻って来てくれますように…
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2023/06/06(火) 23:34:12.48 ID:3dppbbLt0
天乃先輩お誕生日おめでとう
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2024/03/15(金) 16:38:10.12 ID:NeI/wJV40
戻ってこないかな…
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2024/11/14(木) 00:10:51.70 ID:CHpZSBSm0
すみません
色々あって暫く寝たきりだったのですが、そろそろ再開できそうです
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2024/11/14(木) 22:50:12.54 ID:2SpklX6ho
作者本人?本人なのか?おかえりなさい!
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2024/11/16(土) 23:35:16.45 ID:dyFWp2uW0
本物か確認できないから分からんけど
ガチ再開なら嬉しいぞ
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2024/11/20(水) 22:36:50.47 ID:16M62XZz0
wikiに直近で更新の痕跡があるのに気付いて驚いた
復活期待してるだけにいつ頃やるのかが気になる
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2024/11/21(木) 23:21:41.13 ID:/t+JlFHvo
ほんとだ
復帰お待ちしております
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2025/01/09(木) 08:25:13.35 ID:LSgjCOqEo
結局戻ってこなかったな…
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2026/01/24(土) 17:40:29.75 ID:Vi6B80CY0
>>1とは違うんだけど天乃が青年と結ばれる2周目バッドエンドの続き書いたからここに貼っていい?
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2026/01/24(土) 17:44:05.80 ID:Vi6B80CY0
どうせ誰も見てないだろうし
返事なかったら適当に貼るわ
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2026/01/24(土) 17:46:45.20 ID:3GVm+IkYo
もうwikiにあるから貼らなくていいよ
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2026/01/24(土) 17:48:40.08 ID:Vi6B80CY0
いやそのwikiにあるやつの続き
青年に身体を許して妊娠して記憶戻るところたの小説書いた
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2026/01/24(土) 17:55:23.79 ID:3GVm+IkYo
じゃあ別でスレ立ててそこでやってね
空き家だからって好き勝手していいわけじゃないから
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2026/01/24(土) 18:31:47.37 ID:Vi6B80CY0
undefined
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:32:37.44 ID:Vi6B80CY0
天乃は青年の唇を受け入れたあの瞬間から、自分を囲む世界が少しずつ変わり始めた。

病院の部屋は変わらず無機質で、窓の外の景色も同じように建物と空を映し出していたが、心の中の空白は、青年の存在によって埋められようとしていた。



いや、埋められているふりをしていたのかもしれない。

もう自分には誰もいないという焦りが、天乃を駆り立てる。

犬吠埼樹の面影は薄れ、看護師の優しい言葉も遠くなり、残されたのは青年だけ。



失うことを恐れるあまり、天乃は彼にすがるように、心と身体を許していく。

孤独の闇が心を蝕む中、青年の温もりだけが唯一の光のように感じられ、彼女は必死にそれにしがみつく。

涙を堪え、笑みを浮かべながら。
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:33:42.06 ID:Vi6B80CY0
最初はキスからだった。



「ねえ、またキス……しましょ」



あの日の続きのように、青年が病室を訪れると、天乃は自ら目を閉じて唇を差し出すようになった。

青年の息が近づき、温かな唇が触れる。



最初は軽く、探るように。

だが、天乃の心が渇望するものは、もっと深いものだった。



「もっと……」



そう呟く天乃の声に込められた切なさが、青年の胸を震わせる。

青年は驚いた顔をしたが、すぐにその求めに応じる。



唇が重なり、舌が絡みつく。

ねっとりとした大人のキス。

青年の舌が天乃の口内を優しく、しかし貪るように探り、天乃の舌を絡め取る。



柔らかな舌先が互いに擦れ合い、湿った音が響く。

青年の唾液が天乃の口に流れ込み、甘く混じり合う。



「んぅ……」



唇の隙間から息が漏れ、青年の指が天乃の頬を優しく押さえ、角度を変えてより深く侵入する。

舌が絡まり、吸い付き、時には軽く歯で甘噛みするように刺激を与えるると、熱い息が鼻腔をくすぐり、天乃の身体がわずかに震える。
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:34:38.97 ID:Vi6B80CY0
青年の心は高鳴っていた――この少女の唇は柔らかく、温かく、まるで溶けるような甘さがある。

桃色の髪が乱れ、?が上気し、閉じた瞼の下で瞳が揺れている姿は、青年にとって魅惑的だった。

無垢で儚げな天乃が、こんなにも情熱的に自分を求めてキスに応じるなんて。



彼女の甘い唇の味に、青年は溺れそうになる。

罪悪感が胸を刺すが、それ以上に青年の胸には天乃への愛おしさが溢れ出していた。



「天乃……君の唇、すごく柔らかい。もっと味わいたい」



青年は、息を荒げて囁く。

喜びに満ちた瞳で天乃を見つめ、彼女の反応に酔いしれる。



天乃の心の奥底で、何かが拒絶の声を上げる――これは違う、こんなキスじゃない。

でも、天乃はそれを無視した。



青年の舌が深く入り込み、天乃の息を奪う。

唇が離れると、糸を引くように唾液が繋がり、天乃の?は赤く染まる。



「気持ちいい……?」



青年の声に、天乃は頷くしかない。孤独を埋めるための、偽りの快楽。

だが、その偽りさえ、今の彼女には救いだった。

涙が一筋、?を伝うのを、青年は優しく拭った。
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:39:27.09 ID:0tH4xQUm0
そんな偽りの愛を紡ぐ行為が、日々の習慣になった。

青年は毎日のように訪れ、天乃のベッドサイドに座る。



取り留めもない会話をして、会話が途切れ青年と天乃の視線が交わるとそっと唇を重ねる。



独りになることからの恐怖で青年を求める天乃。

そこから青年と天乃の関係がさらに深くなっていくことは自然な流れだった。



ある日、青年の指が天乃の胸元を優しく撫でる。

青年の指が、天乃の服の下に滑り込み、柔らかな肌をなぞる。

乳房を優しく揉みしだき、頂を指先で転がす。

天乃の不自由な身体は、鋭敏にその逃げ場のない快楽を受け止める。



「っ……」



熱い吐息が漏れ、天乃の入院着をはだけさせて青年の唇が首筋に吸いつく。

その欲望が、首から鎖骨へ、胸へ移る。

青年の舌が肌を這い、天乃の身体を震わせる。



「あっ……」



天乃の声が漏れる。

心の奥で拒絶が叫ぶのに、身体は青年を受け入れる。
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:40:42.33 ID:BdRX04X80
青年の指が下腹部に達し、優しく愛撫した。

湿り気を帯びた部分を、指で優しく刺激する。



天乃の身体が熱くなり、青年の唇が再び口を塞ぐ。

キスしながらの愛撫。

舌が絡み、指が動き、天乃の心は混乱する。

お互いを求め合うように、青年の息が荒くなり、天乃の声が甘く変わる。



「んぅ……!」



青年は天乃の反応に興奮を抑えきれなかった――彼女の肌は白く滑らかで、触れるたびに指が沈み込むような柔らかさ。

動かない手足が、逆に彼女の無防備さを強調し、青年の保護欲と支配欲を掻き立てる。



「君のここ、熱くなってる……感じてるんだね」



青年のセリフは甘く、耳元で囁かれる。

愛情と欲望が混じり、声が震える。

彼女の切ない表情に、心が痛むのに、止められない。

罪の意識がよぎるが、天乃の甘い息づかいに、すべてが吹き飛ぶ。



日々が、そんな甘い時間で満たされていく。

天乃にとっては、孤独の恐怖から逃れるための時間。

青年にとっては、偽りの愛を本物に変えようとする、切実な時間。


801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:44:03.09 ID:BdRX04X80

そして、ある日。とうとう、天乃は身体を許した。

夕暮れの病室で、青年がいつものようにキスを求めてきた。



ねっとりとした舌の絡み合いが続き、いつものように青年の指が天乃の身体を愛撫する。

違和感を覚える心に反して、その身体は熱が高まり、天乃の心は飲まれてた。



「……来て」



天乃の声は震えていた。

涙声のような切なさが、青年の心を締めつける。

青年は優しく、天乃の服を脱がせ、自分のものを露わにした。



ベッドの上で、天乃の不自由な身体を抱きしめ、ゆっくりと繋がった。

青年のものが天乃の中に入り込む瞬間、天乃の心が拒絶の悲鳴を上げる



――これは違う、こんなことしちゃダメ!



涙が溢れ、頬を濡らすがそれでも、天乃はそれを押し殺した。
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:45:51.54 ID:BdRX04X80
青年の腰が動き、さらに深く深く交わる。

もはや日常の一部となったキス、それをしながらの情交。



「んっ……!んぅ!!」



唇が重なり、舌が絡み、青年の動きが激しくなる。

天乃の内壁を擦り、快楽が波のように襲う。



青年が天乃の耳元で囁く。



「天乃……愛してる。君の中、すごく温かくて、締め付けてくる……これが僕たちの繋がりだよ」



声に込められた愛情が、溢れんばかりに震える。

青年の心は満たされていた――天乃の身体は儚げで、でも内側は熱く濡れていて、青年を迎え入れるように脈打っている。



彼女の桃色の髪がシーツに広がり、?が紅潮し、唇がわずかに開いて喘ぐ姿は、青年にとって究極の魅力を振り撒いていた。



まるで花びらのように繊細で、しかし青年の動きに合わせて微かに震えるその体は、征服欲を刺激する。

罪悪感が胸を刺すが、天乃の甘い声に、すべてが溶けていく。



「天乃、君を幸せにしたい……ずっと」



青年の言葉は本心だった。

偽りの始まりだったはずの愛が、今や本物の情熱に変わっていた。
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:47:37.30 ID:BdRX04X80
その言葉に天乃の身体は反応し、湿り気を増す。



心の奥で拒絶が叫ぶのに、身体は青年を受け入れる。

青年の動きが速くなり、天乃の声が漏れる。



「あっ、んっ……」



抽送が深くなり、重なり合う唇の隙間に唾液が混じり、青年のものが奥を突く。

深く深く交わりながら行なわれるキス。

唇を離さず、二人が一つになる。

汗が混じり、快楽に堪えきれず声が漏れ部屋に甘い音が響いた。



「くっ……!」



とうとう、青年が頂点に達し、天乃の中に熱いものを注ぐ。

天乃の心は悲鳴を上げながらも、快楽に飲まれる。



恋人同士として、深く深く交わった夜。

呆然とする天乃を、青年は優しく抱きしめ、愛を囁き続ける。



「愛してる天乃、ずっと一緒にいよう」



そんな言葉を天乃は、軋む心で受け入れる。



「私も……愛してる。そばにいて……決して、離れないで……」
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:49:39.07 ID:BdRX04X80
それから、時は経ち−−−天乃のお腹は、子を宿し、大きく膨らんでいた。

病院のベッドで、天乃は日々が過ぎていく。

青年の顔はつねに喜びに満ちていて、毎日訪れては、天乃のお腹を宝物のように撫でる。



「僕たちの子だよ、天乃。君のお腹が大きくなっていく姿、とても素敵だ。毎日見ていても飽きない」



青年のセリフは優しく、心から出たものだった。

瞳に輝く幸せが、天乃の心をさらに揺らす。



だが、天乃の心には違和感が募る。

このままでいいのだろうか?

青年が恋人であることへの疑問が、子を宿した今でさえ消えずに胸を締めつける。



キスをするたび、愛撫を受けるたび、心の奥底で何かがざわつく。

ぼんやりとした違和感が浮かぶのに、思い出せない。



葛藤の日々。

青年の優しさに感謝しつつ、偽りのような感覚が拭えない。

夜ごと、涙をこらえ、独りで天井を見つめていた。
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:51:31.15 ID:BdRX04X80
その日、青年がいつものように天乃の唇を求め、顔を近づけて唇が触れそうになった瞬間――突然、記憶が閃く。



樹の笑顔、樹とのキス、樹との約束。

すべてを思い出した。

天乃の瞳が見開かれる。



(樹……?)



心の悲鳴が漏れ、すべてを思い出した天乃は、絶望に包まれた。



青年との関係は偽りだった。

本当の恋人は樹。



失った2年間の記憶が、洪水のように戻る。

勇者としての日々、樹との愛、すべて。



でも、お腹の子供を想う。

もう手遅れだ。

結婚し、子供を宿した今、すべてが取り返せない。

壊れた心が、絶望の淵に立つ。

涙が溢れ、嗚咽が漏れる。



「天乃、どうしたの?」



そんな天乃の様子を不審に思った青年が尋ねるが、天乃はその軋む心の隙間を少しでも埋めようと、天乃は激しく青年の唇を求める。



「んっ……れちゅ……ぷぁ……」



自ら唇を押しつけ、舌を絡める。

ねっとりとした深いキス。

唾液が溢れ、青年の舌を貪るように吸う。

唇が激しく擦れ合い、舌が深く入り込み、互いの息を奪い合う。

青年の唾液が天乃の喉を滑り落ち、甘い熱が広がる。
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:52:44.83 ID:ep1tzV3a0
「天乃……そんなに激しくしたら、身体に障るかも……」



青年は驚きながらも応じ、戸惑いながら気遣う。



声に混じる戸惑いと喜びが、天乃の絶望をさらに煽る。

天乃の心は壊れていた。

絶望を快楽で埋めるための、激しい渇望を抑えられない。



「いいの……大丈夫だから、あなたがもっと欲しいの……」



天乃の声は震え、青年の身体を求める。

青年は戸惑いつつも、それに応じた。



お腹の大きな天乃を優しく抱き、服を脱がせ、一つになる。

青年の愛に満ちた恋人同士の交わり。

重なり合った唇を離さず、舌を絡めながら、青年のものが天乃の中に入っていく。



深く深く、青年の分身が沈み込んでいくと、その腰が動き、天乃の内壁を擦る。

お腹の子供を意識しつつ、快楽に身を委ねる。





「んっ、あっ……もっと深く」



天乃の声が甘く漏れ、心の壊れた部分が、快楽で埋まり始めた。
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 18:56:40.49 ID:paCSU7RV0
青年の抽送の動きが激しくなり、キスが深くなる。

唾液が滴り、汗が混じりヌルヌルと身体を絡め合わせて求め合う二人。



青年のものが奥を突き、天乃の身体が震える。

絶頂が近づき、天乃の心は青年の伴侶として、快楽に飲まれていく。



もう、戻れない。

壊れた心は、偽りの愛に溶け、ただの快楽の渦に沈む。



(もう……すべてがどうでもいい……)



濃厚な交わりの中、天乃はすべてを諦め、青年のものとなる。

その最後の涙を流しながら、天乃は快楽の声を上げた。
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2026/01/24(土) 19:00:44.48 ID:paCSU7RV0
終わり

勝手だけど>>1帰ってこないしこの三次創作のファン小説供養したかった
スレ汚してすまん、さいなら
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