【テイルズオブゼスティリア】ロゼ「アリーシャがいるなら」

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1 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:37:22.27 ID:qk22a3rC0
テイルズオブゼスティリアのR18指定百合小説です。
性的な表現が多く含まれていますので苦手な方はご注意ください。
アニメ版未視聴のため、ゲームの設定のみを使用しています。
主観にて書いておりますので、キャラ崩壊、矛盾等も発生するかと思いますがご了承ください。
2 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:41:53.34 ID:qk22a3rC0
ロゼ「ありがとうございましたー、またよろしくお願いしまーす」

ロゼはレディレイクの王宮から出ると、案内の女性と見張りの兵士に向けて元気よく挨拶をした。

災禍の顕主との戦いでしばらく商売から離れていたため、貴族や兵士から度々「久しぶりだね」なんて何度か声を掛けられた。戦争が始まる前と今では、王宮内の雰囲気が変わった気がする。以前は張り詰めた空気を感じていたが、今は慌ただしくも活力の気配に満たされていた。

ロゼ「さて仕事も終わったし」

ロゼは商売人の愛想笑いを切り替えて、自分の笑顔に戻した。
3 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:47:21.30 ID:qk22a3rC0
ライラ「アリーシャさんのお屋敷ですか?」

ロゼから赤い光が飛び出し、彼女の目の前には髪の長い女性が現れた。

ライラだ。それに続いて黄色、青、緑の光も放たれた。

エドナ「なにか頼まれているの?」

エドナは傘をばさっと開いて、自らに降り注ぐ強い日差しを遮った。

ミクリオ「またかい?いつから便利屋を始めたんだ」

ザビーダ「まぁまぁそんな野暮なこというもんじゃねぇって」

続けてミクリオ、ザビーダが口を開く。
4 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:53:23.81 ID:qk22a3rC0
ロゼ「おみやげがあるから渡しておこうと思って。みんなも会いに行くでしょ?」

ロゼはアリーシャの屋敷の方に足を向け、返事を待つこともなく歩き出した。誰も異を唱えることはなく、自然とロゼの後ろについていく。

このところ、レディレイクに立ち寄るとアリーシャに会いに行くことが多かった。ほとんどはアリーシャからの依頼があったからだ。各地の伝令や物資の配達、個人的な買い物等、いつの間にかすっかり使い走りになってしまっている。

アリーシャの屋敷は王宮のすぐ近くにある。いくらも歩かないうちに目的地には到着した。すっかり顔馴染みになった警備役の兵士が、ロゼを見つけて体を向ける。
5 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:55:06.89 ID:qk22a3rC0
衛兵「これはロゼ殿。アリーシャ殿下とお約束ですか」

ロゼ「いや、ただ寄っただけなんだけど。今日は家にいる?」

衛兵「はい。しかし、あいにく来客中でして。そんなに長くはかからないと思いますが」

はきはきとした口調で告げると、彼は門の中を覗きこんだ。

ロゼ「また嫌がらせ?」

ロゼは眉をひそめた。

和平の功労者だというのに、今でもアリーシャを疎む人間はいる。それでも前に比べて、王宮内での彼女の立場はずっと良くなっているはずだった。

ロゼの心配をよそに兵士は首を振り、明るい声で述べた。

衛兵「いえ、縁談です」
6 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:21:14.75 ID:qk22a3rC0
---------+++++++----------

宿に戻ったロゼは自分の部屋で机に突っ伏していた。

仲間達はあの後、揃って聖堂に向かい、レディレイクの加護天族であるウーノに会いに行っている。ロゼだけは気乗りせず、一人で宿屋に戻ってきていた。

今日は大した仕事でもなかったはずなのに、ひどく疲れた。その疲れの原因が、あの衛兵の一言であることは分かっている。

ロゼ「縁談……か」

王族であるアリーシャにとっては、きっと見合いなんて当たり前のことだ。年齢も考えたら意外でも何でもない。

相手はどんな人なんだろう、家柄はさぞ立派だろうと、ロゼはずっとそんなことを考えていた。
7 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:23:53.65 ID:qk22a3rC0
今やアリーシャはローランスとハイランドの両国にとって重要な人物だ。市民からも支持は高い。そんなアリーシャの結婚相手となればそれなりの釣り合いというものがあるだろう。めでたいはずなのに、なぜか気持ちが落ち着かない。

本当にアリーシャは幸せになれるだろうか。

ロゼ「アリーシャ、そういう相談はあたしにはしないよな……」

頭をぐしゃぐしゃと掻いていると、部屋をノックする音が響いた。

アリーシャ「ロゼ、いる?」

声の主は瞬時に認識できた。ロゼは扉の鍵を開けてその相手を招き入れる。

ロゼ「アリーシャ。どうしたの?」

休戦となり、政治を中心に活動し始めた頃から、彼女は騎士の格好よりも女性らしい服装をすることが多くなった。上品で嫌味のない雰囲気で、髪を下ろしている姿もよく見かける。
8 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:51:41.24 ID:qk22a3rC0
特別な心境の変化等ではなく、元々からそういった本質がアリーシャにはあるのだろう。容姿に関しても華があるアリーシャにはよく似合っていた。

ロゼは自分のベッドに腰掛け、アリーシャには椅子に座るように促した。アリーシャはそれに従い、カタンと椅子をロゼの方に向けて腰を下ろした。

アリーシャ「屋敷に来てくれたと聞いたから。いつもの宿屋に来てみたら女将さんが部屋を教えてくれたよ。忙しかった?」

ロゼ「ううん。会いに来てくれて嬉しい」

ロゼが目を細めると、アリーシャもにこりと笑った。

カムランへ一緒に向かって以来、二人の交流はずっと続いている。お互いに本気で喧嘩をしたことや、二人の関係に思い悩むこともあったけれど、今では親友になっていた。
 
アリーシャは旅ができない分、こうして会うたびにロゼから色んな話を聞きたがる。

各地方の動物、植物、遺跡、文化。どんなに話しても伝え切ることはない。質問をされるとまたそれを調べて次の話のネタにする。そんな風に途切れない会話をいつも楽しんでいた。

遺跡の話を聞いて輝くアリーシャの目を見ていると、また心配が溢れてきた。
9 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:57:32.35 ID:qk22a3rC0
ロゼ「アリーシャ」

ロゼの声のトーンが落ちたことに気付いたアリーシャが、表情を曇らせた。

すぐには口を開けずにいると、彼女は様子を伺うように身を乗り出した。

アリーシャ「どうかした?」

真剣な目で覗き込んでくるアリーシャから気遣いの空気を感じる。

顔に出した以上はこのまま黙っているわけにも行かず、ロゼはどう切り出すかをいくらか考えて、ゆっくりと口を開いた。

ロゼ「結婚するの?」

うじうじと悩んでいた割に、聞き方は単刀直入になった。そもそもこんなデリケートな話はするべきではないとも思っていたのに。

しかしロゼはそういう性格なのだ。胸の内に抱えたまま顔色をうかがうなんてことは向いていない。

アリーシャ「縁談の話、聞いたんだ?」

アリーシャの声と視線は優しかった。
10 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 07:26:53.88 ID:yweB4NBm0
ロゼ「そういうの、王族だから仕方ないって思うけど、アリーシャはいいの?好きとか嫌いとかないの?」

目を伏せて「それが当たり前だと思っていたから」とアリーシャが口にした時、ロゼは胸の奥からぐっと感情が込み上げてくるのを感じた。怒りなのか悲しみなのかは、よく分からない。

アリーシャ「それなりに覚悟しているよ。必要な縁談には応える義務があると思っている」

ロゼ「それってなんのためなの?国民のため?アリーシャがいい家柄の人やいい政治家と結婚すれば誰かのためになるの?」

まくしたてるつもりなんてなかったのに、ひどく苛立った声が出てしまう。
11 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 07:40:40.58 ID:yweB4NBm0
アリーシャは困った顔をしながらも、怒る様子もなく、静かに笑った。

アリーシャ「場合によるけれど多くの口利きが有効になったりはするよ。今の立場ではすんなり行かないことも、それでうまく行くようになるかもしれない」

ロゼ「それはアリーシャのためになるってこと?」

口調に棘が混じっていくのがロゼ自身にも分かっていたが、自分では止められなかった。

アリーシャもそれに気付いて怪訝な顔をした。

アリーシャ「ロゼ、なにか怒ってる?」

ロゼ「怒ってない!」

少なくともアリーシャに怒っているわけではない。なのにずっと胸の奥が苦しくて、当たり散らしたくなる。
12 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 07:42:54.46 ID:yweB4NBm0
アリーシャ「怒ってるよ」

アリーシャは立ち上がり、ロゼの頭を抱いた。

アリーシャ「ありがとうロゼ。侍女も私の気持ちを考えてくれた。王族の縁談はとてもめでたいことだから、そう口にするのは勇気のいることだったと思う。本当に私に幸せになって欲しいと言ってくれた。だからロゼが言いたいことも分かってるつもりだよ」

ロゼはアリーシャの穏やかな声を聞きながら、そのぬくもりになぜかやるせなさを感じた。

アリーシャ「でもちゃんと聞いて」

ロゼの頭を放して、アリーシャは目線を合わせた。

アリーシャ「縁談は正式にお断りしてきたんだ」
13 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 08:52:46.92 ID:yweB4NBm0
ロゼ「はっ?」

自分でも驚いてしまうくらい間の抜けた声が出た。

アリーシャは椅子に座り直し、ロゼに意地悪な笑みを向ける。

アリーシャ「ロゼもやっぱり女の子なんだね。恋愛感情が大事だって思ってるんだ。心配してくれてすごく嬉しい」

からかうような口調だったけれど、今はそんなことは気にならなかった。

ロゼ「断ったの!?っていうかそんな簡単に断れんの!?」

アリーシャ「私はまだ政治家として動き始めたばかりで、勉強も足りないし、駆け引きも何も知らない。戦争が終わっても争いはある。私が重要な立場にいることは自覚しているよ。適齢期だけど結婚して子供を作るような時期じゃない」
 
ロゼはふっと体の力が抜けるのを感じた。散々思い悩んだのにただの杞憂だった。
14 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:02:31.20 ID:yweB4NBm0
しかしまだロゼの胸騒ぎはおさまらない。求めているものがなにか違っている。安心できる言葉がまだ足りなかった。

アリーシャ「だからしばらく結婚は考えない」

続く言葉にロゼは立ち上がり、アリーシャに詰め寄る。

ロゼ「アリーシャ!」

アリーシャが驚いた顔をしてロゼを見上げた。どうしたの、と目が語っている。

ロゼ「しばらく?じゃあ何年かは……。もっと先はっ」

誰に問いかけるわけでもなくて、ひとりごとのようにぼそぼそと呟く。

違う。そこに欲しい答えはない。

アリーシャが戸惑っているのが目に映るが、頭の中が整理できない。彼女を見ているともっと違う感情が湧いてくる。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/03/27(日) 09:04:24.37 ID:2PpXH4P0O
期待
16 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:04:35.75 ID:yweB4NBm0
ロゼ「違うんだ。あたし、」

『あんたを誰にもとられたくない』

口にしかけた言葉を飲み込んだ。そのまま後ずさり、ベッドに腰を落として脱力する。

結論が出た瞬間に胸の奥がすいた。アリーシャを心配していたのではなくて、ロゼ自身が不安だったのだ。アリーシャがいなくなると思って、単に駄々をこねただけだった。

アリーシャ「ロゼ?」

アリーシャが心配そうに手を差し伸べてきた。頬に触れたその手は冷えていた。

いや、そうではなくて自分の頬が熱くなっているのだ。

自分の気持ちを自覚して、途端に恥ずかしさがこみ上げてきた。

アリーシャの顔が目の前にあるのにうまく認識できない。自分はどんな顔をしてるだろうとそればかりが気になる。
17 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:06:51.92 ID:yweB4NBm0
アリーシャ「大丈夫?」

再度アリーシャの声が聞こえて少し冷静になる。

ロゼ「ごめん。早とちりしてた。アリーシャ、すぐ自分を犠牲にしようとするからまたなんか一人で抱え込んでるのかと思って。お節介だったね」

咄嗟に誤魔化して、焦りをそっと押し出す。

とにかく心を落ち着けたい。この気持ちを押し付けてアリーシャを困らせたくない。今は自分の中でも何も整理できていないくて、感情に何が起こっているのかも実はよく分かっていない。

アリーシャ「ううん。心配してくれてありがとう。でもロゼも自分で勝手に決めて突っ走っちゃうから人のこと言えないよ」

ロゼ「そう、かもね」
18 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:08:13.51 ID:yweB4NBm0
ロゼはアリーシャの手を引いて自分の隣に座らせた。さっきよりも近い距離でそのまま話を続ける。

屋敷に行った時に渡すつもりだった土産を持ち出し、旅の話を再開した。しらじらしい気がしたが、アリーシャはきっと何も気付いていない。

しばらく話しているうちにいつもの空気に戻っていく。何に対しても興味を持つその態度が、なぜなのかいつもより可愛らしく見えた。

名前を呼ぶ声、上品に笑う姿、感じる女の子の香り、整った顔立ち。

どうしてこの魅力に今まで気付かないでいたんだろう。
19 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:37:10.22 ID:yweB4NBm0
---------+++++++----------

アリーシャが宿を出て行くのと同時に、仲間達が宿屋へ戻ってきた。

それから食堂へ行って顔を突き合わせると、エドナがいつもと変わらない無感情な様子で口を開いた。

エドナ「やっと言ったのね」

ロゼ「なにを?」

ロゼは手にした飲み物を口に運んだ。

エドナ「アリーシャに懸想してるでしょ」

思い掛けない唐突な指摘に、ロゼはグラスを取り落としそうになった。

ロゼ「覗いてたの!?」

見えない恐怖に背筋がゾッと冷えるのを感じる。
20 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:38:56.36 ID:yweB4NBm0
エドナ「失礼ね。そんなに無粋じゃないわ」

エドナが口を尖らせると、すぐにライラがフォローを入れた。

ライラ「ロゼさん、すっきりした様子でしたのでそうなのかなと思っただけですわ」

ロゼ「え、なによ。なんなの?どういうこと?」

ロゼは困惑しながら、二人の顔を見比べた。

ミクリオ「アリーシャが結婚すると知って、ひどくショックを受けていただろう?街でも噂になっていたけど、あまり本気にする人はいなかったようだよ」

ミクリオはウーノから話を聞いたと話した。政治に進出したばかりで、まだそんなつもりはないだろうと。
21 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:40:53.34 ID:yweB4NBm0
そして、アリーシャの王位継承権が末席であるのをいいことに気軽に申し込んでくる相手もいるらしく、今回が初めてではないという話だった。

ロゼ「そうだったんだ」

商人の間ではそんな話は聞いたことがなかった。貴族や聖堂内での噂なのだろう。

ザビーダ「ロゼぇ。どうだったよ?イイコトし、いだっ!」

エドナ「黙れエロオヤジ」

器用にも座ったままザビーダを傘でつくエドナ。

ロゼ「というかなんであんたたちはあたしのこと知ってんだ」

半眼で睨むと全員が顔を見合わせて、困ったように笑ったり、呆れた目をしている。
22 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 15:56:30.38 ID:yweB4NBm0
そして、アリーシャの王位継承権が末席であるのをいいことに気軽に申し込んでくる相手もいるらしく、今回が初めてではないという話だった。

ロゼ「そうだったんだ」

商人の間ではそんな話は聞いたことがなかった。貴族や聖堂内での噂なのだろう。

ザビーダ「ロゼぇ。どうだったよ?イイコトし、いだっ!」

エドナ「黙れエロオヤジ」

器用にも座ったままザビーダを傘でつくエドナ。

ロゼ「というかなんであんたたちはあたしのこと知ってんだ」

半眼で睨むと全員が顔を見合わせて、困ったように笑ったり、呆れた目をしている。
23 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 16:57:17.98 ID:yweB4NBm0
ミクリオ「いつも態度に出てるよ」

ミクリオはため息交じりに答えた。

そんな風に言われても、自分では普通に接して、普通の態度をとっているつもりだった。

ライラ「ロゼさんはアリーシャさんのことになると普段よりもずっと感情的になりますから」

エドナ「アリーシャと話してる時の姿を見せてあげたいわね」

ライラとエドナの言葉で、少しずつ不穏な様子になっていく。

流れが悪い。徐々に自分の心音が聞こえてくるくらいには動揺してきた。

ザビーダ「そりゃなあ。ロゼちゃんの顔見てれば、」

ロゼ「もういいよ!分かったから!」

ロゼは耐えられずにザビーダの声をかき消した。
24 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 17:01:01.85 ID:yweB4NBm0
ロゼ「なんかこの部屋暑くない!?」

ミクリオ「君の体温が上がってるんだよ……」

ミクリオを睨みつけるが、彼は糸のように目を細めて呆れている。

顔がひどく熱くなってきた。

ロゼ「あたしバレバレなの!?そんなに顔に出てる!?みんなそんな生温かい目でずっとあたしのこと見てたわけ!?いつから!?」

ライラ「落ち着いてください、ロゼさん」

勢いで立ち上がりそうになるロゼをライラが制止する。
 
食堂内は酔っ払い客も多く、特別に声が目立っていたわけではないが、周りを見渡してロゼは肩をすくめた。
25 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 17:03:37.12 ID:yweB4NBm0
エドナ「で、告白はうまくいったのね?」

ロゼ「だから、してないって!」

そうエドナに返すと、一斉に周りの熱が冷めるのを感じた。

ロゼ「なによこの空気。あたしだってさっき自覚したというか、まだなんか、正直どうしていいか分かんないのに」

全員のため息が聞こえたと思ったが、ザビーダだけはにやにやとしてロゼを見ている。

ザビーダ「いやあかわいいねえ。いつでもオレ様が相談に――おっと」

ロゼがかぶせ気味に睨みつけると彼は慌てて目を逸らした。

ロゼ「まず、あたしからの、その、そういうの、あの子が受け入れられるか分かんないでしょ。それに縁談だって今回は断っても次は分からないし、次の次もあるかもしれない」

彼らの顔を見回すと、今度は茫然としている。
26 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 17:06:07.06 ID:yweB4NBm0
ロゼ「なによあんたら。言いたいことがあるんだったら言いなさいよ」

ミクリオ「ああ、いや、意外と消極的なんだなと。ロゼのことだから思ったらすぐ行動、とことん突っ走るタイプかと思っていたから」

バカにしてんのか、とロゼはミクリオに言いたくなったが、先の自分の発言のせいでそんな気力もなかった。

ライラ「ロゼさん、気持ちを伝えたら嫌われるかもしれないとお考えですか?」

ライラがはっきりと言葉にすると、ロゼは胸の奥に針が刺さったような痛みを覚えた。

高望みをして今の親友としての立場を、わざわざ潰すようなことはしたくない。そばにいて笑ってくれるなら、それだけでも十分だと思っている。

ただ、それもいつまで続くか分からない。いつかは結婚してロゼのことなんて忘れてしまうかもしれない。

自らの感情を理解しても不安ばかりが強くなる。
27 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:29:43.27 ID:yweB4NBm0
エドナ「何を言ってるの、ロゼ。アリーシャは――」

ライラ「アリーシャさんはそういう人でしょうか」

エドナが呆れた声を出したことが気になったが、ライラがそれをかき消したのでロゼもそちらに意識を向けた。

ロゼ「一国の姫様だし、そういうのを否定するような子じゃないとは思うよ。でも結局はあたしがあの子にどう思われてるかでしょ」

いつになく弱気な自分が滑稽で、自嘲気味に目を細める。

そして、アリーシャが慕う導師の顔が思い浮かんだ。

ロゼ「それにあの子、スレイのことが好きなんだし。今まで通りでいてくれるかどうかも分かんないからさ」

頭をポリポリと掻いているとエドナが眉をひそめた。
28 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:32:47.37 ID:yweB4NBm0
エドナ「どうしてここでスレイが出てくるの?」

ロゼ「どうしてって。あの子、ラストンベルでペンドラゴに同行して欲しいって言ってたでしょ。あれ、そういうことじゃないの?だからあたしはカムランにいるスレイのところまで、あんな必死こいて連れて行こうとしたんじゃん」

結局あの時は、スレイがマオテラスと共に眠りにつくことを選択したから断る形になった。それがなかったからと言ってどうなるとも思えなかったが、それでもアリーシャが今どう思っているかはロゼには分からない。

スレイの行方を気にして国境を越えてまで追いかけてきた経緯もある。

一人ずつ顔を確認すると、彼らはなんとも言えない顔をしながらロゼを見ている。

エドナ「めんどくさいわね」

ミクリオ「めんどくさいな」

エドナとミクリオが揃えて言った。そしてザビーダはまたにやにやとして何かを考えているようだ。

そんなことは分かっていると文句を言ってやりたくなったが、ちょうど料理が運ばれてきたのですぐロゼ達はそちらに夢中になった。
29 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:34:59.69 ID:yweB4NBm0
---------+++++++----------

レディレイクでアリーシャに会ったのは一度だけで、その翌日にはロゼはラストンベルに移動していた。

避けているのではなく、急な仕事が入ったのだ。

ハイランドとローランスが交流を始めると、自然と物資の行き来も多くなる。当然商人としては稼げる時にしっかり稼ぐ。

今回はラストンベルで地方の卸業者との商談をしに来ているのだが、なかなか取引金額が決まらない。そのためしばらくこの街から動けないでいる。

彼らの様子からすると仕入れ業者とうまく話が進んでいないように見えたが、憶測でしかない。
30 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:37:00.17 ID:yweB4NBm0
今日サンプルが揃うという話なので、ロゼは暇潰しに外を一人でぶらついていた。

聖堂の前にいるサインドに手を振ると、彼女は彼女なりの愛想で返してくれた。この街の加護は順調のようだ。

辺りの商店や出店を見て回っていると、向かいから図体のでかい男性が歩いてくるのが見えた。

ロゼ「セルゲイ!久しぶりだね」

前回会ったのはいつだっただろうか。ペンドラゴで噂はよく耳にしていたのせいか不思議と懐かしい気持ちにはならなかった。

セルゲイ「奥方。お元気そうで何よりだ」

ロゼ「まだ訂正してなかったっけ……」

世の中も落ち着いてきて、いつかは説明しなくてはと思っていた。しかし言い出す機会がなく、セルゲイはロゼとスレイが夫婦であるとまだ信じていた。
31 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:41:28.47 ID:yweB4NBm0
「お知り合いですか?」

セルゲイの影に隠れて見えなかったが、連れがいたようだ。後ろから出てきた人影にロゼはあっと声を上げ、こちらに気付いた彼女も目を見開いた。

アリーシャ「ロゼ!?」

ロゼ「アリーシャ!ラストンベルに来てたんだ。でも今回はなんでセルゲイと?」

アリーシャ「ペンドラゴに向かう途中なんだ。白凰騎士団が護衛をしてくれている」

なるほど、とロゼは大きく頷いた。

アリーシャ「ロゼ、泊まるのはいつものところ?」

ロゼ「そうだよ。アリーシャが前に乗り込んできた宿屋ね」

スレイの話を聞かせろとマーリンドから追いかけてきた時は本当に驚いた。
32 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:45:08.88 ID:yweB4NBm0
当時は護衛も付けずにお姫様がよくあちこち動き回れるものだとひどく呆れた覚えがある。それも反休戦派に狙われている時に。

公務でもなければこうして護衛を付けたりはしないものなのだろうか。

アリーシャ「私もそこに泊まるからまたあとでね」

ロゼ「おーわかったー。ライラ達にも伝えておく」

お互いに手を振りながら姿を見送る。

急に疲れが取れたように感じるのはきっと気のせいではない。

自分もそろそろ仕事に戻らなくてはと、ロゼは駆け足で進んだ。
33 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:47:08.61 ID:yweB4NBm0
---------+++++++----------

仕事は思ったより早く終わった。というより、今日は切り上げるしかなかった。

業者の方で仕入れ先の建材業者と取引についてのトラブルが起きたらしく、予定していた卸業者の担当者の到着が遅れている。

今日は何もできず、エギーユ達と早めの夕飯を済ませて宿屋に引き上げてきた。

更に何日か足止めを食らうのかと思うと大きなため息が漏れた。

エドナ「これからアリーシャが来るの?」

夕方を過ぎた頃、同じ部屋でくつろいでいたエドナがこちらを向いた。
34 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:50:20.88 ID:yweB4NBm0
ロゼ「たぶん。またあとでって言ってたから」

ライラ「あっ!実は急用がありまして!わたくしたちはちょっと外へ!」

急に大きな声を出して立ち上がるライラ。そして、彼女を冷静な目で見つめた後、あーそうだったわーと棒読みでエドナが続いた。

ロゼ「どうしたの?なんで外?」

ロゼが戸惑っていると、エドナがこちらを向いた。

これは呆れている時の目だ。

エドナ「今度こそ頑張りなさい。いいわね?」
35 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:52:47.78 ID:yweB4NBm0
ロゼ「だからあたしはそういうのを切り出すつもりは、」

エドナの言わんとすることを察して反論しようとするが、目で威嚇されて扉の向こうへ消えていく二人を見送るしかできなかった。

ロゼ「エドナってアリーシャのこと結構好きだよね……」

脱力してベッドに腰を落とす。

アリーシャとはいつものように穏やかな時間を過ごせれば満足なのだ。

消極的な態度だと言われても仕方がない。ロゼの中ではまだ踏ん切りはつかないでいる。この想いを告げたら今の関係は確実に終わるのだから。

間もなくしてアリーシャが部屋を訪ねてきた。
36 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:03:09.35 ID:yweB4NBm0
扉を開けて彼女の顔を見ると少し緊張した。焚き付けてきたあの二人のせいだ。

ロゼ「お疲れさま。食事は?」

いつもより落ち着かない気持ちを隠しながら、アリーシャを部屋に招き入れた。意識し過ぎだと心の中で頭を振り、平静を装う。

アリーシャ「騎士団でもてなして頂いた」

アリーシャの声が低い気がした。暗いというか、気もそぞろといった雰囲気だ。不安を感じている時の彼女の顔はとてもわかりやすい。

ロゼ「なにかあった?」

公務で問題でもあったのだろうかと声をかけると、アリーシャは一息吸って、覚悟を決めたように息を吐いた。
37 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:05:33.51 ID:yweB4NBm0
アリーシャ「ロゼとスレイが、そういう関係だったなんて知らなくて……」

頭にガンっと岩でも落ちてきたような衝撃を覚えた。

ロゼ「あっ!もしかして奥方って呼ばれてたこと!?初耳、だっけ……?」

アリーシャ「どうだったか、よく覚えていなくて。あまり意識したことはなかった気がする」

ロゼ「待って、」

これはまずい。

ロゼは弁明のために、アリーシャに話をしようと試みるが、

アリーシャ「スレイはロゼに助けられたと話していた。ロゼは強くてとても頼りになると穏やかに笑っていたのは、スレイにとってロゼが特別な存在だったからなんだなって」

アリーシャはロゼの言葉を遮り、目も合わせないで早口で続けた。
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