【テイルズオブゼスティリア】ロゼ「アリーシャがいるなら」

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2 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:41:53.34 ID:qk22a3rC0
ロゼ「ありがとうございましたー、またよろしくお願いしまーす」

ロゼはレディレイクの王宮から出ると、案内の女性と見張りの兵士に向けて元気よく挨拶をした。

災禍の顕主との戦いでしばらく商売から離れていたため、貴族や兵士から度々「久しぶりだね」なんて何度か声を掛けられた。戦争が始まる前と今では、王宮内の雰囲気が変わった気がする。以前は張り詰めた空気を感じていたが、今は慌ただしくも活力の気配に満たされていた。

ロゼ「さて仕事も終わったし」

ロゼは商売人の愛想笑いを切り替えて、自分の笑顔に戻した。
3 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:47:21.30 ID:qk22a3rC0
ライラ「アリーシャさんのお屋敷ですか?」

ロゼから赤い光が飛び出し、彼女の目の前には髪の長い女性が現れた。

ライラだ。それに続いて黄色、青、緑の光も放たれた。

エドナ「なにか頼まれているの?」

エドナは傘をばさっと開いて、自らに降り注ぐ強い日差しを遮った。

ミクリオ「またかい?いつから便利屋を始めたんだ」

ザビーダ「まぁまぁそんな野暮なこというもんじゃねぇって」

続けてミクリオ、ザビーダが口を開く。
4 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:53:23.81 ID:qk22a3rC0
ロゼ「おみやげがあるから渡しておこうと思って。みんなも会いに行くでしょ?」

ロゼはアリーシャの屋敷の方に足を向け、返事を待つこともなく歩き出した。誰も異を唱えることはなく、自然とロゼの後ろについていく。

このところ、レディレイクに立ち寄るとアリーシャに会いに行くことが多かった。ほとんどはアリーシャからの依頼があったからだ。各地の伝令や物資の配達、個人的な買い物等、いつの間にかすっかり使い走りになってしまっている。

アリーシャの屋敷は王宮のすぐ近くにある。いくらも歩かないうちに目的地には到着した。すっかり顔馴染みになった警備役の兵士が、ロゼを見つけて体を向ける。
5 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 21:55:06.89 ID:qk22a3rC0
衛兵「これはロゼ殿。アリーシャ殿下とお約束ですか」

ロゼ「いや、ただ寄っただけなんだけど。今日は家にいる?」

衛兵「はい。しかし、あいにく来客中でして。そんなに長くはかからないと思いますが」

はきはきとした口調で告げると、彼は門の中を覗きこんだ。

ロゼ「また嫌がらせ?」

ロゼは眉をひそめた。

和平の功労者だというのに、今でもアリーシャを疎む人間はいる。それでも前に比べて、王宮内での彼女の立場はずっと良くなっているはずだった。

ロゼの心配をよそに兵士は首を振り、明るい声で述べた。

衛兵「いえ、縁談です」
6 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:21:14.75 ID:qk22a3rC0
---------+++++++----------

宿に戻ったロゼは自分の部屋で机に突っ伏していた。

仲間達はあの後、揃って聖堂に向かい、レディレイクの加護天族であるウーノに会いに行っている。ロゼだけは気乗りせず、一人で宿屋に戻ってきていた。

今日は大した仕事でもなかったはずなのに、ひどく疲れた。その疲れの原因が、あの衛兵の一言であることは分かっている。

ロゼ「縁談……か」

王族であるアリーシャにとっては、きっと見合いなんて当たり前のことだ。年齢も考えたら意外でも何でもない。

相手はどんな人なんだろう、家柄はさぞ立派だろうと、ロゼはずっとそんなことを考えていた。
7 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:23:53.65 ID:qk22a3rC0
今やアリーシャはローランスとハイランドの両国にとって重要な人物だ。市民からも支持は高い。そんなアリーシャの結婚相手となればそれなりの釣り合いというものがあるだろう。めでたいはずなのに、なぜか気持ちが落ち着かない。

本当にアリーシャは幸せになれるだろうか。

ロゼ「アリーシャ、そういう相談はあたしにはしないよな……」

頭をぐしゃぐしゃと掻いていると、部屋をノックする音が響いた。

アリーシャ「ロゼ、いる?」

声の主は瞬時に認識できた。ロゼは扉の鍵を開けてその相手を招き入れる。

ロゼ「アリーシャ。どうしたの?」

休戦となり、政治を中心に活動し始めた頃から、彼女は騎士の格好よりも女性らしい服装をすることが多くなった。上品で嫌味のない雰囲気で、髪を下ろしている姿もよく見かける。
8 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:51:41.24 ID:qk22a3rC0
特別な心境の変化等ではなく、元々からそういった本質がアリーシャにはあるのだろう。容姿に関しても華があるアリーシャにはよく似合っていた。

ロゼは自分のベッドに腰掛け、アリーシャには椅子に座るように促した。アリーシャはそれに従い、カタンと椅子をロゼの方に向けて腰を下ろした。

アリーシャ「屋敷に来てくれたと聞いたから。いつもの宿屋に来てみたら女将さんが部屋を教えてくれたよ。忙しかった?」

ロゼ「ううん。会いに来てくれて嬉しい」

ロゼが目を細めると、アリーシャもにこりと笑った。

カムランへ一緒に向かって以来、二人の交流はずっと続いている。お互いに本気で喧嘩をしたことや、二人の関係に思い悩むこともあったけれど、今では親友になっていた。
 
アリーシャは旅ができない分、こうして会うたびにロゼから色んな話を聞きたがる。

各地方の動物、植物、遺跡、文化。どんなに話しても伝え切ることはない。質問をされるとまたそれを調べて次の話のネタにする。そんな風に途切れない会話をいつも楽しんでいた。

遺跡の話を聞いて輝くアリーシャの目を見ていると、また心配が溢れてきた。
9 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/26(土) 22:57:32.35 ID:qk22a3rC0
ロゼ「アリーシャ」

ロゼの声のトーンが落ちたことに気付いたアリーシャが、表情を曇らせた。

すぐには口を開けずにいると、彼女は様子を伺うように身を乗り出した。

アリーシャ「どうかした?」

真剣な目で覗き込んでくるアリーシャから気遣いの空気を感じる。

顔に出した以上はこのまま黙っているわけにも行かず、ロゼはどう切り出すかをいくらか考えて、ゆっくりと口を開いた。

ロゼ「結婚するの?」

うじうじと悩んでいた割に、聞き方は単刀直入になった。そもそもこんなデリケートな話はするべきではないとも思っていたのに。

しかしロゼはそういう性格なのだ。胸の内に抱えたまま顔色をうかがうなんてことは向いていない。

アリーシャ「縁談の話、聞いたんだ?」

アリーシャの声と視線は優しかった。
10 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 07:26:53.88 ID:yweB4NBm0
ロゼ「そういうの、王族だから仕方ないって思うけど、アリーシャはいいの?好きとか嫌いとかないの?」

目を伏せて「それが当たり前だと思っていたから」とアリーシャが口にした時、ロゼは胸の奥からぐっと感情が込み上げてくるのを感じた。怒りなのか悲しみなのかは、よく分からない。

アリーシャ「それなりに覚悟しているよ。必要な縁談には応える義務があると思っている」

ロゼ「それってなんのためなの?国民のため?アリーシャがいい家柄の人やいい政治家と結婚すれば誰かのためになるの?」

まくしたてるつもりなんてなかったのに、ひどく苛立った声が出てしまう。
11 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 07:40:40.58 ID:yweB4NBm0
アリーシャは困った顔をしながらも、怒る様子もなく、静かに笑った。

アリーシャ「場合によるけれど多くの口利きが有効になったりはするよ。今の立場ではすんなり行かないことも、それでうまく行くようになるかもしれない」

ロゼ「それはアリーシャのためになるってこと?」

口調に棘が混じっていくのがロゼ自身にも分かっていたが、自分では止められなかった。

アリーシャもそれに気付いて怪訝な顔をした。

アリーシャ「ロゼ、なにか怒ってる?」

ロゼ「怒ってない!」

少なくともアリーシャに怒っているわけではない。なのにずっと胸の奥が苦しくて、当たり散らしたくなる。
12 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 07:42:54.46 ID:yweB4NBm0
アリーシャ「怒ってるよ」

アリーシャは立ち上がり、ロゼの頭を抱いた。

アリーシャ「ありがとうロゼ。侍女も私の気持ちを考えてくれた。王族の縁談はとてもめでたいことだから、そう口にするのは勇気のいることだったと思う。本当に私に幸せになって欲しいと言ってくれた。だからロゼが言いたいことも分かってるつもりだよ」

ロゼはアリーシャの穏やかな声を聞きながら、そのぬくもりになぜかやるせなさを感じた。

アリーシャ「でもちゃんと聞いて」

ロゼの頭を放して、アリーシャは目線を合わせた。

アリーシャ「縁談は正式にお断りしてきたんだ」
13 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 08:52:46.92 ID:yweB4NBm0
ロゼ「はっ?」

自分でも驚いてしまうくらい間の抜けた声が出た。

アリーシャは椅子に座り直し、ロゼに意地悪な笑みを向ける。

アリーシャ「ロゼもやっぱり女の子なんだね。恋愛感情が大事だって思ってるんだ。心配してくれてすごく嬉しい」

からかうような口調だったけれど、今はそんなことは気にならなかった。

ロゼ「断ったの!?っていうかそんな簡単に断れんの!?」

アリーシャ「私はまだ政治家として動き始めたばかりで、勉強も足りないし、駆け引きも何も知らない。戦争が終わっても争いはある。私が重要な立場にいることは自覚しているよ。適齢期だけど結婚して子供を作るような時期じゃない」
 
ロゼはふっと体の力が抜けるのを感じた。散々思い悩んだのにただの杞憂だった。
14 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:02:31.20 ID:yweB4NBm0
しかしまだロゼの胸騒ぎはおさまらない。求めているものがなにか違っている。安心できる言葉がまだ足りなかった。

アリーシャ「だからしばらく結婚は考えない」

続く言葉にロゼは立ち上がり、アリーシャに詰め寄る。

ロゼ「アリーシャ!」

アリーシャが驚いた顔をしてロゼを見上げた。どうしたの、と目が語っている。

ロゼ「しばらく?じゃあ何年かは……。もっと先はっ」

誰に問いかけるわけでもなくて、ひとりごとのようにぼそぼそと呟く。

違う。そこに欲しい答えはない。

アリーシャが戸惑っているのが目に映るが、頭の中が整理できない。彼女を見ているともっと違う感情が湧いてくる。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/03/27(日) 09:04:24.37 ID:2PpXH4P0O
期待
16 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:04:35.75 ID:yweB4NBm0
ロゼ「違うんだ。あたし、」

『あんたを誰にもとられたくない』

口にしかけた言葉を飲み込んだ。そのまま後ずさり、ベッドに腰を落として脱力する。

結論が出た瞬間に胸の奥がすいた。アリーシャを心配していたのではなくて、ロゼ自身が不安だったのだ。アリーシャがいなくなると思って、単に駄々をこねただけだった。

アリーシャ「ロゼ?」

アリーシャが心配そうに手を差し伸べてきた。頬に触れたその手は冷えていた。

いや、そうではなくて自分の頬が熱くなっているのだ。

自分の気持ちを自覚して、途端に恥ずかしさがこみ上げてきた。

アリーシャの顔が目の前にあるのにうまく認識できない。自分はどんな顔をしてるだろうとそればかりが気になる。
17 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:06:51.92 ID:yweB4NBm0
アリーシャ「大丈夫?」

再度アリーシャの声が聞こえて少し冷静になる。

ロゼ「ごめん。早とちりしてた。アリーシャ、すぐ自分を犠牲にしようとするからまたなんか一人で抱え込んでるのかと思って。お節介だったね」

咄嗟に誤魔化して、焦りをそっと押し出す。

とにかく心を落ち着けたい。この気持ちを押し付けてアリーシャを困らせたくない。今は自分の中でも何も整理できていないくて、感情に何が起こっているのかも実はよく分かっていない。

アリーシャ「ううん。心配してくれてありがとう。でもロゼも自分で勝手に決めて突っ走っちゃうから人のこと言えないよ」

ロゼ「そう、かもね」
18 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:08:13.51 ID:yweB4NBm0
ロゼはアリーシャの手を引いて自分の隣に座らせた。さっきよりも近い距離でそのまま話を続ける。

屋敷に行った時に渡すつもりだった土産を持ち出し、旅の話を再開した。しらじらしい気がしたが、アリーシャはきっと何も気付いていない。

しばらく話しているうちにいつもの空気に戻っていく。何に対しても興味を持つその態度が、なぜなのかいつもより可愛らしく見えた。

名前を呼ぶ声、上品に笑う姿、感じる女の子の香り、整った顔立ち。

どうしてこの魅力に今まで気付かないでいたんだろう。
19 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:37:10.22 ID:yweB4NBm0
---------+++++++----------

アリーシャが宿を出て行くのと同時に、仲間達が宿屋へ戻ってきた。

それから食堂へ行って顔を突き合わせると、エドナがいつもと変わらない無感情な様子で口を開いた。

エドナ「やっと言ったのね」

ロゼ「なにを?」

ロゼは手にした飲み物を口に運んだ。

エドナ「アリーシャに懸想してるでしょ」

思い掛けない唐突な指摘に、ロゼはグラスを取り落としそうになった。

ロゼ「覗いてたの!?」

見えない恐怖に背筋がゾッと冷えるのを感じる。
20 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:38:56.36 ID:yweB4NBm0
エドナ「失礼ね。そんなに無粋じゃないわ」

エドナが口を尖らせると、すぐにライラがフォローを入れた。

ライラ「ロゼさん、すっきりした様子でしたのでそうなのかなと思っただけですわ」

ロゼ「え、なによ。なんなの?どういうこと?」

ロゼは困惑しながら、二人の顔を見比べた。

ミクリオ「アリーシャが結婚すると知って、ひどくショックを受けていただろう?街でも噂になっていたけど、あまり本気にする人はいなかったようだよ」

ミクリオはウーノから話を聞いたと話した。政治に進出したばかりで、まだそんなつもりはないだろうと。
21 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 09:40:53.34 ID:yweB4NBm0
そして、アリーシャの王位継承権が末席であるのをいいことに気軽に申し込んでくる相手もいるらしく、今回が初めてではないという話だった。

ロゼ「そうだったんだ」

商人の間ではそんな話は聞いたことがなかった。貴族や聖堂内での噂なのだろう。

ザビーダ「ロゼぇ。どうだったよ?イイコトし、いだっ!」

エドナ「黙れエロオヤジ」

器用にも座ったままザビーダを傘でつくエドナ。

ロゼ「というかなんであんたたちはあたしのこと知ってんだ」

半眼で睨むと全員が顔を見合わせて、困ったように笑ったり、呆れた目をしている。
22 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 15:56:30.38 ID:yweB4NBm0
そして、アリーシャの王位継承権が末席であるのをいいことに気軽に申し込んでくる相手もいるらしく、今回が初めてではないという話だった。

ロゼ「そうだったんだ」

商人の間ではそんな話は聞いたことがなかった。貴族や聖堂内での噂なのだろう。

ザビーダ「ロゼぇ。どうだったよ?イイコトし、いだっ!」

エドナ「黙れエロオヤジ」

器用にも座ったままザビーダを傘でつくエドナ。

ロゼ「というかなんであんたたちはあたしのこと知ってんだ」

半眼で睨むと全員が顔を見合わせて、困ったように笑ったり、呆れた目をしている。
23 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 16:57:17.98 ID:yweB4NBm0
ミクリオ「いつも態度に出てるよ」

ミクリオはため息交じりに答えた。

そんな風に言われても、自分では普通に接して、普通の態度をとっているつもりだった。

ライラ「ロゼさんはアリーシャさんのことになると普段よりもずっと感情的になりますから」

エドナ「アリーシャと話してる時の姿を見せてあげたいわね」

ライラとエドナの言葉で、少しずつ不穏な様子になっていく。

流れが悪い。徐々に自分の心音が聞こえてくるくらいには動揺してきた。

ザビーダ「そりゃなあ。ロゼちゃんの顔見てれば、」

ロゼ「もういいよ!分かったから!」

ロゼは耐えられずにザビーダの声をかき消した。
24 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 17:01:01.85 ID:yweB4NBm0
ロゼ「なんかこの部屋暑くない!?」

ミクリオ「君の体温が上がってるんだよ……」

ミクリオを睨みつけるが、彼は糸のように目を細めて呆れている。

顔がひどく熱くなってきた。

ロゼ「あたしバレバレなの!?そんなに顔に出てる!?みんなそんな生温かい目でずっとあたしのこと見てたわけ!?いつから!?」

ライラ「落ち着いてください、ロゼさん」

勢いで立ち上がりそうになるロゼをライラが制止する。
 
食堂内は酔っ払い客も多く、特別に声が目立っていたわけではないが、周りを見渡してロゼは肩をすくめた。
25 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 17:03:37.12 ID:yweB4NBm0
エドナ「で、告白はうまくいったのね?」

ロゼ「だから、してないって!」

そうエドナに返すと、一斉に周りの熱が冷めるのを感じた。

ロゼ「なによこの空気。あたしだってさっき自覚したというか、まだなんか、正直どうしていいか分かんないのに」

全員のため息が聞こえたと思ったが、ザビーダだけはにやにやとしてロゼを見ている。

ザビーダ「いやあかわいいねえ。いつでもオレ様が相談に――おっと」

ロゼがかぶせ気味に睨みつけると彼は慌てて目を逸らした。

ロゼ「まず、あたしからの、その、そういうの、あの子が受け入れられるか分かんないでしょ。それに縁談だって今回は断っても次は分からないし、次の次もあるかもしれない」

彼らの顔を見回すと、今度は茫然としている。
26 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 17:06:07.06 ID:yweB4NBm0
ロゼ「なによあんたら。言いたいことがあるんだったら言いなさいよ」

ミクリオ「ああ、いや、意外と消極的なんだなと。ロゼのことだから思ったらすぐ行動、とことん突っ走るタイプかと思っていたから」

バカにしてんのか、とロゼはミクリオに言いたくなったが、先の自分の発言のせいでそんな気力もなかった。

ライラ「ロゼさん、気持ちを伝えたら嫌われるかもしれないとお考えですか?」

ライラがはっきりと言葉にすると、ロゼは胸の奥に針が刺さったような痛みを覚えた。

高望みをして今の親友としての立場を、わざわざ潰すようなことはしたくない。そばにいて笑ってくれるなら、それだけでも十分だと思っている。

ただ、それもいつまで続くか分からない。いつかは結婚してロゼのことなんて忘れてしまうかもしれない。

自らの感情を理解しても不安ばかりが強くなる。
27 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:29:43.27 ID:yweB4NBm0
エドナ「何を言ってるの、ロゼ。アリーシャは――」

ライラ「アリーシャさんはそういう人でしょうか」

エドナが呆れた声を出したことが気になったが、ライラがそれをかき消したのでロゼもそちらに意識を向けた。

ロゼ「一国の姫様だし、そういうのを否定するような子じゃないとは思うよ。でも結局はあたしがあの子にどう思われてるかでしょ」

いつになく弱気な自分が滑稽で、自嘲気味に目を細める。

そして、アリーシャが慕う導師の顔が思い浮かんだ。

ロゼ「それにあの子、スレイのことが好きなんだし。今まで通りでいてくれるかどうかも分かんないからさ」

頭をポリポリと掻いているとエドナが眉をひそめた。
28 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:32:47.37 ID:yweB4NBm0
エドナ「どうしてここでスレイが出てくるの?」

ロゼ「どうしてって。あの子、ラストンベルでペンドラゴに同行して欲しいって言ってたでしょ。あれ、そういうことじゃないの?だからあたしはカムランにいるスレイのところまで、あんな必死こいて連れて行こうとしたんじゃん」

結局あの時は、スレイがマオテラスと共に眠りにつくことを選択したから断る形になった。それがなかったからと言ってどうなるとも思えなかったが、それでもアリーシャが今どう思っているかはロゼには分からない。

スレイの行方を気にして国境を越えてまで追いかけてきた経緯もある。

一人ずつ顔を確認すると、彼らはなんとも言えない顔をしながらロゼを見ている。

エドナ「めんどくさいわね」

ミクリオ「めんどくさいな」

エドナとミクリオが揃えて言った。そしてザビーダはまたにやにやとして何かを考えているようだ。

そんなことは分かっていると文句を言ってやりたくなったが、ちょうど料理が運ばれてきたのですぐロゼ達はそちらに夢中になった。
29 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:34:59.69 ID:yweB4NBm0
---------+++++++----------

レディレイクでアリーシャに会ったのは一度だけで、その翌日にはロゼはラストンベルに移動していた。

避けているのではなく、急な仕事が入ったのだ。

ハイランドとローランスが交流を始めると、自然と物資の行き来も多くなる。当然商人としては稼げる時にしっかり稼ぐ。

今回はラストンベルで地方の卸業者との商談をしに来ているのだが、なかなか取引金額が決まらない。そのためしばらくこの街から動けないでいる。

彼らの様子からすると仕入れ業者とうまく話が進んでいないように見えたが、憶測でしかない。
30 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:37:00.17 ID:yweB4NBm0
今日サンプルが揃うという話なので、ロゼは暇潰しに外を一人でぶらついていた。

聖堂の前にいるサインドに手を振ると、彼女は彼女なりの愛想で返してくれた。この街の加護は順調のようだ。

辺りの商店や出店を見て回っていると、向かいから図体のでかい男性が歩いてくるのが見えた。

ロゼ「セルゲイ!久しぶりだね」

前回会ったのはいつだっただろうか。ペンドラゴで噂はよく耳にしていたのせいか不思議と懐かしい気持ちにはならなかった。

セルゲイ「奥方。お元気そうで何よりだ」

ロゼ「まだ訂正してなかったっけ……」

世の中も落ち着いてきて、いつかは説明しなくてはと思っていた。しかし言い出す機会がなく、セルゲイはロゼとスレイが夫婦であるとまだ信じていた。
31 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:41:28.47 ID:yweB4NBm0
「お知り合いですか?」

セルゲイの影に隠れて見えなかったが、連れがいたようだ。後ろから出てきた人影にロゼはあっと声を上げ、こちらに気付いた彼女も目を見開いた。

アリーシャ「ロゼ!?」

ロゼ「アリーシャ!ラストンベルに来てたんだ。でも今回はなんでセルゲイと?」

アリーシャ「ペンドラゴに向かう途中なんだ。白凰騎士団が護衛をしてくれている」

なるほど、とロゼは大きく頷いた。

アリーシャ「ロゼ、泊まるのはいつものところ?」

ロゼ「そうだよ。アリーシャが前に乗り込んできた宿屋ね」

スレイの話を聞かせろとマーリンドから追いかけてきた時は本当に驚いた。
32 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:45:08.88 ID:yweB4NBm0
当時は護衛も付けずにお姫様がよくあちこち動き回れるものだとひどく呆れた覚えがある。それも反休戦派に狙われている時に。

公務でもなければこうして護衛を付けたりはしないものなのだろうか。

アリーシャ「私もそこに泊まるからまたあとでね」

ロゼ「おーわかったー。ライラ達にも伝えておく」

お互いに手を振りながら姿を見送る。

急に疲れが取れたように感じるのはきっと気のせいではない。

自分もそろそろ仕事に戻らなくてはと、ロゼは駆け足で進んだ。
33 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:47:08.61 ID:yweB4NBm0
---------+++++++----------

仕事は思ったより早く終わった。というより、今日は切り上げるしかなかった。

業者の方で仕入れ先の建材業者と取引についてのトラブルが起きたらしく、予定していた卸業者の担当者の到着が遅れている。

今日は何もできず、エギーユ達と早めの夕飯を済ませて宿屋に引き上げてきた。

更に何日か足止めを食らうのかと思うと大きなため息が漏れた。

エドナ「これからアリーシャが来るの?」

夕方を過ぎた頃、同じ部屋でくつろいでいたエドナがこちらを向いた。
34 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:50:20.88 ID:yweB4NBm0
ロゼ「たぶん。またあとでって言ってたから」

ライラ「あっ!実は急用がありまして!わたくしたちはちょっと外へ!」

急に大きな声を出して立ち上がるライラ。そして、彼女を冷静な目で見つめた後、あーそうだったわーと棒読みでエドナが続いた。

ロゼ「どうしたの?なんで外?」

ロゼが戸惑っていると、エドナがこちらを向いた。

これは呆れている時の目だ。

エドナ「今度こそ頑張りなさい。いいわね?」
35 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 21:52:47.78 ID:yweB4NBm0
ロゼ「だからあたしはそういうのを切り出すつもりは、」

エドナの言わんとすることを察して反論しようとするが、目で威嚇されて扉の向こうへ消えていく二人を見送るしかできなかった。

ロゼ「エドナってアリーシャのこと結構好きだよね……」

脱力してベッドに腰を落とす。

アリーシャとはいつものように穏やかな時間を過ごせれば満足なのだ。

消極的な態度だと言われても仕方がない。ロゼの中ではまだ踏ん切りはつかないでいる。この想いを告げたら今の関係は確実に終わるのだから。

間もなくしてアリーシャが部屋を訪ねてきた。
36 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:03:09.35 ID:yweB4NBm0
扉を開けて彼女の顔を見ると少し緊張した。焚き付けてきたあの二人のせいだ。

ロゼ「お疲れさま。食事は?」

いつもより落ち着かない気持ちを隠しながら、アリーシャを部屋に招き入れた。意識し過ぎだと心の中で頭を振り、平静を装う。

アリーシャ「騎士団でもてなして頂いた」

アリーシャの声が低い気がした。暗いというか、気もそぞろといった雰囲気だ。不安を感じている時の彼女の顔はとてもわかりやすい。

ロゼ「なにかあった?」

公務で問題でもあったのだろうかと声をかけると、アリーシャは一息吸って、覚悟を決めたように息を吐いた。
37 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:05:33.51 ID:yweB4NBm0
アリーシャ「ロゼとスレイが、そういう関係だったなんて知らなくて……」

頭にガンっと岩でも落ちてきたような衝撃を覚えた。

ロゼ「あっ!もしかして奥方って呼ばれてたこと!?初耳、だっけ……?」

アリーシャ「どうだったか、よく覚えていなくて。あまり意識したことはなかった気がする」

ロゼ「待って、」

これはまずい。

ロゼは弁明のために、アリーシャに話をしようと試みるが、

アリーシャ「スレイはロゼに助けられたと話していた。ロゼは強くてとても頼りになると穏やかに笑っていたのは、スレイにとってロゼが特別な存在だったからなんだなって」

アリーシャはロゼの言葉を遮り、目も合わせないで早口で続けた。
38 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:07:35.83 ID:yweB4NBm0
俯いた目が潤んでいるようにも見える。そんな表情にロゼは鋭い痛みを覚えた。

アリーシャがスレイの名を口にするたび、心が遠くなるような、根拠のない不安がまとわりつく。

アリーシャ「私にも黙っていたのは事情があったんだろうと思うけど、」

ロゼ「待てって!あたしの話を聞け!」

アリーシャの肩を掴み、強い口調で黙らせる。しかし相変わらず彼女は目を合わせてはくれない。

ロゼ「あれは通行証の、」

アリーシャ「違うんだ」
39 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:09:54.86 ID:yweB4NBm0
説明を始めると今度はロゼが遮られた。

ロゼ「なにが?」

ロゼは苛立ちを隠そうともせずに口調に乗せる。

アリーシャ「本当は分かってる。それは私が拘束されていた時の話で、ロゼとスレイが出会ったのがその一年前だと聞いた。スレイは私と会うまで人間には会ったことがない。それにマーリンドで別れてすぐそんな関係になるとも思えなかったし、ロゼは通商条約があるからきっとスレイを通すためにひと芝居打ったのだろうと思ってる」

冷静な見解にロゼは一歩下がった。

ロゼ「そこまで分かってるなら」

ほっと息を吐くが、アリーシャの話し方が公務の時のようになっていることがカンに障った。まだなにか彼女には気がかりなことがあるのだ。
40 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:11:57.68 ID:yweB4NBm0
少しの間、黙るアリーシャを待つ。

アリーシャ「……でも、その後何ヶ月も会っていない時期があるし、もしかしたらと思うと」

話す声がわずかに震えている。

アリーシャ「本当に二人がそうならどんな顔をしたらいいのか分からなかった」

俯いたまま、アリーシャは苦しげに呟いた。

ロゼ「でもそれは違うって分かってるじゃん」

アリーシャ「そうだけど、そうじゃない」
41 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/27(日) 22:13:26.89 ID:yweB4NBm0
きっぱりと言って彼女は黙ってしまった。

また少し待ってみたが、何も言わないアリーシャにロゼは短気を起こしてしまう。

ロゼ「その話し方、やめてよ」

まるで他人みたいだと思った。

何を言いたいのか察することができないままその態度でいられるのは不愉快だった。目を合わせようとしないアリーシャの顔を無理に覗き込むと、辛そうに唇を噛んでいる姿が見えた。

ロゼが思う以上にアリーシャのスレイへの気持ちが強いことを突きつけられている気がした。
42 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/28(月) 08:09:31.03 ID:TeJL120M0
ロゼ「アリーシャ……」

これが涙をこらえる仕草だと勘付いて、ロゼは体を引いた。

いつもなら軽口でからかうように慰めるのだが、今は胸が痛かった。自分のせいだと分かっていても、どうして彼女がこんな風に苦しんでいるのかは分からない。

ただ悪い方にしか考えられなくて、次の瞬間にはロゼを突き放す言葉が放たれるんじゃないかと思ってしまう。

ロゼも黙り込んでしまい、その理由にアリーシャも気付いたようだった。彼女がぎゅっと拳を握ったのが見えた。

アリーシャ「私は……っ」
43 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/28(月) 09:52:39.02 ID:AzyPXNqW0
口を開いた途端、彼女の目からは涙がこぼれた。

ずっと我慢をしていたはずなのに。無理に喋らせたのは自分なのだと分かっているから、ロゼは何も言えなかった。

涙を拭ってやることすらできずに、これから告げられる言葉をただ聞くことしかできない。

アリーシャ「私は、ロゼを誰にもとられたくない……!」

潰れそうな声を絞り出してアリーシャは顔を伏せた。

ロゼ「ぅえっ?」

間の抜けた声だけが口から出てそのまま思考は停止する。

どこかで聞いたようなセリフだ。
44 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/28(月) 09:54:08.74 ID:AzyPXNqW0
思ってもみない言葉にロゼは困惑してしまって、両手が宙をおろおろと舞う。

ロゼ「えっ、あたし?スレイじゃなくて?」

アリーシャはロゼの反応を見るのが怖いのか顔を上げずに言葉を続けた。

アリーシャ「スレイとどうだとかじゃなくて……いつかロゼが誰かとどこかへ行ってしまうんじゃないかと思ったら、なんか胸が苦しくなって……!」

声を詰まらせながら涙混じりに叫ぶアリーシャに、ロゼははっと顔を上げた。

ロゼ「お、落ち着こ?」

アリーシャの肩に触れるが、それも払いのけられてしまって取り付く島がない。
45 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/28(月) 09:55:39.34 ID:AzyPXNqW0
アリーシャ「おかしいと思うでしょ?ロゼがいなくなるのがこんなに怖いなんて……っ」

もう涙が流れることに開き直ったのか、アリーシャは何度も目をこすって涙を拭う。しかしそれは次から次へと溢れてアリーシャの顔を濡らし続けた。

ロゼ「アリーシャ。目、こすらないで。腫れるよ」

いよいよ心配になってロゼは取り乱すアリーシャにできる限り優しく声を掛けた。

アリーシャ「だって!」

ロゼ「だから、落ち着けっての!」

結局短気を起こして、アリーシャの両手の自由を奪う。

何度か振り払おうとするが、ロゼはその手を離さない。普段のアリーシャはこんなに非力ではない。痛みが伝わってくるようで、ロゼも胸が苦しくなった。
46 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/28(月) 09:56:52.15 ID:AzyPXNqW0
ほどなくしてアリーシャは抵抗をやめて顔を上げた。そして潤んだ瞳でロゼを見ながら弱々しく口を開く。

アリーシャ「ロゼのことが、好きなの……」

時間が止まった気がした。心臓を掴まれて鼓動と呼吸が止まったみたいだ。

とっくに気付いていたけれど、直接彼女の口から告げられたことに衝撃を覚える。何も言い出せなかった自分とは違う。

アリーシャの言葉は全てロゼが思っていたことと同じものだった。しかしこんなふうに言葉にすることはロゼには出来なかった。

口にしたら今の関係が終わってしまうと、彼女はそうは考えなかったのだろうか。そんな疑問が浮かんでくる。
47 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/28(月) 15:49:24.10 ID:AzyPXNqW0
ただ、そんな真摯な態度が羨ましくてロゼは目を細めた。

ロゼ「あーあ、言っちゃったね」

ロゼはアリーシャの手を掴み上げたまま唇を重ねた。

身体がこわばって、アリーシャは石のように固まった。しかし涙はまだ止まっていない。

ロゼ「泣くなって」

唇を離して呟き、また口付ける。

アリーシャ「んっ、ロゼ……!」

今度はアリーシャに反応があった。相変わらず涙は溢れている。

ロゼ「まだ泣いてる」
48 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/28(月) 15:51:11.14 ID:AzyPXNqW0
アリーシャ「ロゼ、待っ……、ろ、ぜ……っ」

何度も口付けを繰り返し、アリーシャはそのたびに甘い声でロゼの名を呼んだ。

潤んだ目と、力なく抵抗する姿。吐息の混じる声。

本当に嫌がっていたならやめるつもりだったのに、拒むような仕草の中に誘う視線がある。もっと続けていいのだと、どんどん理性が奪われていく。

アリーシャ「は……っ、んんっ」

信じられないほどに艶を帯びた女性が目の前にいる。普段の凛とした声色がこんなに化けるとは思わなかった。
49 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/29(火) 12:50:14.32 ID:kuKWrxMJ0
いつのまにかアリーシャを拘束する手を離し、ロゼは彼女の腰に手を回していた。

そして唇を割って舌を差し込む寸前、アリーシャの涙が止まっていることに気が付いた。

ロゼ「やっと泣き止んだ」

興奮した息遣いを気取られないよう、熱を吐き出す。もう少しで後に引けなくなるところだった。

ロゼ「そこ座ってて」

ロゼはベッドを指してアリーシャを座らせると、水差しでハンカチを濡らして手渡した。
50 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/29(火) 12:52:31.22 ID:kuKWrxMJ0
ロゼ「目、赤いよ」

アリーシャ「誰のせいだと思ってるの……」

受け取ったハンカチを両目に当てて、アリーシャは恨めしそうに呻いた。

話し方が戻っていて安心する。いつものアリーシャだ。

アリーシャ「ロゼごめん。困らせちゃった」

鼻をすする音がした。そのかすれた弱い声が可愛らしいと思ったが、アリーシャが気を悪くすると思って口にはしないでおいた。

ロゼ「困ったけど、嫌じゃないから」

ちらりとアリーシャを見る。
51 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/29(火) 12:54:23.93 ID:kuKWrxMJ0
下を向いて目を冷やしているせいでアリーシャからはロゼが見えない。

それをいいことにロゼはアリーシャの髪の毛の先から肩、胸、腰、腿を流し見た。鼓動が早くなっているのを感じてロゼは頭を振る。

だめだ。このままアリーシャといたらまた何かしてしまいそうだった。

ロゼ「明日、ラストンベルを出るの?」

なんとか気持ちを散らそうとアリーシャに話を振る。

アリーシャ「うん。少しでも進んでおきたいから早朝には出るよ」

ロゼ「ペンドラゴからレディレイクに戻るのは?」
52 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 00:37:27.65 ID:/DIFFN/J0
アリーシャが顔を上げた。

アリーシャ「二十日後には会談があるからそれまでには」

ロゼ「行ってすぐ帰らなきゃじゃんそれ。ほんと多忙極まってるよね」

アリーシャ「それだけ信頼されているんだと思うから頑張るよ」

困った顔をして笑うアリーシャの様子から、無意味な仕事を押し付けられていた頃とは違い、大切な仕事を任されているのだと知れた。疲れているようで、充実しているようにも見えた。

ラストンベルでは以前からアリーシャの噂が多く流れていた。アリーシャの人気が高いのはロゼにとっても誇らしく思えて、同時に寂しいと感じたこともある。アリーシャが違う世界の人間であると思い知るのが嫌だったのだと、今のロゼにはそれがよく分かる。
53 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 00:39:00.96 ID:/DIFFN/J0
アリーシャが瞼に手を触れる。

ロゼ「平気?」

ロゼはアリーシャのすぐ近くにまで顔を寄せた。

いつもの綺麗な二重だ。まだ赤いがすぐ引くだろう。

普段からこのくらいの距離だったはずなのに今はやはり意識してしまう。

自分の行動を思い返す。アリーシャの顔色を無言で伺ってみるが、いつもと態度は変わりない。ロゼもそれにならって気にしないよう務めた。

アリーシャ「心配してくれてありがとう」

間近で聞こえるアリーシャの声に、気持ちが反応する。
54 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 00:40:27.45 ID:/DIFFN/J0
やはり彼女に目を惹かれて健全な感情ではいられなかった。

アリーシャ「明日は早いからもう寝るよ」

ロゼの理性が切れる前にアリーシャがそう切り出した。

安心が半分、残念という気持ちも半分くらいはあった。

アリーシャ「一方的に喚いてしまったけど、ちゃんと話せてよかった」

こういう時に、恥ずかしい部分を誤魔化さないで言い切る真面目さには、感心するし呆れもした。アリーシャにはあまり得にならないからだ。

それでもこうしたデメリットから国民の信頼が得られるのだとも分かっているから、ロゼはアリーシャを否定したりはしない。
55 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 00:42:06.96 ID:/DIFFN/J0
立ち上がるアリーシャの背を追い、扉の前で声を掛けた。

ロゼ「こっちの仕事が終わったらレディレイクでアリーシャが戻ってくるのを待ってるよ」

するとアリーシャがこちらを向いて満面の笑みを浮かべた。

アリーシャ「うん」

こんな顔をするアリーシャは初めてではないはずなのに、今日は特別眩しく見えた。

ロゼ「それじゃ。おやすみ」

ロゼが手を振ると、アリーシャは自分の部屋に戻っていった。階段を上っていくアリーシャの姿が見えなくなるまで見送ってから、ロゼはしばらく佇んだ。

疲れた気がしたけれど消耗したわけではなくて、むしろ充実した気持ちでいる。
56 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 12:48:52.10 ID:XCpCy5PT0
自室の扉を閉めようとするタイミングで、上の階からガタッと大きな音が聞こえた。そしてわずかに女の人の叫び声が届く。
 
アリーシャの悲鳴だと瞬時に判断してロゼは走り出した。上の階に着くとアリーシャが部屋の前で扉を開いたまま固まっていた。

ロゼ「アリーシャ!どうしたの!?」

すぐに部屋とアリーシャの間に体を割り込ませて彼女を庇う態勢になる。

しかし視線の先には見知った顔。

ロゼ「ライラとエドナ!?」
57 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 12:50:14.43 ID:XCpCy5PT0
エドナ「なにようるさい。宿屋では静かにしなさいよ」

アリーシャが寝るはずのベッドにはエドナが寝そべっていた。

ライラ「てっきりアリーシャさんはロゼさんの部屋に泊まると思っていたので」

ライラも同じように室内でくつろいでいる。

アリーシャ「お二人共なぜ私の部屋を……」

エドナ「女将に聞いた」

この宿屋の女将は以前の事件で憑魔の姿が見えていたくらいには霊応力が高かった。今では天族と会話が出来るほどになっていて、スレイの恩恵を感じる。
58 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 12:52:30.73 ID:XCpCy5PT0
ロゼ「とりあえず二人共戻れ!アリーシャ、気にしないで」

ロゼは二人を引きずり出し、アリーシャを部屋に押し込んだ。

ロゼ「バタバタしてごめんね。ゆっくり休んで。おやすみ」

早口でまくし立てるとロゼはエドナとライラを自室へと引っ張った。そしてアリーシャとの余韻を壊されたロゼは、怒りのままに二人を怒鳴りつけた。

ロゼ「あんたらなにしてんの!」

目を釣り上げるロゼに、エドナはあからさまにめんどくさそうな顔をして見せる。

エドナ「なにって、宿の部屋でふたりきりなんだから好きなようにすればいいのよ」

ライラ「普通はそのまま朝まで帰ってこないと思いますよね」

エドナ「せっかく気を遣ってあげたのに。あなた達、子供じゃないんだから」

ライラ「アリーシャさんの気持ちも考えてあげてください」

ライラと交互に言葉を叩き付けられて、ロゼは言い返せずにいた。
59 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 12:54:40.03 ID:XCpCy5PT0
ロゼ「いやまだそういう段階では……」

彼女たちのいう状況を想像をして顔に熱がこもる。

二人の顔は呆れるなどという段階はとっくに通り過ぎていて、エドナに至っては初めて見るくらいに眉間にシワを寄せていた。
エドナ「あんだけ言わせといて情けないと思わないの?」

ロゼ「なんで内容知ってんの!?今度こそ覗いてたでしょ!」

エドナ「真下の部屋であんな大声で騒いでたら聞こえて当然よ。アリーシャが喚いてた声くらいしか聞こえなかったけど」

ロゼは羞恥心で頭が爆発しそうになりながら、ほとんど逆切れのように叫んだ。

ロゼ「だってしょうがないじゃん!あたしだっていっぱいいっぱいだったんだから!」
60 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 12:56:21.11 ID:XCpCy5PT0
エドナ「アリーシャに聞こえるわよ」

エドナに冷めた声で告げられて、今更ロゼは自分の口を塞いだ。

それと同時に、なんでこんなことになるのかとひどく理不尽な気持ちになってロゼは肩を落とした。

しかし自分とアリーシャを想ってくれているのだと分かっている。

怒ってはいない。疲れはするけれど。

ロゼ「アリーシャはスレイのことが好きだと思ってた……」

今度は上に聞こえないよう声を落とす。

エドナ「そういう時期もあったかもしれないけど、憧れとか尊敬とか、そんなものじゃないかしら。自分自身の思想の励みにしていたところもあると思うわ」
61 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 12:57:40.30 ID:XCpCy5PT0
エドナに言われ、思い出を巡らせてみる。

元々、アリーシャは王族という関わりの薄い相手で、ロゼがスレイの従士になった後も仲間意識を強く持っていたわけではない。だからアリーシャの思い入れはいつも、スレイに向かっているような気がしていた。

エドナ「納得行かないならそれでいいわ。ワタシの主観だけれど、あなたを見る目とスレイを見る目は、それぞれ意味が違っているんじゃないかしらね」

見透かされた気がして、ロゼは言葉を失った。

アリーシャがスレイの代わりに自分を選んだのではないかと、少しだけそんな考えがよぎっていた。

ロゼ「アリーシャはいつからあたしのこと好きだったんだろ」

胸裡にぎごちない不安や葛藤のようなものが残っていて、ロゼは首の辺りをもぞもぞと掻いた。

彼女の気持ちは嬉しいけれど、手放しで喜べないのはどこかで信用できていないからなのかもしれない。
62 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:22:53.66 ID:/DIFFN/J0
エドナ「さあね。本人が自覚したのは今日なんでしょうけど。ロゼも自覚する前から周りに気付かれてたじゃない」

それは前にも言われたので分かっている。始めは理解していなかったが、今は彼女への感情が以前から特別なものだったと思い当たる節はあった。

ロゼ「なんかあたし嫌われるかもとか、すごく余計な心配してたなってちょっと思ってる」

ロゼが言うとエドナは「いまさら?」と長い長いため息をついた。

エドナ「あなたと話してると疲れるわ」

気がつけばライラもいつの間にか姿を消していた。
63 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:26:14.85 ID:/DIFFN/J0

---------+++++++----------

ミクリオ「まだアリーシャの家に行かないのかい?」

宿屋でだらけるロゼにミクリオが声を掛ける。

ラストンベルでの仕事を終え、レディレイクに到着してから三日が経過していた。

ロゼ「帰ってきてないみたいだから」

屋敷に行かなくても、アリーシャがレディレイクに帰ってきていたら、街の誰かがうわさ話くらいしているだろう。

しばらく仕事が忙しかったので休暇だと思って過ごしている。

ロゼ「体、なまるなあ」
64 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:28:34.42 ID:/DIFFN/J0
すぐ近くにいるミクリオに目を向けると、声を掛ける前に彼の方が口を開いた。

ミクリオ「訓練には付き合わないぞ」

ロゼ「まだ何も言ってないけどなんでよ」

尋ねてもミクリオはめんどくさそうな顔をするだけだった。

ミクリオ「ザビーダに頼んだら?」

ロゼ「やだ。あいつは強くて話にならん」

決してミクリオが弱いなどとは考えていないが、長く生きているだけあってザビーダには一対一で勝てる気がしない。

それにザビーダはエドナと一緒に霊峰レイフォルクに行っている。聞くまでもなく、親友の墓参りである。
65 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:29:54.18 ID:/DIFFN/J0
訓練の相手としてふとアリーシャを連想する。蒼き戦乙女に師事しただけあって彼女は強い。

ロゼ「騎士姫様か……」

宿屋にいつまでも引きこもっても仕方がないので、ロゼはキャラバン隊に顔を出すことにした。今は別行動をしているが、彼らもレディレイクに来ている。

宿屋を出て滞在場所に向かう途中、突然街が騒がしくなった。

人波に任せて大通りに向かうと、すぐに護衛の兵士とアリーシャの姿を見つけることはできた。街の人に手を振ったり声を掛けたり、移動ばかりの長旅だったのにアリーシャは民に疲れた様子を見せない。

こんな有り様では自分の家に帰るだけでも一苦労だろう。屋敷に行くのは明日でもいいかもしれない。
66 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:31:29.78 ID:/DIFFN/J0
そう思って踵を返す瞬間、

アリーシャ「ロゼ!」

名前を呼ばれて振り返ると、アリーシャが馬を降りて駆け寄ってきた。

人混みの中なのによく見つけたものだと感心する。

アリーシャの姿を見るのはラストンベル以来なのに、彼女の様子に違和感はない。彼女の気持ちを知って以降も、何も変わっていないのだ。

ロゼ「……あたし、馬鹿だなあ」

今までもアリーシャはこんなに好意を向けてきていたのかと、胸の奥から温かいものが込み上げた。全く気付かなかったどころか、彼女の気持ちを疑ってすらいた。そのやましさをかき消すほどに嬉しかった。
67 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:33:07.64 ID:/DIFFN/J0
きっと自分も同じような顔をしている。仲間達が呆れる気持ちがなんとなく分かった気がする。

ロゼが軽く両手を広げると、アリーシャはその意図を察してその腕の中に飛び込んだ。

ロゼ「おかえり、アリーシャ」

アリーシャ「ロゼ。ただいま」

愛しさに頬をすり合わせる。本当は柔らかくて温かい感触を手放したくなかったが、すぐに体を離して向かい合う。

アリーシャ「王宮に報告をして夕方までには戻るつもりだから。良かったら天族の方々も一緒に屋敷に招待したい」

ロゼ「今ザビーダとエドナが外に出てるんだ。だから気を遣わないで。疲れてるんだから帰ったら今日は休みなって」

よく見れば顔色があまり良くない。単純に疲れているのだろう。やっと自宅に戻るのに天族なんて呼んだらアリーシャが気を張ってしまう。
68 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:35:04.25 ID:/DIFFN/J0
アリーシャ「ダメなの?」

ロゼ「ダメとかじゃなくて。あたしが色々引き連れて行ったらあんたを余計疲れさせるっしょ」

心配して言っているのに、アリーシャは眉を下げて不満気に口を尖らせた。

ロゼは、仕方ないなと息を吐いた。

ロゼ「じゃあ、あたしだけでもいい?」

アリーシャの顔に笑顔が戻った。

何故か初めてスレイを通して話した頃の堅苦しい態度を思い出し、ロゼは小さく吹き出した。

あの時はこんなふうに人懐っこく笑う人だなんて思ってもいなかった。そしてそれを可愛いと思うことも想像していなかった。
69 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:37:01.86 ID:/DIFFN/J0
アリーシャ「どうかした?」

ロゼ「どうもしないよ。夕方までに行けばいいのね」

アリーシャ「うん。もし私がいなくても侍女には伝えておくから先に待っていて」

ロゼ「はいよ。まだ忙しいんでしょ」

離れた場所で待つ衛兵を見やると、アリーシャもその視線を追い、公務の顔に戻った。

アリーシャ「早く終わらせてくるから」

ロゼ「いってらっしゃい」

ロゼが手を振ると、アリーシャは王宮の方へと歩き出した。

その背中を見送り、ロゼもその場を離れる。そしてほとんど暇つぶし目的でキャラバン隊に顔を出した後、ロゼは宿屋の自室に戻った。
70 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:39:28.32 ID:/DIFFN/J0
そこではライラとミクリオが二人で天遺見聞録を見ていた。ミクリオは探究心から、ライラは昔の旅を懐かしんで読んでいたのだろう。

ロゼ「ねぇ、あとでアリーシャの家に行くから夕飯いらな、おいやめろその顔」

ついにか、という声が聞こえてきそうなふたりの表情に先手を打つ。

ミクリオ「じゃあ今日はあっちに、いたっ、ライラなにす……」

ライラ「ロゼさん、遅くなりそうならお風呂に入ってきたらどうです?」

ロゼ「ん?ああ、そうだね、ちょっと早いけど時間ならあるし」

妙な小競り合いを不審に思いながらも、流されるまま同意する。

ミクリオを置き去りにしてロゼとライラは大浴場に向かった。
71 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:41:08.07 ID:/DIFFN/J0
ロゼ「あのさあ、あたしってそんなに分かりやすい?」

早い時間の大浴場には他には誰もいなかった。

おかげでロゼが独り言を言っているように見えても気にしなくて済む。

ライラ「何か悩みごとでも?」

ロゼ「悩みってほどじゃないけど、あの子、分かりやすいから見てて恥ずかしい」

ライラ「かわいらしいじゃありませんか」

ロゼ「それあたしにも言ってる?」

ライラ「ええ」

威嚇のつもりで放ったロゼの言葉を、にっこりと笑って打ち返すライラ。
72 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:42:52.02 ID:/DIFFN/J0
顔が熱くなるのはのぼせたからだと言い聞かせ、ロゼは肩まで浸かった体を起こした。

ライラ「嬉しくないんですか?アリーシャさんの気持ちや態度」

ロゼ「聞くなって。どうせ分かってんでしょ」

ちらりとライラを見ると、彼女は満足そうに笑っていてなんだか悔しい。どう答えるかも彼女の思い通りなのだろう。

身近に感じていても彼女は何百年、おそらくそれ以上、この世界を生きてきた。ロゼとは経験値が遥かに違うはずだ。

ライラ「ロゼさんは考え過ぎるのは向いてませんし、難しく考えない方がよろしいかと」

ロゼ「その通りなんだけど、バカにしてる?」
73 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/30(水) 23:44:19.89 ID:/DIFFN/J0
ライラ「いえそんなつもりは!」

慌てて首を振るライラ。

ロゼ「ライラは好きな人いないの?ザビーダとかノルミンとかによく口説かれてるよね」

ライラ「ロゼさんはあの方々を恋愛対象として考えますか?」

ライラが生気のない目をロゼに向けた。

ロゼ「あたしが悪かったわ」

ロゼはため息混じりに告げて、また肩を湯船に浸けた。
74 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:00:14.20 ID:Vysv1cnD0
---------+++++++----------

宿屋を離れたのは約束よりもまだ早い時間帯だった。

どのくらいの時間に行っていいものかと考えて、とりあえずは明るいうちにアリーシャの屋敷に向かうことにした。

ロゼ「そういや、アリーシャん家に何しに行くんだっけ」

貴族街への階段をのろのろと上りながらロゼはぼんやりと考えた。

もちろん誘われたからだが、今まで彼女の屋敷に呼ばれた時には何をしていただろうと空を仰いだ。

今までは必ずと言っていいほど用件があった。何かを頼まれたり頼んだり、手土産を持って行ったり。

ロゼ「いつもアリーシャが頼みごとしてくるし、ないならないであたしがお土産を……」

ロゼは階段の途中で立ち止まり、顔を片手で覆った。
75 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:02:38.26 ID:Vysv1cnD0
ロゼ「アリーシャもあたしもおんなじことしてんじゃん」

お互いに会うための言い訳を繰り返していたことにやっと気が付いた。

深呼吸をしてロゼはまた歩き始める。今はとにかくアリーシャに会いたかった。

アリーシャの屋敷に着いて衛兵と話し始めると、テラスにいたアリーシャがこちらに手を振った。

ロゼ「もう帰ってたの?」

アリーシャ「思ったより早く解放してもらえたよ」

テラスに上り、アリーシャと向かい合うと彼女はすぐに目を逸らしてしまった。

そのまま背を向けて屋敷内に案内される。
76 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:08:23.28 ID:Vysv1cnD0
広いテーブルについて料理が出来上がるまでの間、少しだけ雑談をした。

周りを見ながら、相変わらず豪勢な家だとロゼは思った。ここに来るたびに内装や置物に感心して、商売根性からつい品定めをしてしまう。

そしてこういう時にも、アリーシャとは住む世界が違うんだと再確認する。

ロゼ「アリーシャ、ほんとに頑張ってるもんね」

運ばれてきた食事に手を付けながら、ロゼはぽそりと呟いた。心の中でとどめておくはずがつい漏れ出てしまう。

アリーシャ「なんのこと?」

ロゼ「全部。お姫様で政治家で騎士で女の子で。全部うまくやっててすごいよ」

そう言うと、アリーシャの目がほんの少しだけ曇った。
77 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:09:29.35 ID:Vysv1cnD0
アリーシャ「うまくはできてないよ。まだまだ悔しい思いをすることもあるから。ロゼは導師で世界を救った一人。セキレイの羽の頭領で。その、あとは、女の子としても魅力的だと思う。私にとってはロゼの方こそすごいって思ってるよ」

アリーシャの称賛の言葉に、ほんの少しだけ後ろめたい気持ちを覚えた。ロゼはアリーシャに風の骨の仕事は伝えていない。

元々暗殺の依頼をメインに生活をしてきたわけではない。災禍の顕主を倒しても、戦争の後始末は続く。それぞれの国の混乱が落ち着くまで、依頼を受けるつもりはない。

アリーシャを狙っていた時期があったせいで、負い目もあった。また彼女を狙うような依頼がいつかはあるかもしれない。そう思うと風の骨のことは彼女には言えないでいた。
78 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:11:25.91 ID:Vysv1cnD0
ロゼ「アリーシャ、ごめん。あたしちょっと無神経なところがあるから。深く考えないで喋ってることがあるから気にしないで」

アリーシャが本来は清廉潔白の真面目な性格をしているのはよく知っている。それがどんなに汚れても民のためであれと、気持ちを押し殺していった様子もよく知っている。

簡単な言葉では済ませられないことは分かっていた。

アリーシャ「ロゼ、大丈夫?」

アリーシャが心配そうにロゼの顔を覗きこんだ。

ロゼ「なにが?」

アリーシャ「珍しく考え込んでるから。らしくない」

ロゼ「あんたまでそんなこというか。バカにしてる?」
79 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:12:47.55 ID:Vysv1cnD0
アリーシャ「またそんな言い方して」

ロゼはまた憎まれ口で返してしまっていることに気付いて口を噤んだ。やはり好意を認めてもこんな調子でアリーシャに接してしまうようだった。

食事が終わり、満腹感に心地よさを感じてロゼはめいっぱい伸びをした。

ロゼ「ごちそうさま。やっぱりここの料理美味しいよね」

メニューを思い返しながら、自分では作れないからと手を振った。

アリーシャ「ロゼもなにか作ってくれたらいいのに」

ロゼ「あたしは料理のたびに味付けを注意されるからダメだよ」

アリーシャ「野宿の時はちゃんとしてくれたじゃない」
80 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:14:58.95 ID:Vysv1cnD0
ロゼ「そう?あれ適当だよ。たまたまうまくいっただけでたぶん同じのは作れないと思うよ」

ふたりで声を上げて笑い、同じタイミングで黙る。

侍女が食事の後片付けをしていくのを眺めて、これからどうしようかと悩む空気が流れた。

まだ外は明るく、活動の時間であることが知れた。

ロゼ「もう少し、一緒にいたいんだけど。まだ時間いい?」

先に口を開いたのはロゼだった。

すぐにアリーシャの 目が素直に輝いたので、ロゼは吹き出しそうになった。

ロゼ「アリーシャの部屋にいこっか」
81 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:19:59.65 ID:Vysv1cnD0
席を立ち、アリーシャの案内で彼女の部屋に向かう。

斜め前を歩くアリーシャに距離を感じる。いつもこんな客人のような扱いを受けていただろうかと疑問を抱いて、ロゼは居心地の悪さを覚えた。

部屋に通されて、パタンと閉じる扉の音を合図に空気の流れが止まった気がした。

ふたりきりの空間になぜかロゼは緊張してしまう。

しかしアリーシャを見れば、いつも通りの涼しい顔をしている。

アリーシャ「適当に座ってくれていいから」

言われるまま、ロゼは近くにあった椅子に腰掛けた。

テーブルにはティーセットがあり、寝る前にでもくつろぐために使用しているのだろう。
82 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:23:39.69 ID:Vysv1cnD0
アリーシャは向かいに座ると思いきや、離れた位置にあるソファに浅く腰掛けた。

意外に思っていると、アリーシャが微笑んで口を開いた。

アリーシャ「ロゼ、ありがとう。今まで通りに接してくれて」

頭に疑問符が浮かべるロゼに向けて、アリーシャは続けた。

アリーシャ「ラストンベルでのこと。あの後、嫌われてたらどうしようってちょっと思ってたから」

アリーシャの穏やかな口調に、ロゼは首を傾げて少しの間考え込んだ。そして勢いよく席を立つ。

ロゼ「ちょっと待て!」

アリーシャの近くに寄って、彼女の顔を覗き込んだ。

なぜこんなに離れた場所に座ったのか。なぜ澄ました顔を続けるのか。
83 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:31:17.99 ID:Vysv1cnD0
ロゼ「もしかしてあたしの気持ち、伝わってないの?」

アリーシャ「えぇっ?」

アリーシャは裏返った声を上げて体を引いた。

ロゼ「あんなにキスしたのに?」

アリーシャの頬に手を添えると、火が付いたように彼女の顔が真っ赤に染まった。

アリーシャ「あっ、あれは、ロゼが私を泣き止ませるために………」

ロゼ「そんな女たらしなことしないよ!まさかあたしが誰にでもあんな慰め方すると思ってんのか!」

アリーシャ「だって…… 」

アリーシャがまた泣きそうになるのを見て、ロゼは一歩下がって息を吐いた。
84 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:32:59.94 ID:Vysv1cnD0
ロゼ「あー……いや、考えてみたらちゃんと言ってないわ。ごめん、あたしが悪い」

アリーシャの目をしっかりと見つめると、彼女は恥ずかしそうに顔を背けたがすぐに視線をロゼに戻した。

ロゼ「あたしもアリーシャが好きだよ」

言い含めるように告げると、アリーシャの目から大粒の涙がポロリと落ちた。

ロゼ「結局泣くの?」

アリーシャ「いや、なんかびっくりしてしまって……」

アリーシャが自分で目を二、三度拭うとそれはすっかり止まっていた。

ロゼはアリーシャの隣に座って身を寄せ、やっとたどり着いた距離感に安心する。肩が触れてアリーシャの体温が伝わってくる。
85 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:34:22.79 ID:Vysv1cnD0
きっとアリーシャも同じことを感じているだろうと、落ち着いた気持ちで考えていた。

ロゼ「アリーシャ、キスしていい?」

アリーシャ「もう泣いてないけど」

ロゼ「そうじゃなくて」

鈍い女だなと考えて、自分も同じようなものだと思い直す。

ロゼ「こないだの。分かってなかったんでしょ」

何も好意が伝わってなかったことが不満だった。

もう一度ちゃんとしたキスをしたい。

やっと彼女もその意味に気が付いて目を見開いた。
86 : ◆U8ABys6DMo :2022/03/31(木) 23:35:59.59 ID:Vysv1cnD0
アリーシャ「待って、私、今すごくどきどきしてて……」

目を逸らそうとするアリーシャの頬にロゼが手を添える。

ロゼ「そんなの治まるまで待ってられない」

体ごとアリーシャに向けて、戸惑う彼女に構わず顔を寄せていく。

アリーシャ「ロゼ、待ってって……」

ロゼ「待たない」

目を閉じて唇の感触をじっくり味わう。

前は夢中で口付けていたから、この柔らかさをしっかりと感じるのは初めてだった。

十分にアリーシャを感じたロゼは、一度身を引いた。アリーシャがどんな顔をしているのかもちゃんと見ておきたかった。
87 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/02(土) 22:57:47.52 ID:eXVwzk5o0
ロゼ「大丈夫?アリーシャ」

アリーシャは思ったより落ち着いた様子で、自分の唇に触れていた。

アリーシャ「ロゼの唇、柔らかい」

ロゼ「いまさらなに」

突然の指摘に思わず冷たい言い方をしてしまう。

しかしアリーシャは気を悪くした様子もなくロゼの顔を見ていた。

アリーシャ「ロゼも赤くなるんだ」

ロゼ「なっ!」

咄嗟にロゼは顔を手で口元を隠した。確かに顔が熱い。

アリーシャ「私からもキスしていい?」
88 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/02(土) 23:06:22.78 ID:eXVwzk5o0
アリーシャが下から覗き込んでくる仕草に、胸が高鳴るのを感じた。

ロゼ「……いいよ」

はっきり告げられるとこんなに照れるものかと思ったが、つい先程アリーシャに強引にキスをしたロゼがそれを表情に出すのは憚られた。

アリーシャは顔を近づけて来るのと同時にロゼの胸に手を当てた。

その仕草と伝わる体温に、また鼓動が高鳴る。

唇が触れて間もなく、ぬるりと舌が入り込んでくるのを感じた。

ロゼ「んんっ」

驚いて身を引こうとするが、アリーシャが強引に体を寄せてくる。
89 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/02(土) 23:53:36.38 ID:eXVwzk5o0
逃げることができず、ロゼは口の中にアリーシャの舌が侵入してくるのを戸惑いながら受け入れた。

なめらかな動きに頭がぼうっとしてきて、徐々に戸惑いが薄れると今度は次第に気持ちよくなってくる。

気付かないうちにロゼもアリーシャの動きに合わせて舌を返していた。

交わる吐息が熱い。唾液が絡んで唇が濡れてくるのを感じながら、構わずに続ける。何度か唇をすり合わせていくうちに、口の端からたらりと粘液が溢れた。

息苦しくなってロゼが唇を離すと、垂れた唾液をアリーシャが舌で拭い取る。

お互いに呼吸は乱れ、気が付けばアリーシャはロゼに覆い被さるくらいに身を乗り出していた。

ロゼ「あ、アリーシャ、激しすぎるって……」
90 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/02(土) 23:54:54.09 ID:eXVwzk5o0
ロゼが震える声で呟くとアリーシャが身を引いた。

彼女は興奮気味に頬を染めてロゼをじっと見つめている。

アリーシャ「ロゼもすごくどきどきしてる」

胸に触れた手に力が入るのが伝わってくる。

ロゼ「当たり前だ」

また口調が強くなってしまったが、アリーシャはもうロゼのこんな態度がただの照れ隠しだと分かっているだろう。
 
きっとまだ頬の紅潮も収まっていない。

アリーシャ「さっきは嫌われるのが怖かったと言ったけど、本当はね、少し期待してた」
91 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/02(土) 23:55:55.13 ID:eXVwzk5o0
アリーシャの微笑む目がいつもより大人っぽく感じられた。白い肌が透き通るように綺麗でピンク色に染まる頬が艶めかしく映る。

ロゼ「期待?」

アリーシャ「ラストンベルで、ロゼが部屋に戻った後、ライラ様が来て少しだけ相談に乗ってくれたんだ。ロゼの事は心配しなくても大丈夫、私を大切に思ってくれているからと教えてくれた」

確かにあの後ライラの姿がしばらく消えて、いつの間にかまた戻ってきていたのをロゼは思い出していた。

ロゼ「ライラってそういう人なんだよね」

いつも仲間のことを気にかけてくれている。茶化しながらもヒントを与えて自分で答えを出すのを待っている。
92 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/02(土) 23:57:30.85 ID:eXVwzk5o0
ロゼ「じゃあなんであたしだけじゃなくてみんなも食事に誘ったの?さっきだってあんまりあたしに近づこうとしなかったし」

アリーシャ「ロゼを怖がらせたくなくて」

ロゼ「怖がるって、あたしが?」

アリーシャが体を起こす。ロゼもその動きに合わせて体勢を整えた。

アリーシャ「性的に見られていると知ったら、何をされるかって不安になるかなって」

目を伏せるアリーシャにロゼは疑問符を浮かべた。

ロゼ「嫌なら逃げるか殴り飛ばせばいいじゃん」

アリーシャ「ああ、まあ、そうだね。ロゼならそう言うよね……」

呆れた声が返ってきて緊張感が薄れる。

また無神経なことを言ってしまったようだ。
93 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/02(土) 23:58:53.01 ID:eXVwzk5o0
ともあれ、アリーシャが何を言いたいのかは伝わってきている。

どう反応しようかと考えながら、ロゼは前髪をくしゃっと掴んだ。

ロゼ「ありがと。アリーシャはあたしを想ってくれてるんだよね」

傷付けたくないというアリーシャの優しさがとても嬉しかった。保身ばかり考えて逃げ腰になっていた自分が恥ずかしくなる。

アリーシャ「ロゼも緊張してたから気を遣ったのに」

口を尖らせるアリーシャにロゼは苦笑いをした。落ち着きがない様子はやはり伝わっていたようだった。

ロゼ「違うよ。緊張してたのはあたしがアリーシャに下心を持ってたから」
94 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/03(日) 00:00:08.59 ID:mgMWc/vn0
ソファを立ち、アリーシャに向き合う。

ロゼ「もう遠慮しなくていいよね」

アリーシャ「ロゼ?」

意味を理解できず、アリーシャは不思議そうにロゼを見上げた。

そんな彼女の手を引いて立ち上がらせる。

頬に軽く口付けながら抱きしめて、ロゼはアリーシャの耳元で囁いた。

ロゼ「ベッド、行こ」

ぴくんとアリーシャの体が跳ねるのを感じた。心臓の音が体に響いてくるがどちらのものとも知れない。
95 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/04(月) 21:01:34.21 ID:bYRUa6ZQ0
アリーシャから石鹸の匂いと高めの体温を感じる。旅から帰ったばかりだから、汗を流してきたのだろう。

アリーシャ「……うん」

弱々しく、女の子の声でアリーシャが頷いた。

一人で寝るにしては大きすぎるベッドにアリーシャを座らせて、軽く口付けをする。

始めはゆっくりと。段々濃厚にして、ふたりで口内を探り合う。そしてキスを続けながら体に触れていく。

鍛えられた体はもっと固いイメージがあったけれど、アリーシャの体はしなやかで柔らかかった。服の中に手を入れてなめらかな肌の感触も確かめていく。
 お互いに服を脱がせ合って、すぐにどちらも上半身と下半身、それぞれに薄い布を一枚残すだけになった。
96 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/04(月) 21:03:20.87 ID:bYRUa6ZQ0
明らかに緊張した様子でアリーシャはロゼを見ている。

ロゼも今までにないくらいに緊張していた。走り回った後みたいに心臓がバクバクと跳ねている。

うまくできるだろうかと考えながら、ロゼはアリーシャのインナーの裾に手をかけた。

ロゼ「いい?」

尋ねるとアリーシャはロゼの手に自分の手を添えて小さく頷いた。

ロゼは思わず喉を鳴らし、ゆっくりと服をめくった。

真っ白な腹が見えて、その先の膨らみがあらわになっていく。小さな突起が見える瞬間、アリーシャがそれを隠そうと手を出してきたがそっと制止する。

ロゼ「見せて」
97 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/04(月) 21:04:59.94 ID:bYRUa6ZQ0
するりとめくり上げてその布を奪い取る。形の綺麗な双丘がむき出しになると、ロゼの中で不思議な衝動が湧き上がってくるのを感じた。

一緒に旅をしている間、何度かアリーシャの体を見る機会はあったがこんなにまじまじと見つめたのは初めてだった。

腰のくびれや脚の曲線、肌の柔らかさにアリーシャが魅力的な女性であることを改めて意識する。

アリーシャをベッドに横たわらせて、その上に跨る。恥ずかしがる彼女に合わせて自分のシャツも脱ぎ捨てた。

まるで魅せつけるようで恥じらいを感じたがそれはアリーシャも同じだ。

アリーシャ「ロゼの体、綺麗」

艶めかしい声に鼓動が大きくなるのを感じた。
98 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/04(月) 21:06:02.47 ID:bYRUa6ZQ0
視線が上から下へと移動し、じっくりと眺められているのに気付いてさらに羞恥心が込み上げてくる。
 
そしてロゼも同じことをしていることに気付いた。

ロゼ「アリーシャだって」

体を眺めながら所々に小さな傷があるのを見つける。

きっと日頃の訓練や実戦で付いたものだろう。決して生半可に騎士姫なんて呼ばれていたわけではないと知れた。

ロゼにも傷は数えきれないほどにあった。以前、ペンドラゴで重傷を負ったこともあったがそれはライラが綺麗に治してくれた。今思えば大きな傷が残らなくて良かったと思う。アリーシャにもそんな傷がついたりしたら嫌だなとふと考えた。
99 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/04(月) 21:07:19.40 ID:bYRUa6ZQ0
ロゼがアリーシャの首筋に唇を這わせると体がぴくんと揺れた。

ロゼ「ほんとはあたし、もっと前からアリーシャに言わなきゃいけなかった。アリーシャが告白してくれるより前にあたしも好きだって思ってたから」

耳たぶを喰んで、耳から首にかけて順番に口付けていく。返答はなかったがロゼは続けた。

ロゼ「嫌われるのが怖くてずっと黙ってて、あたしから告白なんて考えもしなかった。アリーシャが告白してくれて、あたしが、いつからか分からないくらい前からアリーシャを意識してたって気付いたんだ」

アリーシャの手を取り、指を絡めると、彼女は緩やかに握り返してきた。首から鎖骨を舌でなぞるとアリーシャの口から息が漏れた。
100 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/04(月) 21:08:37.59 ID:bYRUa6ZQ0
ロゼ「ここが気持ちいい?」

アリーシャ「あっ」

舌でぐりぐりと鎖骨の下を押し込むと声が上がった。初めて聞くアリーシャの高めの声。

絡めた指がロゼの手の甲に食い込んで、素直な反応に気分が高翌揚する。

ロゼ「ごめんね。アリーシャばっかり頑張らせて。気持ち隠しててごめん」

体を起こしてアリーシャの顔を覗き込むと、彼女は微笑んでいた。

アリーシャ「ロゼが私のことを想ってくれてたのはちゃんと分かってたよ。いつも会いに来てくれて、私のことを心配してくれて、不安にさせないようにしてくれてたの、分かってるよ」

ロゼ「そんなの、あたしは分かんないよ。あたしは思うままにアリーシャに接してただけで」
101 : ◆U8ABys6DMo :2022/04/04(月) 21:10:18.55 ID:bYRUa6ZQ0
アリーシャ「きっとみんなは気付いてたよ。ずっと一緒にいる人たちも私と同じことを言うと思う」

少し考えてロゼはがっくりとうなだれた。

確かに彼らはそう言うだろう。分かりやすいと何度言われたことか。

ロゼ「アリーシャだってあたしのこと好きすぎて恥ずかしいくらいなんだけど」

アリーシャ「ええ!?」

悲鳴を上げるアリーシャに、この子も自覚がなかったのかとロゼは苦笑した。

再びアリーシャに被さって体に唇を落としていく。アリーシャも興奮しているのか、時折声を我慢し切れずに息が漏れている。

ロゼ「声、聞かせて」
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