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【テイルズオブゼスティリア】ロゼ「アリーシャがいるなら」
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102 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/04(月) 21:12:46.43 ID:bYRUa6ZQ0
鎖骨の真ん中を指でなぞりながらゆっくりと下ろし、柔らかく膨らんだ胸に手を伸ばした。
アリーシャ「ロゼ……っ」
不安げに見つめてくるアリーシャの唇を奪い、優しく乳房を揉んでいく。
唇の間に舌を割り込ませて歯列をなぞる。指が一番先にある小さな突起をつまみ上げると、アリーシャがやっと声を上げた。
口付けたままの悲鳴は脳内に直接響いてくるみたいで、ロゼにも興奮を与えてくる。
どんどんアリーシャの体が愛おしくなって、ロゼは反対側の先を口に含んだ。
アリーシャ「は……あッ、ん」
声が出るのと同時に体も揺れた。舌先で膨らみを押し込んで、何度も転がし、キスをして吸い付いていく。
その度にアリーシャは体をよじって声を抑えようと、慣れない刺激に耐えていた。
103 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/04(月) 21:14:03.27 ID:bYRUa6ZQ0
アリーシャの身体が紅潮してきて、ロゼも息苦しさを感じていた。汗ばむほどに体が熱くて、下腹部が疼いている。
同じタイミングでアリーシャが膝をすりあわせた。彼女がロゼ以上の興奮を覚えていることに気付いた。
ロゼはアリーシャの下着に手をかけて、彼女の目を見つめた。
アリーシャもロゼが何をしようとしているのかは分かっているはずなのに、恥じらいで動けないでいる。
ロゼ「アリーシャ。腰上げて」
そう促すとほんの少しだけアリーシャが腰を浮かせた。下着を通すには十分で、ロゼは素早くそれを抜き取り、太腿を撫でた。
ずっと目を伏せたままで何も言わないのは、羞恥心に必死で耐えているからだろう。
104 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/04(月) 21:15:23.94 ID:bYRUa6ZQ0
体を起こして、膝の間に体を割り込ませようとすると、予想通りにアリーシャはそこを手で隠した。
ロゼはアリーシャの手にそっと自分の手を添えて、優しく掻き分けて行く。
反対側の手で膝を開くとアリーシャは固く目を閉じて、両腕で顔を隠してしまった。
羞恥に耐えている姿も可愛くて、もう少し眺めていたかったが、ロゼも自分の興奮を抑えることができなくなっていた。
初めて見るアリーシャの女性部分。赤く充血して花弁は小さく閉じている。透明な粘液が流れ出していて、彼女の興奮状態を物語っていた。
ロゼは指の腹でぬるぬるとした体液を塗り広げて、その濡れ具合を確かめる。
撫でるたびに体が震えてひくひくと花弁が揺れた。触れた場所から熱を感じて理性が時々途切れそうになる。
105 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 21:48:20.34 ID:egBHIxB20
アリーシャ「ろ、ぜ……」
はっと顔を上げるとアリーシャが潤んだ瞳でこちらを見ていた。恥ずかしさと興奮に、どうしていいか分からず戸惑っている。
アリーシャの体を気遣うのを失念していた。ロゼは「ごめん」と小さく呟いてアリーシャの頬を撫でた。
ロゼ「ゆっくりするから。痛かったら言って」
自分でも初めて聞くような優しい声に、アリーシャへの気持ちが隠せないでいることを自覚する。
アリーシャは頬に添えられたロゼの手を取って、愛しげに抱きしめた。その安心した表情を確かめると、ロゼは中指をゆっくりとアリーシャの中に差し込んだ。
アリーシャ「っ……」
息が詰まるような仕草に侵入を止める。
ロゼ「痛い?」
106 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 21:50:34.98 ID:egBHIxB20
ロゼの問いにアリーシャがわずかに首を振る。
アリーシャ「分かん、ない……、でも変な、感じ……」
熱い肉壁がきゅっと締まり、ロゼの指を阻んでくる。
今すぐにでも押し込みたい欲望を抑えながら、アリーシャの頬や唇を撫でた。
ロゼ「力抜ける?息、吐いて」
アリーシャがゆっくりと息を吐くと、下腹部の硬直が解けていくのが分かった。無理のないようロゼはアリーシャの中を進んでいく。
アリーシャ「痛っ……」
指が完全に入りきると、アリーシャが身をよじった。
ロゼ「アリーシャ、辛い?」
107 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 21:53:55.49 ID:egBHIxB20
アリーシャ「大丈夫、だから……」
ロゼ「無理しないで」
指の動きを止めてアリーシャが落ち着くのを待つ。
女である二人には性行為といってもここまでのことしかできない。それでもとても大事なことだと思っている。
ロゼは体の奥深くから愛情が溢れてくるのを感じた。
たまらなくなってアリーシャの唇に舌を這わせた。誘われたようにアリーシャも舌を出してきて、何度も激しく舌を絡めていくと彼女から息と声が漏れ始めた。
触れた下の粘膜からとろりと温かいものが流れ出したのを感じる。中がひくひくと痙攣して、ロゼの指を締め付けている。
108 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 21:55:34.04 ID:egBHIxB20
アリーシャ「ロゼ……、もっと触って……」
腰が僅かに動いた。
衝動的に反応してしまいそうな体を理性でなんとか抑えこむ。
アリーシャの色気の溢れる声のせいで、ロゼは熱い気持ちを燻らせていた。さっきからずっと息苦しい。アリーシャから感じる女の匂いが脳を狂わせてくる。
濡れた瞳でこちらを見るアリーシャをもっと激しく攻めてみたいと思ってしまう。
気持ち悪いくらいに自分の中心が湿ってきているのも分かっている。
めちゃくちゃに指を動かしたいのを我慢して、性急な興奮を吐息で押し出した。
アリーシャ「ロゼ、苦しいの?」
ロゼ「あんたがエロ過ぎんだって」
アリーシャ「ええっ?」
109 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 21:57:46.92 ID:egBHIxB20
ロゼの返答に気が緩んだのか、アリーシャの中に余裕ができたのを感じて、ロゼは肉壁に指を擦りつけた。
アリーシャ「あっ、ああっ」
腰が浮いてアリーシャの声が高くなった。指を動かすたびに呼応する嬌声がロゼの感覚を麻痺させていく。彼女の声を聞いているだけで気持ちよくなってくる。
痛みを感じていないかと、そのままゆるゆると続けていく。
空いた手を胸に滑らせてまた先をいじった。しかしそれに気付かないくらいにアリーシャは下腹部の強い違和感に喘いでいた。
胸の奥が締め付けられる。可愛くて綺麗でいやらしいアリーシャにロゼの意識が奪われていく。
指の動きを緩めないまま、ロゼはアリーシャの体の至るところに吸い付いた。胸も腹も太腿にも、目立たない場所に自分の跡を付ける。
110 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 22:00:22.05 ID:egBHIxB20
体を起こしてアリーシャを眺めると、すっかり彼女も上気し切っていて、ロゼの指に合わせて腰を揺らしている。
ロゼはアリーシャの膝の裏を掴んで、ぐっと押し上げた。
アリーシャ「やっ……ロゼ、だめっ」
女の部分がこちらを向く。愛液が奥から次々に流れ出して彼女の股をひどく濡らしている。きっとアリーシャはこんな姿を見られるのも恥ずかしいはずだったが、ロゼはそれがたまらなく愛おしくてもっとアリーシャを感じていたかった。
指を入れたまま、アリーシャの陰核を包む皮をそっと開いた。
真っ赤に充血して膨らんだそこを唇で咥える。
アリーシャ「ああっ、そこ、っはぁ……!」
111 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 22:02:19.96 ID:egBHIxB20
ロゼはよじる体をしっかり支えてアリーシャが動けないようにするとさらに陰核を舌で攻め立てた。
唾液と愛液を混ぜて、傷付けないよう舌先で転がす。アリーシャの匂いが理性を奪い取り、ロゼは夢中でそこを攻め続けた。
声を出さないようにアリーシャは自分の口元を押さえているが、こもった声はロゼの耳にもしっかり届いている。
ロゼ「ふっ……ぅんっ!」
指の動きを小刻みにしていくとアリーシャの息が短く切れていく。中心からは体液が流れ続けて部屋中に粘りのある水音が響いている。
この水音とアリーシャの悲鳴に近い嬌声が、ロゼの欲望を掻き立てる。
彼女の表情が見られないのが残念だったが、腰をびくびくと揺らしているその反応だけで頭の中がしびれていくように感じた。
112 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 22:03:49.88 ID:egBHIxB20
アリーシャが自分の行為で気持ち良くなっているのがたまらなく嬉しい。
アリーシャ「は、ぁんんっ!」
アリーシャの体が硬直し、腰が何度か跳ねたあとに力なくベッドに沈んだ。
絶頂したのだと分かるとロゼはアリーシャから指を抜いて、一息ついてから彼女の顔を覗きこんだ。
アリーシャは息を切らせて、ほとんど閉じた目をぼんやりとロゼに向けた。
いつもとは違う様子のその姿に、罪悪感が芽生える。よくない感情でアリーシャを穢してしまったような気分だった。
ロゼ「大丈夫?」
気遣いの声を掛けながら、アリーシャに触れるために指の愛液を舐め取ろうとする。
113 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 22:05:26.30 ID:egBHIxB20
その時、行為を終えて弱っているはずのアリーシャが手をがっしりと掴んできた。
「汚いからだめ!」
「汚いって……」
さっきまで直接舐めていたのに、今更何を言っているのか。
羞恥で目が潤んでいる様子を見てそれ以上口にするのはやめておいた。
アリーシャはサイドテーブルに置いてあったハンカチを取って、ロゼの指を丁寧に拭いた。
気の済むまで任せた後ロゼはそれを預かり、アリーシャの膝を開いた。
アリーシャ「ロゼ!?」
ロゼ「だってそこ濡れたままなの気持ち悪いでしょ」
冷静に言い放って、そこを丁寧に拭いていく。愛液は秘部の周りはもちろんのこと、太腿の内側にも広がっている。
アリーシャ「じ、自分でやるから!」
114 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/05(火) 22:07:25.89 ID:egBHIxB20
抵抗しようとするアリーシャを押さえつける。
ロゼ「あたしがやりたいんだけど」
アリーシャ「もう本当にいいから!」
押し問答をしていると、アリーシャがおもむろにロゼの下半身に目をやった。
アリーシャ「ロゼは濡れてないの?」
ロゼ「別に、あたしは……」
ロゼはぎくりとした。その拍子に腕の力が緩み、アリーシャはそれを見逃さなかった。
アリーシャ「見せて。私もロゼの体、ちゃんと見たい」
アリーシャは体を起こしてロゼを組み敷いた。今度はロゼが押し倒される形になった。
さっき散々揉みしだいた双丘が目の前にあって、不思議な気持ちになる。
115 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 21:54:10.24 ID:K3EPN4Ib0
眼前に迫るそれがまた魅力的に見えた。手を伸ばしかけた時にふっと腰が浮いて、アリーシャがロゼの下着を剥ぎ取った。
ロゼ「ちょっと雑じゃない!?」
流れるような体重移動に羞恥心より先に突っ込みが出る。
アリーシャ「えっ、なにが?」
当の本人はなんとも思っていないようで、ロゼの抗議は彼女の無神経さの前に霧散した。
涼しくなった足の付け根にアリーシャが手を触れた。
アリーシャ「ほら。やっぱりすごく濡れてる」
116 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 21:55:57.26 ID:K3EPN4Ib0
ロゼ「やめてよ……」
分かっていてもわざわざ口にされると恥ずかしい。脚を閉じたくても、間にアリーシャが体を割り込ませていて動けない。
とにかく用だけ済めばそれでいいのだから、恥ずかしい時間を最小限にするため、ロゼは大人しくしていることにした。
アリーシャもロゼが観念したと悟ったのか、満足そうに笑っている。
一通りロゼの体を眺めて、アリーシャは興味深そうにロゼの中心に手を触れた。
形をなぞるように、開いた穴の外側を撫でているのがロゼにも分かる。恐る恐る触れる手付きが焦らしているように思えてもどかしい。
アリーシャ「ロゼのここ、震えてる」
ロゼ「変なこと言わないで…。…ていうか、そんなにじっくり見るな……」
117 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 21:57:43.08 ID:K3EPN4Ib0
アリーシャがロゼの股の間に顔を寄せていく。
ロゼ「ちょっと待って!何する気!?」
アリーシャ「なにって、綺麗にしてあげようと……」
ロゼ「拭けばいいんだって!あんた舐めようとしてるでしょ!」
手で股を覆い隠すとアリーシャが不満そうに口を曲げた。
アリーシャ「ロゼも舐めてた」
ロゼ「お姫様がすることじゃない」
アリーシャ「今更身分差別?」
ロゼの手を引き剥がし、またアリーシャはそこをじっくりと眺めた。
118 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 22:06:50.05 ID:K3EPN4Ib0
きっと何を言っても彼女は引かないだろう。
ロゼ「そういうわけじゃないけど、なんかすごく背徳感が……」
構わずアリーシャがもう一度顔を寄せた時には、ロゼも何も言えなかった。すぐにぬるりとした生温かい感触が秘部の周りと太腿に這い回り始める。
ロゼ「色んなとこ、舐めすぎ……っ」
アリーシャ「だっていっぱい濡れてるから」
ロゼ「うぁっ、やっ、ぁ」
ぴちゃぴちゃと水音が聞こえる。
アリーシャに触れられていると思うと、くすぐったい感覚が段々興奮に変わっていく。
ロゼ「んっ、ぁっ」
ロゼの体が無意識にはねた。
119 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 22:09:05.98 ID:K3EPN4Ib0
中に舌を差し込まれている。
ロゼ「なっ、なんで入れっ……!」
アリーシャ「ここからどんどん溢れてきてる」
舌が離れたかと思ったら、今度は指が入り込んできた。
ロゼ「は……っ、いっ、ぁあっ」
性急な動きに困惑しているうちに行為は進んでいく。
ロゼ「ちょっ……、ぁっ、がっつき過ぎだっ……」
アリーシャ「わかんない、ロゼ……!」
120 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 22:11:12.15 ID:K3EPN4Ib0
余裕のない声が聞こえる。息を乱すアリーシャが興奮しているのが見て取れた。理性がかなり飛んでいるように思える。
ぐりぐりと下腹部の裏を押し込まれるような感覚。
ロゼ「あっ、あッ、ぅんっ、く」
雑な動きに強い痛みがあったが、アリーシャが気付く様子はない。
頭の中までかき乱されているみたいで思考が麻痺してくる。痛みとは違う別の感覚に戸惑い、抵抗が出来ない。どうしていいか分からずに手でシーツを掻きむしっているとアリーシャが指を絡めた。
与えられる刺激が止み、ロゼは息をついた。
アリーシャ「ロゼ、爪痛めちゃうよ」
121 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 22:18:00.20 ID:K3EPN4Ib0
アリーシャのぬくもりに固まった手の力が抜けていく。よほど強く握ってしまっていたのか、指先の感覚が鈍くなっている。
アリーシャがロゼの手を持ち上げて、痺れた指先に口付けた。
少しは落ち着いたのか、彼女の動きがさっきよりは緩やかになっている。
アリーシャ「ごめん、なんか、我慢できなくて」
続けてアリーシャは身体に唇を落とし、ロゼの胸の先を口に含んだ。
ロゼ「ん、ふっ……ぁ」
ぬるい感触に背筋がぞわっと震える。また下腹部の奥でアリーシャが動くのを感じて腰がこわばった。
段々と大きくなる水音の中、他人の声みたいにロゼは自分の乱れた悲鳴を聞いていた。
122 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 22:19:16.48 ID:K3EPN4Ib0
その感覚がどのくらい続いたのか、ロゼは体の奥深くからじんわりと込み上げてくるものを感じていた。
下腹部の裏がびくんと痙攣した時、アリーシャが股の間に顔を寄せて、陰核を咥えた。
中を擦る指と、敏感な突起を吸う刺激に腰が浮いてしまう。
ロゼ「あっ、あっ、んんっ、ぅあっ」
視界がぼやける。断続的に与えられる快感に耐え続けたが、徐々に痛みを伴ってきた。
もうこれ以上は無理だと悟り、ぴりぴりと痺れる体をよじってアリーシャの手を掴んだ。
ロゼ「ごめ、ん……もう、限界……」
アリーシャは上気した目でロゼを見上げ、行為を止めた。
奥から指を引き抜かれる感覚に、びくりと腰が震え、ロゼは脱力して動けなくなった。
ロゼ「もー……綺麗にするって言ったじゃん……」
123 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 22:21:44.63 ID:K3EPN4Ib0
息を切らしてロゼは呻いた。
股の間がひどく濡れそぼっているのは触れなくても分かる。恐らくアリーシャの方も同じような状態になっているはずだった。
さっきまであんなにしおらしくしていたアリーシャが、まさかこんなにも理性の効かない生き物だとは思ってもみなかった。
アリーシャ「だってロゼがかわいいから」
ロゼ「アリーシャと違ってそういうの向いてないんだって」
アリーシャ「私だって向いてない」
ロゼ「はぁ?」
呆れた声を上げると、アリーシャは覆い被さる形でロゼに抱きついた。
肌が触れ合って直に熱が伝わってくる。
アリーシャ「ロゼ、好きだよ」
アリーシャの綺麗な声で名前を呼ばれるのが心地よかった。
絡みつくアリーシャの腕に力が入る。それに応えるようにロゼはアリーシャの背中に手を回して強く抱きしめた。
124 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/07(木) 22:23:45.05 ID:K3EPN4Ib0
---------+++++++----------
しばらくお互いの体温を感じているうちに眠ってしまっていたようだ。気が付いた時にはもう夜更けだった。
夜目の効くロゼは、月明かりの中でも十分周りがよく見える。
ベッドを降りようと身を返すと、肩に触れたアリーシャの手に力が入った。
ロゼ「アリーシャ、起きてたの?」
アリーシャ「ん、今起きた……」
ロゼはアリーシャの拘束を剥がそうとするが、彼女は動こうとしない。
ロゼ「服着なきゃ。風邪引くよ」
今の時間はまだそれほど気温は低くはなかったが、朝方は冷えるはずだ。
125 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/09(土) 15:09:07.57 ID:yuIbS2JU0
アリーシャ「ロゼがあったかいから大丈夫」
ロゼ「だめ。朝は寒いよ」
ロゼはアリーシャを引き剥がしてランプを灯した。
優しい光が生まれて、ふたりの周りを照らす。
何も纏わないお互いの姿が新しい関係を強調していて、どこか落ち着かない気持ちになる。
アリーシャと目が合うと、彼女も同じ気持ちなのか慌てて毛布を手繰り寄せ、目を伏せた。
アリーシャ「暗いのによくランタンの位置が見えたね」
話を逸らすようにアリーシャが言葉を発した。
126 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/09(土) 15:10:52.89 ID:yuIbS2JU0
ロゼ「野宿が多いからね。暗いところは慣れてるよ」
ロゼもその空気に追随する。
散らばった服を取り、アリーシャに着るように促した。
服の表と裏を探すのにも一苦労しているアリーシャを他所に、そそくさとロゼは服を着る。
アリーシャ「ロゼは不思議だね。服を着る時にあまり音がしない」
ロゼはどきりとした。
意外と人の様子をよく見ているんだなと、思わず視線に力を入れてしまう。
ロゼの夜目が聞くのは暗がりでの活動が多いからだ。足音や物音を消すのも得意だったが、いつでもそうしているわけではない。
暗い場所だから無意識に動きが冴えてしまっているのかもしれない。
ロゼ「夜行性の動物を刺激したくないから身に付いちゃった」
誤魔化すように笑ってみせるが、まるで嘘だったわけではない。
127 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/09(土) 15:12:08.23 ID:yuIbS2JU0
アリーシャは旅の心得の方に興味が湧いたようで、何度か旅の生活について言葉を交わした。
ロゼ「また旅に出たいの?」
アリーシャ「そうだね。少し落ち着いたら遺跡を見て回りたいな」
ロゼ「スレイみたいなこと言うね」
アリーシャが服を着終わるのを確認し、ロゼはランプを消してまたベッドに潜り込んだ。
自然とアリーシャと手を繋いで向かい合う。
アリーシャ「ロゼも行く?」
ロゼ「あたしは遺跡に興味ないし」
アリーシャ「そっか」
ロゼは素っ気ない返答をしてしまってから、無神経な対応をしてしまったかもしれないと気付いてアリーシャの顔色を伺う。
128 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/09(土) 15:13:47.54 ID:yuIbS2JU0
ロゼ「護衛としてなら、行く……」
きまりの悪い気持ちが声に出てしまい、アリーシャがくすくすと笑い始めた。
ロゼ「なに」
アリーシャ「ううん。嬉しい」
アリーシャが繋いだ手をきゅっと強く結んだ。
その仕草に心音が上がったが、ロゼは何もない顔をした。
ロゼ「ほらアリーシャ、寝るよ」
アリーシャ「もう寝るの?」
ロゼ「めちゃ眠そうだけどね」
暗くてもロゼからはアリーシャの閉じかけた瞼が見えていた。
長旅から帰ってきたばかりなのに、ろくに休みもせずにこうしているのだから当然だ。そして体に無理をさせたのも分かっている。
しばらく黙っているとアリーシャの寝息が立ち始めるのが聞こえた。
ロゼ「おやすみ、アリーシャ」
毛布をアリーシャの肩まで掛けると、ロゼはその頬に口付けた。
129 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 22:29:35.29 ID:slzqEXV90
---------+++++++----------
シーツの衣擦れの音でロゼは目を覚ました。
ふわりと甘い匂いがして、不思議な感覚に包まれる。 意識がはっきりする前に、ここがアリーシャの部屋だとぼんやりと理解した。
うっすらと目を開けるとベッドを降りるアリーシャの姿が視界に入った。
ロゼ「おはよう」
ロゼがかすれた声で挨拶をすると、アリーシャが振り向いた。
アリーシャ「おはよう。起こしちゃった?」
ロゼ「うん。でもいい時間でしょ」
130 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 22:31:09.18 ID:slzqEXV90
外の明るさから人の活動が始まるちょうどいい時間だと予想できた。
体を起こして大きく伸びをしていると、アリーシャが顔をこちらに向けた。
アリーシャ「ねぇロゼ?」
ロゼ「なに?」
神妙な顔をしてアリーシャが問いかけてくる。
アリーシャ「なんか赤いの、いっぱいついてるんだけど」
アリーシャは服をめくり上げて腹や胸の間を見回した。
ロゼ「こら見えてるって」
白い肌を隠そうともしない仕草に呆れた。昨夜の行為を思い出すだけで照れてしまうのに、アリーシャにはそういう感覚はないのだろうかと考える。
131 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 22:32:34.14 ID:slzqEXV90
アリーシャ「もうたくさん見たでしょ」
ロゼ「そういうことじゃなくて。誘ってるって言ってんの」
アリーシャ「そんなつもりは……」
そう呟いてすぐにアリーシャは分かりやすく赤面した。自分の体がどれだけ魅力的か気付いていなかったらしい。
アリーシャ「ごめん、気を付ける」
ロゼ「そんなに深刻に言われるとあたしがスケベなだけみたいだな……」
ロゼは嘆息しながらベッドを降りてアリーシャの隣に並んだ。
はだけた隙間からは昨夜ロゼが付けた跡が見えた。
132 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 22:33:45.55 ID:slzqEXV90
アリーシャ「ロゼ、なにしたの?」
ロゼ「素で確認されると恥ずかしいんだけど。キスマーク、知らないの?」
簡単に言えば軽い痣のようなものだが、これに多くの気持ちを込めているなんて、彼女は気付いていないのだろう。
アリーシャ「ああ、これが……」
アリーシャは自分の胸元を覗き込み、赤くなったそれをなぞった。
ロゼ「ドレスだとそこ隠せない?」
アリーシャ「ううん。見えないと思う。侍女には見られるけど」
服を整えてアリーシャは顔を上げた。
133 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 22:35:21.40 ID:slzqEXV90
ロゼ「えっ、なんで」
アリーシャ「着るの手伝って貰うから」
人に服を着せてもらう経験が子供の頃以来、ロゼにはない。他人の手が必要な服というものを失念していた。
ロゼ「明日着る?」
アリーシャ「うん」
ロゼは頭を抱えた。跡を見た感じだと数日は消えないだろう。
ロゼ「あたし、暴行で逮捕されたりしない?」
アリーシャ「どうして?」
134 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 23:22:08.20 ID:slzqEXV90
ロゼ「嫁入り前のお姫様にって」
アリーシャ「王女をなんだと……。恋人くらい誰も何も言わないよ。結婚と恋愛は別でしょ」
淡白な回答を続けるアリーシャにもやもやとした感情が湧いてくる。
ロゼは意味もなく不安を感じていた。
ロゼ「結婚、するの?」
アリーシャ「またその話?しないよ」
アリーシャはうんざりといった顔をした後、ぱっと目を見開いた。
アリーシャ「もしかして前に気にしてたのって、そういうこと?」
アリーシャは縁談の時のやり取りを思い出したようだ。あの時はお互いに気持ちは確かめていなかったので、すっかり忘れていたのだろう。
ロゼ「そういうことだよ」
135 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 23:23:46.64 ID:slzqEXV90
思い出すと恥ずかしくなったが、誤魔化す方がもっと恥ずかしい思いをすると分かっていたので開き直ることにした。
アリーシャ「気付かなかった」
ロゼ「アリーシャ鈍いもんね」
アリーシャ「ロゼに言われたくはない」
つい出てくる憎まれ口にアリーシャが半眼で返してくる。もう彼女も慣れた様子だ。
関係が変わってもやり取りは変わらないものだなとロゼは胸の内で安心した。
そんなことよりも、ロゼはアリーシャの言う結婚と恋愛は別だと言い放ったことが気になっていた。お互いに抱く気持ちが恋愛感情なのはもう自覚している。
136 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 23:24:57.51 ID:slzqEXV90
気持ちだけで突っ走って、今は何か、悪いことをしている気分だった。
ロゼ「恋人なの?」
アリーシャ「違うの?」
アリーシャの目が驚いている。
ロゼはどうしてもアリーシャの立場が気になってしまっていた。そして王族と自分とでは考えることがなにか違うんじゃないかと思っていた。
以前、ロゼはアリーシャに仲間になれないと思っていたと告げたことがある。その時の感覚に似ていた。
ロゼ「いいの?」
釈然としないロゼの様子が不穏に思えたのか、アリーシャはロゼの髪を心配そうに撫でた。
137 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 23:26:17.38 ID:slzqEXV90
ふわりと香るアリーシャの温かい匂いに安心感を覚えて、ロゼは目を伏せた。やはり自分はこの子が好きなのだ、と心の底から思う。
アリーシャ「さっきからなんかおかしいよ」
ロゼ「アリーシャの立場の邪魔をしたくないの」
ロゼにはまだ身分の差、政治経済の立場、色々な事情が整理できずにいる。
守ることより壊すことが得意なロゼにとっては見えない不安と戦う術がよく分からない。気持ちが赴くままというだけで許されるとは思えなかった。
アリーシャ「ロゼはそういうの気にしないで」
アリーシャがめんどくさげにため息をついた。
ロゼ「あたしはってなに。それでアリーシャが困ったりするのが嫌なんだって」
138 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/10(日) 23:27:34.93 ID:slzqEXV90
それがなんなのかはロゼ自身にも分からなかった。しかし自分の存在がアリーシャにとってマイナスになる要素があるのではないかと考えてしまう。
アリーシャ「困らないよ。私はロゼでないと嫌。私が選んだの。例え困ったとしても私の責任。ロゼはどうなの?」
ロゼ「あたしもだけど……」
アリーシャ「じゃあ何が不満?」
いつになく強気な態度に気圧されてロゼは首を振った。
ロゼ「なんか怒ってない?」
アリーシャ「怒るよ。それに先にそういう態度を取ったのはロゼでしょ」
そう指摘されてロゼは閉口した。確かに強い口調で話し始めたのはロゼが先だ。
139 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:46:17.42 ID:cmZfXu2w0
アリーシャは構わず続けた。
アリーシャ「ロゼは私の気持ちまでなかったことにしたいの?私が軽い気持ちであんなに泣いて、あなたにあんな告白をしたとでも思ってるの?」
突っかかるような言い方をした後ろめたさと、アリーシャの圧力に負けてロゼはずるずると後ずさった。ラストンベルでのやり取りを思い返して、アリーシャの真剣な眼差しにロゼは俯くことしか出来なかった。
ロゼ「ごめん」
アリーシャ「どうして?私が怒ってるから謝ってるの?」
アリーシャに詰め寄られてどうしようもなく戸惑い、自分の考えも整理できないままロゼは黙り込んでしまった。まるで悪いことをした子供のようだ。
140 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:47:26.44 ID:cmZfXu2w0
こんな弱気なロゼを予想していなかったのか、アリーシャはバツの悪い顔をして深く息を吐いた。
アリーシャ「言い過ぎた。ごめん」
ロゼ「アリーシャは悪くないでしょ」
アリーシャ「ロゼだって悪くないよ」
優しい声にロゼは顔を上げた。
アリーシャ「私はロゼに好きって言ってほしいだけ」
アリーシャは笑ってはいたが、不安そうに見えた。ロゼ自身、自分がどんな顔をしているのか分からなかったが、きっとアリーシャ以上に不安な顔をしているに違いない。
だからといってアリーシャにそんな顔をさせたいわけではなかった。また謝りそうになってロゼは開きかけた口を閉じた。
なぜかひどく胸が痛い。アリーシャの気持ちはずっと伝わってきていて、自分もそれと同じように伝えていて、とても幸せなはずなのに否定するような態度をとってしまう。
141 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:49:00.19 ID:cmZfXu2w0
ロゼの気持ちが落ち着くのを待っているのか、アリーシャは何も言わなかった。
ロゼ 「どうしたんだろ。あたし、なんかおかしいね」
あまりの情けなさに気の抜けた声が出た。
アリーシャの事になるとみっともない部分ばかり見せている気がする。取り繕うことすら無様に思えた。
アリーシャ「ロゼはあまり考え込まない方がいいよ」
諭すような声にロゼは顔を上げた。同じようなことを仲間達にも言われた覚えがある。
ロゼ「んん?あたし今バカにされてる?」
アリーシャ「バカにはしていないけど、向いてないと思う」
「それがバカにしてるんだってば」
142 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:50:20.77 ID:cmZfXu2w0
ロゼ「それがバカにしてるんだってば」
ロゼは緊張感が薄れたのを感じてほっと息を吐いた。空気を悪くしているのはいつも自分だ。そんな面倒な性格はしていないと思っていたのに、アリーシャの前だと調子が狂ってくる。
アリーシャは素直に気持ちを伝えながら不安を与えない手段を持っている。それがロゼにはとても羨ましかった。
ロゼ「あたしはアリーシャが好き……」
顔が赤くなりそうだった。ごちゃごちゃとした感覚だけがロゼの中で行き交って、結局どうしたいのかを考えているうちに、まとめられないまま態度に出してしまう。
彼女の顔を見れば見事に赤面していて、それが嬉しく感じた。
143 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:52:13.12 ID:cmZfXu2w0
こんなことで気持ちが軽くなるんだと気付いて、やはり自分は考え込まないほうがいいのだと実感する。
アリーシャ「ロゼ、キスしていい?」
そう言われてロゼが一歩下がると、アリーシャは不服そうに口を尖らせた。
アリーシャ「どういう意味?」
ロゼ「だってアリーシャのキス、激しいんだもん」
昨日の夜を思い出して、ロゼはアリーシャの顔が見れなくなった。視線で求めてくるアリーシャの仕草や感触が蘇ってきそうだ。
アリーシャ「自分じゃ分からないんだけど」
ロゼ「あんなことしといて……」
アリーシャはロゼに寄って手を握った。
144 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:53:24.40 ID:cmZfXu2w0
アリーシャ「ロゼが優しかったのは分かるよ。傷付けないよう我慢してくれてたでしょ?」
ロゼ「アリーシャはエロいんだよ……。あたしがどれだけ苦労したと思ってんだ。そのくせあんたは好き勝手しまくるんだからたまったもんじゃあない」
アリーシャ「またそういう意地悪を……」
あの葛藤を意地悪の一言で済ませられるのかと、若干辟易した。
結局アリーシャが身を寄せてきて 流れるように唇が運ばれてくる。
ロゼ「舌、入れないでね……」
身を任せながら一言断りを入れたが、返事はなかった。
そっと唇が重なって、アリーシャがロゼの肩を抱く。ロゼもアリーシャの腰に手を回して体温を交換した。
145 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:54:50.08 ID:cmZfXu2w0
重ねるだけの口付けが終わり、ロゼが身を離そうとすると、アリーシャの舌が唇を軽くなぞった。
ロゼ「なっ」
なにすんだ、と声を上げようとするとアリーシャがいたずらっぽく笑ったのが見えて、ロゼは言葉を飲み込んだ。
ロゼ「そういうところだっての」
アリーシャにつられて笑みが漏れる。
ロゼ「らしくなかったね。気にしても仕方ないのに」
アリーシャ「答え、出せた?」
ロゼ「まあなんとなく。ウジウジしてるのも性に合わないし、気にしないことにする」
切り替えの速さが得意分野だったことを思い出し、ロゼはひらひらと手を振った。
146 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:56:21.27 ID:cmZfXu2w0
アリーシャ「そう。よかった」
穏やかに笑うアリーシャを見て、ロゼは感心していた。
彼女はどんどん成長していく。青臭い理想だけを掲げていた時より、ずっと強くなった。
アリーシャ「朝食は食べて行くでしょ?」
アリーシャは、起き抜けで乱れた髪の毛や服を整え始めた。
ロゼは自分の髪の毛を触り、アリーシャほど気にすることもないので、手櫛で雑に梳かすとソファに座った。手入れが面倒で短くしているくらいなのだから、あまり頓着がない。
アリーシャ「ロゼ」
アリーシャに後ろから声を掛けられて振り向く。が、頭を掴まれて正面に戻された。
何度か髪の毛をするするといじられ、すぐに解放された。
147 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/12(火) 12:57:54.18 ID:cmZfXu2w0
ロゼ「なに?」
アリーシャ「跳ねてたから直しただけ」
触ってみると髪の毛がなめらかになっている。
恐らく整髪料をつけたのだろう。セキレイの羽でもいくつか扱っている。
アリーシャ「ねえ」
アリーシャが隣に座った。 そしてロゼの襟元をくいっと引き寄せた。
ロゼ「な、なに?」
アリーシャ「私もロゼに跡つけたい」
ロゼ「ええー……」
返事もしていないのに首元に唇を付けようとするアリーシャを押し返す。
148 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 12:45:29.43 ID:QNpImxES0
ロゼ「ライラとエドナに見られるからだめ」
野宿や宿屋で寝泊まりするロゼ達は、寝るのも入浴も仲間と共にする。特にロゼは家族が多いこともあって、親しい人の前では無防備になることがある。
アリーシャ「私も侍女に見られちゃうんだけど」
ロゼ「そっちはアリーシャのことをからかったりしないでしょ。あいつらそんなの見つけたら絶対いじり倒すんだから」
アリーシャ「あの方々が人をいじるというのがあまり想像できない」
ロゼ「本気で言ってんのそれ……」
エドナからの仕打ちにまるで気付いていないことに、ロゼは口元を引きつらせた。
アリーシャ「なら、どうやってやるかだけでも教えて」
ロゼ「やだよ恥ずかしい」
149 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 12:46:40.02 ID:QNpImxES0
ロゼがきっぱりと断るとアリーシャは素直に身を引いた。
アリーシャは以前から頑固なロゼの扱いを分かっていて、あまりしつこくは食い下がらない。
ただしロゼはこういう時のアリーシャが無茶をすることを、すっかり忘れていた。
アリーシャ「分かった。ならザビーダ様に聞いてみよう」
ロゼ「やめなさい!」
突然大きな声を上げるロゼに、アリーシャが目を丸くした。
ロゼ「あいつは絶対ダメ。分かるでしょ!?」
アリーシャ「ザビーダ様は女性の扱いに慣れた様子だから、そういうことに詳しいかと思ったんだけど違うんだ?」
ロゼ「そういう意味のダメじゃない!」
喚くロゼにアリーシャはいよいよ鬱陶しげな顔をした。
150 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 12:47:50.71 ID:QNpImxES0
アリーシャ「あれもダメこれもダメって。ロゼ、わがままだよ」
ロゼ「うぐっ……」
言い返す言葉もなくロゼは呻いた。確かにその通りだと思ったが、今回はそういうことではない。
ロゼ「ザビーダに頼んだらなにされるかわかんないでしょ」
渋々答えるが、アリーシャは疑問符を浮かべていた。ロゼが何を言っているのか、よく理解できていないようだ。
ロゼ「というか女が男にそんなこと聞くもんじゃないっしょ?」
アリーシャ「でもそれはザビーダ様だから、」
ロゼ「ザビーダだからだつってんの」
被せ気味に否定するとアリーシャが黙った。
151 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 12:48:55.60 ID:QNpImxES0
また言い過ぎてしまった。
ロゼはフォローのために口を開こうとしたが、先にアリーシャが動いた。
アリーシャ「ロゼ、なんで拗ねてるの?」
ロゼ「拗ねっ……!?」
頭を叩かれたような衝撃に襲われた。
数秒だけ考えてロゼは再び口を開いた。
ロゼ「デゼルがなんでスレイにおぶわれてたあたしに説教したのか、今更理解できた気がする……」
ロゼが幼い頃からそばにいた彼にとっては、保護者のような気持ちだったのだろうが、恐らくは似たような心配をしていたはずだ。そしてロゼは、アリーシャに対してそれ以外の感情もある。
152 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 12:50:41.12 ID:QNpImxES0
アリーシャ「ロゼ?」
ロゼ「とにかく、ザビーダはダメ」
アリーシャ「だからどうして」
このままだとロゼが駄々をこねているだけになってしまう。仕方なくロゼは下を向いて声のトーンを落とした。
ロゼ「あんたがザビーダの歯の浮くようなセリフを真に受けていちいち照れたりしてるのを見たくないから」
早口でまくし立てると、アリーシャの動きが止まった。押し問答になる準備でもしていたのだろう。
ロゼはアリーシャの顔が見れずにいた。
アリーシャ「ロゼ、耳が真っ赤だよ」
ロゼ「ああもう、うっさい!なんで顔逸らしてるかくらい察してよ!」
153 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 12:51:29.61 ID:QNpImxES0
髪の毛から覗いた耳を隠しながらロゼは喚いた。
もう無駄なのは分かっていたが、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。どうしようもなく、彼女への気持ちが押し隠せない。
気が付けばアリーシャはクスクスと笑い出していた。
アリーシャ「ロゼがそんなふうに慌てるなんて珍しい」
ロゼ「あんたのせいでしょうが」
アリーシャは珍しいと言ったが、天族達の前では終始こんなやり取りをしているなんて知ったら、アリーシャはどんな顔をするだろうか。きっとまた嬉しそうに笑うのだろうけれど。
154 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 12:53:01.56 ID:QNpImxES0
---------+++++++---------
アリーシャの屋敷を出て、宿屋に帰る途中でロゼは見知った顔を見かけた。
風の骨の伝令だとサインを出している。
ロゼはすぐに体の向きを変えて目立たない場所へと移動した。
ロゼ「フィル。なにかあった?」
人の動きが落ち着くまでは風の骨の活動は止め、しばらくはどんな依頼も受けないでいたはずだった。
アン・フィル「実は、」
アン・フィルはロゼを見て、一瞬怪訝な目をした。
155 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:01:09.57 ID:QNpImxES0
アン・フィル「頭領、それどうしたの?」
首を指されてロゼは襟元を詰めた。
ロゼ「あー、ただの虫さされ」
首元をポリポリと掻いてその話を終わらせると、ロゼは「それよりも」と話を続けるように促した。
アン・フィル「ローランスでハイランド王家の暗殺依頼があった」
ロゼ「また反休戦派みたいなやつ?」
アン・フィル「ううん。逆。ハイランドが戦争を起こそうとしてるって」
ロゼは大きくため息をついた。
156 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:02:19.65 ID:QNpImxES0
暗殺の依頼というのは、すべてに根拠や明確な正義があるものではなかった。ほとんどが怨恨と私欲のためだ。
今の両国には戦争の爪痕がまだ残っている。そんな中で風の骨ができることはとても少ない。
ロゼ「国益に関わる暗殺は、今は受けないよ」
それは以前からみんなで決めているはずだった。すでに断っているはずの依頼の報告に来るということは、伝えたいことがあるのだと分かっている。
アン・フィル「頭領に伝えるか迷ったけど、今回名前が上がったのが、」
ロゼ「アリーシャなんでしょ」
157 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:04:11.22 ID:QNpImxES0
ロゼは冷静を装ったが、喉の奥から苦々しい気持ちが溢れてくるのを感じた。
アン・フィルが小さく俯いたことで、それが間違っていないと確認できた。
アリーシャは和平の使者で、両国にとって最も重要な人物の一人だ。ローランスからの依頼で暗殺されたとなったら、すぐにでも戦争が始まってしまう。
ロゼ「依頼者の身元と、その周辺の情報、あとローランスでハイランドに関する悪い噂が回ってないか調べて。民間だけじゃなくて貴族や教会も」
アン・フィル「了解」
158 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:05:15.07 ID:QNpImxES0
短い返事をしてアン・フィルが背を向ける。ロゼも逆方向に体を反転しようとしたが、アン・フィルがまたこちらを向いた。
アン・フィル「頭領。みんなから伝言」
普段のおどけた口調に戻り、ロゼの肩をぽんと叩いて首筋を指した。
アン・フィル「こっちは気にせず、好きなように動けってさ」
ロゼ「えっ、どういう……」
ロゼが呼び止める間もなく、アン・フィルは立ち去って行った。
ロゼ「じゃあ、ま、好きなようするか」
159 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:06:20.89 ID:QNpImxES0
---------+++++++----------
ロゼは宿屋に戻ると、まず全員を部屋に集め、ハイランド王家の暗殺依頼について話した。
エドナ「それはまた面倒なことになったのね」
いつもと変わらない淡々とした口調でエドナは呟いた。
ロゼはベッドに座り、全員を見回す。それぞれ考えこむような様子が伺えた。
ライラ「アリーシャさんが戦争を起こすなんてどこからそんな話が……」
ライラはエドナと並んで、ロゼを心配そうに見つめている。
160 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:08:47.95 ID:QNpImxES0
ロゼ「それは調査中。依頼人の身元も含めて風の骨が洗ってる」
ザビーダ「依頼は断ったんだろ?なら大丈夫じゃねぇのかい」
床に座り込んだザビーダが、欠伸混じりにぼやいた。
ロゼ「あたし達がやらないならゴロツキでも他の暗殺ギルドでも雇うことは出来るからね。断られて諦める人ばかりじゃないから」
ザビーダ「なるほどねぇ。ま、そうでなきゃ人を殺してくれなんて頼まねぇわな」
エドナ「……ロゼ?」
エドナがロゼを気遣うように覗き込んだ。
161 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:10:39.62 ID:QNpImxES0
ロゼ「あ、なに?エドナ」
意識せず、気持ちに焦りが混じってしまい、声がうわずった。
エドナ「ちゃんと話してくれて良かったわ。一人で無茶されたら厄介だもの」
ロゼ「無茶って。あたしそんなに考え無しじゃないよ」
反論してみるがライラが苦笑しているのが見えた。
ザビーダ「アリーシャちゃんのことになるとテンパッちまうからなあ、ロゼは」
スレイに会うためにカムランに向かった時の話をしているのだろう。それを言われると、ロゼも反論はできなかった。あの時は、アリーシャのために無茶をした自覚はある。
162 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:12:14.81 ID:QNpImxES0
ロゼ「アリーシャの安全が確認出来るまで、しばらくレディレイクを拠点にしてもいいかな」
ミクリオ「ロゼの領域内ならアリーシャが従士の力を振るえる。それが得策だと思うよ」
ロゼは思わずミクリオの顔を眺めた。
ロゼ「従士の力って、人間同士の争いに使うのまずい?」
ライラ「アリーシャさんは両国にとっても、わたくし達にとっても重要な役割がありますから。それにアリーシャさんに何かあったらロゼさんが……」
全員が一斉にロゼを見た。ロゼもライラが言いたいことは分かっている。
ロゼ「お互いに難しい立場だからなあ」
163 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:13:39.58 ID:QNpImxES0
ライラ「ロゼさん。お二人の関係をお互いの重荷だとは考えないでください。決めたことを間違いだとは思わないで」
おどけてみせるロゼの手を、ライラが握った。手の温もりと、それ以上に熱い気持ちが伝わってくる。
彼女が言いたいのは、アリーシャがロゼを穢れさせる原因になりかねないということ。更にはアリーシャにも同じことが言える。
そして二人は客観的にお互いを利用できる立場と見られることも、ロゼは分かっていた。
ロゼ「あたし、そんなふうに考えてそうに見えた?」
ミクリオ「気負っているのは見えているよ」
答えたのはライラではなくミクリオだった。
164 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/13(水) 16:14:34.94 ID:QNpImxES0
全員の意見は一致しているのだろう。誰も異論は唱えない。
ロゼ「そっか。ほんとはよく分かんない。焦ってんのかな。巻き込みたくないし、巻き込まれないようにしなきゃってなってる気がする」
ロゼは目を伏せて、行き場のない気持ちを吐露した。隠しても仕方がないと思ったからだ。意地になって口を噤んでしまうほど、泥沼になっていく気がしていた。
そして自分の中で抱える矛盾にも向き合わなくてはならない。
ロゼ「でも考えないって決めたから。なんかあったらあたしがなんとかする。そんだけ」
ロゼが笑って伝えると場に緩んだ空気が流れた。
165 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:40:36.68 ID:BUwdQsMg0
ライラはほっと息を吐いてロゼの手を解く。
にこりと笑うその表情に、ロゼは嬉しいような、恥ずかしいような、そんな気持ちを抱いた。
エドナ「それで、これからどうするの?」
エドナが問う。
ロゼ「フィル達がローランスの調査をしてくれてるから、あたしはレディレイクで情報収集をするよ。アリーシャの行動も把握しとかなきゃ」
エドナ「そんなの直接聞けばいいじゃない」
ロゼ「嗅ぎ回ってるってバレたくないんだよね。なんとなく」
ロゼはベッドから立ち上がって、落ち着きなく窓際へと歩いた。
166 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:42:34.70 ID:BUwdQsMg0
---------+++++++----------
あれから数日、ロゼは街を見て回り、アリーシャの様子をさり気なく覗いていた。特別な情報はなかったが、しばらく天候の荒れる日が続いたせいか、物資の行き来が遅れているという話が目立ち始めている。
ミクリオ「初めてレディレイクに来た時は、街の中にも憑魔がいたんだけど今はすっかり落ち着いたよ」
ミクリオは懐かしそうに呟いた。彼の脳裏には幼馴染の姿も描かれているのだろう。
ロゼ「うちのキャラバン隊が馬車で橋を塞いだ時だっけ」
ロゼが彼らに初めて会った時と、彼らが地上へ降りてきた時期は一致していた。今思えばあれも憑魔の仕業だったのだろう。
ロゼ「あの頃はあたし達がアリーシャを殺そうとしてたんだっけな」
167 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:43:37.14 ID:BUwdQsMg0
ミクリオ「その後はスレイだろ?」
二人は顔を見合わせて苦笑いをした。
ミクリオ「あれからアリーシャには会ったのかい?」
ロゼ「会ってないけど予定は分かるよ。今日と明日は仕事で王宮にこもりきり。明後日は休みだけど、プライベートで来客予定があるみたい。たぶん十日後くらいにもローランスから来客があるよ」
すらすらと並べ立てるロゼにミクリオが顔を引きつらせた。
ミクリオ「よく調べたな。本人には聞いてないんだろう?」
ロゼ「まあそこんとこは企業秘密で。資材の流れとかで分かることが色々あるんだよ」
ロゼが濁すとミクリオは「ふぅん」と短く返事をして、深くは踏み込まなかった。
168 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:44:37.93 ID:BUwdQsMg0
二人で見回りを続けていると、泥だらけの馬車が通り掛かった。昨日は雨風が強かったのでそのせいだろうと思ったが、荷台と車輪に大きな傷があるのが目についた。車輪が割れかけていて いつ崩れてもおかしくはない。
ロゼ「おじさん、どうしたのこれ?」
ロゼは思わず馬車の主に声を掛けていた。
彼はマーリンドからレディレイクに移動してくる山道の途中で、大きな動物に襲われたと弱った様子で話した。詳しく聞くと、凶暴な獣に遭遇したらしく、馬車に爪や歯で攻撃をしてくる中、必死で逃げてきたという。
ミクリオ「ここ数日、荷物が届かないのはこれかもしれないね。憑魔だったら厄介だな」
ミクリオの言葉は、普通の人には聞こえない。
169 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:45:53.60 ID:BUwdQsMg0
ロゼはミクリオに視線で返事をし、馬車の主に労いの言葉をかけて見送った。
ミクリオ「場所はフォルクエン丘陵の橋の手前。レイフォルクの麓辺りか。遠くはないが……」
ロゼ「調査も含めたら二日くらいは必要かもね」
ロゼは呟いて、アリーシャのことを思い浮かべた。
今ここを離れると、アリーシャはロゼの領域から外れることになる。暗殺依頼が来ているような時にそばを離れるのは気が引けた。
アリーシャ「あんまり出歩かないように言っておくかい?」
ロゼの考えを察したのか、ミクリオが提言をした。
ロゼは少しの間考えて唸った後、顔を上げる。
170 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:46:57.21 ID:BUwdQsMg0
ロゼ「理由を聞かれても答えられないしなあ。命を狙われてるなんて言っておとなしく引きこもってるとは思えないし」
ミクリオ「君達は不器用だからな。下手なことを言うとまた喧嘩になるぞ」
疲れた声を出すミクリオに、ロゼは首を傾げた。
ロゼ「あたし?そんなことないと思うけど」
その反応にミクリオはふうっと一息吐いて、片手をひらひらと振った。
諦めたような表情にロゼはムッとしたが、今はそれどころではない。
ロゼ「周りを脅かすのも手かな」
ある手段を思い付いて、ロゼはぎゅっと拳を握った。
171 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:48:07.92 ID:BUwdQsMg0
ザビーダ「おう、ロゼちゃん、ミク坊、こんなところでどしたん?」
後ろから声をかけられ、二人が振り向くと、へらへらとした笑みでこちらに手を振るザビーダの姿があった。
ロゼ「ちょうど良かった。宿屋に戻って作戦会議ね」
ザビーダ「ほーん。なんか動きがあったってわけね」
興味津々に身を乗り出すザビーダに、ロゼは親指を立てて見せた。
ロゼ「アリーシャを襲うよ」
自信たっぷりのロゼに、ミクリオは口元に手を当てて軽く咳払いをした。
ミクリオ「そ、そういうのはわざわざ宣言しなくていいと思うけど」
照れた様子のミクリオを、ロゼは一瞬怪訝に思ったが、すぐに理解した。
ロゼ「そういう意味じゃない!」
172 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:52:02.28 ID:BUwdQsMg0
---------+++++++----------
ロゼが宣言した翌日の新月の夜、レディレイクの中央区を超えた先にある聖堂。ここが今夜の舞台だった。
ロゼ「なんであんたが付いてくるの」
ロゼは堂々と後ろに立つザビーダに、半眼で小さくぼやいた。
日没を過ぎれば聖堂には人通りがほとんどなくなる。
聖堂に続く門の外には衛兵が二人、直立不動で周りに気を配っている。
ロゼは風の骨の装備で塀の上に潜んでいた。
塀の上からは辺りを見回せる代わりに、ロゼの姿も丸見えとなるため、今日の新月は好都合だった。
173 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:54:35.46 ID:BUwdQsMg0
明かりの届かない場所で微動だにしなければ、簡単には人の目には映らない。
ザビーダ「様子見るだけだよ。保護者としては心配なのよー」
ロゼ「いつ保護者になった」
仮面の隙間から覗くザビーダは、相変わらず軽薄な笑みでロゼを見ていた。
ロゼ「まあいいけど。何があっても手を貸しちゃダメだからね。アリーシャにはザビーダの姿は見えるし、天術も誰のものか分かるんだから」
ザビーダにしか聞こえないよう、ロゼは声を潜めた。
ザビーダ「へいへい。見守ってるだけだよ。ところでロゼちゃん、ラベンダー付け過ぎじゃない?」
「しょうがないでしょ。アリーシャはあたしの匂い知ってるんだから」
人の体臭や衣服の匂いには、個性がある。少なくともロゼはアリーシャの匂いを覚えている。アリーシャもそうであると考えていいはずだ。
174 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:56:32.63 ID:BUwdQsMg0
ザビーダ「まあ親しい人をバレないように襲うなんて、気ぃ遣うわなぁ」
うんうんと後ろで大げさに頷いてみせるザビーダをよそに、ロゼは貴族街の方角を見た。
ロゼ「もう少ししたらアリーシャが聖堂に来るはずだから。ちゃんと隠れててよね」
信心深いアリーシャはウーノを祀るため、定期的に祈りを捧げに来る。
こういう状況になると狙われやすくなるので、定時行動は止めるようにいつか提言したい。
ザビーダ「わざわざ襲わなくてもなんか適当な理由つけて護衛の数増やせって言えないのかね」
ロゼ「だから勘繰られたくないんだって。それにあの子にそんなこと言ったって自分でなんとかしようとするでしょ。周りが無理矢理警護するくらいの口実が欲しいんだよ」
ザビーダ「だから夜道を襲うって?ロゼ。お前、なんでそんなに自分を隠したがるんだ」
175 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/15(金) 12:58:01.56 ID:BUwdQsMg0
反論で声を上げようとした時、遠くに人影が浮かび上がった。ロゼは口を噤んで息を潜める。
ロゼ「ザビーダ」
吐息のような声で名前を呼ぶと、彼は身を縮めて塀の外へと降りた。
様子だけ伺いに来たというのは本当のようだ。直接見なくても空気の流れで状況の把握くらいはできるのかもしれない。
ロゼは人影がアリーシャであると確認すると、彼女が近付いて来るのをじっと待った。
門の前まで歩みを進めると、アリーシャは見張りの衛兵に声を掛けて門をくぐった。
聖堂までの短い距離。襲うのはこのタイミングだった。
一瞬でいい。アリーシャに危険があると衛兵が認識すればロゼの目的は果たされる。早ければ今夜からでもアリーシャには護衛がつくはずだ。
176 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:29:37.82 ID:xrvDT7SV0
アリーシャが敷地の中腹まで進んだところで、ロゼは彼女に向けて塀から飛び降りた。
アリーシャ「なっ……!」
すぐにアリーシャは反応し、瞬時に襲撃だと理解すると護身用のナイフを取り出した。
ロゼは普段使っているものとは違う、小太刀を抜いて、アリーシャの元へ飛び込んだ。
きぃぃん、と金属のかち合う音が響き、小さなナイフで攻撃をいなされる。
すぐに体勢を整えて斬りかかるが、刃を向けるふりをしてアリーシャのナイフを拳で叩き落とす。
その手首を掴んで押さえつけると、アリーシャの後ろに回り込んで小太刀を彼女の喉元に当てた。
アリーシャ「依頼人は?」
アリーシャの声は落ち着いていた。すでに武器はなく、刃を首に当てられた状態なのに少しも焦っていないことにロゼの方が戸惑っていた。
177 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:31:23.64 ID:xrvDT7SV0
当然問いに答えることはできない。ロゼはそもそもその答えを持っていない。
少しでも声を出せば、アリーシャには気付かれてしまうだろう。息遣いでも気取られる可能性がある。長く接触を続けるのもリスクだった。焦っているのも自覚している。
剣の交わる音に反応した衛兵がこちらへと駆けつけている姿が見えた。
衛兵「アリーシャ殿下!」
衛兵の声が響いた。
後ろから迫る衛兵の気配に逃亡の構えを取るその瞬間、アリーシャが小太刀の刃を素手で掴んだ。
ロゼ「っ!」
声を上げそうになって、必死に息を飲み込む。驚いた反動でアリーシャの指に刃が食い込む。それでも彼女は掴む手を緩める様子はない。間違いなく刃はアリーシャの手を傷付けているはずだ。
小太刀を取り戻そうとすれば、アリーシャの指が落ちてしまう。
咄嗟にロゼは柄を離し、彼女の背中を突き飛ばす。アリーシャを目で追ったがまだ彼女は刃を握ったままで、こんな一瞬では怪我の様子はわからない。
178 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:32:52.50 ID:xrvDT7SV0
それよりも、この場を離れなくてはならないのに、ロゼの足の動きは鈍かった。
アリーシャの行動に動揺してしまっている。
背後に生まれた気配への判断が遅れ、ロゼは自分の右腕に鋭い衝撃を感じた。見れば二の腕に深々と衛兵の槍が刺さっている。
ロゼ「ぐぅっ……!」
悲鳴を噛み殺して、後ろにいる衛兵を蹴り飛ばした。槍が引き抜かれる痛みに声も息も詰まって、意識が吹き飛びそうになるのをなんとか堪える。
ロゼの軽い体重では鎧を着た衛兵を大きく突き放すことは出来ず、囲まれる形で逃げ道を塞がれた。
まずい。
猛烈な痛みに脂汗が浮き出し呼吸が乱れる。すでに指先から滴り落ちるほどに血が流れている。気を抜くと膝が崩れ落ちそうだ。
179 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:34:29.12 ID:xrvDT7SV0
アリーシャがこちらに飛び出してくるような動作が見えたその時、
アン・フィル「きゃああああ!」
門の向こうで悲鳴が上がった。アン・フィルの声だ。
事前に彼女には今回の手筈は伝えていて、いざという時は一般人を振りをして逃亡のための時間を稼ぐことになっている。ロゼの危機を察知して飛び出したらしかった。
パニックを装って悲鳴を上げるアン・フィルに視線が集まる。衛兵がそちらに気を取られた隙に、ロゼは間を縫って駆け出すことができた。
衛兵の位置を確認するために後ろを僅かに振り返ると、衛兵達はうずくまったアリーシャの元へと向かっていた。
ロゼは足を止めかけたが、アン・フィルが視線でそれを制した。
早く逃げろと、そう強く告げている。
180 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:36:05.66 ID:xrvDT7SV0
ロゼ「……くそっ!」
自分をそしり、聖堂の門をくぐった。門を出るとすぐにザビーダが走り寄ってきた。
ザビーダ「ロゼ、どこかに隠れろ。血を止めないと辿られる」
進言通り、ロゼは宿屋とは反対方向に向かい、建物の影に逃げ込んだ。
途端に立っていられなくなって、ロゼは壁にもたれかかって膝を折った。痛みでうまく呼吸ができない。意識しながら深呼吸を繰り返す。
すぐにザビーダが治癒術をかけたが、切られた位置が悪かったらしく、だらだらと垂れる血の勢いは変わらない。
ザビーダ「こりゃ時間をかけねぇと無理だな」
ロゼ「ありがと、大丈夫だから……っ」
ロゼは腕を布できつく縛ったが、出血はまだ止まらない。それでもないよりはずっといい。
全身が汗でびしょびしょに濡れ、体力が落ちていくのを自覚する。ずぐんと脈打つ痛みが止まらない。
181 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:37:39.48 ID:xrvDT7SV0
ロゼ「追手は?」
ザビーダ「今はいねぇな。動けるか、ロゼ」
ロゼ「動けないなんて、言えないでしょ……っ!」
ロゼは声に力を入れて立ち上がった。しかし刺されたところが燃えるように熱く、全身が重い。ザビーダがかけたクイックネスの効果がなければ立ち上がることも出来なかっただろう。
周りに気を配りながら駈け出すと自分の体ではないような気がした。全身の感覚が鈍い。失血が影響しているのがすぐに分かった。
ザビーダ「捕まれ」
ザビーダがロゼに肩を貸す。
ロゼ「ちょっと!アリーシャに見られたら……」
ザビーダ「アリーシャちゃんは聖堂から動いてねぇ」
182 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:39:14.21 ID:xrvDT7SV0
風の動きを読んだのだろうか。ロゼはなぜアリーシャが動けないでいるのか気になったが、今優先すべきことではないと頭を振る。ザビーダは目撃されるのを意識して、回り道をしながら宿屋の方に向かった。
ふたりが窓から部屋に戻ると、待機していたメンバーが目を見開いた。
ライラ「ロゼさん!」
ザビーダから離れて自分の足で立とうとするが、全く力が入らずにロゼは床に倒れ込んだ。緊張の糸が切れたのか更に酷い痛みがロゼを襲う。
仮面を脱ぎ捨て、肺いっぱいに息を吸い込んで吐き出す。何度も繰り返して酸素を取り込むが、息苦しさは消えない。
ロゼ「は、ぁぐっ、……めっちゃ、くちゃ、痛いんだけどっ!あぁくそッ!」
頭をかきむしり、悪態をついて痛みに苛立ちをぶつける。アリーシャのことが気になって仕方がなかった。なんであんなことをしたのか、不可解だった。
血に濡れた自分の体を見ながらも、アリーシャの姿が頭から離れない。胸が締め付けられるように苦しくて、強く歯を食いしばる。痛みと感情の負荷が強すぎて、喉の奥から胃液が込み上げた。
183 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:40:10.02 ID:xrvDT7SV0
ロゼ「ぅっ、ごほっ……!」
誰かがロゼの名前を呼んだが、誰の声なのか認識できない。
ザビーダとエドナに体を支えられたおかげで、吐瀉物が気管に逆流することはなかったが、咳き込んでさらに呼吸が乱れる。
周りが騒ぎ出した事は分かる。しかし耳鳴りがして様子が分からない。思考が弱り始めていて、何も考えられなかった。
ライラが切羽詰った様子でこちらを見ながら声を掛けているが、うまく言葉が聞き取れない。体を起こそうとしているのに思い通りにならず、苛立ちで床を叩いた。
ふっと体が軽くなって、サビーダに体を抱き起こされる。ライラが治癒術をかけ始めると、痛みが薄れていくのを感じた。それと同時に意識がぼんやりとしてきた。ひどい眠気を感じて、ロゼは抗うことも出来ずにすぐに意識を手放した。
184 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:41:47.98 ID:xrvDT7SV0
---------+++++++----------
カーテンの隙間から差す朝日を感じて、ロゼは目を覚ました。
最初に視界に入ったのはエドナだった。ベッドの近くに椅子をおいて座っている。ロゼの容体を看ていたのだろう。
ライラは隣のベッドで眠っている。恐らくは完治までずっと治癒術をかけていたはずだ。疲れて眠っているように見えた。
エドナは目を覚ましたロゼに気付いて立ち上がり、その額に手を当てた。
ロゼ「熱、出てた?」
エドナ「そうね。でももう下がっているわ」
ロゼは体を起こし、腰を回したり腕を上げたりして自分の状態を確認した。
右腕の傷は完全に消えていて、痛みはどこにもない。ただ右手の握力が完全には戻っていなかった。
185 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:43:15.62 ID:xrvDT7SV0
服は替わっていて、血みどろになった体も綺麗にされている。きっと二人が介抱してくれていたのだろう。
ロゼ「ごめん。部屋汚した」
部屋に戻ってきてからの記憶がぼんやりとしている。夢を見たような、そんな感覚だった。
エドナ「ミボに感謝なさい」
床を見れば戻した跡も、そして血の痕跡も綺麗に消えていた。眠っている間は大変だっただろうと他人事のようにロゼは考えた。
ロゼ「どのくらい寝てた?」
エドナ「朝にしてはちょっと遅いかしらね」
ロゼ「街の様子は?」
矢継ぎ早にロゼが尋ねるとエドナの動きが止まり、睨むようにロゼを見た。
186 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:44:36.95 ID:xrvDT7SV0
エドナ「ロゼ。落ち着きなさい。まずは自分のことを考えるのよ」
ロゼ「みんなが助けてくれたから大丈夫だよ」
ロゼが軽い口調で答えると、エドナは憤ったように目を細めた。
エドナ「怪我は治っても出血が多かったから、しばらくは体力が落ちるわ」
ロゼ「分かってる。無理はしないよ」
右腕のだるさを自覚しながらベッドから降りる。立ち上がろうとして、思ったよりも力が入らずエドナに支えられてしまう。
ロゼ「っと……」
エドナ「言ってるそばから」
エドナはわざとらしく大きなため息をついた。
187 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/17(日) 11:46:16.58 ID:xrvDT7SV0
ぶっきらぼうな態度だったが、心配しているのは伝わってきている。
ロゼ「エドナ、ごめん。心配かけた」
エドナ「その通りね。あなたのせいで大わらわだったわ」
ロゼはベッドに腰掛けて、エドナの顔を見上げた。
これから説教だろうかと思ったら、ふんわりと前髪を撫でられた。
エドナ「あまり心配をさせないで」
想像していたより優しい声で諭されてロゼは俯いた。怒られるよりもこういう態度の方が効いてくる。
ライラ「あ、ロゼさん……」
目を覚ましたライラが後ろからロゼを呼んだ。
188 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/18(月) 12:38:29.57 ID:xmEisha20
ロゼ「ライラ、大丈夫?」
ライラ「それはこちらのセリフです!」
ライラは半泣きでロゼに抱きついた。
ロゼ「そんなにひどかった?」
ロゼは再びエドナを見上げた。
エドナ「そうね。まあまあ暴れていたわよ。気を失った後も、しばらくうなされていたし」
覚えているのは治癒術をかけ始めた頃までで、その後は痛みも薄れていたはずだった。
ロゼ「なんで?」
エドナ「知らないわよ」
ロゼ「覚えてない」
エドナ「でしょうね」
無機質な返答に、ロゼは黙り込んでライラの頭を撫でた。
189 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/18(月) 12:39:37.96 ID:xmEisha20
よく分からないが大変だったらしい。
ロゼ「ライラもごめんね」
そう告げると、ロゼを抱きしめる腕に力が入るのを感じた。ずび、と鼻をすする音が聞こえたので、泣いているのかもしれない。
エドナ「あと二回謝るのよ」
ロゼ「あ、はい……」
ロゼはミクリオとザビーダの顔を思い浮かべた。
ロゼ「二人は?」
エドナ「見回りをしているわ。昨日の騒ぎで目撃証言が出ているかを調べてる。ついでにセキレイの羽にあなたの状況を手紙で伝えに行っているわ」
昨夜のことを思い出すと、右腕が痛むような気がした。
190 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/18(月) 12:40:52.02 ID:xmEisha20
アン・フィルも心配しているはずだ。
エドナ「昼までには帰ってくるから、あなたはなにか食べて来なさい。体力が回復しないわよ」
エドナに促されて、初めて腹の空き具合に気が付いた。
ロゼはライラをなだめると、自分の力で立ち上がった。多少体は重いが十分動ける。
食堂に行くと、女将が心配そうにロゼに声を掛けた。
よほど青い顔をしているのだろう。中途半端な時間にもかかわらず、丁寧に食事の準備をしてくれた。
一人で黙々と食事をしていると、ザビーダとミクリオが帰ってきた。
ザビーダ「お?目ぇ覚ましたかい」
軽い口調だったが、ザビーダの目は優しかった。昨夜一緒にいて、彼は的確に行動をしてくれた。いつも扱いは適当にしてしまっているが、とても頼りにしている。
ロゼ「ザビーダ、ありがとね。本当に助かった」
191 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/18(月) 12:42:04.18 ID:xmEisha20
ザビーダ「ええんよー。そのためにいんだから」
素直に告げるロゼに、ザビーダは余裕の笑みを返した。
ロゼ「ミクリオも。ごめん」
ミクリオは怒ったようにロゼを見て、ふうっと息を吐いた。
ミクリオ「言っても仕方ないけど、アリーシャの事になるとすぐこれだ。君の家族にもちゃんと顔を出しなよ」
ロゼ「うん、ありがとう」
ロゼがふと視線を感じて振り返ると、店主と女将と目が合った。
彼らは軽く目を伏せて、祈るような仕草をして見せた。
この宿屋は天族への理解がある。スレイやアリーシャの行動がこうして目に見える形で結果になっているのは、ロゼにとっても誇らしかった。
192 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/18(月) 12:43:51.42 ID:xmEisha20
ロゼ「続きは部屋に戻ってから話そうか」
ミクリオの提案にロゼは頷き、残りの食事を口に運ぶ。食べ終わるとロゼは食堂を後にして足早に部屋に戻った。
ロゼの姿を確認するとライラが側へと寄ってきた。体を心配しているのだろう。ロゼは「大丈夫だよ」と片手で制止したが彼女は構わずに傍らに寄り添った。
ミクリオに視線を送ると、まずは何を話そうかと一瞬考え込むような仕草を見せて口を開いた。
ミクリオ「アリーシャは大丈夫だよ。軽い切り傷で済んだようだ」
その言葉にロゼはふっと力が抜ける感覚を覚えた。
ロゼ「良かった……」
ロゼの刀を掴んだ時に伝わった感触を思い出すと、手が震えそうだった。
逃げる時に座り込んだ姿が見えて、その後も聖堂から動いていないと聞いていたから、傷は深いものだと思っていた。
ミクリオ「逃亡時の目撃証言は出ているけど、ロゼの姿を連想させるようなものはなさそうだよ。ただ、風に乗ってラベンダーの香りがしたという住民の話はあるから」
193 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/18(月) 12:44:59.41 ID:xmEisha20
ロゼ「あー、あたしの匂いか。あとでお風呂入って流してこなきゃ」
毛先をいじると、まだ髪の毛からはゆるく残り香を感じた。
街の中は今、兵士があちこちにいて警戒態勢に入っているらしく、アリーシャの家や、彼女の身の回りには護衛が付いていると、ミクリオはそう語った。
本来の思惑通りになってはいたが、ロゼは眉間に皺を寄せた。
それに気付いたミクリオが鼻で笑うのが聞こえた。
ミクリオ「どう収拾つけるか考えてるだろ」
ミクリオの言葉にロゼはぎくりと肩を震わせ、苦笑いで答えた。
ロゼ「それは置いといて、とりあえずお願いがあるんだけど」
194 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/18(月) 12:45:59.94 ID:xmEisha20
---------+++++++----------
ミクリオはアリーシャの邸宅の近くまで来ると、辺りを見回した。
いつもは一人しかいない衛兵が二人、門の中にも一人の護衛の姿があった。
宿屋にも憲兵が来て、昨夜暴漢が出たので注意するように、という忠告があったようだ。
当然アリーシャが狙われているなどという情報は、民間には回っていない。宿屋の女将にも気付かれないように、ロゼも女将の不安に共感して見せた。
ミクリオが敷地内に入ると、テラスにいるアリーシャの姿を見つけた。
衛兵となにかを話しているようで、アリーシャが大きく頷いている。
ほどなくしてアリーシャはミクリオに気付いたが、声は上げず、衛兵が敷地内から去るまでは何もないような態度を見せた。
195 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/20(水) 12:40:17.95 ID:/IiYP4EV0
アリーシャ「ミクリオ様」
衛兵が門の外を出て、気配が遠のく頃にアリーシャはミクリオに声を掛けた。
ミクリオはテラスに上がり、アリーシャのそばに立った。
ミクリオ「アリーシャ。大丈夫かい?」
アリーシャは一瞬目を丸くしたが、すぐに察しがついて「ああ」と口を開いた。
アリーシャ「居合わせたのはセキレイの羽の子でしたね。ではミクリオ様だけでなく、皆様も……、その、ロゼも事情は分かっているんですね」
ミクリオ「知っているよ。えっと、アリーシャの事を知ってひどく憤慨していたからなだめるのが大変でね。今は用事があってここにはいないけど、とても心配しているよ」
どう説明したらいいのかと、ミクリオは僅かに言い淀んだが、概ね間違ってはいない。
意識してかどうか、アリーシャは怪我をしている右手をそっと後ろに回した。
196 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/20(水) 12:41:36.70 ID:/IiYP4EV0
アリーシャ「そうですか。もし、余裕ができたら顔を出すように伝えて頂けませんか。私は今、ここを離れられなくて。私は大丈夫だと言っているのですが、周りが許してくれないのです」
ミクリオ「分かった。伝えておくから。アリーシャ、手を見せて」
困ったように笑うアリーシャに、ミクリオは手を差し出した。
アリーシャ「あ、いえ、これはそれほどのものでは……」
ミクリオ「ロゼがひどく心配してる」
ミクリオがそう伝えると、アリーシャは観念して手のひらをミクリオに向けた。包帯を外すと、痛々しい傷が露わとなる。
傷はそう深くはなくて、ある程度は加減していたものとは思われるが、危険な行為に背筋がぞっとした。
ミクリオが治癒術を掛けると、時間はかからずに傷は完全に消えた。
ミクリオ「もう大丈夫だ。今回の事は僕達も協力するから。アリーシャ、気を付けて」
197 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/20(水) 12:43:02.67 ID:/IiYP4EV0
アリーシャ「はい。お気遣いありがとうございます」
ミクリオはアリーシャに背を向けてテラスを降りた。
そのまま足を門の方に向けたが、一息吐いて振り返る。
ミクリオ「アリーシャ。こんな目に遇ってる人に言うのもおかしいんだけどね、その……、あんまり恨まないで欲しい……」
言い淀むミクリオに対し、アリーシャは自分の胸に手を当てて真っ直ぐにミクリオを見つめた。
アリーシャ「分かっています。私は大丈夫ですから」
澄んだ瞳のアリーシャに、ミクリオはそれ以上何も言わなかった。
ミクリオがアリーシャの邸宅を出てしばらく進んだのを見計らって、ロゼは建物の陰から出て彼の横に並んだ。
ミクリオ「これでいい?」
ロゼを見ないまま、ミクリオは緊張の息を吐いた。
198 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/20(水) 12:44:38.19 ID:/IiYP4EV0
ロゼ「ごめんね。変な芝居させて」
霊霧の衣と同じ原理で、光の屈折を利用してロゼにも二人の様子が見えるようにしてもらっていた。二人の顔さえ見えれば、唇の動きで何を話しているのかは大体読み取れた。
ミクリオ「嘘をついたわけじゃないから構わないよ」
貴族街を出ると、ミクリオが立ち止まった。
ロゼ「どうかした?」
考えこむ彼の様子に、ロゼは首を傾げる。
ミクリオ「アリーシャは、」
アン・フィル「頭領!」
突然の声にロゼは弾かれたように振り向いた。
見慣れた顔がこちらに駆け寄ってくる様子が見えて、安堵に口元が緩む。
199 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/20(水) 12:46:02.44 ID:/IiYP4EV0
「フィル、トル」
双子の名を呼んで、アン・フィルの手を握った。
アン・フィル「頭領!大丈夫なの!?」
ロゼ「フィル、移動しよ」
焦る様子のフィルをなだめ、ロゼは彼女の手を引いた。
ロゼ「ミクリオ、先に行ってて。あたしたぶん夜までは戻らないから」
ミクリオ「分かった。アリーシャにも会うのかい?」
ロゼ「それはまだ決めてないけど」
落ち着きなく口元を掻いて、ミクリオから目を逸らす。
ミクリオ「気丈に振舞っているけれど、きっと不安はあると思うよ」
200 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/20(水) 12:47:26.04 ID:/IiYP4EV0
ミクリオの言う通りだった。こちらは事情を知っているけれど、アリーシャからしてみたら、状況の見えない不安があるはずだ。平気なわけがない。
しかしそれを引き起こした本人が、どんな顔をして彼女に会えばいいのか。
ロゼ「ちゃんと考えておく」
言葉を濁してロゼはミクリオの背中を見送った。
ロゼは二人に連れられて、キャラバン隊が借りている裏通りの倉庫へと入った。
エギーユ「ロゼ」
低い声にロゼはびくりと肩を震わせた。
声の主をそぅっと振り返り、身を縮める。
ロゼ「エギーユ……」
名前を呼ぶと、普段穏やかな彼が眉を釣り上げた。
201 :
◆U8ABys6DMo
:2022/04/20(水) 12:48:41.12 ID:/IiYP4EV0
エギーユ「怪我をしたと聞いた。大丈夫なのか」
ロゼ「大丈夫だよ。ライラが治してくれた」
エギーユ「本当か?」
疑り深くこちらを見ているのはエギーユだけではなかった。
あの場にいたアン・フィルは泣きそうな顔をしている。アン・トルメも彼女から話を聞いているのだろう。不安そうにロゼを見ていた。
空気がとてつもなく重い。
ロゼ「もうっ」
面倒になって、ロゼはその場で上着を脱ぎ捨てた。
ロゼ「ほら。なんともないってば」
インナー姿になって二の腕を見せると、やっと場の緊張が解けた。
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