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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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1 : ◆S6ROLCWdjI :2019/03/23(土) 09:15:09.54 ID:mHCNoPnp0
ようこそ、能力者たちの世界へ。
この世界は、数多の能力者たちが住まう世界。

無限大の大きさのこの世界。
多くのことが語られたこの世界だが、まだまだ多くの空白がある。
先人たちの戦い、絆、そして因縁。これらが絡み合い、この世界は混沌としている。
もしかすると、初めて見た貴方はとっつきづらいと思うかも知れない。
――だが、この世界の住人は新しい来訪者にことのほか優しい。
恐れず、以下に示す雑談所や、場合によってはこのスレでも質問をしてみてくれ。
すぐにスレへの溶け込み方を教えてくれるだろう。

【雑談所。質問や現状、雑談などはこちらでどうぞ】
PC【http://jbbs.livedoor.jp/internet/14029/】 

【はじめに】
このスレの元ネタはVIPで行われていた邪気眼スレです。
長く続けるに際して、いくつかのルールを設けています。以下にそれを記します。

この世界は「多様性のある世界」です。
完全無敵の能力は戦闘の楽しみがなくなり、またスレの雰囲気も壊れますので『禁止』です。 
弱点などがあると戦闘の駆け引きが楽しめます。
戦闘では自分の行動結果に対する確定的な描写を避けること。【例:○○に刀で斬り付ける。○○の首が斬れる】など。
基本の心構えですが、「自分が楽しむのと同じくらい相手が楽しむことも考える」ことが大事です。
書きこむ前にリロードを。場の状況をしっかり把握するのは生き残る秘訣です。
描写はできるだけ丁寧に。読ませる楽しみと、しっかりと状況を共有することになります。
他のキャラクターにも絡んでみると新たな世界が広がるかも。自分の世界を滔々と語ってもついてきてもらえません。
コテハン「推奨」です!
基本的に次スレは>>950が責任を持って立ててください。無理なら他の能力者に代行してもらってください。また、950を超えても次スレが立たない場合は減速を。
スレチなネタは程々に。
スレの性質上『煽り文句』や『暴言』が数多く使用されますが過剰な表現は抑えてください。
基本的に演じるキャラクターはオリキャラで。マンガ・アニメ・ゲームなどのキャラの使用は禁じます。(設定はその限りでない)

【インフレについて】
過去、特に能力に制限を設けていなかったのでインフレが起きました。
下記の事について自重してください。

国など、大規模を一瞬で破壊できるような能力を使用。
他の人に断り無しに勝手に絶対神などを名乗る。
時空を自由に操る能力、道具などを使用する。時空を消し飛ばして敵の攻撃を回避、などが該当します。
特定の物しか効かないなどの、相手にとって絶対に倒せないような防御を使う。
あくまで能力者であり、サイヤ人ではありません。【一瞬で相手の後ろに回り込む】などは、それが可能な能力かどうか自分でもう一度確認を。
全世界に影響を及ぼしたり、一国まるごとに影響が及ぶような大きなイベントは一度雑談所でみんなの意見を聞いてみてください。

 勝手に世界を氷河期などにはしないように。

能力上回避手段が思いついても、たまには空気を読んで攻撃を受けたりするのも大事。
エロ描写について

 確かに愛を確かめ合う描写は、キャラの関係のあるひとつの結末ではあります。
 なので、全面的な禁止はしていません。
 ですが、ここは不特定多数の人が閲覧する『掲示板』です。そういった行為に対して不快感も持つ人も確実に存在します
 やる前には、本当にキャラにとって必要なことなのか。自分の欲望だけで望んでいないか考えましょう。
 カップル、夫婦など生活の一部として日常的に行う場合には、一緒のベッドに入り、【禁則事項です】だけでも十分事足ります。
 あまり細部まで描写するのはお勧めしません。脳内補完という選択も存在しますよ。

前スレ【https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1550412867/】
wiki  【http://www53.atwiki.jp/nrks/
2 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2019/03/23(土) 09:52:49.93 ID:qjuKmnzw0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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3 : ◆S6ROLCWdjI [sage]:2019/03/23(土) 13:40:09.43 ID:mHCNoPnp0
【街中】
【そいつは今日も買い出しに出かけていた。向かう先はスーパー。今日も今日とて料理の練習をしたくって】
【無数にブックマークしてあるレシピサイト。はたまたSNSのお料理アカウント、見ながら何を作ろうか】
【鼻歌交じり、呑気に考えているだけだった。だけだった、はず、なのに】

………………あれっ?

【スマホの液晶を撫でる指先がふと凍りつく。フォローしているお料理アカウントのひとつ、ホームを覗いて】
【目が釘付けになる――料理のりの字もないよくわからないリツイート。じっと見つめるのなら】
【そこからハッシュタグに飛んで、さらにまとめサイトにまで飛んで――歩む足取りが完全に止まる】

【黒いオーバーサイズのスウェットを、ワンピースみたいに着ている少女。目立つ赤髪。スマホを見つめる視線も同色】
【すっかり暖かくなったからタイツの類は履かないで――生足の先に靴下と、これもまた真っ赤な厚底靴】
【そんな出で立ち。街中に溶け込むにはまあすこし髪が目立つ、その程度の子だったけれど】

【(友達が実はカルトの残党だった。そしてそれを知り合いが――伴侶の属する組織が、工作して匿っていた)】
【(そんなことを知ってしまった。だけど彼女にとっては「そんなこと」どうでもよかった)】
【(一番肝要だったのは――ひとつだけまとめられた呟き、しかしさしたる反応もされなかったはずのそれ)】

【 「相手の女、冒涜者じゃね?」 】

…………………………、う、……ゔぇ、っ、

【――流れ続ける人混みに肩を押されて。思い出したかのように二歩、三歩ふらついてから――蹲る】
【スマホを持つ手と逆の手で口元を押さえていた。気分が悪くなったようだった。そうしていれば流れる人々も】
【さすがに少女を放置するわけにはいかなくなって――「大丈夫ですか?」「気分悪いの?」】
【彼女を囲むようにして、ほんのちょっとした人集りができる。その中心で彼女は――顔を、真っ青にしていた】
4 :?????? ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 14:18:41.64 ID:QhqfSCns0
【――――国を越えての情報の伝達は、ネットワークが発達した今の時代、それこそノータイムで成立するもので】
【『コト』が起きてからさほどに間を置かず、『彼ら』は自分たちが、知らぬ間に危うい立ち位置にいる事を、知らされる事になる】



【――――風の国 『導人会』出張所】

――――ジャファー、ジャファー聞いたか!?
「声がでかいぞガゼル……言われずとも、こっちにも報告は届いたって……」

【現在、風の国にて急速に、知名度と支持とを伸ばしている、政治結社。次の国政選挙に名乗りを上げるだろうと、しきりに話題を浚っていた『導人会』】
【その最高幹部の2人――――ガゼルとジャファーは、共に切迫した様子で、顔を突き合わせていた】

……これは、どう考えれば良い? このカード……そうおいそれと切っていいものではなかったはずだが……!?
「言われずとも……相談なしに、こんな危ない橋を渡るもんかい。見ろ……流れの着火点は別だ
 恐らく……誰かの描いた絵だな。個人が、こんな詳しく事情をペラペラできるもんかい……
 誰かにとって、こっちの「突然の戦闘」によって、事情が変わった。だから、ついでに俺たちに導火線を引いてきた……んなところだろ」

【『外務八課』の存在。朧気ながら、彼らもその情報自体は触れていた。だが、まだ利用価値も準備も無いと、温めていたはずのものである】
【それが、急速にネットワーク上に拡散している。それどころか、その発信源の1つが、自分たちに連なる様な印象を与えるもので――――】
【――――拙速の裏工作が、自分たちに絡みついている。それを理解した2人の危機感は、徐々に煽られていく】

……『戦略・対策部』としては、どうする? こんな流れ、下手に巻き込まれれば、無用な火種だぞ?
「確かに……せっかく大っぴらに、国政に踏み込んでいけるかってところだってのに、ここで足を引っ張られたくはないな
 ――――けど、考えようによっては、上手い具合に調理できるんじゃないか?」
なに……?
「――――こそこそするから後ろめたいのさ。やるんだったら大手を振って、胸を張って堂々と、だ……
 ガヤなんざ使わず、表立ってグイグイ発言してけば良い。そしてヒットしたら……奴らに内政干渉の疑惑ありと、大々的に糾弾するんだよ
 後は今まで通りだ……水の国の醜態を踏むな、それは『魔能制限法』だけでなく、『外務八課』の存在も然りだ、と……手札に加えて、終わりだよ……」

【だが――――彼らも、ただでは終わらない。状況が変わったなら、それに対応して、もう1度利用するまで】
【狼狽は、さほど間を置かずに、狡猾にとって代わられていく――――】

――――簡単に言ってくれるな? それを言うなら、こちらの腹も堂々と探られかねんぞ?
「そんなの、今更だろう……? 疑惑なんざ、虚々実々、今まで俺たちにもついて回ってたじゃないか。何も変わらない……
 それに……そういう手合いを上手い事調理するのが、お前さん……『広報・実働部』代表、ガゼル=イヴン=カーリマン様じゃないのか?」
……本当に、簡単に言ってくれる……だが、まぁ良い……分かったよ。躓きの石は、向こうに蹴り返してやろう……そういう事だな?

――――それと、この流言の発信源、部下たちに探らせなければな……流石に、そこは押さえておきたい
「あぁ、そこから先は兵隊たちにお任せするよ。俺は情報収集と分析、作戦立案に専念だ……」

【――――彼らのするべき事は変わらない。水の国の醜態を殊更に喧伝し、その危機感の中、風の国を上手い方向に誘導する事――――それだけである】

/いわゆるソロール、絡み不要です
5 :?????? ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 14:39:13.27 ID:QhqfSCns0
>>3

――――良い様だ、来な……!
<……本当に、意味あんのかよコレ……?>
しょうがないじゃないさ……見つかったら負け、遅くても負け……旦那の頼みだってんなら、少しくらい身を張るしか、もうしょうがない……
<そりゃ、そうだけどよ……――――っ、い、行こうお姉ちゃん?>
……えーと――――そうだね、急ごう……
{(……2人とも、ぎこちないの、もう少しどうにかならないのかしらぁ……?)}
<(うるっせ! 俺に女の振りしろとか、カメに空飛べって言ってる様なもんだぞ!)>
「(良いから2人とも……今は急がないと……)」

【雑踏の流れは、その時まではなんて事も無かったのだろう。その中に紛れた彼女らが、多少特異な見た目でも、それは正常の中に紛れていた】

【銀色のウェーブがかったロングヘアーに、目元をサングラスで隠し、毒々しい赤い口紅が塗られた唇をしている】
【全身は、飾り気のない黒のライダースーツで固められており、スマートな印象を与える】
【両手足が、どこか不釣り合いな細さの、鋼鉄製のものに接ぎ変えられている、身長160cm前後の女性と】

【灰色のフード付きパーカーに、さっぱりした色合いのチェック柄の入ったスカートを履いた】
【額に、正三角形の形に、赤・青・緑の点が浮かび、それらを繋ぐ様にぼんやりと光の円環が浮かび上がっている】
【少し癖のあるオレンジ色のショートカットと、赤色の瞳が印象的な、身長140cm前後の少女】

【パーカーの少女の手には、やけにごつい銀色のジュラルミンケースが携えられており、それを重そうに持ち歩いている】
【いささか奇矯な2人組は、それでも人の流れの中を、静かに進行している、はずだった】

【――――蹲った少女の姿を認める、その時までは】

……、ん……?
<お、お姉ちゃん……あれ……?>
あの格好……ひょっとして…………?
――――おいお前、アーディンの旦那のとこに、前に顔出してた子じゃないのかい……?

【彼女らも彼女らで、蹲る少女を認めて、声をかけたのだろう。だが、そのニュアンスは、他の面々とは異なっていた】
【――――彼女らは、その姿にピンとくるものがあったのだ。知り合いの、知り合い。話だけは聞いていた、その赤色が、印象に重なって】
【2人は、歩みを曲げて、その少女に声をかける。何か、尋常ではない事が、あったのだろうと――――】
6 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 14:48:01.11 ID:mHCNoPnp0
>>5

……………………?

【朦朧とした目で近づいてくる二人を見上げる。顔色はやっぱりよくなくて】
【ただ、口元を隠していた手だけはのける。スマホはそのまま――例のまとめサイトを開いて】
【本当にぼうっと力なく、辛うじて前を見ているだけの状態だった。それでもなんとか口を動かし】

…………、……おねーさんは、……アーディンさんの知り合い?
そっか、そうだよ……うん。あたし、アーディンさんにたくさん世話になって……
夕月っていうの。ごめんネ、なんか、心配かけちゃったみたいで……大丈夫だから、

【ふらり、危うげな足取りで立ち上がるのだろう。そうして何でもないと言いたげな顔して笑うから】
【明らかに何かしら無理しているのは明白だった。本人的にはうまくやっているつもりなのだろうが】
【…………話題を変えたかったらしい。あるいは逸らしたかった。胡乱な速度で視線を動かして】

すっごい荷物持ってるじゃん――どしたの? 旅行用ではないよね、ケース……
ぎっしりお金が詰まってるとか? ふふ、…………けほっ、

【指さすのは少女が持ったジュラルミンケースだった。冗談めかして笑うのも、やはりどこか下手糞】
7 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 15:01:04.25 ID:QhqfSCns0
>>6

(――――随分な感じだねぇ。何があったってのさ……――――なんか、見てたのか?)

【サングラスの奥で、女性はふと考え込む。不意に体調を崩したというよりは、何かにショックを受けた様な状況だ】
【では、そのスマホに映っているのは何なのか――――流石に、そこを問いただすほどには、胸襟は開かれていなかった】

……やっぱりそうかい?
実はあたしもさ、あの旦那には色々と世話になっててね……話は、ちょっとばかりだけど、聞いてたのさ
――――あたしゃ、ブラックハートって言う。で、こっちが……何というのかな、友達、で良いのか……
<……リベルです。リベル=アシェル……よろしくね?>

【手を貸そうとも思ったが、何とか少女――――夕月は自力で立ち上がり、それを見守りながら、女性――――ブラックハートは名を名乗る】
【ただ、手を貸すのもどうかと言う話だったかもしれない。彼女の両手足は、鋼鉄のニセモノ。通常の義肢と違い、ある程度自在に操れているようだったが】
【そんな冷たい手を貸す事が、良かった事かどうかは、分からないのだ】
【そして、そばについている少女――――リベルも名を名乗る。本当ならその名は彼女『自身』ではないが、余計な事を言って、混乱させる必要もないだろう】

ッ――――……これかい。これはね……そのアーディンの旦那に頼まれた荷物なのさ
大事なもんでね……ただの一抱えのケースだけど、わざわざ2人掛かりでね……
<大事なものだから、直接運んで欲しいって言われて、私たちで……>
<(……なんて言えばいい、この場合……?)>
{(一緒に届けようとしてる所、とでも言いなさい。本当に下手くそなんだから……)}
<――――2人で一緒に、届けなきゃいけないんだ……>

【何かで、気持ちを紛らわせようとしているのは、分かる。それに、2人にとってもその方が好ましかった】
【問題なのは、夕月が興味を示した先――――ケースに触れられて、わずかに2人の表情が曇る】
【殊に『リベル』は、言葉に妙な間を挟んで、口ごもり――――実際には、言動のフリに悩んでいたのだが、荷物の言い訳に口ごもっている様に見えたかもしれない】

――――ともあれ、歩けるかい? 目立っちゃったからね……少し、フケようじゃないのさ

【先ほどまで蹲っていた夕月の周りには、まだ数人の通行人がいたのだろう。ブラックハートは、夕月に歩けるかと問いかけた】
8 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 15:13:32.95 ID:mHCNoPnp0
>>7

【――目を凝らさなくても。そのうちにニュースで見る羽目になるかもしれないのだから】
【ここで聞かなくていいのは本当のことかもしれなかった。「それ」に、何故少女がショックを受けていたか】
【そこまでは解らずとも。……それとも、アーディンに聞けば諒解できるのかもしれず】
【どっちにしたってここで聞かなくてもいい話なのは変わらないけど。それでもいつかは――ばれるのだろうが】

ブラックハート、さん、に……リベルちゃん。うん、よろしく。
……そんな大切な荷物だったんだ。そっか、アーディンさんが頼むくらいなんだったら
本当にすごいものなんだろネ、…………そっか。じゃあ、気を付けて――

【口ごもる動作にはさしたる反応を示さなかった。示す余裕もなかっただけ、とも言えるけど】
【それだけ聞いたら――あろうことかさっさと踵を返し、帰ろうとまでするのだった】
【今は誰とも会いたくない。そう言いたげな態度と言動、しかし実際のところ身体はそれについていかず、】

………………っあ、……へい、き……だよ。歩ける、あるいて、帰れるから……

【嘘もいいところだった。二、三歩目でよろけて倒れかけた。ならば腕を引っ張ってでも動きを止めて】
【どこかしらで休ませてやるのが「ただしい」はずだった。だけど少女はそれすら嫌がる素振りを見せるから】
【「何かあった」のはどう考えても明白だった。……それも、アーディンの知り合いたる二人には言い出せなさそうな】
【そういうことを隠していそうな気配。――なら、前言撤回、問い詰めてやったほうがいいのかとも思わせる】
9 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 15:32:27.33 ID:qRStJCCTo

【焼け付いたような白い午後だった。マスメディアの垂れ流すニュースは何時にも増して喧しかった】
【 ─── 水国の外務省に属している秘匿機関が、種々の違法な軍事作戦に関与し、剰え壊滅した筈のカルト教団/その幹部を雇用していたという風聞】
【街頭を見上げる人々の騒めきが途絶える事はなかった。誰もが誰もを疑っていた。この街に平和が齎された事などあったろうか】

【水国/首都フルーソ。"最高議会"野党の主要本部/その一ツである高層複合ビル、"ウォーターゲート"】
【硝子を基調に彩られた、ごく清潔なエントランス。 ─── 入口近く、柱の裏側。人影一ツが佇んでいた】



    「状況、開始。」



【冬も終わるというのに厚手のトレンチコートを着込んでいた。一瞥するに上等なスーツは一張羅にも見えた】
【ハンチング帽を目深に被って、 ─── 耳朶と口許に何かを付けていた。嗄れた声が独白のように囁いた】
【ひどく人目を引くべき男だった。それでも傾き始めた陽に晒されて雑踏は疎らだった。ならば、或いは】


/そんなに長いロールにはならないかもしれません。しばらく見ています
10 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 15:33:03.01 ID:QhqfSCns0
>>8

……色々訳ありでさ。あたしの身体、ほとんどがニセモノなのさ……
ま、生きてるだけで儲けものだから、今更そんなに気にしちゃ、いないんだけどね?

【夕月の機微から、ブラックハートは自分の体に、夕月がまた、何らかのショックを受けたらしい事を理解したようだった】
【苦笑しながら、黒鋼の腕で、金属繊維の髪を掻き撫でる。流石に、間接的に面識があったとはいえ、初対面の人間に対して詳らかに話す事でもない】
【ただ、自分は気にしていないと笑ってごまかすのが、精一杯だった――――夕月の方にも、事情があった事など露知らず】

(……流石に、メンテナンスも……限界が近いかもしれない。あたしゃ、くたばる前に……何が出来るってんだろうね……)

【そして、ブラックハート自身はと言えば、既にいつ死んでもおかしくない環境に身を置いている】
【表層を取り繕いながら、ふと心に陰が差さる。生き延びた事の意味を、なす事はできるのだろうかと】

あぁ……ちょっとあの旦那の『裏』に触れる事だし、ほら……今色々ときな臭いじゃないか、櫻州とか色々と、ね……
何とかしなきゃいけないのさ。だから……命を張る事にも、なるというか、ね……
<……本当は、『UT』にお世話になってるんだけど、私たち……アーディンさんが、気に掛けてくれたから、お手伝いをしてて……>
{(――――可愛くなってきたんじゃない? 初々しいランドちゃん?)}
<(うるせえぞルヴァ! お前後で覚えとけよ!?)>

【ケースについては、微かに仄めかす程度に抑えた。聞いている『敵』――――彼女のやり口なら、こんな会話からすらも、糸口を掴まれてしまいかねない】
【ただ、1つだけ言える事は――――ブラックハートとリベルもまた、戦っているという事だろう】

え……あぁ、大丈夫なら……――――ッ?
……夕月、あんたすっかり参っちゃってるじゃないのさ! 今は無理ってもんだ……リベル、少しばかり……!
<ま、待てよ! あぁ、いや……ちょっと待ってよお姉ちゃん! 『これ』は……!?>
……放っといて良いものだったら、放っとくさ……そうはいかねぇだろ、リベル……! 夕月、ちょ……――――ッ

【そのまま去ろうとする夕月を、釈然としないままに見送ろうとしていたブラックハートだが】
【そのコンディションが、想像以上に悪い事を悟り、思わず駆け寄る。同時に、明らかにリベルの言動が乱れるが】
【それよりも――――何か、意地を張ってる様な夕月の態度に、ブラックハートは唇を噛み締めた】

――――あたしに話せないなら、ラベンダーを呼ぶよ。あいつなら、なんか話してやってもいいんじゃないかい……?

【夕月の頑なさに、ブラックハートはラベンダァイスの名前を出す。もう少し、気心の知れた相手なら、という事なのだろう】
【そうして、通信端末を取り出す。このまま、夕月を放っておくつもりはない様だった】

……なんだ、なんかバズッてる……?

【連絡を入れるかどうか、それを勘案しながら端末を取り出したブラックハートは、通知に気づく】
【――――恐らくは、夕月の見たそれと同じ情報が、ブラックハートの下に届いているのだろう】
11 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 15:47:27.23 ID:mHCNoPnp0
>>10

えっ? …………あ、そんな、あたし別にそんなつもりじゃ……
身体がニセモノだなんて、そんなこと! ぜんぜん気にしてないよっ、これ本当だから――

【はっとする。間違えた風に捉えられてしまったことを深く恥じて、ぶんぶん首を振る】
【そうして言うことは取り繕っているようにも聞こえるかもしれないが――かぎりなく本当のことだった】
【そも、夕月という少女自身が「ニセモノ」の命をしているのだから。……それは今、どうでもいいかもしれないけど】

…………そうだね、櫻も、水も――いろんなことがあって。
アーディンさん、やっぱり忙しい? だったらパーティしてだなんてワガママ言えないや。
あのネ、……あたし、アルクさんやレグルスさんにたくさんお世話になったから。そのうち会いに行きたいって、

【「思ってたんだけど――」 声がどんどん細くなる。ふたりの口から聞くに、そんな暇はないのだと】
【理解してしまう。だから彼らに別れの挨拶を告げることすらできないのだって、我慢しなければならない】
【しょうがないって思っていた、こんな世界だから。だから――目の前のふたりもまた戦士であること、理解するのだろう】

…………っ、……ラベンダーちゃんにまで、迷惑かけらんないよ。大丈夫、ごめん……
ちょっと休んだらきっとよくなるから、だから――そうだな、それまでちょっとそばに居てくれたら、
それでいいから、――、…………。…………バズ、…………ああ、

【ブラックハートが端末を出すのなら、やっぱり意地を張ったように首を横に振るのだろう。そうして】
【彼女が何かに気付いたのを悟る。であるなら、諦めたような顔をして――嘆息交じりの声を上げた】
【ならば十中八九、「それ」が原因なのだとわかってしまうのだろう。だって夕月は、縋るような目つきをしていた】
【お願いだからそれを見ないで、なんて顔。しかし彼女らは初対面、そんな懇願に付き合ってやるほどの絆はないなら?】
12 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 16:10:25.04 ID:QhqfSCns0
>>11

お、おいおい……そんなに焦るような事でもないんじゃ――――
(ぁ――――アリア……そういや、「そういう事」も、有り得る訳か……)
ま……良いじゃないのさ。どうあれ『今』が、一番あたしらに結びついている。それだけさ……

【確かに、取り繕いに思えていた。ブラックハートとしても、昔に比べて丸くなったのか。それを宥めるような言葉がすんなりと出てきたが】
【――――そうれは同時に、相手の事を察する能力が低減している事も、意味していたのかもしれない】
【昔のブラックハートなら、もう少し早く察する事も出来ただろう。アリアの様に――――「自分みたいな」奴も、いない事はないのだろう、と】

――――あ……あぁ、そういう事かい……
……奴らの事は、あたしも悔しく思うよ……一度、危ない所を助けてもらっちまってたし、ね……
でも……そうだね。旦那、何でも近頃、敵に一杯食わされたって言ってて、最近ピリついてるのさ……
――――生きてるうちに、顔を合わせておくのが、一番なのかもしれないけど……――――『人間』どもはまだ、虐げ足りないし、泣き足りないらしい……ッ!
<……>

【夕月と、アーディン達との約束。それを聞くと、ブラックハートも表情を曇らせる】
【レグルスとアルクの、虚神との戦いの中での戦死。それは、流石に彼女も無関心ではいられない】
【落ち着いたら、その時こそ――――そんな約束を、一体どれくらい果たす事が出来るのだろう?】
【久々に、「『人間』の愚かしさ」を呪いたくなる心地が、ブラックハートの中から湧き上がっていた】

……逆に、こんな時だからこそ……アーディンの旦那には、息抜きが必要かもしれないって、話かもしれないけどね
――――切れちまいかねないよ。今のままだと……この世界、そのものが……
<お姉ちゃん……でも……>
……所詮、無いものねだりってか……やり切れんね……

【消沈する夕月を慮ってか、夕月の方から声を掛けたらどうかと、それとなく仄めかすブラックハートだが、静かにリベルが諫める】
【――――今の夕月は、明らかに精神的に摩耗している。とてもそんな気分にはなれないだろう、と】

……そうかい。でも、無理はしないで。確かに、少し落ち着いた方が良い……あたしらも、少し早いけどここで休憩と行こう……
――――ん…………

【少なくとも、そばに居てくれれば――――その言葉が聞けただけ、前進なのだろう】
【ブラックハートは連絡は諦めたようだが。もののついでとばかりに、ネットを閲覧してしまう】
【――――気持ちが急いていたのだろう。夕月の言外の懇願に、気づいてさえもいなかった】

――――なんだこりゃ。暇なのか……それとも感覚がアホになってるのか。こんな馬鹿馬鹿しい事で、よくもまぁ…………

【蜜姫かえで、そして『外務八課』の疑惑。それを目にして、ブラックハートは呆れた様な態度を見せるだけだった】
【『コト』の重要性を、理解していない。ただ、慌てふためく民衆の、集団パニックの様なもの、程度にしか、受け取っていなかったのだろう】
【夕月の不安は、取り越し苦労だったのかもしれない――――が】

――――『冒涜』…………ッ?

【――――ブラックハートが漏らしたその一言、声のトーンが下がったのは、間違いないだろう】
13 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 16:21:45.86 ID:mHCNoPnp0
>>12

…………そっか。今みたいなときこそ、……会ったほうがいいのかもしれないのか。
ならそのうちにでも行こうかな、えへへ……アルクさんとレグルスさんってどんなものが好き?
プレゼント、持っていきたいの――あたしはアルクさんにもらってばっかりだったから、……、

【曇り行く空気を振り払うようにして、またしても話題の転換。ふたりの墓前に供えるものについて】
【あれやこれやと思いを広げていくのも――束の間の話でしかなかったのだろう】
【近くのベンチにでも座って、三人は休息を取り始めるだろうか。そしたら、ブラックハートは見てしまうから】

【蜜姫かえで。外務八課。その単語が耳に入っただけだとしても、きっと夕月は怯えただろう】
【何せ前者は友達だった。後者に至っては、伴侶の属する組織だった。それが今や「炎上」だなんて】
【そんなスラングじゃ言い表せないほどに燃え上がっている。だけど問題はその次であり、】

……………………っヒ、………………、

【冒涜。その単語が、低い声にて紡がれたことに関して。夕月は間違いなく怯えの表情を見せた】
【なんなら顔なんか見ていなくてもわかってしまうのだろう。びく、と痙攣するように体が震えていた】
【それはどういう感情によるものだったろう。……ブラックハートが思い当たった節、「自分みたいな」、――】
【そこが引っかかるのかもしれなかった。すなわち、この少女は“冒涜者”とやらに害されたのではないか、と】

【そう考えることもできた。けれど実態は少し違うようにも見えた――夕月の表情を見返してみるなら】
【限りなく、「そんな怖い声を出さないで」と言いたげな。そんな顔をしているのだから】
【おかしな話だった、まるでこの少女が、“冒涜者”とやらの身内――それもいい意味でのもの、みたいな態度、取るのだから】
14 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 16:42:00.65 ID:QhqfSCns0
>>13

……本当ならね。会えるうちに会っておく。今はそれ、馬鹿に出来ないんじゃないか、多分ね……
――――2人の場所だったら、あたしも知ってるし、レグルスは1度、『会って』きた……

【今のご時世、どうしてもネガティブな意味合いを払拭し切れないが、それは大事な事なのだろう】
【レグルスの言っていた「悔いのない様に」――――例え戦士として生きる人間でなくても、個の心がまえは、大事なのかもしれない】
【それは、生者に対してだけでなく、死者に対しても同じ事だと言わんばかりに】

アルク? ……あいつはね、なんでも……意外と、料理なんかが好きだったそうだよ
よく、サンドイッチだのラスクだの、頬張ってたらしいし、たまに自分で作ってたらしいね……
<レグルスは……レグルスさんは、お酒……重たいビールなんかが、好きだって言ってました……
 お姉ちゃん……お墓参りに、お酒持って行ったって……>

【彼らは、アーディン程にはレグルスとアルクについては、詳しくない。それでも、その人となりを伝えることくらいは出来た】
【アルクについては――――かつての『たんぽぽ』でのやり取りが思い出されるだろう。中性的な風貌だったが、そういうところは得意だったらしい】
【そしてレグルスは、ある意味、言うまでも無い事かもしれない。見た目からして、豪快に酒を煽っているのが似合う奴だった】
【彼の下に持っていくとなると、もう酒以外に思いつかない。それが2人の見解らしい。それも、妥当なものだろう】

【――――そんなやり取りも、すぐに上塗りされることになる、その異変――――】

……背の、馬鹿高い女……? ――――まさか、アリア……!?

【関連情報を覗いていくと、1つ気になるものがあった。そのキーワードに、引っかかる人物が、記憶の中にあったのだ】
【――――自分の同類。恐らくはそうだった彼女。同じくレグルスを弔った彼女が、この騒動に関係している――――】

――――考えてみたら、このかえでってのも、あたしみたいなもんか――――

【呆れつつも情報を流し見して、その中にブラックハートの中に、妙な感慨がわき上がった】
【本当だったら、自分だって、今すぐにでも往来から石を投げつけられ、打ち殺されていてもおかしくない人間なのだ】
【それが、話題の渦中にあるという事――――思わず、己が身と重ね合わせて考えてしまい】

ッ――――、ゆ、夕月、どうした……?
お前、こいつと――――「この畜生」と、何かあったんだな……!? ――――ごめんな、それでそんなに……
<…………ッ、おね――――――――ブラックハート……ッ!>
あぁ、なんだ……ッ? ――――――――ッ?

【夕月の失調に、ようやく気付いたブラックハートが、慌てた様子でその顔を覗き込む】
【夕月を心配している様ではあったが、その言葉は、そして頬のヒクつきは、明らかな怒りを押し殺しているもので】
【ようやく、夕月の不調の原因が、この一連の騒動にあるのだと理解して、ブラックハートはバツが悪そうに、夕月に謝罪する】

【――――それが、「それだけではない」事に気づいたのは、リベルの方だった。彼女も、低いトーンでブラックハートの名前を呼びながら、その袖を引っ張り】
【改めて、ブラックハートは、夕月を、何かを言いたくて言い出せなさそうな、その微妙な態度に気づくのだった】
15 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 16:58:15.07 ID:mHCNoPnp0
>>14

………………、そっか、じゃあアルクさんにはお料理――ピクニックに持ってくみたいなやつがいいのかな。
あたし最近練習してるんだ、だからきっとマシなのが作れるようには、なったし、……レグルスさんはお酒、
そっか、………………そっか。ふふ、ふつうに、パーティの準備、するみたいな――――

【青い顔のまま。話の節々に意味深な沈黙を挟んで。話すのはやっぱり、話題を逸らしたいからか】
【少なくとも無理矢理作った笑い顔はもはや引き攣り顔と言ってしまったほうが、正しかった】
【そのまま楽しい、幸せな――近しい未来の話だけしていたい。させてほしい。どうか、そうさせて】
【願うように呟くのはほとんど譫言のような響きを持って、……しかし、ブラックハートは気づいてしまうから】

ち、が…………違うっ、……ちがわないけどっ、何もなかった、わけじゃないけどっ、
…………むしろたくさんあるんだけど、…………、そうだよね、「畜生」だよね。
ハートさんだってわかるもんね、何もされてないハートさんでも……こいつはひどいヤツだって。

あたしだって、…………あたしだってわかってるよ、“冒涜者”だなんて、
本当だったら生きてていいようなヤツじゃないってわかるよ、真っ先に死ぬべきヤツだって、わかってるよ――

【ほとんど独白のように一方的に喋り始めるのは、どこか強迫観念に囚われた患者にも似て】
【表情は依然として引き攣り笑いのままだった。いま自分が口にしていることが限りなく正しいと】
【自分で自分に言い聞かせて安心を得たがっているような――だのに身体はそれに反比例して】
【震え始めるのを、二の腕を掴んで抱きしめて、押さえつけるようにして――血反吐を吐くみたいに言うから、】

―――――やっぱりそうだよね。あたしがおかしいんだ、……ミアが今度こそ間違いなく殺されちゃうかもって!
そんな当たり前のことが、………………あたし怖いんだよ、だって、だってミアは、あたしの…………

【吐くものがなくなってしまったなら最後、本当に本当のことしか言えなくなってしまうのは道理だった】
【それでも最後の言葉だけはどうにか言わないようにして、我慢しているのは明白だった】
【唇は依然狂ったみたいに端を吊り上げて笑うのに、目だけが限界まで見開かれて、ぎちぎち音を立てそうなくらい】
【であれば、わからせてしまうのだ。この少女もどこか「おかしい」。だって何故だか、“冒涜者”を想うような言葉を、口にしている】
16 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 17:20:01.81 ID:QhqfSCns0
>>15

(……考えようによっちゃ、これ……これも、残酷だな……ドラッグに逃げるってのを、まんま見てるみたいだ……)

【なんて事のない話題に興じながら――――興じようとしながら、必死の作り笑いをしている夕月に、なんとも言えない心境になる】
【無理をしている事が、手に取る様に分かってしまうから。そして、その無理を、更なる『無理』で塗りつぶそうとしている】
【――――こんな時に「しっかりしろ」などと言うべきではない。正解が、正着手が見えないから、ブラックハートは何も言う事が出来なかった】

<……ブラックハート、ちょっと……>
――――夕月、今はもう何も考えなくていい。余計な事は、雑音は、もうこれ以上……ッ――――!?

【そんな無理が、逆方向に溢れ始めた――――リベルはもう、偽装している口調を投げ捨てて、ブラックハートに厳しい視線を向ける】
【ブラックハートとしても分かっていた。夕月に、この現実を見せるべきではない。シャットしなければならない、と】
【――――だが、もう遅すぎた。恐らく、崖際の巌を、転がしてしまったのだ】

――――ッ、ミア…………!?
<……ブラス、フェ、ミア――――ブラックハート、もしかして、夕月は……!?>
……言うんじゃないよ、『ランド』――――分かってる……分かってる。安くはないよ……何か、とんでもない、何か……あるのは、分かってるんだよ……!

【そして、夕月の口から漏れ出た愛称――――『ブラスフェミア』を表すのだろうその言葉に、2人は息を飲む】
【ブラスフェミア。恐らくは、夕月にとって、因縁浅からぬ関係であり、そして――――話題の渦中に居る、台風の目】

【――――もっと言えば、何よりも――――】

――――――――夕月、ちょっと良いかい…………――――この刻印、見た事は無いか……?

【ブラックハートは、少し間をおいて、取り出した紙に何やらマークを書いていく。30秒は掛からないだろう、書き上がったそれを、夕月へと示して】

――――これは、『ブラスフェミア』と言う人物を表す、或いは……彼女が自身で使っている、シンボルマークだって話だ……

【やりきれない様に、しかし抑えきれない怒りを表すように、ブラックハートは、努めて平明な事実を口にする】

――――アーディンの旦那の保護してた『子供』が、このマークを刻み付けられて、バラバラにされちまったんだ
……アーディンの旦那に、一杯食わした敵って言うのが……子供をズタズタにしてのけた、ブラスフェミアって女なんだよ……!

【そのマークの出所。それは、アーディンの――――恐らくは、彼の善意か何かで面倒を見ていた子供の、凄惨な有様にされた体に残っていたモノ】
【――――アーディンが現在、敵として戦っているのは。――――そこから先は、もう言う必要も無いんだろう】

【――――しかし。ここに来てブラックハートは、全く突拍子もない事を、口にし始める】

――――夕月。あたしゃ実は……元『機関』の操り人形だったんだ。セリーナが……命がけで助け出してくれて、アーディンの旦那が、世話を焼いてくれた……
おかしいよな? そもそも、敵としてさえ会った事のない、知らない他人に過ぎなかったってのに、さ……

――――他人であっても良い。話せる事があるなら、話してくれないかい? 思い違いかもしれないけど、あたしゃ……なんだか、あんたが……

【他人に隷属させられていた過去。それを持っているブラックハートは、夕月の事を「放っておけない」と思ったのだ】
【もしかしたら、何か束縛の下にあるのかもしれない。それが事実ならば、どうか話して欲しい、と――――】
17 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 17:41:07.81 ID:mHCNoPnp0
>>16

【描かれたシンボルを見て、引き攣っていた唇がぐっと噛みしめられる。それだけで十分だった】
【肯定も否定もしなかった、けれど前者であるのは明らかだった。だって見覚えのないものを見るなら】
【こんな顔などしないはずだ。こんな、――ああ全部が終わってしまった、なんて悟ったような、顔】

……………………こども、を、…………ずたずた……?

【そうしてオウム返しのように呟く声色にも――やはりどこか心当たりがあるとでも言いたげな色が含まれる】
【だって彼女は、件の女から直接聞いていた。「ちょっと難しいお仕事があるから」、つい最近のこと】
【であれば「それ」が「そう」だったのだと、理解してしまうのだ。もはや逃げる場所、逸らせる話題などどこにもなく】

【――――もいちどぐう、と唇を噛みしめる。何も言い返せることなどない。これで終いだと思って、けれど】
【ブラックハートがいくらでも言葉を選んで、思慮して、言ってくれているのがよくわかった。……わかったからこそ】
【夕月はひどくつらそうな顔をする。俯いてしまう。軽く頭を横に振るのであれば、それは決別の証となって】

………………ハートさん。ハートさんとあたしは、きっと、……違うよ。
ハートさんはきっとひどい人に無理矢理言うこと聞かされてたんでしょう? ……あたしはそうじゃない。
あたしはあたしの意思で生きてる、今も、昔も、これからも――だからあたしはかわいそうなんかじゃない。

あたしは、………………あたしの意思で、ブラスフェミアを見捨てない。
見捨てられない、じゃなくて――――見捨てたくない。だから、………………だから、

――――――――――――ごめんなさい。ねえ、伝えておいてくれる?
アーディンさんに、…………シャッテンさん、ラベンダーちゃん、……アルクさんと、レグルスさんにも。
あたしきっと、…………みんなに銃口を向ける、悪い子になる。ミアのこと、殺されるの、いやだから――

【束縛されている、と言うのなら――きっとその感情にそうされているのだ。“冒涜者”が術をかけたとか、】
【そういう話ではなくて。この少女はきっと、あの女に、捨てきれない――膨大な熱量を持った感情を抱いている】
【それはきっと、今しがた口にした人々への感情を束ねたって叶わないくらいに轟轟と燃えているものだった】
【もう消し方すらわからないのだろう。抑える方法すら。だから、――少女は徐に、提げていたショルダーバッグを探って】

――――――――ほんとうはごめんなさい、だなんて言えないくらいひどいことしてる自覚はあるの、
だけどやっぱり、どうしても、…………ごめんなさい。だから、…………アルクさんに、これを……
…………もうあたしにはこれを使う資格なんてないから。だから、……返しますって。ごめんなさいって。

あたしのことを赦さないでくださいって、………………伝えておいてくれるかな。

【取り出すのは――やさしい桃色に輝くクリスタル。上質な布に包んであって、大切にしていたことを示すそれ】
【それをそっと手渡そうとして、そのまま――立ち上がって帰っていこうとするのだろう。今度こそ。ふらついた足取りでも】
【引き留められたって振り返りそうにはなかった。だって、たった今、敵対宣言したばかりの相手だった。顔なんかもう合わせられない】
18 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 18:06:53.32 ID:QhqfSCns0
>>17

<……やっぱり、な……>
…………

【その反応を、傍から見ていれば、実に分かりやすいものだったのだろう。『リベル』――――現在は『ランド』の人格だが――――は、静かに頷いた】
【それを、ブラックハートも理解して。すぐにその紙を握りしめて、手を下ろす】

あぁ――――この国の、大物と手を組んで、上手い事その子を誘拐して、その『大物』に言われるままに、道具に仕立て上げちまったんだよ……ッ
あたしゃ、アーディンの旦那があんなにキレたの、見た事ないよ……

【自分たちの身に何があったのか、それをブラックハートは、知ってる限りに話していく】
【つまるところ、ブラスフェミアと言うその女は――――アーディンにとって、シャッテンにとって、不倶戴天の敵と化したのだろう】
【それこそ――――ラベンダーにとっての、アルクにとっての、鈴音の様に】

ッ、夕月……あんた…………ッ!

【被りを振る夕月の言葉――――それは決別の文句だった。ブラックハートは、やはり低い声で唸る】
【夕月の中に何があるのか。それは当然、今日初めて会ったばかりのブラックハートには分からない】
【分かるのは――――夕月は、その本心を明かす事は出来ないと決意し、そしてその『本心』に従い、自分たちと決別しようとしている、その事実だけだ】

――――夕月、違わない…………違うなんて、事はない!!

【渡された、アルクの形見。その中身は分からないが、ともあれ、ブラックハートの中に、それを叫ばずには居られない衝動が、込み上げてきていた】
【またも、無理をしながら歩きだそうとしている夕月の姿を前にして――――その衝動は、もう抑えが効かなくなっていたのだ】

――――自分の意志だからって、言ったな……? そりゃ、あたしも同じ事だ……同じなんだよ、夕月……ッ!
そりゃ、無理やりさ……無理やり、あたしゃ戦わされてた。でも……あたしゃ、別に嫌だなんて思っちゃいなかった!

――――あたしゃ、『人間』なんざ大っ嫌いなんだ……! 今も、正直言えば、それは変わらない……! 無理して、押さえつけてるだけさ……ッ!!
……両親はあたしを売り飛ばしやがった。友達は、あたしを嘲笑いやがった。機関はあたしから『人間』を奪っていったッ!
だから、あたしゃ……『人間』なんか大っ嫌いだった。どれだけ殺しても、飽きるなんて事は無かったんだ!!

気持ちだけが、己の道の全てじゃない!! あんた、そんな辛そうな顔で、旦那やラベンダーに「殺してやる」なんて言えるのかよ!?

【思いの丈を、それこそぶちまけるというに足る勢いで、ブラックハートは叫ぶ】
【――――自分の中の黒い火は、未だにくすぶり続けている。その中で、それでも自分には道がある】
【なぜ、夕月は違うなどと言えるのか。そして――――そんな状態で、どうして選んだ道に後悔しないなどと言えるのか】
【追いはしない。だが、その言葉を叩きつける。ブラックハートは、苛立ちとも辛苦とも取れない何かに、突き動かされていた】

/すみません、飯行ってくるので、次遅れますー
19 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 18:21:31.51 ID:mHCNoPnp0
>>18

………………そっか。あいつ、代価さえ貰えればなんでもやるもんね。
どれほどひどいことでも、……ひどいことされるのでも、なんでも、やるもん……

【どこか納得したように、やはり諦めきった声で呟くのだろう。しかし、代わりに謝るなんてことはしなかった】
【そんなことをしても無意味だと知っていた。冒涜者、その死で償うことすらできるのかもわからないのに】
【そんな無責任な言葉で、この場をなあなあにしようだなんて、できなかった。ぎゅうと目を瞑って】

違わないかな。どうだろう――――あたしはハートさんのこと、よく知らないから、あれだけど。
…………あたしは人のことが、みんなのことが大好きだよ。大好きな人のこと、傷つけるヤツ以外はみんな好き。
いろんな好きのカタチがあるの、友達としての好きとか、信頼できるから好きとか、それ以外にも――

――――――――でもね、「好き」にはね、順番があるの。どうしても。
覆せないの、みんなのこと好きだけど――それでも特別好きな人のことのことを、どうしても優先しちゃう。
あたしはそういう、―――――化物だから。化物だから殺すよ、みんなのこと。


     だってあたし、イズルのことが好き。…………冒涜者だなんて呼ばれていても。


【――唐突に、ふたりの知らぬ人名が出される。それが“冒涜者”の本名であることは想像に難くない】
【振り返らなかった。背を向けたままだった。然るに表情は見えなくて――見せたくなかったのかもしれない】
【辛そうな顔してるだなんて思わせたくなかった。あるいは、最早目にするだけでも悍ましいくらいの】
【化物の顔になっていたのかもしれなかった。だから見せなかったのは、少なくとも、最後の恩情であり】

【――――やはり立ち去ろうとするのだろう。分厚い靴の底を鳴らして、……今度は背中にどんな声をかけられても】
20 : ◆rZ1XhuyZ7I [ saga]:2019/03/23(土) 18:29:56.76 ID:juD1R3Ct0
>>764


「氷の国軍上級大佐メルツェル≠ニいう、ロクな手合いでないという事は肯定しておくよ。」


                ―――メルツェル先生。


【現れたのは無機質な雰囲気を漂わせる存在だった。】
【絹のような腰まで伸びる白髪、機械で出来た二本の角のようなものが耳の上より伸びており】
【瞳はカメラのシャッターのように幾重にも層が重なっており金属的な光を放っている】
【ネイビーのロングスカート型軍服の上から銀色のマントを羽織っている長身の女性。】

【その姿を見て少年は感極まったような、悲しみのような、複雑な表情をしてから】
【何か言葉を発しようとするが、メルツェルと名乗った女性はそれを制して少女へと向き直る。】


「貴女方の求めるシステムは我々の目指すところにも含まれる。それに」
「ご存知の通り、先日の戦闘によって我が軍は大きなダメージを受けた。尤も私もアーカイブで見たのみだが」
「故にそこを補う戦力のためのコストはそれなりに出せるだろう、貴女が求める額かは分からないが。」


「ただ、今すぐにでもというのであればそのようなシステムを一つ知っている。」
「石板の中の老人達≠ェ織りなす巨大な経済システムをね。」


【メルツェルと名乗った女は機械音声のような声色で淡々と話す。】
【氷の国軍―――先日の櫻州≠ナの戦闘において魔導海軍に敗れ去ったのは記憶に新しい。】
【であれば、狡猾な少女はそんな負け犬の話など相手にしない可能性もあるが】
【さっきまで騒がしかった少年も背後ですっかりとおとなしくなっていた。】
21 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 18:51:18.13 ID:qRStJCCTo
>>20



    「 ─── 大仰な名前だなァ。」「チェスの得意なツラには見えないけれど、まァ、いい。」



【パーカーのポケットに両手指を突っ込んだまま、少女は対手と向き合った。気取らない立ち方をしていた】
【肩の力を抜くというにも幾らかラフな体勢に過ぎるようだった。 ─── それでも笑っているのだから】


「"顧問"として働く分にはワタシも嫌いじゃない。 ─── そっからも少しデカい生き物にノシ上がれるなら文句はない」
「聞かせてみなよ。けれど手短にね」「枝葉末節のムズカシイ話は好きじゃあないんだ。そういうのは飛び込んでみてから判断する」


【小首を傾げながら問う声だった。 ─── 紅いフードの奥で色素の皆無な髪先が揺れた】
【慮外に大雑把な所のある少女であるらしい。だとしても、斯様に彼女は命を繋いでいるのだから】
【そういう遣り方に支障が無いほど世渡りに手馴れているのも事実であるのだろう。 ─── ポケットからガムを探っていた】
22 : ◆rZ1XhuyZ7I [ saga]:2019/03/23(土) 19:07:58.02 ID:juD1R3Ct0
>>21


「良ければ貴女の名前も教えてくれないか、その方がより接しやすい。」


【本当にそう思っているのか分からない無機質な表情でそう言った。】
【口元には微笑みすらも浮かばない、むしろ設計上そうできないかのように。】
【「いい佇まいだ」と、ポツリと呟くように相手を見つめると本題に入る。】


「ああ、ではまず顧問として契約を結ばせてもらうとしよう。」
「―――先程そこの男からも話があったと思うが昼の国≠ヨ介入する。」

「私が引き継いだアーカイブによればすでに星の国≠フ企業と共同して波紋は起こしているようだ」
「そしてそこに引き寄せられるように大きな渦が起こる。」


「貴女にはオブザーバーとして我が軍への進言を随時行って頂きたい。」
「できれば貴女の知るルートでの情報収集も行って欲しい所だが、それは本意ではないのだろう。」


「基本は、私とやりとりして頂ければいい―――。」


【そう言うとメルツェルは電源が落ちたように何も言葉を発さなくなる。】
23 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 19:31:49.79 ID:QhqfSCns0
>>19

…………ッ!
<……『冒涜者』の肩書に、偽り無しって訳かよ……ッ!>

【2人は、思わず口元を噛み締める。それが、怒りから来るものである事は、容易に見て取れるだろう】
【尊厳ある個人から、命だけを残して、全てを引き剥がしていく。そんな事さえも涼しい調子でやってのける、そんな奴なのだろうと、2人は理解した】
【――――ブラックハートは、かつての己の『飼い主』を思い出して、ランドは、ただ義憤の故に、怒りを燃え上がらせる】
【あのアーディンが、怒りに我を忘れるのも、無理はないと、共感が一致して】

――――――――だから……だから――――それで、ブラスフェミアの為に、本気で好きだって言える友達を、弟分妹分を、1人残らず、殺していくって言うのかい……ッ?

【夕月の言葉は紡がれ、そして結ばれる。その全てを聞き届けて――――ブラックハートは、やはり低く、呻くような言葉を吐いた】

――――あんたは『化物』なんかじゃない。『人間』だ、呆れ果てるほどに『人間』なんだッ!!
誰かの事を「好きだ」なんて言える奴が……それを殺して回って、血にまみれる事に、後悔しないとでも思うのかッ!?
自分の手で、そばに居て嬉しいと思う人の命を捻り潰して、平気で居られる、そんなつもりでいるのかッ!?

そんな奴は初めから、誰かに心を許したりはしない――――嫌いでもない奴を殺せる奴は、そんなにみんなを好きになったりしないんだよッ!!

【――――『人間』だ。これは自分の最も憎む、愚かしさの代名詞としての『人間』そのものだ】
【ブラックハートは気づく。そして気づいたからには、もう黙っていられるはずがない。仲間たちのために、夕月には、爪痕を残しておかなければならない】
【無意味だろうが、過ちに気づかせる取っ掛かりになろうが、いずれ敵対した時の布石になろうが――――そこに何かを、残しておかなければならないのだ】

――――今のあんたに言っても無駄だろう。けど、これだけは覚えておきな……
そのまま行ったら……あんた死の間際、苦しむぞ、泣き叫ぶ事になるぞ……煉獄の火は、あんたに「これが正解だった」なんて、一瞬だって思わせてはくれないぞ……ッ!

――――レグルスが、愛してたと言った女を、自分で殺した時、どれだけ苦しんだか……夕月、見てなかったから、分からないんだろう……!
……アーディンの旦那たちが、やると言ったら、絶対だぞ……――――例え死んでも、思いを貫く方が大事だって、頑固者……
夕月……あんたもそうなんだろうが――――あいつらだってそうだぞ……あいつらは、死んでもあんたを止める
止められる前に……自分で止まらなきゃ、あんた――――「絶対に後悔する」。これだけは――――何があっても、忘れるな……ッ

【まるで、ifの自分を見ている様だった。グラトンの下から解き放たれなければ――――ブラックハートは、正に今語った言葉の通りに、死んでいただろう】
【――――先に逝ってしまったレグルスと、アルクの事を思い出す。彼らは、今の夕月を見れば――――死ぬだの死なないだの、考えるよりも前に止めようとするだろう】
【だが、哀しいかな。ブラックハートはもう、そんな力を宿してはいないのだ。彼らの様な、我を通す力を、彼女は持ち合わせていない】
【だから、悲鳴のように叫ぶ事だけで精一杯だった。捨て石として命を使うには――――これも残念な話だが、夕月は、彼女の中で、さほどに重くなかったのだ】
【それこそ、夕月の言う『順番』そのものだった。己以外のモノを背負うと、人はどうしてもそうなる。そんな己をブラックハートは歯がゆく思った】

【――――だからこそ言わなければならない。それで立ち止まるにしろ、死の際で後悔として焼き付くにしろ】
【少なくともその歩みは、過ちの道にあったのだと。それを、確信を以て――――】



<……ブラックハート……>
――――行くよ。みらいを……みらいを何とか、この国から運び出さなきゃ、ね……

【ケースの中、正にブラスフェミアの仕上げた『仕事』を携え、ブラックハートたちは去っていく】
【――――戦士の心が、慰められる時は、果てしなく遠いのかもしれない】

/戻りました&ありがとうござましたー!
24 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 19:33:03.14 ID:qRStJCCTo
>>22



   「イュン。 ─── イュン・ベルクト。そンな大切な名前でもないんだ。忘れて貰ってもいいよ」



【求められるなら、端的に少女は名前を述べた。軽薄に名乗っていた。音節全てに異国の訛りがあった】
【見れば顔立ちは真白く在ったが、鼻梁の輪郭は東洋の階調を帯びていた。得意な体質であるのかもしれない/いずれにせよ】



「ふゥん。 ……… ま、素性も知れないPMCsに任せて貰う分には、中々悪くない仕事を当てがってくれるのだ。」
「いいだろう。 ─── 引き受けようジャン?」「きししッ。 ……… 期待以上の働きは、してやるよ。」

「契約だの定款だの面倒臭いコトはこっちで遣り取りしてくれるカナ。」「 ─── そいじゃ、またネ?」



【 ─── 簡潔に快諾して少女は笑った。幼気な笑い方だった。死を鬻ぐ人間の面構えではなかった】
【対手に投げ付ける名刺も複雑な意匠ではなかった/「L.B.」判然としないそのイニシャリズムに】
【連絡先は綴られているのだから、確かに交わす言葉へ不足はないのだろう。 ─── 消え始めた夕焼けの残滓へ、広がり始めた夜の宵闇へ、去りゆき溶ける紅色の背中】


/このあたりでシメで……。おつかれさまでした&ありがとうございました!!
25 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 19:42:54.11 ID:mHCNoPnp0
>>23

後悔なんかするくらいならその前に死んでやる。

【ただ一言だけ、言い返したのはそれだけだった。強がりの嘘っぱちかもしれないが】
【化物じゃないって言われても、人間だって言われても――彼女はもう、その道を選んだのだから】
【間違いだったって正解だったって構わない。彼女にとって肝要なのは、最後まで道を走り切って】
【燃え尽きて死ぬことだけ。踊り狂って死ぬ運命を選ぶ。誰かに足を斬ってもらって、楽になろうだなんて思わない】


【だって誰も知らないんだ。彼女にとって、冒涜者と呼ばれる女が――どういう存在であるかなんて】
【彼女だけが知っていればよかった。誰にわかってほしいわけでもなかった。だから、】
【――この日限りで少女は、日常風景から消え失せるのだろう。あんなに熱心にやってた料理の練習だって、無に帰して】


//おつかれさまでした、ありがとうございました!
26 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 21:24:07.67 ID:6YQiD33u0
>>9
【陽が首を傾げる。山々の稜線、地平の筋が赤々と燃え上がる。朱のインキが空に落とされ、滲む】
【人々は家路に着く。歩を進め、或いは歩を止め、自らの行く先を確かめている。誰も彼も、マスメディアに踊らされながら】
【騒めきが耳を満たす。狂騒が喉を潤す。変わりない街を一人行く】

【それは、白いトレンチコートを着た銀髪の男だった。やや老けた十代にも、若々しい三十代にも見える】
【ふらり、と高層ビルへ近づいていく。ポケットに手を突っ込み、ただの一般人にしか見えない風体で】


───────────────


【空気は未だ肌寒い。吐く息がほんのりと白く染め上がる。もうすぐ春が来ると言うのに、星はまだ目覚めてくれない】
【にわかに、その碧眼が入り口近くに佇む男を見据える。とても澄んだ、宝石のような双眸だった】

/よろしくお願いします!
27 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 21:31:52.26 ID:qRStJCCTo
>>26



【 ─── 射殺すような眼睛に、されど男は動じなかった。その装束は果たして隠れ蓑に類していた】
【インカムの入出力系を幾度か弄って、通信の指向性を変更しているようだった。張り巡らされるような静寂】



  「 ───………… 。」「 …………、 ─── 。」



【白いマスクに隠された口許が微妙ながら動きを示していた。 ─── 何か言葉を発しているらしい】
【然してそれも現今この彼我距離においては判然としなかった。何を語っているのか/誰に語っているのか】
【近付く事は容易であるのだろう。エントランスは疎らな人混みであるとはいえ、それだけの接近遭遇を図るには十分であった。であるなら】
28 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 21:40:34.51 ID:6YQiD33u0
>>27
【白い息を突き破る様に進む。両者を隔てるゲートを横切り、出入りする人々にぶつかることも無く】
【まるで、世界に干渉していないかのような歩み。誰一人として、彼の歩みを阻む者は存在しない】

貴方は─────────

【ひどく落ち着いた、聞いた者に安堵や高揚を抱かせるような声だった。それは1/fゆらぎとも呼称される】
【コンマ数秒の間、上唇と下唇が触れ、瞬きの後には既に開かれる】


円卓≠フ方ですか?


【穏やかに、和やかに、男はそう問いかけた】
29 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 21:51:30.21 ID:qRStJCCTo
>>28


               【掠れたような銃声が、だが甲高く共鳴した。】


【外套のポケットから仄かな白煙が立ち昇る。黒い風穴が在った。リノリウムに薬莢が転がった】
【1発/2発/3発 ─── 対手の頭部に照準されていた。精確であった。アイアンサイトさえ介していなかった】
【流れ弾もしくは貫徹した弾頭はアトリウムの構造に着弾した。偶然にそこは応力的な脆弱性であったらしい】
【 ─── 大袈裟な罅が入った。辛うじて割れていなかった。人混みの誰かが悲鳴を上げた】



     「 ─── 状況終了。状況終了。」「エコー、デルタ05よりチャーリー37」



【何れにせよ男は転瞬に駆け出していた。 ─── 蜘蛛の子を散らすような群衆に紛れようとしていた】
【その速度はしかし尋常なものであった。乾いた色味の背中を追う事は難しくなかった。または追いつく事も同等に】
30 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 22:05:02.50 ID:6YQiD33u0
>>29
【白煙が立ち昇る。まぁ、そうなるよなと思いながら、今日は非番だったことを思い出す】
【子飼いの能力者なのだから非番などある筈も無いのだが、任務を言い渡されていないのなら一応非番だ】
【ふっとポケットから出した手を弾道に合わせて振り抜く。次いで振り下ろす】
【銃弾は、豆腐を切るかの如く丁寧に裁断されていた】

そうですか

【虚空へ向けて返答する。騒めく人混みを一瞥もせず、駆け出す男を追従する】
【風を切り、群衆を抜け、なおも視線は一点を見つめる。付近のビル壁を駆け昇りながら疾駆そして、男の正面まで跳躍する】

悪いが、仕事なんだ
仲間の居場所を教えてくれるなら有り難い

【語り掛ける男は何をどう見ても、丸腰だった。振り抜かれた手に握られた、余りにも小さな何かを除いて】
31 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 22:12:38.34 ID:qRStJCCTo
>>30



  「 ────…………… 。」


【痙攣のような機微を男は示した。なにか明らかに動揺していた。それでもそれ以上を示す事はなかった】
【 ─── 諸手を上げて彼は降伏した。掌中には何も収まっていなかった。瞳だけが矢張り灰色だった】



  「出来ない相談だな。」「もう少し、妥協してくれ」



【マスクの下に隠した唇が述べた。微かに声が震えていた。動揺であるのに相違はなかった】
【追い詰められた立場の人間としては随分と悠長であった。妥協の余地があるものと信じているのだろうか】
【或いは何らかの時間を稼いでいるのかも知れなかった。少なくとも死に恐怖しない類の人間ではないらしい ─── 雑踏の誰かが携帯電話を取り出した】
32 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 22:28:27.23 ID:6YQiD33u0
>>31
【寸分の揺らぎすら介在しない瞳で、降伏の意を示す男を見据える。ヒットマンにしては、些か簡単すぎやしないか】
【そう疑問符が浮かぶ。先程所持していた拳銃であろう武装はどこに捨てた?放たれた弾丸は三発】
【仮にリボルバー式だとしても、後三発は残っている筈だ。故に、どこかおかしさも感じていた】

そこ、そこの貴方。撮影は厳禁です
皆さんも、これはちょっとした企画です。撮影してSNSに上げたりするのはご容赦を

【周囲の人間にそう告げる。どうやら、街中の人間を巻き込むつもりは毛頭無いようだった】


妥協、か
ウォーターゲートを狙うと言うことは、つまりそう言うこと
手放しに妥協してもらえるとでも?


【ゆっくりと距離を詰める。少なくとも、政府高官───それも野党側の───を狙ったであろう暗殺者】
【それをみすみす見逃す訳にはいかなかった】
33 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 22:36:33.35 ID:qRStJCCTo
>>32



「衆人環視の中、尋問でもやるつもりかい。」「 ─── "そういう約束"には、なっていない筈だが」


【 ─── 奇妙な台詞を男は吐き出した。明白になにか狼狽していた。恐怖しているようでもあった】
【コンバット・ハイに見失っていた本質性を漸く自覚してきた人間の声だった。落ち着くように彼は息を零した】


「なあ、何かの間違いじゃないか。」「 ……… こっちから撃っておいて何だが、妙な話だ」
「アンタみたいなのが"来る"とは聞かされてない。」「それなら、おれは抵抗したくない」


【成る可く冷静に事態を説明しようとしている語り口だった。 ─── それが例え第三者に理解しようもない内実であるとしても】
【語るというその行為に何かしらの希望を見出している挙措であった。続ける言葉には懇願さえ入り混じっていた】


「警察を呼んでくれたら、洗いざらい話す。」「 ……… それで手打ちにしてくれないか」
34 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 22:57:03.62 ID:6YQiD33u0
>>33
【男の語り口を聞かされても、彼には何ら理解のしようもない】
【そう言う約束にはなっていないと言われても、此方も何一つ聞かされていないからだ。故に、彼は既定の路線を維持するのみ】

申し訳ないが
此方は何も聞かされていない。それが事実だ
警察を呼んでも構わないが……

【彼は所謂野党側の人間だった。と言うよりは、野党側に協力する一部の、そう反異能派の飼い犬】
【秘匿され、隠匿され、その所業が表に出ることはない。しかし、確かに世界に存在する】

恐らく、君はここにいなかったことになる
それでも、良いと?

【確かに事件は起こった。だが、そこから先に起こした者がどうなるかは、わからない】

35 : ◆rZ1XhuyZ7I [ saga]:2019/03/23(土) 23:02:27.31 ID:juD1R3Ct0
>>24

「イュンか、いや覚えておくとしよう。」
「素性は先程の銃の腕を見れば十分さ、期待させてもらうとしよう。」


【イュンの去り行く背中を少年とメルツェルは見送り】
【投げ渡された名刺を軍服へと仕舞いながらその姿が見え無くなれば少年へと向き直る。】
【少年はやはり哀しそうな顔でメルツェルを見ていた。】


先生、俺たちは………。

「ああ、分かっているさ。ミヒャエルとコニーが斃れたのであればそれもやむなしだろう。」


【まるで諭すように無機質な声でメルツェルはそう告げた。】


//お疲れ様でした!ありがとうございました〜
36 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:06:23.32 ID:qRStJCCTo
>>34



「 ─── 雇い主の"背後"から詰められるよりはマシだ。」「 ……… アンタらの力にはなれると思うぜ」


【であれば、彼もまた"立場"を十全に理解しているようだった。今一度零す呼吸は絶望にも似ていた】
【 ─── 遠くからサイレンが聞こえ始めた。群衆を掻き分けて、数台のパトカーが現れるのだろう】
【携帯を取り出した何人かは既に警察への通告を行なっていたようだった。 ─── 安堵したように男は続けた】


「アンタが話の通じる人で助かったよ。」「 ……… 何か聞きたい事があるなら、今のうちに頼む。」


【軈て現れる警官の数人が、彼の両手に手錠をかけるのだろう。 ─── 去り際に対手へ向けられる男の瞥見は 】
【己れを制止してくれた彼に対して感謝さえしているようだった。最後に男は立ち止まった。それが短い出会いの最後であるらしい】
37 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 23:15:42.85 ID:6YQiD33u0
>>36
【男の素性がどうあれ、彼は上から指示によって動くのみ。引き渡しても、しなくても、正直どちらでも良い】

いいや、無い
どの道、君達と出会うのはこれが最後になるだろうから

【警察へと連行されていく男を見つめる。だが、最後に一つだけ聞きたいことが見つかった】
【警官を気にする素振りすら見せず、彼は男へと近づいていく。そして、互いの声しか聞こえない程の距離】


君はどこの誰だ?


【それは極めて個人的な興味だった。彼らがどこに所属する者なのか、その背後にいる者が誰なのか】
38 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:23:33.69 ID:qRStJCCTo
>>37



「 ─── アンタ、」「それくらいは知ってるんじゃないのか?」「 ……… まあ、いい。」




【 ─── 純粋に一驚を喫しながら、外される帽子とマスクと共に、彼は告げた。】
【卑近に過ぎる距離感には物怖じしていないようだった。声を潜めた意味合いを理解していないらしい】
【唇の片端を吊り上げて、彼は一息を吸い込んだ。 ─── 晒された素顔は、限りなく在りふれた面構えだった】





          「水国"最高議会"与党」「 ─── ご存知、イスラフィール議員だよ。」





        【にわかに群衆が動揺した。 ─── それきり、彼は警邏車両の座席へと消えていくのだろう】




/このあたりで〆でいかがでしょうか ……… !!
39 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 23:37:19.83 ID:6YQiD33u0
>>38
【男の言葉を聞き、彼はほんの少しだけ押し黙る】

あぁ、それが聞ければ十分だ

【そして、彼は限りなく平凡で、どこにでもいるだろう雰囲気の男が連行されて行くのを静かに見守った】
【車両の影が視界から消えた時、彼はおもむろに携帯端末を取り出し、何処かしらへ連絡を取る】


はい、はい、そうなります。あれはただの使い走りでしょう




えぇ────────────イスラフィールが、動きます




【邂逅、終幕】

/ありがとうございました〜!
40 :『駈込み訴へ』 ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:42:14.15 ID:qRStJCCTo


        <以下、水国全国紙"フルーソ・タイムス"■■■■年■■月■■号1面より一部抜粋>




「 ……… そうですね。おれが元々は水国の中央情報局に所属していたというのは、事実です」
「向こうでヘマをやらかして、丁度飯の食い上げって所でしてね。そんな時にお呼ばれした訳です」



「言っておきますが暗殺未遂で詰めるのはやめてくださいね。」「 ─── おれが依頼されたのは盗聴と盗撮です」
「次の最高議員選に向けて、彼らの決定的なスキャンダルを取ってこいと、 ……… そんな所でした」



「まァ実際、"本当に"議員の指示であったかは分かりませんよ。おれも実際に会った訳じゃないですから」
「ただ間違いなく彼女の息が掛かった人間からの下請けだったとは思いますね。 ─── 確信を持っています」



「 ─── ええ。"外務八課"でしたっけ?」「確かにそのような部署が、外務省の内部に存在しているというのは、事実のようですね。」
「詰まる所、彼らは"暗殺部隊"だ。設立時期は比較的新しいようですが、余り表沙汰にすべきではないブラック・オプス(注1:秘匿作戦)に関わっていたようです」


「その性質上、"適切"な人材は配属されていなかったようです。本来であれば死刑囚になるべき人材だとか、陸軍の実験機関が持て余していた戦闘用サイボーグだとか」
「今回の件について"彼女"が雇用されていたのも、理由としてはそんな所でしょう。 ─── 珍しくはありませんよ。この国の暗部には、"そういう"手合いが山ほど居る」


「"櫻州"に関わる諸々の事件にも噛んでたらしいですよ。おれも詳しくは知らないんですが、 ─── "そういう"連中が懇意にしてる集まりもあるとか」


「風国の"導人会"や氷国の"イヴァン"を始め、各国のマフィアだの情報機関だの解放戦線だの、そういう所とは敵対していたようですねえ。」
「いずれも多くは国益を損なう組織です。 ……… 時の政権から疎まれるのも無理はない。随分と重用されていたようですね。」


「え?  ─── そんなの無意味に決まってるじゃないですか。」「おれと同じく、彼らは"下請け"ですよ」
「幾ら八課をブッ叩いても蜥蜴の尻尾切りです。本当の病巣というのはホコリが出た先にあるものですから」




    「そうです。それが例えば、 ─── イスラフィール"最高議会"議員。」「彼女のような人間に、あたる訳ですね」




                          <引用終了>
41 :『駈込み訴へ』 ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:48:44.92 ID:qRStJCCTo
/Q.なにこれ
/A.水国"最高議会"野党の本拠にて、暗殺未遂・不法侵入・凶器準備集合などの嫌疑で逮捕された男の供述のようです

/Q.なんて言ってるの?
/A.「イスラフィール最高議会議員」が、次の選挙で有利な結果を出そうとする為、自身に不法な内偵を命じたと述べています。
  また先日より種々の疑義が向けられている「外務八課」に対しても彼女の深い関与があり、追及の対象は彼女"たち"に向けられるべきだとも述べています

/Q.これからどうなる?
/A.ちいさな火種から始まったスキャンダルが、水の国の政治体系全体に広がっていくかもしれません。流れに身を任せましょう
42 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 23:51:56.40 ID:6YQiD33u0
>>39
/此方のレスは取り下げさせていただきます。申し訳ないです
43 : ◆Kh0dBGYsiPBw [sage saga]:2019/03/26(火) 21:46:19.57 ID:sOeATM5R0
【路地裏】

【昼夜問わずほの暗いその空間に微かに鳴ったのは、硝子製の何かが割れる音】
【ややあってそれを踏み砕く音が鳴れば】


…………ッ、ぐ……うぅ……がァ……

【若い女の呻き声。一つ響いて】


【白い少女、だった】
【月白色の肩まで伸びた髪に襟も装飾もないシンプルなデザインの白いワンピース。それ以外は何もない。足だって裸足で】
【金色の瞳。ひどく濁っていた。その下には隈が出来ていて】

……ひ……っ、ギ……っあ……っ

【苦し気に吐かれる息。ぶわり、と少女の身体から赤黒い光が沸き上がり、その全身を覆って】

──────ッ!

あ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァあぁぁぁ!!!!!

【ぎしり、とその金色の瞳が大きく見開かれたと思えば咆哮】

【瞬間、少女の頭頂部から髪と同じ色をした猫の耳が飛び出し、ワンピースの裾からも同じ月白色の猫の尾が飛び出て】
【その尾が狐のそれのように大きく膨れ上がる】
【尾の膨張は更に続き、やがて破裂するかのように二本に裂けて】

【少女は汗で顔に張り付いた髪を除ける事すらせず、荒く呼吸を繰り返し】
【片手の中、鋭い氷柱を一本生成して】
【震える息を大きく長く吐き出せば赤黒い光は二本に裂けた尾の片方へと移動し始め、やがてその全てが尾の一方へと纏わりつく】

【尾の一本がそう成り切ったならば少女は赤黒く光る尾を掴み、その根元目掛けて持っていた氷柱を振り下ろして】
【そのまま振り抜けば尾を掴んだ手でその赤黒く光る尾を千切り取ってしまい、地面へと放り投げる】

【次第に光を失っていく千切れた尾】
【少女は自分の方に残った尾の断面へと触れて凍らせるとふらり、と踵を返し】

……これ、で……やっと……眠れ、る……
【覚束ない足取りで何歩か進んだかと思えば、がくり、とその場に倒れてしまう】


44 : ◆Dfjr0fQBtQ [saga]:2019/03/28(木) 23:03:51.85 ID:KERTOXHzo
>>751

【ふん、と鼻を鳴らす、──── 溜息を漏らさなかっただけでも立派であった】


それを理解していただけるのでしたら、俺の考えている事を微かでも理解出来る様に尽力してもらいたいな
バカに付ける薬は無いが、バカをマシにする薬は山ほどある、古今東西ありとあらゆる王座に就く人材はバカ勢揃いだが
少なくとも俺がその国に関わっている以上、その人間そのものに関わらず啓蒙しなければならない


【敢えてクーデリアに対する言及は控えた、マナーニャには視線一つ向けない、端から興味など無い様子で】


人間に経済観念を叩き込みすぎるのも考え物でな、適度に愚鈍な大衆が居た方が経済は良く回る
うちの国民だけが聡明になったところで先細りなのは目に見えてる、些かあのソフトはオーバーテクノロジーの上
何よりコストが掛かりすぎる、現状アンタ一人で打ち止めだよ、言いたいこと分かるよな?

普通に考えれば分かる事を教える為にわざわざお膳立てしてる訳だ、成果は出て当たり前だろう


【胸を張るクーデリア、視線は微塵も揺るがない、女好きという噂であったが】


だから俺としてはアンタには今まで通り "お飾り" で居てもらいたい訳だがな、中身は兎も角 "ガワ" は男ウケには十分だ
俺を始めとした脳みそが考えた事をただ伝えるだけ、俺が求めてるのはそれだけの役割と、何回も言っているだろう?

それでもアンタは為政者になることを選んだ、本心で言ってるのかは知らんが言葉には責任を持て
現実を知らん脳内お花畑の女王様ほど、邪魔な身内はいないからな


【】
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/03/29(金) 01:49:19.49 ID:J2G3IGXO0
【街中――川沿いの土手】
【太陽の傾く時刻だった、うすぼんやりと霞んだような春の空の向こう側、少しずつ夕暮れに染まって、カラスがどこかへ帰っていく空を】
【ゆったりと雲が横切っていく。だからきっと雲だってどこか家に帰るのに違いなかった。なれば夕方のチャイムの残響も遠く消えて、子供たちの嬌声、駆け抜けていく】

――――、そしたら、

【――新芽の吹き出した土手に並んで腰かける人影が二つあった。片方はまだあどけなさを残す少女だった。ならば学校帰りの女子高生に似て、】
【それでいて落ち着いた春らしい装いをしていた。投げ出した風に斜面を捉える爪先まで女の子だった。――浮かべる表情の幼さは幾らも子供ぽいのだとして、きっと個性であれば】
【けれどその傍らに腰を落ち着ける人影はきっと"それ"ではありえない。――ごく豪奢な狐の面を付けていた。そうして服装は櫻の着物であった、なら】
【端的に述べるのならば違和感の塊であるのだろう。少なくとも土手にいきなり座っている格好はしていなかった。そうなのだとして、二人、なにか仲良さげに話していた】

それでね、――――――――――――――、だから――――、うん……――――――――。

【そうして二人きっと真っ黒い髪と真っ白い肌が共通していた。そのうえで少女の眼差しは左右で色合いが異なっていた。黒色と赤色。瞬きのたびに色の変わる夕焼けを映し込んで】
【ふわりとした裾のロングワンピースに淑やかなボレロを重ねていた。これもお上品な踵の高さのサンダル、それでも剥き出しの素足の爪先、枯草の欠片が纏わりつくから】
【本当ははしゃぐ方法を十分に知っている子なのだと思わせた。――思いついたように膝を抱えた、その膝に甘えるよう、そうして見上げるようにとなりへ目を向けるなら】
【また何かを話す。きっと返事が返って。――そうしてきゃらきゃらと笑う声が鈴の音に似ていたなら、夕暮れの土手の景色、きっとりんと響くのだろうか】

ほんと? ――、――――すごい、――――――――――そうなんだ――、――――――――――――――――――……。

【――――――そうしてさらにいくらかの話題をやり取りしたのだろう時間の後、先に立ち上がるのは、きっと、櫻の装いをした方。うんとうんと長い毛先をそろと揺らして】
【口元に添えた指先が何か思いだして語る言葉を証明していた。――――、少しだけの間の後に、ふわと上体を折ったなら、未だ座ったままの少女の耳元、塞ぎ、】

「――――――やっぱり、あんた、世界なんて滅ぼしておくべきだったわ。馬鹿みたいね、"あたしたち"」

【それだけで音を防げるはずはなかった。櫻装の指先になにか魔術が煌めいていた。そうして事実指先を離された少女はきょとんと瞬いていた。何も聞こえなかったみたいに、なら、】

「――じゃね、あんまり心配かけさせちゃ駄目よ、"おかあさん"に。――――親孝行したいときには親は居ないっていうのが、世界のルールみたいだから」

――、うん! ばいばぁい、またね――。

【ひらり翻して櫻装は歩き出すのだろうし、取り残された少女は"はてな"を浮かべながらも、それでもまだもう少しだけ、その場に留まるつもりのようだった】
【誰かが居合わせるなら、どちらを観測することも十全に叶えられた。――少なくとも意味深に立ち去った狐面は思いのほか緩やかな足取りをしていた。少女は夕暮れを見ていた】
【そのうえで強いて何か述べることがあるとすれば、――やがて少女に見えぬ角度で土手から街並みへ降りた人影はその時点で指先に狐面を携えていた、ならばその顔すら夕暮れ色】
【赤色と黒色の色違いの眼差しが特徴的だった、少女と呼ばわるにはいくらか大人びていた。――なにか感情を抑え込むように深く細く吐く息の意味合い、春には似つかわしくない】
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