過去ログ - 古泉「ただいま」
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1:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 15:10:44.29 ID:ODI5AAQ0
さて、敬愛なる皆様は最早お気付きだと思うが嵐ってーのはずっと一所に留まってるようなモンじゃあない。
ま、そりゃそうだ。明けない夜なんてモンは無いし、どんだけ繰り返しても、それこそ終わらない夏休みなんて夢のようなモンさえ世界には無かったんだ。
時は待たない、ってヤツだな。はて、これは誰が言ったんだったか。誰が言ったにしても含蓄有る言葉だね。うむ。
つまり、時間ってーのは宇宙人だろうと未来人だろうと超能力者だろうと、はたまた神様であったとしても、平等に過ぎ去っていくように出来ているらしい。ん? そんなんは常識だろって?
いやいや、その常識ってーのを疑っていたのが昨年までの俺だったりするんだ。もしかしたらループエンドだったりすんじゃないのか、とかも多少本気で考えたりもしたね。ああ。
こら、そこ。ゲーム脳乙とか言ってんじゃねえぞ。
もしもだ。もしも仮にアンタが俺と同じ状況に追い込まれてみろ。俺と体を入れ替わり、高一の八月であったり十二月であったり、高二の四月であったり七月であったりを経験してみろ?
俺は断言するね。今、画面の前でふんぞり返ってるアンタだって時間感覚ってヤツに多少の弊害を持っちまうだろうってさ。
SOS団で唯一の一般人であり、かつ、まあ自分で言うのもなんだが比較的常識人な俺でさえこの始末だ。その俺が語り部の、そんな物語を楽しんでるアンタらなんかは最たるモンだと思うね。違うか?
だがしかし。それでも俺達は順調にハルヒ出題の問題(一つ残らず難題で無理難題なのは、まあハルヒらしいっちゃらしいんだが)を解き明かし、潜り抜け、あるいは素通りして……。
ああ、ここまで言えば分かるだろ? 大体、話の骨子は読めたよな?

俺達は無事に三年生に進級したのであった。

つまり、この話は後日談ってヤツだな。
神様が居た面白おかしく、波乱万丈、驚天動地で支離滅裂な、その残り香だけがほんのりと桜吹雪に乗って校舎を包み込む。
そんな感じの、取り立てて面白味も無い、フツーの日々、ってヤツを、俺はこれから語っていこうと思う。
勿論、主役は俺じゃない。
この話の主役は……いや、これまでのどの話の主役もそうだったのだが。
最初から最後までクライマックスでお馴染み。
俺達の団長様だ。
そう。やっぱり後日談であってもスポットライトはコイツに当たる。

涼宮ハルヒ。

何を隠すでもない。俺の、恋人である。


2:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 15:26:40.08 ID:ODI5AAQ0
「……非常に貴方らしい恥ずかしい独白ですね。ああ、ターンエンドです」
とは言え、俺達に限って言えば余りその日常風景が変化している訳でもない。残念だったな。だが、様子が一変してる事を期待したアンタらが悪い。
「うるせえよ、古泉。大体、原作中で乱立させた死亡フラグを残らず叩き折りやがったヤツが言えた義理か?」
言いながら俺はカードを引く。お、悪くない引きだな、今日は。
「一緒になって叩き折った人間が何を仰っているのですか。あんまりそういう事を言うのは止めて下さい。僕はこれでも、昨年の七月の貴方の台詞には少なからず感動しているのですよ?」
以下略



3:名無しGEPPER[sage]
2010/06/12(土) 15:31:01.81 ID:2HVLqew0
おほっこれは良SSの予感


4:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 15:40:59.63 ID:ODI5AAQ0
さて、上の一文に不自然を感じた方は一体何人居られただろうか? その数少ない方々に俺は是非とも敬意と称賛の拍手を送りたい。ブラボー、名探偵になれるぜ。
三年五組。
まあ、つまりは俺の所属している学級だ。
さて、なぜそこに古泉が居るのかと問われれば。まあ、俺に会いに来ただけと言えるのだが。ああ、勿論放課後の暇潰し相手としてだぞ? 深い意味は無い。
って言うか。アンタ達が疑問に思っているのは「なぜ文芸部室じゃないのか」だろ? だが、その疑問に行き着いた時点で解答は出てると思うね。
以下略



5:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 15:51:54.62 ID:ODI5AAQ0
「やっぱり貴方の独白は恥ずかしいですよ。聞いているこっちが赤面物です。以後はどうか、自重して頂けると僕としては助かりますね」
振り返ればヤツが居る。超能力者改めおつかいクン一号ご帰還だ。
「聞き耳を立てるヤツが悪いに三千点だ」
「そう言わないで下さい。諜報活動というのは機関の主要任務でして、どうもまだ、その癖が抜けてないんですよ」
古泉はヘラヘラと笑いながら俺の机に缶コーヒーを置く。小指をクッションにして音を立てない、そんなさり気無い仕草が一々俺の癇に障るね。
以下略



6:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 16:02:53.06 ID:ODI5AAQ0
「絵になるな、アイツらは」
「ええ。お二人とも、北高屈指の美少女ですから」
俺達が揃って見下ろす、その視線の先では少女が二人、下校途中の生徒に対してビラ配りをやっていた。
ハルヒと長門だ。
「桜並木と少女。これが絵にならない筈もないでしょう?」
以下略



7:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 16:04:05.28 ID:Izfmfd6o
がんばれ


8:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 16:18:32.17 ID:ODI5AAQ0
舌打ちを一つして席を立ち上がる。
「あの馬鹿が犯罪行為に手を染めない内に、あの男子生徒を救出するぞ、古泉」
「ふふっ、了解です」
阿と言えば吽。促すよりも早く走り始めた古泉に追従して、俺達は揃って走り出す。急いで飲み干したコーヒーの空き缶はゴミ箱にストライク。当然、左手は添えるだけだ。
廊下は走るな? だったら動く歩道でも付けやがれってんだ。
以下略



9:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 16:33:12.83 ID:ODI5AAQ0
「そこまでだ!」
「むむっ、何奴っ!?」
……コイツ、昨日、水戸黄門見てたな。
「お前の悪事は全て教室から見させて貰った! 大人しくその男子生徒を放せ!」
まあ、水戸黄門が昨日テレビでやっていた事を覚えているって事は俺も見ていた訳なのだが。
以下略



10:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 16:45:09.06 ID:ODI5AAQ0
「……古泉」
「はい」
俺の後ろでにこやかに待機していた元超能力者が隣に並び立つ。ズザツとか効果音がしたのは……まあ、気にしないでおく事にする。
SE(サウンドエフェクト)とかそんなもんは今時、珍しくも無いからな。
「長門に対してジェットストリームアタックを仕掛けるぞ」
以下略



11:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 17:03:40.89 ID:ODI5AAQ0
同時攻撃。長門に向けて俺達は「分かり易い」「軌道を読むに易い」テレフォンパンチを放つ。当然ながらこれを手首を握って受け止める長門。インチキパワーはすっかり失ったとは言え運動能力はハルヒにも劣らない少女である。
だが。
これで両手は封じた。スピードを落とさずに更に肉薄する俺と古泉の両方をどうやって食い止める? 出来る訳はねえよな?
「……しまった」
ああ、そうさ。古泉が機関に居た頃の癖を忘れられていないように、お前も宇宙人だった頃の動きが抜けちゃいない!
以下略



12:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 17:21:50.62 ID:ODI5AAQ0
「何がいけないって言うのよ?」
「そうだな。お前の勧誘方法はほぼ間違っているという点を除けば大体正解だ」
喫茶店からの帰り道、俺はハルヒと二人で並んで歩いていた。なぜ、なんて言うなよ? ここでそんな野暮な事を言う奴は退場だ。
ま、有り体に言えば古泉が気を利かせてくれたのであり、だが、もしかしたらアイツは長門に惚れているのかも知れんとかは……無いとは言い切れないだけに薄ら寒い。
いやいや、考え過ぎだろう。
以下略



13:名無しGEPPER[sage]
2010/06/12(土) 17:24:06.31 ID:Pr5JqEDO
ハルヒを筆頭にラノベってこんな文体気持ち悪いの?


14:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 17:38:05.95 ID:ODI5AAQ0
「いや、違う」
「へえー、どうかしらね。アンタの事だから、またどこかで出会った女の子カ・シ・ラ? 登校途中にトーストを口に咥えた美少女と出合い頭に衝突してパンツ見て、その子がクラス替えでたまたまアタシ達と同じクラスで……誰!? 三船さん!? 椎名さん!?」
……どうしてコイツの頭の中は一々王道ギャルゲ的なのだろうか。第一、いきなりそんなオリジナルキャラが出て来るようなSSにすんじゃねえって、馬鹿。
「あー……まあ、ハルヒになら話しても良いか。その……こういうのは第三者が口やら手やらを出したりする類じゃねえと思うんだけどさ」
「一々まだるっこしい前置きはしなくて良いの! アンタの彼女は一を聞いて千里を踏破する女なんだから、そういうのは無駄なだけよ」
以下略



15:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 17:55:46.95 ID:ODI5AAQ0
「ん? 何よ、キョン。鳩が迫撃砲食らったような顔してるわよ?」
……その鳩は間違いなく死んでるよな。うん。……なんだ、ゾンビみたいな顔だとでも言いたいのか? 死んだ魚のような目をしているとでも仄めかしているのか、お前は?
そんなんが彼氏で、お前は許せるってのかよ? 発言の撤回を断固求めるぞ、俺は。
「いや……ちょっと……違うな。大分驚いた」
寝耳にポカリスエットを二リットル注がれた気分だ。
以下略



16:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 18:16:29.44 ID:ODI5AAQ0
沈み込む夕日に向かって明日の古泉の打倒を誓う俺だったが、そんな渋い男の背中での叫びにも、まさかあのハルヒが耳を貸す筈もない。
「ほら、なんだってのよ。アタシ踏ん切りの悪い男って大っ嫌いなのよね。さ、可愛い彼女に嫌われたくなかったら、さっさと言いたい事を言いなさい」
……なんとか誤魔化さなければ……出来る限り自然に……この勘の良い少女にも気付く事が出来ないような反則的なまでの口から出まかせを。
……誰か分かるヤツが居たら今すぐここに飛んで来い!
「えっと……だな……」
以下略



17:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 18:33:26.43 ID:ODI5AAQ0
さて、唐突にシーンをぶった切って済まないが、どうか聞いて貰いたい。
俺にはずっと懸案事項が有った。
それはつまり「長門が宇宙人じゃなくなったら、どうなるだろうか?」という事であり。
それはあるいは「朝比奈さんが未来に帰ってしまったら、どうなってしまうだろうか?」といった具合に。
それははたまた「古泉が超能力者という責務から解放されたら、どんな事が起こってしまうのか?」なーんて感じで。
以下略



18:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 18:53:13.25 ID:ODI5AAQ0
さて、事件ってのは唐突に起きるもんだ。
歴史は繰り返すとは有名な言葉だが、つまり俺達が過去を学ぶのはそれを繰り返させない為である事に異論を挟む人はいないように思う。だよな?
……だってのに人間ってのは本当、救いようのない阿呆なモンだから繰り返しちまう。何度でも。何度でも。
それはもう、二年前の八月を引き合いに出すまでも無い。俺だって救いようのない阿呆だ。
思えば予兆は有ったんだ。いや、気付かない方がどうかしてる。つまり、俺はどうかしてたんだろう。無理も無い、ハルヒと付き合い始めて半月ちょっと。一番浮かれている時期だったのは間違いないし、事実として俺は浮かれていた。
以下略



19:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 18:55:20.56 ID:ODI5AAQ0
1時間ほど席を外します


20:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 20:03:36.10 ID:ODI5AAQ0
考える。あの古泉が、果たしてハルヒへの思いを吹っ切れるだろうか?
ああ、そんな事は分からない。そんな事は古泉本人しか知りはしない。
では、長門を好きになど、なるのだろうか?
別に長門に魅力がない、なんてそういう意味で言ってる訳じゃない。勘違いしないで欲しい。
そういう意味では無く。
以下略



21:名無しGEPPER
2010/06/12(土) 20:28:54.51 ID:ODI5AAQ0
それから。俺とハルヒは教師に掛け合って古泉の転校先を問い質した。こういう時、ハルヒの猪突猛進ぶりは本当に信頼出来る。勿論、俺はハルヒのブレーキ役をこの時ばかりは丁重に辞退させて頂いた。まあ、事情が事情だ。仕方が無いとそう思って欲しい。
特進クラスのなんとかって数学教師はかなり渋っていたものの、しかしハルヒが全力で仲間の行方を捜しているのだ。その迫力は某怪獣映画もかくや、である。
もしも古泉の転校先を教師が吐かなければ、それこそストーキングもしそうな勢いの俺達の団長を前にして、まあ、生半可な覚悟で沈黙を貫き通そうというのがそもそもの考え違いである事を悟った彼は二時間の激闘の末にようやく学校名を口にした。
「誰にも言わないで欲しい、という古泉たっての希望だった……か」
俺の後ろに続いて職員室から出て来たハルヒに問いかける。
以下略



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