会長「音が紡ぐ笑顔の魔法」
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406: ◆MOhabd2xa8mX[saga]
2020/08/24(月) 00:06:24.47 ID:ZeQATGkpo
全員が黙り込んでいる。
良心の呵責とでも言うのだろうか、部長なんて今にも死んでしまいそうだ。

今すぐにでも消えてしまいたいと言った顔をしている。

幼馴染「待って、アンタまさか――」

男「あっ」

しまった、これでは俺が握り潰した事が全員に気付かれてしまう。
言葉選びを間違えてしまったのは明らかだ。
あまりにも迂闊だった。

幼馴染「間抜けな声出して……化けの皮が剥がれたわね」

副会長「幼馴染、私が言います」

副会長が幼馴染を制すると幼馴染は嫌々口を噤んだ、

副会長「男君、人として最低ですよ」

薄ら笑いを浮かべる副会長の瞳はどこまでも冷たい、俺を軽蔑しているかのようだった。

副会長「私は他人を蹴落としてまで上に行きたいとは思いません」

副会長「いつもこうして来たのでしょうか」

違う、そんな事は無い。
正直に言うと初めてだ、ここまでしなければ勝てないと思ったのも、露骨に人を蹴り落とそうとしたのも初めてなんだ。

副会長「先程は会長も同じような事をしていると話していましたね、訂正してください」

副会長「会長が私たちに隠し事なんてする筈がありません」

男「……すいません」

部長「あ〜っと、もう時間だぜ?早く行こうぜ」

友「そうだな……ですね、早く行こましょう」

副部長「絶対に敬語下手だよね?無理しなくていいよ?行こましょうって中々出ないよ?」アハハ

友と部長の気遣いが俺の心をさらに締め付ける。
自分でも気づいているのにも関わらずウィッグの毛先の束を指で何度も巻いてしまっている、分かりやすい逃避行動だ。

副会長「正直に言うとそんな気分では」

副部長「空気悪いけどね……」

「「駄目」」

男「だ……」
幼馴染「よ……」

男・幼馴染「「……」」

幼馴染「用意してもらったステージには必ず立たないとダメ、観客は私たちのいさかいなんて知ったこっちゃないもの。枠がある以上は割り切らなきゃ」

男「何があろうともステージには立つ、それだけは譲れません」

作曲「……」キョトン

友「……」イラッ

友以外の全員が呆気に取られた表情で俺と幼馴染を見つめていた。
幼馴染がツンデレって事を忘れてしまうところだった、アイドルを辞めたとしても失われることのない誇りと矜恃は常にアイツの中にあるのだろう。

幼馴染「男……噛んだら許さないわよ」

男「分かってるよ」

各自思うことはあるのだろうが、揺らめく感情を胸にしまいこんでライブハウスへ向かった。

昼下がり、茶色く錆びたガードレールを越えた先にあるライブハウス。入口手前の地面からは陽炎がのぼり、アスファルトの隙間から生える雑草まで揺らめいて見えた。


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