3: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/18(水) 18:33:48.16 ID:hD9nuK1M0
「まあ、それでいま、こうして楓さんと仕事出来てるんですから、世の中わからないものですけどね」
いや、もはや笑い話以外の何者でもないか。あのまま地元に引きこもってたのなら、これほど毎日面白おかしく過ごす人生では無かったに違いない。
気苦労もそりゃ多いし、毎日気忙しいけれど。
「そうですね。私も貴方に逢えました」
そんな僕の胸のうちを読み取ったのか、なにかたくらんでる、あの笑みを浮かべた。
「「それもまた結び」」
「……ですねっ、ふふっ」
映画のキーワードが狙い通り俺とハモったのが面白かったのか、楓さんはくすくすと笑う。
打ち解けるまで時間がかかるから、外向きにはずっと「神秘の女神」のイメージだけど、実際の彼女はとてもひょうきんで、本当にどうでも良いことのなかにもポイントを見つけて、よく笑う。
この人はきっと、箸が転げても面白がってるんじゃないだろうか。
……きっと、笑うんだろうな。また掛かってるんだか掛かってないんだかよく分からない駄洒落で。
なんて洒落を飛ばすかはわからないが、その時の表情は……あぁ、ありありと想像できる。
「あ、失礼な事考えてる」
「今日も暑くなりそうですねぇ」
「あ、露骨に話そらした」
「……楓さんはどうなんですか? 地元にそういう……残してきた人、なんかは」
「……ふふっ。さあ……どうでしょーか?」
僕よりも若干高いくらいの身長の彼女が、両手を後ろで組んで、頭をかしげるようにして見上げてくる。
その悪戯な笑みに、おもわずこちらは面映ゆくなってしまう。
「Pさんは信じますか? そういうの」
「え?」
「前世の結びとか、縁(えにし)とか、そういう、運命みたいなものです」
左右で違う風に輝く瞳は、時々本当に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
「ぼくは……」
碧の瞳の奥に棲まう虹彩の輪が、僕の意識を絡めとろうとするようだった。
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