13:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:40:30.94 ID:j/IZGaDe0
「でも、結局私一人じゃあダメだったんです。私一人だけじゃ、本当に全然……それで、気付いたんです」
「翼みたいな才能も、杏奈みたいな思い切りの良さも、静香ちゃんみたいなアイドルへの強い想いも……な〜んにもない私なんかが、アイドルしててもいいのかな」
ごくり。喉が鳴った。
「私なんて、アイドルに向いてないのかな──みんなに迷惑をかける前に、やめちゃった方が良いのかも……って」
──アイドルを、やめる。
多分だけど、あのため息達の中に初めからあったんだと思う。はっきりとはしてなかったけど、きっと心の底で思ってたんだな、私……。
「あ、あは、は……」
私は、なぜか笑ってた。ううん、笑うっていうか、出てきた音がたまたま笑ってるように聞こえる、そんな感じ。この前私のせいで友達を怒らせちゃった時も、そうだった。笑ってごまかそうとかそんな気は全然ないのに、どうしてかな。
でも、その時よりもずっとずっと苦しくて、ずっとずっと胸が痛い。なんでかな……わかんないよ……。
「未来、あなた……」
その声で、ふっと気付く。
(そうだよ、千早さん……)
怖い。隣にいる千早さんが、いったいどんな顔してるのか。想像したら、きゅうって胸が縮んじゃいそうなくらい。
(千早さんも、いきなりこんな大事なこと言われても困っちゃうよね……)
それでも私が言ったんだと、ありったけの勇気を出して顔を上げる。やっぱりって言うのかな、困ったように眉をしかめている千早さんと、目が逢った。
「……なるほどね。プロデューサーの帰りが予定より遅いのはそういう訳だったのね」
「はい、そうなんです。すみません……」
『何を言えばいいのかわかんないから、とりあえず謝っとこう』とか、そんな気は全然なかった。こんな弱音を聞かせてごめんなさい、こんな弱い私に気を遣ってもらってごめんなさい、って本当にそう思ってたんだもん。
でも、それを聞いた千早さんの眉毛が、すぅっと上がった気がした。
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