高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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12: ◆jsQIWWnULI
2020/08/08(土) 18:52:24.05 ID:b+VIQ/E60
しばらくアイさんが漕ぐ船を体験した後、今度は私がゴンドラを漕ぐことになった。


「じゃあ、試しにここら辺をゴンドラで漕いでみよっか」

「はい」

アイさんに示されたのは、先ほどのゴンドラとは違い、黒色をしたものだった。一人前、つまりプリマウンディーネが使うゴンドラはお客様を乗せるための船なのだが、両手袋と片手袋、つまりシングルとペアはこの練習用の黒いゴンドラを使うそうだ。

「よっと……」

舳先に飛び乗り、バランスをとる。ゴンドラから、年季が入った音がする。私はオールをしっかりと握り、漕ぎ始めた。船の側面についているロウロックを使って支点力点を作用させ、オールをスムーズに動かす。

「あらららら……」

しかし、まっすぐ進まない。左側にそれてしまった船体を直そうと、慌ててオールを逆方向に捌く。しかし、今度は勢いが大きすぎたのか、船がぐらぐらと揺れ始めた。

「あわわわわ……」

何とか落っこちないようにしながら再び漕ぐ。

「よっしょ……ほいしょ……」

一体どれくらい時間がたったのか。蛇行を続けながらも、なんとか数メートル進んだ。その時、後ろからアイさんの声が聞こえた。

「オッケー!じゃあ、今度は船首をこっち側に向けて漕いでみようか」

「は、はい!」

私は船の先をARIAカンパニーの方へ向けようと左側にバックした。

「あれれ」

しかし、思ったように曲がれずにまっすぐ後ろに進んでしまう。

「やっ!はっ!」

気合を入れて、今度こそ曲がるように漕いだつもりだったが、それでも船が曲がる気配はなくただまっすぐバックする。気が付くといつの間にかスタート地点に戻ってきてしまった。

「……ア、アイさん……」

私はアイさんを見上げる。アイさんはしばらく黙った後、口を開いた。

「うん。大丈夫!」

「へぇ?」

てっきり怒られてしまうかと思っていたから、変な声が出てしまった。

「全然良いよ。良い感じだよ、藍子ちゃん!」

「そのままバックしちゃったのにですか……?」

「うん。私が初めてゴンドラを漕いだ時よりも全然上手だよ。これならすぐに上達するね」

「ほ、本当ですか……?」

「本当本当。恥ずかしいけど、私の一番最初の漕ぎっぷりは、それはもう見ていられないほどだったんだから。第一、ちゃんとバランスをとって船を操縦できるっていう時点で素質十分なんだから!……これから一緒にがんばろ?」

アイさんはそう言って、私に手を差し出してくれた。私がその手をつかむと、アイさんは私を陸地へと引っ張ってくれた。やっぱりその手はどこかあたたかくて、私もこんなあたたかな手を差し伸べられるような水先案内人になりたいと思った。

「……はい!頑張ります!素敵なウンディーネになれるように!」

私はそうアイさんに返事をした。あたたかな手を差し伸べられるような水先案内人になりたい、じゃだめだ。あたたかな手を差し伸べられるような水先案内人になるんだ。絶対。

内心息巻いていると、アイさんはそんな私の心を知ってか知らずか、私の顔を見て微笑みながら口を開く。

「うん。その意気、だよ。じゃあ、さっそく、一番重要なことから教えようかな」

「はい!」

「一番重要なのはね、この船が流されて行かないように、このバリーナって言う杭に括りつけることなの。この作業をしておかないと、あっという間に流されちゃうんだから」

「ふむふむ……」

「それとね……」

こうして記念すべきアクアでの一日目は幕を閉じました。操舵技術はもちろんまだまだだけど、これからアイさんと一緒に成長していきたいです。

そして、いつかプリマになったら。その時は、一番最初の「お手をどうぞ」の時から、お客様にあたたかな気持ちになってもらえるような、そんな水先案内人になれるよう頑張ります!


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