過去ログ - サザエ「そして誰もいなくなったのね」
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1: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:18:58.46 ID:1ueVwqRf0




小説家、伊佐坂難物が無人島に別荘を建てた!

伊佐坂夫妻は、建てた洋館に『難物館』という名前をつけ、穏やかに暮らしていた。

そして迎えた夏休み、しばらく館を離れることになった夫婦は、かねてから親しかった磯野家をそこへ招くことにした。

バカンスの間、彼らに自慢の別荘で過ごしてもらおうというのだ。

かくして、サザエさん一家は、島へ足を踏み入れるのだった―――……





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2: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:22:42.29 ID:1ueVwqRf0





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3: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:24:46.45 ID:1ueVwqRf0
島の図


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4: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:27:25.40 ID:1ueVwqRf0





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5: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:29:02.56 ID:1ueVwqRf0

深い青みを湛える海の上に、悠然とその島は存在していた。

波に揺られるボートの上で、まず一同は、ゴツゴツとした岩礁を、それから土とも磐ともない島の大地を見た。そして、その上には苔みたいに点々と木々が生い茂っていて、見る者に自然の凄みにも似た畏敬を感じさせた。

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6: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:30:36.33 ID:1ueVwqRf0
「綺麗ねぇ、わたし早く泳ぎたいわ」

はしゃいだ声を上げるワカメに、ボートを漕いでいた地元の漁師が笑って言った。

「ははは、元気の良いお嬢ちゃんだ。でも、今日はやめておきなさい。皆長旅で疲れているだろうし、なんといってももう直夕方だ。夜の海には決して近づいちゃいけないよ」
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7: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:31:34.49 ID:1ueVwqRf0
「そんなこといって、実は姉さんが一番海を楽しみにしてるんじゃないの?」

カツオの茶化すような態度にサザエはムッとした顔をした。

「あら、どういうこと?」
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8: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:32:35.27 ID:1ueVwqRf0





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9: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:33:41.24 ID:1ueVwqRf0
一同は砂浜から島へと足を踏み入れ、丘を上り、とうとう話に聞いていた『難物館』を目の当たりにした!

「立派なお屋敷ねぇ! まるでお城みたいよ!」

今度はサザエがはしゃいでみせた。フネも笑った。
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10: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:34:50.75 ID:1ueVwqRf0
「それにしても、流石は伊佐坂先生だよねぇ。小説が翔ぶように売れて、あっという間に大ベストセラー! 無人島を丸々買った上に、気がついたら、こんな館まで建っちゃうんだから!」

「ほんとねぇ」

「すごいでーす!」
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11: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:35:51.57 ID:1ueVwqRf0
ちょうど真正面にあたる廊下には大きな花瓶があった。そこにはヒッペアスケリアやベラドンナ・リリーといった綺麗な花々が生けられていて、館の雰囲気に華やかさを添える役を買っていた。

「綺麗ねぇ。伊佐坂先生からの歓迎の贈り物かしら」とワカメがいった。

「そうかなぁ。案外ファンから貰っただけだったりして」
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12: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:36:56.40 ID:1ueVwqRf0
客室は幾つもあったから、「たまにはひとりで眠りたいよ」とカツオが波平に頼んだ。

波平は少し考えていたが、マスオがカツオの肩を持ったので、それは認められた。

「やったー、流石はマスオ兄さん! ワカメ、僕らの姉さんは素晴らしいお婿さんをとったみたいだよ」
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13: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:38:22.01 ID:1ueVwqRf0
「それなら、僕達の部屋に来るかい? サザエとタラちゃんと、四人で泊まろうか」

マスオが柔和に微笑んだが、ワカメは悩んだ末に断った。

(旅先でお姉ちゃんたちの邪魔はできないわね……、少し怖いけれど)
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14: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:39:33.52 ID:1ueVwqRf0





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15: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:40:25.42 ID:1ueVwqRf0
今にも駆け出しそうだった二人の間に、サザエの鋭い声が割って入った。

「コラ! 二人だけで岩場なんて危ないわ」

「お姉ちゃん、だってきっと綺麗なのよ!」
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16: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:41:09.63 ID:1ueVwqRf0



岩場につくと、カツオは蛙にも似た身軽さで磐と磐とを飛び移り、さっさと先へ進んでいったが、反対にワカメはゆっくり足元を確かめながらカツオを追った。

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17: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:42:08.92 ID:1ueVwqRf0
もじもじするワカメを放って、カツオは気に入った丸い磐の上に座った。「わぁ、こりゃいいや! 最高の眺めだよ」

ワカメも羨ましくなってパッと顔を明るくしたが、すぐに表情を曇らせた。ワカメは上手く磐を渡れないのだ。

と、そこへ、トイレに立ち寄ると言ったマスオが帰ってきた。
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18: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:42:41.63 ID:1ueVwqRf0
「喧嘩でもしたのかい?」

「知らない。お兄ちゃん、きっといつか大怪我するんだわ。そしてその時になってからでしか反省できないのよ、かわいそう」

「僕はそんなヘマしないね」
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19: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:43:33.29 ID:1ueVwqRf0
「夕陽ってあんなに大きいのね」

しみじみとしたワカメの感想に、マスオも頷いた。

「そうだねぇ、僕もこんなに綺麗な夕陽を見るのははじめてだよぉ」
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20: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:44:17.82 ID:1ueVwqRf0
ワカメがいち早く反応した。

「今、なにか音がしなかった!?」

カツオも磐の上に飛び上がった。「ああ、結構近くだったよ!」
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21: ◆5o0gtk7tVI[saga]
2016/04/22(金) 10:45:17.66 ID:1ueVwqRf0





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