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佐天「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」 -
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1 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 19:52:56.59 ID:RuiFdFo0
これは英雄の物語ではない・・・・・・
ここ学園都市では、能力の強さによって6段階のレベル分けがなされている。
レベルの最高位は5、学園都市にたった7人しか存在しないレベル5は羨望の的だ。
なぜ最高位が5なのにレベルの区分は6段階なのか?
答えは簡単だ、能力開発を目的とする学園都市にも、能力を使えない者
レベル0が存在するからだ。
私、佐天涙子もその1人だ。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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イケパンみっちん39 このスレには可愛いパンダが居るにぇ! @ 2024/05/19(日) 19:47:17.65 ID:skVyN/3XO
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僕の記憶が全て消えても生まれ変わったらまた君を探す @ 2024/05/18(土) 22:27:06.84 ID:7xX40cGt0
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グレみんと快楽の座 @ 2024/05/17(金) 22:24:15.47 ID:DUS3Z54Xo
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【習作】安価コンマでワンピース @ 2024/05/16(木) 21:19:27.48 ID:QUcgFIEu0
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テンリュデネ・ゾー @ 2024/05/14(火) 20:47:34.15 ID:aewHWgbao
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薬師とか錬金術とか、田舎とか @ 2024/05/13(月) 23:03:05.43 ID:nAT+1SmNo
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【安価】刃牙の世界で美少女が活躍するようです @ 2024/05/12(日) 21:23:05.29 ID:vRdDvVa7o
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715516584/
I'll never be complete without you. @ 2024/05/11(土) 21:32:24.15 ID:u/oaqw4e0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1715430743/
2 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 20:01:45.23 ID:RuiFdFo0
「はぁ、うまくいかないなぁ……」
にらめっこしていた能力開発の本から顔を上げる。
私はこうして能力を得るために勉強している。
学園都市に来た目的は能力開発の為なのだから、当然と言えば当然だ。
幻想御手事件以来、私は以前にもまして能力開発の勉強に力を入れている。
しかし、それでも私はレベル0のままだった…
ふと時計を見ると、時計の針はすでに10時を回っていた。
「明日も早いし、もう寝ようかな…」
私は明日の学校に備えて、早めに寝ようと立ち上がった。
3 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/25(金) 20:13:12.83 ID:.Kx6JTso
村正や贋作弓聖は出演予定ありますか?
4 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 20:15:23.04 ID:RuiFdFo0
「んっ?」
ふとテーブルの上のコップに目をやると、中の水が揺れていた。
「なんだろう?地震かな?」
どうやら地震のようだ、規模はさほど大きくない。私は別段慌てることもなく
地震が収まるのを待つ。
(随分と長い地震だな〜…)
揺れ始めてからもう1分は経っている。それなのに一向に収まらない揺れに私は
首を傾げる。
その刹那、部屋が大きく揺れ、部屋の中に轟音が轟いた。
「きゃあぁぁ!」
突然の大きな音に私は咄嗟に頭を庇いながらその場に蹲った。
大きな音が鳴ったのは一瞬だけだったが、私の体は金縛りにでもあったかのように
動かなかった。
<ぬ、ぅぅぅ…>
ふと、私の耳にうめき声のようなものが聞こえてきた。
その音の正体を確かめるために、私はおそるおそる顔を上げた。
5 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 20:27:52.30 ID:RuiFdFo0
今のところ正宗だけの予定です。
あんまり出しすぎると収拾付かなくなりそうなので。
私が顔を上げると、そこには人間程の大きさの天牛虫(カミキリムシ)が居た。
「うわぁ!何これ!?」
あまりの出来事に私は腰を抜かしてその場に座り込む。
<ぐぅ…、ここはどこだ?なぜ吾はこのような場所に……?>
そのカミキリムシが言葉を発する、
どうやらうめき声の正体はコレで間違いないようだ。
私は改めてそのカミキリムシを見る、虫、というには余りにも大きすぎる。
何より異様なのは、その体が、まるでロボットのように金属の光沢を放っている事だ
あまりの事態に私が言葉も発せずにいると
<御堂!おらぬのか!?御堂!!>
とカミキリムシが叫んだ。
みどう?何かを探しているのだろうか?
6 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 20:38:52.00 ID:RuiFdFo0
<ぐぅッ!?体が動かぬッッ……!>
ロボットの体がよろめく、よく見るとその体にはいくつかのヒビが入っていた。
私が茫然としていると、遠くからサイレンの音が聞こえて来た。
どうやら音に驚いた近所の人がアンチスキルに通報したみたいだ…
正気を取り戻した私は、助けを求めるために部屋の外へと飛び出した。
数分後、私は到着したアンチスキルに事情を説明する。
アンチスキルが部屋の中に入り、あのカミキリムシを運び出そうとする。
どうやらカミキリムシは抵抗しているらしく、部屋の中からは言い争うような声と
激しい物音が聞こえて来る。
私はここは危険だという事で、アンチスキルの詰所に避難させられた。
7 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 20:51:25.35 ID:RuiFdFo0
アンチスキルの人の話では、まだ異変が起こる可能性があるという事で
私は部屋には帰れず、詰所の仮眠室を借りて、一泊することになった。
「はぁ〜、なんかついてないなぁ……」
ベッドに横になると、溜まっていた疲れがドッと出て、私はそのまま眠りについた。
「おーい、早く起きないと遅刻するじゃん!?」
ドンドンという音が聞こえて来る。誰かがドアを叩いているようだ。
「もう…なに〜?こんな朝早くから……」
起き上がり周りを見渡し、、ここが自分の部屋で無い事に気が付く。
「あれ…?ここどこ?」
私が寝ぼけ眼のまま状況を把握できずにキョロキョロしていると
ドアが開き女の人が入って来た。
「寝ぼけてる場合じゃないじゃん、早くしないと遅刻するじゃん」
そこにはいつかのアンチスキルの黄泉川さんが居た。
「あれ?どうしたんですか?こんな朝早く…」
「はぁ…、とりあえず、顔洗ってくるじゃん…」
8 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 21:04:35.14 ID:RuiFdFo0
顔を洗い、頭がすっきりすると昨日なにがあったかを思い出した。
「これから君の部屋に行って、学校に必要な物を取ってくるじゃん」
昨日の事件の後、部屋にはもう異常が無い事が確認されたが、念のためという事で
黄泉川さんが護衛として付いて来てくれるらしい。
私は黄泉川さんの運転する車に乗り、部屋へと向かった。
「お手数掛けます」
「ははっ、そんなに気を遣う必要ないじゃん!」
そう言って黄泉川さんが笑った。
それから少し真面目な口調になり
「あれから調子はどう?能力開発頑張ってる?」
と聞いてきた。
「あはは、あれからも頑張ってるんですけど…、まだレベル0のままなんですよね」
私は努めて明るく言ったが、なんだか言っていて悲しくなって来た。
「そっか、でも、諦めない事が肝心じゃん?」
そういって私に笑い掛ける。
「そうですよね…」
私も同じように笑顔を返す。
9 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/25(金) 21:11:54.58 ID:GuPrQWYo
佐天さんが内蔵ぐっちゃぐっちゃにしながら戦うのか……股間が熱くなるな……
10 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 21:18:24.87 ID:RuiFdFo0
そうこうしているうちに、車は私の部屋のあるアパートの前に到着した。
「まずはあたしが入って様子を見るから、何かあったらすぐに助けを呼びに行くじゃん」
まあ、大丈夫だとは思うけど、そう言って黄泉川さんは部屋の中に入って行った。
昨日の今日だし、私は大丈夫なのかと心配になった。
「おーい!大丈夫だから入ってくるじゃん!」
私の心配とは裏腹に中から黄泉川さんの暢気な声が聞こえてきた。
「うわぁ〜〜…」
部屋の中に入ると、あのカミキリムシの現れた所なのだろうか、床に木の板で
応急処置がしてあった。
その周りも、現れた時の衝撃なのか、運び出されるときに暴れたせいなのか
小物などが散乱していて、まるで台風が来たみたいな状態だった。
「これどうしようかな〜」
私は部屋の惨状を見て溜め息を漏らした。
しかし、考えていてもしかたない、そう思い学校へ行く準備をはじめる。
11 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 21:30:47.73 ID:RuiFdFo0
その後、準備を終えた私は、黄泉川さんに学校の近くまで送ってもらい
そこで黄泉川さんと別れた。
「佐天さん、どうかしたんですか?なんだか顔色が悪いみたいですよ…」
学校に着くと、私の様子を心配した初春が話しかけて来る。
「ああ、昨日はあんまり眠れなくてね…」
「へぇ〜、めずらしいですね。何かあったんですか?」
「部屋にスッゴク大きい虫が出てね、そのせいで…」
「え゛!虫ですか…?」
初春が少し引き気味に言う。
「あはは!冗談だよ、冗談!」
「もぉ〜、佐天さんたら…」
初春が頬を膨らませて抗議の声を上げる。
余計な事を言って初春を心配させたくないし、それに本当の事を話しても
信じてくれるかわからなかった。
その後も初春と他愛もない会話をしているうちに、先生が来てホームルームが始まった。
12 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 21:41:08.13 ID:RuiFdFo0
ホームルームはいつも通り滞りなく進んでいった、が
「最後に、佐天、お前はこの後、職員室まで来るように。以上だ、日直、号令」
最後にそう言って先生は教室を出て行った。
「職員室に呼び出しだなんて…佐天さん、なにかしたんですか?」
初春が心配そうに私に尋ねて来る。
「さぁ?なんだろうね…」
私はそう言って誤魔化したが、理由は1つしか思い浮かばない。
あまり気乗りはしないが仕方ない、私は職員室へと向かった。
「失礼します。佐天涙子です」
職員室に入ると待っていた先生に、応接室へと行くように言われた。
呼び出しの理由を聞くと、先生も詳しい事は聞かされていないらしい。
私は応接室の前へ行くと、意を決して扉をノックした。
13 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 21:54:06.12 ID:RuiFdFo0
「どうぞ、お入りください」
中から返事があり、それに従い応接室の中へと入る。
「失礼します」
中に入ると、そこにはスーツをきた細身の男性が座って居た。
「佐天涙子さんですね?」
「はっ、はい!そうです」
応接室なんて入った事無かったから、緊張して声が上擦ってしまった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、私は稀少能力研究所で主任をしております
木原という者です。どうぞよろしく」
そう言って、その人は名刺を差し出した。
(稀少能力研究所?聞いたことないなぁ…)
私はその人が胡散臭いと思いながらも名刺を受け取る。
「あの、今日は私にどんな御用で?」
答えは予想出来ているけど一応尋ねてみる。
14 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 22:05:00.30 ID:RuiFdFo0
「はい、昨晩の事件の事で少々お話があるのですが…」
やはり予想通りの答えが返ってきた。しかし、私は昨晩何が起こったのかすら、
よくわかっていない。
「実は私…、昨日の事は、何が何だかわからなくて、教えられる事なんてほとんど
ないんですけど…」
私は正直に打ち明ける。すると木原さんはそう言われるのを予想していたかのように
笑みを浮かべた。
「どうかお気になさらず、あのような事が起こっては混乱しても無理はありません。
私がここに来たのは昨晩の事に付いて、あなたに説明するためです」
「え?」
完全に予想外の答えに私は目をパチクリさせてしまう。
15 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 22:17:34.26 ID:RuiFdFo0
「私に説明…ですか?」
「はい、すみませんが、ここでお話できるような話ではないので、私と一緒に研究所の
施設までご同行願えませんか?」
またもや予想外の申し出に私は困惑してしまう。
「で、でも学校がありますし…」
正直これ以上の面倒事はごめんだし、私はなんとか断ろうと必死になる。
「ご心配なく、もう学校へは話を付けていますので」
学校にまで話してあるのなら、多分断る事はできないだろう…
「わかりました…」
私は観念して、木原さんに付いて行く事にした。
木原さんに付いて駐車場へ行くと、高そうな車が止めてあり、私達はそれに乗り込んだ。
「どこへ行くんですか?」
「そんなに遠くではありません、うちの研究所が所有しているビルです。
そこにあなたに会わせたい人が居るんですよ」
私に会わせたい人?それが誰なのか、皆目見当もつかない。
16 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/06/25(金) 22:26:55.92 ID:u2VcZ0M0
しえんた
17 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 22:31:27.82 ID:RuiFdFo0
考えているうちに目的地に着いたらしく、車がゆっくりと停車する。
車を降りると、目の前には立派なビルがあった。
私は木原さんの先導でビルの中に入り、会議室のような部屋の前まで案内された。
部屋の中に入ると、そこには昨日のカミキリムシが居た。
<むッ、お主は昨日の娘か…>
カミキリムシが私の姿を確認するとそう言った。
「ど、どうも」
突然の出来事に私は動揺を隠せなかった。
「あの、私に会わせたい人って…」
「はい、驚かせてすみません。彼の名前は正宗、そんなに警戒しなくても、
彼は危害を加えるような事はしませんよ」
木原さんの答えを聞いて、私は困惑した、つーか会わせたい人って、
どっからどう見ても人じゃないし…
18 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/25(金) 22:40:38.62 ID:0AgOVfM0
木原くン
19 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/25(金) 22:45:54.82 ID:rt50hSko
支援
20 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 22:47:04.06 ID:RuiFdFo0
<おい!木原とやら!なぜ吾をこんなところへ呼んだのか、早く説明せぬか!>
私が抗議の声を上げる前に、カミキリムシ…正宗が苛立たしげに抗議した。
「これは失礼しました。それではお話しましょう、佐天さん、どうぞこちらに
お座りください」
完全に抗議をするタイミングを逸してしまった私は、木原さんに促されるままに
椅子に座った。
「まずは、彼……正宗の事からお話ししましょう」
木原さんが言うには正宗は大和という国から来たのだということだ。
つまり、こことは別の世界から来た、ということらしい。
それだけでもにわかには信じられない話だが、さらに信じられないのは、彼は元は
人間だったのだという。
正宗の居た世界には劍冑という兵器が存在し、それを作る者は自分自身の体を劍冑
にする。
そして、そうして出来た劍冑は能力者の能力の様な超常の力を備えているという事だ。
21 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 22:58:29.29 ID:RuiFdFo0
「……」
私はその話をすんなりと信じることはできなかった。別の世界だとか、そんなオカルト
じみた事を信じる人間は、この学園都市にはそうは居ないだろう。
<話は終わりか?ならば今度は吾の要求を叶えてもらおう>
それまでおとなしく話を聞いていた正宗が声を上げる。
<吾がここに来たのも、貴様が吾の仕手となる者を紹介すると言ったからだ>
仕手?また聞きなれない言葉が出てきた。
「仕手とは劍冑の、つまりは正宗さんを使う人間の事ですよ」
木原さんがそう答える。
彼を使う人間を紹介する…、呼び出されたのは当の正宗本人と私だけ…
「それって、もしかして…」
「お察しの通り、我々は佐天さん、あなたに正宗さんの仕手となってほしいのです」
22 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 23:14:28.18 ID:RuiFdFo0
「なんで私なんですか!?私なんかじゃなくて能力者の人に頼めば…」
「残念ですが、それは出来ないんですよ」
そう木原さんは言う。
「能力者は自分だけの現実を確立することで能力を得ます、自分だけの現実を確立
している人間には正宗という幻想を受け入れるスペースがありません。
なぜなら彼の仕手となるという事は新たな能力を得ると言う事と同義だからです。
彼の仕手となれるのは、デュアルスキルとなれる者、もしくは無能力者しかいない
という訳です」
能力を得る、その言葉を聞いて私の心が揺れる。
<………>
正宗は何かを考えているようで、黙り込んでいる。
「でも、私…」
「なにも今すぐに結論を出せ、というつもりはありません。しばらく考えてから
結論を出してくだされば結構です」
「わかりました」
「しかし、彼の仕手となればあなたは能力者になれます。悪い話ではないと思いますが」
最後に木原さんはそう言った。
23 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 23:27:18.52 ID:RuiFdFo0
話を終えて、私達は部屋の外に出る。
「ここでの話は機密事項ですので、くれぐれも他の人間には話さないように
お願いします」
木原さんが私にくぎを刺す。
「わかりました」
「それではご自宅までお送りします、外に車がありますので…」
私はそのまま外へ出ようとする。
<しばし待て>
いままで黙っていた正宗が口を開く。
<娘、お主と話がしたい、少し付き合ってもらうぞ>
突然の申し出に困惑する。
「話ってなんですか?」
私の言葉を聞いても正宗は答えず、木原さんの方へ視線を向ける。
どうやら正宗は木原さん達を警戒しているようだった。
「もしよろしければ、話をするついでに正宗さんに街を案内して差し上げては
いかがでしょう?」
木原さんはその視線の意味に気付いたのか、そんな突拍子もない事を提案した。
(さすがに正宗もこんな提案、賛成しないでしょう…)
<それはいい、吾もこの学園都市というものに興味があったのだ>
「ええっ!!?」
24 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 23:38:41.49 ID:RuiFdFo0
まさかOKするとは思わなかった。
というかこのカミキリムシと2人(?)きりというのはちょっと遠慮したい。
それに正宗が歩いていたら騒ぎにならないだろうか?そんな疑問が浮かぶ。
「ご心配なく、正宗さんは研究所で開発されたロボット、ということになっていますから」
木原さんは私の反論を先回りするかのようにそう言った。
「連絡をいただければ我々が正宗さんを引き取りに向かいますので…」
木原さんの連絡先を受け取りながら、私は今回も断る事は出来なそうだ、と嘆息した。
街に出ると案の定、正宗は奇異の視線を浴びたが、さすがは学園都市、ロボットか
なにかだと思っているのだろう、別段大きな騒ぎは起きなかった。
私は隣を歩く劍冑の事を考えていた。
まさか自分が無能力者という理由で必要とされるなんて思ってもみなかった。
(でもなぁ…)
私はこの得体の知れないロボットの事が信用できなかった。
(やっぱり、他の人を探して貰おう…)
そう結論を出すと、私は隣を歩くロボットに話しかける。
「あの〜……」
声を掛けた矢先、周囲に爆発音が響いた。
25 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/25(金) 23:51:30.07 ID:RuiFdFo0
「うわ!?何!?」
音のした方向を見ると、銀行から火の手が上がっている。
周りの悲鳴から察するにどうやら強盗が入ったようだ。
「どうしよう!ジャッジメントに通報しないと…」
そう思い私は携帯を取り出そうと鞄に手を伸ばす。
<娘!吾を装甲するのだ!!>
いままで口を開かなかった正宗の呼びかけに、私は驚いた。
<あの煙、そして周囲の悲鳴、無法の輩が狼藉を働いておるのであろう。
この正宗悪行狼藉をみすみす見逃すわけにはいかん!!>
「で、でも!ジャッジメントとかに任せた方が…」
<何を暢気な事を言っている!この悲鳴が聞こえぬのか!今、この時も悪に怯える
力無きものがおるのだぞ!!>
確かに周りは騒然としている。しかし相手は強盗かもしれない、そこらの不良相手に
するのとは訳が違う。相手が能力者だったら、私が行ってもなんの役にも立たないだろう。
26 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/26(土) 00:01:53.60 ID:IpDDeKA0
<ええい!あの程度の相手、吾を装甲すれば取るに足らん!急げ、娘!
これ以上、彼奴等の悪行を見過ごしてはおれん!>
周囲からは悲鳴と散発的に爆発音が聞こえる、おそらく警備ロボが応戦しているのだろう
彼の言っている事が本当ならば、私でもこの騒ぎを鎮める事が出来るのだろう…
戦うのは怖い…、それでも思い出す、勇敢なジャッジメントの少女を、そして…
私を助けてくれた英雄(ヒーロー)を……
心の底ではいつも思っていた、強くなりたいと、彼女達の様な英雄になりたいと。
そこまで考えて思い至った、正宗も同じなんだ、悪い事をする人を…、
苦しんでいる人を放っておけない。
私の心は決まった…
「わかりました、やります!あなたと一緒に戦います!」
ならば私も戦おう、正宗が正義を貫けるように、彼女達のような英雄になるために…
27 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/26(土) 00:13:04.54 ID:IpDDeKA0
<その意気や良し!ここに契約は成った!さあ!吾を装甲するのだ!娘、いや御堂!!>
「装甲?どうすればいいの!?」
<手を前に掲げ、装甲の構えをするのだ!あとはおのずと理解できる!>
正宗の言葉通り手を前に掲げる。すると正宗の体が分裂し、宙を舞った…
<御堂!誓約をするのだ!悪を断つ、吾等の誓いを!!!>
正宗の声が響く、同時に頭の中に語句が浮かんでくる。
「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」
「ツルギの理ここに在り!!」
28 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/26(土) 00:24:31.46 ID:IpDDeKA0
甲高い音が響き、目の前が光に包まれ、私は思わず目を瞑る。
そして、おそるおそる目を開けると…、私の体は濃藍の鎧に包まれていた。
「なに…これ……?」
自分の姿に目を見張る。
(力がドンドン湧いてくる!)
まるでテレビの変身ヒーローにでもなった気分だ、これならどんな敵にも負けない!
<行くぞ御堂!吾等の正義を為しに!>
「うん!」
正宗の言葉に頷き、地面を蹴りつける。甲鉄に包まれた体が地を駆ける。
私はすさまじい勢いで跳躍し、警備ロボの残骸の前に立つ強盗の前に降り立つ。
「何だこいつは!?新型の警備ロボか!?」
装甲した私を見て強盗が驚愕の声を漏らす。
「構うこたねぇ!やっちまえ!!」
強盗が銃を発砲する。
29 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/26(土) 00:33:58.93 ID:IpDDeKA0
「きゃっ!」
銃声の驚き思わず頭を押さえて目を瞑る。しかし、私の体には何の衝撃もこず、
聞こえたのは銃弾が弾かれる乾いた音だけだった。
「ちっ!銃が効かないぞ!」
「おい!もう時間がねぇ、そんなのほっといて逃げるぞ!」
強盗がバイクに乗って逃げようとする、そこに正宗の声が響いた。
<御堂よ、呆けている場合ではない!奴らを追うのだ!>
「う、うん!」
普段の私では、考えられないような速度で私は疾走する。
あっという間に強盗の乗ったバイクを追い抜くと、その進路を塞ぐように立ちふさがる。
進路を塞がれたバイクが急停止する。
「この野郎!なめんじゃねぇ!!」
強盗の手に炎が発生する。あの時と同じだ、私が御坂さんに初めて会った日と…
あの時は何もできなかったけど今なら!
30 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/26(土) 00:46:23.18 ID:IpDDeKA0
<こやつも陰義を使えるのか!だが御堂!あの程度の炎なら吾には通用せん!
迷わず突っ込め!>
私は正宗の声に押し出されるように、強盗に向かって疾駆する。
「くらいやがれ!」
強盗が炎を投げつける、私はそれを両手で防ぐ、炎は私になんの痛みも与えず、
虚空へと消え去った。
「なに!?」
「くらえぇぇ!!」
驚愕の声を上げる強盗に私はそのまま体当たりをする。
強盗はバイクごと吹き飛び、気を失ったのか動かなくなった。
「やった…、勝った……」
いままでの私では到底敵わなかった相手に、能力者にこんなにも簡単に勝利した。
<悪に報いあり!正義に勝利あり!世の心理は今!ここに在り!!」
正宗が咆哮する、その言葉がとても心地いい。
そうだ!私は英雄になれたんだ、いままでの私じゃない!
御坂さんみたいな英雄に!!
その時後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ジャッジメントですの!!」
31 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/26(土) 00:48:23.12 ID:/McgsYAO
なにげに面白いな
クロス元が禁書と何かわからないけど楽しい
期待
32 :
◆JZzNmabVtI
:2010/06/26(土) 00:48:40.26 ID:IpDDeKA0
今日はここまでにして、また明日続きを書きます。
もし見て下さった方が居たら、ありがとうございます。
33 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/06/26(土) 00:52:04.46 ID:/gYlzQSO
佐天さんに正宗か。
まあ善悪相殺よりは扱いやすいかな。ハラワタとか肋骨ぶちまけることになるけどwww
34 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/26(土) 01:09:29.16 ID:VPPyyiw0
面白かったぜい
次も期待してる〜
35 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/26(土) 01:13:08.95 ID:wbz3qn.0
>>31
元ネタ 俺もしらんので調べた
ニトロプラスの「装甲悪鬼 村正」
これはまだ買ってないや 興味でたので中古屋でさがすか
36 :
sage
:2010/06/26(土) 12:41:27.82 ID:qsgR4SQ0
金神さまにでも飛ばされたのか正宗……
>>35
悪い事言わないから体験版やってみてからにしたほうがいい
37 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/26(土) 17:38:45.43 ID:/McgsYAO
えっなにゲームなん?
38 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 19:42:33.12 ID:FIGMvYY0
今から投下します。
39 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 19:56:57.33 ID:FIGMvYY0
振り向くと、そこにはジャッジメントの腕章を嵌めた白井さんがいた。
「あっ、白井さん…」
「その声は…、佐天さんですの……?」
普段の私とはかけ離れた私の姿を見て、白井さんが驚く。
「正宗、これってどうすれば元に戻るの?」
いつまでもこんな目立つ姿でいる訳にはいかない。
<今、装甲を解く>
正宗がそう言うと、鎧は消え去り、私は元の姿に戻る。
「佐天さん、どうしてあなたがこんな所に居るんですの?それに
先程のお姿はいったい…」
「それは、まあ色々ありまして……」
私は言葉を濁す。まずい事になった、まさか白井さんに見つかるなんて…
どうにかしてこの場をうまく切り抜けなければ。私はなにかいい方法がないか
考えを巡らせる。
そんな私の様子を見て、白井さんは顎に手を当てて唸って
「佐天さん、すみませんが少し話を聞かせていただきますの」
と言った。
40 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 20:12:23.57 ID:FIGMvYY0
私は白井さんと一緒に風紀委員一七七支部へとやって来た。
「あ、いらっしゃい、佐天さん」
初春がこちらに気付いて挨拶をする。
「あの後戻ってこなかったから心配してたんですよ?何かあったんですか?」
「いや、別になんでもないよ…」
初春に嘘をつくのは気が引けるが、本当の事を話すことはできない。
「初春、私は少し佐天さんとお話することがあります、少々席を外して
いただきますわ」
「話って何ですか?」
初春が白井さんに尋ねる。
「それはプライベートに関わる事なので秘密ですわ」
「? わかりました、それじゃあ私はこっちで仕事をしてますから用があれば
呼んでください。」
そう言って初春はパソコンの方へ歩いて行く。
41 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 20:24:26.87 ID:FIGMvYY0
「それでは佐天さん、先程の姿は何なのか、説明して貰いますわ」
初春が居なくなったことを確認すると、白井さんは私に詰め寄って来た。
「それは…、そのですね……」
なにかうまい言い訳はないか、そう思い必死で考える。
「実験…、そう!実験をしてたんですよ、え〜と駆動鎧の研究の協力をする事に
なって、さっきのは実験の途中だったんですよ…」
なんとも苦しい言い訳だ、自分でもそう思う。
案の定、白井さんはこちらに疑いの視線を投げかける。
「実験〜?あんな街中で、ですの?」
白井さんが追及してくる。
「え〜とっ…」
冷や汗が出て来る。
ひょっとするとさっきよりも状況が悪化したかもしれない。
切羽詰まった私は、どうする事もできずに視線を逸らした。
42 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 20:40:15.32 ID:FIGMvYY0
「はぁ…」
そんな私を見て白井さんが溜め息を漏らす。
「これ以上詮索しても、無駄のようですわね…」
(諦めてくれたのかな?)
どうやら諦めてくれたようだ、私は安堵の息を漏らす。
「佐天さん」
「は、はい!?」
不意に白井さんが真剣な声で話しかけてきた。
「理由がどうであれ、今日のような危険な行動は謹んでほしいんですの。
今回のように事件に遭遇したら、ジャッジメントかアンチスキルに通報して
速やかにその場を離れるようにしてください」
白井さんの言う事はもっともだ、常識的に考えればそれが正しい対応だろう。
昨日までの私なら、きっと白井さんの言うとおりにしただろう。
「それって、目の前に困ってる人がいても、それを放って逃げろって事ですか?」
私は反論する、白井さんが正しいのは理解できる、それでも納得できなかった。
43 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 20:59:25.16 ID:FIGMvYY0
「放っておけ、なんて言ってはいませんわ、佐天さんは一般人なのですから、
わざわざ危険に飛び込むような真似をする必要はない、そう言っているだけですわ」
「私も戦えるようになったんです!だから誰かの為に戦いたい、ただそれだけなんです!
それが間違っているんですか!?」
私は思わず大声を出す。その声に驚いた初春がこちらを向く。
「間違っている、間違っていないの問題ではありませんわ!佐天さん!あなたは
一般人なんです、戦う力が有ろうと無かろうと関係ありません!」
白井さんも私に負けじと抗議する。
「ど、どうしたんですか?2人とも落ち着いてくださいよぉ…」
初春が私達を止めようと、割って入る。
「あ…、ごめん、初春。白井さん、私もう行きますから……」
そう言って私は2人に背を向け、支部から出て行こうとする。
「佐天さん、力があっても、中途半端な気持ちで戦おうとすれば…
きっと後悔しますわよ?」
その声を背に受けながら、私は支部から出て行った。
44 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 21:18:00.80 ID:FIGMvYY0
<御堂>
私が外に出ると、正宗の声が聞こえてきた。
「正宗?どこに居るの?」
<御堂の出てきた建物の屋根の上だ、今は金打声(きんちょうじょう)で
話しかけておる>
「きんちょうじょう?」
<吾と御堂の間での通信とでも考えればよい>
テレパシーのようなものだろうか、近くに正宗の姿を確認することは出来ない。
<そんなことはどうでもよい、それよりも御堂とあの娘の会話のことだ>
「やっぱり私、間違った事言ったかな?」
<何を言う!御堂の言葉は正しい、力無き者の為にこそ正義の力は振るわれるべきだ!
御堂を仕手に選んだ吾の目に狂いはなかった!>
正宗は私の言葉を肯定してくれた、こんなにもうれしい事はない。
「そうだよね…、私間違ってないよね?」
<ああ、これからも共に正義を為すために戦って行こうぞ!>
「うん!」
正宗に私の考えを肯定された事で、私はさっきまでとは違い、軽い足取りで
帰路についた。
45 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 21:34:44.21 ID:FIGMvYY0
その夜、私は正宗の仕手となった事を伝えるため、木原さんに電話を掛けた。
私が仕手になった事を告げると、木原さんはとても喜んでくれた。
街中で装甲した事に関しても気にしなくていいとのことだった。
「それで佐天さん、早速で悪いのですが、明日にでもあなたの能力値を測定
したいのですがよろしいでしょうか?」
私はその言葉の意味をすぐには理解する事が出来なかった。
「それって、もしかして…」
私は思わず聞き返す。
「あなたを能力者に認定するという事ですよ」
「能力者になった…、私が…」
念願の能力者になった、本当なら飛び上がるくらいにうれしい事だ。
しかし、私はそれを純粋に喜ぶ事が出来なかった。
なぜならこの力は私自身が努力をして得たものではない、そんな思いがあったからだ。
46 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 21:48:33.72 ID:FIGMvYY0
「それでは明日、研究所で測定を行います、学校へはこちらで連絡を付けて
おきますので」
「わかりました、それじゃあお願いします」
電話を切る、明日の朝、研究所の人が迎えに来てくれるらしい。
<御堂、どうかしたのか?>
正宗の声が響く、私は明日、研究所に行く事になった事を伝える。
<ぬぅ、またあの男か……>
正宗は少し不満そうだったが、私が頼むと了承してくれた。
ベッドに横になり、今日一日の事を考える。まるで嵐のような一日だった。
正宗に会い、彼の仕手になり、能力者になった…
この力は自分自身で得たものではない、その思いは消えない。
それでも、やはり私は能力者になったという事実に喜びを感じているのだろう。
その日は興奮してなかなか眠る事が出来なかった……
47 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 22:00:36.64 ID:FIGMvYY0
翌日
研究所に到着し、測定を行う施設へと案内された。
そこは学校の体育館よりも広い空間だった。
「まずは運動性能の測定をします。出て来るターゲットを破壊してください」
スピーカーから木原さんの声が響く。
<なぜ吾がこんな事を…>
正宗が呟く。
「ごめんね、こんなことに付き合わせて」
<御堂の為だ、協力せぬ訳にもいくまい>
「ありがと…」
正宗の返事を聞き、私は正宗を装甲する。
目の前が光に包まれ、私と正宗は一騎の武者となる。
48 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 22:11:30.57 ID:FIGMvYY0
<御堂、的を壊すのなら、刀の方がよかろう>
正宗が私に助言する。
「刀かぁ……」
正直、刀を持つのは少し怖かった。腰の刀は包丁なんか比べ物にならないくらい
大きいし、それになんだか怖いオーラのようなものを纏っているように感じるからだ。
(でも…)
私のわがままに付き合ってもらってるんだ、これ以上わがままを言う訳にはいかない
意を決して私は刀を引き抜く。
刀を、人を殺すための道具を見て動悸が激しくなる。
私はそれを無理矢理落ち着ける。
「ふぅ〜…、準備出来ました」
木原さんに合図を送る。
「それでは始めます」
ブザーの音が鳴り響きターゲットが現れる。
49 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 22:25:08.90 ID:FIGMvYY0
「たあっ!」
地面を蹴り、ターゲットに向かって走る。そのままの勢いで刀を振るう。
ターゲットはいとも容易く真っ二つになった。
「よしっ!」
私は喜びの声を上げる。
<気を抜くな、御堂ッ!次が来るぞッ!>
それからも次々と現れるターゲットを順調に破壊していく。
「次はっ!」
目の前のターゲットを破壊し、次を探す。
<後ろだ、御堂!>
後ろを見ると、随分と離れた場所にターゲットが出現する。
普通に走ったのでは、とても間に合いそうにない。
<御堂ッ!合当理を使え!>
「どうすればいいの!?」
<吾の言うとおりにすればよい、行くぞ御堂ッ!>
正宗の言うとおりに集中すると、装甲の背中からブーストのようなものが
吹き出し、私の体が宙に浮く。
50 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 22:41:57.26 ID:FIGMvYY0
「すごい!飛んでる!」
もはや変身ヒーローというよりも、ロボットアニメのロボットのように
私は空を駆けて行く。
そうして瞬く間にターゲットに接近すると、それを両断した。
同時に実験終了のブザーが鳴り響く。
「高度な飛行能力、パワーも申し分ありませんね」
木原さんがそう感想を述べる。
「正宗さん、よろしければ次はあなたの持っている陰義という能力を
見てみたいのですが…」
<それはできぬ>
「どうして?」
正宗に答えに、私は質問を投げかける。
すると正宗は私だけにしか聞こえないように、金打声で話す。
<奴らはどうも信用ならん、それに己の手の内を晒すような真似をする
訳にはいかぬ>
「それなら、しかたないね」
木原さん達を信用していない訳ではないが、正宗の意見を尊重する事に決めた。
「すみません、今日はちょっと無理みたいです」
私が正宗に代わって説明する。
「どうか、お気になさらず。それでは休憩を挟んで次の測定をしましょう…」
51 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 22:54:06.19 ID:FIGMvYY0
それからいくつかの実験をこなす。
「あれ?なんか体が重いような…?」
<おそらく熱量を使い過ぎたのだろう>
私の呟きを聞いた正宗がそう言った。
「熱量?」
<体力のようなものだ、劍冑を使うには熱量を消費する。長時間の行動で
御堂の熱量が足りなくなっているのであろう、そろそろ切り上げた方が得策だろう>
「わかった」
私は木原さんに事情を話し、今日の実験はそれで終了となった。
「今日はご協力ありがとうございました。結果は後日お知らせしますので、今日は
ゆっくりお休みください」
「ありがとうござます、それじゃあ失礼します」
研究所を後にし、帰路に付く。
部屋に帰ると、疲れが一気に出て、私は倒れ込むようにベッドに横になると
そのまま眠りに付いた。
52 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 23:04:27.06 ID:FIGMvYY0
次の日私はいつも通りに学校に登校する。
「涙子、なにかあったの?一昨日呼び出されてから戻ってこないし、
昨日も学校に来なかったし、心配したんだよ」
教室に入るとアケミ達が話しかけてきた。
「いや、呼び出しはたいした用事じゃなかったんだけどさ、その後気分悪くなって
そのまま帰って、昨日も部屋で寝てたんだ」
「そうなんだー、心配して損しちゃったよ」
そう言って笑うアケミに私は罪悪感を覚えた。
放課後、そう毎日実験がある訳ではなく、初春とも一日気まずくて会話が出来なかった
私はする事がなく、早々と部屋に帰った。
昨日の疲れがまだ抜けきっていないようで、部屋で休んでいるとチャイムが鳴った。
「はーい」
ドアを開けるとそこには白井さんが立っていた。
53 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 23:20:16.19 ID:FIGMvYY0
「どうしたんですか?」
一昨日あんな言い争いをしたばかりなので白井さんに会うのは少し気まずかったが
私は努めて冷静に応対する。
「ジャッジメントの支部に佐天さん宛の手紙が届きましたの」
「私宛のですか?」
「ええ、封筒にはわたくしに佐天さんに渡してほしいと書いてあったので、ちょうど
仕事も無かったので持って来たんですわ」
そう言って白井さんが封筒を差し出す。確かにそこには白井さんの手で私に
渡してほしいとのメ―セージが書いてあった。
随分と妙な話だ、はじめから私に届ければいい訳だし、それに渡すにしても同じ
学校の初春に頼んだ方が効率がいい。
「もしよろしければ、今開けてみてくれませんか?危険物ではないとは思いますが
万が一ということもあり得ますの」
白井さんに促されて封を切る。
「中身は…地図と写真?」
私はその写真に写っているものを見て愕然とする。
「どうしたんですの、佐天さん?なっ!これは…」
私の様子を見て不思議に思った白井さんが写真を覗きこみ
驚きの声を上げる。
写真には拘束されたアケミが写っていた。
54 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 23:32:11.13 ID:FIGMvYY0
「まずい事になりましたわね…」
白井さんが考え込む。
「下手に動く事は出来ませんわ、とりあえず固法先輩に連絡してみますの」
白井さんが電話を掛ける。
私はどうすればいいのか考えていた。
「佐天さん、その私はその地図の場所へ向かいます。佐天さんは部屋で待機
していて下さい」
電話を切った白井さんは私にそう告げ、背を向けようとする。
「待って下さい!」
白井さんを呼び止める。
「私も行きます」
「駄目ですわ、前にも言った通り、佐天さんは一般人ですの。誘拐犯の
所になんて行かせられませんわ」
白井さんが私の意見を否定する。
「それでも!友達が危険な目に遭っているのを放っておくなんて出来ません」
私はそれでも食い下がる。
「正宗!」
私が名を呼ぶと、まるで瞬間移動でもしてきたかのように正宗が現れた。
「もう何を言っても聞かないのでしょう?それならわたくしと行った方がまだ
安全ですわ…」
55 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 23:40:18.90 ID:FIGMvYY0
「それじゃあ…」
「ただし!わたくしの指示に従う事!これが条件ですわ!」
白井さんの了承を得た私は、正宗を装甲するために装甲の構えをとる。
正宗が分裂し宙を舞う。その光景を見て白井さんが息をのむ。
「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」
「ツルギの理ここに在り!」
「行きましょう!白井さん!」
「え、ええ…」
私の呼びかけで平静を取り戻した白井さんがテレポートで移動する。
私も合当理に火を入れて飛び立つ。
日も暮れ始め、紅く染まった空を濃藍の武者が駆けて行く・・・
56 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/26(土) 23:54:50.44 ID:FIGMvYY0
地図に記された場所に行くと、そこには使われなくなったビルがあった。
(アケミ!)
中を覗くと、アケミは眠らされているのか、ピクリとも動かない。
「部屋の中には6人、人質の隣には1人しかいませんわね…」
私達は、アケミを救出する事を優先して、作戦を立てた。
作戦はシンプルなものだ、私が犯人達の前に姿を現し、それに気を取られている隙に
白井さんがテレポートでアケミを救出する。
「白井さん、アケミを助けたら、アケミをテレポートで安全な所へ運んでください」
「それでは佐天さんはどうなりますの!?」
私の提案に白井さんが抗議の声を上げる。
「他に方法がありません、アケミを助けることを優先しないと…」
白井さんは少し考え
「わかりました、彼女を安全な場所に運んだらすぐに戻りますわ。
ですからくれぐれも無茶はなさらないでください…」
「わかりました、それじゃあ白井さん、お願いします」
「佐天さんも、お気をつけて」
白井さんがテレポートで姿を消す。
そして私は正面から犯人達の前へ姿を現す。
57 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 00:12:08.54 ID:BG1dyvY0
私の姿を見た犯人達がざわめく。
「お、お前が佐天涙子か…?」
「そうよ」
その答えを聞いて犯人達に動揺が走る。
「お、おい!どうゆうことだよ!?無能力者って話だろ!?」
「知るかよ!俺がわかる訳ねぇだろ!」
私が犯人達の気を引いているうちに、白井さんがアケミの隣に居る男の後ろへ
テレポートした。
「なっ!?てめえ、どこか・・・ぐはっ!!」
白井さんの放った蹴りが男の頭部に炸裂し、男は意識を失った。
「白井さん!アケミは無事ですか!?」
「大丈夫、眠らされているだけのようですわ」
私はそれを聞いてホッと胸を撫で下ろした。
「おい!お前ら何してやがる!早くあいつをぶち殺さねえか!」
「でも相手は能力者ですぜ?無能力者だって言うから、手を貸したのに…」
男が情けない声でリーダーらしき男に言う。
白井さんはその隙をついてアケミを連れてテレポートで脱出した。
「うるせぇ!先にお前から殺されてえのか!?」
そう言ってリーダーは部下に銃口を向ける。
「う、うああああ!」
銃で脅された部下達が私に向かって突っ込んでくる。
58 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 00:21:40.44 ID:BG1dyvY0
「はっ!」
私は出来る限り手加減して迎撃する。
「ぐはぁっ!」
瞬く間に突っ込んできた男達を片付ける。
「残ってるのはあんた1人よっ!」
残ったリーダーに言い放つと、地面を蹴り、突撃する。
「この野郎!」
持っていた銃を発砲するが、正宗の装甲には通用せず、銃弾は乾いた音を立てて
弾かれる。
「なっ!?」
私は愕然とするリーダーを殴り飛ばす。
リーダーは殴られた衝撃で瓦礫の山に突っ込み、動かなくなる。
「これで終わりかな?」
あとは白井さん達が来るのを待って、この人達を引き渡せば終わりだ。
そう思い胸を撫で下ろす。
59 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 00:31:52.65 ID:BG1dyvY0
<御堂、なぜ刀を抜かん?>
不意に正宗が話しかけて来る。
「だって…刀で切ったら死んじゃうかもしれないし…」
<何を甘い事を…、悪党等いくらいくら殺しても構わん。奴らは力無きものを
苦しめる、今回もか弱い少女を人質にとるような輩だったではないか。
そんな奴らに情けをかける必要などない>
「でも…」
<御堂ッ!お主は甘すぎるぞ……>
正宗は不満そうに言った。
「私…」
<御堂!何か来るぞ!油断するな!>
私が言葉を発しようとした矢先、正宗が警告を発する。
次の瞬間、ビルの壁が吹き飛んだ。
「新手!?」
私は立ちこめる煙の中、敵の攻撃に反応できるよう身構える。
<御堂ッ!外へ飛び出せ!早くッ!>
正宗が叫ぶ、私はその言葉に従い、合当理を吹かし外へ飛び出す。
その刹那、私の元居た場所が爆発した。
60 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/27(日) 00:38:46.17 ID:YRap1NQo
このゲームかっこよかったな
61 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/06/27(日) 00:40:22.99 ID:ErfDNRc0
★壁殴り代行始めました★
ムカついたけど壁を殴る筋肉が無い、壁を殴りたいけど殴る壁が無い、そんなときに!
壁殴りで鍛えたスタッフたちが一生懸命あなたの代わりに壁を殴ってくれます!
モチロン壁を用意する必要もありません!スタッフがあなたの家の近くの家の壁を無差別に殴りまくります!
1時間\1200〜 24時間営業 年中無休!
_
/ jjjj _
/ タ {!!! _ ヽ、
,/ ノ ~ `、 \ 壁殴り代行では同時にスタッフも募集しています
`、 `ヽ. ∧_∧ , ‐'` ノ 筋肉に自身のあるそこのアナタ!一緒にお仕事してみませんか?
\ `ヽ(´・ω・`)" .ノ/ 壁を殴るだけの簡単なお仕事です!
`、ヽ. ``Y" r '
i. 、 ¥ ノ
`、.` -‐´;`ー イ
62 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 00:44:55.59 ID:BG1dyvY0
「まさか、能力者!?」
これ程の爆発を起こせるのなら、レベル4はあるだろう。
煙が晴れていき、新たな敵が姿を現す。私はそれを見て我が目を疑った。
通常の車を上回る大きな車体、そしてそこから延びる堂々とした砲門…
煙の向こうから現れたのは戦車だった。
「戦車!?なんであんなのがこんな所に!?」
さすがにあんなもので撃たれたらひとたまりもない。
しかし、機動性はこちらが遥かに上回っている。私は戦車の後ろに回り込もうとする…
「!」
後ろに回り込もうとして気付く、戦車はビルを背後に陣取っている。
ビルが邪魔でうまく動く事ができないし、もし相手の攻撃が急旋回して攻撃
すればビルが崩れるかもしれない、そうすれば中の人間が命を落とすかもしれない…
「くっ!」
私は戦車の砲撃の影響がビルに出ないように、左右に撹乱するように飛び回る。
63 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 00:59:30.35 ID:BG1dyvY0
「どうしよう、逃げた方がいいかな?」
<何を弱気な事を言っておる!あのようなものを野放しには出来ん!>
たしかにそうだ、あれが周囲に被害を出すような行動をとらない保証はない。
それにここには白井さんが戻ってくる。
「破壊するしかないか…」
でも方法が無い、さすがに刀で戦車を切る事は出来ないだろう。
<御堂ッ!吾に考えがあるぞ!>
正宗が言う。
「考え!?それで戦車を壊せるの!?」
<ああ、あんな戦車など木っ端微塵にしてやろう>
「木っ端微塵…、あっ!中の人はどうするの!?」
戦車を破壊したら中の人が死んでしまうかもしれない…
<ええい!まだそんな甘い事を!心配するな、あれにはどうやら人間は乗って
おらぬようだ、あの戦車から人間の反応は感知できん!>
人間が乗っていない?自動操作、または遠隔操作なのだろうか?
言われてみれば動きがやけに単調だ無人と言われれば納得が行く。
「わかった、じゃあやって!正宗!」
<心得た!右手を奴へ向けよ!>
正宗が叫ぶと、私の右手首の辺りから筒のようなものが顔を覗かせた。
<行くぞ!御堂ッ!>
<? うあぁぁぁああああああ!!?」
正宗の声と同時に私の体をとんでもない激痛が走った。
64 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 01:15:27.56 ID:BG1dyvY0
突然の激痛に混乱する、視界が白熱し、油断すれば気を失ってしまいそうだ。
それでも気力を振り絞り、右手の照準だけは外すまいと歯を食いしばる。
<正宗七機巧が一!飛蛾鉄砲・孤炎錫!!>
<DAAARAAAAAHHHHHHHH!!>
正宗が咆哮をあげる、同時に筒から弾丸が射出される。
その攻撃の直撃を受けて戦車が爆発炎上する。
私は痛みと戦いが終わった安堵とで、体から力が抜け、
そのまま地面に叩きつけられる。
地面に落ちると装甲が解ける。
「ぐぅう!!痛い…!攻撃は受けてないはずなのに、どうして!!」
目の眩むような痛みに意識が朦朧とする中、私は痛む右手に目を遣った。
「あっ・・・・・・・・・」
見なければよかった、そう思った。でも、もう遅い。
そこには手首から上が無くなった私の腕があった・・・・・・
65 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 01:28:40.76 ID:BG1dyvY0
「ああああああああああああああああ!!!」
あまりの事態に私は半狂乱になり、地面の上でもがく。
「はぁはぁ!佐天さん!!無事ですか!?」
白井さんが戻って来た。
「これは…!佐天さん!気を確かに持って!今応急処置を!」
白井さんが私の腕に応急処置を施す。
「どうしてこんなことに!!」
<先の砲撃の材料に御堂の体を少し使っただけだ。案ずるな手など
すぐに元通りになる>
正宗の声が聞こえる、この傷の原因は正宗だと彼は言う、それなのに彼は少しも
悪びれず、それが当たり前であるかのように言い放った。
「ふざけてるんですの!!!こんな…こんなことをするなんて!!」
白井さんが激昂する。
「佐天さん!すぐに救護班を呼んできます!もう少し耐えて下さい!!」
白井さんの声を聞きながら、私の意識は深い闇へと沈んで行った・・・
66 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/27(日) 01:32:58.06 ID:BG1dyvY0
今日の投下はここまでにします。
次の投下予定日は未定ですが、数日中には投下する予定です。
投下する前には予告をしますので、よろしくお願いします。
最後に読んで下さった方、レスを付けてくれた方
本当にありがとうございます。
67 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/27(日) 01:37:49.76 ID:srGwInoo
村正の方は全然知らないけど、面白そうだね
乙
68 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/27(日) 01:38:29.59 ID:9qMFHNo0
装甲悪鬼村正欲しいのに金が無いなんて…!
69 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/27(日) 02:31:59.95 ID:RoSCCQYo
早速手首か
いずれ肋骨やら腸やらを……楽しみだ
70 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/27(日) 07:47:45.72 ID:9srdrQAO
内蔵ぐちゃぐちゃに〜ってレスはこういうことかあああああいああああああうわああああああああ
正宗知らない方が衝撃ある、ね、こえええマジgkbrした
次回も期待するよ!
71 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/27(日) 09:29:08.10 ID:YRap1NQo
この設定がまた男の子の心をくすぐるぜちきしょう
乙、楽しみに待ってるよ
72 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/27(日) 19:13:58.78 ID:E2lW7fk0
正宗の特に正義な台詞
<ギィィハハハハハところで御堂。別にどうでも良い事だが今の爆風の余波でなんか右足が吹っ飛んだ>
73 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/28(月) 22:09:56.53 ID:PDwhcXQ0
そういやここにも居るんだったなレールガン使う奴
74 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/28(月) 22:52:48.25 ID:h8/w8sSO
時期的にアニメ後の話?
75 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 16:20:33.90 ID:u/pKfms0
本日の20時くらいから投下いたします。
76 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/29(火) 16:46:33.46 ID:nz//QJco
佐天さんは、倒さねばならぬ相手を倒す為に自ら四肢や内臓を喰わせたりする様になるのだろうか
77 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 19:51:32.84 ID:ArzDmgo0
今から投下します。
あと、いくつか説明をします。
作中に出てきた研究員の木原は、本編に登場する木原数多ではありません。
研究員のキャラを登場させる際に、いい名前が考え付かなかったため、原作に研究員として
複数名登場した、木原姓を使用しました。
正宗の台詞にある御堂という言葉は、劍冑が自分の使い手を呼ぶ際に使用する言葉で
作中では佐天涙子を指しています。
また多少、時系列に矛盾が生じていますが、そこはご容赦ください。
78 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 20:03:41.91 ID:ArzDmgo0
私が誘拐犯達と戦った日から数日が経過していた。
あの後、私は病院へ搬送され、集中治療室に運び込まれた。
「すごいね君の体は、私もたくさんの患者を見てきたが、無くなった手が生えてきた
患者は君が初めてだよ…」
私を治療してくれたカエルみたいな顔の医者がそう言った。
そう、正宗の言った通り、数日で私の手元通りになっていた。
手は元通りになったが、私の心には拭いされない恐怖が生まれていた。
気付いてしまったから、戦うという事は自分さえも傷つけるという事に…
心のどこかでは思っていた、自分は傷つかないと……
きっと誰かが守ってくれるって…
いままでがそうだったから。白井さんが、御坂さんが、危なくなっても誰かが私を
助けてくれたから。
だから今回も、何かあっても正宗が私を守ってくれる。そんな風に考えていた。
でも違った、正宗は戦うためにはその使い手さえも犠牲にする、諸刃の剣だったのだ…
79 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 20:17:27.10 ID:ArzDmgo0
(白井さんの言ってた通りだな……)
白井さんには覚悟がある、自分が傷つく覚悟が、それでも誰かの為に戦う覚悟が。
私にはそれがない、だから傷を負っただけでこんなにも恐怖している。
借り物とはいえ、力を手に入れて舞い上がっていた。
私のしたことは正義の為の戦いなんかじゃなかった。
憧れていた人に近付けた、そんな勘違いをして、英雄ごっこをしていただけだ…
「おっと、どうやらお友達が来たようだ。私はこれで失礼するよ、それじゃあ
お大事に…」
そう言い残してカエル顔の医者は病室から出て行った。
それと入れ替わるようにして、初春達が病室に入って来た。
「みんな、また迷惑掛けちゃったね……、ごめんなさい…」
私は開口一番に謝罪する。私のせいで、またみんなに迷惑を掛けてしまった。
「いいんですよ、そんなことよりも早く元気になってくださいね?」
初春が私に微笑む、私が病院に搬送された時は、治療室の前で泣きじゃくっていた
らしいが、今はもう大丈夫なようだった。
80 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 20:27:37.33 ID:ArzDmgo0
「そうですわ、早く元気になる事が先決ですの」
「みんな無事だったんだし、気にすることないわよ」
白井さんと御坂さんも私を気遣う言葉を掛けてくれる。
白井さんは私を気遣ってくれているのか、私の事を怒るようなことは何も言わなかった。
<御堂>
不意に窓の外から声がした。
部屋の中の全員がそちらを向く。声のした方を見ると窓の外に正宗が居た。
<邪魔するぞ>
そう言って、正宗は部屋の中に降り立った。
「あら、これは正宗さん。何の御用ですの?」
白井さんが刺を持った言い方で正宗に言い放つ。
<御堂、もう傷は癒えたのであろう?ならば再び吾と共に正義の為に戦うのだ>
正宗は白井さんの声を無視して、私にそう言った。
「なっ!?」
白井さんが驚きの声を上げる。
「あなた!佐天さんをあんな目に遭わせたのに、また同じ事をするつもりですの!?」
白井さんが正宗に食ってかかる。
81 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 20:38:01.75 ID:ArzDmgo0
<無論だ、御堂は吾に正義の為に戦うと宣言した。ならば御堂は戦わねばならぬ、
この正宗と共に、この世に悪のある限り!>
正宗がそう答える。
「佐天さん……」
初春が心配そうに私を見つめる。
「私は…もう、戦いたくない……」
私はそう呟いた、それを聞いた初春が安心したように微笑む。
「だ、そうよ?悪いけど他をあたって頂戴」
そう言って御坂さんが正宗を睨みつける。
それを聞いても正宗は何も答えず、部屋の中が沈黙で満たされる。
誰も言葉を発さない、それからどれだけの時間が経っただろう?
長かったかもしれないし、もしかすると10秒にも満たない短い時間だったかもしれない。
<あくまでも…>
最初に口を開いたのは正宗だった。
<あくまでも戦わぬと、そう言うのであれば…、御堂!その首、この正宗が
貰い受けるぞ!!>
82 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 20:48:04.98 ID:ArzDmgo0
部屋の中の全員が正宗の言葉に絶句する。
「うそ…だよね……?」
私はあまりの事態にうまく言葉を発する事が出来なかった。
それでも理解できた、正宗は本気で私を殺すつもりだ。
彼の体から発せられる殺気が、それを言葉よりも如実に表していた。
<嘘ではない!吾の御堂は正義の為に戦い続けなければならん!それが臆病風に
吹かれて逃げ出すなど、許せるわけがない!!>
正宗が激昂する。その迫力に初春は泣きそうになりながら私の服の裾を握りしめる。
<御堂は吾に誓った、正義の為に戦うと!それを反故にしたければ、この正宗と戦い
打ち倒す他に手はないぞ!?>
正宗は今にも私に飛びかからんばかりの勢いだ。
「やめてください!!」
初春が私と正宗の間に立ちふさがる。
「もう…、これ以上……佐天さんを傷つけないでください!!」
83 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/06/29(火) 20:49:31.11 ID:aX/BOck0
村正漫画版読みたいのにRED売ってねえええええええええええええええ!!!
おまけか! おまけの所為かああああああああああああああ!?
84 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 21:06:10.15 ID:ArzDmgo0
初春が叫ぶ。恐怖に必死で耐えているのだろう、手を白くなるほどに握りしめ、足は
ガクガクと震えている。
<そこを退け小娘!どかぬならお主から斬って捨てるぞ!!>
「待ちなさい!」
私達を庇うように御坂さんが前に出た。
その手にはコインが握られ、いつでも超電磁砲を放てる構えをとっていた。
「さっきから聞いてれば、全部あんたの勝手な理屈じゃない!そんな理由で
これ以上、佐天さんを傷つけさせないわ!」
<ええい!黙れ!吾は御堂と話をしておるのだ!!>
正宗の怒声が部屋の中に響く。
「黙るのはそっちよ!佐天さんはあんたのせいで傷ついたのよ!あんたの都合で
戦わされて、あんな大怪我までさせられて。今度は命まで取ろうっていうの!?
なにが正義の為に、よ。やってる事はそこらの悪党と変わらないじゃない!!」
正宗の怒声を真正面から受け止めても、御坂さんは微動だにしなかった。
<お主は吾が悪党と同列だと、そう申すのか!?>
「そうよ!自分の都合を押しつけて。佐天さんを傷つけて、挙句の果てになんの罪も
ない佐天さんや初春さんを殺す?そんなあんたの、どこに正義があるっていうのよ!?
あんたなんて、ただの人殺しじゃない!!!」
85 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 21:15:55.47 ID:ArzDmgo0
<な…なんだと……?>
御坂さんの言葉を受けて、正宗の纏っていた怒気が、瞬く間に消えて行く。
<吾が、吾がただの人殺しだと…?莫迦な、それではあの蒙古共と同じではないか…?>
正宗が初春を見つめる。そして、わたしの方へと視線を投げかけた。
「っ……!」
私は思わず顔を伏せた、正宗の視線を受け止める事は、私にはもう出来なかった。
<御堂……>
正宗はそう呟くと、窓から外へと飛び立って行った。
「よかった〜」
安堵の声を出して、初春がその場に座り込む。
「ふ〜っ、大丈夫だった?佐天さん。」
御坂さんが私を気遣うように声を掛けて来る。
86 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/29(火) 21:18:28.65 ID:00Y.KvAo
>>73
レールガンつっても電磁抜刀だったり電磁景明さんだけどな
87 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 21:25:01.88 ID:ArzDmgo0
「とりあえずは一安心ですわね。それでもまた来ないとも限りませんから、しばらくは
警戒が必要ですわね」
白井さんが考え込むように言った。
私は正宗を裏切り、正宗は私の元を去った。
それは私の戦う力の喪失を意味していた。
気付けば、私には戦う力も、覚悟も、信念もありはしなかった……
だから、もう御仕舞いだった…
佐天涙子の戦いは、終わった――――
88 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/29(火) 21:40:21.53 ID:43LqH9I0
それから数日後、私は無事に退院した。
あれだけの怪我の後という事で、しばらくは自宅で療養する事になった。
学校も無く、する事がない私は、まるで魂が抜けたようになっていた。
ふと、携帯に目をやると。初春からメールが届いていた。
気分転換に街を歩かないか、といった内容のメールだった。
あの日以来塞ぎ込んでいる私を元気づけようとしてくれているのだろう。
「このまま、こうしててもしかたない…か……」
私は起き上がり、メールに記されている待ち合わせ場所へと向かった。
89 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/06/29(火) 21:55:16.20 ID:.aDfE2SO
1です。
申し訳ありませんが、落雷で回線が落ちてしまったようです。
ですので、次の投下は回線が復旧し次第となります。
ご迷惑お掛けして申し訳ありません。
90 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/06/29(火) 22:24:58.12 ID:.aDfE2SO
1です。パソコンの回線が復旧しそうもないため、今日はここまでにします。
続きは後日投下します。見てくださった方、申し訳ありません。
91 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/29(火) 22:28:05.42 ID:u9yoLvEo
あら、お疲れ様です
92 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/29(火) 22:40:05.30 ID:4PYUStoo
あら残念。乙
93 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/29(火) 23:04:46.13 ID:aX/BOck0
乙
たのしみにしてる
94 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/29(火) 23:14:09.03 ID:NuelG2SO
乙
どの木原なのか伏せたのは伏線って訳じゃないのね
95 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/30(水) 04:04:24.09 ID:Rwb.YCE0
回線が復旧したので、きりのいいところまで投下します。
96 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/30(水) 04:18:44.85 ID:Rwb.YCE0
「あっ!佐天さん!よかった、来てくれたんですね!」
待ち合わせ場所に到着すると、初春が私の所へ駆け寄って来た。
「佐天さん、あれからずっと元気がないんですもん。私、心配したんですよ?」
「ごめんね、色々考えちゃってて……」
「いいんですよ、もうあんな得体の知れないモノのことは忘れちゃいましょう!」
初春の言葉に罪悪感を覚えた。彼は私を必要だと言ってくれ、私はそれに応えた。
それなのに私の勝手な都合で裏切ってしまったから……
それでも、私の心には安堵の気持ちが広がっていた。
初春と街を歩く、学校であった出来事や、御坂さんや白井さんの事、他にも
他愛もない話をしながら歩いた。
「佐天さん?」
初春が心配そうに私の顔を覗きこんでくる。
「大丈夫、ちゃんと聞いてるよ」
そういって初春に笑い掛ける。
「ふふっ」
「えっ?何かおかしかった?」
おかしな所でもあったのだろうか?私は少し戸惑った。
「いつもの佐天さんだな……って、そう思って…」
ああそうか――――――
「ただいま、初春…」
私は日常に帰って来たんだ。
97 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/30(水) 04:30:38.76 ID:Rwb.YCE0
それから数日、すっかり元通り、とはいかないまでも、元の調子を取り戻した私は
再び学校に通い始めた。
その日は初春はジャッジメントの仕事があるらしく、私は真っ直ぐ家に帰る事にした。
その帰り道、前方に見覚えのある後姿がある事に気付いた。
「お〜い!御坂さぁ〜ん!」
前を歩く御坂さんの後ろ姿に声を掛ける。
御坂さんにはまだキチンとお礼を言っていないから、キチンとお礼を言わないと…
私の声を聞いて、御坂さんが振り向く。
「申し訳ありませんが、どこかでお会いしましたか?とミサカは尋ねます」
「えっ?」
こちらを振り向いた御坂さんに少し違和感を感じた。
よく見ると、御坂さんは頭に普段つけていない大きなゴーグルのようなものを
着けていた。
98 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/06/30(水) 04:32:31.84 ID:Rwb.YCE0
本日はここまでにします。
次回は木曜か金曜の予定です。
今日は一度途中で中断してしまい申し訳ありませんでした。
99 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/30(水) 09:29:52.96 ID:OaA9xvco
うへ、トラブル呼び込みスキル発動かww
100 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/06/30(水) 23:48:21.70 ID:4hSFBH60
VS一方篇、始まる―――
101 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/01(木) 22:23:46.19 ID:3eUJ/X60
明日の19時から投下します。
102 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 18:47:32.80 ID:/NZLDQE0
それでは、今から投下します。
103 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 18:56:17.68 ID:/NZLDQE0
何かの冗談なのだろうか?御坂さんは私の顔を見て、誰だかわからないという風に
首を傾げた。
「もしかして、お姉様のお知り合いの方ですか?とミサカは尋ねます」
「お姉様?」
彼女の口から出たお姉様という言葉の意味を考える。
「それって、御坂さんの妹さんってことですか?」
これだけそっくりなのだから、常盤台の後輩というわけではないだろう。
「はい、御坂美琴お姉様は、ミサカのお姉様です、とミサカは答えます」
そういって彼女は頷いた。
「私は佐天涙子、御坂さんの友達です」
「そうだったのですか…、私の名前は……、美春…、御坂美春です、とミサカは少し
考えて自己紹介をします」
御坂さんの妹さん、美春さんは少し考えるようにした後、そう答えた。
104 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 19:06:43.13 ID:/NZLDQE0
「お姉様に何か用事でもあるのですか?とミサカは問いかけます」
「いや、用事って程のことではないんだけど…、まあちょっとお礼を言いたい事
があって」
「よろしければ、お姉様にお取次しましょうか?とミサカは提案します」
「いえ、妹さんにそんな手間掛けさせる訳にはいきませんよ。自分で連絡しますから
気持ちだけ受け取っておきます」
さすがに初対面の人にそんな手間を掛けさせる訳にはいかない。
「そうですか…、それではミサカは用事があるので失礼します、とミサカはお辞儀
します」
「うん、じゃあお気をつけて…」
そう言って妹さんは歩いて行った。
その日の夜、私は御坂さんにメールを送った。
内容は何かお礼がしたいので、一緒にどこかへ出かけないかといった内容だ。
メールを送るとすぐに返信が返って来て、明日にでも出かけようということになった。
次の日、私は御坂さんと喫茶店に居た。
105 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/02(金) 19:11:00.57 ID:jXZ5kX6o
戦闘シーンでも無いのに挿入歌を貼らせてもらうぜ!
http://www.youtube.com/watch?v=j9mkN2I60S4
106 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 19:17:23.12 ID:/NZLDQE0
「すみません、お礼を言うの遅くなっちゃって…」
御坂さんに謝罪する。
「別に気にしなくていいわよ、大した事なんてしてないし。それに私達、
友達なんだから、助けるのは当たり前でしょ?」
御坂さんは笑いながら答えた。
「まあ。元気そうで安心したわ。これからも困った事があったら、私達にどんどん
相談してくれていいんだからね?」
やっぱり御坂さんはスゴイ人だ、他人の為に体を張って、それを大したことないと
言ってのける。
私がこの人みたいになりたいだなんて…、最初から無理な話だったんだ……
「それに私も佐天さんに会いたかったしね。あんな事があったばかりだから心配で、
黒子もあれからずっと、佐天さんの事気にしてたんだから…」
「そうなんですか…」
それを聞いて嬉しくなる、私をこんなにも心配してくれる人が居る、それだけで
元気が出る。
107 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 19:28:33.53 ID:/NZLDQE0
その後も御坂さんといつも通り話を続ける。
ふと、昨日会った御坂さんの妹さんの事を思い出した。
「あっ!そういえば、昨日御坂さんの妹さんに会いましたよ」
「えっ……?」
「妹さんが居るんだったら、私達にも紹介してくれればよかったのに…」
そこまで言って、御坂さんの様子がおかしいことに気がついた。
「どうかしたんですか?」
「佐天さん…、その妹って、どんな奴だった?」
「え〜と、御坂さんにそっくりで…、あと、頭にゴーグルみたいなの付けてましたよ」
私がそう答えると、御坂さんは難しい顔をして考え込んだ。
「具合でも悪くなったんですか?」
「えっ?ううん、大丈夫よ。そいつに何か言われたりしなかった?」
「いえ、なんか用事があるみたいで、すぐに行っちゃいましたけど…」
「そう、それならいいんだけど……」
それ以降、御坂さんは何度も何かを考えるように黙ってしまう事が多かった。
108 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 19:39:53.99 ID:/NZLDQE0
それから、私はまた元通りに学校に通うようになった。
怪我の事は学校がうまく誤魔化してくれたのか、学校に行っても、なんやかんや
言われる事も無く、私はいつもの日常に戻った。
ある日の放課後、私は初春と一緒に新しく出来たという洋服屋に行くために街を
歩いていた。
すると見覚えのある姿が目に入って来た。何かを探しているのか辺りを見回している。
(ゴーグルをしてるから、妹さんの方かな?)
「御坂さんの妹さんですよね?こんな所でどうしたんですか?」
私は妹さんに声を掛けた。
「あなたは、佐天涙子さんですね。とミサカはあなたの名前を思い出します」
「御坂さん…?」
妹さんを見て、初春が少し怪訝そうな顔をする。
「初春、この人は美春って言って、御坂さんの妹さんなんだよ」
「あっ、そうなんですか…、どうも初めまして。初春飾利です」
私の説明を聞いた初春が自己紹介をする。
109 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 19:49:36.75 ID:/NZLDQE0
「こちらこそ初めまして、御坂美春です。とミサカは自己紹介をします」
妹さんはお辞儀をした。
「お姉様と同じ、御坂では呼びにくいでしょうから、私の事は美春と呼んでください、
とミサカは提案します」
「わかりました、ところで美春さん、さっきから何か探してるみたいにキョロキョロ
してましたけど、何か探しものですか?」
私は美春さんに尋ねた。
「実はミサカは、つい先日学園都市に来たばかりで、地理に疎く、目的地がわからず
困っていたところです、とミサカは恥を忍んで打ち明けます」
美春さんは恥ずかしそうにそう答えた。
「もしよかったら、私達が案内しましょうか?初春もそれでいい?」
「はい、私は構いませんよ」
私は美春さんにそう提案した。
110 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 19:58:39.94 ID:/NZLDQE0
「しかし、ご迷惑なのでは?とミサカは恐縮します」
「いいんですよ!御坂さんにはいつもお世話になってるし」
「そうですか、それではお言葉に甘えさせていただきます、とミサカは頭を下げます」
「それでどこに行きたいんですか?」
初春が美春さんに尋ねる。
「ここの新しく出来た洋服屋に行きたいのです、とミサカは地図を差し出します」
「あれっ?ここって…」
差し出された地図に記されていたのは、私達が行こうとしている洋服屋だった。
「ちょうど私達も同じ所に行こうとしていたんですよ」
初春が言った。
「それは奇遇ですね、とミサカは偶然の一致に驚きます」
「それじゃあ、行きましょうか」
私達は美春さんと一緒に目的の洋服屋へ向かった。
111 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 20:07:28.95 ID:/NZLDQE0
洋服屋に付いた私達は、その後も美春さんと行動を共にした。
それからもいくつかの店を美春さんと一緒に回った。
「今日はありがとうございました、とミサカはお礼を述べます」
「別にいいですよ、来たばかりじゃ、色々大変でしょう?何かあったら力になります
から、困った時は連絡してください」
そう言って私は美春さんと連絡先を交換する。
「何から何までありがとうございます、とミサカは深々と頭を下げます」
その日以降も何度か私と初春、それに美春さんを交えて遊びに出掛けた。
112 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 20:19:09.32 ID:/NZLDQE0
今日は日曜日で、朝から初春と美春さんと一緒に遊んでいた。
「そろそろお昼にしませんか?」
初春がそう言った。時計を見ると、針はもう12時を回っていた。
「美春さん、なにか食べたい物ある?」
「そうですね、今日はお蕎麦を食べたい気分です、とミサカは自分の食べたい物を
提案します」
「お蕎麦かぁ〜、今日は暑いですし、ちょうどいいですね。佐天さんはそれで
いいですか?」
「うん、それでいいよ」
私達は近くにあったお蕎麦屋さんに入る。
「それではミサカはざる蕎麦にします、とミサカは注文します」
「佐天さんは何にします?」
「う〜ん、じゃあ私は…、冷やしたぬきにしようかな…」
「お客様、当店では冷やしたぬきなどという反人類的な代物は取り扱っておりません」
「えっ?反人類的?」
まさか蕎麦屋に入って、反人類的なんて言葉を耳にするとは思わなかった。
113 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 20:33:18.98 ID:/NZLDQE0
「何を言っているのですか佐天さん?天かすを冷たい汁につけるなどという行為が、
人類に許されているはずがないでしょう?そんなことアウストラロピテクスまで
遡ってもあり得ません、とミサカは力説します」
今度は美春さんがトンデモないことを言い始めた。
というかアウストラロピテクスの頃には冷やしたぬき自体存在しないから……
意気投合したのか、美春さんと店員さんが蕎麦談義に花を咲かせている。
それだけならまだいいが、時たま私にも話が振られるので、それに相槌を打って流す。
それが10分を越えると、さすがにしんどくなり、未だに一言も喋らない
初春に助けを求めようと声を掛ける。
「初春〜…」
「……」
初春の方を見ると、初春はメニューで顔を隠し、自分に話が振られないようにと
必死で気配を消していた。
「初春、この2人どうにかしてよ〜」
「……(ちらり)」
初春はメニューの横から2人を盗み見る。
「……(サッ)」
この場は静かにする事が賢明だと判断したのだろう、初春はまたメニューに
顔を隠し、また押し黙ってしまう。
「この裏切り者ぉ〜〜…」
「聞いているのですか、佐天さん?とミサカは話に集中しない佐天さんに憤慨します」
ますますヒートアップする2人の前に抵抗は無意味だと判断した私は……
考える事をやめた…
114 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 20:43:04.48 ID:/NZLDQE0
それからしばらくして…
店員さんが店長に呼び戻されることで、その蕎麦談義は終わった。
「失礼しました、自分でもなぜかは分からないのですが、ヒートアップしてしまって…
とミサカは謝罪します」
「は、はは。いいんですよ」
ぐったりしながら私は答えた。
「そうですよ、気にする事ないですよ」
「あんたがそれを言う訳?」
私は初春に恨みがましい視線を送る。
「うっ!ごめんなさい」
「まあ、いいよ。それじゃあ、食べようか?」
蕎麦屋を出た私達は、その後カラオケや、店を回ったりして、その日はお開きとなった。
115 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 20:53:43.07 ID:/NZLDQE0
また別の日、今日は初春はジャッジメントの仕事でいないので美春さんと私の
2人だけだ。
「そういえば、美春さんっていつも制服ですよね?」
隣を歩く美春さんにそう質問する。
「実は、ミサカは制服以外の着用を許可されてはいません、とミサカは事実を
打ち明けます」
やっぱりお嬢様校はそういうのに厳しいんだろうか?
「それじゃあ、アクセサリーはどうですか?ちょっとしたものなら大丈夫でしょう?」
女の子なんだし、アクセサリーくらいしてても怒られる事は無いだろう。
そう思い私は提案する。
「そうですね、アクセサリー程度なら大丈夫でしょう、とミサカは予想します」
「決まりですね!それじゃあ買いに行きましょう!」
私はそう言って、美春さんの手を引っ張る。
116 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 21:03:37.67 ID:/NZLDQE0
アクセサリーショップに到着した。
「美春さん、何がいいですか?」
「顔に似合わず、結構強引なんですね、とミサカは突然の行動に驚きを隠せません」
「はは、ごめんごめん。でも美春さんこんなに可愛いんだから、もっとおしゃれ
するべきだよ」
「面と向かって可愛いと言われると、さすがに照れますね、とミサカは言います」
美春さんはそう言った。
「それで、何がいいかな?」
私は再度美春さんに問いかける。
「そうですね、佐天さんのような髪飾りは可愛いですね、とミサカは正直に言います」
117 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 21:14:38.38 ID:/NZLDQE0
「髪飾りか〜」
美春さんの答えを聞いて、私は彼女に似合いそうな髪飾りを探す。
「これなんてどうですか?」
私は花を模した髪飾りを手に取る。
可愛いけれど、子供っぽくなく、とても美春さんのイメージにピッタリだと思う。
「とてもいいですね、とミサカは感想を述べます」
「それじゃあ、これは私から美春さんへのプレゼントってことで」
「えっ?そんな悪いです、とミサカは躊躇います」
「別に大丈夫だよ、友達になった記念ってことで!」
私がそう言うと美春さんは
「ありがとうございます、とミサカはお礼をいいます」
と言った。
118 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 21:31:38.01 ID:/NZLDQE0
アクセサリーショップを出る。
私は買った髪飾りを美春さんの頭につけた。
「うん!やっぱり似合ってる!」
「そうですか?とミサカは少し照れますながら言います」
それからしばらく歩き、公園の近くへと差し掛かると、目の前に一匹の猫が
飛び出してきた。
「猫だ、可愛いな〜」
私は猫を抱き上げる。
猫は人に慣れているのか、暴れるような素振りを見せない。
「美春さんも触ってみれば?」
私の言葉に美春さんは首を振った。
「ミサカの体からは能力の影響で微弱な電磁波が出ています。その影響で動物に
触ろうとすると逃げられてしますのです、とミサカは自分の体質を嘆きます」
能力の影響、やっぱり御坂さんの妹だもの、美春さんも能力者なんだ……
「そう…なんだ……」
「どうかしましたか…?とミサカは心配そうに尋ねます」
「いや、やっぱり美春さんも能力者なんだって思って…」
「あっ、すみません、あなたの気持も考えず、とミサカは謝罪します」
「やっぱり、能力者って才能で決まっちゃうのかな?私は能力者になる才能が
ないのかな?」
涙が溢れそうになる、そこへ美春さんが近づいてきた。
119 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 21:41:13.63 ID:/NZLDQE0
私の抱いていた猫が逃げ出す。
それに構わず、美春さんが私の頭を抱く。
「大丈夫です、佐天さん。あなたにはあなただけの可能性がきっとあります、
とミサカは断言します」
「あるのかな?そんなの……」
学園都市に来ても能力者になれなくて、レベルアッパーに手を出し、たくさんの人に
迷惑を掛けて。
そんな私になんの可能性があるというのだろうか?
「必ずありますよ、あなたはこの世界で、たった1人のあなたなのですから、
とミサカはあなたを励まします」
そういって美春さんは微笑んだ。
「ごめんね、いきなり取り乱しちゃって…」
「いいんですよ、とミサカは言います」
「そうだ!お詫びに美春さんが動物に触れるように、協力しますよ!」
「えっ、しかし、私の体からは電磁波が…、とミサカは再度言います」
「大丈夫ですよ!美春さんが私を応援してくれたみたいに、私も応援しますよ!」
そう言って美春さんの手を引き本屋へと向かう。
120 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 21:49:23.89 ID:/NZLDQE0
「ここで動物に関する本を探しましょう!」
私は本屋に入ろうとする。
「すみません、電話のようです。恐縮ですが、私はここで待っています。とミサカは
謝罪します」
そんなに時間のかかるような事ではないし、美春さんがあとから入って来て、入れ違い
になったら困る。
「わかりました、それじゃあ待ってて下さいね」
「お気をつけて……」
「あれ、美春さん?」
本屋から外に出ると、そこには美春さんはいなかった。
「おかしいなぁ、どこにいったんだろう?」
ふと横の路地の入口に目をやる。
「あれ?これ…美春さんの携帯?」
私はその路地へと入って行く。
「美春さ〜ん!どこですか〜?」
路地を歩くと前方に人影が見えた。
「美春さん?」
その人影に近づく。
「遅かったじゃねェか?英雄さんよォ?」
美春さんではない、白髪の男がこちらを振り向く。
121 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 21:55:50.56 ID:/NZLDQE0
(なに?この人…?)
尋常ならぬその気配に、私は気押される。
よく見ると、その男の足元に、血溜まりが出来ていて人が倒れている。
(やばい…!)
私にはもう戦う力がない、それに倒れている人はピクリとも動かない。
辺りの血の量から見てもう手遅れだろう。
だから私が危険を冒す必要はない、逃げて通報すればいい…
そう言い訳をして、その場から逃げだそうとする。
(……!)
でも、気付いてしまった……
男の足元の人影が常盤台の制服を着ている事に……
122 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 22:03:44.06 ID:/NZLDQE0
「あ――――――」
その瞬間理解した。男の足元の物体が何なのか…
見覚えのある茶色の髪
そしてその頭に―――
私のあげた、髪飾りが――――――
「うあぁぁぁぁぁああああ!!!」
頭の中が真っ白になる、思考が正常に働かない。
そんな中で目の前の男に対する殺意だけが私の体を突き動かす。
「よくもおぉぉおおおおお!!!!!」
何も考えられず、無我夢中で男に殴りかかる。
仕手となったことで私の身体能力は向上している、こんな細身の男ならば苦も無く
殴り飛ばせるはずだ。
男は避ける素振りも見せず、無防備に立っている。
その体に私の拳が触れる。
その刹那、甲高い音と鈍い音が響いた。
123 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/02(金) 22:05:30.51 ID:8GjX/sEP
悪因には悪果あるべし
124 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 22:11:53.43 ID:/NZLDQE0
殴られたはずの男は微動だにせず、殴ったはずの私は、衝撃で弾かれていた。
「ぐうぅぅぅ!?」
手に激痛が走り、私の体は無様に地面に転がった。
すぐに態勢を直し、立ち上がろうとする。
「なンだよ?大した事ねェなァ?」
不意にすぐ近くで男の声が聞こえた。
顔を上げると、目の前に男の拳が迫っていた。
「がッ!?」
顎を思い切り殴りつけられる。
私が立ち上がるまでに、それ程多くの時間を費やした訳ではない。
それなのに男は瞬時に私の目の前に移動してきた。
(身体能力を向上させる能力?)
それでは最初に私が弾き飛ばされた理由にならない。
たとえ私の拳を弾くほどの強度まで身体能力を上げても、私の体が吹き飛ばされる
ことはありえないだろう。
よろめく私の腹部に強烈な蹴りが見舞われる。
私の体はそのまま吹き飛ばされる。
125 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 22:20:02.52 ID:/NZLDQE0
「あ〜あ、つまんねェなァ、そろそろ終わりにするかァ?」
男が私に近づいてくる。
(私って…ホントにダメなやつ……)
たくさんの人に迷惑掛けて、誰の役にも立てなくて…
美春さんの仇もとれずに……
こんな所で死んでいくんだ…
(ごめんなさい、初春、美春さん、御坂さん、白井さん……)
死を覚悟し目を閉じる。
(ごめんなさい…正宗……)
<ぬおおおおおおお!!>
死を覚悟し目を瞑った、その刹那。聞き覚えのある声と甲高い音が路地に響いた。
「ちッ!」
目を開けると、そこには正宗の姿があった…
126 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 22:30:37.90 ID:/NZLDQE0
<無事か!?御堂!!>
正宗の頼もしい声が響く。
男は正宗と距離をとるように飛び退っている。
「チッ!面倒な事になりやがったなァ…」
男は何か思案しているようで、追撃を仕掛けてこない。
<御堂!掴まれ!!>
それを見た正宗が私に声を掛ける。
私は最後の力を振り絞り、正宗の背中にしがみ付く。
<振り落とされるでないぞッ!>
正宗の体が飛び上がる。
男はなんの行動も起こさず、ただ私達を見送るだけだった。
<ここまでくれば、もう大丈夫であろう…>
私はいつかの病院の近くで降ろされた。
地面に降り、安心すると体から力が抜けていく、どうやらもう限界だったようだ…
「ま・・さ・・・むね・・・・・・」
最後に私が見たのは、背を向けて去っていく正宗の後姿だった……
127 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 22:36:03.63 ID:/NZLDQE0
次に私が目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
見覚えのある病室だ、どうやら私は助かったらしい…
「正宗…」
私を助けてくれたのは正宗だった…
なぜ彼は自分を裏切った私を助けてくれたのだろう?
私が考えていると、病室のドアが開き、誰かが中に入って来た。
「ケガは大丈夫ですか?とミサカはあなたを心配します」
中に入って来た人を見て、私は驚きを隠せなかった。
「美春さん……?」
そこには御坂美春が立っていた――――――
128 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/02(金) 22:37:05.71 ID:/NZLDQE0
今日はここまでにします。
続きは明日の19〜20時頃投下します。
129 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/02(金) 22:41:07.85 ID:8GjX/sEP
乙!
まさか蕎麦屋が出るとは思わなかった
130 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/03(土) 00:12:43.88 ID:0UvhzgSO
おつ
131 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/03(土) 04:08:22.55 ID:RQVLB5s0
正宗対一方通行か
これから先、残ってる六機巧も使う羽目になりそうな佐天さん
想像するだけで胸と股間が熱くなるな……
132 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 19:29:04.49 ID:feJoL6c0
それでは、そろそろ投下します。
133 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 19:38:08.49 ID:feJoL6c0
いや、美春さんは死んだはずだ…、ならこの人は御坂さんだろう。
しかし、頭にはゴーグルを着けているし、雰囲気が違う。
「このミサカは御坂美春と名乗ったミサカではありません、そして御坂美琴でも
ありません、とミサカは説明します」
私の疑問に答えるように、彼女はそう答えた。
御坂さんでも美春さんでもない?
それでは彼女は誰なのだろうか?同じ顔の人間がそう何人も居る筈がない。
「言葉で説明するよりも、見せた方が早いでしょう、とミサカは合図を送ります」
彼女が合図を送ると、部屋の中に御坂さんとそっくりの少女が数人入って来た。
「なに…これ…?」
私は現実離れした光景に、そう呟いた。
「私達は、レベル5、超電磁砲のクローン、『妹達』(シスターズ)です」
「妹達?」
「はい、そしてこのミサカは、番号10032号です、とミサカは自己紹介します」
134 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 19:49:33.08 ID:feJoL6c0
レベル5のクローン?
あまりにも突拍子のない話に私は混乱する。
「妹達はある実験に参加しています。あなたが目撃したのは、その一環です、
とミサカは告げます」
アレが実験?
「美春さんが殺された事が、実験だって言うんですか!?」
思わず声を荒げる、人の命を奪うような実験なんて聞いた事がない。
「はい、学園都市の第一位、一方通行をレベル6へ進化させるために、2万人の
妹達を殺害させる。それがあの実験です、とミサカは答えます」
唖然とする、1人の人間のレベルを上げるために、2万人もの人を犠牲にするなんて…
「そんなの…、馬鹿げてる……」
「これが学園都市の暗部です。人の命など、大した価値を持ちません、とミサカは
言い放ちます」
「私は偶然実験に巻き込まれたって事?」
「いいえ、それは違います、とミサカは否定します」
135 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 19:59:56.09 ID:feJoL6c0
思いもよらぬ答えが返って来た。
私はその実験に関与した覚えはない、それなのに今回の事は偶然ではない?
「今回の御坂美春、いえ、10031号を使った実験には2つの目的がありました。
1つは、一方通行をレベル6へと進化させる実験。
そしてもう1つは、佐天涙子さん、あなたに学園都市の暗部を見せる事です、と
ミサカは告げます」
私に学園都市の暗部を見せる?そんなことになんの意味があるというのだろう?
「あなたは未だに、自分が無能力者でなんの関心も持たれていない。
そう勘違いしているようですが、あなたは異世界の劒冑という存在に関わった
貴重なサンプルなのです、とミサカは言います」
たしかに、正宗は異世界からの来訪者、そして異能の力を備えている…
研究者からすれば、これ程の研究対象はそうはないだろう…
136 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 20:12:07.91 ID:feJoL6c0
「おそらく今回の指令は、あなたが研究に協力せず、正宗とも距離を取ったため、
研究が続けられない事に業を煮やした人間が仕組んだ事でしょう、とミサカは
推測します」
研究者としては、すぐにでも研究をしたいだろう。しかし私がそれを放りだして
逃げてしまったのだから、そう考えるのもわからなくもない話だ…
「あなたが死に、正宗が新たな仕手を探しに動けばそれでよし。また、万が一
あなたが生き延びた場合には、研究員が取引を持ちかける手筈になっていました、
とミサカは説明します」
「取引?」
「はい、親交を深めた10031号を目の前で殺害することで、あなたがその犯人、
一方通行に対し、復讐心を持つ。そうすればあなたは力を求め正宗に接触を図る。
計画の発案者はそう考えたのでしょうね、とミサカは推測します」
私は黙って、10032号さんの話を聞く。
私が美春さんの死を目撃したのは、私の復讐心を煽る事が目的だということだ…
137 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 20:23:32.64 ID:feJoL6c0
「しかし、あなたは復讐の対象が誰だかわからない。そこで犯人探索に手を貸す事を
条件に、研究への参加を促す、これが今回の指令の内容です、とミサカは真実を
明かします」
その話を聞いて、1つの疑問が浮かんだ。
「もし、私が復讐を望まなかったら…?」
殺害現場を見ても、私が復讐を望むとは限らない、恐怖して、家に閉じこもって
しまうような可能性だってあるはずだ…
「この計画には、まだ先があります、とミサカは補足します」
10032号さんは一度言葉を区切った
「あなたが復讐を望まず、正宗と接触しなければ…、第2段階として、初春飾利を
殺害する、これが計画の次のステップです、とミサカは説明します」
頭の中が真っ白になる。
もし、私が研究に参加しなければ。今度は初春の命が失われてしまう……
138 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 20:33:15.84 ID:feJoL6c0
「この計画の発案者は、なんの益も生み出さない存在をいつまでも生かしておくような
人間ではないでしょう。これはあなたにとってのラストチャンスです、誰でもいいので
速やかに再び研究に参加する旨を学園都市の研究者に伝えて下さい、とミサカは
促します」
確かに、そうすれば私達は助かる事ができるだろう…
しかし、彼女たちはどうなのだろうか?
「美春さんは…、いや…、あなた達はこのままでいいの?あんな実験に付き合わされて…
あれじゃあ、まるで……」
「実験動物みたいではないか?そう仰りたいのですね?」
私が詰まらせた言葉の先を10032号さんが補足した。
「実験動物みたい、というのは正しくありません…」
そう言葉を区切り
「私達は実験動物なのですから、とミサカは訂正します」
と言った。
その言葉を聞いて、グワン、と視界が揺れたような気がした。
139 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/03(土) 20:36:23.29 ID:KQbr6aMo
この会話そのまま聞かせれば正宗さん暴れだしそうだな
140 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 20:47:00.63 ID:feJoL6c0
「そっ、そんなの間違ってる!あなた達は実験動物なんかじゃない!
ちゃんとした人間じゃない!」
私はその言葉を否定する、そんなのは間違ってるから、認めたくないから…
「間違ってなんていません、ミサカ達は実験動物です。あの実験のために
生かされている…。あの実験は、ミサカ達の存在意義そのものです。
ですから、あなたがミサカ達の事を気に掛ける必要はありません、自分の身の安全を
優先してください、とミサカはあなたを諭します」
彼女の言葉を否定したい、実験動物なんかじゃないって…
しかし、それを彼女達自身が否定させない……
「もう、妹達のことは忘れすべきです…、とミサカは忠告します」
そう言って、私の前に何かを差し出した。
「10031号は死亡し、我々が関わることはないでしょう。ですから、
これはお返しします…」
それは、血で汚れた髪飾りだった…
「それでは失礼します、とミサカは別れを告げます」
10032号達が部屋を出て行く。
最後に10032号が振りかえり
「命は大事にしてください…、妹達とは違い、あなたは世界でたった1人しか
居ないのですから、とミサカは微笑みます」
そう言って、美春さんと同じように笑った。
141 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 20:57:45.28 ID:feJoL6c0
そのまま夜が明けた…
私は昨晩の事をずっと考えていた。
彼女たちを実験から解放したい。しかし、実験を中止させるのならば、第一位との戦いは
避けられないだろう。
昨日の事を思い出す、あの不可思議な力、正直第一位と戦って勝ち目があるなんて
思えなかった…
それ以前に、当の妹達自身が、実験の中止を望んでいない…
ならば私に余計な事をする権利なんてない…
私にできることは、自分と初春の命の為に、再び研究に参加することくらいだ。
しかし、私は未だに決心がつかなかった、研究に復帰することを木原さんに伝えようと
携帯を手に取るが、それをまた放りだす、という行為を何度も繰り返している。
「佐天さん!」
私が悩んでいると、部屋のドアが開いて、初春が中に飛び込んできた。
「う、初春?どうしたの?そんなに血相変えて?」
突然の来訪者に戸惑ってしまう…
142 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 21:08:50.82 ID:feJoL6c0
「どうしたの?じゃないですよ!また、こんなケガして、心配したんですからね!?」
初春が詰め寄ってくる。
「う、初春…、佐天さんは怪我人なんですから、そう大声を出しては…」
あとから入って来た白井さんが初春をなだめる。
「だって…、だって、心配したんですよ?あんな大怪我したばっかりなのに…
また入院なんて…」
初春が少し涙声になって答える。
「ごめんね、心配掛けて。今回は大したことないから、明日にでも退院できるよ…」
「ホントですか?」
「うん、ホント…」
初春が安堵の笑みを浮かべる。
ふと、初春と白井さんの後ろに、隠れるように御坂さんが居る事に気が付いた。
「ごめん、2人とも、御坂さんと話したい事があるんだ…。だから2人きりにして
くれないかな?」
「話、なんの話ですの?」
白井さんが疑問を口にする。
「いいのよ、悪いんだけど、2人とも席を外してくれる?」
「わかりました、それじゃあ私達、ジュースか何か買ってきますね」
そう言って、初春が白井さんの手を引いて外へ出て行く。
143 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 21:19:02.11 ID:feJoL6c0
部屋の中には私と御坂さんだけが残された。
「佐天さん…」
御坂さんが何かを言おうとする
「知ってたんですか…?」
「えっ?」
私はその言葉を遮り、御坂さんに質問を投げかける。
「美春さんの事、妹達の事知ってたんですか?」
「佐天さん…、知っちゃったんだね…」
「質問に答えて下さい!」
私は声を荒げる。
「知ってたわ、妹達の事、実験の事、全部…」
その答えを聞いて、頭に血が上る。
「知ってたんなら!どうして止めないんですか!?御坂さんはレベル5なんでしょう!?
なんだって出来るのに、あんなに強いのに、それなのに…、どうして!?」
そこまで言って気が付いた。
御坂さんが血が出るほど強く手を握りしめている事に……
144 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 21:30:59.38 ID:feJoL6c0
やっと気が付いた。
御坂さんが辛くないはずがないということに…
御坂さんが、あんな実験を放っておくはずがない、それなのに実験は続いている。
それはつまり、御坂さんでも止める事が出来なかったということではないだろうか?
「御坂さん…私……」
御坂さんに謝罪しようと口を開く
「佐天さん、ジュース買ってきましたよ〜」
「お姉様、ただいま戻りましたの」
私が謝罪するより先に、初春達が部屋の中に入って来た。
「あれ、どうかしたんですの?」
部屋の中の空気を感じ取り、白井さんがそう言った。
「ううん、なんでもないわよ。ごめんね、佐天さん、私、用事思い出したから先に帰るね」
そう言って、御坂さんが部屋を出て行こうとする。
「御坂さん!」
私は御坂さんを呼び止める。
「黒子は、佐天さんにと一緒に居てあげて。佐天さん…、佐天さんはもう心配しなくて
いいから…」
御坂さんはそう言い残して部屋を出て行った。
「用事?何なんでしょうね?」
残された白井さんが首を傾げた。
145 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 21:42:07.14 ID:feJoL6c0
その日は、初春と白井さんが付きっきりで私を看病してくれた。
「初春、そろそろ面会時間も終わりですわ。帰りますわよ」
白井さんが初春にそう呼び掛ける。
「帰りません…」
「へっ?」
初春の答えに白井さんが間の抜けた声を出す。
「帰りませんって…、ここに泊るつもりなんですの?」
「そうです!佐天さんが、もう無茶しないように見張ってるんです!」
「そんなわがまま、通る訳ないでしょう?第一、寝るところはどうしますの?」
「そんなの!床で寝ます!」
2人が言い争っていると、カエル顔の医者が中に入って来た。
「別に構わないよ、それに彼女がケガをしないように見ていてくれるというのは、
こちらとしてもありがたい。このままでは彼女がこの病院の出戻りの最短記録
保持者になってしまうかもしれないからね…」
カエル顔の医者の一言で、初春が今夜、病室に泊ることが決まった。
146 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 21:51:48.80 ID:feJoL6c0
しばらくして、初春がお泊りの準備を整えて戻って来た。
初春の寝る場所は、ベッドが大きいこともあり、私と一緒にベッドで寝ることになった。
「むにゃ…、佐天さ…ん……」
消灯時間が来て、部屋の電気を消すと、初春はあっという間に眠りについてしまった。
「正宗…聞こえる…?」
初春が寝た事を確認すると、私は正宗に呼び掛けた。
だが反応がない…
(やっぱり愛想尽かされちゃったかな…?)
<御堂…>
そんな事を考えていると、正宗の声が聞こえてきた…
<すまぬ御堂、吾が御堂を巻き込んだばかりに……>
正宗が私の知っている彼とは違う、労わるような口調で言った。
「正宗は悪くないよ…」
悪いのは私の方だ…
「ねぇ…、正宗?正義ってなんなんだろうね…?」
正宗に問いかける。
147 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 22:02:39.87 ID:feJoL6c0
以前の正宗ならば、間髪いれずにその問いに答える事が出来ただろう。
<すまぬ…、御堂よ、吾には正義とは何かが…、わからぬようになってしまった……>
しかし、返って来たのは、かつての面影の無い、よわよわしい声だった…
<吾は如何なるものを犠牲にしても悪を討つ、それが絶対の正義だと信じていた。
だが、あの髪の短い娘の言葉を聞いて、疑問が浮かんだ。吾は正義のためと言って、
御堂を傷つけた。それは正しい行いなのだろうか?年端もいかぬ娘を傷つける行為は
吾の憎んだ悪と同じではないのかと……>
「正宗…」
私はなにも言えなかった…
私には自分の正義なんてものはないから、彼の助けにはなれない……
私達の間を沈黙が満たす。
<もしかすると…、善悪相殺…、あれこそが世の心理なのやもしれぬ……>
「善悪相殺?」
聞きなれない言葉に、私は聞き返す。
148 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 22:11:51.55 ID:feJoL6c0
<吾の敵、村正という劒冑の理だ、1人の敵を殺せば、1人の味方を殺さねばならぬ
という呪い…>
善悪相殺、その言葉の意味を考える。
私にとって、一方通行は憎むべき敵だ。
しかし、妹達、10032号さんの言葉が真実ならば、一方通行は彼女たちに
存在理由を与えてくれる存在…
実験を行っている研究員にとっては、レベル6という彼らの夢とも言うべき目標を
実現させてくれる人物。
つまり、一方通行は完全な悪とは言いきれない…
一方通行がどれほどの悪人でも、どれだけの人道に反することを行っていても…
彼は絶対悪ではない……
きっと…、絶対悪なんて、この世には存在しない…
だから、正宗の絶対正義も存在しないんだ……
149 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 22:19:47.56 ID:feJoL6c0
なぜなら人は、正義と悪の両方を併せ持っているから…
1つの悪を断つということは、1つの正義を諸共に断つということだから…
ならば、善悪相殺が正しいのか?
否
それが世の心理だとしても…
隣ですやすやと寝息を立てる初春の頭を撫でる。
私に自分の大切な人を殺める事が出来るだろうか?
私にはそんなことは出来ないだろう……
ならばどうすればいい?
善悪相殺でも、絶対正義でもない…
私だけの戦う理由を見つけなければならない。
150 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 22:31:59.72 ID:feJoL6c0
ふと、私の中に1つの考えが浮かぶ…
善悪相殺は否定できない世の心理
絶対正義はすべてを犠牲にしても正義を貫く英雄の志
最初から、私にはそのどちらも受け入れることはできないものだったのだろう…
そして、私は佐天涙子の正義を見つけた…
それは自分の大切なものを守るために、他者の大切なものを否定するということ……
そこには大義なんてものはないし、とても正義なんて呼べたものじゃない……
それでも、これが佐天涙子の導きだした正義だ…
私はいつも身に着けていた髪飾りを手に取る。
そして、それをへし折った…
151 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 22:39:51.78 ID:feJoL6c0
何度も何度も、粉々になるまで砕く。
そうして粉々になった髪飾りを見つめる…
これは、今までの佐天涙子の象徴だ。
無能力者である事を嘆き、能力者に憧れ、傷つくことを恐れていた、弱い少女
しかし、友達を想い、誰かのために戦うことを夢見ていた、優しい少女
それを捨て去ることはできない…
誰かへの優しさまで捨ててしまえば、私はただの殺戮者になってしまう……
捨てることはできない、でも決別しなければならない―――
だから―――
私は、それを飲み込んだ――――――
152 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 22:50:32.06 ID:feJoL6c0
口の中が切れて、血の味が広がる……
それでも、そのすべてを飲み下す…
優しさを失くさないために…
新しい佐天涙子になるために…
そうして、私は頭に血の付いた髪飾りを着ける。
「正宗…、聞いて、私の正義を……」
私は正宗に自分の見出した正義を告げる。
<御堂、それは…>
正宗が言葉を詰まらせる…
「これが私の導きだした正義…、これだけは譲れない…」
<ならば、今度は吾から御堂へ問おう、御堂にその正義を貫く覚悟はあるか?
その身を裂かれ、血を流し、手足を失い、命を失っても…、その正義を貫く覚悟が
あるのか!?>
正宗の言葉を聞く。
戦うのは今だって怖い、傷つくのだって怖い、でも……
「それでも戦う、私には…、守りたい物があるから!」
153 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 22:58:49.47 ID:feJoL6c0
<承知した、御堂にそれ程の覚悟があるというのなら…、吾も力となろう、御堂の命が
尽きるまで!>
正宗がそう答える。
<御堂、綾弥一条よ、お主が今の吾を見れば、軽蔑するやもしれぬな…
だが、吾は決めたのだ、この御堂、佐天涙子の正義を信じると……>
正宗が何かを呟いた
「どうしたの?正宗…」
返事が聞こえる前に、私の耳に風切り音のようなものが聞こえた。
「佐天さん!」
窓の外を見ると、そこには白井さんが立っていた。
154 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 23:07:10.95 ID:feJoL6c0
「白井さん?」
言葉を発するより早く、白井さんが部屋の中に現れる。
「佐天さん!お姉様を知りませんか!?」
白井さんが血相を変えて、私に問いかける。
「御坂さん?どうかしたんですか?」
「どうかしたんですか〜」
私達の声を聞いて、初春も体を起こす。
「お姉様が居なくなってしまったんですの!こんな書置きを残して!」
私の前に、一枚の紙が差し出される。
私はそれに目を通す。
【黒子へ ちょっと出かけて来る、もしかしたら戻れないかもしれないから…
その時はごめんね?
初春さんや佐天さん達にも、よろしく言っておいて…
それから佐天さんに、もう心配はしないでって、伝えておいて…】
手紙にはそんな事が書かれていた…
「もしかしたら、佐天さんがお姉様の行き先を知っているのではと思い…
ここまで来たのですけれど……」
155 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 23:19:05.14 ID:feJoL6c0
手紙を読んで理解した。
御坂さんは第一位の所へ行ったのだと…
「正宗!」
私は正宗を呼び、部屋を飛び出した。
急いで病院を飛び出す。
病院の入口の前には、もう正宗が来ていた。
「行くよ、正宗!御坂さんを助けに!」
<承知したッ!遠くで大きな力を感じる、おそらく奴らはそこであろう…、
行くぞッ、御堂!吾等の正義を為しに!>
私は正宗を装甲しようと構えを取る
「どこへ行くんですか…?」
そこへ初春の声が聞こえた。
「御坂さんを助けに行く……」
私はそう答える。
「どうして佐天さんが行くんですか!?御坂さんはレベル5なんですよ!?
佐天さんが力になれる事なんて…!!」
156 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 23:31:48.24 ID:feJoL6c0
「御坂さんじゃ勝てないかもしれないから…、私が助けに行く……」
「御坂さんが勝てない相手に、佐天さんが敵う筈ないじゃないですか!?
また大怪我するかも、ううん、今度こそ死んじゃうかもしれないんですよ!!?」
初春が普段の姿からは想像もつかないような大声で捲し立てる。
「初春……」
追いついてきた白井さんもあっけに取られていた。
「私…、佐天さんに、行ってほしくないんです…」
初春が私の服の裾を掴んだ。
「嫌な奴って、思われるかもしれません…。でも、私、佐天さんに傷ついてほしくない、
死んでほしくないんです!」
最後はもう泣き叫ぶように初春が言った。
「それでも…、私は行くよ。これが私の出した答えだから…」
そう言って、初春の手を振りほどく。
「佐天さ…ん……」
初春がその場に座り込む
装甲の構えを取る、正宗の装甲が宙を舞う
「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」
さあ―――
始めよう、佐天涙子の本当の戦いを――――――
「ツルギの理ここに在り!」
157 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 23:40:09.56 ID:feJoL6c0
「私は行きます、白井さん、初春をお願いします…」
私は後ろを振り向き白井さんに声を掛ける。
「わかりました…、佐天さん、どうか無茶は…、いえ、違いますわね…
わたくしの言うべき言葉はこれではありませんわ……」
白井さんが一呼吸置く
「佐天さん!どうか、ご武運を!!そして、お姉様をお願いします!」
その言葉に頷き、空へと駆け上がる。
「さあ行こう、正宗。私達の本当の初陣だよ…」
<ああ!行くぞッ!御堂ッ!!>
藍色の星が、漆黒に染まった空を一直線に突き進む
佐天涙子の本当の戦いへと向かって―――
158 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/03(土) 23:42:50.44 ID:feJoL6c0
今日はここまでにします。
明日の同じ時間くらいにまた投下します。
戦闘パートがないまま、長々と続けてしまいましたが。
戦う理由や覚悟といったものはキチンと設定したかったのでこうなりました。
次はいよいよ一方通行戦です。
おかしいところも多いですが。
楽しんでいただけると幸いです。
それでは。
159 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/03(土) 23:55:24.30 ID:pUQsO7Io
明日が楽しみだよ乙
160 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/03(土) 23:56:55.48 ID:ywKLiw20
>>1
乙です
続き待ってますよん
161 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/04(日) 00:21:43.79 ID:MrlnwgSO
おつ
162 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/04(日) 00:25:57.06 ID:c9.A0Oco
明日が楽しみだ
163 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/04(日) 00:48:40.16 ID:xIjNEi20
いいね
期待
164 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/07/04(日) 00:53:05.61 ID:.sIXOZo0
GJと言わざるおえない
165 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/04(日) 06:50:26.64 ID:zdrdGiwo
脳が幸せだ・・・
166 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 19:23:45.79 ID:.uvLnpk0
それでは、今から投下します。
167 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/04(日) 19:28:02.45 ID:b4m3hhAo
ドンと来い
168 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 19:31:09.11 ID:.uvLnpk0
第十七学区にある操車場
普段なら、この時間になれば静寂が支配するであろうこの場所に、
激しい戦いの音が木霊する
「くぅっ!」
御坂美琴は歯がみする
(やっぱり、私の攻撃が通用しない!)
先程から何度も電撃を放っているが、一方通行には届かず、弾かれてしまう
そんな美琴の姿を一方通行が嘲笑う
「何度やっても無駄なンだよッ!テメェの能力じゃあ、オレの能力には敵わねェンだよ!」
(どうにかして、あいつの能力の正体を突き止めないと…)
それさえわかれば勝機を見いだせるかもしれない!
それから何度も攻撃を繰り返す、しかし結果は変わらなかった…
逆に一方通行からの反撃を受け、美琴は地面に転がった
169 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 19:42:52.30 ID:.uvLnpk0
そこへ、10032号が駆けよって来る
「お姉様、もう充分です。お姉様では一方通行には及びません、ですからすぐに
ここから立ち去ってください、とミサカは進言します」
そう言って、10032号は一方通行の方へ向かおうとする
(何がレベル5よっ!私…、自分の大切な人達すら守れないじゃない……)
美琴の目から涙が溢れ出る
その時、美琴達と一方通行の間に、1つの影が降り立った
「大丈夫ですか?御坂さん?」
その異形の影が美琴に声を掛ける
「佐天…さん…?」
「オイオイ、おとなしく研究に参加すりゃ生き残れるってのによォ…。
なンでこンなとこまで出しゃばって来るンだよ?あれか?英雄気取って苦しンでる
人は放って置けませンー、なンて言うつもりかァ?」
御坂さんが言葉を失っているうちに一方通行が嘲るように言った
170 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 19:52:19.18 ID:.uvLnpk0
「英雄ごっこは、やめたわ…」
私はそう答える
「そうだよなァ、これは妹達が自分の意志でやってる事だもンなァ?
誰にも止める権利なんてねェ。だったらよォ、なンでお前はここに来たンだよ?」
一方通行が私に問いかける
「この実験を止めるために…」
その問いに対して、そう言い放つ
「ギャハハッ!なンだよッ、そりゃあ!?」
一方通行が笑い声を上げる
「あいつらはなァ、オレをレベル6にするために生きてンだよッ!?
この計画を否定するってことは、あいつらの存在を否定する事にもなンだよッ!」
なおも一方通行は続ける
「実験を止めるだァ!?なンの権利があってそンなことができんだよッ!?
こいつらが頼んだ訳でもねェ、誰も頼んでねェのに、なンの権利があってオレの
邪魔ができンだよッ!?」
171 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 20:03:49.25 ID:.uvLnpk0
そう、一方通行の言うことはもっともだ、妹達に助けを求められた訳ではない…
それどころか、私のやろうとしている事は、彼女達の存在理由を否定する事かもしれない
それは彼女達にとっての正義ではない…
「権利なんて、ないわ…」
それでも私はそう答える
「権利なんてない、だけど、この実験を続けさせるつもりもない……」
彼女達が実験体としての生を望んでいても…
「私のやろうとしている事は、とても正義なんて呼べない…」
私は認める事ができない、誰かの都合で生み出されて、誰かの利益の為に生き、
そして殺されていくなんて…、許す事が出来ない
なにより、私の大切な人が傷つくことが許せない…
「それでも私は…」
たとえそれが正義と認められなくても、悪鬼の所業と言われても構わない
「私の信じる正義(邪悪)を貫く!!!」
それが私の答えだから、自分の大切な何かを守るために…
誰かの大切な何かを否定する……
それが佐天涙子の正義
172 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 20:13:45.56 ID:.uvLnpk0
私は刀を引き抜く、これは覚悟の証だ
誰かの命が、自身の命が失われるかもしれない、そんな戦いへ身を投じる事への、
私の覚悟の証明…
「ああ、そうかい…、あくまでもオレの邪魔をするって事かよォ…」
一方通行が私へ明確な敵意を向ける
「佐天さん!そいつには攻撃が効かないのよ!そんな相手に勝てる訳ない!
私の事はいいから、早く逃げるのよっ!」
御坂さんが叫ぶ
「私は大丈夫です、だから、御坂さん達は下がっていてください」
たとえどんな能力が相手でも、退く訳にはいかない…
「でもっ…!」
御坂さんがさらになにか言おうとする
「そろそろ行くぜェ?こっちにも予定があってなァ、いつまでも三文芝居に付き合って
やれるほど暇じゃねェンだよォッ!」
いうやいなや、一方通行が疾走する
私は咄嗟にそれを迎え撃つ
「ぐぅッ!」
刀が一方通行の体に触れた瞬間、勢いよく弾かれる
<ぬぅ!やはり攻撃が通らぬかッ!>
正宗が唸る
173 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 20:24:26.82 ID:.uvLnpk0
攻撃を弾かれ、態勢を崩した私の体に、一方通行が拳を叩き込んだ
「うわッ!?」
威力こそ大したことないものの、素手で劒冑を殴るという行為に驚愕する
攻撃が通じなくては埒が明かない。私は、一方通行の攻撃から逃れるために
空へと舞い上がった
「なンだよ、なンだよ、なンですかァ!?逃げてるだけじゃあ、何万年掛かっても
オレを倒すなンざ出来ねェぞッ!?」
そう言うと一方通行は地面に置いてあった鉄骨を蹴りあげた
それを見て私は咄嗟に回避行動をとる
一方通行に蹴りあげられた鉄骨は、まるで弾丸のような速度で私の横を掠めていった
次から次へと鉄骨が飛来する
だが、避けられないほどではない
おそらく、一方通行は慢心している…
174 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 20:36:51.98 ID:.uvLnpk0
一度破った相手だから、というのもあるだろう…
しかし、最大の理由は己の能力に対する絶対の自信だろう
いかなる攻撃も防ぐ、その能力の存在が彼にそのような行動をとらせている
「まったく、冗談きついよね…」
回避行動をしながら、私はそう愚痴をこぼす
一方通行の能力の正体、それがわからないことには、私達に勝機はない…
なぜ一方通行には攻撃が通じないのか?
それについて1つの仮説を立てる
それは一方通行の能力が斥力を操る能力である場合だ…
さっき一方通行が正宗の装甲を殴った時、ちらりと見えた彼の拳は傷一つなかった
身体能力向上系の能力では、いくらレベル5の力と言えど、劒冑を殴って無傷とは
いかないだろう…
しかし、それが斥力なら説明できる
私の攻撃が当たる、拳が正宗の装甲に当たる瞬間に、斥力を発生させて私を吹き飛ばす
だが、それには疑問点がある
斥力は互いに反発する力、だというのに、なぜ私だけが吹き飛ばされるのかという疑問だ
それに美春さんが殺された日、あの時彼を殴った私の手からは血が出ていた…
つまり、一方通行の能力は斥力ではない……
175 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 20:49:11.07 ID:.uvLnpk0
また振り出しに戻ってしまった…
いったい一方通行の能力の正体はなんなのだろうか?
<御堂ッ!来るぞッ!>
「――ッ!」
しまった!一方通行の能力の正体を見破ろうと、思考を巡らせることで
死角からの鉄骨の接近への反応が遅れたッ!
私は飛来した鉄骨の直撃を受けて、地面に叩きつけられる
「ガ、ハッ――!」
すさまじい衝撃を受けて、私は咄嗟には立ち上がる事が出来なかった
「はッ!まったくよォ…、その程度でしゃしゃり出て来るンじゃねェよ、
この雑魚がッ!」
一方通行がそう吐き捨てる
マズイッ!今、追撃されれば防ぐすべがない!
「もうやめて下さい、とミサカは一方通行を制止します」
そこへ、10032号さんが割り込んで来た
「このまま攻撃を続け、正宗が壊れてしまえば面倒なことになりますよ?
正宗は破壊するな、あなたはそう指示を受けている筈ですが?とミサカは指摘します」
「確かにそうだなァ。でもよォ?実験の障害になるンなら、ぶっ壊しても文句は
出ない筈だぜェ?」
「そうですね。しかし、彼女はあなたとの力の差を痛感した筈です。
これ以上の戦闘を続けはしないでしょう、そうではないですか、佐天涙子さん?
とミサカは問いかけます」
176 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 21:00:28.48 ID:.uvLnpk0
10032号さんが私に問いかける
「――諦めない…」
その言葉に10032号さんが目を見張る
「私は、諦めない…。たとえ相手が無敵の存在だとしても…、私は諦めない!!」
私は、この実験を止めたいから、御坂さんを、妹達を助けたいから…
絶対に諦めない!
「どうして…、諦めないのですか?とミサカは…、ミサカは…」
彼女が言葉を詰まらせる…
「この実験を止めたいから。たとえ今は、この実験以外に生きる道がないって思ってても、
それは気付いてないだけかもしれないでしょ?他の生きる道に…。
だから私はあなた達を解放したい、そして見つけてほしいの、自分の手で自分の生きる道を!」
177 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 21:11:15.76 ID:.uvLnpk0
彼女は絶句する、こんな自分達を、実験動物に過ぎない自分達をここまで思ってくれる
人が居る…
しかし、だからこそ……
「ミサカ達は、あなたの生存を望んでいます。ミサカ達を人間として扱ってくれた
あなたの、ミサカ達のために命を賭けてくれているあなたの生存を…
とミサカはミサカ達の総意を伝えます…」
「それでも、私は戦うよ。自分の正義を貫くために……」
彼女にそう宣言する
「わかりました、ならばもう止めません…。しかし、最後に助言を。
第一位、一方通行の能力はベクトル変換です、あらゆる力を操る能力。
彼に攻撃が通じないのは、ベクトルを反転させ、反射に設定しているからです。
とミサカはあなたに希望を託します」
ベクトル変換…
それが第一位の能力……
「はッ!最後の悪足掻きってことかァ?そンなことしてもオレの最強は揺るがねェ!
奇跡なンざ起きねェんだよォ!!」
一方通行が近くにあった鉄骨を投げつける
私はそれをすんでのことで回避し、そのまま空へ駆け上がった
178 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 21:21:56.38 ID:.uvLnpk0
一方通行に攻撃が通じないのは、彼が攻撃の力を反転させ相手に返しているからだ
攻防一体の無敵の盾…、それが彼の自信の源だ
普通に考えれば彼に対抗する手段はない
なぜならどれだけ大きい力でも、反射されれば意味がない…
それどころか、大きい力ほど反射された時のダメージが大きくなる
(どうすれば…、あの鉄壁の守りを崩せるのッ!?)
何も打開策が思いつかない、そこへ正宗の声が響く
<御堂ッ!吾の陰義ならば、奴の防御を崩せるやもしれんッ!>
「本当ッ!?」
私は正宗の言葉を信じる、正宗の持つ異能の力…
それにすべてを賭ける!
<まずは、奴に攻撃し、奴の術をその身で受けるのだッ!>
「わかったッ!」
正宗の言葉を信じ、私は一方通行へと向かって突撃する!
179 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 21:34:53.92 ID:.uvLnpk0
私は一方通行に一撃を見舞うため、拳を振りかぶり、突進する
「なンだァ?」
万策尽きた果ての無様な特攻と思ったのだろう
一方通行は無造作に手を前に出し、それを受け止めた
「クッ!」
突進の勢いも相まって、またも吹き飛ばされる…
そのまま反転し、地面に降り立つ
「このあとはどうすればいいのッ!?」
<吾が陰義を発動させるッ!御堂はもう一度、奴の体に一撃を見舞え!>
その言葉に、私は再び合当理に火を入れ、突撃する!
<善因には善果あるべし!悪因には悪果あるべし!>
<害なすものは害されるべし!災いなすものは呪われるべし!>
<因果応報!天罰覿面!!>
正宗が呪文のようなものを唱える
それを聞きながら、一直線に一方通行に向かい疾駆する!
180 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 21:46:23.29 ID:.uvLnpk0
「ッ!?」
一直線に向かってくる、佐天涙子の姿を見て
一方通行は初めて、恐怖のような感情を抱いた…
(ヤベェ――!!)
あれを受けてはいけない!そんな予感が頭を駆け巡る!
一方通行は攻撃を避けようと、回避行動を取る
しかし、もう遅かった
佐天涙子の拳が、回避しようとしていた一方通行の肩に触れる…
その瞬間、甲高い音が響いた
「ぐぅッ!」
「ガァッ!?」
両者の間に衝撃が走った
佐天涙子の体は衝撃で仰け反り、一方通行は衝撃で吹き飛ばされた
<見たかッ!これが吾の陰義、『陰義返し』だ!>
181 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 21:55:49.47 ID:.uvLnpk0
「陰義返し?」
<左様、相手の陰義とまったく同じ力を再現できる、それが吾の陰義だ!>
そうか…、同じ反射の力同士がぶつかり合うことで、私達は磁石の同じ極のように
弾かれた…
そして、行く場を失くした力が拡散し、双方にダメージを与える
しかし、劒冑に身を包んだ私と、華奢な一方通行の間には防御力に圧倒的な隔たりがある
それが、この結果を生みだした…
「佐天さん!」
私が一方通行を破ったのを見た御坂さん達が駆けよってくる
「すごいわっ!あの一方通行を倒すなんて!これで妹達は救われるわっ!」
御坂さんは飛び上がらんばかりに喜んでいる
182 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 22:09:23.94 ID:.uvLnpk0
「負けて…、たまるかよォ……」
「ッ!」
その場の全員が声のした方向を見る
そこには一方通行が立っていた
先程の攻撃で骨が砕けたのだろう、その左肩は力なく垂れていた
「もう終わりよ、あなたの無敵の盾は敗れた。あなたが実験をやめるなら、
私は、これ以上戦わない…」
そう一方通行に宣言する、御坂さんは何か言いたげだったが、それでも黙って
彼の返事を待つ
「オレが…、ここでやめちまったらよォ…、妹達はどうなるンだよ?」
思いもよらぬ答えに私は驚いた
「大丈夫、私がなんとかするわ、実験が無くなったからって処分なんて、絶対に
させない!」
御坂さんがそう言った、彼女は一方通行が憎いだろう
しかし、妹達のためにそれを抑え、一方通行にそう約束した
「そうじゃねェよ…」
「?」
またも妙な答えが返ってくる、妹達の処遇でなければ、なにを気にしているのだろう?
「オレが、降りたら、いままで死んだ妹達はなんなんだよ…?」
183 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 22:21:47.77 ID:.uvLnpk0
一方通行は思い出す、この実験の始まりを……
◆
この実験に参加する切っ掛けはレベル6になりたい…
ただ、それだけだった…
実験の詳細を聞いて躊躇いはしたが、実験から降りようとは思わなかった
レベル6になることは自分の目標だったから…
そうして、実験が始まった―――
最初の実験は驚くほどあっけなく終了した
人を殺すのは初めてではなかったし、能力差は圧倒的で傷を負うことはなかった
それでも、胸に言いようのない苦しさを覚えた…
それは当然のことだった、妹達に恨みなんてなかったし、第一これは戦いなんて
呼べるものではなかったから…
それでも殺した、1人、また1人と、実験は順調に進行していく
実験を続けるうちに一方通行の中に1つの疑問が浮かんだ
このまま実験を続けていいのだろうか?
こんな非道な事をしなくても、別の方法があるのではないか?
それにこの実験自体、レベル6になれる確証がある訳ではない…
だから実験から降りよう…、そう思った……
ふと、目の前に倒れている少女に目を遣る
物言わぬ屍となった少女、この手で命を奪った少女
もし、自分が実験を降りたら
彼女はなんのために死んだのだろう…?
184 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 22:32:40.86 ID:.uvLnpk0
一方通行は気付いてしまった
自分の背中に降ろすことのできない十字架が背負われていることに…
それからも一方通行は苦悩した
実験を続けることは正しいのかと?
しかし、実験を止めれば死んでいった妹達の犠牲が無駄になる…
答えは出ないまま、時間だけが矢のように過ぎ去って行く
まるで濁流のように、彼の苦悩をのみ込んで…
彼の前に死体の山を築いていく
(誰か…)
もう自分の意志では止まれない…
(誰でもいい、オレを止めてくれ…)
一方通行は願う、非道を行う自分の前に、物語から抜け出したような英雄(ヒーロー)が
現れて、自分を殺してくれることを…
185 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 22:44:18.71 ID:.uvLnpk0
そんな彼の前に、御坂美琴が現れる
一方通行は歓喜した、自分と同じレベル5、もしかしたら彼女ならば自分を
止めることが出来るかもしれない…
そして、御坂美琴と激突する
結果は望んだものではなかった…
御坂美琴は一方通行の前では、妹達と同じ程度の無力な存在でしかない…
時は流れ、運命の日が訪れる―――
「それでは、これより第一〇〇〇〇次実験を開始します」
実験の折り返し地点、ここが“引き返し不能地点”だ
一方通行の苦悩など知る由もなく、10000号は苛烈に攻撃を仕掛ける
「チッ!」
「どうしたのですか?とミサカは疑問を投げかけます」
10000号が立ち止まる
「なンでもねェ…」
まさか実験をやめるなどとは言いだせない
「そうですか、それでは手早く実験を終わらせましょう、とミサカは突撃します」
10000号が、銃を乱射しながら突進してくる
「ッ!」
弾が体に触れ、反射され、10000号目がけて飛んでいく
その一発が―――
彼女の首筋に吸い込まれていく――――――
186 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/07/04(日) 22:44:38.30 ID:EZLeOh20
超みてるよー
しえ
187 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 22:52:15.11 ID:.uvLnpk0
「――――――」
彼女の首から鮮血が迸る―――
反射で血は付着しないが、血のシャワーが一方通行の視界を赤く染める
一方通行は動くことが出来なかった
ただただ、倒れて行く少女を見つめていた―――
どれくらいそうしていただろうか?
倒れている少女の首からは、もう血は噴き出していない
正常に働かない頭が、ただ1つの事実を認識した
ついに、殺害した妹達が1万人を越えた―――
(もう、止まれねェ―――)
自分の背には1万人の命が背負われているから
もう、どんな英雄が相手でも負ける訳にはいかない―――
だから――――――
◆
188 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 23:04:00.92 ID:.uvLnpk0
「オレが降りちまったら…、いままでの妹達の死が無駄ンなっちまうだろうがァ!!!?」
一方通行が絶叫のような叫びを上げる
その言葉を聞いて、御坂さん達が言葉を失う…
私は、一方通行の戦う理由が、自分の欲望のためだと思っていた
でも、違った、彼はもう引き返せなくなってしまったんだ
1万人を越える妹達の命を奪ってしまったから
レベル6になることで、彼女達の死に意味を与えようとしている
それを頭から否定することはできない―――
「それでも―――」
「それが残りの1万人を殺す理由になんかならない!!!!」
佐天涙子もそれに応えるように咆哮する
互いに譲れない理由がある
いままでの1万人の死を無駄にしないために―――
残った1万人を死なせないために―――
譲れぬ想いを胸に、二つの正義が激突する―――――
189 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 23:15:53.58 ID:.uvLnpk0
「ガァァァァァ!!」
一方通行がその能力を発動させる
周りにあった資材、石ころ等が次々と飛来する
その攻撃の勢いは先ほどとは比べ物にならない
「くッ!」
私は攻撃を避けるため、三度空へと飛翔する
「佐天さん!」
「お姉様!ここは危険です!」
どうやら2人は難を逃れたようだ…、それを見て安堵する
安心したのもつかの間、攻撃が間断なく私の体に降り注ぐ
<これは、避けきれぬぞッ!?>
鉄骨等の大きいものは避けれるが、石などの小さなものまで避けきることはできない
「ッ!太刀がッ!」
飛来物に当たり、太刀を落としてしまう
<御堂ッ!再び陰義で攻撃を仕掛けるぞッ!>
「でも、近づけないよッ!?」
私の言葉に正宗が沈黙する
<あの攻撃、すべてを吹き飛ばすには、七機巧を使うしかあるまい…>
正宗の言葉に心臓が跳ねる、七機巧…、あれを使わなければ近づけない…
<どうする、御堂?>
答えは決まっている、もう決めたから、何があっても正義を貫くと
「やるよッ!正宗ッ!!」
190 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 23:31:42.16 ID:.uvLnpk0
<それでこそッ!吾の御堂だッ!!>
右手首から筒が顔を覗かせる―――
体に激痛がはしる―――
「ギッ!アァァァァアアッ!!」
やっと気付いた、この痛みは正義を行う事への罰だ
正義のためにと、誰かを傷つける
たとえ正義のためでも、誰かを傷つけることは罪だから
だから七機巧は、苦痛を強いる、斬られる者の痛みを知らしめるために
仕手が独善に酔わぬように、無為に誰かを傷つけることを戒めるために―――
「ふッ――」
だから私はこの痛みを受け入れる
正義のための痛みだから、私の決めたことだから―――
「正宗七機巧が一!」
<飛蛾鉄炮・孤炎錫!>
<DAAARAAAAAHHHHHHHH!!>
弾が飛来物を巻き込んで爆発する
飛来物をまとめて吹き飛ばし、一方通行への道ができた
191 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 23:41:14.56 ID:.uvLnpk0
私は爆発でできた隙間を、一方通行目指して突き進む
そして――
拳が一方通行に触れる―――
反射で弾かれた勢いを利用し、距離を取り、地面に降り立つ
<まずいッ!御堂ッ!>
正宗が切羽詰まった声を上げる
何事かと、私は前を向く
一方通行は、私が自分の前に姿を現すことを予期していたのだろう…
彼の手には、螺旋状に捻じられ、鋭利な杭と化した鉄の棒が握られていた
「しまッ――!」
私は咄嗟に回避を試みる
だが、まるで雷撃のような勢いで、それが投げられる
それは寸分違わず、左腕の関節部分の隙間に命中し、私の体を後ろにあった
コンテナに縫い付けた
192 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/04(日) 23:52:01.05 ID:.uvLnpk0
「―――ッ!」
私の口から声にならない悲鳴が漏れる
杭が螺旋状になっているせいで、それを引き抜くことができない!
「はッ!バカのひとつ覚えが、このオレに通用すると思ったのかァ?」
一方通行が笑みを浮かべる
落ちている、鉄パイプを手に取る
「さすがにこれじゃあ、そいつの鎧は貫通出来ねェかァ?」
そう言って、それを投げ捨てる
「急がねェと、またハエみたいに飛びまわられたら厄介だ…」
なにかを見つけたのか、一方通行の顔に喜びの色が浮かぶ
「イイもんがあるじゃねェか…」
一方通行が手にしたのは、私が落とした正宗の太刀だった
<イカンッ!吾の太刀ならば、吾の装甲を貫通せしめるぞッ!>
正宗が警告の声を上げる
だが、腕はまだ縫い付けられている――
私はこの窮地を脱するために、ある方法を思いついた
「正宗ッ!左手の装甲だけ解けるッ!?」
<何ッ!可能だがそんなことをして…>
「早くッ!」
もう時間がない―――
193 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 00:01:16.10 ID:u6rikw.0
<承知ッ――!>
正宗が応じ、左腕の装甲だけが解ける
そこには杭でコンテナに縫い付けられた私の左腕がある
私は右手で腰から脇差を引き抜き、当てる―――
「こいつでゲームセットだッ、あばよ英雄―――!」
一方通行が正宗の太刀を投げる態勢をとった
もう猶予はないッ!
「ふッ―――!」
私は覚悟を決め、脇差で左腕を切断した―――
194 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 00:10:48.25 ID:rUw6wH.0
正宗七機巧が一って右手切断?
195 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 00:12:41.95 ID:u6rikw.0
切断された腕から鮮血が迸る――
「なァ!!?」
私の行動に一方通行が驚愕の声を上げる
「正宗えぇぇぇ!!」
束縛から解放された私は、一方通行へ向かって疾走する!
<応ッ!!>
<善因には善果あるべし!悪因には悪果あるべし!>
<害なすものは害ざれるべし!災いなすものは呪われるべし!>
正宗が再び陰義を発動させる――
「チィッ―――!」
正気を取り戻した一方通行が私に狙いを定めて太刀を投げつける
「ハッ!!」
飛来する太刀を脇差で弾く、しかし、あまりの勢いに太刀と共に脇差も後方へと
飛び去る
構わないッ!
これで――、勝負を決める!
<因果応報!天罰覿面!!>
「はああああああああああ!!!」
陰義返しが発動する、一方通行に迫る
そして―――、私の拳が一方通行の体に触れる――――
196 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 00:23:03.66 ID:u6rikw.0
一方通行の体が吹き飛んで行く――
その刹那
「遅すぎンだよ――、英雄――――」
そんな声が聞こえた気がした
一方通行は今度こそ動かなくなった
戦いに決着は付いた―――
「あ…、れ……?」
視界がぼやけていく、どうやら私もすでに限界のようだ…
装甲が解け、私の体は崩れ落ちるようにその場に倒れる
激しい痛みと疲労のなか、私の意識が朦朧としていく
それでも、今回はそれが心地よかった……
197 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 00:32:48.53 ID:u6rikw.0
あの後、私は御坂さん達の手で病院まで運ばれた
数日後、病室で目を覚ました私を待っていたのは、カエル顔の医者の苦笑いを浮かべた
顔だった
「おめでとう、君は紛れもなく当病院の出戻りの最短記録保持者だよ」
呆れ顔でカエル顔の医者はそう言った
「なにせ、入院期間中に抜け出して、さらなる大怪我をして返ってくるんだからね…
君に記念楯を贈呈したい気分だよ…」
「すみません…」
この人には最近迷惑を掛けっ放しだ…
「いや、半分は冗談だよ。でもね君のお友達にあまり心配を掛けてはいけないよ?」
「はい…」
「それじゃあ、お友達が待っているみたいだし、これで失礼するよ」
カエル顔の医者が出て行くと、入れ替わりに皆が入って来た
御坂さん、白井さん、ゴーグルを着けた妹達も1人部屋の中に入ってくる…
「みんな…」
198 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 00:43:03.87 ID:u6rikw.0
「佐天さん…」
最初に口を開いたのは御坂さんだった
「私の代わりに妹達を救ってくれて、ありがとう。佐天さんにはどれだけ感謝しても
足りないわ」
「気にする事ないですよ、だって…、私達、友達じゃないですか…」
私は笑顔でそう返す、それに御坂さんも微笑み返してくれた
「わたくしからも、お礼を申し上げますわ、お姉様達を助けてくれて本当に
ありがとうございます」
白井さんがお辞儀する、私はそれにも笑顔で返す
「今度はミサカの番ですね…、ミサカは番号10032号です、とミサカはあらかじめ
言っておきます」
彼女はそう断りを入れた
「あなたのおかげで実験は中止され、ミサカ達は世界中の施設で面倒を見てもらえる
事になりました、とミサカは報告します」
「そうなんだ、よかった…」
私は安堵の息を漏らす
「これからは自分自身で、自分の生きる道を決めたいと思います、
とミサカは宣言します」
「うん、頑張ってね」
そして、部屋の中に初春の姿がない事に気がつく…
「初春は…?」
199 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 00:54:27.26 ID:u6rikw.0
「あれ?さっきまで一緒に…」
白井さんが辺りを見回す
「あっ!初春!そんな所にいないで、さっさと中に入りなさい!」
白井さんが初春を部屋の中に引っ張ってくる
「初春…」
私は初春になんて言葉を掛けていいかわからなかった
「佐天さん…」
初春は目を伏せている
「初春、ごめんね…」
私は初春に謝罪する
初春の手を振りほどき、戦いに赴き、とても心配させてしまっただろうから…
「佐天さんが謝る事なんてありません!」
初春が顔を上げる
「謝るのは、私の方です。佐天さんが必死で悩んだり、傷ついたりしてるのに、
私はワガママばっかり言って…、佐天さんに嫌われちゃったんじゃないかって…」
初春が涙を流しながら答える
「そんなこと、絶対ない!初春は…、私の、とっても大切な親友なんだからっ!」
私はそう答える
「佐天さ〜ん!」
初春が私の胸に飛び込んで泣き出す
まだ左腕がないが、それでも離すまいと抱きしめる
だって、この人達を、この温もりを守るために戦ったのだから―――
200 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 01:04:20.05 ID:u6rikw.0
数日後、私は病院を退院した
今日は私の退院祝いと言うことで、初春達と待ち合わせをしている
待ち合わせ場所に近づく、どうやらみんな揃っているみたいだ…
「佐天さん」
不意に後ろから声が掛かった
「木原さん…」
そこには木原さんが居た
「どうも、お久しぶりです。あの後どうやら大変なことになっていたみたいですね…」
木原さんがそう言った
「さて、早速ですが、あなたにいい知らせを持ってきました。学園都市はあなたを、
なんとレベル5に認定するということです!」
木原さんがやけに大袈裟な素振りでそう告げる
「これは前代未聞の出来事ですよ!0から5へ一気に駆け上がるなんて、あなたの
名前は学園の歴史に残る事間違いなしです!
それで、研究の再開はいつになさいますか?我々はあなたの都合に合わせますので、
いつでも好きな日時を…」
「お断りします…」
私はそう言い放つ
「えっ?」
木原さんがキョトンとする
「断るとは、何をですか?」
「レベル5になるって件です、私は無能力者ですから、そんな話お受けできません」
201 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:09:09.03 ID:C.1RWYDO
ところでコイツはどの木原?
まだ見ぬ木原でいいのかな
202 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 01:15:05.21 ID:u6rikw.0
「な、何を言っているんですかっ!?」
木原さんが大声を上げる
「レベル5ですよ!?学園都市のトップ、羨望の的ですよ!?それになれるんですよ?
あなたは能力者になりたがっていた筈だ!レベルアッパーなんてものに手を出すくらいに!」
「それでもいいんです、私は無能力者でもイイって思えるようになったんです…」
「あなたは第一位を退けるほどの力がある!それを無能力者でいだなんて…」
「なんで、木原さんがそのことを知っているんですか?」
私は木原さんを問い詰める
「そ、それは…」
木原さんが言葉に詰まる
「答えられないでしょう?そんな人を信用なんて出来ません。
それじゃあ私は失礼します…」
「待って下さい!」
なおも木原さんは食い下がる
「この学園都市で、レベルは絶対です!無能力者のなら他の人に見下され、
出来損ないのレッテルを張られますよ!?しかし、レベル5になれば、地位も、名誉も、
それに多額の金を手に入れられます!それが欲しくないんですか!?」
「学園都市にとっては、レベルは絶対…。そうですね、それは否定できません。
レベルを上げようと必死で努力して、レベルが上がれば泣いて喜んで…」
「それじゃあ…!」
203 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:16:38.76 ID:ju50Gnoo
>>201
>>77
204 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 01:24:32.17 ID:u6rikw.0
「でも、佐天涙子にとっては違う、レベルよりも大切なものがある…」
そう言って、遠くで手を振る初春達に目を遣る
「なっ!?」
「だから、私はレベルなんていらない…」
私は歩きだす、木原さんは拳を握りしめ俯いている
「正宗」
<なんだ?御堂>
私は正宗に声を掛ける
「今日の私の退院祝い、正宗にも一緒に祝って欲しいな…」
<しかし、吾が行けば、他の者が怖がるであろう?>
正宗がそう言う
「そんなことないよっ!正宗は、私のパートナーなんだからっ!」
<むっ、そこまで言われては致し方あるまい…>
正宗が私の隣に降り立つ
「それじゃあ、行こうっ!正宗っ!」
私は隣を歩く劒冑に声を掛ける
<ああ、行くとしようか。吾の御堂よ…>
正義を胸に、私達は歩きだす―――
これは英雄の物語ではない―――
それでも少女は正義を胸に歩き続ける――――――
205 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:24:55.29 ID:C.1RWYDO
oh……
見逃してたわ、ありがとう
投下中すまんかった
206 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 01:26:30.21 ID:u6rikw.0
投下はここで終了です。
これで物語は一応、区切りがつきました。
読んで下さった方、本当にありがとうございます。
207 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:27:39.65 ID:ju50Gnoo
乙
続きを希望するぜ
208 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:30:52.06 ID:C.1RWYDO
乙!
上条ェ……
209 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:31:02.54 ID:8u2eJwSO
乙
次はVS木原かな?
210 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/07/05(月) 01:31:18.28 ID:FkP0RUAO
乙
続き待ってる
211 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 01:32:27.13 ID:u6rikw.0
続編の構想はもう出来ているのですが、完成までに1〜2週間ほど掛かるかも
しれません。
ですので気長に待っていただければ幸いです。
次では今回活躍できなかったキャラも活躍させたいと思っています。
今回はクロス成分が薄かったような気がするので、もっとクロスらしさをだせたらいいな
と思っています。
最後に、直した方がいいというところがあったら、指摘してくだされば幸いです。
212 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:36:23.89 ID:ssyZtqU0
乙ー
この場合上条さんの扱いはどうなるのやら…
そして何故か親船最中が若返ってる姿を幻視した
213 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 01:42:15.85 ID:O3i8jeQ0
乙!
ニトロファンなのに村正やれてなかったから、ちょー嬉しかったぜ!
佐天さん入院一回目時に、正宗が正宗の正義を佐天さんに強要した時に禁書19巻209P6〜9行目の一方さんの言葉を思い出したなぁ。
214 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 02:00:46.47 ID:cpciP4go
乙乙
次が楽しみだ
先生!佐天さん両腕千切れてるのに
どうやって一方さんを殴ったのかがよくわかりません!
215 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/05(月) 02:15:59.19 ID:NIue.0k0
七機巧を使った時、右手を犠牲にした訳ではありません。
ですので、無くなったのは杭で縫い付けられた左腕だけです。
216 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 06:39:43.51 ID:v7Waw9Mo
乙ゥ!
217 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 07:34:34.29 ID:gDIVAsAO
別に一方さん倒しても実験は終わらない気がするんだ。でもそんなことより乙なんだ。
218 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 07:46:21.31 ID:O8zyhsQ0
>>217
佐天さんはまだレベル0認定だから原作の上条さんに負けて実験中止になった理由と同じじゃね?
まぁ原作読んだ事ないんだけどね
219 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 07:50:24.82 ID:4iAdwIAO
この場合は、誰かに止めてもらいたかったって自覚してる一方さんだし
レベル0にすら負ける一方通行が6になんかなれねーって自己申告したんじゃないのかなあ。
一方さん側のフォローが欲しいな
220 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 10:03:33.47 ID:cpciP4go
>>215
ああ、必ずしも右手が犠牲にって訳じゃないのか
把握したサンクス
221 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/05(月) 15:37:08.12 ID:7qsGAUQ0
実に面白かった
残りの正宗ビックリ残虐機巧は出ないのかな?
222 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/06(火) 23:24:25.80 ID:uCL6Vag0
次回の投下は12日、月曜日の20時頃からを予定しています。
実験が終わった理由等についての説明も入れる予定です。
223 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/06(火) 23:33:37.29 ID:BV.On9E0
12月に見えてびびった
まってます
224 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/07(水) 18:09:21.34 ID:XCxeEZs0
なんという装甲悪鬼の物語
善悪相殺も絶対正義も否定しない佐天さんがいいわぁ
この佐天さんは色々あってもぶれないだろうなぁ
225 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage saga]:2010/07/09(金) 21:45:18.28 ID:PcQTVXM0
乙
226 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/12(月) 19:17:20.72 ID:Ec5vffso
もうすぐか……
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
227 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 19:55:43.78 ID:Q.ehBmA0
時間になったので投下します
今回からは、設定の変更やオリジナル要素が増えるのでご了承ください
それでは始めます
228 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 20:04:42.20 ID:Q.ehBmA0
学園都市は最先端の科学技術が集結している場所である
そんな科学の最先端をいく学園都市にも都市伝説というオカルトが存在する
虚数学区、幻想御手(レベルアッパー)など、その種類は多岐に及ぶ
風紀委員第一七七支部、そのパソコンで初春飾利が学園都市の都市伝説を
まとめたサイトを見ていた
「初春、またそんなくだらないものを見て…」
後ろから同僚の白井黒子が声をかけてくる
「夏、といえばやっぱり都市伝説とかの怖い話が必要だと思いません?」
そう言って初春が振り向く
「はぁ、この学園都市で都市伝説などとは…、くだらないですわね…」
黒子は手をひらひらと振る仕草をすると、仕事に戻ろうとする
229 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 20:15:05.54 ID:Q.ehBmA0
「でも、レベルアッパーの噂も本当でしたし…、都市伝説も案外馬鹿にはできませんよ?」
「それは…、まあそうですけれど…」
それを聞いて思い直したのか、黒子はパソコンの画面を覗きこむ
「学園都市の都市伝説だけあって、幽霊や心霊現象関係の話は少ないですわね…」
都市伝説の一覧を見た黒子がそう呟く
「そうですねー…、これはどうですか?『宙に浮く少女』、心霊っぽくないですか?」
初春がそのタイトルをクリックする
「なになに?とある廃墟の地下には隠し部屋があり、そこは人体実験が行われた
場所で、実験体にされ、死んだ少女の霊がそこに居てそれを見た者は呪い殺されて
しまう…」
そこに書いてある文章を黒子が読み上げる
「よくある怪談物ですわね、まあ原因が実験というのがいかにも学園都市
らしいですが…」
黒子が呆れるように言った
230 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 20:28:49.77 ID:Q.ehBmA0
「わたくしは仕事に戻りますわ、初春も遊んでないで、早く仕事に戻りなさいな」
「別に遊んでた訳じゃないですよー、最近ある都市伝説みたいなものが話題になって
いるんでそれを調べようと…」
「都市伝説みたいなもの?」
都市伝説ではなく、都市伝説みたいなもの?
その奇妙な言い回しに、黒子はそう聞き返す
「はい、都市伝説みたいな話なんですけど、かなりの数の目撃証言があって
都市伝説と呼んでいいのかわからないため、そう言われています」
231 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 20:40:52.22 ID:Q.ehBmA0
「それはもう都市“伝説”ではありませんわね」
そんなに目撃される都市伝説なんて聞いた事がない
「それはいったいどんな話なんですの?」
黒子が初春にそう尋ねる
「多分、白井さんも心当たりがある話だと思います…」
そう言うと、初春はその噂になっているという都市伝説のタイトルをクリックした
「え〜と、なになに…って、ええっ!?」
パソコンに表示されたものを見て、黒子はおもわず大声を上げてしまった
そこに書いてあった内容はこうだ…
【学園都市都市伝説 aH
第七学区で悪い事をすると、どこからともなく蒼い鎧武者が現れる】
といった内容だった
232 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/12(月) 20:43:33.73 ID:GPrlPgoo
正宗か
233 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 20:52:25.22 ID:Q.ehBmA0
(まさかネットで噂になっているなんて…)
黒子はさすがにこれはマズイのではないかと、考え込む
「この話の鎧武者って、佐天さんのことじゃないでしょうか?」
初春がそう尋ねて来る
「おそらくそうでしょうね…」
あの事件の後も、彼女が人助けをするような行動をとっていたのは知っていたが
ここまで大事になるとは思っていなかった…
「どうします?白井さん…?」
「わたくしが佐天さんに直接会って話をしてきますわ…」
そう言って、黒子は小さな溜め息をついた
234 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 21:03:26.02 ID:Q.ehBmA0
・
・
・
人気のない河原に何かを振る風切り音が響く
「ふぅ……」
私は一息ついて、振っていた素振り用の木刀を下ろす
「あ〜、疲れた…」
そう言うと、私、佐天涙子はその場に座り込んだ
<よし、大分様にはなってきたようだな>
隣で見ていた正宗がそう感想を漏らす
あの第一位との戦いの後、学校は夏休みに突入していた…
女子中学生の夏休み、世の同じような年代の子達がプールだショッピングだと
夏休みを満喫している中、私はこうして毎日のように鍛錬に励んでいる
235 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 21:16:50.12 ID:Q.ehBmA0
あの戦いの後、自分の力の足りなさを痛感した私は、正宗に指導される形で
こうして鍛錬を始めた
あの時第一位に勝てたのは、奇跡のようなものだ
今は何事もないが、学園都市の暗部を知った私がこのまま放置されるとは思えない
新たな戦いに備え、私は少しでも強くなろうと必死だった
それでも
「私も遊びたいなぁ…」
私も遊び盛りの女の子だ、遊びに行きたいという思いも存在する
<御堂、気持ちはわかるが今の御堂は戦いについてはまったくの素人、
そう何度も前回のようにうまくいくとは限らぬ。
今は吾の指導に従い、戦いの術を会得するのが最優先だ>
正宗がそう私を諭す
「うん、そうだね…、よしっ!休憩終わり!」
私は立ち上がり、鍛錬を再開する
236 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 21:26:54.36 ID:Q.ehBmA0
「ただいまー」
鍛錬を終えた私は、部屋に戻ってきた
私に続いて、正宗も部屋の中に入ろうとする
「あぁ!正宗っ!部屋に上がるのはちゃんと足拭いてからって、いつも言ってるじゃん!」
泥の付いた足で部屋に入ろうとする正宗を制止する
<むッ?おお、すまぬ、失念しておった…>
「もぉ…、いまタオル取ってくるからそこで待ってるんだよ?」
<了解した>
あの一件以来、研究所に戻る訳にもいかず、行くあてのない正宗は、私の部屋で
暮らしている
元は人間だったらしいが、外見は虫型ロボットなのであまり気にはならない
しかし、正宗は多少ズレているところがあるので結構苦労が多い
237 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 21:38:29.90 ID:Q.ehBmA0
たとえば、私が宿題をしようとした時だ…
「あ〜、そう言えば夏休みの宿題、まだ終わってないや…」
<それはイカンな、御堂は学生の身、鍛錬だけではなく、勉学にも励まなくてはな>
「じゃあ、私宿題するから。正宗、少し静かにしててね?」
<了解した。ところで御堂、この時間には時代劇がやっておる。
このテレビを見て待っていてもよいか?>
「(まぁ、テレビくらいはいいかな)いいけど、くれぐれも静かにね?」
<ハハッ!案ずるな、御堂の邪魔になるようなことはせん>
238 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 21:51:31.04 ID:Q.ehBmA0
「(よし、ちゃんと静かにしてるみたいね)……」もくもく
<ふむ、この世界の娯楽はよくできておるな…>
「……」かきかき
<ぬぅ!悪の代官許すまじッ!!>
「……」イラッ
<そこだッ!やれッ!斬ってしまえッ!!>
「……」ぷるぷる
<DAARAHHH!!!>
「うるさぁぁーーーーーい!!」
<うおッ!?>
「正宗、ちょっとそこに座り…、そのままでいいや」
<?>
「私さぁ、静かにしててって言ったよね?」
<う、うむ…>
「なんで、約束が守れないの?」
<す、すまぬ御堂。最近気付いたのだが…、吾はどうも熱くなると我を忘れてしまう
性分のようだ…>
「(なんで周りの人は指摘してあげないかなぁ)まあ、これ以上言ってもしょうが
ないし…、続き見てていいから、口は閉じててね?」
<承知した>
(静かになったけど…、今度は視界の端にすごい勢いで動く触覚が見えて
集中できない……)
239 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/12(月) 21:52:53.35 ID:0XD9ya2o
なにこれかわいい
240 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 22:06:17.93 ID:Q.ehBmA0
うるさいくらいはまだ我慢できるが
一番の悩みは正宗がものを壊してしまうことだ……
「それじゃあ、私お風呂に入るから絶っっっ対に!覗かない事!」
<案ずるな、御堂のような童の風呂など覗かぬわい。ハッハッハッ!>
「……ベランダに出てなさい!」
〜ベランダ〜
<むぅ、覗かぬと言ったのに、なぜ御堂は怒っていたのだろうか…?>
<! あの机の上にあるのは御堂が持ち歩いている音の出る機械!
壊すからと吾に触らせてくれなんだが…、今ならば!>
カラカラ
<鍵は掛かっておらぬ!今しかあるまい…、なに、気付かれぬように戻せば問題ある
まいて…>
<ふむ、このように小さな機械があれだけ多彩な音楽を奏でるとは…、これもあの携帯
という機械のように開閉するのであろうか?試してみるか…>
バキッ!
241 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 22:20:36.58 ID:Q.ehBmA0
<うおお!?>
〜風呂〜
「ん?なんの音だろう?正宗はベランダだし…、まあいいや、出てから確かめよ」
〜室内〜
<な、なんたることかッ!?少し力を入れただけで真っ二つになるとは…
早くなんとかせねばッ!御堂が風呂から出てきてしまうッ!>
<とりあえず、甲鉄改組で1つにつなぎ合わせねば…>
ガチャッ
<ぬう、時間切れか、仕方あるまい。ベランダに戻らねばッ!>
ガラッ
「ちゃんと大人しくしてた?ほら、もう中に入っていいよ」
<うむ…>
「音楽でも聞こうかな…」
<!>
「ねぇ、正宗?」
<なんだ御堂?>
「私の音楽プレーヤーが動かないんだけど、なんでか知らない?」
<も、もしかすると…、吾を装甲した時の衝撃で壊れてしまったのかもしれぬな…>
「そうかなぁ?さっきまで動いてたし…、それに…」
「私のプレーヤー、こんなメタリックブルーじゃなかったんだけどなぁ〜?」
<…………>
「ねぇ?」
<すまぬッ!御堂ッ!!>
「正宗ぇーーー!!」
242 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/12(月) 22:26:25.38 ID:b5dI0I.o
正宗さんすっかりマスコットだな
243 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 22:31:28.09 ID:Q.ehBmA0
こうして正宗との共同生活を始めてからそれなりの日数が経っていた
しかし、未だ学園都市の暗部が行動を起こす素振りはなかった…
今日も私はいつものように河原で鍛錬に励んでいた
「佐天さん」
不意に声を掛けられ、声のした方へ顔を向ける
そこには木原さんが立っていた
「なにか用ですか?」
私はわざとそっけなく答える
「はい、能力者になる件のことです。まだ考えは変わりませんか?」
木原さんがそう尋ねてくる
私が病院を退院した日以来、木原さんは何度か私の前に現れて、同じ質問を
繰り返していた
「なんど聞かれても答えは変わりません。私は…、あなた達が信用できませんから、
だからその申し出は断らせてもらいます」
244 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 22:40:58.23 ID:Q.ehBmA0
私はきっぱりとそう断る
これも何度も繰り返したやり取りだ
「しかし…!」
いつもなら私が断ると大人しく引き下がるだが、今日の木原さんは引き下がらなかった
「佐天さん!あなたが実験を中止にさせた事で、暗部にはあなたを敵視する
人間が居ます!彼らがいつあなたに危害を加えに来るか分りません!
ですが、能力者になり、研究所の保護下に入ればその危険性はグッと減るんですよ!?」
木原さんが私を説得しようとする
「でも、能力者になったら…、私もあんな研究に参加しなければいけないんでしょう?」
「それは……」
木原さんは黙ってしまう…
確かに能力者になりたくない訳ではない、でもその代わりにあんな実験に参加する
なんて御免だった…
245 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/12(月) 22:44:48.24 ID:/aWgKMSO
あら綺麗な木原さんなのかしら
246 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 22:51:45.98 ID:Q.ehBmA0
「…また日を改めることにします。しかし、この話を受ける事があなたにとって
最善の道です。よく考えてみて下さい…、では失礼します」
そう言い残すと、木原さんが踵を返す
「……」
私は何も言わず、黙って彼の背中を見送った…
<ふん!あやつもしつこい男だ。御堂、今度来たら吾が追い返した方が
よいのではなかろうか?>
「ううん…、私が話すよ」
<ぬぅ、御堂がそのように甘やかすから、奴も付け上がるのだ…>
247 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 23:05:12.12 ID:Q.ehBmA0
私は木原さんに強く言うことが出来なかった…
初めて会った時は、得体のしれない人だと思った
それでも私を正宗と引き合わせてくれ、その後も色々と世話になった
しかし、あの能力者にならないかという話を聞かされた日、彼に抱いていた評価は
一変した
彼も学園都市の暗部で非道な実験をしている人間なのではないかと、
そう思った…
それ以降も木原さんは私に考えは変わらないか?と聞いてきた
私はその理由が、彼が研究対象である私を引きとめるためだと思っていた…
それでも、何度も話しているうちに、彼の言葉の端々に私の身を案ずるようなもの
を感じ取っていた
もしかしたら木原さんは、本当に私の安全の為に言ってくれているのではないか?
そう思うようになっていた…
今日の事で、それは確信のようなものに変わっていた…
だって木原さんの目は、私が学園都市に行く日に、父が私に向けた目と同じ
だったから……
248 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 23:13:32.50 ID:Q.ehBmA0
それでも…、私は木原さんの話を受けることはできない…
能力者になる条件は研究に参加する事…
私が参加する実験が、この前の実験のようなものではないと言い切れない
あんな実験に加担する事なんて、私には到底許せる事ではないから…
私は木原さんの誘いを断り続ける
「さて、正宗。再開しよっか?」
私は気を取り直し、正宗にそう声を掛ける
<御堂また客人のようだぞ>
「えっ?」
正宗の見ている方向を見ると、白井さんがこちらに歩いて来るのが見えた
249 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/12(月) 23:17:27.86 ID:Q.ehBmA0
今日はここまでにさせていただきます
投下速度が遅くて、実験の終わった理由までいけなくてすみません
明日も同じくらいの時間に投下できると思うので、今度こそ書けると思います
明日は一方通行がメインの話になると思うのでよろしくお願いします
それでは
250 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/13(火) 00:18:48.79 ID:oT/VSwSO
いちもつ
251 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/13(火) 01:18:43.85 ID:0E8q1qQ0
乙
ところで佐天さんの手は結局生えてきたんだろうか
252 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 13:54:51.05 ID:DwgN.s60
昨日はサーバーが落ちていたようなので、投下できませんでした。
なので、今日の20時頃から投下します。
253 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/14(水) 14:19:29.39 ID:k17GhgAO
復活!
試験勉強しながら待ってるぜ!
254 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 19:53:17.77 ID:ahGTGPA0
時間になりましたので投下します
255 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/14(水) 19:59:31.86 ID:XlgAEiI0
wktk
256 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 20:04:12.99 ID:ahGTGPA0
「こんにちは、佐天さん。お元気そうでなによりですわ…」
こちらに歩み寄って来た白井さんがそう言った
「ええ、まぁ…」
心なしか白井さんが怒っているように見えたので、私は言葉を詰まらせる
「今日はお話があってきましたの」
ああ、やっぱり…
さすがに最近は派手に動いていたので、きっとその事だろう
「佐天さん、正宗さん、お二人の事がネット上で噂になっていますの、
わたくしも佐天さんが戦うことについてはあまり強くは言いませんが…
目立ちすぎるようなことは少し謹んで欲しいんですの……」
257 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 20:17:36.22 ID:ahGTGPA0
ネットで噂に…
さすがにそこまで話が大きくなっているとは思わなかった…
「それでも…」
「それでも…、私は目の前で誰かが傷つくのを放っては置けない…」
私は白井さんにそう答える
「なんでですの?前も言いましたが、佐天さんはジャッジメントでもアンチスキルでも
ありませんわ。そのあなたが危険を冒す必要なんてありませんわ…」
前と同じ問いを、私が正宗を初めて装甲した日と同じ問いを白井さんが
私に投げかける…
「白井さんの言うとおり、私がやらなくてもいいかもしれない…。
でも、そうすることで、傷つかなくていい人が傷ついたり、ジャッジメントや
アンチスキルの人が傷つくのを防げるかもしれないから…」
私は白井さんを見つめる
「私が誰かを傷つけて恨まれても、誰かの代わりに傷ついてもいい……」
「それでも私は戦う、それが私の正義だから」
あの時とは違う、借り物ではない
私自身の想いを白井さんにぶつける
258 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 20:32:31.10 ID:ahGTGPA0
「それは…、なぜですの?己を犠牲にしてでも人を救う自分に酔っているのですか?
それとも、自分の力を誇示し、英雄のように持て囃されたいからですか?」
白井さんが私に辛辣な言葉を投げかける
「私は英雄になりたい訳じゃない、英雄になんかなれない……
これはただの私のわがままだから。
たとえ私になんの権限がなくても、なんの道理がなくても、
白井さんがなんて言っても、私は戦うことをやめるつもりはありません…」
259 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 20:42:00.69 ID:ahGTGPA0
私の言葉を聞いて、今まで難しい顔をしていた白井さんが
ふぅ、と溜め息をついた
「やれやれですわ、ちょっと前の佐天さんと比べて、随分と意志が強くなられた
ようですわね。
まるでお姉様みたいですわ……」
そう言って白井さんが困ったような微笑みを浮かべる
「そこまでの意志がおありなら、もはやわたくしに言うべきことはありませんわ、
ネットの件はわたくしと初春でなんとかします、それに微々たるものかもしれませんが
わたくしと初春で、出来うる限りのフォローは致しますわ」
ただし、あまり期待しないでくださいね?と言って白井さんは笑った
「すみま…、いえ、ありがとうございます」
私は白井さんの言葉にお礼を言った
260 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 20:52:36.59 ID:ahGTGPA0
<やれやれ、御堂も白井殿も気の強い女子であるな…>
傍で聞いていた正宗がそう感想を漏らした
「正宗さんにだけは言われたくありませんわね…」
それを聞いて白井さんが渋い顔をする
<御堂…、こうして白井殿と会えたのも何かの縁。
ここ数日鍛錬に掛かりきりであったからな、少し息抜きに白井殿達と
遊びに行ってはどうだ?>
「えっ?」
思わぬ正宗の言葉に私は驚いた
「それはいい考えですわね。いつも気を張っていたのでは倒れてしまいますわ」
「いいの?正宗?」
私は正宗に確認をとる
<少しくらいならば、構わぬであろう。それに白井殿の言うとおり、
敵が来る前に倒れては元も子もない>
261 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 21:03:19.81 ID:ahGTGPA0
白井さんはまだ少しジャッジメントの仕事があるという事で、後で初春と
一緒に合流する事になった
それまでの間、暇になった私は同じく暇を持て余しているという御坂さんと合流
する事にした
「お〜い!御坂さ〜ん!」
待ち合わせ場所に御坂さんの姿を見つけた
「おっ、佐天さん。久しぶりじゃない、体は大丈夫?」
「ええ、もうすこぶる元気ですよ!」
久しぶりに遊びに行くという事で私のテンションは上がっていた
「すみませんね御坂さん、突然呼び出しちゃって」
「別にいいのよ、私も暇だからコンビニに立ち読みでもしに行こうかって
思ってたぐらいだし」
常盤台の人でも立ち読みとかするんだ、と私は驚いた
「とりあえず、黒子達が来るまでそこら辺で時間潰しましょうか?」
「そうですね」
そう言って私達は歩きだした
262 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 21:13:02.63 ID:ahGTGPA0
「どこ行きます?ゲームセンターにでも…」
<御堂>
歩きだし、どこへ行くか御坂さんに尋ねようとしたところで、隠れながらついて
来ている正宗が声をかけてきた
「正宗?どうした…の……」
言葉を言い切る前に正宗が何を言おうとしたのか理解した
前方に見覚えのある姿を見つけた…
男にしては華奢な体、赤い瞳、白い髪…
学園都市の第一位、一方通行がこちらに歩いて来ている
「佐天さん?どうかしたの?」
急に立ち止まった私を心配して、御坂さんが私の顔を覗き込む
「前に何かあるの?」
御坂さんが私の視線の先に視線を移す
「!? あいつはッ!!」
御坂さんも一方通行の存在に気付いた
おそらく、一方通行も私達の存在に気付いているのだろう…
一方通行はこちらを睨みつけたまま、歩を進めて来る
そして、私達の前で足を止めた
263 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 21:25:15.79 ID:ahGTGPA0
「あんたッ!」
御坂さんが一方通行を威嚇する
「オレは…」
一方通行が御坂さんの言葉を遮るように口を開いた
「オレはテメェのやった事が正しいなんて認めねェ…、
テメェのやった事で残りの妹達が救われたとしても、オレの殺した妹達の死が
無駄になっちまった…。だから、オレはテメェを認めねェ」
一方通行はそう言い放つと私を睨みつけた…
「構わないわ、私は残りの妹達を助けるため戦った…
その結果、あなたの苦悩を、あなたが奪った妹達の命が無駄になってしまったけど…
私はそれが間違ってるなんて思わないから」
私も負けじと一方通行を睨みつける
どちらも視線を逸らさず、私達はしばし睨みあう…
264 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 21:36:33.36 ID:ahGTGPA0
「チッ…」
先に動いたのは一方通行だった
彼は舌打ちをすると、私達の横を通り過ぎようとする…
「待ちなさいよッ!」
御坂さんが一方通行を怒鳴りつける
しかし、一方通行はまるで聞こえていないかのように、そのまま歩いて行った
「はぁ〜〜……」
一方通行が去った事を確認し、私は盛大に息を吐きだした
「緊張したーー」
一度勝った相手とはいえ、彼が依然として第一位である事には変わりはない…
正直、避けれる戦いなら避けたいというのが本音だった…
「御坂さん、大丈夫でした?」
私は御坂さんに声をかける
「…………」
御坂さんは返事をせず、手を真っ白になる程に握りしめている
「御坂さん?」
「えっ!?な、何!?」
二度目の問いかけで、御坂さんはやっとこちらを振り向いた
「大丈夫でしたか?」
「だっ…!大丈夫よ、心配しないで…」
「よかった…。それじゃあ、気を取り直して行きましょうか?」
「……うん」
私の言葉に、御坂さんは頷いた
265 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 21:47:18.69 ID:ahGTGPA0
・
・
・
「クソッ!」
自分の部屋でベッドに身を投げ出した一方通行は不機嫌そうに悪態をついた
原因は一つ、つい今しがた会った、あの少女のことだった…
「なんで……」
なんで彼女は自分を責めないのだろうか?
そんな疑問が頭の中に渦巻く
自分は許されざる程の悪行をした外道だ
なんの関係がない人間でも事情を知れば自分を非難するだろう…
266 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 21:57:55.72 ID:ahGTGPA0
それなのに、彼女は自分を責めなかった…
彼女と親交を深めた10031号を目の前で殺したのに
彼女自身を傷つけたのに
自分の戦う理由だって、あんなものはただの自分勝手な言い分だ…
自分のやった事を正当化したいから、ただの人殺しになんてなりたくなかったから…
殺した妹達の命を盾に、自分の殺しを正当化しようとしていた…
そんな自分の理不尽な理屈を、理不尽な言葉を
彼女は言い訳もせずに受け入れた
それが理解できなかった…
それは彼女が生まれついての強い人間だからなのだろうか?
それはきっと違う、一方通行は天井を見つめながら実験の無期凍結を言い渡された
日の事を思い返す…
267 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 22:06:17.71 ID:ahGTGPA0
「残念だが、この実験は無期凍結される事になった」
目の前の研究員がそう告げた
「随分とあっさりと中止にするンだなァ」
この実験、絶対能力進化実験は学園都市初のレベル6を誕生させるための実験だ
それがこうもあっさり凍結されるとは意外だった
「この実験は『最強の超能力者』をレベル6へと進化させるための実験だ
その最強が能力者ですらない人間に負けるなんて…
そんな実験をこれ以上続ける意味はないだろう?」
研究員がそう言い放つ
「能力者じゃない?」
「ああ、お前を倒した者は能力者ではない、データベース上はそうなっている」
あの女が能力者ではない?
それではアイツは何者なのだろうか?
「無能力者だよ」
オレの疑問を先読みするかの様に研究員が答えた
268 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 22:17:25.80 ID:ahGTGPA0
「ハァ?」
無能力者?そんな筈はないだろう…
あの身体能力や飛行能力はあの正宗とか言う駆動鎧の力で説明がつくが
オレの反射を破ったのは紛れもなくなんらかの能力によるものだろう
「お前を倒した女、佐天涙子は紛れもなく無能力者だよ…
それもレベルアッパーなんぞに手を出すような学園都市での最下層に位置する
クズのような人間だ…」
研究員が吐き捨てるように言った
「お前を破った事で、奴を能力者に認定し、研究に参加させようとしている人間も
居るようだが…。まあ、どうでもいいことだ、どちらにせよこの実験はお前の最強
が崩れた時点で再演算が必要だった、それももう不可能、この実験は終わりだ…」
そう言って、研究員は机の上の資料をまとめ出した
「それでは、私はこれで失礼するよ。次の研究に参加せねばならないのでね」
資料をまとめると、研究員は足早に研究室を出て行った
269 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/07/14(水) 22:27:10.43 ID:mA610fE0
ttp://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E6%9C%80%E8%90%8C%E3%80%80%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=
ttp://image.akiba.kakaku.com/data/imgs/akiba20100713-9962.jpg
ttp://2chart.fc2web.com/2chart/titikurabe/sakititikurabe2.jpg
ttp://asame2.web.infoseek.co.jp/2gibrif40.png
270 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 22:28:13.04 ID:ahGTGPA0
「なんだァ?あんなに急いで…?」
「彼は、いえ、彼だけじゃない…、最近、この実験に携わっていた研究員の中で
別の研究にも協力する研究員が増えたのよ…」
それまで資料を整理し、会話に参加してこなかった芳川桔梗が口を開いた
「別の研究だと?」
この絶対能力進化はレベル6を誕生させる計画、その重要度は他の研究よりも
上の筈だ、それをないがしろにして参加する研究とは何なのだろうか?
「今までレベル6を生み出すのに必死だった奴らが、随分と唐突な話だなァ?」
「唐突、という訳ではないけどね。当初から、目に見える成果の出ないこの実験に
不信感を持つ研究員も居たのよ…」
芳川がそう答える
271 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 22:38:37.43 ID:ahGTGPA0
それを聞いて納得できる節もある…
確かに実験は半分を越えたというのに、当のオレ自身、自分の能力が上がったという
実感はなかったからだ
第一、この実験の意図すらよくわからない、2万人の妹達を2万通りの戦闘環境で
殺害するという内容は、能力を上げるためというよりも能力を使った戦闘訓練と言った
方が正しいだろう
それも能力差が大きすぎたせいで効果があったとは言い難い
大半の研究員は『樹形図の設計者』(ツリーダイアグラム)の出した計算と言う事で
実験を続けていたのだろう
しかし、何者かの手で樹形図の設計者が破壊され再演算が不可能になったことで不安が
増大した…
決定打は今回の敗北だろう、『最強』という前提が崩れ、再演算もできない
このまま実験を続ける価値はないと上も判断したのだろう…
272 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 22:46:01.23 ID:ahGTGPA0
「それで?あいつらが御執心な研究ってのはなンなンだよ?」
確かに絶対能力進化実験に不信感を抱いていたのは理解できた
だが、それだけの理由で他の研究に移ろうだなんて思うだろうか?
どれだけ可能性に不安があっても、この実験には他とは比べ物にならない程の
重要性があった筈だ……
「『超新星計画』(プロジェクト・スーパーノヴァ)…」
芳川がそう呟いた
「超新星?」
超新星というと星の爆発の事だろうか?
名前からは研究の詳細がまったく掴めない
「そう、詳細はわからないけど…、彼等の話では多重能力者(デュアルスキル)を
生み出す実験、だそうよ…」
273 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 22:56:53.77 ID:ahGTGPA0
「多重能力者?」
一人の能力者が所有する能力は一つと決まっている、複数の能力を持つことは
脳への負担が大きすぎるためだ…
多重能力者はその常識を覆し、複数の能力を行使できる者を指す
しかし、『特力研』などの施設で多くの実験が行われたが、どれも成功せず
実現は不可能とされている
「レベル6の次は多重能力者かァ?ここの研究員は随分と夢を見るのがお好きなようで?」
嘲笑うように言い放つ
「それがそうでもないらしいのよ…」
「なンだと?」
芳川の言葉を聞き返す
「多重能力者の実験は半ば…、ううん、もう成功の一歩手前まで来ている、そう
言われているの」
274 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 23:06:17.69 ID:ahGTGPA0
「なるほどねェ…」
先が見えない絶対能力進化実験よりも、成功が期待できる研究に乗り換えた方がいい、
そんなところだろう
「彼のように絶対能力進化実験に参加しながらも、超新星計画に参加していた
人間は多いわ」
「二股かけてた、って訳かよ」
どちらにもいい顔をして、いざとなれば勝ち馬に乗る、学園都市の暗部にお似合いの
考え方だ
「必死なのよ、学園都市の歴史に名を刻む研究チームに自分の名前を載せたくて
仕方ないんでしょうね…」
「テメェはいいのかよ?」
こんな所で後始末みたいな事をしなくても、別の研究に参加した方が彼女のためだ
「私はいいのよ、それに誰かが後始末をしないと、あの子達が困るでしょう?」
そう言って芳川は笑った
275 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/07/14(水) 23:22:12.64 ID:mA610fE0
ttp://img.20ch.net/anime/s/anime20ch59430.jpg
ttp://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up452958.jpg
276 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 23:22:19.56 ID:ahGTGPA0
実験は無期凍結され、妹達のほとんどが学園都市外の施設へと出て行った
妹達は救われたのだ…
一方通行は回想から立ち戻る
そして再び、妹達を救った少女…、佐天涙子の事を考える
佐天涙子はつい最近まで無能力者だった…
それもレベルアッパーに手を出し、昏睡状態に陥った事さえある
それと自分の中にある彼女の姿が結びつかない
自分の前に立ちはだかった少女がレベルアッパーに手を出すような人間には思えなかった…
何が彼女を変えたのだろうか…?
それを知ったら……
(オレも変われるのか…?)
妹達のために命を掛けた佐天涙子、自分の利益にならないのに妹達のために後始末をする
芳川桔梗
彼女達の姿を見ると、胸が締め付けられる…
実験を経て、何も変わってない自分、何も変えられなかった自分
一方通行は今日も思い悩む
目標を失ってしまった自分がどうすればいいのかを…
だが、答えを掴む糸口さえ、まだ見つからないままだった……
277 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/14(水) 23:23:44.80 ID:ahGTGPA0
今日の投下はここまでにします。
明日も投下できると思いますので、時間帯は19〜20の間に投下を始めます。
それでは
278 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/14(水) 23:29:33.34 ID:xMxZJ620
おつでしたー!
一方サイドも深いねーありがとう!
279 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/07/14(水) 23:30:34.63 ID:7Kb7BTo0
乙でした
280 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/14(水) 23:34:04.62 ID:JfDCxMSO
おつ
281 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/14(水) 23:55:20.61 ID:F7NEjEAO
乙!wwktkがとまらないぜ
282 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 19:36:58.78 ID:ZPgGmI60
そろそろ始めます
今回は視点の変更が多いので、読みにくいかもしれませんが
ご容赦ください
283 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 19:44:44.56 ID:ZPgGmI60
とある研究所の一室
ドアが開き、スーツの上に白衣を着た細身の男が中に入ってくる
「木原主任お疲れ様です」
細身の男、木原はその声に困ったような笑みを浮かべて応じた
「遅れて申し訳ない、少し用事があったものですから…」
「また例の奴の所ですか?」
研究員が質問を投げかける
「ええ、そうです。残念ながら今回もいい返事は頂けませんでしたがね」
自嘲気味に笑みを浮かべる
「研究には支障は出てませんから、我々は構いませんが、これ以上は控えた方が
いいのではないでしょうか?」
研究員が不安そうな顔をする
284 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 19:53:49.00 ID:ZPgGmI60
「彼女の事は上層部も大分揉めてるみたいですし…、深入りしすぎると、いざ処分って
事になった時にこっちにまで面倒事が来るかもしれませんよ?」
研究員はそう進言してきた
「それは否定できませんね…、しかし、彼女をこちら側に引き込むことが出来れば、
そんな心配は必要なくなります」
私の言葉を聞き研究員は説得を諦めたようだ
「でも、これだけ言って無理ならダメなんじゃないですか?」
「これは痛いところを突かれましたね。でも、もう少し粘ってみますよ…
なにせ貴重なサンプルですからね……」
彼にそう言い、私は自分のデスクへと向かった
285 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 20:05:51.48 ID:ZPgGmI60
研究所の職員や上層部には、彼女、佐天涙子の事を貴重なサンプルであるからと、
助命を頼んでいるが、私の本心は違っていた…
確かに最初は彼女をサンプル、いや、それ以下のモノとしてしか見ていなかった
正宗を装甲できる者は無能力者しかいないが、学園都市には無能力者なんて掃いて捨てる
程存在する
彼女が選ばれたのは、正宗の秘密を知る人間が少ない方がいいという理由、
そして、正宗が現れた所に都合よくいた無能力者であるという理由だけだった
彼女が正宗を装甲してからも私の彼女への評価は変化しなかった
偶然能力を手にして浮かれている無能力者…
どこにでもいる普通の中学生、その程度の認識だった
286 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 20:18:38.12 ID:ZPgGmI60
彼女への認識が変化したのは、彼女を処分する計画が立案されてからだ
その内容は、戦いから逃げ出した彼女を処分、もしくは研究への復帰を促すための計画だった
私はそれを聞いても何も感じなかった。私自身は血生臭い事は嫌いだったが
暗部に居れば嫌でも慣れてしまう…
成功しようが失敗しようが、死ぬのはクローンと無能力者だけ
私の研究にはなんの支障もない、どうでもいい計画だった
私はただ、研究の早期再開を望んでいた…
計画が実行され、彼女が生き延びたのを聞き、彼女の選択次第ではすぐにでも
研究を再開できると思い、私は安堵した
しかし、彼女の選択は我々の想定を遥かに外れたものだった
287 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 20:31:17.54 ID:ZPgGmI60
彼女は無謀にも第一位一方通行に戦いを挑んだ
つい先日まで無能力者、平凡な中学生であった彼女が最強を誇る超能力者に立ち向かい
それを打ち破ったのだ
その知らせを聞いた時、私は驚愕した。正宗の力はそれ程なのかと、ただの無能力者に
最強を退けさせることが出来る力なのかと……
私は上層部にかけ合い、彼女を研究に引き戻そうとした
彼女は第一位を退ける力を有している、もはや逃げ出すことはないだろう
だが、入院している彼女に面会に行き愕然とした…
288 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 20:46:12.38 ID:ZPgGmI60
「面会できない?」
病院に到着し、彼女に面会をしようとした私は受付でそう言われた
確かについ先日入院したばかりだし、私は彼女の身内ではない
断られるのも無理はない話だった
「私は佐天さんの参加している研究の関係者です。ここにIDだってあります
研究の今後の事でお話がしたいのです。少しの時間でいいので話をする事はできませんか?」
なおも食い下がる私の前にカエル顔の医者が現れた
「君もしつこい男だねぇ…、面会はできない、そう言っているのがわからんのかね?」
カエル顔の医者が私を睨みつける
「申し訳ありませんが、これも上層部からの命令でして。研究の今後について、早急に
お話したいのです」
カエル顔の医者は溜め息をついた
「ここに居座られては他の患者の迷惑になる…、しかたない私が立ち合う、それと短時間
でいい、この条件を飲むのなら面会を許可しよう…」
「ありがとうございます」
私はこの時、この医者が、話はできないと思うがね、と言ったのを聞き逃していた
「くれぐれも、静かに頼むよ?」
そう言ってその医者は病室のドアを開けた
ドアの向こうに居たのは、呼吸器を付け、包帯で巻かれ、そして……
腕を無くした少女の姿だった…
289 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 20:57:17.95 ID:ZPgGmI60
その痛々しい姿を見て、言葉を失った
私は思い違いをしていたのだ…
彼女は一度の怪我で戦いから身を退いた、それは当然のことだ、彼女は漫画の登場人物ではない
些細な怪我に涙を流すような平凡な中学生だ
だから今回、彼女が戦いに赴いたのは正宗の力が一方通行の力を遥かに上回っていた
からだと思っていた
その力を行使し、危なげなく勝利を収める事ができたのだと思っていた
入院したのも、相手は第一位、無傷と言う訳にはいかず、些細な怪我をした
その程度だと考えていた
だが、目の前の姿が戦いの激しさを物語っている…
なぜ彼女はここまで戦えたのだろう?
ただの無能力者である身にも関わらず……
290 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 21:10:09.33 ID:ZPgGmI60
彼女の想いはわからない、ただ、私は彼女を応援したいと思った…
無能力者であるにも関わらず、ここまで頑張る彼女を、本物の能力者にしてあげたい、
そう思った
私は病院を後にすると、上層部に彼女を能力者として認定してくれるよう、申し出た
それから数日後、学園都市の研究に参加するという条件付きで、その申請は認められた
彼女が退院する日、私は彼女にそれを報告するために彼女に会いに行った…
(佐天さんは喜んでくれるでしょうね…)
私はそう確信していた、学園都市ではレベルは絶対だ。レベルが高いものは王侯貴族の
ように威張り、レベルの低いもの、無能力者は見下され、能力の脅威に怯えて過ごす
私が学園都市の生徒だった頃と変わらない、学園都市の仕組みだ…
だから無能力者は能力者になりたがる、かつての私がそうだったように……
291 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 21:24:33.81 ID:ZPgGmI60
だが彼女はそれを断った、能力者に、それも最高位のレベル5になれるというのにそれを
断ったのだ…
学園都市ではレベルは絶対だ、彼女もそれを理解している
それでも彼女は無能力者でいい、そう言ったのだ
理解できなかった…、しかし、その理由は再度、話を持ちかけた時に彼女の口から語られた
彼女は人を犠牲にする研究が許せないと言った、能力者になれば自分のために他の誰かを
傷つけてしまうことになるかもしれない。
それが許せないのだと語った
彼女はそれ以降も戦っていた、自分の素姓を顔を鎧の下に隠し
自分以外のために、剣を振り努力を続けていた
292 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 21:38:32.84 ID:ZPgGmI60
私は彼女の努力が意味を為さないものだと知っている
彼女は正規の方法で能力者になる道を失ってしまった、だから私の話を受ける
以外に能力者になる術は無い
彼女の行いは、彼女になんの利益も与えない、彼女がどんな英雄的行為を行おうとも
それを彼女の功績と知る者はなく、ただの無能力者として生きて行く…
それが許せなかった、過去の自分を思い出す、どれだけ努力しても能力者になれず
才能の壁に絶望し、道半ばで諦めた自分の姿を
自分はダメだったけれど、彼女の努力は報われてほしい、心の底からそう思った…
回想から立ち戻る
だから彼女を死なせたくない、暗部の人間の餌食になんてなって言い訳がない
ガラス一枚隔てて保管されているモノを見る、これが彼女の助けになればいい
そう思った―――
293 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 21:46:59.81 ID:ZPgGmI60
・
・
・
私、御坂美琴はまだ昼前だというのにベッドの上に寝転んでいた
昨日は久しぶりに佐天さんを含めた四人で遊んで、気分は最高、と行く筈なのだが…
とある悩み事のせいで気分は暗かった
その悩みの原因は私の胸中にあるよくわからない痛み、のようなものの事だ
それを初めて感じたのは、夏休みに突入したばかりの頃
私と妹達が佐天さんに救われた後のことだった…
294 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 21:53:31.98 ID:ZPgGmI60
その日、街をぶらついていると目の前にスキルアウトの集団に絡まれている女の子を
見つけた
周りの人達はスキルアウト達に恐れをなして、視線を合わせないように下を向いて
通り過ぎて行く
(まっ、しょうがないか…)
あの数が相手では、助けに入ったところで返り討ちに遭うのが目に見えている
赤の他人のためにそこまでする人間は少ないだろう…
(私が行くしかないか…)
「ちょっとっ!その子、嫌がってるでしょう!?」
私はスキルアウト達に声をかける
「なんだぁ?手前は!?」
スキルアウト達がこちらを振り向く
ここから先は問題ではない、レベル5の私にとって、スキルアウトを片付けることは
赤子の手を捻るよりも容易い作業だった
295 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 22:00:38.41 ID:ZPgGmI60
「大丈夫だった?」
スキルアウトを撃退した私は絡まれていた女の子に声をかける
「は、はいっ!ありがとうございました!」
女の子はお礼を言い、お辞儀を一つして去って行った
「さてと…」
私もその場を去ろうとする
「お姉様」
不意に後ろから声をかけられた
「ゲッ、黒子!」
振り向くと、ジャッジメントの腕章を付けた黒子が立っていた
「ゲッ、ではありませんわ。通報を受けて来てみれば、お姉様はまたこんな事を…」
黒子がこれ見よがしに溜め息をついた
「た、たまたま通りがかっただけよ。それに、放っておいたらあの子怪我させられ
たりしてたかもしれなかったしさ…」
296 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 22:10:46.63 ID:ZPgGmI60
また小言を言われるのかと思い、あわてて言い訳をする
「ハァ、お姉様はもう少し常盤台のエースとしての自覚を持ってほしいものですわ、
万が一お怪我でもなされたら、どうなさるおつもりですか?」
「スキルアウトなんか相手に怪我なんてしないわよ」
私はそう反論する
「だいたい、私よりも佐天さんの方が危ない事してるじゃない。なのにあんたは佐天さん
にはこんな事言わないわよね?私よりも佐天さんを注意しなさいよ!」
毎度毎度の黒子の小言にイライラした私はそんな事を口走ってしまった
「佐天さんの意志はとても固いものですわ。わたくしが何か言ってもお止する事は
できないでしょう…。でもお姉様は違いますわ、お姉様はご自分が強いからという
理由だけで戦っているように見受けられますわ…」
その言葉に頭にカッと血がのぼる
「何よそれ!?私が佐天さんより…!」
劣ってるって言うの?
そう言おうとしていた事に気付き、あわてて口を押さえる
297 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/15(木) 22:15:18.97 ID:uaYNeLI0
頑張れ
298 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 22:16:41.01 ID:ZPgGmI60
「お姉様?」
突然黙った私を黒子が怪訝そうに見てくる
「ごめん、私もう帰るわ…」
黒子に背を向けて歩きだす
「お姉様!?まだ話は終わってませんわよ!?」
その声を無視する、さっきのはカッとなったせいで言いそうになっただけ…
佐天さんは友達なんだから、私が佐天さんにそんなこと思う筈ないよね?
自分にそう言い聞かせる、だが、それ以降も佐天さんの話を聞くたびに
胸の奥に同じような痛みを感じた……
299 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 22:25:20.10 ID:ZPgGmI60
認めたくない、そんなことある筈がないって思っていた…
でも、昨日気付いてしまった
この感情は嫉妬だ、御坂美琴は佐天涙子に嫉妬している―――
なぜこんな感情を抱いたのだろうか?
佐天さんが一方通行を倒したから?
多分、それだけならこんな感情を抱かなかった…
もっとも大きな原因、それは彼女が無能力者であるということだろう
私は気付かないうちに佐天さんを見下していた、彼女はなんの力もない無能力者だから
私が守ってあげなくちゃって……
今まで守ってあげていた存在、自分よりも下だった筈の佐天さんが自分より
上に行ってしまったことに嫉妬している
何よりも、黒子が私よりも佐天さんを信頼しているかのように言ったことが
許せなかった…
300 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 22:33:11.71 ID:ZPgGmI60
「私って、こんな嫌な奴だったかなぁ……?」
私達のために戦ってくれた、私の事を友達だって言ってくれた佐天さんにこんなことを
思うなんて、最低だ…
「これからどんな顔して佐天さんに会えばいいのよ…」
謝ればいいのだろうか?しかし、これを知っているのは私だけだ、突然謝ったら
変に思われるだろうし
でも、このまま何事もなかったかの様に佐天さんと接していくことは無理そうだった
「うじうじしててもしかたない!気分転換でもして来よう」
私はそう言うと、ベッドから身を起こした
301 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 22:43:22.49 ID:ZPgGmI60
気分転換と言っても、私一人なのでコンビニに立ち読みに行くくらいしか思いつかなかった
「近道でも通って行こうっと」
私はいつも行っているコンビニへ行くために、人通りの少ない路地を通って近道する事にした
「にゃー」
路地を通っていると、不意に物陰から猫の鳴き声がした
「あっ、猫…」
能力の関係で、動物は私に近寄らないけど、この子は逃げる素振りを見せない
(もしかしたら、触れるかも…)
そう思い、その猫に恐る恐る手を伸ばす
「にゃーー!」
案の定、猫は私の手が触れるくらいまで近づくと声を上げて逃げて行ってしまった
「やっぱ、ダメか…」
逃げ出した猫が曲がり角を曲がり姿を消す
「にゃーー!」
曲がり角を曲がった筈の猫が、再び姿を見せ、今度は反対側の道へ逃げて行った
「どうしたんだろ?」
私が首を傾げていると
「あらら、今日のあたしは運がいいみたいね…」
その曲がり角から私と同じ顔の少女が現れた…
302 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 22:52:06.28 ID:ZPgGmI60
「妹達?」
実験の凍結後も学園都市に残った妹達は居る…
だが、妹達はいつもゴーグルと常盤台の制服を着用していた筈だ、なのにこの子は
男物のジャケットのようなものを着ている
「まさかテスト運転中にお姉様に会えるなんてね」
それだけではない、私は目の前の少女になにか違和感を感じていた
いつもと言葉遣いが違う?
それじゃない、もっと別の……
「あんた番号は?」
違和感の正体はわからないが、それは置いておき、彼女の番号を尋ねる
「番号?」
「そう番号よ、あなたも妹達なら番号があるでしょ?」
私はそう繰り返す
303 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 23:02:14.15 ID:ZPgGmI60
「番号って、『欠陥電気』(レディオレイズ)の番号の事?アハハ、あたしを
あんな石ころ共と一緒にしないでよ?」
彼女の反応に私は驚く、違和感の正体はこれだったのだ。彼女は他の妹達と違い
かなり感情表現が豊かだ
「あたしは欠陥電気じゃない、研究所では『番外個体』(ミサカワースト)って
呼ばれてるわ」
彼女、番外個体が誇らしげにそう言った
「番外個体?」
聞いたことのない名称だ
「そう、出来損ないの欠陥電気とは違うってこと。まあオリジナルのお姉様自体が
無能力者に助けられるくらいの出来損ないのレベル5なんだけどね?」
番外個体はそう言うとケタケタと笑った
304 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 23:10:16.97 ID:ZPgGmI60
「喧嘩売ってんの!?」
さっきまで悩んでいた事を言われて、声を荒げる
「へぇ…、売ったら買ってくれるの?」
言うや否や番外個体は体の周りに電撃を発生させる
「これは…」
これほどの電撃を事もなげに放つなんて、確かに番外個体は他の妹達と比べ
レベルが高いようだ
「あたしには電撃は効果が薄いよ?それでもやるの?お・ね・え・さ・ま?」
番外個体は顔に嘲笑の笑みを浮かべたまま私を挑発する
「上等じゃない!痛い目見せてやるわッ!」
305 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 23:16:41.57 ID:ZPgGmI60
番外個体の挑発に乗り、戦闘態勢をとる
(こいつには電撃は効果がない…、じゃあレールガンを使う?そんなことはできない…)
レールガンを撃てば彼女は無事では済まないだろう
(じゃあ、どうすれば…)
そこまで考えて気が付いた
(私には電撃とレールガン以外に今戦闘に使えそうな手段がない!)
(条件は向こうも同じ、やるしかない!)
私は素手で戦う覚悟を決める
「あ〜らら、やっぱりそうなるのかぁ〜」
番外個体は残念そうに溜め息をつく
「しょうがない、さっさと片付けるとしますか」
そう言って番外個体は構える
306 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 23:22:23.80 ID:ZPgGmI60
「フッ!」
番外個体が私目がけて走ってくる
「こんのぉ!」
走ってくる番外個体目がけて力一杯拳を振るう
「よ、っと」
番外個体はそれを左手でガードすると、私に右フックを打ってきた
「きゃあ!」
私はそれをかろうじてガードすると、後ろに飛び退き番外個体との距離をとる
(格闘なら向こうに分があるみたい…、なら!)
防がれても構わないくらいの全力で攻撃する!
307 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 23:33:55.35 ID:ZPgGmI60
追撃してくる番外個体に向かって渾身の回し蹴りを放つ
「てりゃあ!」
番外個体はこちらに走り込んでくる、このタイミングならば避けることはできないはず
だが、ちらりと見えた番外個体の顔は…
(笑ってる?)
私の蹴りが当たるか当たらないかというすれすれを番外個体は体を斜めに傾けて
回避した
そして、その勢いを利用して私の脇腹に強烈な一撃を放った
「ガハ――」
体がクの字に折れ、息が出来なくなりその場に倒れ込む
「お姉様の戦い方はワンパターンすぎるのよ、もっと考えないとね?」
番外個体は私を見下して笑う
「じゃあお姉様には、もうちょっと痛い目みてもらおうかしら…」
番外個体が拳を振り上げる
「―――ッ」
私は目を瞑る
「おい!なにしてんだお前!!」
そこに聞き覚えのある声が聞こえてきた
308 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/15(木) 23:35:55.84 ID:ZPgGmI60
今日はここまでにします。
本当はもっと先まで行ける予定だったのですが、書いている途中で内容を変更した
ため、時間がかかってしまいました、すみません。
次回は明後日辺りを予定していますのでよろしくお願いします。
309 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/07/16(金) 00:40:22.35 ID:O8yfSa20
乙でした
続きが気になる切り方だ
310 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/16(金) 00:55:39.89 ID:DLJBmoSO
乙
311 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/16(金) 04:10:59.84 ID:tk4Sg/M0
乙
最後の人はそげぶさんかな
この話に登場しないのかと思ってた
312 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/17(土) 17:48:27.00 ID:oP72xjE0
今日は21時から投下します。
313 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 20:57:23.08 ID:oP72xjE0
時間になったので始めます
314 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 21:03:47.62 ID:oP72xjE0
・
・
・
「大丈夫か!? ってお前はビリビリ!?」
倒れている女の子に駆け寄り、その顔を見て驚く
その子はいつも俺に絡んでくる、レベル5の御坂美琴だった
「とう…ま……?」
なんでレベル5のこいつがこんな目に!?
「やれやれ、正義の味方(ヒーロー)の登場ってわけ?」
前から嘲笑の色を含んだ声が飛んでくる
ビリビリ、御坂をこんな目に遭わせたであろう奴を睨みつける
「―――ッ! 同じ顔!?」
そいつの顔を見て、俺は再度驚きの声を上げた
そこに居たのは、御坂と同じ顔をした少女だった
315 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 21:11:48.62 ID:oP72xjE0
「悪いんだけど、あんたお呼びじゃないのよ。消えてくれるかな?」
彼女は俺を見下すようにそう言い放った
「そうは行かない、倒れてる女の子放って行けるほど、俺は冷血じゃないんでね…」
「あっそう、それなら…、痛い目見せてやるわ!」
言葉を終えると同時に、彼女は俺に向かって電撃を放って来た
「うおッ!?」
その一撃を辛うじて『幻想殺し』(イマジンブレイカー)で打ち消す
「なッ!?」
少女が目を見開く
「残念だったな、俺の右手はどんな能力も打ち消す、お前に勝ち目はないぞ?」
目の前の少女は考え込むように押し黙り
「そう…、あんたが上条当麻って訳ね……」
俺の名前を口にした
316 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 21:21:54.55 ID:oP72xjE0
「お前、どうして俺の名前を知ってるんだ?」
「さぁね?もしも、あたしに勝てたら教えてあげるよ」
少女は楽しそうに笑った
「ああ、それと。こっちだけ名前を知ってるのは不公平だから…、名乗っておいてあげる
あたしは番外個体、どうぞ宜しくね?」
少女…、番外個体は小馬鹿にしたようにそう言うと、構えをとった
「やるしかねぇか――」
「ダメ…、そいつと戦っちゃ……」
まだ回復していないのだろう、御坂が苦しそうにそう言った
だが、相手はやる気満々で逃げ出せそうもない
それに番外個体は能力者だろう、銃などの武器も持っていない
「心配するな、すぐに病院に連れてってやるからな」
心配そうにする御坂にそう声をかけ、番外個体へと向き直る
「悪いが、女の子でも手加減はしてやれないぞ?」
勝負はこちらに分がある、女の子が相手なのは気が引けるが、一刻も早く御坂を病院へ
連れていかなれば
317 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 21:28:09.20 ID:oP72xjE0
「ハァ?自分より強い相手に手加減?寝言は寝てから言いなさい…よ!」
番外個体が電撃を放つ
それを幻想殺しで防ぎ、消滅させる
(このまま接近して、幻想殺しで掴んで能力を封じる…)
相手は能力者、しかも女の子だ。能力を封じてしまえば戦う手段を失い
戦意を喪失する筈…
俺はそう考え電撃を防ぎながら、番外個体との距離をジリジリとつめていく
「チッ!」
電撃をすべて防がれている事に苛立っているのだろう、番外個体の動きが目に見えて
単調になって来た
318 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 21:37:56.49 ID:oP72xjE0
(今だッ!)
相手の攻撃が途絶えた一瞬の隙をつき、相手に触れることのできる位置まで移動する
「何ッ!?」
番外個体が驚きの声を上げる。俺は電撃を放っていた手を幻想殺しで掴んだ。
これで番外個体はもう能力を使用できない筈だ、現に相手に触れているにも関わらず電撃は
放たれない
「これでお前は能力を使えない…、このまま降参し――」
番外個体の顔に視線を移す。だが目に飛び込んできたのは、能力を封じられた事に驚く顔でも、悔しがる顔でもなく……
もう一方の拳を振り上げ、笑みを浮かべている顔だった
「なッ!?」
予想外の出来事に反応できず、その一撃をもろに喰らってしまう
後ろによりめいた俺に、番外個体は更なる攻撃を仕掛けようとする
319 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 21:47:08.10 ID:oP72xjE0
「クソッ!」
それをなんとか受け止める
どうにか追撃をかわし、番外個体と距離をとる
(なんだ今の反応はッ!?)
能力を封じられたにも関わらず、なんの戸惑いも見せずにすぐさま反撃に移るなんて
(俺の行動が読まれていたのか?)
そう考えれば説明がつく、あらかじめ能力を封じられる事を知っていなければ、あれほど
迅速に次の行動には移れないだろう…
(近くに心を読む能力者が隠れているのか?)
「まるで自分の行動が知られていたみたい…、そう考えているの?」
「!」
周囲を探ろうとした瞬間、番外個体がそう言った
(やっぱり心を読まれていたのか!?)
「心なんて読んでないよ。ただ、あんたの行動がわかりやすすぎるってだけ」
「…どういう意味だ?」
320 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/17(土) 21:51:58.30 ID:Q1Ev7ooo
上条さん・・・見た目で判断するのはいかんぜよ・・・
321 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 22:00:13.07 ID:oP72xjE0
「簡単だよ、あんたの幻想殺しは右手に触れた異能を打ち消す力…、右手で触れられると
あたし等みたいな能力者は能力が使えなくなる。そしてあたしの外見はか弱い女の子…
とっても優しいあんたは、能力を封じればあたしが降参するって考えるかもしれない」
番外個体が少し自慢げに種明かしをする
「確証は持てなかったけど、あんたが電撃を防ぎながらゆっくりと近づいてきたのと、
あたしの腕をチラチラと見てきた事で確信が持てた…、コイツは底抜けに甘い間抜け野郎だってね!」
番外個体が笑い声を上げる
「間抜け野郎か……、それでも構わない…」
それに――
(間抜けなのは、お前も一緒だ――!)
今の話で気が付いた、番外個体は俺の名前だけではなく、幻想殺しの事も知っている…
その証拠に番外個体は能力を打ち消せるのが右手だけだと知っていたような口ぶりだ、俺は右手“だけ”なんて一言も言っていないのにだ
決定的なのは番外個体は確かに幻想殺しという単語を口にした、この名称を知っているのは
ごく一部の人間だけの筈だ……
322 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 22:11:54.37 ID:oP72xjE0
こいつは魔術や学園都市の暗部に関わりのある人間である可能性が高い…
先程の攻撃から察するに、こいつはそこいらのスキルアウトなんかとは違う、戦闘のプロだろう。故に俺の行動を先読みし幻想殺しを逆手に取るような戦法を仕掛けてきた…
(俺がこいつに勝つにはその裏をかくしかない…)
格闘では分が悪い…、なら相手の戦法を逆手に取り、勝負を仕掛けるしかない
「さて、正義の味方さんには、そろそろお引き取り願いましょうか?」
番外個体が再び電撃の雨を降らせてくる
番外個体は俺を近づけないようにし、次の攻撃の準備をしているのだろう
「さあフィナーレの時間だよ!?」
番外個体が拳に電気を集め始める――
番外個体の拳は瞬く間に、即席のスタンガンへと姿を変えた
323 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 22:21:43.10 ID:oP72xjE0
来た―――
チャンスはそう何度も訪れないだろう、下手すればこの攻撃が失敗すれば俺の意図に
気付く可能性だってある…
(ここで決めるッ――!)
番外個体が俺に向かって疾駆する
その拳はもはや通常のスタンガンを越える威力だろう
これを防ぐには幻想殺しで受け止めるしかない、そうしなければ俺の体には
電流が走り、戦闘不能に陥るだろう……
だから幻想殺しで防ぐ、それが当然の考えだ、だから……
それを逆手に取る―――
「ガァァァッ!」
俺はその一撃を敢えて左手で受け止めた
体中に電流が走る、だが―――
「こんくらいの痛みは…、慣れてんだよぉ!!」
324 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 22:33:13.99 ID:oP72xjE0
右手を振りかぶる――
番外個体は俺が右手で攻撃を防ぎ、左手で反撃にでると予想していたのだろう…
暗部の人間であるならば、その程度で動揺はしないだろう
しかし、相手は幻想殺しを使わなければ自分の攻撃を防げないという自分の能力への
自信と敢えて電撃を受けるという行動にさしもの彼女にも隙が生じた
「おおらぁぁ!!!」
「ガフッ!?」
渾身の一撃をもろに頭部に喰らい、番外個体の体が吹き飛んだ
「ぐッ……!」
さすがにあれだけの電撃を喰らっては平気とはいかず、その場に膝をつく
だが全力で殴りつけたのだ、女の子の番外個体が立ち上がってこれるとは思えない…
「さて、これからどうするか…。まずは御坂を病院へ運んで、あの番外個体とか
いう子はどうするかなぁ…」
さすがにこのまま放置するわけにはいかないし、かといって病院でまた暴れられても困る…
「―――まだ、終わってねぇぞ?」
325 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 22:44:50.48 ID:oP72xjE0
「――ッ!?」
声のした方を見ると、そこには体中に電気を纏った番外個体が立っていた
「お前ッ!まだ――!」
「なめた真似しやがって…!ぶち殺してやる!!」
「クッ!」
マズイ、番外個体はさっきの攻撃で多少のダメージを受けているようだが、
こっちのダメージのほうがデカイ!
(どうする? 電撃は防げるが、接近戦では攻撃を防ぐ事ができるかもわからねぇ!)
「おい、青ピ。なんだってこんな路地に入るんだにゃあ〜」
「さっきスゴイ音と光が見えたんよ!もしかしたら女の子が異次元から出てきたの
かもわからんでぇ!」
「誰かが暴れてるのかもしれないにゃ〜、面倒事はごめんだぜ」
誰かの声が近づいて来る…
これは青ピと土御門!?
326 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/17(土) 22:46:13.68 ID:p4ct.kAO
まさかの青ピさん
327 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 22:56:08.17 ID:oP72xjE0
「って、あれは…、カミやんやないか!?」
俺の姿を確認した青ピが驚きの声を上げる
「おいおい勘弁してくれよ、そこの光ってるのがホントに異次元から出て来た
なんて言わないでくれよにゃ〜?」
土御門が状況を読まない暢気な声で言った
「お前等!今すぐ逃げろッ!!」
「チッ!厄介なのが出てきたね…」
番外個体は舌打ちすると、背中を向け走り出し、曲がり角へ姿を消した
「な、なんだ……?」
俺が事態を呑み込めないでいると、周囲に爆音が轟いた
「なんやなんや!?」
青ピがその音に慌てふためく
そして曲がり角から、白いバイクに乗った番外個体が飛び出して来た
「じゃあな!上条当麻! それからまた無能力者に助けられたお姉様?
アハハハハ!!」
「うおッ!?」
爆音を轟かせながら、番外個体は路地から表の道路へとバイクで走り去って行った…
328 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 23:06:58.81 ID:oP72xjE0
「なんやったんや?今のは? ってカミやん!どうしたんやその怪我!?」
俺の怪我に気付いた青ピが大声を上げる
「そっちの女の子も怪我してるやん!えっと、きゅ、救急車?いやアンチスキルに…」
「落ちつけ青ピ、とりあえず救急車を呼べ」
慌てる青ピに土御門が指示を飛ばす
「大丈夫か?カミやん?」
「俺のことはいいから!まずはコイツを病院に連れて行ってくれ!」
俺は大した怪我をしてないが、御坂はどんな怪我をしているかわからない
「御坂! 大丈夫だったか!?」
なんとか立ち上がれるようになり、慌てて御坂の元へと駆け寄る
「……」
「おい!大丈夫か!?もうすぐ救急車が来る…!?」
俺が言い終える前に、御坂が俺に抱きついて来た
突然の行動に俺は言葉を失った
「お前どうし…、お前…泣いてるのか?」
329 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 23:11:20.76 ID:oP72xjE0
御坂は俺の服を掴み、声を押し殺して泣いている
「もう大丈夫だ、あいつはいなくなったから。もう安心していいぞ?」
レベル5といっても、まだ中学生だ。あんな目に遭えば泣いたりもするだろう…
俺は、御坂を労わるようにそっと頭を撫でた…
その時、上条当麻は気付かなかった
御坂美琴の涙の理由が、傷の痛みでも、恐怖でもなく
ただ己の無力さを悔やむものだったということに―――
330 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/17(土) 23:13:53.77 ID:oP72xjE0
今日はここまでです。
次回の投下日時は未定ですが、次は一方通行と打ち止めの場面からに
なります。
それではここまで見て下さった方、ありがとうございました。
331 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/17(土) 23:20:35.58 ID:p4ct.kAO
乙!
332 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/17(土) 23:22:00.20 ID:eEjTkuc0
乙
333 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/17(土) 23:35:09.02 ID:WS9sSYSO
おつ
334 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/19(月) 21:05:16.28 ID:hcBcM1U0
次は水曜日の20時頃から始めますので、よろしくお願いします。
335 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/20(火) 17:04:02.61 ID:m.y4fp.0
おkです
待ってます!
336 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 19:57:08.03 ID:.DtrfgU0
時間になりましたので始めます
337 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 20:04:02.84 ID:.DtrfgU0
・
・
・
夜の帳が下りた街を、白い髪の少年が歩いている
「たくッ、まさかコーヒーが切れてるのに気付かないなンてなァ…」
白い髪の少年、一方通行がそう悪態をつく
ここ数日は自分の今後の事を考えるのに頭が一杯で、コーヒーの残量にまで
気が回らなかった…
そんなことを考えながら、オレはコーヒーしか入っていないコンビニの袋を見る
「まァ、こンだけありゃしばらくは大丈夫だろ…」
自分の部屋に帰るために歩いていると、進行方向にいくつかの人影が立ち塞がった
「チッ!またかよ…」
以前から無謀にもオレに挑戦してくる馬鹿共は居たが、ここ最近は以前よりも数が
増えたような気がする……
338 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 20:16:20.24 ID:.DtrfgU0
(アイツに負けた事が影響してンのかねェ…)
馬鹿な奴らだ、オレが誰に負けようがオレの力自体が変わった訳じゃない…
そこらの不良程度の力でオレに勝つなんて万に一つの望みも無い
にもかかわらず、不良達はオレに向かって殺到してくる
「やれやれだ……」
いつも通り何もしなくても勝負はつきそうだ。そう思いながらオレは溜め息を
漏らした
予想通りオレが手を下すまでもなく、不良達は自分の力で自滅し、地面に転がり
呻いている
「ンッ?」
その中の一人、頭からすっぽりとフードを被った奴が血を流している
さっきの戦いの最中に発砲音のようなものが聞こえた、銃を持っていたんだろう
それを反射した時に運悪く体のどこかに命中したのかもしれない…
「オイオイ、勘弁してくれよ」
まだそれ程遅い時間ではない、周囲には何事かとこちらを窺っている者もちらほら
見える
ここで死人が出れば少々面倒な事になりそうだ
339 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 20:26:16.82 ID:.DtrfgU0
「チッ!」
舌打ちを一つし、ソイツに向かって歩き出す
(大した事なけりゃ放って帰ればいいしな…)
そう思い、傷を確認するためにソイツのフードを引きはがす
「なッ!?コイツは――ッ!?」
フードを引きはがしても、ソイツはピクリとも動かなかった…
だが、問題はそこではない
フードの下から現れたのは…
「妹達―――?」
御坂美琴と同じ顔をした少女だった
「どうなってやがンだッ!?」
超電磁砲本人ってことはないだろう…、それでも、なぜ妹達がこんなことを?
「――ッッ!?」
視線を感じ、弾かれるように顔を上げる
いつの間にかオレを取り囲むように人垣が出来ている
その光景を見た瞬間、オレの時が止まった――
妹達だ、妹達がオレを取り囲んでいる――
340 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 20:40:14.57 ID:.DtrfgU0
「うッ――!」
それを見て、胃の中身が逆流しそうになる
その理由は、オレを取り囲む妹達が一様に血にまみれていたからだ――
腕のない者、足のない者、全身血でずぶ濡れの者、もはや生きているとは思えない
状態の妹達が一様にオレを睨んでいる
(なンだよ、なンなンだよッ!これはッ!?)
吐き気を抑え込み、目の前の状況を理解しようと試みる…
気付けば周りに居た筈の人影や、地面に転がっていた不良達は消え去っている
「幻覚かなンかの類か!?」
それならばオレの能力になんの反応も無いのはおかしい、そう思い能力を使おうとする…
「!?」
能力が使えない!?
「クソッ!なンだってンだよッ!?」
「―――な――――い――」
混乱するオレの耳にかすれた声が届いた
341 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 20:51:32.24 ID:.DtrfgU0
「!!」
その声のした方向を見る。かすれたような声だったのでどの妹達が言ったのか
わからない
だが、声の主を探す行為はすぐにその意味を失くした
「許 さ な い 」
今度こそはっきりと声が耳に届いた
その声の主を見る……
ありえない光景だった、声を発したであろう個体の首には大きな穴が穿たれている…
そんな状態で声を発するなんて不可能な筈だ……
「あ……」
ソイツの傷を見て気がついた、この妹達は―――
「オレが殺した――」
オレが実験で殺した妹達だ――
342 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 21:00:30.36 ID:.DtrfgU0
「許さない」
「許さない」
「許さない」
オレの言葉が引き金になったかのように、周りの妹達も同じ言葉を繰り返す
「う、ああ――」
その言葉に思わず耳を塞ぐ、それでも声は消えない
オレの罪を責め立てる
不意に誰かがオレの足を掴んだ
「――――」
それはさっきまで倒れていた妹達だった
「お 前 が 殺 し た 」
「ウアァァァァァ!!!」
オレは駆けだす、オレを囲む妹達を押しのけて、体に血が付いても構いもせずに
ひたすらに走った、この悪夢から逃げるために――
343 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 21:11:14.64 ID:.DtrfgU0
「ハァハァ…、追って来ねェのか……?」
肩で息をしながらオレは追手がいないことを確認して安堵の息を漏らす
「ここは…、どこだ?」
必死で走っているうちに、どうやら知らない所まで来てしまったらしい
「いや、待てよ。この景色…、どこかで見た事あるような…?」
微かに見覚えのある景色に、首を傾げる
「とりあえず、部屋まで戻らねェと」
今は能力が使えない、そしてオレの体力から考えるにそう遠くまでは来ていないだろう
周りの景色もまったく覚えがない訳でもないようだし、歩いていれば道のわかる場所まで
行けるだろう…
「オイオイ、もう歩き始めて随分経つぞ?」
一向に道のわかる場所まで出ない、その事に苛立ち思わず独り言を呟く
道を間違ったのか?
だが、風景は以前まってく知らない場所ではなさそうだ
「ン?アレは……」
目の前に古びた歩道橋のようなものが見える
344 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 21:20:42.18 ID:.DtrfgU0
「コイツは…!?」
それを見て今まで感じていた違和感に気が付いた…
通りで見覚えがある筈だ…、ここは……
「学園都市じゃねェのか!?」
この風景はオレが学園都市に来る前に、最後に過ごした街の景色だ
「何がどうなってやがンだ…」
その事実を認識した事で、過去の記憶が蘇ってくる
「どうすりゃいいンだよ」
これが能力によるものであれ、それ以外の何かであれ、どうにかここから戻らなければ
「とりあえず、歩くしかねェか…」
何も考えが浮かばず、記憶を頼りに歩きだす
345 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 21:28:51.21 ID:.DtrfgU0
足がまるで自分の意志を持っているかのように動く
そこはまるで時が止まったかのように、人っ子一人いない…
同級生に殴りかかられた公園、黒服の男に銃で撃たれた建物、色々な場所を通り過ぎる
(この道は、まさか…)
自分がどこへ向かっているのか気付いた…
どうやらオレは自分の家に向かっているようだった
「なンで今さら…」
そうは言っても足が止まらない、見えない糸に手繰り寄せられるようにオレは
自分の住んでいたマンションの一室の前までやって来ていた…
346 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 21:41:56.65 ID:.DtrfgU0
見覚えのあるドア、オレが―――と一緒に暮らした最後の場所だ……
「クソッ!」
どうやらオレはガラにもなく感傷に浸っているらしい…
もし、この訳のわからない状況から抜け出す手掛かりがあるのなら、きっとこの中だろう
そう思い、ドアに手を掛ける……
その刹那、後ろからピチャピチャと水音のようなものが聞こえて来た
「!」
振り向けなくてはいけない、今は能力が使えないのだ、反射が出来ないならば
後ろから攻撃されればお終いだ
それでも体が金縛りにあったかのように動かない…
「―――…」
後ろから声が聞こえる、聞き覚えのある声…
そして自分でも思い出せないくらいおぼろげな自分の名前―――
後ろを振り向く、そこに居るのが誰かわかっている――
オレを守ってくれた人、オレを愛してくれた人
そして―――
オレが、初めて殺した人―――
347 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 21:51:27.23 ID:.DtrfgU0
「ウアアァァァア!!?」
絶叫と共に跳ね起きる
「ここはッ!?」
辺りは暗い、そのまま息が整うまで辺りを見回す
「オレの部屋…?」
目が慣れてきて辺りの状況を把握する
どうやらここは自分の部屋のようだ……
考え込んでいるうちに眠ってしまっていたようだ
「今のは、夢かよ……」
オレは溜め息を漏らす
「なんだって今さらあんな夢を?」
あの記憶はずっと前に捨ててきたものの筈だ、それを今さらになって思い出すなんて…
「チッ!アイツに負けてから調子が崩れっぱなしじゃねェか…」
立ち上がり、コーヒーを飲もうと冷蔵庫を開ける
「たくッ…、ついてねェぜ…」
冷蔵庫の中にはコーヒーが一本も残ってなかった
348 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 22:01:04.34 ID:.DtrfgU0
「買いに行くしかねェか」
そう口にした瞬間、さっきの悪夢が脳裏をよぎる
この展開は先程の悪夢と同じ展開だ…
「引き籠りじゃあるめェし、第一位が夢が怖くて出歩けないなんて、とんだ笑い草だぜ」
自分にそう言い聞かせて、オレはコンビニに行くために部屋の外に出る
オレの心配をよそに、何事もなくコーヒーを購入する事ができた
(問題はこの後だなァ…)
そして、不良達が待ち伏せしていた道へと差し掛かる
349 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 22:12:31.89 ID:.DtrfgU0
(行けるか?)
今回は不良達は姿を現さず、何事もなく通り過ぎる
「フゥ…」
思わず安堵の息を漏らす、これで後は部屋に戻れば終わりだ…
ホッとしたのも束の間、今度は後ろから何者かが尾行しているような気配がする
(気のせいか?)
尾行されていた場合に備えて、慎重に後ろを確認する
すると、布のようなものを被った人影がこちらを窺っている
(オイオイ、冗談じゃねぇぞ!?)
その外見に先程の悪夢のワンシーンが重なる
(能力は…、使えるみてェだな…)
能力を使える事を確認する
(とりあえず場所を変えて様子を見るか…)
悪夢の状況と変えるために、人通りの少ない場所まで移動しようと、進路を変える
350 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 22:21:52.38 ID:.DtrfgU0
案の定、その人影もオレについてくる
(そろそろか?)
辺りには人影もなく、周囲にはオレとオレをつけてきた奴しかいない
他に通行人がいない事を確認して立ち止まる
うしろの人影はオレが突然立ち止まったことに困惑しているようだ
そのまま方向転換し、ソイツの方へ向かって歩を進める
「!?」
ソイツはどうやら自分の存在が気付かれてなかったとでも思っていたのだろう…
オレが近づくと目に見えて慌てているのがわかった
(一体なンなンだァ?)
351 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 22:35:23.28 ID:.DtrfgU0
尾行の技術もお粗末だし、何よりもつけてきたのは一人だけのようだ
オレに挑戦する奴なら一人で来るなんてまねはしないだろうし…
いよいよソイツの間近まで迫ると、慌てるあまり、ソイツは自分の纏っている
布のようなものの端を踏みつけた
「うわぁ!?」
間の抜けた声と共にソイツが派手にすっ転ぶ
「なにやってンだよ…」
近くでみると、ソイツは思ったよりも小柄でまだ子供のように見えた
「あいたたた、ってミサカはミサカは涙目になりながら腰をさすってみる」
ソイツが顔を上げる
「!!」
その顔を見て心臓がドクンっと跳ねる
「妹達――?」
あの悪夢が蘇る…
「こんばんは一方通行、ってミサカはミサカは笑顔で挨拶してみる!」
だが、そんな一方通行の戸惑いをよそに、彼女は笑顔でそう言った…
352 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/21(水) 22:37:58.76 ID:.DtrfgU0
短いですが、今日はここまでにします。
次回の投下は週末ぐらいになると思います。
353 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/21(水) 22:42:21.11 ID:PCNCFEQ0
おっつー!ぞくぞくした
期待してる
354 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/21(水) 23:05:21.70 ID:WMzrSaMo
乙ー
次も楽しみにしてるんだぜ
355 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/23(金) 06:25:42.83 ID:dW9UyGE0
乙
佐天さんの出番がががが
356 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/24(土) 19:29:44.70 ID:OCdwXuM0
今日来るかな?
357 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/24(土) 22:04:20.68 ID:hCzZD8s0
次の投下は明日の19時からとさせていただきます。
主役以外の場面が続いておりますがあと少しお付き合いください。
今日の投下を待ってくださっていた方、申し訳ありません。
358 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/24(土) 23:01:53.49 ID:CBRW9oAO
wwktk
359 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/25(日) 00:19:22.94 ID:6UOd0ew0
きたい
360 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 18:53:41.28 ID:40W0iks0
時間になったので始めます
361 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 18:59:15.24 ID:40W0iks0
「お前…、妹達なのか?」
「そうだよ!」
オレの問いかけに彼女は元気一杯の声で答えた
「ミサカの名前は『打ち止め』って言うんだよ、ってミサカはミサカは自己紹介
してみる!」
打ち止めと名乗った少女が笑う
「打ち止め?」
妹達の名前は番号の筈だ。それに、外見も明らかに他の妹達とは違う…
だが、問題はそこではない
「それで?オレになンか用でもあンのかァ?」
なぜコイツがオレをつけるような真似をしていたのかだ…
362 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 19:12:48.42 ID:40W0iks0
「それはね、実験が中止になって調整が終わってないのに培養機から放り出された
上に、そのまま放置されちゃったから研究者にコンタクトを取れる人を探してたから
だよ、ってミサカはミサカは自分の境遇を嘆いてみる…」
なるほど、実験の中止に伴い研究員が抜けたことで研究所は人手が足りていないのだろう
「なンでオレなンだよ?お前等のお姉様やあの女にでも頼めばいいだろ?」
素朴な疑問を口にする
実験の関係者にコンタクトを取るのならオレの方が手っ取り早いだろうが、そんくらい
は超電磁砲でもできる筈だ…
わざわざ憎い相手であるオレに頼む必要はないだろう…
「でも、お姉様やあの人がどこに住んでるのかわからないし、実験の関係者に連絡を
取るならあなたの方がいいかなって思ったから、ってミサカはミサカは説明してみる」
「他をあたりな、オレはそンなことに付き合ってやるほどお人好しじゃあねェン
だよ」
妹達はもうオレとは関わらない方がいいだろうしな……
363 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 19:22:23.92 ID:40W0iks0
「でも、研究所までの帰り方もわからないし、お金も持ってないし…、って
ミサカはミサカはションボリしてみる……」
そう言って打ち止めは肩を落とした
そんな打ち止めの姿を見て、オレは今更ながらとんでもないことに気が付いた
「オイオイオイオイッ!?お前、その毛布の下になンも着てねェ訳じゃねェだろうな!?」
恐る恐る打ち止めに尋ねる
「えっ?研究所から出るときにこの毛布しかなかったから、これしか着てないけど…
ってミサカはミサカはあなたの視線に少し怯えてみたり」
どうやらコイツは本当に毛布一枚しか着ていないようだ…
「勘弁しろよ…」
もう夜だ、学園都市は治安がいいとはいえない…
そんな所にほぼ全裸のガキを放りだせばどんな目に遭うかわかったもんじゃない…
かといって超電磁砲に預けに行く訳にもいかない
「チッ!オレが面倒みるしかねェってことかァ……」
364 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 19:35:57.04 ID:40W0iks0
「どうしたの?ってミサカはミサカは怖い顔してるあなたに問いかけてみたり」
「顔は元からだ、そンなこたァいいからついて来い」
「いいの?ってミサカはミサカはさっきと正反対の事を言ってるあなたに尋ねてみる」
「どうでもいいから早くしろ、その格好のお前といるとこを他の奴に見られたら
面倒だ」
夜遅くという時間ではないが、こんな姿のガキと一緒に夜歩いているところを見られたら
あらぬ疑いを掛けられるだろう…
「とりあえず、オレの部屋まで行くぞ」
「初対面の女性をいきなり部屋に連れていくなんて、結構大胆なんだね、って
ミサカはミサカはにんまりしてみる」
「舐めた事言ってやがると放りだすぞ?」
面倒な事になった、とオレは溜め息をついた
365 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 19:48:56.06 ID:40W0iks0
そのままギャーギャーうるさいガキを連れてオレの部屋の前までやって来たのだが…
「オイオイ、どうなってンだこりゃあ?」
どうやらスキルアウトにでも荒らされたようだ…
オレの部屋のドアは壊され、部屋の中もすごい惨状だった
「うわぁー、これはスゴイ、ってミサカはミサカは絶句してみたり」
オレに恨みを持つ奴なんてたくさんいる、こんなことは今に始まったことではない…
そのまま部屋の中に入り、買ってきたコーヒーをテーブルの上に置く
「おいガキ、どうするんだ?」
「どうするって?ってミサカはミサカは聞き返してみる」
「ここは場所がわれてる、部屋を荒らした連中がまた来るかも知れねェぞ?
別の場所を探した方がいいンじゃねェのか?」
「それでも、ミサカはここにお世話になりたいかな、ってミサカはミサカは言ってみたり」
366 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 19:59:41.38 ID:40W0iks0
「なンでだよ?」
「誰かと一緒にいたいから、ってミサカはミサカは正直に言ってみる」
「ハァ?」
誰かと一緒にいたい?そんなくだらない理由でこんな危険な場所に留まるって言うのか?
しかも、その相手が自分達を殺したオレだって言うのによ…
「ダメかな?ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみる」
「勝手にしろ……」
「ありがとう!ってミサカはミサカは感謝の気持ちを表現してみる!」
そう言って、打ち止めはぴょんぴょんと飛び跳ねた
「とりあえず今日は寝ろ、明日研究所に連れてってやるから…」
オレはやれやれと頭を押さえた
367 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 20:11:08.94 ID:40W0iks0
「ところでミサカはどこで寝ればいいの?もしかして一緒のベッドで!?ってミサカは…」
「ベッドを使え、オレはソファーで寝る」
打ち止めの言葉を遮るようにそう宣言する
「うー、もうちょっと付き合ってくれてもいいのに、ってミサカはミサカはぶーたれてみる」
「うるせェ、早く寝ろ…」
オレはソファーに横になりながら打ち止めに声をかける
「わかった、それじゃあ、おやすみなさ〜い、ってミサカはミサカは就寝のあいさつを
してみる!」
打ち止めが布団を被る
(やれやれ、ようやく静かになったか…)
「あっ!先に言っておくけど、寝込みを襲うのはダメなんだからねって、ミサカは…」
「寝ろッ!!」
368 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 20:23:38.20 ID:40W0iks0
その後も打ち止めはことあるごとにオレになんやかんやと話しかけたきた
それでも、30分もすると打ち止めはスースーと寝息を立てていた
「やっと寝やがったか」
打ち止めが寝て、やっと静寂を取り戻した室内で溜め息をつく
おそらくほとんど研究所の外へ出た事がなかったため、打ち止めはこんなにも
はしゃいでいたのだろう…
「オレにとっちゃ、いい迷惑だぜ…」
静かになった室内で一人愚痴をこぼす
「でも、まァ…」
「悪くはねェ……な…」
自分で自分の言った言葉に驚いた、まさか自分がこんなことを言うなんて夢にも
思わなかったからだ
「何言ってンだオレは?いまさらオレにそんな権利なンて……」
自分の中に生まれた考えを断ちきり、天井を仰ぎ見る
オレに安息を得る権利なんてない…
それでも、今日は安らかな気持ちで眠れそうだった……
369 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 20:34:46.79 ID:40W0iks0
〜翌朝〜
「ン…?」
目の前に人の気配を感じて目を覚ます
「何やってやがンだ?」
オレはなぜか目の前にいる打ち止めにそう問いかける
「ふーん、人の寝顔は素直な表情になるもんどすなぁー、ってミサカはミサカは
エセ京都弁を使ってみたり」
どうやら打ち止めはオレの寝顔を観察していたようだ…
「ハァ、朝っぱらから下らねェことしてンじゃねェよ」
ソファーから身を起こす、アホらしくて怒る気にもならない
「ねぇ、ミサカはお腹が空いた、ってミサカはミサカは食べ物を要求する」
370 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 20:44:53.63 ID:40W0iks0
「オイオイ、泊めてもらった挙句に今度は飯かァ?どこまで図々しいんでしょうねェ、
このガキは…」
「むぅ〜、お腹が空くのはしかたないことだよ。それともあなたはミサカなんか
飢え死にでもなんでも勝手にしろって言うの?うっうっ、ってミサカはミサカは嘘泣きしながら
言ってみる」
(嘘泣きッってバラしてんじゃねェかよ…)
「わかった、わかった。冷蔵庫の中のモン好きなだけ食っていいから…」
「ホント?わ〜い!ありがとうー!」
オレの言葉に打ち止めは嬉々として冷蔵庫の方へ向かう
まァ、外泊の経験があるようには思えないし、テンションが上がってるんだろう
大目にみてやるか…
「ねぇ……」
「あン?どうした?冷蔵庫の中のモンなら好きにしていいぞ?」
「冷蔵庫の中コーヒーしかないんだけど、ってミサカはミサカは衝撃の事実を
告げてみる」
371 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 20:54:58.68 ID:40W0iks0
「そりゃ、当たり前だろ。コーヒーしか入れてねェンだから…」
むしろ、コーヒー以外のものが入ってたら逆にビックリするわ
「えー!?コーヒーだけ!?それじゃあご飯とかどうしてるの?ってミサカはミサカは
尋ねてみる」
「適当に外ですましてるなァ」
「じゃあ、外に食べに行こう!ってミサカはミサカは提案してみる!」
研究所に連れてくついでにファミレスにでも寄ってもいいか…
それにこのまま駄々をこねられても面倒だしな…
「わかった、わかった。連れてってやるよ…」
「わ〜い!それじゃあ早く行こう!ってミサカはミサカははしゃいでみる!」
「ちょっと待て。お前その格好で外に出るつもりか?」
372 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 21:05:39.24 ID:40W0iks0
「そうだけど?ってミサカはミサカは答えてみる」
「お前なァ…」
昨日は夜だったことと、人通りが少ない道を通った事で騒ぎにはならなかったが…
ファミレスに毛布一枚しか着ていないコイツと入ったら、即行で通報されかねんぞ…
「オレは性犯罪者の称号なんざ、ほしくねェぜ…」
そう言いながら、オレは部屋の中を漁り、打ち止めが着れそうな服を探す
当然だがオレの部屋に女物の服なんてある筈もなく、サイズも打ち止めには合わない
だろうが、毛布よりかはずっとマシだろう
「わー!洋服だ!ありがとう!ってミサカはミサカはお礼を言ってみる!」
「別にお前のためにやった訳じゃねェよ…。ほら、とっとと行くぞ」
373 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 21:14:24.01 ID:40W0iks0
部屋を出たオレと打ち止めはファミレスまでやって来た
「ほら、さっさと決めろ」
そう言ってオレは打ち止めにメニューを渡す
「あなたはもう決まったの?ってミサカはミサカは尋ねてみる」
「オレは朝はコーヒーしか飲まねェンだよ」
「え〜、そんなんじゃ倒れちゃうよ、ってミサカはミサカはあなたを心配してみる」
「オレのことはいいからさっさと決めろ、早くしねェと帰っちまうぞ?」
「む〜、じゃあミサカはこのハンバーグセットってのにする、ってミサカはミサカは
メニューを指さしてみる」
374 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 21:23:38.25 ID:40W0iks0
注文してから程なくして、打ち止めの前にハンバーグセットが運ばれてきた
「おいしそ〜!ってミサカはミサカは目を輝かせてみる!」
打ち止めはそう言いながらハンバーグセットをあらゆる角度から見ている
「早く食わねェと冷めちまうぞ?」
「そうだね、じゃあ、いただきまーす!ってミサカはミサカは生まれて初めて
いただきますをしてみる!」
打ち止めがハンバーグを口に運ぶ
「おいし〜!ってミサカはミサカはこのハンバーグを絶賛してみる!」
ハンバーグか……
それを見て、ずっと昔のことを思い出した
オレがまだ、一方通行ではなかった頃のことを……
375 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/07/25(日) 21:26:52.92 ID:40W0iks0
今日はここまでにします。
次の投下日時は決まり次第お知らせします。
次回は一方通行の回想、その他の予定です。
その次くらいから、本格的にバトルシーンなどを書けると思いますので
もうしばらくお付き合いください。
376 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/26(月) 02:22:51.21 ID:R9I8.EAO
乙なんだよ!
377 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/27(火) 07:35:32.16 ID:otmRRdoo
この正宗は一体どのルートのどのタイミングの正宗なんだろうか
詳しく語らないのはそれが正宗がこの世界に来た理由に繋がってるからかな
378 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/27(火) 10:29:13.45 ID:jQ2dCBw0
次は木曜に投下しますので、よろしくお願いします。
379 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/27(火) 21:36:04.81 ID:otmRRdoo
>>1
は専ブラ使わないのかな
380 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 13:41:17.78 ID:2e1R9Mko
21時頃から投下します。
381 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/29(木) 19:38:24.53 ID:HS3.WhU0
きたいたいききいたいたき
382 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 20:45:02.82 ID:2e1R9Mko
それではそろそろ始めます。
383 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/29(木) 20:48:54.96 ID:m.v6FO6o
ktkt
384 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 20:50:02.36 ID:2e1R9Mko
一方通行はごく平凡な家庭に生まれた
生まれてすぐに歩いたとか、言葉を発したなんて奇妙な出来事が起きた訳でもなく
平凡にこの世に生を受けた
彼の両親はわが子が平穏に人生を送ることを願い、そうなると信じていた
しかし、彼の運命の歯車は狂いだす
一方通行に突如として異能の力は発現したのである
385 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 20:58:30.55 ID:2e1R9Mko
異能の力を持った一方通行に、周囲からは奇異の視線が向けられた
それは次第に恐怖、そして自分達と異なる者への迫害へと変わっていった…
そして、肉親でさえも一方通行に悪意を向けた
「あんな化物、私達の子供じゃないわ!!」
家の中に母の怒鳴り声が響きわたる
ここ最近、母は毎日のようにヒステリックにがなりたてている
原因はオレの力のことで、オレだけではなく家族まで村八分のような状態になって
いることが原因だろう
「あんな化物、とっととどこかに捨ててしまえばいい!いいえ、いっそ殺して
しまった方がいいわ!」
激昂した母の口からそんな言葉が放たれる
386 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 21:06:21.16 ID:2e1R9Mko
「―――は僕の息子だ。見捨てることはできない」
母の言葉に父が反論する
父の言葉に母が更に激昂する
両親はそんな堂々巡りを毎日夜遅くまで繰り返していた
その後も父と母の意見は対立を続け、その結果、二人は離婚した
オレは父に引き取られ、生まれ育った街を去る事になった
「父さん……、ごめんなさい…」
父に手を引かれ、街を去る時
オレは父に謝罪した
父だけがオレを見捨てないでくれた…
それは嬉しいことだったが、同時に申し訳なさも感じていた
自分のせいで父は母も仕事も失い、街を追われてしまったのだから…
387 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 21:18:56.41 ID:2e1R9Mko
「お前が謝る事なんてないよ…」
父はそう言うとオレの頭を撫でた
「これは僕が自分の意志でした事なんだから…」
「でも…!」
「そんなことよりも、今日の晩御飯は―――の好きなものでいいぞ?何が食べたい?」
自分を責めるようとするオレの言葉を遮るように父がオレに問いかけた
「ハンバーグ…が食べたい…」
少しの逡巡の後、オレはそう答えた
「そうか!―――は好きだもんな、ハンバーグ…。それじゃ、行こうか?」
父がオレの手を引いて歩きだす
オレと父は親子として新たな一歩を踏み出した
そこには胸を打つような言葉があった訳じゃない
ただ、以前と変わらない親子の姿があるだけだった…
それがどうしようもなく嬉しかった……
388 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 21:28:50.76 ID:2e1R9Mko
それからのオレ達の生活は楽ではなかった
能力の事がバレれば、もうそこには居られない…
学校に行けば、些細な事で能力の事がバレてしまった
何かにぶつかる、誰かに叩かれる、そんなことでも能力が発動し、能力の事が
露見してしまった…
「なんで僕にはこんな力があるのかな…?」
こんな力無ければいいのに、こんな力があるから迫害される
この力が、自分の、父の幸せを壊してしまった…
「そんなことを言ってはダメだよ…」
俯いているオレの頭を父が撫でる
「お前の力は素晴らしいものだ、いつか他の人もわかってくれるさ」
そう言って父はオレを励ましてくれた
389 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 21:43:37.36 ID:2e1R9Mko
各地を転々とするうちに、オレは能力を隠すために学校に行かず、部屋に隠れて
生活するようになった…
能力を隠せるようになったことで、一つの所に留まれるようになり
父は日雇いではない仕事に就けるようになった
以前と同じように、父は仕事で家に居ない事が多かったが、たまにある休日には
家で仕事の書類を整理するようになった
父が部屋で仕事をしている時、オレは決まって父の傍に居た
そんなある日、机の上に置いてあるカップに目がとまった
「コレ、何?」
黒い液体の入ったカップを指さす
「これかい?これはコーヒーって飲み物だよ」
「ふ〜ん、ちょっと飲んでみてもいい?」
「はは、―――は子供だからな、コーヒーはまだ飲めないだろう」
「大人しか飲めないの?」
「そう言う訳じゃないんだが…、ためしに飲んでみるかい?」
父が目の前にカップを差し出す
その色に若干躊躇したものの、勇気をだして口を飲んでみる
「……苦い」
短い感想を漏らす、正直この味は好きになることはできなそうだ…
390 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 21:51:35.08 ID:2e1R9Mko
「そうだろう?―――がコーヒーの味を理解できるようになるのはもう少し大きく
なってからだな」
父がオレの頭を撫でた
コーヒーはマズかったが、オレは父と過ごせるこの時間がとても好きだった…
学校に行くことができないオレは、図書館などで本を借り勉学に勤しんでいた
学校と違い、注意してさえいれば能力が発動するようなことは起こらず
比較的平穏な日々だった
天性のものなのだろうか、オレは幼いながらもあらゆる学問の知識を理解することができた
オレが特に熱心だったのが医学の分野だった
いつか、オレが医者になって、沢山の人を助ければ…
みんながオレを、オレの能力を受け入れてくれるかもしれない……
その一心で、オレは勉強に励んだ
391 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 21:59:59.15 ID:2e1R9Mko
それから、いくらかの時間が流れた…
大きな異変もなく、能力が発現してから、これほど平穏な日々はなかっただろう…
「ただいま」
玄関が開く音がした
オレは父を出迎えるために玄関へと向かう
「今日は―――に良い知らせがあるんだ」
父が嬉しそうにそう言った
「良い知らせ?」
「ああ!僕達は学園都市に行けることになったんだ」
学園都市?
「それってなんなの?」
「学園都市は超能力を開発している所なんだ、そこには―――みたいな力を持った
人が大勢居るんだよ」
自分と同じような人達が?
だったら―――
392 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 22:06:24.63 ID:2e1R9Mko
「もう、いじめられないかな?」
「もちろんだ!学園都市に行けば、もう嫌な思いをしなくてすむぞ!」
もうあんな思いをしなくてすむ
それだけで胸の奥から喜びが湧いてくるのを感じた
「それともう一つ、嬉しい事があるんだ」
「もう一つ?」
「学園都市にお願いして、お前の能力開発を担当する施設で働ける事になったんだ、
これからはずっと一緒に居られるぞ」
「本当!?」
オレは思わず父に抱きついていた…
学園都市に行けば希望に満ちた生活が始まる、誰かに罵声を飛ばされるような
生活ではない
たくさんの友達ができて、父とずっと一緒に居られる……
その日、一方通行は興奮して眠ることができなかった
393 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 22:17:40.39 ID:2e1R9Mko
それから数日後
学園都市に行く日が着々と近づいていた
その日の夜、胸騒ぎのようなものを感じて、オレは目を覚ました
夜も深い時間帯のようで、物音一つしない…
もう一度寝ようとベッドに横になろうしたその時、不意に玄関のドアが叩かれる音がした
どうやら、父が玄関に向かったようだ
オレは心配になり、ベッドを抜け出すと玄関の方へ向かった
近づくと、父と誰かの言い争うような声が聞こえてきた
(誰だろう?)
あと少しで玄関という所で、部屋の中に銃声が響いた
「!!」
突然の銃声に心臓が跳ね上がる
「―――!無事か!?」
茫然としているオレの前に父さんが駆けよってくる
394 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 22:26:32.68 ID:2e1R9Mko
「う、うん」
「こっちに来るんだ!」
父さんに手を引かれ、奥の部屋へと逃げ込む
「チッ!ヘマしやがって!探せ!!」
部屋の外から複数の男の声が聞こえる
父さんが部屋の中のものをドアの前に集めてバリケードのようなものを作る
「僕達どうなるの…?」
オレは突然の事態に泣きそうになる
「心配いらない、そこのベランダをつたって、非常階段まで行ってそこから逃げるぞ」
父がそう言った次の瞬間、部屋のドアが爆発した
「うわぁッ!!」
「クッ!―――こっちへ!!」
父がこちらへ駆け寄ろうした時…
煙の中から丸い物体があらわれ、オレと父の間に落下した――
395 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 22:37:43.06 ID:2e1R9Mko
ドンッ!っと大きな音が木霊し、部屋の中を煙がたちこめる
「父さんッ!」
オレは能力があるから大丈夫だが、父はそうはいかない…
父がいた場所へと走る
医療の知識ならあるし、自分の能力はあらゆることに応用がきく
父が怪我をしていても対処できる筈だ…
そう思っていた――
「あ、ああ……」
だが、オレは父の状態を目にしてどうすればいいのかわからなかった
だって――
原型がなくなった人間のをなおす方法なんて本には書いてなかったから――
爆発の影響で部屋の中は酷い有様だ。家具は吹き飛び、壁も砕けている…
それでも、オレの立っていた所だけは無傷だった
瞬間、オレはある事実を理解した
オレと父の間に爆発物が落ち、オレはその爆風を反射した――
そして――
反射した先には、何があったのだろうか?
396 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 22:45:53.84 ID:2e1R9Mko
答えは明白だ、目の前の状況が全てを物語っている
オレの反射した爆風が――
父を殺した―――
「ああああああぁぁぁァァァァアアアアアアアア!!!!!」
「見つけたぞッ!」
武装した男達がオレの視界に入る
「殺してやる―――」
「撃てッ!!」
無数の弾丸がオレに向かって放たれる
「殺してやる!!!」
それをことごとく反射する、男達が狼狽する
「がぁぁぁァァァァ!!」
そして、オレは獣のような雄たけびを上げながら男達目がけて走りだす――
397 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 22:56:58.28 ID:2e1R9Mko
戦いはあっという間に終わった
相手は銃火器で武装しただけの人間、オレの能力の前では敵ではなかった…
「…………」
オレは夜の街を歩いていた…
父を失い、復讐する相手すら失ったオレは何をすればいいのかがわからず
まるで魂が抜けたようにふらふらと歩いていた…
しばらく歩いていると、視界に放置されたビルが飛び込んで来た
「…………」
オレは吸い寄せられるように、そのビルに入ると、屋上を目指して階段を登りはじめた
朽ちたビルの中にペタペタとオレの足音だけが響く
階段を登りきると、屋上への扉とおぼしきドアがあった
オレはそれを能力でこじ開けた
「…………」
屋上に出る
ビュウっと風が頬をなでる
オレはふらふらと屋上の端まで歩いていく
そこから下を覗き込む
かなりの高さだ、ここから飛び下りればまず助かることはないだろう…
そして――
オレはそこから虚空へ身を投げ出した――
398 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 23:03:07.78 ID:2e1R9Mko
視界が逆さまになる、風を切る音が聞こえ、地面に激突する音が聞こえた…
それでも
オレは生きていた
「…………」
反射が働き、オレは死ぬことさえできなかった―――
地面に転がっている状態のまま空を見上げる
オレはこれからどうすればいいのだろう?
行く場所もなく、父を殺した罪人であるオレだけが死ぬこともできずに生きている
どれくらいそうしていただろうか?
不意に足音が聞こえてきた
399 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 23:13:41.87 ID:2e1R9Mko
「―――――君かな?」
身を起こし、そちらを向く
そこに居たのは、スーツを着込んだ壮年の男だった
「誰…?」
聞いてはみたものの、誰でも構わなかった
オレにはもう、何もかもがどうでもよかったから…
「私は学園都市の者なのだが…」
学園都市――
その単語を聞いて心臓がドクンと跳ねた
「君達を狙っている者達がいると聞いて、君達を保護するために来たのだが…
間に合わなかったようだね…」
男が肩を落とす
「だが君が生きていただけでも不幸中の幸いだろう。君はこの後どうするんだい?」
「わからない…」
死ぬこともできないし、行く場所もない
この後のことなんて想像もつかない…
「よかったら学園都市に来ないかい?」
「学園都市に?」
「ああ、君を学園都市に入れる。これは君のお父上の願いでもあったからね…」
400 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 23:23:06.77 ID:2e1R9Mko
「父さんの…願い……」
そうだ、父はオレの力を褒めてくれた、オレの力を誇ってくれていた…
「どうかな?」
「行きます…」
学園都市に行こう、父の願いを叶えるために…
そして――
もしかしたら、学園都市にオレを必要としてくれる人がいるかも知れないから…
そうしてオレは学園都市にやって来た、学園都市にはオレの仲間がいる
もう化物扱いされないだろう、そんな希望を胸に……
だが、結論からいえば…
オレは学園都市でも化物だった―――
401 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 23:34:53.15 ID:2e1R9Mko
オレの力は学園都市でも異質だった…
みんながオレを化物のように敬遠した
オレを必要とする人間なんて、実験に参加している研究員くらいしかいなかった
仕方ないことだ――
オレみたいな奴が今更誰かに必要とされたいだなんて、都合が良すぎる…
一般の生徒等はオレを敬遠するが、研究員たちはオレに対しては表面上は
友好的だった
「――君!君のおかげで研究は順調だよ!」
実験の間の休憩時間、一人の研究員が話しかけてきた
「もうお昼だな、なにか好きなものはあるかい?なんでも用意させよう」
「ハン…、いやコーヒーが好きだ……」
402 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 23:43:00.70 ID:2e1R9Mko
「コーヒー?そんなものでいいのかい?」
研究員が面食らったようにそう言う
「ああ…」
「わかった、すぐ用意させよう」
研究員が去っていく
「ククッ、ハハハハハ!!」
笑いがこみ上げてくる、咄嗟に自分の嫌いなものを言ってしまうなんて
「そうだよなァ…」
父を殺したオレが、一人だけのうのうと生きてるなんて、幸せになろうなんて……
「そんなの、許せねェよなァ?」
403 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/29(木) 23:51:39.41 ID:2e1R9Mko
オレは罰せられなくてはならない…
父を殺した罪を死で償わなくてはならない
でも、オレは死ぬことができない、オレは父の願いを叶えなければならないから――
「簡単だ」
オレに必要とされているのは能力だけだ…
それ以外を殺す、消してしまえばいい
オレはコンピューターをいじっている研究員の所へ行く
「なァ、頼みがあるンだ…」
「えっ!?な、何かな?」
研究員は明らかに動揺した仕草で返事を返す
「オレの名前を、過去の記録を消してもらいてェんだ」
404 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/30(金) 00:00:46.46 ID:WIXyBM6o
「は…?」
あまりに唐突な要求に研究員はしばし呆気に取られる
「聞こえなかったのか?」
「いや、しかし…、それは私の一存では…」
「なら、上に掛けあえ。それができねェなら、研究には協力しねェ」
「わ、わかった。しかし、名前を消してしまったら困るんじゃないか?
名前がないと色々と不便だろう?」
それもそうだ、何か適当に考えなければ…
ふと、いい考えが思いついた
「一方通行……」
オレの新しい名前、オレの価値はこの能力だけだ
ならば、それを名前にしよう――
この能力をオレの名前にしよう―――
405 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/30(金) 00:07:20.68 ID:WIXyBM6o
「それは君の能力名では…?」
「やれ」
研究員を睨みつける
「ひっ!わ、わかった。上に掛けあってみる…」
研究員が転がるように部屋を出ていく
「さァ、始めるかァ…」
誰もが認める、認めざるおえない、そんな能力者になるために…
一方通行としての人生を―――
406 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/30(金) 00:15:51.95 ID:WIXyBM6o
・
・
・
そうやってオレは生きてきた
多くの人間を傷つけて――
そして、オレはコイツ等を傷つけた―――
「おいし〜!」
目の前でハンバーグを頬張る少女を見る
償い、なんて言うつもりはないが、早くコイツを研究所に、芳川の元に届けないと…
「ん?」
気付くと、打ち止めが手を止めてオレの方を見ている
「どうした?早く食え。食ったらとっとと研究所にいくぞ」
「研究所に行く前に、話があるの、ってミサカはミサカは切り出してみる」
407 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/30(金) 00:24:14.77 ID:WIXyBM6o
「話だァ?」
恨み事でも言うつもりか?
「チッ!言いたい事があンなら言いやがれ」
「うん、話っていうのはね。ミサカがお姉様ではなく、あなたの所へ来たもう一つの理由に
ついてなの、ってミサカはミサカは打ち明けてみる」
「もう一つの理由?」
研究所に連絡を取る以外の理由があるのか…
「それはね、一方通行、あなたに会いにたかったから、ってミサカはミサカは
言ってみる」
「何のために?」
「それはね、あなたと和解したかったから、ってミサカはミサカは告げてみる」
408 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/30(金) 00:27:28.81 ID:WIXyBM6o
キリが悪くて申し訳ないのですが、いったん終了とさせていただきます。
時間は遅くなるかも知れませんが、明日も続きを投下できると思いますので、ご容赦
ください。
409 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/30(金) 01:13:57.45 ID:0loQWsAO
乙!
待ってるんだよ!
410 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/07/30(金) 18:53:53.77 ID:xKtUhO2o
申し訳ありませんが、今日は投下できそうにありません。
数日中には投下できると思いますので、お待ちください。
411 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/31(土) 00:55:48.74 ID:KdEEgQAO
待ってるんだよ!
412 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/31(土) 08:38:46.69 ID:VELzslAo
御坂妹「知ってるぜ! お前の好きなものは、父親と死体だ!!」
413 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 20:30:43.61 ID:DVdEjuko
今から投下します。
414 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 20:35:43.22 ID:DVdEjuko
「和解だと…?」
突拍子のない申し出に面食らう
「オレがオマエ達に何をしたのか、知らない訳じゃねェだろ?」
オレは自分の都合でコイツの仲間を一万人も殺したんだぞ?
「知ってるよ、ってミサカはミサカは肯定してみる」
「知ってンなら、なンでそンな寝言が言えンだよ?」
自分たちを殺そうとした相手と和解なんて馬鹿げてる
「理由は…感謝かな?ってミサカはミサカは説明してみる」
感謝だと?
「頭がおかしいンじゃねェか?」
415 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 20:43:35.41 ID:DVdEjuko
「変な言い方かもしれないけど、あの実験が、あなたがいなければ今のミサカ達は
生まれてくることさえ出来なかったから…、ってミサカはミサカは言ってみる」
「……」
「それにあなたが、ホントはあの実験を辞めたいって思ってたことだって知ってるよ、
ってミサカはミサカは…」
「それでも、オレが妹達を殺した。その事実は変わらねェ…」
「それは…」
オレの言葉に打ち止めが押し黙る
「この話は終わりだ、早く食っちまえ、そしたら研究所に連れてってやるから、
そこでお別れだ」
一方的に話を終わらせようとする
打ち止めはそれでも食い下がろうとする
「でも――」
しかし、言葉を発する前に、打ち止めはゴンッと音を立ててテーブルに突っ伏した
416 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 20:48:54.72 ID:DVdEjuko
「オイ、どうした?」
打ち止めの顔を覗き込む
「!?」
テーブルに突っ伏した打ち止めは苦しそうに呼吸していた
「どうしたンだよ!?」
「ミサカは肉体的に未完成だから、ホントは培養層から出ちゃいけないんだけど…
なのに無理して外へ出たから…」
打ち止めが肩で息をしながら言った
「チッ!そういうこたァ早く言えよッ!とりあえず研究所に急がねェと…」
打ち止めを芳川の所へ連れて行くために立ち上がる
「その必要なない」
立ち上がったオレに声がかけられた
417 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 20:57:51.49 ID:DVdEjuko
「誰だ、テメェは?」
声のした方を見ると、白衣を着た男が立っていた
「失礼、私は芳川さんの頼みで研究所を抜け出した打ち止めを探していたんだよ」
白衣の男がそう言った
「芳川の頼み?」
「ああ、培養器を抜け出した打ち止めを自分の代わりに連れ戻してくれとね」
男が打ち止めに近づく
「もう少し早ければベストだったが、仕方ない…」
打ち止めの様子を見て白衣の男がそう言った
「ソイツは大丈夫なのか?」
「培養器に戻し、調整すれば大丈夫だろう」
418 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 21:03:18.04 ID:DVdEjuko
男が打ち止めを抱える
「私は急ぎ研究所に戻るが、君はどうする?」
「オレは…」
なにを躊躇うことがある
打ち止めは助かり、オレは打ち止めから解放される…
これでいいんだ……
オレはコイツ等を傷つけたんだから、そんな奴がコイツの傍に居ていい筈がない
「オレはいかねェよ、後は勝手にしろ」
オレはそう言い放つ
「そうか、では失礼するよ」
白衣の男は打ち止めを抱えて店を出て行った
「あばよ……、打ち止め…」
去って行くその姿を見ながらオレはそう呟いた
419 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 21:12:04.93 ID:DVdEjuko
・
・
・
「イテテ…」
キッチンで食事の準備をしている最中、昨日殴られた所が痛み、俺は情けない
声を上げる
「大丈夫、当麻?」
俺の部屋に居候しているインデックスが心配そうに声をかけてくる
「平気だよ、ちょっと殴られただけだからな」
「まったく!当麻はいっつも無茶なことばっかりするんだから。昨日だって女の子
助けたとか言って傷だらけで帰ってくるし…」
俺のもの言いにインデックスが呆れたように言った
「助けない訳にはいかないからな…」
「まあ、そこが当麻の良い所なんだけどね」
420 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 21:21:02.61 ID:DVdEjuko
「褒めても何も出ねぇぞ?」
「いつも通りおいしいご飯が出れば十分だよ!」
インデックスが目を輝かせる
「お前は…、遠慮って言葉を知らないのか?」
「ご飯以外のことでは少しは気を遣ってるよ!」
少しなのかよ、っとツッコミたかったがあえて言うまい…
「昨日だって、怪我してるんだから部屋で寝ればって言ったのにバスタブで寝るし…」
「いや、さすがに女の子と一緒の空間で寝るのはちょっと問題が…」
主に理性などの面で
「それに、俺に気を遣うんなら、まずは食べる量を減らすとかにしてほしいんですけどね」
「それは無理なんだよ!」
インデックスが即答する
「食べる量を減らしたら餓死しちゃうんだよ!」
餓死するって、俺ならインデックスの食べてる半分の量でも大丈夫だぞ…
そんな風にインデックスと騒いでいるとチャイムが鳴った
421 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 21:28:15.00 ID:DVdEjuko
「ん?宅急便かなんかか?」
玄関へと向かい、覗き穴から外を窺う
「お〜い、カミやん。僕や、ここ開けてーな」
覗き穴の向こうに見慣れた顔が見えた
「青ピかよ…」
「どうかしたの?当麻?」
もし、青ピにインデックスと暮らしてることがバレたら面倒なことになりそうだ…
「悪い!インデックス、ちょっと風呂場に隠れててくれないか?」
「どうして?」
「クラスの奴なんだよ、もしお前と暮らしてることがバレたら面倒だ」
「わかったんだよ」
インデックスを風呂場に隠れさせる
後はインデックスが見つからないように青ピを帰らせるだけだ
422 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 21:37:34.20 ID:DVdEjuko
「待たせて悪かったな、ちょっと部屋が散らかっててさ」
玄関を開ける
「そんな気遣わんでもええのに、そんじゃお邪魔します」
青ピを部屋の中に招き入れる
「それで?お前がわざわざ家まで来るなんて、なんか用事でもあるのか?」
「まあちょっと話したい事が…。それと昨日あんなことがあったばっかりやし、近くに
来たんでカミやんの様子も見よ思ってな」
「お前…、思ったよりいい奴だったんだな。ただの変態かと思ってた…」
「ちょっ!カミやん、僕のことなんやと思ってんの!?」
「冗談だよ。それで、話したいことってなんだよ?」
「それなんやけどな、まあ昨日のこととも関係があるんやけど…」
青ピの雰囲気が変わる
「なぁ、カミやん。もうあんな危ないことはやめた方がええで?」
423 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 21:47:08.98 ID:DVdEjuko
「危ない事ってなんだよ?」
「昨日みたいなことや。そこらの不良相手にするんなら止めへんけど、あんな危なそうな
奴に喧嘩売るのはやめた方がええ」
青ピがいつもとは違う、真剣な表情で俺を見る
「しかたないだろ、女の子が暴力振るわれてたんだから。助けない訳にはいかないだろ?」
青ピの言葉にそう反論する
「そんでも昨日は返り討ちに遭っとったやないか。人助けするんはええけど、カミやんが
やられたら意味ないで…」
「放っとけって言うのかよ?」
「そうは言うてないで、ただカミやんの手に負えん相手に喧嘩吹っ掛けんなってだけや」
424 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 21:57:20.50 ID:DVdEjuko
「じゃあ昨日みたいな時はどうすんだよ?」
青ピに質問を投げかける
「そら逃げるしかないんちゃう?」
さすがに我慢の限界だった
「ふざけんなッ!誰かが暴力振るわれてるのに見て見ぬ振りしろってのかよ!?」
青ピに詰め寄る
「その通りや、みんなそうしてるやないの?だいたいカミやんは昨日あの子を助けられた
か?やられとったやないの。僕達が来なかったらカミやんだって危なかったやで?」
「それは…」
青ピの言うとおりだ俺は昨日の奴に敵わなかった…
「なぁ、カミやん。僕はカミやんを心配して言ってるんやで?あんま危ない事はせんで、
今まで通り僕等と適当にやっていこうや?」
「悪い、心配してくれるのは嬉しいけど…、俺は…」
425 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 22:07:15.00 ID:DVdEjuko
「いや、こっちが悪いんや。いきなり押しかけてこんなこと言って、今日はもう帰るわ」
青ピが立ち上がる
「でもなカミやん、僕はカミやんのこと心配してるんやで?僕だけやない、土御門や
子萌先生だってカミやんが怪我したら悲しむんや。そこんとこ考えといてや」
そう言って青ピは玄関から出て行った
・
・
・
「やれやれ、損な役回りやで、ホンマ…」
カミやんの部屋を出て、そう愚痴をこぼす
「まあ、しゃあないか。カミやんにはあんまり関わってほしないしな…」
建物から出た所で、携帯の着信音が響く
「誰や?ゲッ…」
表示された番号を見て嫌な気分になる
相手は女だが、こいつからの電話を喜ぶ気にはなれない
「もしもし」
「おい、糸目野郎。仕事だ」
電話の向こうから威圧的な声が聞こえる
「はぁ…」
予想通りの言葉に、僕は溜め息をついた
426 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 22:13:33.94 ID:DVdEjuko
・
・
・
「たくっ、我ながら女々しいったらないぜ…」
研究所の前に立ってそう独り言を言う
打ち止めの様子が気になり、様子を見るために研究所まで来てしまった
幸いオレのパスはまだ生きているので、なんの問題もなく研究所に入れた
「芳川に様子を聞くだけだ…、聞いたら帰って、それで終わりだ…」
誰に言うでもなく、言い訳じみたことを呟きながら芳川の元へと歩を進める
「あら、また来たの?」
オレの顔を見た芳川が言った
「ああ、打ち止めの様子が気になってな…」
その言葉を聞いて芳川が怪訝な顔をする
「どうしてあなたが打ち止めのことを知っているの?」
芳川が戸惑うような声で返す
427 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 22:21:12.72 ID:DVdEjuko
「どうしてってそりゃあ…、昨日打ち止めに会ったんだよ。そんで今日、お前に頼まれた
って奴に打ち止めを渡して…」
「詳しく聞かせて頂戴」
オレは昨日打ち止めに会ったこと、打ち止めが突然倒れ、そこへ現れた芳川に頼まれて
打ち止めを探していたという研究員に打ち止めを引き渡したことを説明する
「まずいわね…」
芳川が考え込むように唸る
「どうしたンだよ?」
「その研究員を名乗った男、天井とつながってる可能性があるわ」
「天井だと?」
天井はこの実験に参加していた研究者だ
実験が中止になってから見かけないから、他の研究所にでも行ったのかと思ったが…
「天井がどうかしたのか?」
「天井が打ち止めに不正なプログラム…、ウィルスを書きこんだみたいなの」
428 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 22:32:05.81 ID:DVdEjuko
「ウィルス?」
「そう、ウィルス。打ち止めは他の妹達と違い特別な役割を持っているの
妹達を繋ぐネットワークの管理者、打ち止めは妹達の司令塔なの。天井はその
打ち止めを介し、ウィルスを世界中の妹達に感染させることを狙っているようなの」
「ウィルスに感染するとどうなるンだ?」
「世界中に散らばる一万人の妹達が暴走し、周囲に対して無差別攻撃を実行するわ」
無差別攻撃…、そんなことをすれば妹達は一人残らず処分されてしまうだろう…
「止める方法はねェのか?」
オレの言葉に芳川が驚いたように目を見張る
「もしかして、協力してくれるのかしら?どういった心境の変化?」
「うるせェ、オレの質問に答えろ」
「方法はあるわ、ウィルスの発動は午前零時。それまでにウィルスを解除すればいい
その方法はいくつかあるわ。まず天井を探し出し天井からウィルスの解除方を聞きだし
解除する。次に打ち止めをここに連れて来てウィルスを解除する。解除の方法は
解析中だけど、零時までには間に合うわ。そして―――」
芳川が一旦言葉を切る
「多分、これが最も確実な方法。ウィルスの媒介、打ち止めを処分することよ」
429 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 22:43:21.51 ID:DVdEjuko
打ち止めを処分、つまりは殺すってことだ…
確かにそれが最も確実だろう、見つけて殺す、ただそれだけのことだ
ウィルスを解析する必要も、ここに連れ帰る必要もない
いままで散々やって来たこと、もっとも簡単な選択肢
それなのに――
「打ち止めをここに連れてくりゃいいンだろ?そンくらい楽勝だ。そンなチキンな方法に
逃げる必要なンてねェよ」
オレはそれを拒んだ
「驚いたわね、あなたがそんなことを言うなんて…」
「うるせェ、テメェはとっととウィルスの解除方法を探せ」
オレはそう言って、部屋を出て行こうとする
「ちょっと待って」
「なンだよ?」
「これを持って行きなさい」
芳川に封筒を渡される
「これは?」
「打ち止めのウィルスを書きこまれる前のデータよ。もしこっちに戻る時間がない時は
それを他の施設の学習装置なりを使って上書きすればウィルスを解除できるかも
しれない…」
「かもしれない?随分と弱気じゃねェか?」
「うまくいく保証はないからね…、こちらでウィルスの解析を行うから午前零時には
十分間に合う筈だから。これはあくまでも最終手段、できれば使いたくないわ…」
「こンなモンまで用意して、オマエも随分とお優しいことで…」
「お互いにね?」
430 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 22:45:22.67 ID:DVdEjuko
申し訳ありませんが、少し席を外します。
2時間以内には戻ってこれると思いますのでお待ちください。
431 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/31(土) 22:47:07.14 ID:fm4GBZ.o
おk
432 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 23:27:50.47 ID:ORhynVgo
お待たせしました。再開します。
433 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 23:33:23.73 ID:ORhynVgo
「そうかもな…」
軽口をたたきあう
オレは芳川に背を向け、今度こそ部屋の外へと走り出した
街をひた走る、どんな方法を取るにせよ。打ち止めを見つけなくては話にならない
「どこに居やがるンだ」
レストランで会った白衣の男…
あの男が天井とつながっていたのならば、二人は合流している可能性が高い
そして、ウィルス発動間近の打ち止めから目を離すとは考えられない
このことから考えれば、打ち止めは天井達と一緒に居るだろう
434 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/07/31(土) 23:34:07.50 ID:OYdmKzc0
待ってたー
435 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 23:41:58.31 ID:ORhynVgo
この学園都市からは容易には出入りできない、そして行く宛てのない天井が行く場所は
そう多くはない筈だ
「頼むぜェ…、当たっててくれよ」
天井が行きそうな場所、かつ人目につかない場所…
その条件に合致する場所に向かって走り出す
そして目的の場所に到着する
量産型能力者の研究所跡地
天井がかつて研究に従事していた場所だ
「ビンゴだ」
廃墟となった研究所跡地には似つかわしくないスポーツカーの姿を見つける
車の隣では二人の男がなにかを話しているようだ
「アレは…、天井とレストランの男か…」
二人の姿を確認する
「ここで逃がす訳にはいかねェ」
零時にはまだ時間があるが、ここで逃げられれば厄介なことになりそうだ…
436 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 23:50:47.30 ID:ORhynVgo
ここで決める――
能力を使い、天井達との距離を一気に詰める
「な、なんだ!?」
「!!」
突如として現れたオレの姿に二人は異なった反応を見せる
天井は突然の出来事に狼狽しているが、もう一人の男はすぐさま懐から拳銃を取り出した
(まずは――あの男からだ――!)
男が撃った拳銃の弾が反射され、男の手にあった拳銃を砕く
「オラァ!」
そのままの勢いで男に蹴りを叩き込む
「グフッ!!?」
オレの能力で威力を増した蹴りを受けて男は吹き飛び、それきり動かなくなった
「ひ、ひぃぃ!?」
オレに気付いた天井が悲鳴を上げる
437 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/07/31(土) 23:59:34.57 ID:ORhynVgo
「アイツは、打ち止めはどこだ?」
そこまで言って、その問いが不要であったことに気付く
スポーツカーの中、座席に座っている打ち止めの姿を確認する
「オイ、ウィルスを解除する方法を教える気はあるか?」
「だ、誰がお前なんぞに!」
「そうか…、じゃあしばらく――寝てろッ!」
天井の顔を殴りつける
「ぎゃッ!?」
天井は短い悲鳴を上げその場に倒れた
「チッ!鍵が掛かってやがるな…」
車のドアは鍵が掛かっていて開かない
「こっちは急いでンだ――よッ!」
能力を使いドアをこじ開ける
「オイ、打ち止め!しっかりしやがれ!」
グッタリしている打ち止めに声をかける
438 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 00:07:34.53 ID:4CpLT8Uo
「スースー」
どうやら打ち止めは眠っているだけのようだ
「驚かせやがって…、おっと、芳川に連絡入れねェとな」
電話をかけて数コールで芳川が電話に出る
「オイ、芳川。打ち止めを保護した。そっちの調子はどうだ?」
「今、機材を持ってそちらに向かっているわ。解析はもうすぐ終わるから、時間には
余裕があるけど…、気をつけて、何者かがそっちに向かってるみたいなの」
「何者かだァ?オレがそこいらの奴に後れを取る訳ねェだろ?」
芳川の忠告を一笑する
「あなた一人ならね…、でもそこには打ち止めも居るでしょう?万が一に備えて
助けてくれそうな人を呼んでおいたわ」
「助け?誰だそりゃ…?」
そこまで言った所で、打ち止めの様子が変わったことに気が付いた
439 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 00:15:45.26 ID:4CpLT8Uo
「―――――――――――――――――――――――――」
突如、打ち止めが暗号のようなものを口走り始める
「どうなってンだこりゃあ!?」
電話の向こうの芳川に問いかける
「そんな――!まだ零時まで時間があるのに!?」
電話の向こうの芳川の慌てる声が響く
「どういうことだ!?」
「ウィルスコードの起動準備段階に入ったみたいね…」
その言葉に愕然とする
「オイオイ!まだ零時まで時間があるぞ!?どうなってンだ!?」
「わからないけど…、一つ言えることは、私がウィルス起動までにそっちに間に合いそう
もないってことよ」
440 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 00:25:58.85 ID:4CpLT8Uo
「なッ!?じゃあどうすンだよ!?」
「残念だけど…、もう手は一つしかないわ…」
心臓が跳ね上がる、そう、わかってるんだ…
もうそれしか方法がないってことに――
「一方通行、打ち止めを殺しなさい…」
「フザけンな、フザけんじゃねェ!」
ここまで来て、それしかないのかよ――
「残念だけど、それしか方法がないの。今打ち止めを殺さなければ、妹達だけじゃない
もっと多くの人が犠牲になるのよ?」
それしか方法がない、オレがやらなければいけない――
思えばオレの人生はいつだってそうだった、誰かに道を示して貰って、
それしかないって言い訳をして――
結局オレは――
「何も変えられねェのかよッ!!」
ふと、ポケットの中の封筒の存在に思い至った
「コイツなら――」
441 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 00:37:38.81 ID:4CpLT8Uo
感染前の打ち止めの人格データ、これを今の打ち止めのデータに上書きすれば、
ウィルスは解除される
「なァ、芳川?お前に貰った打ち止めのデータを上書きすれば、打ち止めは元に
戻るンだよなァ?」
「そうだけど…、機材はないのよ?どうやって上書きするつもり?」
「オレが学習装置の代わりになる」
オレの力で生体電流を操れば可能な筈だ
「なッ!?」
芳川が驚愕の声を漏らす
「そんな、無茶よ!?いくらあなたが第一位だって言ってもそんなこと……
それに多くの人の命がかかっているのよ!?そんな一か八かのかけなんて――」
「オレは――コイツを助けてェンだよ。助けられるかも知れねェのに……
あきらめるなンて、できる訳ねェだろ?」
「もし、失敗したら…、どうするの?」
オレと芳川の間を沈黙が満たす
「そん時は、死ンで詫びてでもしてやらァ…」
「そう…、なら私はもう止めないわ、一方通行、必ず成功させるのよ?」
「ハッ!オレを誰だと思ってやがる!?」
オレは、学園都市の第一位
「一方通行だぜ?」
442 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 00:47:08.00 ID:4CpLT8Uo
「頼むぜ――、オレの能力―――」
打ち止めの額に手を乗せる
コイツを救うために、力を貸してくれ―――
能力を駆使し、打ち止めの中からウィルスを消去していく
「削除…削除…削除…」
作業は問題なく進んでいく
「あと10秒で終わりだ――」
その時、嫌な音が聞こえた
「邪魔を、するな…」
天井がオレに銃口を向けている
(チッ!?もう動けるようになったのかよ!?)
今は打ち止めのウィルス消去に全演算能力を使っている――
反射にさける力なんてない!
(クソッたれがァ――!)
そして――
天井が引き金を引いた
443 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 00:54:27.25 ID:4CpLT8Uo
グチャという肉の裂ける音と、反射が発動した音が耳に届いた
「ギャア!?」
間一髪間に合った、と言っていいのかわからないが、反射が間に合い、天井の手の
拳銃が砕ける
「ぐ、ぅ――」
だが銃弾はオレの頭に命中している、頭に損傷を負ったせいで演算能力が低下している
ようだ…
オレは使用できる演算能力を傷を塞ぐことに使用する
情けない話だが、それで使用できるすべての演算能力を使い果たしている――
「上等だ…」
敵は天井のみ、しかも天井は今の反射で手を負傷し、丸腰だ…
生身のオレでも勝ち目がある
「う…ご・・くな…」
「!!」
声のした方を見る、先程吹き飛ばした男がこちらに拳銃を向けている
444 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:00:13.02 ID:4CpLT8Uo
(予備の銃を持ってやがったか――!)
「や、やれ!殺せ!!」
天井の言葉に呼応するように男が引き金を引こうとする
「チッ!!」
それを回避しようと足を動かす
だが、発砲音は響かず、代わりに男の断末魔が響き渡った
「ガッ―――!!?」
男が血を噴き出しながら倒れる
「な、一体なに――がッ!?」
今度は唖然とする天井が血を噴き出しながら崩れ落ちた
「狙撃か!?」
敵の姿は見えない、狙撃ならば次のターゲットはオレだ――
だが、次の攻撃は訪れない
そして、辺りにバイクの駆動音が響き渡った
445 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:06:16.34 ID:4CpLT8Uo
バイクが停止し、バイクから一人の少女が降り立つ
「初めまして、一方通行。あたしは番外個体、よろしくね?」
「妹達か?」
オレの言葉を聞いた番外個体が眉をひそめる
「また、それ?たくっ、あたしをあんな欠陥品と一緒にしないでよね」
コイツには違和感があるが、そんなことはどうでもいい
「天井達を殺ったのはテメェか?」
「やったのはあたしじゃないけどね、あたしの仲間」
「テメェの目的は打ち止めか?」
「そうだよ」
446 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:14:44.66 ID:4CpLT8Uo
それなら話は早い
「コイツのウィルスコードは解除した、もう暴走の心配はねェ。天井達もいない、
もう目的は済んだだろ?」
これでこの件は一件落着の筈だ
「アハハハハハ!!」
だが、番外個体が突然笑い出す
「何がおかしい?」
「いや、勝手に勘違いしてるのがおかしくてね…。まあ、あたしの目的の一つは妹達、
欠陥電気の暴走の阻止、それは間違ってないんだけどさ…」
「目的の一つ?」
他の目的があるということだろう、だが、見当がつかない
学園都市に反抗した天井の殺害?いや、それならもう終わってる筈だ…
「あたしの目的はねぇ、欠陥電気の暴走阻止と一緒に行える、楽な仕事だったんだけど、
あなたが阻止しちゃったからね。まあ結局やることは変わらないんだけどさ…」
暴走阻止と同時に行える――その言葉を聞いて背筋に寒気か走る
「あたしの目的は打ち止めの処分よ」
447 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:25:52.62 ID:4CpLT8Uo
「なンだとッ!?」
予想できる、最悪の事態だ
能力の使えないこの状況で、コイツを含める相手と戦わなければならない――
「なンで、打ち止めを殺す?コイツはテメェらの司令塔の筈だ…」
「だーかーらー、あたしは欠陥電気とは違うんだってば。何回言わせるのよ?」
コイツは妹達とは別口ってことか――
「それでもわからねェ、ウィルスを解除する確実な手段として打ち止めを殺すンなら
まだ理解できる。だが、ウィルスは解除した、それでも打ち止めを殺すってのか?」
「そゆこと、打ち止めを殺す、それ自体に意味があるんだよ」
打ち止めを殺すことに意味が?
「最近の欠陥電気はさぁ、生きる意味だとかなんとか、訳のわからないことを言いだしてさ、
その上、司令塔があんな甘っちょろいガキじゃあ、今後何しでかすかわかったもんじゃない
ってことで、打ち止めを殺して、欠陥電気の司令塔を替えて、元の従順な欠陥電気に
戻そうってわけ」
448 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:32:33.10 ID:4CpLT8Uo
「自分達にとって都合が悪くなったから殺すって言うのかよ?フザけンじゃねェ!
そんな理由でコイツを殺されてたまるかよッ!」
「アハハ!!自分の都合で殺すなって?どの口がそんなこと言えるのよ!?
あんただって散々殺してきたじゃない?自分の都合で欠陥電気を山のようにさぁ!!?」
心臓がドクンと跳ね上がる、番外個体の言うとおりだ
オレは一万人以上の妹達を殺した、そんなオレにコイツを止める権利なんてないのかも
しれない――
「それでも――」
「オレにどれだけの罪があっても――」
「今、コイツを見捨てる理由になンて、コイツが殺されていい理由になンて、ならねェ
だろうがッ!?」
449 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:40:29.67 ID:4CpLT8Uo
「殺されていい理由にはならない、か」
番外個体が口を笑みの形に歪ませる
「じゃあさ…、そいつが殺されなくていい理由はあるの?」
番外個体はそんなことを口にした
「なに…?」
「だからさ、殺されなくていい理由。あんたの言った殺される理由がないってのは、まあ
突っ込まないで上げるけど、あたしはそいつを殺さなきゃならないのよねー
だからそいつがなんで殺されなくていいか、理由がちゃんとないと引き下がれない訳よ?
まさか人権なんて言い出さないわよね?そんなのこのここでは通用しないわ、そもそも
ソレは人権なんてない造り物なんだから!!」
番外個体は心底楽しいとでもいうように笑みを浮かべる
「――――させねェ」
その時、やっと気付いた、オレがなぜこんなことをしているのか――
450 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:50:31.05 ID:4CpLT8Uo
必死になって街を駆けまわり、死にそうになってまでコイツを助けたかった理由
オレはやっと答えに辿り着いた――
御坂美琴が、佐天涙子がオレに立ち向かって来た理由―――
「―――守るから」
「ハァ?」
それはオレも昔、持っていたものだった
でも、遠い昔に大切な人と一緒に失くしてしまったもの――
「オレが守る!コイツは、打ち止めはオレが守るからッ!テメェなンぞに、誰にも殺させねェ!
それが答えだッ!!」
アイツ等を動かしていた想い、誰かを守りたいという想い――
オレはコイツを守りたいんだ――
オレに笑顔を向けてくれたコイツを―――
451 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 01:57:24.69 ID:4CpLT8Uo
「なによ、そのバカみたいな答え?いいわ、その体で守れるって言うんなら―――
守ってみなよ!?」
番外個体がオレに向かって疾駆する
能力を戦闘に使用できない今、頼りになるのは己の体のみ
(泣きたくなってくるぜ…)
それでも戦わなくては、オレの守りたい人を守るために――
番外個体に向かってパンチを放つ
「当たるかよッ!」
番外個体はそれを易々と避ける
そして、そのままオレの顎にアッパーを叩き込んできた
「ガッ!?」
体が衝撃で浮き上がるような感覚に襲われる
「シッ!」
態勢を崩したオレの頭部に強烈なフックが見舞われる
「ごふッ!?」
打撃の衝撃で弾き飛ぶ
452 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:02:26.93 ID:4CpLT8Uo
「あれだけ言っておいて、これでお終い?それはないんじゃない?」
笑いながら番外個体が近づいて来る
早く立ち上がらないと――
「まだ…、まだだ…」
ガクガクと揺れる足を押さえつけ立ち上がる
「そう来なくっちゃね♪」
立ち上がったオレの頭部に目にも止まらぬ速さでパンチが叩き込まれる
「ゲフッ――」
口から鮮血が迸る
意識が遠のいていく――
453 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:11:01.58 ID:4CpLT8Uo
「打ち止め………」
もう立ち上がる力さえ、体には残っていない…
それでも地面を這って打ち止めへと近づく
「しつこいねぇ、しつこい男はモテないよ?」
番外個体がオレを蹴り飛ばす
もはや悲鳴を上げることもできず、仰向けに転がされる
「もう時間がないからね、あんたはそこで見てな。あんたが守ろうとした奴が殺される
瞬間を…」
オレはまた守れないのか?
オレのやったことはなんの意味もなかったのか?
いや、オレのやったことに意味はあっただろう――
空に蒼い星が見えた――
「今度は……間に合ったンだな………英雄…・・・・・・・」
454 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:18:48.11 ID:4CpLT8Uo
・
・
・
事の始まりは一本の電話だった
「あれ?知らない番号だ…、誰からだろう?」
「もしもし?」
「佐天涙子さん?」
電話の向こうから、女の人の声が聞こえてきた
「どちら様ですか?」
「私は芳川桔梗、妹達の面倒を見ている者よ」
「妹達の?」
「ええ、悪いんだけど時間がない。妹達が危ないの、あなたの力を貸してくれないかしら?」
あまりにも突拍子のない申し出だ、でも、妹達の危機だというなら放ってはおけない
「……説明してください」
455 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:27:21.01 ID:4CpLT8Uo
芳川さんと名乗る人から説明を受ける
ウィルスにより妹達が危機に瀕していること
それを助けるために一方通行が協力していること
そして、一方通行達の元へ第三の勢力が近づいていること
<御堂、これは罠かもしれんぞ?>
正宗が私にそう忠告する
「罠かもしれない、でも、妹達が危ないかもしれない…。だったら答えはもう決まってる
でしょ?」
<そう言うと思ったぞ…、そういうところは前の御堂とそっくりだ>
「それじゃあ、行くよ?」
<応ッ!>
正宗を装甲し、芳川さんに示された場所に向かう
そして、現在に至る
456 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:34:49.35 ID:4CpLT8Uo
降り立った私の目に飛び込んで来たのは、車の助手席に横たわる女の子と、それに
近づこうとしている少女
そして、傷だらけで倒れている一方通行
芳川さんに聞いた打ち止めというのは車に座っている少女だろう
一方通行も敵ではない――
「あらら、もう少しで片付けられたんだけどなぁ…」
残った少女が悪意を込めた笑みでこちらを見る
「フッ――!!」
彼女を敵と認識する、生身の人間が相手だ、刀は必要ないだろう――
勢いを付けて疾駆する
「おっと!」
少女が、まるで軽業師のように華麗に後方に飛び退いた
457 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:42:40.58 ID:4CpLT8Uo
「!」
その少女の顔を見てギョッとする
「妹達?」
「またかー、まあ、今学園都市で噂の正宗さん相手なら、どっちみち自己紹介するつもり
だったんだけどね…。あたしは番外個体、出来損ないの妹達とは違う、OK?」
彼女の、番外個体のものいいにカチンとくる
「妹達は出来損ないなんかじゃないわ」
「出来損ないよ、欠陥電気て名前が全てを物語ってるわ」
そう言いながら、番外個体は私との距離を少しずつ話して行っている
<御堂、どうする?>
458 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:51:57.88 ID:4CpLT8Uo
番外個体は私から距離を取ろうとしている
つまりは逃げようとしているのだろう…
生身対劒冑では勝敗は火を見るより明らかだ
そしてこちらには怪我人と眠っている女の子が一人――
「逃げるんなら逃げなさい、あなたに興味はないわ…」
<……>
この二人の安全を優先しよう、正宗も異論はないらしく、何も言わなかった
「いいの?よかったー。さすがに生身でソレを相手にするのは不可能だもんね」
番外個体はそう言って置いてあったバイクへと近づき、バイクに手を置いた
<コードを入力してください――>
「!!?」
番外個体がバイクに触れた瞬間、機械音声が響いた
「生身じゃあ勝てない…、だから―――」
459 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:57:46.32 ID:4CpLT8Uo
「あたしも同じものを使わせてもらうわッ!!」
「模造超電磁砲(レールガン・レプリカ)」
その刹那バイクが変形していく――
甲高い音が響き、バイクと少女の姿は消え
白い鎧が姿を現した
「なッッ!!?」
<劒冑――だとォ!!?>
「さあ!第二ラウンドと行きましょうッ!!!?」
460 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/01(日) 02:59:25.67 ID:4CpLT8Uo
今日の投下はここまでです。
次回は戦闘シーンが主です。
次回の投下は完成次第となります。
それでは長時間お付き合いいただきありがとうございました。
461 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/01(日) 03:11:51.51 ID:uvRb8/kP
陰義ありの数打か
やっぱり吉野御流合戦礼法迅雷が崩しを使ってくんのかね
462 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/01(日) 13:36:32.42 ID:b.yMAv20
数打で真打ボコボコにする展開、雪車町さんを思い出すな
463 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/08/02(月) 20:26:00.18 ID:tepdPG.0
適当にage
464 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/08/03(火) 15:16:20.14 ID:IAclpKMo
明日の20時頃から投下します。
465 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/03(火) 22:59:29.34 ID:DNxkeoAO
待ってるんだよ!
466 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 19:23:15.66 ID:4Id4wvso
少し早いですが始めます。
467 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 19:29:20.54 ID:4Id4wvso
番外個体は刀を引き抜くと、獣のような声を上げながら地を蹴った
同時に白い劒冑の合当理が点火される
<来るぞッ、御堂ッ!>
正宗が警告を発する
私も腰から太刀を引き抜き、迫りくる番外個体を迎え撃つ
「ガァァアアアア!!」
雄叫びを上げながら白い劒冑が一直線に飛び込んでくる
蒼い劒冑と白い劒冑が激突した――
刀と刀がぶつかり合い、まばゆい火花を散らす
468 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 19:39:09.10 ID:4Id4wvso
突進の勢いで吹き飛ばされそうになる体を、足を踏ん張りなんとか地面に繋ぎとめる
私と番外個体はそのままギリギリと音を立てて鍔迫り合いを行う
(このまま押し切れるかッ!?)
純粋な力はこちらの方が上のようだ、私は番外個体の体を僅かずつだが押している
そのまま一気に押し切ろうと力を込めた瞬間――
番外個体が体を引いた
「―――ッ!?」
力の行き場を失くし、前のめりになった私の顔面に番外個体の拳が炸裂した
「あぐッ!!」
体が後方へと仰け反る
そこへ、追い打ちとばかりに蹴りが放たれる
469 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 19:48:19.76 ID:4Id4wvso
防ぐことはできない――
そう悟った私は、後ろに仰け反る勢いを利用し、そのまま後ろに倒れることで回避する
そして、地面に倒れそうになったところで合当理を吹かし、その勢いを利用し跳ね上がり
番外個体に斬撃を見舞う
「クソッ!」
刀が白い劒冑の甲鉄にぶつかり、ガィンという音と共に火花を散らす
番外個体は弾かれたように後ろに飛び退き、私との距離を再び離した――
今が好機、とばかりに私は番外個体を追撃する
「はッ!」
番外個体目がけて跳躍し、斬撃を浴びせようとする
「甘いッての!」
番外個体はそれを体を半身にすることでかわし、攻撃後の無防備な私に
カウンターを仕掛けてきた
470 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 19:54:06.24 ID:4Id4wvso
「グぅッ!」
刀が肩口に直撃する
斬撃自体は正宗の分厚い甲鉄に遮られているが、すさまじい衝撃が体を揺さぶる
刀を横に切り払い、反撃を試みるが
番外個体はそれを上に跳躍することでかわすと、またも遠くへ着地した――
<ええいッ!まるで猿のような奴じゃッ!!>
正宗が忌々しげに吐き捨てる
私も正宗のように悪態の一つもつきたい気分だった
471 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 20:01:14.34 ID:4Id4wvso
辛うじて一太刀浴びせることには成功したものの…
それ以外の攻防を見る限り、私の劣勢は明らかだ
攻撃を最小限の動作でかわし、的確に反撃を叩き込んでくる番外個体の動きに
翻弄されている
ここに至って、私は己の戦闘技術の拙さを痛感した
思えば、今までの戦いは正宗の力で押し切ったものばかりだ……
力押しでない唯一の戦い、一方通行との戦いでさえ、相手が戦闘に関しては
素人同然であり、素人同士の戦いで勝利を収めたにすぎない
力押しが通じない相手、なおかつ戦闘技術も上回っている相手との戦いは
想像以上に旗色が悪い
472 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 20:11:07.53 ID:4Id4wvso
「どうしたものかねぇ…」
愚痴を言っていても始まらない
どうにかこの戦況を打開する方法を見つけなくては――
<御堂、奴をなんとかして空中へと追いやるのだ。奴の体捌きも空中では力を
発揮できまい>
正宗の提案を受け入れる
地上では相手が優位――
私の力量が突然上がるなんて奇跡は期待するだけ無駄だろう…
ならば、状況を変えることで相手を引きずり下ろすしかない
473 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 20:17:40.61 ID:4Id4wvso
私も劒冑同士の騎航戦の経験はないが、それは相手も同じ筈だ
そうでなくても、このまま相手の得意なフィールドで戦い続けるよりは賢明だろう
問題は―――
どうやって空中戦に持ち込むか、ということだ……
この短い攻防の中で、私が己に不利だと感じたように
番外個体も己の優位を感じ取っていると推察できる…
一方通行との戦いの後、正宗の指導の下剣術の鍛錬に従事しているが、
まだ素人の域を脱したとは言えない
それは相手から見ても容易にわかるだろう
474 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 20:28:41.99 ID:4Id4wvso
どうする?
どうすれば彼女を空へと引きずりだせる?
答えは簡単だ――
正攻法で敵わないのなら、それ以外の手で攻めればいい―――
「正宗、私に考えがあるんだけど……」
正宗に作戦を説明する
<成程…、その方法ならばあやつを空へと追い立てることができるやもしれん>
番外個体は刀を肩に担ぐように構えたままこちらを窺っている
こちらの次の行動を警戒しているのだろう
私は戦場を確認する
番外個体の右手側にはフェンス、その向こうには森が広がっている
対して、左手側には彼女の動きを遮るものはない…
この配置ならば、私の思惑通りにことを運ぶことだできる
475 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 20:35:39.33 ID:4Id4wvso
「行くよッ!正宗――!」
機巧を発動させる、劒冑の右手首から筒が顔を覗かせる
飛蛾鉄炮・孤炎錫――
劒冑の甲鉄と仕手の体の一部を鉄針入りの爆弾に変え、放つ機巧
これを使い、番外個体を空へと追いやる――
「ギ、ィ――!」
体の一部を剥ぎ取られる感覚に歯を食いしばる
右手の照準を合わせる
番外個体にではなく、その少し左、彼女の回避ルートを塞ぐように
476 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 20:42:35.81 ID:4Id4wvso
「正宗七機巧――」
<飛蛾鉄炮・孤炎錫!!>
<DAARAAAAHHH!!>
けたたましい音を響かせて、筒から弾丸が放たれる
そして――
孤炎錫の砲弾が放たれるのと同時に――
私も番外個体に向かって駆けだした
477 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 20:52:06.57 ID:4Id4wvso
「なんだとッ!?」
番外個体が驚きの声を上げる
思った通りだ、彼女は名乗ってもいない正宗の名前を知っていた
ならば正宗の兵装についての知識も持っている筈…
私はそう考えた、そして予想は的中した
彼女は孤炎錫の威力を知っている
彼女から見て右にはフェンス、その先は森
そちらに避けるなんて愚策を彼女は取らないだろう…
左に避けようにも孤炎錫は左に放たれている
左に避けたのでは大打撃を喰らうのは明らかだ
右も左もダメとなれば、残された選択肢は上か後ろしかない
彼女は孤炎錫を避けるために宙へと飛んだ
478 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 21:01:30.68 ID:4Id4wvso
私はそれに追いすがるように前進する
常識的に考えればあり得ない行動だ、その行動は孤炎錫の直撃を受けることを
意味している
いかに正宗の甲鉄が堅固だとしても、それは自殺行為に他ならない…
目の前で孤炎錫の砲弾が爆発する
そう、爆発しただけだ―――
爆発と同時に無数の鉄針をまき散らす筈の砲弾が、爆音だけを残して四散した
これはブラフだ――
放たれた砲弾には僅かな火薬しか入っていない
「てりゃアッ!!」
刀を裏返し、空中の番外個体目がけて跳躍する
479 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 21:10:01.89 ID:4Id4wvso
「チィッ!」
すんでのところで番外個体の刀に阻まれる
攻撃は防がれたが、構わない
合当理の出力を全開にし、番外個体の劒冑ごと空へと飛び立つ
「この野郎ッ!」
かなりの高度まで上昇した所で、番外個体が私に蹴りを見舞う
弾かれた番外個体が合当理を吹かし、私の下をすり抜けるように騎航する
<逃がすなッ!御堂ッ!!>
急旋回し、白い劒冑に追いすがる
480 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 21:21:16.03 ID:4Id4wvso
<ぬぅ!!騎航速度は奴の方が上かッ!!>
正宗が悔しそうに言った
「…………」
なにか違和感を感じる
彼女は私に背を向けたまま、水平に騎航を続けている
なぜ彼女は地上に降りようとしないのだろう?
こちらの追撃を恐れているからか?
何かが胸に引っ掛かる…
<どうする?このままでは埒が明かんぞッ!?>
どうする?
正宗には遠距離攻撃の機巧が備わっているが、いかんせん距離が空いているため
命中させる自信がない…
加えて正宗に備わっている遠距離攻撃の手段はどれも己の体を削らなければならない
ような代物しかない
無駄打ちすれば相手よりもこちらが先に戦闘不能に陥ってしまう…
481 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 21:29:47.18 ID:4Id4wvso
思案しているうちに敵機との距離が更に広がって行く
「相手が地上に降りないように警戒しながら様子を――」
その時、背筋に悪寒が走った
「あれは――?」
なんだろう?
目の前の景色の一部がボヤけているように見える
その瞬間、ガキィンッっという音が耳に響いた――
「ガッ――!?」
<おあッ!?>
何が起きたんだろう?
「あれ?」
視界の上方、空が見えている筈のそこに、地上の明かりが見えた――
482 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 21:39:54.02 ID:4Id4wvso
<攻撃だとッ、一体どこからッ!?>
正宗の言葉で事態を把握する
攻撃を受けた、それも頭部に一撃を喰らったようだ
「ぅ…、正宗、損傷は?」
<案ずるな、大したことはないッ!>
頭がくらくらする、通常兵器の狙撃程度ではこれ程のダメージは受けないだろう
しかし、番外個体が攻撃してきたとは考えられない
彼女の姿は視界に捉えていたし、何よりこちらに背を向けた彼女が攻撃を行う
ことは不可能だ
「付近に別の敵は?」
考えられるのは、彼女と同じように劒冑用の兵装を持った存在
別の劒冑が存在する可能性だ
<吾の索敵探査にはあの女の劒冑の反応しかな―――!!?>
正宗の声が半ばで途切れた
483 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 21:48:36.83 ID:4Id4wvso
正面を見る、いつの間にか番外個体は転進していた
だが問題はそこではない…
番外個体は刀を鞘に納めている
「あんたにとっておきを見せてあげる…」
通信か、金打声か、仕組みはわからないが
劒冑の中に番外個体の声が響く
「あたしの レールガン を――」
番外個体の劒冑、腰に戻した刀が光を放つ―――
484 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 22:00:06.38 ID:4Id4wvso
<あれは、まさか…、湊斗景明のッ!?>
正宗が明らかに狼狽しているのが感じられる
<御堂ッ!この体勢であれは防げんッ!一旦退くのだッ!!>
正宗の様子、そしてレールガンという言葉――
私にもあの攻撃が今の状態では防ぎ切れないものであると感じた
幸いにして、距離には余裕がある
加えて正宗は低空でも速度を出すことができる、この事から撤退を決断する
せっかく空中戦に持ち込んだのに、それを放棄するのは癪だが、やむを得ない
一旦遮蔽物の多い森の中に逃げ込み、体勢を立て直す!
485 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 22:08:50.61 ID:4Id4wvso
番外個体に背を向け
地上を目指し降下する
<――!待て御堂ッ!熱源探査に反応ありッ!これは…正面だとッ!?>
正宗の声と同時に、先程と同じように視界の一部がぼやけているのを認識した
「お嬢ちゃん、悪いんやけど、もう少し僕等に付き合ってもらうで?」
飄々とした男の声が響く
なんで気付かなかったのだろう?
ここは学園都市だ、様々な能力を持った能力者がいる
重福さんのような姿を消す能力者、レベルアッパーに頼らずに自力で姿を消せる
能力者だって存在する筈だ―――
486 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 22:17:59.01 ID:4Id4wvso
レーダーを見る
後ろから番外個体の機体が迫って来ている
このまま正面からの攻撃を受ければ弾き飛ばされ、無防備な状態であの一撃を
迎え入れることになるだろう―――
何とかしなければ…、反撃まではいかずとも
この状況を切り抜けなければ…
死神の手が私の首をそっと撫でる
体中から冷や汗が噴き出す
<御堂ッ―――!!>
もう時間がない
私は一か八かの捨て身の決断をする―――
487 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/04(水) 22:21:06.96 ID:4Id4wvso
今日はここまでです。
次の投下日時は追って連絡します。
ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。
488 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/04(水) 22:22:36.44 ID:XwHLG72o
続きが気になる引きだのぅ〜乙乙、乙でした
489 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/04(水) 22:33:51.29 ID:4adSN3Mo
なんという引き際
乙
490 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/04(水) 22:44:03.72 ID:2xZUi/Ao
双輪懸で下から上へ追い縋るとかないわー
さすが無能力者と箱入剱冑
491 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/05(木) 00:48:57.67 ID:3LSXqAAO
乙なんだよ!
492 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/05(木) 01:05:44.60 ID:wdI9eeo0
おのれ重福…!
493 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/05(木) 18:29:42.73 ID:oudSlzs0
重福さん関係ないよ!
青ピはストーリーが違ったら間違いなく善悪相殺の犠牲になっていたな
番外個体の電磁抜刀の威力はどのくらいかな、本家本元には勝てないと思うが
494 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/05(木) 18:46:03.60 ID:ojhUNico
覚悟完了とか鋼我一体とか似合いそうな佐天さんだな・・・
495 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/06(金) 03:40:01.02 ID:ExsZWOA0
佐天さんは何やらしても微妙な感じがいいなwww
496 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/08(日) 09:00:14.82 ID:0BtVVZE0
夏コミに出るアンソロディスクの中身に魔王篇の村正と正宗の対決の姿が
しかも正宗が背中にでかい箱背負ってた
中身絶対ろくでもないもののような気がする
497 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/08(日) 10:59:54.66 ID:FekRp.ko
正宗七機巧の7つめだったりね
498 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/08/08(日) 22:39:26.57 ID:KhdkSgco
次の投下は12日の20時になります。
遅くなって申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。
499 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/09(月) 15:10:07.86 ID:wxKmSgAO
待ってるんだよ!
500 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/09(月) 18:00:25.78 ID:wbOTHuU0
500!
501 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/08/12(木) 19:58:26.82 ID:FMLDU8go
時間になりましたので、始めます
502 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 20:08:31.20 ID:FMLDU8go
前方から迫りくる不可視の劒冑
それの目の前で合当理の出力を切る
そして体を捩り、前後を反転させる
これは賭けだ、目の前の敵に背を向けるという自殺行為――
だが勝算はある
まず第一に目の前の敵が姿を消す能力者である、という点だ
能力は一人に一つが原則、目の前の敵が姿を消すという能力を使用している以上、
他の能力を使用してくる可能性はない……
加えて先程の攻撃の威力、頭部にヒットしたにも関わらず、それほどの損傷を
受けなかったことから、目の前の敵の攻撃が正宗の甲鉄の前では脅威になりえないと
判断する
故に、前方の敵に背を向けてでも、後ろから迫る番外個体に対処することを優先する――
503 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 20:14:47.15 ID:FMLDU8go
頼みは正宗の甲鉄の強度―――
「なッ!?」
私の行動に目の前の敵が驚きの声をあげる
ガキィィン――、と金属のぶつかり合う音が響き、背中にすさまじい衝撃が伝わる
さすがと言うべきだろう、前方の敵は突然の事態にも関わらず
己の任務を遂行したようだ……
攻撃の衝撃で前に押し出されると同時に合当理を再び点火し、番外個体と相対する
<回避は、望めぬか――>
もはや回避は望めない、真正面から防ぎきるしか道はない!
「覚悟を決めるよ、正宗……」
504 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 20:22:53.91 ID:FMLDU8go
番外個体が目の前に迫る
そして―――
「電磁抜刀(レールガン)―――!!!」
目の前に閃光が奔った
まるで雷鳴のような音を響かせて、鞘からすさまじい速度の一撃が繰り出される
「ガ――――!!」
辛うじてその一撃を受け止める
だが、その威力に受け止めた刀ごと体が弾き飛ばされ、
私はそのまま真っ逆さまに地面へと落ちていく――
505 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 20:36:25.52 ID:FMLDU8go
<しのぎ切ったかッ!?>
まだだ――
真っ逆さまに落下している私に、不可視の劒冑が追撃を加えようと接近している
<しつこい奴らめッ!>
この状態では反撃はおろか、防御すらままならない
文字通り、手も足もでない状況だ
ならば――――
「正宗ッ!」
それ以外を使えばいい
<応ッ!!>
不可視の機体が接近していることをレーダーで確認する
「正宗七機巧――」
<隠剣・六本骨爪(おんけん ろっぽんこっそう)!!!>
「ガ、ハァッ――――――」
機巧の発動と同時に、甲鉄で覆われた肋骨が私の胸を突き破る
506 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 20:46:29.45 ID:FMLDU8go
本来敵を捕獲するための機巧を、敵を迎撃するために使用する
なぜなら、このまま敵を捕獲してしまってはそのまま仲良く地面に叩きつけられて
しまうからだ
そして、六本の肋骨を使い、六ヶ所に同時攻撃をを行えばどれか一つは命中する筈……
「うわッ!?」
思惑通り、何もない筈の虚空から火花が飛び散る
「おい、糸目ッ!」
「奴さんも随分と便利な機能付けてるみたいやなぁ……」
そのまま落下し、もうすぐ地面というところで、機体の体勢を立て直す
507 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 20:59:49.54 ID:FMLDU8go
「損傷はッ!?」
森の木々の間に着陸し、正宗に被害状況を確認する
<先程の攻撃で母衣(ほろ)に損傷を負った、だが騎航に問題はないだろう>
よかった、思ったより被害は軽いようだ
<先の行動はさしもの吾も肝を冷やしたぞ……>
「ごめん……」
<奴の電磁抜刀の威力の無さに救われたな…。認めるのは癪だが、先の一撃が村正
の放つものと同等であったら吾等は撃墜の憂き目に遭っておっただろうな>
あれで威力が無いか…、だが番外個体の一撃が脅威な事に変わりはない
そして、もう一騎の劒冑も厄介だ……
補足説明
母衣:ウィングのこと
飛行の補助、姿勢制御の役割を持つ
508 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 21:09:31.71 ID:FMLDU8go
おそらく光学操作系の能力で姿を消しているのだろう
熱源探査で大まかな位置を捉える事はできるが、細かい位置、攻撃を放ってくる
角度がさっぱりわからない
この状態では反撃どころか、攻撃を捌くことすら至難の技だ……
「一体どうすれば……」
その瞬間、隣にあった木がけたたましい音を立てて破裂した
「!」
<追撃かッ!?>
509 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 21:21:53.07 ID:FMLDU8go
その場から駆けだす
敵は降下する素振りを見せず、空からは嵐の日のように電撃が降ってくる
さっきとは事情が変わってしまった
数の上での有利を得た以上、木々が多く動きを遮られる地上よりも、動きを制限されない
空の方が有利と判断したのだろう
番外個体に空でのアドバンテージも取られてしまったということだ―――
<このままでは埒が明かんぞッ!?>
正宗の言うとおり、このままではジリ貧だ
だがあの二騎を相手を同時に相手にするのは危険すぎる
どうにかして片方を撃破する、もしくは――
「片方だけを相手にする、そんな状況が作れれば……」
510 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/08/12(木) 21:27:25.41 ID:LjfICnU0
http://www23.atwiki.jp/satousan/pages/40.html
これを見ればよろし
511 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 21:31:27.61 ID:FMLDU8go
・
・
・
研究所の一室、書類を整理していると携帯が虫の羽音のような音を立てて着信を告げた
「ふむ……?」
ポケットから携帯を取り出し、表示されている番号を確認する
見たことのない番号だ
登録はされていないし、心当たりもない……
それでも出ない訳にはいかないだろう、そう思い通話ボタンを押す
「もしもし、木原です」
「木原 京君、で間違いないかな?」
携帯の向こうからそう問いかけられた
512 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 21:38:53.65 ID:FMLDU8go
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
努めて冷静に対応する
「名乗る程の者ではないさ、ただの一介の医者にすぎないよ……」
この声、どこかで聞いたことがあるような……
「悪いんだが時間がないんだ。用件だけ手短に言わせてもらうよ、佐天涙子君に危機が
迫っているんだ」
「佐天さんに!?どういうことですか!?」
暗部が動いたのか!?
しかし、彼女は依然として研究価値を有している存在
彼女を抹殺するような行動をする前には何らかの予兆があってもいい筈……
「彼女の居場所のデータは送った、彼女を助けたいと思うのなら……
どうか僕の言葉を信じて欲しい……」
そこで電話は途切れた
513 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 21:51:09.55 ID:FMLDU8go
「ちょっと!?待って下さい!!」
返事は返ってこず、携帯からはツーツーという音が返ってくるだけだった
「まず、落ち着かなくては……」
今にも駆けだしたい衝動に駆られるが、罠の可能性も考えられる
彼女はあの一方通行を退ける程の力を持っている、どんな能力者が相手でも戦える、
最悪でも逃げ切るくらいはできるだろう……
もし、彼女が危機に陥るとすれば同じ劒冑を纏った相手……
研究室のPCで検索をかける
現在存在している劒冑には、データ収集及び、位置把握のための装置が付けられている
もし、先程受け取ったデータに該当する劒冑があれば―――
514 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 22:01:26.01 ID:FMLDU8go
該当あり――
先程のデータと同じ地点、そして今まさに戦闘を行っている劒冑が存在する――
もはや疑いの余地はない
乱暴にドアを開け放ち、廊下へと飛び出す
(困った事になりましたね……)
そろそろ暗部が動き出すかもしれないとは思ってはいたが……
まさか、製造されたばかりの劒冑を持ち出すなんて
それも量産機ではなく、試作品とはいえレベル5用の特別機だなんて……
「せめて、もう数日あれば!」
一人愚痴をこぼす
いや、後数日あればと嘆くよりも、これよりも早くなかったことを喜ぶべきだろう……
515 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 22:09:23.55 ID:FMLDU8go
私は車庫に置いてある、トラックに駆け寄る
「これを彼女に届けなければ――」
急いでトラックに乗り込もうと、ドアに手を伸ばす
「こんな遅くに、そんな急いでどこへ行くんだ?京……」
ビクッと体が跳ねる
聞き覚えのある声、そして、私のことを下の名前で呼ぶ人間なんてこの学園都市に
数える程しか存在しない……
「兄さん……」
そこには私の兄、そして猟犬部隊のリーダー、木原数多の姿があった
「質問に答えろ。こんな夜遅くに、トラックなんぞ引っ張り出してどこ行く気だ?」
威圧するように私に問いかける
その手には拳銃が握られ、銃口がこちらに狙いを定めている
「早く答えろ、答えねぇなら頭をぶち抜くぞ?」
516 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 22:17:14.21 ID:FMLDU8go
「資料を運搬するためですよ、知り合いの研究員に頼まれましてね……」
「主任のお前自らか?」
兄さんが疑問を口にする
「ええ、他の者は手が空いていませんし、これは私事みたいなものですからね」
必死で言い訳を考える
「その荷台の中身はなんだ?」
「先程も言ったように資料ですよ。量が多いですし、このトラック以外に車が空いて
いなかったので、少々大きいですがこの車を使用させていただいているんですが」
「そうか」
納得したのか。兄さんが銃を下ろす
それを見て私はホッと胸を撫で下ろした
「ところで京……」
「どうやら、この研究所から新兵器が一つ消えてるらしいんだが?」
517 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 22:31:45.96 ID:FMLDU8go
サーッと顔から血の気が失せる
兄さんは始めから気付いていたんだ、このトラックに積まれているモノがなんなのか……
銃口が再びこちらに向けられる
「最後通告だ、そのトラックから離れろ、京……」
殺気のこもった目がこちらを見据える
もうダメだ……、そう思い、そこから離れようとする
諦めていいのか?
「…………」
私は何かを変えたかったのではなかっただろうか?
今までずっと打算で生きてきた、笑顔の仮面をつけたまま……
誰かを救いたかったのではなかったのか?
自分では何も変えられないと、暗部から目を逸らしてきた
(佐天さん……)
私に希望をくれた少女
(どうか、私に勇気をください)
前に踏み出すための勇気を―――
518 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 22:40:55.71 ID:FMLDU8go
トラックのドアに手をかける
「なッ!?」
兄さんが驚きの声をもらす
「こんの――、馬鹿野郎がッ!!」
乾いた銃声が数回、車庫の中に木霊する
「グッ―!」
肩と脇腹に痛みが走る
どうやら銃弾が命中したようだ
それでも、運転席に転がりこむことに成功した私は車のエンジンをかける
そのまま急発進、車庫から飛び出し、研究所を後にする
痛みに目が霞む、痛みに耐えながら夜の道をひた走る
私の目的地、常盤台へと向かって―――
519 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/12(木) 22:44:23.11 ID:FMLDU8go
今回はここまでです。
今回は設定の改変、戦闘描写の拙さが目立つ回だったとは思いますが、
大目に見てもらえれば幸いです。
次回の投下は土曜日の20時です。
次回で番外個体編も終わる予定です。
それでは
520 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/12(木) 23:51:04.18 ID:DU21TrAo
乙!
期待して待ってる
521 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/13(金) 04:53:00.11 ID:CYJxyscP
ドッグファイトは武者の恥、ブルファイトこそ武者の誉れだよ?
522 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/13(金) 19:59:33.93 ID:hrzc.0k0
さすが数多さんパねえっす
523 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 19:53:11.18 ID:Hn6aIW6o
時間になったので始めます。
524 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 19:58:55.94 ID:Hn6aIW6o
・
・
・
「……………」
私は相も変わらずベッドに横になり天井を眺めていた
「はぁ……」
溜め息を一つ吐く
「あの、どうかなさったんですのお姉様?随分と元気が無いようですが……」
ベッドに横たわりボーっとしている私の様子を見かねた黒子が心配そうに声をかけてくる
「なんでもないわよ……」
私はそう言ってプイっとそっぽを向く
525 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 20:06:45.43 ID:Hn6aIW6o
黒子の心配は嬉しい
それでも私はそれを拒絶する
助けられてばかりの自分が、これ以上誰かに助けてもらうのは嫌だったから……
これは先輩としてのプライド、レベル5としてのプライドなのかもしれない……
本当にくだらない……
「ごめん黒子……」
小声でそう呟く
わかっていても黒子の好意を受け入れることはできなかった
「お姉様――」
黒子が何か言おうとした瞬間――
ドゴンッ!という大きな音が響き渡った
526 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 20:13:41.31 ID:Hn6aIW6o
「な、なに!?」
慌ててベッドから身を起こす
「どうやら外からのようですわ!」
黒子が部屋の外へ飛び出す
私もそれに続くように部屋の外へと出る
廊下には私達と同じように部屋を飛び出した生徒が複数人いた
「どうかしたの!?」
近くに居た寮生に声をかける
「どうやら門に車がぶつかったようなんです……」
寮生が不安げに窓の外を指さす
「なんですって!?」
窓に駆け寄る
窓の外、彼女の指さした方向を見ると、門にトラックがぶつかり、煙を上げていた
527 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 20:23:10.39 ID:Hn6aIW6o
「事故、でしょうか……?」
黒子がそう呟いた
そうこうしているうちに、寮監がトラックの方へ走って行くのが見えた
「皆さん、心配はいりません。速やかに部屋に戻りなさい」
廊下に出ている私達に、寮の職員から声がかかる
「お姉様、寮監に任せておけば大丈夫ですわ。わたくし達も部屋に戻りましょう」
黒子が私の隣までやって来る
「あら?あの人は……」
黒子が寮監と話しているトラックの運転手であろう人を見て首を傾げた
528 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 20:32:49.01 ID:Hn6aIW6o
「どうしたのよ、黒子?」
「いえ、あの人のお顔、どこかで見たことがあるような……」
黒子が唸る
「思い出しましたわ!確か以前、佐天さんとお話しているのを見たことがありますの」
「佐天さんと……?」
なんだか嫌な予感がする
佐天さんはあの一件以来、暗部に関わってしまったみたいだし……
何より、あの人の様子が尋常ではないように見える
「私、ちょっと行ってくる!」
いてもたってもいられず、私は現場へ向かおうと駆けだした
「御坂さん!?どこへ行くんですか!?」
廊下の寮生を部屋に戻そうとしていた職員が、私の行動を見て制止の声をあげる
「ご心配なく、お姉様は私が連れ戻しますわ!」
そう言って、黒子も私に続いた
「あっ!待ちなさい!」
その制止を振り切り、私達は門へと走った
529 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 20:42:13.38 ID:Hn6aIW6o
「御坂、白井!?お前達何をしに来た!!」
私達の姿を見た寮監が私達を叱咤する
「あなたはッ!?」
寮監の前に居た、運転手とおぼしき人が私の姿を見て声をあげた
「ッ――!」
近くでその人の姿を見て息を飲んだ
遠くからでは気付かなかったが、彼の服は血で真っ赤に染まっていた
「御坂美琴さん、どうか、あなたの力を貸して下さい!!」
その人が私に詰め寄る
530 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 20:53:43.37 ID:Hn6aIW6o
「そ、そんないきなり言われても、なんのことだか……」
彼の迫力に押されて、思わず後ずさる
「佐天さんが危ないんです!」
「どういうことなんですの!?」
私よりも先に黒子が詰め寄った
「佐天さんは現在、暗部の製造した劒冑と交戦中なんです……」
劒冑……
佐天さんが使っている力、あの一方通行を退けるような圧倒的な力……
そんな相手との戦いに、番外個体に負けるような私が行っても足で纏いにしかなら
ないのではないだろうか?
531 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 21:03:36.02 ID:Hn6aIW6o
「でも……、私が行ったって……」
「確かに、劒冑は強力です…、同じ劒冑でなければ対抗できない…。ですから……」
彼はポケットから小型の端末のようなものを取り出し、操作した
機械音が鳴り、トラックの荷台が開く
そして、中から白いロボットが姿を現した
「これは……?」
警備ロボット?
多分、違うだろう。大きさは警備ロボットよりも大きいし、デザインも全く違う
「劒冑です……、あなたの為の……」
彼は苦しそうに肩で息をしながら説明した
「あなたなら……、いえ、あなたしかいないんですッ!どうか彼女を、佐天さんを
救ってくださいッ!!」
532 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 21:15:32.01 ID:Hn6aIW6o
「そこまでだ」
制止の声がかけられる
「あなたが何者か、いかなる事情があるのかは知らないが。御坂を巻き込むような行為は
遠慮して貰いたい」
寮監が前に進み出る
「誰かが危機に瀕しているというのならば、こちらでアンチスキルに連絡しよう」
「アンチスキルではダメなんです!」
男の人は寮監の提案を否定する
「いかなる理由があろうと、御坂を危険な目に遭わせるような真似を見過ごす訳には
いかん。御坂はレベル5といえども、まだ中学生だ。危険な場所にやる事はできない。
こちらでアンチスキルと救急車を手配する、あなたもここで安静にしていなさい」
寮監が有無を言わさぬといった風にそう言い切る
そうだ、私は中学生なんだ……
だからしょうがないじゃない……
私はレベル5である以前に中学生なんだから、誰かに負けたり、守ってもらったり
してもしょうがないじゃない?
533 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 21:29:16.96 ID:Hn6aIW6o
違う―――
そうじゃない―――
私はレベル5だ
でもそれ以前に中学生だ
それは正しい
でも、それ以前に―――
私は御坂美琴なんだ――
今此処には、私に助けを求める人とが居て、私にはその力があって……
そして、私を待っている、大切な人が居る―――
「なんだ――」
レベルなんて関係ないなんて言いながら、レベルに拘ってたのは私の方じゃない……
「馬鹿みたい―――」
レベルが上だから守る、そんな理由なんて必要なかったんだ
友達だから――
それ以外の理由なんて必要なかった
私は歩み出る、そして荷台の上のロボットに近づく
534 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 21:40:33.17 ID:Hn6aIW6o
「これは、どう使えばいいの?」
男の人に問いかける
「設定は済んでいます、機体に手を当てて、能力名を言えば装甲できる筈です……」
「わかったわ……」
ロボットに手を当てる
<コードを入力してください――>
「待て御坂!何をする気だ!!」
寮監が私を制止する
「ここは私達に任せて部屋へ戻れ!子供が出る幕じゃない!」
「すみません、でも、行かないといけないんです」
「それは……、レベル5だからか……?」
寮監が私に問いかける
「いいえ……」
「友達だから―――」
「超電磁砲―――」
能力名を唱える
ロボットが四散し、私の体を覆う
さあ、行こう
小難しい理由も、レベル5だからなんてプライドも必要ない
ただ私の大切な友達を助けに行こう―――
535 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 21:50:22.79 ID:Hn6aIW6o
「御坂……」
寮監が息を飲む
「お姉様」
黒子が何か言いたげに私を見る
「ごめん、黒子、何を言われても、これだけは譲れないわ」
「ふぅ……」
黒子が溜め息を吐く
「お姉様が頑固なのは今に始まった事ではありませんからね……、それに」
黒子が笑う
「わたくしも同じ気持ちですから」
「黒子……」
「わたくしも同行致しますわ」
「それは……」
私はこれがあるからいいけど、黒子は生身だ……
「そんな心配そうな声を出さなくても、無茶は致しませんわ」
536 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 21:57:43.48 ID:Hn6aIW6o
「佐天さんの場所は?」
「そちらにデータを入力してあります。どうか、佐天さんをお願いします……」
彼はそう言って、頭を下げた
「言われるまでもないわ!行くわよ、黒子!」
黒子に呼び掛ける
「待て御坂、白井!話はまだ――」
「すみません、お叱りは後で受けますから……」
私はそう言って空へ飛び立つ
黒子が私の後を追うようにテレポートでついて来る
レーダーに表示されている目的地へと急ぐ
「待ってて、佐天さん――」
537 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 22:10:52.67 ID:Hn6aIW6o
・
・
・
「クッ!」
あの後、森から追い立てられた私は、せめてどちらか片方だけでも撃墜しようと
空中戦に応じた
だが番外個体、そしてもう片方の仕手共にかなりのレベルの戦闘技術を有している
らしく、正面からのぶつかり合いでは決定打を与える事ができていない……
<正面に反応ッ!!>
そして問題はこれだ……
武者同士の戦闘では高い位置から駆け下りる運動エネルギーを利用して攻撃すること
が基本となるため、一度ぶつかり合った後は上昇し、高度を稼がねばならないのだが、
もう一騎がそれを妨害しうまく高度を稼ぐことができないのだ
538 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 22:20:49.86 ID:Hn6aIW6o
「このォッ!!」
目の前から来る不可視の劒冑の攻撃を防御に徹することでしのぐ
そこへ高度を取り戻し、旋回してきた番外個体の攻撃が加えられる
「つゥッ――!」
体勢を立て直し、旋回する
<ええい!小賢しい奴らめ!御堂、さすがにこれ以上の損傷は危険だぞッ!!>
「これはッ――!」
旋回しようとしたところでレーダーが新たな反応を捉える
<新手かッ!!?>
「クッ!」
また敵の増援?
これ以上はさすがにマズイ……
新しい反応のあった方向を見る
遠くから番外個体の劒冑によく似た白い劒冑が飛んでくる
「佐天さんッ!」
「えっ?」
御坂さんの声で通信が入った
539 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 22:29:10.99 ID:Hn6aIW6o
「御坂さんッ!?」
「助けに来たわ!」
どうやら新しく現れた劒冑に乗っているのは御坂さんのようだ
「!」
地上を見ると、スポーツカーの隣に白井さんの姿を見つける
「白井さんまで!?」
私は慌てて白井さんの傍に降り立つ
「二人ともどうしてここへ!?」
「事情は後で、この戦いを切り抜けてからにしましょう?」
御坂さんがそう提案する
確かに御坂さんの言うとおりだ
理由はどうあれ、こちらに劒冑が一騎加わったことに変わりはない
だが―――
「白井さん……」
装甲している御坂さんはまだしも、生身の白井さんを戦わせる訳にはいかない――
540 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 22:36:40.61 ID:Hn6aIW6o
「生身であいつらと戦うのは無謀です、白井さんはここから離れて下さい」
白井さんにそう告げる
「残念ですが、そうするのが賢明のようですわね。わたくしも佐天さん達の戦いに
参加した所で足で纏いになるのは承知しておりましたから……」
白井さんが目を伏せる
「じゃあ、どうして……」
わざわざこんな危険な所にまで……
「私の能力の使い道は戦い以外にもありますのよ?」
白井さんがスポーツカーの方を見る
そこには倒れている一方通行達の姿があった
「怪我人を連れて離脱しますわ、お二人とも、どうか無事に帰って来てくださいまし!」
白井さんはテレポートすると、打ち止めと一方通行を抱えて姿を消した
541 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 22:46:57.54 ID:Hn6aIW6o
「行かせてよかったのかよ?」
地上に降り立った番外個体が不満げに言った
「まあ、イレギュラーにやすやす手出すのは危険やし、正宗の方もこっちへの警戒は
解いとらんかったし、なにより一方通行を巻き込んだらかなわんしな……」
「打ち止めにも逃げられたんだけど?」
「なぁに、後で僕がサックリ殺りに行くから心配しなさんな」
飄々とした声で不可視の劒冑の仕手らしき男が言った
「あれ?この声って……?」
御坂さんが困惑したような声で呟いた
「なぁ、ときに番外個体。あの新しい劒冑に乗ってるんわ……」
「お姉様みたいね」
「あちゃー、やっぱりかいな……」
男が頭を押さえるようなジェスチャーをする
「どうするかなぁ」
「どうするもこうするも、殺しちまうしかねェだろ?」
どこか嬉しそうに番外個体が言った
542 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 22:54:31.01 ID:Hn6aIW6o
「おいおい、相手はレベル5やで?」
「あたしが負けるとでも?」
番外個体が殺気を放つ
「ちゃうちゃう、研究価値の点が問題なんや。レベル5殺ってもうたら面倒やで?」
「問題ないね、あたしが代わりになればいいだけの話さ」
自信満々に番外個体が言い切る
「つー訳で、お姉様はあたしに任せな」
「でもなぁ……」
「テメェから殺されてェのか?」
「はぁ…、ええけど、僕だけじゃあ正宗は倒せへんで?」
「足止めだけで十分よ、すぐに片付けるからさ。それにあんたじゃどっちの相手しても
足止めくらいしかできないでしょ?」
「了解……」
溜め息をつくように男が言った
543 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 23:06:44.55 ID:Hn6aIW6o
「そういうわけで、あなたの相手はあたしよ、お姉様?」
番外個体が御坂さんの方を向く
「あんたは、番外個体……」
御坂さんがそう呟いた
「御坂さん!」
番外個体の口ぶりから、相手は二手に分かれて戦うようだ……
「相手は番外個体ともう一人、姿を消す能力者です」
「姿を消す能力者?どうりで姿が見えないと思った……」
どうする?
番外個体はこの四人の中で最も戦闘技術に長けている、加えて電磁抜刀という必殺技
まで有している
それの相手を御坂さんにさせていいのだろうか?
かといって、姿の見えない敵を押しつける訳にもいかない……
544 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 23:14:05.76 ID:Hn6aIW6o
「まどろっこしい!そっちから来ねェならこっちから行くぜ!?」
番外個体が電気を帯びる
そして、私と御坂さんの間に電撃を放った
「クッ!!」
それを回避するために跳躍する
「行くぜェ――!?」
番外個体が御坂さんに突進する
御坂さんもそれに応じる
二人は切り結びながら上空へと駆け上がって行く
「御坂さんッ!」
「余所見したらダメやで?君の相手は僕なんやから!」
545 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 23:25:42.55 ID:Hn6aIW6o
・
・
・
「クッ、佐天さん――」
「他人の心配してる場合かよッ!?お姉様ァ!!」
番外個体の一撃で吹き飛ばされる
「こんのぉ!」
旋回し、再び正面相撃(ヘッドオン)の状態に持ち込む
「あんたはどうしてそんなに私に突っかかるのよ!?」
彼女が他の妹達とは違う、それは明らかだ
だが、それだけでは彼女がこれ程までに私に敵対心を抱く理由がわからない
「ハッ!そんなの決まってんだろ!?あんたが憎くて憎くて堪らないからさッ!!」
正面からぶつかり合い、その衝撃で弾かれる
546 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 23:41:07.43 ID:Hn6aIW6o
心臓がドクンと跳ねる
「どうし―――」
「どうして?なんて聞くなよ?」
私の思考を読んでいたかのように番外個体が言葉を遮る
「テメェの勝手であたし達を造り出して、テメェは御山の大将気取り。中学2年でレベル5
になったくせに、私は特別じゃない、なんて抜かしやがる!」
堰を切ったように番外個体が語りだす
「特別な人間のくせに、自分はそうじゃないって言いやがる!テメェにわかるか!?
それを見るあたし達の気持が、石ころの気持ちがわかるのか!!?」
旋回した番外個体が迫って来る
「でも、あんた達だって努力すれば……!」
それに対抗するように、口を開く
「ハハッ!普通の人間ならそれで納得できるかもしれないねェ。可能性があるかもって
言えば引き下がる事もできるかのなァ……」
「でも、あたし達は違う、造られた欠陥品だから、人形だから、規定された性能しか
備わってないから……」
「あたし達は、あんたの劣化コピーにすぎない、出来損ないだから―――」
547 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/14(土) 23:54:20.06 ID:Hn6aIW6o
番外個体の正面からの一撃をもろに肩口に喰らう
「ぐぅ――!」
肩に激痛が走る
そして、それと同じくらい、番外個体の言葉が胸を抉る
「でも、あたしは違う!劣化コピーの、欠陥品じゃないんだよ!石ころなんかじゃないんだよ!
あたしは選ばれたんだッ!ミサカミサカ言ってるアイツ等とは違う、宝石になれるんだよッ!!」
番外個体が叫ぶ
「でもまだダメだ、欠陥品から抜け出しても、皆はあたしのことを模造品だって、ガラス玉
だって言いやがるッ!!」
番外個体が上空から降下してくる
「あたしはなりたいんだよッ!本物の宝石に、誰もが目を奪われる、誰もが認めてくれる、
そんな輝く存在に……!テメェを殺して、あたしが、本物の超電磁砲にッ!!!」
番外個体が目前に迫る
番外個体の苦悩、妹達の悲劇……
それを生み出してしまったのは他ならぬ私自身だ
彼女には私を裁く、殺す権利があるのかもしれない……
548 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 00:03:33.26 ID:69c8bcQo
それでも――
「私はここで死ぬわけにはいかないッ!!」
番外個体を正面から迎え撃つ
「私を待っている人がいるから、私の為に戦ってくれている人がいるから、
私にも守りたい人がいるからッ!!」
全身全霊を込めて番外個体に打ち込む
「ガはァ――!?」
私の一撃が番外個体を捉える
そしてそのまま高度を得るために上昇する
「テメェェェェ!!」
番外個体が激昂する
「これで、真っ二つになりやがれェ!!!」
番外個体が鞘に刀を戻す
「あれは――」
電磁抜刀――
鞘と刀身の間に磁力反発を発生させ、打ち出す神速の一撃……
549 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 00:15:04.80 ID:69c8bcQo
この劒冑でも放つことができる、必殺の一撃
おそらく、あの男の人が用意したのであろう、この劒冑を装甲した時に起動した
ガイドに記されていた
問題は……
私にあれが制御できるかということ……
「やるしかないか……」
刀を鞘に戻す
そして集中する
鞘の中に磁力反発を発生させる
バチバチという音が耳に届く
そして―――
「死ねェェェ!!超電磁砲ッ!!!」
「はァァァァ!!!!!」
「「電磁抜刀ッ!!!」」
それを番外個体に放つ――
550 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 00:26:00.85 ID:NlS.sQ2P
剣術の心得のないただの中学生に禍真似されたら景明さん泣いちゃいそうだな
551 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 00:29:07.70 ID:69c8bcQo
「ガァアアアアアア!!!!!」
「はああぁああああ!!!!!」
まるで落雷のような音を立て刀がぶつかり合う
力は拮抗している――
私達の劒冑は、弾かれあった
「チィッ!!」
舌打ちし、番外個体が旋回行動に入る
おそらく、電磁抜刀の威力自体はこちらが上だった……
にも関わらず、なぜ番外個体を押しきれなかったのか?
その理由を私は理解している
それは、私が電磁抜刀を放つより僅かに早く、番外個体が電磁抜刀を放ったことだろう
552 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 00:34:54.20 ID:69c8bcQo
補足説明をしますと、二人の放っている電磁抜刀は剣術と組み合わせている禍(まがつ)
とは違い、ただ磁力反発を利用して打ち出しているだけという設定です。
そのため電磁抜刀のあとに禍と入れませんし、威力も禍には及ばないという設定です。
553 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 00:36:28.48 ID:NlS.sQ2P
そうか、禍だと相手が剱冑だろうと関係なく必殺しちゃうしな
554 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 00:45:14.33 ID:69c8bcQo
番外個体はレベル4相当の能力者だと思われる
おそらく私の力の流れを読んで、電磁抜刀を放つタイミングを把握できるのだろう
それならば私にも同じことができる
問題は彼女は力の流れを把握した瞬間に行動に移った、これは戦闘慣れした彼女だからできる
反射のような行動だろう……
それに対し、私は力の流れを認識してから行動に移す際に僅かなラグが生じる
これは大した時間ではない、コンマ以下ぐらいのラグでしかない
しかし、電磁抜刀の神速の世界ではそのコンマ数秒が決定的な違いとなる
彼女は私の一撃の力が乗り切る前に、万全な状態の一撃を当てることができるのだ
555 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 00:57:45.40 ID:69c8bcQo
番外個体が旋回してくる
今度は電磁抜刀ではないようだ、刀を抜き放った状態で向かって来ている
「この――!」
電磁抜刀への対策は後回し、目の前の敵を迎撃する
「!?」
番外個体の体が電気を帯び始める
(なに?)
私に電撃で攻撃を仕掛けようとでもいうのだろうか?
556 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 01:06:02.81 ID:69c8bcQo
私には電気系統の能力は効かない、あの程度の電撃ならば避けるまでもない
逆に手痛い一撃を叩き込んでやる!
番外個体に肉薄する
「くらいなッ!!」
番外個体が電撃を放つ
「そんなの効かなッ――!?」
電撃は確かに効かなかった……
だが――
電撃の発光で視界が遮られた!?
「地獄へ墜ちろッ!超電磁砲!!」
頭部に一撃がクリーンヒットする
「がはッ!!?」
機体の制御を失った私はそのまま高度を失っていく
「ぐぅッ!」
なんとか制御を取り戻すが、かなり低空まで落ちてしまった
これでは依然上空に陣取っている番外個体を相手にするには不利だろう……
557 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 01:14:47.95 ID:69c8bcQo
私がこのまま地上に降りれば、二対二という構図上、番外個体も地上に降り立つしか
ないだろう……
そう思い、私はそのまま地上に降下した
・
・
・
ガキィィンと私の刀が虚空で何かとぶつかり合い火花を散らす
「姿が見えないってのはホントに厄介ね!」
レーダーによる位置確認により大まかな位置を特定できること、そして地上での戦闘で
あるということが有利に働き、何発かに一回は相手に攻撃を防がせることに成功している
しかし、相手の攻撃を避けることは難しく、攻撃を避ける事は考えず損傷を最小限に抑える
という戦法でしのいでいる
<くそッ!このままでは奴らの思うつぼではないかッ!!>
正宗が歯がみする
558 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 01:24:29.19 ID:69c8bcQo
正宗の言うとおりだ、このままでは私もジリ貧だし、御坂さんが番外個体に敗れるような
ことになれば状況はさらに絶望的になる……
そう考えていた時、後方に御坂さんの劒冑が降りてきた
「御坂さ――!」
レーダーを見る、敵が私に攻撃を仕掛けようとしている
「くッ!」
それを距離をとり避ける
「御坂さん!大丈夫ですか!?」
「なんとかね……」
御坂さんの劒冑は頭部、そして肩に損傷を負っていた
「やれやれ、まぁた振り出しか」
御坂さんに続くように番外個体の劒冑も地上に降り立った
「そんなことないで、こっちの戦果は大したことないが、超電磁砲のお嬢ちゃんの劒冑は
損傷を負っとる、このままなら押し切れるで?」
559 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 01:30:41.70 ID:69c8bcQo
幸い御坂さんとの距離は離れているため、先程のような攻撃を喰らうことはないだろうが
状況は好転していない
ここは私が番外個体に決死の攻撃を仕掛けるしか道はないだろう……
「御坂さん、ここは番外個体を私に任せてくれませんか?」
「ダメよ!あいつは電磁抜刀の他に目くらましとかも……」
そこで、御坂さんは言葉を切った
「御坂さん?」
「ねえ、佐天さん」
沈黙の後
「もし、姿が見えない奴の姿を見えるようにする事ができたら……
仕留めることはできる?」
そんなことを口にした
560 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 01:36:27.97 ID:69c8bcQo
<無論可能だッ!あのような姑息な手さえなければ、一息に仕留めてみせようぞッ!>
私の代わりに正宗がそう答える
「何か方法があるんですか?」
「うん、私に作戦があるの……」
御坂さんが私達に作戦を説明する
「わかりました、敵の位置データはこちらから送ります……」
あの二人に対抗できるのはこの作戦しかない……
後は……
「お願いします、御坂さん!」
「任せて、佐天さん!」
互いを信じて己の役割を実行するのみ!
561 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 01:45:13.72 ID:69c8bcQo
「勝負よッ!番外個体!」
御坂さんが番外個体の前に歩み出る
「ハッ!さっき逃げた奴が勝負だァ?笑わせんなッ!」
番外個体が御坂さんを挑発する
「あら、逃げるの?」
負けじと御坂さんも言葉を返す
「チッ!糸目、テメェは邪魔んならねェように、アイツを足止めしとけ……」
挑発を返され、不快そうに舌打ちした番外個体がそう指示を飛ばす
「へいへい、ホンマ人使いあらいわ……」
御坂さんが刀を鞘に戻す
「始めから全開って訳ね」
それに倣い、番外個体も刀を鞘に戻す
これで作戦の条件は整った……
562 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 01:58:06.79 ID:69c8bcQo
御坂さんと番外個体が鞘に能力を纏わせる
そして、不可視の劒冑が私に向かって疾駆する
「つぅッ――!」
私はそれを受け止める、反撃をする必要はない
私の仕事は、ただ、この劒冑の動きを止めるだけでいい
「今です!御坂さんッ!!」
「了解ッ!!」
こちらを見ずに、御坂さんがこちらに向かって電撃を放つ
電磁抜刀に集中しているため、大した威力ではなく、狙いも定まっておらず
そのまま私達の近くの地面に落ちた
地面を伝った微弱な電流が、私達の体にも伝わる
だが、それは到底ダメージを与えるようなものではない
「なんや?ただのこけおどしかいな?」
男が鼻で笑う
「糸目ェ!!」
私達の意図を理解した番外個体が男に警告を送る
「なッ!!?」
男が驚愕の声を上げる
「こりゃあ、まさか!?」
そう、地面を伝った電気は私達の劒冑に流れ―――
その輪郭を浮かび上がらせる―――
563 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 02:06:09.42 ID:69c8bcQo
「僕の姿が!!?」
「ソイツから離れろッ!糸目ェ!!!」
微弱な電流を纏い、おぼろげながら位置を肉眼で確認できるようになった不可視の劒冑
が空へと逃げようとする
「逃がすかァァァ!!!」
この微弱な電流はすぐに消えるだろう
つまり、今しかチャンスはない!!
「正宗ェエエエエ!!!」
<応ッ!!!>
「正宗七機巧ッ!!!!!」
<割腹・投擲腸管ッ!!!!!>
「ギッ、がアアアアアアアアアアアア!!!!!」
私の腹部を切り裂いて発射された甲鉄化された腸が敵機を絡め捕る
564 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 02:16:19.19 ID:69c8bcQo
「「なぁッ!?」」
二人の敵がそのあまりに非常識な攻撃に絶句する
「余所見してんじゃないわよッ!!」
御坂さんが番外個体に突進する
「あ――――――」
番外個体が我に返る
そして理解した、戦闘中に我を忘れたという愚行、この僅かなタイムロスがこの戦いの
勝敗を分かつものだったということを……
「「電磁抜刀ッ!!!!!!!!!」」
それでも番外個体は認めない、己の敗北を認めない、最後の一瞬まで否定する!
565 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 02:24:23.40 ID:69c8bcQo
「オオオオオオオオオ!!!!」
番外個体が雄叫びをあげる
しかし、電磁抜刀を放ったタイミングは同時―――
ならば――――
御坂美琴が負ける道理などない!
「ああああああああああああ!!!!!」
番外個体の刀が宙を舞う
「グッ!アアアアアアアアアアア!!?」
御坂美琴の電磁抜刀が番外個体の劒冑ごとその身を切り裂いた
「あ―――――」
番外個体の体がよろめく―――
「なりたかったなぁ……、宝石……………」
番外個体はそのまま地面に倒れ込んだ
566 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 02:36:01.94 ID:69c8bcQo
「グ、ギ―――――――」
多少の痛みには耐えられると思ったが、これはキツイ……
何せ自分の腹が真一文字に裂かれているのだ
これは正気の沙汰ではない
気を抜いたら気絶してしまいそうになる
<御堂ッ!気を確かに持て!吾がついておるぞッ!!>
正宗が私を励ます声を送って来る
その言葉を支えに、なんとか痛みに歯を食いしばり、耐える
腸が私の体の中に少しずつ戻って来る、それと同時に腸に絡め取られた敵機も
近づいて来る
「ま、さ――むね」
「ここで…、仕留めるッ!!」
<――ッ!応ッ!行くぞッ!!>
「正宗七機巧……」
<朧・焦屍剣ッ!!!>
「ぐぅぅぅるぅあああああーーーー!!」
567 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 02:45:16.01 ID:69c8bcQo
手に握った太刀が超高温に熱される、手が炭化し、手の甲鉄が太刀と一体化する
構わない、ここで仕留めれば、そんな事はすべて些事にすぎない!
「ぐぅぅああああ―――!!」
<DIEDARAAAAAA!!!!>
引き寄せられた敵機に超高温の太刀を突き立てる
「ごふッ!?」
敵機がその痛みにもがく
「こんなとこで…、死んでたまるかいなッ!!」
敵機が足を装甲の開いた部分にひっかけ思いっきり踏ん張った
「ギィ、アアアアアアアアアアアアアア!!!!!???」
劒冑のすさまじい力で腸が引き千切られそうになる
568 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 02:51:35.22 ID:69c8bcQo
とんでもない激痛に頭が真っ白になる
それでも逃がしてなるものかと歯を食いしばる
<これ以上は無理かッ!!?>
敵機を束縛していた、腸がするりと解ける
「は、あ――――」
私はその場にガクンと膝をつく
「ゲフッ、番外個体は、やられてもうたか……、しゃあないなぁ……」
男はそう呟くと、明かりの灯った街を目指して飛翔した
「待ちなさいッ!!」
御坂さんが追撃をしようとする
<待て、御坂殿ッ!!奴は姿が見えぬからよいが、御坂殿が行けば街は大混乱に
なるぞッ!!?>
それを正宗が制止する
569 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 02:58:35.09 ID:69c8bcQo
「佐天さんは!?佐天さんは大丈夫!!?」
「はぁはぁ、はい、なんとか……」
まあ傷は治るし、命があれば大丈夫と言っていいだろう
「大丈夫な訳ないじゃないッ!血塗れじゃないの!?すぐに病院に……」
御坂さんが大慌てで携帯を取り出そうと奮闘している
<すまぬ、奴に逃げられてしまったな……>
正宗が謝罪する
「いいよ、とりあえず。この場は切り抜けられたんだし……」
この場は無事に切り抜ける事が出来た、こちらに犠牲者はいないし、諸手を挙げて
喜ぶことのできる成果だろう
しかし……
<まさか、この世界で吾以外の劒冑を見ることになろうとは……>
そう、敵は劒冑まで持ち出して来た
どうやら私が思っていた以上に暗部は厄介な相手のようだ
それでも……
「負けられないよね……」
私は敵が去って行った空を見ながらそう呟いた―――
570 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/15(日) 03:03:10.21 ID:69c8bcQo
今日の投下はここまでとします。
長時間お付き合いいただきありがとうございます。
今回のような少しグロ要素がある時は注意書きを入れた方がよいでしょうか?
ご意見いただければ幸いです。
今回で番外個体編も終わり、次は番外個体戦後を書いた幕間、及び、今後の敵役の紹介でも
ある暗部編を投下する予定です。
それではここまで読んで下さった方々、本当にありがとうございます。
571 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 03:08:09.02 ID:Jd1TSW20
乙
572 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 05:02:11.71 ID:KADGjwAO
乙なんだよ!
次も楽しみにしてるんだよ!
573 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 06:51:00.15 ID:C8WEv.AO
乙であった、御堂!!
574 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 13:48:58.08 ID:fq3acoAO
腸がどうのこうのって、イメージ湧かないから特に注意書きはいらないんじゃん?
575 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 14:39:06.70 ID:K5/BfWMo
俺は十分に湧いたよ。
自分の腹を掻っ捌かれて内臓がずるずるとこぼれ落ちてって
それが徐々に金属になってくイメージ。
佐天さんの腕がもげたり腹を切られたりってのは自分にとっては衝撃的なので
注意書きを入れてもらえるとありがたいです。
576 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 15:52:51.01 ID:Vmtc0S.0
ここまでしてやっとこさ敵を少しの間捕らえられるという段階までというのが哀れで佐天さんの今後が心配でならない
しかし面白いのもまた事実で悲しくてならない
577 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 20:21:58.57 ID:SqVvhccP
学園都市で悪人止めるような性格でずっとチンピラ倒したり、能力研究受け続けて
アクセラ編まで実地戦闘していて能力の実践方知っている美琴より
生まれたばかりの番外個体が戦闘鳴れしてて、経験多くて有利というのはどうも微妙、むしろ逆だし
578 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 20:30:12.54 ID:QMQyThwo
学習装置で一気に色々インストール!
あと御坂は格闘戦とか一般人としては強いってレベルで、専門の訓練はうけてないとか
色々あるんじゃないの?
579 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 21:29:13.11 ID:bayzpNQ0
いたたた
580 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 21:29:20.02 ID:Jd1TSW20
美琴はガチの殺し合いはあんまりしとらんだろ
581 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 22:15:08.50 ID:Vmtc0S.0
能力使える一方さん→番外個体=雑魚の一匹
第一位と第三位の実力差がかなりあるとしても
美琴は常に放射してる電磁波の反射波で攻撃を察知し爆発を瞬時に防御回避することとかできるから
確かにもうちょっと善戦してもおかしくはないよね
582 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/15(日) 22:33:46.31 ID:5aVWpboo
初めて劒冑を装備して、経験者相手になんとか互角に渡り合ってる時点で、
結構善戦してるでしょ
583 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/16(月) 16:19:18.55 ID:.y/wvMAO
ふつうは劒冑なんて装甲してすぐに動かせるような代物じゃないしなw
584 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/16(月) 22:45:05.21 ID:T9jnE.AP
湊斗家スゲェ
装甲教師鈴川先生もスゲェ
585 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/16(月) 23:23:57.08 ID:.y/wvMAO
鈴川先生は卵があったから、まあ、なんとか説明が付くけど、景明は一発装甲でいきなり実戦だもんなぁ
586 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/17(火) 03:41:32.66 ID:M8yvK/.P
卵にそんな効果あったっけ?
村正の太刀の欠片で陰義や剱冑自体を強化したりする効果はあったみたいだけど
基本的には銀星号の精神同調のための端末にする能力じゃなかったっけ
景明さんは謙遜しまくりだけど何気に天才設定というか厨スペックだからな
587 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/17(火) 20:41:18.02 ID:uZ2/Y1w0
問題はその天才設定が、ストーリー上に結構いるということだ
588 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/08/17(火) 22:17:28.96 ID:ldPK7Lgo
予想を遥かに越える沢山のレスありがとうございます。
グロ等の注意書きに関しては苦手な方もいるようなので切断などの要素がある時は
注意書きを入れる事に致します。
次回の投下は土曜か日曜になると思いますので、よろしくお願いします。
今回の番外個体編について補足説明をしますと、番外個体は原作の番外個体とは
設定が違い、戦闘能力は原作よりも強化されている設定です。
番外個体の一人称が「ミサカ」ではなく「あたし」になっているのはそのためです。
美琴が劒冑を装甲してすぐに、騎航戦ができたのは、戦闘に駆け付けるまでの間に
ガイドプログラムによって劒冑の最低限の操作方法を学習したためです。
また、美琴がレベル5の天才だったというのも理由の一つです。
補足しきれない矛盾点などもあると思いますが、これからもこのSSにお付き合い
いただければ幸いです。
それでは
589 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/17(火) 22:32:30.28 ID:WnsYYX.o
美琴……やはり天才か……
590 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/19(木) 02:02:07.49 ID:HJ6pWgUo
文が御坂さんってなってるのに違和感
591 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/21(土) 21:26:25.98 ID:WPtXGBk0
投下は明日かな?
592 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/08/22(日) 11:31:05.21 ID:I/Zw.rYo
所用で今日は投下できそうにありません。
申し訳ないのですが投下は明日の21時からになりますので、よろしくお願いします。
593 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/22(日) 13:27:12.80 ID:39OUk2AO
待ってるんだよ!
594 :
◆JZzNmabVtI
[saga ]:2010/08/23(月) 20:52:28.67 ID:YsGTDxIo
時間になったので始めます。
595 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 21:01:00.41 ID:YsGTDxIo
〜とある病院〜
番外個体達との戦いから数日後
戦いで負傷した私と一方通行、それと御坂さんに劒冑を届ける際に負傷した木原さんも
合わせた私達三人はカエル顔の医者のいる病院に入院していた
「やっと傷も治ったかな?」
ベッドから起き上がり、調子を確かめるように体を動かす
「もう動いて大丈夫なの?」
お見舞いに来ていた御坂さんが心配そうに私の方を見る
「ええ、元々大した怪我はしてませんし」
そう言って手をヒラヒラと振ってアピールする
私の傷は以前に比べれば比較的軽症だったと思う
腕は炭化してしまったが、正宗の回復能力で既に感覚が戻る程度には回復しているし、
なんら問題はないと言ってもいい状態だろう
596 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 21:12:27.47 ID:YsGTDxIo
「大した怪我はない……、ですか」
私の言葉を聞いた白井さんが眉を顰めた
「あれ程の怪我を大したことないと?わたくし達がどれだけ心配したのかわかって
おいでですの?」
白井さんが詰め寄って来る
「ごめんなさい……」
「まあまあ黒子、そう怒らないの。こうしてみんな無事だったんだから、それだけでも
良しとしないと……」
御坂さんが白井さんを宥める
「それに、これからは私も一緒なんだから。これ以上佐天さんにこんな大怪我させないわよ!」
「あれだけ寮監に怒られて、まだ懲りていないんですの?」
「何も自分から積極的に仕掛けようだなんて思ってないわ。でも佐天さんや他の人が
危険な目に遭ってたら助けに行くだけよ」
597 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 21:22:51.09 ID:YsGTDxIo
御坂さんを危険な目になんて遭わせたくない……
しかし、私の力量が不足しているのは明らかだ
今回だって御坂さんが居なければ私は今この世にはいなかっただろう……
それに、レベル5の御坂さんに私の心配なんて不要なのかもしれない
「ホントに危なくなった時はお願いしますよ、御坂さん」
「任せておいて!」
「うう、お止したい、お止したい気持ちで一杯なのですが……」
白井さんが苦々しげにそう言った
「お姉様は言っても聞かないでしょうし……」
白井さんはジトッとした目で御坂さんを見つめる
598 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 21:35:51.59 ID:YsGTDxIo
「う……」
その視線を受けて御坂さんが後ずさる
「もしかすると、もう戦いを避ける事はできないのかもしれませんわ……」
「………」
きっと白井さんの言うとおりだ、私達はもう戦いを避ける事はできないだろう……
一方通行が救った少女、妹達の司令塔、打ち止めは命を狙われている
彼女を、そして妹達を守ろうとすれば、必ず学園都市の暗部と戦うことになる……
「ですから、わたくしからのお願いです……。お二人とも、ご自分の命を最優先にして
くださいですの」
「わかってるわよ、私も佐天さんもそう簡単に死にはしないって……」
御坂さんが白井さんの頭を撫でる
「あの〜、いちゃいちゃしてるとこ悪いんですけど……」
「なっ!いちゃいちゃなんてしてないわよ!?」
顔を真っ赤にして御坂さんが白井さんから離れる
599 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 21:45:53.88 ID:YsGTDxIo
「どうかしましたの佐天さん?」
御坂さんとのスキンシップを中断されて白井さんは少し不服そうだ
「いえ、入院してから安静にしてたから、他の人の様子を見に行きたいなー、って」
「そ、そうね。じゃあ行きましょうか?」
まだ少し顔の赤い御坂さんを先頭に私達は廊下へと出た
「まずはどこへ行くの?」
「それじゃあ……」
「ここよ」
御坂さんの案内で、目的の病室の前に到着する
「緊張するなぁ……」
ドアを開ける前に深呼吸をする
このドアの向こうにいる人物になんて声をかけたらいいのか皆目見当もつかない……
だが、いつまでもこうしている訳にはいかない
私は意を決して病室の中に足を踏み入れる
600 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 21:57:30.06 ID:YsGTDxIo
「あっ!お姉様と佐天さんだ!ってミサカはミサカは抱きついてみる!」
部屋に入ると打ち止めちゃんが私に抱きついてきた
「おっと…、相変わらず元気いいね、打ち止めちゃん」
少しよろけながらも打ち止めちゃんに笑い掛ける
「コラ!佐天さんはまだ怪我が治ってないんだからいきなり飛びついちゃダメじゃないの!」
「あっ、ごめんなさい、ってミサカはミサカは頭を下げてみたり」
「大丈夫だから、謝らないでいいよ」
私はそっと打ち止めちゃんの頭を撫でる
「ごめんなさい、あなたにそんな怪我をさせてしまって……」
病室の中にいた女性、芳川さんが私に話かけてきた
「いえ、私がしたくてやったことですから……」
601 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 22:06:50.86 ID:YsGTDxIo
「おお!さすが佐天さん!ってミサカはミサカは尊敬の眼差しを向けてみる!」
「はは、あ、ありがと……」
打ち止めちゃんに話しながらベッドに目を向ける
そこには不機嫌そうにこちらを見ている白い髪に赤い目をした少年がいた
「大丈夫ですか?えーと、一方通行……さん……」
「………………」
返って来たのは沈黙と不機嫌そうな眼差しだけだった
「あ、あはは」
これは笑うしかない
「ちょっとあんた!返事くらいしなさいよ!」
御坂さんが一方通行さんに食ってかかる
「…………帰れ」
ボソッと一方通行さんがそう呟いた
602 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 22:17:47.18 ID:YsGTDxIo
「ふざけてんの?」
「お望み通り返事してやっただろォが?大体人の病室来て騒ぐンじゃねェよ」
御坂さんと一方通行さんは睨みあっている
「いいんですよ御坂さん、私は一方通行さんが無事かどうか確認したかっただけ
ですから……」
「心配ないわよ佐天さん、コイツは殺したって死ぬような奴じゃないわよ」
「そうだなァ、オレはどっかのひ弱な女とは違うからなァ」
「な、なんですって!?」
「あわわ、喧嘩はやめてよ!ってミサカはミサカは喧嘩の仲裁をしてみる!」
二人の仲は相変わらずのようだ、まあ二人の関係を考えれば無理もないかもしれない
「ホントに困った子達ね……」
「お姉様にも困ったものですわ……」
芳川さんと白井さんが揃って溜め息をついた
603 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 22:35:08.77 ID:YsGTDxIo
「せっかく心配して来てくれたってのに、あの態度はないでしょう!?」
「頼ンでねェよ!大体、心配してきただァ?オレがテメェ等に、そこの女に何したか
忘れた訳じゃねェだろ?」
「ッ―――」
一方通行さんの言葉に部屋の中の空気が凍りつく
「そうね、私はあんたのしたことを忘れてなんてないし、許してもいないわ……」
御坂さんが一方通行さんを睨みつける
「お姉様……」
「でも―――」
「あんたが打ち止めを、私の妹を命がけで助けてくれたこと……、それには感謝してるわ。
だから、ありがとう……」
御坂さんがお礼を述べる
それを見て白井さん達はホッと胸を撫で下ろし、部屋の空気が弛緩するのが感じられた
「だからさ―――」
「ハッ!オレが勝手にやったことだ。テメェに礼を言われる筋合いなんてねェよ、
気色ワリィ」
弛緩した部屋の空気が再び凍りつくのが感じられた
604 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 22:45:57.05 ID:YsGTDxIo
「人が素直にお礼言ってんのに何よその態度!?」
「誰も頼ンでねェっつってンだろ!?それにオレは慣れ合いが大嫌いなンだよッ!!」
「このッ!もう容赦しないわ!!」
そう言って御坂さんは一方通行さんの腕を思いっきり抓った
「いてェッ!!テメェ!オレは怪我人だぞ!?」
それに対して一方通行さんが抗議の声を上げる
「手加減はしてあげるわよ!」
「あれ?」
何か違和感を感じる、なんだろう?
「離せ!ボケがァ!!今は能力が使えねェンだよ!!」
ああ、そうか―――
「一方通行さん、能力はどうしたんですか?」
私の言葉を聞いて、一方通行さんは気まずそうに目を逸らす
605 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 22:54:26.38 ID:YsGTDxIo
「能力は……、使えなくなった……」
「使えなくなった?」
能力が消滅したのだろうか?
「正確には演算ができなくなった、と言うのが正しいわね」
芳川さんが補足した
「あのとき頭を撃たれちまってな、体の方は、まあ大丈夫そうだが……。頭の方、
演算能力はほとんど機能しなくなっちまったみてェだな……」
一方通行さんが苦々しげに言った
「それって……」
「オレはもう第一位を名乗る程の能力は使えねェって事だ……」
606 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 23:12:26.86 ID:YsGTDxIo
「ったく、情けねェ話だ。こンなンじゃ、打ち止めを守るどころか、テメェの身の安全すら
守れねェぜ!」
「その心配はないさ」
いつの間にか病室の入り口にあのカエル顔の医者が立っていた
「どういう意味ですか?」
「彼の、一方通行の演算能力を復活させる事ができるということさ」
「どうやってだ?」
一方通行さんは半信半疑と言った風に問いかけた
「簡単な事さ、誰かに君の演算を補助してもらえばいい。彼女達、妹達の力を借りれば
それが可能だ」
「そンなことができンのか?」
「できるさ、妹達が協力してくれればだがね」
「もちろん協力するよ!ってミサカはミサカは二つ返事で承諾してみる!」
「ふむ、それなら問題はなさそうだ。それでは具体的な話なんだが……」
カエル顔の医者と一方通行さん、それに打ち止めちゃんと芳川さんはなにやら難しい
話を始めた
「邪魔しちゃ悪いし、私はあの子の様子を見てくるけど……。佐天さんと黒子はどうする?」
「私も行きます」
「ごめんなさい、気を遣わせちゃって……」
芳川さんが私達に謝罪する
「いいんですよ、それじゃあお大事に」
病室のみんなに挨拶をし、私は御坂さん達と一緒にある病室へと向かった
607 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/23(月) 23:17:54.23 ID:YsGTDxIo
今回の投下はここまでです。
遅筆のため、ペースが遅いですがご容赦ください。
補足説明しますと、一方通行は演算能力を失っているもののそれ以外の体への
影響は比較的軽微という設定です
あと一方通行の性格が若干温いのも仕様ですのでご了承ください
それでは
608 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/23(月) 23:29:53.02 ID:9syU26AO
乙なんだよ!
609 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/23(月) 23:31:05.72 ID:B/Dl2XUo
乙ー
610 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/08/25(水) 13:14:27.48 ID:NCO0mYc0
もしかしなくてもチョンがいたSSか・・・・・・・
611 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/08/26(木) 08:02:11.23 ID:AFl/OkQ0
チョンは日本から出て行ってほしいんだよ!
612 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 07:03:11.88 ID:1yGYm9Qo
朝早く+突然ですが、今から投下を開始します。
613 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 07:07:47.30 ID:1yGYm9Qo
一方通行さんの病室を出て、私達はとある病室へと向かった
しばらく病院内を歩き、目的の病室に到着する
御坂さんが病室のドアを開ける
淡い光の差し込む病室―――
ベッドに一人の少女が横たわっている
御坂さんと同じ顔をした少女、番外個体だ
614 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 07:13:34.97 ID:1yGYm9Qo
あの日の戦いの後、番外個体は私達と一緒に、この病院へ運び込まれた
御坂さんの電磁抜刀を受けた番外個体は瀕死の重傷だったが、あのお医者さんの
おかげもあって一命を取り留めた
だが、番外個体は未だ目を覚まさず、こうして眠り続けている
御坂さんは彼女をこんな目に遭わせた負い目からか、毎日この病室へ足を
運んでいるらしい……
「この子は、番外個体はこれからどうなるんでしょうか?」
生命維持装置が取り付けられた番外個体を見ながら御坂さんに問いかける
「わからないわ……」
御坂さんの弱々しい声が返って来た
615 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 07:29:51.82 ID:1yGYm9Qo
「彼女を他の妹達と同様に扱うのは些か危険だと思いますわ。お姉様達のお話から
考えますと、彼女は打ち止めさんを殺そうとした、それにお姉様にも悪感情を抱いている
ようですし……」
白井さんがそう答えた
「かといってアンチスキルに引き渡すこともできませんわ。それに、この件に学園都市が
関わっているのならアンチスキルにも手が回っている可能性が大きいですわ」
どうやら状況は八方塞のようだ……
「あのさ……」
目を伏せていた御坂さんが口を開いた
「私、この子の事、あのお医者さんに任せてみようと思うの……」
「それは、どういうことですか?」
616 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 07:43:47.01 ID:1yGYm9Qo
「この子の脳は、人間の負の感情を増幅するように細工されているらしいの……
それをあのお医者さんが治してくれるって言ってくれたから……」
だからそれに賭けてみたい
御坂さんはそう言った
確かにあの人がただならぬ人物であるというのはこれまでの出来事からもわかる
先程は一方通行さんの能力を復活させる手立てがあるとも言っていた……
それ程の技術があれば、番外個体に施されているという細工を解除できるかもしれない
「その話の通りにいったとしても、その後はどうするんですか?」
たとえ思惑通りに事が進んだとしても……
番外個体が打ち止めちゃんや御坂さんを狙わないなんて保証はどこにも存在しない
617 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 07:54:39.05 ID:1yGYm9Qo
「私が、説得するわ……。打ち止めを狙うのをやめるようにって……」
「なっ!」
その答えに驚きの声を上げる
「説得って言ったって……、番外個体がそれを素直に聞くとは思えませんよ?」
これはもはや賭けに近い……、いや今までの経緯を考えれば分が悪すぎる賭けだ……
「佐天さん、お気持ちはわかりますが他に代替え案がない以上、ここはお姉様と
あのお医者様を信じるしかありませんわ……」
618 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 08:08:42.35 ID:1yGYm9Qo
「…………」
「それに、妹さん達を思うお姉様のお気持ちを汲んで差し上げてくださいまし……」
白井さんの言葉に沈黙する
御坂さんが妹達と同様に番外個体も自分の妹としてその身を案じているのは理解できる
狙われているのが私だというのならば、御坂さんの提示した案に異論はない……
しかし、命を狙われているのは打ち止めちゃんであり、他ならぬ御坂さん自身でもある
「代替え案なら、あります……」
ならば、もっと確実な方法を取るべきだろう……
「代替え案?どんな案ですの?」
白井さんが皆目見当もつかない、という風に首を傾げる
それは、現状でもっとも簡単に、かつ確実に、番外個体の脅威を排除できる方法……
番外個体を殺害すること―――
619 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 08:17:10.96 ID:1yGYm9Qo
番外個体が万全の状態ならば、彼女を殺害することは困難だろう……
しかし―――
「…………」
ベッドに横たわる番外個体に視線を遣る
彼女は意識を失っている……
抵抗どころか、指一本動かすことのできない存在でしかない
今の番外個体を殺す方法なんて片手の指では収まらないくらいの選択肢がある
刀で斬る、首を絞める、痕跡を残さないようにするのならば、この生命維持装置の
電源を落としてしまえばいい……
ただ―――
とても大きな問題がある―――
620 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 08:24:37.79 ID:1yGYm9Qo
御坂さんが阻止する?あのお医者さんが阻止する?
それ以上に、根本的な問題がある……
それは――
私にこの子が殺せるかという問題だ―――
私にこの子が殺せるだろうか?
傷つき、抵抗をすることもできない少女を――
御坂さんが助けたいと願う少女を――
そして――
私のせいで命を落とした少女と同じ顔をした少女を―――
621 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 08:32:11.92 ID:1yGYm9Qo
そっと、頭の髪飾りを撫でる
私にはできないだろう……
無抵抗の人間を殺すことなんて、私にはできない……
「佐天さん?」
黙ったままの私に白井さんが怪訝そうな目を向ける
「あ、えと……、いや、番外個体に指示を出した人をどうにかすれば、なんとかなるかな〜、
って思ったんですけど……」
まさか今考えていたことをそのまま言うわけにもいかず、咄嗟に言い訳を口にする
「残念ですが、それは現実的ではありませんわね。相手がどこの誰かもわからない
のでは……」
「そ、そうですよね〜。ごめんなさい、変な事言っちゃって」
622 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 08:44:45.80 ID:1yGYm9Qo
あはは、と笑いその場をごまかす
「ごめんね、わがまま言っちゃって。この子をこんな目に遭わせた私が今更この子を
助けようなんて矛盾してるかもしれないけど……。私はこの子に、妹達に傷ついてほしく
ないから……」
「わかりました、番外個体のことはお二人にお任せします」
私には御坂さん達の案がうまくいくことを祈る事しかできない……
私がもっと強ければ
躊躇いもなく障害を排除できるくらい強い心があれば――
どんな敵にも負けないくらいの強い力があれば――
そう思い、唇を噛みしめる
強くならなければ、私の大切な人が傷つくことのないように
もう、私の目の前で命を落とすことがないように―――
623 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 08:58:22.81 ID:1yGYm9Qo
「これからどうしますの?」
番外個体の病室を出ると、白井さんがそう言った
「木原さんの病室にも行かないと……」
「木原さん……、あの方ですか……」
白井さんが少し難しい顔をする
「どうかしたんですか?」
その態度を怪訝に思い問いかける
「いえ、あの方自身がどうの、と言うわけではないのですが……」
「あの人、どうやらあのテレスティーナと親類関係みたいなの」
白井さんの代わりに御坂さんが答えた
624 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 09:13:31.42 ID:1yGYm9Qo
「えっ?そうなんですか?」
それは初耳だ……
確かにテレスティーナの名前にも木原の文字が入っていたような記憶はあるが……
「過去にあった木山先生の生徒さんを使った実験にもあの人の一族が関わってた
みたいだし……。助けてもらっておいて失礼だけど、完全には信用できないわ」
御坂さんがそう言った
「大丈夫ですよ、木原さんは私のことを心配してくれてたみたいですし。今回だって
怪我してまで私達を助けてくれたじゃないですか」
「まあ、直接話してもないのに結論を出すのは些か乱暴ですわね……」
「それもそうね」
625 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 09:27:32.05 ID:1yGYm9Qo
「それじゃあ、行きましょうか?」
「あっ」
私の言葉と同時に御坂さんも声を上げた
「どうし――」
「おや?佐天さん、これは奇遇ですね」
廊下の向こうから木原さんが歩いて来ていた
「こんにちは、怪我はもう大丈夫なんですか?」
「ええ、銃弾は急所を外れてくれていたみたいでしたので……、動いていいと許しがでたの
であなたの病室へお邪魔しようと思っていたのですが、何か他にご用事が?」
「私達はこれから木原さんの病室へ行こうと思ってた所なんです」
「なんと、危うく入れ違いになるところでしたね」
626 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 09:43:43.92 ID:1yGYm9Qo
「すみません木原さん、少し聞きたいことがあるんですけど……」
「わかっています」
私が何を聞きたいのか察しているのだろう、木原さんは私の言葉を遮った
「私の知っていることはすべてお話するつもりです、ここではなんですので場所を
変えましょう……」
「それはわたくし達もお聞きしてよろしいんですの?」
白井さんが質問をなげかける
「構いません」
「それで場所はどうします?」
「一方通行の病室はどうかな?」
御坂さんがそう提案した
「第一位のですか?」
「うん、あいつもこの件には無関係じゃないし、情報はできるだけ共有した方がいいじゃない?」
627 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 09:55:43.05 ID:1yGYm9Qo
「そうですね……、もし第一位の協力を得られればこれ程頼もしいものはありませんしね」
「それなんですけど……」
私は一方通行さんが能力を使えなくなったこと、能力の復活には時間がかかる事を
木原さんに説明した
「そのようなことが……」
「どうしますの?」
「おそらく問題はないでしょう、彼は第一位、学園都市側も彼の能力を必要としています。
能力が使えないからといって彼が標的になるような事はありえないでしょう……」
木原さんは一度言葉を区切った
「現在の情報を整理しますと、現状で狙われる可能性が高いのは佐天さんと打ち止めさんの
お二人ということになりますね……」
「それならなおさらあいつにも話した方がよさそうね、そろそろ話も終わってると思うし、
一方通行の病室へ戻りましょうか」
628 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 10:07:17.35 ID:1yGYm9Qo
「おう、さっきは悪かったな、気ィ遣わせちまって」
再び一方通行さんの病室へ戻ると、ベッドの上の一方通行さんにそう声をかけられた
「気にしないでいいわよ、必死になる気持ちもわかるからね。能力の使えないあんた
なんて、ただの目つきと口の悪いモヤシっ子だもんね……」
「うるせェ!テメェに言ったんじゃねェよ!!」
一方通行さんが御坂さんに食ってかかった
「あン?なンだよ、一人増えてんじゃねェか?」
木原さんに気付いた一方通行さんがそう言った
「あら?あなたは……」
「どうも、お久しぶりです。芳川さん」
どうやら芳川さんと木原さんは知り合いのようだ
「知り合いなのかよ?」
「ええ、彼は木原さんの弟さんよ、研究所で会ったことがあるわ」
「あいつのかよ……」
一方通行さんが少し嫌そうな顔をした
629 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 10:23:18.61 ID:1yGYm9Qo
「血は繋がってないんですけれどね」
「そうなのか?」
さらっと、スゴイ発言が出た
「私は養子なんですよ、木原の一族は優秀な人間を養子に迎え入れる習慣があると、
私の祖父にあたる幻生さんからお聞きした事があります」
自分でいうような事ではないですけれどね、と木原さんは苦笑いをした
「それではテレスティーナとは……」
「彼女とも一応は親類ですが、あまり面識はありませんね……」
「そうだったんですの……」
どうやら木原さんはあの一件とはあまり関係がないようだ
「ンで?その弟クンがなンの用なンだよ?」
630 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 10:37:32.75 ID:1yGYm9Qo
「今回の件について、私の知っていることをお話しようかと……」
「必要ねェよ」
「まあまあ、聞いておいて損はないと思うわよ?」
そっけない態度をとる一方通行さんを芳川さんがたしなめる
「よろしいでしょうか?」
「勝手にしろ……」
「それでは……、まず今回の番外個体の襲撃の目的は打ち止めさんの殺害であり、
佐天さん達との交戦は偶発的に起こったものであると考えられます」
木原さんが淡々と話し始める
「おそらく、感情を持ち始めた妹達を快く思わない人間の指示でしょうね……」
「そんな理由で打ち止めを殺そうとするなんて……、許せない!」
御坂さんが憤慨する
631 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 10:51:46.42 ID:1yGYm9Qo
「番外個体達が使用した劒冑、そして、私が御坂さんにお渡しした劒冑……、
これらは共に『超新星計画』のプランによって製造されたものです」
「超新星?」
「前に芳川が言ってたな……、だがオレは超新星計画は多重能力者を造り出す計画
だって聞いたが……」
「まあ、私もそこまで詳細に知っている訳ではないからね」
「それも間違ってはいません、超新星計画は非常に大きな計画のようです。
私もその全貌を知らされているわけではありませんが、複数の研究をまとめて
超新星計画、とされているようです」
「しかし、多重能力者と劒冑……、駆動鎧のようなものですわよね?ひと括りにするには
あまりにも関連性がないように思えますが……」
白井さんが疑問を口にする
632 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/08/28(土) 11:00:53.42 ID:1yGYm9Qo
すみませんが今日はここまでに致します。
また近いうちに投下できると思いますので、よろしくお願いします。
それでは
633 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/28(土) 11:08:33.89 ID:Gt1mfIAO
乙だぜい
634 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/28(土) 12:39:03.13 ID:9RcILYSO
おつ
635 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/08/29(日) 10:14:21.97 ID:m1/NHWco
おつ
636 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/03(金) 18:11:49.19 ID:QdLjDZEo
明日の20時から投下します。
637 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/03(金) 19:15:20.33 ID:tgclRAwo
おゥ
638 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 01:21:59.28 ID:wSOIXQAO
待ってるんだよ!
639 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 19:47:48.10 ID:1bWZPDIo
そろそろ始めます。
640 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 20:00:37.50 ID:1bWZPDIo
「技術的な面で見ればこの二つには関連性はありません……。
しかし、多重能力者と劒冑の開発には共通する点も存在します」
木原さんは白井さんの質問にそう答えた
「この計画の名前になっている超新星、この言葉の意味はわかりますか?」
「えと、恒星が消えるときに起きる爆発現象で、超新星爆発とも呼ばれてるわよね」
さすが御坂さん、こんな難しそうな言葉をスラッと説明した
641 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 20:17:54.55 ID:1bWZPDIo
「その答えで概ね正解です。しかし、超新星は星の終焉だけではなく、新たな星の
誕生のきっかけをつくります」
「つまり、どういうことですの?」
「超新星計画は現状を壊し、新たなるステップへ進むための計画ということです。
多重能力者、劒冑の開発、どちらもそのためのものです」
木原さんがそう説明する
「さて、度々すみませんが、もう一度質問です。現状ではほとんどの能力者が共通の
弱点と呼べるものを持っています……、それがなんだかわかりますか?」
能力者の弱点?
一つの能力に限定している訳ではなく、ほとんどなんて言われてもさっぱりわからない
「私にはちょっとわからないなぁ……、みんなはわかります?」
周りの御坂さん達にそう問いかける
「いかに能力が優れてても、能力者自体は生身の人間ってことか?」
642 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 20:28:31.67 ID:1bWZPDIo
一方通行さんがボソッとそう言った
「その通り、能力は強大な力です。しかし、身体強化系や第一位のような特殊な能力で
ない限り、その体は生身の人間です。不意を突かれ一撃を喰らえばそれが致命傷に
なる可能性だってあります」
「確かに、黒子もレベル4だけどジャッジメントの仕事でよく怪我とかするし……」
御坂さんが白井さんの方を見る
「最近ではキャパシティダウンなど、能力の使用そのものを阻害する兵器まで開発され
ています。これにより戦い方によっては無能力者がレベル5を打倒するなんてありえない
ような事態が起こる可能性も出てきました」
「…………」
643 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 20:50:47.67 ID:1bWZPDIo
「そこで提案されたのが能力者の戦闘支援兵器の開発です。駆動鎧をベースに、正宗さん
のデータを加え、能力者用の駆動鎧を製造する計画が立ちあげられました」
「その成果は先日の戦いでご覧いただけたと思います。能力者用の駆動鎧、劒冑の
登場により能力者の力は新たなステップへと突入しました……」
「つまり、既存の対能力者用の措置では通用しなくなった、そういうことね……」
芳川さんが嘆息した
「近い将来、あんなのが街に溢れかえるかもと想像しただけで寒気がしますわね」
白井さんもそれにならった
644 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 21:09:50.90 ID:1bWZPDIo
「多重能力者については、特力研での度重なる失敗で不可能だって結論が出てる、
それを実現できるンだっつーなら、今までの常識なんざ変わるだろうな……」
一方通行さんがそう言った
「戦闘を一変させる兵器の開発、能力の前提を覆す能力者の創造、これが
超新星計画の全貌だと言われています……」
「あの……、一つ聞きたいことがあるんですけど……」
私は木原さんに質問を投げかけた
「はい?」
「もう多重能力者は誕生しているんですか?」
そう質問する
「それはオレも知りたいね、いきなり複数の能力を使う相手と戦うなンざ、冗談じゃねェしな」
645 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 21:25:23.53 ID:1bWZPDIo
「もし多重能力者が誕生しているのなら、私にも何らかの情報が入る筈です。今までその
ような話は聞いていませんし、仮に多重能力者が誕生していてもすぐさま戦闘に投入され
るなんて事はないと思われます」
「そうですか……」
一方通行さんが能力を使えない以上打ち止めちゃんは私が守らないと……
「それじゃあ、これからのことを考えましょうか?」
考え込む、私に芳川さんがそう声をかけてきた
「考え過ぎてもしかたないわ、まずは今できることをしないとね」
「そうですね……」
芳川さんの言葉に頷く
「まず最優先で考えるべきなのは打ち止めさんの安全でしょう」
木原さんがそう提案する
646 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 21:43:03.02 ID:1bWZPDIo
「それなんだけど、一方通行と打ち止めは私と一緒に知り合いのアンチスキルの所へ
行こうと思うんだけど」
「なンでオレまで?」
「家は壊れたままでしょう?それに場所が割れた所に能力の使えないあなた一人じゃあ
危ないわよ?」
「それ以前に、もう病院から出て大丈夫なんですか?」
一方通行さんにそう尋ねる
「ああ、まあな。動くくらいならなンとかなるだろ」
「それならまだ寝てた方が……」
「いいンだよ、寝たっきりなンて性に合わねェし、それに……」
打ち止めちゃんに顔を向ける
「このガキは目を離したらすぐに厄介事に巻き込まれやがったからな……
また厄介事に巻き込まれねェように見張ってねェとな……」
647 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 21:53:42.28 ID:1bWZPDIo
「なんだかんだで優しいんですね」
「言ってろ」
そう言って一方通行さんはそっぽを向いた
「それでいいかしら?」
芳川さんが木原さんに尋ねた
「同意したいのですが……」
木原さんは言葉を濁した
「第一位が能力を使える状態ならいざしらず、能力を使えない状態では打ち止めさんを
守りきれるとは思えません、暗部の能力者が襲撃してきた場合、そのアンチスキルの
方一人では対処できないでしょう……」
「それじゃあどうするの?」
御坂さんが言った
「こちらで暗部の能力者と戦えるのは佐天さんと御坂さんのお二人、打ち止めさんは
お二人のうちのどちらかが保護するのがよいでしょう」
648 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 22:03:11.19 ID:1bWZPDIo
「私が預かりたいんだけど……」
「さすがに寮に常盤台の生徒以外を住まわせるのは無理ですわね……」
やっぱりお嬢様校だから規則も厳しいんだろうなぁ
「なんとかならない黒子?」
「無茶ですわ!寮監や他の寮生になんと説明するおつもりですの?あの駆動鎧を
部屋に置くときだって、わたくしとても苦労しましたのよ?」
「だったら私が預かりますよ。打ち止めちゃんはそれでいい?」
私は少し屈み、打ち止めちゃんに目線を合わせてそう言った
「いいに決まってるよ!ってミサカはミサカは全身で喜びを表してみる!」
打ち止めちゃんはそう言って飛び跳ねた
「一方通行はどうするの?まさか彼女の部屋に一緒に預ける訳にもいかないでしょうし……」
649 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 22:15:45.12 ID:1bWZPDIo
「そうだなァ、オレはお前と一緒にそのアンチスキルのとこへ邪魔することにするか」
「離れ離れになっちゃうの?」
打ち止めちゃんが悲しそうに一方通行さんを見る
「暇な時は会いに行ってやるよ」
「ホントっ!?約束だよ!ってミサカはミサカは念を押してみる!」
「あ〜、ホントだよ。ったく、くだンねェことではしゃぐンじゃねェよ……」
「あの芳川さん、そのアンチスキルの人って女の人なんですか?」
御坂さんが芳川さんに尋ねた
「ええ、黄泉川愛穂って言ってね、体育の教師をしているのよ」
650 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 22:27:11.46 ID:1bWZPDIo
「こいつと一緒に住んで大丈夫なんですか?」
心配そうに御坂さんが言った
「どォいう意味だよ……」
一方通行さんも不服そうな声を出した
「大丈夫よ、彼女は強いからもし一方通行が襲ってきても返り討ちね」
「ハッ!くだンねェこと言ってンじゃねェよ。大体教師なら結構年行ってんだろ?
芳川もいい歳だし、そんなババア共、頼まれたって襲わねェよ」
一方通行さんが吐き捨てるように言った
「「「あっ……」」」
私、御坂さん、白井さんの声が重なった
やばい、芳川さんの周りに怒気のようなものが見えるような気がする
651 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 22:38:27.43 ID:1bWZPDIo
「ン?どうした?」
無言のまま近づいてきた芳川さんに一方通行さんが問いかける
「…………」
芳川さんは無言のまま一方通行さんの耳を思いっきり引っ張った
「イテテテテテ!!何しやがるッ!?」
堪らず一方通行さんが抗議の声を上げる
「女性にババアなんて言った罰よ、これだけで済んでありがたいと思いなさい。
愛穂に同じ事を言ったらこれじゃあ済まないわよ」
「マジかよ……、先行きが不安すぎンだろ……」
一方通行さんが溜め息を吐いた
「やれやれ、緊張感がないですね」
木原さんが苦笑した
「そんなにガチガチに身構えてたら、いざという時に倒れちゃいますよ?」
御坂さんがそれに応じた
「そうですね」
652 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 22:44:26.34 ID:1bWZPDIo
「私達にできるのは目の前のことを精一杯やるだけです」
私も御坂さんに続いてそう言った
守ってみせる
打ち止めちゃんを、そして、私の仲間達を……
こうして、私達の新たな戦い――
そして、新たな生活が始まった―――
653 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/04(土) 22:51:16.16 ID:1bWZPDIo
今回はこれで終了です。
次回からは一、二回程、幕間として短編のようなものを投下する予定です。
内容は本編に関わらないようなものですが、見ていただければ幸いです。
それでは
654 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/04(土) 23:06:47.80 ID:wSOIXQAO
乙なんだよ!
次回も楽しみなんだよ!
655 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/09/04(土) 23:47:40.78 ID:GHSmYyk0
面白かったよー。
次回も楽しみに待つぜ。
656 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/05(日) 16:58:50.33 ID:XYXglwSO
乙
657 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 04:18:50.34 ID:P6vAbISO
読解力がないからかわからんが劒冑の開発が多重能力に繋がる理由がよくわからん
658 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/06(月) 08:00:36.26 ID:y7GgoN6o
村正は三章で銀星号の陰義を使えるようになったろ?
つまりそういうことだ
659 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 04:38:52.63 ID:ZAHI6ISO
悪鬼!殺した!
660 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/07(火) 21:27:12.01 ID:5LMwO8Qo
あくまで劒冑自体は六枚羽とかアースブレード?見たいな兵器としての開発で、多重能力者は能力の研究なんじゃね?
劒冑を解析したら能力向上に繋がる要素が発見されたから同じくくりになってるだけとかなー
661 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/08(水) 14:10:27.57 ID:2EIyTXQo
次の投下は明日になります。時間は未定ですが、遅くても21時までには始められると
思いますのでよろしくお願いします。
劒冑の開発と多重能力の研究が一括りの計画になっている理由について補足説明します。
この二つは一括りになっていますが、実際には別個の研究になっています。
詳しくは下に研究員の会話形式で説明させていただきます。
研究員A「なんでこの計画って多重能力の研究と一緒になってるの?別々でよくない?」
研究員B「なんでもなにも、上がそう決めたんだからしかたないでしょう?
そんなに気になるんだったら直接上に聞いてきたら?」
研究員A「嫌に決まってんだろ!多重能力っていえば、特力研とかで研究されてた奴だろ?
そんな100%人の生き死にが関わってるようなのに首突っ込みたくねぇよ……」
研究員C「そのことについて上からの回答です、この二つの研究が学園都市に新たな
発展をもたらす希望の星となりうる研究、ということで一括りにされているようです」
研究員A「希望の星ねぇ……、この劒冑ってのが希望をもたらすなんて俺には思えないね。
こんなトンデモ兵器に能力者なんて化けモン乗せて、どっかの国と戦争でも起こすつもり
なんじゃないの?」
研究員C「いかなる目的があるにせよ、我々に多重能力開発の詳細が伝えられていない
のは上が我々には知る必要がないと判断したからでしょう。我々のすべきことは上の意向に
従い与えられた任を遂行することだけです。それ以外に学園都市で生きて行く方法はあり
ません」
研究員A「それもそうか、俺達みたいな下っ端研究員は黙って上の意向に従うとしますか……」
研究員B「触らぬ神に祟りなし、好奇心は猫をも殺すってことね。なんにせよ知らなくても
私達の研究には関係ないんだし、気にしない事が一番ね」
上のように、なぜ関連性のないように見える二つの研究が一括りになっているのか
疑問に思う研究員もいますが、
・詳細を知らなくても自分達の研究に影響がないこと
・上層部から一応の回答がでていること
などの理由で納得、もししていなくても回答がでている以上それ以上の詮索はできない
といった状況になっています
多重能力開発の方の話はネタばれになってしまうので、後々説明させていただきます。
662 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 12:43:48.93 ID:R/6O9sAO
待ってるんだよ!
663 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 20:29:01.12 ID:bCTvWCoo
そろそろ始めたいと思います。
今回は日常編ということで地の文なし、かっこの前に名前ありの方式で書いていきたいと
思います。
日常編なのでストーリーは進まず、内容もあってないようなものになりますので、
ご了承ください。
それでは始めます。
664 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 20:39:50.01 ID:bCTvWCoo
〜佐天自宅〜
佐天「ん〜!今日から新学期かぁ〜」
佐天「手の包帯はまだ取れてないけど……、あんまり目立たないし、問題ないかな……」
打ち止め「スースー……」
佐天「朝ご飯の準備ができるまで寝かせといてあげよっと」
佐天「正宗ー、朝になったよー」ガチャ
正宗<おお、もうそんな時間か……>
佐天「私はご飯の準備するから、打ち止めちゃんを起こさないように静かにしててね?」
正宗<心得た>
665 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 20:47:42.42 ID:bCTvWCoo
佐天「そろそろ打ち止めちゃん起こそうかな」
佐天「打ち止めちゃん朝だよ〜、起きなさーい」
打ち止め「う〜ん……、あと五分ってミサカは……スー」
佐天「早く起きないと朝ご飯食べ損なっちゃうかもよー?」
打ち止め「うう〜ん……、それは困るかも、ってミサカはミサカは……」ムクリ
佐天「おはよう、打ち止めちゃん」
打ち止め「おはよー佐天さん、ってミサカはふぁ〜、あくび交じりに挨拶してみる……」
佐天「よし、まずは顔を洗ってさっぱりしてきなさい」
打ち止め「わかったぁ〜〜」ふらふら
佐天「足元に気をつけてねー、さて、私は朝ご飯の準備の続きでもしますか」
666 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 20:57:59.59 ID:bCTvWCoo
ピンポーン!
黄泉川「おーい佐天、黄泉川じゃん」
佐天「鍵は開けてあるんで入って大丈夫ですよー」
黄泉川「それじゃあお邪魔するじゃん」
一方通行「邪魔する」
佐天「おはようございます」
黄泉川「おはよう!佐天に虫型ロボットの正宗君!」
正宗<吾はロボットではない!何度言えばわかるのだ!?>
黄泉川「細かいこと気にするもんじゃないじゃん?今日も一方通行を預けとくからよろしく
頼むじゃん?」
佐天「了解でーす、って今日から私も学校なんですけどね」
黄泉川「まあ正宗と打ち止めが居るから大丈夫じゃん?」
一方通行「なんでオレが打ち止めに世話されるみたいになってんだよ……。
大体こんな風に送ってもらわなくても一人でここまで来れるぜ」
667 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 21:10:14.56 ID:bCTvWCoo
黄泉川「怪我人が何強がってるじゃん?今だって杖ついて歩いてるじゃん。
そんな体で街歩いてたら、ヒャッハー!新鮮な肉だー!とか叫んでるスキルアウトに
やられちまうじゃん」
一方通行「いくら学園都市でもそこまで治安は悪くねェよ」
黄泉川「それは冗談にしても、一方通行は色んな奴らに絡まれてたじゃん?
ここに居れば安全だし、朝から一方通行が居れば打ち止めも喜ぶし、いいことずくめじゃん?」
一方通行「チッ……」
正宗<悪いことといえば、こやつが何もせぬ穀潰しであるということくらいなものであろう>
一方通行「うるせェ、虫は黙ってな」
正宗<何だと!?>
佐天「はいはい、二人とも落ち着いて。正宗も余計な事言わないの」
正宗<むぅ……>
黄泉川「二人とも佐天には敵わないみたいじゃん?」
668 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 21:21:07.78 ID:bCTvWCoo
一方通行「別にそんなこたねェよ、ただガキみたいに騒ぐのはみっともねェってだけだ」
佐天「そうだ!黄泉川さんもご飯食べてきます?」
黄泉川「申し出はありがたいんだけど、もう食べて来ちゃったじゃん。もう学校に向かわ
ないと行けないし気持ちだけ貰っとくじゃん」
佐天「そうですかー、残念ですね。それじゃあ気をつけて行ってきてくださいね」
黄泉川「おう!それじゃあ行ってくるじゃん!そんじゃあ一方通行を頼むじゃん?
未来から来たとかいう青色虫型ロボットの正宗君?」
正宗<だからロボットではな――、おい!待たぬか!>
一方通行「突っ込むとこそこなのかよ……」
正宗<まったくあの行かず後家め……、何度言ってもわからぬとは、あの年で耄碌して
おるのか……>
一方通行「それ絶対本人の前で言うんじゃねェぞ?」
669 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 21:38:09.15 ID:bCTvWCoo
〜朝食後〜
佐天「それじゃあ私はそろそろ学校に行くから」
正宗<ううむ、御堂を単独で外に行かせるのは反対なのだが……>
佐天「大丈夫だって、学校終わったら真っ直ぐ帰って来るし、人通りの多いところを通れば
敵も手は出せないでしょう?」
正宗<しかし、御堂……>
佐天「そんな心配そうにしないの、それにもし私が危なくなったら正宗が助けに来て
くれるでしょ?」
正宗<む、それもそうだな。御堂に危険が迫ったならば吾が駆け付け蹴散らせばよい
だけの話だな!グハハハハ!>
一方通行「単純な奴」ボソッ
佐天「それじゃあ正宗、私がいない間二人をお願いね?」
正宗<心得た!吾が居る限りこの部屋は難攻不落の城塞も同然!>
佐天「二人とも、今日は午前中で帰ってくるけど、遅くなった時のために一応お昼ご飯も
作っておいたから私の帰りが遅かったら温めて食べてね?」
打ち止め「はーい!ってミサカはミサカは元気一杯に返事をしてみる!」
一方通行「悪いな」ボソッ
佐天「じゃあ、いってきます!」
正宗<車に気をつけるのだぞ、御堂>
一方通行「ガキかよ……、って、そういやアイツはまだ中一か……」
670 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 21:49:32.17 ID:bCTvWCoo
〜学校〜
佐天「おっはよぉー!みんな!」
アケミ「お〜!涙子、久しぶりじゃん!」
むーちゃん「今年の夏はあんまり一緒に遊べなかったけど……、何かあったの?」
佐天「いやー、今年の夏は色々あってさ」
むーちゃん「何それ?あっ!もしかして彼氏でも出来たの?」
佐天「あ〜〜……、まあそんなところかも」
アケミ・むー「「ええ〜〜!!!??」」
佐天「ちょ!?声が大きいってば!」
アケミ「何それ!?そんな素振りなかったじゃん!?詳しく聞かせてよー!」
佐天「冗談!冗談だって!」
671 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 21:58:31.24 ID:bCTvWCoo
〜教室内別の場所〜
佐天・アケミ・むー「「「ワーワー!」」」
初春「佐天さん達は随分と盛り上がってますね」
マコちん「そうだね、でもちょっと安心したな……」
初春「安心、ですか?」
マコちん「うん、涙子って一学期の終わりくらいからよく怪我とかしてたからさ……
悪い彼氏とかに暴力でも振るわれてたらどうしようって、心配だったから。
元気そうで安心したよ……」
初春「そうですか、優しいんですね」
初春(その予想が100%外れてると言えないところが悲しいですね……)
672 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 22:08:45.47 ID:bCTvWCoo
〜放課後〜
佐天「う〜〜ん……」
初春「どうかしたんですか佐天さん?」
佐天「ああ初春。実はね、なんか大切なことを忘れてるような気がしてさぁー。
思いだそうと頑張ってるんだけど……」
初春「もしかして学園都市の……?」
佐天「違う違う!そんな物騒なものじゃないんだろうけど……。とても大切な……、
以前までの私を象徴するような?」
初春「危ない事じゃなければいいんですけど。思い出したら私にも教えてくださいね?
私はジャッジメントの方へ行きますから。また明日」
佐天「うん、また明日ね」
アケミ「どうしたのよ涙子?柄にもなく考え事?」
佐天「ああアケミ、そうなんだけどさ。って何気にヒドイこと言うね君は……」
673 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 22:21:35.19 ID:bCTvWCoo
アケミ「気にしない気にしない、で何をそんなに悩んでるのよ?」
佐天「いやー、何かで悩んでるというより何かを思い出したくて悩んでると言った方が
正しいかと」
アケミ「何それ?」
〜少し離れた場所〜
むーちゃん「なんか涙子って夏休み明けてから雰囲気変わってない?」
マコちん「むーちゃんもそう思う?雰囲気変わったっていうか、大人っぽくなったっていうか……」
アケミ「そう言えばさ、涙子はういはるんにもうアレやらないの?」
佐天「アレって?」
アケミ「一学期はよくういはるんのスカートをめくってたじゃん。こうバサーって」
佐天「そ れ だ 」
674 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 22:27:42.82 ID:bCTvWCoo
アケミ「へっ?」
佐天「よく考えたら、私ここ一ヶ月以上初春のスカートをめくってないよ!」
アケミ「そ、そうなの?」
佐天「今から追えば初春に追いつける筈!じゃあねアケミ!私は初春の後を追うわ!」
アケミ「う、うん……。また明日」
ダダダダダ!
むーちゃん「大人っぽく……?」
マコちん「気のせいだったかも?」
初春「あれ?どうしたんですか?佐天さ――キャァァ!?」
675 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 22:38:15.03 ID:nzt0oREo
さすが佐天さんだ(ry
676 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/09(木) 22:41:36.72 ID:jJduRIg0
それでこそ佐天さんだ
677 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 22:45:16.35 ID:bCTvWCoo
〜佐天自宅 夕食後〜
打ち止め「今日の学校はどうだったの?ってミサカはミサカは興味津々に聞いてみる!」
佐天「今日は特に授業とか無かったよ」
打ち止め「学校にはテストとかもあるんでしょ?ってミサカはミサカはネットワークで聞いた
ことを聞いてみる」
佐天「そうだねー、そういやテストがあるんだった。自信ないなぁー」
ピキーン!
佐天「閃いた!」
佐天(あらかじめテスト範囲の要点を網羅したペーパーを作って、それを正宗に渡して
テスト中に教えてもらえば……)
佐天(完璧だ、完璧すぎる。うちの中学は高レベルの能力者はいないから警戒も
甘いし……)
打ち止め(佐天さんどうしたのかな?なんかニヤニヤしてる?)
正宗<おお学び舎での話しか。御堂、鍛錬も良いが学問もあまり疎かにしてはいかんぞ?>
佐天「ご、後光が!?」
佐天(あの正宗がこんなことを言うなんて……、私も心を入れ替えなくては)
打ち止め「佐天さん大丈夫?ってミサカはミサカは心配そうに尋ねてみたり」
678 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 22:52:43.27 ID:bCTvWCoo
佐天「えっ?」
打ち止め「さっきから黙ってるからどうしたのかなぁーって、ミサカはミサカは心配してみたり」
佐天「今度のテスト頑張るぞぉー!って決意を固めてただけだから」
打ち止め「そうなんだ!じゃあ今度のテスト頑張ってね!ミサカも応援してるから!
ってミサカはミサカは精一杯の声援を送ってみる!」
佐天「頑張るぞー!おー!」
打ち止め「目指せいっちばーん!」
佐天「それは厳しい」
打ち止め「えーー!?」
679 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 23:03:14.48 ID:bCTvWCoo
〜佐天自宅 数日後早朝〜
目覚し時計「ジリリリリリリ!!」
佐天「う〜〜ん」ガッ!
目覚し時計「ジリリ、ガン!ぷしゅ〜」
バタン!
正宗<なんだッ!?敵襲かッ!?>
目覚し時計「………………」しゅ〜
正宗<なんだ目覚しが落ちただけであったか……>
佐天「むにゃむにゃ……」
正宗<御堂はまだ寝ておるか……。疲れておるのだろう、もう少し寝かせておいてやるか>
正宗<思えば遠くへ来たものだ……、吾がこのような安息の時間を過ごせるとわな……>
〜数十分後〜
ピンポーン!
佐天「ん〜〜?何の音?」
680 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 23:13:10.22 ID:bCTvWCoo
黄泉川「おーい佐天、黄泉川じゃん」
一方通行「寝てるンじゃねェか?」
黄泉川「佐天ならこの時間には起きてる筈じゃん?第一この時間に起きてなかったら
朝ご飯とか誰が作るじゃん?」
佐天「えっ!?黄泉川さん!?」ガバッ!
佐天「目覚しは!?」
目覚し時計「…………」
佐天「壊れてる……、もしかして落としちゃったのかな?って時間時間!」
佐天「うわっ!もうこんな時間!?って正宗は?」
正宗<すまぬ御堂、起こしては悪いと思い……>
佐天「あー、気にしなくていいよ目覚し落とした私が悪いんだし。黄泉川さーん、今開けるから
待っててください!」
黄泉川「了解じゃん」
681 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 23:22:59.11 ID:bCTvWCoo
ガチャ
佐天「すみません、ばたばたしちゃって」
黄泉川「気にすることないじゃん、学生なんだから寝坊の一つもしない方がおかしいじゃん。
それに普通の学生ならこの時間なら寝坊の内に入らないじゃん」
佐天「ありがとうございます。あっ、一方通行さん、打ち止めちゃんを起こしてご飯食べさて
あげてください。私は学校に行く準備をしなくちゃいけないんで……」
一方通行「了解、だが飯はどうすンだ?オレは飯なんて作れねェぞ?」
黄泉川「情けない男じゃん……」
一方通行「うっせ」
佐天「打ち止めちゃんには悪いんだけど、買い置きのパンとかカップめんですませてください」
682 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 23:33:24.41 ID:bCTvWCoo
一方通行「了解、起きろ打ち止め」
黄泉川「車で送って行った方がいいかもしれないじゃん?」
佐天「ありがたい申し出なんですが、まだ準備があるので遠慮します」
黄泉川「そうか、それじゃあ私はもう行くじゃん。あまり急がないようにな、いざとなったら
少しくらい遅れても構わないじゃん?」
一方通行「教師でアンチスキルの奴の言うことじゃねェ……」
〜○分後〜
佐天「昼ご飯は悪いんだけど、あるものですませちゃってね」
打ち止め「は〜い!ってミサカはミサカは元気よく返事してみる!」
正宗<すまなかったな、御堂>
佐天「そんな声出さないの!私のこと気遣ってくれたのは嬉しかったから」
一方通行「おい、これ持ってけ」
佐天「これは?パン?」
683 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 23:37:32.73 ID:bCTvWCoo
一方通行「さすがに何も食わねえンじゃキツイだろ?パン焼くぐらいならオレにもできる
からな……」
佐天「ありがとうございます!」
一方通行「ふん」
佐天「じゃあ、いってきます!」
打ち止め「いってらっしゃーい!ってミサカはミサカは佐天さんを送り出してみる!」
正宗<車に気をつけてな、御堂>
一方通行「あと曲がり角とかにも気をつけろよ」
684 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/09(木) 23:50:30.77 ID:bCTvWCoo
〜昼過ぎ〜
打ち止め「そろそろお腹空いてきたね、ってミサカはミサカはお腹を押さえてみる」
一方通行「もう一時を回ってやがるな……、じゃあ昼飯にするか」
正宗<だが、今日は作り置きはないぞ?>
一方通行「オレの体が万全なら外食って手もあるんだがな……。この状態で外に出て
万が一、変なのに絡まれたら厄介だ」
正宗<もし襲われたら吾が出ればよいが、御堂や白井殿から派手な行動はするなと釘を
刺されておるからな……>
打ち止め「ミサカはカップめんとかでもいいよ、ってミサカはミサカは提案してみる」
一方通行「お前がいいンならいいけどよォ」
正宗<あいや待たれよ!>
一方通行「どうした?」
正宗<ここは吾に任せて貰おうか!>
685 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 00:01:26.27 ID:dViP2eoo
一方通行「は?」
正宗<現状の責任は吾にある!ならばその責任を吾がとるのは当然のこと!>
一方通行「話が見えねェンだが?」
正宗<鈍い奴め!吾が御堂の代わりに打ち止めの昼食を責任を持って作ろうというのだ!>
一方通行「色々突っ込みたいところはあるが……、オレのは?」
正宗<貴様はそこいらの草でも食っておれ>
一方通行「喧嘩売ってンのか?」
正宗<冗談だ、今回は吾に責がある。おぬしの分も吾が作ってやろう>
打ち止め「ねえ、正宗は料理作った事あるの?ってミサカはミサカはおそるおそる尋ねて
みる」
正宗<経験はない、だが為せば成るという言葉もある。何事もやってみる事が大切だ>
686 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 00:09:26.65 ID:dViP2eoo
打ち止め「それって――」
一方通行「嫌な予感しかしねェぞ……」
正宗<二人はここで待っておるがいい!腕が鳴るぞ!>
打ち止め「そういえば正宗って台所にいるとあの虫みたいだよね、ってミサカはミサカは
ミサカネットワークで得た知識を披露してみたり」
一方通行「現実逃避したくなるのはわかるが、オレの精神ダメージを増やすような事言うン
じゃねェ」
打ち止め「カサカサ、カサカサ、ってミサカはミサカは擬音をつけてみたり」
一方通行「おい、やめろ。って待てよ?アイツ確か……」
正宗<ぬぅ!?足が届かん!?>
一方通行「だろうな。少し考えりゃわかりそうなもンだがな」
687 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 00:25:11.36 ID:dViP2eoo
正宗<吾とした事がなんたる不覚!>
一方通行「まあ脳味噌まで鉄になってンだ、無理もねェわな」
正宗<貴様は黙っておれ!>
打ち止め「でも手が届かないんじゃ料理は作れないよね?ってミサカはミサカは安堵を
隠せずに聞いてみる」
正宗<否!この程度の障害では挫けはせぬぞ!>
一方通行「じゃあどうすんだよ?アイツがいなきゃ人間形態にはなれねェンだろ?」
正宗<!! そうだ!肉体変成の術式を真似れば……>
一方通行「肉体変成?」
正宗<うむ!辰気を使い精巧な人型を作る術式だ。吾は辰気を使えぬ故、人の形は
作れぬが装甲形態を再現することくらいなら可能な筈だ>
一方通行「大丈夫なのか?」
打ち止め「爆発とかしないよね?ってミサカはミサカは後ろにさがってみる」
正宗<そこで見ておれ!吾の雄姿を!>
キイィィィン
一方通行「眩しッ!」
正宗<おお視界が高い!成功か!?む?手足が動かんぞ?」
一方通行「人型じゃなくて、ただのドラム缶じゃねェか!?」
688 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 00:30:55.06 ID:fjacwak0
正宗の人間形態か…胸が熱くなるな
689 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 00:34:07.35 ID:dViP2eoo
打ち止め「ドラム缶って言うよりもトーテムポールとかの方が近いかも……、ってミサカは
ミサカは感心してみる」
一方通行「もう諦めろって、おとなしくカップめんでも食えばいいンだからよ。なっ?」
正宗<一度の失敗で鬼の首を取ったかのように騒ぎおって、ここまで来て後に退けるか!
もう一度だ!>
キイィィィン!
打ち止め「ねぇ、大丈夫かな?ってミサカはミサカは心配そうに尋ねてみたり」
一方通行「爆発とかはしねェだろう」タブンナ
正宗<よしッ!今度こそ成功だ!グワハハハハ!人の手足があるというのも悪くはないな!
この術式を改良し、七機巧の八つ目として加えるのも悪くはないな!>
一方通行「オレは突っ込まねェぞ?」
正宗<もはや吾に死角ナァァアシ!二人とも吾が昼食を作り終えるのを楽しみに待って
おるがよいぞ!>ガシャンガシャン
690 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 00:44:16.31 ID:dViP2eoo
打ち止め「大丈夫かなぁ?ミサカはミサカは不安で堪らないんだけど?」
一方通行「もう止められねェだろ……、アイツは一回失敗しなきゃ懲りねェよ。
っておい!!その背中の羽みてェなのはどうにかしろ!!壁が削れる!!!」
〜台所〜
正宗<これと、これを入れて……。人参はと、ちまちま切るのは性に合わんな……
握り潰してしまうか。これならば小さくなって食べやすく一石二鳥だな>
一方通行「予想以上にヤベェな、通常なら料理の時に出る筈のない単語が飛び出し
やがったぞ……」
打ち止め「ミサカ達どうなっちゃうのかな?」
一方通行「安心しろ、オレが食って、これは到底食えねェってのを証明すれば
引き下がる筈だ」
691 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 00:55:31.25 ID:dViP2eoo
正宗<待たせたな!>
ドン!
正宗<腹が減っているだろう?遠慮せずに食べるがよい!>
一方・打ち止め「「…………」」
一方通行「こりゃ犬のエサか?」
打ち止め「これはすさまじいカオスだね、ってミサカはミサカは絶句してみる」
正宗<なんと失敬な!確かに見てくれは悪いかもしれぬが、味は確かなはずだぞ!>
一方通行「味見はしたのか?」
正宗<味覚はない>
一方通行「だろうな」
一方通行(キッチンの中のものしか使ってねェはずだからな……、味はともかく人体に
有害なものではないと思うが……。この匂いは凶器だぜ)
692 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 01:10:41.58 ID:dViP2eoo
打ち止め「あれ?なんだか果物みたいな匂いもするね?ってミサカはミサカはこの混沌と
した鍋の中を覗き込んでみる」
正宗<さすが打ち止め、吾が隠し味として仕込んだレモン汁に気付くとは>
一方通行「レモン汁だァ?今朝冷蔵庫の中を見た時はそンなもンなかった気がするンだが?」
正宗<うむ、冷蔵庫の中ではなく流しに出しっぱなしにしてあったぞ。御堂もそそっかしい
ところがあるものだ、使うついでに冷蔵庫の中に戻しておいたぞ>
一方通行「流しにだと?オイオイ、嫌な予感しかしねェぞ……」スタスタ
冷蔵庫「ガチャ」
食器用洗剤(レモン)「あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!俺はまた流しで食器を
洗う仕事が始まると思っていたら、なぜか料理に使われて冷蔵庫にしまわれていた。
なにを言ってるのかわからねえと思―――」
冷蔵庫「バタン」
一方通行「…………」
一方通行「コイツとずっと暮らしてたアイツは聖人君子かなンかか?」
693 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 01:20:33.96 ID:dViP2eoo
打ち止め「どうしたの?ってミサカはミサカは神妙な面持ちをしているあなたに尋ねてみる」
一方通行「この鍋の中身は捨てるぞ。これは人間が食えるもンじゃねェ……」
正宗<なんだとッ!?一口も食べずになぜそんな事がわかる!?>
一方通行「テメェ洗剤入れやがったろ!?そンなもン食ったら腹壊すわ!」
打ち止め「確かに洗剤は無理だよ。ってミサカはミサカは思いを率直に述べてみる……」
正宗<むぅ……>
一方通行「テメェは一人で先走りすぎなンだよ!ちょっとは周りの意見も聞けってンだよ!」
正宗<おぬしがそれを言うか!?>
694 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 01:28:53.99 ID:dViP2eoo
一方通行「ハッ!テメェよりはマシだろうがよ!?大体なンだよ!?この様はよォ!?
口だけで何一つまともにできてねェじゃねェかよ!?やったことといりゃあテメェの無能
っぷりを披露したくらいじゃねェか!?」
正宗<なんだとッ!!>
〜回想〜
三世村正「天下一名物とまで謳われた名甲も案外無能なのね?できることといったら
精々、床の間の飾りになってることくらいかしら?」
景明「村正、さすがにそれは言い過ぎだろう……」
〜回想終了〜
正宗<言わせておけばァ!!そこへ直れ!今日という今日はもう勘弁ならん!!>
一方通行「逆ギレかよ、おもしれェ!返り討ちにしてやるぜ!」
695 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 01:38:04.14 ID:dViP2eoo
打ち止め「二人ともやめなよぉ……、ってミサカはミサカは二人を制止しようとしてみる」
正宗<打ち止めはさがっておれ!>
一方通行「こいつばかりはアイツに賛成だぜ、お前はさがってな」
正宗<部屋を壊す訳にはいかぬからな、素手で相手してやろう>
一方通行「ハッ!殊勝な心掛けじゃねェか?だがオレは手加減しねェぜ?」
正宗<む?>
一方通行「鉄の塊相手に素手なンざ馬鹿げてるぜ!オレはこの杖を使わせてもらうぜ!?」
ゴンゴン!
正宗<ぬぅ!丸腰の相手に得物を使うとは卑怯な奴めッ!!>
ツルっ
一方・打ち止め「「あ」」
正宗<イカン!慣れぬ状態だからバランスが――」
ガッシャーン!
696 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 01:46:22.28 ID:dViP2eoo
〜数時間後〜
佐天「それでこの状態って訳?」
一方・正宗<「その通りです」>土下座
正宗<今回の事態は吾の不徳の致すところ>
一方通行「いや、カッとなって喧嘩売ったのはオレだ」
正宗<いやいや吾が>
一方通行「いやいやオレが」
打ち止め「埒が明かないね、ってミサカはミサカは嘆息してみる」
佐天「二人とも!」
一方・正宗<「はい」>
佐天「過ぎたことを悔やんでもしかたない!みんなで協力して部屋の片づけをするよ!」
一方・正宗<「はい」>
佐天「今回のことは許してあげるよ……ただし!」
佐天「今後二度とこんな喧嘩は起こさないこと、それが条件よ。約束できる
697 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 01:47:33.49 ID:dViP2eoo
上の文を訂正
佐天「今後二度とこんな喧嘩は起こさないこと、それが条件よ。約束できる?」
698 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 01:54:32.03 ID:dViP2eoo
正宗<約束しよう、二度とこんなつまらぬことで諍いは起こさぬと>
一方通行「オレも誓うぜ」
佐天「ならよろしい!それじゃあ掃除用具取って来るから待っててね」
打ち止め「ホント佐天さんは大人だね、それに比べて……、ってミサカはミサカは
ジト目でダメな二人を見てみる」
一方・正宗<面目ない」>
〜次の日〜
打ち止め「このままではいけないとミサカは思います!ってミサカはミサカは訴えてみる!」
一方通行「なンのことだ、と言いたいが大体の察しはついてる」
正宗<御堂に頼りきっている今の状況の事であろう?>
699 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 02:06:08.02 ID:dViP2eoo
打ち止め「その通り!三人も集まってまるでニートのように佐天さんに寄生しているこの状況
はどうにかしないといけないと思うの!ってミサカはミサカは力説してみたり!」
正宗<まったくもって異論はない。だが具体的にどうすればいいのだ?>
一方通行「素人が昨日みたいに手探りでやったら失敗するって目に見えてるぜ?」
打ち止め「助っ人を呼んできます!ってミサカはミサカは胸を張って自分の案を提示
してみる!」
正宗<成程、経験者の力を借りるという訳だな>
打ち止め「ただし、これにも条件があります!ってミサカはミサカは二人の前に人さし指を
突き出してみる!」
一方通行「条件?」
打ち止め「二人がまた暴走しないように特訓中は助っ人の人の指示に従って貰うよ、
異論はないよね?ってミサカはミサカは条件を突きつける」
一方・正宗<「ありません」>
打ち止め「よーし!それじゃあ、すぐにでも特訓を始めるよー!えいえい――」
一方・正宗・打ち止め「<「おー!!」>」
700 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/10(金) 02:11:30.76 ID:dViP2eoo
今回の投下はこれで終了です。
次回の投下で日常編は終われる予定です。
あと正宗と一方通行の扱いが少しヒドイですが、この二人には他の場面で名誉挽回の
機会があるのでご安心を。
それでは
701 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 06:44:06.12 ID:vbLnRpIo
おつー
702 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/10(金) 07:55:50.83 ID:p6YohIAO
二人ともかわいいなおい
703 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/12(日) 10:44:07.46 ID:Lv0eluEo
otu
食器用洗剤クソワロタ
704 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/13(月) 11:16:24.39 ID:NAbBBNQo
>>1
モツ
705 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/13(月) 22:14:36.00 ID:ygxE3C6o
明日の20時から始めますので、よろしくお願いします。
706 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/14(火) 01:09:15.39 ID:fJouUQAO
待ってるんだよ!
707 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/14(火) 20:00:46.29 ID:dhS4RNgo
時間になったので始めます。
708 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/14(火) 20:09:31.25 ID:dhS4RNgo
〜翌日〜
佐天「私は学校に行きますけど、喧嘩とかしないでくださいね?」
一方通行「わかってるよ、ニワトリじゃあるめェし、言われたことをそンなすぐに忘れたり
しねェよ」
佐天「それなら安心ですね。じゃあ私は行きますんで」
一方通行「おう、気ィつけて行けよ」
正宗<御堂は行ったか?>
一方通行「ああ」
709 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/14(火) 20:22:07.22 ID:dhS4RNgo
打ち止め「それじゃあ作戦開始だよ!ってミサカはミサカは高らかに宣言してみる!」
一方通行「作戦開始たって、お前が言ってた助っ人とやらはいつ来るンだよ?」
打ち止め「すぐに来る筈だよ!ってミサカはミサカは自信満々に言ってみたり!」
ピンポーン!
打ち止め「ほら来た!」
御坂妹「お邪魔します、と、ミサカは部屋の中に足を踏み入れます」
一方通行「お前は……」
御坂妹「お久しぶりです一方通行、と、ミサカは挨拶をします」
710 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/14(火) 20:37:07.59 ID:dhS4RNgo
大変申し訳ありません。
体の調子が悪くて、今日はこれ以上続けられそうにありません。
誠に申し訳ないのですが、続きは体調が回復し次第とさせていただきたいと思います。
待って下さっていた方には申し訳ありませんが、ご容赦下さい。
711 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/14(火) 20:44:56.57 ID:o9H.Sg.o
乙ー
712 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/14(火) 23:28:41.32 ID:fJouUQAO
乙なんだよ!
ゆっくり休むんだよ!
713 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/14(火) 23:31:13.75 ID:YjsHHfUo
おつ
待ってるから、しっかり休んでね
714 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/17(金) 13:40:17.70 ID:.mkHBvgo
先日は開始早々中断してしまい申し訳ありませんでした。
励ましのお言葉を下さった方々、本当にありがとうございます。
無事体調も回復しましたので、週明けくらいに投下できると思いますのでよろしくお願いします。
715 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 16:50:30.46 ID:Tc2.46.o
1レス投下するごとに体のパーツがひとつなくなるわけやな
716 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/17(金) 23:44:02.56 ID:/uJ0XQSO
毎レス付いてくるパーツを集めて正宗を完成させよう
創刊号は右手が付いて特別定価310円
717 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/18(土) 00:09:25.77 ID:h79iGrU0
完成させてどうするんだ?
纏うのか?あんな危険物ドMの方しか使わないぞwwwwww
718 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/18(土) 22:52:50.39 ID:Pe86FkSO
しかも安いwwwwww
719 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/18(土) 22:58:12.02 ID:VI5hqggo
次巻からは通常定価1,310円で全100巻とかになるのがこの手の商売だ
720 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/20(月) 00:49:56.64 ID:sXgzCm.0
回想で三世村正がでたけど、アイツ正宗と同じかそれ以下の腕だろ……
721 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/20(月) 00:56:07.81 ID:6swSrGso
料理で電磁抜刀の使用までいくあたり確実に正宗以下だな
722 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/20(月) 13:48:06.91 ID:9FPBKZ2o
今日の21時から開始します。
723 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 20:29:10.44 ID:RE.CDOwo
少し早いですが始めます。
724 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 20:34:35.02 ID:RE.CDOwo
一方通行「久しぶりだと?お前もしかしてあン時の妹達か?」
御坂妹「むぅ……、と、ミサカは口ごもります」
一方通行「どうした?違うのか?」
御坂妹「いえ、その通りです。ミサカは検体番号10032号。絶対能力進化実験において
最後にあなたと戦った個体です、と、ミサカは重い口を開きます」
一方通行「そンで、お前が打ち止めが呼ンだっていう助っ人か?」
御坂妹「はい、と、ミサカは肯定します」
725 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 20:47:05.98 ID:RE.CDOwo
一方通行「家事とかできンのかよ?」
御坂妹「必要最低限のことはできます。少なくとも、暴れて部屋の中をめちゃくちゃにする
ような事はしませんのでご安心を、と、ミサカは苦笑します」
一方通行「チッ」
正宗<返す言葉もないな……>
御坂妹「失礼しました、正宗さん。ミサカ達の恩人であるあなたに言ったつもりはありません、
と、ミサカは弁解します」
正宗<気にするな、吾が失態を演じたのは事実であるからな>
一方通行「オレにはフォローはねェのかよ」
726 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 20:56:37.68 ID:RE.CDOwo
打ち止め「もう!そんなとこで話してないで早く準備を始めようよ!ってミサカはミサカは
みんなを急かしてみる!」
一方通行「そンなに急ぐ必要あンのか?アイツが学校から帰って来るまで、たっぷり
時間があるぞ」
打ち止め「今日の目的はミサカ達の家事の練習だけじゃなくて、佐天さんに日頃のお礼を
するのが目的なの!ってミサカはミサカは今日の目的を説明してみたり!」
一方通行「具体的には?」
打ち止め「今日の晩御飯の準備をミサカ達でして、部屋の掃除をして、その後部屋を飾り
付けるの!ってミサカはミサカは計画の詳細を発表してみる!」
一方通行「飾り付けだァ?」
正宗<時間は十分にある。不可能ではないだろうが、具体的にはどうするのだ?>
御坂妹「御心配なく、あらかじめ食材と一緒に折り紙も買ってきています。これを使って
飾りを作りましょう、と、ミサカは折り紙を取り出します」
727 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 21:09:20.29 ID:RE.CDOwo
打ち止め「うわぁ〜!たくさんの色があるんだね!ってミサカはミサカは目を輝かせてみる!」
一方通行「折り紙かァ……、また随分と懐かしいもンを持って来たな」
正宗<ふむ、この色のついたちり紙で飾りを作るのだな?>
御坂妹「はい、と、ミサカは首肯します」
一方通行「役割分担はどうする?全員が一つのことをするって訳じゃあないだろう?」
御坂妹「そうですね、それでは効率が悪いですからね。まず優先するべきなのは料理の
準備と部屋の掃除でしょう、と、ミサカは提案します」
一方通行「そうだな、最悪飾りは無くても構わねェだろう」
728 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 21:21:00.86 ID:RE.CDOwo
打ち止め「え〜!ミサカは折り紙で飾り作りたいよう!ってミサカはミサカはぶーたれてみる!」
一方通行「わかったわかった、作るからそう騒ぐンじゃねェ」
御坂妹「時間的には大分余裕があります。大きなトラブルが無ければ問題なく飾りの作成に
取り掛かれる筈です、と、ミサカは推測します」
正宗<何事も起きなければよいのだが……>
一方通行「お前が……、いや、なンでもねェ」
御坂妹「異論が無いようでしたら役割分担をしたいと思います、と、ミサカは話を進めます」
729 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 21:32:02.41 ID:RE.CDOwo
御坂妹「メンバーは四人ですので、料理担当と掃除担当に二人ずつの分担にしようと
思います、と、ミサカは提案します」
打ち止め「異議なーし!」
御坂妹「正宗さんは料理に向いていないようですので掃除担当、上位個体は料理がしたい
と希望していたので料理担当、ミサカは料理ができるのがミサカしかいないため料理担当
をやらせていただきます、と、ミサカは分担を発表します」
正宗<と、いうことは吾と一方通行が掃除担当という訳か>
一方通行「大丈夫なのか?コレ?」
御坂妹「お二人を一緒にするのは自殺行為のような気がしないでもありませんが、四人しか
いないのでやむを得ないでしょう、と、ミサカは一抹の不安を隠しきれません」
730 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 21:46:12.51 ID:RE.CDOwo
打ち止め「大丈夫だよ……、ってミサカはミサカは二人を励ましてみる……」
一方通行「オイ、さっきまでの元気はどこ行った?」
御坂妹「ま、まあ、掃除は料理に比べれば難易度は低いですし、何かあればミサカも
手伝いますから大丈夫でしょう、と、ミサカは自分に言い聞かせるように言います」
正宗<心配する事はない!先日の失態は吾と一方通行が反目しあった結果だ、
同じ志の元、協力すればあのような事は起こるまい!>
打ち止め「そ、そうだよね!ってミサカはミサカは二人を応援してみる!」
御坂妹「分担も終わりましたし、そろそろ作業に取り掛かるとしましょう、と、ミサカは
話を進めます」
一方通行「グダグダ言っててもしょうがねェ、やってみるしかねェか」
打ち止め「よーし!それでは佐天さんへの日頃の感謝をこめて、『佐天さんのいない間に
部屋を綺麗にしてご飯も用意しよう大作戦』を発動します!ってミサカはミサカは宣言して
みたり!」
一方通行「清々しいくらいそのまんまだな」
正宗<わかりやすい方がよかろう>
731 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 22:01:03.77 ID:RE.CDOwo
打ち止め「ミサカ達はキッチンでお料理作るから二人は部屋の掃除をお願いね!って
ミサカはミサカはキッチンへ向かって走ってみたり!」
御坂妹「待って下さい上位個体、ミサカは二人に掃除の仕方を説明してから行きますので
何もせずに待っていて下さい、と、ミサカは上位個体に注意します」
一方通行「ったく、これだからガキって奴は……」
正宗<まあ、そんなことを言うな、子供は元気なのが一番だ>
御坂妹「上位個体を待たせているので手短に説明します、まずは―――」
御坂妹「以上で説明を終わります、と、ミサカは説明を終えて一息つきます」
一方通行「結構簡単なンだな」
御坂妹「それほど高度な事をする訳ではありませんからね、と、ミサカは笑います」
732 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 22:15:50.01 ID:RE.CDOwo
御坂妹「それではミサカは行きます、お二人とも頑張ってくださいね、と、ミサカは
キッチンへ向かいます」
一方通行「オイ、ちょっと待て」
御坂妹「何か質問ですか?と、ミサカは首を傾げます」
一方通行「あー、なンて言りゃいいンだろうな……。その、お前は嫌じゃなかったのか?
ここに手伝いに来るの……」
御坂妹「なぜですか?上位個体の頼み、という理由もありますが。ミサカ達の恩人である
佐天さんのお役に立てる、ということで学園都市に残る妹達の間で誰が行くかと争……
ゲフンゲフン、話し合って自ら望んで来たのですよ?嬉しいと思う事はありますが、嫌だと
感じることなどありえません、と、ミサカは断言します」
一方通行「アイツ等だけならそうだろうが……、ここにはオレもいるだろうが」
733 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 22:28:51.02 ID:RE.CDOwo
御坂妹「そうですね、あなたがここでお世話になっているのは上位個体から聞いていました、
それがどうかしましたか?と、ミサカは疑問を投げかけます」
一方通行「忘れた訳じゃねェだろうが?オレはお前等を一万人も殺したンだぞ?
それなのに、オレの失敗の尻拭いみてェな真似までさしちまって……」
御坂妹「べ、別にあなたの為じゃないんだからね!?と、ミサカはお姉様の真似をして
みます」
一方通行「は……?」
御坂妹「冗談はさておき、確かにあなたのしたことを忘れた訳ではありません。
しかし、あなたがいなければ妹達は処分されていたこと、そして上位個体を命懸けで
守ってくれた事も事実です。ですからあなたに対する感情はプラスマイナス差し引いて
マイナス50くらいです、と、ミサカは数値を提示します」
一方通行「そうか」
734 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 22:39:35.07 ID:RE.CDOwo
御坂妹「ちなみにプラスマイナスともに上限は100です」
一方通行「…………そうか」
御坂妹「さらに補足するとマイナス100は死して輪廻転生を繰り返してでも殺しに行くくらい
の殺意です、と、ミサカは説明します」
一方通行「100でそれなら50でも殺意あるンじゃね?」
御坂妹「冗談ですよ、本気にしないでください、と、ミサカは一方通行を安心させます」
一方通行「ったく、心臓に悪い冗談はよせっての」
御坂妹……「まじめな話ですが、ミサカ達はあなたのしたことについてどうすればいいのか
わかりません、と、ミサカは正直に告げます」
735 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 22:54:39.89 ID:RE.CDOwo
訂正 前のレスの「」の前の点は「」内です
一方通行「わからない?」
御坂「はい、あなたがいなければ今のミサカ達が存在しないこと、形こそ違えどあなたも
ミサカ達を思っていてくれたことはわかっています……。しかし、あなたの手で一万人の
ミサカ達の命が失われた事も事実です」
一方通行「…………」
御坂妹「ミサカ達に復讐の意志はありません。ですが、あなたのしたことを許せるかは
わかりません。今はわからなくとも、今以上に様々な感情を持てば、あなたのことを許せ
ないと思うようになるかもしれません」
御坂妹「それでも、そんなミサカ達にも一つだけ、確かな思いがあります……」
一方通行「言ってくれ、覚悟はできてるぜ」
736 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 23:05:45.05 ID:RE.CDOwo
御坂妹「あなたを許せるかはわかりません……、それでも、ミサカ達はあなたを責めません、
と、ミサカは宣言します」
一方通行「それはどういう意味だ?」
御坂妹「言葉通りの意味です、あの日、あなたは上位個体だけではなく、結果的にはミサカ達
全員の命を救いました。あなたはミサカ達にとっても命の恩人です、ですからミサカ達は
あなたを責めません、だから――――」
打ち止め「あなたも、もう自分を責めないで――」
一方通行「なッ!?打ち止め!?いつからそこに!?」
打ち止め「一緒の部屋の中にいるんだもん、いやでも声は聞こえるよ、ってミサカはミサカは
笑ってみる」
御坂妹「上位個体……」
737 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 23:15:57.75 ID:RE.CDOwo
打ち止め「ミサカ達はあなたを責めないよ、これはミサカ達全員の総意……。
だから、この話はもうお終い」
一方通行「で、でも!オレは――!」
打ち止め「早くしないと佐天さんが帰って来るのに間に合わないよ?ってミサカはミサカは
キッチンに戻ろうとしてみる」
一方通行「オイ!」
打ち止め「一方通行も早く掃除を済ませちゃってね!ってミサカはミサカは早く仕事を
するように促してみる!」
一方通行「…………」
正宗<なぁ、一方通行よ……>
738 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 23:30:41.15 ID:RE.CDOwo
一方通行「なンだよ……」
正宗<吾はおぬしがやったことを認めることも許すこともできぬ、以前の吾ならば問答無用
で叩き斬っておったであろう……>
一方通行「そうか……」
正宗<だが、御堂も、打ち止めも、妹達もおぬしを許すと言っておる。ならば吾も、他の誰も
口出しする事はできぬであろう。だからおぬしも己を許し、罪を贖う方法を探すのだ……。
己を罰するのではなく、彼女達のために何かを為す事でな>
一方通行「正宗……」
正宗<…………>
一方通行「お前って、まともな事も言えンだな」
正宗<そうか、おぬし吾に断罪して欲しかったのか。そこへ直れ!真っ二つにしてくれ
ようぞ!!>
御坂妹「台無しです、と、ミサカは溜め息を吐きます」
739 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 23:37:50.03 ID:RE.CDOwo
打ち止め「コラー!!二人とも何やってるの!!ってミサカはミサカは憤慨してみる!!!」
正宗<あ、いや、これはだな>
一方通行「ちょっとした行き違い……、ってその手に持ってるフライパンを置け!!」
打ち止め「あれだけ言われてもわからないなんて……、佐天さんに代わってミサカが
二人におしおきをするんだから!ってミサカはミサカはフライパンを振り上げてみる!!」
>ヨセウチドメ!オトガヒビク!
>オレナンテナマミダゾ!?
>ハンセイシナサーイ!!
御坂妹「やれやれ、と、ミサカは肩を竦めます」
御坂妹「でも――」
御坂妹「暗い顔をしているよりずっといいですね、と、ミサカは微笑みます」
一方通行「オイ!笑ってないで助けやがれェ!」
740 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 23:50:25.92 ID:RE.CDOwo
再び訂正 ウチドメ←ラストオーダー
一方通行「さて、ようやく嵐が過ぎ去った訳だが……」
正宗<まったく、おぬしが余計な事を言うからだぞ?>
一方通行「あー、まあ反省はしてる」
正宗<そうか、喧嘩両成敗と言うしな、吾も悪かった。この事は水に流し、仕事に取り掛かろう>
一方通行「そうだな、結構なタイムロスになったしな。分担は壊れモノが多い棚の上と窓を
オレ、お前は床を担当しろ」
正宗<了解した>
一方通行「雑巾がけする時に背中の奴は使うなよ?絶対に使うなよ?」
御坂妹「一方通行、ネタ振りのような発言は謹んでください、と、ミサカはキッチンから
警告します」
741 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/20(月) 23:59:26.45 ID:RE.CDOwo
今日はここまでになります。
次は水曜日の21頃から開始する予定です。
742 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/21(火) 00:00:26.59 ID:UhCrcIAO
乙なんだよ!
743 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/21(火) 00:01:42.24 ID:aiRZKUoo
乙ー
744 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/21(火) 01:09:20.11 ID:Hjr.oUYo
一方さん能力使用モードにできねーの?
できんならいくらなんでもビビリすぎじゃね?
745 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/21(火) 14:06:35.14 ID:UhCrcIAO
>>744
一通さんが幼女に反射使う方がおかしいだろ!
746 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 20:57:13.21 ID:fiRj.OUo
時間になったので始めます。
747 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 21:03:20.88 ID:fiRj.OUo
〜数十分後〜
一方通行「やれやれ、どうにか終わったみてェだな……」
正宗<出来が良いかと問われれば、疑問符を付けざるを得んがな>
一方通行「そう言うな、何もぶっ壊れなかっただけマシだろうが?」
正宗<そう考える事にしよう……>
一方通行「そうしとけ。後はこの折り紙で適当に飾りを作りゃあ準備完了だな」
748 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 21:09:59.79 ID:fiRj.OUo
正宗<飾りを作ると言っても、何を作ればよいのだ?>
一方通行「打ち止め達はまだキッチンだしなァ……。材料に大分余裕もある、とりあえず
作れるだけ作ってみるか」
正宗<うむ>
一方通行「つーか、どれだけ買って来てンだよ……」
折り紙100枚入り×10
正宗<吾等が失敗する可能性を考慮し、大量に用意した可能性が高いな……>
一方通行「気に入らねェが多分そうだろうな」
正宗<くッ!なんたる屈辱!>
一方通行「仕方ねェ、恥の上塗りだけはしねェように慎重に行くぞ」
749 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 21:20:22.58 ID:fiRj.OUo
正宗<吾はどうすればよいのかさっぱりわからん、おぬしに任せるぞ>
一方通行「オレも折り紙には詳しくねェし、あんま作れンのは多くねェぞ?」
正宗<構わん!やれ!>
一方通行「オレが折れンのはコレくらいだな……」おりおり
正宗<慎重に折るのだぞ!爆発するやもしれん!>
一方通行「ンな訳ねェだろ……、っと、できたぞ紙飛行機だ」
正宗<おお!これが飛行機か!おぬしもなかなかやるではないか!>
750 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 21:30:25.23 ID:fiRj.OUo
一方通行「飾り作るってのに、紙飛行機作ってもしょうがねェンだけどな……」
正宗<これを作ればよいのではないのか?>
一方通行「歓迎会の会場を飛行場にしてどうすンだよ……。床に紙飛行機が並ンでたら
邪魔にしかなンねェだろうが」
正宗<八方塞か……>
御坂妹「ミサカが指導しますのでご心配なく、と、ミサカは落胆する正宗さんに声を
かけます」
一方通行「ン?そっちも終わったのか?」
御坂妹「はい、片付けが終わり次第合流しますので少しお待ちを、と、ミサカは二人に
伝えます」
正宗<ならばしばし待つとするか>
751 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 21:41:46.05 ID:fiRj.OUo
〜十分後〜
正宗<この緑の紙を張り合わせて昆布とかはどうだ!?>
一方通行「意味わかンねェし……」
打ち止め「お待たせー!ってミサカはミサカは後ろから飛びついてみる!」
一方通行「うおッ!?いきなり飛びつくな!危ねェだろうが!」
御坂妹「ふぅー、これで晩御飯の準備と掃除が終わりましたね、と、ミサカは感慨深げに
呟いてみます」
正宗<うむ!戦いを終えたような爽快感があるな!>
一方通行「物騒なたとえしてンじゃねェよ」
御坂妹「まだ戦いは終わってません、ミサカ達には部屋を飾りつけるという戦いが残って
います、と、ミサカは気を引き締めます」
打ち止め「ミサカ達の戦いはこれからだぁー!ってミサカはミサカは漫画の最後っぽい
セリフを言ってみる!」
一方通行「なンでもいいから早く始めようぜ……」
752 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 21:55:58.10 ID:fiRj.OUo
御坂妹「それではこれより、ミサカの折り紙教室を始めたいと思います、と、ミサカは宣言
します」
打ち止め「イェ〜〜イ!ってミサカはミサカは合いの手を入れてみる!」
一方通行「で、何をすりゃいいンだ?見ての通りオレは紙飛行機ぐらいしか作れねェぞ?」
正宗<吾は何も作れんぞ!>
御坂妹「自慢げに言う事ではありませんね……。お二人は子供の頃に折り紙を使って
遊んだ経験はないのですか?と、ミサカは質問します」
一方通行「ガキの頃は色々あってやったことねェな」
正宗<吾の時代にはこのような文化はなかったな>
753 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/22(水) 22:07:13.93 ID:n7CMfTY0
折り紙は一応平安時代からありますy…
庶民にまで一応の形で広がったの江戸だったわ
754 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 22:07:56.89 ID:fiRj.OUo
一方通行「折り紙もないとかいつの時代の人間だよ。つーかお前何歳くらいなンだよ?
見た目じゃさっぱりわかンねェしよ」
正宗<歳か?うーむ、もう何百年も前の事だからな……。正確には覚えておらんな>
打ち止め「何百年!?正宗ってスゴイおじいちゃんなんだね!ってミサカはミサカは
驚いてみたり!」
御坂妹「おじいちゃんというレベルではない気がしますが……。劒冑というものには寿命の
概念がないのですか?と、ミサカは疑問を投げかけます」
正宗<うむ、吾の知る限りで寿命で死んだ劒冑の話は聞いたことが無いな。吾は元寇の
折に劒冑となったが、吾より古い劒冑も―――>
一方通行「ちょっと待て」
正宗<どうした?>
一方通行「ちょっと気になる事があってな……。今言った元寇ってのはアレか?モンゴルが
攻めて来た元寇のことか?」
755 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 22:19:45.34 ID:fiRj.OUo
正宗<モンゴル?>
一方通行「あー……、元の事だ、蒙古襲来って言えばわかるか?」
正宗<おお!蒙古共の事であったか!吾がまだ人であった頃、あの忌々しい蒙古共が
攻めて来て―――>
一方通行「いや、それ以上はいい。オレが知りたいのはお前の言ってる元寇ってのが
なンなのか確認したかっただけだ」
御坂妹「それがどうかしたのですか?劒冑に寿命の概念がないのでしたら元寇の時代から
生きていても不思議はないでしょう、と、ミサカは疑問符を付けます」
一方通行「オレが疑問に思ったのはそこじゃねェ、お前は別の世界から来た、そうだったよな?」
正宗<うむ、吾は大和の富士の麓にいた筈が、気付けばこの日本の学園都市に飛ばされ
ておった……。ええい!今思い出しても口惜しい!!>
756 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 22:31:18.26 ID:fiRj.OUo
御坂妹「ヒートアップしているところ恐縮ですが、富士とは富士山のことですよね?と、
ミサカは確認をとります」
正宗<う、うむ、その通りだ……>
打ち止め「? それがどうかしたの?ってミサカはミサカはハテナマークを浮かべてみる」
御坂妹「簡潔に説明すれば正宗さんのいた世界とミサカ達の世界、この二つの世界は
全く別の異世界ではなく、ある程度繋がった平行世界である、ということですか?と、ミサカ
は一方通行に問いかけます」
一方通行「そう考えるのが妥当だろうな」
757 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 22:46:43.00 ID:fiRj.OUo
打ち止め「それが何か問題でもあるの?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
御坂妹「恐らくですが急を要するような問題はないでしょう。何か問題になりうる事がある
とすれば、正宗さんの世界に居た人物、存在したもの、事件などがこちらの世界に有る
可能性があることくらいでしょう、と、ミサカは結論付けます」
一方通行「そうだな、だからなンだ、で済ませてもいいが、オレは劒冑って奴の存在が
どうも気になるンだよ……」
御坂妹「どういう意味ですか?と、ミサカは相槌を入れます」
一方通行「コイツの話じゃ、向こうの世界では劒冑ってのは世界の情勢を左右する
重要な要素だろ?さっきの話から察するに歴史上の事件の時期、山の名前、向こうと
こっちとの間にそれ程大きな差異がみられねェ。それなのに劒冑の有無なンて言う
決定的な所に違いがある……」
758 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 23:00:50.07 ID:fiRj.OUo
御坂妹「こちらの世界にも劒冑に相当するものが存在する筈……、という事ですか?」
一方通行「まあ、オレの勝手な推察だがそう考える事もできるンじゃねェか、ってな」
打ち止め「それって能力の事じゃないかな!?ってミサカはミサカは閃いてみたり!」
一方通行「その線も十分に有り得るが……。能力の開発、学園都市ができたのは
精々数十年前だ。少なく見積もっても数百年以上のズレがある」
正宗<おぬしの考えすぎではないか?吾の世界とこの世界に同じ所があると言っても
何から何まで同じわけではあるまい?>
一方通行「それもそうなンだがな……」
御坂妹「ちょっと待って下さい、と、ミサカは話に割り込みます」
一方通行「ン?」
御坂妹「数百年以上の昔から存在し、超常の力を司るもの。その条件に該当するものが
この世界にもありますよ、と、ミサカは自信満々の笑みを浮かべます」
打ち止め「おお!スゴイ!10032号!それって何なの!?ってミサカはミサカは興味津々
に聞いてみる!」
御坂妹「それは―――」
御坂妹「魔法、ではないでしょうか?と、ミサカは冗談交じりに答えます」
759 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 23:14:34.10 ID:fiRj.OUo
一方通行「チッ、期待させといてくだンねェこと言ってンじゃねェよ」
打ち止め「それはちょっと無理があるよ、ってミサカはミサカは期待させておいて冗談を
言った10032号に腹を立ててみる」
御坂妹「これは失礼しました、と、ミサカは素直に反省をします」
正宗<10032号の言った事は間違っておるのか?>
一方通行「オレ達の使ってる能力は魔法みてェに見えるかも知れねェが魔法とは別物だ、
歴史だってそう古くはねェ。大体昔から魔法なンて力が存在するンなら、なンで表に出ない?
もし魔法があるンなら、そっちの世界みてェにその力を使って国同士がどんぱちやってても
おかしくねェだろ?」
御坂妹「正論ですね、と、ミサカは首肯します」
打ち止め「でも本当に魔法があったらいいのにね!ってミサカはミサカは夢を膨らませて
みたり!」
760 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 23:25:20.09 ID:fiRj.OUo
一方通行「夢見ンのは勝手だがな、魔法と同じおとぎ話の存在の超能力が使えるように
なっても、それを使ってやってる事は人体実験や殺し合いだぜ?魔法が存在しても派閥
争いだの殺し合いだのでメルヘンな事はなンもねェと思うぜ?」
打ち止め「うう、高速で夢を砕かれてミサカはミサカはしょんぼりしてみたり……」
御坂妹「元気を出して下さい上位個体、と、ミサカは上位個体を励まします」
正宗<まったく大人げない奴じゃな>
一方通行「ほっとけ……、っと話を脱線させちまったせいで時間がヤバいな」
御坂妹「そうですね、それでは説明に戻りましょう、と、ミサカは軌道修正します」
761 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 23:40:40.56 ID:fiRj.OUo
御坂妹「それでは私は上位個体に教えつつ花や飾り玉を作るので、一方通行と正宗さんの
二人は簡単なわっかつづりを作ってください、と、ミサカは説明します」
一方通行「わっかつづりってのはあの鎖みてェなやつか……」
御坂妹「その通りです、見栄えもいいですし、片付けやすく言う事なしです、と、ミサカは
力説します」
一方通行「了解、そんじゃ作業に入りますかね」
打ち止め「作り方わかるの?ってミサカはミサカは心配してみたり」
一方通行「それくらいならな、オレがコイツにも教えながらやるからそっちはそっちでやって
くれ」
御坂妹「はい、それでは上位個体、始めましょうか、と、ミサカは上位個体を促します」
打ち止め「それじゃあ、残りの時間頑張って飾り付けをするよ!ってミサカはミサカは
張り切ってみる!」
一方通行「ほれ教えてやるからこっちに来い」
正宗<お手並み拝見といこう>
762 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 23:48:37.40 ID:fiRj.OUo
・
・
・
佐天「やっと学校終わったよ、みんな大丈夫かなぁ……」
〜帰宅〜
佐天「あれ?部屋の中が静かなような……。正宗どうかしたの?」
佐天「…………応答なし、か。もしかしたら何かあったのかも……」
ガチャ
佐天(鍵は開いてる……、それに中には人の気配もする……)
763 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/22(水) 23:56:31.45 ID:fiRj.OUo
佐天(もし相手が能力者だったら……、応援を呼んだ方がいい?それとも……)
正宗<ええい!何をまごついておるのだ御堂!早く中に入って来ぬか!>
佐天(正宗!?中にいるの!?)
正宗<ああ!皆揃っておる、何も危険などないから早く入って来るのだ!!>
佐天(? まあ、殺気とかは感じないし……)
佐天「た、ただいまー……」
パーン!
佐天「うわッ!?」
打ち止め「おかえりなさい、佐天さん!ってミサカはミサカはクラッカー片手に出迎えて
みたり!」
御坂妹「おかえりなさい、と、ミサカもクラッカーを手に上位個体に続きます」
764 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 00:10:21.37 ID:Fg3eXOoo
佐天「一体どうしたの!?なんか飾り付けられてるし、部屋もキレイになってるような……?」
打ち止め「あのね!いつもお世話になってるお礼にパーティーを開くことにしたの!って
ミサカはミサカは事情を説明してみる!」
御坂妹「部屋の掃除から晩御飯の準備まで全て終了しています、と、ミサカは誇らしげに
言ってみます」
佐天「妹さんまで手伝ってくれたんですか?」
御坂妹「はい、と、ミサカは肯定します」
佐天「すみません、わざわざ……」
御坂妹「いえ、あなたから受けた恩に比べればこの位は……、と、ミサカは正直に述べます」
佐天「で、でも 正宗<ガハハハ!その二人だけではないぞ!この正宗と一方通行の
奴めも一役買っておるぞ!!>
765 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 00:21:31.71 ID:Fg3eXOoo
佐天「え?一方通行さんが?」
一方通行「なンだ?そンなに意外か?」
佐天「そんなことないですよ!とっても嬉しいです!」
一方通行「ふん……」
佐天「それで?二人は何をしたの?」
正宗<聞いて驚け!吾と一方通行の二人でこの部屋を掃除し、部屋の飾り付けまでした
のだぞ!>
佐天「ホント!?スゴイじゃん!よく頑張ったね!」
正宗<ワハハハハ!!もっと褒めても構わんのだぞ!?>
766 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 00:31:46.90 ID:Fg3eXOoo
佐天「正宗は何作ったの?」
正宗<吾等が作ったのは天井と窓の所の輪っかを作ったぞ!>
御坂妹(カーテンの代わりになるんじゃないかと思うくらい沢山ありますが……)
佐天「よくこんなに沢山作れたね、スゴイよ!一方通行さんもありがとうございます」
一方通行「世話になってるからな……」
御坂妹「晩御飯もミサカ達が用意するので佐天さんは何もせずにゆっくり体を休めて
下さい、と、ミサカは佐天さんに休息を促します」
佐天「さすがに何か手伝った方が……」
打ち止め「ダメだよ!今日は何にもしちゃダメ!ってミサカはミサカはお手伝いを断固拒否
してみる!」
767 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 00:44:07.73 ID:Fg3eXOoo
佐天「どうして?」
打ち止め「佐天さん、いつも学校から帰ったら掃除して、ご飯作って、その後はミサカの
遊び相手もしてくれて……。ミサカ達は佐天さんに頼ってばっかり……、だからミサカ達も
佐天さんの為になにかしたいの!ってミサカはミサカは胸の内を打ち明けてみる!」
佐天「打ち止めちゃん……」
打ち止め「ミサカ達を頼っていいんだよ?だってミサカ達は、その、か……」
打ち止め「家族、なんだから…………」
768 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 00:57:05.67 ID:Fg3eXOoo
一方通行「打ち止め……」
佐天「そっか……、家族か……」
打ち止め「ダメかな?ってミサカはミサカはおそるおそる聞いてみる」
佐天「ダメな訳ないじゃない……、そこまで言うんなら家事では頼りにさせてもらうよ?」
打ち止め「うん!どんどん頼りにしてよ!ってミサカはミサカは腕まくりのポーズ!」
御坂妹「さしずめ、上位個体は妹、一方通行は父……というより兄ですね。そして父親が
正宗さん、佐天さんは長女ですかね、と、ミサカは家族構成を予想します」
一方通行「オレが長男、アイツが長女、打ち止めが次女か……。しっかし使えねェ親父だなァ
おい?」
正宗<口の減らない奴め、だが今の吾は寛大だ。許してやろうではないか>
佐天「それじゃあ晩御飯まで何する?ゲームでもする?」
打ち止め「え?でもお手伝いするって言ったばかりなのに……、ってミサカは……」
佐天「遠慮しないの!お姉ちゃんにはたっぷり甘えていいんだよ?」
打ち止め「う、うん!」
769 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 01:04:11.41 ID:Fg3eXOoo
〜夜 七時少し前〜
御坂妹「それではミサカ達は晩御飯を作ってきます、準備は済んでいるのですぐに
できると思いますので待っていてください、と、ミサカはキッチンへ向かいます」
打ち止め「楽しみに待っててねぇー!ってミサカはミサカは興奮を抑えきれない!」
タタタ!
佐天「晩御飯なんなんでしょうね?」
一方通行「さあな?」
正宗<吾等は台所に入っておらぬからわからんなぁ……>
一方通行「ま、言葉通り待ってるしかねェだろ」
佐天「なんかドキドキして来たなぁ」
770 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 01:08:39.45 ID:Fg3eXOoo
打ち止め「じゃじゃ〜ん!できたよぉ!ってミサカはミサカははしゃいでみたり!」
御坂妹「上位個体走ったら危ないですよ、と、ミサカは注意を促します」
打ち止め「おおっと!そうだね、慎重に慎重に……」
コトッ
正宗<ふむ?これはなんという料理だ?>
一方通行「これは……」
佐天「ハンバーグ?」
打ち止め「大正解!ってミサカはミサカは拍手してみる!」
771 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 01:18:11.54 ID:Fg3eXOoo
一方通行「懐かしいな……」
佐天「一方通行さん?」
御坂妹「これは上位個体と一方通行が初めて一緒にご飯を食べた時のメニューでしたね、
と、ミサカは説明します」
打ち止め「そうだけど、懐かしいって程前じゃないような……」
一方通行「悪いな、昔の事を思い出してただけさ……」
佐天「昔の事、ですか?」
一方通行「ああ……」
一方通行(家族、か……)
佐天「どうかしたんですか?」
一方通行「いや、またこんな風に飯を食う事があるなンて思わなかったからな。今、オレが
こうしてられんのはお前のおかげでもある……。だから……」
一方通行「ありがとな、佐天……」
772 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 01:29:38.38 ID:Fg3eXOoo
打ち止め「おおー!ってミサカはミサカは驚いてみる!」
佐天「ふふっ、初めてちゃんと呼んでくれましたね。私の事……」
正宗<ガハハ!一方通行の奴!顔を真っ赤にしておるぞ!!>
御坂妹「お、落ち着いてください!検体番号10310号!と、ミサカは感覚共有していた
10310号を宥めます!」
一方通行「う、うるっせェ!いちいち騒ぐような事じゃねェだろ!とっとと飯食っちまうぞ!」
佐天「そうですね、それじゃあみんな席について……」
打ち止め「はーい!ってミサカはミサカは元気よく返事をしてみる!」
御坂妹「やっと収まりました、と、ミサカは安堵の息を吐きます」
正宗<今ばかりは人の体の方がよかったな……>
打ち止め「何か食べる?ってミサカはミサカは正宗を気遣ってみる」
正宗<いや、おぬし等が食事を食べているところをみれば吾は満足だ>
一方通行「殊勝な心掛けじゃねェか?」
正宗<一方通行よ、打ち止め達が作った物を残すでないぞ?>
一方通行「はいはい」
佐天「それじゃあ、みんな準備はいい……?」
打ち止め「うん!」
佐天「せーの――」
「「「「「いただきまーす!!」」」」」
773 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/23(木) 01:32:20.18 ID:Fg3eXOoo
今日はこれで終了です。
今回の投下で日常編は終了、次回からは暗部編になります。
次回の投下は日時が決まり次第連絡します。
それでは
774 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/23(木) 02:08:25.22 ID:m20XeX20
乙!凄く良かった!続き楽しみ
775 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/23(木) 04:32:13.67 ID:Ysgj7xYo
乙ー
みんな可愛いなww
776 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/23(木) 10:09:32.82 ID:LDxk4EAO
乙なんだよ!
ハンバーグ食べたいんだよ!
777 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/27(月) 23:28:11.91 ID:YpKs6Ogo
感想のレスを下さった方々、どうもありがとうございます。
次回は木曜日の21時から始める予定ですので、よろしくお願いします。
778 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/28(火) 12:20:42.34 ID:thhTrMAO
待ってるんだよ!
779 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/28(火) 20:58:24.31 ID:03PHwkMP
邪悪編やったけど面白かったね
>>1
はもうやったのかな
780 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/09/29(水) 21:09:18.59 ID:KmW8AsAo
>>779邪念編は残念ながらまだやっていません
いつになるかはわかりませんが、このSSが完結したら買おうかな〜、と思っています
後、この先のストーリーに関しての注意事項です
このSSでは主要人物は原作キャラですが、次回からオリキャラの数が増えます
オリキャラについては受け付けない方もいらっしゃると思いますが、ご容赦ください
781 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/09/30(木) 11:28:54.73 ID:VdwHUwDO
オリキャラは受け付けない(キリッ
とか言っちゃう奴ってなんか哀れだよね
782 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 20:57:06.05 ID:NYcHQ86o
時間になったので始めます
783 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 21:01:16.57 ID:NYcHQ86o
「チッ……、なんで私がこんな面倒くさい事を……」
深夜、人気のない裏路地に苛立たしげな声が響く
「しかたないよ、むぎの。上からの命令だもの」
それに別の少女、滝壺理后が応じる
「別に仕事に不満がある訳じゃないわよ、ただ……」
そこまで言って私は溜め息を一つ吐いた
784 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 21:10:53.48 ID:NYcHQ86o
「他の奴らの仕事に協力しろ、なんて馬鹿みたいな電話が来たと思ったら……
今度は寄越すのは滝壺一人でいい、と来たもんだ」
私は両手を上げ、呆れたとでもいうようなジェスチャーをした
「戦闘能力の低いあんた一人を寄越せなんて、私達を嵌めようとしてるようにしか思えない
わよ」
「でも、上からの命令だし。罠なんて事はないと思う」
滝壺がそう切り返してくる
「私だってそうは思うんだけどね。仕事のパートナーがコイツじゃあね……」
再び溜め息を吐くと、先程から黙っていた少女に視線を向ける
「あちゃー、僕ってそんなに信用ないんだ?」
785 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 21:22:01.14 ID:NYcHQ86o
私の視線の先、男のような服装をし、帽子をかぶった少女が声を上げる
「これでも仕事熱心な優等生のつもりなんだけどなー」
少女はクスクスと笑い声をこぼす
「言ってろ」
私と同じ、暗部に所属する能力者
紅宮炸夜(べにみやさくや)に吐き捨てるように言った
「あんまり怒ると皺が増えるよー?」
「ぶち殺されてぇのか?」
あからさまな挑発に私の苛立ちはさらに加速する
786 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 21:29:35.17 ID:NYcHQ86o
「これからどうするの、べにみや?」
私達の様子を見かねたのか、滝壺が私達の間に割り込む
「ターゲットを追跡して、ここで待ち伏せてるけど。この後は?」
「とりあえずはここで待機だね」
滝壺の問いに紅宮はそう返答する
「ここでアホ面下げた馬鹿共が来るのを待ち伏せして、まとめて吹っ飛ばせばいいのか?」
コイツとの会話で募ったイライラをどこかにぶつけたくてしょうがない
「あー、それなんだけどね……」
やる気満々な私を見て、珍しく紅宮が言葉を濁す
787 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 21:38:40.10 ID:NYcHQ86o
「実はアイテムに手伝って貰いたいのはターゲットの位置の特定までなんだよね」
「ああ!?そりゃどういうことだ!?」
出鼻を挫かれて思わず大きな声を出してしまう
「落ち着いて、むぎの」
紅宮に詰め寄ろうとする私を滝壺が制止する
「いやー、どうもこうも、始めからこっちのリクエストは滝壺さん一人って言っておいた
筈だよ?それを第四位が勝手についてきたんだから、仕事がなくて当たり前じゃん?」
言いながら、両の掌を空へ向けるジェスチャーをした
「テメェ……」
「だから落ち着いてよ、むぎの。べにみやの言ってることは間違ってないよ」
788 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 21:50:34.04 ID:NYcHQ86o
「今回の仕事は滝壺さんに追跡してもらった暗部を裏切った能力者の排除の他に
別の目的もあるからね。第四位に暴れてもらったら困るんだよ」
「別の任務?」
「そー、今回の仕事の目的はそいつが持って逃げたアタッシュケースを回収することが
最優先事項なんだー」
「むぎのが攻撃したら、アタッシュケースごと壊れちゃうかもしれないから攻撃しちゃダメ
ってことね?」
「その通り、滝壺さんは理解が早くて助かるよ」
相変わらずのムカつく物言いだ……
「で、私に攻撃するなって理由はわかったけど。これからどうする訳?
ブツの確保が最優先なら、あんたの能力も色々危ないと思うけど?」
イライラを押し殺し、質問を投げかける
789 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 21:57:34.59 ID:NYcHQ86o
「ご心配なく、僕の考えた作戦があるからね」
「へー、じゃあ聞かせて貰おうじゃない?その作戦とやらを」
「まあまあー、そう急かさないで。この作戦において重要なモノがもうすぐ来る筈だからさ」
紅宮が言葉を終えてすぐに、私達の背後に何者かが着地した
「!」
私は瞬時に後ろを振り返り身構える
「おっと、俺は味方だ。間違っても能力は使わないでくれよ?」
後ろに居たのは、どこか軽い雰囲気を纏った背の高い男だった
790 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 22:12:21.19 ID:NYcHQ86o
「さすがは第四位と言ったところだな。まさか瞬時に戦闘態勢に入るなんてな……
寿命が縮まっちまったぜ……」
男は軽薄そうな笑みを浮かべながら言った
「誰だテメェは?」
「たぐさり」
男が私の問いに答えるよりも早く、滝壺が言葉を発した
「たぐさりひびき……、何度か会った事がある」
「こいつは嬉しいね、まさかアイテムの能力者である君に名前を覚えていて貰えるなんて」
日鎖(たぐさり)と呼ばれた男がハハッと笑う
「鼻の下伸ばしてないで、早く目的の物を出してよ」
二人のやり取りを見ていた紅宮が急かすように言った
791 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 22:24:37.91 ID:NYcHQ86o
「目的の物?」
その言葉を聞いて、日鎖が脇に大きな袋を抱えている事に気がついた
「おっと、悪い。だがそう急かすもんじゃないぞ?こっちだって苦労したんだからな」
「急かしたくもなるよ、予定よりも五分も遅いんだからね?」
「思ったよりガードが多くてな、片付けるのに時間がかかった」
言いながら日鎖が袋を開ける
「!」
中から出てきたものを見て滝壺が少し驚いたような素振りを見せる
中から出てきたのは、一人の少女だった
気絶しているのか、グッタリしていて生きているのか死んでいるのかすら、ここからでは
判別できない
「それは?」
「交渉材料さ」
「交渉材料?」
「まー、見ててよ。僕の作戦は成功する事間違いなしさ……」
792 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 22:37:57.58 ID:NYcHQ86o
それから紅宮と日鎖は準備がある、と言って近くの建物に入って行った
「滝壺、ターゲットがここに来るまであとどれくらい?」
「多分もうすぐ」
「やー、お待たせしましたね」
笑顔を浮かべた紅宮と、心なしか憂鬱そうな顔をした日鎖が私達と合流した
「随分とのんびりじゃない?ターゲットはこっちに向かってるけど、もし別のルートを
選んでいたらどうするつもりだったのかしら?」
延々と待たされたイライラをここぞとばかりに吐きだす
「あー、その心配はないよ。今回の事は単独犯じゃないからね、あいつ等が
この先で外部の組織の人間と落ち合う事になっているという情報をあらかじめ取得して
いるよ。別のルートは封鎖しているし、別のルートに逸れる可能性はほとんどないよ」
自信ありげに紅宮がそう答える
「おい、炸夜。準備はいいか?」
「準備はオーケーさ」
日鎖の問いに紅宮が笑顔で応じる
「それでは、喜劇の幕開けだ―――」
793 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 22:46:24.55 ID:NYcHQ86o
それから数分後、暗い路地裏に二つの足音が木霊する
「おい!こっちで大丈夫なのかよ!?」
金髪の男がもう一人の男に問いただす
「わからない!だがここ以外に道はない!」
走りながらもう片方の男が答える
「クソッ!やっぱり無理だったんだよ!この学園都市から逃げるなんて!!」
「今言ってもしかたないだろう!ッ!?止まれ!」
前方に人影を見つけ、二人の男は立ち止まる
「やー、裏切り者君。悪いんだけど、少し僕達に付き合ってもらうよ?」
794 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 22:57:49.22 ID:NYcHQ86o
「待ち伏せか!?」
二人の男が身構える
「おっと、無駄な抵抗はやめた方が賢明だよ?君達はレベル2とレベル3、対してこちらは
レベル4が三人、その上レベル5までいるんだから」
その言葉を聞いて二人の男の間に明らかな動揺が走る
「レベル5……?」
金髪の男がにわかには信じられないというように呟いた
「あー、信じられないって顔だね?まー、すんなり信じろって方が無理があるかな」
紅宮はふー、っと溜め息を吐く
「そんなことを俺達に言って、なんのつもりだ?それが本当ならすぐにでも俺達を殺せば
いいだろう?」
臨戦態勢のまま、もう一人の男が言った
「そうしてもいいんだけど、僕達としてはもう少し穏便に事を済ませたいんだよね……
だから、取引をしないかい?」
795 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 23:07:40.04 ID:NYcHQ86o
「取引だと?」
「そー、取引。悪い話じゃないと思うんだけどなー、少なくともこのまま殺されるよりかは
いいと思うんだけど?」
「そんな話、すんなりと受け入れると思っているのか?お前達のレベルがお前の言うとおり
なんて確証はないし、このまま踵を返して逃げることだってできる……」
「もしかして、自分の目で見ないと物事を信じないタイプ?難儀だねー」
ククッ、っとくぐもった笑いを漏らしながら紅宮は言った
「第四位に頼んで力の差を見せつけてもいいんだけど……、こっちにはもっと簡単な
手段があるからね……。響!」
その合図に従い、日鎖が先程の少女を抱えて前に出た
796 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 23:13:56.51 ID:NYcHQ86o
「香奈!?」
その少女を見るなり、男が驚きの声を上げた
「おー、さすが兄妹。この距離でも妹だってわかるんだー、愛の力だねー」
「貴様ッ!香奈に何をした!?」
男は今にも飛びかかりそうな剣幕で叫ぶ
「薬で眠らせているだけだからご安心を」
紅宮が口の端をニィーと釣り上げて笑う
「でも、君の対応次第ではどうなるかはわからないけどねー?」
「ぐ……!」
その言葉に男が言葉を詰まらせる
「わ、わかった……。さっきの取引の話、受けるよ……」
「素晴らしく賢明な判断だね、僕達にとっても、君達にとってもね……」
797 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 23:25:28.87 ID:NYcHQ86o
「何が望みだ?」
「簡単な話さ、君達が盗んだアタッシュケース、それをこちらに渡して貰おうか?」
紅宮がそう告げる
「それで、香奈は返してもらえるんだな?」
「そうだね、妹さんとアタッシュケースの交換。互いにいい取引だと思うのだけど?」
「ちょ、ちょっと待て!!」
二人の交渉に割り込むように金髪の男が声を上げた
「俺達はどうなるんだよ!?俺はこいつの妹のためなんかに死ぬ気はないぞ!?」
「お前――!」
「まー、そう慌てないでよ」
仲間割れを起こしそうになる二人に紅宮が優しげな声をかける
「君達二人にとっても朗報だ、寛大な統括理事長様は、そのアタッシュケースをおとなしく
こちらに渡すのなら、君達の命は助けてもいいと言っているんだ」
大仰な手振りを交えながら言葉を続ける
「もちろんお咎めなし、という訳にはいかない。君達二人には相応の罰は受けて貰う、
だが、ここで死ぬよりはマシだろう?それにこの子にはこれ以上の手出しはしないとも
約束しよう」
798 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 23:39:15.63 ID:NYcHQ86o
二人の男が顔を見合わせる
「その話……、本当なのか?」
男が改めて紅宮に問いかける
正直な話、傍から聞いていてもうさんくさいことこの上ない話だと思う……
しかし―――
「この状況で嘘をついて何の意味があるというんだ?君達の命はすでに僕達の掌の上、
その気になればいつでも君達を殺せるというのに……」
その通りだ、わざわざ嘘を吐く必要なんてない
その気になればこの二人をすぐにでも殺す事ができるのだから
「わかった、取引に応じるよ……」
金髪の男の方は未だに信じられない、という顔をしているが、それ以外に方法が思い
つかないのだろう……
何も言わずに事の成り行きを見守っている
「悪いんだけど、まずはそちらのアタッシュケースをこちらに寄越してくれないかい?
もし偽物だったりしたら堪らないからね」
「…………わかった、言うとおりにしよう……」
しばしの逡巡の後、男は頷いた
799 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 23:47:24.41 ID:NYcHQ86o
「先に断っておくよ、僕達に抵抗するような真似はしないでくれよ?もしそんなことをしたら
僕達は君達を殺さなければいけないからねー?」
紅宮がそう釘を刺す
「それからアタッシュケースは投げてもかまわないよ?まだ僕達を信用できないみたい
だしね?」
「わかった……」
男が手に持っていたアタッシュケースを放り投げる
中身に何が入っているかわからないが、距離が開いているためかこちらには届きそうも
なく、地面に落ちそうになる
「響――」
「あいよ」
紅宮が合図をすると地面に落ちるところだったアタッシュケースがまるで引き寄せられ
るように日鎖の手に収まった
「確認してくれ」
日鎖は紅宮にアタッシュケースを手渡し、そう言った
800 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/09/30(木) 23:54:07.83 ID:NYcHQ86o
「ふむー、どうやら間違いはないようだね……」
アタッシュケースの中身を確認した紅宮がそう言った
「チ……」
アタッシュケースの中身がなんだか興味があったが、こちらから見えないようにされている
せいで確認ができない
「響、その子を返してあげてくれ」
「へいへい……」
気乗りがしない様子で、日鎖が能力を使い、少女を私達と男達の中間あたりに壊れモノ
を扱うように丁寧に下ろした
「香奈!!」
男が少女の名前を呼びながら駆け寄る
「クククク―――」
「あん?」
紅宮が男の方を見て、今度は明らかに笑いを押し殺すような素振りを見せた
801 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 00:06:01.58 ID:5ZUwNAMo
「何が可笑しいことでもあったか?」
「クク、面白い事が起こるのはこれからさ……」
「むぎの、なんだか様子がおかしい」
紅宮の行動を訝しげに見ている私に、隣に居た滝壺が声をかけてきた
促されるように男の方に視線を移すと、男は少女を腕に抱いたままブルブルと肩を
震わせている
「?」
なんだろう?
様子から察するに、感動に震えている……、という訳ではなさそうだが……
「おい…………」
震えるような、低い声で男が言った
「なんだい?」
それに対し、紅宮は心底楽しいというように……
弾むような声音でそれに応じた
まるで、劇の好きなシーンの到来を喜ぶ少女のように―――
「香奈に……、何をした…………?」
「何って、さっきも言った通り薬で眠らせただけだよ?まあ―――」
「二度と起きないだろうけどねぇ!?ギャハハハハハハハハ!!!」
802 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 00:14:03.75 ID:5ZUwNAMo
薄暗い路地裏に甲高い笑い声が響き渡る
「キ――――」
「キサマァァァ!!!」
男が絶叫のような叫びを上げながら銃を構える
「はぁ……、抵抗の意思を確認……」
溜め息交じりに日鎖が呟いた
「死ねぇええ!!!」
乾いた音をたて、紅宮に向かい銃弾が放たれる
「やれやれ」
日鎖が手を横に振ると、銃弾は壁にでも阻まれるかのように弾かれた
「抵抗するんだね!?だったら――」
男が発砲した事を見てとると、紅宮は凄絶な笑みを浮かべ―――
「吹っ飛びなァ!!」
能力を発動させた
同時に、男が腕に抱いていた少女の亡骸が破裂した――
803 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 00:25:48.29 ID:5ZUwNAMo
「う、ごふ―――――――?」
何が起こったのか理解できない
そんな声を残し、男の体が後方へ吹き飛ぶ
「ひィ!?ク、クソッ!!」
一瞬で起きた目の前の惨状に怯えながらも金髪の男は逃げようとする
「悪いが、逃がせないんだよ」
言うが早いか、日鎖が金髪の男目がけて跳躍した
「この――!!」
金髪の男は後ろに飛んで避ける
(逃げれるか!?)
金髪の男はそう自問する、自分の能力は身体強化
脚力を強化して駆け抜ければ、逃げ切る事も可能な筈……
やるしかない――
分の悪い賭けかもしれないがもう他に道は残されていない
(敵の位置を確認しねぇと)
瞬時にそう判断し、着地と同時に顔を上げる
そこには自分が元居た場所にいるであろう男と、さらに遠くに三人の女がいる……
だが―――
「へ――?」
目の前にあったのは自分の思い描いた光景ではなく……
その目には、高速で迫る拳が映っていた
(なんで?)
その答えがでることはなく、男は最後に己の頭蓋の砕ける音を聞き絶命した
804 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 00:36:06.14 ID:5ZUwNAMo
「ふー、これでおしまいでしょうかねー?」
金髪の男が絶命した事を確認した紅宮がもう一人の男に歩み寄る
「ぜぇ……ぜぇ…………」
男は腕が欠損し、体中は血塗れで絶命するのは時間の問題であろう状態だった
「クク、我ながら見事だよねー。爆発の威力を調整した甲斐があったってものだよ」
まるで純真な子供のような笑みを浮かべながら男に向かって声をかける
「ねぇー?どんな気持ちだい?愛する家族を殺されて、憎い敵に手も足も出ないってのはどんな
気分?」
「はぁ……、くたばれ……。このゲス野郎……!」
男は最後の力を振り絞って呪詛の言葉を吐き出す
805 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 00:42:51.10 ID:5ZUwNAMo
「ふー、口の減らない人だなー」
紅宮は腕に巻かれていたバンドのようなものから一本の鉄針を取り出した
「そんな人はー、こうだ!」
それを思いっきり男の口に突き立てた
「ガ、ブ――――!!」
「うッ!」
それを見て滝壺が思わず目を背けた
「ア、ァァアァ――」
悶え苦しむ男を見ると、紅宮は満足そうに目を細め
「あの世で妹さんと仲良くするんだよ?」
この状況には似つかわしくない、まるで仲の良い友人にでも向けるかのような笑顔を
浮かべながら―――
「さようなら」
死刑宣告を下した
806 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 00:48:07.56 ID:5ZUwNAMo
パァン、と乾いた音が路地に響き渡る
「ク、クク、ギャハハハハハハハハハハ!!!」
もはやどこの誰かも判別できなくなった三人分の死体を見て
紅宮は狂ったような笑い声を上げる
「チッ!」
それを見て思わず舌打ちをする
「むぎの……」
滝壺が心配そうにこちらの様子を窺う
「仕事が終わったんなら帰るわ……。行くよ滝壺」
「ああ、お疲れさん」
私の言葉に反応したのは日鎖一人で、紅宮はいまだに自分の世界に入り込んでいる
807 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 00:57:43.90 ID:5ZUwNAMo
仕事を終え帰途につきながら考える
なぜ、自分が紅宮を嫌うのかを……
「きっと似たもの同士だから、ね……」
そう言って自嘲気味な笑みを浮かべる
「はまづら達、大丈夫かな……」
隣を歩く滝壺が呟く
「さぁね……」
滝壺の言葉に、純粋な優しさから来るその言葉に、なんて返せばいいのか
思いつかず
「…………」
私は押し黙る
滝壺もそれ以上は言葉を発さず
私達は静まり返った街をただ無言で歩いて行く……
808 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/01(金) 01:00:13.47 ID:5ZUwNAMo
今日はこれで終了です
これで暗部編前編は終了、次回は後編です
次回も同じような展開ですが、見てくださると嬉しいです
暗部編が終わり次第、本編の第三編に入りたいと思います
809 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/01(金) 01:13:55.32 ID:UhpDQAYo
おう!
810 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/01(金) 01:30:36.43 ID:sSonmYAO
私の出番が超ないです!
811 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/01(金) 08:21:54.65 ID:ZZbDwH60
そんな
>>1
を応援してる
812 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/10/03(日) 13:19:45.14 ID:jz0Kt0go
>>810
アイテムの面々は次回でも登場しますが、前回同様出番は少なめになります
本格的にアイテムのメンバーが活躍するのはもう少し先になると思います
>>811
応援ありがとうございます。かなりのスローペースですが、これからも見て
いただければ幸いです
次回の日程ですが、おそらく水曜日辺りになると思いますので、よろしくお願いします
813 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/10/06(水) 19:10:08.92 ID:Rtj5JQko
すみませんが今日は投下できません
今週中には投下できると思いますので、今しばらくお待ちください
814 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/09(土) 13:28:17.70 ID:YqMM2cAO
超待ってます
815 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/09(土) 15:52:16.90 ID:6ZilB2E0
続き待ってるんだよ!
816 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 17:21:13.59 ID:IWigZq2o
お待たせして申し訳ありませんでした
今から始めます
あと今回は少しグロの要素があります
817 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 17:27:49.96 ID:IWigZq2o
麦野達が逃走した能力者を捕捉するために路地で待機しているのと時を同じくして
ほとんど車の通らなくなった深夜の街道を一台の車が走っていた
「はぁ……」
その車の運転手、浜面仕上は他の同乗者に聞こえないように小さな溜め息を吐いた
(どうしてこんな事になったのやら……)
別に暗部の仕事そのものに対して愚痴を言っている訳ではない
暗部の仕事に関わるのはもう慣れっこだし、こんな風に夜遅くに駆り出されるのも初めて
ではない……
溜め息の原因は別の事……
今回の仕事に参加するメンバーにあった
818 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 17:38:07.01 ID:IWigZq2o
ミラー越しに後ろを確認する
アイテムのメンバーであるフレンダと絹旗
この二人が原因ではない、彼女達とは比較的付き合いも長いし別段悪感情を抱いて
いる訳でもない
原因は彼女達の後ろに座っている二人組だ……
赤いショートの少女と緑色の髪のガラの悪そうな青年……
暗部の別の組織から派遣されて来たとかいう二人だ
819 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 17:47:03.38 ID:IWigZq2o
「でもホントに頭に来るよね!今回の作戦!!」
赤い髪の少女……
確か夏目来見(なつめ くるみ)とか名乗っていた少女が腹立たしげにそう言った
「別にそこまで怒るようなことじゃねぇだろうが?」
緑髪の青年が気だるそうにそう答える
「怒るに決まってるじゃん!今回の作戦で囮に使われたアタッシュケースの中身、
アレがなんだかわかって言ってるの!?」
青年の答えが気に入らなかったのか、夏目は怒りを更に加速させたようだ
車内に響き渡る大きな声で、青年に対して抗議の声をぶつける
「わかったわかった、俺が悪かったよ。だからそう耳元で大きな声を出すな……」
ゲンナリしたような声で青年は謝罪の言葉を述べる
「ホントにわかってるのかなぁ……。あのアタッシュケースの中身は『あの人』がくれた
大切なものなんだよ?それに……」
そこで一度言葉が区切られる
「あれは私達の家族になるかもしれないのに……」
820 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 17:53:43.02 ID:IWigZq2o
「?」
夏目の言葉を聞いて頭に疑問符が浮かぶ
それはフレンダと絹旗も同じだったのだろう
チラリと後ろを窺うと二人共同じように不思議そうな顔をしていた
俺達が疑問に思った言葉……
アタッシュケースの中身が家族になるとはどういう意味なのだろうか?
何かの比喩表現?
まさかそのままの意味で麦野達が奪還に向かったアタッシュケースの中には子供が
入っている、という事なのだろうか?
「んな訳ねぇよな……」
アタッシュケースの中に子供が入っているという、嫌な光景を想像してしまった……
「なぁ、あんたら。今の話はどういう意味なんだ?家族がどうとか……、よかったら教えて
くれないか?」
頭を振って嫌な想像を振り払い、夏目に先程の言葉の意味を尋ねてみる
821 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 18:06:01.16 ID:IWigZq2o
「それを知ってどうするの?あなたには関係ないわよ」
俺の質問に対して、夏目は隣の青年に向けていたような気安い態度ではなく、
まるで見下すような態度でそう言った
「それは私も超気になったんですよ。よかったら教えてくれませんか?」
助け船を出すかのように、絹旗が再度夏目に向かって俺と同じ質問をした
「う〜ん……、そうポンポン話していいような話じゃないから……。詳しくは話せないんだ
ごめんね」
またしても態度が急変し、夏目は絹旗に対しては、隣の青年に接するような柔らかい態度で
謝罪した
「なんなんだよ、この扱いの差は……」
夏目はなぜか俺に対してやたらと無愛想な態度をとる
もしかして俺だけに辛く当たるのかと思ったが、フレンダにも同じような態度をとっていた……
俺達が何かした訳でもなく、まったく理由がわからない
おかげで車の中はどこか居心地の悪い雰囲気に満たされている
「やれやれだぜ……」
俺は他の奴らに聞こえないように愚痴をこぼし、本日何度目かわからない溜め息を吐いた
822 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 18:18:22.15 ID:IWigZq2o
そうこうしているうちに、車は目的地に到着した
辺りに人気のない廃墟に佇む廃ビル
ここが今回の目的地だ
「やっと着いたぜ……」
道中の息苦しさから解放されて、俺は不謹慎ながらも伸びをする
「おい、あんた。たしか、浜面……、だったよな?」
車中では苦労しながらも、夏目の相手をしていた青年が俺に声をかけて来た
「ん?あんたは……、えーと……」
マズイ、夏目の印象が強烈過ぎたせいで自己紹介されたのに名前をド忘れしちまった
「風嵐砕人(かざらし さいと)だ、まあ別に覚えなくても構わねぇがな」
若干小馬鹿にするように風嵐はそう言った
「……、それで、なんの用だ?」
「道中では夏目があんた等に辛く当ってたんでな、一応謝罪くらいはしてやろうかと思ってな」
823 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 18:29:32.55 ID:IWigZq2o
そう言って風嵐は口の端を釣り上げるような笑みを見せた
「気にしてねぇよ。ああいう扱いには慣れっこだしな」
自分で言っていて悲しくなるが、普段から麦野も俺に対してあんな感じだしな……
「ははっ!やっぱり苦労してんだなぁ!」
「つーか、なんであいつは俺やフレンダに対してはあんな態度になるんだよ?」
先程からの疑問をぶつける
「そりゃあ、あんた等が無能力者だからさ。あいつはとことん無能力者を見下してるからなぁ」
風嵐は楽しそうにそう言った
「そうかよ……」
そう言う事か……
無能力者を見下している能力者、俺が嫌いな奴らだ
だが、今ここで事を荒立てる事は賢い選択ではない……
俺は拳をギュッと握りしめ、怒りを抑える
「何遊んでるの、風嵐。手早く終わらせて帰ろうよ」
声のした方を見ると、大きなバッグを抱えた夏目が立っていた
824 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 18:44:54.83 ID:IWigZq2o
「そう慌てんなよ」
「こっちはイライラしてるんだから、早く終わらせたいの!」
言い放つと、夏目は手に持っていた大きなバッグをドサリと地面に下ろした
「随分大きなバッグね、何が入っているのかしら?」
「うお!?」
いつの間にか俺の真横に立っていたフレンダがそう言った
「気付いてなかったの?結局、こんなんだからなめられる訳よ」
「浜面は超臆病野郎ですね」
「うるせえ!」
さらに絹旗まで加わって俺を罵倒してきたが、まあなんだかんだで夏目の時程は悪い気は
しなかった
「おいおい、こんなとこでじゃれ合わないでくれよ?」
風嵐が呆れたように言った
「じゃれてる訳じゃ――」
そこまで言って視界に飛び込んできた物に言葉を失う
風嵐におかしなところがある訳ではない……
俺が目を奪われたのはその隣、夏目が手に持っている物だ……
「チェーンソー……?」
フレンダがそう呟いた
あれが先程のバッグの中身なのだろう
夏目の小柄な体には不釣り合いな巨大なチェーンソー、それを地面に引き摺るような持ち
方で夏目は持っていた
825 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 18:55:42.93 ID:IWigZq2o
「あれで戦えるんでしょうか?」
絹旗が耳打ちするように言った
「さあな……」
確かに絹旗の言う事はもっともだ、あんな大きなものを夏目のような小柄な少女が
振り回す事ができるのだろうか?
現に夏目はチェーンソーを地面に引き摺るような形で持ち、顔は俯いていて表情が
伺えない
「今回の仕事はあのビルの中に居る、外部組織の人間の排除とそれに協力した奴等の
殲滅だ」
俺達の戸惑いなんてお構いなしに、風嵐が作戦内容を確認する
「とりあえず俺と夏目が突っ込んで皆殺しにする。有り得ねぇとは思うが、窒素装甲さんは
俺達が取り逃がした奴を排除してくれ」
826 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 19:05:48.49 ID:IWigZq2o
「私は補助ですか?」
絹旗が少し不満げに言った
「別にあんたの力を過小評価なんてしてないぜ?ただ今回あんた等は俺達のサポートと
して来た訳だしな。それとも人を殺したくてうずうずしてたりするのか?」
そう言って風嵐は意地の悪い笑みを浮かべる
「そう言う訳ではないです」
「そいつはよかった。どうやら夏目の奴は、あいつ等を自分の手でバラバラにしてやりたい
みてぇだしな……」
風嵐が隣の夏目に視線を遣る
「?」
そして、俺は違和感を感じた
「どうしたんだ?」
夏目の様子がおかしい……
先程と変わらずに俯いたままの姿勢だが、肩が微かに震えている
まるで、薬の切れた薬物中毒患者のようだ……
「敵の見張りはいるか?」
「建物の前に二人」
双眼鏡でビルを確認していたフレンダがこちらを向き、そう報告する
827 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 19:20:28.09 ID:IWigZq2o
「聞こえたか?俺が左を殺る、お前は右を担当しろ」
肩を震わせている夏目が微かに首を縦に振る
「ちょっと、大丈夫なんですか?私、超心配なんですけど?」
「大丈夫さ、窒素装甲さん、援護はよろしくな」
「それじゃあ行こうか?」
絹旗の言葉を軽く流し、風嵐が夏目に声をかける
そして――
「任務開始だ」
その言葉を合図にして――
夏目が弾かれたように顔を上げる
「ひっ!?」
夏目の顔を見たフレンダが短い悲鳴を上げる
顔を上げた夏目の顔は、先程までの年相応な少女のものとは打って変わって、
目は血走り、顔には狂気じみた笑みがへばり付いていた
828 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 19:34:16.77 ID:IWigZq2o
「ふ、あ、はは、――」
夏目の口からうめきのような笑い声が漏れる
「行くぜッ!」
掛け声とともに、風嵐がビルの方角へ走りだす
「あ、はははははぁ!!」
それに続くように、夏目が疾走する
あんなに重そうに持っていたチェーンソーを小枝のように軽々と持ち上げ
すさまじい早さで駆けて行く
「ん?」
「どうした?」
「今、何か見えたような……」
「気のせいじゃないか?」
「そうか―――」
ビュン、と音が鳴り、見張りの男の体が吹き飛ぶ
見張りの男はすさまじい勢いで壁に叩きつけられ、絶命した
「なッ!?」
突然の出来事に体を硬直させている男に、暗がりから突風のような勢いで
チェーンソーを持った夏目が襲いかかる
829 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 19:47:06.38 ID:IWigZq2o
「うりゃあー!!」
唸りを上げながら、チェーンソーが横薙ぎに叩きつけられ、周囲の地面が鮮血で
彩られた
断末魔の叫びすら残さずに、数秒前まで人間だった肉塊が無様に転がる
「いぇーい!今日も絶好調だぁーーーーー!!」
夏目がすこぶる機嫌良さそうに笑みをこぼす
「そいつはいいや!じゃあ、この調子で行くぜ!」
風嵐もそれに笑顔で応じると、二人はビルの中へと走り出す
ビルの内部では、未だに入り口での出来事に気付いていない警備の男達が普段と変わら
ぬように歩いていた
「何か音がしなかったか?」
「気のせいだろ。見張りの奴らも居るんだし、何かあったら連絡があるだろう」
男が楽観的な意見を述べた、その刹那、侵入者を知らせる警報がビルの中に鳴り響く
「侵入者か!?」
男が行動を起こすよりも先んじて、男に能力による攻撃が放たれる
打撃音が響き渡り、男の頭がトマトのように吹き飛んだ
「何者だ、貴様!?」
「見てわかんねぇのか!?能力者様に決まってんだろォ!!」
830 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 20:00:13.23 ID:IWigZq2o
風嵐が戦闘を行っている場所とは別の場所
ビル内の通路で夏目が数名の男達と対峙していた
「あっはっはっーー!ミンチになれェぇえ!!」
狂気じみた叫び声を上げながら夏目が地面を蹴る
「化物めッ!これでも喰らいやがれ!」
他の男達、スキルアウトやゴロツキ共とはあきらかに違う、躊躇いのない動作で
外部組織の男が銃の引き金を引く
「う、ふはははは!!」
「何!?」
外部組織の男が驚愕に満ちた声を上げる
夏目は自分に放たれた銃弾を横っ跳びに回避し、そのまま壁を走るようにして男目がけて
突き進んだ
「死ィィねェえぇ!!!!」
愉悦を含んだ唸り声が通路に響き渡る
「ゲ―――」
壁を蹴ると同時に放たれた斬撃が外部組織の男を袈裟切りに切断する
切断された男の体が崩れ落ちると同時に、返り血で真っ赤になった夏目が床に着地した
831 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 20:11:40.64 ID:IWigZq2o
「ひいぃぃぃ!!」
その凄惨な光景を目の当たりにした男達が夏目に背を向けて逃げ出そうとする
敵に無防備な背を向ける行為は得策ではない、が、彼等がそのような行為に及ぶのも
無理からぬ話だ……
彼等のほとんどが外部組織の口車に乗せられたスキルアウトや街のゴロツキである
自分達を馬鹿にする能力者や学園都市に一泡吹かせたくて参加した……
そんな軽い気持ちだった者もいるだろう
そのような彼等にこのような惨劇を見せつけられてなお、冷静な判断を要求するのは
酷であろう
「鬼ごっこでもするのぉ!?」
戦意を喪失した者達の背中を見ながら、夏目が醜悪な笑みを浮かべる
「それじゃあ頑張って逃げてねぇ!!追いつかれたらげーむおーばー!新鮮な肉塊に
はやがわりぃー!!」
チェーンソーが真横に振るわれ、刃に付いていた肉片や血が水音を立てて床に付着する
832 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 20:21:13.40 ID:IWigZq2o
「行くぞぉーー!!」
チェーンソーが回転し、けたたましい音が鳴り響く
常人の域をはるかに凌駕した脚力で地面が蹴られる
男性と女性の筋力差、さらに男達が逃げてからの経過時間……
普通ならば男達はなんなくこの場から逃げおおせる事ができるだろう……
しかし―――
「ぎゃああああ!!」
通路にビシャビシャと言う水音と断末魔が木霊する
ここ学園都市では常識などなんの意味も持たない
夏目は疾風のような早さで男達に追いつくと、一人、また一人と、もの言わぬ肉塊へと
変えて行く
「さいっこうだぁー!この温もり!まるでハグでもされてるみたいぃぃぃ!!」
833 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 20:31:48.39 ID:IWigZq2o
「はぁはぁ――!!」
逃げ出した男達のほとんどが殺害されたが、夏目が犠牲者を弄ぶ僅かな隙に逃げだせた
者がいた
「クソッ!どうすりゃいいんだよ!!」
逃げ場を失くした男は頭を抱える
「!!」
遠くから足音が聞こえてくる
「逃げないと!」
不可能だ、きっと追いつかれて殺されてしまう……
「どこか隠れる場所は……、!!」
男の視線の先には古びたロッカーがあった
「ここなら……」
一縷の望みをかけ、男はロッカーの中に身を隠す
834 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 20:42:47.54 ID:IWigZq2o
「あれぇー?今度はかくれんぼぉ?」
グチャ、グチャ、と足音を響かせながら夏目が部屋の中に入ってくる
「はぁ――、はぁ――」
「どぉ〜こぉ〜だぁ〜ろぉ〜?」
間延びする奇怪な声がどんどんこちらに近づいて来る
(頼む!行ってくれ!!)
男が心の中で必死に祈る
「あれぇ〜?居ないのかなぁ〜〜?」
祈りが通じたのか、夏目は男の入っているロッカーの前を素通りした
(た、助かった、のか……?)
「見ィィつけたァアァァア!!!」
男が安堵に胸を撫で下ろそうとした刹那、ロッカーのドアが引き千切られんばかりの
勢いで開け放たれる
835 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 20:49:36.23 ID:IWigZq2o
なんで?どうして気付かれたんだ!?
絶体絶命の状況に男の頭の中の混乱は頂点に達する
「うで……」
「え?」
言われてから気がついた、自分の腕から血が滴っていた事に……
おそらく逃げている途中にどこかにぶつかったのだろうか?
「あ、ああ……」
逃げ場もなく、抵抗する術もなく、男は言葉を発する事も出来ずに身を震わせる
それを見て夏目はニンマリと笑顔を浮かべ
「噛まれた腕は切らないとだめなのー!でも、もう手遅れだから首を切ろーーー!!!」
古びたロッカーごと、その首を切断した
836 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 21:04:28.50 ID:IWigZq2o
廃ビル内の一画、他の扉よりも頑丈そうな扉の前で風嵐が立っていた
「よう、そっちは片付いたみたいだな」
血塗れの夏目の姿を確認し、風嵐が軽薄な笑みを浮かべる
「ばっちりぃ、だよ」
夏目はニタァーと気色の悪い笑みでそれに応答する
「そんじゃあ最後の仕上げだ、このドアの向こうに立て籠ってるやつを片せば任務完了だ」
「りょうか〜い」
「俺が扉をブチ破るからお前が突入しろ、リーダーの首あらためもするらしいから頭は
壊すなよ?」
「う、ん」
頷いたのを確認し、風嵐は能力を発動させる
「行くぞ、3、2、1――」
「0!」
風嵐が拳を振るうと、その手から衝撃弾が放たれ、ドアを吹き飛ばす
「らアァアァ!!」
ドアが吹き飛ぶのと同時に夏目が部屋の中に突入する
837 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 21:16:09.43 ID:IWigZq2o
ドアが破られる事は予測していたのだろうが、これほどの速度で侵入されるとは予期して
いなかったらしい
部屋の中には三人の外部組織の人間がいたが、瞬く間に一人が斬り伏せられた
「チッ!」
残りの二人はなおも怯まずに銃を構えるが、銃を構えた先に夏目はもう居らず
その隙に風嵐の作りだした衝撃弾の直撃を受け、また一人絶命した
「クソッ!!」
最後に残された男が悪態を吐きながらも、応戦しようとする
「しゃあぁぁ!!」
夏目が跳躍し、男の銃を構えた腕を掴むと、そのまま握りつぶした
「がぁあああ!!」
腕を折られ、激痛に呻きながら男は後退し、壁に背をついた
「…………」
「ん?」
男が戦闘能力を失った事を確認すると、夏目は風嵐に何か意味ありげな視線を向けた
838 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 21:26:09.69 ID:IWigZq2o
「ああ、そうか」
その意図を理解した風嵐が苦笑する
「首より上が無事なら何してもいいぞ」
「うふふぅーー」
その言葉を聞いて、待てを解かれた犬のように喜ばしげに夏目が男に歩みよる
「く、来るな!」
「さっきからねぇ、他の人の遊びに付き合ってたから、今度は私のリクエストする遊びで
遊ぼぉかぁ〜」
「やめてくれ……」
「私がしたいのわねぇ―――」
「人間で達磨落としがしたいんだァ!あっはっはっはっはっ〜〜〜〜!!!」
部屋の中にチェーンソーの駆動音が鳴り響く
「ぎゃあああああああああ!!!」
839 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 21:37:30.50 ID:IWigZq2o
「超遅いですね、超心配です」
ビルの外、二人の帰還を待ちくたびれたように絹旗が言った
「結局、成るようにしかならないわ。気長に待ちましょう」
「そうだな、っと、来たみたいだな……」
ビルの方からこちらに歩いて来る二つの影を見つけて、フレンダと絹旗に報告する
「言われなくても見えてます、そんなこともわからないなんて浜面は超ダメですね」
「へいへい、悪うございましたね……」
不貞腐れたようにそう返答する
「結局、取り越し苦労だった訳ね」
そうこうしているうちに二つの影は顔がわかるくらいにまで近づいている
「そうだな、よう、遅かったな……」
俺はその後の言葉を継ぐことができなかった
なぜなら、俺は夏目が持っているモノを見て、絶句してしまったからだ……
840 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 21:48:05.21 ID:IWigZq2o
「なんだよ……、そりゃあ……?」
掠れるような声で言葉を紡ぐ
「何って、首に決まってんだろ?一応確認だとか、なんだとかで必要らしくてさ……」
夏目の代わりに風嵐がそう答えた
「確認がおわったらぁー、これでサッカーでもするぅ?」
手に持っていた首をこちらに見せびらかすように夏目が前に突き出す
「そんなことする訳ねぇだろうが!!」
耐え切れなくなり、俺は夏目にそう怒鳴りつける
「あ、く、ふふふ」
その瞬間、夏目の雰囲気が剣呑なものに変わる
「はーい、ストップだ。ここからは俺達に任せて、あんた等は先に戻っていいぞ?」
「あなた達はどうするんですか?」
激昂している俺の代わりに絹旗が風嵐に尋ねる
841 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 21:57:33.59 ID:IWigZq2o
「俺達は処理班の奴等と一緒にでも帰るさ、面倒くせえが、ここでいざこざ起こされる方が
もっと面倒だからな」
風嵐は俺の方を見てそう言った
「……、それなら俺達は帰らせてもらう……」
俺は踵を返し、車に向かって歩き始める
「ちょっと、浜面!」
絹旗とフレンダも後を追うようについて来る
「浜面、大丈夫ですか?」
車に乗り込むと、絹旗が心配そうにそう言った
「大丈夫だ……」
ただ無愛想にそう答えた
その後は誰も言葉を発さず、俺達は元来た道を引き返していく
道中、俺は考えていた
このままでいいのか、と……
842 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 22:08:25.13 ID:IWigZq2o
暗部に関わるようになってからずっと考えていたことだ
このままでいいのか、こんな人の命を軽く扱うような場所に居ていいのか……
あいつを、滝壺をこんなところに居させていいのかと……
今日の出来事で決心がついた、滝壺をこんなイカレタ場所に居させてはいけない……
なんとか逃げなくては、このクソッたれな暗部から、そして、学園都市から
そう決意し、前を見据える
「待っててくれよ、きっと救いだしてみせるからな」
新たな決意を胸に、俺は達壺が待っているであろう、隠れ家に車を走らせる
843 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 22:15:37.72 ID:IWigZq2o
窓のないビルと呼ばれる場所
液体の入った機械の中に、逆さまになった人間が浮いている
彼こそがこの学園都市のトップ、統括理事長アレイスターである
「来たか……」
アレイスターが呟くと、彼の目の前に二つの影が姿を現す
一人はこの窓のないビルへの案内役を務めている少女、結標淡希
そして、もう一人、黒い髪の少女が現れた
「統括理事長に報告です、今回の作戦は成功。これにより学園都市に潜伏していた
外部組織の人間の排除は完了したと言ってよいでしょう」
黒い髪の少女は前置きもなしに淡々と話し始めた
844 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 22:23:17.19 ID:IWigZq2o
「そうか、ご苦労だったね……」
アレイスターは別段気にした様子もなくその報告に耳を傾けた
「ただ、一つ問題が」
「なんだい?」
「夏目は今回の作戦において、た―――、いえ『星のかけら』を囮に使った事に不満を
抱いているようです」
「ふむ……」
アレイスターはそれを聞いて少し考える素振りを見せる
「それはこちらの落ち度だな。フォローをしておいた方がいいだろうね」
「は……」
「彼女達については君に任せるよ、“終焉境界(ディス・イズ・ジ・エンド)”うまくやってくれ」
「仰せの通りに」
終焉境界と呼ばれた少女は一礼した
845 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 22:29:52.93 ID:IWigZq2o
報告が終わり、結標の能力により二人は窓のないビルの外に移動した
「随分と早く終わったものね」
「報告のみだったからな」
結標の言葉に終焉境界は必要最低限の言葉で返した
「それにしても最近きな臭い感じの話が多くなったものね……。あなたを含めたレベル4が
何人も集められているなんて……」
探りを入れるように結標が言った
「気になるのなら教えてもいいぞ?」
「あら、随分とあっさりね?」
予想外の反応に結標が意外そうな声を漏らす
846 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 22:36:29.36 ID:IWigZq2o
「ただし、条件がある」
「条件?」
「なに簡単な事だ、私達が参加している研究に参加すればいいだけのことだ」
結標は少し思案するような素振りを見せたが
「遠慮しておくわ、自分から危ない事に首を突っ込む趣味はないから」
それを断った
「そうか、君ならば資格は十分なんだがな……」
残念そうに終焉境界が呟いた
「君がそう言うのなら無理強いはしないよ、残念だがね」
終焉境界は踵を返す
「あれ?どこへ行くのかしら?」
847 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 22:40:58.06 ID:IWigZq2o
いつもとは逆の方向へ行こうとする終焉境界に声をかける
「少し用事があるんだ」
「用事?」
「ああ、人と待ち合わせをしているんでね、私はこれで失礼するよ」
「…………」
終焉境界の背を見送りながら結標は思案する
「謎の計画に、集められたレベル4、か……。厄介事が起きなければいいんだけどね……」
結標が呟いた言葉は、誰の耳にも届かずに、学園都市の闇に消えて行った……
848 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/10/09(土) 22:43:20.49 ID:IWigZq2o
今日はここまでです。
今回の分で暗部編は終了、次回から本編に入ります
849 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/09(土) 23:00:14.06 ID:6ZilB2E0
夏目可愛いなあ
850 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/10(日) 10:18:53.95 ID:cqLfjIDO
>>1
乙
オリキャラがかなり魅力的で愛着湧くわ
851 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/10/27(水) 22:05:19.00 ID:8JWubzwo
生存報告です
長期に渡り連絡ができず申し訳ありませんでした
次回の投下日時は未定です
お待たせして申し訳ありません
852 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2010/10/29(金) 11:12:56.99 ID:22GpkEDO
良かった…生きてたんだな…
853 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
:2010/11/12(金) 00:19:28.20 ID:MCKmtQ60
オリキャラは苦手な人だが、レールガンあんまり知らない正宗さん大好き人なんで問題ナッシング
854 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/16(火) 20:15:31.93 ID:q5ViH1Uo
このスレを熱心に読み続けているインさんがかわいいな
855 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/11/24(水) 18:22:43.29 ID:3x8tAl.o
生存報告、及び投下予告です
次回の投下は27日の土曜日を予定しています
かなり間が空いてしまいましたが、よろしくお願いします
856 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/24(水) 21:23:04.31 ID:cDDCq4ko
待ってたぜ
857 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/24(水) 21:24:37.53 ID:3TB9tCMo
待ってます
858 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/11/27(土) 20:18:05.31 ID:bDkMGIwo
21時から投下開始します
859 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 20:50:52.95 ID:bDkMGIwo
・
・
・
「ちょっと遅くなっちゃったかな……?」
学校が終わり、多くの学生達でごった返している通りを、私は足早に歩いている
今日は掃除当番で、いつもより帰りが遅くなってしまった
そんなに遅くなっている訳ではないが、これ以上遅くなってしまうと、皆が心配するかも
しれない……
「急いで帰らないと……」
誰に言うでもなく、そう呟き
私は歩みを早めた
860 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 21:00:57.40 ID:bDkMGIwo
「あれ……?なんだろ?」
しばらく歩いていると、前から歩いて来る人に違和感を感じた
足早に駆けていく人や、声をひそめて話す人の数が多いような気がする
「どうしたんだろ?」
その状況を怪訝に思ったが、急いでいることもあり、特に気にせずに私は再び歩き出した
「あー……」
だが、少し歩いた先で視界に飛び込んで来た光景を見て
私は先程の状況に合点がいった
どうやら女の子(といっても私よりは年上だろう)が数人の男に絡まれているようだった
「ああもう、どうして学園都市ってこんなに治安が悪いんだろ?」
女の人に絡む男達を見ながら、私はそう愚痴をこぼした
861 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 21:10:17.66 ID:bDkMGIwo
「正む――」
正宗を呼ぼうとして、咄嗟に口を押さえる
そういえば、以前、白井さんに目立つような行動は控えてほしいと言われていたのだった
ここは人通りも多いし、隠れる場所もほとんどない……
さすがにこんな所で大っぴらに正宗を装甲してしまっては色々マズイことになるかも
しれない
そう考え、正宗を呼ぶことを思いとどまる
そして、女の人に絡む男達に視線を投げる
人数は……
ここから見える限りで三人……
「大丈夫、だよね……?」
自分に言い聞かせるように、そう呟く
862 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 21:19:09.86 ID:bDkMGIwo
相手は三人……
万が一、戦いになったとしても、私一人でもなんとか捌ける数だと思う
そんなことを考えながら、彼女達の方へ足を向ける
「なぁ、いいじゃねぇかよ?ちょっと付き合ってくれるだけでいいからよぉ?」
「やめてください!」
さて、ここからどうすればいいだろうか?
男は女の人の腕を掴んでいる、迂闊に行動すれば女の人に怪我をさせてしまうかも
しれない……
「離してッ!!」
思案しているうちに、女の人が男の手を振り払い、距離をあけた
「ちょっと!あなた達!やめなさいよ!」
千載一遇のチャンス
その隙を逃さず、意を決して女の人と男達の間に割って入る
863 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 21:28:49.95 ID:bDkMGIwo
「あん?何だてめぇは?」
突然の闖入者に男達が首を傾げる
「大の男がよってたかって女の人を囲んで……、恥ずかしくないんですか?」
「てめぇには関係ねぇだろうがッ!すっ込んでろ!!」
「ぶち殺されてぇのか!?クソガキがぁ!!」
男達は私の言葉に耳を貸さず、声を荒げ、恫喝してきた
「こんなことして、すぐにジャッジメントが来ますよ?」
「関係ないね!ジャッジメントなんざ、怖くもなんともねぇよ!!」
ジャッジメントの名前を出しても意にも介さず
男達が下卑た笑い声を上げる
この人達には何を言っても無駄だろう
おそらく、話し合いで解決する事はできない……
864 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 21:37:59.64 ID:bDkMGIwo
「逃げてください」
「え?」
後ろの女の人にそう告げる
戦いを回避できる可能性はほとんどない
いざ戦いになれば、この人を守れる余裕なんて私にありはしないだろう
この人が怪我をしないためには、どこかへ逃げて貰うのが一番いい
「で、でも……」
だが、彼女からの返答はひどく歯切れの悪いものだった
その言葉から、彼女の逡巡が手に取るようにわかる
自分よりも年下であろう私を残して、一人だけ逃げることに躊躇しているのだろう
「私は大丈夫です。行ってください」
もう一度、同じ言葉を繰り返す
「…………」
「行って!!」
さっきよりも大きな声で、再度促す
「――ッ!!」
865 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 21:51:30.49 ID:bDkMGIwo
女の人は私の声に後押しされるようにその場から駆け出した
彼女は一度立ち止まり、心配そうにこちらを見たが
私は、大丈夫、と目で合図を送った
「舐めた真似しやがって!!」
獲物を逃がされた男が、額に青筋を浮かべながら言った
「どうやら相当痛い目見てぇらしいな!!」
激昂した男が拳を振り上げる
「――!」
866 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:02:07.85 ID:bDkMGIwo
反射的に身を後ろに引き、紙一重で拳をやり過ごす
「オラァ!!」
避けたのはまぐれだとでも思ったのだろうか?
男は再度、私に向けてパンチを放った
パンチが私に届くよりも早く
頭を下げ、パンチの下をくぐるようにして、隙だらけになった相手の懐に潜り込む
「は?」
目の前の敵を見失い、男の口から間の抜けた声が漏れる
「悪いけど、女の子の顔を殴ろうとする奴に手加減なんてしなわよ!!」
言い放ち、相手の鳩尾に拳を叩き込む
867 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:11:28.34 ID:bDkMGIwo
「げ、ふ――」
鳩尾に打撃をもらった男は、苦悶の声を上げながらその場に倒れ込んだ
「この野郎ッ!」
「ぶっ殺してやらァ!!」
仲間をやられたことで激昂した残りの二人が、同時に私目がけて殺到する
二人同時に相手にするのは分が悪すぎる……
まずはどちらか片方を倒す!
そう決断し、殺到する二人へ向かって走る
868 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:26:31.21 ID:bDkMGIwo
敵が目前に迫る
そのタイミングで、進路を右に変更し、敵の横をすり抜けるように姿勢を低くする
そしてすれ違いざまに、腹部に強烈なボディーブローをお見舞いする
「ガハッ!?」
強烈な一撃を見舞われ、男の体がくの字に曲がる
そこへ間髪入れずに下がった後頭部へ肘打ちを喰らわせた
肘打ちを受けた男は、グラリとよろけ、前のめりに倒れ込んだ
この短時間で仲間を倒されてしまい、残った一人は何が何だかわからないといった様子で
呆然と立ち尽くしている
869 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:36:12.87 ID:bDkMGIwo
「逃げるんなら逃げてください。私は追いませんから……」
残った一人にそう告げる
「う、うわぁぁ!!」
その言葉を受けた男は、わき目もふらずにその場から走り出し、あっという間に
遠ざかって行った
「はー……」
なんとか切抜けることができた、そう思い、私はホッと胸をなでおろす
「!!」
突然、背後から殺気を感じ、咄嗟にその場から身をかわす
ヒュン、と風を切るような音が耳に届き
腕に鋭い痛みが走った
一瞬の静寂が辺りを包む
そして、堰を切ったように周囲から悲鳴が上がる
870 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:44:49.85 ID:bDkMGIwo
「痛ッ!」
痛みのした左腕を見ると、一の字に裂かれた傷から血が滴っている
「このクソガキがぁ!ぶっ殺してやる!!」
声のした方に目を向けると、一番初めに倒した筈の男が血走った眼でこちらを睨んでいる
その手には私を切ったであろうナイフが握られ、太陽の光を反射してギラリと光っていた
「ちょ――、ナイフなんてこんな街中で出さないでしょ普通!?」
こんな街中で刃物まで持ち出してくるなんて、予想だにしていなかった……
いや、その可能性を考えていなかったのは私のミスだ
871 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:49:57.60 ID:bDkMGIwo
(どうしよう……)
心臓がドクンドクンと早鐘を打つ
切られた傷がズキズキと痛む
動悸が激しくなり、呼吸が乱れ始めているのが手に取るように感じられる
乱れた呼吸が耳に届き、それが私の思考を掻き乱す
逃げた方がいいのではないか?
そんな考えが頭をよぎる
幸い辺りには障害物が多く、人通りも多い
人ごみに紛れて逃げれば、何の苦もなく逃げ切る事ができるだろう……
872 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:55:40.97 ID:bDkMGIwo
(でも……)
私は逃げることはできても、他の人はどうだろう?
誰かが巻き添えになってしまうかもしれない――
誰かが私の代わりに犠牲になってしまうかもしれない――
そんなことは――
許せない
目の前の敵は私が倒さなければならない……
それが、きっと……
その先の言葉と、雑念を振り払おうと頭を振り
眼前の敵と対峙する
873 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/11/27(土) 22:57:16.83 ID:bDkMGIwo
今日はここまでです
次回の日時は未定ですが、一週間以内には投下したいと思います
874 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/28(日) 00:14:57.87 ID:S5LCpp2o
乙
875 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/11/30(火) 15:32:51.97 ID:V/AgGYDO
読みやすいしいい展開だ乙
876 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/12/03(金) 10:24:25.30 ID:0c6h2e.o
投下予告です
次回の投下は明日、4日の土曜を予定しています
877 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 20:48:04.45 ID:OS/Ax1co
始めます
878 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 20:55:09.56 ID:OS/Ax1co
さて、戦うと決めたのはいいものの、現状は最悪と言っても過言ではない状況だ
相手はナイフを持っているにも関わらず、こちらには武器になりそうなものはない
刃物対素手という圧倒的に不利な状態だ
リーチにしても、相手に圧倒的なアドバンテージがある
中学一年生の私と、目の前の高校生以上はいっているであろう年齢の男とでは、体格差
は歴然であり、どちらに分があるかは火を見るよりも明らかだ
そして、それよりも大きな問題がある……
それは
私が目の前の相手に気圧されている、という事実である
879 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 21:01:49.41 ID:OS/Ax1co
こちらに不利な要素は多々あるが、その中でもこれが致命的であろう
心臓は相変わらず早鐘を鳴らしており、平常心を保っているとは到底いえない心理状態だ
相手の手に握られているナイフに対する恐怖も健在で、このままでは満足に動くことすら
ままならない
それどころか、敵の迫力に押され、少しずつ後退るようなありさまである
ただでさえ不利な状況にあるにも関わらず、恐怖でまともに動けないのでは、戦いにすら
ならない
一方的にやられるのが目に見えている
880 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 21:08:15.26 ID:OS/Ax1co
勝つためには冷静にならなければいけない
だというのに……
あれで切られたら痛いだろうなぁ、とか
刺されたら死んじゃうんじゃないだろうか?とか
そんな考えばかりが、頭の中をぐるぐると回る
(一体、どうしちゃったんだろ……)
目の前の男よりも強い相手とだって戦うことができたのに
銃を持っている相手や、能力者とだって戦えたのに
それなのに……
なぜ
こんなにも怖いのだろうか?
考えても、考えてもわからない
そして、私の混乱が頂点に達しようとした
その時――
881 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 21:13:47.09 ID:OS/Ax1co
<御堂!聞こえておるか!?>
「!!」
突然、頭の中に声が響き、体がビクリと跳ねた
「ま……、正宗?」
聞き間違える筈はない
それは、私の劒冑、正宗の声だった
どうして気付いたのだろう?と、一瞬疑問に思ったが、考えるまでもないことだ
仕手と劒冑は繋がっている
私の精神の乱れを感知することで、私の陥っている状況に気が付いたとしても、なんら
不思議はない
882 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 21:23:40.85 ID:OS/Ax1co
<御堂!何をしておるのだ!?>
私の思考を断ち切るように、正宗の声が割り込む
その口調からは、正宗の憤りがありありと伝わってくるようだ
「それは……」
なんて言えばいいのだろうか……
何も言わずに、勝手に行動してしまった後ろめたさから、うまく言葉を紡ぐことができずに
黙りこくってしまう
<いや、大体の状況は把握しておる。 だが、なぜ吾に何も言わなかったのだ!?御堂
一人で敵に立ち向かうなどと無謀なことを!>
至極もっともな意見だ
元々、私は戦闘経験なんて皆無な、ただの子供にすぎない
仕手となったことで、身体能力が上昇し、多少の戦闘経験を積んだとしても、たった一人で
戦おうなんて無謀以外の何物でもない
883 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 21:31:23.56 ID:OS/Ax1co
<すぐにそちらへ向かう!御堂、急いでその場から――>
離れろ、とは言わなかった
正宗もこの状況が危険であることを認識している
目の前の男を放置して逃げれば、無関係な人にまで被害が及ぶ可能性があることを理解
しているのだ
しかし、このまま戦えば私は確実に負けるだろう
かといって逃げることはできない
さしもの正宗といえど、今すぐにこの場へ駆けつけるなんてことは不可能だ
どれ程急いでも数分の時間を要する
所謂、八方塞りというやつだろうか
884 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 21:41:12.91 ID:OS/Ax1co
だが、そこで私はある違和感に気が付いた
(あれ?私……)
あれだけ乱れていた動悸が和らいでいる
いつの間にか、先程の動揺が嘘のように薄まり、私の心が平静を取り戻しつつあることに
気が付いたのだ
一体どうして?
<ぬぅ、一体どうすれば……>
考え込む正宗の声を聞くことで、この疑問の答えにあっさりと気が付いた
(そっか……)
私は、一人で戦ってきたわけじゃなかったんだ
885 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 21:55:08.26 ID:OS/Ax1co
考えてみれば
いや、考えなくてもわかることだった
ただの無能力者にすぎない私が、なぜ能力者と戦うことができたのか……
それは、正宗が力を貸してくれていたからだ
私が臆することなく戦うことができたのも、正宗が傍に居てくれたからだ
(ホントに、私ってダメな奴だなぁー……)
自然と自嘲気味な笑みが浮かんでくる
正宗の手を借りて戦っていただけなのに、自分が強くなった気になって
無様な醜態を晒してしまった
本当にダメダメだ
886 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 22:10:13.15 ID:OS/Ax1co
(でも……)
手が白くなるほど力を込めて、ギュッと握りしめる
今までの私ならば、ここで止まってしまうかもしれない
(止まらない、止まるわけには、いかない)
そんな権利なんて、私にはないから……
「私が、あいつを倒すわ」
<!!>
今の私は弱い存在だ、正宗の仕手に相応しいような存在ではない
だからこそ――
逃げてはいけない
887 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 22:20:02.81 ID:OS/Ax1co
<御堂……>
「心配しないで、私だって――」
私が弱い存在なのなら、相応しくない存在なのなら
なればいい
強い存在に、相応しい存在に
「戦えるから――」
ならば、戦わなければならない
誰かを守れるような強い存在に
正宗、あなたに相応しいような存在になるために
888 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 22:23:56.69 ID:OS/Ax1co
<だが御堂!!>
なおも正宗は何か言おうとするが、私の決意が固いことを感じ取ったのか、押し黙る
<ええい!この頑固者め!吾も急いでそちらへ向かう!それまで決して無茶をするで
ないぞ!!>
「うん」
頷くと同時に、正宗からの声が途切れる
こちらへ向かって動き出したのだろう
「ありがと、正宗……」
誰にも聞こえないように、口の中で呟く
たとえ、この場には居なくとも
心が繋がっている
だから平気だ、戦うことができる
889 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 22:30:16.62 ID:OS/Ax1co
先程とは打って変わり、落ち着いた態度で眼前の敵を注視する
(ナイフの刃渡りは……)
目算だが、十数センチといったところだ
急所にさえ当たらなければ致命傷を負うことはないだろう
それだけわかれば十分
今の私なら一人で対処可能だ
そう結論付け、腰を落とし、構える
890 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 22:36:02.98 ID:OS/Ax1co
敵の一挙手一投足まで見逃さないように、集中する
すでに私の中にあった恐怖心は跡形もなく消え去り
周りの喧騒が遠のき、この場には私と眼前の敵しか存在していないかのようにさえ感じる
じりじりと男が間合いを詰めてくる
どうやら男は私をひどく警戒しているようだ
最初に手ひどくやられたのが相当こたえたらしい
頭に血がのぼった状態であるにも関わらず、むやみやたらに攻撃してこないのは、それが
原因だろう
891 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 22:49:03.82 ID:OS/Ax1co
それは私にとって、とてつもない僥倖だったろう
混乱の最中にあった時に襲いかかられていたら、それこそ手も足もでなかった
じりじりと距離を詰める男に対し、私はその場から一歩も動かず、気を窺う
私は確実に仕留められるように行動せねばならない
なぜならば、一撃で仕留めなければ、私は窮地に追い込まれてしまうからだ
素手で相手を倒すには接近するしかない
先制し、攻撃を避けられる、もしくは凌がれてしまうとナイフによるカウンターを受けることに
なってしまう
生身の体でナイフによるカウンターを受ければ、負傷は免れないし、最悪、死に至るだろう
892 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 23:03:12.14 ID:OS/Ax1co
ナイフによるカウンターがなかったとしても、取っ組み合いにでもなれば、私が力負けする
可能性が高い
故に、私の取るべき行動は相手の攻撃を待って、それに対してカウンターを叩き込む
これが最良であると判断する
私達の距離が、どんどん縮まっていく
「…………」
そして、一足飛びで私にナイフが届くであろう距離まで接近した
893 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 23:19:28.36 ID:OS/Ax1co
(―――ッ)
後少し進んだところで攻撃を仕掛けてくる
目の前の男は戦闘訓練を受けた人間ではないだろう
戦闘慣れしているのであれば、私の攻撃が届かず、尚且つ、自分の攻撃が届く間合いで
停止し、こちらの出方を窺うような動きを見せてもよさそうなものだ
しかし、素人だとしても、近づきすぎればこちらの攻撃が届くことくらいはわかる筈
相手の間合いに入っていて、私が踏み込んでも攻撃が届かない距離
その条件を満たす空間は、後僅かしかない
894 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 23:27:14.64 ID:OS/Ax1co
瞬きもせずに、相手の動きを注視する
男が足を地面から浮かた
そして――
足が地面についた
「死にやがれぇえぇ!!!」
足が地面につくと同時に、男が叫び声を上げながら、こちらに向かって先程とは比べものに
ならない力で地面を蹴る
895 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 23:31:30.91 ID:OS/Ax1co
(今だッ!!)
男が私の間合いに入る
ナイフを持った手が振り下ろされるタイミングを見計らい、踏み込み
相手の懐に入り、間合いを潰す
この距離では腕を振り上げている男の攻撃は私に届かない
つまり、ここは、もう―――
(私の間合いだッ!!!)
896 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 23:39:33.82 ID:OS/Ax1co
左手をナイフを持った腕の手首に当てるようにして攻撃を防ぐ
「なッ!?」
信じられないというように、男が目を見開く
「はッ!!!」
ありったけの力を込め、男の顎目がけて拳を振り上げる
「ガァッ!?」
放たれた拳は、的確に顎を打ち抜き
男はそのまま後ろに倒れ込んだ
897 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 23:46:52.56 ID:OS/Ax1co
今度こそ、終わった……
男は失神しているようで、立ち上がる気配を見せない
「はぁー……」
それを確認し、安堵の息を吐く
<よくやったぞ、御堂!!>
正宗の賞賛の声が届く
「ありがとう……」
それに対し、素直に礼を述べる
これで、一件落着
といけばよかったのだが……
898 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/04(土) 23:52:44.50 ID:OS/Ax1co
どうやらそうもいかないようだ
ナイフを持った暴漢が倒れたことで、悲鳴を上げるような者こそいないものの、周囲の
ざわめきは未だ収まらない
「あの子、能力者なのかな?」
「なになに?能力者が暴れたの?」
「おい、早く行こうぜ。 厄介事に巻き込まれんのは御免だぜ……」
「誰か早くジャッジメント呼べよ……」
周囲のざわめきの中から、そんな言葉が耳に届く
899 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:03:46.77 ID:5NQOfLMo
<な、なぜだッ!?御堂は……、御堂は力無き者を守るために戦ったのだぞ!?
だというのに、なぜそのような目で御堂を見る!!?>
現実は物語のようにはいかない
都合のいい悪人なんて存在せず、よしんば都合のいい悪人が存在するとしても、
それを打ち倒すという行為は、決して綺麗なものではない
私に向けられるのは憧憬の眼差しではなく、奇異の視線
放たれる言葉は賞賛の言葉ではなく、恐れや誹謗
当たり前だ、私のやったことは人を殴り飛ばしただけ
もし、能力をつかったのならば、それは学園都市の決まりを破っている
能力でなかったとしても、それは法を破っている
だから、
これは当たり前のことなんだ――
900 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:10:50.18 ID:5NQOfLMo
でも、私は後悔なんてしない
私はあの女の人を助けるために戦った、自分の意志で……
<こやつ等ッ!自分達は見ているだけしかできぬくせに、好き放題言いおって!!!>
憤懣やるかたない、といった様子で正宗が声を上げる
「行こう、正宗」
<しかし、御堂!!>
「いいから、とにかくここを離れないと」
かなりの大立ち回りをしてしまった
すぐにジャッジメントが駆けつけてくるだろう
これ以上、面倒なことになる前に退散するのが吉だ
<クッ!御堂は体を張って、こやつ等に被害を及ぼすまいと戦ったというのに……。
なぜ、このような扱いを受けねばならぬのだッ!!!>
901 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:16:34.37 ID:5NQOfLMo
その理由を正宗には理解するなんてできないと思う
正宗は危ういほどに純粋で、高潔な心を持っている
だから、きっと理解できない
でも、私にはわかるんだ
この人達の気持ち……
「なぁ、君……」
「!!」
不意に声をかけられ、反射的にその場から駆け出してしまう
「ちょ、ちょっと、待ってくれよ!!」
902 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:25:04.05 ID:5NQOfLMo
走り出してから内心しまった、と思ったが、もう遅い
声をかけた人がジャッジメントだったとしても、あの状況ならば言い訳のしようがあったかも
しれない
私だって、刑務所に好き好んで入りたいなんて思わないし、他の人に迷惑をかけるのは
御免だ
なぜ走ってしまったのかといえば、あの奇異の視線から一刻も早く逃れたいという思いが
あったからだろう
見返りが欲しかったわけじゃない
賞賛して欲しかったわけじゃない
あれが、当然の結果だっていうのもわかってる
でも――
それでも―――
それでも、胸がチクリと痛んだから……
903 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:34:23.46 ID:5NQOfLMo
「はぁ、はぁ……」
ここまで来れば大丈夫だ
立ち止まり、息を整える
<大丈夫か、御堂?>
「うん、それよりも、早くうちに帰らないと……」
まったく、とんだ寄り道になってしまった
不幸中の幸いだったのは、さっきの人が白井さんのような能力者ではなかったことだ
もし、あの人が白井さんのような能力者だったら追いつかれていただろう
<! 御堂、先程の男だッ!>
「はぁー、はぁー、や、やっと追いついたぜ……」
バッと、後ろを振り返ると、やたらツンツンした髪型の男の人が息をぜぇーぜぇ―切らしながら
立っていた
904 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:40:30.53 ID:5NQOfLMo
「あっ!ま、待ってくれ!俺は別に怪しいもんじゃないんだ!」
私がまた走り出すと思ったのか、ツンツン頭の人は慌てながら言った
「…………」
<どうするのだ?>
「とりあえず、様子を見てみようか?」
<承知>
しばし、目の前のツンツン頭の人の息が整うまで待つ
905 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:49:38.32 ID:5NQOfLMo
「私に、何か用ですか?」
ツンツン頭の人の息が整ったのを確認し、質問を投げかける
さっきの出来事が尾を引いているのか、自分でもわかるくらいに露骨に無愛想な声を
出してしまった
「君、さっき不良達と戦ってただろ?」
心臓が跳ねた
「歩いてたら、辺りが随分とざわざわしてるから、なんだろうって思って覗いたら
君がナイフを持った不良と戦ってるのを見つけてさ」
906 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 00:57:44.53 ID:5NQOfLMo
「…………」
「助けに入ろうと思ったら、一発でノックアウトしちまったからさ。 タイミングを逃しちまって、
その後話しかけたら走ってっちまうし……」
「なんで追いかけて来たんですか?」
話に割り込み、そう質問する
どうやら、この人はジャッジメントではなさそうだ
私が倒した男達の関係者でもないようだし
なんで私を追ってきたのか、その意図がつかめない
「君、怪我してるだろ?怪我してる女の子を放ってなんておけねぇからさ……。
つい追いかけて来ちまったんだ」
907 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 01:06:38.90 ID:5NQOfLMo
「は?」
予想外の答えに思わず間抜けな声が出る
この人は、見ず知らずの人が怪我をしているのを放っておけない。
なんて理由で本当にここまで走って来たのだろうか?
「よかったら、うちへ来ないか?傷の手当てぐらいはしてあげられるからさ」
まったく邪気を感じさせない、人の良さそうな感じでツンツン頭の人は言った
この人は何を考えているのだろうか?
会ったばかりの女の子をいきなり家へ誘うなんて……
真意を計りかねて、怪訝な視線をツンツン頭の人へ向ける
「いやっ!別に変な意味はないんだ!ただ怪我してるからさ――!」
自分に向けられている視線に気付いたのか、ツンツン頭の人は弁明の言葉を口にする
908 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 01:14:11.70 ID:5NQOfLMo
どうやら本当に他意はないようだ……
「どうしようか?」
判断がつかず、正宗に意見を求める
<ふむ……、ついて行っても良いのではないか? 先程の奴らより、何倍も信用できる
ように吾は思うぞ>
大分、私情が入った判断のように思える
<それに、腕から血を流したまま帰るわけには行くまい?>
切られた傷口を見ると、もうほとんど血は出ていない
それでも、キチンとした手当ができるのならばそれに越したことはないだろう
このまま帰って、打ち止めちゃんと一方通行さんに余計な心配をさせるのも気が引けるし……
909 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 01:23:09.04 ID:5NQOfLMo
「すみません、それじゃあお言葉に甘えさせてもらいます」
「そんなかしこまらなくてもいいよ。 俺が好きでやってるんだから」
気にするな、と手をひらひら振りながらツンツン頭の人は言った
「そんじゃ、行こうか?」
「あ、ちょっと待って下さい。 帰りが遅くなるかもって、メールしたいんで、少し待って貰って
いいですか?」
「ん?別に構わないぜ」
「ありがとうございます」
携帯を取り出し、うちで待っている二人にメールを送信する
「これでよし、と。 お待たせしました、もう大丈夫です」
「そんじゃあ行こうか――、っと、そういりゃ自己紹介をしてなかったな。俺は上条当麻。
まあどこにでもいる、普通の高校生ってとこだ」
ツンツン頭の人、上条さんはにっこり笑った
910 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 01:33:23.29 ID:5NQOfLMo
「私は佐天涙子。同じく、平凡な中学生ですよ」
上条さんに続いて、私も自己紹介する
しばらく上条さんの後ろについて歩く
上条さんは今になって緊張でもしたのか、時たまこちらの様子を窺うが、話かけるのを
躊躇っているようだった
(私が何か言わないと……)
そうは思うのだが、初対面の男の人となんて、何を話していいのかわからない
「あ、あの――」
「私のこと、変だとか、怖い、とか思ったりしませんでした?」
なんでよりによってそんなこと聞くんだ、私……
言ってから口を押えるが、もう遅い
また奇異の目で見られるんじゃないか?
そう思い、俯いたが……
「そんなこと思わないよ。不良達相手に一人で立ち向かえるなんて、そうそうできることじゃ
ない。君みたいな女の子がそんなことできるなんて、すごい立派なことだって思うぜ?」
変なことを聞いたにも関わらず
上条さんは気にした様子もなく、そう答え
ニコッと笑った
911 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 01:37:35.57 ID:5NQOfLMo
「あ、ありがとうございます……」
<この男、なかなかに見所のある男ではないか! 先の奴等とは大違いだな!>
その答えに気を良くしたのか、正宗は随分と機嫌よさそうに言った
私だって、褒めて貰えたのは嬉しい……
だけど
同時に、心の中に澱が溜まっていくような
そんな嫌な感じがした
912 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/05(日) 01:41:21.76 ID:5NQOfLMo
今日の投下はここまでです
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました
913 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/05(日) 02:21:44.23 ID:HwmrO6DO
いつの間に…
おつ
やはり上条さんはいいな!
914 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/05(日) 08:18:27.99 ID:KjFgb6DO
乙
面白いよー
次も楽しみにしてる
915 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
:2010/12/11(土) 21:30:31.28 ID:DkA2JwAO
なぜだか分からんが、この上条さんは良いな
916 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/13(月) 01:39:17.48 ID:.jJuTms0
半年前からあるのに長く続いてるし面白すぎるだろ・・・
>>915
がageてくれたお陰でこの作品知れたわ…
今後が気になるな
917 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2010/12/15(水) 20:45:22.98 ID:DwzRXiQo
投下予告です
次回の投下は19日、日曜日を予定しています
追記
言われてから気がついたのですが、このスレを立ててからもうすぐ半年が経過します
現在の話の進み具合は、全体の4割程度です
完結までまだまだ時間がかかると思いますが、これからもお付き合いくだされば幸いです
918 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/17(金) 23:14:44.69 ID:MpuCZuI0
乙!楽しみにして待ってます!
919 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 20:55:49.79 ID:UP0P/e.o
それでは始めます
920 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 21:02:54.98 ID:UP0P/e.o
道中は、他愛もない世間話をしながら、上条さんの後ろをついて歩く
「ここの学生寮に住んでるんだ」
目の前の建物を指差して、上条さんが言った
「わぁー、随分と大きなところですね」
上条さんが指差したのは、かなり大きな建物だった
私の住んでいるところとは比べものにならないくらい大きくて。もはや学生寮というより、
マンションと言った方がしっくりくるだろう
階段を登り、上条さんの部屋の前に到着した
「何にもない部屋で悪いんだけど……」
ドアノブに手をかけた上条さんが、こちらを見ながら照れくさそうに笑った
921 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 21:09:19.15 ID:UP0P/e.o
「にゃあ〜」
部屋のドアが開くと同時に、一匹の猫が部屋の中からこちらへ駆けて来た
「こら〜、スフィンクス!待つんだよ!」
その猫を追うようにして、部屋の中からシスター姿の女の子が走って来る
「あ、とうま!おかえりなんだよ!」
猫を抱き上げ、こちらに気づいた女の子が満面の笑顔を浮かべた
「あれ?お客さん?」
続いて私の姿にも気づき、彼女は首を傾げる
「ど、どうも」
慌てて挨拶をし、軽く頭を下げた
922 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 21:21:12.89 ID:UP0P/e.o
同居人がいるなんて思ってもいなかったものだから、呆気にとられてしまっていた
<ふむ、同居人がおったのか。よもやこの男、もう結婚しておったのか?>
(そんなわけないでしょ……、たぶん妹さんじゃない?)
突拍子もない正宗の言葉を否定する
正宗の時代ではどうだったかは知らないが、今の日本じゃこんな若くに結婚なんて考えも
しないだろう
まさか学生寮で同棲してるなんて考えられないし、高校生で奥さんや娘がいるなんてのは
それ以上にあり得ない話だ
「ちょうどよかった。インデックス、悪いんだけど救急箱出してくれないか?」
私達がおかしなやりとりをしている間に、上条さんは玄関に入り、靴を脱ぎながら女の子に
そう言った
923 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 21:31:53.90 ID:UP0P/e.o
「とうま怪我したの?」
女の子が心配そうに尋ねた
「いや、俺じゃなくて、この子……佐天さんって言うんだけどさ。この子が怪我をしたんだ。
インデックス、悪いんだけど佐天さんの怪我の手当てをしてあげてくれよ」
上条さんの言葉を受けて、女の子の視線がこちらへ移る
「そういうことなんだ。私はてっきり、とうまがまた女の子を――」
そこまで言って私の視線を感じたのか、彼女は言葉を切った
「ううん、なんでもないんだよ!じゃあ私は救急箱を用意しておくから!」
女の子は踵を返し、小走りに部屋の中へと入っていった
「どうしたんだ?インデックスのやつ……。っと、悪いな佐天さん、そんなところで立たせち
まって。遠慮せずに中に入ってくれよ」
924 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 21:42:57.35 ID:UP0P/e.o
「それじゃ、お邪魔します」
促されるままに部屋の中に足を踏み入れる
「へぇー、随分と綺麗な部屋なんですね」
部屋の中を見て、そう感想をもらす
「まあ、一応女の子と二人暮らしだからなぁ」
「むぅ!一応ってのはヒドイんだよ!」
救急箱を持った先程の女の子が抗議の声を上げた
「おわっ!?聞いてたのかインデックス!?」
「聞こえるに決まってるんだよ!こんな狭い部屋の中なんだから!」
「し、しまった。さっきまでと同じ感じで喋っちまった……」
上条さんが怯えたように後ずさる
925 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 21:51:48.88 ID:UP0P/e.o
女の子がズンズンと音を立てるようにして上条さんの方へ歩を進める
「す、すまん、インデックス!」
上条さんが頭を庇うようにしながら謝罪の言葉を口にした
「…………」
女の子は何も言わずに私達の方へ歩き続ける
「――ッ!」
観念したように上条さんが目を瞑った
「へ?」
上条さんの口から間の抜けた声が出た
なぜか怯える上条さんとまったく状況が飲み込めない私をよそに、女の子は何事もなかった
かのように上条さんの横を通り過ぎた
926 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 22:03:00.94 ID:UP0P/e.o
「あ、あのー……、インデックスさん?いつもの噛みつき攻撃はしないのでしょうか?」
恐る恐るといった様子で上条さんが言った
それを聞いて、私は「ああ、なるほど」と先程の上条さんの怯えように合点がいった
この話しぶりから察するに、この女の子は怒ると噛みつき攻撃をしてしまうようだ
たとえ小さな子供でも、物を噛む力は相当強い
それに女の子相手だから上条さんも反撃をすることができないし
唯一の対策といえば、この子の機嫌を損ねないようにするころぐらいじゃないだろうか……
「今は救急箱を持ってるし、お客さんの前だから我慢するけど、次はないんだよ!
それと、代わりに今日のご飯はいつもよりたくさんくれないと気が済まないかも!!」
上条さんの方を振り向き、女の子が声を上げる
その様子は怒っているというよりは、駄々をこねているみたいだった
927 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 22:15:39.14 ID:UP0P/e.o
「ふふ……」
自然と笑みがこぼれる
うちでも一方通行さんと正宗が打ち止めちゃんに振り回されているのを目にすることがある
「お二人とも仲がいいんですね」
「ちょ、上条さんは現在進行形で同居人の恐怖政治じみた理不尽な圧力に晒されているの
ですが!?」
私の言葉を聞いた上条さんが抗議の声を上げる
「とうまは黙ってるんだよ!じゃあ、手当てするからそこに座って」
上条さんの抗議はあっさりと打ち消され、私は彼女に促されるままにテーブルの傍の
クッションの上に座った
928 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 22:28:18.18 ID:UP0P/e.o
「あの〜、俺は何をすればいいんでしょうか……」
「とうまは何もすることないから、テレビでも見てるといいんだよ」
彼女は上条さんの申し出をバッサリと切って捨てた
「そ、そうか、それじゃあお言葉に甘えてテレビでも見てるよ。歩いて疲れたからなぁ……、
結構汗もかいてるしな、やばいな目からも汗が……」
しょんぼりなんて表現が似合う動作で、上条さんがテレビの近くへ移動する
「いいんですか?」
あんなにしょげた姿を見てはさすがに心配になってくる
「心配ないんだよ。5分もすれば元通りになってるかも。そんなことよりも、あなたの
怪我の方が大事なんだよ」
929 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 22:39:07.99 ID:UP0P/e.o
手をひらひらと振りながら彼女は言った
「そういえば、あなたの下の名前は?まだ聞いてないんだよ」
「そうでしたね。えっと、私の名前は――」
「あ!ちょっと待ってほしいんだよ!」
「なんですか?」
「名前を聞くときは、こっちから名乗るのが礼儀だったんだよ!」
彼女はそう言って、腰に手をあて胸を反らした
えへんという擬音がこれ程似合いそうな場面はそうそうないだろうなぁ、と思った
「それじゃあ改めて、私の名前はインデックス、よろしくなんだよ!それと敬語はいらない
かも!」
930 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 22:47:22.83 ID:UP0P/e.o
インデックス……
どうやら彼女は日本人ではないようだ……
しかし、外国人にしても変わった名前だなぁ
日本語にすると、索引とかそんな意味の言葉だったと思う
そこまで考えて新たな疑問が浮かび上がる
彼女が外国人だとしたら、彼女と上条さんはどんな関係なんだろう?
両親が国際結婚をしたとかかな?
まあ、何にせよ。出会ったばかりの私が深く踏み入っていいような話じゃあないだろう
「私は佐天涙子。なんて呼んでくれても構わないよ。あなたのことは……
インデックスちゃん、って呼べばいいかな?」
気を取り直し、改めて自己紹介をする
931 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 22:56:48.53 ID:UP0P/e.o
「むぅー!小さな子供みたいな扱いはやめて欲しいんだよ!」
彼女は頬を膨らませると、腕をブンブン回し、体全体を使って猛抗議した
(結構子供っぽいと思うんだけどなぁ)
彼女の動きを見て、思わず苦笑する
「るいこは何歳なの!?」
「13ですけど……」
「私とあんまり年齢も変わらないんだし、呼び捨てでいいんだよ!私もるいこのこと
るいこって呼ぶから!」
「う、うん。わかった……」
迫力に押され了承してしまったが、まあ呼び捨てでいいんならこっちとしてもその方が
楽だし、別にいいかな
実は、彼女……、インデックスの年齢を小学生くらいだと思っていたのは秘密にしておい
た方がよさそうだ
彼女の申し出に頷きながら、私はそんなことを考えていた
932 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 23:09:34.78 ID:UP0P/e.o
「なぁ、インデックス」
「何?とうま?」
「さっきからずっと話してるけどよ。いい加減佐天さんの怪我の手当てをしてやれよ、
傷口から何か入ったら大変だろ?」
「う……」
上条さんに言われて先程から話に熱中していたことに気づいたのか、インデックスが
小さな声をもらす
「いや、別に気にしなくていいから……」
「い、今からしようとしてたところなんだよ!」
意地を張っているのか、インデックスは鼻息荒く救急箱を開けた
上条さんの方を見ると、上条さんは「やれやれ」と両手を上に上げるジェスチャーをした
「じゃあ、今から治療を始めるんだよ!」
インデックスが消毒液を持って気炎を上げていたので、私は上条さんに軽く笑みを作って
返し、インデックスの方へ向き直った
933 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 23:15:57.90 ID:UP0P/e.o
「ちょっとしみるかもしれないけど、我慢するんだよ?」
傷口を水できれいにし、その上から消毒液が付けられた
「…………」
ほんの少ししみたが大したことはなかった……
昔なら、「イタッ!」とか言っていた筈なのになぁ……
もしかしたら、痛覚が鈍ってきているんじゃないかと不安になる
(ないない、そんなことあるわけないよ
934 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 23:21:12.52 ID:UP0P/e.o
途中で送信してしまったため、一部重複します
(ないない、そんなことあるわけないよ)
ネガティブな考えを振り払う
後は包帯を巻いてもらえば大丈夫だろう
傷の手当ては何の問題もなく終わりそうだ
だが、考えるべきことはまだある
家で待っている二人に包帯を巻いて帰った時の言い訳を考えておかなければいけない
馬鹿正直にナイフで切られたなんて言うわけにはいかないし
転んだ拍子にどこかにぶつけて怪我をしたことにでもすればいいかなぁ……
935 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 23:31:56.26 ID:UP0P/e.o
打ち止めちゃんはそれで誤魔化せるかもしれないけど、一方通行さんは難しいだろうなぁ
今まで学園都市の暗部で生きてきただけあって、おそらくそんな言い訳程度ではすぐに
看過されてしまうだろう
(何かいい方法ないかなぁ、正宗?)
<ふむ、一方通行の奴には隠さずに言ってしまってもよいのではないか?>
(う〜ん)
正宗の提案に首をひねる
確かにそれがもっとも確実な方法かもしれない……
でも、あんまり心配をかけたくないしなぁ
「ん?」
ふと、消毒液を付けてからしばらく考え事をしていたのに、一向に包帯が巻かれる気配が
無いことに気がついた
おかしいな、と思ってインデックスの方を見ると、彼女はなにやら真剣な表情で私の腕に
できた傷をじっと見つめている
936 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 23:42:02.23 ID:UP0P/e.o
「どうかしたの?」
「えっ!?な、なんでもないんだよ!」
我に返ったのか、インデックスは慌てて言い繕うと、救急箱から包帯を取り出した
「…………」
それから傷の手当ては滞りなく進んだ
こういったことに慣れているのか、インデックスは慣れた手つきで、あっという間に包帯を
巻き終えてしまった
「おお〜、包帯を巻くのスゴイうまいんだね!」
綺麗に巻かれた包帯を見て、思わず感嘆の声をもらす
「うん……」
「?」
褒めたというのに反応が悪い、さっきまでの彼女ならもっと喜んでもよさそうなものなのに……
937 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 23:49:00.98 ID:UP0P/e.o
「ねぇ、るいこ。あなたに聞きたいことがあるんだけど……」
「何?」
先程とは打って変わり、真剣な表情でインデックスは私に問いかけた
「るいこは能力者なの?」
真っ直ぐと私を見据えながら、そう言った
「ううん、違うよ。残念ながら私は無能力者だよ」
嘘は言っていない
私は依然として、何の力もない無能力者のままだ
「それは、嘘、なんだよ……」
938 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/19(日) 23:57:25.40 ID:UP0P/e.o
私の心を読み取ろうとでも言うかのように、インデックスは私の目を真っ直ぐと見たまま
視線を逸らさない
「おい、インデックス!お前、何言ってるんだよ!」
雰囲気の変化に気づいた上条さんが私達の間に割って入ろうとする
「とうまは少し黙ってて」
「でも!」
「いいから……、これは大事なことなの。るいこ、あなたはさっき能力者じゃないって言った
よね?あれは本当なの?」
「うん、嘘じゃないわ」
939 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/20(月) 00:01:01.28 ID:jlyl/42o
私もインデックスの目を見つめ返しながら答える
「それじゃあ――」
言葉を区切り、インデックスは一呼吸置いた
「あなたは――、魔術師なの?」
940 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2010/12/20(月) 00:02:59.78 ID:jlyl/42o
今日の投下は以上です
次の投下はなんとか年内に済ませたいと考えています
941 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/20(月) 00:13:16.30 ID:wcx22HMo
>>1乙
ずっと見つめてます
942 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/20(月) 00:13:49.14 ID:wcx22HMo
間違えた。
ずっと見てます、だ。
943 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/20(月) 00:34:52.84 ID:h8QWTcQo
乙
面白かったよ
944 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/20(月) 01:40:58.71 ID:xwx57zY0
乙!
相変わらずインデックスさんは可愛いんだよ!
さあ皆可愛さにひれ伏すんだよ!
945 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/20(月) 23:14:00.24 ID:ksPu5TIo
おつおつ
ここでインダストリアルさんだと?
続きが気になるぜ…
946 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/21(火) 01:12:41.68 ID:N6CkqOM0
さすが、金翅鳥王剣(インメルマンターン)さん…魔導書だけではなく悪鬼についても詳しそうだ
947 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage ]:2010/12/24(金) 01:59:15.38 ID:lmSyBOoo
たくさんのレスをつけていただき、ありがとうございます。
次回の投下は、26日の予定です。
よろしくお願いします。
948 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage ]:2010/12/26(日) 19:51:33.03 ID:.JqunLoo
すみません、今日投下する予定だったのですが、ストーリーを修正しなければならなく
なってしまったため、今日の投下は中止とさせていただきます。
待って下さっている方には大変申し訳ないのですが、ご了承ください。
949 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/26(日) 21:04:24.20 ID:FY51ueco
待っているぞ
950 :
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします
[sage]:2010/12/31(金) 16:41:51.05 ID:5/f4XGoo
もう大晦日か
951 :
あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!
[sage]:2011/01/01(正月) 01:02:24.32 ID:xJzkhzQo
あけおめ!
952 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2011/01/01(正月) 05:45:15.01 ID:7qp6omE0
皆さん、あけましておめでとうございます。
去年は最後の最後でぐだってしまいましたが、今年も完結目指して、地道に頑張っていくので
よろしくお願いします。
953 :
あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!
[sage]:2011/01/01(正月) 11:37:46.17 ID:2HPD19Eo
あけましておめでとう!
待ってるよ!
954 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2011/01/06(木) 21:29:29.15 ID:1MhabZEo
次はいつごろだろうか
955 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage ]:2011/01/09(日) 15:25:24.55 ID:DtA5DcYo
大変お待たせして申し訳ありません。
次の投下は、なんとか一週間以内には間に合わせるつもりですので、もう少しお待ちください。
956 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2011/01/10(月) 16:53:43.09 ID:BmWN8RCEo
待ってるんだよ!
957 :
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします
[sage]:2011/01/10(月) 18:54:16.32 ID:aOSGhYWpo
期待してます!
958 :
真・スレッドムーバー
:移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
959 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/13(木) 22:27:59.72 ID:na2oRuZyo
てす
960 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2011/01/13(木) 23:26:51.63 ID:2FdBdllgo
本日1月13日、自治スレにおいてゲーム製作とSS製作を分離することが決定されました。
SS系製作の新たな活動の場として、管理人様がSS速報を新設して下さり、それに伴って
このスレもSS速報へ移転することにしました。
誠に申し訳ないのですが、移転するのなら早い方がよいだろうと思い、独断で移転を決定させていただきました。
突然スレがなくなり、驚かれた方にはお詫び申し上げます。
これからはこの新天地で引き続き活動を行っていくので、どうかよろしくお願いします。
961 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/13(木) 23:33:51.26 ID:na2oRuZyo
頑張って!
962 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 21:28:26.56 ID:zGGcGLWOo
突然ですが、今から投下します。
963 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 21:32:48.16 ID:zGGcGLWOo
「は?」
インデックスの口から飛び出した質問に、私は呆気にとられてしまった
ここ最近の色んな出来事のおかげで、もはや並大抵のことでは驚かなくなったと自負して
いたのだが……
どうやらまだまだ甘かったらしい
まさか、あなたは魔術師なのか?
なんて漫画やゲームの中でしかあり得ないような質問を、実際に……、それも自分自身が
されることになるなんて、夢にも思っていなかった
しかし、インデックスの目は真剣そのもので、この質問が冗談ではないことを物語っている
964 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/14(金) 21:33:33.02 ID:AC/ib8BAO
センター前の追い込みだけど待ってた
965 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 21:38:43.33 ID:zGGcGLWOo
「おい、インデックス!いきなりなんてこと聞いてんだよ!?」
その質問に驚いたのは上条さんも同じだったようだ
慌てたようにインデックスの質問に横槍を入れた
「とうまは少し黙ってて。これは大事な話なんだよ」
さっきまでの子供っぽい振る舞いとは打って変わって、インデックスは真剣な声音で上条さん
に言った
「るいこの腕にある傷……、傷だけじゃない、るいこの体全体から何か魔術めいた力を感じる
んだよ」
先程までの和やかな雰囲気から一転して、部屋の中を張り詰めた空気が流れる
966 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 21:45:26.95 ID:zGGcGLWOo
<御堂、気を抜くでないぞ……>
ただならぬ空気を感じ取った正宗が警告の言葉を発した
(うん)
万が一に備え、座っている状態から腰を浮かせ、いつでも後ろに回避行動が取れるように
身構える
もし、この二人が敵だったと仮定したら、ここはすぐにでも立ち上がり、この二人から距離
を取るのが正しい選択だろう
でも――
目の前の二人は、きっと悪い人ではない……
そんな考えが脳裏をかすめる
どうしてそんなことを思ったのかはわからない
この二人とは出会ったばかりで、互いのことは何も知らないに等しい
それなのに、私は、この二人を信じたい
きっと話せばわかってくれる
そう思ってしまった
その想いが、私にそこへ留まることを選択させた
967 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 21:54:15.97 ID:zGGcGLWOo
「私は能力者じゃないし、魔術師なんてものも知らない……。でも、インデックスの言うように
私には能力とは別の力があるわ」
率直に事実を述べる
どんなカラクリかはわからないが、インデックスは正宗の力を感じ取っているようだ
そんな状況で嘘を突き通すなんて器用な真似は私にはできそうにないし、何より、彼女に
対して嘘をつくのは躊躇われた
「別の力って……?」
「それは……」
インデックスはさらに質問を重ねてきた
だが、私はそれに答えることができずに口ごもる
私の独断で正宗のことを喋っていいのだろうか?
下手なことを喋れば、この二人を暗部との争いに巻き込んでしまう可能性だってある……
968 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 22:03:35.71 ID:zGGcGLWOo
「インデックス、そんな矢継ぎ早に質問すんじゃねぇよ。見ろ、佐天さんも困ってるじゃねぇか」
そんな私の様子を見かねたのか、上条さんが再び話に割り込んできた
「でも、とうま。るいこは自分には能力者とは別の力があるって言ってるんだよ?」
「それは……」
「私だって、本当はこんな詰問みたいなことはしたくないんだよ……。でも、私達はとうまが
思ってるよりもずっと危険な立場にあるんだよ?」
インデックスは上条さんの方へ向き直り、説得を試みている
(どうしようか?)
その隙に、私は正宗に何か打開策がないか尋ねてみた
969 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 22:12:23.66 ID:zGGcGLWOo
<むぅ、これはややこしいことになったな。無闇に吾等のことを吹聴するような真似はできぬ。
さりとて、この場をうまく切り抜ける方策も思いつかぬし……>
どうやら正宗にもいい考えはないようだ……
さて、どうしたもんかなぁ……
チラリと二人に視線を移すと、どうやら上条さんはまだ納得していないようで、二人の議論
は未だ続いていた
「まあ、とりあえず一回落ち着けよ。話はそれからでも遅くはないだろ?」
しかし、私が目を話している間に形勢は逆転していたようで
今度は上条さんがインデックスを説得しようとしているみたいだ
970 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 22:23:59.36 ID:zGGcGLWOo
「うぅー……」
インデックスは上条さんの言葉に心が揺れているようだが、まだ納得はできないみたいだ
「そんな顔するなよ、な?お茶でも飲んで落ち着いてから話せば誤解も解けるって」
「でも!もし、るいこが魔術師だったり―――」
「暗部と関わりのある人間だったらどうするの!?」
(!!)
彼女の口から出た暗部と言う言葉に、反射的に立ち上がってしまった
(あちゃ〜、まずったかも……)
<御堂!!>
正宗が私に声をかけてきたが、今の私にはそれに応答している時間はなさそうだ
「るいこ……、もしかして暗部のこと知ってるの?」
こちらへ向き直ったインデックスが言った
971 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 22:34:15.86 ID:zGGcGLWOo
ここまで露骨に反応してしまっては、知らないなんてしらを切るのは無理だろう
自分の不手際で状況はさらに緊迫したものになってしまった……
あまりの未熟さに唇を噛みしめる
だが、そんなことをしている場合ではない
インデックスは、どうやら学園都市の暗部について知っているようだ……
「うん、私は暗部の存在を知ってる。でも、インデックス、なんであなたが暗部の存在を知って
るの?」
質問を返すような形でインデックスに問いかける
「そっちこそ、なんで暗部のことを知ってるの?この学園都市で暗部のことを知ってるのは
魔術側の人間を除けば、暗部に関わりのあるごく一部の人間だけ……
一般人が知ってるわけないんだよ?」
険しい表情でインデックスが言った
972 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 22:47:57.50 ID:zGGcGLWOo
インデックスの言うとおりだ
一般人が暗部のことを知っている筈がない
現に私だって、学園都市に来てから最近まで、そんなものがあるなんて夢にも思わなかった
だが、インデックスの言葉は裏を返せば、彼女自身が一般人ではないと言っているも同然だ
この二人はやはり敵なのだろうか?
いや、それはあまりにも性急な考えだ
まだ、話し合いの余地は十分に残っている筈……
だが、この状況で話し合いで解決することができるのだろうか?
973 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 22:59:30.74 ID:zGGcGLWOo
思考は堂々巡りでいい考えが浮かばない……
私達の間にしばしの沈黙が流れる
どちらが先に口火を切るのだろうか?
だが、先に動いたのは、私でもインデックスでもなかった……
「ちょっと待ってくれ!!」
声を上げたのはいままで静観していた上条さんだった
上条さんは私とインデックスの間を遮るように私達の間に割り込んできた
「確かに俺達は暗部のことを知ってるし、争いとは無縁の一般人って訳でもない……
けどな、俺達は君に危害を加えようなんてつもりは微塵もないんだ」
私達の間に分け入った上条さんは、真っ直ぐに私の目を見ながらそう言った
「だから、まずは俺達の話を聞いてくれないか?」
両手を広げ、敵意がないことをアピールするようにしながら上条さんは言った
「それでも信用できないってんなら、言ってくれ。俺が人質にでも何にでもなってやるから」
974 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 23:13:39.07 ID:zGGcGLWOo
「わかりました。上条さん、私はあなたを信じることにします。私も出来る範囲でそっちの質問
にも答えますよ」
「そうか、ありがとうな、佐天さん」
私の答えに安心したのか、上条さんは手を下ろし、笑顔を浮かべた
「結局、とうまがいいところは持ってっちゃうんだから……」
少し不満げに、それでいてどこか安心したようにインデックスはそう言った
「こら、インデックス。お前はまずは佐天さんに謝れ。もとはといえばお前があんなこと言い出した
のが原因なんだぞ?」
まるで子供を叱るような口調で上条さんが言った
「う……、ごめんね涙子。私、ちょっと興奮しすぎちゃったかも……」
ペコリ、と頭を下げて、インデックスが謝罪した
975 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 23:23:41.64 ID:zGGcGLWOo
「別にいいよ。私も誤解されるようなことしたんだし」
「ううん、私の言葉の選び方が悪かったんだよ……」
「本当にな。なんでお前はもうちょっと言葉を選ばないんだか」
呆れたような声で上条さんが笑った
「と、とうまにだけは言われたくないんだよ!」
上条さんの言葉に、インデックスが抗議の声を上げた
「大体、さっきは俺が人質になってやるー、とか意味不明なこと言ってたんだよ!
この状況でそんな言葉を選ぶのはおかしいんだよ!日本語として変なんだよ!」
「あ、あれは、信用してもらうためについ出てしまった言葉で……」
あまりの猛反撃に上条さんは頬を掻きながら苦笑いをこぼした
976 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 23:31:27.05 ID:zGGcGLWOo
一方の私はといえば――
「ふ――、あはははは」
私が自分よりも背の高い上条さんを人質に取っている姿を想像してしまい、思わず吹き出して
しまっていた
「ほら、るいこにも笑われてるんだよ!」
「いえ、違うんです。ふふ、すみません」
「まあいいさ。とりあえず、これで一件落着かな?」
部屋の中はもとの和やかな雰囲気に戻り、私の緊張の糸はほどけていた
この二人と仲直りできて本当によかった……
心の底からそう思った
977 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 23:41:43.61 ID:zGGcGLWOo
「あ、そうだ……」
「どうかしたの、るいこ?」
「ごめん、ちょっと待ってて……」
「?」
私の行動にインデックスが首を傾げた
(正宗、聞こえてる?)
正宗が心配しないように、正宗にもことの顛末を報告しないと……
正宗にも声は届いていた筈だから不要かとも思ったが、やっぱり言っておかないと心配だ
(正宗?聞こえてないの?)
おかしい
何度か声をかけているのに返事がない
正宗にはそれほど距離の離れていない、建物の屋上で待機してもらっている筈なんだけど……
通信ができなくなるほどの距離は離れていない、そもそもこの通信に距離の制限があるのか
すらわからないんだけど……
978 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 23:51:20.87 ID:zGGcGLWOo
「ねぇ、何してるのるいこ?」
私の行動に痺れを切らしたのか、再度インデックスが私に質問を投げかけた
「えーと……」
向こうもかなり譲歩してくれたんだ、私も正宗の存在くらいは言うのが礼儀だ
そう思い正宗のことをインデックスに説明しようと、二人の方を振り向いた
「実はですね―――」
しかし、私はその後に続く言葉を口にすることが出来なかった……
なぜなら……
ふと目に入った窓の外に……
今まさにこの部屋へ飛び込んでくる正宗の姿が見えたからだ
「危な――――ッ!!」
またしても最後まで言葉を紡ぐ前に、部屋の中にガラスの割れるけたたましい音が響いた
979 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/14(金) 23:59:50.60 ID:zGGcGLWOo
「うわあぁぁ!?な、なんだ!?」
「で、でっかい虫が部屋に飛び込んできたんだよ!?」
窓を突き破って部屋の中へ現れた正宗を目にした二人が大声を上げる
<御堂、無事か!?>
あまりの事態に私は呆気にとられて、うまく言葉を発することができない
「お前、一体何なんだ!?くそ!またどっかの魔術師の仕業か!?」
<貴様!甘い顔をして近寄り、御堂を害そうとした悪漢めがッ!!吾がその性根、
叩き直してくれようぞッ!!!>
言うやいなや、正宗は上条さんへ向かって跳躍した
980 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/15(土) 00:08:25.44 ID:Jyis07TXo
「この野郎!!」
それに合わせて上条さんが右手を振りかぶった
<そんなものが効くものかッ!!>
上条さんの拳は正宗に当たったものの、その程度では正宗の勢いは止まらず
上条さんは正宗の下敷きになってしまった
「いってぇ!!何で出来てんだこいつ!?」
下敷きになった上条さんが声を上げる
「ちょっと!?やめなさい!正宗!!」
それを聞いてやっと我に返り、正宗を制止しようと駆け寄る
981 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/15(土) 00:18:50.45 ID:Jyis07TXo
「るいこ、危ないんだよ!!」
正宗に駆け寄る私の身を案じたインデックスが警告をした
「大丈夫です!正宗は私の――、えーと……、とにかく大丈夫だからッ!!」
説明は後回しだ、今は一秒でも早く正宗をなだめないと
「佐天さん、こいつと知り合いなのかっ!?」
「は、はい!」
「頼む、早くどかしてくれ――、って痛ぇ!!足で突くな!!」
「正宗!早く上条さんの上からどきなさい!!」
正宗は興奮して私の声が聞こえないのか、上条さんの上から動こうとしない……
「ああ、もう!ホントにこういうところは変わらないんだから!!」
「だああぁぁぁ!!不幸だぁーー!!!」
「退きなさーーーい!!!」
とある放課後の住宅街に、二つの叫びがこだました
982 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/15(土) 00:25:59.36 ID:Jyis07TXo
今日の投下はここまでです。
次回で上条さんとの出会いのパートは終わり、その次からは別人物視点の話を挟む
予定です。
983 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/15(土) 05:35:23.14 ID:P0bgVA4IO
乙ー
とっても面白いんだよ!!
984 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/15(土) 08:29:54.88 ID:ed5PMTX2o
乙
985 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2011/01/15(土) 21:12:16.26 ID:LNXR37q/o
皆さん、こんばんは、1です。
このスレも残りが20を切ったので、次スレを立てるときのことを考えたいと思います。
現在の案では、1に前スレへのリンクと簡単なあらすじ
2から、原作から大幅に役割や状況が変わった人物の紹介
そして、その後に作中で登場した学園都市製の劒冑の簡単な設定を載せようかなと思って
います
ここで皆さんにお尋ねしたいのですが、原作に登場する人物の紹介の後に、作中で登場した
オリキャラの紹介が必要かどうかです
見たいという方が居るようでした作成しますので、回答をお願いします
もし数日経ってもレスがつかなかった場合はオリキャラの紹介は省略とさせていただきます
その他、要望があるようでしたらお書き下さい
986 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/15(土) 21:15:56.18 ID:ed5PMTX2o
オリキャラの説明はいるんでない?
というよりオリキャラが登場するっていうことは明記しておいた方がいいかと
987 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/16(日) 13:36:42.71 ID:/KiteR09o
ぼくは夏目ちゃん!
オリキャラ云々はいると思うぜやっぱり
俺は読みたいぜがっつり
988 :
◆JZzNmabVtI
[saga sage]:2011/01/17(月) 00:07:12.18 ID:HtRn8NLBo
すばやい回答ありがとうございます。
それでは、オリキャラについては1に警告を入れ、原作登場キャラの後にオリキャラの紹介
も入れる、という方向でいきたいと思います。
989 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/24(月) 00:50:29.94 ID:4cWeejXho
かなり遅い時間ですが、今から始めさせていただきます
途中、次スレを立てる作業が入るため、ぐだってしまうかもしれませんがご了承ください
990 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/01/24(月) 00:51:59.32 ID:U0igygrAO
待ってたよ!
991 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/24(月) 00:55:27.44 ID:4cWeejXho
「すみませんでした!」
窓ガラスの破片が床に散らばり
まるで嵐でも来たのではないかと見まがう程の様相を呈している部屋の中で、私は頭を
下げて、謝罪の言葉を口にした
「はは、別にいいさ。俺も誤解を招くようなことしちまったし……」
やっとこさ正宗の下から解放された上条さんが苦笑いを浮かべながら言った
「ううん、二人は悪くないんだよ。元はといえば、私が先走っちゃったのがいけないんだよ……」
この惨状に責任を感じているのか、インデックスは今にも消え入りそうな声で呟くと、下を
向いて黙り込んでしまった
992 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/24(月) 00:59:57.92 ID:4cWeejXho
「そんなことない!インデックスが責任を感じることなんてないよ!」
咄嗟にフォローの言葉を口にするが、インデックスは納得できないようで、顔を上げなかった
かくいう私も、もっとうまく言葉を選べば、穏便にことを片付けられたのではないか?と考えて
しまい、インデックスと同じように肩を落とした
「あー……、その、なんだ……」
うなだれている私とインデックス、そして表情の読めない正宗を前にして、上条さんもなんて声
をかけていいのかわからないみたいだ
誰も言葉を発せず、部屋の中はまるでお通夜のような雰囲気になってしまった
「だぁあああ!もう!!お前等いい加減にしろ!!!」
993 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/24(月) 01:04:14.23 ID:4cWeejXho
突然の大声に私達は弾かれたように顔を上げ、大声を出した上条さんの元へ視線を向けた
上条さんはガシガシと頭を乱暴に掻くと、キッとこちらを見据え、口を開いた
「確かに妙な誤解のせいでこんなことになっちまったけどさぁ。結局誰も怪我した奴はいない
し、誤解も解けた。
だったらそれでいいじゃねぇかよ?誰が悪いだの悪くないだのなんて変な意地張ってないで、
仲直りしようぜ?」
さっきの大きな声とは対照的に、小さな声で
まるで小さな子供に言い聞かせるように上条さんは言った
994 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/24(月) 01:10:37.49 ID:4cWeejXho
「わかりました……。それじゃあ、これで仲直り……、ですね?」
「ああ!」
そう言って上条さんは手を前に差し出した
「?」
「仲直りの握手。仲直りするときにすることなんて、俺には他に思いつかないからさ。
俺が嫌ならインデックスとしてくれたっていいけど」
「しますよ、仲直りの握手。上条さんとインデックス、両方と……」
ちょっと照れたように手を差し出している上条さんに頬笑みを浮かべながら
そしてインデックスにも、笑顔で仲直りの握手をした
995 :
◆JZzNmabVtI
[saga]:2011/01/24(月) 01:11:09.97 ID:4cWeejXho
それではそろそろ次スレを立てたいと思います
しばしお待ちください
996 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/01/24(月) 01:13:29.59 ID:U0igygrAO
それじゃうめ
997 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/24(月) 01:40:24.32 ID:IgT6xSFDO
世に鬼あれば
998 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/24(月) 01:42:26.43 ID:IgT6xSFDO
鬼を断つ
999 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/24(月) 01:43:19.53 ID:IgT6xSFDO
世に悪あれば
1000 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/24(月) 01:44:49.21 ID:IgT6xSFDO
悪を断つ
>>1
に惜しみない乙
そして
>>1000
ならみんなHAPPY(*´∇`)
1001 :
1001
:Over 1000 Thread
´⌒(⌒(⌒`⌒,⌒ヽ
(()@(ヽノ(@)ノ(ノヽ)
(o)ゝノ`ー'ゝーヽ-' /8)
ゝー '_ W (9)ノ(@)
「 ̄ ・| 「 ̄ ̄|─-r ヽ
`、_ノol・__ノ ノ 【呪いのトンファーパーマン】
ノ / このスレッドは1000を超えました。
ヽ⌒ー⌒ー⌒ー ノ このレスを見たら期限内に完成させないと死にます。
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けいおんSS 雑談スレ Part.25 @ 2011/01/24(月) 01:32:01.76 ID:JBXVxAqAo
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佐天「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」 其の弐 @ 2011/01/24(月) 01:31:33.19 ID:4cWeejXh0
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佐天「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。」 其の弐 @ 2011/01/24(月) 01:22:56.25 ID:pBiHl1Ixo
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【凸祭】飲尿男アロヘイ大敗北でメシウマwwww9【MHP3割れ厨】 @ 2011/01/24(月) 00:51:11.25 ID:X7Q/ucV8o
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絵スレ監視所 @ 2011/01/24(月) 00:24:35.98 ID:AIUBDQU1o
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ここだけ全員焼肉店(じゃなくて女子校!) 358店舗目 @ 2011/01/23(日) 23:05:33.74 ID:7lZDfzcRP
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おぽんちつづらコーヒー凶華ぴっぴーお茶さんの共有スレ part15 @ 2011/01/23(日) 22:51:46.56 ID:TyrpLqALo
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一方通行「ほぐし屋さンでェす」 @ 2011/01/23(日) 22:31:46.00 ID:CX3FjoZ10
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