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夏目「超特急ヴェガ?」紬「超特急ヴェガです」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:26:59.04 ID:TF8fCUyZo

カラン カラ〜ン♪ カランカラ〜ン♪ 

「大当たり〜!」

梅雨が明け、夏の模様を映し始めた商店街

その福引場で店員の声と鐘の音が鳴り響く

「・・・」

なにが起こったのか理解するまで少し時間を要している少年

店員「おめでとう少年! 特賞の超特急ヴェガの乗車券だぁ〜!」

「超特急ヴェガ?」

店員「そうです! 超豪華特急列車ヴェガ!」

「・・・」

店員「?」

「おれ、三等が欲しいんですけど、交換できませんか・・・?」

店員「えぇっ!? 『たこ焼きフライパン』の方がいいと言うんですかっ!?」

「え、えぇ・・・まぁ・・・」

と困り顔の少年。そっちの方が価値があると言わんばかりの表情に店員も少したじろいでしまう

店員「いや、いやいやいや! ちゃんと聞きなよ少年? 今や話題沸騰中のこの乗車券。
   稚内から鹿児島の最終駅まで日本を縦断するという、夢のような列車の乗車券なんですよ?!」

「・・・」チラッ

困り顔で三等を見つめる少年

店員「・・・分かった! じゃあこうしよう。今の今まで一枚とも出なかったこの乗車券
   ペアで差し上げよう! これなら友達と行けるでしょ?」

「いや・・・それより・・・」

少年が本当に困ったという顔をする

店員「こんなプラチナチケットを遠慮するなんて見上げた根性だ! もってけー!」

「う・・・!」

店員「いい旅をしろ!」メラメラ
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:37:23.32 ID:TF8fCUyZo

「おーい、なーつめ〜!」

「おーい」

夏目「北本、西村・・・」

西村「どうしたんだよぉ〜、しけた顔してんなー」

北本「どうしたんだ?」

夏目「塔子さんに福引券の抽選を頼まれたんだけど・・・」

西村「ポケットティッシュかぁ〜。それは残念だなぁ〜」

北本「いや、持っているのはティッシュじゃないぞ」

西村「ありゃ?」

夏目「列車のチケットだって・・・」

西村「おいおい、マジかよー!」

北本「そのチケットがどうしたんだ?」

夏目「うん・・・。実は困ってて」

西村「ぬぁにー! こんな幸運を掴んで困るだとー!?」

北本「知ってるのか、西村?」

西村「知ってるも何も! いいか、よく聞けよ!?」

夏目「あぁ・・・」

北本「・・・」

西村「8月1日から8月15日をかけて夢の超特急ヴェガは日本を縦断していくんだ。
   稚内を出発後、順に札幌 青森 仙台 東京 松本 金沢 名古屋 京都 大阪 広島 博多
   各都市に24時間停車。最終日には鹿児島の駅に到着!」

夏目(そんな列車のチケットなのか・・・困ったな・・・)

西村「ヴェガの概要なんだけどな、動力車を先頭に寝台車・シャワー室のある売店車・客車1号車・2号車・3号車・4号車
   食堂車・娯楽車と続き、最後尾・展望車となるんだ」

北本「よくカンペも見ずに喋れるな」

西村「乗りたいと思っていたんだよ、俺も! 抽選で何度も何度も回したさ」

夏目(誰かに譲ったほうがいいな・・・旅行なんて・・・できないだろうから)

西村「白い玉が何度も何度も転がってきて・・・」シクシク

北本「いいから、もういいから・・・」ポンポン

西村「・・・ひっく」

夏目「じゃあさ、やるよ」

北本「え?」

西村「え?」キラキラ
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:38:22.65 ID:TF8fCUyZo

夏目「おれには過ぎたモノだから、二人で行くといい」

西村「ホントにいいのかー!?」キラキラキラキラ

夏目「あ、あぁ・・・」

北本「・・・」

西村「さっすが夏目だぁー!」ヒャッホウ

夏目「あ、はは・・・」

北本「ちょっと待て、西村」

西村「へ?」

夏目「?」

北本「それ、塔子さんに頼まれたって言ってたよな」

夏目「あぁ・・・」

北本「それは、塔子さんに渡すべきなんじゃないのか?」

西村「あ、そうか・・・」

夏目「・・・」

北本「塔子さんと滋さんに渡すと喜んでくれると思う」

西村「そうだな。そうしろ、夏目」

夏目(そうか・・・。それが出来たんだ・・・)

北本「じゃあな、夏目」

西村「じゃっあな〜」

夏目「あぁ、明日学校で」

スタスタ

北本「・・・」

西村「・・・ナイスアシストだ、北本」

北本「塔子さん達が喜んでくれると夏目も嬉しいだろうな」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:38:53.38 ID:TF8fCUyZo


小さい頃から時々変なものを見た

他の人には見えないらしい それはおそらく

妖怪と呼ばれるものの類


ガラッ

夏目「ただいまー」

「・・・」

夏目「うわっ!」

「夏目貴志様・・・友人帳をお持ちですね・・・」

夏目(妖!? 玄関ではまずいっ! 外へ)ダッ

妖「逃がしませんよ!」

グイッ

ドサッ

夏目「ぐッ」

妖「さぁ、およこし・・・」

「おい夏目、ガルガリ君ソーダ味の袋をあけてくれ」

夏目「せ、先生・・・ッ」

先生「なんだ、また絡まれてるのか」ヤレヤレ

妖「人の子が持っていていいものではないのだよ!」グッ

夏目「うぐッ」

先生「おいこら、続きはアイスの袋を開けてからにしろ」

妖「なんだこのブサイクネコは・・・」

先生「にゃ、にゃんだとー!!」

夏目「・・・せん・・・」

先生「本当の姿を見せてやろうではないか!」

どろん

「グルルルルァ・・・」

妖「き、貴様は斑!?」

斑「そいつは私の獲物だ、さっさと立ち去れ」

妖「ひっ、ひぃぃいい」

シュゥウウウ

斑「ふんっ」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:39:56.55 ID:TF8fCUyZo

夏目「げほっ、げほっ」

斑「あんな小物をまだ追い払えんのか、夏目」

夏目「げほっ・・・塔子さん・・・は・・・?」

斑「まだ帰ってきていない」

どろん

先生「まったく・・・。塔子に気付かれないようにしていたのか分からんが
   怪我をしては元も子も無いぞ。・・・ほれ、開けてくれ」

夏目「・・・よかった」

先生「あの小物め・・・私の友人帳を奪おうとするとは・・・」

夏目「・・・ふぅ」

先生「もっと自覚をもたんか夏目!」

夏目「・・・」

先生「その友人帳は名前の書かれた妖を操る事のできるお宝品なのだぞ!」ペシペシ

夏目「はいはい・・・」

先生「それを奪われてしまっては私のやっている事も無駄になるではないか!」プンスカ

夏目「だったら用心棒としてしっかり働いてくれよ」パリッ

先生「だから、小物くらい追い払えと言っておろうが!」プンプン

夏目(乗車券は夕食時に話そう・・・)ハムッ

先生「あ、こらっ!」

夏目「あ、ごめん・・・先生のアイス食べてしまった・・・」

先生「なつめぇー!」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:40:28.24 ID:TF8fCUyZo

―――――夜

先生「にゃんっ、にゃふん!」ガツガツ

「まぁー、ニャンキチ君ったら、よっぽどお腹が空いてたのね〜」

「どれ、私の刺身もあげてみよう。どうかなニャンゴロー」

先生「にゃんっ♪」キラキラ

夏目(ニャンコに成りつつあるな、先生・・・。妖なのに)モグモグ

先生「にゃふんにゃふん」ガツガツ

夏目「あ、塔子さん」

塔子「なにかしら?」

夏目「福引の抽選で当たったヤツなんですけど・・・これをどうぞ。滋さんと一緒に」

塔子「まぁまぁまぁまぁ」

滋「それは?」

夏目「北海道から鹿児島まで、日本を縦断する列車の乗車券です」

塔子「まぁ、そうなの〜」

滋「今話題になってる・・・」

夏目「ペアチケットなので、お二人で行ってきてください」

塔子「・・・」

滋「・・・」

夏目「留守番は僕が・・・」

塔子「・・・ありがとう。貴志くん」

滋「ありがとう」

夏目「いえ・・・。元々塔子さんの福引券でしたから」

塔子「うふふ〜。嬉しいわ〜」ニコニコ

滋「あぁ・・・」

夏目(よかった・・・。喜んでくれた)

塔子「滋さん」

滋「うん」

夏目「・・・?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:40:57.99 ID:TF8fCUyZo

塔子「これは貴志くんが使って」

夏目「え・・・?」

滋「それは確か、8月の上旬だったね」

夏目「は、はい・・・」

滋「私の休みは中旬、13日からなんだ」

夏目「・・・」

滋「なに、気にする事はない。貴志が旅行先の話を私たちに聞かせてくれればそれでいい」

夏目「・・・あ、・・・でも」

塔子「お友達と行ってきたらどうかしら〜」ウキウキ

滋「そうするといい」

夏目「・・・」

塔子「あぁ〜、なんだか楽しみになってきたわ〜」

滋「貴志」

夏目「は、はい」

滋「楽しんできなさい」

夏目「・・・はい」

先生「・・・」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:41:49.66 ID:TF8fCUyZo

―――――翌日

夏目「――という事になってしまった。ごめん、西村」

西村「なんで謝るんだよ。俺と行けばいいじゃないか」

北本「そうはさせん!」

西村「北本はお留守番だぁー!」

北本「お前にだけいい思いはさせない!」

ギャーギャー

夏目「おれが行く事になったから・・・。一枚余ってしまった」

「よう。騒がしいな」

夏目「田沼・・・」

田沼「どうしたんだ、そこの二人は」

夏目「あ、そうだ。田沼は8月の上旬って空いてるか?」

西村北本「「 な、夏目ー!? 」」

田沼「な、なんだ・・・?」

「ちょっと、朝っぱらからうるさいわよー?」

西村「げっ・・・」

北本「委員長・・・」

委員長「夏目くん・・・それってひょっとして・・・!」

夏目「え・・・?」

委員長「特急ヴェガの乗車券!」

夏目「笹田も詳しいんだな・・・」

笹田「私も当てようと一生懸命」

田沼「ヴェガ?」

笹田「8月1日から8月15日をかけて日本を縦断する列車なのよ!」

田沼「へぇー・・・。それで聞いたのか?」

夏目「あぁ、よかったら・・・」

田沼「悪い、家の手伝いで離れられなくて」

夏目「そうか・・・。うん、分かった」

笹田「なになに? どうしたの?」

西村「だから俺が夏目と行くって!」

北本「それは俺がさせないって!」

ギャーギャー

夏目「一人で行くのも・・・味気ないからなぁ・・・」フゥ

田沼「ポン太と行けばいいんじゃないか?」

夏目「ネコだぞ・・・」

田沼「ははっ。退屈はしないんじゃないかってさ」

笹田「じゃ、じゃあ私が」

「みんなおはよー。そろそろチャイムが鳴るよ?」

西村「多軌さん!」キラキラ

夏目(この一枚どうしようかな・・・)
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:42:22.10 ID:TF8fCUyZo


          8月7日


松本駅に一つの列車が佇む

特急ヴェガは出発の時刻を今か今かと待ちわびていた


夏目「なんでいるんだよ先生!」

先生「にゃふふ〜ん」

夏目「誤魔化すな! ペットの乗車は禁止なんだぞ、先生!」

先生「む・・・。じゃあこうすればよかろう」

どろん

「どうだ? 人の姿に変身していれば文句無いだろ」

夏目「ハァ・・・」

「どうした?」

夏目「制服を着た女子と、私服の俺が並んで歩いていたら変だろ」

女先生「なにかと面倒だな人の子は」

夏目「それに、名前・・・どうするんだ?」

女先生「斑でいいではないか」

夏目「この時代の女子にそんな名前をつける親は居ないよ」

女先生「・・・」

夏目「・・・」

女先生「レイコでいいな」

夏目「・・・ハァ」

レイコ「なぜ北海道から乗らんのだ」

夏目「先生は北海道知ってるのか?」

レイコ「知らんな」

夏目「じゃあ聞くなよ・・・」

レイコ「ふん、退屈しのぎになるかと思って付いて来たが」

夏目「・・・」

レイコ「つまらん。人が多い。鬱陶しい」

夏目「人ごみが苦手なのはおれも同じだよ」

レイコ「・・・」

夏目「人前でネコの姿になったり、妖の姿になったりするなよ、先生」

レイコ「妖の姿になっても誰にも見られないではないか」

夏目「いや、人が忽然と姿を消すんだ。それは大騒ぎになる」

レイコ「・・・」

夏目「今のままの人の姿でいてくれ」

レイコ「しょうがない、分かったよ」

夏目「頼むぞ」

レイコ「はいはい」

夏目(どうして付いて来たりしたんだろう)
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:42:50.58 ID:TF8fCUyZo

タッタッタ

ドンッ

夏目「うわっ」

「おっとぉー、ごめんごめん」

夏目「いえ・・・、ビックリしただけです」

「急いでてぶつかってしまった」アハハ

夏目「・・・」

レイコ「なんだコイツは」

「お? 恋人同士・・・ではないか、姉弟?」

夏目「そ、そんなものです」

レイコ「・・・」

「ふーん。松本に観光なんだ」

夏目「い、いえ・・・。ヴェガに乗るんです・・・これから」

「ほぉ! 私も乗ってたんだよん!」

レイコ「・・・」

夏目「乗ってた・・・?」

「稚内から乗って、ここ松本で降りたから、『乗ってた』ってこと!」

夏目「はぁ・・・」

「私の名前は山口星奈・・・って、自己紹介する必要もないか〜」アハハ

夏目「・・・」

レイコ「・・・」

星奈「急いでるから! ほんとゴメンね! じゃあねー!」

タッタッタ

夏目「・・・」

レイコ「騒がしいヤツだ」

夏目「つ、疲れた・・・」グッタリ

レイコ「帰るか?」

夏目「塔子さんと滋さんに旅行の話をしたいんだ・・・。帰れないよ」

レイコ「・・・」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:43:20.48 ID:TF8fCUyZo

夏目「これがヴェガ・・・」

レイコ「・・・これがどうなるんだ?」

夏目「電車とは違って、速度があるんだ」

レイコ「ふむ」

夏目「・・・」

レイコ「それだけか、つまらんな」

夏目「他にも違うところがあると思うけど・・・説明できない」

レイコ「・・・」

「失礼します。特急ヴェガの乗客の方でしょうか?」

夏目「は、はい」

「乗車券の確認をさせて頂きます」

夏目「はい、どうぞ」

「ありがとうございました。
 私、当特急『ヴェガ』の車掌を務めさせていただきます。美弥 澪(れい)と申します」

夏目「・・・」

車掌「こちらの乗車証バッチを駅員が確認できる箇所にお付けください」

夏目「はい。・・・ほら先生」

レイコ「なんだ?」

夏目「このバッチを付けるんだよ」

レイコ「いらん」

夏目「付けないと乗れないんだぞ」

レイコ「・・・」シブシブ

車掌「・・・」

夏目「あ、僕の名前は夏目貴志。こっちは姉の・・・レイコです」

車掌「・・・先生とお呼びになっておられましたが」

レイコ「コイツの先生だから当然だ」

夏目「・・・」

車掌「左様ですか。それでは間もなく発車致しますのでご乗車ください。
   では、良い旅をお楽しみ下さい」

夏目「はい」

車掌「失礼します」ペコリ
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:43:49.15 ID:TF8fCUyZo

レイコ「・・・」

夏目(まさか、レイコさんを姉として紹介するなんてな・・・おかしな話だ・・・
   それにしても、車掌さんってキレイな人だな・・・)

レイコ「あれはなにをやっているのだ、夏目」

夏目「?」

レイコ「ほら、あれだ」

夏目「あ・・・さっきの・・・確か、山口星奈さん・・・だっけ」

レイコ「手を上げて叩き合っているな」

夏目「あれは、ハイタッチだよ先生」

レイコ「ハイタッチ・・・?」

夏目「彼女たちなりの、お別れの儀式なんだと思う」

レイコ「ふむ・・・」

夏目(ああいう場面は苦手だ・・・)

レイコ「さっさと乗るぞ」

夏目「あぁ、出発だな」

prrrrrrrrr

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:44:17.77 ID:TF8fCUyZo


ガタンゴトン ガタンゴトン

夏目「よいしょっ」

レイコ「狭いな」

夏目「先生・・・自分の部屋に戻らないのか?」

レイコ「なぜだ?」

夏目「狭いなら移動したらいいのに。この部屋の隣なんだからさ、窮屈しないぞ」

レイコ「じゃあ、この部屋に居るときだけ」

どろん

先生「依代の姿でいるとしよう」

夏目「ニャンコ先生、外に出るときは気をつけてくれよ」

先生「・・・ふぁ〜」

夏目「よし、荷物の整理はこんなもんだな」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「もう寝たのか・・・」

先生「ぷー、ぷー、ぷー」

夏目「先生と車内を歩きたかったけど、一人でいこう・・・」

ガチャ

夏目(おっと・・・)

「・・・ふぅ」

夏目「?」

「・・・こんにちは」

夏目「こ、こんにちは」

「・・・」

スタスタ

夏目(今のため息はなんだったのだろう)
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:44:49.32 ID:TF8fCUyZo

夏目(ここが動力車で車掌室も兼ねてるのか)

ガタンゴトン

夏目「・・・」

車掌「あら、夏目さん」

夏目「あ、車掌さん」

車掌「なにか御用ですか?」

夏目「いえ、見て周っているだけです」

車掌「そうでしたか」

夏目「・・・」

車掌「・・・」

夏目「そ、それじゃ」

「車掌さん」

車掌「あら、さとみさん」

さとみ「ノートを落としてしまったみたいで・・・。車掌さんのところに届いていませんか?」

車掌「いえ、今のところは届いておりませんよ」

さとみ「そうですか。・・・あら?」

夏目「・・・」

車掌「松本から乗車された夏目貴志さんです」

夏目「こ、こんにちは」

さとみ「千歳さとみです。よろしくお願いします」ペコリ

夏目「・・・」

車掌「さとみさん、どこで落としたか心あたりありますか?」

さとみ「それが・・・。客車でくつろいでいた時に持っていたのは覚えているんですけど」

車掌「分かりました。それではご一緒に参りましょう」

さとみ「いえいえ、車掌さんの手を煩わせるまでも」

車掌「お気になさらないでください」

さとみ「おねがいします・・・」

車掌「それでは貴志さん」

『貴志くん』

夏目「!」ビクッ

車掌「どうかなされましたか?」

さとみ「?」

夏目「い、いえ・・・」

車掌「・・・失礼致します」

さとみ「それでは」

スタスタ

夏目(ビックリした・・・。塔子さんの声と似ているから・・・動揺してしまった)

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:45:19.77 ID:TF8fCUyZo

「元気してる!? みらいだよ!」

夏目(テレビ撮影!?)

みらい「あー! 一日車掌を務める美少女アイドルに対してその反応はないんじゃないかなぁ〜」

夏目(名取さんよりすごいオーラだ・・・!)

みらい「ま、いいや。キミはこの売店車へ何しに来たのかなー?」

夏目「え、えと・・・」タジタジ

みらい「次の停車駅、金沢の観光ガイドがお勧めだよ!」

夏目「そ、そうですか」タジタジ

みらい「・・・」

「カットー!」

「チッ」

夏目「・・・ホッ」

みらい「すいません。お騒がせしてしまって・・・」

夏目(あれ・・・?)

「次に行くぞみらい!」

みらい「はい、マネージャー!」

夏目「・・・」

みらい「本当にすいませんでした」ペコリ

テッテッテ

夏目「・・・ハァ」

「だいじょうぶですか?」

夏目「え・・・あ、はい」

「すいません。ご迷惑をお掛けしました〜」

夏目「どうして店員さんが謝るんですか・・・?」

店員「お客様に迷惑をお掛けしているのは事実ですから」

夏目「・・・?」

店員「彼女の一日車掌の仕事を受け入れた私たちの責任にもなりますので」

夏目「そうですか・・・」

店員「お詫びと言っては何ですが、お飲み物でも提供させてください〜」

夏目「い、いえ・・・そこまでは・・・」

店員「そうですか〜?」

夏目「ちゃんと払います。このオレンジジュースを」

店員「ありがとうございます〜」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:46:18.44 ID:TF8fCUyZo

夏目(乗って間もないのにこの疲れは・・・)フラフラ

ガタンゴトン

夏目(ここが客車一号車か・・・。そこの座席で休もう・・・)

スト

夏目「「 ・・・ふぅ 」」

「ん?」

夏目「うわっ」

「えっと・・・?」

夏目「す、すいません! 座っていると気づかなくて・・・!」

「いや・・・」

夏目(うわぁ・・・なにやってんだよ、おれ・・・知らない人の隣にいきなり座るなんて・・・)

「松本から乗って来たの?」

夏目「は、はい」

「そっか・・・。これからよろしく」

夏目「よ、よろしくお願いします・・・」

「私の名前は秋山澪」

夏目「おれの名前は夏目貴志です」

澪「私は高校三年生・・・」

夏目「高校二年です」

澪「・・・」

夏目「・・・」

「澪ちゃーん!」

「ミオサーン!」

澪「あ、小麦とエレナさん・・・」

小麦「律ちゃんが風邪をひいたって・・・おや、この子は?」

エレナ「どちらサマデスカ?」

澪「松本から乗車した」

夏目「夏目・・・貴志です・・・」

小麦「私の名前は伊東小麦! よろしくね夏目君!」

エレナ「エレナ・ユーリ・ノーディス。ヨロシクですワ」

夏目「よ・・・よろしく・・・」

小麦「それで、律ちゃんの様子はー?」

澪「熱で寝込んでいるだけだから」

エレナ「ソーデスカ」

夏目(席を移動しよう)
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:47:05.90 ID:TF8fCUyZo

「澪ちゃーん! タオル持って来たよ〜」

澪「ありがとう、唯」

唯「いえいえ〜、おんや、見かけない顔ですな?」

夏目「・・・夏目貴志といいます」

唯「貴志くんか・・・よろしくね!」

夏目「・・・」

小麦「あとでお見舞い行くね〜」

エレナ「それデワ〜」

澪「失礼するな」

夏目「は、はい・・・」

唯「お願いね澪ちゃん」

澪「あぁ、唯は和のところへ行っててくれ」

唯「はいよ」

テッテッテ

夏目(やっと落ち着ける・・・)ゴクゴク

先生「にゃんにゃん♪」

夏目「ブフーッ!」

先生「お、こんなところにいたのか夏目〜」

夏目「なにやってんだよ先生! ニャンコの姿で歩くなって言っただろ!」

先生「む・・・顔を引っ張るではにゃい・・・」ムググ

夏目「は、はやく人の姿に変わってくれ」ヒソヒソッ

先生「しょうがない」ヤレヤレ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:47:35.82 ID:TF8fCUyZo


「――あずさちゃん」


夏目「人が来ないうちに、はやく!」ヒソヒソッ

先生「今変わってやるわい」

「いい旅をしてきたのね」

どろん

「あら?」

夏目レイコ「「 あ 」」

「今、ネコちゃんから人へ変わりませんでしたか?」

夏目「・・・」サァー

レイコ「おいこら、見られたではないか夏目」

「目の錯覚かしら」ゴシゴシ

夏目「疑ってるから自然体でいてくれ、先生」

レイコ「・・・」

「・・・疲れているのかしら」ゴシゴシ

夏目「目が疲れているんですか?」

「・・・そうかもしれないです」

レイコ「夏目、それくれ」

夏目「おれの飲みかけだけどいいのか?」

レイコ「構わん」ゴクゴク

「仲がよろしいのね」

夏目「あ、はは・・・」

レイコ「・・・ぷはぁ」

「むぎ、律の個室へ行きましょう」

紬「そうね。和ちゃん唯ちゃんは?」

和「先に向かわせたわ」

紬「分かった。それでは失礼します」

夏目「は、はい」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:48:06.03 ID:TF8fCUyZo

和「あの子は?」

紬「名前聞くの忘れてたわ」ウッカリ

夏目「・・・ふぅ」

レイコ「・・・」ポイッ

夏目「先生、飲み終えたからって車内に捨てるのはいけないんだぞ」

レイコ「拾っておいてくれ」

夏目「まったく・・・あ」

グニャ

「きゃっ」

スッテーン

夏目「だ、大丈夫ですか!?」

「いたたたた、大丈夫です・・・」

夏目「すいません」

「いえ、私の運が悪いからこうなってしまっただけですから・・・」

夏目「おれの連れが投げたのをあなたが踏んでしまったんですから・・・そこに座ってください」

「は、はい・・・よいしょ」

夏目「怪我はありませんか?」

「だ、大丈夫みたいです」

夏目「・・・ほっ」

レイコ「・・・くー」

「お姉さんですか?」

夏目「あ、はい・・・。なんで寝てんだよ先生っ」

「私の名前は松浦愛といいます」

夏目「夏目・・・貴志です・・・」

愛「お姉さんのお名前は・・・?」

夏目「レイコ・・・です・・・」

愛「一緒にヴェガに乗るなんて仲がいいんですね・・・羨ましい・・・」

夏目「勝手に付いてきただけですから」

愛「まぁ」クスクス

レイコ「・・・すー」

「お、愛ちゃん」

愛「あ、秀輝さん」

秀輝「見かけない顔だね」

夏目(また自己紹介するのか・・・)

レイコ「・・・くー」

夏目「夏目貴志です。こっちは姉です」

秀輝「俺は大村秀輝。始発駅の稚内から乗ってるんだ」

夏目「始発駅からですか・・・」

愛「わ、私は青森からです」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:48:39.16 ID:TF8fCUyZo

レイコ「・・・すー」

夏目「・・・」

愛「・・・」

秀輝「・・・」

レイコ「・・・くー」

愛「そ、それでは私はこれで失礼します」

夏目「本当に怪我とか・・・?」

愛「は、はい。大丈夫です」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

愛「それでは」

スタスタ

レイコ「・・・すー」

秀輝「座っていい?」

夏目「ど、どうぞ・・・」

秀輝「松本から乗って来たの?」

夏目「はい・・・」

秀輝「えっと・・・俺は高校三年生だけど・・・夏目は?」

夏目「二年です」

秀輝「なるほど、萎縮するわけだ」

夏目(萎縮というか・・・)

秀輝「俺は秀輝でいいからさ、さんもくんも無しで」

夏目「・・・」

秀輝「なんか、星奈の台詞をパクッたみたいだな」ブツブツ

夏目「?」

秀輝「いや、こっちの話。・・・夏目はどこまで行くの?」

夏目「阿蘇駅まで・・・です」

秀輝「ふーん。最終駅の一歩手前か・・・。なんかもったいないな」

夏目「もったいない・・・?」

秀輝「阿蘇駅の次で終着駅に到着するから」

夏目「・・・特に、そんな感じは無いですね」

秀輝「ごめん、その敬語もやめてくれないかな」

夏目「・・・」

レイコ「・・・」

秀輝「いや、実を言うと・・・ヴェガの乗客の男女比がおかしくてさ」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:49:13.24 ID:TF8fCUyZo

夏目「男女比?」

秀輝「うん。年が近い人は女性ばっかりで、夏目が乗ってきてくれてちょっと気が楽になった」

夏目「・・・」

秀輝「同じ目線で話してくれると俺も助かる」

夏目「いいのか?」

秀輝「あぁ、それでいい」

夏目「・・・分かった」

秀輝「分かるだろ、そういうの?」

夏目「なんとなく・・・」

レイコ「・・・」

夏目(同じ景色が見える者同士、田沼とタキ・・・。そんな感じだろうか)

秀輝「旅の途中だから、そういうのできるだけ無しにしたいんだ」

夏目「旅・・・」

秀輝「・・・ほとんど星奈の受け売りみたいなもんだけど」

夏目(旅をしてきて出会った妖もいたな)

秀輝「・・・」

夏目(そして旅立って行った)

秀輝「夏目?」

夏目「え?」

秀輝「ボーっとしていたから」

夏目「いや・・・」

秀輝「そうだな・・・。ヴェガについて聞きたいことはないか?」

夏目「・・・特には」

秀輝「そうだな、自分で見て周ったほうがいいかも」

夏目「・・・」

レイコ「・・・」

秀輝「そんじゃまたな、夏目」

夏目「あぁ・・・」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:49:36.39 ID:TF8fCUyZo

レイコ「・・・」

夏目「先生、起きてたのか」

レイコ「速いな」

夏目「そうだな。目的地まであっという間なんだろう」

レイコ「どこに停まるんだ?」

夏目「次は・・・金沢だな。到着時刻は・・・20:00か」

レイコ「美味い酒はあるんだろうな」

夏目「先生、その姿でのみに行くのは絶対にやめろよ」

レイコ「どうしてだ?」

夏目「制服着た女性がお酒持っていたらなにかと不都合なんだよ」

レイコ「・・・安心しろ。本来の姿で飲んできてやる」

夏目「山まで走ってくるのか?」

レイコ「どういう意味だ?」

夏目「金沢は都会だぞ。地元でやってきたようにはいかないんじゃないかな」

レイコ「そこら辺にいる低級共を使うさ」

夏目「・・・ハァ」

レイコ「それより飯はまだか」

夏目「まだそんな時間じゃないぞ」

レイコ「退屈だ、行くぞ夏目」

夏目「・・・」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:50:05.31 ID:TF8fCUyZo

夏目「さすがに列車の中に妖はいないんだな」

レイコ「人里に降りるだけで体力を消耗する妖もいるからな、
    わざわざ乗って移動するヤツもおらんだろう」

夏目「それもそうか・・・」

レイコ「・・・」

夏目(そういう意味では安らげる時間なのかな・・・)

レイコ「この先にはなにがあるんだ」

夏目「えーっと、ここは四号車だから・・・次は食堂車か」

レイコ「飯か」

夏目「違う」

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:50:52.14 ID:TF8fCUyZo

レイコ「もぐもぐ」

夏目「・・・」

レイコ「おい店員、蟹クリームコロッケ追加だ」

店員「は、はい」

夏目「そんなに食べたら金沢の名物食べられなくなるぞ」

レイコ「金沢の名物ってなんだ?」

夏目「それは・・・」

レイコ「もぐもぐ」

夏目「日本海が近いから魚かな」

レイコ「魚なんぞ帰ってからでも食べられる」

夏目「場所によって味が変わったりするんだよ。魚の種類にもよるけど」

レイコ「ふーん」

夏目「・・・先生、車窓見てもつまらなさそうだよな」

レイコ「なにが楽しいのか私には分からんからな」

夏目「・・・」

レイコ「もぐもぐ」

店員「おまたせしました〜」

レイコ「ここのメニューおいしいぞ」モグモグ

店員「あ、ありがとうございます!」

夏目「・・・食べ終わったら展望車に行ってみよう」

レイコ「うむ」モグモグ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:51:20.45 ID:TF8fCUyZo


夏目「ここが展望車か・・・。広くていいな」

レイコ「お、テレビもあるぞ夏目」

夏目「あれは・・・」

愛「・・・」

夏目(松浦愛さん・・・)

レイコ「よいしょ」スト

夏目「先生、テレビでも見る?」

レイコ「今の時間やっているのはニュースくらいか。丁度いい」

夏目「どんな情報を得てるんだよ」

レイコ「天気予報がメインだな」

夏目「漁師かなにかやっているみたいだな」

ピッ

『本日未明、民家を襲撃したイノシシが・・・』

レイコ「・・・猪か」ジュルリ

夏目「・・・」

みらい「あの・・・」

夏目「え・・・?」

みらい「先ほどは本当にすいませんでした」ペコリ

夏目「いや・・・」

みらい「・・・」

夏目(どういえばいいのか・・・気にしないでほしいとうまく言えない)

みらい「・・・」

夏目「気にしないでください・・・」

『先日未明、漁船を襲撃した烏賊の群れが・・・』

レイコ「そんなイカ私が食べてみせようぞ」ジュルリ

夏目「・・・」

みらい「・・・」

秀輝「お、みらいちゃん。仕事中じゃないんだ」

みらい「秀輝さん・・・。はい、いまはオフです」

秀輝「立ち話もなんだから座って話そうよ。いいだろ、夏目」

夏目「あ、あぁ・・・」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:51:50.64 ID:TF8fCUyZo

秀輝「おーい、愛ちゃーん!」

愛「?」

秀輝「こっちで一緒に話そうよ」

愛「は、はい」

夏目「・・・」

みらい「え、と・・・夏目さんですか?」

夏目「夏目貴志、高校二年です」

みらい「一つ上ですね」

夏目「ふーん・・・」

秀輝「うわ、夏目って飯山みらいを知らないのかよ」

夏目(西村が騒いでいたような・・・)

愛「・・・知らないんですか?」

夏目「はい・・・。すまない・・・」

みらい「ふふっ。いいですよ」

秀輝「今売り出し中のアイドル飯山みらいなんだぞ」

夏目「・・・うん」

秀輝「アイドルの時と今のみらいちゃんどっちがいいと思う?」

みらい「ひ、秀輝さん・・・」

秀輝「まぁまぁ、聞いてみようよ」

みらい「・・・」

夏目(さっきの売店でのノリはさすがに・・・名取さんの7倍はキツかった・・・)

愛「・・・?」

夏目「今のままがいいな」

秀輝「だってさ」

みらい「・・・」

レイコ「どうして嬉しそうなんだ?」

みらい「えっ、そう・・・見えましたか?」

レイコ「・・・」

夏目「・・・?」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:52:31.33 ID:TF8fCUyZo

『先月、官邸を襲撃したイナゴの群れが・・・』

レイコ「虫は不味い」

みらい愛秀輝「「「 えっ!? 」」」

夏目「おい、先生!」

レイコ「ん?」

愛「虫を食べた事あるんですか?」

レイコ「あるぞ」

夏目「あ、あれだよ、イナゴの佃煮」アタフタ

秀輝「佃煮か・・・」

みらい「おいしいんでしょうか・・・」

レイコ「佃煮は美味いな。酒のツマミにも」

夏目「わーっ!」

愛「ど、どうしたんですか?」

秀輝「酒・・・」

夏目「酒で煮込んだものって事だ秀輝!」

秀輝「・・・」

みらい「おいしいなら、一度食べてみたいですね」

愛「みらいさんは食べても平気なんですか?」

みらい「はい、そういうのは経験したいです」ニコニコ

秀輝「根性あるな・・・」

夏目「・・・ふぅ」

レイコ「なんだ、さっきから・・・変だぞ」

夏目「先生はしずかにテレビをみていてくれ・・・。ほら、天気予報だ」

『明日の北陸地方の天気は』

レイコ「雨か」

夏目「疲れる・・・」フゥ

秀輝「・・・」

みらい「糸魚川駅に着くみたいですよ、愛さん」

愛「わ、私降りてみます」

秀輝「記念写真でも撮ってもらったらいいよ」

愛「そうですね!」

テッテッテ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:53:06.39 ID:TF8fCUyZo

秀輝「律にお見舞い品でも買ってこようかな」

みらい「律さんがどうかしたんですか?」

秀輝「風邪をひいてしまってね。今療養中」

みらい「律さんが風邪・・・」

夏目(さっきも出てきた名前だな)

みらい「唯さんの元気がなかったのも律さんが寝込んでいたからですか・・・?」

秀輝「星奈と別れたから・・・じゃないかな?」

みらい「そうですか・・・。マンゴーが売店にあったはず・・・」ブツブツ

夏目「・・・?」

みらい「私もお見舞いに行ってきますので、これで失礼します」

秀輝「うん。後でね」

みらい「はい」

夏目「・・・」

『一年前にホワイトハウスを襲撃したアリの・・・』

レイコ「・・・ふぁ」

ガタン ゴトン

秀輝「減速したか・・・糸魚川駅に到着だ」

夏目「秀輝・・・律って・・・?」

秀輝「あぁ、うーんと・・・軽音部のグループって知ってる?」

夏目「軽音部?」

秀輝「知るわけ無いよな・・・。乗ったばかりだし。そのグループで乗車したうちの一人って事」

夏目「・・・」

秀輝「ソイツが今風邪をひいて寝込んでいるって話な」

夏目「結構好かれているみたいだな」

秀輝「そうだな。律がいないとヴェガ内はしずかだ」

夏目「・・・」

秀輝「貸しを減らす為にも、俺も見舞い品を買ってくるよ」

夏目「貸しを作ったのか?」

秀輝「まぁな。じゃあ後でな」

夏目「あぁ・・・」

レイコ「・・・くー」

夏目(やっぱり年上に軽く口を訊くのは変な感じだ)

レイコ「・・・すー」

『10年前の今日、火星を襲撃した・・・』

ガタン ゴトン

プシュー

夏目「先生、起きてくれ先生」

レイコ「・・・くー」

夏目「そっとしておくか・・・」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:53:41.50 ID:TF8fCUyZo

夏目「糸魚川・・・」

サヤサヤ

夏目(いい風が吹くな、夕陽も綺麗だ)

チリンチリン

夏目「鈴虫・・・」

夏目(旅をしてきた妖はこんな景色を見てきたのだろうか)

夏目(旅立っていった妖はこんな景色を・・・)

サヤサヤ

夏目「・・・」

小麦「なーにたそがれてんの夏目君!」

夏目「え・・・?」

小麦「夕陽を見てシミジミとしていましたね〜」

夏目「いえ・・・」

小麦「なにが見えんのー?」

夏目「・・・」

小麦「あ、ごめんねー、うるさくしちゃって」

夏目「・・・」

小麦「あれ、お姉さんは?」

夏目「紹介してないのに・・・どうして・・・」

小麦「あはは、あたし新聞部だから情報集めるの得意なのー」

夏目「・・・」

小麦「夏目貴志、17歳、高校二年生。姉のレイコと松本から乗車」

夏目「!」

小麦「私の名前は伊東小麦18歳。仙台からエレナと一緒に乗車! 日本から世界へ旅立つの!」

夏目「せ、世界・・・」

小麦「さっき一緒にいたのは相棒のエレナ・ユーリ・ノーディス。アメリカ出身の18歳。
   愛用のビデオで世界を撮る事が夢だって!」

夏目「へ、へぇ・・・」

小麦「私もついていくんだ!」

夏目(どう返せばいいのか・・・)

小麦「海外なんて行った事無いから、楽しみだよ〜」

夏目「・・・」

小麦「夏目君はどこまで行くの?」

夏目「阿蘇駅まで・・・」

小麦「そっかぁ〜、長い旅になるねー」

夏目「・・・」

小麦「金沢の観光先って決まったー?」

夏目「まだです・・・」

小麦「そんなら売店で観光ガイド売ってるから買ったらいいよ!」

夏目「そう・・・します・・・」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:54:16.13 ID:TF8fCUyZo

小麦「ありがとね、話に付き合ってもらっちゃって。そんじゃーねー」

テッテッテ

夏目「・・・エネルギー溢れてるな」

チリンチリーン

夏目(鈴虫の音が聞こえないくらい・・・話に集中していたのか・・・)

「みたかさっきの小娘」

夏目(妖たちが会話しているのか・・・)

妖A「ひっひっひ、写真に写ってやったわい」

妖B「そう簡単に写ったりしないもんじゃろうに」

妖A「いやー、あの娘はなにやら憑きやすかったからのぉ」

妖B「そうかいそうかい」

夏目「おい・・・」

妖A「人の子っ!?」

妖B「わし等の姿が見えるのか!?」

夏目「誰の写真に写ったって?」

妖A「あ、あっちの娘じゃ!」

妖B「ぎゃあああ逃げろー」

スタコラサッサ

夏目「あれは・・・松浦さんと・・・軽音部・・・だっけ・・・」

みらい「そうですよ」

夏目「うわっ」ビクッ

みらい「あ、ごめんなさい」

夏目(びっくりした・・・)

みらい「さとみさんも一緒ですね」

夏目(さっき車掌さんと一緒にいた人か・・・)

みらい「一緒に行きませんか?」

夏目「え?」

みらい「あの輪の中に入るんです。きっと楽しいですよ」ニコ

夏目「・・・」

みらい「・・・行きましょう?」

夏目「・・・いや」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:54:45.36 ID:TF8fCUyZo

マネージャー「そこでなにをしている、みらい」

みらい「あ・・・」

夏目「?」

マネージャー「なんだ貴様は?」

夏目「・・・夏目といいます」

マネージャー「僕はみらいのマネージャーをしている望月将人。あまりみらいに近づくな」

みらい「ま、マネージャー!」

夏目「・・・」

将人「まったく・・・あのガキといい、あのグループといい・・・変な影響を与えやがって」ブツブツ

みらい「・・・!」

夏目「・・・」

将人「行くぞ、みらい」

みらい「・・・」

夏目「・・・飯山」

みらい「・・・?」

夏目「行かないのか?」

みらい「あ・・・」

将人「なにをしている、みらい」

夏目「・・・楽しいんだろ?」

みらい「・・・はい」

将人「貴様、邪魔をするな」

夏目「・・・」

みらい「すいません、今は失礼しますっ」ペコリ

将人「フンッ」

夏目「・・・」

チリンチリーン

夏目(妖相手なら少しは話が出来るのにな・・・、人相手だと勝手が違う・・・)

サヤサヤ

夏目(先生が気になるから戻るか・・・)
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:55:25.28 ID:TF8fCUyZo

レイコ「・・・くー」

夏目「まだ寝てる・・・」

『ビッグバン時に襲撃を・・・』

prrrrrrrrrr

夏目「30分の停車だったんだな」

レイコ「・・・む?」

夏目「先生、寝るなら個室で寝ないか?」

レイコ「そうだな・・・ふぁ」

夏目「行こう」

レイコ「なにかあったのか?」

夏目「・・・いや、なにもないよ」

ガタン ゴトン
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:55:52.79 ID:TF8fCUyZo

―――――売店車


夏目「そうだ・・・」

レイコ「どうした?」

夏目「すいません」

店員「いらっしゃいませぇ」

夏目「金沢の観光ガイドを一つください」

店員「はい、どうぞ〜」

夏目「・・・」

店員「ありがとうございました〜」

レイコ「なんだそれは」

夏目「これを見てどこへ行くか決めるんだ」

レイコ「・・・どれ、貸してみろ」

夏目「・・・」

レイコ「ふむふむ」

夏目「・・・あ」

愛「・・・っ」グスッ

夏目「な、なにか・・・?」

愛「い、いえっ」

夏目「・・・」

愛「し、失礼しますっ」

テッテッテ

夏目(泣いてた・・・?)

秀輝「よぅ、夏目」

夏目「あ、あぁ・・・」

秀輝「どうした?」

夏目「さっき、松浦さんが通ったんだけど・・・」

秀輝「うん」

夏目「泣いていたような気がするんだ」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

レイコ「おい、夏目」

夏目「すまん、先生。後でな秀輝」

秀輝「おう」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:56:26.36 ID:TF8fCUyZo

澪「・・・ふぅ」

夏目「・・・あ」

レイコ「これはうまそうだな・・・」ジュルリ

澪「あ、夏目・・・」

夏目「秋山さん・・・でしたよね」

澪「・・・うん」

レイコ「おい、夏目。早く開けろ」

夏目「そ、それじゃ。・・・ほら、入れ先生」

レイコ「おいしそうな名物が目白押しだぞ」

バタン

澪「・・・先生?」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:56:57.69 ID:TF8fCUyZo

先生「にゃふふん♪」

夏目「ガイドブック・・・そんなに面白いのか?」

先生「これを食べに行くんだぞ、楽しみではないか」

夏目「食べに行くって一言も言ってないぞ」

先生「にゃっ、にゃんだとーッ!?」

夏目「・・・」

先生「おいこら、夏目! ハントンライスだ、ハントンライスー!」

夏目(3回聞いてるな・・・秋山さんの溜息・・・)

先生「聞いとるのか夏目! ハントンだ!」

夏目(松浦さんも・・・)

先生「おい、ハントンライス聞いてるのか!」

夏目「おれの名前がハントンライスみたいじゃないか・・・」

先生「到着次第食べに行こうではないか、にゃふふん」

夏目「お店閉まってるぞ」

先生「どうして分かる」

夏目「書いてあるじゃないか、8時閉店って」

先生「にゃッ!?」

夏目「ふふ、残念だったな先生」

先生「不貞寝だ! もう知らん!」

夏目「本当においしそうだな」

先生「・・・」

夏目(食べに行こうかな・・・)

先生「そうだ、夏目。一つ忠告しておいてやる」

夏目「ん?」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:58:19.08 ID:TF8fCUyZo

先生「話によると、人が多く集まる場所にいる妖は性質が悪いのもいると聞く」

夏目「・・・」

先生「妖の数こそ少ないが、負の感情を好むヤツがいると聞く。私もよくは知らんがな」

夏目「・・・」

先生「レイコの活動範囲から離れているから、友人帳が奪われる危険性は無いに等しいが・・・」

夏目「・・・」

先生「余計なものを貰わんように用心しろよ、夏目」

夏目「余計なものって・・・?」

先生「呪いの類だ」

夏目「・・・」

先生「受けてからの対処がやっかいだからな、気を抜くな」

夏目「あぁ、分かったよ」

先生「・・・」

夏目「負の感情か・・・」

先生「つい先日、そういう妖を封印したな」

夏目「・・・タキ」

先生「そうだ」

夏目(タキに呪いをかけた妖は・・・、不安や恐怖を与えて喜んでいた)

先生「人が集まる場所はそういうのが生まれやすい」

夏目(そういう感情を好むのか・・・。確かに性質が悪い・・・)

先生「自ら手を出さずとも楽しめるというわけだな」

夏目「そうか・・・。ありがと、先生。気をつけるよ」

先生「・・・うむ」

夏目「明日のお昼にでも食べに行こうか、ハントンライス」

先生「にゃふん♪」

夏目「ふふ」

先生「まんじゅうもあるぞ! 喉が鳴るわい!」

夏目「饅頭まで食べるのか」

先生「な〜なつ〜じや〜とあっじくっらべー♪」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 02:59:15.00 ID:TF8fCUyZo

先生「ぷー、ぷー」

夏目「はしゃぎつかれた子どもみたいだな。ちょっと実験してみるか」

ガチャ

バタン

夏目(またニャンコ姿でうろつかれたら困るから・・・)

コトン

夏目「鍵を掛けて」

ギュウギュウ

夏目「こうやって、ロープで固めておけば」

紬「なにをしているんですか?」

夏目「封印です。一応妖なんで」

ギュウギュウ

紬「まぁ・・・」

夏目「よし。これで先生は人の姿にならない限り開けられないはずだ」

紬「人の姿・・・」

夏目「うわ・・・ぁ・・・」

紬「よく分からないのですが」

夏目(バカだおれ・・・)ハァ

紬「『あやかし』ってなんでしょう?」

夏目「あだ名みたいなものです。先生はそんな強さを兼ね備えていますから」

紬「・・・ケンカですか?」

夏目「・・・」

紬「そういうのはやめさせた方が・・・」

夏目「精神的な強さです」

紬「そうですか・・・」ホッ

夏目(嘘はついていないよな。・・・また変なところみられたな・・・)

紬「ご紹介が遅れました。琴吹紬といいます」

夏目「夏目貴志です」

紬「松本からお乗りになったのよね?」

夏目「はい」

紬「なるほどなるほど」

夏目(なにがなるほどなんだろう・・・)

紬「それでは〜」シャランラ

スタスタ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:00:11.14 ID:TF8fCUyZo

夏目「・・・あれは」

夏目(あれは松浦さんか・・・。会話しているみたいだな。琴吹さんと仲が良いのか・・・)

夏目「先生が起きるまでどこへ行こうかな」

スタスタ

愛「・・・」

夏目「・・・」

愛「し、失礼します」

夏目「あ、あの・・・」

愛「はい・・・?」

夏目(聞いてどうにかなるものでもない・・・よな・・・)

愛「?」

夏目「いや、なんでも・・・」

愛「あ、さっきは変なところをみられちゃいました・・・」

夏目「・・・」

愛「嬉しくて・・・つい・・・泣いてしまったんです・・・」

夏目(嬉し涙だったのか・・・)

愛「・・・」

夏目「・・・」

唯「どうしたの、こんなとこで?」

愛「唯さん・・・」

夏目(平沢さんだっけ・・・)

唯「立ち話もなんだから四号車行こうよ!」

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:00:50.09 ID:TF8fCUyZo

唯「どうも、桜が丘高校けいおん部ギターの平沢唯です!」

夏目「・・・」

愛「わ、私自己紹介しましたよね・・・?」

夏目「は、はい。聞きました」

唯「好きな車両はここ、四号車です!」

夏目「・・・」

愛「わ、私は展望車です」

唯「青森から乗車してます! 愛ちゃんより一日早くです!」

夏目「・・・」

愛「私が乗車する時に秀輝さんと紬さんに助けていただいて。運よく乗車できました」

唯「あれはビックリしたよ〜」

愛「ふふっ」

夏目「助けてもらって乗車・・・?」

愛「はい・・・。恥ずかしい話、ドアに挟まって・・・」

夏目「ドアに・・・挟まって・・・」

唯「引っ張ってもらったんだよね」

愛「はい・・・」

夏目(さっきも転んでいたな・・・)

唯「愛ちゃん、りっちゃんのお見舞いしてたの?」

愛「はい。健康祈願のお守りを渡したくて」

夏目(それを琴吹さんに渡していたのか)

唯「そっかそっか〜」

和「唯、こんなところにいたのね」

澪「3人で話をしていたのか」

唯「そだよ〜。座って話をしようよ」ポンポン

夏目(おれが席を譲るか・・・)

和「いいわ。むぎが来たら食堂車に来てね、私たち先に行ってるから」

澪「晩御飯済ませよう」

唯「はいよ〜」

夏目(・・・タイミング逃した)
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:01:51.36 ID:TF8fCUyZo

愛「あ、あの・・・澪さん・・・」

澪「ん?」

愛「さっきは・・・ありがとうございました」ペコリ

澪「ううん。お見舞いのリンゴありがとう」

愛「いえ・・・」

夏目(・・・気にしすぎだな・・・ため息の理由なんてどうでもいいはずなのに)

唯「リンゴ・・・」グゥー

和「澪、悪いけど唯と先に行ってるわね」

澪「・・・分かった」

和「唯、先にいきましょう」

唯「でっへっへ。失礼しやす」

テッテッテ

和「後でね」

スタスタ

愛「お腹が空いているんですね」クスクス

澪「リンゴと聞いてお腹が鳴るなんてな・・・」

愛「ふふっ」

夏目(飯山が言っていた事も少しは分かるかもしれないな・・・。楽しそうだ)

澪「・・・」

愛「もう陽が沈んでしまいましたね」

夏目(雲に反射した陽が綺麗だな・・・)

澪「・・・夏目はどこまで行くんだ?」

夏目「阿蘇駅までです・・・」

澪「そうか・・・」

愛「澪さんは?」

澪「梓と広島で降りる予定」

愛「京都からまた乗るんですよね、梓さん」

澪「うん。そう言ってたな」

愛「また会えるといいな」ボソッ

夏目「・・・アズサ?」

澪「一つ下の後輩で、一緒に部活動しているんだ。東京で一度降りて、今は変わりに和・・・
  さっき唯と一緒に食堂車へ向かった同級生が乗っているんだ」

夏目(眼鏡の・・・)

澪「松本までは唯の妹、憂ちゃんが乗っていたんだけどな」

愛「姉想いの方でした」

夏目「・・・学校の友達と乗っているんですね」

澪「むぎが商店街の福引で、ヴェガの乗車券を当てたんだ」

愛「羨ましいです」

夏目「・・・」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:02:38.82 ID:TF8fCUyZo

澪「五枚もな」

夏目「・・・!」

愛「強運の持ち主ですよね」クスクス
  
夏目「すごいな・・・」

澪「・・・夏目」

夏目「は、はい」

澪「さっきの人、先生って呼んでいたけど?」

愛「?」

夏目「あ、えと・・・」

澪「・・・」

夏目(うわ・・・説明しづらい・・・)

紬「あら?」

愛「・・・紬さん」

紬「みんなでお話していたのね〜」

澪「律はどう?」

紬「ぐっすり眠っているわ」

愛「・・・」

夏目(なんとなく琴吹さんとは気まずい・・・。二回も変なところを見られているだけに・・・)

澪「愛さんも私たちと一緒に食堂車へ行かない?」

愛「い、いえ。・・・まだお腹空いていませんので」

紬「・・・」

夏目(急に居心地が悪くなった・・・)ソワソワ

澪「分かった。じゃ後でな二人とも、行こう、むぎ」

紬「うふふ。コックさんの料理はいつもおいしいわ〜」ワクワク

スタスタ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:03:10.07 ID:TF8fCUyZo

愛「・・・」

夏目「・・・」フゥ

愛「・・・お姉さんを先生と?」

夏目「・・・色々と教えてもらっているんです」

愛「いいですね。そういう方がいらっしゃるのは・・・」

夏目「・・・」

秀輝「お二人さん、そこ座っていいですか?」

愛「ど、どうぞ・・・」

夏目「・・・」

秀輝「まいったよ。エレナと小麦にカメラ向けられてさ、『一発芸をやれ』って言うんだからな」

愛「ふふっ」

夏目「披露したんだ?」

秀輝「まぁ・・・。してやろうと思ったんだけどな、カメラ回してないとか言いやがって」

愛「クスクス」

夏目「・・・」

秀輝「危うく恥をかくところだった。アイツら俺をからかって遊んでいたんだよ」

愛「・・・なんだか楽しそうです」

夏目「・・・」

秀輝「うん。退屈はしないけど」

夏目(バランスが取れてるっていうのかな。いい関係なんだな・・・)

愛「わ、私はそろそろ失礼します」

秀輝「うん。じゃあね」

愛「は、はい」

スタスタ
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:04:03.59 ID:TF8fCUyZo

夏目「・・・」

秀輝「さっき、売店で俺になにか聞こうとしていたよな、夏目」

夏目「え・・・?」

秀輝「愛ちゃんの事で」

夏目「あぁ・・・」

秀輝「・・・」

夏目(嬉し涙って言っていたし、気にする必要もないよな・・・)

秀輝「・・・」

夏目「いや、なんでもない」

秀輝「・・・」

夏目「秀輝・・・?」

秀輝「律が風邪をひいて寝込んでいるのは、自分のせいだと思っているんだよ」

夏目「・・・?」

秀輝「愛ちゃん、なにかと運が悪くてさ。近くにいるとよく分かる」

夏目「どうしてそれをおれに言うんだ?」

秀輝「似ているんだよな、夏目と愛ちゃん」

夏目「似ている・・・?」

秀輝「なにかを隠している」

夏目「・・・ッ!」

秀輝「それを探ろうなんて思わないけど、やっぱ楽しんで欲しいからさ。
   みんなが楽しければもっと楽しいって思える」

夏目「・・・」

秀輝「ごめん。なんか身勝手な言い方だった」

夏目「・・・」

秀輝「会って間もないのにな。・・・悪かった」

夏目「いや・・・。秀輝はいいヤツなんだな」

秀輝「違う。そんな綺麗な事言ってる訳じゃないんだ。俺のはただのエゴだ
   律や琴吹さんとは全然違う」

夏目「・・・」

秀輝「あ、すまん。こんな話まで」

夏目「秀輝は謝ってばっかりだな」

秀輝「痛いとこつくなー」

夏目「そんな話をするのは、気持ちが開放的だからじゃないかな」

秀輝「ちぇ、俺のほうが旅の先輩なのによ。核心付くような事言いやがって」

夏目「悪いな」

秀輝「あはは、変なヤツだな、夏目は」

夏目「ふふ」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:05:00.06 ID:TF8fCUyZo

さとみ「楽しそうね」

夏目「え、と・・・」

さとみ「千歳さとみよ。秀輝くん、むぎさん見なかった?」

秀輝「さぁ・・・?」

さとみ「展望車かしら・・・」

夏目「琴吹さんなら食堂車へ行きましたよ」

さとみ「そう・・・。それなら邪魔しちゃ悪いわね」

秀輝「どうかしたの?」

さとみ「ううん、なんでも・・・。私も座っていい?」

秀輝「どうぞどうぞ」

夏目(入れ替わり激しいな・・・)

さとみ「二人は金沢の観光場所決めた?」

秀輝「武家屋敷に行ってみる」

さとみ「いいわね〜。夏目くんは?」

夏目「あ、ハントンライスを食べることしか決めてないや」

秀輝「能登半島目指して、輪島の朝市とかどうだ?」

夏目「そうだな・・・。面白そうだ」

さとみ「いいわね、朝市。漆塗りとか新鮮なお魚とか」

夏目(先生が暴れそうだな・・・。やめておこう・・・)

秀輝「片町はキレイな城下町だってさ。エレナと小麦に観光を誘われたよ」

さとみ「いいわね〜」

夏目「明朝は雨と天気予報で言ってたけど、朝市大丈夫かな」

秀輝「そうか・・・。それなら検討し直さなきゃいけないな・・・」

さとみ「そうね・・・。やっぱり兼六園にしようかな」

夏目「あ・・・すいません・・・」

秀輝「え?」

さとみ「どうして謝るの?」

夏目「楽しみを削ってしまったみたいで・・・」

秀輝「・・・」

さとみ「・・・」

夏目「・・・すいません」

秀輝「・・・」

さとみ「貴志くんは遠慮がちなのね」

夏目「・・・」

秀輝「雨なら雨で楽しみ方があるさ、そんなんで削られないって」

さとみ「そうそう」

夏目「・・・・・・はい」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:05:47.21 ID:TF8fCUyZo

さとみ「へぇ、一つ下なんだ」

夏目「・・・はい」

さとみ「ずっと秀輝くんと接してきたから、年下の男の子と話すのは新鮮ね」

秀輝「・・・左様ですか」

さとみ「うふふ」

夏目(みんな仲がいいんだな・・・。出会ってそんなに経っていないはずなのに・・・)

秀輝「さとみちゃんはどこまで行くんだっけ?」

さとみ「え? えーっと・・・行けるところまで、かな」

夏目「それじゃあ、最後まで・・・?」

さとみ「そうね。当てのない旅・・・なの」ニコニコ

秀輝「嬉しそうだね」

さとみ「やってみたかったのよ、こういう事。だから楽しいわ」

夏目「それなら、前日は寝付けなかったんじゃないですか?」

秀輝「・・・?」

さとみ「え・・・?」

夏目「? それほど楽しいのなら前夜はきっと・・・」

秀輝「ブフッ」

さとみ「ちょっと、秀輝く〜ん?」

夏目「あ、すいません・・・。遠足前の子供じゃないですよね」

秀輝「あっはっは!」

さとみ「もぉ〜!」

秀輝「ごめんごめ・・・ブフッ」

夏目「え?」

さとみ「実は・・・。私、この列車に間違えて乗っちゃったの」

夏目「・・・?」

さとみ「計画的に乗車したわけじゃないのよ」

秀輝「さとみちゃん・・・前夜はどんな気分だったの?」

さとみ「もぅ! ただ、東京へ用事を済ませないといけないと憂鬱だったわよ!」

秀輝「ごめんごめ・・・グフッ」

夏目「間違えて乗車・・・」

さとみ「そうよ〜」

秀輝「どうして乗り続けたんでしょうか?」

さとみ「・・・さぁ、どうだったかしら」ツーン

秀輝「あ、すいません」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:06:13.73 ID:TF8fCUyZo

夏目「どうして・・・?」

さとみ「むぎさんと話をしているうちに、私の気持ちが動いたの」

夏目「・・・」

さとみ「そして、もう一押ししたのが『きっと、旅に出たいのですよ』ってむぎさんが」

夏目「・・・」

秀輝「へぇ、そうだったんだ」

さとみ「・・・」ツーン

夏目「面白いですね」

さとみ「えぇ、何が起こるかわからないわね」ニコニコ

夏目「・・・」

さとみ「それじゃ、失礼するわね。貴志くん」

秀輝「いや、あの、ほんとにスイマセン」

さとみ「うふふ、それじゃ」

スタスタ

秀輝「・・・ふぅ」

夏目「いろんな人が乗っているんだな」

秀輝「あぁ。3人降りちゃったけど、面白い人がいたんだぜ」

夏目「へぇ・・・」

秀輝「聞きたい?」

夏目「うん」

秀輝「俺の幼馴染がいて、画家の卵がいて、騒がしいヤツがいたんだ」

夏目(一番最初に会った・・・)

秀輝「稚内から乗車したのが――」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:06:55.66 ID:TF8fCUyZo


秀輝「――で、松本まで到着したと」

夏目「・・・」

秀輝「日本縦断の3分の1は終ったわけだな」

夏目「秀輝は観光名所での集合写真って・・・、撮っただけなのか?」

秀輝「うん、そうだ」

夏目「ふーん・・・」

秀輝「遠慮してたんだよ。女性ばっかりで、ちょっとな」

夏目「そうか・・・」

秀輝「その内実感するだろうさ」

夏目「・・・」

秀輝「いつの間にか外真っ暗だな」

夏目「そうだな」

秀輝「散歩してくるわ。話聞いてくれてサンキューな」

スタスタ

夏目「・・・ふぅ」

ガタン ゴトン

夏目(色んな事が起こるんだな。展望車でライブまで・・・)

夏目「先生どうなったかな・・・。出てこないって事は、まだ寝ているのかな」

夏目(もう少し待って、様子を見に行くか)
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:07:30.71 ID:TF8fCUyZo


―――――寝台車


夏目(外に出た形跡は無いな。もうしばらくうろついてくるか)

紬「・・・」ジー

夏目(見られてる・・・。
    自分の部屋の前で突っ立ってるのって変だよな、どう考えても・・・)

紬「・・・」

夏目(仕方ない、封印を解除して入るか)

紬「お暇でしたら、展望車へ行きませんか?」

夏目「・・・え?」

紬「無理にとは言いませんが・・・」

夏目「・・・」

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:08:09.25 ID:TF8fCUyZo


みらい「」スヤスヤ

紬「・・・」ファサ

夏目(飯山が寝ていたからタオルケットを取りに行ってたのか・・・)

エレナ「オォー、ナツメさんじゃないですカ」

小麦「やっほ」

夏目「どうも・・・」

唯「しぃー! みらいちゃんが起きちゃうよ」

みらい「」スヤスヤ

エレナ「ソーリー」

小麦「・・・ごめーん」

和「・・・」

澪「・・・」カキカキ

夏目(おれは離れて座っていよう・・・)

小麦「あたしもここ座っていいー?」

夏目「・・・どうぞ」

エレナ「失礼しますワ」

小麦「澪ちゃん作詞してたね」

エレナ「ノドカさんは小麦が書いた記事を読んでいましたネ」

夏目「記事?」

小麦「そうだよ、展望車でライブをした時の記事。あんまり楽しそうだったから書いちゃった」

夏目「演奏したってやつですよね」

エレナ「ソーですワ。素敵でしたネ」

夏目「・・・」

小麦「読んでみてよ」ペラ

夏目「は、はい・・・」

夏目(結構しっかりした内容なんだな・・・。って、失礼だな)

   『部長の自己紹介が衝撃的だ“辞書の最初の頁の言葉が大好き!あこがれています!ズバリ愛!!”
    エネルギー溢れる人物だが、意外と乙女な一面もあるようだ』

夏目(風邪で寝込んでいる人の事だよな・・・読まなかった事にしよう・・・)

エレナ「陽が沈んで、家のアカリが灯り始めマシタネ」

小麦「あーほんとだー。こういうのワクワクするよね」

エレナ「ト、イイマスト?」

小麦「だって、本来なら家の中に居なきゃいけないんだよねー」

紬「分かります」

エレナ「ホゥホゥ」

夏目(自然に混ざったな・・・。キーボード担当の琴吹さんだよな)
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:09:49.85 ID:TF8fCUyZo

小麦「外が暗くなってきたなー。電気点けなきゃーって」

紬「そうね〜、それからご飯を食べる時間になるのよね」

澪「私も一緒だ。大体この時間に食べているな」

夏目(ベースの秋山さん・・・)

エレナ「ワタクシは、今日の分のマトメ作業をしてますネ」

小麦「そんな何気ない時間が流れているんだよ、あの灯りの下では」

エレナ「ナルホド」

夏目「それがどうしてワクワクするんですか?」

小麦「しない? なんていうか、ここ・・・ヴェガの車内だけ特別な時間の中にいるって感じ」

紬「うんうん。しますします」

澪「・・・」

夏目(・・・しないな)

エレナ「ワタクシは旅に慣れてしまったので、そういうカンカクを忘れていましたワ
    ありがとう、小麦」

小麦「えへへー」

紬「ワクワクしません?」

夏目「・・・・・・はい」

澪「・・・」

エレナ「ナツメさんの旅は始まったばかりですから、これから実感していくと思いますワ」

小麦「そうだねー。最初は新しいことばっかりで、落ち着かないもんね」

紬「似たような事を唯ちゃんとあずさちゃんとで話したわ〜」

澪「唯と梓は共感してた?」

紬「えぇ、『貴重な時間に思えてきたからなにかしよう』って唯ちゃんがウノを提案していたわ」

澪「ウノか・・・」

紬「愛さん、つばさちゃん、桜井さんを含めた6人でね」

澪「へぇ・・・楽しそうだ」

小麦「あれ、星奈ちゃんと秀輝君は?」

紬「色々あったのよ〜」ウフフ

小麦「ほほぅ・・・。これは徹底的に調査しなくっちゃ!」

エレナ「小麦ー、人様のプライベートに頭を突っ込むのはよろしくないですワ」

夏目「・・・頭?」

澪「首だよ、エレナさん」

エレナ「オー」

紬「こうやってお喋りするのも大切な時間ですよね」

澪「・・・うん。そうだな」

小麦「ジッとしていられなくなるよね〜」

エレナ「日常から離れて特別な時間を共有する。それが旅の醍醐味ですワ」

澪「・・・」ジーン

夏目(・・・なんとなく分かってきた
    そういうのとあまり縁がなかったからかな)
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:11:02.98 ID:TF8fCUyZo

紬「あら?」

レイコ「・・・」ドン

夏目(北本と西村で泊りで勉強した日、名取さんと温泉に行った時
   そういう気分になれたっけ・・・)

澪「な、夏目・・・」

夏目「はい?」

澪「すごい形相しているんだけど・・・」

夏目「誰がですか?」

小麦「お姉さんがだよ」

エレナ「風神雷神ですワ」

夏目「・・・え?」

レイコ「これはなんだ、夏目」

夏目「先生、いたのか」

小麦「それは縄だよね」

紬「それは封印・・・」

レイコ「封印だと・・・?」

夏目「ち、違うぞ先生」

レイコ「この私を封印しようとは、ずいぶんと小癪な真似を」ゴゴゴゴ

夏目「人の忠告を無視するからだろ」ゴゴゴ

小麦「さぁ、白熱してまいりました」

紬「小麦さん、煽ってはダメよ」

小麦「えへへ」

レイコ「ちょっと面貸せ」

澪「」ガクガク

夏目「まったく・・・。それでは失礼します」ガタ

スタスタ

エレナ「スケバンですネ。もう絶滅したと聞いてたヨ」

小麦「実在したんだね」

紬「・・・封印・・・妖・・・先生・・・猫・・・弟を苗字で呼ぶ・・・姉」キラン

澪「」ブルブル
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:12:18.23 ID:TF8fCUyZo


夏目「先生がニャンコの姿で歩き回るからだぞ」

レイコ「だから封印を施すのか、手間をかけさせるな」

夏目「人の姿になればどうってことない仕掛けだっただろ」

レイコ「少し力を必要としたぞ。妖としての力をな」

夏目「? 札とか印がなかったのに?」

レイコ「無意識か・・・、今回は大目に見てやる」

夏目「?」

レイコ「二度と私を封印しようとしないことだ!」

夏目「おれが先生を封印するわけないだろ」

レイコ「さっきの娘がそう言ってたではないか」

夏目「あれは・・・、言葉のアヤっていうか・・・」

レイコ「・・・」

夏目「先生・・・怒っているのか? 封印されたのかと思って」

レイコ「・・・」プイッ

夏目「・・・」

レイコ「・・・」ムス

夏目「ごめん・・・」

レイコ「・・・」ツーン

ガタン ゴトン

夏目「減速したか・・・」

レイコ「・・・」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:12:56.53 ID:TF8fCUyZo

夏目「明日の朝になるけど、朝市に行く?」

レイコ「なんだそれは」

夏目「おいしいお魚や漆塗りがあるんだって」

レイコ「魚か・・・」

夏目「海が近いんだよ」

レイコ「なら海に行こう。獲ってきてやる」

夏目「ふふ、分かった」

澪「・・・」

レイコ「海か・・・久しぶりだな・・・」

夏目「久しぶりってどのくらい?」

レイコ「・・・レイコに会う前だから」

澪「ん?」

夏目「先生ーっ! 金沢着いたぞー!」

プシュー

レイコ「低級共はいるかな」ウキウキ

澪「低級?」

夏目「どうしたんですか?」

澪「夏目・・・さっきの話変じゃなかったかな。レイコさんがレイコに会う前って・・・?」

夏目「テレビの話ですよ」

澪「・・・そうか」

レイコ「さっさと降りるぞ夏目」ウキウキ

夏目「分かった。・・・それでは」

スタスタ

澪「まぁ、いいか・・・。それより律の様子を見に行かないと」イソイソ
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:14:14.43 ID:TF8fCUyZo


秀輝「どうした夏目・・・。やけに疲れているけど」

夏目「いや・・・。なんでも」グッタリ

秀輝「・・・」

レイコ「・・・」ウズウズ

夏目「秀輝はこれから出かけるのか?」

秀輝「あぁ、軽音部の護衛をね」

夏目「護衛か・・・。偉いな」

秀輝「担任の先生と車掌さんも一緒に行くから、俺は必要ないかもしれないけどな」

夏目「担任?」

秀輝「軽音部の顧問だって。ここから乗るらしい」

夏目「へぇ・・・」

レイコ「おい、そこの低級」

低級「ひっ、人の子!」

スタコラサッサ

レイコ「待て!」

タッタッタ

夏目「せ、先生! 待てって!」

タッタッタ

秀輝「・・・」

唯「秀輝くーん! 行くよー」

さわ子「この子たちの護衛を引き受けてくれたのよね、悪いわね」

秀輝「いえ・・・」

美弥「おまたせしました」

紬「では、行きましょー!」

唯「おー!」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:15:31.70 ID:TF8fCUyZo


レイコ「どこで酒が飲めるんだ! さぁ、言え!」

低級「ヒィッ」ガクガクブルブル

夏目「先生・・・怯えているじゃないか・・・」

レイコ「・・・さぁ!」

低級「ヒトコワイ」ブルブル

レイコ「なら」

どろん

先生「これでどうだ?」

低級「ブタネコ!?」

先生「かっちーん」

どろん

斑「グルルルァ・・・」

低級「フゥ」バタン

斑「高貴な私を馬鹿にするからこうなる」

夏目「目的を失ったぞ」

斑「しまった・・・!」

低級「」

夏目「気絶してしまったじゃないか・・・。よいしょ」

斑「どうするつもりだ」

夏目「ここじゃかわいそうだから移動させるんだよ」

斑「・・・」

夏目「ここでいいかな」スッ

低級「」スヤスヤ

夏目「どうする先生?」

斑「他の妖を探してみるか」

夏目「それなら、駅前を歩いてみよう・・・」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:17:05.38 ID:TF8fCUyZo

――・・・

妖「ひぃっ」

シュウウウウ

斑「待て・・・ッ」

夏目「逃げられたな」

斑「ググヌ・・・」ピキピキ

夏目「これで9回目・・・。今日はもう諦めよう先生」

斑「電車の中で窮屈していたんだぞ・・・諦めきれるか・・・」イライラ

夏目「・・・ふぅ」

斑「オイコラァッ!」

妖B「!」ビクッ

シュッ

斑「待てぇッ!!」

ボフッ

夏目「待て! 先生!! 帰って来れるのか!?」

夏目(行ってしまった・・・)

紬「・・・」

夏目「!」ギクッ

紬「今・・・」

夏目「せ、先生が走って行ってしまって」アセアセ

紬「・・・はぁ、そうですか」

夏目「・・・」

みらい「あ・・・」

唯「あ、貴志くんだ」

澪「夏目もどこか行ってたのか?」

夏目「いえ・・・。駅前をウロウロしていただけです」

唯「それなら一緒に片町を歩けばよかったね〜」

和「楽しかったわ」

唯「和ちゃんが楽しんでくれてよかったよ!」

夏目「・・・」

秀輝「あれ、夏目は一緒じゃないのか?」

夏目「誰と?」

秀輝「いつも一緒にいるだろ」

紬「・・・お姉さんと」ジー

夏目「い、今走ってどこかへ行ってしまった」

紬「こんな時間に一人で大丈夫ですか?」

夏目「はい」

和「キッパリ言ったわね」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:17:54.27 ID:TF8fCUyZo

澪「・・・あの人は誰なんだ? 先生と呼んでいたけど」

夏目「えと・・・」

紬「・・・?」

唯「誰のこと〜?」

みらい「お姉さんですよね、夏目さんの」

澪「・・・そうか」

秀輝「・・・」

唯「わたしまだ会った事ないよ〜」

澪「じきに会えるよ」

夏目「・・・」

紬「そうだ、展望車でティータイムにしましょう」

和「ゆっくりと休みましょうか」

唯「賛成!」

みらい「すいません、私はこれで失礼します」

唯「えぇー」

和「仕方ないわよ、唯」

唯「・・・うん」

みらい「とても楽しかったです。秀輝さんもありがとうございました」ペコリ

秀輝「ううん。気にしないで」

みらい「それでは明日・・・。おやすみなさい」

唯「おやすみ〜」

紬「また、明日ね〜」

夏目(先生追いかけたほうがいいかな・・・でも・・・)

澪「夏目も大村さんもどうですか?」

夏目「おれは遠慮します。すいません」

秀輝「俺も、ありがとう」

澪「うん、分かった」

唯「今日も一日が終っちゃったね〜」

紬「ほんと、早いわね〜」

和「あっという間だったわね・・・。あ、夏目くん」

夏目「?」

和「私、ここで降りるから、元気でね」

夏目「はい・・・」

和「それじゃ」

スタスタ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:18:30.05 ID:TF8fCUyZo

夏目「帰るってこと・・・?」

秀輝「真鍋さんが降りて、山中さんが乗った。そういう訳だよ」

夏目「・・・」

秀輝「真鍋さんの要望で片町を歩いていたんだ。車掌さんと山中さんは食事をとりに行ったけどな」

夏目「・・・そうか」

秀輝「・・・」

夏目「秀輝は戻らないのか?」

秀輝「うん。夏目のお姉さんを探しに行くの手伝おうかと思ってた」

夏目「!」

秀輝「変なのうろついていたから、お姉さんも絡まれてるんじゃないかと一応心配しているんだけど」

夏目「・・・」

秀輝「行かないのか?」

夏目(先生が妖の姿では秀輝は確認できない・・・。だけど秀輝の厚意を断りたくないな・・・)

秀輝「夏目?」

夏目「ありがとう、秀輝。だけど・・・」

秀輝「・・・」

夏目「一人で行くよ。秀輝は先に戻っていてくれ」

秀輝「夏目」

夏目「・・・」

秀輝「この時間に姉が一人で外を歩いているんだ。どうしてそう安心しきっているんだ?」

夏目「!」

秀輝「さっきだって、秋山さんに姉だと紹介しなかったよな」

夏目「それは・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・っ」

秀輝「すまん。そんな顔をさせるつもりはなかったんだ」

夏目「・・・」

秀輝「じゃ、俺あっち探してくるわ」

夏目「秀輝!」

秀輝「大丈夫だって、こう見えても空手やってるからさ」

夏目「・・・」

秀輝「さっきだって、みらいちゃんを守ったんだぜ? ・・・俺が原因みたいなところあるけど」

夏目「迷惑かけて・・・すまない」

秀輝「迷惑じゃないって、お姉さんが心配だろ。万が一があったら逃げるさ。逃げ足すごいんだぜ俺」

夏目「そうか・・・。ありがとう」

秀輝「いいって、時間になったら勝手に帰るから心配するなよ〜」

スタスタ

夏目「ちゃんと言えなくて・・・ごめん・・・」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:19:20.49 ID:TF8fCUyZo

――・・・ 一時間後

夏目(先生はちゃんと戻れたのかな・・・)

夏目「・・・あ、いた」

レイコ「お・・・夏目か」

美弥「あら、貴志さん」

さわ子「あなたが夏目くんね?」

夏目「どうして一緒に!?」

美弥「うふふ、山中さんと屋台でお喋りしている所をレイコさんが通りがかったんですよ」

レイコ「うむ」

夏目「え・・・お酒の匂いが・・・」

さわ子「一杯だけよ?」

夏目「その格好で飲んだのか先生!?」

レイコ「悪いか」

夏目「ダメだって言っただろ!」

美弥「あら?」

さわ子「制服はコスプレじゃないの?」

夏目「え・・・」

レイコ「とりあえず頷いたら酒をご馳走してくれたぞ。いい奴らだ」

美弥「うふふ〜」

さわ子「ふふ〜」

夏目「」サラサラサラ

レイコ「これくらいで酔うとは情けない」

美弥「知ってますか? お酒は百薬の超電磁ロボなんですよ?」

さわ子「知ってたわよ〜」

夏目「」

レイコ「一杯じゃなくて一升瓶空けたんだぞって、聞いてるのか夏目」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 03:19:58.97 ID:TF8fCUyZo

秀輝「あ、いた」

さわ子「あら、腕大丈夫?」

秀輝「なんですか、いきなり・・・って、酔ってます・・・?」

美弥「さっき叩かれた腕は怪我してませんか?」

秀輝「うわっ! 車掌さんまで! 頬がほんのり赤くて素敵だ!」

夏目「・・・はっ」

レイコ「それじゃ、私はあっち行ってくるからな」

夏目「ダメだっ先生!」ガシッ

レイコ「い、いやだ!」

夏目「先生も少し酔ってるじゃないか!」

レイコ「コイツら二人がどんどん注いでくれるから」

夏目「二度とその格好で屋台に入るなよな」ギロ

レイコ「検討しよう」

夏目「・・・ハァ」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 10:20:21.24 ID:1+Zpo49Ho
凄いクロスだな支援
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 12:26:25.64 ID:xqyUvwzJo
風雨来記けいおんの人だな
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:27:18.84 ID:TF8fCUyZo
なぜか書き込みが出来ませんでした・・・
規制はないはずですよね

続きを投下します
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:28:15.99 ID:TF8fCUyZo


―――――ビジネスホテル


秀輝「ベルガールさん」

ベルガ「はい、なんでしょう」

秀輝「この方、山中さんなんですけど」

ベルガ「はい・・・?」

秀輝「ここのホテルに泊まっているのですが、部屋へ案内してくれますか?」

ベルガ「少々お待ちくださいませ」

テッテッテ

さわ子「むぎちゃんたち、北海道から楽しそうに旅をしてきたみたいよ〜?」

夏目「そ、そうですか・・・よかったですね・・・」

さわ子「うふふ」

レイコ「暑い」パタパタ

美弥「暑いですね〜」パタパタ

秀輝「お水です。二人ともどうぞ」

レイコ「気が利くな」

美弥「ありがとうございます」

レイコ美弥「「 ごくごく 」」

さわ子「むぎちゃんが乗車券を当ててね〜」

夏目「そうですか・・・すごい運の持ち主ですね」

ベルガ「山中さわ子様ですね?」

秀輝「そうです」

ベルガ「お待たせしました。こちらへどうぞ」

さわ子「それじゃ、また明日ね〜」フリフリ

美弥「おやすみなさいませ」

レイコ「また明日飲みに行こうな」

秀輝「・・・ふぅ」

夏目「ヴェガに戻るか・・・」

美弥「貴志くん」

夏目「なんですか、塔子さん」

秀輝「え?」

夏目「――ッ!?」

美弥「うふふ〜、間違えられちゃった♪」

レイコ「声質が塔子と同じだから間違えるのも無理は無い・・・」ヒック
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:28:57.48 ID:TF8fCUyZo

―――――ヴェガ


美弥「・・・」

秀輝「車掌さん?」

美弥「・・・はい」

夏目「酔いが冷めてきました・・・?」

美弥「・・・・・・・・・はい」

レイコ「丁度いい、もう一度屋台へ繰り出そう」

夏目「ダメだぞ先生」

レイコ「・・・ちっ」

秀輝「・・・」

「おう、戻ったか」

秀輝「あ、料理長」

夏目「この人が・・・」

レイコ「あの料理を作ったコックなのか」

美弥「・・・」

コック「珍しいな、美弥が羽目を外すなんて」

美弥「申し訳ありません」

コック「いいさ、部屋に戻って寝ろ。今日は俺に任せとけ」

秀輝「・・・渋い」ビリビリ

美弥「みなさん、ご迷惑をおかけしました」

夏目(あんなに楽しそうだったのに・・・すごく落ち込んでる・・・)

秀輝「車掌さん・・・」

コック「・・・」

美弥「それでは、失礼します」

レイコ「おい」

美弥「?」

レイコ「また飲みに行くぞ」

美弥「・・・ありがとうございます」ペコリ

スタスタ

秀輝「・・・車掌さん気にしないといいけど」

コック「車掌の仕事も色々と気苦労が絶えないからな・・・。他言無用で頼むぞ」

秀輝「はい」

夏目「・・・」

レイコ「どうして礼を言われたんだ?」

夏目「・・・先生が気を使ったと受け取ったんだよ」

レイコ「・・・。行くぞ、夏目」

夏目「あぁ・・・。それじゃ、おやすみなさい」

秀輝「おやすみ」

コック「おつかれ」
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:30:13.52 ID:TF8fCUyZo

先生「ぷー、ぷー」

夏目「こっちで寝るんだな、先生・・・」

先生「ぷー、ぷー、ぷー」

夏目(大変だったな・・・。これがあと7日続くのか・・・)

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先が思いやられるな・・・」




1日目終了--------

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:31:24.83 ID:TF8fCUyZo

8月8日


ジリリリリリリリリ

カチッ

夏目「・・・」ボケー

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生」ユサユサ

先生「・・・ん?」

夏目「朝だぞ」

先生「うむ・・・」

夏目「んー・・・」ノビノビ

先生「ぷー、ぷー」

夏目「二度寝か・・・。朝ごはんはいらないって事でいいかな」

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:32:06.85 ID:TF8fCUyZo


ガチャ

バタン

夏目(鍵だけでよかったんだな)

コトン

夏目(少し早すぎたかな・・・。ホームに降りてみるか)

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:33:42.84 ID:TF8fCUyZo


車掌「あら、貴志さん・・・」

さわ子「おはよう」

夏目「おはようございます。とう・・・車掌さん、山中さん」

車掌「おはようございます。ゆっくりお休みになられたでしょうか」

夏目「はい」

車掌「それは良かったです。昨晩は大変お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」ペコリ

夏目「いえ・・・。先生がお世話になったそうで・・・」

さわ子「世話になったのはこっちよ。ありがとう」

夏目「いえ・・・。先生を掴まえてくれたので、手間が省けました」

さわ子「先生?」

夏目「え・・・と・・・、姉の事を先生と呼んでいるんです。
    いつもフラフラと歩いていくので心配していたんです・・・助かりました」

さわ子「あの方ね・・・。失礼だけど、おいくつなのかしら」

夏目(うわ・・・どうしよう・・・)

車掌「含蓄のある言葉をいくつかお聞きしました」

夏目「!」

車掌「あの方は・・・。外見と言動が不一致に感じられることがしばしば・・・」

さわ子「・・・」

夏目「え、と・・・」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:34:12.92 ID:TF8fCUyZo

車掌「・・・」

夏目(外見は女子高生で、中身は人の倍以上生きてるからな・・・)アセアセ

車掌「ただ、そう感じただけですので・・・。私の知る必要のない事でしたら伏せておいてかまいませんので」

さわ子「そうね」

夏目「・・・っ」

さわ子「あ、そうだ・・・。車掌さん知ってるかしら、名古屋で開催されるゲリラライブの事」

車掌「それは、2年前に仙台で開催されたアマチュア主体のライブで間違いないでしょうか」

さわ子「そう、それ。名古屋のどこで行われるのか知らないのよ〜」

車掌「今回は名古屋城ですね」

さわ子「そう、ありがと・・・。今回はどんなバンドが登場するのか楽しみだわ〜」

車掌「そうですか」ニコニコ

夏目(ライブ・・・?)

澪「さわ子先生、食堂車へ・・・夏目?」

夏目「お、おはようございます」

澪「おはよう。夏目も一緒に朝食とらないか?」

夏目「先生と一緒に行きますから、気にしないでください」

澪「・・・そうか」

さわ子「・・・」

車掌「・・・」

澪「さわ子先生、律も後から来るので、先に行きましょう」

さわ子「・・・すぐにいくから、先に行ってて」

澪「はい」

スタスタ

夏目「そろそろ起こさないと・・・。めんどうだな・・・」

さわ子「美弥ちゃん・・・。ひょっとして・・・」

車掌「恐らく・・・」

さわ子「まぁ・・・」

車掌「いいですね」

夏目「・・・? おれも失礼します」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:35:11.54 ID:TF8fCUyZo


夏目「・・・」

ガチャ

先生「ぷー」

夏目「先生、朝だぞ」

先生「・・・ん?」

夏目「・・・」

先生「ふぁ〜・・・。よく寝た」

夏目「先生ってさ、人の姿に変わるときって、服を変えられないのか?」

先生「服? ・・・そんなものに拘っているのは人の子くらいだぞ」クシクシ

夏目「・・・。制服のせいで色々制限ついてて大変なんだぞ」

先生「それより朝ごはんだぞ、夏目!」

夏目「いや、それより服の問題を解決しないと」

先生「むぅ・・・」

夏目「昨日の夜は車掌さんと山中さんが酔っていたから助かったようなものなんだぞ」

先生「レイコはいつも制服だったからな、夏目と同じように・・・。服は知らん」

夏目「それじゃ、買いに行くか・・・」

先生「頼んだぞ、夏目」

夏目「あれ・・・? おれが女物の服を買うのか?」

先生「そういうことだな」

夏目「うわっ! いやだっ! 絶対いやだ!」

先生「なら、今のままでいいな」

夏目「うわー・・・」グッタリ

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:36:47.12 ID:TF8fCUyZo

店員「いらっしゃいませー!」

レイコ「朝食セットを頼む」

店員「かしこまりました!」

夏目「席に着いてから注文しような」

レイコ「・・・ふん」

スタスタ

夏目「・・・ハァ」

店員「お客様は、後で伺いますか?」

夏目「あ、おれも同じのでお願いします」

店員「かしこまりました」ニコニコ

夏目(あ・・・。奥の席に座っているのは軽音部のグループか・・・。
    見たことの無い人がいるあの人が律って人かな・・・)

レイコ「夏目、ここだ」

夏目「あぁ・・・」

レイコ「ふぁ・・・」

夏目「・・・ふぁ」

店員「夏目さん・・・」

夏目「は、はい?」

店員「申し訳ありませんが、相席でよろしいでしょうか?」

夏目「・・・はい」

店員「こちらでよろしいでしょうか、愛さん」

愛「あ、夏目さん・・・」

夏目「・・・おはようございます」

愛「お・・・おは・・・ようございます・・・」

店員「・・・」ホッ

愛「あ・・・あの・・・パンセットで・・・お願いします」

店員「かしこまりました」ニコニコ

夏目(先生の服を買いに行くの松浦さんに頼んでみようかな・・・。・・・それはないか)
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:38:34.22 ID:TF8fCUyZo

ザァーーー

レイコ「雨か・・・。厄介な・・・」

夏目「能登半島は無しだな、先生」

レイコ「・・・うむ」

愛「・・・・・・残念ですね」

夏目「・・・松浦さんはどこへ行くか決めたんですか?」

愛「は、はい・・・。兼六園に・・・行ってみようかな・・・と・・・」

レイコ「そこでは何が食べられるんだ?」

愛「え・・・えっと・・・苺大福・・・だったかな・・・」

レイコ「大福かいいな」キラン

夏目「景色を楽しむ為の場所なんだぞ」

レイコ「どういう場所なんだ、それは」

愛「・・・日本三名園のうちの一つですよ」

レイコ「・・・」

夏目「人が歩いて楽しむ為に設備された場所で、自然を模しているんだよ」

レイコ「そうだな、少し休みたいから行ってみるか夏目」

夏目(やっぱり妖は自然の中に居たほうが楽なんだろうか)

愛「あ、さとみさん」

さとみ「私もこっちに座っていいかな」

夏目「・・・はい。どうぞ」

さとみ「ありがと。・・・貴志くんたちが居てよかったわ」

愛「はい。席が埋まっていますから」

夏目「朝はいつもこれくらい込むんですか?」

さとみ「ううん。今、雨降っているからね、食堂車で済ませようという事だと思うわ」

愛「・・・そうですね」

夏目「あ、千歳さん。席変わりましょう」

さとみ「そうね。愛さんと私が隣のほうがいいわよね」

夏目(先生が迷惑をかけないように・・・。でもあるんだけど)

さとみ「それとね、私を呼ぶ時は・・・名前がいいな・・・」

夏目「?」

さとみ「苗字だと学校で先生に呼ばれているみたいで・・・」

夏目「そ、そうですか・・・」

レイコ「夏目、まだか?」

夏目「もうちょっとで来るから、耐えてくれ先生」

愛「クスクス」

さとみ「二人とも仲がいいわよね」ニコニコ

夏目「・・・」

レイコ「来た」

店員「おまたせしました〜」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:40:02.96 ID:TF8fCUyZo

夏目「ごちそうさま」

レイコ「・・・遅いぞ夏目」

夏目「先生の食べるスピードが早いんだよ」

さとみ「雨の勢いがすごいわね〜」

愛「・・・はい」

紬「おはよう〜」

唯「おはよ〜」

夏目「・・・」

さとみ「みんなも食べ終えたところなのね」

「うまかったうまかったー!」

澪「まだ食べている人いるんだから静かにしろ」

「へい」

さわ子「あなたたち、これから予定あるかしら?」

唯「おひまかな?」

夏目「?」

レイコ「ごくごく」

紬「勉強会開くの、ご一緒にどうですか?」

さとみ「え・・・?」

愛「・・・?」

「マジでやるのかよ。冗談だろさわちゃん?」

さわ子「冗談じゃないわよ?」

「またまたそんな・・・。私が風邪で寝込んでいるうちにそういうネタを仕組んで、
 さっきのようにひっかけようとしてんだろ?」ニヤニヤ

さとみ「なるほど」

紬「うふふ」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:40:46.58 ID:TF8fCUyZo

澪「どう?」

さとみ「そうですね。今は雨だし、行きます」

愛「・・・は、はい」

さわ子「それじゃ後で展望車に来てね」

さとみ「はい」ニコニコ

「さとみもノリがいいな〜」

紬「行きましょう、りっちゃん」

律「雨降ってしまったからな、観光先を考えないとなー」

スタスタ

澪「律のヤツ・・・。冗談だと思っているんだな・・・」

夏目「冗談じゃないんですか?」

澪「・・・うん」

さとみ愛「「 え・・・ 」」

さわ子「来なさいよ二人とも」

愛さとみ「「 ・・・はい 」」

レイコ「ぼりぼり」

夏目「おれの氷まで食べたんだな先生・・・」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:41:58.12 ID:TF8fCUyZo


レイコ「外は湿気で蒸し蒸ししているな」

夏目「さて、どうしようか。先生」

レイコ「そうだな・・・」

どろん

斑「天気みてくるから待ってろ夏目」

ボフッ

夏目(・・・あんなに昇っていって・・・。これからの天気が分かるのか・・・?)

ザァーーーーーー

夏目「雨が降っていて、人影のないホーム・・・雰囲気あるな」

『三番線、間もなく電車が到着致します』キリ

夏目(天気次第では今から能登半島に向かっても大丈夫だよな)

ガタンゴトン ガタン ゴトン

プシュー

「おっしゃー! とうちゃーく!」ピョン

「ほらほら、はやくはやくー!」

「ま、待ってくださーい!」

「ナミコ殿、切符を落としたぞ」

ナミコ「おっとぉ、サンキュー、マサ」

テッテッテ

夏目「・・・」

シーン

夏目「台風一過・・・」

斑「どうした」

夏目「いや・・・。どうだった?」

斑「このままだと、晴れるぞ」

どろん

先生「だから向かっても大丈夫だ」

夏目「どうしてニャンコの姿になるんだ」

先生「なにかと楽だからな」

夏目「そうか。よいしょ」ヒョイ

先生「・・・おいこら」

夏目「人に蹴られたら嫌だろ?」

先生「ふん、まぁいい・・・。さっさと歩け」

夏目「それじゃ、行こうか」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:43:37.69 ID:TF8fCUyZo


夏目「ここが能登半島・・・」

先生「おぉ・・・。いいではないかー!」

夏目「丁度雨も止んだし・・・先生の予報は当たったな」

先生「よっ!」ピョン

夏目「あ・・・」

先生「にゃふんにゃふん!」

テッテッテ

夏目「街よりこっちのほうが落ち着くな」

妖A「みろ、ブサイクなネコが走って行ったわ」

妖B「ひひひ、滑稽であるな」

先生「気持ちがいいわい!」

テッテッテ

どろん

斑「グルルルァーー!」

ボフッ

夏目「雨がやんだばかりの空を翔るなんて・・・本当に気持ちよさそうだ・・・」

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:45:02.53 ID:TF8fCUyZo


斑「夏目、魚捕ってきたぞ・・・食うか?」

ピチピチ

夏目「せっかくだけど、先生が食べてくれ」

斑「鱗だとか生は危ないとか、めんどうだな」ムシャムシャ

夏目「あ、天使の梯子だ・・・」

斑「ゲフ」

夏目「綺麗な一筋の光だな」

斑「もう少し獲って来る」

夏目「ハントンライス食べきれなくなるぞ」

斑「む・・・」

どろん

先生「まぁいいだろう・・・」

夏目「ここの魚はどうだった?」

先生「悪くないぞ」クシクシ

夏目「よかったな、先生」

夏目(女服を・・・買いに行くか・・・)フゥ
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:45:51.79 ID:TF8fCUyZo


―――――片町


先生「どうして戻ってきたんだ?」

夏目「先生の服を買おうかと思って・・・」キョロキョロ

先生「めんどうだなぁー」

夏目「もうお酒飲めなくなるぞ。いいのか?」

先生「それは困る。昨日の酒は旨かった」ジュルリ

夏目「・・・」キョロキョロ

先生「はやくさがしてくれー」

80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:47:31.21 ID:TF8fCUyZo


――・・・ 一時間後


夏目「駅前に戻ってきてしまった・・・」

先生「・・・人が増えてきたぞ夏目」

夏目「あぁ・・・」

先生「・・・」

「みてみてー、あのネコ」

「うわー・・・。可愛いー」

「え・・・」

先生「・・・聞いたか、夏目」

夏目「・・・うん」

先生「・・・」

夏目「喜ばないのか・・・」

「もし、そこのお方・・・」

夏目「え・・・?」

先生「なんだこやつは」

「ふむ・・・」

夏目「?」

「その猫は猫又と類される生き物なのではないだろうか・・・?」

先生「なぬっ!」

夏目「えっ!?」

「先ほどから何度も声が聞こえているので、気になっていた・・・」

先生「なぜ聞こえる!?」

夏目「ちょっと失礼します」ダキッ

先生「ぅお」

ダダダッ

「・・・行ってしまった」

ナミコ「あの人がどうかした?」

「キョージュが他人に話しかけるなんて珍しいな」

「どうしたのどうしたのー?」

キョージュ「いや・・・なんでも・・・」

「みなさん、金沢の名物料理にですね、冶部煮というのがあるらしいですよ」

ナミコ「お昼にそれを食べるのか如月・・・」

如月「郷土料理なんですよ〜」

ナミコ「冶部煮か・・・」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:49:37.40 ID:TF8fCUyZo


夏目「どうしてあの子に聞こえたんだよ先生!」

先生「知らん!」

夏目「普通の人には先生の声、今のニャンコ姿からは聞こえない筈だよな!?」

先生「そうだとも・・・。いや、待て」

夏目「?」

先生「あの小娘もそういう力を持っているのかもしれん」

夏目「え・・・、妖が見えるって事か?」

先生「恐らくな。実験してみようではないか」

どろん

斑「今のこの私の姿を確認できるのなら、あの小娘も『見える』という事だ」

夏目「あぁ・・・」

斑「『見える』人に会ったからと言って戸惑う事もあるまい。お前が暮らす土地ではないのだからな」

夏目「・・・そうか。そうだな・・・」

斑「行くぞ」

夏目「・・・」

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:51:53.02 ID:TF8fCUyZo

「なんでだよ! やだよ煮物なんてさー!」

如月「伝統料理・・・」

「やだやだー!」

ナミコ「あー・・・。駄々こね始めたぞ、この姫」

姫「わたくしは若者らしくトレンド料理が所望ですわ」オホホ

「流行り物にはうるさいからな、こういう時は頼りになるぜノダ!」

ノダ姫「必殺! 聞き耳センサー!!」キュピーン

ナミコ「意味が分からん・・・。友兼、解説頼む」

友兼「解説しよう! 聞き耳センサーとは周りの人から発せられる言葉から情報を奪い取るという
   精密且つ高度なテクニック技である!!」

ナミコ「なんだ、そのまんまか・・・」

ノダ姫「ピピピピ」

如月「みっちゃんのお勧めなのに・・・」グスン


唯「ハントンライスが呼んでる〜!」

紬「待って唯ちゃん!」


ノダ姫「ハントンライス!」

友兼「よっしゃー、きっまりー」

如月「・・・」ウルウル

ナミコ「まぁ・・・その、なんだ・・・。どんまい」ポンポン

ノダ姫「あれ、キョージュは?」

友兼「あっちにいるぜ」

ナミコ「マサはなにをしてるんだ?」

如月「冶部煮・・・」シクシク


斑『・・・』

夏目(『見えていない』ようだな・・・)

キョージュ「先ほどの猫殿は・・・?」

夏目「えっと・・・」

斑『おい、小娘』

キョージュ「・・・」

夏目(妖姿の先生の声も『聞こえない』のか・・・)

キョージュ「一緒に歩いていた猫殿は・・・物の怪でいいのだろうか・・・?」

夏目「・・・うん」

キョージュ「・・・やはり」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:54:16.50 ID:TF8fCUyZo

斑『どうして話しかけたのか聞け、夏目』

夏目「どうして、話しかけたんですか・・・?」

キョージュ「昔、そういう猫と会った事があって・・・」

斑『それは猫又で間違いないだろう』

ボフッ

夏目「あっ!」

キョージュ「?」

夏目(どこへ行ったんだよ先生!)

キョージュ「その時を思い出して懐かしくなり、声をかけたのだ・・・」

夏目「懐かしい・・・?」

キョージュ「うむ。私の名前は大道雅」

ノダ姫「ノダミキです!」

友兼「友兼だ!」

ナミコ「野崎奈三子」

如月「山口如月です」

友兼「何を隠そう、オレたちが!」

ノダミキ「G A!」

如月「芸術科アートデザインクラス、なんですね」

ナミコ「なんで自己紹介してんの、あたしら・・・」

夏目「夏目・・・貴志・・・です・・・」

先生「な〜つめぇ〜」

テッテッテ

如月「はぁ〜」パァアア

先生「にゃ!?」

如月「だっこするにゃ〜」ダキッ

先生「にゃっ!? やめんか!」

キョージュ「如月殿・・・」

如月「なんですか〜、キョージュさん〜」スリスリ

先生「離さんかこら!」

キョージュ「その猫殿も抱っこしてくれて喜んでいるようだ」

如月「そうですか〜」スリスリ

先生「おいっ! おまえ、私の声が『聞こえている』のだろう!?」

キョージュ「・・・」コクリ

先生「出鱈目を言うでない!」ジタバタ
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:55:32.81 ID:TF8fCUyZo

ナミコ「如月って、もっと可愛いのが好みだと思ってたよ」

先生「にゃんだと!」

夏目「ブフッ」

友兼「ん?」

ノダミキ「あー、如月ちゃんばっかりずるいー!」

ナミコ「はいはい、姫は私と一緒にお店を探しましょうね〜」グイグイ

ノダミキ「や〜だ〜」ジタバタ

澪「・・・」

律「・・・」

夏目「・・・はっ」

唯「楽しそうですな、貴志くん」

紬「まぁまぁまぁ」

さわ子「・・・」

みらい「夏目さん・・・」

夏目(まずいっ! 琴吹さんにニャンコ姿の先生を見られると後々面倒になる!)

如月「もふもふするにゃ〜」スリスリ

先生「にゃにゃにゃ」

友兼「いや・・・。モフモフしてなさそうだぞ・・・」

夏目「ごめん!」スッ

如月「あ・・・」

先生「にゃふー・・・」

夏目「先生、早く人の姿になってきてくれ」ヒソヒソッ

先生「なんでこんなに忙しいのだ!?」

テッテッテ

キョージュ「・・・」

夏目「・・・」フゥ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:57:01.79 ID:TF8fCUyZo

友兼「へー、軽音部ね〜」

唯「そうだす! ギターとボーカルの唯!」

紬「キーボードの紬!」

律「ドラムの律!」

澪「・・・」

みらい「ベースの・・・?」

澪「みおでーす」

唯紬律「「「 えっ!? 」」」

さわ子「あらら」

友兼「オレらは芸術科アートデザインクラスだ! 主に絵を描いてるんだぜ!」

唯「音楽と絵ですか! 独創性が求められますな!」

友兼「あはは! そうですな!」

如月「同じ芸術ですよね〜」

律「アーティストと呼ばれて久しいぜ」フフン

キョージュ「うむ・・・」

夏目「・・・」

紬「どうしたんですか?」

夏目「あ、えっと・・・」

紬「?」

夏目(先生と一緒に行けばよかったのに・・・なにやってんだろうおれは・・・)フゥ

レイコ「待たせたな。さっさ行くぞ、ハントンライス」

夏目「・・・あぁ。それじゃおれ達は行きます」

唯「また列車でね〜」

夏目「・・・はい」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:57:59.34 ID:TF8fCUyZo

キョージュ「少し話を聞きたいのだが・・・」

夏目「え・・・?」

キョージュ「同じ風景を見られる人と会話をする機会がなかったので・・・興味がある」

夏目「・・・」

ナミコ「おーい友兼、マサー! って人多いな!」

ノダミキ「如月ちゃーん!」

如月「は、はーい!」

レイコ「ハントンライス、早くしろ」

夏目「・・・誰がハントンライスだよ」

スタスタ

友兼「そんじゃなー!」

紬「は〜い」フリフリ

澪「一緒に行ったんだな・・・」

律「アイツ誰だっけ・・・?」

紬「姉弟で乗車した夏目貴志さんとレイコさんよ」

律「あぁ、食堂車にいたなー」

唯「あれ、あの方向ってわたし達が行くお店じゃない?」

みらい「・・・そのようですね」

さわ子「行きましょ」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 12:59:09.63 ID:TF8fCUyZo


「店長、タイムウォッチです」

店長「・・・それでは、20分以内に召し上がってください」

レイコ「前置きはいいから、早く食わせろ」

店長「よーい、スタート!」ピッ

レイコ「はむっ」

チッチッチッチ


キョージュ「放っておいていいのだろうか・・・?」

夏目「あぁ・・・。あれくらいなら食べきれるよ」

澪「結構な量だ・・・」

如月「はい・・・。わたし・・・見てるだけでお腹が一杯になってきました」

唯「まだ食べてないよ〜」グゥー

律「しっかし、おいしそうに食べるなー」

ナミコ「ほんとに・・・」

紬「わ、私も挑戦しようかしら」ゴクリ

ノダミキ「一人じゃ食べきれないよ。一緒に食べようよ」

さわ子「それは反則よ」

友兼「腹へったぁー」グゥー

みらい「・・・」シーン

さわ子「どうしたのよ?」

みらい「みなさん個性が強すぎて・・・」

さわ子「そうね・・・。私たちはあっちの席で食べましょうか」

みらい「・・・・・・はい」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:00:28.44 ID:TF8fCUyZo


ノダミキ「必殺! ノダちゃんオーラ!!」キュピーン

唯「ノダちゃんオーラ!?」

ナミコ「こらー、静かに食べろー」

ノダミキ「はーい」

紬「今のノダちゃんオーラとは・・・?」ゴクリ

ノダミキ「みなさんの手元にあるこのハントンライス、
     わたくしのオーラによってより一層おいしさを増したのです!」

紬「まぁ〜」

友兼「ははっ」パクッ

律「そんな馬鹿な・・・」パクッ

友兼律「「 うめえ! 」」

ノダミキ「と、こうなる訳です」

紬「なるほどなるほど」パクッ

唯「いただきます」パクッ

紬「おいしいわ〜」キラキラ

唯「うまい!」テレッテレー

ノダミキ「わたくしの力を見まして?」

ナミコ「普通においしいからな。オーラなんて最初からいらなかったんだよ」パクッ

ノダミキ「意地悪な姑さんですこと」パクッ

ナミコ「誰が姑だって・・・?」ジロ

キョージュ「あっちはそろそろ完食のようだ」

澪「・・・すごい」

夏目(早いな、朝に魚を何匹か食べてるのに・・・)


チッチッチッチ

店長「ぐ・・・」

レイコ「もぐもぐ」

店長「ぐぐ・・・」

レイコ「うまいぞ、店長」

店長「光栄です・・・」

レイコ「これで最後か」パクッ

店長「ぐぬっ」

ピッ

レイコ「ごくごく」

さわ子「閉めの一杯ね」

みらい「本当に食べきりました・・・。お皿からっぽです・・・」

店長「10分35秒・・・」

「「「 おぉー!! 」」」

89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:01:26.76 ID:TF8fCUyZo


友兼「なんだなんだ!?」

如月「店中が歓声で鳴り響きましたよ!?」

紬「あ、あれを見て!」

律「すっげえ!」

唯「3人前を食べちゃったよ・・・」

ナミコ「細い人ほどよく食べるって聞くけど、本当だったんだな・・・」

ノダミキ「うまうま」モグモグ

澪「・・・」

キョージュ「・・・」

夏目(妖は食べなくて平気だけど、お腹が空いたと気付けば食欲が沸くと言っていたな・・・
   先生は食いしん坊だから・・・関係ないかな)


レイコ「おかわりだ」

店長「なっ!?」

「「「 オォーッ!!! 」」」


友兼「なんだなんだ!?」

如月「さっきの歓声より大きく鳴り響きましたよ!?」

紬「おかわりするそうよ!」

律「すっげえ!」

唯「まだ入るんだ・・・」

ナミコ「プラス3人前・・・」

ノダミキ「うまうま」モグモグ

澪「・・・」

キョージュ「・・・」

夏目「・・・ハァ」

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:02:43.83 ID:TF8fCUyZo


レイコ「・・・やらんのか?」

店長「いいでしょう。こちらも負けていられません」

レイコ「うむ」

店長「先ほどの御代は広告通りいただきません」

レイコ「それで、どうするんだ?」

店長「10分の調理時間をいただきます
   それで、また食べきれた場合は、この商品券を進呈いたしましょう」

レイコ「なんだそれは」

店長「金沢駅前のお店ならどこでも使える商品券です
   本屋からゲームセンターまでご利用いただけます」

レイコ「服もか?」

店長「もちろんです」

レイコ「丁度いい」

店長「では、後ほど」

レイコ「分かった」

夏目「先生、食べ切れるのか?」

レイコ「なんとかなるだろ」

夏目「食べ切れなくても、スペシャルセット2人前の半額を払うだけだからこっちは得なんだけど」

レイコ「少し散歩してくる。10分後に来ると伝えておけ」

夏目「あぁ・・・」

レイコ「うまかった」

スタスタ

夏目「先生も楽しめてるのかな・・・」

キョージュ「その様子・・・」

夏目「それで話とは・・・?」

キョージュ「ご飯が冷めないうちにいただこう」

夏目「・・・そうだな」パクッ

キョージュ「もぐもぐ」

澪「・・・」

律「なんだよ唯、海老食べないのかー?」

友兼「如月も残しやがってー」

如月唯「「 後から食べ 」」

律「いっただっきー!」ヒョイ

友兼「もったいねえなー」ヒョイ

唯如月「「 あ 」」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:04:54.32 ID:TF8fCUyZo

律「ぷりぷりしててうんめぇー」モグモグ

友兼「この歯ごたえ、癖になるぜ」モグモグ

唯「りっちゃん・・・」ウルウル

如月「友兼さん・・・」ウルウル

律「あれ・・・?」

友兼「ひょっとして後で食べるつもりだったとか・・・?」

唯如月「「 うん・・・ 」」

律「ぉう・・・」タラタラ

友兼「マジかよ・・・」タラタラ

唯「楽しみにしていたのに」シクシク

如月「はい・・・。おいしそうでした」シクシク

律「ほ、ほら私のお冷やるよ!」スッ

友兼「あとでおいしい飴玉買ってやるよ!」

澪ナミコ「「 とりあえず、謝れ 」」 

律友兼「「 ごめんなさい 」」

ノダミキ「へぇー、旅行で金沢に来たんだー」

紬「そうなの。午前中に輪島で朝市を見学して、そのまま能登半島へ行ってきたわ」

ノダミキ「楽しそうー。ね、ね! ナミコさん!」

ナミコ「午後も美術館へ行く予定だからダメ」

ノダミキ「そんなー」ブー

ナミコ「あ、でも・・・。漆塗りには興味あるな」

澪「漆黒で、つやがあって綺麗だった」

紬「黒く輝いててとても美しい形をしていたわ」

キョージュ「・・・ナミコ殿」キラン

ナミコ「マサも乗り気だから、見に行ってみるか」

ノダミキ「やったー」

ナミコ「輪島まで行かないけどな」

ノダミキ「じゃあいいや」

ナミコ「輪島に行きたいだけか、このわがまま姫」

紬「美術館へ行ってきたの?」

ノダミキ「そうだよー、21世紀美術館。今日で最後の展示物があったから、みんなで見に来たの」

紬「まぁ〜。活動的なのね」

ノダミキ「あはは、日帰りだからゆっくりもしていられないんだけどね」

紬「夏休みだから丁度いいのね」

ノダミキ「そうそう」

ナミコ「こーら、年上に対して失礼だぞ姫」

ノダミキ「紬さん聞き上手だから・・・。うちのお姉ちゃんみたい」

紬「あらあら」ウフフ
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:06:35.04 ID:TF8fCUyZo

唯「姫?」

ナミコ「わがままだから姫なんです」

ノダミキ「オホホホホ」

唯「姫ちゃんなにしてるんだろ・・・」

律「バイトでもしてんじゃねえか?」

如月「ごちそうさまです〜」

友兼「ふぁー、うまかったー」

ナミコ「女の子がはしたない・・・」

友兼「ナミコお母さん、食後のお茶をどうぞ」

ナミコ「ありがと。って、誰がお母さんだ」

ワイワイ ガヤガヤ

夏目(賑やかだな・・・)モグモグ

キョージュ「お茶をどうぞ」

夏目「ありがと」ゴクゴク

キョージュ「やはりさっきの方は・・・」

夏目「同一人物。妖なんだ、先生は」

キョージュ「『あやかし』・・・」

夏目「妖怪と呼ばれるものの類」

キョージュ「・・・」

夏目「・・・」

キョージュ「・・・ふむ」

夏目「変な目でみないんだな」

キョージュ「・・・?」

夏目「おれがそう言う話をすると、戸惑わせて相手に距離を取らせてしまうんだ」

キョージュ「・・・」

夏目「常識はずれな事を言っているって」

キョージュ「なるほど・・・」

夏目「そっちは生まれつきなのか?」

キョージュ「そう・・・。先天的なものだと思う・・・」

夏目(妖は見えないけど、先生の声は聞こえる位の力・・・
    田沼やタキと同じ強さってことなのか・・・)

キョージュ「私が小さい頃の話だが、近所で猫の集会が行われていた」

夏目「猫の集会・・・」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:09:44.28 ID:TF8fCUyZo

キョージュ「よく行われていたみたいで、子供たちの間では有名な場所だった」

ナミコ「ふむふむ」

キョージュ「私も興味本心で見に行くと、一匹の猫・・・
       リーダーのような雰囲気を纏った仔が話をしていた」

夏目(それが猫又・・・)

キョージュ「私は驚いてその場で立ち尽くしていた・・・
      その私に気付いた猫たちは一斉に逃げていったのだ」

澪「・・・」

キョージュ「それからは集会は行われなくなってしまった。そんな記憶が蘇った・・・」

夏目「・・・」

キョージュ「なんだか申し訳ないと、小さいながら思ったものだ」

夏目(それは・・・あなたのせいじゃないというべきだろうか・・・)

澪「ちょっと切ないな」

ナミコ「へぇー、マサにそんな話があったなんてね〜」

キョージュ「うむ。あの頃は子供だったから空耳かとずっと思っていたんだが」

ナミコ「違うの?」

キョージュ「いや、空耳で気のせいだったのだろう」

夏目(気を使ってくれたのか・・・)

ナミコ「案外、マジだったりしてな」

夏目「・・・」

ナミコ「マサは動物ともコミュニケーションが取れるからな」

澪「会話が出来るって事?」

夏目「!」

ナミコ「うーん・・・。それに近いですかね・・・」

キョージュ「でも声は聞こえないのだがな」

夏目(また気を使って・・・)

ナミコ「あはは、それでも伝えられるからすごいよ」

澪「・・・」

友兼「そうそう・・・ってなにが?」

ナミコ「聞いていないなら話に乗るな」

如月「みなさん食べ終えましたので、移動しましょう」

ノダミキ「私は、もう少し話してるよ」

紬「あら?」

ノダミキ「朝早かったから少し疲れてるのです」グター

律「そんな気構えでは風邪ひくぞ!」

澪「説得力あるな」

カランカラン

レイコ「準備はできてるか」

店長「丁度今出来上がりましたよ」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 13:11:20.24 ID:kn6S4E/Uo
混ぜすぎだろwwww
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:11:41.55 ID:TF8fCUyZo

如月「キョージュさん、行きましょう」

キョージュ「そうだな・・・」

友兼「えー! 見ていこうぜー?」

ノダミキ「そうだよ! きっとこのお店の名勝負になるに違いないよ」

唯「そうだよ! 歴史は今動くんだよ! 見ないと損!」

店長「・・・。キミたちは食べきれると踏んでいるわけだな」

「店長のプライドが傷つけられた!」

店長「面白い。一つ賭けをしよう」

澪ナミコ「「 賭け? 」」

店長「みんなドリンクを頼むといい。賭けに勝ったらタダだ」

さわ子「負けたら?」

店長「普通の料金をいただくだけ。・・・どうだ?」

律「おもしれえ!」

さわ子「半ば強制的な販売だけど、リスクは同じって事ね」キラン

みらい「・・・あの、トレーニングを」

さわ子「今を楽しんでいなくちゃダメよ」

みらい「・・・はぁ」

ノダミキ「あれ、もしかしてアイドルの飯山みらい?」

みらい「は、はい」

ノダミキ「トモカネ、トモカネ! 飯山みらいちゃんだよ!」

友兼「マジかよ!」

ナミコ「そこ、店内ではしずかにしなさい」

ノダミキ友兼「「 はい、お母さん 」」

律「どっちが勝つかなんて決まってるよなぁ!」

唯「やったー! わたしアップルティー!」

澪「そこも、しずかにしろ」

律唯「「 はい、澪母さん 」」

澪「・・・」

ナミコ「お互い大変ですね・・・」

澪「まったくだ・・・」

ナミコ澪「「 ・・・ハァ 」」

夏目「先生、10分間どうしていたんだ?」

レイコ「走ってきた」

唯律澪如月「「「「 走ってきた!? 」」」」

ノダミキ「おぉー、そのプロポーションはそうやって維持されているのですね」キラン

紬「まぁ・・・」

夏目(妖の姿で金沢の空を翔てきたんだろう。『見える』人からしたらすごい光景だっただろうな)

店長「さぁ、どうする?」

「「「 食べきる方で! 」」」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:13:58.60 ID:TF8fCUyZo


チッチッチッチ

店長「あと、30秒・・・」

レイコ「もぐもぐ」

如月「さすがに無理でしょうか」

友兼「あぁ、6人前だもんな・・・。ペースがガタ落ちだ」

ノダミキ「わたしたちは食べた分を払うだけだからいいんだけど」

ナミコ「店長の顔が緩んできたぞ・・・」

キョージュ「・・・」

夏目「・・・」

唯「後もうちょっとなのに〜」

律「それでもすげえよ」

澪「うん」

紬「はらはら、どきどき」ワクワク

店長「あと、15秒・・・」

レイコ「・・・ふぅ」

友兼「あーっと、ここで敗北のため息がこぼれたー!」

ノダミキ「あと3口くらい残しております!」

ナミコ「大健闘だよね」

店長「あと・・・」ニヤリ

レイコ「私を甘く見るなよ」ガツガツ

紬「おぉー!」

夏目「わざと時間を使って食べていたんだ、先生は」

澪「ペース配分か・・・」

夏目(そこまで配慮してないと思う・・・。店主をからかっただけ・・・)

キョージュ「・・・飲み込めば終わり」

店長「・・・5・・・4・・・」ハラハラ

レイコ「もぐもぐ」

唯如月「「 3! 」」

レイコ「もぐもぐ」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:14:30.89 ID:TF8fCUyZo

律友兼「「 2! 」」

レイコ「・・・もぐ」

紬ノダミキ「「 1! 」」

レイコ「ごくり」

店長「くぅ・・・時間です」

澪ナミコ「「 食べきった・・・ 」」

みらい「すごいです・・・」

レイコ「店主、サービスいいな」

店長「くっ・・・」

キョージュ「若干量が増えていたようだ。海老が多めだった」

さわ子「あら、そうだったの・・・」

夏目「先生は海老が大好物なんだ」

紬「海老で鯛を釣ったのね」

ナミコ「逃げられましたけど」

店長「ありがとうございましたー・・・」

レイコ「ごちそうさま」

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:15:40.82 ID:TF8fCUyZo

ノダミキ「おもしろかったぁ」

友兼「オレらも騙されたぜ」

如月「騙されていたんですか!?」

キョージュ「店主をからかっていたようだ」

レイコ「中々旨かったな。毎日通ってもいい」

ナミコ「・・・店を潰す気だ」

夏目(来れる距離じゃない)

レイコ「あっちの椅子で座ってるから、これからの予定が決まったら呼べ」

夏目「あぁ・・・」

律「・・・」

唯「午後の観光も頑張るよー!」

紬「おー!」

如月「みなさん元気ですね〜」

友兼「観光かぁー。いいなぁー」

律「いいだろ」フフン

澪「威張るな」

さわ子「私たちはそこの公園でボイストレーニングやってくるからね」

みらい「はい」

唯「私も残るよ!」

みらい「唯さんは観光を楽しんできてください」

唯「・・・」

律「今の唯が手伝える事って無いと思うぞ」

唯「・・・うん」

律「ギターで支えてやろうぜ!」

唯「はいよ!」

ナミコ「・・・」

ノダミキ「みらいちゃん!」

みらい「は、はい・・・?」

ノダミキ「サインください!」

みらい「え、えっと・・・」

さわ子「・・・」

みらい「わ、わたし・・・色々あって・・・。芸能界から・・・姿を消すかも・・・しれませんよ・・・?」

ノダミキ「どうゆう事?」

友兼「なにやら複雑な様子・・・」

夏目(昨日と今日で様子が全然違うな・・・)

みらい「所属事務所を辞めてしまったので、今フリーのアイドルなんです・・・」

唯「・・・」

ノダミキ「・・・」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:18:16.11 ID:TF8fCUyZo

友兼「なんだ、ステージでマイクを置いたのかと思った・・・」ガサゴソ

ナミコ「なにを探しているんだ、友兼」

友兼「書くもんないかなって・・・。ちょっと店から借りてくる!」

テッテッテ

如月「あ、わたしありますよ」ガサゴソ

ナミコ「早く言おうな・・・」

紬「うふふ」

ノダミキ「はい、このハンカチにお願い!」

みらい「で、でも・・・」

さわ子「ファンに応えてあげなさい」

みらい「は、はい・・・」

キョージュ「ノダ殿はみらい殿のファンだったのだな」

ノダミキ「弟がファンなの」

律「弟かよ!」

澪「・・・」

みらい「・・・」カキカキ

夏目(複雑な顔だな・・・)

ノダミキ「わーい、ありがとー!」

みらい「いえ・・・」

さわ子「TVの時とギャップあるのによく気付いたわね」

ノダミキ「わたくしの目はごまかせませんことよ!」キラン

唯「分かる人には分かるんだよ、みらいちゃん」

みらい「・・・!」

友兼「借りてきたぜー!」

如月「わたし持ってました」

友兼「えぇっ!?」

律「無駄骨だったな」

ナミコ「あはは」

友兼「・・・。まぁいいや・・・はい、お願い」

ナミコ「ちょっと待て。それは割り箸の紙だろ」

友兼「ハンカチ濡れてて書けないからしょうがないのだ」

ノダミキ「のだ!」

みらい「えっと・・・」

律「みらい、『おてもと』って書いてやれ」ヒソヒソ

みらい「でも・・・」

紬「だいじょうぶよ」ヒソヒソ

澪「むぎまで・・・」

みらい「・・・」カキカキ

『おてもと』
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:19:45.43 ID:TF8fCUyZo

さわ子「本当に書いたわね」

ナミコ「ブフッ」

夏目「・・・」

友兼「あぁー!?」

キョージュ「文字の配置、間隔の並び、それらを活かした絶妙なバランス。どれを取っても申し分ない」

友兼「まぁ、キョージュがそう言うんなら問題ないな」

律「いいのかよ」

如月「あ、すいません。わたしにもお願いします」

みらい「え・・・と・・・」アセアセ

ナミコ「こら、如月・・・。悪ノリするな」

澪「それも割り箸の紙だな」

如月「えっとですね・・・。飯山みらいさんからもらったサインだと
   わたしだけが覚えていればいいのかなって・・・」

ノダミキ「うん?」

如月「えっと・・・」

紬「サインの価値を決めるのは他人じゃなくて貰った本人なのよね」

如月「そ、そうです。この文字を書いたこの日を忘れずにいたら、ずっと残していけると思って・・・」

ナミコ「なるほど」

みらい「・・・」

如月「わたしとみらいさん、みなさんとの想い出です」

友兼「まったく・・・」ナデナデ

ノダミキ「この子は〜」ナデナデ

如月「あの・・・」カァ

紬「うふふ」ナデナデ

如月「紬さんもですか!?」

唯「頑張らないと残してもらえないよね!」

みらい「は、はい!」

さわ子「いい感じに火をつけてくれたわね」

ナミコ「火?」

さわ子「軽音部でこの子とライブをする予定なのよ」

ナミコ「へぇ・・・」

律「うっかり捨てられないように頑張らないとな、みらい!」

みらい「はい」メラメラ

ナミコ「真っ先に捨てそうなのは友兼だな」

友兼「そ、そんな事ねえよー」

みらい「クスクス」

如月「お願いします」

みらい「・・・はい」カキカキ

『おてもと』
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:22:34.58 ID:TF8fCUyZo

さわ子「それでも、割り箸の紙だという事実は変わりないのよねぇ」

律澪友兼ノダミキ「「「「 ぶち壊しだー!! 」」」」

如月「それもそうですね」クスクス

みらい「ふふっ」

唯「そうだね〜」

紬「うふふ」


律「そんじゃ兼六園に行こうぜ、澪」

澪「そうだな」

夏目(オレと先生は服を買ってからだな・・・)

律「みんな後でな」

澪「じゃあね」

スタスタ

唯「武家屋敷でね〜」

ノダミキ「私も兼六園行きたいー」ウズウズ

ナミコ「美術館にもう一度行くって決めたからダメ」

ノダミキ「ぶー」

如月「また今度来ましょう、ノダちゃん」

友兼「そうだぜ、初心忘るべからずだ」

ノダミキ「そうだね、さめちゃん先生も来るって話だし」

唯「さわちゃん?」

さわ子「?」

紬「賑やかよね」ニコニコ

ナミコ「個々の色が強すぎて大変です」フゥ

キョージュ「・・・うむ」

夏目「色・・・」

ノダミキ「パレットという名の遊び場で活躍してます! 彩色のマゼンタ!」

如月「と、このように色々で」

友兼「色彩戦隊イロドルンジャーの紹介じゃないのかよ、キサラギぃー」

紬「うふふ」

唯「音符のようなものだね」

さわ子「感覚的にはそうね」

みらい「・・・」メモメモ

ナミコ「静寂さを求めても賑やか過ぎるパレットですから・・・、それなりに楽しいですよ」

紬「そうなの。いいわね〜」ニコニコ

友兼「なーに言ってんだよ、ナミコさんも同じだろー」

ノダミキ「私たち無邪気な色合いですのよ!」

キョージュ「白ではないな」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:23:39.05 ID:TF8fCUyZo

如月「そろそろ行きましょうか」

ナミコ「落ち着いた緑色に染めてやろうか・・・まったく。それじゃ、私たちもこれで」

紬「えぇ。ごきげんよう」

唯「バイバイ!」

ノダミキ「バイバーイ!」

友兼「じゃあなー!」

夏目「あのさ・・・」

キョージュ「?」

夏目「きっと、別の場所をみつけて集会開いてるよ」

キョージュ「・・・そう・・・だね」

ナミコ「マサが笑った!」

如月「なんと!」

ノダミキ「キョージュッ!?」

友兼「もう一回、もう一回!」

キョージュ「午前中に美術館で会った人たちも遠くから来ていたそうだ」

ナミコ「話題を変えたな・・・。たしか・・・ひだまり荘から来たとか」

如月「私たちと同じく美術の勉強をしている方でしたね」

スタスタ
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:24:42.82 ID:TF8fCUyZo


夏目「台風一過・・・」

さわ子「行きましょ、みらいちゃん」

唯「それじゃ後でね、みらいちゃん!」

みらい「はい!」

紬「夏目さんはどこへ行かれるんですか?」

夏目「先生の服を買いに行きたいんですけど・・・」

唯「服?」

夏目「はい・・・」

唯「そういえば、お姉さんは制服なのに貴志くんは私服だよね」

夏目「・・・」

紬「ここへ来る途中にお店があったような・・・」

夏目「駅前なら教えて欲しいです」

紬「行きましょう〜」

唯「行こう〜」

夏目「先生呼んできます」

テッテッテ

唯「どうして先生って呼んでいるんだろう・・・」

紬「・・・どうしてかしら」キラン

104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:25:10.38 ID:TF8fCUyZo


紬「ここのお店なんだけど」

唯「可愛い服がいっぱいだね」

夏目「ここですか・・・」

レイコ「・・・入るぞ」

夏目(案外普通に受け入れるんだな・・・)

紬「夏目さんは入らないんですか?」

夏目「おれ、女性物の服なんて買った事なくて・・・」

唯「それはそうだよね」

夏目「・・・店員さんに頼もうかな」

紬「唯ちゃん、まだ時間あるわよね?」

唯「あるよ!」

紬「入りましょう」

唯「はいよ、わたし達がコーディネートしてくるよ!」

夏目「・・・?」

紬「一緒に選んでみるわ」

唯「まかせなさい!」ドン

夏目「・・・助かります」

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:26:25.09 ID:TF8fCUyZo

――・・・


紬「カーテンの向こうでお姉さんが着替えておりますので、少々お待ちください」

夏目「・・・はい」

唯「むぎちゃんノリノリだ」

「いいぞ」

紬「それでは、カーテンオープン!」

シャー

レイコ「どうだ」

唯「おぉー」

店員「可愛いですね。白いワンピース」

夏目「ブフッ」

紬「あら? 変かしら」

夏目「ち、違うんです・・・!」

レイコ「どれ着ても同じだと思うんだが」

唯「どれ着ても似合うよ」

紬「うんうん。スタイルもいいから着こなしてるわ」

夏目(妖の先生が人の姿に変身して可愛い服を着てる・・・ッ)プクク

紬「夏目さん・・・?」

夏目「あ、はい。先生はその服で動きづらくないか?」

レイコ「大して変わりはないな」

夏目「・・・上から着るものがあれば」

店員「それでしたら、こちらのデニムシャツはいかがでしょう?」

紬「それなら、下はロングスカートね。花柄にしましょう」

唯「これなんてどうかな」

紬「まぁ、それいいね」キラキラ

唯「お姉さんの雰囲気に合うんじゃないかな」

夏目「・・・はい」

店員「さ、どうぞ」

レイコ「また着替えるのか・・・」

夏目(この組み合わせはいいかもしれない)
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:27:14.94 ID:TF8fCUyZo


店員「ありがとうございましたー」ペコリ

唯「それじゃ行こうよ、むぎちゃん!」

紬「唯ちゃん、武家屋敷行く前に片町に行かない?」

唯「ん?」

紬「昨日の夜とはどう違うのか見てみたくて」

唯「了解だよ」

夏「琴吹さん、本当に助かりました」

紬「いえいえ〜」

唯「お姉さんすっごく似合ってるよ」

レイコ「そうか」

紬「それじゃ後で〜」

唯「まったね〜」

夏目「・・・」

レイコ「新しい服は変な匂いするな」クンクン

夏目「新品の匂いなんだよ」

レイコ「ふむ」クンクン

夏目「兼六園に行こうか、先生」

レイコ「うむ」

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:28:19.89 ID:TF8fCUyZo


―――――兼六園

レイコ「・・・」

夏目「リラックスできるのか・・・先生?」

レイコ「・・・あぁ」

夏目「・・・その服ってさ、妖姿の先生に化けても大丈夫だよな?」

レイコ「さぁな・・・」

夏目「失くさないでくれよ?」

レイコ「試してみるか」

どろん

斑「フゥ・・・」

夏目「少しのんびりしていようか、先生」

斑「いいだろう」


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:30:29.91 ID:TF8fCUyZo


―――――金沢駅


夏目「のんびりしすぎたな」

レイコ「もう出発か」

夏目「先生って楽しんでいたのか・・・?」

レイコ「酒も料理もおいしかったからな」

夏目「・・・」

レイコ「海でも遊べたし、庭で一休みできた」

夏目「・・・そうなのか」

レイコ「人ごみは嫌だからあれくらいが丁度いい」

夏目「それじゃこれからもそういう場所を回ろうか」

レイコ「うむ」

「あ、あのぉ・・・」

夏目「は、はい・・・?」

「ひ、人とはぐれてしまって・・・ですね・・・。わたし・・・ここに来たの初めてで・・・迷ってしまいました」

レイコ「・・・」

「それで・・・その・・・、券売機はどこでしょうか」

夏目「えっと・・・改札口に行けばいいと思うけど」

「そこが分からなくて・・・。案内板みても要領得なくて・・・」

レイコ「どんくさいヤツめ」

「はぅ」グサッ

夏目「こら、先生」

「・・・教師ですか?」

レイコ「似たようなもんだ」

「・・・」

夏目「一人できたの?」

「いえ、アパートの住人とです・・・」

夏目「・・・そう。改札口でいいの?」

「は、はい。多分みんなもいると思いますので!」

夏目(それにしても小さい子だな・・・中学2年生くらいかな)
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:31:22.93 ID:TF8fCUyZo

「宮ちゃんに携帯電話渡したっきりなのが運のつき・・・」ハァ

レイコ「なにかと面倒に巻き込まれるな、おまえは」

夏目「うるさいぞ、先生」

「・・・」ションボリ

夏目「・・・すぐ見つかるから、元気出して」

「・・・はい」

「おーい! ゆの〜!」

ゆの「あ、宮ちゃん!」パァァ

宮子「迷子になっちゃダメじゃない」

ゆの「ごめんねぇ・・・」

夏目「お役目御免かな」

ゆの「は、はい! すいませんでした」

宮子「うちの子がお世話になりました」

ゆの「もう、宮ちゃん」

宮子「えっへへ、沙英さん達も改札口でまってるはずだから」

ゆの「そっか・・・あれ、わたしのケータイは?」

宮子「ヒロさんに預けてあるよ」

ゆの「どうして?」

宮子「ゆのに電話しようと思ったけど、あたし操作できないから」

ゆの「あ、そっか。宮ちゃんケータイ持ってないもんね」

レイコ「・・・ふぁ」

夏目「それじゃあね」

ゆの「ありがとうございました!」

宮子「ところで改札口ってどこ?」

ゆの「よろしくおねがいします!」

夏目「はは・・・」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:33:42.88 ID:TF8fCUyZo


「沙英〜! こっちよ〜」

沙英「よかった。ヒロ、・・・あれ、夏目は?」

ヒロ「夏目さんならお手洗いよ」

沙英「そっか。ゆのが迷子になって、宮子ともはぐれてしまったよ」

ヒロ「ゆのさんのケータイ、ここにあるから連絡取れないわね」

沙英「さっき、宮子はゆのに電話しようとしたよね」

ヒロ「えぇ、ゆのさんのケータイからね」

沙英「まぁ・・・持っていないから分からんでもないけど」

ヒロ「そうねぇ・・・」

沙英「ヒロ、あの二人って・・・」

ヒロ「あ、よかったぁ〜」


夏目「え・・・二人は同級生だったんだ・・・」

ゆの「そうですよ・・・?」

宮子「高校2年生なのだ」

夏目「・・・」シーン

ゆの「?」

宮子「ゆのっちが小さいから驚いたんだよ〜」

ゆの「ちっちゃくないよ!」

レイコ「あっちに鏡があるぞ」

宮子「あはは〜」

ゆの「うぅー・・・」


唯「あれは貴志くんですな」

紬「まぁ、楽しそうね〜」

律「まったくだな」

沙英「あの男の子と女性の方は、知り合いですか?」

紬「は、はい」

ヒロ「側にいる二人は私たちの連れなんです」

唯「そうであったか」

律「小さい子は夏目の三つ下の妹みたいな感じだな」

沙英「え、夏目・・・?」

紬「男の子の方です」

沙英「あ、あぁ・・・びっくりした」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:34:52.87 ID:TF8fCUyZo

ヒロ「・・・夏目さんはおいくつですか?」

律「確か・・・、私たちの一つ下だな。高校2年生だ」

ヒロ沙英「「 中学生に見られてるんだ・・・ 」」

紬「?」

ゆの「沙英さーん!」

沙英「よかった。発車時間に余裕を持って乗れるよ」

ヒロ「二人とも見つかってよかったぁ〜」

紬「よかったですね〜」

宮子「ハントンライス食べ放題ですか!?」

レイコ「あぁ。駅前にあるぞ」

宮子「ヒロさん!」

ヒロ「どうして私にフルのかなぁ〜?」

夏目「食べ放題じゃないよ、20分で食べ切れたらタダだぞ、先生」

レイコ「似たようなもんだ」

律「全然ちげえ・・・って、その服いいな」

紬「うふふ」

宮子「行こうか、ゆのっち」

ゆの「これから帰るんだから、乗り遅れちゃうよ」

宮子「え〜! せっかくのタダ飯がっ!」

沙英「だから、タダじゃないって」

宮子「・・・」グゥー

紬「苺大福買ってきましたからベンチに座って食べませんか?」

宮子「ごちそうになります!」

ヒロ「まぁ〜」

唯「発車まで時間あるから平気だよね」

律「えーと、時計はっと・・・・・・うん、大丈夫だな」

ゆの「沙英さん、私たちの時間って・・・」

沙英「切符は買ってあるから大丈夫、余裕もあるよ」

ゆの「やったぁ」

夏目「・・・」

レイコ「私たちは先に乗ってるか」

夏目「そうだな・・・って、苺大福に食いつくと思っていたんだけど」

レイコ「苺大福?」

紬「じゃじゃーん」

宮子「・・・」ジュルリ

レイコ「・・・」ジュルリ
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:36:00.54 ID:TF8fCUyZo

「沙英〜!」キラキラ

律「ん? ・・・嬉しそうに走ってくるあの人は誰だ?」

沙英「夏目です」

夏目「人が多い!?」

夏目「え、夏目?」

夏目「はい、そうですが?」

夏目「そうですか・・・」

夏目「・・・?」

律「混乱してんな」ウシシ

ゆの「あのヴェガに乗っているんですか?」

紬「そうよ〜」

ゆの「羨ましいです!」キラキラ

沙英「へぇ〜、あのヴェガにねぇ」

宮子「おいしい〜」モグモグ

ヒロ「甘くておいしい〜」モグモグ

沙英「ヒロまで・・・」

レイコ「うむ、もうここに思い残す事はなくなった」モグモグ

夏目(先生は満喫できたみたいだな)

律「うめえ」モグモグ

唯「北海道からここ、金沢まできたんさ」

ゆの「山梨は通りましたか!?」

唯「いいえ」

ゆの「・・・あ、そうですか」

宮子「ゆのっちの故郷は通らなかったんだね」モグモグ

夏目「よ、よかったらこれもどうぞ」

紬「まぁ、ありがとうございます」

夏目「い、いいのよ。・・・お、おいしいわね、沙英」モグモグ

沙英「お土産用に買ってたのに、今食べるんだ」

夏目「べっ、別にいいでしょ!」

沙英「うん。みんなで食べるのもいいよね」

夏目「そっ、そうよっ」

夏目「・・・」

ゆの「なずなちゃんと乃莉ちゃんも来られたらよかったのにね」

宮子「もぐもぐ」ウンウン

ヒロ「そうねぇ〜、都合が合わなかったからしょうがないけど」

沙英「ちょっともったいなかったね」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:37:45.98 ID:TF8fCUyZo

夏目「観光に来たの?」

宮子「21世紀美術館に来たんだよー。もう一個もーらいっ」

唯「あー! 私の分が〜!」

宮子「あ、すいません」

律「食べていいよ」

唯「りっちゃん!?」

宮子「遠慮なく」ハムッ

律「澪が買ってくるから私たちは買わなくていいってメールがあった」

紬「そうそう。買ってしまった分は食べちゃいましょう」

夏目(だから提供したのか・・・。いい人だな)

ヒロ「沙英、飲み物買ってくるわね」

沙英「うん」

宮子「もぐもぐ、おいしぃ〜!」

律「おいしそうに食べるなこの子・・・」

ゆの「宮ちゃんは食べる才能もありますから」

沙英「あはは」

宮子「しあわせ〜」ホンワカ

紬「まぁ・・・。勧誘したときの唯ちゃんを思い出したわ」

唯「こんなに幸せそうだったの?」

夏目「沙英、口にあんこが・・・付いてるわよ・・・」

沙英「え・・・?」

夏目「しょ、しょうがないわね」

ゆの「じっとしててくださいね」フキフキ

沙英「ありがと、ゆの」

ゆの「いえいえ」ニコニコ

夏目「」ガーン

紬「・・・」キラキラキラキラ

夏目(よく分からない人間模様・・・)

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:38:29.91 ID:TF8fCUyZo

レイコ「ごちそうになったな」

紬「いえいえ」

レイコ「行くぞ、夏目」

夏目「あ、あぁ・・・」

ゆの「あ、ありがとうございました!」

夏目「・・・ううん。それじゃね」

スタスタ

ゆの「・・・」

律「夏目って、なんかぎこちないな」

唯「そうかな?」

律「なんていうか、愛ちゃんと被る」

紬「・・・」

ヒロ「これ、お礼です。みなさんで飲んでくださいね」

ガジャガジャ

律「うぉ」

紬「まぁ、ありがとうございます」

ヒロ「おいしかったです」ニコニコ

紬「もっと時間があったら展望車でお茶会ができましたのに」

ヒロ「小さなお茶会・・・。残念ですね」

宮子「おぉー、残念だよぉー」

ゆの「・・・うん」

沙英「展望車?」

唯「ヴェガの最後尾だよ」

宮子「なぁに、それ」モグモグ

沙英「今話題になってる列車だよ」

ゆの「昨日テレビに出たよ、宮ちゃん」

宮子「あぁー・・・、もしかして」

夏目「超特急ヴェガ?」

紬「超特急ヴェガです」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:40:13.32 ID:TF8fCUyZo

夏目「あ、秀輝・・・」

秀輝「見てたぞ、夏目」

夏目「なにを・・・?」

秀輝「周りは女の子ばっかりで居心地悪そうな顔をだよ」ニヤリ

夏目「な・・・」

秀輝「うらやましいな」

夏目「なら、秀輝も声をかければいいだろ」

秀輝「俺もあんな顔になるだろ? 勘弁してくれ」プクク

夏目「・・・」

秀輝「冗談は置いておいて、どうだった? 金沢の名所は」

夏目「・・・うん」

秀輝「楽しくなかったのか?」

夏目「いや、楽しかったよ」

秀輝「・・・」

レイコ「満足だ」

秀輝「・・・」

レイコ「どの列車だ?」

夏目「えっと・・・」

秀輝「あのさ、夏目」

ドンッ

秀輝「おっと?」

「・・・」

スタスタ

夏目「大丈夫か・・・?」

秀輝「あの人にぶつかっただけだよ」

夏目「そうか・・・。さっき何か言いかけたよな?」

秀輝「いや、後で話すわ」チラッ

レイコ「・・・ふぁ」

夏目(先生についてか・・・?)
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:41:32.47 ID:TF8fCUyZo

愛「あ、秀輝さんと夏目さん・・・」

秀輝「愛ちゃんも今戻ったんだ。金沢どうだった?」

愛「は、はい。楽しかったです」

pipipipipipi

愛「あ、すいません・・・」

ピッ

愛「・・・はい、もしもし」

夏目「先に乗ってるから」

秀輝「はいよ」

レイコ「眠い・・・」

愛「お、お母さん!?」

夏目「?」

秀輝「?」

愛「ッ!」

ピッ

秀輝「ちょっと・・・愛ちゃん?」

愛「・・・っ」

夏目「・・・」

レイコ「乗らないのか?」

夏目「先生は先に個室に行っててくれ」

レイコ「鍵をよこせ」

夏目「あ、あぁ・・・。部屋番号覚えてるよな」

レイコ「・・・大丈夫だ」

スタスタ

愛「わ、わたしも失礼しますっ」

タッタッ

秀輝「足元見て!」

愛「きゃっ」

スッテーン

愛「いたたたた・・・」

夏目(すごい動揺してるな・・・)

秀輝「掴って」スッ

愛「は、はい・・・」

ギュ

秀輝「よっ」グイッ

愛「とっと・・・」

秀輝「・・・」

愛「あ・・・」カァ

夏目(邪魔だったみたいだな・・・)クルッ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:43:03.73 ID:TF8fCUyZo

秀輝「愛ちゃんさ、なにか隠してるよね」

夏目「・・・?」

愛「・・・」

秀輝「青森から離れていくたびに表情が暗くなっててさ」

愛「・・・っ!」

秀輝「俺に言う必要はないよ。でもさ、・・・律がいるでしょ」

愛「!」

秀輝「律は愛ちゃんのこと、とても気にかけてるよ」

愛「・・・ッ」

秀輝「ごめん」

愛「・・・し、しつれいしますっ」グスッ

テッテッテ

夏目「・・・」

秀輝「はぁ・・・またやってしまった・・・」

夏目「よく分からないけど、秀輝の言い方は悪くなかった気がする」

秀輝「夏目ってお姉さんと何かあるのか?」

夏目「ッ!?」

秀輝「顔はとても似てるのに、他人行儀というか、家族ではない感がある
   そのせいで観光も楽しめてない様に感じる」

夏目「・・・っ」

秀輝「すまんな、そういう事だよ」

夏目「・・・」

秀輝「順序を踏まずにすぐ人の心に踏み込んでしまう。・・・やり方が分からないから」

夏目「・・・」

秀輝「挙句に人頼みだからな・・・」

夏目「・・・」

秀輝「悪い。夏目にこんなこと言うなんてどうかしてるわ・・・。今日はもう寝よう・・・」

夏目「・・・・・・疲れてるのか?」

秀輝「あぁ・・・。片町で小麦たちの手伝いして、武家屋敷で自転車こいで・・・つかれた」

夏目「・・・」

律「なにしてんだー?」

唯「乗らないのー?」

紬「あ、夏目さん。ヒロさんから飲み物いただきましたよ。どうぞ」

夏目「え?」

律「私らでは飲めないから飲んでくれ」

唯「あまーい、ストロベリー☆ロマンスだよ」

秀輝「うわ・・・。缶をみただけで胸焼けがしてきた」

律「じゃあ飲め!」ポイッ

秀輝「っと、ひでえな・・・胸焼けしてるのに」

律「厚意を無駄にすんなよ」ウシシ
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:44:32.77 ID:TF8fCUyZo

秀輝「・・・」

紬「?」

夏目「ありがとうございます」

唯「ん?」

律「え?」

秀輝「ちょっと謝ってくるわ」

スタスタ

夏目「・・・」

律「誰に?」

夏目「松浦さんに・・・ですね」

唯「愛ちゃん?」

紬「まぁ・・・」

律「・・・」

ゆの「夏目さーん!」

宮子「なっちゃーん!」

律「誰だよなっちゃんって・・・?」

唯「夏目貴志くんですな」

夏目「?」

ゆの「あのっ、ありがとうございました!」ペコリ

夏目「それをわざわざ・・・?」

宮子「ゆのっちが気にしてたよ〜?」

ゆの「み、宮ちゃん!」

紬「・・・」

夏目「?」

宮子「居心地が悪そうな顔してたって」

ゆの「みやちゃ〜ん」

唯「なんと・・・」

夏目「・・・あれは、戸惑っていただけだよ。男がおれ一人だったから」

ゆの「・・・」

夏目「それだけだから」

ゆの「・・・」

紬「夏目さんがいたから、みんなで苺大福を食べることができたのよね〜」

宮子「そうそう。ゆのっちがなっちゃんに声をかけたから、あの時間が生まれたのさ」

ゆの「えへへ」

夏目「・・・」

唯「春ですな」

紬「春ですね・・・」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:46:45.34 ID:TF8fCUyZo

律「なにを言ってるんだ、夏だぞ」

唯「りっちゃんはお子様ですな」

律「なんだと!? そっちの春かい、ゆの!」

ゆの「え・・・?」

律「ゆの、お父さんに相談してみなさい」

唯「りっちゃん父さんだ」

宮子「こっちにも相談してみなさい、ゆの」ガクガク

唯「宮子おじいちゃんだ」

夏目(リアクションに困る・・・)

ゆの「夏目さん、楽しかったですよ」

夏目「・・・そうか。よかった」

ゆの「お元気で」

夏目「あぁ、妙な縁だったけど、おれも楽しかったよ」

ゆの「それでは。・・・行こう、宮ちゃん!」

宮子「おー、みなさんお元気でー!」

唯「バイバーイ!」

律「じゃっあなー!」

紬「じゃあね〜」

夏目(縁が巡ってくるな・・・)

さわ子「あら、まだこんなところに居たのね」

みらい「乗らないんですか?」

唯「おっとぉ」

夏目「それじゃ、後で」

紬「はいは〜い」

さわ子「みらいちゃんはこのままヴェガに乗れるのよね?」

みらい「車掌さんに確認を取りました」

律「そっか! よかったよかった!」

唯「よかったよ!」

律「そろそろライブの詳細を教えてくれよ」

唯「そうだそうだ!」

紬「そうね〜」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:48:22.81 ID:TF8fCUyZo

prrrrrrrrrrrr

夏目「発車か・・・。先生はもう寝てるのかな」

ガタン ゴトン

夏目「次は名古屋か・・・」

ガチャッ

夏目「あれ?」

ガチャガチャッ

夏目「閉まってる・・・」

夏目(鍵をかけて寝てるのかな・・・)

夏目「いや、そんな器用さをもっていないはず・・・」

さとみ「あら、貴志くん」

夏目「さとみさん・・・」

さとみ「どうしたの、こんなところで」

夏目「あ・・・えっと・・・。先生が鍵をかけて寝ちゃっているみたいで・・・」

さとみ「・・・ここって貴志くんの部屋よね?」

夏目「・・・はい」

さとみ「本当にお姉さんと仲がいいのね・・・」

夏目(その目はなんだか・・・引いてるような・・・)

さとみ「貴志くんって・・・シスコン?」

夏目「」グサッ

さとみ「悪いとは言ってないのよ? ・・・ただ、面倒見がいいっていうか・・・」

夏目「・・・」グッタリ

さとみ「構いすぎなんじゃないかな・・・って・・・」

夏目「・・・」

さとみ「あ、ご、ごめんね。そ、それじゃ」

スタスタ

夏目(傍目から見たらそう思われるのが自然かな・・・。秀輝にもそう見られているのかな)

ザァーーーーー

夏目(雨が降り出してきたか・・・)

コンコン

夏目「せんせー」

コンコン

夏目「いるのかー?」

「こんばんわぁ〜」

夏目「?」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:50:50.57 ID:TF8fCUyZo

「どうもぉー。一日車掌の千秋でぇーす」

夏目「一日車掌? ・・・飯山のはず・・・」

千秋「飯山ぁ? あー、いたいたそんな子」ゲラゲラ

夏目(もしかして・・・妖か? ・・・憑かれたか)

千秋「あの子わぁ、事務所の方針に逆らってぇ、クビになりましたぁ・・・なんて」ゲラゲラ

夏目(人だったか・・・。芸能界から姿を消すかもしれないって・・・言ってたな・・・)

千秋「ちょっとぉ、聞いてるのぉ?」

夏目「あ、えっと・・・。何か用でも・・・」

千秋「あるわけないでしょぉ? 私はトップアイドル目指してるのぉ。
    あんたなんかに構ってられないのぉ」

夏目「・・・」

エレナ「・・・」ジー

小麦「それではどうして声をかけたのでしょーか! インタビューしてみましょう!」

千秋「なにぃ? ちょっと! 勝手に私を撮らないでよ!」

エレナ「ソレナラ、向こうにいるカメラマンにもこっちに出てくるように言うデスネ」

夏目「え・・・?」

千秋「ちっ」

小麦「インタビューするなら、ちゃんと正面から撮らないとルール違反だよ」

夏目「???」

将人「行くぞ千秋」

千秋「はぁ〜い」

テッテッテ

夏目「なにが起こったんですか・・・?」

エレナ「ナツメさんのビックリ表情を撮影する気だったのでショウ」

小麦「あの子一応売り出しアイドルだからね。夏目くんのリアクションが普通で傷ついたんじゃない」プクク

夏目「撮られていたのか・・・。助かりました」

エレナ「イエイエ、この状況に気付いたのはミオさんですネ」

夏目「秋山さん・・・?」

小麦「澪ちゃーん、もうカメラいないよー!」

澪「ほ、ほんとに?」コソコソ

夏目「どうしてコソコソとしているんですか?」

エレナ「撮られるのハズカシイらしいですワ」ジー

澪「ひゃっ」サッ

小麦「知っててカメラ向けるなんて・・・」

エレナ「アッハッハー。・・・録画してないネ」

澪「・・・」ジー

夏目「疑ってるのかな・・・」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:53:18.98 ID:TF8fCUyZo

レイコ「なにをしているんだ」

澪「ヒァッ」ササッ

エレナ「おっとォ?」

澪「」ガクガク

夏目「後ろから威圧的な声をかけるなよ・・・。先生、どこ行ってたんだ」

レイコ「車掌と話をしていた」

夏目(仲良くなってたのか・・・)

エレナ「それでワ、金沢の編集作業があるので失礼するネ」

小麦「また後でねー」フリフリ

バタン

澪「あ・・・」

レイコ「開けろ夏目」

夏目「鍵渡したはずだよな」

レイコ「・・・」

コトン

ガチャ

レイコ「少し寝る」

バタン

夏目(おれを置いて入ったな・・・)

澪「・・・」

夏目「・・・」

澪「・・・えっと」

夏目「兼六園どうでした?」

澪「あ・・・うん。楽しかったよ・・・。入れ違いになったから一緒に観て周りたかったな」

夏目「そうですね・・・。それって、苺大福ですよね」

澪「そうだけど・・・どうして分かったんだ?」

夏目「琴吹さんも買っていて、駅のベンチで食べたんです」

澪「そうか・・・」

夏目「会ったばかりの人とも一緒に・・・。不思議な時間でした」

澪「・・・うん」

夏目「・・・」

澪「分かる。むぎはそういう人だから」

夏目「・・・?」

澪「それじゃ」

夏目「はい」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:53:51.49 ID:TF8fCUyZo

夏目(そういう人・・・か。・・・先生の服も選んでくれた)

車掌「貴志さん、どうかなさいましたか?」

夏目「いえ・・・」

車掌「それでは」ニコニコ

夏目「あ、車掌さん」

車掌「はい、なんでしょう?」

夏目「先生とどんな話をしていたんですか?」

車掌「名古屋にも兼六園のような場所はあるのか、と」

夏目「気に入ってたんだな・・・兼六園・・・」

車掌「東山動植物公園をお勧めしましたよ」

夏目「植物園と動物園があるんですか?」

車掌「はい」ニコニコ

夏目(落ち着くかもしれないな。そこへ行くか・・・)

車掌「失礼します」ペコリ

夏目「・・・」

ガチャ

先生「ぷー、ぷー」

夏目「おれも少し寝よう・・・」

バタン
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:54:44.82 ID:TF8fCUyZo



ピンポンパンポーン

夏目「・・・ん、車内放送・・・?」

先生「ぷー」

『みなさんこんばんわ〜』

夏目「この声は・・・琴吹さん・・・?」

紬『私たちの都合で大変申し訳ないのですが、しばらく展望車を利用させていただきます〜』

夏目「ふぁ・・・。結構寝てしまったな」

紬『ライブの練習ですが、もしよろしかったら見学にいらしてくださいね〜。それでは失礼しま〜す』

プツッ

夏目「・・・ライブ?」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「喉渇いたな・・・。先生の分も買ってくるか・・・」

ガチャ

バタン

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:56:42.61 ID:TF8fCUyZo

店員「いらっしゃいませぇ」

夏目「お茶とオレンジをください」

店員「ありがとうございますぅ」

夏目「あれは・・・なんですか?」

店員「え? ・・・あぁ、新聞ですよ。放課後ティータイムが名古屋でライブを行いますのでぇ」

夏目「へぇ・・・」

店員「どうぞ」

夏目「どうも」

店員「あ、そういえばお客さん?」

夏目「?」

店員「さとみさんとぉ・・・」

夏目「さとみさん?」

店員「すっごく、仲良しさんですよねぇ」

夏目「いえ・・・そんな事は・・・」

店員「そうですかぁ?」

夏目「・・・」

紬「こんばんは〜」

店員「いらっしゃいませぇ」

夏目「・・・」

紬「名古屋の観光ガイドを下さい」

店員「少々お待ちくださいませぇ」

夏目「あ、おれも一つ」

店員「はぁーい」

紬「名古屋でどこへ行くか決まりました?」

夏目「いえ・・・」

車掌「うふふ、観光ガイドを手に入れてから行き先を考えましょう」ニコニコ

紬「あら・・・。気が早かったみたいね」テレテレ

夏目「ふふ」

車掌「・・・」

店員「そういえば、先ほど律さんが購入されていきましたよ」

紬「あらら」

車掌「二つは要らないですね」ニコニコ

紬「そうですね」ニコニコ

夏目(面白い人だな・・・)

車掌「それでは行きましょうか」

紬「はい。それでは〜」

夏目「・・・」

店員「どうぞ。観光ガイドですぅ」

夏目「どうも・・・」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 13:57:46.46 ID:TF8fCUyZo

ガチャ

先生「・・・ん?」

夏目「・・・ふぅ」

先生「おい夏目、喉が・・・気が利くではないか」

夏目「お茶でいいよな」

先生「分かっとるではないか」ゴクゴク

夏目「・・・そういえば、貰ったヤツまだ飲んでなかったな」ゴソゴソ

先生「ぷふぁー。いい茶葉を使用してるわい」

夏目「ペットボトルで分かるのか、先生」

先生「お、それはなんだ?」

夏目「もらい物だけど」

先生「よこせっ」

夏目「・・・」

プシッ

先生「いただきまーす」ゴクゴク

夏目「ストロベリー☆ロマンス・・・甘そうだな」

先生「あっまッ! なんだこれは!」

夏目「あはは」

先生「こんなの飲めるか!」

夏目「ちゃんと飲まないと失礼だぞ」

先生「・・・胸が焼けるようだ」

夏目「ちょっと飲んでみる」ゴクゴク

先生「おちゃーっ」

夏目「・・・う・・・胸が・・・」

先生「ごくごく」

夏目「あ、こら! 全部飲むな!」

先生「おまえの分まで飲んでやる」ゴクゴク

夏目「やめろ、残せ!」

先生「やだよーん」ゴクゴク
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:20:50.57 ID:TF8fCUyZo


――――シャワー室


ピチョン ピチョン

夏目「動くな」

ゴシゴシ

先生「湯船はないのか!」

夏目「あるわけないだろ。列車の中なんだぞ」

先生「ケチくさい」

夏目「そりゃ、列車の中に湯船があったら豪勢だけどさ。シャワーかけるからな」

先生「はいよ」

夏目「ネコのクセに風呂が好きなんだからな」

ジャーー

先生「私はネコじゃないと言っておるだろ。ふぃ〜気持ちがいい〜」

夏目「・・・これでよし」

先生「・・・っ」ブルブルブルブル

夏目「その仕草をして、ネコじゃないと言われてもな」

先生「さぁーてと」

夏目「あ、バカ! ドアを開けようとするな!」

先生「ん? ・・・あぁ、人の姿にならないといけなかったな・・・めんどくさい」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:21:53.01 ID:TF8fCUyZo

夏目「違う。おれが開けるからじっとしててくれ。同じシャワー室から男女が出てきたら大騒ぎだぞ」

先生「それなら早くしろ。名古屋の名物探しをしなくてはならんからな」

夏目「よいしょ」ヒョイ

先生「みつかるなよ?」

夏目「動くなよ?」

ガチャ

夏目「よし、誰もいな――」

ゴスッ

「きゃっ」

夏目「いつっ!」

先生「であいがしらか、マヌケな二人だ」

愛「いたたたたた」ヒリヒリ

夏目「松浦さん・・・」ヒリヒリ

愛「あ、夏目さん・・・すいません・・・」

先生「なにかと運が悪いヤツだな」

愛「その猫・・・」

夏目「!」ギクッ

愛「ぬい・・・ぐるみ・・・ですか・・・?」

夏目「あー、はい! そうです!」

愛「・・・そう・・・ですか」

先生「おい、部屋に戻るぞ」

夏目「・・・」

愛「・・・失礼します」

夏目「あ、あの・・・」

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:22:35.87 ID:TF8fCUyZo


―――――1号車

愛「・・・置いてきたんですか?」

夏目「・・・はい。なにかと邪魔なので」

愛「・・・」

夏目(色々と突っ込みがある内容だけどな・・・。男がぬいぐるみと一緒にシャワー室に入っていたこととか)

愛「・・・」

夏目(それに気付かないほど落ち込んでいる・・・って事かな・・・)

愛「あの・・・話とは・・・」

夏目「発車する前に、秀輝に言われた事を気にしているのかと思って・・・」

愛「いえ・・・。それはもう・・・気にしてないんです」

夏目「・・・」

愛「悪いのは・・・全部私ですから・・・っ」

夏目「どうして・・・ですか?」

愛「私・・・なにかと・・・運が悪くて・・・嫌なんです」

夏目「・・・」

愛「私一人が被害に合うのなら我慢できます・・・だけど、それを他の人にまで」

夏目「それは・・・」

愛「気のせいなんかじゃありません・・・。律さんに迷惑をかけました・・・」

夏目「・・・」

愛「私が律さんの近くにいたから・・・風邪をひかせてしまったんです・・・」

夏目「・・・」

愛「秀輝さんにも・・・数え切れないくらい・・・っ」

夏目「田井中さんは分からないけど、秀輝は・・・迷惑とか思っていないと思う」

愛「・・・いずれ、そう思わせてしまいます」

夏目「!」

愛「いや・・・なんですっ・・・」

夏目「・・・」

愛「律さんにも、秀輝さんにそう思われるのが・・・嫌われる時が来るのが・・・っ」

夏目「・・・っ」

愛「・・・」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:23:56.16 ID:TF8fCUyZo

夏目「ひょっとして・・・さっきの電話って・・・」

愛「・・・はい。私・・・家――」

律「お、二人ともなにしてるのん?」

愛「あっ!」ビクッ

夏目「・・・」

律「なんだよ〜、こんなとこにいないでさー、展望車に」

愛「し、失礼しますっ」ガタッ

テッテッテ

律「ありゃ・・・?」

夏目「・・・」

律「あははー、邪魔しちゃったかな・・・?」

夏目「いえ・・・」

律「マジな話だったんだな。座っていい?」

夏目「どうぞ」

律「・・・愛ちゃんさ、地元が青森なんだって」

夏目「・・・そこから乗車したと」

律「聞いていたのか。・・・でさ、ヴェガが南下していく程、顔色が悪くなっているような気がする」

夏目「・・・秀輝もそう言ってました」

律「あいつも気付いていたのか・・・」

夏目「・・・」

律「言ってくれないと分からない事が増えるんだよなー」

夏目「言えない事って、結構ありますよ」

律「ほぉ・・・」

夏目「・・・」

律「聞き出すしかないかな。・・・まだ時間はあるはずだ」

夏目「・・・」

律「・・・じゃあな」

夏目「田井中さん」

律「どした?」

夏目「松浦さんは・・・」

律「・・・」

夏目「・・・いえ、なんでも・・・ないです・・・」

律「・・・。じゃ」

夏目「・・・」

律「あ、私は律でいいからさ。夏目も展望車来いよ〜」

スタスタ
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:25:59.69 ID:TF8fCUyZo

夏目「・・・」

夏目(妖との出会いと別れを繰り返しているうちに
   自分でも人になにかしてやれる事があるんじゃないかと
   そう思い始めて・・・いたのかもしれない・・・)

夏目「・・・おれも塔子さんと滋さんに迷惑かけるのやだなぁ」

さとみ「こんばんは」

夏目「!」ビクッ

さとみ「ふふ、驚かせてごめんね」

夏目「・・・」

さとみ「悪いと思っていたけど、愛さんとのやりとりをみてたわ。ここ座るわね」

夏目「・・・はい」

さとみ「彼女、自分嫌いなのよ」

夏目「・・・」

さとみ「人に迷惑をかける自分が嫌いってとこかな」

夏目(・・・おれも、妖が見えることで自分を嫌う事があった)

さとみ「・・・」

夏目(おれが変な事を言うから・・・周りの人に不安を与えてしまって・・・
   誰でもないおれ自身が悪いんだと分かっていた・・・)

さとみ「・・・・・・・・・私と一緒ね」ボソッ

夏目(嘘を言う人が嫌われるのは当然だから・・・)

さとみ「・・・」

夏目(おれと松浦さんは・・・違う・・・)

さとみ「・・・」

夏目(車窓を見てるけど・・・真っ暗でなにもみえないはず・・・考え事かな)

紬「なにを見てるの?」

夏目「琴吹さんと秋山さん・・・」

澪「・・・」

さとみ「外の景色をね、見てたの」

ザァーーーーー

紬「雨が降っていてよく見えないわね!」

澪「その前に夜だな、むぎ」

紬「あら・・・」

さとみ「ふふっ」

夏目「ふふ」

澪「・・・」

紬「岐阜に着いたら降りてみない?」

さとみ「いいわね」

澪「到着するまで話でもしようか・・・。座っていい?」

夏目「どうぞ・・・」

紬「失礼するわね」

さとみ「どうぞ」ニコニコ
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:27:13.02 ID:TF8fCUyZo

夏目「あ、秀輝・・・」

秀輝「こんばんは〜、じゃあね〜」ニヤリ

夏目「ぐっ・・・」

さとみ「含み笑いしてたわね」

紬「?」

澪「どういう意味だ?」

夏目「わ、分からないです・・・」

紬「・・・さとみさんはなにを見ていたの?」

さとみ「外の景色」

澪「真っ暗だけど・・・?」

紬「澪ちゃん・・・心で見るの」

夏目「心で?」

紬「そういう事よね、さとみさん」キラン

さとみ「そういう事・・・かな・・・?」

澪「さとみさん、合わせる必要もないよ?」

紬「澪ちゃん・・・」シクシク

夏目(・・・どうリアクションしたらいいのか・・・笑うところかな)

さとみ「むぎさん、テンションが高いみたいね」

紬「そう・・・?」

澪「そうだな、ライブに向けて気持ちが高翌揚しているって感じだ」

紬「そうね〜」

夏目「・・・」

さとみ「普通の家があるでしょ?ほら」

紬「ふむふむ・・・」ジー

澪「・・・」

夏目「・・・」

さとみ「家があって、町があって・・・。想像してたの」

紬「・・・想像?」

さとみ「例えば・・・ほら、あそこに灯りがあるでしょ?」

澪「あの家?」

さとみ「そう。・・・もし私があの家に住んでいたらどんな生活をしているのかを考えるの」

夏目「・・・」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:30:08.48 ID:TF8fCUyZo

さとみ「毎朝、あの山を見ながら自転車で通学して
    帰りは隣の店で買い物をして」

紬「日曜日には友達とバス停で待ち合わせして、町へでかけたりして〜」

さとみ「うん、そうそう。バスが一時間に一本しかないから、乗り遅れると大変だーとか言って」

澪「でも、絶対一人は遅れるんだよな」

夏目「・・・」

紬「・・・そうね」

澪「今、誰かの顔が頭に浮かんだよな、むぎ」

紬「澪ちゃんよ」

澪「私かい」

さとみ「ふふっ」

夏目「・・・」

さとみ「私は今、旅をしているから見るもの全部が特別な景色だけど」

紬「特別な景色・・・」

さとみ「そこに住んでいる人には当たり前の日常なのよね」

澪「確かにそうだな・・・」

夏目(昨日も似たような話をした・・・)

さとみ「自分の知らない人がそうやって生活しているんだと思うと嬉しくて・・・」

紬「さとみさん・・・」

澪「嬉しいって・・・?」

さとみ「自分の事を知らない人は普通に見てくれるじゃない」

澪「それって偏見が無いって事・・・? だとしたら逆じゃないかな・・・?」

さとみ「ううん。そうじゃなくて・・・特別視しないってこと」

夏目(分かる気がする・・・)

澪「よく・・・分からないな・・・」

さとみ「あ、ごめんね・・・。こんな話しちゃって・・・」

紬「・・・知らない人しか居ない場所」

さとみ「・・・うん」

夏目(おれが塔子さんに引き取られる前に出会った人たちは、最初のうちは優しいんだ
   だけど、おれが変な事を言ってしまうから・・・遠ざけてしまった・・・)

さとみ「話題を変えましょ」

夏目(おれを知らないままでいれば、普通に接してくれたはずのに・・・)
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:31:10.36 ID:TF8fCUyZo


紬「さとみさんも行ったのよね?」

さとみ「えぇ、能登半島へ行った帰りにね。よかったわよ、兼六園」ニコニコ

澪「うん・・・。よかったぁ」

夏目「緑が綺麗でした」

紬「・・・・・・そうなの」

さとみ「そうそう。今は夏で緑が多いけど、春には梅と桜が。秋には紅葉。冬には雪景色」

澪「季節によって表情が変わるんだよな・・・いい場所だった」キラキラ

夏目「うん。先生が楽しんでいたから相当いい場所なんだと思う」

紬「観光名所と云われるだけあるわね・・・」

さとみ「あら?」

紬「私・・・行ってないの」ションボリ

澪「律と行って、その後に小麦たちと・・・。昼と夕方の二回も行ってきたよ」

紬「澪ちゃん、意地悪ね」

澪「ふふっ」

紬「うふふ」

さとみ「いいわねぇ」ニコニコ

夏目「・・・」

ガタンゴトン ガタン

夏目「ホームに入りましたよ」

紬「降りましょー」

澪「体を伸ばしたいな」

さとみ「外の空気も吸いたいわね」

夏目「・・・」

プシュー

さとみ「貴志くんは降りないの?」

夏目「先生が・・・・・・」ハッ

さとみ「・・・」ジー

夏目「・・・先生が気になるので」

紬「複雑な表情ね・・・」

澪「なにがあったんだ・・・」

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:32:37.38 ID:TF8fCUyZo

ガチャ

先生「おぉ、えびフライ!」

夏目「食べ物中心だな・・・」

バタン

先生「おー戻ったか、夏目」

夏目「面白いものでも見つけた?」

先生「名物が色々あるぞ」

夏目「・・・」

先生「天むすか!」

夏目「先生・・・。松浦さんなんだけどさ」

先生「気付いたか。憑かれておるな」

夏目「やっぱりそうなのか・・・」

先生「まぁ、気にするほどのものでも無いわ。
   あの小娘が抱えている問題が解決できればそれでお終いだ」

夏目「そういうものなのか?」

先生「普通の人間に憑く妖はそんなもんだ。心の隙を好むからな」

夏目「・・・なんとか祓えないものかな」

先生「先ずは隙を埋めてからだ。何度も祓う事になるぞ」

夏目「松浦さん自身が先なのか・・・」

先生「会って間もないだろ。どうして気にかける」

夏目「これも縁だと思う」

先生「・・・」

夏目「秀輝も律さんも楽しんで欲しいのかな。先生のように、なにも考えず」

先生「考えておるわ! 次はきしめんだぞ、夏目!」

夏目「そうだな」

先生「すんなり受け取るな、気持ち悪い」

夏目「ふふ」

先生「しまった・・・!」

夏目「?」

先生「大福は食べたのに、饅頭食べ損ねたぁ!」

夏目「何事かと思ったらそれか・・・残念だったな、先生」

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:33:13.51 ID:TF8fCUyZo


prrrrrrr

先生「えっびふっらい♪」

夏目「もう出発か・・・」

プシュー

ガタン ゴトン

夏目「おれも降りてみればよかったかな」

先生「見ろ夏目! 味噌煮込みうどん!」

夏目「おいしそうだな」ペラッ

先生「おいこら、そんな本なんか読んでいないでちゃんと見ないか」プンプン

夏目「うん。おいしそうだ」

先生「見てみろ、これはどうだ」

夏目「おいしそうだ」

先生「これカバだぞ!」

夏目「へぇー、おいしそうだな」ペラッ

先生「なつめぇー!」

137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:34:48.84 ID:TF8fCUyZo


夏目(追い出されてしまった・・)

夏目「まったく・・・」

「・・・」

ドンッ

夏目「す、すいません」

「・・・」

スタスタ

夏目「・・・見かけない人だな」

秀輝「北上緑・・・。金沢駅で俺とぶつかった人だよ」

夏目「そうか・・・。どうして名前知ってるんだ?」

秀輝「まぁ、色々あってな」

夏目「ふーん・・・。北上緑・・・さんか・・・」

秀輝「愛ちゃんと話した?」

夏目「ちょっとだけ・・・」

秀輝「そうか・・・。他人に何か言ったのなら大丈夫なのかな」

夏目「いや、そこまで聞いてないよ」

秀輝「え・・・」

夏目「今は外からの声が聞こえないと思う」

秀輝「・・・」

夏目「おれでは役不足ってところかな」

秀輝「そうか・・・」

夏目「・・・」

秀輝「おまえ、いいヤツだな」

夏目「秀輝は悪いヤツな」

秀輝「なんでだよ」

夏目「さっき、笑っただろ」

秀輝「あはは、バレてた?」

夏目「少し居心地悪かったけど、話ができて楽しかったかな」

秀輝「へぇ・・・」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:35:40.50 ID:TF8fCUyZo

夏目「・・・あ」

車掌「すいません、失礼します」

秀輝「おっと、邪魔してすいません」

車掌「いえ・・・」

律「・・・」

澪「・・・」

スタスタ

夏目「どうしたんだろ・・・?」

秀輝「律と秋山さんまで、雰囲気が違ったな・・・」

夏目「車掌さんがあんなに深刻な顔をするなんて」

秀輝「余程のことだな」

夏目「・・・」

秀輝「展望車行ってみるか?」

夏目「?」

秀輝「面白いぜ」

夏目「・・・うん」

秀輝「あ、差し入れ買ってからにするか・・・。売店まで付き合ってくれ」

夏目「どうしてだ?」

秀輝「貸しを返せるかもしれないだろ」

夏目「律さんに作ったっていう・・・?」

秀輝「うん。少しずつ返済してるのさ」

夏目「律儀だな」

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:38:07.62 ID:TF8fCUyZo

みらい「あ、夏目さん・・・」

さわ子「あら、見学?」

夏目「はい・・・。どうして展望車で練習を?」

さわ子「みらいちゃんとステージに立つからよ」

唯「そうだよ!」

紬「そうよ!」

夏目「すごい意気込みですね・・・」

秀輝「緊張しないみたいだな」

さとみ「一応ステージ経験があるからね」

夏目「あれ・・・」ゴシゴシ

みらい「どうしたんですか?」

夏目「この場にあるはずの無いものが見えたので」

唯「ドラムの事?」

夏目「・・・」

秀輝「俺も乗せるの手伝ったんだ」

紬「ありがとうございます」

秀輝「それでも貸しは減らなかったんだよね」

唯「それくらいでは減らないんだよ」

秀輝「うーん・・・」

夏目「楽しんでるみたいだな」

秀輝「ん?」

夏目「貸しをどう返すか、って」

秀輝「まぁ、ね。面白いってのはある」

夏目「へぇ・・・」

さとみ「いい人ね」

秀輝「・・・そうでもないよ」

さわ子「影を落とすんじゃないわよ」

秀輝「あ・・・。俺っていい人だろ」

紬「そ、そうね」

夏目「う、うん」

唯「秀輝くんはいい人だよね」

みらい「は、はい」

さとみ「・・・ごめんね」

秀輝「空回りした・・・」

「ゆいちゃーん」

「なにかえんそうしてー」

唯「任せんしゃい!」キラン

紬「私も伴奏するわ!」

「やったー!」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:39:14.51 ID:TF8fCUyZo

夏目「・・・」

さとみ「ふふ、二人とも人気あるわね」

みらい「はい。みんなを笑顔にしています」

さわ子「合わせた演奏が出来るのは武器ね」

秀輝「さわ子先生・・・。さっき・・・律と秋山さんが・・・」

さわ子「気になる?」

秀輝「・・・」

夏目「?」

さわ子「愛ちゃんの事でちょっとね」

秀輝「そうですか・・・」

夏目「・・・」

さわ子「いいの?」

秀輝「どういう意味ですか?」

さとみ「?」

さわ子「だって・・・、あなた」

「すいませ〜ん!」

さわ子「」ササッ

さとみ「さわ子先生・・・?」

さわ子「隠れさせて!」ヒソッ

夏目「?」

「ここに先生来てませんか〜?」

秀輝「・・・」

さわ子「・・・」フルフル

秀輝「居ないよ。車掌さんに聞いてきたらどうかな、秋子ちゃん」

秋子「そうですかぁ・・・」ションボリ

トボトボ

さわ子「・・・ふぅ」

夏目「どうして隠れたんですか?」

さわ子「慕ってくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと度が過ぎるのよ・・・」フフ

さとみ「あらら」

さわ子「悪い子ではないのよね」

秀輝「それで、俺に何かいいかけましたよね?」

さわ子「なんでもないわ」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:40:24.29 ID:TF8fCUyZo

さとみ「・・・そういえば、お姉さん見かけないけど」

夏目「先生は・・・その・・・、名古屋のプランで忙しいみたいで」アセアセ

さとみ「ふーん」

夏目(さとみさんに怪しまれてる・・・)

秀輝「さとみちゃん、髪型変えたんだね」

さとみ「う・・・」

さわ子「可愛いわよ」

夏目「・・・」

さとみ「むぎさんに、ね・・・」

夏目「秋山さんも同じ髪型でしたね」

さとみ「それもむぎさんがね・・・」

秀輝「ほぉー」

夏目「・・・」


ポンポンポンポン

ジャンジャンジャンジャン

唯「き〜ら〜き〜ら〜ひ〜かる〜」

「「 お〜そ〜ら〜のほ〜し〜よ〜 」」


夏目「お遊戯会みたいですね・・・」

みらい「ふふ」

さわ子「これも練習のうちね」

夏目「それじゃ、失礼します」

秀輝「戻るのか?」

夏目「・・・うん」

さとみ「それじゃね。お姉さんによろしく」

夏目(さとみさんにはこれからもそんな目で見られるのか・・・)

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:41:42.94 ID:TF8fCUyZo

夏目(あ・・・)

澪「・・・っ」グスッ

律「しょうがないな」

澪「ごめんっ」

律「いや、謝る事じゃないけどさ」

夏目「・・・」

律「お、夏目・・・展望車行ってたのか?」

夏目「は、はい・・・」

澪「顔洗ってくるっ」

テッテッテ

律「・・・」

夏目「・・・」

律「愛ちゃんの事だけどさ、もう心配いらないぜ!」

夏目「え・・・?」

律「解決って言うわけじゃないけどさ、愛ちゃん自身も自分と向き合えたみたいだ」

夏目「あの・・・」

律「ん?」

夏目「秋山さんのため息ってそれだったんですか・・・?」

律「・・・ため息?」

夏目「はい・・・。松本から乗車したときに、すれ違いざまに聞いたので」

律「あぁ・・・。多分な」

夏目「・・・」

律「へへっ、澪は嬉しくて泣いたみたいだっ」

夏目「・・・」

律「私と澪は幼馴染なんだよ」

夏目「そうですか・・・」

律「だから、・・・なんか嬉しい」

夏目「・・・」

律「なんてなっ! じゃあな」

テッテッテ

夏目「・・・」

夏目(松浦さんの心の隙を律さんと秋山さんが埋めたのか・・・)

143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:42:39.99 ID:TF8fCUyZo


ガチャ

先生「どこへ行っていた!」

夏目「展望車」

先生「腹が減ったぞ! 天むす弁当を買ってくれ!」

夏目「どこで?」

先生「売店があったであろう」

夏目「たぶん、無いと思うけど・・・」

先生「よし」

どろん

レイコ「見てくる」

夏目「ふぅ・・・。一休みもできないのか」

144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:43:32.74 ID:TF8fCUyZo


小麦「10時から・・・登場と」カキカキ

夏目「『放課後ティータイムが名古屋城でライブ! 10時から登場!』」

小麦「あ、夏目くん」

夏目「名古屋城でライブするんだ」

小麦「そう、名前も決まったよ〜。HTTF!」

夏目「F?」

小麦「フューチャーのFだよー」

夏目「みらいの・・・F・・・」

小麦「そういうこと〜」

レイコ「おい、天むす弁当をくれ」

店員「申し訳ありません、取り扱っていないですぅ」

レイコ「なんだと!」

夏目「これから到着する名古屋の名物なんだから、当然ですよね・・・」

小麦「あはははっ」

店員「明日のお昼には入荷できますよぉ」

レイコ「今食べたいんだ」

店員「そうですかぁ」

小麦「到着したら駅の売店で・・・って、12時着だからなぁ」

夏目「だってさ、諦めよう」

小麦「駅のお店って開いてるかな?」

店員「うーん・・・。閉まってるかもしれませんねぇ」

小麦「だよねぇ」

レイコ「食べられないと分かるとどうしても食べたくなる」

小麦「うんうん、あるよねー」

夏目「この記事って、伊東さんが書いたんですか?」

小麦「小麦でいいよ〜。そうだよ」

夏目「展望車のライブ記事も読みましたけど、面白かったです」

小麦「ほんとっ!? ありがとー!」

レイコ「他に弁当はないのか?」

店員「あまり仕入れていないので、すぐ売り切れになってしまうんですぅ」

レイコ「・・・」イライラ

夏目「個室に戻ろう」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:44:53.61 ID:TF8fCUyZo


レイコ「・・・」イライラ

夏目「しょうがない、駅で探してみるか」

レイコ「よし」

どろん

先生「行くぞ夏目!」

夏目「どうしてニャンコ姿に戻るんだよ」

先生「気にするな」

夏目「ひょっとして、人の姿を維持するのって疲れるのか?」

先生「ずっとはな。慣れないからめんどうなだけだが」

夏目「そうか・・・」

先生「見つからなければいいだけだろ。容易い」

ガタン ゴトン

夏目「っと・・・そろそろ着くな」

先生「ダッシュだぞ」

夏目「この時間ならホームに人もいないだろうから・・・大丈夫だよな・・・」

先生「むほほ・・・えびフライ弁当〜」

夏目「天むすじゃなかったか・・・?」

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:46:21.95 ID:TF8fCUyZo


ガタン ゴトン

プシュー

先生「とぉっ」ピョン

夏目「こらっ!」

先生「大丈夫だ、人気は無いから・・・あ」

「・・・」

先生「・・・シマッタ」

夏目「!」

「生意気そうなネコ・・・」

先生「にゃんだと!?」

夏目「ぬ、ぬいぐるみですよ」ダキッ

「今、走って来たような・・・」

夏目「それはギター?」

「そうです。ギターですよ・・・ムスタング・・・」

「これが特急ヴェガなの」

先生「なんだコイツらは・・・」

夏目「先生、はやく人の姿に」ヒソッ

先生「やれやれ」



「――あずさちゃん」

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 14:55:31.94 ID:TF8fCUyZo

続きは夜になります。
読んでくれた方ありがとうございました!


確かに混ぜすぎですねw
ネタバレになりますが、とある作品とのクロスがこの物語の要になっています
葛葉ライドウ
これを混ぜるくらいなら、と他の作品も混ぜてみました

夏目友人帳 × けいおん × お嬢様特急  × α

α=(GA 芸術科アートデザインクラス+ひだまりスケッチ)
ですね。他にも出てきます・・・。
なにかしら役目を持たせているので、取ってつけた風にはならないと、思っています

この区切りは一応意味を持たせてみました
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(兵庫県) [sage]:2011/12/01(木) 15:56:37.44 ID:/QGrE+6vo
おつ

夏目はニャンコ先生バッグに詰めてタキと乗るかと思ったwwww
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/12/01(木) 16:00:41.86 ID:FhSrPn/AO
乙です
賑やかで良いなあ
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) :2011/12/01(木) 16:44:35.02 ID:gg+8NCFDO
お嬢様特急とはゴクリッ
しかも色恋沙汰には縁遠い夏目が主人公的なポジションということは、そういうことを期待していいんですか?
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 22:51:31.49 ID:TF8fCUyZo

「――あずさちゃん」


梓「あ・・・」

「・・・」

梓「むぎ・・・先輩・・・」

紬「・・・?」

梓「・・・っ」

紬「どうしたの?」

梓「いえ、なんだか・・・」

紬「どうして・・・寂しそうな顔をしてるの?」

梓「なんだか・・・胸が一杯になってしまって・・・」ホロリ

紬「・・・」

梓「名前を呼んでくれた事が・・・どうしてか、嬉しいんですっ」ボロボロ

紬「じっとしててね」フキフキ

梓「・・・っ」グスッ

紬「・・・これでよし、ね」ニコニコ

梓「〜ッ!」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 22:53:04.08 ID:TF8fCUyZo

「まるで長い時間を越えて出会った二人のようなの」

夏目「・・・」

梓「えへへ」

紬「うふふ」

レイコ「・・・」

「・・・あふぅ」

梓「どうして降りてきたんですか?」

紬「展望車から見えたのよ。ギターを背負ったあずさちゃんの姿をね」ニコニコ

梓「そうですか」

夏目「「 ・・・アズサ? 」」

紬「同じ学校に通う、後輩の中野梓ちゃん」

「同じ名前でビックリしたの」

梓「どうも・・・。この人たちも乗車しているんですね」

紬「夏目さんたちはそうだけど・・・」

「私は乗らないよ」

紬「あずさちゃんの知り合いじゃないのね」

梓「はい」

レイコ「夏目、行ってくるからな」

夏目「いや、先生はここに居てくれ。おれが見てくるから」

レイコ「急いでくれよ」

夏目「分かってる」

スタスタ

紬「夏目さんはどちらへ?」

レイコ「私の弁当を買いにだ」

紬「まぁ・・・」

「美希もお腹空いたの」

レイコ「天むす弁当をな」

美希「むすって、おむすび?」

レイコ「そうだぞ」

美希「食べたいの!」

レイコ「やらん」

美希「ケチ」

レイコ「なんとでも言え」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 22:54:44.17 ID:TF8fCUyZo

紬「うふふ。それじゃ待っててね、あずさちゃん」

梓「?」

紬「展望車でお茶会を開くの。その時にみんなを驚かせましょう」

梓「いいですね! って事は紅茶を用意するんですね、手伝います!」

紬「一人で平気よ、お喋りしてて〜」シャランラ

梓「・・・はぁ」

美希「どうしてため息を吐くの?」

梓「優しくて、参ってしまいます」

美希「へんなのー」

梓「って、あなた誰ですか」

美希「今人気上昇中のアイドル、星井美希だよ☆」

梓「あなたは?」

レイコ「夏目の・・・・・・用心棒だ」

梓「用心棒?」

美希「アイドルって所に食いつくとこなの☆」

梓「アイドルに興味は」

「ちょっと美希ー!」

美希「あ、律子・・・さん!」

律子「置いていかないでよ・・・って、あずささんたちは一緒じゃないの?」

美希「一緒じゃないよ?」

律子「うわ・・・はぐれた・・・」

梓「あっ! 秋月律子!」

律子「そうです・・・けど?」

梓「東京は夜の七時が好きでした!」

律子「はは・・・過去形なのね」

レイコ「それはおいしいのか?」

梓「食べ物じゃないですよ、音楽です」

律子「その曲を気に入ってくれるなんて、結構コアなのね」

梓「声が好きでした」

律子「うん・・・過去形ね・・・」

美希「じゃあじゃあ、ふるふるフューチャーも聞いてくれたよね!?」

梓「・・・」シーン

美希「聞いてないの? 時代遅れなの」

梓「でも、りっちゃんさんは引退したはずではなかったですか?」

律子「うん。二年前にね・・・。今はプロデュース側に回っているわ」

梓「そうなんですか」

美希「無視はダメなの!」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 22:56:25.80 ID:TF8fCUyZo

レイコ「・・・遅いな、座って待つか」

スタスタ

律子「・・・あの人、中々の逸材ね」キラン

梓「・・・」

美希「このチビネコちゃん失礼極まりないの」

梓「チビネコ・・・?」キョロキョロ

美希「あなたの事を指しているんだよ?」

梓「・・・フッ」

美希「鼻で笑われたの!」

律子「美希を軽くあしらうなんて・・・」

梓「むぎ先輩まだかな」

美希「むぅ・・・全然会話にならないの」

律子「あなたもヴェガに乗ってるの?」

梓「そうですよ」

律子「それじゃあ・・・。飯山みらいを知ってるわね?」

梓「はい。東京駅でみかけました」

律子「?」

梓「私ここから再乗車するので、みらいの事はよく知らないんです
  唯先輩と一緒に居るから悪い子ではないと分かりますけど・・・」

律子「・・・そう」

美希「みらいって誰なの?」

律子「ちょっとね・・・」

「律子さ〜ん」

「りっちゃーん」

律子「よかった・・・。一緒にいたんだ」

美希「見つけるの遅いの」

「ミキミキが走って行っちゃうからだよぉ」

「よかったぁ」

律子「真美とあずささん、どこへ行ってたんですか?」

あずさ「ちょっとお買い物を〜」

真美「お腹すいちゃって」

梓「むぎ先輩まだかな」キラキラ

美希「これだけのアイドルを無視するなんて、いい度胸なの」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 22:58:30.59 ID:TF8fCUyZo

夏目「・・・わるい、先生」

レイコ「どうして手ぶらなんだ」

夏目「売り切れていたんだ・・・」

レイコ「私の腹はどうするんだ」

あずさ「お腹空いているんですか?」

レイコ「そうだ」

あずさ「それなら、お礼におむすびどうぞ」

レイコ「うむ」

夏目「先生、遠慮しろよ」

あずさ「いいですよ〜。夏目さんの案内でここまで来られましたから」

夏目「・・・ありがとうございます」

真美「気にする事ないよん! 夜食は控えなきゃいけないよね、やっぱり」

あずさ「そうね〜、危なかったわ〜」

律子「せめてフルーツにしてほしいわね」

美希「ねぇねぇ、おむすび余ってないかな」

あずさ「ごめんなさいね美希ちゃん、もう無いの」

レイコ「もぐもぐ」

美希「うぅ・・・残念なの」

紬「おまたせ〜、大賑わいね」

梓「あ、本当だ・・・人が増えてる」

美希「視界に入ってなかったみたいなの」

梓「まだいたんだ」

美希「屈辱的なのぉ!」

真美「ツインの子とミキミキは相性悪いみたいだねぇ」

梓「・・・」

美希「・・・」

レイコ「どっちもネコ娘だからな」モグモグ

梓「ネコ娘・・・って・・・」

美希「初めて言われたの」

律子「まぁ、美希は性格柄否定はできないけどね」

夏目「先生も人の事言えないじゃないか」

紬「人の事・・・」ジー

夏目(まずい・・・琴吹さんの前では控えよう・・・)
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 22:59:31.48 ID:TF8fCUyZo

美希「同類にしないでほしいの」

梓「そうですよ」

美希「むむぅ・・・」

律子「まぁまぁ。・・・あの、飯山みらいはまだ乗っていますか?」

紬「・・・はい」

律子「あ、私・・・秋月律子と言います。みらいとはちょっとした知り合いといいますか」

あずさ「みらい・・・飯山みらいちゃん?」

律子「そうですよ、あずささん」

あずさ「・・・」

夏目「?」

レイコ「うまいうまい」モグモグ

美希「おいしそうなの」

紬「みらいちゃんになにか・・・?」

梓「むぎ先輩・・・?」

律子「事務所を辞めたと聞いて気になっていまして」

紬「・・・」

梓「りっちゃんさんがどうして・・・?」

律子「事務所絡みで色々あってね」

梓「・・・」

紬「展望車にいますよ。こっちです」

スタスタ

美希「律子・・・さんの様子が変なの」

夏目「・・・」

レイコ「ここで食べてるからな」モグモグ

夏目「あぁ・・・」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 23:00:19.10 ID:TF8fCUyZo

紬「展望車にいますよ。そこから覗けるかと」

律子「・・・」

真美「おぉー、楽しそうですな」

あずさ「みらいちゃん・・・」

律子「・・・」

梓「唯先輩と仲がいいみたいですね」

紬「えぇ、唯ちゃんが勇気を与えているわ」

律子「勇気を・・・」

あずさ「律子さん、いいのですか・・・?」

律子「はい・・・。必要なのは私じゃないですから」

紬「・・・」

梓「唯先輩・・・またエアギターやってる・・・」

真美「そのネタいただき」メモメモ

あずさ「・・・楽しそうに笑っていますね」

律子「・・・はい」

紬「唯ちゃんはそういう雰囲気を生み出してしまうんです。天性ですね」

律子「・・・」

紬「あ、あずさちゃん」キラン

梓「了解です」ガサゴソ

真美「それってギターだよね?」

梓「うん」

美希「ここで演奏するなんて、迷惑なの」

梓「美希に聞かせる為じゃないから」

美希「むぅ!」

紬「うふふ」

真美「それじゃどうして出したんさ?」

夏目「・・・」

梓「むぎ先輩がエアギターを弾くから、それに合わせて音を出すという事」

真美「おぉ、以心伝心ですなぁ」

紬「嬉しいわ」スッ

梓「えへへ」スッ

パァン
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 23:00:26.75 ID:UVCBZRvSO
VIPで宣伝行為は辞めとけよ

そこまでして見て欲しいとか、意地汚さ過ぎるわ
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 23:01:22.16 ID:TF8fCUyZo

真美「まさか、ここでハイタッチが見られるとは・・・。すごい」

美希「大したことじゃないの」

梓「やけにつっかかるなぁ」

夏目「出会いが悪かったみたいだ・・・」

美希「そういうこと・・・なの」

紬「ある意味仲がいいってことよね」

あずさ「そうですね〜」

梓「・・・」

美希「それは違うの・・・って、どうして否定しないの、アズサ!?」

梓「むぎ先輩の言葉を否定するわけ無いでしょ」

美希「そんなこと知らないの!」

真美「ミキミキのペースが乱れまくってますな」

律子「私がここから覗いた事、内緒にしていてくれませんか?」

紬「・・・理由がおありのようですね」

律子「はい。今のあの子にはあの場所が必要ですから」

あずさ「・・・」

真美「んー?」

美希「・・・」

紬「あずさちゃん、合図をするから来てね」

梓「はい・・・?」

紬「みんなを驚かせる為に演出してくるわね」ニコニコ

梓「はい!」

紬「それでは失礼します」

律子「ありがとうございました」

紬「いえいえ」

美希「あふぅ」

真美「そろそろ眠たくなってきたよ」

律子「悪いわね、つき合わせちゃって」

美希「戻って寝るの〜」

あずさ「・・・」

律子「行きましょう、あずささん」

あずさ「はい・・・」

夏目(展望車・・・いや、飯山をみていたのかな・・・)

梓「おやすみなさいです」

律子「えぇ、おやすみ」

真美「バッイバーイ」

あずさ「おやすみなさ〜い」

夏目「・・・」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 23:02:36.78 ID:TF8fCUyZo

美希「そのギターに私のサイン書いてあげようか、価値がうなぎ昇りなの」

梓「音がよくなるわけでもないから、いいよ別に」

美希「アズサ嫌い! ベーっだ」

梓「なぜか嫌われた・・・」

紬「あずさちゃーん」ヒソヒソ

梓「は、はい」

テッテッテ

美希「・・・」

夏目「行かないのか?」

美希「ちょっと羨ましいの」

夏目「?」

美希「尊敬する人と仲がいいって、素敵な事なの」

夏目「・・・」

美希「それじゃ、おやすみぃ」

夏目「あ、明日の朝、名古屋城でHTTFが演奏するって」

美希「なにそれ、よく分からないの」

夏目「Fはフューチャーだって」

美希「???」

夏目「秋月さん・・・だっけ、聞いてみたら分かると思う・・・」

美希「みらいって事・・・かな」

夏目「うん」

美希「分かった。バイバイ」

テッテッテ

夏目「秀輝まで混じってる・・・松浦さんも・・・よかった」

夏目(今日はもう寝よう)
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 23:03:08.36 ID:TF8fCUyZo


レイコ「・・・くー」

夏目「先生、先生」ユッサユッサ

レイコ「む・・・?」

夏目「個室に戻るぞ」

レイコ「うむ」

どろん

先生「ぷー、ぷー」

夏目「寝ぼけるなよっ!」キョロキョロ

シーン

夏目「誰もいなくてよかった・・・」フゥ

162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 23:03:40.31 ID:TF8fCUyZo


ガチャ

バタン

夏目「よいしょ」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「今日も一日大変だったな・・・」

カチッ

モゾモゾ

夏目「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「おやすみ・・・」



2日目終了--------

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/01(木) 23:59:26.75 ID:TF8fCUyZo
リアルでトラぶったので今日はここまでです。
明日投下出来れば・・・
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 01:28:42.28 ID:I90TQlBMo
アイマスまできたwwww
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:17:25.06 ID:HIRgcZLPo

8月9日


先生「おい、起きろ。夏目!」ユッサユッサ

夏目「ぅん・・・?」

先生「腹が減った、飯だ!」

夏目「いま・・・」

チッチッチ

夏目「まだ6時じゃないか・・・」モゾモゾ

先生「起きろーっ!」ピョンピョン

夏目「ぐっ・・・はねるなよっ」

166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:17:54.36 ID:HIRgcZLPo



店員「申し訳ありません、準備にもう少し時間がかかります」

レイコ「・・・!」

夏目「ふぁあ・・・」

レイコ「いつから食べられるんだ」

店員「7時からとなっております」

夏目「あ・・・、すいません。こっちに表示されてますね、後でまた来ます」

店員「はい。失礼します」

夏目「・・・」

レイコ「駅の売店で・・・む?」

夏目「どうした?」

レイコ「あれを見ろ、夏目」

夏目「・・・あれって・・・松浦さんだな」

レイコ「あの荷物は帰るのか」

夏目「律さんも一緒だな・・・。行ってみよう」


167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:20:00.78 ID:HIRgcZLPo

夏目「先生、松浦さんに憑いていた妖って・・・」

レイコ「・・・うむ」

愛「おはようございます」

律「おっはよーん!」

夏目「おはようございます・・・」

レイコ「・・・」

夏目「・・・」

愛「?」

律「な、なんだよ・・・妙な表情しやがって・・・」

夏目「あ、いえ・・・。なんでもないです」

レイコ「帰るのか?」

愛「・・・・・・・・・はい」

律「これから見送るところだぜー」

夏目「・・・そうですか・・・・・・」

愛「あの、ありがとうございました」ペコリ

夏目「え・・・?」

愛「・・・」

律「ただの挨拶だぞ」

夏目「は、はい。・・・お元気で」

愛「はい」

レイコ「・・・」

愛「私、家出してきたんです」

夏目「!」

律「・・・」

愛「私・・・何かと運が悪くて・・・」

レイコ「・・・」

愛「私の不幸で家族や友達に迷惑をかけるのがいやで、嫌われるのが怖くて・・・」

夏目「・・・」

愛「逃げてきたんです」

律「・・・っ」

愛「でも、・・・私がここにいても、律さんや秀輝さん、澪さん・・・みなさんに迷惑をかけてしまって
  私がどこにいても、それはもう避けられないんです」

夏目「・・・!」

愛「でも、私は一人で生きていけませんから・・・。そんな自分を受け入れて・・・
  これからは、人を好きになれるように・・・。人を好きな自分を好きになろうと思います」

律「〜ッ!」

愛「少ししかご一緒できませんでしたけど」

夏目「・・・うん」

愛「お元気で」

夏目「うん」

愛「いい旅を」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:20:36.60 ID:HIRgcZLPo

レイコ「無力な人の子が、自分の力で祓ったか」

夏目「すごいな・・・」

レイコ「うまく退けたんだ。これからは大丈夫だろう」

夏目「先生、松浦さんを気にかけていたのか?」

レイコ「まぁな、普通の人の子がどう対処するのか興味があった」

夏目「・・・へぇ」

秀輝「お、早いな。おはよう」

夏目「秀輝・・・」

秀輝「まだ曇っているけど、昼には晴れるそうだぜ」

レイコ「・・・ふむ」

夏目「松浦さん帰るってさ」

秀輝「・・・え?」

夏目「聞いてなかったのか?」

秀輝「帰るとは聞いていたけど、朝一とは聞いてなかったな・・・」

レイコ「・・・」

秀輝「・・・挨拶してくるよ」

夏目「うん・・・」

169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:21:55.39 ID:HIRgcZLPo


レイコ「まだか・・・」

夏目「まだ5分も経ってないよ。・・・7時まで後30分くらいだな」

レイコ「・・・」イライラ

車掌「あら?」

夏目「あ、車掌さん。おはようございます」

レイコ「おはよう」

車掌「おはようございます」

夏目(先生が挨拶をした・・・!)

紬「車掌さ〜ん・・・、おはよう夏目さん、お姉さん」

夏目「おはようございます」

レイコ「・・・」

車掌「どうかなさいましたか?」

紬「りっちゃんと愛さんの姿が見えないのですが、どこへ行ったかご存知ですか?」

車掌「愛さんが降りられましたので、お見送りにいかれましたよ」

紬「まぁ・・・!」

車掌「東京行きの3番ホームですね」

紬「ありがとうございます。私も見送りしてきます!」

テッテッテ

車掌「・・・丁度、発車の時刻なのですが」

夏目「え・・・」

レイコ「・・・」

『東京行き急行列車、只今電気系統のトラブルにより運転を見合わせています。もうしばらくそのままでお待ち下さい』

夏目「あ・・・」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:22:27.41 ID:HIRgcZLPo

車掌「これはどちらの“運”でしょうね」クスクス

レイコ「二人の“運”だな」

夏目「松浦さんの運が悪いからじゃないのか?」

レイコ「祓ったからといって、劇的に変化はせん。・・・が」

夏目「・・・が?」

レイコ「今まで奪われていた“運”が返還される。そう見ていいだろうな」

車掌「それでは、紬さんに劣らぬ“運”を・・・?」

レイコ「そうだ。この停車が何を意味するか、それは知らんが・・・」

車掌「なるほど・・・」

夏目(先生の言葉を疑いも無く聞いてる・・・)

レイコ「・・・まだか」

夏目「あと25分だから」

レイコ「・・・どうしてこうも長く感じるのだ」

車掌「うふふ、食堂車ですね」

夏目「・・・そうなんです」

車掌「もう少々お待ちくださいませ。それでは、失礼します」

夏目「はい・・・」

レイコ「・・・ふぁ」

夏目「・・・ふぁあ」

レイコ「まねをするな」

夏目「・・・イラつきすぎだぞ、先生」

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:24:00.38 ID:HIRgcZLPo

レイコ「・・・まだか、夏目!」

夏目「・・・あと15分だから」

レイコ「えぇい、もう弁当にするぞっ!」

夏目「しょうがないな」

紬「あら?」

律「まだいたのか」

レイコ「・・・」

夏目(しずかになった・・・)

紬「りっちゃんさんも気が利きますのぉ」ツンツン

律「むぎさんこそぉ」ツンツン

夏目「?」

レイコ「おい、あいつはどうなった」

律「えっと・・・?」

紬「どちらでしょうか?」

レイコ「メガネをかけた方だ」

夏目「松浦さん?」

律「愛ちゃん?」

紬「?」

レイコ「電車が動かなかっただろう、それでなにか起こったのかと聞いている」

律「特急な、特急列車」

紬「愛さんにお別れの挨拶ができました」

夏目「・・・」

律「あぁ、そう言う事か。・・・うっしっし」

レイコ「なにがあった」

紬「大村さんと愛さんを二人っきりにさせました」ニコニコ

夏目「どういう事ですか・・・?」

律「鈍いヤツだな。秀輝はな、愛ちゃんを気にかけていたわけだ」

紬「うんうん」

レイコ「・・・」

律「愛ちゃんも秀輝を気にしていたからな。私とむぎがキューピットになったのさ!」

紬「こうやって」グググッ

律「おぉ、弓がしなっております」

紬「こうっ」ビシッ

律「飛んでいったー! ってな」

紬「梓弓 引かばまにまに依らめども 後の心を知りかてぬかも――」

夏目「・・・?」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:24:36.16 ID:HIRgcZLPo

秀輝「なにしてんの?」

律「お、ちょうどいい所に。貸しを一つとってやるよ」ニヤニヤ

秀輝「マジで!?」

紬「おぉー」

レイコ「・・・」

律「マジで、マジだぞ」

秀輝「でも・・・どうして?」

律「愛ちゃんを幸せにしろよ! 色男!」

紬「クラッカーがあれば」アタフタ

秀輝「勘違いしてないか・・・?」

律紬「「 え・・・? 」」

秀輝「俺、愛ちゃんに別れの挨拶しただけだぞ?」

律「え・・・」

紬「・・・どうして」

秀輝「確かに俺は愛ちゃんを気にかけていたけどさ、それは恋ではないよ」

律「ちょっと待て! 愛ちゃんから・・・その・・・」カァ

秀輝「・・・うん。でも、受け取れなかった」

紬「そんな・・・」

秀輝「愛ちゃんに必要なのは俺じゃなくて、律のような」

律「このやろぉー!」ギュッ

秀輝「ぐっ・・・首が・・・ッ」

レイコ「・・・まぁ、落ち着け」

律「落ち着いていられるかよ!」

紬「りっちゃん。大村さんの言葉を最後まで聞きましょう」

律「・・・・・・うん」

夏目「・・・」

秀輝「げほっ」

律「聞いてやる・・・言ってみろ・・・」

秀輝「うわ・・・マジで怒ってる・・・」

夏目(黙ってみているしかないな・・・)
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:25:59.71 ID:HIRgcZLPo
秀輝「琴吹さん、俺って律に似てる?」

紬「いいえ」キッパリ

律「なんだよその質問は・・・」ゴゴゴ

秀輝「律が愛ちゃんに元気を、前を向く勇気を与えたんだ」

律「はぁ?」

秀輝「俺に律を重ねていただけなんだよ。それは、恋でもなんでもないだろ」

紬「・・・うん」

律「・・・」

秀輝「それには応えられない・・・」

夏目「・・・」

レイコ「・・・ふむ」

律「で、似てるってのは?」ジロ

秀輝「俺が律に少しでも似ていたら、俺は愛ちゃんに恋をしていたと思う」

律「よく分からんこといいやがって」

秀輝「すまん、律」

律「謝るな、愛ちゃんに失礼だろ」

秀輝「・・・そうだな」

律「貸し、3つ加算だ!」

紬「まぁ・・・」

秀輝「・・・」

律「行くぞむぎ!」プンスカ

スタスタ

秀輝「・・・」フゥ

紬「りっちゃんは本気で怒っていないわ」

秀輝「そうだといいけど・・・」

紬「それじゃ、あとでね」

秀輝「名古屋城ね、みんなと行くよ」

紬「うん。夏目さんたちも、ね」

テッテッテ

夏目(せっかくだし、行ってみるか)

秀輝「・・・」

レイコ「去っていった娘はちゃんとお前に『別れ』を言えたんだ
    スッパリ忘れて前を向ける。中途半端な気持ちで応えないで正解だぞ」

秀輝「ありがとう・・・ございます・・・」

夏目「・・・」

レイコ「時間だ」

夏目「本当だ・・・よく分かったな」

秀輝「朝ごはん?」

レイコ「そうだ」

秀輝「俺も行くよ」

夏目「うん」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:26:31.33 ID:HIRgcZLPo


店員「いらっしゃいませー!」

レイコ「朝食セットだ」

夏目「おれも同じので」

秀輝「おれも・・・あ」

「・・・」

秀輝「北上さんも朝ごはん?」

緑「・・・」

スタスタ

夏目「無視されたのか・・・?」

秀輝「されたな・・・」

レイコ「はやくこい」

夏目「・・・」

175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:27:14.50 ID:HIRgcZLPo


店員「ありがとうございましたー!」

レイコ「うまかったぞ」

店員「あ、ありがとうございます!」

夏目(なんか、やりとりが上手になってきたな・・・)

秀輝「夏目、さとみちゃん達とも一緒に行くからさ、8時30分に駅前でどうだ?」

夏目「そうだな・・・」

レイコ「先に行くぞ」

夏目「悪い、先に行ってる」

秀輝「うん。そんじゃ、名古屋城でな」

スタスタ

レイコ「集団で歩きたくないからな」

夏目「そうだったのか」

176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:28:45.31 ID:HIRgcZLPo

―――――IN 名古屋城


レイコ「あれはなんだ?」

夏目「お城だよ。この土地を治めていた人が住んでいたんだ」

レイコ「・・・私が変わりに棲んでやってもいいな」

夏目「・・・祓われるぞ」

「うっうー! 見事なお城です〜!」

「まってー!」

ガッ

「あ、あぶないです!」

「うわわぁっ」バタバタ

レイコ「・・・」

ガシッ

「あれ・・・、わたし浮いてる・・・?」

「ち、違いますよ春香さん! 後ろから支えてくれているんです!」

春香「え・・・?」

レイコ「ドンくさいヤツめ」

春香「はう」

「あのっ、ありがとうございましたぁ!」ウィング

レイコ「気にするな」

夏目「・・・」

春香「えへへ、助かりました」

レイコ「匂うなおまえ」クンクン

春香「えぇー!?」ガガガーン

「春香さん、朝ごはんの納豆のせいですよ!」

春香「ちゃんとケアしたのにぃ」ズドーン

夏目「先生・・・女性になんてことを・・・」ハァ

レイコ「昨日のヤツと同じ匂いって意味だ」

「朝ごはんには納豆ですよね〜! 味噌汁海苔玉子〜♪」

春香「・・・」ズドーン

夏目「ちゃんと説明しろよ! 傷ついてるだろ!」

レイコ「昨日の夜会ったヤツらと同じ匂いがするって意味だ。だから気にするな」

春香「はぁ・・・よく分かりません・・・」ズドーン

夏目「昨日の夜って・・・秋月――」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:29:15.13 ID:HIRgcZLPo

「あ! 律子さーん! こっちですー!」

律子「こら! ちゃんと帽子被らなきゃダメじゃない!」

「あ、ごめんなさーい」

春香「ごめんなさい・・・」ズドーン

律子「あ、あれ・・・どうしたのよ春香?」

「納豆の匂いがするって言われたんです」

律子「それは堪えられないわね・・・」

春香「はぅぅ・・・」ズドーン

夏目「秋月さんと同じ匂いって意味なのか?」

レイコ「そうだ」

律子「あ、あなたは・・・」

夏目「おはようございます。えっと・・・アイドルの匂いがするって意味だから」

律子春香「「 え? 」」

夏目「うーん・・・、納豆の匂いじゃないから・・・気にしないでください」

レイコ「・・・ふぁ・・・眠くなってきた」

夏目「先生のフォローしてるんだぞ!」

春香「アイドルの匂いかぁ・・・」

「私はどうですか!?」

レイコ「納豆だな」

「えへへー」

律子「喜ぶところじゃないわよ、やよい」

やよい「納豆大好きだから嬉しいですー!」

夏目「・・・」

春香「わたしもアイドルらしくなってきたって事ですよね、律子さん!」

律子「まだ候補生だけどね。やよいも」

やよい「うっうー! 頑張りますよぉー!」

春香「よ、よし。わたしも頑張るぞー」グッ

レイコ「夏目・・・ちょっと行って来る・・・」

スタスタ

夏目「え・・・どこへ・・・?」
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:30:16.57 ID:HIRgcZLPo

律子「あの・・・みらいのライブがあるって聞いたんですけど、あのステージですよね」

夏目「は、はい」

律子「バンドのステージなんですけど・・・」

春香「みらいってあの飯山みらい・・・?」

やよい「わぁー、準備で忙しそうですねースタッフさん頑張ってますよー!」

夏目「・・・えっと・・・軽音部と演奏披露するそうです・・・」

律子「あの展望車にいた・・・?」

夏目「はい・・・」

律子「なるほど・・・。聴いていくのもいい勉強になるかもね」

春香「分かりました! しっかり聞きます!」

やよい「あずささんたちは来ないんですか?」

律子「えぇ・・・。みらいに気付かれるからね・・・」

夏目「?」

斑『夏目』

夏目(先生・・・妖の姿になって・・・どうしたんだ・・・?)

律子「演奏開始まであと20分くらいあるわね・・・」

斑『みてろ!』

ボフッ

春香「わぁ! 突風ですよ、突風!」

やよい「め、目にごみが・・・」ゴシゴシ

律子「こすってはだめよ、お手洗い行きましょう」

やよい「すいません・・・」

夏目(うわっ・・・天守屋根に座ってる! 日本人の遺産だぞ!)

春香「どうしたんですか?」

夏目「天守閣に・・・」

春香「天守閣に・・・しゃちほこですね」

夏目「・・・」

春香「ゴールドですよ・・・。金の鯱」

夏目「・・・」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:31:34.41 ID:HIRgcZLPo

春香「わたしも輝けるかなぁ・・・」

夏目「?」

春香「・・・」

紬「・・・」

梓「・・・」

夏目「!」ビクッ

春香「どうしたんですか?」

夏目「いつの間に・・・」

春香「・・・?」

紬「お二人でまったりとお城を眺めていたので、この雰囲気を壊してはいけないと思いまして」

夏目(守る必要もないんですけど・・・)

春香「あ・・・びっくりしました・・・」

梓「あれが名古屋城ですか」

紬「お城! というオーラだね」

梓「ですね」

春香「・・・」

夏目「・・・」

春香「どういう意味ですか?」ヒソヒソ

夏目「聞かないでください」ヒソヒソ

紬「夏目さん、こちらの方は・・・?」

春香「天海春香です、アイドル候補生やってます!」

梓「またアイドル・・・」

春香「・・・え?」

紬「な、なんでもないのよ〜。私は琴吹紬です」

「なるほどなの」コソコソ

梓「嫌な気配を感じる・・・」

春香「よろしく・・・って言うのも変ですね」エヘヘ

紬「そうですね」ウフフ

夏目(先生! 降りて来いよ!)


斑「いい眺めだ・・・夏目がアリのようだな・・・」


夏目「・・・落ち着くのかな」

紬「え・・・?」

春香「?」

夏目「いえいえ!」

梓「屋根を見てますね・・・鯱ですか?」

夏目「う、うん。輝いているなー・・・と・・・」

紬「屋根に何かいるのかな・・・」チラッ

夏目(まずい、本格的に探られてる・・・)
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:32:40.80 ID:HIRgcZLPo

梓「むぎ先輩、そろそろ」

「つむぎさんっ」ギュッ

紬「あら?」

梓「・・・」

春香「美希・・・。紬さんと知り合いだったんだね」

美希「昨日ヴェガで出会ったの〜」チラッ

梓「・・・」

紬「あらあら、どうしたの?」

美希「ううん。つむぎさん暖かい雰囲気だからぁ・・・くっつきたくなったの!」チラッ

梓「・・・」イラッ

春香「ちょっと美希、迷惑だよ」

美希「ごめんなさいなの」

紬「いえいえ。びっくりしたけど、気にしないで」ニコニコ

美希「やっさしいの〜」チラッ

梓「いちいち確認するなっ」


律「おーい!」

唯「あっずにゃーん!」

澪「むぎー!」


紬「あ、それではごゆっくり〜」

梓「・・・」ジー

美希「なにかな?」

梓「・・・」フンッ

美希「むっ・・・」

梓「行きましょう、むぎ先輩!」

紬「は〜い」

テッテッテ

春香「紬さんって、あずささんと同じ雰囲気だね」

美希「美希もそう思ったの」

夏目(早く降りて来いよ!)


斑「ふぁ・・・。ここで休むとするか」


夏目「眠りに入った・・・!」

春香「え・・・?」

美希「どうしたの? 貴志くん」

夏目「え、あ・・・いや・・・」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:33:35.09 ID:HIRgcZLPo

律子「どうして美希まで来たのよ!」

美希「だって、ホテルで待機ってつまんないんだもん」

やよい「美希さんも勉強ですね!」

美希「勉強?」

律子「まぁ・・・いいわ・・・」

「もうすぐ始まるね」ワクワク

「名古屋城でライブなんてすごいなぁ」

「あら、貴志くん。あなたもライブを見に来てくれたの?」

夏目「え・・・?」

「私よ、真鍋和」

夏目「あ・・・。すいません、名前が出てこなくて・・・」

和「気にしなくていいわ、短い時間だったから」

「和さん?」

和「憂、ヴェガの乗客の夏目貴志くんよ」

夏目「どうも・・・」

憂「姉がお世話になっています」ペコリ

夏目「いえ・・・姉?」

「うわっ、アイドルが揃ってる!」

律子「あっちゃー・・・気付かれた」

憂「あ、ほんとだ・・・」

美希「星井美希だよ☆」

「やよいちゃんのファンです!」

やよい「うっうー! 嬉しいですー!」

美希「チビネコちゃんと同じくらい不愉快になったの、ボンバーちゃん!」

ボンバー「誰がボンバーだ!」

和「アイドル・・・ね・・・」

律子「」ササッ

春香「律子さん、どうしたんですか?」

律子「あのメガネかけた子、鋭そうだから少し隠して」ヒソヒソ

春香「は、はい」

夏目(確かに・・・)

あずさ「律子さ〜ん」キラキラ

律子「ぐふっ」

和「・・・?」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:35:20.37 ID:HIRgcZLPo

あずさ「来ちゃいましたぁ〜」キラキラ

律子「どうして輝いているんですか、あずささん!」

真美「兄ちゃんがもうそろそろ到着するんだって!」

美希「プロデューサーさんが!?」

憂「お姉ちゃんはまだかな」ワクワク

ボンバー「結構有名なアイドルが揃っているのに・・・姉が大事か、さすが妹」

和「・・・」ジー

律子「・・・っ」サッ

ボンバー「どうしたんですか?」

律子「なっ、なんでもないわよっ?」

和「純、もっと突いてみて」

ボンバーもとい純「? どうしてアイドルが集まっているんですか?」

やよい「勉強の為ですー!」

純「なるほどー!」

和「ま、いいか・・・」

律子「ほっ・・・」

夏目(離れよう・・・)ススッ

秀輝「よぉ、夏目! って、すご!」

美希「なにがすごいのかな?」

春香「さぁ・・・」

真美「んっふっふ〜、わたし達アイドルが集まってるからだよ〜」エッヘン

さとみ「結構集まっているのね〜」

秀輝「こんなに観客が集まるなんてな〜」

小麦「ほんとだー。ドキドキしてきたぁ」

エレナ「小麦が緊張してもしょうがないですネ」

秋子「うわぁ〜、私もわくわくしてきました!」

真美「あ、あれー、スルーされちゃったよ?」

春香「あはは・・・、わたしたち認知度低いみたいだねぇ・・・」

美希「ショッキングな私なの・・・」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:35:48.08 ID:HIRgcZLPo

律子「はいはい、それじゃみんな行動は自由だけどあまり離れないでね」

やよい「はーい!」

真美「はーい」

律子「やよい・・・どうしてテンションが高いのよ」

やよい「うっうー!」

律子「アドレナリンが注入されたのね。よく分からないけど」

純「もやし買って来ましょうか」キラン

やよい「買いだめはよくないですよー?」

純「はい、すいません・・・」

やよい「賞味期限が短いから、さくっと食べちゃおう!」

純「ですよね!」

やよい「もやし鍋がお勧めですー!」

純「もやし鍋・・・」

憂「時間だよ、純ちゃん!」

純「そうだ! 澪先輩!」

和「・・・」

あずさ「まぁ・・・楽しみです」キラキラ

律子「あずささん、プロデューサーは・・・?」

あずさ「さっき駅に着いたと連絡が入りました〜」キラキラ

美希「迎えに行ってくるの!」

律子「まてぇ!」ガシッ

美希「な、なに・・・?」

律子「こっちに向かっているんだから、すれ違いが起きるわよ」

美希「細い糸で繋がっているから大丈夫なの! 行ってくるね!」

テッテッテ

律子「はぁ・・・」

あずさ「ふふ、美希ちゃんったら・・・」シャキーン

律子「なんですか、その右手のはさみポーズは・・・」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:37:43.31 ID:HIRgcZLPo

夏目「ここはしずかでいいな・・・」

春香「そうですね」

夏目「?」

春香「ちょ〜っと、話を聞きたいと思いまして」

夏目「話?」

春香「このステージに立つ人たちの事です」


「「 オォー!! 」」


夏目「この人たちですよね」

春香「・・・はい!」

律子「私にも紹介してくれないかしら」

夏目「は、はい」

律子「キーボードが昨晩お話した琴吹紬さんね」

夏目「そうです。それで、赤い車掌服きた人がギターとボーカルの平沢唯さん」

春香「・・・」


「「 澪ちゃーん! 」」


夏目「今出てきた青い車掌服が、ベースの秋山澪さん」

律子「・・・」


「「 かわいいー 」」


夏目「え・・・」

春香「ネコミミの緑の車掌服ですね」

律子「えっと・・・美希と相性が良いんだか悪いんだか分からない」

夏目「中野梓・・・。みなさんと一つ下の2年生だそうです」


「「 オォーー! 」」


夏目「今、出てきてフリーズしたのが部長の田井中律さん。ドラム担当です」

春香「・・・」

律子「これで全員のようね、ありがとう」

夏目「どうして・・・?」

律子「そうね、みらいに関係する事なんだけど、プロデューサーが到着してから話すわ」

夏目「・・・」

春香「プロデューサーさんも知っているんですね」

律子「えぇ・・・」

夏目(事務所でなにかあるって言ってたな・・・)
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:38:37.86 ID:HIRgcZLPo


唯『ではさっそく! ふわふわ時間!!』

律「ワンツー!」

ジャガジャガジャガジャガジャガ

唯『 キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI
   揺れる思いはマシュマロみたいでふわ☆ふわ
   いつもがんばるキミの横顔 ずっとみてても気づかないよね
   夢の中なら二人の距離縮められるのにな 』


律子「・・・」

春香「いいですね、この曲!」

夏目(本格的だな・・・)


唯澪『 あぁカミサマお願い 二人だけのDream Timeください☆
    お気に入りのうさちゃん抱いて今夜もオヤスミ♪ 』

唯『 ふわふわ時間 』

澪『 ふわふわ時間 』


――・・・♪


ジャンジャンジャンジャンジャンジャン


唯『 ふわふわ時間! 』

憂純和「「「 ふわふわターイム! 」」」

唯『! ふわふわ時間っ!!』

さとみエレナ小麦「「「 ふわふわターイム! 」」」

唯『ふわふわ時間ーっ!!!』

「「「「 ふわふわターイム!! 」」」」


ジャジャジャジャッジャーン


パチパチパチパチパチパチ

「唯ちゃーん!!」

「澪さーん!」

唯『みんなありがとー!』
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:39:17.86 ID:HIRgcZLPo


夏目「・・・」

春香「律子さん、ここってプロは出場できないんですよね」

律子「えぇ、アマ限定のライブよ」

春香「なんだか・・・悔しい気がします」

律子「え・・・?」

「いい事じゃないか?」

夏目「?」

律子「あ、プロデューサー」

P「そういう気持ちは持っていた方がいいぞ、春香」

春香「・・・はいっ!」

P「次の曲に入るか・・・何曲目になる、律子」

律子「まだ2曲目ですよ。美希は・・・?」

P「近くで見るんだってさ」

律子「へぇ・・・刺激されたようね・・・」

あずさ「・・・」

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:40:06.18 ID:HIRgcZLPo


澪『では次の曲です ぴゅあぴゅあはーと』

律「ワンツースリー!」


澪『 頭の中 想いでいっぱい あふれそうなのちょっと心配
   とりあえずヘッドホンでふさごう♪ 』 
 
唯『 Don't stop the music! 』

澪『 欲しいものは欲しいって言うの したいことはしたいって言うの
   だけど言えない言葉もあるの 』

唯『 Can't stop my heartbeat! 』

澪『 いきなり! チャンス到来 ぐうぜん同じ帰り道
   wow! ふくらむ 胸の風船 急に足が 宙に浮くの
   上昇気流にのって 』

澪唯『 飛んでいっちゃえ! キミのもとへ わたしのぴゅあぴゅあはーと
    受け止めてくれるなら 怖くはないの 
    この気持ちが 大気圏 越えたとき
    キミは見えなくなってた 道の向こう側 あい☆Don't mind 』


・・・・・・

夏目「秋山さん、ボーカルもやるんだ・・・」

律子「・・・」

P「アマでこれだけ盛り上げるんだな」

春香「はい。すごいです・・・」

夏目「ほとんどヴェガの乗客ですね・・・」

P「みんなを盛り上げているのはステージの彼女たちだよ」

夏目「・・・」

あずさ「・・・」

・・・・・・

澪『Ah ボリュームをあげて ほら ときめき探すよ
  またこの場所で何度でも 会えそうな気がするよ』

澪唯『飛んでいっちゃえ! キミのもとへ わたしのぴゅあぴゅあはーと
   受け止めてくれるなら 怖くはないの
   この気持ちが 大気圏 こえたとき 
   キミは見えなくなってた 道の向こう側 あい☆Don't mind』


ジャーン ドコドタン

パチパチパチパチパチパチ

「紬さーん!」

「律さーーん!!」

188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:42:42.93 ID:HIRgcZLPo


唯『それでは次の曲、今日限りのバンドHTTFが演奏します。ヴォーカルカモーン!』


律子「いよいよね」

P「あぁ・・・」

あずさ「・・・」

夏目「みらいと知り合いって程度じゃないですよね」

律子「そうよ。私はあの子をプロデュースしていた・・・。1年と2ヶ月前までは」

春香「えっ! 竜宮小町より前ですか!?」

律子「えぇ・・・」

春香「はぁー・・・、知らなかったです・・・」

夏目(竜宮小町って・・・なんだろ・・・)

あずさ「みらいちゃん・・・」

P「様子が変だな・・・」

春香「そうですね・・・どうしたんでしょう・・・」

律子「あの子・・・遠慮してるわね」

春香「遠慮?」

律子「きっと、『HTTのステージに私が立っていいのか』と感じているわ」

P「・・・なるほど、さっきまでの客とバンドの一体感をそのままにしたいと・・・」

律子「恐らく」

夏目「・・・」

あずさ「頑張ってみらいちゃん・・・!」

P「なんだ・・・コイントス?」

律子「おまじないかしら?」

春香「夏目さん今のは?」

夏目「ごめん、中野がどうしてコイントスをしたのか分からない」

春香「そうですか・・・」

夏目「でも・・・」

春香「?」

P「表情が和らいだな」

律子「えぇ・・・。なるほど、今HTTFになったのね」

あずさ「一つの行動で・・・繋がった・・・」

春香「すごいです・・・!」

P「もう一つ繋がりが深くなるみたいだぞ」

律子「見て、紬さんの肩に乗ったリスを」

夏目「リス・・・?」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:44:00.17 ID:HIRgcZLPo

唯『あ〜、いいなぁ〜、リスちゃん私の肩にカモーン』ポンポン


あずさ「まぁまぁ」

P「ふふっ、あははっ」

律子「昨日、紬さんが言ってました・・・
  『唯ちゃんはそういう雰囲気を生み出してしまうんです。天性ですね』
   ・・・と」

春香「すごいっ!」

夏目「・・・飯山の顔つきも変わってきた」



みらい『みなさんこんにちは。飯山みらいです』

「「 えっ!? 」」ザワザワ



夏目「名前は伏せるって言っていたのに・・・?」

春香「どうしたんでしょうか・・・」

P「律子、カメラ持ってきていただろ?」

律子「でも、商業的撮影は禁止のはず・・・」

P「商業じゃないさ、律子が一般人として撮影すればいい」

律子「なるほど」

P「あ、あと」

律子「はい。他の5人は映らないように、ですね」

P「さすがだな・・・」

律子「・・・」ジー

夏目(それをどうするんだろう・・・?)

190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:44:44.19 ID:HIRgcZLPo

みらい『ノン・トロッポ』

ポンポンポロポロ

みらい『 心を映し出す 丸い月 赤くやんなり浮かぶ 誰にも知られず
     私を形作るすべてが 涙をもっていると 誰にも言えずに  』


みらい『 それでも明日は満ちている この先にずっと わたしは自分に偽りはしない 』


みらい『 仮面を脱ぎ捨て 素顔の自分に出会うの 私は恐れを知らない
     過去には縛られずに 背を向け サヨナラと進む 私の軌跡 』
     

・・・・・・


律子「この歌詞!」

P「シー・・・」

律子「・・・」


・・・・・・


みらい『 私は自分を愛してゆきたい
     新しい私に「おはよう」と言った 
     あの日の真っ赤な月など忘れて
     このまま 幸せ 思う数 私 素直になれる』


・・・・・・


夏目(いい音楽だな・・・。先生も聴いてたりするのかな・・・)


・・・・・・


みらい『 いつしか手を振る 昔の私に あなたも私も 恐れを知らない
     過去には縛られずに 背を向け サヨナラと 歩く 私の軌跡
     サヨナラ 』


ジャ ジャジャン

191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:47:05.81 ID:HIRgcZLPo

春香「はぁー・・・いい曲でしたぁ・・・」ウットリ

あずさ「えぇ、ほんとうに・・・」

P「アレンジしたのか・・・」

春香「オリジナルを知っているんですか?」

律子「私とみらいで作った曲だからね」

夏目「?」

春香「律子さんも作詞を!?」

律子「えぇ・・・まぁ・・・」

P「その時はやぶれかぶれだったからな、もうやるしかないって感じで」

律子「そうでしたね・・・」

夏目「今の飯山をイメージしたように聞こえた」

あずさ「はい」

春香「・・・えっと?」

律子「春香は素のみらいを知らなかったわね」

P「元々まじめで、気配りが出来て、スタッフにも感謝を忘れないのが飯山みらいなんだ」

夏目(それは分かるな・・・。おれに謝りに来たくらいだから)

P「うちの事務所にみらいに引き抜きの話が来て、みらいの為を思っての移籍だったんだ・・・。
  運がそうさせたと信じて疑わなかった」

夏目(それで、移籍した事務所も辞めた・・・。複雑な状況だったんだな・・・飯山の立場は・・・)

あずさ「・・・」

律子「プロデューサー・・・」

P「この件は律子に任せるよ。社長も納得するさ。しなかったらさせるんだ、俺と二人で」

律子「はい!」

春香「みらいさんがうちに来るんですね!」

律子「出来るかどうか分からないけどね。とりあえず、下準備しなくちゃ」

あずさ「・・・でも、内心複雑じゃないでしょうか」

夏目「・・・」

P「・・・そうだな。言葉が悪いけど、一度放った側だからな」

春香「そんなっ!」

律子「事実よ、春香。それで、必要だから戻ってきてなんて・・・失礼だわ」

あずさ「・・・!」

夏目「求める場所は同じのような気がしますよ」

律子「え・・・?」

夏目「飯山が居たいと思う場所です。あのHTTの中と、さっきの・・・」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:48:48.95 ID:HIRgcZLPo

美希「ハニー!」

P「うわ・・・また変わった・・・」

あずさ「・・・」チョキン

美希「あずささん、なにを切ったの?」

あずさ「赤い糸〜」

美希「だっ! ダメなのっー!」

真美「チョー! よかったよー!」

やよい「うっうー! わたしも歌いたくなってきましたー!」

P「やよいのこのテンションはなんだ・・・?」

やよい「普通ですよ! うっうー!」

「ちょっとあんた! なんで私を置いていくのよ!」

P「わ、悪い・・・」

美希「デコちゃん来てたんだ」

伊織「さっき目が合ってたでしょ!
   アンタたちが私を置いてどこか行っちゃうから私一人彷徨っていたのよ!!」

やよい「伊織ちゃん!」

伊織「な、なによ!」

やよい「頑張ろうね!」

伊織「やよいのこのテンションはなんなの・・・?」

やよい「・・・」

伊織「やよいっ、頑張るわよ!」

やよい「やったー!」

真美「やったね!」

律子「なにがなんだか・・・」

P「はは・・・」

春香「この場所ですか・・・?」

夏目「うん」

春香「嬉しいなぁ〜」

P「・・・」

律子「・・・」

193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:50:09.85 ID:HIRgcZLPo


『 どうし   に ア  の いが  ァ 』



夏目「ッ!」ゾクッ

春香「どうかしたんですか?」

夏目「い、いや・・・?」

春香「?」

真美「はるるん行くよー!」

春香「あ、でもアンコールが!」

美希「アズサに文句・・・じゃなかった、賞賛の言葉をかけるのー」

P「アズサ?」

あずさ「なんでしょう〜?」

美希「あずささんじゃないの。えっとね、ステージにいるチビネコちゃんなの」

律子「あぁ・・・」

P「ネコ・・・ね・・・」

美希「どうしたのハニィ・・・? 私の顔に何かついてる?」

P「いや、・・・同類かなって」

美希「ごろにゃんしてもいいってことだね?」

あずさ「・・・」チョキン

美希「また切られたの!」

やよい「私たちも仕事ですー!」

伊織「行くわよ、あんたたち!」

春香「は、はーい!」

律子「美希、仕事が優先よ」

美希「わ、分かってるけどね・・・挨拶を・・・」

夏目「おれが伝言を受けるよ」

美希「・・・」

P「忘れられないような言葉を伝えるといい」

美希「・・・うん」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:51:22.87 ID:HIRgcZLPo

春香「わたしもみなさんのように輝きます!」

真美「負けないからね!」

伊織「私はみてなかったけど、頑張るって決めたわ!」

やよい「ありがとうございましたぁ!」ウィング

あずさ「待ってます」

律子「それはちょっと重いですよぉ」

P「律子はいいのか?」

律子「多分、後で会うことになると思うので・・・
   あ、紬さんに・・・いい出会いでした、と」

夏目「はい」

P「美希は?」

美希「わたしも、自分を理解してくれる特別な人と出会えたの。だから、アズサの気持ちがすっごく分かる
   また、会いましょうって伝えてほしいの」

夏目「分かった。必ず伝える」

美希「ありがとう」

春香「楽しい時間をありがとうございました、それではお元気で!」
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:52:47.41 ID:HIRgcZLPo

夏目「――と、以上が伝言」

梓「・・・」

紬「まぁ・・・」

律「誰だ?」

澪「さ、さぁ・・・?」

唯「うん・・・?」

夏目「名前は・・・伏せさせてとの事です・・・」

律「ふーん・・・。分かったぞ、私の隠れファンか!」

澪「今の演奏ででときめいたんだな」

律「それはないか・・・」

唯「りっちゃんが謙虚!」

梓「聴いてあげてもいいかな・・・なんて」ボソッ

紬「うふふ」

さわ子「おまたせ」

みらい「おまたせしました」

夏目「・・・飯山」

みらい「はい・・・?」

夏目「おれも応援してる」

みらい「ありがとうございます」ペコリ

さわ子「?」

ダンッダンッダンッダンッ

律「ん?」

澪「どうした?」

律「曲調がいいなって・・・」

a vapor tail disappears

I lost my feeling in the sky

律「おぉ・・・」

さわ子「あれはコピバンね」

律「オリジナルじゃないのか・・・さわちゃん知ってるのか?」

さわ子「後で教えてあげるわね」

律「・・・うん」

澪「聞き入ってるな・・・」

 so take me higher

 to get back the song I lost

律「・・・」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:53:29.47 ID:HIRgcZLPo

紬「とりあえず、乗客のみんなにお礼を言いにいきましょう」

梓「そうですね、おかげでいい演奏ができました」

澪「うん。嬉しかった」

律「あぁ、楽しめたぜ」

唯「行くよー・・・お?」

「ちょっといいかねキミたち」

さわ子「さっそく声がかかったわね」

唯「澪ちゃん頼んだ!」

澪「え!?」

「うちの事務所からデビューしないか?」

澪「え、えぇと・・・」アタフタ

紬「みらいちゃんだけ、という事には・・・?」

みらい「・・・」

「キミたちを含めた6人だ」

澪「NO,Thank You!」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:54:43.15 ID:HIRgcZLPo


夏目「飯山のためのライブだったのか・・・」

みらい「はい。私の事務所を探す為に・・・」

夏目「それじゃ、どうして今のスカウトを・・・?」

さわ子「あの子たちが望んでいないからよ。それだけ」

夏目「・・・」

みらい「みなさんが望めば、私も同じステージにこれからも立ちたいですけど
    でも・・・。唯さんが望む場所はここではないです」

夏目「・・・」

みらい「私の夢と唯さんの夢は一緒ではないですから、違う道を歩んで行かなくては・・・」

さわ子「相変わらず強いわねぇ」

みらい「いえ・・・。そう教えられてきましたから」

さわ子「前のプロデューサーさんに?」

みらい「はい」

夏目(秋月律子さんか・・・。なんだか複雑だな・・・これだけ近くにいたのに・・・)

唯「おーい! 記念写真撮るよ〜!」

さわ子「行きましょ」

みらい「はい」

夏目「それじゃ、おれはこれで」

さわ子「一緒に写らないの?」

夏目「先生を探さないといけないので」

さわ子「先生?」

紬「ふむふむ・・・」ジー

夏目「失礼しますっ!」

タッタッタ

みらい「慌てて行きましたね」

さわ子「あの子も謎が多いわねぇ」

紬「そうですね〜」ニコニコ

198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:55:49.17 ID:HIRgcZLPo

夏目「おれが『見える』ってことを琴吹さんに気付かれるとは思えないけど、心臓に悪いな・・・」フゥ

斑「・・・フシュゥ」

夏目「まだ寝てる・・・」

斑「・・・スゥゥウウ」

夏目(ベンチに座って起きるのを待つか・・・。屋根に向かって大声で呼べないし)

夏目「すごい人たちだな・・・軽音部は・・・」

斑「・・・フシュゥ」

夏目「朝早かったから・・・ねむ・・・」ウトウト

斑「・・・スゥウウウ」

夏目「」スヤスヤ



・・・

・・・・・・



『 どうしてここに  アイツの  匂いが   するんだ  ァアアア!!! 』


・・・・・・

・・・



夏目「!」ビクッ

緑「びっくりした・・・」
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:56:42.01 ID:HIRgcZLPo

夏目「あ・・・え・・・?」

緑「あなた、変な目で見られているわよ」

夏目「変な目・・・!」

緑「?」

先生「ぷー、ぷー」

「みてみて、あのネコー」

「やだぁー・・・かわいいー」

「そうだね・・・」

夏目「あ、そういう事か・・・」ホッ

緑「大丈夫?」

夏目「あ、はい。寝ていただけですから」

緑「具合が悪かったりしないのね?」

夏目「はい」

緑「そう・・・ならいいわ・・・。じゃ」

スタスタ

夏目「あれ・・・、あの人ヴェガの乗客だったような・・・」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生・・・いつの間におれの膝の上に移動したんだよ・・・」

「クスクス」

「絵になるな」

「ならねえよ。男とネコだぞ」

「あ、男なのか」

「女顔だけど、格好みれば分かるだろ」

夏目「女顔」ガーン

先生「・・・む? 起きたか夏目・・・ふぁぁあ」

夏目「・・・」グッタリ

先生「おいこら、寝るな!」

夏目「・・・はぁ」

先生「えびふりゃー食べに行くぞえびふりゃー」

夏目「天むすはいいのか?」

先生「それは後だ」

夏目「両方取るのか・・・」

先生「楽しみだわい」

夏目「先生ってさ・・・、さっきの演奏聴いていたのか?」

先生「音楽なんぞに興味は無いぞ」

夏目「・・・そうか」

先生「最後の曲で寝てしまったがな」

夏目(聴いてはいたんだな)
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:57:56.17 ID:HIRgcZLPo

―――――駅前公園


先生「弁当ではないか!」プンプン

夏目「しょうがないだろ、今の時間混雑しているんだから」

先生「あの小娘どもが居る店でよかったではないかー!」プンスカ

夏目「あぁ、軽音部の・・・。いや、あの中には入れないだろ・・・気持ち的に」

先生「おまえの気持ちなんぞどうでもいいわ! おいしそうな料理がたくさんあったぞぉ!」プリプリ

夏目「文句言うなら天むすは無しだぞ」

先生「大目にみてやる」ムシャムシャ

夏目「・・・」

先生「うまうま」ムシャムシャ

夏目「満足してるじゃないか・・・」

先生「されど弁当と言ったところか、あなどれんわ」モグモグ

夏目「・・・あれって・・・飯山のマネージャーか・・・?」

将人「あぁ、証拠の画像もちゃんとある」

夏目(電話中か・・・)モグモグ

将人「あぁ、みらいとバックで演奏している娘たちの顔もちゃんと映っている」

夏目(琴吹さんや秋山さんの顔も・・・どういう事だ・・・?)

将人「あぁ、詳しい名前は言えないが」

夏目「・・・」

将人「俺の中にも越えてはいけない線という物はある。これ以上聞くな
   写真を渡さないぞ、いいのか?」

夏目(なにをしようとしているんだ・・・?)

将人「知るか、そっちが勝手に取り付けただけだろ」

夏目(コイツはどういうヤツなんだ・・・? 印象では悪いヤツだったんだけど・・・)

将人「あぁ、それでいい。明日の朝でいいな」

プツッ

夏目「・・・」

将人「・・・ちっ・・・いつまでもみらいに拘りやがって・・・使えないボスだな」

夏目「なぁ・・・」

将人「あ?」

先生「・・・」

夏目「あんたはみらいに拘らないのか?」

将人「聞いていたのか貴様・・・いい趣味だな」

夏目「飯山とHTTの名前が出てきたからな」

将人「俺の態度で引かないとは、いい度胸だなおまえ」

夏目(先生や妖に慣れてるからな・・・そういうの・・・)

将人「素材の商品価値は俺自身で決める。他がどう言おうが知ったことじゃない」

夏目「飯山は無いのか?」

将人「あぁ、俺には必要ない」

夏目「・・・」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 00:59:45.64 ID:HIRgcZLPo

先生「・・・とぉっ」ピョン

将人「なんだこのブサ」

先生「弱きものよ、消え失せろ!」

ピカーッ

『ぎゃぁぁあああ』

将人「っ!?」

先生「・・・ふん」

夏目「憑いていたのか?」

先生「こやつにはお似合いの小物だがな・・・」

将人「立ちくらみか・・・?」クラクラ

先生「今なら聞きだせる事もあるだろう」

夏目「おい、さっきのライブの画像があるのか?」

将人「あぁ? それがどうした!」フラフラ

夏目「渡してくれ」

将人「そう簡単に渡すか、馬鹿だなおまえ・・・」

夏目(持っているんだな・・・)

将人「んっふっふっふ、このメモリーカードがそうだが?」

先生「面白い」

どろん

斑『グルァァアア』

将人「ブサネコが消えた!?」

夏目「おい」

将人「な、なんだ!」

斑『ふんっ』ブンッ

将人「ぬおっ! カードが!?」

夏目「砕け先生!」

斑『きしめん追加だからな』

プチッ

将人「砕けただと!? どうなっている!」

夏目「・・・ふぅ」

将人「くそッ!」

夏目「バックアップとかあるのか?」

将人「もう無い、一度ならず二度までも・・・!」

夏目(二度?)
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:01:05.99 ID:HIRgcZLPo

秀輝「まだこんなところにいたのかよ、おまえ」

夏目「秀輝・・・」

将人「・・・ちっ・・・おい小僧」

夏目「?」

将人「もう俺は手を引くから、安心しろ・・・うんざりだ」

スタスタ

秀輝「ん?」

夏目「・・・」

斑『・・・』

どろん

レイコ「改心とはいかんが、もう懲り懲りと言ったところか」

秀輝「お姉さんいつの間に!」

レイコ「さっきからいたぞ」

夏目「先生、えびふらいやるよ」

レイコ「うむ」モグモグ

秀輝「・・・仲のいい姉弟だな」

夏目「ひ、秀輝はどうしてここに?」

秀輝「駅前だから、普通だろ?」

夏目「そ、そうだな」

秀輝「・・・あ、このカード」

夏目「?」

秀輝「俺と一緒のヤツ・・・どうして・・・?」

夏目「あのマネージャーが持っていたんだ」

秀輝「うわっ、まだ持ってたのかよ」

夏目「?」

レイコ「それがどうした」

秀輝「いや、なんでも・・・」

さとみ「どうしたの、こんなところで?」

夏目「さとみさん・・・」

秀輝「ヴェガに忘れ物をしてさ・・・、さとみちゃんは?」

さとみ「これから出かけるところよ」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:02:36.56 ID:HIRgcZLPo

レイコ「名古屋の名物はなにが旨いか分かるか?」

さとみ「私は味噌カツを食べてきたわ」ニコニコ

秀輝「俺は・・・天むすだな。うまかった」

レイコ「そうか、味噌カツもあったか」

夏目「・・・」ハァ

さとみ「・・・」ジー

秀輝「・・・」ジー

夏目「な、なんですか?」

さとみ秀輝「「 別に・・・ 」」

レイコ「これからどうする、夏目」

夏目「そうだなぁ・・・」

秀輝「・・・」

さとみ「あ、北上さんよ」

緑「・・・」スィー

秀輝「はは、素通りしていった。これから出かけるみたいだな」

さとみ「わたしたちは視界に入らなかったのね」

夏目(さっきのお礼をいうべきだろうか・・・)

秀輝「北上さんってどう思う?」

さとみ「・・・怖いけどいい人」

秀輝「・・・なにかあった?」

さとみ「岐阜駅で迷子の子と一緒に母親を探していたのよ」

秀輝「・・・」

夏目「・・・優しい人だと思う。秀輝はどう思うんだ?」
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:03:42.82 ID:HIRgcZLPo

秀輝「こう言っちゃなんだけどさ・・・・・・苦手だ」

夏目さとみ「「 え・・・? 」」

レイコ「・・・」

秀輝「なんていうか、波長が合わないからさ」

レイコ「朝の件か?」

秀輝「無視されたからって事ですか?」

レイコ「うむ」

秀輝「いやぁ、それじゃないですよ・・・。もっと、複雑なようで単純なようで」

レイコ「分からんな」

秀輝「・・・はい」

さとみ「秀輝くんがそんな事言うなんて・・・」

夏目「うん・・・意外だ・・・」

秀輝「俺ってさ、地元では毛嫌いされてるから」

さとみ夏目「「 え!? 」」

秀輝「そのリアクションは喜んでいいのかな」

夏目「秀輝が!?」

秀輝「うん・・・俺が・・・」

さとみ「・・・そうなの」

秀輝「あ、ごめん! また影を落とすようなこと言った!」

夏目「・・・」

レイコ「・・・」

秀輝「スマン、お詫びをさせてくれ・・・」

レイコ「地下街行こうか」

秀輝「え・・・?」

夏目「なんで地下街なんだ・・・?」

レイコ「味噌カツだ」

夏目「先生に迷惑かかってないだろ!」

さとみ「ふふっ・・・、ほんとに仲がいいのねー・・・」

秀輝「目が笑ってないよ、さとみちゃん」

夏目「・・・」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:05:16.90 ID:HIRgcZLPo

―――――地下街


秀輝「さとみちゃんにもお詫びしないとな・・・」

夏目「律儀だな・・・」

レイコ「うまい」モグモグ

秀輝「おいしそうに食べますね・・・。夏目は食べないのか?」

夏目「あぁ、さっき弁当食べたから。えびふらい弁当」

秀輝「はは、名古屋名物を堪能してるな」

夏目「・・・うん」

秀輝「ライブ・・・すごかったな・・・」

夏目「うん。盛り上がってた」

秀輝「みらいちゃんに勇気を・・・か、やろうと思って出来ることじゃないよな・・・」

夏目「・・・なぁ、どうして毛嫌いされているんだ?」

秀輝「・・・」

レイコ「・・・」モグモグ

秀輝「夏目って、俺より一つ下なんだよな・・・」

夏目「あ・・・」

秀輝「年下に話すのも俺の余計なプライドがな」

夏目「・・・ごめん」

レイコ「私はおまえの何倍も生きているぞ」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

レイコ「・・・」モグモグ

秀輝「ごめんな、夏目」

夏目「・・・」

秀輝「最初に会ったとき、年なんか気にしないで接してくれって言ったのに、
   今、それを盾にしょうもないプライドを守って、不愉快にさせただろ?」

夏目「いや・・・そんなことは・・・」

レイコ「夏目の分頼んでいいか?」

夏目「おい先生!」

秀輝「あははっ、いいですよ。夏目の分なら」

レイコ「よし、おい!」

店員「は、はいっ」

レイコ「うなぎのひまつぶしだ」

店員「・・・」

秀輝「ひつまぶしお願いします」

夏目「あれ?」

店員「か、かしこまりましたぁ」

スタスタ

夏目「あ、ひつまぶしが正しいのか・・・」
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:06:23.91 ID:HIRgcZLPo

レイコ「それで?」

夏目(先生・・・興味あるのか・・・他人の話に耳を傾けるなんて珍しいな・・・)

秀輝「底が浅いっていうか、ちっぽけっていうか」

レイコ「もぐもぐ」

秀輝「俺の家庭はさ、父が医者で母が議員で」

夏目「エリート家族なのか・・・」

秀輝「そう。姉が獣医、兄も牧場を経営してる。エリート家族ってやつ」

レイコ「ふむ・・・」モグモグ

秀輝「そんな人たちに囲まれているから、勉強は嫌いじゃなく、運動も好きになれて」

夏目「エリートの仲間入り・・・?」

秀輝「さぁ・・・。親父のように人を助けたいとか、母のようにその土地に暮らす人たちを・・・とかは全く無い」

レイコ「・・・」モグモグ

秀輝「小さい頃から言われてきた『素敵な家族ね』。俺も思う。誇りに思える家族だって」

夏目「・・・」

秀輝「高校で進路の話がでる度に聞く言葉。『おまえは選択肢が広がっていて羨ましい』」

レイコ「・・・お、来た」

店員「おまたせしました、うなぎのひつまぶしです」

レイコ「うむ」

店員「それでは」

秀輝「あ、お冷のおかわりを」

店員「はい」

夏目(休憩か・・・)ゴクゴク

秀輝「夏目もなにか頼む?」

夏目「いや、水でいい」

秀輝「俺がお冷だからって遠慮する必要ないぞ?」

夏目「飲めるならなんでもいいよ」

レイコ「オレンジだ」

夏目「おい、お冷でいいって意味でなんでもいいって言ったんだぞ」

レイコ「もぐもぐ」

秀輝「さすがお姉さん」

店員「失礼します」コポコポ

秀輝「オレンジジュース追加でお願いします」

店員「かしこまりました」

レイコ「うまいうまい」モグモグ
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:08:22.09 ID:HIRgcZLPo

秀輝「えっと・・・俺の進路のところまでだな。『選択肢が広がっていて羨ましい』」

夏目「・・・うん」

秀輝「成績優秀で運動も出来る、家は金持ち、素敵な家族が居る。恵まれた人生だ」

レイコ「・・・ほぅ」モグモグ

夏目「・・・」

秀輝「でも、友達はいない」

夏目「・・・」

秀輝「周りはいい人たちだぞ、言っとくけど」

夏目「どうしていないんだ?」

秀輝「漫画で読んだ人物で言うなら、『孤独な天才』ってやつ?」

レイコ「・・・面白いなおまえ」

秀輝「はは、皮肉じゃなくそういわれたの初めてですよ」

レイコ「おまえの勝手な解釈だろ。皮肉を込めたぞ」

秀輝「いえいえ、いつも感じる爽快感を感じなかった」

夏目「爽快感?」

秀輝「うん。コイツ皮肉で言ったな、と感じると爽快な気持ちになれる」

レイコ「・・・ククッ」

秀輝「『今、おまえは俺より成り下がった。自分で認めたな』ってね」

夏目「うわ・・・」

秀輝「・・・な、毛嫌いされるわけだろ?」

レイコ「・・・どういう人の子だおまえはっ・・・クククッ」

秀輝「こんな俺をみても笑ってくれるんだな、お姉さんは」

夏目(人ではないからな・・・)

店員「オレンジジュースです」

夏目「あ、どうも・・・」

秀輝「・・・」

レイコ「・・・どうして列車に乗った」

秀輝「え?」

夏目「・・・視野を広げる為?」

秀輝「あ、うん・・・。『井の中の蛙大海を知らず、』を体感するべきかなって・・・」

レイコ「蛙の器でもないがな」

秀輝「・・・」

レイコ「おまえは只の無知な人の子だ。偉そうに語るな」

秀輝「・・・」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:10:20.81 ID:HIRgcZLPo

夏目「おい、先生・・・」

レイコ「面白いから見ていてやる」

秀輝「・・・」

夏目「す、すまん・・・高圧的で・・・」

秀輝「謝らなくていいよ。してきたことをされただけだから・・・」

レイコ「変わったのか、おまえは」

秀輝「いえ・・・。稚内からここまで来て、変われてません」

レイコ「・・・そうか・・・ほむ」モグモグ

夏目「自分で分かることじゃないんじゃないか・・・?」

秀輝「今朝、思い知ったよ」

夏目「松浦さんとの事・・・?」

秀輝「うん・・・。愛ちゃんを守ってやるなんて気概も無い、小さい人間だってさ・・・」

夏目(結構堪えているみたいだな・・・)

レイコ「後悔してるのか」

秀輝「いえいえ、そんな・・・。そんなんじゃ律にまで嫌われる」

夏目「へぇ・・・」

秀輝「律だけじゃない、琴吹さんにも、さとみちゃんにも、小麦たちにも・・・」

レイコ「・・・ほぅ」

秀輝「仲間に嫌われるのは・・・つらい」

夏目「仲間・・・?」

秀輝「そう、旅の仲間・・・。・・・不思議な感じだな・・・こんな台詞を吐くなんて」

夏目「『、されど空の高さを知る。』じゃないか?」

秀輝「うまいな。蛙は井の中でも、空の高さを知っているんだよな」

夏目「仲間と呼べる人たちに出会えたんだ、変わったと思う」

秀輝「マジか・・・」

夏目「うん・・・」

秀輝「ヴェガの旅が半分終ってしまったけど、まだ半分あるんだな・・・」

夏目「最後まで行くの?」

秀輝「行ってみたい。そこで俺がどうなっているのか、知りたい」

レイコ「それは見届ける事ができないな」ゴクゴク

夏目「・・・そうだな。もったいないな」

秀輝「ふふっ、そうだな・・・っ」

レイコ「よし、満足した。行くぞ」
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:12:45.36 ID:HIRgcZLPo

店員「ありがとうございましたー」

レイコ「うまかったぞ」

夏目「ごちそうさま、秀輝」

秀輝「いいよ、俺も先生と一緒に食べればよかったな」

夏目「先生?」

レイコ「うむ、許可する」

秀輝「夏目に釣られて言ってしまったけど、許可されたな・・・」

夏目「ふふっ」

秀輝「先生って、何者なんです?」

レイコ「教えん」

秀輝「そうだよなぁ・・・」

夏目「ストレートだな」

秀輝「顔は似ているのに血は繋がっていないみたいだし、
   何倍も生きてるっていうけど、その割には見た目10代だからさ」

レイコ「勝手に疑っていればいいさ」

秀輝「そうする」

夏目(なんとなく安心だな・・・秀輝は吹聴したりしないだろうし・・・)

秀輝「高校入学と同時に家族と離れて住んでて、なんでも一人でやってきたんだよ」

夏目「へぇ・・・」

秀輝「なんでも余計に出来るもんだから、叱られたことなんて、ここ数年なかった」

夏目「なかった?」

秀輝「今朝、律に叱られた」

夏目「ふふっ」

秀輝「そして、さっき先生に・・・な」

夏目「よかったな」

秀輝「いや、叱られて喜ぶって変だろ」

夏目「おれも叱られる事なんてなかったよ・・・」

秀輝「?」

レイコ「・・・」

夏目(塔子さんに叱られた時は、落ち込んだけど・・・少し嬉しかった・・・)
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:14:11.69 ID:HIRgcZLPo

小麦「おっ、獲物はっけーん!」

エレナ「オー、御三家ですワ!」

小麦「エレナ・・・それ、違う・・・」

秀輝「獲物ってなんだよ、また変なの買わせる気か?」

小麦「あー、その手があったねぇー」

夏目「変なもの?」

秀輝「アクセサリーとかブリーチとか、資金がつきそうになったら露店を開いているんだ」

小麦「そーいう事!」

エレナ「ですが、ここでは難しいですネ」

小麦「それじゃ長島スパーランドへ行こうよ!」

エレナ「グッドアイデアですヨ!」

秀輝「行ってらっしゃーい」

小麦「秀輝くんも行くの!」

秀輝「なんで!」

小麦「あれあれ〜? さっきの貸しを忘れたのかな〜?」

夏目「貸しって、小麦さんにも作ったのか・・・」

秀輝「う・・・」

エレナ「そうと決まれば、銭は稼げ! ですワ!」

小麦「違うよ、げんは担げだよ」

秀輝「善は急げだろ・・・」

小麦「いいから、行くよ〜!」

エレナ「急ぎまショウ!」

夏目「行ってらっしゃーい」

秀輝「夏目も来いよ!」

レイコ「人ごみは嫌だ」

秀輝「そんな!」

エレナ「サァサァ」グイグイ

小麦「あはははっ」

夏目「・・・」

レイコ「行くか」

夏目「・・・うん」

211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:16:26.73 ID:HIRgcZLPo

―――――東山動植物園


紬「あら?」

夏目「琴吹さん・・・」

唯「今から入るの〜?」

レイコ「そうだ」

和「残念ね、時間が合えば一緒に周れたのに」

憂「・・・」

梓「お勧めはコアラですよ」

夏目「へ、へぇ・・・」

紬「うふふ、それでは楽しんでらしてね〜」

唯「バイバーイ」

憂「それでは」

夏目「これからどこへ?」

和「長島スパーランドよ」

梓「澪先輩・・・はしゃいでいるんでしょうか・・・」

紬「そうね、楽しんでいるわきっと」

唯「楽しみだよ〜」


夏目「・・・」

レイコ「そこで待ってろ・・・」

スタスタ

夏目「また妖に変身するんだろうか」

緑「あやかし・・・?」

夏目「うわっ」

緑「どうしたの・・・?」

夏目「いえ・・・なんでも・・・」

緑「・・・・・・体の具合はどう・・・?」

夏目「平気です・・・よ・・・?」

緑「名古屋城で、あなたうなされていたわよ」

夏目「え・・・?」

緑「別に・・・。悪くないならいいの・・・じゃ」

スタスタ

夏目「・・・」

斑「どうした?」

夏目「名古屋城のベンチで寝ているときさ、おれ魘されていたのか?」

斑「変な夢でも見たんだろ、気にするな」

夏目「そうか・・・。というか、どうして妖の姿になったんだよ」

斑「ライオンがいるそうだな、美味と聞く」ジュルリ

夏目「絶対に食べるなよ!?」

212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:19:15.60 ID:HIRgcZLPo

夏目「陽が傾き始めたな・・・」

斑「そうだな」

夏目「・・・」

斑「夏目、おまえ行きたかったのか」

夏目「・・・うん」

斑「・・・」

どろん

先生「ならそう言えばいいだろう」

夏目「また、外で姿変えて・・・」

先生「私に遠慮していたのか?」

夏目「・・・いや」

先生「・・・」

夏目「おれも人ごみは苦手だから、遊園地にはいけないよ」

先生「スパーランドとやらは遊園地だったか」

夏目「そうだよ。有名なジェットコースターがあるんだ」

先生「なんだそれは」

夏目「先生と一緒に乗ればよかったな・・・。惜しいことをしたかも」

先生「・・・そうか」

サヤサヤ

夏目「ここはいい風が吹いて気持ちがいいな」

先生「・・・」

夏目「・・・」ナデナデ

先生「なんのマネだ」

夏目「秀輝に踏み込んでいってくれただろ」

先生「なんだそれは」

夏目「秀輝は寂しいんだと思う」ナデナデ

先生「それはアイツが悪いからではないか」

夏目「そうだけどさ、叱ってくれる人を待っていたんだよ。先生みたいにちゃんと言ってくれる人をさ」

先生「・・・」

夏目「・・・」

先生「アイツはまだ子供だ。おまえや去っていった娘の方がずっと大人なんだ」

夏目「そんなことないよ」

先生「あの娘はアイツを守りたいと思ったのではないか?」

夏目「そうか・・・。・・・すれ違ってしまったのか、二人は」

先生「恐らくな、アイツ自身揺れているからそれに気付かなかったのさ」

夏目「それは・・・、なんだか悲しいな」

先生「さぁな。出会いなんてそういうものだろう」

夏目「・・・」
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:20:07.85 ID:HIRgcZLPo

先生「・・・む?」

秋子「あ〜、貴志さんも来ていらしてたんですね〜!」

夏目「え?」

秋子「自己紹介してなかったですね。私、加古川秋子っていいます!」

夏目「夏目貴志です・・・」

秋子「金沢から乗車したんですよ〜!」

夏目「・・・」

先生「うるさいやつめ・・・」

秋子「あ・・・」

先生「なんだ! やるのか!?」ジロ

秋子「ぬいぐるみですか?」

夏目「まぁ・・・はい」

秋子「変な商品ですね〜、売れるんでしょうか?」

先生「にゃんだとぉ!」

秋子「あれ、今動きましたよね」

夏目「そういうギミック・・・なんです・・・」

秋子「・・・」ジー

先生「・・・」シーン

夏目「加古川さんも動物が好きなんですか?」

秋子「秋子って呼んでください! そうですよ、可愛くって〜」キャー

夏目「コアラが可愛かったです」

秋子「まだ見てなかったんですよ〜! 行ってみますね! それでは〜!」

テッテッテ

先生「・・・なんだあれは」

夏目「・・・山中さんが避けていた理由が分かった気がする」

214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:21:01.74 ID:HIRgcZLPo

―――――ヴェガ


夏目「もうこんな時間か・・・」

レイコ「きしめんも食べたし、もういいな。寝るぞ」

夏目「満足したのか、先生は・・・」

レイコ「・・・ふぁ」

澪「あ、夏目!」

夏目「あ・・・」

澪「今戻ってきたのか!?」

夏目「は、はい・・・」

夏目(元気すぎる・・・)

紬「澪ちゃんはアトラクションの興奮が冷めあらぬのです」

梓「しばらくすれば落ち着くので我慢してください」

澪「夏目はどこへ行ったんだ!?」

夏目「地下街と動植物園へ・・・」

澪「そっか!」

唯「うーむ・・・」ジー

夏目「?」

唯「貴志くん、『んっふっふっふ』って笑ってみてよ」

夏目「え?」

律「はぁ?」

唯「みらいちゃんの元マネージャーと貴志くんの声似ている気がするんだよ」

夏目(昼に公園で会った・・・)

澪「確かに似ている気がする!」

唯「ねぇ、ねぇ、やってみてよ」

夏目「ご、ごほん・・・んっふ・・・ふ」

律「いや、させんなよ唯。やるなよ夏目」
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:22:53.55 ID:HIRgcZLPo

紬「ご、ごほん・・・ぁ・・・あ・・・」

梓「むぎ先輩はやらなくていいですからね」

紬「どうして分かったの?」

梓「声の調整していたじゃないですか」

澪「律やってみてよ!」

律「あ、あっちに妖怪枕返しが」

澪「ホームに居る訳無いだろ!」

律「ですよね」

夏目(枕返しじゃないけど・・・変なのいるな・・・)

紬「なにか『見える』んですか?」

夏目「えっ!?」

秀輝「・・・」

紬「凝視してましたよ?」

梓「なにを疑っているんですか、むぎ先輩・・・」

夏目「な、なんでもないですよ」

紬「・・・そうですか」

レイコ「・・・」

さとみ「みんなここで集まって、どうしたの?」

唯「車掌さんとコックさんが御もてなししてくれるんだって!」

律「ん?」

梓「どうしてですか・・・?」

車掌「詳しい話は展望車でお話致します」

コック「ガッハッハ、冷めるぞ!」

律「なんか知らんけど、みんな乗れー!」

澪「おー!」

唯「はいよー!」

紬「よいしょー!」

梓「むぎ先輩まで・・・」

みらい「ふふ」

夏目「あ、飯山・・・」

みらい「は、はい?」

夏目「飯山はこれからどうするんだ?」

みらい「えっと・・・。勉強です!」

夏目「勉強?」

さわ子「うふふ、さぁ、乗りなさいな」

みらい「はい!」
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:23:56.33 ID:HIRgcZLPo

コック「秀輝、小麦とエレナはどうした」

秀輝「個室へ編集作業をするとか」

コック「昼の件で礼があるから呼んで来い」

秀輝「やった、貸しがチャラだ!」

テッテッテ

夏目「賑やかだな・・・」

レイコ「個室へ行くぞ」

夏目「あぁ・・・」

車掌「あら、貴志さんはよろしいのですか?」

夏目「?」

車掌「ちょっとしたパーティを用意しているのですが・・・」

秋子「さわ子先生もいますか!?」

夏目「びっくりした」

車掌「もちろん」ニコニコ

秋子「行きましょう!」

夏目「いや、おれは・・・」

秋子「貴志さんが居ないと私もいづらくなりますから!」グイグイ

夏目「うっ・・・」

レイコ「・・・夏目を頼む」

車掌「えびふらい等用意しておりますが」

レイコ「うむ」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:25:34.26 ID:HIRgcZLPo

律「うっひゃー! うまそうだー!」

唯「おぉ〜」キラキラ

紬「豪華ね」キラキラ

澪「・・・」

梓「あれ、どうして元気が下降しているんですか?」

澪「さっきのさ、私の態度・・・夏目にどんな風だった?」

梓「スパーランドのようなテンションでした」

澪「うわぁ・・・嫌な年上だなぁ・・・」

紬「うんうん」

梓「どうして頷いているんですか」

憂「わぁ・・・すごいですね」

純「おぉ・・・」

和「いいのかしら・・・」

唯「和ちゃん、こっち座って!」

和「えぇ、失礼するわね」

梓「純!」

純「はいよー」

梓「あっち空いてる」

純「隣に座らせろー!」

憂「クスクス」

律「おーい、そこー! 乾杯するからグラス持ってー!」

秀輝「おー」

律「あぁ? 秀輝に言ってねえよ!?」

秀輝「・・・はい」

澪「こら!」

律「いいんだよ、あんな白鳥野郎なんてさ」

秀輝「・・・」

夏目「薄情じゃ・・・?」

律「スルーしたなこんにゃろぉー!」

秀輝「あ。フリか・・・!」

律「・・・調子悪いのか?」

秀輝「い、いや、そんなんじゃないぞ!?」

律「じゃなんだよ、変に塞ぎこみやがって」
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:26:19.15 ID:HIRgcZLPo

さわ子「アレよ、花火の真っ最中にたった一人残されたから・・・」

紬「あぁー・・・」

澪「周りはカップル、家族連れ・・・」

小麦「悲惨な光景だったよ・・・」

エレナ「孤独を感じていたはずですワ」

梓「しょうがないですよね」

さとみ「情状酌量すべきだと思うわ」

みらい「そうですね・・・」

秀輝「そう、アレはきつかった!」

夏目(無理してるな・・・)

夏目「秀輝も律さんたちとスパーランドを周っていたんだ?」

秀輝「・・・うん」

律「・・・」

レイコ「・・・」

律「まぁ、いいや。じゃコップもってー!」

秋子「はーい!」

律「それじゃー、カンパーイ!!」

一同「「「 カンパーイ! 」」」

唯「みんなで大宴会だね!」

律「そうだな!」
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:27:48.34 ID:HIRgcZLPo

梓「わ、私もいただきます!」

純「こ、これは!」

憂「エビフライおいしいね純ちゃん」

さわ子「名古屋コーチンの串刺しもおいしいわ」モグモグ

和「名古屋名物揃ってますね・・・」

車掌「ふふ、喜んでいただけて嬉しいです」

夏目「・・・」

レイコ「天むすをいただこうか」スッ

梓「あっ、取られた!」

レイコ「ネコ娘にしては動作が遅いな」モグモグ

梓「誰がネコ娘ですか!」

唯「あずにゃんです!」

梓「言い切らないで下さい!」

紬「あずさちゃん、どうぞ」

梓「ひまつぶしですね」キラキラ

紬「えっと・・・」

律「事実を伏せておくべきだぞ、むぎ」

紬「で、でも・・・」

憂「後で知ったとき傷が深くなるのでは・・・」

唯「その時はわたしがぎゅうっとね!」

レイコ「ひまつぶしじゃないのか?」

梓「?」モグモグ

夏目(しまった、ちゃんとした名前を教えていなかった・・・!)

秀輝「青ざめてるけど、どうした?」

夏目「い、いや・・・」

紬「お姉さんも間違えているのね・・・」
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:28:27.06 ID:HIRgcZLPo

紬「この手羽先おいし〜」

澪「本当だ!」

律「もぐもぐ・・・うんめぇ」

梓「うなぎのひまつぶしですよね?」モグモグ

小麦「違うよ、ひ・つ・ま・ぶ・しだよ」

レイコ「ん?」

梓「え・・・」ポロッ

カランカラン

エレナ「オハシが落ちましたネ」

レイコ「夏目が言ってたぞ、『うなぎのひまつぶし』とな」モグモグ

夏目「っ!」サッ

澪「顔をそらしたな・・・」

梓「わ、私・・・ずっとひつまぶしをひまつぶしさせていたんですかぁ!?」

律「なに言ってるか分かんねえよ」

紬「動揺しているわ」

純「あっはっはっは! 梓っ!」

憂「純ちゃん・・・」

和「手羽先おいしいわね」

小麦「おぉー、一人だけ次元が違うよ」

エレナ「肝が据わってますワ」

梓「はっ、恥ずかしいです!」ガタッ

タッタッタ

紬「あらー・・・」

レイコ「これくらいのことで」モグモグ

秀輝「先生は恥ずかしくないの?」

レイコ「言ったのは夏目だからな、私は無傷だ」

夏目「・・・っ」ガタッ

タッタッタ

小麦「あっはっはっは!」

憂「グフッ」

澪「恥ずかしかったのか・・・」

唯「顔真っ赤だったよ」モグモグ

和「お姉さんをひっかけようとしたんじゃないの?」

レイコ「さぁな。私は恥ずかしいという感情をあまり持っていないから」

紬「え?」

秀輝「あーおれのえびふらいがーなくなってるぅー」

律「なんだよその棒読みは・・・」
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:30:47.01 ID:HIRgcZLPo

夏目「訂正させておくの忘れてた・・・!」

梓「なんでこんな目に・・・!」

夏目梓「「 ん? 」」

梓「どうしたの?」

夏目「い、いや・・・なんでも・・・」

梓「・・・」

夏目「・・・」

シーン

夏目(間を置いて戻るか・・・先生が心配だけど・・・)

梓「・・・」

梓夏目「「 ・・・はぁ 」」

緑「・・・」

梓「あ・・・」

夏目「・・・」

緑「なにをしてるの・・・?」

梓「夜風に当たっているんです」

夏目「・・・」

緑「そう・・・」

スタスタ

梓「・・・」

夏目「・・・」

梓「私たちは何をしているのかな・・・」

夏目「分からない・・・」

梓「戻ろう」
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:32:01.46 ID:HIRgcZLPo

夏目「なぁ、中野」

梓「・・・なに?」

夏目「・・・。・・・琴吹さんの周りっていつもああなのか?」

梓「ああって、今の展望車?」

夏目「・・・うん」

梓「夏目はむぎ先輩の紅茶飲んだ?」

夏目「まだ・・・だな・・・」

梓「・・・言葉より体験した方が分かると思う」

夏目「そうか・・・」

梓「どうしてそんなことを聞いたの?」

夏目「人が吸い寄せられていく感覚って言うのかな・・・」

梓「・・・うん。分かる」

夏目「・・・」

梓「いつも誰かと誰かを包んでいる」

夏目「・・・」

梓「私の尊敬する人」

夏目「・・・そうか」

梓「・・・って、なに言ってるんだろ。もう冷めたから戻ろうよ」

夏目「・・・あぁ」

梓「松本から乗ったんでしょ?」

夏目「うん。あのさ、金沢で―――」

223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:33:33.50 ID:HIRgcZLPo

夏目「―――って事があってさ」

梓「そんなことが・・・」

夏目「あぁ、不思議な感じだった」

梓「・・・うん、むぎ先輩らしい」

夏目「・・・」

梓「・・・あれって」

夏目「律さんと・・・秀輝?」

梓「外で話・・・?」

夏目「・・・」

梓「どうしたんだろ」

夏目「待って、様子が変だ」

梓「?」



律「なんで塞ぎこんでんだよ」

秀輝「そんなんじゃないって」

律「おまえ・・・長島スパーランドでも変だと思ったけど・・・朝のこと気にしてんじゃないだろうな」

秀輝「違うって」

律「じゃあなんだよ」

秀輝「・・・」

律「朝の事じゃないならいいけどさ、らしくねえぞ」

秀輝「・・・」

律「・・・」

秀輝「俺らしいってなんだ?」

律「そういや、よく知らんな。けど、ここまで一緒にバカなノリで遊んだり、くだらないやりとりしたことかな」

秀輝「・・・」

律「肝心なところで支えていたり、意外なところで役に立つ。そんなヤツ」

秀輝「・・・そうか」

律「・・・」

秀輝「俺はさ、ただ・・・みんなと楽しみたかっただけなんだよ」

律「・・・うん。それは見ていて分かった」

秀輝「でもさ、愛ちゃんの件で・・・自分がなんなのか分からなくなった」

律「マジか・・・」

秀輝「・・・」

律「・・・まぁ、時間はあるんだ。それを探すのもありじゃねえのか?」

秀輝「・・・だけど、こんな俺だと・・・また人を傷つけてしまうだろ」

律「やっぱ気にしてんじゃねえか・・・」

秀輝「・・・」
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:34:17.24 ID:HIRgcZLPo

律「・・・」

レイコ「あの娘の事をおまえが引きずるのはどうなんだ」モグモグ

紬「・・・うん」

秀輝「・・・そうですね」

レイコ「朝にもソイツに言われただろ、失礼だとな」

律「・・・」

秀輝「・・・はい」

レイコ「あの娘の為にも前を向け。それが最低の礼儀だ」

秀輝「は、はい」

レイコ「自惚れるなよ」

スタスタ

秀輝「・・・ッ」

紬「戻りましょう」

律「そだな」

秀輝「・・・うん」

律「さすがに、あの台詞はどうかと思うな」

秀輝「いや、敢えてそう言ってくれたんだ・・・」

律「ほほぉ・・・」

秀輝「・・・今、一番言われたくない言葉だった」

律「だよなー・・・。元気出せ」ポンポン

秀輝「優しさが染みる」

スタスタ



梓「・・・」

夏目「おれ達には気付かなかったな・・・」

梓「そんな狭い視野の持ち主じゃないよ」

夏目「?」

紬「あずさちゃーん」

梓「はーい!」

テッテッテ

夏目「・・・」

225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:35:47.53 ID:HIRgcZLPo

――・・・


夏目「消すぞ」

先生「いいぞ」

カチッ

夏目「・・・」モゾモゾ

先生「まだまだ遊んでいるようだな」

夏目「あぁ・・・」

先生「参加せんのか。だからもやしなんだ」

夏目「疲れているんだよ・・・。一言多いぞ、先生」

先生「アイツのように学べる事あるだろうに」

夏目「秀輝?」

先生「アイツは初めて良心というものが芽生えているんだ」

夏目「・・・」

先生「歪んだヤツだが、元はそこまで酷くは無い」

夏目「・・・うん」

先生「小娘に叱られて学んでおるわ」

夏目「小娘って・・・誰・・・?」

先生「名前は知らん」

夏目「先生の目から見たら誰でも小娘だからな・・・」

先生「・・・」

夏目「先生、どうしてあんなこと言ったんだよ」

先生「どんなことだ」

夏目「『自惚れるな』だよ」

先生「夏目、おまえ分かってないのか?」

夏目「・・・?」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:37:08.16 ID:HIRgcZLPo

先生「やれやれ・・・。いいか、アイツは独りで乗り越えられる事は大体なんとかなっているんだ」

夏目「・・・うん」

先生「だがな、対人関係で初めて躓いたんだぞ。大分堪えていただろう」

夏目「・・・あぁ、そうだった。秀輝は自分のことを小さい、浅いと客観的に答えていたな」

先生「そういう事だ。それを外部から指摘されて平気なヤツはいないだろうな」

夏目「どうして先生に秀輝の心情が分かるんだよ。人の気持ちなんて分かるのか?」

先生「レイコはいつもニヤニヤしていただけだったからよく分からなかったが・・・
   あの小僧はまだまだ子供だ。ガキと呼べるほどの段階でもない」

夏目「子供とガキの境目はなんだ・・・?」

先生「さぁな」

夏目「・・・」

先生「ふぁ・・・」

夏目「おやすみ、先生」

先生「ぷー、ぷー」

夏目(子供か・・・。そう言われたら怒るのかな秀輝は・・・)

夏目「」ウトウト

夏目「」スヤスヤ







『 みつけたぞ 』




3日目終了--------

227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/03(土) 01:48:16.56 ID:HIRgcZLPo
今日はここで終わりです。

しばらく投下できないかもしれないです。
週明けになるかもしれません

今作が完結した後にみなさんの疑問点などを書きたいと思います。(ウィンタージャーニーを含め)

宣伝のことは目を瞑ってくださると助かります
みなさんの批評のみが唯一の楽しみですので・・・。
気持ちのいいものではないと分かっているつもりです。すいません。
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(新潟・東北) [sage]:2011/12/03(土) 05:27:09.06 ID:qvb+cBaAO
乙です
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/03(土) 05:43:46.08 ID:sotV19NSo
名古屋城って中にエレベーターがある城じゃなかったっけ?
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/12/03(土) 21:47:05.12 ID:RuJboNnko
別視点でキャラ増やしたのか
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:22:37.19 ID:LyaDYuHzo
>>150
書こうと思ったものの・・・

>>229
外から見たことはあるんですが、中に入ったことは無いのです
たしか、エレナとのデートでそこら辺触れられていたような気がします

>>230
いえす。お嬢様特急のチームは前回でギッシリ絡めていますから、
今回は観光地で他の人(作品)と絡めようと思ったのです。完全にお祭り的なノリですね


では、名古屋から出発進行
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:23:50.29 ID:LyaDYuHzo


8月10日




  忌々しい








夏目「ッ!」ガバッ

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・なんだ・・・今の・・・」

先生「ぷー」

夏目(今・・・2時7分・・・か・・・。いやな時間帯だな・・・)

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・ふぅ」モゾモゾ

夏目「」ウトウト

夏目「」スヤスヤ
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:24:32.11 ID:LyaDYuHzo


ガタン ゴトン

ガタンゴトン




ガタンゴトン ガタンゴトン

ジリリリリリ

カチッ

夏目「・・・ん・・・? ・・・発車していたのか・・・」

夏目「・・・ふぁ、あれ・・・・・・先生は・・・どこだ?」

夏目(また車掌さんのとこへ行ったかな・・・)

234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:25:16.40 ID:LyaDYuHzo


ガチャ

バタン

夏目(とりあえず、先生を探そう・・・)

さとみ「おはよう」

夏目「おは・・・あれ?」

さとみ「あ、この荷物? ・・・ふふ」

夏目(不自然だな・・・?)

さとみ「私ね、名古屋で降りる予定だったの」

夏目「・・・」

さとみ「だけど、むぎさんと梓ちゃんに手を引かれて・・・乗っちゃった」

夏目「・・・そうですか」

さとみ「うん。よろしくね♪」

スタスタ

夏目(なんだか、すっきりした表情してる・・・)
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:25:50.69 ID:LyaDYuHzo

店員「いらっしゃいませぇ」

夏目「京都の観光ガイドと、オレンジ、お茶をください」

店員「どうぞ〜」

夏目「・・・」

店員「どうかしたんですかぁ?」

夏目「早いなって・・・」

店員「用意していたんですぅ」

夏目「・・・そうですか・・・。ありがとうございます」

店員「ありがとうございましたぁ」

236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:31:05.28 ID:LyaDYuHzo

夏目「・・・車掌室の中かな?」

コンコン

「はい」

ガチャ

車掌「貴志さん・・・。どうかなされましたか?」

夏目「用ってほどじゃないんですけど、先生と一緒だと思っていたので・・・。
   仕事中にすいませんでした」

車掌「いえ、お気になさらないでください。
   そうですね・・・あのお方の居場所はわかりかねます。申し訳ありません」

夏目「いえ・・・」

車掌「それでは、失礼します」

バタン

夏目「・・・どこだ?」

237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:31:45.83 ID:LyaDYuHzo

夏目「一号車・・・には居ないな」

澪「おはよう、夏目」

夏目「おはようございます」

澪「いい朝だな」

夏目「列車の中から見る朝日って新鮮です・・・。・・・こんな景色なんだ」

澪「・・・・・・うん」

夏目「あ、先生見ませんでしたか?」

澪「え? あ、あぁ・・・見てないぞ」

夏目「・・・?」

澪「な、なんでもない。じゃあな!」

スタスタスタスタ

夏目「?」

238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:32:21.94 ID:LyaDYuHzo

夏目「二号車・・・は」

梓「あ、おはよう」

夏目「おはよう。そういえば、山中さん達はどうしたんだ?」

梓「出発する前に降りたよ」

夏目「そうか、挨拶していなかったな・・・」

梓「・・・」

夏目「よろしく伝えておいてくれ」

梓「・・・うん」

夏目「先生みなかったかな」

梓「お姉さんだよね? 見てないけど」

夏目「そっか・・・、ありがとう」

梓「それじゃ」

夏目「あぁ」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:33:16.26 ID:LyaDYuHzo

夏目「三号車・・・」

律「おっはよん!」

夏目「おはようございます」

律「どうした、朝から元気ないぞ!」

夏目「律さんは朝から元気ですね」

律「まぁな〜! 新しく旅が始まったんだ、気合入れて楽しむぜ!」バシーン

夏目「・・・」

律「このポーズについて何か言って欲しいんだが・・・」

夏目「その・・・」

律「夏目はあれか、ツッコミもボケもしない観客側か」

夏目「・・・・・・はい」

律「よーし、ツッコミスキルを伝授してやる! いいか、よく聞けよ」

夏目「・・・」

律「ボケを発見したらツッコミを入れる事から始めてみよう」

夏目(長くなりそうかな・・・。すいません、失礼します)スィー

律「私が夏目に『おまえは澪かっ!』って突っ込むから―――」
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:33:51.63 ID:LyaDYuHzo

夏目「四号車」

唯「貴志くんではないか、座んな!」ポンポン

夏目「すいません、人を探しているので・・・」

唯「お姉さん?」

夏目「はい。見かけませんでしたか?」

唯「見てないよ」

夏目「・・・そうですか」

唯「お姉さんが好きなんだね?」

夏目「・・・・・・いえ」

唯「悪い事じゃないんだよ?」

夏目「いいえ。違いますから」キッパリ

241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:34:48.46 ID:LyaDYuHzo

夏目「食堂車・・・に絶対居ると思ったんだけど・・・」

緑「・・・・・・おはよう」

夏目「あ、おはようございます」

緑「・・・」

店員「いらっしゃいませー!」

緑「・・・」

スタスタ

夏目(朝食とるのかな・・・って、この時間だから当然だよな)

秀輝「おはよう、夏目も一緒に朝ごはん食べようぜ」

夏目「悪い、先生を探しているんだ。見てないか?」

秀輝「見てないけど・・・、一緒に探そうか?」

夏目「いや、あと2車両だから」

秀輝「そっか、それじゃ俺は先にとってるな」

夏目「うん」

店員「いらっしゃいませ」

秀輝「混んでますねー・・・」

店員「北上さんとご一緒でよろしいでしょうか?」

秀輝「・・・はい」

夏目「次は、娯楽車か・・・居ないと思うけど」
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:36:27.74 ID:LyaDYuHzo

店員「いらっしゃいませ。遊んでいかれますか?」

夏目「いえ・・・」

店員「そうですか、失礼しました」

夏目(娯楽車で遊んだりするのかな、先生は・・・)

秋子「あ、貴志さん!」

夏目「秋子さん・・・」

秋子「一緒に遊びませんか〜?」

夏目「人を探しているので・・・すいません」

秋子「そうですか・・・」ションボリ

小麦「あたしと遊ぼうよ!」

店員「!」

エレナ「小麦ー、店員サンの顔が強張りましたネ〜!」

小麦「あっははは! 冗談だよ〜!」

店員「・・・」ホッ

夏目「?」

秋子「どういう事ですか?」

エレナ「小麦は、機械類に弱くてですネ、すぐ設備機械を不調にさせてしまうネ」

小麦「そういう事!」エッヘン

エレナ「威張ることではありませんことヨ?」

店員「申し訳ありません」

夏目(謝られてる・・・)

243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:40:31.31 ID:LyaDYuHzo

夏目「展望車にもいない・・・どこで見落としたんだ・・・?」

ガタンゴトン

夏目(座って休むか・・・。オレンジとお茶買ったのにな、温くなってしまうぞ先生・・・
   まさか、降りてしまった・・・なんてことは・・・)

夏目「・・・」ゴクゴク

プシュー

紬「・・・」

夏目(琴吹さん・・・? なにを抱えて)ゴクゴク

先生「・・・」

夏目「ブフーッ!」

紬「まぁ・・・」

先生「・・・」

夏目「げほっ、げほっ!」

紬「大丈夫ですか?」

先生「・・・」

夏目「大丈夫っ! どうして琴吹さんが!?」

紬「このネコちゃんぬいぐるみですか?」

夏目(バレてないのか!?)

先生「・・・」シラー

夏目(目を逸らすな!)

紬「・・・?」

夏目「そ、そうです。そのぬいぐるみ・・・」

紬「さっき、客車の荷物棚にあったのを見つけたんです。持ち主を探していたんですが・・・」

夏目「おれのです・・・」

紬「・・・やっぱり」ボソッ

先生「感づかれておるぞ」

夏目(喋るな!)ギロッ

先生「聞こえとりゃせんわ。それより早く受け取れ」

夏目「ありがとうございます」スッ

紬「・・・えっと」

夏目「?」

紬「しばらく貸してくれませんか?」ニコニコ

先生夏目「「 な!? 」」

紬「うふふ」

夏目「ど、どうして・・・」

紬「・・・理由はですね」ジー

夏目(なんで探っているんだ!?)
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:42:19.30 ID:LyaDYuHzo

先生「はやく受け取ってくれぇ〜」

紬「・・・無いんです」

律「無いんかい!」ビシッ

夏目「あ・・・」

律「こら、置いていったな・・・夏目」

夏目「す、すいません」シラー

律「目をみて謝れ! 別にいいけどさー」

みらい「おはようございます」

夏目「・・・・・・おはよう」

唯「どうしたの〜?」

紬「みてみて〜」

唯「おお、でっかいネコにゃん!」

律「変な顔だな・・・悪いけど」

紬「そうかしら? 個性的な顔してると思うわ」

先生「・・・」

夏目(先生、表情変えられないから固まったままだな・・・。面白い状況だけど、放置できないな・・・)

澪「どうしたんだ?」

紬「大きいぬいぐるみを拾ったのよ〜」

澪「むぎ、貸してくれ!」

先生「・・・」

紬「どうぞ」

夏目(まずい・・・どんどん状況が悪化していく・・・)

澪「ツルツルふかふかしてる・・・」

先生「・・・」

唯「か、貸して欲しいんだよ!」

みらい「わ、わたしも抱っこしたいです!」

律「私はパス」

先生「このプリチーな容姿を!」

紬「あら?」

夏目(動くなバカ!)

先生「・・・」シーン

律「どうした?」

紬「夏目さん、このぬいぐるみにはギミックが装備してあるんですか?」

夏目「あ、ありますよ」

律「へぇ・・・。どうすればどうなるんだ?」

夏目「買ったばかりなので、分からないんで・・・す・・・」

紬「そうなんですか」

先生「・・・」

澪「ツルツルふかふか〜」
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:43:48.71 ID:LyaDYuHzo

唯「澪ちゃん! 渡してくれませんか!」

夏目(ウソを・・・吐くのか・・・この人に・・・おれは・・・)

先生「・・・」

澪「どうぞ」

唯「おぉ〜、ツル・・・ふかふかしてないよ〜?」

澪「ちゃんとスリスリしてみるんだ」

律「澪が・・・へぇ・・・」

澪「ひくな!」

梓「ここでなにしているんですか?」

唯「むふふ」スリスリ

先生「・・・」

紬「夏目さん、どうかしたんですか? 急に様子が・・・」

夏目「・・・なんでもないです」

梓「あ・・・そのぬいぐるみ・・・」

紬「あずさちゃん、知ってるの?」

梓「はい。夏目のです」

澪「え・・・」

律「ひくなよ」

夏目「・・・」

先生「・・・」

みらい「ゆ、唯さん、私にも抱っこ」

紬「唯ちゃん、夏目さんに返してあげて」

夏目「ッ!」

唯「はいよ、どうぞ」

みらい「あ・・・あ・・・!」

律「諦めろ」ポンポン

みらい「・・・はい」

夏目「・・・どうも」ギュウ

先生「・・・」
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:44:30.14 ID:LyaDYuHzo

紬「あずさちゃん、売店へ観光ガイドを買いに行きましょ」

梓「そうですね、行きましょう」

紬「次はいよいよ京都よ、修学旅行ぶりね」

梓「先輩方と行けるなんて嬉しいです!」

プシュー

唯「みらいちゃん! 仕事を探すよ!」

みらい「はい! マネージャー!」

律「はは、立派なマネージャーになったもんだな」

唯「えへへ」

律「多少なり皮肉を込めたんだけどな」

夏目「・・・」

先生「・・・」

澪「な、夏目・・・?」

夏目「失礼します」

トボトボ

プシュー
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:45:36.50 ID:LyaDYuHzo


ガチャ

バタン

夏目「・・・」

先生「・・・」

夏目「・・・ウソを吐いた」

先生「なら本当のことを言えばよかろう。これはぬいぐるみではないとな」

夏目「・・・言えるわけないだろ」

先生「・・・」

夏目「・・・」

先生「ふんっ」

どろん

レイコ「朝飯食ってくる」

夏目「あぁ・・・」

レイコ「行かないのか?」

夏目「・・・今はいい」

レイコ「じゃあな」

ガチャ

バタン

『私の尊敬する人』

夏目「中野の尊敬する人・・・」

夏目(どうして尊敬しているのか、なんとなくだけど分かっていた)

夏目「だから・・・ウソを吐いたことにショックを・・・受けているのか」

夏目(些細なウソのはずなのに・・・それにショックを受けている自分が居る)

夏目「・・・」

248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:46:52.19 ID:LyaDYuHzo


ガチャ

レイコ「なんだ、寝ているのか」

夏目「」スヤスヤ

レイコ「私も」

どろん

先生「寝るとするか・・・ふぁ」

夏目「」スヤスヤ

先生「腹が減っているせいか調子が悪いな・・・・・・それとも・・・酒が足りんか・・・?」ウトウト

先生「ぷー、ぷー」

夏目「」スヤスヤ

・・・

・・・・・・

『うっそつきー!』

『まーた夏目がウソをついたー!』

夏目『ウソじゃないんだ! そこに居るんだよ変なのが!』

『変なのってなんだよー!』

『なにもいないじゃないかよー!』

夏目『危ないから行くな!』

『あー、もういいや。さっさと行こうぜー』

『公園行こうぜ公園!』

変なの『うーひひひひひっひ』

夏目『やめろー!』

『なんだよコイツ・・・』

『いいよもう、いこいこ』

変なの『ひーひひひひ』

シュゥゥウウウウ

夏目『あ・・・、どこかへ行ってしまった・・・』

夏目『なんだ・・・悪さをするわけじゃなかったのか・・・』

夏目『・・・っ・・・なんだ・・・っ・・・ぅっ・・・』

ポタッ ポタッ

夏目『あめっ・・・ふってる・・・』

『違うわ。あなたが泣いているのよ』

夏目『・・・っ・・・うぅっ・・・ひっく・・・』
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:48:12.82 ID:LyaDYuHzo

『動かないでね・・・』

夏目『え・・・?』

『あなたが泣いているのは悲しいわ』

夏目『・・・ぐすっ』

『ほら、動かないで』

夏目『・・・うん。・・・お姉さんは誰?』

『最近出会ったばかりだから、私が誰か分かるはずよ』

夏目『・・・っ』

『・・・これで、よし。・・・どうして泣いていたの?』

夏目『・・・あの子達が危ないと思って・・・声を出したけど・・・信じてもらえなかったんだ』

『・・・』

夏目『でも・・・なんともなくて・・・よかったって思ったら・・・涙が出てきて・・・』

『安心したのね。あなたは優しい子ね』

夏目『違う・・・。言葉が届かなくて・・・っ・・・哀しくなったんだっ・・・』

『私にはあなたの声が届くわ』

夏目『ウソだっ!』

『うふふ。本当よ〜』

夏目『ぜったいぜったいウソだ!』

『ウソだよ』

夏目『――ッ!』

・・・・・・

・・・

夏目「ッ!」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・なんだ・・・なにか『居る』のか・・・?」

先生「ぷー」

夏目(おれの心を探られたような・・・いやな・・・感じだ・・・)

先生「ぷー、ぷー」

夏目「起きてくれ先生」

先生「ぷー」

夏目「憑かれているのか聞きたかったけど、大丈夫なのかな・・・」

コンコン

夏目「・・・?」
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:50:15.78 ID:LyaDYuHzo

コンコン

夏目「ノック・・・? だれだろ・・・」

ガチャ

夏目「はい?」

澪「部屋にいたのか」

夏目「?」

梓「むぎ先輩が紅茶淹れてくれたから、展望車に来て」

夏目「・・・」

梓「顔色が悪い・・・」

澪「そうだな・・・どうした?」

夏目「いや・・・。なんでも・・・。分かった、行くよ」

澪「・・・うん。そうだ、お姉さんの個室は何番かな?」

夏目「え、あ、・・・おれが連れて行きますから先に行っててください」

梓「うん。・・・あとはエレナさんたちですね」

澪「そうだな。それじゃあとで」

夏目「・・・はい」

バタン

夏目「・・・もう一度顔を洗うか」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生、起きろ」ユッサユッサ

先生「ぷー、ぷー、ぷー」

夏目「的場の矢を受けたときと同じ感じがする・・・。都会の人ごみで相当疲れていたのかな・・・」

先生「ぷー」

夏目(的場という妖祓いが放った矢を受けた先生は、
    怪我の治療の為に数日間眠り続けていたことがある・・・)

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・それと同じなのかな」ナデナデ
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:52:10.43 ID:LyaDYuHzo

―――――展望車


紬「あら」

夏目「!」

唯「いらっしゃーい」

紬「らっしゃーい」

澪「屋台か」

夏目(夢に出てきたなんて・・・なんか恥ずかしいな・・・)

澪「お姉さんは?」

夏目「休んでいます。少し疲れたみたいで・・・」

秀輝「先生が? 意外すぎる・・・」

夏目「そうだな・・・」

さとみ「・・・」ジー

夏目(さとみさんの視線が痛い・・・)

紬「大村さんも先生と呼ぶのね〜」

秀輝「あ、うん・・・」

夏目(どうしいよう・・・恥ずかしい感じだ・・・)

律「空いてるから、秀輝の隣な」

夏目「は、はい」

秀輝「本当だ、顔が赤い・・・風邪か・・・?」

夏目「え・・・?」

澪「りつ・・・」

律「いやいや、完治してから接触してるからそれはないだろ」

紬「ふんふふ〜ん」コポコポ

梓「楽しそうですね・・・。カップを配りますね」

紬「あ、まって」

梓「?」

さとみ「どうしたの?」

紬「うふふ、みんなちょっとまってね」ゴソゴソ

みらい「ふむふむ」

夏目「飯山はなにを読んでいるんだ?」

みらい「仕事を探しています!」メラッ

夏目「し、仕事?」

秀輝「フリーのアイドルでも知名度はあるんだから、使ってくれるところがあるかもしれないってさ」

夏目「へぇ・・・」

唯「むぎちゃん、それはなに?」

律「おいマネージャー・・・みらいに関心持てよ・・・」

紬「みんな目を瞑ってね」

「「 ? 」」
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:54:24.95 ID:LyaDYuHzo

唯「ゲームするんですな?」

紬「そうですな」

澪「なにをするんだ?」

紬「いいから〜♪」

律「よし、みんな目を瞑れ」

秀輝「なにやら面白そうだ」

さとみ「うん」

みらい「あ、唯さんこれを見て・・・。あれ、どうして目を瞑って・・・?」

律「みらいも目を瞑りなさい」

みらい「は、はい」

梓「・・・みなさん目を瞑りましたか?」

律「いや、秀輝が瞑ってねえ」

秀輝「なんで分かるんだよ」

律「見たからだよ」

秀輝「律も目を開けてるってことじゃないか」

梓「お二人、しずかに目を瞑ってください」

律秀輝「「 はい 」」

夏目(なにしているんだろう・・・)

紬「いいわよ〜」

唯「なにかしたの?」

紬「しました」

澪「いつの間に・・・?」

紬「みんなちゃんと目を瞑っていたわ。あずさちゃん、配ってくれないかしら」

梓「はい」

夏目(なにをしたんだろう・・・)

梓「どうぞ」

さとみ「ありがとう」

梓「はい、どうぞ」

唯「センキュー」

梓「・・・」スッ

律「うむ。よい働きであった」

梓「どうぞ」

澪「ありがと」

梓「みらい、今は遊ぼう」

みらい「そ、そうですね」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:56:42.56 ID:LyaDYuHzo

梓「はい、夏目と大村さん」

夏目「ありがと」

秀輝「さーんきゅ」

さとみ「それで、なにが始まるの?」

紬「配られたカップの中に一つだけこれを入れました」ジャン

唯「そ、それは!」ドドーン

梓「ジャムですね」

律「なんだ・・・ジャムかよ・・・」

澪「なにを期待しているんだ」

紬「それと、・・・もう別のカップにはこれを」

さとみ「それは・・・、甘そうな缶ね」

夏目秀輝「「 う・・・ 」」

律「ストロベリー☆ロマンス・・・」

梓「なんですかそれ」

紬「金沢駅でもらったの」

梓「そうなんですか・・・また夏目の顔色が悪くなりましたけど」

夏目「胸焼けが・・・」

秀輝「あぁ・・・」

澪「・・・甘かったな」

みらい「反応からすると、ジャムは当たりで、ストロベリー☆ロマンスははずれでしょうか?」

梓「そうみたい・・・」

唯「ふふ、どっちに当たってもわたしは当たりですな」

紬「お召し上がれ」

律「いつもなら遠慮なんてしないが・・・」

澪「あぁ・・・」

梓「いただきます」ズズーッ

秀輝「躊躇一切無しだな・・・」

夏目「・・・」

唯「あ・・・いつもの味だよ〜」

みらい「・・・私のもいつもの味です」

さとみ「うん。普通が一番よね」

澪「・・・うん、いい香りだ」

律「落ち着く味だ・・・」マッタリ

紬「あら・・・? あとは夏目さんと大村さんね」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

梓「遠慮しているんですか?」

秀輝「いや・・・。いただきます」ズズーッ
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:58:46.67 ID:LyaDYuHzo

夏目(中野が飲めば分かるって言ってたけど・・・)チラッ

梓「?」

夏目「いただきます」

秀輝「あ、普通の味だ・・・。おいしい」

さとみ「それじゃあ・・・」

夏目「・・・ぐっ」

澪「ロマンスが当たったようだ」

梓「ジャムは誰ですか?」

紬「私ね」

唯「自分に当たった〜、ずるいよ!」

梓「でも、配ったのは私ですよ」

澪「むぎ・・・手前のカップに入れたな」

紬「うふふ」

梓「なるほど、それはそのまま残るというわけですね」

紬「実はね、ストロベリー☆ロマンスとジャム以外のカップに睡眠薬を入れたの」

澪「・・・なにを言っているんだ」

紬「みんなが起きたときには、最終駅に着いているわ」

律「どれだけの量だよ」

紬「うふふ、本当よ〜」

唯「うーん・・・。ウソだね!」

紬「ウソです!」キッパリ

夏目「・・・」

さとみ「・・・変なことを言うのね」ズズーッ

律「まったくだ」ズズーッ

秀輝「おいしいな。優雅なひと時だ」

みらい「はい。温かいです」

梓「とっても落ち着きますね」

紬「このジャムも金沢でいただいたの」

澪「い、いつの間に・・・」

梓「誰からですか?」

紬「あら、名前聞いてなかったわね・・・。夏目さんとよくお話をしていた方よ」

澪「あぁ・・・」

夏目「・・・」

梓「あ、ピノ」

ピョン

ピノ「ピピッ」

さとみ「名古屋の演奏中に飛び入り参加したリスね」

ピノ『ご主人様もあの曲を気に入っていたのだわ』

夏目「・・・!」
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 22:59:27.93 ID:LyaDYuHzo

ピノ『その顔は・・・あなた『聞こえる』のね』

夏目「!!!」

ピノ『うふ、面白い人をみつけたわ』

「ピノってばまた!」

紬「あら、風音さん」

風音「度々すいません」

ピノ『ご主人様〜!』ピョン

風音「もう・・・だめでしょ? 勝手に飛び回っちゃ」

ピノ『申し訳ないのだわ』ピピッ

紬「本当に謝っているみたいね〜」

みらい「はい。可愛いです」

夏目「ふふっ」

唯「?」

風音「?」

澪「和んだのか?」

律「夏目って乙女だな、顔に似て」

夏目「女顔」ガーン

秀輝「そうは言ってない・・・いや、言ったか」

風音「私、名古屋から乗車した岩泉風音といいます。こっちは友達のピノ」

ピノ『よろしくなのだわ』ピピッ

夏目「夏目貴志です」

風音「それでは・・・。失礼します」

ピノ『失礼するのだわ』ピピッ

スタスタ

夏目(ピノも妖の類なのかな、前に会った子狐のような・・・?)

256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:00:23.42 ID:LyaDYuHzo


夏目「ごちそうさまでした」

秀輝「ごちそうさま」

紬「いえいえ〜」

澪「ゆっくりしていかないのか?」

夏目「先生が・・・」ハッ

さとみ「お姉さんが、気になるのよね?」

澪「・・・ふむ」

律「シスコンか」

澪「こらっ」バシッ

律「・・・」ヒリヒリ

夏目「・・・」

秀輝「落ち込むな。間違ってはないだろ」

夏目「秀輝・・・!」

秀輝「あはは、それじゃね、みんな」

唯「はいよー」

紬「は〜い」
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:01:28.99 ID:LyaDYuHzo


夏目「おい」

秀輝「傍からはそう見えるのが自然だろ?」

夏目「・・・」

秀輝「というか、実際そうだろ」ニヤニヤ

夏目「・・・はぁ」

秀輝「あはは」

夏目「・・・それで、食堂車で北上さんと一緒になっただろうけど、どうだった?」

秀輝「強引に話題変えたな・・・。・・・俺の話なんて馬耳東風だよ。確かに中身の無い話をしていたからなぁ」

夏目「・・・」

秀輝「話題も尽きたんで、インテリぶって『最大多数の最大幸福』の話をしたんだけど、それに食いついてきたんだ」

夏目「・・・」

秀輝「少数の犠牲の上に成り立つ多数の幸せ、それを優先する。という大まかな持論を展開したんだけど」

夏目「・・・反発された?」

秀輝「うん。『そんな世界つまらないわね』で一蹴された。・・・そう言うなり去っていったよ」

夏目「へぇ・・・」

秀輝「その後、定義を変えるんだけどさ、それでも『つまらない』で返されそうで何もいえそうにない」

夏目「・・・」

秀輝「波長が合わないな・・・って感じた」

夏目「少数の犠牲がないと生まれない幸福が気に入らなかったんじゃないかな」

秀輝「・・・なるほど」

夏目「それじゃ、あとで」

秀輝「・・・あぁ」

258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:04:40.86 ID:LyaDYuHzo


ガチャ

夏目「・・・まだ寝てるのか」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「本当に疲れちゃったのか、先生・・・?」ナデナデ

先生「ぷー」

夏目「ガイドに京都の名物料理の情報載ってるかな」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「にしんそば、京都ラーメン・・・京野菜の漬物か・・・塔子さん喜ぶかな」ペラッ

先生「ぷー・・・」

夏目「和菓子も喜んでくれそうだな・・・」ペラッ

先生「・・・む?」

夏目「和食なんて分からないよな・・・。天ぷらうどんでいいかな、先生は」ペラッ

先生「おいこら」

夏目「あ、起きたのか」

先生「『いいかな』とはなんだ!? こっちにも選ぶ権利というものがあるぞ!」

夏目「はいはい。・・・やっぱり定番の生八つ橋かな」

先生「ちゃんと人の話を聞かんかっ!」トウッ

ガッ

夏目「いてッ!」

先生「・・・野菜ばっかりではないか!」

夏目「野菜がおいしいんだよっ! この中性脂肪妖怪!」ガスッ

先生「ぐふッ! にゃ・・・にゃんだと、もやしばっかり食ってるからもやしのままなんだぞ!かいわれ大根!」

夏目「なんだよこの三段腹!」

先生「みてわからんかアホー、三段も無いわ〜」タプン

夏目「十分太っているだろ! 痩せてみろよ!」

先生「もういいわバカ夏目!」

どろん

レイコ「ふんっ!」

夏目「先生、どこへ行くんだよ」

レイコ「知ったことか」

ガチャ

レイコ「ばーか」

バタン

夏目「・・・まったく・・・」ゴロン

夏目「しまった・・・。琴吹さんにニャンコ姿で見つかったこと、ちゃんと注意しとけばよかった・・・」

夏目「どうして荷物棚なんかに・・・寝ぼけていたのか・・・?」

ガタン ゴトン

夏目「草津に到着か・・・」

プシュー
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:08:33.98 ID:LyaDYuHzo


夏目(秀輝とエレナさん・・・? ホームでなにを・・・)

秀輝「エレナ、そのデータ消してくれないかな・・・?」

エレナ「せめて、小麦に見せてからですネ」

秀輝「見られるの嫌だから消して欲しいわけで・・・」

エレナ「往生際が悪いですヨ?」

秀輝「使い方間違ってるぞ。・・・恥ずかしいんだって、お願い」

エレナ「しょうがないですネ〜」

夏目「・・・」

エレナ「小麦ー!」

タッタッタ

秀輝「あ、やめろー!」

タッタッタ

澪「・・・」

夏目「秀輝はどうしたんですか?」

紬「・・・分かりません」

梓「澪先輩とむぎ先輩は見ていませんからね、なんといいますか
  カマキリと戯れていたんです。それをエレナさんにバッチリ撮られました」

澪「そんなことが・・・」

紬「まぁ・・・」

夏目「・・・」

梓「発車までのんびり景色を眺めましょうか」

澪「そうだな・・・」

260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:10:23.49 ID:LyaDYuHzo

prrrrrrrr

夏目(発車か・・・先生が降りた気配は無いな)

紬「そういえば、お姉さんと一緒じゃないのね?」

夏目「え、えっと・・・どこへ行ったんでしょうね・・・」

澪「・・・」

梓「唯先輩たちは大丈夫でしょうか」

紬「大丈夫よ」キリ

夏目「?」

風音「次は京都ですね」

夏目「うん。・・・どこへ行こうかな」

プシュー

ガタンゴトン
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:12:51.90 ID:LyaDYuHzo


夏目「平沢さんたちがどうかしたんですか?」

澪「草津の近くで映画撮影されているらしい。
  みらいに出演させるとマネージャーが息巻いていたよ」

紬「りっちゃんも居るから大丈夫よ!」キラン

夏目「・・・頑張っているんですね」

澪「きっとうまくいくよ」

紬「おふこーす」

梓「むぎ先輩!澪先輩! 2号車行きましょう、2号車」

澪「梓は2号車がお気に入りだからな」

夏目「どこが気に入ったの?」

梓「色彩・・・かな」キリ

夏目(向こうの座席に先生が座っているな・・・外見てるのか?)

梓「あれ、なんだかスルーされたような」

紬「あずさちゃん、行きましょ〜」

梓「は、はい」

テッテッテ

夏目「おれはここで失礼します」

スッ

夏目(聞こえなかったみたいだけど・・・いいか
   先生が人の姿で人とどう接しているのか、座って観察してみよう)

夏目「あ、車掌さん・・・」

夏目(気さくな人だから先生も普通に話の相手をしているな・・・)

緑「・・・」

夏目(妖相手に凄いな車掌さん・・・。知らないとしても先生の高圧的な態度に嫌な顔一つしない)

緑「・・・」

夏目(・・・そういう乗客の相手になれているのかな・・・って、盗み見してるみたいで嫌だな)

緑「・・・あれは誰?」

夏目「先生です・・・よ!?」

緑「・・・?」

夏目「い、いつからそこに・・・」

緑「さっきから・・・。どうでもいいけど・・・なにかあるの?」

夏目「いえ・・・」

緑「・・・そう」スッ

夏目「・・・」

緑「・・・」

夏目(本を読んでいるのか・・・。読書家なのかな・・・)

緑「・・・」ペラッ
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:14:01.17 ID:LyaDYuHzo

車掌「こんにちは」

夏目「・・・こんにちは」

緑「・・・」ペラッ

車掌「あちらに貴志さんのお姉さんがお座りになっていますよ」

夏目「・・・は、はい」

車掌「ケンカでもなさったのですか?」

夏目「・・・・・・はい」

車掌「そうですか」

夏目(なんだか恥ずかしい気分になるな・・・)

車掌「せっかくですから、緑さんに話しかけてみてはどうですか?」ヒソヒソ

夏目「え?」

車掌「うふふ、それでは」

夏目「あ、車掌さん」

車掌「はい、なんでしょう」

夏目「あ、いえ・・・なんでもないです」

車掌「そうですか。失礼します」

スタスタ

夏目(どんな会話していたのか気になるけど・・・気にしすぎだよな)

緑「・・・姉と一緒に乗ってるの?」

夏目「・・・はい」

緑「・・・そう」ペラッ

夏目「・・・」

緑「・・・」

夏目「・・・あ」

レイコ「ふん・・・」プイッ

スタスタ

夏目(なんだよその態度・・・!)

緑「仲がいいのね」

夏目「・・・そういうのとは違うと思いますけど」

緑「・・・別に、どうでもいいけど」ペラッ

夏目(部屋に戻ったのかな・・・)

緑「・・・」

夏目(さとみさんの言うとおり、構いすぎかな・・・)
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:15:03.39 ID:LyaDYuHzo

緑「・・・」

風音「あ、貴志さん」

ピノ『元気してますでしょうか』ピピッ

夏目「うん・・・」

風音「?」

緑「?」

夏目「あ、・・・可愛いね、ピノ」

風音「ふふ、ありがとうございます」

ピノ『まぁ、わたくしにはご主人様がおりますので。申し訳ありません』ピピッ

夏目「・・・」

ピノ『そんな熱い視線を送ってもどうにもならないのだわ!』ピョン

風音「あ、ピノ! 待ちなさい!」

ピノ『ここを離れましょうご主人様!』ピピッ

ピョンピョン

風音「まって!」

夏目(・・・なんだ、あのリスは)

緑「・・・」ペラッ

夏目(あの子のことも先生に聞かないと・・・って、本当に依存してるみたいだぁ・・・)グッタリ

緑「・・・具合悪いの?」

夏目「あ、いえ・・・」

緑「・・・そう」

夏目「顔色悪いですか・・・?」

緑「たまにね・・・。血の気がひいているわ」ペラッ

夏目「・・・そうですか」

緑「・・・」

夏目(しばらく外を眺めていよう・・・何も考えず・・・)
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:17:05.16 ID:LyaDYuHzo

夏目「・・・」ボケー

緑「・・・」

夏目「・・・」グゥー

緑「?」

夏目「朝ごはんまだだった・・・」

緑「・・・いつも貧血しそうな顔だから、ちゃんと食べたら?」

夏目(・・・遠まわしにもやしって言われているような・・・気のせいだよな)

秀輝「お、夏目」

夏目「うん?」

秀輝「特に用はないんだけ・・・どな・・・」

緑「・・・」ペラッ

夏目「・・・?」

秀輝「どうしたんだ?」

夏目「ぼんやりと景色を眺めていただけだよ」

秀輝「ふーん・・・」

緑「・・・」

秀輝「・・・」

緑「・・・」ペラッ

夏目(なんだろう・・・秀輝は北上さんを警戒しているのかな・・・?)

小麦「おーっす。こんなとこでなにしてんの〜?」

秋子「おヒマなら娯楽車へ行きませんか〜?」

秀輝「いいね、行こうぜ」

小麦「やった、軍資金確保」グッ

秀輝「いやいや、声に出てるから。そういうのは聞かれないようにしような」

小麦「分かったよ〜」

秀輝「聞こえなくてもそれは無いけど」

小麦「あはははっ」

秋子「貴志さんも行きませんか?」

夏目「いいです」

秋子「そんなキッパリと〜! 北上さんはどうですか?」

秀輝「・・・」

緑「・・・いい」ペラッ

秋子「残念です〜・・・」

小麦「しょうがないよ、行こ行こ!」

秀輝「じゃあな」

夏目「あぁ・・・」

緑「・・・」

夏目(賑やかだな・・・)

緑「・・・『最大多数の最大幸福』」
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:18:26.49 ID:LyaDYuHzo

夏目「え・・・?」

緑「・・・多数の幸福の影に入る小数の不幸。・・・どう思う?」

夏目「えっと・・・、その言葉には色んな意味が含まれますから・・・」

緑「・・・そう。これは道徳的な観点じゃない。誤解が生じやすい言葉」

夏目(秀輝が話題にした言葉か・・・。どうしたんだろう)

緑「・・・くだらないわね、こんな話」

夏目「・・・」

緑「気にしないで」

夏目「少数に入れば、視点は変わって・・・多数を恨むのかな・・・とは思います」

緑「・・・面白いこというのね」

夏目「・・・」

緑「自身が多数に入って、小数の立場を忘れることになるのなら・・・これほどつまらないものはないわ」

夏目「え・・・?」

緑「なんでもないわ・・・ちゃんと食べなさいよ」スッ

夏目「・・・はい」

緑「・・・私は少数に入っているのかもね」ボソッ

スタスタ

夏目「?」

夏目(おれのこの『見える』力は不幸なのか・・・。いや、力がなければ先生と出会えなかった・・・色んな妖とも・・・。
   論点がズレてるな。おれがこの力で不幸になっても、誰かが幸福になるなんてありえない)

ガタンゴトン
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:19:08.17 ID:LyaDYuHzo

―――――食堂車


店員「いらっしゃいませ」

夏目「一人ですけど・・・」

店員「はい。こちらへどうぞ」

夏目「さすがに空いてる時間か・・・」

店員「ご注文はなにになさいますか?」

夏目「パンセットをお願いします」

店員「かしこまりました」

スタスタ

夏目(一人か・・・)

267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:20:53.84 ID:LyaDYuHzo



店員「おまたせしました!」

夏目「いただきます」

店員「ごゆっくりどうぞ!」

スタスタ

夏目(律さんと平沢さん、飯山の3人がいないだけなのに・・・しずかに感じるのは気のせいだろうか)

レイコ「・・・」ドドン

夏目(おいしいな)モグモグ

レイコ「こら・・・」ゴゴゴゴ

夏目「ん?」モグモグ

レイコ「一人で食べているんだな」ゴゴゴゴ

夏目「先生食べたんだろ?」

レイコ「まだだ! 席が埋まっていたからな!」

店員「さっきはすいませんでした〜。ご注文は一緒でよろしいですか?」

レイコ「米だ、ライスを食わせろ」

店員「かしこまりました〜」

テッテッテ

夏目「・・・」

レイコ「・・・まったく」ヒョイ

夏目「おい、それはおれのハムだぞ」

レイコ「細かいことにうるさいやつだ」

夏目「・・・まったく」

レイコ「腹が減った」グゥー

夏目「先生、小動物でも妖としての力が宿るなんてことがあるのかな」

レイコ「なんだそれは。小動物ってなんだ」

夏目「リス・・・とか」

レイコ「聞いたこと無いな。狐や猫のそういう話はごまんと聞くが。あと狸もそうだな」

夏目「・・・」モグモグ

レイコ「狐は古代より受け継がれる力がある。猫は人の子の傍で力が宿るのかもしれんな」ヒョイ

夏目「・・・」

レイコ「だから小動物が話すなんて例はあまり聞かん」モグモグ

夏目「動物だとしたらどうなんだ? ライオンとか」

レイコ「類を選ばないで会話だと? それが出来たら虫とも話が出来て不思議ではない」ヒョイ

夏目「おい」

レイコ「なんふぁ?」モグモグ

夏目「おれの分がなくなるだろ。ちゃんと後で来るんだから我慢してくれよ」

レイコ「・・・ふん」

夏目「・・・」
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:25:28.67 ID:LyaDYuHzo

レイコ「深く考えても人の子であるおまえには答えなんて出ないさ」スッ

夏目「そうだな・・・ッ!」バシッ

レイコ「なにをする」

夏目「こっちの台詞だぞ。性懲りも無く手を伸ばして・・・」

店員「朝食セットです。仲がよろしいですね」

夏目レイコ「「 それはない 」」




さとみ「あれは・・・貴志くん」

梓「と、お姉さんです」

紬「なんだか雰囲気が変・・・。少しここから様子を見ましょうか」

梓「?」

さとみ「むぎさん・・・?」




レイコ「それで、なんの話だったんだ?」モグモグ

夏目「名古屋から乗ってきた子がいてさ」ヒョイ

レイコ「コラァ!」

夏目「仕返しだぞ、隙だらけだな先生」モグモグ

レイコ「ほぉ・・・」

夏目「なんだよ、食べた分は返してもらうからな」

レイコ「いい度胸だな。どっちが主か思い出させてやる」ゴゴゴゴ

夏目「そうだな。ニャンコ先生」ジロ

レイコ「ふふ」ゴゴゴゴゴゴゴ

夏目「先生っ! 本気になるな!」

レイコ「フシュゥウウウ」

夏目「バ、バカッ!」

レイコ『もう遅いわ』

どろろろろろ

夏目(うわ・・・自制がきかなくなってる・・・!)

夏目「隙だらけだぞ」ヒョイ

レイコ「おい!」

夏目「ガイドにおいしいラーメン屋さんが紹介されていたぞ、先生」

レイコ「湯葉豆腐も追加だからな」モグモグ

夏目「しょうがないな」





さとみ「怖いわね、お姉さん」

梓「食べ物の恨みは恐ろしいですからね。姉弟ケンカをひきおこすなんて」

紬「・・・あれ?」ゴシゴシ
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:26:49.12 ID:LyaDYuHzo

梓「どうかしたんですか?」

紬「お姉さんがね・・・ちょっと・・・」ゴシゴシ

梓「目がかゆいならこすらないほうが・・・」

紬「そういうのじゃないの・・・あらら?」

さとみ「席に着きましょ」




レイコ「もぐもぐ」

夏目「・・・京都か」

さとみ「こんにちは」

梓「朝食?」

夏目「うん。朝食べそこねたから。先生のせいで」

レイコ「私が何をした」

夏目「怒って何処か行っただろ」

レイコ「そんなこともあったな」モグモグ

紬「・・・そうなの・・・ね」ジー

レイコ「なんだ?」

紬「うーん・・・?」

夏目(怪しんでる・・・?)

レイコ「やらんぞ」

梓「私たちは食べました!」

さとみ「いつもの席でいいわよね」

紬「・・・えぇ」ウーム

梓「もぅ・・・失礼ですよ」プンプン

スタスタ

レイコ「どうして怒っているんだネコ娘」

夏目「やらんとか言うからだよ」

梓「ネコ娘じゃないです!」カッ

レイコ「耳もいいみたいだな」

270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:29:09.56 ID:LyaDYuHzo


店員「ありがとうございましたー!」

夏目「ごちそうさまです」

レイコ「行くぞ」

夏目「観光の準備するか・・・」





――・・・


ガタン ゴトン

夏目「そろそろ到着だ」

レイコ「京都ではどこへ行くか決まったのか?」

夏目「延暦寺は緑が多いって聞いたけど、行ってみる?」

レイコ「ふむ・・・」

夏目「まさか、行きたい場所でもあるとか・・・?」

レイコ「金閣寺だな」

夏目「妖の姿にならないと約束するならいいぞ」

レイコ「なんだその制限は」

夏目「名古屋城の天守屋根で寝ただろ。ヒヤヒヤしたんだぞ・・・壊すんじゃないかって・・・」

レイコ「物なんていつか壊れるものだろ」

夏目「壊れるから、長い年月維持された姿を守っていこうとするんだよ」

レイコ「おまえのいう事はよく分からんな」

夏目「・・・どうして金閣寺?」

レイコ「・・・なんとなくだ」

ガタン  ゴトン

プシュー

レイコ「よっ」

シュタッ

レイコ「ここが京都か・・・大したこと無いな」

夏目「まだホームだぞ。変わり映えしないだろ」

ミシッ

夏目「・・・?」

レイコ「おい変なものを持ったヤツラが集まってるぞ」

夏目「え? ・・・あぁ、カメラマンだよ。ヴェガの特集じゃないかな」

レイコ「そうか、関係の無い話だな」

ミシミシッ

夏目(右足の土踏まずが・・・痛む・・・?)
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/06(火) 23:30:12.03 ID:LyaDYuHzo

―――――金閣寺


レイコ「光っているだけか・・・」

夏目「金なんだぞ。それがお寺になっているんだ」

レイコ「おい、甘い匂いがする」クンクン

夏目「寺はいいのか先生・・・」

レイコ「きっと饅頭もある茶店に違いない。あっちだ」

タッタッタ

夏目「寺・・・」









レイコ「うまい」モグモグ

夏目「団子食べに来ただけみたいだな・・・」

レイコ「後でちゃんとみてやるわ」モグモグ

夏目「・・・」ハァ


272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/12/06(火) 23:42:15.04 ID:LdmbnnMCo
旅はいいよな
273 :私も旅がしたいです・・・ [sage]:2011/12/07(水) 00:20:22.95 ID:n7lqLb0Jo


―――――とある公園


斑『満足だ』

夏目「やめろっていっただろ、先生」

斑『問題あるまい。人の子が造った物の上で私がおまえを呼んだんだ。光栄に思え』

夏目「世界遺産の上で吼えただけだろ・・・、どうだった?」

斑『みんな私をみているようで気分爽快だ』

夏目「建物を見ていただけだ・・・つッ!」ズキッ

斑『さっきから右足を気にしているが、どうした』

夏目「なんだか、痛くて・・・。憑かれてるのかな・・・」

斑『そんな気配は無いが・・・』

夏目「ヴェガから降りて痛みを感じ始めた・・・」

斑『ッ!? ・・・なんだッ!』ビリッ

夏目「?」

斑『なにか来るぞ夏目、とてつもない力を感じる』ビリビリ

夏目「せ、先生?」

「・・・」

「・・・」

夏目「ッ!?」

斑『グルルルァアア!!』

夏目(黒猫と学ランの男! いつの間におれたちに近づいたんだ!?)

学ラン「・・・」

黒猫「ほぅ、凄いのを使役しておるようだ」

夏目「うわっ、猫が喋ったッ!」

斑『なんだ貴様らァ!』

学ラン「・・・」

黒猫「なんと、我の声が聞けるというのか・・・!」

斑『答えろォ!!』

夏目「ま、待て先生!」

学ラン「・・・」

黒猫「すまぬ。こちらも少々驚いているのでな」

斑『グルルルァァア』

黒猫「我の名は業斗童子。之の名を葛葉ライドウという」

夏目「ゴウト・・・ライドウ・・・?」

斑『どうして『喋る』事ができて、私が『見える』ッ!』

ゴウト「ふむ。どうやら悪魔ではなさそうだ。ライドウそれを仕舞え」

ライドウ「・・・」コクリ

夏目「・・・」
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:22:33.38 ID:n7lqLb0Jo

斑『さぁ、答えろ!』

ゴウト「どうやら、血の気が多い輩のようだ」

斑『なんだとォ!?』

夏目「言われて怒るなよ。自ら証明してるじゃないか」

斑『ぐぬっ』

夏目「先生はニャンコ姿に戻ってくれ」

斑『なぜだ』

夏目「ニャンコ姿の方が話がしやすいだろうから・・・。なにかと威嚇するし」

ゴウト「化けれるのか、珍妙な」

斑『その姿で喋れる』

どろん

ニャンコ姿の先生「おまえが言うでないわ」



紬「――ッ!」

梓「どうかしたんですか?」

紬「あずさちゃん・・・」

梓「はい」

紬「いまの――『見た』?」

梓「?」



先生「妖ではなさそうだが、なんだおまえは」

ライドウ「・・・」

夏目「・・・」

ゴウト「待て、少々厄介な事柄が起きたようだ」

夏目「?」

先生「どういうことだ」

ゴウト「そこのお嬢さんにうぬの変化をみられた」

先生「お嬢さんだとぉ・・・誰だ?」

夏目「え――」

紬「・・・これ・・・は」

夏目「――琴吹さん」ドクン

梓「なにを見たんですか? この季節にそぐわない学ランマントの人ですか?」

ライドウ「・・・」

ゴウト「ライドウよ、うぬの事なるぞ」

紬「クロネコちゃんも・・・喋った・・・」

ゴウト「なっ、なに!?」

先生「『も』って私の声も聞こえているのか!」

紬「・・・はい・・・・・・」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:25:52.95 ID:n7lqLb0Jo

夏目「・・・どう・・・して」

ライドウ「・・・」

梓「むぎ先輩・・・? ニャーニャー鳴いているのは喋ったと言わないんじゃ・・・?」

紬「あずさちゃんには・・・『聞こえない』・・・の?」

梓「鳴き声ですよね?」

紬「いいえ・・・違う・・・わ・・・」

梓「???」

夏目「見られた・・・」

ゴウト「ふむ・・・。考えられる要素はいくつかあるが・・・。
    それより、そちの主の顔色がすぐれんようだが」

先生「誰が主だ! 主は私だ、私!」ペシペシ

紬「まぁ・・・!」

梓「夏目・・・それ、ぬいぐるみじゃなかったんだね・・・って、夏目?」

夏目「見られた・・・ウソがバレた・・・」

ライドウ「・・・」スッ

先生「なんだそれは符か?」

ゴウト「鎮心符。混乱している対象に使用する」

夏目「・・・!」

紬「落ち着いて・・・うん。・・・落ち着いたわ」

ゴウト「お嬢さんには使用しておるまいな?」

ライドウ「・・・」コクリ

ゴウト「自力で心を静めたか。出来た人と見える」

先生「おまえはダメだな、夏目」

スゥ

夏目「あ、・・・ぁ」

梓「大丈夫?」

夏目「中野も・・・『見た』のか?」

梓「むぎ先輩が言う『見た』なら『見てない』んだと思う。私には状況を理解できないから」

紬「そうなの・・・」

夏目「・・・そうか」

紬「夏目さん」

夏目「!」ビクッ

紬「今は・・・なにが起こっているのか知りたいわ」

夏目「・・・・・・はい」
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:28:34.41 ID:n7lqLb0Jo

ゴウト「落ち着いたようだな。まずは状況を整理したい。
    お嬢さんは我の声が『聞こえる』かな?」

紬「は、はい」

ゴウト「こちらのお嬢さんには我の声は届く。・・・が、ネコのようなお嬢さん」

梓「む、むぎ先輩・・・今黒猫に返事しませんでしたか?」

紬「う、うん・・・」

梓「動揺してる・・・なにが起こっているの・・・?」

ゴウト「ネコ嬢には『聞こえない』様子」

先生「おい、小娘」

紬「・・・」

ゴウト「聞こえていないとな? ・・・きっかけはうぬのようであったが」

先生「わ、私なのか!?」

紬「あ、小娘って私なのね?」

先生「聞こえとるではないか!」ペシペシ

梓「小娘・・・? むぎ先輩をそう呼ぶのは誰?」ゴゴゴゴ

ライドウ「・・・」スッ

先生「私に指をさすな!」

梓「『聞こえない』けど、むぎ先輩の言動でなんとなく理解できたよ」グググ

先生「顔をひっぱるでない! 伸びるぅ!」ムグー

梓「次言ったら許さないから」ゴゴゴ

先生「どうせ小娘と夏目にしか『聞こえん』のだ・・・」ヒリヒリ

梓「・・・なんだか不愉快になった」

夏目「・・・」

紬「えっと、あれがあれで、これがこれで・・・」

ゴウト「状況を整理しているな。見所のあるお嬢さんだ」

梓「・・・ひょっとして、また小娘って言いました?」

ライドウ「・・・」コクリ

先生「おいこら! おまえは」

梓「いうなー!」グググ

先生「はなふぇねこむすふぇ」ムググ
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/07(水) 00:32:06.96 ID:umCnKkgBo
梓かわいいな
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:32:22.61 ID:n7lqLb0Jo

ゴウト「まぁよい。では、きっかけについて話そう」

夏目「・・・」

紬「よ、よろしくお願いします!」フンス!

ゴウト「お嬢さん、先ほど何を『見た』?」

紬「え、えぇと・・・。虚空からネコちゃん・・・。夏目さんのぬいぐるみが出現しました!」

ゴウト「・・・ふむ」

夏目(ウソが・・・バレた・・・)

紬「な、夏目さん!」

夏目「・・・・・・はい」

紬「り、理由があるんでしょうから・・・あ、後で聞いていいですか?」ゴクリ

夏目「・・・え?」

梓「ぬいぐるみだと言わないといけない理由を教えて下さい。と言っているんだよ」

夏目「あ、うん・・・」

先生「ネコ娘ぇー・・・」ヒリヒリ

ライドウ「・・・」

ゴウト「常識が上書きされたのだろうな」

紬「?」

夏目「どういう意味だ?」

ゴウト「まずは情報が欲しい。ライドウ、封魔管を・・・仲魔を召喚するのだ」

ライドウ「・・・」スッ

ゴウト「『見ろ』」


ズドーン!! ドドド─z__ン!!

「オレサマ オマエ マルカジリ」

「今度ノ相手ハドイツダ」

「我ラ四聖獣ノチカラオ見セイタシマセウ」

「イザ」


ゴウト「早まるな。敵ではない」

夏目「――ッ!?」

先生「なっ、なんだコヤツ等は!?」ビリビリ

紬「え・・・、え?」

梓「夏目は驚いてるけどむぎ先輩は・・・」

紬「な、なにが起こったのですか?」

ゴウト「お嬢さん方には『見えていない』様子。
    向かって左から、白虎・青龍・玄武・朱雀となる。うぬらは確認できるな?」

先生「うむ」

夏目「・・・あぁ」
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:36:51.00 ID:n7lqLb0Jo

ゴウト「ライドウ、戻せ」

ライドウ「・・・」スッ

シュゥゥウウウ

夏目「管に吸い込まれていった・・・。あ、妖とは違うのか・・・?」

ゴウト「こやつらは『悪魔』だ。『あやかし』とは異なる」

先生「禍々しい力を感じた・・・」

夏目「あぁ・・・」

紬「・・・えっと・・・」

梓「金閣寺集合まで時間ありますね」

ゴウト「ふむ。ペースを崩さないとはネコ嬢もなかなか」

先生「そやつはいいから、早く説明をしろ!」ペシペシ

ゴウト「お嬢さんはライドウ・・・。この学ランの男が召喚した『もの』が見えましたかな」

紬「い、いいえ・・・。私たち以外にはなにも確認できませんでした」

夏目梓「「 え・・・? 」」

ライドウ「・・・」

ゴウト「ライドウが召喚した『もの』を悪魔という。悪魔の仲間、仲魔と呼んでいる」

先生「あ、悪魔だと!?」

夏目紬「「 悪魔・・・ 」」

梓「悪魔? 天使の対称ですよね」

ゴウト「うぬは『物の怪』で間違いないな」

先生「・・・」

夏目「・・・」

紬「『もののけ』・・・」

ゴウト「? どうした」

先生「ここまで来ては後戻りできまい」

夏目「・・・・・・あぁ。・・・琴吹さん」

紬「はい・・・?」

梓「・・・?」

夏目「先生・・・このニャンコ先生は・・・『あやかし』・・・妖怪と呼ばれるものの類なんです」

紬「・・・まぁ」

梓「『あやかし』・・・この饅頭ネコが・・・」

先生「にゃんだとこのネコ娘!」

ゴウト「一通り情報が整った所で順に話そう」

先生「さっさと話せ!」

夏目「・・・」

紬「なるほどなるほど」

梓「なにがなるほどなんですか?」
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:39:27.83 ID:n7lqLb0Jo

紬「思い当たる節がいくつかあるのよ〜」

梓「そうですか・・・。むぎ先輩には隠せて無かった訳ですね」

夏目「・・・」

ゴウト「最大の謎が、どうしてデビルサマナーでもないお嬢さんが我の声が『聞こえる』のかという事」

紬「すいません、デビルサマナーとは?」

ライドウ「・・・」

ゴウト「この男、ライドウはデビルサマナーとして悪魔の関わる問題に携わっている。
    無論、一人では物事を進めぬゆえ、仲魔と行動を共にしておる」

ライドウ「・・・」スッ

梓「マントの下に・・・刀! ピストル!?」

先生「逮捕だ逮捕!」

夏目「うるさいぞ、先生」

紬「うふふ」

梓「?」

ゴウト「そう。それらの武具を隠すためにマントを羽織っておる」

紬「まぁ・・・」

梓「マントって・・・今夏なんだけど・・・学ラン帽が更に暑苦しい・・・」

ライドウ「・・・」

ゴウト「我の声はデビルサマナーしか聞こえないのだ。本来は」

紬「な、なるほどー」

夏目「おれにも聞こえる」

ゴウト「うぬはその『あやかし』と共にしているから、そこは大した問題ではない」

先生「・・・ふむ」

梓「さっきからニャーニャー言ってる黒猫はなにか喋っているんですね?」

紬「そ、そうなの」

ゴウト「『聞こえない』者はネコ嬢のように我の声が鳴き声として耳に入る」

夏目「・・・そうか」

ゴウト「先程、獣の姿からその姿に変化したところをお嬢さんに目撃されたであろう」

夏目「!」

先生「『見た』のだな」

紬「・・・はい」

ライドウ「・・・」

ゴウト「それがきっかけとなり、常識が上書きされたのだと推測する」

先生「・・・確かに。このコム・・・娘には夏目、田沼、タキのような力はない」

夏目「・・・」
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:41:44.59 ID:n7lqLb0Jo

ゴウト「変化の瞬間を目の当たりにしても、大抵は勘違いで済ませるはず」

紬「そうですね・・・。色々とおかしな点を『見て』います」

夏目「・・・っ」

先生「マヌケめ」

夏目「先生が油断するからだろっ」

ライドウ「・・・」

紬「私の洞察力が優れているのでは」キリ

ゴウト「悪魔が見えない点だが、これは悪魔が存在するというお嬢さんの常識が一定のレベルを越えていない為」

紬「・・・しょぼん」

梓「?」

先生「なぜうなだれるのだ、悪魔とやらを『見たい』のか?」

紬「い、いえ・・・」

先生「分からんヤツだ」

梓「む・・・」

先生「このネコ娘・・・侮れんな・・・『聞こえない』はずなのだが鋭い」

夏目「ネコが喋るという常識の一定レベル、それがさっきの変身で越えたということ・・・か」

ゴウト「ご名答。我々には自然な事でも、お嬢さん方には不自然であるゆえ、今までは『聞こえなかった』のだ」

ライドウ「・・・」

紬「なるほどー」キラキラ

梓「な、なんですか? いいことでも言われたんですか?」ソワソワ

紬「うふふ、私ねネコちゃんと会話できるみたいなの」キラキラキラ

梓「な、なんと」

「みゃー」

梓「またネコ・・・」

ネコ「みゃー」

紬「ふむふむ」

梓「なんて言ってますか?」

ネコ「みゃ〜」

紬「・・・みゃ〜って」

先生「そいつはただのネコだぞ」

ネコ「みゃー」

テッテッテ

梓「行ってしまいましたね」

紬「そんな・・・聞こえなかったわ」ガーン

梓「?」

夏目(今のはただのニャンコ・・・)
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:45:05.50 ID:n7lqLb0Jo

ゴウト「では、今まで説明した事を踏まえて実験をしてみよう」

夏目「実験?」

先生「なにをするんだ?」

梓「実験?」

紬「・・・わくわく」

ライドウ「・・・」

ゴウト「ぬし、もう一度獣の姿になってみてくれ」

先生「獣!? 高貴である私を!」

夏目「・・・どうして?」

ゴウト「そこのネコ嬢の常識を上書きしてみる」

先生「拒否だ拒否!」

紬「あら・・・」

梓「?」

紬「あずさちゃんもネコちゃん達の言葉が『聞ける』かもしれないわ」

梓「いいですね、むぎ先輩に無礼を働いたらすぐ分かりますから」ジロ

先生「だから拒否だ! 断固だ断固拒否!」

ゴウト「お嬢さんとネコ嬢の常識は異なるゆえ、その線を図りたいというのもあるのだ」

先生「・・・」

夏目「・・・」

先生「・・・なるほど。この状況をすんなり受け入れたコム・・・娘だ。ネコ娘が受け入れられるか見ものだ」

夏目「先生っ! 安易な気持ちで行動するなよ! 断固はどうした!」

先生「安易ではない」

どろん

斑『娘の器を図るのだ』

梓「饅頭ネコが消えた!」

紬「あら・・・?」

夏目「・・・・・・。琴吹さん・・・『見える』?」

紬「い、いいえ・・・」

ライドウ「・・・」

斑『この小僧は『見える』ようだな』

ライドウ「・・・」コクリ

梓「お、落ち着け・・・私・・・」

紬「そ、そうね。唯ちゃんはどこかしら」
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:47:19.44 ID:n7lqLb0Jo

梓「唯先輩たちは京都に到着するころだと思います」

紬「そうね。澪ちゃんも映画村から直接金閣寺へ向かうそうだから」

梓「さとみさんもいるんですよね」

紬「えぇ、約束したものね」ニコニコ

梓「はい。みなさんと金閣寺を見物です」

紬「ちょうど夕方になるから夕陽で美しいでしょうね」

梓「楽しみですね!」

ゴウト「見事に日常へ戻っていった様子」

斑『・・・ネコ娘にはそのクロネコの声が『聞こえていない』のだな』

夏目「あぁ・・・」

ゴウト「お嬢さんにも獣姿であるおぬしの声が『聞こえていない』ように受け取れる」

斑『一定の線が曖昧だなめんどくさい』

どろん

レイコ「・・・ふぅ。そろそろ飯だ夏目」

梓「うわっ、夏目のお姉さん! どこから!?」

レイコ「ずっといたさ」

ゴウト「ほぅ、人にも化けるのか。珍妙なこと」

レイコ「おまえがいうな」

梓「あれ・・・?」

紬「やっぱり先生さんとは姉弟じゃなかったのね」

夏目「・・・・・・はい。ウソを吐いて・・・すいませんでした」

レイコ「・・・」

紬「いいのよ〜。今は理解できるけど、前なら理解できなかったでしょうから
  誤魔化さないといけないものね」

夏目「・・・っ」

レイコ「・・・」

ゴウト「ところで・・・」

夏目「・・・?」

ゴウト「右足を気にしておるようだが?」

夏目「京都に着いてから痛むんだ」

ゴウト「承知した。ライドウ」

梓「・・・!」

ライドウ「・・・」スッ

夏目「それは・・・?」

ゴウト「宝玉という。力を取り戻す薬だ」

夏目「薬?」

ゴウト「うぬはこの土地に力を吸われているようだな」

紬「そんなことがあるんですか?」

ゴウト「稀に聞く。体力の減少からくる力の漏洩・・・体力が戻ればそれも無くなるであろう」

夏目「そうか。ありがとう」
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:50:05.74 ID:n7lqLb0Jo

ゴウト「この京都、不思議な力が溢れておる。仲魔4体同時召喚でも容易いようだ」

ライドウ「・・・」スッ

レイコ「ん?」

ゴウト「ソーマだな。どうしてそれを渡すのだ?」

ライドウ「・・・」

ゴウト「受け取ってくれ。うぬの力も減少していると見受けられる」

レイコ「よく分からんが、いただいておこう。後で使ってやる」

夏目「うわ、体中に力がみなぎるようだ」

ゴウト「それはよかった」

梓「ふ、普通に喋ってる・・・!」

紬「あずさちゃんもゴウトちゃんの声が聞こえるの?」

梓「き、聞こえます」

ゴウト「ほぅ、越えたようだ」

レイコ「ちっ」

夏目「・・・」

ゴウト「それでは帰るとするか」

ライドウ「・・・」コクリ

梓「おぉ・・・」

紬「最後に質問していいですか?」

ゴウト「なんでも答えましょう。お嬢さんのためなら」

紬「まぁ・・・」ポッ

梓「・・・」

レイコ「ネコ娘、あのやりとりはいいのか」

梓「どこに非があるんですか?」

レイコ「ちっ」

紬「ライドウさんは・・・その・・・」

ゴウト「気にすることはありませんよ。口数が少ない男ですから」

紬「寡黙なのね」

梓「高校生?」

ライドウ「・・・」コクリ

夏目「歳が近いのか・・・」

紬「どちらへ帰られるんですか? 異次元?」

ゴウト「帝都です。この時代には帰る場所がありませんので・・・」

梓「異次元ってなんですか」

夏目(帝都・・・時間さえ越えて出会ったのか・・・)
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:52:50.50 ID:n7lqLb0Jo

紬「色々と、ありがとうございました。理解できたのもゴウトちゃんの説明のおかげです」

ゴウト「いえいえ、お嬢さんの為ならなんでもいたしましょう」

梓「・・・」

レイコ「表情が歪んだぞ」

梓「ずっとこんな軽い口調だったのかな・・・」

ライドウ「・・・」

ゴウト「我も勉強になったゆえ、京都に来て良かったと思うところ」

紬「・・・そうですか」

ゴウト「それでは、失礼致します」

ライドウ「・・・」

ゴウト「どうした、ライドウよ」

ライドウ「・・・」スッ

ズドーン!!

「ム・・・? 戦闘デハ無イノカ」

ゴウト「どうして召喚するのだ?」

夏目「獅子?」

ライドウ「・・・」スッ

レイコ「なんだ、私になにかあるのか?」

ゴウト「うむ。詳しくは分からんが、なにか思うところがあるらしい」

紬「なにがあるのかしら?」

梓「クロネコの声が聞こえても分からないことだらけです・・・」

紬「そうよね・・・。ゴウトちゃんというのよ、あずさちゃん」

「我ト別レルト言ウノカ?」

ライドウ「・・・」コクリ

ゴウト「うむ、どうやら不吉な予兆といったところか」

レイコ「私か?」

ゴウト「聖獣シーサーという。うぬらを守護してくれよう」

紬梓「「 シーサー? 」」

夏目「そこにいます。獅子みたいな狛犬みたいな姿をしています」

紬「まぁ・・・」

シーサー「マテ、マグネタイトノ無イコヤツラニ我ノ力ヲ使イコナセマイ」

ゴウト「そう言うな。悪魔と戦うわけではない、守護を頼んでいるんだ」

シーサー「我ハ力ヲ求メ故郷ヲ後ニシテイル、用ガ済ンダノナラ帰ラセテモラウ」

ゴウト「役目を終えたらそれでいいだろう」
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:54:16.48 ID:n7lqLb0Jo

レイコ「おい、話を進めるな。大体私に守護など必要ない」

ライドウ「・・・」スッ

夏目「琴吹さん・・・?」

ライドウ「・・・」コクリ

紬「え?」

梓「?」

シーサー「イイダロウ。ダガ必要ナ時ダケダ。馴レ合ウツモリハ毛頭ナイ」

シュッ

夏目「消えた・・・」

ゴウト「ヤツは守護神として崇められている聖獣ゆえ、表立って動くことはそうない」

ライドウ「・・・」

レイコ「・・・」

ゴウト「長居しすぎたようだ、行こうぞライドウよ」

ライドウ「・・・」コクリ

紬「それでは〜」フリフリ

梓「最後まで喋りませんでしたね」

紬「重要なことしか口にしないお人なのよ」ウンウン

レイコ「・・・」

夏目「あ、ライドウに聞きたいことが」

ライドウ「?」

ゴウト「?」

夏目「その格好暑くないのか?」

ライドウ「・・・暑い」

ゴウト「喋った!」

287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:57:15.36 ID:n7lqLb0Jo


紬「ゴウトちゃんうなだれていたわね」

夏目「説明はほとんどゴウトが行っていましたから」

梓「・・・重要なとこすら喋らなかったんですよね」

レイコ「・・・」


唯「おーい! あずにゃんやーい!」

律「むぎー!」


紬「あ、お〜い!」

夏目「秀輝も一緒だったのか」

秀輝「駅前で会ってな、夏目たちも居るとは思わなかった」

梓「あとは澪先輩とさとみさんですね」

律「澪は一緒じゃないのかよ」

紬「小麦さん達と映画村へ行ったのよ〜」

唯「映画村!?」

夏目「平沢さん・・・?」

梓「唯先輩のテンションが変ですね・・・」

律「唯はいつもこんなんだろ」

唯「澪ちゃんまだですかな!」

レイコ「騒がしいヤツだ」
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 00:58:44.53 ID:n7lqLb0Jo

澪「おーい、みんな!」

さとみ「おまたせー」

梓「二人一緒に来ましたね」

紬「みんな揃ったね、それでは行きましょう〜」

澪「夏目たちも一緒に行くのか?」

夏目「金閣寺に行くんですよね? 行ってきた帰りなのでおれたちは失礼します」

唯「そっか、残念だよ!」

秀輝「先生たちはどこへ?」

レイコ「比叡山だ」

秀輝「ふー・・・ん・・・」

夏目「それじゃ後で」

紬「じゃあね〜」フリフリ

梓「金閣寺ですかぁ・・・」ワクワク

紬「あずさちゃんは冷静なのね」ニコニコ

梓「むぎ先輩がいなかったら今頃頭がパンクしてると思いますよ」

紬「うふふ」

澪「なんの話をしているんだ・・・?」

律「秀輝、行くぞー」

秀輝「う、うん」

律「なんだよ、夏目んとこ行きたいなら無理して私らに付き合うことないぞ?」

秀輝「いや、金閣寺へ行くよ!」

さとみ「そうね。車掌さんにも頼まれたものね」

秀輝「うん」

律「なにを?」

秀輝「マスコミ対策」

289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:00:24.78 ID:n7lqLb0Jo

―――――比叡山


レイコ「・・・予兆か」

夏目「先生、シーサーの気配とか分かる?」

レイコ「あっちに憑いて行ったようだ。私がいるからここは無用だと思ったんだろう」

夏目「そうか・・・。でも、常識なんて簡単に覆されるんだな」

レイコ「覆しではない。上書きだ。田沼、タキもその範囲で説明できる」

夏目「・・・」

レイコ「田沼は気配、いわゆる勘で妖を感じ取り、存在を認識することで一般の常識を上書きし、
    私と会話が出来るようになった」

夏目「ニャンコ姿の先生とだな」

レイコ「うむ。タキも陣を書き、その上を通過する妖を認識したのだ」

夏目「先生が妖だという常識が上書きされたと・・・」

レイコ「そうだ」

夏目「琴吹さんと中野の二人は妖の姿を見ることはこの先無いんだよな」

レイコ「私らと別れれば、それらと会うことはまず無いからな
    今までの常識が浸透していくのだ。今が夢であったかのようにな」

夏目「そうか・・・」

夏目(よかったと思っていいんだよな・・・)

レイコ「・・・」

夏目(『聞こえる』だけで・・・終わるんだから、妖と関わりを持たなくて済むのだから・・・)

レイコ「・・・おい、低級」

低級「ひっ! 人の子!」

レイコ「そのやりとりは飽きたわ」ヒョイ

低級「はなせー!」ジタバタ

レイコ「美味そうな酒が沸く幹の在り処は知らんか?」

低級「誰が人の子なんぞに教えるか、イーっだ」

レイコ「・・・ほぅ」ピキピキ

夏目「どこが高貴なんだ・・・」

290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:02:44.89 ID:n7lqLb0Jo

―――――ヴェガ


夏目「まさか本当にあるなんて・・・」

レイコ「これは取って置く」

夏目「すぐ飲まないんだな」

レイコ「一人ではもったいないからな。すぐ戻るから動くなよ。飯だ、飯を食いに行くぞ」

タッタッタ

夏目「誰かと一緒に飲むってことか・・・?」

夏目(食い意地が張ってるだけじゃないんだな・・・。ちょっと意外だ)

律子「あら、貴志くんじゃない」

夏目「あ、秋月さん・・・飯山も・・・どうしたんですか?」

みらい「荷物を取りに来たんです。唯さん達はまだ戻ってないですか?」

夏目「おれたちも到着したばかりだから、分からないな」

みらい「そうですか・・・」

律子「みらい、急いで」

みらい「は、はい!」

テッテッテ

夏目「飯山は降りるんですね」

律子「えぇ、うちの事務所に入ることになったからこれから忙しくなります」

夏目「・・・そうか、よかった」

律子「・・・」

夏目「前のマネージャーがどういうヤツか知ってますか?」

律子「えぇ。実力はあるって話ですね・・・」

夏目「・・・」

律子「でも、素材を活かせないのなら先は短いわ」

夏目「飯山はどうですか?」

律子「あの子は歌って踊るより、演技方面を固めていく方がいい。歌を辞めたりしないだろうけど」

夏目「・・・」

律子「平沢唯さん含め、HTTのみなさんにお礼を伝えておいてくれると助かります」

夏目「会って言わないんですか?」

律子「・・・酷かもしれないけど、この業界に居る限り時間に追われる日々なので。お願いします」

夏目「・・・」

律子「・・・」
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:03:26.22 ID:n7lqLb0Jo

みらい「・・・お待たせしました」

律子「居なかったのね」

みらい「・・・」

車掌「飯山みらいさん。当特急ヴェガへのご乗車誠にありがとうございました」

みらい「はい・・・。これ、乗車証です」

車掌「確かに受け取りました」

夏目「・・・」

律子「時間よ」

みらい「もう少しだけ」

律子「・・・」

みらい「・・・」

律子「テレビで頑張り続けていたらあの子たちも納得してくれるわ」

みらい「で、でも」

律子「・・・遅れるわけにはいかないのよ」

みらい「・・・・・・はい」

車掌「・・・」

律子「みらいがお世話になりました」

みらい「あり・・・っ・・・がとうございました・・・っ」

車掌「私も応援していますからね」

みらい「はいっ!」

292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:04:41.52 ID:n7lqLb0Jo


夏目(行ってしまったか・・・)

車掌「彼女は強いです。たくさんの勇気を与えて、たくさんの勇気を貰って・・・」

夏目「・・・」

車掌「・・・ふふ、負けていられませんね」

夏目「・・・はい」

車掌「あら、秀輝さん」

秀輝「車掌さん、マスコミ連中はもう引き上げたんですか?」

夏目「?」

車掌「はい。少し前に・・・。唯さんと一緒ですか?」

秀輝「は、はい。入り口で待機させてますよ」

車掌「先ほどみらいさんが降りていかれましたよ」

秀輝「えっ!?」

車掌「まだ駐車場におられると思います」

秀輝「分かったッ!」

ダダダダッ

夏目(平沢さんに伝えに行ったのか・・・)

夏目「車掌さん、マスコミって・・・?」

車掌「名古屋城で撮影された演奏がネットで反響を呼んでいるそうです」

夏目(秋月さんが撮ったやつだ・・・!)

車掌「情報を求めてマスコミ関係者が放課後ティータイムの皆さんを探しています」

夏目「・・・それで、秀輝が様子を見に?」

車掌「はい。目を逸らす為に手伝ってくれていますよ」

夏目「・・・秀輝が・・・・・・」

レイコ「ここにいたのか」

車掌「?」

レイコ「飲むぞー♪」

夏目「車掌さんに迷惑だぞ、先生ッ!」

タッタッタ

レイコ「夏目はどこへ行ったんだ?」

車掌「みらいさんのお見送りかと・・・。申し訳ありません、飲酒はもう・・・」

レイコ「・・・それはいかん」

車掌「・・・え、と」アセアセ

293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:09:26.24 ID:n7lqLb0Jo

――・・・


秋月「そろそろいくわよ」

みらい「はい。・・・HTTFが復活できれば・・・いいなと思ってます」

梓「そうだね」

律「気が向いたらな〜」

澪「大物だなぁ」

紬「うふふ」

唯「・・・」

みらい「・・・」

唯「・・・君にはあの太陽が見えるか、あの空が見えるかい?」

みらい「うん。空には輝く太陽がある、とても眩しく
    その事を胸にわたしは・・・夜を駆け抜ける」

唯「自分がどこにいるかさえ見失いそうになったら、太陽を」

みらい「世界を覆う影を明るく照らす、月を」

唯「見つけてキミを想うよ」

みらう「みつけてあなたを想います」

唯「・・・」

みらい「ありがとう・・・。それじゃあ・・・行ってきます」

唯「うん」

みらい「・・・」

唯「じゃあね! みらいちゃん!」

みらい「はい! ありがとうございました!」

294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:10:30.34 ID:n7lqLb0Jo

夏目「・・・」

さとみ「行ったわね〜」

律「これからが正念場なのに」

澪「それなのに笑顔を崩さなかったな」

さとみ「・・・負けてらんないな〜」

律「お、なんかあるのか?」

澪「探るなっ」ビシッ

律「あいたぁ」

さとみ「ふふっ、みんなが眩しいわ」

夏目「・・・」

澪「夏目はみらいのドラマを見たことある?」

夏目「いえ・・・?」

律「唯が憂ちゃんと練習したドラマのやりとりだよ、今のは」

夏目「・・・」

さとみ「そのドラマ見てないけど、今の状況と合ってたわね」

澪「唯が太陽かな」

律「みらいが太陽でもおかしくないんだよな」

夏目「・・・」

さとみ「どっちも太陽で、月で・・・お互いの存在を認め合って」

澪「うん」

律「そんな感じだな」

夏目「・・・」
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:13:40.77 ID:n7lqLb0Jo

―――――京都駅前

秀輝「みんなは?」

夏目「ご飯を食べに行ったよ」

秀輝「そっか・・・」

夏目「どうしてそんなに一生懸命なんだ?」

秀輝「ん? ・・・なにが?」

夏目「平沢さんの為に走ったよな」

秀輝「・・・旅の終わりが挨拶も無しなんて、寂しいじゃん」

夏目「・・・」

秀輝「平沢さん、みらいちゃんの為にめちゃくちゃ頑張っていたから・・・って感じだ」

夏目「・・・そうか」

秀輝「俺もあんな風に旅の終わりを迎えられるといいけど」

夏目「・・・どうかな。もっと頑張らないといけないんじゃないのかな」

秀輝「そうだとしたら気が抜けないな。・・・って、いつ休めるんだよ」

夏目「休んだら時間がもったいない・・・」

秀輝「ちぇっ・・・。妙に元気になったな」

夏目「ふふ」

緑「旅行なんてただの暇つぶしよ」

夏目「・・・あ」

秀輝「・・・」

緑「顔色・・・よくなったのね」

夏目「そんなにハッキリ分かりますか・・・?」

緑「えぇ・・・」

夏目(やっぱり疲れていたんだな・・・)

秀輝「暇つぶしなら楽しめないんじゃないの?」

緑「・・・楽しいの?」

秀輝「楽しいよ、色んな事が起きて毎日が充実してる」

緑「そう・・・」

夏目「北上さんは旅行としてヴェガに乗ったんじゃないんですか?」

緑「・・・」

秀輝「・・・だんまりですか」

緑「別に・・・。どうでもいいでしょ・・・じゃ」

スタスタ

夏目「・・・」

秀輝「自分の事はぜんぜん喋らないんだよな・・・」

夏目「・・・そうなのか」

秀輝「ご飯食べに行こうぜ、せっかくの京都だ!」

夏目「そうだな。先生を捕まえてからだ」

秀輝「ヴェガにいるのか?」

夏目「うん・・・。車掌さんに迷惑をかけてないといいけど」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:14:55.63 ID:n7lqLb0Jo

―――――ヴェガ


レイコ「どこへ行っていた!」プンプン

夏目「見送りに行ってたんだよ」

レイコ「飯だぞ、京都ラーメンに湯豆腐!」

秀輝「湯豆腐なんて・・・渋いな先生」

レイコ「行くぞ!」

夏目「先生、車掌さんに迷惑をかけていないだろうな」

レイコ「無論だ」

秀輝「車掌さんも大変だよな。いろんな乗客がいるから」

夏目「だから手助けしてるんだ、秀輝は」

秀輝「ま、そんなとこ。・・・俺もラーメンにしようかな・・・京野菜たっぷりの」

レイコ「・・・」ジュルリ

297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:15:53.47 ID:n7lqLb0Jo

―――――ヴェガ


レイコ「満足だ」ゲフ

夏目「うん。おいしかったな、にしんそば」

秀輝「先生、ラーメン3杯も食べた・・・」

車掌「お帰りなさいませ」

秀輝「ただいま〜」

レイコ「寝るか・・・ふぁ」

夏目「・・・」

車掌「秀輝さん、さとみさんを知りませんか?」

秀輝「ご飯を食べに行ったきり見てないですよ」

車掌「・・・そうですか。学校関係者の方が尋ねていらしたので」

夏目「?」

秀輝「さとみちゃんを探していたのか・・・。わざわざこの時間に京都まで・・・」

レイコ「悪いことしたんだな」

夏目「さとみさんが・・・?」

車掌「秀輝さん・・・」

秀輝「分かりました、さとみちゃんに伝えておきます。心構えがあった方がいいですよね」

車掌「助かります」

秀輝「それじゃ、駅前で待ってみますね」

タッタッタ

夏目「・・・」

レイコ「自分を変えようとしているんだな」

夏目「自分を・・・」

車掌「無事に終えられるとよいのですが」

夏目「・・・」

298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:17:09.65 ID:n7lqLb0Jo

――・・・


車掌「当特急ヴェガへのご乗車誠にありがとうございました」

さとみ「こちらこそ、突然の乗車を快く受けてくださって感謝しています。ありがとうございました」

車掌「いえ・・・」

さとみ「乗車証を・・・お返しします」

車掌「はい、確かに」

夏目(別れの時か・・・)

レイコ「・・・」

エレナ「寂しくなりますワ」

小麦「うん・・・」

さとみ「二人とも元気で・・・。あなたたちには元気をたくさんもらったわ」

エレナ「そういってくれると嬉しいですワ」

小麦「うん!」

さとみ「ありがとう」

澪「・・・」

さとみ「むぎさん・・・、これ和さんが取った景品だけど・・・」

紬「いいの?」

さとみ「うん、大事にしてね」

紬「大切にするね!」

梓「・・・ここでいいんですか?」

さとみ「自分の足でヴェガから離れて行きたいの」

梓「そうですか・・・」

唯「さとみちゃん・・・」

さとみ「急でごめんね、唯ちゃん・・・」

唯「・・・二人も降りちゃうなんて」

さとみ「私にもそんな顔してくれるのね・・・ありがとう」

唯「さびしいよ・・・」

さとみ「みんながいるじゃない、大丈夫!」

澪「げ、元気で・・・ね」

さとみ「うん! ベースとってもかっこよかった。忘れないわ」

澪「あ、ありがとう」

さとみ「むぎさんに髪型変えられた事、少し恥ずかしかったけど楽しかったわ」

澪「うん!」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:17:57.24 ID:n7lqLb0Jo

律「・・・」

さとみ「・・・」

律「じゃあな」スッ

さとみ「・・・宣誓?」

律「ハイタッチだよっ」

さとみ「あ、あぁ。そうね、分かったわ」

パァン

律「へへっ、元気でなっ」

さとみ「うん!」

秀輝「じゃ、俺も」スッ

さとみ「ありがとう、秀輝くん!」

パァン

秀輝「名前で呼んでくれた」

さとみ「空気は読むわよ〜」

律「ジョルノだろおまえは」

秀輝「違います」

エレナ「ワタクシもハイタッチですワ」

小麦「私もー!」

さとみ「ふふっ」

パンパァン

澪「わ、私も!」

さとみ「もぅ・・・ちょっと恥ずかしくなってきたんだけど」

パァン

唯「じゃ・・・っあ・・・ね!」

さとみ「唯ちゃんはいつまでもそのままでいて欲しいな」

パァン

梓「さようならです!」

さとみ「少しなまいきだけど、とっても可愛い子」

パァン

紬「よし、こぉーい!」

さとみ「不思議な人ね〜」

パァン

さとみ「・・・」スッ

レイコ「ん?」

梓「流れを読んでください」
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:19:55.36 ID:n7lqLb0Jo

レイコ「大して話もしていないだろ」

さとみ「でも、出会えたことに変わりは無いですから」ニコニコ

紬「そうね」ニコニコ

レイコ「・・・こうか」スッ

パァン

さとみ「弟さんを大切にしてくださいね」

レイコ「・・・ん?」

さとみ「ん?」

律「首をかしげあってどうすんだよ」

紬梓「「 ブフッ 」」

澪「?」

夏目「・・・」

さとみ「貴志くんも元気で」スッ

夏目「・・・っ」

さとみ「恥ずかしいの?」

夏目「いや・・・っ・・・そうじゃ・・・なくて・・・」

紬「・・・慣れていないのね」

夏目(妖との様々な出会いと別れを通して、慣れているはずなのに・・・っ)

レイコ「私がやっておまえがやらないのは気に食わん」ガシッ

夏目「っ!」

さとみ「ふふっ、楽しんでね。きっとかけがえの無い旅路になるわ」

夏目「は、はい」

パァン

梓「・・・」

車掌「・・・」スッ

さとみ「・・・素敵な・・・旅・・・でした・・・っ」

パァン

さとみ「っ・・・みんな、バイバイっ!」

タッタッタ

梓「・・・」

律「行ってしまったな」

紬「うん」

澪「あぁ・・・」

唯「・・・」

夏目「・・・」

レイコ「・・・ふん」
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:21:35.99 ID:n7lqLb0Jo

エレナ「・・・小麦ー! 明日の準備しますヨー」

小麦「・・・うん!」

秀輝「律、売店のアイスでいい?」

律「あぁ、いいぜ〜」

秀輝「じゃ、駅の売店で買ってくるわ」

スタスタ

律「おいしいヤツな〜」

秀輝「はいよ〜」

車掌「なんですか?」

律「私らの事、野郎扱いした罰です」ウシシ

車掌「まぁ」クスクス

律「変に律儀だよな〜」

車掌「そうですね・・・。それでは私はこれで・・・」

律「はーい」

唯「ぅ・・・っ・・・」グスッ

梓「・・・っ」

澪「・・・」

紬「・・・」

唯「あずにゃぁん」

ダキッ

梓「・・・っ・・・」グスッ

唯「・・・っ」グスッ

梓「・・・とくべつ、・・・ですよ?」グスッ

唯「・・・ぅ・・・ん」グスッ

ギュウ

律「やれやれ」

澪「・・・」

紬「・・・」

律「寝るには早いな、どうすっかな」

澪「展望車でくつろぐか」

紬「・・・うん」

レイコ「行くぞ、夏目」

夏目「・・・うん。みんな、おやすみ」

紬「あら、一緒に遊ばないの?」

レイコ「寝る。勝手に遊んでろ」

紬「そうですか・・・」ションボリ

夏目「先生・・・!」
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:22:54.36 ID:n7lqLb0Jo

唯「辛辣ですな・・・」

梓「一生の3分の2は寝て過ごすそうですから」

レイコ「・・・なんだそれは?」

澪「それはネコの一生だな」

夏目「ブフッ」

唯「ん?」

レイコ「なら、貴様も寝て過ごしているんだな」ゴゴゴゴ

梓「3分の1です。ネコではありませんから」ゴゴゴ

レイコ「・・・ほぅ」ゴゴゴ

梓「なんですか?」ゴゴゴ

律「なんで梓は敵対心をむき出しにしてるんだ?」

澪「むぎの誘いを断ったからかな・・・?」

夏目「そうです。一言多いから・・・」

レイコ「チビネコ!」

梓「なっ、また言われた!? すまし顔!」

律「置いて行こうぜ、子供かよ・・・」

澪「・・・」

紬「うふふ、仲良しさんね〜」

唯「そだね〜」

夏目(確かに・・・。正体を知ってもぶつかれるなんて・・・)

梓「行きますよ、むぎ先輩。ゲームしましょうゲーム」グイグイ

紬「あらあら」

澪「じゃ、じゃあな」

律「おやすみ〜」

唯「また、明日ね・・・」

夏目「はい。おやすみなさい」

レイコ「ネコ娘!」

梓「ネコ娘っていうな!」カッ

夏目「夜のホームに中野の声が木霊する」

303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:24:51.91 ID:n7lqLb0Jo


レイコ「なんだ、あの小娘は!」プンプン

夏目「先生が悪いぞ。余計な一言をいうから」

レイコ「ふんっ」

ドサッ

夏目「個室へ行かないのか?」

レイコ「風に当たっているわ」

夏目(それじゃおれも・・・)

秋子「あ〜、貴志さんじゃないですか〜」

夏目「秋子さん・・・」

秋子「どうしたんですか〜?」

レイコ「・・・」

夏目「風に当たっているんです」

秋子「そうですか。紬さんたち知りませんか?」

夏目「展望車に行きましたけど・・・」

秋子「少しお話がしたいな〜と思いまして」

夏目「・・・」

秋子「それでは〜」

テッテッテ

夏目「・・・」

レイコ「・・・くー」

夏目「おとなしいと思ったら・・・」

秀輝「まだこんなとこにいたんだな。先生寝てるのか」

夏目「・・・ほんとに律儀だな」

秀輝「はは、まぁ・・・お詫びもかねてな」

夏目「ふふ」

秀輝「じゃあな」

夏目「また明日」

レイコ「・・・くー」

夏目(そういや、お酒の入った瓶ってどこに置いたんだろ・・・)

レイコ「・・・すー」

夏目(鍵はおれが持ってるのに・・・)

夏目「ちょっと探してこよう・・・。先生」ユッサユッサ

レイコ「・・んー?」

夏目「まだここで寝てるのか?」

レイコ「・・・くー」

夏目「・・・すぐ戻るからな」

テッテッテ

レイコ「・・・すー」
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:28:37.97 ID:n7lqLb0Jo


レイコ「・・・すー」

秀輝「あれ、先生だけ?」

レイコ「・・・くー」

秀輝「夏目のやつ・・・女性を一人で・・・」

レイコ「・・・すー」

秀輝「倍以上生きてる・・・のに、この若さ・・・」ジー

レイコ「・・・む?」

秀輝「あ、起きた?」

レイコ「夏目はどうした」

秀輝「さぁ・・・、トイレかな?」

レイコ「まったく・・・ふぁあ・・・」

秀輝「聞きづらいんだけど、先生ってさ・・・」

レイコ「んー・・・、なんだ・・・?」ノビノビ

秀輝「・・・いや、なんでも」

レイコ「そうか・・・。どうしてか、眠たくてしょうがないな・・・私も力を奪われているのか・・・?」

秀輝「ちから・・・?」

レイコ「気にするな」

秀輝「・・・」

レイコ「ふぁあ・・・」

どろん

先生「ぁああ・・・」

秀輝「――ッ!?」

夏目「先生ッ!」

先生「戻ったか・・・遅いぞ」

夏目「なんで姿を変えるんだよ!」

先生「おっ!? なぜだっ!?」

夏目「聞いてるのはこっちだ!」

先生「知らんわっ!」

秀輝「お、おい・・・!」

先生「見られておったか、しょうがないな」

夏目「ひ、秀輝・・・これは・・・」

秀輝「な、なんだよ・・・これ・・・!」

先生「おいおまえ、私の声が『聞こえる』か?」

秀輝「先生って・・・人じゃなかったのかよっ!」

夏目「――ッ!」

先生「『聞こえてない』ようだな。やれやれ」

秀輝「な、なんだよっ・・・夏目!」

夏目「・・・ッ」ズキッ
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:30:45.23 ID:n7lqLb0Jo

先生「・・・ふん」

どろん

レイコ「・・・私は、妖だ」

秀輝「『あやかし』・・・ッ!」

夏目「・・・っ」

レイコ「驚くのも無理はないが」

秀輝「っ・・・!」

レイコ「おまえは本当に器が小さいようだ。コム・・・娘やネコ娘と違ってな」

秀輝「――ッ!!!」

夏目「誰だって『見えない』存在が目の前に現れたら驚くに決まっているだろッ!!」

レイコ「そうだな、心構えも必要かもしれん。だがな、私の正体を探っていたのはコイツだぞ」

秀輝「・・・ッ」

夏目「だからってその言い草はなんだよッ!」

レイコ「ふん・・・だからと言って」

どろん

先生「正体が知れたら距離を取るのか、やはり人の子はつまらん・・・。またこの姿になったか・・・なぜなんだ?」

夏目「・・・ッ」

秀輝「お、俺は・・・」

夏目「・・・秀輝・・・・・・黙っていて・・・すまない・・・」

秀輝「・・・」

先生「くだらん、戻るぞ夏目」

夏目「・・・」

先生「状況を整理する時間も必要だろう」

秀輝「・・・」

先生「聞こえておらんようだな・・・。まだ常識の上書きが出来ていないというところか」

夏目「・・・秀輝」

秀輝「・・・すまん、夏目」

夏目「!」ビクッ

先生「・・・しかし、どうしてだ?」

秀輝「一人にしてくれ・・・」

夏目「あ、あぁ・・・」

先生「そんなヤツ放っておけ」

夏目「・・・じゃ、明日な」

秀輝「・・・」

先生「・・・ふんっ」
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:34:59.18 ID:n7lqLb0Jo


夏目「・・・」

カチッ

先生「ぷー、ぷー」

夏目(先生も・・・ショックを受けたのだろうか・・・)

モゾモゾ

夏目「・・・」

夏目(こんなことになるなんて・・・)

夏目「・・・」ナデナデ

先生「ぷー、ぷー」

夏目「おやすみ・・・先生・・・」


・・・

・・・・・・


『どうしてウソをつくのかな』

『構ってほしいんよきっと』

『夏目のうそつきー!』

『うそつき〜!』

夏目『ウソじゃない・・・っ』

『こっちくるなよー!』

『ウソつかれるぞー!』

夏目『ウソじゃ・・・っ』

秀輝『・・・すまん、夏目』

夏目『ッ!』

唯『あ〜ぁ、ウソだったのか〜」

律『ちぇっ、なんだよ』

澪『・・・』

夏目『誰も・・・』

紬梓『『 ウソつき 』』

夏目『ッ!』


・・・・・・

・・・


夏目「!」ガバッ

先生「ぷー」

夏目「また、おれの心を覗かれた・・・」

夏目「なにか『居る』な・・・」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・ハァ」
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:36:05.15 ID:n7lqLb0Jo


『感がいいな

 斑も大分消耗してきたか

 忌々しい 忌々しい 忌々しい

 これからだぞ』




4日目終了--------

308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/12/07(水) 01:49:31.93 ID:n7lqLb0Jo
今日はここまでです
夏目もようやくヴェガに慣れてきた頃ですね

ゴウトの説明が色々とちぐはぐだったかもしれません・・・
独自の理論なので理解してもらえたかどうか気になります

それではおやすみなさい
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(愛知県) [sage]:2011/12/07(水) 02:14:23.19 ID:l1kaU9a5o
面白い
ライドウのあたりは原作を知らないけど確かメガテンかなんかだっけ
次も期待
310 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/08(木) 16:47:11.60 ID:iKmFTucIO
けいおんと夏目しか元ネタ知らんけど面白い
次も楽しみです
311 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage saga]:2011/12/08(木) 23:20:29.93 ID:YKdLCNCSO
前回よりは話が短い(と言っても長いが)らしいし

>>1は勝負を掛けてるんだと
312 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 00:45:25.18 ID:f8WANjCdo
>>311
どういうこと?
313 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:00:21.66 ID:EUR1DYMBo
勝負をかけたのはこちらになります

紬「ウィンタージャーニー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1322729683/
シリーズモノだけど、自分の創意工夫があれば新規の人にもこの世界観を伝えられると信じておりました。
その自信も見事に粉砕しましたけど・・・
過去のurl貼ってくださった方ありがとうございました。

こっちは個人的なお祭り内容になっているので、面白いと言って下さってとても嬉しいです(重圧)
まとまった時間が無くて投下が飛び飛びになっています。
丁度半分といったところですね
まとめる能力が無くて恐縮ですが、よろしくおねがいします


今回夏目と絡むキャラです

光の画像がないので玉恵
http://www.fog.jp/data/furai/tamae.gif

若菜
http://s1.gazo.cc/up/s1_7816.jpg
314 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:02:39.67 ID:EUR1DYMBo


8月11日



秀輝「おはよう」

夏目「・・・」

秀輝「外に出ないか?」

夏目「・・・うん」








―――――京都駅前


秀輝「先生は?」

夏目「寝てるよ」

秀輝「・・・そうか。これ、俺のおごりだから食べてくれ」

夏目「・・・」

秀輝「今のうちに食べないと後で大変なんだよ。スケジュール的に」

夏目「・・・。あのさ・・・秀輝」

秀輝「・・・」

夏目「・・・黙っていて、すまなかった」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

秀輝「『あやかし』って、妖怪のことだよな」

夏目「・・・あぁ」

秀輝「そういう存在が俺の近くに居たのか・・・」

夏目「・・・ッ」

秀輝「・・・すまん。悪い方にとらないでくれ。見抜けなかったのが口惜しいっていうニュアンスで聞いてくれ」

夏目「・・・」

秀輝「娘とネコ娘って誰のこと?」

夏目「琴吹さんと中野の二人」

秀輝「知っているんだ、先生が『あやかし』だってこと」

夏目「昨日の昼後に・・・」

秀輝「琴吹さんは分かるけど、中野さんにまで比べられたのか・・・」

夏目「?」

秀輝「『器が小さい』って・・・言われただろ」

夏目「・・・」

秀輝「多分、生きててこれ以上ないほどショックを受けたと思う」

夏目「・・・」
315 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:05:22.12 ID:EUR1DYMBo

秀輝「それを認識していたのに、また指摘されてな・・・」

夏目「それが問題だったのか・・・?」

秀輝「え?」

夏目「先生が・・・妖だという事は・・・問題じゃないのか?」

秀輝「・・・」

夏目「そういう存在が隣に『居た』んだ・・・」

秀輝「それはそれ、これはこれ。なんだと思う」

夏目「どうでもいい・・・のか・・・?」

秀輝「いや、どうでもよくないよ。ただ、・・・失礼な話だけどさ
   俺は先生が遺伝的な病気か何かだと思い込んでいたんだ
   だから年が離れていても見た目が若いんだってさ・・・。人だと信じて疑わなかった」

夏目「・・・」

秀輝「驚いたし、ショックも受けた」

夏目「・・・」

秀輝「でも、夏目と先生が松本から乗ってきて、ある程度一緒に時間を過ごしていなかったら、
   先生のことをよく知らなかったら全く別の反応をしていたんだと・・・思う」

夏目「・・・そうか」

秀輝「だけど、それより先生に言われた言葉の方がきつかった・・・。器が小さいってさ・・・」

夏目「そうか・・・。よかった」

秀輝「よくねえよ・・・」

夏目「ふふ、先生もちょっと落ち込んでいた風だから」

秀輝「なんで?」

夏目「妖と人が繋がる事なんてゼロに等しいんだよ、
   おれはレイコさんからその力を受け継いで関わっていけているだけなんだ」

秀輝「そのレイコさんというのは・・・?」

夏目「亡くなった祖母だよ」

秀輝「・・・そうか。どうして先生はその名を借りているんだ?」

夏目「先生と祖母は友人という間柄だったんだ。先生はレイコさんの容姿を借りている」

秀輝「あの姿が若かりし頃の夏目のお祖母さん・・・か」

夏目「あぁ」

秀輝「なんか、変な感じだな」

夏目「レイコさんの姿の先生を姉と呼んで、一緒に旅をしているなんて・・・」

秀輝「そっか・・・、夏目にそんな話があったのか・・・」

夏目(ここでこんな話が出来るのは・・・見知らぬ土地で見知らぬ誰かと過ごしているからだろうか・・・)
316 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:05:56.00 ID:EUR1DYMBo

秀輝「大阪、広島、博多・・・。あと4日か・・・」

夏目「秀輝の器が小さいなんてことはないよ」

秀輝「でも大きくはないんだよな」

夏目「・・・」

秀輝「ちぇっ」

夏目「ふふ」

秀輝「それ、食べないんだったら先生にあげてくれ」

夏目「分かった。そうする」

秀輝「もぐもぐ」

夏目「これから観光?」

秀輝「うん。エレナたちに比叡山に誘われているんだよ」

夏目「ふーん・・・」

小麦「秀輝くーん、澪ちゃん知らないー?」

秀輝「秋山さん? まだ出てきてないからヴェガにいるんじゃないかな?」

小麦「そっかー・・・」

秀輝「どうしたんだよ?」

小麦「ブレスレットをね、完成したから渡したいんだー。見つけたら引き止めておいてねー」

秀輝「おっけ〜。俺はここで待ってるからさ」

小麦「うん! また後でー!」

テッテッテ

夏目「朝から元気だな・・・」

秀輝「うん・・・。小麦のいいところだ」

夏目「・・・どうした?」

秀輝「小麦のことでちょっとな・・・」モグモグ

夏目「・・・」

秀輝「夏目はどこへ行くんだ?」

夏目「新京極にでも行ってみようかなって・・・」

秀輝「そういえば・・・俺と一緒に観光したことないよな・・・?」

夏目「そういえばそうだな」

秀輝「・・・」モグモグ

夏目「ありがとう・・・。それじゃ戻るよ」

秀輝「いいって、そんなお礼を言われるほどの量じゃないから」

夏目(先生の件も含めてだけど・・・)
317 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:07:05.10 ID:EUR1DYMBo


ガチャ

夏目「まだ寝てるのか・・・」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生、秀輝は先生を怖れていないよ」ナデナデ

先生「ぷー」

夏目「そういえば、昨日ライドウからもらった・・・ソーマ、使ってないのかな」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・」

夏目(一人で行ってみよう)
318 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:08:32.25 ID:EUR1DYMBo

―――――新京極


夏目(しまった・・・人が多い・・・)

「わ〜、おいしそ〜」

「ほんとだ、京都といったら生八ツ橋だよな」

夏目(先生になにか買おうと思ったけど、・・・一人は)

秋子「あ! 貴志さんじゃないですか〜!」

夏目「あ・・・」

秋子「偶然ですね〜、ここで会えるなんて!」

夏目「・・・そうですね」

秋子「人が多いのに知ってる人いなくて、少し心細かったんです〜!」

夏目(・・・そうは見えない)

秋子「一緒に見て周りませんか?」

夏目「・・・はい」

秋子「きゃ〜! 嬉しい〜!」

夏目(ちょっと気が楽になった・・・)








――・・・


秋子「付き合ってくれてありがとうございました!」

夏目「いえ、お土産を一緒に選んでくれて・・・ありがとうございます」

秋子「いえいえ、それくらいお安い御用ですから〜!」

夏目「・・・」

秋子「その四つ葉のカード、貴志さんのお母様も喜んでくれると思います!」

夏目(・・・ウソではないよな)

秋子「それではこれで、失礼しますね!」

夏目「・・・はい」

秋子「またヴェガでお会いしましょ!」

テッテッテ

夏目「今から清水寺に行って、ヴェガの発車時間に間に合うのかな・・・」

夏目(ヴェガに戻るか・・・)

319 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:10:46.18 ID:EUR1DYMBo

―――――とある公園


夏目(あの女の人、まだ居たのか・・・1時間前にもいたよな・・・)

女の子「・・・」

夏目(昨日ここで色んな事が起こったな・・・)

「京都案内してやるって〜」

「清水寺からダイビングしたつもりでさ〜」

女の子「あの・・・困ります・・・」

夏目(うわ・・・絡まれた・・・)

女の子「も、申し訳ありません・・・わたしには心に決めた殿方が・・・」

「あぁ〜、人が優しくしてりゃ〜」

「京都の盆地よりへこむぜ〜」

夏目「」ビュウウウ

「寒いですわね、もっと勉学に励みなさいな」

勉学が足りない男「あぁ!? ってでかっ!」

寒い男「胸囲的な意味ででかっ!」

「・・・」

夏目(割って入るべきだろうけど、どうにかできそうな気も・・・)

女の子「あ、あの・・・」

「あなたが気に病む必要はございませんの」

女の子「は、はぁ・・・」

男1「昨日のでか女とは違って、でらべっぴんさんじゃけえ」

男2「昨日は参ったな・・・」

「放っておいて行きましょうか。時間の無駄ですわ」

女の子「よろしいのでしょうか・・・」

男1「よろしくねえよ、こっちきなお譲さん」グヘヘ

男2「あんたも俺たちと遊ばねえ?」

「この私と!? オーッホッホッホ」

女の子「・・・?」

男1「俺変な事言ったか?」

男2「言ったんじゃね?」

「この私をどこの誰とも存じず、よくも軽い口が聞けますわね〜!」

女の子「・・・」

男1「・・・」

男2「いいから来いよ!」ガシッ

お嬢様「離しなさい、汚らわしい」ペシッ

男2「ぷっちん切れたぞ!」

男1「・・・嫌な予感がするから帰ろうぜ・・・」

夏目「ちょっと待っ」

「もういいでしょう、その辺にしておいてはどうですか?」
320 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:11:39.98 ID:EUR1DYMBo

男2「あぁ!? しゃしゃりでて・・・おぉ!! 
   バンダナがイカスべっぴんさんキタけぇ!」

お嬢様「・・・これはひどい有様ですわね」

バンダナ「そうですね・・・」

男1「・・・」

夏目「あの・・・」

女の子「は、はい・・・?」

夏目「今のうちに去った方がいいと思う」

女の子「で、でも・・・わたしのせいで」オロオロ

夏目「それなら、少し離れていたほうがいいと・・・」

女の子「・・・?」

男2「モテ期来たんじゃね?」

男1「う、うん・・・」

お嬢様「ハァ・・・。ここまでおバカさんだと、将来真っ暗ですわね」

バンダナ「・・・はい」

男2「俺は怒った。よぉし、力ずくで惚れさせてやる」ポキポキ

男1「最低だコイツ・・・」

バンダナ「・・・どうぞ、来なさい」カムカム

男2「おりゃああああ」

バンダナ「・・・ッ」

シュッ ゴスッ

男2「ぐふっ」

お嬢様「空手ですの?」

バンダナ「はい、琉球空手です。寸止めのつもりが・・・すいません」

男2「て、手加減された・・・!」

お嬢様「まぁ、素敵ですわ。強い方は好きです」

バンダナ「ありがとうございます。そっちは?」

男1「改心します。すいませんでした」ペコリ

バンダナ「・・・そうですか」

お嬢様「賢明ですわね」

男1「昨日のでか女といい、もう懲り懲りだ。行こうぜ」

男2「・・・はい」

タッタッタ

お嬢様「でか女・・・嫌な方を思い出しましたわ」

バンダナ「・・・?」

お嬢様「なんでもありませんの、そこのお方」

女の子「は、はい」

お嬢様「もう大丈夫ですわよ」

夏目「・・・」ポカーン
321 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:17:50.03 ID:EUR1DYMBo

バンダナ「あなたがその子を守っていてくれたんですね」

夏目「いや・・・。見ていただけです・・・」

女の子「わ、わたくし、綾崎若菜と申します」

お嬢様「私の名は、鹿島静花」

バンダナ「島田光といいます」

夏目「・・・」

若菜静花光「「「 ・・・ 」」」ジー

夏目「え、あ・・・夏目貴志・・・」

若菜「助けていただいたこと、誠に感謝致します」ペコリ

静花「気にする事ではないですわ」

光「うん。あの手の輩はどこにでもいるから、気をつけてね」

若菜「はい」

夏目(1時間もいたら絡まれるものかもしれないな・・・)

光「京都美人ですね」

静花「そうですわね。可愛らしいですわ」

若菜「そ、そんな・・・!」カァ

静花「まったく、ああいう輩は本当に面倒ですわ」ヤレヤレ

光「そうですね。わたしも行く先々で色んな人に出会いますから、手を焼いています」

若菜「まぁ、それでは色んな土地を?」

光「うん。南は沖縄から、北は北海道・・・にはまだ行ってないけどね」

若菜「まぁ、うふふ」

静花「逆ですわね。私はこれから南に行きますの」

光「そうなんですか、きっといい旅になるんでしょうね」

静花「そうだとよろしいのですが・・・」

夏目「?」

若菜「あの方と同じように全国を津々浦々・・・」ポッ

静花「頬を赤らめましたわね」

光「?」

夏目「心の決めた殿方・・・?」

若菜「わ、わたくしったら・・・」ポッ

静花「そこのベンチが空いていますわね」

光「飲み物買ってきます」

夏目「・・・・・・え?」

322 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:20:38.70 ID:EUR1DYMBo

若菜「今日、ここで待ち合わせしているんです」

静花「それで、どういう人なの?」

光「詳しく聞かせてくださいな」

夏目(なんでおれまで・・・)

若菜「あの方とお会いしたのは・・・小学6年生の春が過ぎた頃です」

静花「ふむふむ」

光「なるほど」メモメモ

夏目(先生起きたかな・・・)

若菜「わたくしの家は厳格な家柄ですので、外で遊ぶ事は許されていなかったんですね」

静花「・・・」フンフン

若菜「学校が終わると車の迎えが来て、すぐに家に戻されていました」

光「・・・」フンフン

若菜「その方、転校生でしたので、そんなわたくしの家の事情なんて知らなかったのです」

夏目(・・・ヴェガの発車までにはまだ時間あるけど)

若菜「ですから、わたくしがまっすぐ家に帰ることに疑問を持っていたそうなんです」

夏目「・・・」

若菜「ある日、いつものように『それではまた明日』と別れの言葉を口にするわたくしの手をつかんでこう言いました」

夏目「・・・な、なんと?」

若菜「『走るよ』と・・・」

静花「どきどきしてきましたわ」

光「・・・」ゴクリ

若菜「運転手から逃げるように必死に手を引っ張って、走ってくださいました
   わたくしが行ってみたいと思っていた、そこの三年坂まで・・・二人、手を繋いだまま」

静花「まぁ・・・」ウットリ

若菜「わたくしにとっては大冒険でした。見るもの全てが新鮮で、輝いていて」

光「・・・」

若菜「存分に遊びました。わたくし、あの日のことは絶対に忘れられません」

夏目「・・・」

若菜「あ、すいません。喋り過ぎてしまいましたね」

静花「それで、その方とはずっと一緒でしたのね」

若菜「いいえ。あの方は、その日からそう経たずに転校していきましたので」

光「それは・・・悲しい・・・」

若菜「はい。とても悲しくて、寂しくて・・・」

夏目「・・・」

若菜「でも、あの方と一緒に見つけたオルゴールがありましたから、
   一緒に過ごした日々を想い出すことができて、幸せでした」テレテレ

静花「ピュアですわ・・・」ハァ

光「せつなさの扉を開いてしまいましたね・・・」ハァ

若菜「・・・」カァァ
323 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:22:54.35 ID:EUR1DYMBo

夏目「その人と待ち合わせしてるんですよね。再会できたということですね」

若菜「はい。去年の春に再び会うことができましたので」

静花「・・・再会ですか。羨ましいですわね」

夏目「?」

光「大冒険か・・・いいね。わたしも小さい頃よくしてたよ」

若菜「そうですか。胸が打つあのドキドキは忘れられません」

光「・・・うん」

静花「それで、そのお方はいつくるのかしら?」

若菜「待ち合わせ時間が10時ですから・・・」

光「もうそろそろですね」ワクワク

夏目(もしかして・・・、相手を見るつもりなんじゃ・・・あれ?)

夏目「2時間も前から待ってた・・・?」

若菜「は、はい・・・」ポッ

静花「あっつぃですわねー・・・」

光「夏ですからねー・・・」

若菜「でも、少し不安なんです・・・」

光「?」

若菜「梓弓 引かばまにまに依らめども 後の心を知りかてぬかも――」

静花「今のあなたの心境というわけですのね」

若菜「・・・はい」

光「なるほど・・・」

夏目(あれ、この言葉・・・)

「わか・・・な・・・?」

若菜「あ・・・」

静花「出ましたわね、噂の彼」

光「出ましたね」

「えっと・・・?」

若菜「わたくしが絡まれているところを助けていただいたんです」

「そうか・・・。若菜を助けてくれてありがとうございます」

静花「まぁ・・・素敵な殿方ですわね」

光「わたし、こういうものです」

「これはご丁寧に。ルポライターの方なんですね」

光「はい。披露宴の招待状をそっちに送ってくだされば駆けつけますので」

若菜「ひ、光さんっ」カァァ

「そうですか。分かりました」

若菜「な、納得しないでくださいっ」

静花「・・・くっ」

光「不安は解消できたみたいですね」

若菜「は、はい」カァァ

夏目「・・・?」
324 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:23:28.73 ID:EUR1DYMBo


静花「末永くお幸せに」

光「ごきげんよう〜」ニコニコ

夏目「・・・」

俺「それではこれで」

若菜「失礼します」

スタスタ

静花「・・・いい間柄ですわね」

光「はい」

夏目「・・・」

静花「それでは私もこれで失礼しますわ」

光「はい。いい出会いでした。どこかでお会いしましょう」

静花「そうですわね、幸先のいい出会いでしたわ。ごきげんよう」

スタスタ

夏目「・・・そろそろ駅に戻らないと」

光「夏目さんも、いい旅を」

夏目「・・・それでは、失礼します」

スタスタ

光「・・・色んな出会いがあるからやめられないなぁ」ウキウキ

ドルルルルルン

「光ちゃーん、お待たせ〜」

光「先輩、やっと来たんですね」

「あはは、ちょーっと時間がかかっちゃって。ごめんね」

光「いいですけど、先輩ってなんでも楽しそうですよね」

「それは能天気ってことかな〜?」

光「ふふっ」

秀輝「あ、ゼルビスだ。珍しい」

光「お、私の相棒を知ってるなんて・・・キミも中々通だね」

秀輝「あはは、そうですかね。4年前に北海道で旅をしていた人と同じ型なんでビックリしました」

「4年前・・・北海道を入っていたゼルビス・・・」

光「どうかしたんですか、先輩?」

「キ、キミ・・・北海道を旅していた、その人の名前覚えてる?」

秀輝「え? ・・・えーっと・・・」

「わ、私の名前は滝沢――」

325 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:27:07.49 ID:EUR1DYMBo

―――――ヴェガ


紬「さっきの女性ライダーのお二人格好よかったわ〜」キラキラ

澪「そ、そうか・・・」

唯「見てなかったよ」

律「バイクねぇ・・・。姫子が似合いそうだな」

紬「あら、夏目さん」

夏目「今戻ったんですね。・・・お帰りなさい」

澪「おぉ・・・」

律「なにが『おぉ・・・』なんだよ」

澪「家かと思った」

律「弟いないだろ」

唯「たっだいま〜。あずにゃん知らない?」

夏目「見てませんけど・・・」

唯「そっか〜、どこへ行っちゃったんだろ」

澪「先に乗っているのかもな」

律「むぎの勘で探してくれ」

紬「車掌さんと一緒よ」キラン

唯「行ってくるよ!」

テッテッテ

紬「あ・・・。売店へ行ったわ」

律「適当か!」

夏目「・・・それでは」スィー

紬「うふふ」スィー

澪「また飛び乗る事になりそうだから・・・って、むぎと夏目はどこだ!?」

律「いつの間に・・・忍者ですネ」

澪「誰の真似だ」

律「忍者の衣装着てみたいよなー」

澪「さわ子先生に作ってもらえ」

律「マジで作りそうだな・・・やめとこ」

澪「それを着て演奏させられそうだな・・・」ブルブル
326 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:29:00.82 ID:EUR1DYMBo


夏目「うわっ!」

紬「どうしたの?」

夏目「なっ、なんで付いてくるんですか・・・!?」

紬「気にしないで〜、先生さんは?」

夏目「先生にさん付け・・・。個室で寝てますよ」

紬「もうお昼だけど・・・」

夏目「・・・」

紬「あら・・・あずさちゃん」

夏目「あ・・・あの人・・・」


静花「ハァッ・・・ハァッ・・・少し詰めすぎましたわね・・・」

梓「・・・」

静花「よいっしょ・・・よいっしょ・・・ふぅ」

梓「あ、あの・・・」

静花「なにかしら?」

梓「手伝いましょうか?」

静花「まぁ、ご親切に・・・。それではこの小さいほうをお願いできます?」

梓「はい。ヴェガに乗るんですか?」

静花「そうですわ。あなたも乗りますの?」

梓「はい。乗客・・・!」

静花「乗客でしたのね。助かりましたわ」

梓「・・・!」ズシッ

ポン

梓「?」

紬「私に任せて」キラン

梓「むぎ先輩」

静花「?」

紬「よいしょ」

ヒョイ

梓「・・・すごい」

紬「しゃらんらしゃらんら〜」

スタスタ

静花「・・・」

梓「待ってください!」

テッテッテ

静花「つむぎ・・・ちゃん・・・」
327 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:30:14.24 ID:EUR1DYMBo

夏目「静花さん・・・ですよね」

静花「えっ!?」ビクッ

夏目「?」

静花「い、今の聞こえまして!?」

夏目「・・・今の?」

静花「な、なんでもないですわ・・・」ホッ

夏目「静花さんもヴェガに乗車するんですね」

静花「そ、そうですわ」

夏目「おれも乗っているんです。これからよろしくお願いします」

静花「えぇ」

紬「すいませ〜ん」

静花「今行きますわ! ・・・ちっとも・・・」

夏目(ちっとも・・・? ・・・なんだか嬉しそう・・・)

静花「・・・おっと、いけませんわ」コホン

スタスタ

夏目「・・・」

『 あのムスメか 』

夏目「ッ!?」ゾワッ

夏目「・・・『居る』!」

秀輝「な、夏目・・・?」

夏目「秀輝・・・!?」

秀輝「どうした、顔色が悪いけど・・・?」

夏目「いや・・・なんでもないよ」

秀輝「・・・」

律「なぁ夏目、むぎ知らないか?」

澪「夏目のあとを付けていった気がするんだが」

夏目「あっちに・・・あれ?」

律「どっち?」

夏目「さっきまで・・・。多分乗車口にいると思います」

澪「そうか・・・。ありがとう」

夏目「いえ・・・」

律「行くベさ、澪べえー」

澪「どこ育ちだおまえは」

スタスタ

『 あのムスメもそうだな 』

夏目「!」ゾワッ
328 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:31:18.34 ID:EUR1DYMBo

シュッ

夏目(気配が消えた!?)

秀輝「おい・・・夏目・・・?」

夏目「あ、あぁ・・・なんでもない」

秀輝「・・・」

緑「また食べてないの?」

夏目「え・・・?」

緑「朝食のこと」

夏目「そう言えば・・・」

緑「体が持たなくなるわよ」

スタスタ

秀輝「・・・」

夏目「それより先生のとこに行かないと・・・。じゃあ後でな」

タッタッタ

秀輝「なにか『見た』のか・・・な・・・」

329 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:33:04.75 ID:EUR1DYMBo

prrrrrrrrr


ガチャ

夏目「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生・・・先生!」ユッサユッサ

先生「ぷー」グラグラ

夏目「・・・今までずっと隠れていたのか」

『そうさ』

夏目「・・・ッ!」

『忌々しい斑の力を少しずつ奪っていたのさ』

夏目「ど、どうして先生の名を・・・!」

『怨恨を抱く相手の名を忘れるわけがないだろう』

夏目「な・・・!」

『おまえは斑の友人のようだから教えてやる。この怨みの深さを』

先生「ぷー、ぷー」

夏目「せ・・・先生の・・・!」

『私の友人をそいつは喰ったんだよ』

夏目「!!!」

先生「ぷー、ぷー」

『忌々しい忌々しい忌々しい忌々しい忌々しい忌々しい忌々しい忌々しい』

夏目「――ッ!」

『  忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい
 忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい
    忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい
  忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい  忌々しい 』

夏目「ぐッ」グラリ

『おっと・・・今おまえに倒れてもらってはつまらん・・・』グイッ

夏目「・・・おまえっ・・・うっ」

『障気に当てられたか・・・。弱い人の子よ』

夏目「っ・・・!」

『なんならそのまま寝てしまってもいいんだぞ。起きたころには取り返しのつかない事になっているがな』

夏目「おまえっ・・・なにをっ・・・」

『あのムスメ、心に隙を持っているな』

夏目「!」
330 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:35:39.72 ID:EUR1DYMBo

『分かりやすいヤツめ。私は知っているぞ。じっくりと・・・見てきたんだからな』

夏目「やめっ・・・ろ・・・」

『誰がやめるか。この為に力を付けてきたんだ』

夏目「おれに・・・憑けばいいだろっ・・・!」

『それも知ってる。他人を守るために、自分を犠牲にする・・・。それは人の子の持つ美学だよ』

夏目「・・・っ」

『それが崩れていく最高の光景もな!』

夏目(やばい! 今まで出会った中で最悪だッ!)

先生「ぷー、ぷー」

『ふふ、斑を潰してもつまらん。その友人であるお前を壊しても忌々しいコイツと同じ事をするだけだ、それでは足りん』

夏目「・・・やめろって言ってるだろ!」

『やめないさ。いつまでも上にいる気でいるなよ、小僧』

夏目「・・・やめろ!」

『うるさいよ。ちゃんと聞いていろ。まだ曲目を述べているだけだ』

夏目「やめろッ!」

『這いつくばっていろ!』

ドサッ

夏目「うぐッ」

『おまえらを潰してもつまらん。では、どうするか』

夏目「・・・ッ!」

『ムスメを呪ってやる』

夏目「――ッ!」

『そう、その顔さ。その顔が徐々に諦めに入っていくんだ。その瞬間はどんな味がするんだろうな』

夏目「やめ・・・ろ・・・」

『二人のうちどちらにするか、選ばせてやろうか』

夏目「・・・」

『なんだ、もう落ちるのか・・・。様子を伺うだけ時間の無駄だったようだな』

夏目(意識が・・・)

『ちっ、弱すぎるぞ』

夏目「」

『まぁいい・・・。怨みの時間だけ楽しませてもらう』

シュッ

夏目「」

先生「ぷー、ぷー」

コンコン

「夏目ー?」

331 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:37:54.89 ID:EUR1DYMBo

――・・・


夏目「・・・ぅん・・・?」

車掌「目が覚めましたか?」

夏目「車掌さ・・・ん・・・ッ!」ガバッ

車掌「そんな急に体を起こさないでください!」

夏目「琴吹さんと秋山さんは!?」

紬「え?」

律「なんだ、むぎの夢でもみてたのか?」

紬「まぁ」ポッ

夏目「・・・秋山さんは・・・?」

律「澪なら小麦たちと売店に行ったけど・・・?」

紬「大丈夫?」

夏目「体に異変とか・・・感じませんでしたか・・・?」

紬「え? ・・・うん」

夏目「・・・はぁ」

車掌「横になってください」

夏目「大丈夫です」

緑「まだ顔色が悪いわ。大人しくしていなさい」

夏目「・・・?」

紬「北上さんは看護師の勉強をしているそうなの」

夏目(それで色々とおれを気遣ってくれてたのか・・・)

律「緑がいてよかったな」

緑「別に・・・。私がやれることなんてたかが知れてるわ」

紬「・・・でも、心強いですよ」

車掌「さ、横に・・・」

夏目「・・・はい」

紬「えっと・・・。先生さんはあずさちゃんと一緒にいるから心配しないで」

律「なんで先生にさん付け・・・って、まぁいいや・・・後で聞かせろよ夏目」

夏目「え?」

律「なんで姉を先生と呼んでるかってことだ。じゃ、私は出るから養生しろよー」

ガチャ

緑「安静にしてなさい」

バタン

車掌「・・・」

紬「・・・ご飯食べられる?」

夏目「いや・・・その・・・少し恥ずかしいんですけど・・・」

紬「フルーツあるわよ? なにがいいかしら」

夏目(聞いてない・・・。けど、あの妖はどこへ・・・)
332 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:39:39.39 ID:EUR1DYMBo

コンコン

車掌「はい」

夏目(やっぱりおれの部屋だったのか・・・情けない・・・って)

夏目「どうしておれの部屋に!?」

小麦「やっほー」

澪「元気そうだな」

車掌「ふふ、そうですね。それでは私はこれで。
   なんでもいいですので、なにかありましたら声をかけてくださいね」

紬「ありがとうございます」

夏目「・・・」

小麦「冷凍みかんあるよー。食べるー?」

澪「小麦・・・。風邪かもしれないんだぞ」

夏目「いただきます」

澪「食べたかったんかい」

紬「梨を剥いてあげるわね」

夏目(うわ・・・気まずい・・・)

コンコン

小麦「はーい!」

ガチャ

秀輝「様子はどう・・・」ニヤリ

夏目「やっぱり起きます」ガバッ

紬「ダメっ!」グッ

夏目「ぐふっ」

バタリ

澪「強引だな・・・。悪化しかねない勢いだぞ、むぎ・・・」

紬「一度お見舞いしてみたかったの〜」キラキラ

澪「律の時は・・・?」

紬「りんごを剥いたの澪ちゃんでしょ?」

澪「・・・基準が分からない」

小麦「もぐもぐ」

秀輝「小麦が食べてどうすんだよ!」

エレナ「オー、扉が開いてますネー!」ジー

夏目「カメラッ!?」

澪「エレナ・・・今、一番撮られたくない瞬間だと思うぞ」

紬「ジューシーね。おいしいわ」モグモグ

澪「むぎが食べたんかい!」

ピノ『おいしいのだわ』ピピッ

夏目「どこから入ったんだ・・・?」
333 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:42:06.83 ID:EUR1DYMBo

ピノ『ドアに決まっているのだわ。ご主人様もそこに』

夏目「え・・・?」

風音「ピノ、勝手に食べちゃダメでしょ?」

ピノ『申し訳ないです。でも、おいしそうなのです』

風音「大丈夫ですか・・・?」

夏目「ひ、貧血みたいなものです・・・」

ピノ『情けないのだわ』ピピッ

風音「こらっ!」

ピノ『怒らないで、ご主人様〜』

紬「うふふ」

夏目「琴吹さん・・・『聞こえる』んですか?」

紬「なんとなく・・・だけど」ニコニコ

律「ほら、小麦出ろよ」

小麦「えー、もう〜?」

律「ほら、小麦が出たら次入っていいぞ」

唯「はいよ〜」

澪「交通整理みたいなことしてる!」

唯「貴志くんだいじょうぶ〜?」モグモグ

澪「ためらいもなく食べてる!」

夏目「あの・・・見世物みたいになってて・・・」

紬「次はどれにしようかしら。桃缶もあるわよ?」

夏目「・・・」

静花「それは私が持ってきましたのよ」

紬「静・・・花さん・・・」

「あーぁ、おまえが居たんじゃ何もしなくても悪化しちゃうね〜」

律「姉御、出番ですぜ」

姉御「あ、あのねぇ」

秋子「栄養満点スープお持ちしました〜! 姉御スペシャルです〜!」

姉御「そ、その名前なんとかしてよ」

夏目「あ、姉御・・・?」

静花「この方の名は津山菜々子・・・。詳しい紹介は動物園のゴリラ係員に聞いた方が早いですわ」

菜々子「なんだってぇ?」

静花「なんですのぉ?」

夏目「え・・・」

律「姉御はこれから、車内販売と食堂車で店員として乗るんだとさ」

夏目(それで・・・スープを・・・)

秋子「まぁまぁ、病人のまえでケンカはいけませんよ〜」

菜々子静花「「 ふんっ 」」
334 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:43:45.03 ID:EUR1DYMBo

紬「はい、スープよ。あーん」

夏目「断固拒否です!」

紬「それじゃ澪ちゃん、あーん」

澪「それは私へのあてつけだな、むぎ・・・」

紬「うふふ」

夏目「あてつけ・・・?」

澪「・・・」

紬「内緒よ」キラキラ

澪「・・・」

律「いや、私が風邪をひいたときに・・・その、世話をしてくれただけだぞ」

夏目(リアクションに困る・・・)

律「秋子ちゃんが出たから、梓入っていいぞー」

梓「様子はどうですか?」

紬「安静にしてるわ」

夏目(できない・・・)

梓「先生が目を覚ましたよ」

夏目「今どこに!?」

梓「『連れて行け』ってうるさいから、そこにいるけど・・・」

夏目「すいませんけど、先生と二人にさせてください」

澪「・・・」

唯「もう一回入っていい?」

律「・・・いや、ダメだな」

唯「ん?」

梓「分かった」

紬「・・・はやく元気になってね」

夏目「ッ!」

秀輝「・・・」

レイコ「・・・」

紬「それでは〜」

澪「あとでな」

バタン

夏目「先生、いつ目を覚ましたんだ?」

レイコ「さっきだ」

どろん

先生「やりとりを聞いていたぞ」
335 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:45:54.24 ID:EUR1DYMBo

秀輝「・・・俺も聞かせてもらおうかな」

夏目「だ、ダメだ!」

秀輝「先生と話をしたよ。俺のこの性格は妖のせいじゃないかって
   筋違いの事を聞いてしまった」

先生「・・・ふん」

夏目「・・・」

秀輝「『夏目は妖のせいにはしない。あまり妖を舐めるなよ』って言われた」

夏目「・・・だったら」

秀輝「やっぱり妖がらみだよな。知っているのと知らないのとでは全然違う」

夏目「・・・」

秀輝「なにもできないかもしれないけどさ、
   出来ることがあるかもしれないから聞かせてくれ」

先生「どうせなにも出来んさ。話しても構わん」

秀輝「・・・」

夏目「・・・分かった。だけど、無理はさせないからな」

秀輝「あぁ・・・」

夏目「全部聞いていたのか、先生は」

先生「聞いたさ。私が事の発端だということもな」

夏目「・・・」

先生「私がソイツの友人を喰ったと聞いてどう感じた」

夏目「・・・ッ!」

先生「・・・言ってみろ」

夏目「すごく嫌だと思った・・・」

先生「・・・そうか」

夏目「・・・」

秀輝「・・・」

先生「夏目、コヤツにも話してやれ」

夏目「?」

先生「コヤツは私の声が『聞こえない』のだ」

夏目「え・・・!?」

秀輝「・・・」

夏目「ひ、秀輝・・・」

秀輝「ん?」

夏目「先生の声・・・今のニャンコ先生の声が『聞こえない』のか?」

秀輝「・・・うん。『聞こえない』」

夏目「どうして・・・?」

先生「コヤツの常識がまだ上書きされていないのさ
   ネコが喋るなんて常識がな。柔軟性がないと言うべきか、器が小さいというべきか」

夏目「それは言わなくていい」

先生「どうせ『聞こえない』さ」

夏目「『聞こえなくても』言われたら嫌なんだ」
336 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:46:52.83 ID:EUR1DYMBo

先生「なぜだ?」

夏目「『聞かなくていい』から」

先生「・・・ふん」

秀輝「・・・」

夏目「秀輝・・・ここから重要なことだから俺から話す」

秀輝「・・・」コクリ

先生「・・・」

夏目「先生に怨みを持つ妖がヴェガに乗り込んだ」

秀輝「!」

夏目「いや、ずっと乗っていたんだ。どこで身を潜めていたかは分からないけど
   そいつは、先生の力を徐々に奪っていった」

先生「おそらく、私に憑いていたんだな。私に気付かれずに奪っていくとは・・・相当な力を持っておる」

夏目「怨みをはらすべく、おれに焦点を合わせた
   おれが苦しめば先生に苦痛を与えられると、信じている」

先生「・・・」

秀輝「・・・夏目がターゲットなのか?」

夏目「それだけならおれは問題なかった。けど、おれにも苦痛を与えるつもりで
   ターゲットを変えた」

秀輝「乗客の内の誰か・・・?」

夏目「そう・・・。琴吹さんと・・・っ・・・秋・・・山・・・さんだ」

秀輝「なっ!?」

先生「相当性質が悪いな。そこまでの怨みを与えたのか・・・」

夏目「・・・っ」

秀輝「なんでその二人なんだ・・・?」

夏目「・・・隙があるとか・・・言っていた」

先生「ふむ。他にもいるが、夏目の近くに居るからという理由だろうな」

夏目「!」ビクッ

先生「・・・」

秀輝「・・・どうした?」

夏目「いや・・・」

先生「こうなってしまっては、乗ったことを後悔しても遅いぞ夏目」

夏目「ッ!」

先生「・・・しょうがない」

どろん

レイコ「他にも理由があるぞ」

秀輝「・・・?」

レイコ「夏目の近くにあの二人がいたから。それだけだ」

秀輝「それだけの理由でっ!?」

夏目「――ッ!」ドクン
337 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:48:45.85 ID:EUR1DYMBo

先生「まぁいいさ、早く話してしまえ。進まないだろう」

夏目「いや、話さないよ」

レイコ「・・・」

秀輝「なんだよそれ・・・」

夏目「・・・ッ!」

秀輝「不道理な・・・」

レイコ「妖とはそういう」

どろん

先生「存在・・・ってまたか!」

秀輝「先生はなんと?」

夏目「そういう存在・・・」

秀輝「なるほど・・・。で、二人に何をするんだ?」

先生「呪いとか言っていたな・・・」

夏目「呪いをかけると・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

秀輝「おい、夏目」

夏目「・・・?」

秀輝「おまえさ、乗ったことを後悔したりしてないだろうな」

夏目「――ッ!?」

秀輝「その顔は図星か・・・。そういう考えはやめろよ、俺は夏目と出会って、先生と出会えて
   この旅の意味を探す事ができたんだから」

先生「・・・」

秀輝「その答えは見つからないかもしれないけど、ちゃんと見据えていきたいんだ」

夏目「・・・!」

秀輝「だから、乗客のみんなにもちゃんと旅を終えて欲しい」

先生「・・・」

夏目「あぁ、そうだな・・・」

先生「夏目・・・」

夏目「?」

先生「な・・・とり・・・に・・・れん・・・ら・・・く」ウトウト

夏目「名取さん・・・?」

先生「ぷー、ぷー」

秀輝「名取さんって?」

夏目「先生が名取さんに連絡を取れって・・・」

秀輝「ふむ。・・・状況を整理しよう」

夏目「・・・そうだな」
338 :337を修正  [sage]:2011/12/09(金) 01:51:07.14 ID:EUR1DYMBo

レイコ「・・・」

秀輝「なんだよそれ・・・」

夏目「・・・ッ!」

秀輝「不道理な・・・」

レイコ「妖とはそういう」

どろん

先生「存在・・・ってまたか!」

秀輝「先生はなんと?」

夏目「そういう存在・・・」

秀輝「なるほど・・・。で、二人に何をするんだ?」

先生「呪いとか言っていたな・・・」

夏目「呪いをかけると・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

秀輝「おい、夏目」

夏目「・・・?」

秀輝「おまえさ、乗ったことを後悔したりしてないだろうな」

夏目「――ッ!?」

秀輝「その顔は図星か・・・。そういう考えはやめろよ、俺は夏目と出会って、先生と出会えて
   この旅の意味を探す事ができたんだから」

先生「・・・」

秀輝「その答えは見つからないかもしれないけど、ちゃんと見据えていきたいんだ」

夏目「・・・!」

秀輝「だから、乗客のみんなにもちゃんと旅を終えて欲しい」

先生「・・・」

夏目「あぁ、そうだな・・・」

先生「夏目・・・」

夏目「?」

先生「な・・・とり・・・に・・・れん・・・ら・・・く」ウトウト

夏目「名取さん・・・?」

先生「ぷー、ぷー」

秀輝「名取さんって?」

夏目「先生が名取さんに連絡を取れって・・・」

秀輝「ふむ。・・・状況を整理しよう」

夏目「・・・そうだな」
339 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:54:30.12 ID:EUR1DYMBo

秀輝「まず、『あやかし』に夏目の今までの行動を見られていたのは間違いないと」

夏目「・・・」

秀輝「おまえ、琴吹さんを尊敬という形か知らんが、そういう存在でみているだろ」

夏目「そう・・・なのか・・・?」

秀輝「琴吹さんも先生の声が『聞こえる』んだろ?」

夏目「あぁ」

秀輝「そこだな。おまえの特殊な力を認めてくれた。
   且つ、人を集める琴吹さんに敬意を払ってすらいる」

夏目「そうか・・・な・・・」

秀輝「あぁ、・・・中野さんが言っていた。まぁ、無意識なんだろうけど」

夏目(そんな態度をとっていたのか・・・)

秀輝「だから、件の『あやかし』は琴吹さんに向いたと見ていいな・・・」

夏目「・・・ッ!」

秀輝「夏目、おまえの悪いとこだぞ。自分が居るからとか、思うなよ」

夏目「・・・」

秀輝「次に秋山さんだけど、その負の連鎖を生み出す為だろうな」

夏目「負の・・・」

秀輝「秋山さんになにかあったら、律や琴吹さんが苦痛を受ける」

夏目「・・・ッ」

秀輝「それを見たおまえは倍々で苦痛を受ける。・・・えげつないな」

夏目「―ッ!」

秀輝「それを止める話をしているんだ。前を向け、俺の顔を見ろ、夏目」

夏目「!」

秀輝「それで、その対抗策として先生の提案・・・。名取さんと連絡を。だな?」

夏目「うん・・・。そうだ、名取さんなら・・・話が通じる」

秀輝「連絡先知ってるよな?」

夏目「無理やり持たされた名刺が・・・」ゴソゴソ

秀輝「名取周一じゃないだろうな・・・まさかな」

夏目「どうして知っているんだ?」

秀輝「マジか・・・。アイドルと面識があって俳優にまで・・・」

夏目「そうだった・・・俳優でもあったな」

秀輝「俳優になぜ連絡を・・・?」

夏目「名取さんは裏家業として・・・妖祓いをしている」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」
340 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:56:21.35 ID:EUR1DYMBo

秀輝「祓うのか・・・」

夏目「あぁ、人に害を与える存在・・・、そう認識されているのが妖だから」

秀輝「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

秀輝「『夏目は妖のせいにはしない』か・・・」

夏目「?」

秀輝「携帯電話持ってるぞ、使え」ヒョイ

夏目「う、うん・・・」

秀輝「・・・?」

夏目「・・・」ピッピッピップ

秀輝「使い慣れてない感じだな・・・。ケータイ持ってないのか」

夏目「おれが暮らす土地では持つ必要が無いんだ・・・」

trrrrr

秀輝「・・・俺も持っている必要がないんだけどな」

夏目「?」

プツッ

『もしもし』

夏目「名取さんですか? おれです」

名取『なんだい、悪戯詐欺かな?』

夏目「?」

秀輝「いや、名乗れよ」

夏目「夏目貴志です」

名取『あぁ、キミかぁ・・・。電話を買ったんだね』

夏目「?」

名取『違うのかい?』

夏目「これは友達のです」

名取『うん?』

夏目「えっと・・・、名取さんは特急ヴェガをご存知ですか?」

名取『あぁ、もちろん知っているさ。テレビの特集やらで色々と話題になっているからね』

夏目「それに乗っているんです」

名取『へぇ・・・。自慢の電話かな?』

夏目「・・・」

名取『あっはっは、冗談だよ冗談。キミからかけてくるなんて余程のことだろう?』

夏目「・・・はい」

名取『緊張をほぐしてあげようと思ってたのさ』キラキラ

夏目(うわ・・・)

名取『きらめいててご免』キラキラキラ

夏目(耐えるんだ・・・! 先生の力が奪われている今、この人しか頼れないのだから!)
341 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 01:58:37.05 ID:EUR1DYMBo

名取『・・・それで?』

夏目「・・・あ、はい。えっと・・・時間がかかりますが、聞いてください」

名取『休憩中だから丁度いい、ゆっくり聞かせてもらおうかな』

・・・・・・

・・・

夏目「――と言うわけです」

名取『・・・』

夏目「・・・」

名取『キミはつくづく巻き込まれる側なんだねぇ』

夏目「・・・ッ」

名取『すまないが、ここを離れるわけにはいかなくてね。祓いの仕事もこなさなきゃならない』

夏目「・・・・・・そう・・・ですよね」

名取『柊に行かせるとしよう』

夏目「・・・え?」

名取『封印の陣を施した紙を持たせて向かわせる。それを地に書いて封印しなさい』

夏目「・・・は、はい」

名取『よろしい。かなりの大物らしいから、自ら行きたいのだけれど』

夏目「いえ、名取さんの式である柊を預けてくれるんですから、心強いです」

名取『すまないね』

夏目「封印具は使用しないんですか?」

名取『確か、大阪の次は広島だったね』

夏目「は、はい」

名取『神の島と呼ばれる場所がある。その地に永遠に封じ込めればいい。
   柊は山守りでもあるからね、心得てもいる。地の利を最大に活かせるから、封印の壷よりは効果的だ』

夏目「神の島・・・」

名取『そこは私たちにも有名な場所だからね。知らないなら車掌さんにでも聞くといい。
   その場所を口出してはいけないよ。逃げられると厄介だからね』

夏目「はい・・・」

名取『・・・今出来ることはこれくらいかな?』

夏目「・・・」

名取『夏目・・・』

夏目「はい」

名取『無事に帰ってくるのを待っている人たちがいるんだ』

夏目「・・・ッ!」

名取『キミにも、その子たちにもね』

夏目「はっ、はい!」

名取『私も出来るだけ向かうようにするよ。だから落ち着いて、冷静に・・・そこは心配しなくていいかな』

夏目「・・・」

名取『それじゃ、頑張るんだよ』
342 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:00:15.72 ID:EUR1DYMBo

夏目「あ、柊はいつこっちに・・・?」

名取『そうだな、大阪に向かわせよう。ヴェガの出発に合わるさ』

夏目「どうやって来るんですか・・・? まさか柊一人列車に乗って・・・?」

名取『柊が一人で旅を、か・・・。それは面白そうだが』

『主様っ!』

名取『あはは。まぁどうとでもなるさ。・・・ところで、用心棒くん今までどうやって過ごしてきたのかな?』

夏目「? 人の姿に変身してですけど・・・?」

名取『あぁ、先日キミが瓶に閉じ込められた件のあの姿に・・・。という事は乗車券は一枚余っているんだね?』

夏目「? そうです」

名取『なるほど・・・。ところで、今撮影待ちなんだがどこに居ると思う?』

夏目「???」

名取『キミの学校さ』

夏目「学校?」

名取『それじゃ大阪で待っていてくれ』

夏目「・・・ありがとうございます」

名取『それはキミが封印をして、無事に帰ってきてから聞こうかな。じゃあね』

プツッ

夏目「・・・ふぅ」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・」

秀輝「どうだった?」

夏目「心強い味方がいる」

秀輝「・・・」

夏目「みんなの旅を無事に終わらせたい」

秀輝「うん。手伝うぜ」

夏目「・・・ありが」

秀輝「礼は言わないでくれ、何も出来ないかもしれないんだ。だからと言って手を抜いたりはしないけどさ」

夏目「・・・うん。解決したらその時に」

秀輝「うし」

夏目「今の会話も聞かれていると思う。どこかでおれたちを監視しているんだ」

秀輝「隠れてコソコソと・・・」

夏目「先生の存在が大きいんだ。きっと恐れているから慎重にならざる得ない」

秀輝「なるほど、狡猾なやつだな」

夏目「だからこそ危険なんだ」

秀輝「分かってる。・・・で、なにをすればいいかな。塩でも借りてくるか?」

夏目「・・・」
343 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:04:27.34 ID:EUR1DYMBo

秀輝「大マジで聞いているんだけど」

夏目「あぁ、分かってる。そうだな、今走行中だからな・・・大阪で手に入れよう」

秀輝「そういうのだったら京都の方が効き目ありそうだな」

夏目「大阪にも寺はあるはず。違いはそうないよ」

秀輝「・・・そうか。それで、他には?」

夏目「そうだな。二つ。『神の島』と『二人の心の隙』が知りたい」

秀輝「後者は・・・」

夏目「・・・うん。でも、ヤツも待ってくれないから、早めに埋めておいて損は」

秀輝「あのな、人の心の隙を埋めてやろうなんてのは傲慢な考えだぞ」

夏目「でも・・・っ」

秀輝「落ち着け、琴吹さんはどうか分からないけど、秋山さんは時間の問題だと・・・」

夏目「・・・」

秀輝「・・・ふぅ、律を連れてくるから待ってろ。神の島は多分広島だろ?
   車掌さんに聞いてくるよ」

夏目「知っているのか?」

秀輝「愛ちゃんから聞いたことがある」

ガチャ

バタン

夏目「松浦さん・・・。自分で心の隙を埋めて妖を祓った、力を持たない普通の人・・・」

先生「ぷー、ぷー」

『バカめ』

夏目「ッ!」

『滑稽だぞ、小僧』

夏目「封印して、何事も無かったように元に戻す」

『勝手に足掻いていろ。ソイツへの怨みはそう簡単に解けやしない』

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・ッ」

『目の前に『居る』のに何も出来ず歯噛みをして悔しがるその表情・・・それも堪らなく旨いな』

夏目「っ・・・」

『私の友人が喰われて、私は敗れた。逃げて辿り着いたそこで、人の子がもつ負の感情に心を奪われた』

夏目「・・・」

『旨くて旨くて、気がつくと力が膨れ上がっていたよ。次第に力をつけることもできた。今のおまえらを潰すのも容易い』

夏目「ずいぶんとせこい手を使うんだな」

『その手には乗らん、ガキの戯言にしか聞こえんよ。
 斑を見つけたときはさすがに飛び掛りそうだったよ我を忘れて、な』

夏目(こいつにもそれほどの友人と呼べる相手が・・・)

『バカだなおまえ。私に心を許そうとしていたな。だからムスメに危害が及ぶのだ』

夏目「ッ!」

『おまえが『見える』存在でよかったよ』

夏目「――ッ!」ズキッ
344 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:06:06.58 ID:EUR1DYMBo

『明日の朝、楽しみにしているぞ』

夏目「ま、待てッ!」

シュッ

夏目「あいつッ!」

先生「ずいぶんと舐められておるな。柊の到着をまたずに呪いをかける気だ」

夏目「ッ!」ガタッ

先生「待て、どこへ行く」

夏目「二人がッ!」

先生「今行ってもなにも出来やしない。・・・それ・・・よ・・・り・・・三篠・・・を」

夏目「先生・・・?」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・くそっ・・・おれは・・・」

コンコン

「入るぞー」

夏目「・・・なにもできない」

ガチャ

律「邪魔するよん!」

夏目「・・・」

律「・・・あ、料理長のスープ残してやがる」

夏目「・・・」

律「ちゃんと飲めこらぁ!」

夏目「・・・」

律「って、病人に無理強いはいかんな」ウシシ

夏目「・・・」

律「あ、あれ・・・そんな空気じゃないのか」

夏目「・・・」

律「で、話ってなにかね?」

夏目「いえ・・・もう・・・」

律「?」

夏目(間に合わない・・・)

律「ないのか? ・・・じゃ、私が聞く番だな」

夏目「?」

律「『ソレ』」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生・・・?」

律「そう、先生はぬいぐるみでもネコでもないだろ?」

夏目「――ッ!?」

律「その反応はマジだな」
345 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:09:37.36 ID:EUR1DYMBo

夏目「どう・・・して・・・!」

律「むぎと梓の反応みてりゃなんとなく・・・な」

夏目「・・・」

律「伊達にみんなをまとめている訳じゃないのだよ」

夏目「・・・」

律「なんつって・・・な。・・・なぁ、夏目」

夏目「はい・・・?」

律「澪もむぎも・・・唯は分からんけど、まぁ、一応私も・・・だ」

夏目「・・・?」

律「・・・その・・・。なんだ・・・、夏目をさ・・・弟のように思っているわけ・・・で・・・梓のような感じっての・・・?」プシュー

夏目「ッ!?」

律「特に澪が・・・、それに便乗してむぎが・・・。唯は分からんけど・・・だからだな」プシュー

夏目「・・・っ」アセアセ

律「だから、おまえが隠そうとするのなら聞き出さない。
  けど、抱えているのが辛いならみんなに言ってみろ。解決できるかもしれないだろ!」カァァ

夏目(尚更・・・言えない・・・おれが『居る』から呪いを受けることになる・・・なんて・・・)

秀輝「律は?」

律「は?」

秀輝「律は夏目を弟として可愛がっているのか?」

律「うっさいアホー!」ゴスッ

秀輝「いてぇ!」

律「そう言っただろ!」

秀輝「あ、マジで? ・・・聞こえなかった」ヒリヒリ

律「・・・ったく」

秀輝「車掌さんから聞いてきたぜ」

夏目「秀輝っ!」

秀輝「大丈夫・・・。『聞いている』んだよな」

夏目「・・・あぁ」

秀輝「おっけ」

律「『誰が』『何を』だ?」

秀輝「冗談抜きで、聞かないでくれ」

律「・・・。・・・うん」

夏目「秋山さんはいつ降りるんですか?」

秀輝「待て!」

律「さっきからなんだよー」

夏目「?」

秀輝「夏目! おまえ今自分が言ったこと忘れてるぞ!」

夏目「あ・・・!」

律「んー?」
346 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:11:41.23 ID:EUR1DYMBo

秀輝「ソイツって、先生に憑いていないといけないのかな?」

夏目「多分・・・。回復されたら元も子もないから・・・」

秀輝「さっきの質問は後で教えるよ。というか・・・どうした?」

夏目「明日の朝にすると宣告があった」

秀輝「ちっ、どこまでも狡いな・・・!」

律「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

律「理解できないけど、私の質問には答えられるか?」

夏目「!」

秀輝「質問って?」

律「先生が何者なのか・・・だ」

秀輝「・・・」

夏目「・・・ッ」

律「あ、いや。うん、分かった! なんでもないぞ!」

秀輝「一つ条件で聞きたいことがあるんだけど」

律「先生の正体と条件か?」

秀輝「あぁ。秋山さんの心の隙を教えて欲しい」

律「な、なんでだよ!」

夏目「・・・」

秀輝「律が夏目を想って色んな事をしてくれているから、黙っているのもよくないと思ってな」

律「それとこれとは・・・!」

秀輝「うん。でも、それくらいの綱渡りなんだ。先生のことは・・・」

先生「ぷー、ぷー」

律「マジか・・・」

夏目「・・・ごちゃごちゃにして・・・すいません」

律「・・・」

秀輝「・・・」
347 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:12:26.73 ID:EUR1DYMBo

律「・・・ふぅ。ま、私も澪が抱えているものは分かってないんだけどさ」

夏目「・・・」

律「今、足踏みしている感じだ。自分を変えたくて必死で、自分を追い越そうと一生懸命走っている」

秀輝「・・・だから、小麦やエレナと一緒に・・・?」

律「あぁ。あの二人から沢山のことを学んでいるんだろうな」

夏目「それは埋まりそうですか・・・?」

律「・・・詳しくは知らないんだ。むぎは知っている節があるけど」

秀輝「そうか・・・」

律「それがなにかあるんだな・・・?」

夏目「・・・!」

律「『心の隙』なんて普通聞かないだろ」

秀輝「だな。・・・いいか夏目?」

夏目「あぁ・・・。だけど、おれから話すよ」

律「・・・」

夏目「先生は妖なんです」

律「『あやかし』・・・?」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「妖怪と呼ばれるものの類」

348 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:14:58.09 ID:EUR1DYMBo

――・・・


先生「ぷー、ぷー」

律「・・・」

夏目「・・・」

秀輝「律はどう思う?」

律「ん? ・・・すげえな。そんな世界が隣に存在していたんだなーって」

秀輝「ぐふっ・・・大きいな・・・」グッタリ

律「どうした?」

秀輝「気にすんな・・・」ハァ

律「・・・先生の正体は分かったけど、澪の件は分かってねえぞ?」

夏目(呪いをかけられるなんて・・・言えない・・・)

秀輝「すまん、それは時間をくれないか・・・?」

律「おっけ。じゃ、みんなのとこに戻るわ」

夏目「・・・」

ガチャ

律「夏目」

夏目「・・・?」

律「話してくれてサンキューな」

バタン

夏目「・・・」

秀輝「さすがだな、律・・・」

先生「器が大きいようだ」

夏目「先生・・・」

秀輝「起きたのか・・・」

先生「力が出ない・・・、かなりねちっこいぞ、コヤツ」

夏目「・・・」

先生「こんなとこじゃなかったら、この程度の妖なんぞ軽く吹き飛ばしてくれるのに・・・」チッ

夏目「やっぱり街中は疲れてしまうのか・・・?」

先生「あぁ、そのようだ」

夏目「アレちゃんと飲んだのか?」

先生「飲んだぞ」

夏目(それでも奪われているのか・・・)

先生「また眠くなってきた・・・。夏目・・・外に出て・・・切り替・・・えろ・・・」

夏目「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

秀輝「なんて言ってた?」

夏目「外に出て気分を変えろって」

ガタン ゴトン

秀輝「丁度いいな、大阪に着いた。観光に行こうぜ」
349 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:19:40.75 ID:EUR1DYMBo

ガタンゴトン ガタン ゴトン

プシュー

律「よっ」ピョン

唯「ほいっ」ピョン

シュタ

律唯「「 大阪着いたっ!! 」」

紬「長旅お疲れ様〜」

梓「お疲れ様です」

澪「二人はここで降りるからな、感慨深いものもあるんだろう」ウンウン

唯「ついに到着だよりっちゃん!」

律「あー、うん。それなんだけどな、唯」

唯「はい、なんでしょう」

律「車掌さんと相談したんだけどぉ・・・」チラチラッ

唯「?」

澪「なんだ、その上目遣いは」

紬「りっちゃん・・・」キラキラ

梓「むぎ先輩のテンションがおかしいですね・・・」

律「最後まで乗ることにしました!」

澪唯梓「「「 えぇーッ!! 」」」

紬「まぁ〜」キラキラ

秀輝「どうしたー?」

夏目「?」

律「夏目がな・・・どうしても一緒に居たいと」テレテレ

澪「ははっ」

律「乾いた笑いだな」

梓「律先輩にそういうこと言うんだ・・・」ジー

紬「ほほぉ・・・」

唯「ほんとに?」

夏目「いやっ! 言ってない!!」アタフタ

秀輝「・・・」ジー

律「はいはい。ウソですよー」

紬「夏目さん、体の調子はどう?」

夏目「大丈夫です。スープもいただきました」

律「うまいよな、あのスープ」

澪「用事があったんじゃないのか、律」

律「土壇場で必死になって親を説得して無理やりキャンセルした!」バシーン

澪「ドタキャンか・・・」

律「なんでもかんでも短くする文化ってよくないと思うぞ」
350 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:22:43.48 ID:EUR1DYMBo

秀輝「なんでだよ」

律「あんな話聞いて降りられるかよ」

秀輝「・・・だな」

夏目「・・・」

唯「ういに聞いてみよ〜」ピッピッピ

trrrrr

『もしもし、唯?』

唯「あれ、姫ちゃん? どうしてういのケータイ持ってるの!?」

姫子『これ、私の番号だよ。ちゃんと確認してね』

唯「あい、すいません」

姫子『じゃあね』

唯「はいよ〜」

ピッ

澪「夏目は観光どこに行くんだ?」

夏目「・・・通天閣に行ってみようかな、と」

秀輝「大阪城も捨てがたいぞ」

律「・・・」

澪「決まっていないなら、夏目と大村さんも梅田空中庭園に行かないか?」

梓「・・・」

秀輝「そうするかぁ・・・?」チラッ

夏目「・・・」

レイコ「私も行くぞ・・・」

秀輝「先生・・・!」

夏目(人の姿になったら・・・!)

レイコ「気にするな・・・。今更情報を与えても情況は変わらんさ」

澪「?」

紬「?」

夏目「そういう事じゃないだろ!」

唯「ういから・・・、どうしたの・・・?」

梓「・・・?」

夏目「悪いっ・・・先生とどこかへ行ってくる」

秀輝「お、おい!」

夏目「なにかあったら嫌だから」

律「・・・」

秀輝「おまえまだそんな・・・!」

夏目「行くぞ先生」

レイコ「・・・うむ。たこ焼きを買ってくれぇ」

スタスタ
351 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:23:51.54 ID:EUR1DYMBo

紬「先生さんの足取りが不安定ね・・・」

梓「大村さん、どうしたんですか?」

秀輝「あ、いや・・・」

律「・・・えらく動揺してんな」

静花「あら、みなさん・・・まだこんなところに居ましたの?」

紬「あ、静・・・花さんも梅田空中庭園へ行きませんか?」

静花「その溜めはなんですの?」

紬「分かりません!」

梓「力強いですね」

澪「夏目とは明日観光に行こうな、だから元気だせ、律」

律「おや、夏目を可愛がっていたのはあなたですよね」

澪「はは、なんのことかな」

秀輝「・・・」

唯「秀輝くんと貴志くんは時々兄弟みたいにみえますな」

秀輝「・・・え?」

律「そうかー?」

紬「なるほど・・・」

梓「そこまではいかないんじゃないですかね」

澪「姉に気を使う優しい弟だよな」ウンウン

梓「姉では・・・」ボソッ

静花「みなさん、行きますわよ」

紬「行きましょ〜」

352 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:26:17.02 ID:EUR1DYMBo

レイコ「ほふっほふっ」

夏目「焼きたてだから気をつけないと、口の中火傷するぞ」

レイコ「もぐもぐ・・・。うまいな」

夏目「うん。タコが柔らかくて、歯ごたえあっておいしい」

レイコ「どうして一緒に行かない」

夏目「なにか起こすと分かっているのに、近くに居させるのは嫌だ」

レイコ「・・・宣告通りというヤツでもなさそうだしな」モグモグ

夏目「今どこに居るんだ?」

レイコ「さぁな。気配を完全に消してる・・・。感じることすらできん」

夏目「・・・」

レイコ「聞かないのか?」

夏目「・・・っ」

レイコ「喰った相手が人ではなかったのか・・・と」

夏目「――ッ!」

レイコ「真実を知るのが怖いか」

夏目「怖いさ、先生の・・・」

レイコ「私を見る目が」

どろん

先生「変わるかもしれない・・・か?」

夏目「・・・」

先生「私に憑いているようだな。回復した力が抜けていくのが手に取るように分かる」

夏目「・・・」

先生「・・・ねるぞ・・・」

夏目「・・・あぁ」

先生「ぷー、ぷー」
353 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:27:33.57 ID:EUR1DYMBo

『聞きたいのなら教えてやる』

夏目「・・・」

『人だったよ』

夏目「・・・ひっかかったな」

『? どういうことだ』

夏目「先生はおまえにそれを言わせるために、敢えて口にしたんだ」

『なんだと・・・』

夏目「・・・少なくとも人ではないな。・・・おまえはそういう妖なんだから」

『なるほど・・・おまえらの手のひらで踊らされたか』

夏目「・・・でも、おまえの友人であることに変わりは無い」

『私を懐柔しようとしているのか? バカめ』

夏目「いや、おれの友達になにかしたら許さないって言っているんだ」

『えらく強気じゃないか』

夏目「絶対に封印してみせる」

『大人しくしていればずいぶんと舐められたものだ。いいだろう』

夏目「・・・」

『 やってみろ 』

シュッ

夏目(気配が消えた・・・)

先生「む・・・?」パチッ

夏目「先生に憑いていないのか・・・?」

先生「おい! 娘共が危ないぞっ!」

夏目「・・・え」

先生「力を持った小物ほど厄介だ・・・。夏目の言葉にいちいち気に障っていたらしい」

夏目「なっ!?」

先生「今、どこにいるんだ、行くぞ!」
354 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:28:40.71 ID:EUR1DYMBo


―――――梅田空中庭園



夏目「っはぁ・・・はぁ・・・っ」

レイコ「ちっ・・・」

夏目「いない・・・。ここしか知らないのにっ」

レイコ「他に手がかりはないのか!」

夏目「・・・っ」

レイコ「あんな小物に・・・踊らされるのが一番気に食わないんだッ。
    さんざん好き勝手しおって・・・!」ギリッ

夏目「あっ!」

レイコ「あの小娘は・・・」

夏目「北上さんっ!」

緑「え・・・?」

夏目「琴吹さんたちは!?」

緑「さっきまでここにいたけど・・・。知らないわ・・・」

レイコ「後手後手に回るな・・・」

夏目「・・・っ」

緑「どう・・・したの・・・?」

レイコ「他を当たるぞ夏目!」

夏目「あぁ・・・!」

タッタッタ

緑「・・・」

355 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:29:35.29 ID:EUR1DYMBo


―――――大阪駅


緑「やっと戻ってきたのね」

夏目「北上さん・・・っ!」

緑「琴吹さんなら小麦を見送りに行ったわ」

夏目「ッ!」

ダダダッ

レイコ「ずっと待ってたのか?」

緑「・・・」


356 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:33:37.03 ID:EUR1DYMBo

律「澪はどうなんだよ、このまま乗ってもいいのか?」

澪「うん・・・。大事な事だったと言ったら納得してくれた」

紬「それじゃあ・・・!」

澪「最後まで・・・な」

紬「嬉しいわ」キラキラ

律「そっか」

澪「律もいるから、一応安心してるみたいだ」

律「ふっふ〜ん」

梓「信頼されてるんですね」

秀輝「そうだね」

律「・・・」

バシッ

秀輝「いて! なんで・・・?」

律「なんとなくだ」

秀輝「心の声が聞かれたのかと思った・・・あーびっくりした」

唯「・・・」

澪「・・・」

紬「・・・?」

梓「・・・」

律「・・・」

秀輝「心の中では『そんな訳ないだろ』って皮肉を言ってたんだぜ」

紬「あぁー・・・なるほどぉー」

ドゴッ

秀輝「いった、律! 今のは痛いぞ!」

律「は?」

秀輝「え?」

唯「りっちゃんじゃないの?」

律「ん?」

秀輝「え? 違うのか」

澪「なんだこのミステリー」

梓「むぎ先輩に変な事教えないでください」ボソッ

紬「?」


静花「・・・楽しく旅をしているのですわね」

夏目「いたっ!」

レイコ「待て夏目ッ!」

夏目「っ!」

タッタッタ

静花「あら?」

レイコ「行くなッ!」
357 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:35:03.22 ID:EUR1DYMBo

秀輝「ん? あれは夏目・・・?」

梓「走ってきますね・・・」

唯「小麦ちゃんに挨拶したかったのかな」

澪「・・・」

紬「どうしたのかしら?」

律「・・・なんだ?」


『 待ちくたびれたぞ 』

夏目「頼むからやめてくれ!」


秀輝「!」

唯澪「「 え・・・ 」」

律「・・・!」

紬梓「「 ? 」」


『見ろ、おまえを見る小娘どもの顔を』

夏目「おれに憑けって言ってるだろッ!」


秀輝「い、『居る』のか!?」

唯「た、貴志くん・・・?」

澪「夏目・・・」

律「どういうことだ・・・?」

紬「『見えない』から」

梓「『聞こえない』ですね・・・」


『ふん、まぁいい。おまえの目の前で呪いをかけるぞ、よく見ていろ』

夏目「ッ!」

レイコ「どけっ夏目!」

どろん

斑『グルルルァアアアア!!!!』

唯澪「「 消えた!!! 」」

『さすがは斑と言ったところか、だが遅い』

シュッ

紬「?」

夏目「琴吹さんッ!」

紬「けほっ・・・あら・・・?」

斑『チッ!』

梓「む、むぎ先輩・・・?」

紬「けほっ、けほっ・・・喉が・・・けほっ」
358 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:36:29.00 ID:EUR1DYMBo

秀輝「まさか・・・夏目・・・!」

夏目「・・・っ」

唯「な、なに・・・? なにが起こってるの・・・?」

律「おい、むぎ・・・!」

紬「しかいが・・・ぼやけて・・・っ」フラフラ

静花「つむぎさんっ!」

澪「むぎっ!」

梓「あ、危ないです!」

ガシッ

紬「」

夏目「琴吹さん!」

唯「むぎちゃん!?」

澪「・・・な、なにが・・・?」

律「むぎッ!」

梓「むぎせんぱいっ!」

359 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:40:30.72 ID:EUR1DYMBo

――・・・

紬「」

緑「目立った外傷もないし、脈の乱れもないわ」

夏目「っ!」

緑「気を失っているだけのようにも見えるけど・・・。安心できないわね」

車掌「お部屋にお運びします」

律「梓と唯は一緒に行ってくれ」

梓「は、はい」

唯「わ、分かったよ」

澪「わ、私も」

律「澪はここにいてくれ、話を聞くべきだ。・・・というか、私を抑えてくれ」

澪「・・・え?」

夏目「・・・」

秀輝「・・・」

斑『なにもかもアレの思い通りか、それに怒りを覚える』ギリッ

夏目「・・・っ」

律「『居る』んだろ?」

夏目「っ!」

秀輝「・・・」

澪「だ、誰がだ・・・?」

律「澪も『見た』だろ。人が・・・夏目のお姉さんが消えるところを」

澪「・・・ッ」ビクッ

律「『あやかし』の姿をした先生が『居る』はずだ」

澪「あ、あやかし・・・?」

夏目「・・・ッ!」

斑『・・・』

律「先生、『居る』んなら姿を現してくれ、今、『そんなこと』で止まってる場合じゃないんだ」

秀輝「・・・」

斑『・・・フシュウウウウ』

澪「わっ・・・!」

律「それが答えなのか・・・?」

夏目「・・・」

秀輝「夏目、琴吹さんに何が起こったのか、説明するべきだ」

夏目「・・・」

律「夏目ッ!」

夏目「!」ビクッ

律「どうしてむぎの意識が飛んだんだよッ! ちゃんと伝えろッ!」グイッ

夏目「ッ!」

澪「り、律!」
360 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:41:47.13 ID:EUR1DYMBo

律「今お前しか分からないんだぞッ!」

夏目「・・・ッ!」

澪「・・・」

斑『・・・』

秀輝「少しは夏目の」

律「じゃあ私らの気持ちはどうでもいいのかよッ!」

夏目「ッ!」

律「さっきまで笑っていたむぎが突然倒れたんだぞッ! 私たちの大切な人なんだぞッ!?」

夏目「――ッ!」ドクン

律「訳の分からない『あやかし』が関わっているってことしか知らないんだ!」

斑『・・・』

秀輝「律、先生も『あやかし』なんだぞ」

律「だから!『そんなこと』なんだよッ!
  『見える』から『聞こえる』から自分のせいにしてんだろッ!? 愛ちゃんのように!」

澪「律ッ!!」

律「ッ!」

澪「今自分がなんて言ったか分かっているのか!? 愛さんと夏目を比べたんだぞッ!」

律「・・・・・・・・・悪かった」

澪「・・・。・・・夏目」

夏目「!」

澪「何が起こっているんだ?」

斑『ふん』

どろん

レイコ「夏目は私に遠慮しているんだ」

澪「え・・・?」

律「・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・!」

レイコ「事の発端は私だからな。詳しい話をするには、とある理由を言わなければならない」

夏目「せ、先生・・・」

レイコ「おまえは遠慮しすぎだ。思い出したぞ、アレを」

律「アレってなんだよ」

レイコ「娘に呪いをかけた妖だ」

澪「呪い!?」

律「むぎに呪いがかかったのか!?」

レイコ「最初はそこの小娘、おまえとあの娘のどちらかだったんだ」

澪「わ、私!?」

律「澪もかよ!?」

レイコ「今、おまえは心の隙が埋まっている。だからあの娘になったんだ」

澪「な・・・!」
361 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:43:24.34 ID:EUR1DYMBo

レイコ「心の隙を妖は好む。特に呪いをかけたアレは、人の子が持つソレを旨いと感じている」

秀輝「・・・」

レイコ「あの娘が苦しむことで夏目に苦痛を与えられる・・・、そういう妖が相手なんだよ」

澪「な、なんでむぎを・・・!」

律「・・・」

レイコ「そうすることで私への怨みを晴らそうとしているみたいだ。それを・・・生み出したのは・・・私だ・・・」

どろん

先生「チッ、まだ力が・・・戻らん・・・な・・・」

澪「なんで・・・!」

律「みお・・・」

秀輝「・・・先生」

先生「なんだ・・・って、おまえは・・・『聞こえない』・・・だろうに・・・」ウトウト

秀輝「『聞こえる』よ」

先生「ぷー、ぷー」

秀輝「・・・寝てしまったか」

律「大体分かった、じゃあな。・・・行くぞ、澪」

澪「あ、あぁ・・・」

夏目「・・・ッ」

秀輝「・・・」

『・・・』

「夏目くん・・・」

夏目「っ!?」

「名取さんに頼まれて来たんだけど・・・」

『来てやったぞ、夏目』

夏目「あ、ありがとう・・・。柊も・・・」

柊『・・・』

『やれやれ、その顔でしょぼくれた顔見せんでないよ』スゥ

夏目「ヒノエまで・・・!」

ヒノエ『呪術が関わっているのならなぜ私を呼ばない』プフー

夏目「・・・そうだったな。診て欲しい人がいるんだ」

ヒノエ『帰ったら礼を頂くからね。診てはやるが、相手が男だったら問答無用で拒否だよ』

「・・・」

秀輝「・・・え、誰?」

「あ、えっと・・・夏目くんと同じ学校に通っている多軌透といいます」
362 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:45:36.18 ID:EUR1DYMBo

―――――紬の個室


紬「」スヤスヤ

「貧血だと思います」

車掌「そうですか・・・」ホッ

「少し休めば回復するでしょう。安静にしていれば問題ないかと」

梓「よかったです・・・」

車掌「ありがとうございました」

「いえ、それでは」

ガチャ

梓「ありがとうございました」

ヒノエ『失礼するよ』

柊『・・・』

唯「あずにゃん、むぎちゃんは・・・」

梓「貧血だそうです。少し寝ていれば回復すると」

唯「よかったよ〜」

梓「律先輩たちは・・・?」

ヒノエ『こ、これは・・・! レイコにも負けず劣らずの美しさよ!』

紬「すやすや」ピカァー

ヒノエ『眩しい!』

柊『早く診てやれ』

ヒノエ『私に指図するんでないよ。どれどれ』

唯「少し休めば回復するって!」

律「あ、あぁ。てか、ドア閉めろよ」

バタン

紬「」スヤスヤ

ヒノエ『・・・ねちっこい呪いだね。だからこそ、侮れないと言ったところか』

柊『解呪できそうか?』

ヒノエ『どうだろうねぇ、少なくとも力のある場所と相当な妖力がないと無理だね』

柊『そうか、では夏目のところに戻るぞ』

ヒノエ『もう少し拝んでいくさ』

柊『勝手にしろ』

紬「」スヤスヤ

梓「むぎ先輩・・・」

唯「むぎちゃん・・・」
363 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:47:47.20 ID:EUR1DYMBo

多軌「この縄とこの紙を使ってくれって」

夏目「わざわざありがとう」

多軌「ううん、気にしないで」

律「なんだよ、それ」

夏目「呪いをかけた妖を封印するために使う呪具です」

律「そうか、ヤツを封印すればむぎの呪いは解けるんだな?」

秀輝「・・・マジか?」

夏目「・・・それは、分からない」

多軌「・・・」

先生「・・・可能性はあるさ」

多軌「が、我慢・・・抑えるのよ私・・・!」グググ

律「可能性アリか・・・よし。なにが出来るか教えてくれ」

先生「む? おまえは私の声が『聞こえる』のか?」

律「あ、ほんとだ」

先生「誰かさんとは偉い違いだな」

秀輝「どうせ俺は器が小さいですよー・・・」

夏目「タキはこれから帰るのか・・・?」

多軌「うん。ホテルに泊まって朝に帰るよ」

夏目「・・・すまない」

多軌「いいの。私も助けてもらったから」

夏目「タキ・・・」

澪「二人の背景に花びらが舞っているような・・・」
364 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:48:51.58 ID:EUR1DYMBo

律「先生ってさ、もうお姉さんの姿にならなくてもいいんじゃねえか?」

先生「なぜだ?」

律「タキが乗ればいいじゃんか」

夏目多軌「「 え? 」」

律「てか、そのつもりの荷物なんだろ?」

多軌「名取さんが持っていけと・・・」

夏目(あの時の言い方はこれだったのか・・・)

先生「私はどうなる!?」

律「ぬいぐるみとして乗車しとけばいいんじゃないかなって・・・」

秀輝「・・・なるほど」

先生「冗談じゃない!」

ガチャ

ゴスッ

先生「痛いっ!」

梓「あ、ごめん・・・って、うるさいよ先生。むぎ先輩が寝ているんだから」

先生「なんだこの扱いはー!」ペシペシ

澪「・・・地団駄を踏むネコ先生」

先生「おまえも『聞こえる』のか」

澪「・・・はい」

律「じゃ相談してくるよ」

夏目「先生も行ってきてくれ。人の姿でだぞ」

先生「むぅー」

どろん

レイコ「仕方ない・・・」

多軌「いいの?」

澪「用事がなければ・・・いいと思うよ」

多軌「やったぁ」

唯「ちょっと、むぎちゃんが寝ているんだからしずかにおしよ!」

一同「「 すいません 」」

365 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:50:01.14 ID:EUR1DYMBo

―――――展望車


律「それでは! むぎにかかった呪いを解くの会を発足します!」

一同「「 おぉー 」」

紬「おぉー!」

一同「「 えっ!? 」」

紬「あら?」

梓「寝ていてくださいよ!」

紬「私一人置いてみんなで楽しむのね、ひどいわ」シクシク

律「いや、・・・あのな」

多軌「あ、私はそういうノリの方がいいと思います!」

夏目「タキ・・・」

澪「・・・?」

多軌「わ、私も呪われた事があるので」

唯「なるほど、理解したよ」

律「したのかよ」

多軌「だって、自分のせいで周りが気遣ってくれるのって・・・ちょっと辛いから」

紬「そうそう」

梓「納得しないで下さい、倒れたんですよ?」

紬「安静にしてるから大丈夫よ」

梓「そうですね」

澪「梓はむぎに甘いな・・・」

唯「わたしには?」

梓「・・・憂がいるじゃないですか」

唯「厳しいよ」シクシク

秀輝「話がすすまねえー」

先生「ぷー、ぷー」

律「そんでだ、夏目! むぎの呪いを解く計画をここで発表しろ!」

夏目「・・・は、はい」

多軌「頑張って!」グッ

唯「おぉ・・・甘いエールだよ」

夏目「そういえば、ヤツは今どこにいるんだ・・・?」

ヒノエ『娘の中にいるよ、夏目』

夏目「・・・琴吹さんの」

紬「なにかしら?」

夏目「えっと・・・」

梓「・・・」

ヒノエ『場所は除きな、封印すると宣言してあるなら方法は知られても問題ないよ』

夏目「そうだな・・・」
366 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:52:12.48 ID:EUR1DYMBo

唯「誰と喋っているの?」

夏目「あ、えっと・・・」

多軌「名取さんという妖祓いの方の式で、柊という山守りの妖です」

ヒノエ『私の存在を知らないね、この娘は』

律「えっと・・・、もうちょっと分かりやすく頼む」

多軌「名取さんの妖です」

律「持ち物みたいだな」

唯「『あやかし』って?」

柊『面倒なとこに付き合わされてしまったな・・・』

夏目「・・・悪いな、柊」

柊『・・・』

梓「『見えない』から、そこに話す夏目の言動に違和感を感じますね」

律「そうだな・・・」

梓「『居る』と分かってますけど」

多軌「夏目くん、姿写しの陣を紙に書いてみる?」

夏目「・・・どうする?」

ヒノエ柊『『 断る 』』

夏目「タキ、悪い」

多軌「うん」

唯「誰も答えてくれない」シクシク

紬「あれよ、・・・えっと・・・あれなのよ」

澪「どれだ」

紬「座敷わらしよね」

梓「うんうん。発想がむぎ先輩らしくて素敵です」ウンウン

秀輝「話が進まないんですけども!」

紬梓「「 はい 」」

夏目「今タキが言った姿写しの陣の上に立つと、素質のある人は妖の姿がみえるようになるんだ」

唯「ほほぅ」

澪「・・・」ゴクリ

紬「澪ちゃんも見たいのね?」

澪「い、いや・・・こ、怖い」

紬「先生さんも妖よ?」

澪「そうだな。夏目・・・怖くない?」

夏目「えっと・・・」

ヒノエ『・・・』プフー

柊『・・・』

夏目「怖くないですよ」

澪「うん。見たい」

柊ヒノエ『『 断る 』』
367 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:53:03.13 ID:EUR1DYMBo

夏目「すいません、姿を見せるの嫌だそうです」

紬澪「「 」」ガーン

唯「なるほど、『あやかし』とはこういうものですか。先生にゃん」ツンツン

先生「ぷー、ぷふー?」

秀輝「そんでっ! どうやって封印するのかな!?」

律「お、強引に話を進めた」

多軌「クスクス」

夏目「あ、えっと・・・。場所は伏せます。対象が狡賢いヤツなんで逃げられると厄介ですから」

紬「ふむふむ」

夏目「タキが持ってきてくれた、特殊な縄と紙があるので・・・それを使用します」

澪「ふむふむ」

夏目「・・・以上です」

秀輝「」ズルッ

律「」ズルッ

梓「終わり・・・?」

夏目「・・・うん」

律「解散か・・・」

澪「そういえばお腹すいたな・・・」

唯「そうだったよ」グゥー

多軌「・・・」

夏目「・・・」
368 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:53:52.81 ID:EUR1DYMBo

紬「あの・・・ね・・・」

梓「!」ビクッ

紬「一つだけ・・・。忘れていること・・・ううん。話題を逸らそうとしている点があるの」

律「ッ!」

澪「・・・!」

唯「?」

紬「私にかけられた呪いの効果って・・・なにかな?」

夏目「ッ!」

多軌「・・・」

ヒノエ『おや、怖いはずなのに、それでも聞くんだね、この娘は』

柊『・・・』

夏目「・・・それは・・・・・・」

紬「教えて・・・?」

ヒノエ『どこに違和感を感じたか聞きな、夏目』

夏目「ッ!」

紬「・・・」

ヒノエ『そこに関係しているはずさ』

夏目「・・・どこに・・・違和感を・・・」

紬「・・・」

梓「?」

夏目「違和感を感じたところです」

紬「・・・そうなの。・・・うん、分かったわ」

律「むぎ・・・?」

澪「・・・」

紬「食堂車へ行きましょう」ニコニコ
369 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:55:03.19 ID:EUR1DYMBo

多軌「不安だと思う・・・」

夏目「あぁ・・・」

ヒノエ『・・・それにしても、用心棒が聞いて呆れるね』

先生「ぷー、ぷー」

柊『まったくだ。主様もお怒りだった』

夏目「名取さんが・・・?」

柊『夏目、主様はとても来たがっていたよ。来れなくて辛い顔をしていた』

夏目「・・・そうか」

柊『これで下手でもしてみろ』

夏目「そうだな。・・・許されないな」

多軌「・・・」

夏目「タキ、長旅疲れただろう。休んでくれていいよ」

多軌「いいのかな・・・。笹田さんが来るはずだったのに、私が来ちゃって」

夏目「笹田は用事が入ったから仕方がなかったんだ」

多軌「そうなんだ。でも、なんか悪いな、こんなに豪華な列車なのに」

夏目「あぁ・・・。・・・ヒノエ、ヤツは今、ここに居ない・・・よな?」

ヒノエ『あぁ、居ないよ』

多軌「ヒノエ・・・って?」

夏目「先生の友人だよ。柊と一緒に来てくれたらしい」

多軌「そ、そうなんだ・・・」

夏目「そういえば、どうしてヒノエも来たんだ・・・?」

ヒノエ『退屈していたのさ、今あの場所はしずかすぎてね』

夏目「・・・」

ヒノエ『弱いおまえを守るって言ったんだ。私はその代表だよ、夏目』

夏目「・・・」

柊『・・・』

多軌「それじゃ、明日ね。夏目くん」

夏目「ほんとに来てくれて」

多軌「全てが解決してから、ね」ダキッ

先生「ぷー、ぷー」

多軌「おやすみ〜」

スタスタ

夏目「連れて行ってしまった」

ヒノエ『夏目』

夏目「?」

ヒノエ『暗くするなよ。それがヤツの栄養になるんだから』

柊『・・・』

夏目「・・・うん」

ヒノエ『あの娘に習って笑ってな。そうすりゃうまくいくさ』

夏目「・・・」
370 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 02:55:41.08 ID:EUR1DYMBo

夏目「・・・」

カチッ

夏目「・・・一人で寝るの・・・久しぶりだな」

ヒノエ「なら、一緒に寝るかい?」

夏目「うわっ!」

ヒノエ「近くによりな」

夏目「離れろっ!」

ヒノエ「ちっ」

夏目「・・・まったく」

ヒノエ「見ててやるから、やすみな」

夏目「柊は?」

ヒノエ「見回りだよ」

夏目「・・・」

ヒノエ「一つ違う気配を感じたが、あれはなんだい?」

夏目「?」





5日目終了--------
371 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 03:00:19.18 ID:EUR1DYMBo
今日はここまでです

読んでくれた方ありがとうございました
おやすみなさいませ
372 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/09(金) 03:22:27.00 ID:f8WANjCdo
気になるところで切りおって……
タキでてきてうれしい
というか夏目のキャラでてきてうれしい

次も期待してる
373 :重圧 [sage]:2011/12/12(月) 19:09:01.35 ID:MXG+k7zko


8月12日


夏目「」スヤスヤ

柊「起きろ、夏目」

夏目「んー・・・」

柊「だらしない顔をしおって。動き出したぞ」

夏目「っ!」ガバッ

ゴチン

柊「〜っ!」

夏目「いっつ・・・わ、悪い・・・柊」

柊「これが噂の攻撃翌力か」ヒリヒリ

夏目「?」

柊「早く部屋を出ろ」

夏目「そうだっ」

374 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:10:35.67 ID:MXG+k7zko

―――――食堂車


紬「まぁ、それでは蔵にはそのようなものが?」

多軌「はい。祖父が集めた曰く憑きの物がいつくかあるんです」

澪「聞こえない聞こえない」ガクガクブルブル

梓「朝から怪談話ですか・・・」モグモグ

律「女の子がする話題じゃねえな」モグモグ

レイコ「そのハムくれ。代わりにザーサイをくれてやる」

唯「だ、ダメだよっ!?」


夏目「え・・・」

柊『どうした?』

夏目「動き出したって・・・朝食取りに動いたってこと?」

柊『そうなるな』

夏目「うん・・・」

秀輝「夏目、一緒に食べようぜ」

夏目「あ、あぁ・・・」

店員「何になさいますか?」

秀輝「パンセットで。夏目は?」

夏目「フルーツセットを、お願いします」

店員「かしこまりました〜!」

秀輝「フルーツって・・・」

夏目「柊も食べるかなって・・・」

柊『気をまわすな。妖は食べなくても平気なんだ』

夏目「・・・そうか」

秀輝「なんだって?」

夏目「妖は食べなくても平気なんだってさ」

秀輝「へぇ・・・って、先生はどうなるんだ?」

柊『だから太るんだ。たぬきだるま』

夏目「ふふ」

秀輝「・・・よかった」

夏目「?」

秀輝「いや、なんでも。・・・あ、北上さん」

緑「・・・?」

秀輝「一緒に食べない?」

緑「・・・いいわ。邪魔するわね」

秀輝「どうぞどうぞ」

夏目(空いてる席あるのに・・・)
375 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:12:35.40 ID:MXG+k7zko

静花「私も失礼しますわね」

夏目「・・・あ」

静花「それで、今日の様子はどうですの?」

夏目「?」

静花「紬さんのことですわ。昨日倒れましたでしょう」

緑「・・・どう?」

夏目「見たままですよ」

秀輝「・・・」

静花「・・・ふむ」

緑「・・・」

秀輝「駅の医者を呼びに行ってくれたの静花さんですよね」

静花「・・・そうです」

夏目「・・・」

菜々子「はいよ、パンセットにフルーツセット。・・・はぁ」

静花「人の顔をみるなり・・・失礼極まりないウェイターさんですこと」

夏目「え・・・」

菜々子「どうみたって女だろっ、夏目のリアクションもおかしいだろ!」

夏目「す、すいません」

静花「どうして、正しい反応をして怒鳴られるのか分かりませんわ。ねー?」

菜々子「なにが、ねー? だよ。誘導してんじゃないよ、まったく。緑は注文した?」

緑「えぇ」

菜々子「それじゃ失礼しまーす」

静花「ちょっとお待ちなさい!」

菜々子「・・・なんですか」

静花「私の注文がまだではないですか、ちゃんとオーダーを受けなさいな!」

菜々子「へいへい」

静花「まったく・・・。では、モーニングセットを一つ」

菜々子「勝手にメニュー作るな!」

夏目「ふふ」
376 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:13:19.85 ID:MXG+k7zko

静花「では、カニ御膳を」

菜々子「いいのか、本当に用意できるぞ」

静花「あら?」

菜々子「あら? じゃないよ。準備ができるからメニューに載ってるんだからさ」

静花「そうですか。では、モーニングセットをお一つ」

菜々子「はいはい。朝食セットね」

スタスタ

秀輝「いやいや、いつものことですけど、いいコンビネーションですね」

夏目(そうか・・・?)ゴクゴク

静花「そうですか? あの方は存在がイレギュラーですから相手にするのが疲れますわ」

柊『どっちもイレギュラーだな』

夏目「ブフーッ!」

秀輝「おいこら!」

緑「ちょっと・・・!」

静花「なんてことを・・・!」

夏目「す、すいません!」
377 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:16:03.91 ID:MXG+k7zko

――・・・


秀輝「夏目、広島に午後4時着だ」

夏目「分かった」

秀輝「神の島もどこか分かるだろ?」

夏目「うん、知ってる」

秀輝「・・・よし。琴吹さんには絶対洩らさないように心がけろよ」

夏目「うん」

秀輝「と言ってもさ、現場には誰が行くんだ?」

夏目「おれとタキ。琴吹さんは必須で・・・」

秀輝「俺も行くぞ」

夏目「うん。ありがとう」

秀輝「琴吹さんには軽音部に任せようか」

夏目「そうだな」

秀輝「律に伝えておくよ。来るようにさ」

夏目「・・・」コクリ

多軌「おまたせー。夏目くん」

夏目「そんなに待ってないよ」

多軌「そう?」

夏目「あぁ」

秀輝「・・・ちっ!」

律「まぁまぁ、みっともないぞ今のおまえ」ポンポン

秀輝「知ってるよ!」シクシク

夏目多軌「「 ? 」」

紬「カーット〜!」

梓「え、映画監督じゃないんですから」
378 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:17:27.32 ID:MXG+k7zko

紬「澪ちゃんが来たわ。それではテイク2、スタート!」

澪「みんな、おまたせ」

律「そんなに待ってないよ、澪さん」

澪「・・・」

律「あぁ」

澪「・・・」

律「ふふっ、君を待っている時間さえも至高だと感じてしまう。
  君が存在してくれることが僕がここにいる理由になるんだ」

澪「・・・」

律「さぁ、乗りたまえ。今日の為に用意してもらった、宇宙ロケット」

梓「律先輩、ツッコミがないからめんどくさくなりましたね」

律「あの星に君を届けて、そこに住む異世界人を驚かしてやろうじゃないか。
  え? どうして驚くのかって・・・? それは・・・君の美しさにさ!」キラキラ

澪「・・・いい天気だ」

紬「りっちゃーん! 置いてくよ〜!」

律「おぉい、監督!!!」ビシッ

唯「わたしは聞いてたよ」

律「触れろよ! 放置すんな!」ギャー
379 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:19:38.45 ID:MXG+k7zko

―――――異人館


多軌「これが異人館・・・」

静花「美しい町並みですわ」

紬「はい、美しいですね」

唯「おや?」

梓「どうしたんですか?」

唯「むぎちゃんの様子が・・・」

梓「むぎ先輩・・・?」

紬「なぁに?」

梓「な、なんでもないです」

唯「むぎちゃん・・・もしかして・・・」

紬「なにかしら〜」ニコニコ

唯「な、なんでもないだす」

静花「美しい町並みに加えて眺めも良くて・・・」

澪「憧れますね」キラキラ

律「乙女スイッチ入ったかー」

静花「古い町並みでありながら、どこか新しくてそれでいて懐かしい」

夏目「・・・」

静花「神戸という所はそんな街ですわ」

澪「うんうん!」

梓「共感しているみたいですね」

夏目「あ、北上さんも来ていたんですね」

緑「・・・えぇ」

秀輝「面白いよね、ここ」

緑「列車の中でも歩き回っているみたいだけど、観光地でもそうなのね」

秀輝「・・・」

紬「そうです!」

梓「せっかくの旅ですからね、色々と景色をみておきたいです」
380 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:22:56.45 ID:MXG+k7zko

多軌「海が見えるよ夏目くん!」

夏目「ほんとだ・・・」

多軌「ほんとに綺麗な町並みだね・・・」

夏目「いい景色だな・・・」

紬「・・・録画」ジー

梓「なにをしているんですか?」

紬「まるで映画に出てくる恋人同士のような雰囲気だから、録画してるのよ」ニコニコ

梓「さっきのもそれだったんですね、ってカメラ持ってないじゃないですか」

紬「心に録画しているのよ」ジー

静花「想い出のフィルムは無限ですわね」

紬「おぉ・・・」ジーン

澪「律、言ってみて」

律「こ、心のモニターに焼き付けるぜ」

秀輝「解説が必要だな」

律「唯、言ってみ」

唯「心という大空を羽ばたくのさ」

緑「あっちにお土産が売ってるみたいね」

梓「そうですね、憂と純に買っていこうかな」

多軌「誰も評価というか・・・。唯さんにコメントをしないんですか・・・?」

秀輝「ツッコミとかね・・・」

梓「しなくていいよ」

唯「あずにゃん、冷たいよ。わたしも冷たくするからね」ブー

梓「あの流れだと私に回ってきそうだったので・・・すいません」

静花「賑やかでいいですわね〜」

紬「そうですね〜」

唯「あずにゃん、お店まで走って行こうよ」

梓「・・・えぇー」

多軌「心底嫌そうだね、中野さん」

梓「梓でいいよ。タキって呼んでいい?」

多軌「・・・うん!」

夏目「・・・」

柊『それでいいんだ、夏目』

夏目「・・・」

柊『わざわざ考え込んでヤツを喜ばせることは無い』

夏目「・・・うん。そうだな」

柊『おまえ一人では危険だっただろうな』

夏目「・・・」

多軌「改めてよろしくお願いします!」

梓「うん」

紬「はいは〜い」ニコニコ
381 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:25:04.64 ID:MXG+k7zko

―――――ヴェガ

ガチャ

先生「戻ったか」

夏目「先生、どうして来なかったんだ?」

先生「おっ! それはお好み焼きだな!?」

夏目「そうだけど・・・」

ヒノエ「私と話をしていたのさ。昔の話さ」

柊「・・・」

夏目「・・・」

ヒノエ「楽しんで来いと言っただろう」

柊「あの娘は楽しんでいたぞ」

先生「おまえは楽しめなかったのか」

夏目「いや、楽しかったよ」

先生「そうか」モグモグ

夏目「・・・」

prrrrrrrr

ヒノエ「この音はなんだい?」

先生「知らんのか、発車の音だ。覚えておけ」モグモグ

柊「偉そうに・・・」

夏目「・・・」

プシュー

ガタン ゴトン

382 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:26:12.87 ID:MXG+k7zko


夏目(追い出された・・・)

多軌「どうしたの?」

夏目「辛気臭い顔してるから出てけって追い出された・・・」

多軌「確かに・・・」

夏目「・・・」ハァ

多軌「ね、ね! 娯楽者へ行きましょう!」





店員「いらっしゃいませ、遊んでいかれますか?」

多軌「は、はい!」

店員「メダルコーナー、ビデオゲームコーナー、UFOキャッチャーがございます」

多軌「夏目くんはどれやりたい?」

夏目「・・・そうだな、UFOで」

多軌「私久しぶりにやるの、小さい頃にいくつか取ったのよ」フフン

夏目「へぇ・・・」

多軌「あ、信じてないでしょ。よぉーし、見ててね」

チャリン

多軌「あのぬいぐるみを・・・」

ウィーン

ガシッ

夏目「掴んだ」

多軌「腕は衰えていないみたい」

夏目「上手だな・・・」

多軌「そのままそのまま」

夏目「・・・あ」

多軌「ゲットー♪ 次は夏目くんね」

夏目「・・・やったことないけど」

383 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:30:10.19 ID:MXG+k7zko

秋子「運命ですね〜」キラキラ

律「ちょっ、秋子ちゃんこっちに来て!」

秋子「な、なんですか〜?」

律「邪魔しちゃダメだぞ?」

秋子「二人はまるで〜! 羨ましぃです〜」キャー

律「はは」

ピョンピョン

律「あっ、待てピノ!」



ピノ『私というものがありながら、ずいぶん楽しそうですこと』

夏目「ご主人様と一緒じゃないのか?」

ピノ『まぁ! 言い訳をはじめましたわ!』

夏目(・・・困るな)

多軌「夏目くん・・・?」

夏目「そうだ、タキは小動物が喋るなんて事例があるのか知ってるかな」

多軌「という事は、このリスちゃんと会話しているのね」

夏目「・・・あぁ」

ピノ『なによなによ!』

風音「ピノってばまたぁ!」

ピノ『ご主人様ひどいんですよ、この方ー!』

夏目「・・・」

風音「あ、初めまして」

多軌「初めまして。多軌透といいます」

風音「岩泉風音といいます」

多軌「よろしくね」

風音「はい。よろしくお願いします」

ピノ『よろしくなんてしないのだわ!』ピピッ

風音「こら、ピノ!」

ピノ『申し訳ないのだわ』ピピッ

夏目「ふふ」

風音「それでは」

多軌「はーい。ピノちゃんもまたね〜」フリフリ

ピノ『ご主人様に免じてやるのだわ』ピピッ

夏目「・・・意思の疎通ができてるんだな」

多軌「風音さんとピノちゃん?」

夏目「・・・うん」
384 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:33:01.55 ID:MXG+k7zko

多軌「・・・そういえば、関連してるか分からないけど書物に記述があったよ」

夏目「・・・」

多軌「『人の想いに答えようとする生き物には力が宿る』と・・・。猫又もソレに近いんじゃないかな」

夏目「なるほど・・・。と、いう事は・・・。風音はいい飼い主ってことだ」

多軌「うーん、というより・・・いい友人関係かな」

夏目(そうか・・・友人・・・)




澪「いい感じだな」

唯「そうなの?」

紬「そうよ。背景が輝いているわ」

梓「そうですかね、普通の関係って感じですけど」

緑「そこ、どいてくれる?」

紬「うふふ、ごめんなさい」

緑「なにをしているの・・・?」

唯「あれ見てよ」

緑「夏目くんと・・・誰?」

澪「多軌透。夏目の友人だ」

緑「・・・そう。・・・じゃ」

スタスタ

梓「・・・」

車掌「みなさん、ここでどうかなされたのですか?」

澪「あ、車掌さん」

車掌「申し訳ありません、通行の妨げになっておりますので移動してもらえないでしょうか」

秀輝「そうだぞ、邪魔だぞ」

律「なんだとー?」

秀輝「あ、律・・・ちょっと来てくれ」カムカム

律「なんだよ、めんどうだなー」

秀輝「あのな・・・。じゃあお菓子あげるから」

律「おまえ、そんなことでついて行くわけ」

唯「ちょうだいよ」

秀輝「どうぞ」

唯「わーい」

澪「唯・・・少しは大人らしく毅然としてくれ・・・」
385 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:33:33.57 ID:MXG+k7zko

車掌「あの・・・」

梓「はい。みなさん、移動しましょう」

紬「・・・っ・・・けほっ」

律「む、むぎ・・・!」

紬「大丈夫・・・。行きましょう」ニコニコ

唯「そうだね。四号車行こうよ!」

梓「ゆっくりしましょう」

秀輝「・・・」

律「あ、車掌さん。本当にありがとうございます」

車掌「いえ、大阪からは乗車なさるお客様も減りますから、結構ですよ」ニコニコ

律「唯の分も感謝です!」

車掌「いえいえ」

律「それじゃ」

秀輝「待てって」

律「んだよー」

秀輝「作戦が必要だろ」

律「あ、おっけ」

柊『・・・』
386 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:35:25.68 ID:MXG+k7zko

夏目「あっ」

多軌「また失敗ね」

夏目「・・・ふぅ、諦めよう」

多軌「それじゃ、これ貰う?」

夏目「いいよ。ありがとう」

多軌「可愛いのに・・・」

夏目「・・・」

多軌「夏目くん、休む?」

夏目「え?」

多軌「多分、これから力を使うと思うから」

夏目「・・・」

多軌「顔色悪いよ・・・?」

夏目(・・・そう見えるのか)

多軌「あ・・・紬さん」

紬「ごゆっくり〜」フリフリ

澪「じゃ、じゃあ・・・」

唯「もぐもぐ」フリフリ

梓「食べながら歩かないで下さい」

スタスタ

多軌「ふふっ」

夏目「・・・ありがとう、柊」

柊『お前のためではない。主様のためだ』

夏目「・・・とても心強いよ」

柊『・・・』

多軌「・・・柊さんは紬さんを守ってるの?」

夏目「あぁ、見守ってくれているよ」

多軌「・・・」

夏目「おれ、個室で休んでくるよ」

多軌「・・・うん、分かった」
387 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:38:38.99 ID:MXG+k7zko

ガチャ

ヒノエ「おや、はやい帰りだね」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生の力は戻りそう?」

ヒノエ「時間かかるだろうね、なにせこんな場所ではね」

夏目「・・・そうか」

先生「ぷー、ぷー」

ヒノエ「これから力を使うんだ、今のうちに休んでおきな」

夏目「・・・うん」

ヒノエ「厄介な相手だね」

夏目「妖が妖に憑くことなんてあるんだな」

ヒノエ「取り憑くとは違うがね。力の使い方を熟知してんのさ
    だからこそ斑には気付かれずに近づいて、少しずつ奪っていけるわけだね」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・」

ヒノエ「憑依もできない、ただの小物だよ。
    油断さえつくらなけりゃどうってことない相手さ」

夏目「・・・」

ヒノエ「今はゆっくり休みな」

夏目「・・・あぁ、・・・悪いけど、少しだけ頼む」

ヒノエ「何を頼むのさ」

夏目「・・・ヴェガ・・・の・・・みんな」

ヒノエ「・・・」

夏目「」スヤスヤ

・・・・・・

・・・

『しずねえさま〜!』

『あら、どうなさいましたの?』

『紅茶淹れてみたんです! 飲んでみてください!』

『まぁ、いいですわね。いただきますわ』

『はい!』

『ふふっ』

『えへへ』
388 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:39:41.04 ID:MXG+k7zko

    忌々しい 


『!』

『ど、どうなさいましたの・・・?』

『・・・!』

『喉が痛いんですの?』

『・・・!!!』

『つむぎちゃん?』


  言葉で伝えることができまい


  声を奪ってやったのだから


・・・

・・・・・・


夏目「!」

prrrrrrrrrrr

ヒノエ「発車というやつだっけねぇ」プフー

夏目「・・・」

ヒノエ「おや、起きたのかい」

夏目「あの呪いって・・・声を奪うのか・・・?」

ヒノエ「そうみたいだね」

夏目「そうか・・・」

ヒノエ「そんな油断だらけの顔では、上手くいくものも上手くいかないねぇ」

夏目「・・・はぁ」

ヒノエ「・・・やれやれ。散歩でもしてくるかね」

先生「ぷー、ぷー」
389 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:48:28.84 ID:MXG+k7zko

―――――1号車



夏目(夢に出てきたのは、琴吹さんと・・・誰だったんだ・・・?)

ヒノエ『夏目〜』フリフリ

夏目「なにをしてるんだ・・・?」

ヒノエ『移動速度が速いねぇ、面白い面白い』ウキウキ

夏目「個室でも見ていただろ・・・?」

ヒノエ『窓が小さかったじゃないか』

夏目「そうだな・・・。楽しそうだなヒノエ」

ヒノエ『それより、その娘だよ』

静花「くー・・・すー・・・」

夏目「静花さん・・・?」

ヒノエ『美しいじゃないか』

夏目「・・・」

ヒノエ『人の子でも美しいのが好きだよ、私は』

夏目「・・・そうか」

秀輝「そんなとこで突っ立ってどうした?」

夏目「・・・秀輝か」

ヒノエ『げっ、男!』

夏目「車掌さん知らないか?」

秀輝「知らないな、用事か?」

ヒノエ『あっちいけっ、シッシッ』

夏目「静花さんが寝ているからかけるものを・・・と、思って」

ヒノエ『おや・・・』

紬「どうしたの?」

夏目「え・・・あ」

静花「くー・・・すー・・・」

紬「うふふ、静・・・花さん、こんなところで寝ちゃって」ファサ

夏目(先に取りに行ってたのか・・・)
390 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:49:04.36 ID:MXG+k7zko

ヒノエ『眼福眼福』

紬「静・・・花さんに用事ですか?」

静花「すー・・・くー・・・」

秀輝「俺はないよ。夏目があるみたいだけど」

紬「そうなんですか?」

夏目「あ、いえ・・・。大したことでは」

紬「そうですか。静・・・花さんが起きるまでここにいますね」

ヒノエ『私もここにいるからね』

夏目(ヒノエも楽しんでるのか・・・)

ヒノエ『まさかこんな美しい人の子に囲まれるなんてね』フフフ

柊『・・・何をしにきたんだおまえは』

紬「・・・うーん。どうして懐かしい気分になるのかしら」

秀輝「行こうぜ、ちょっと話がある」

夏目「・・・あぁ。よろしくお願いします」

紬「? は〜い」フリフリ

静花「くー・・・すー・・・」

ヒノエ『任せときな』

柊『・・・』
391 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:50:15.93 ID:MXG+k7zko

秀輝「実はな、クマが乗っているんだ」

夏目「・・・」

秀輝「・・・」

夏目「は?」

秀輝「そのリアクションは正しいよ。小熊なんだけどさ、たまに脱走するから
   みかけたらすぐに風音さんを呼んでくれ。話は以上だ」

夏目「風音・・・え?」

秀輝「ちゃんと聞いてたのか?」

律「アホッ!」バシッ

秀輝「いづっ!」

夏目「???」

律「風音がな、小熊と一緒にヴェガに乗車したんだよ。そういうことだな」

夏目「・・・なるほど」

秀輝「順応性高いな・・・」

夏目「色々あるからな、驚くことには慣れてるよ。心臓に悪いと思うことは慣れないけど」

秀輝律「「 壮絶なんだろうな・・・ 」」

梓「むぎ先輩知りませんか?」

夏目「うわっ!」

律「そういうのは慣れないんだな」

梓「むぎ先輩です」

秀輝「あっちに座ってるよ」

梓「そうですか、ありがとうございます」

夏目「・・・」

律「あっちでなにしてんだよ」

秀輝「静花さんが寝てるから一緒にいる・・・だけ・・・」

律「ふーん」

夏目「律さん」

律「ん?」

夏目「琴吹さんと静花さんって・・・知り合いですか・・・?」

秀輝「え・・・?」

律「どうしてだ?」

夏目「えっと・・・その・・・」

夏目(夢で見たなんて言えない・・・)

律「・・・」ジー

夏目「琴吹さんが懐かしいと言っていたので」アタフタ

律「そう言ってたのか・・・。私も分からないんだけどな」

秀輝「あ、でも・・・心当たりあるな」

律「なんだよ?」

秀輝「昨日の夜さ、DVD見てただろ?」

律「・・・うん」
392 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:51:36.80 ID:MXG+k7zko

夏目「DVD?」

律「エレナが撮ったDVDだよ。降りるときに私らにって残してくれたんだ」

夏目「エレナさんたち降りたんですか!?」

秀輝「え、今更?」

夏目「挨拶してない・・・」

律「小麦がよろしくって言ってたぜ。で、その時がどうしたって?」

秀輝「あ、うん。なーんか、優しい顔になってたんだよな」

律「そうか・・・」

夏目「・・・」

律「この事誰にも言うなよ?」

秀輝「・・・」

夏目「どうして・・・?」

律「静花さんが打ち明けない理由があるんだろ。それを私らが言うのは、まずい気がする」

秀輝「・・・なるほど」

律「知り合いだったとしたら、の話だけどな。・・・って事で、じゃあな」

スタスタ

夏目「・・・」

秀輝「俺らが触れていい範囲じゃないんだろうな」

夏目「・・・あぁ」

秀輝「広島でさ、事が終わったらどこ行くか決めたか?」

夏目「・・・いや」

秀輝「まぁ、そうだろうな。予定ないなら、埋めるなよ?」

夏目「・・・?」

秀輝「律と企画してんだ。楽しみにしておいてくれ」

夏目「・・・うん」

多軌「夏目くん!」

夏目「タキ・・・」

多軌「買っちゃった、広島の観光ガイド!」

秀輝「・・・くっ」

393 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:53:56.51 ID:MXG+k7zko

紬「」スヤスヤ

梓「」スヤスヤ

静花「」スヤスヤ

ヒノエ『来てよかったじゃないか』

柊『おまえは何をしに来たんだ』

夏目(三人で寝てるのか・・・)

多軌「邪魔しちゃ悪いから、そこに座りましょう」

夏目「・・・あぁ」

多軌「唯さん達だ・・・」

澪「もぐもぐ」

唯「おいしいね」モグモグ

律「うむ。冷凍みかんは夏にピッタリだな」モグモグ

多軌「あ・・・。まだ売ってるかな」

律「残念、これが最後だってさ」

澪「食べる?」

多軌「嬉しいです。一ついただきます」

唯「どうぞ〜」

多軌「もぐもぐ」

夏目「・・・」

澪「夏目も食べる?」

夏目「いや・・・いいで」

律「・・・唯!」

唯「あー、ぬらりひょんだー!」

夏目「・・・」シーン

律「なんでぬらりひょんなんだよ」

唯「だって、他に知らないんだもん・・・」

澪「なにがしたかったんだ・・・」

多軌「クスクス」

律「ちょっとひっかけてやろうと思ったんだけどな」

夏目「・・・そうですか。それでは」

唯「おまちよ」クイッ

夏目「・・・?」

唯「到着まで話をしようじゃないの」

夏目「えっと・・・」

多軌「4人席ですから私、席を外しますね」

澪「まって、席を分けようか」

律「うむ。いいだろう」

唯「はいよ」

夏目「・・・」
394 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:55:42.98 ID:MXG+k7zko

多軌「どうするんです?」

澪「むぎのいる席が一つ空いてるから、そっちに一人だ」

律「よーし、じゃんけんな」

唯「いくよ〜」

多軌「じゃんけん」

夏目「・・・ほい」





夏目(こうなるのか・・・)

紬「」スヤスヤ

梓「」スヤスヤ

静花「」スヤスヤ

夏目(琴吹さんと中野って姉妹みたいだな・・・)

ヒノエ『眼福眼福』

柊『・・・』

「えー、毎度、大阪名物たこやきはいかがですか〜?」

静花「・・・この・・・声は・・・!」

夏目(起きてしまった・・・。菜々子さんとは仲が悪そうだったけど・・・)

静花「あ、あら・・・紬さん・・・に夏目さん?」

菜々子「おや、梓と紬ちゃんは寝ているんだね。珍しい組み合わせだね、夏目」

静花「私が見えませんのね、いい眼科を紹介いたしますわ」

菜々子「遠慮しておくよ。視界に入れたくなかったもんでね」

静花「しずかにしてくださいな。お二人が起きてしまいます」

菜々子「口の減らない・・・!」

ガラガラ

夏目(行ってしまった・・・)

静花「ふんっ、正義は勝つのですわー。・・・ところでこの毛布は?」

紬「」スヤスヤ

梓「」スヤスヤ

夏目「琴吹さんが持ってきてくれたんです」

静花「・・・まぁ」

紬「」スヤスヤ

梓「・・・ぅん・・・?」

夏目「・・・」

梓「な、夏目!?」

夏目「おはよう」

梓「うわー、寝顔を見られた・・・」

静花「そうですわ、起こしてくださればいいのに」

夏目「う・・・」
395 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:56:54.67 ID:MXG+k7zko

梓「むぎ先輩、むぎ先輩」ユッサユッサ

紬「・・・ぅ? ・・・あずさちゃん・・・おはよ〜」

梓「これから夕方に入りますよ」

紬「ふぁ・・・。なんだか懐かしい夢をみていたような・・・」

静花「私もですわ・・・。忘れてしまいましたが・・・」

梓「私の夢にもむぎ先輩が出てきましたよ」

紬「まぁ」ポッ

夏目(居づらい・・・)

ピョン

ピノ『また他の女性の方と一緒ですか! いい加減にするのだわ!』

夏目「ピノか・・・」

ピノ『なんですの、なんですの、その反応はー!!』ピピッ

紬「なんだか怒っているような・・・」

静花「分かるんですの?」

紬「うふふ、なんとなくです」

梓「遊んで欲しいんですよ。おいでピノ」

ピノ『遊んで欲しいわけじゃないのだわ』ピピッ

梓「おいでおいで」

ピノ『あなたは、まだ何も知らない子供ですのね』

柊『・・・』

梓「やっぱり私には警戒しているんですね」

ピノ『そういう訳ではないのだわ』

ピョン

紬「あら」

静花「紬さんの肩に・・・。慣れていますのね」

ピノ『安らぎますの』

夏目「へぇ・・・」

紬「うふふ、嬉しいわ」

梓「・・・」
396 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 19:57:23.00 ID:MXG+k7zko

静花「ふぁ・・・」

夏目「寝不足ですか?」

静花「・・・そうですわ。中々寝付けなくて」

紬「・・・まぁ」

梓「・・・」

ヒノエ『おや・・・この小娘・・・』

夏目「?」

ヒノエ『・・・夏目ちょっときな』

夏目「それじゃ、おれはこれで」

静花「どうしてそこにいましたの?」

夏目「えっと・・・。席からあぶれたので」

紬「どちらの席ですか?」

夏目「律さんたちの席です」

梓「・・・本当ですね、あっちはあっちで楽しそうです」

柊『みていてやるさ』

夏目「・・・」コクリ

397 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:00:12.10 ID:MXG+k7zko

夏目「ヒノエ・・・?」

ヒノエ『小娘が危ないね』

夏目「中野のことか・・・?」

ヒノエ『名前を知るわけ無いだろ。興味も無い。可愛いらしいが』

夏目「どうして危ないって・・・?」

ヒノエ『娘が呪われた理由と同じさ』

夏目「・・・」

ヒノエ『封印してしまえばどうってことないんだよ』

夏目「・・・そうだな。こっちの問題を解決してしまえば」

ヒノエ『・・・』

秀輝「・・・よぉ」

夏目「顔色悪いな・・・」

秀輝「おまえに言われるなんてな・・・」

夏目「なにかあったのか?」

秀輝「辛辣な言葉をいただいたよ・・・」シクシク

夏目「だれ・・・に・・・?」

秀輝「北上さんだよ・・・」グッタリ

夏目「・・・そうか。冷たいようだが、おれには何も言えないな」

秀輝「・・・ふふ」

夏目「・・・」

秀輝「はぁあ・・・。じゃあな」

夏目「あぁ・・・」

秀輝「俺が悪いのか・・・?」ブツブツ

ヒノエ『・・・女々しいヤツだね』

夏目「アレが本来の秀輝なのかな・・・」

ヒノエ『なんだいそれは』

夏目「・・・。そろそろ先生は起きたころかな」

398 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:01:15.95 ID:MXG+k7zko


ガチャ

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・まだ寝てるのか」

ヒノエ「おや、寂しいようだね」

夏目「どうかな。先生が大人しくしてるから楽ではあるけど」

先生「ぷー、ぷー」

ヒノエ「・・・」スゥ

夏目「・・・」

ヒノエ「・・・」プフー

夏目「散歩してくるよ」

ヒノエ「そうしな」

コンコン

夏目「?」

ガチャ

多軌「あ、ここにいたのね」

夏目「どうした・・・?」

多軌「居なくなったからどこへ行ったのかなって」

夏目「先生の様子を見に来ただけだよ」

多軌「まだ眠っているの・・・?」

夏目「あぁ・・・。ゆっくり休ませようと思ってたところ」

多軌「そっか。それじゃ展望車行きましょう」
399 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:03:01.96 ID:MXG+k7zko

ポン ポロロ ポロ ポロ ポン ポロ ポロロン

夏目「?」

多軌「紬さんが弾いているのかな・・・?」

梓「そう、演奏しているのはむぎ先輩」

唯「ここ座って〜」ポンポン

多軌「は、はい」

夏目(みんな・・・聞き入ってるのか・・・)

律「いいのぉ、むぎのクラシックも」

秀輝「・・・うむ」

澪「・・・」

秋子「素敵です〜」

風音「・・・はい」

緑「・・・アラベスクね」

菜々子「ふ〜ん、そういう曲なのか」

静花「ちっとも・・・変わりませんわね・・・」

夏目「・・・」

柊『・・・』

紬「〜♪」

ポロロロロン

紬「・・・ふぅ」

パチパチパチパチ

紬「あら・・・?」

唯「いい演奏だったよむぎちゃん!」

澪「うん。よかった」

律「ブラボー」

紬「・・・まぁ、恥ずかしいわ〜」ポッ

多軌「いい音だったと思います」

秋子「素敵でした〜!」

風音「よかったです」パチパチパチ

紬「うふふ、ありがと〜」

梓「夏目」

夏目「?」

梓「人を繋げるのがむぎ先輩だよ。今までもこうやって紡いできた」

静花「!」

夏目「・・・そうだな」

夏目(各都市で縁を結んでくれた・・・)

静花「・・・」クルッ

菜々子「・・・どこへ行くんだよ」

静花「あなたには関係の無いことですわ」

スタスタ
400 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:05:41.09 ID:MXG+k7zko

ガチャ

夏目「・・・」

ヒノエ「おや、いい顔つきになったじゃないか」

夏目「・・・うん。そろそろ到着だ」

ヒノエ「そうかい」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「ヒノエも行くのか?」

ヒノエ「もちろんさ」

夏目「ありがとう」

ヒノエ「・・・」

先生「ぷ、ぷー」







ガタンゴトン

多軌「いよいよ、広島ね」

ガタン

夏目「あぁ」

ゴトン

秀輝「・・・」

プシュー

夏目「行こう」

秀輝多軌「「 うん 」」

柊『・・・』
401 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:46:40.76 ID:MXG+k7zko

―――――厳島神社


夏目「・・・これでいいのか、柊」

柊『そうだ。これを封印の陣と呼ぶ。覚えがあるだろ』

夏目「あぁ、名取さんと一緒に強い妖を封印をしたんだ。ちゃんと覚えているよ」

柊『描き終わったな。それではこの紙を千切って陣を隠せ』

夏目「分かった」

ビリッ ビリッ

秀輝「それって俺が千切ってもいいのか?」

多軌「ダメなの。夏目くんじゃないと紙に力が宿らなくて」

秀輝「・・・そうなのか」

夏目「おれが出来ることは全部やるよ」

ビリッ

ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ

柊『ここは地の力が溢れている、ヤツを封印をするには最適な場所だ。だが、それ相応の妖力も必要になる』

夏目「あぁ・・・」

柊『ヤツを封印した後、もう一つの陣の上で解呪を行う。それにも夏目の力を使う』

夏目「分かった」

柊『私たち妖は近づけないから、夏目一人で2回の力を使う。意味は分かるな』

夏目「・・・うん」

柊『封印の陣は終わったな。それでは次、解呪の陣に移る』

夏目「・・・」





秀輝「なにもできないのか・・・」

多軌「それは私も同じ・・・」

秀輝「もどかしいな」

多軌「・・・うん」
402 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:47:11.64 ID:MXG+k7zko

夏目「・・・なぁ」

柊『どうした』

夏目「ヒノエは琴吹さんになにをしたんだ?」

柊『・・・』

夏目「なにかして、憑いて行っただろ」

柊『・・・あれも呪いなんだ』

夏目「・・・」

柊『ここは常に力を放っているから、勘づかれて逃げられる。その策だ』

夏目「・・・そうか」

柊『あっちには斑もいる。心配するな』

夏目「うん」

柊『・・・』






秀輝「厳島神社か・・・。ラッキーなのかね、ヴェガが停車する都市でさ」

多軌「うん。・・・紬さんの運なのかな」

秀輝「あぁ、聞いたよ。福引券5枚当てたって話」

多軌「ふふ、すごいですよね」

秀輝「・・・夏目も2枚当てたんだよな」

多軌「・・・あ、そっか」

秀輝「・・・」

多軌「・・・」

秀輝「・・・そろそろ到着するころだ」
403 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:49:50.75 ID:MXG+k7zko

柊『二度のチャンスは無いと思え』

夏目「あぁ」

柊『娘にかけている縛りの呪いを解くとヤツは必ず逃げるぞ。その瞬間が勝負だ』

夏目「・・・」

柊『来たぞ、夏目』

夏目「!」





梓「夏目! むぎ先輩が!」

夏目「ッ!」

律「お、おい!」

澪「むぎが・・・!」

唯「むぎちゃん! しっかり!」

紬「・・・っ・・・ハァッ・・・ッ・・・」

秀輝「・・・!」

多軌「つ、紬さん・・・!」

ヒノエ『耐えられないんだよ。私がかけた呪いにね』

梓「なんでっ!? 先生も起きてくれないし、なにが起こっているのか全然分からないよ!」

先生「ぷー」

夏目「だ、・・・だいじょうぶ」

律「苦しそうなんだぞ!」

夏目「ッ!」

澪「夏目・・・!」

唯「貴志くん・・・!」

紬「・・・ッハァ・・・・・・ハァッ・・・・・・ッ」

夏目「だいじょうぶ・・・だから、そこの上に・・・」

梓「・・・本当に?」

夏目「ッ!」ビクッ

梓「・・・ウソじゃないよね」

夏目「――ッ!」ズキッ

紬「だい・・・じょう・・・よっ・・・あず・・・ちゃ・・・ん」

梓「むぎ先輩!」
404 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 20:52:43.85 ID:MXG+k7zko

律「どうすればいい夏目!」

澪「夏目!」

唯「貴志くん!」

夏目「琴吹さんを、その千切られた紙の上に」

律「わ、分かった! 澪!」

澪「うんっ!」

紬「ハァッ・・・ッハァ・・・」

柊『気を抜くなよ、夏目』

夏目「あぁ・・・!」

ヒノエ『私の呪いを解呪したらすぐだよ』

夏目「分かってる・・・!」

紬「ハァッ・・・ハァ・・・ッ!」

律「それでどうするんだ!?」

夏目「琴吹さんを残して、紙から離れてください。・・・ヒノエ」

ヒノエ『あぁ、いくよ』

『バカめ』

夏目「!」

ヒノエ『な・・・!?』

柊『・・・!』

『この程度の力で縛られると思ったか!』

ヒノエ『弱すぎたようだね・・・!』

柊『夏目、唱えろ!』

夏目「出よ、我はその手を――」

『私を舐めすぎだ愚か者どもめ!』

シュッ

夏目「くっ!」

ヒノエ『陣の外に・・・!』

『げらげらげら、痛快痛快!』

夏目「くそ・・・!」

梓「な、なに・・・?」

『その顔! その顔が見たかったのだ! げらげらげら』

唯「どう・・・したの・・・?」

多軌「な、夏目くん・・・?」

『私をたばかろうなんぞ浅はか! 全てお見通しだ! 馬鹿め馬鹿め馬鹿めぇえ!』

夏目「最悪だ・・・!」

梓「え・・・」

律「お、おい・・・なんだよ、最悪って・・・」
405 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:45:55.62 ID:MXG+k7zko

『まだまだ終わらん。そこの小娘、次はお前を呪ってくれよう』ニタァ

夏目「や、やめろ・・・・・・」

梓「だいじょうぶって・・・言ったのに・・・」

夏目「っ!」

梓「むぎ先輩が・・・苦しんでるのに・・・」

夏目「ッ!」

梓「夏目ウソを――。」

夏目「――ッ!」ズキィッ

『 旨い 旨いぞ 小娘! 』

紬「あずさちゃん!」

梓「え――」

シュッ

シーサー『去ネ』

『ふんっ、ただの腰抜けじゃないか』

夏目「!」

シーサー『我ハ守護神ナリ。守ル時ニ力ヲ発スルモノ』

『あの時出てこなかった割に口が達者のようだ』

シーサー『身ノ程ヲ知ッテイル。オマエトハ違ウ』

『お前では私に勝てんよ』

先生「ぬ?」

どろん

斑『グルルゥゥアア・・・・・・』

『 今のお前も同じだ、斑ァアアアア!!! 』

柊『私たちを舐めるな!』

ザシュッ

『 グァッ!! 貴様ァ!! 』

ヒノエ『動くんでないよ』

『 ウグゥッ! 』

シーサー『鳴ケ雷』

ズド─z__ン!!

『 グゥゥゥウウアアア!! 』

斑『ふんっ、本来なら私だけで十分だというのに』

がぶり

『 あの時とはチガウッ、この程度で 』

斑『回復するのを待つわけないだろう』

『 キッサマァアアア!!! 』

夏目「先生ッ!」
406 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:47:37.83 ID:MXG+k7zko

斑『さっさと封じろ!』

ぺっ

『 またキサマに敗れるカァアアアァアァアアア!!!!!!!!! 』

斑『おまえは敗れてなどいない。逃げただけだ』

夏目「律! むぎさんを陣の外へ!」

律「おう! しっかりつかまれむぎ!」

紬「うん」

夏目『 出よ、我はその手を 求む 』

シュゥウウ

『 まぁああぁあだぁああぁあらぁあああぁぁああ!!!! 』

夏目『 掴め 闇を守りし者よ。 』

『 ぜったいにいいいいぃいいいぃいい!!!! 』

ヒノエ『この地に眠って頭が冷えたら来るがいいさ。
    事実を聞かせてやるよ、覚えていたらね』

ゥゥウウウ

澪「うっ!」

唯「なにー!?」

律「まぶしぃ!」

梓「ッ!」

紬「っ・・・!」

秀輝「ッ!?」

多軌「!」

シュゥウゥウウゥゥゥゥ
407 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:49:08.62 ID:MXG+k7zko

夏目「・・・っ」グラリ

多軌「夏目くん!」

紬「・・・っ」グラリ

梓「むぎ先輩、大丈夫ですか・・・?」

紬「うん。力が入らないけど・・・平気・・・」

夏目「・・・出来たのか・・・?」

斑『あぁ。上出来だ』

夏目「よかった・・・」

ヒノエ『まだ終わりじゃないよ、夏目』

柊『辛いだろうが、逢魔時しかないんだからな。さぁ立て、夏目』

夏目「あぁ・・・分かってる。琴吹さん、今度はあっちの陣へ」

紬「だい・・・じょうぶ・・・?」

夏目「はい、後は解呪のみですから・・・」

紬「そうじゃ・・・なくて・・・」

多軌「紬さん、今出来るのは夏目くんしかいないんです。私たちがいますから」

紬「・・・」

梓「む、むぎ先輩・・・」

斑『・・・』

どろん

レイコ「さっさと陣へ入れ。時間が無い」

紬「・・・はい」

ヒノエ『ずっきゅーん!』

レイコ「ちっ、これだからおまえの前でこの姿は嫌だったんだ」 

ヒノエ『外見はレイコ、中身は斑・・・くぅ・・・苦々しいーー!!』

夏目「はは・・・は・・・」

秀輝「大丈夫か? 笑い出すなんて変だぞ・・・?」

紬「・・・・・・ふぅ」

梓「さ、行きますよ」

律「しっかりつかまれ、むぎ」

紬「・・・うん。お願いね」
408 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:51:19.15 ID:MXG+k7zko

シーサー『礼ヲ言オウ』

柊『おまえが居なかったら、あのネコ娘は取り憑かれていた。礼を言うのはこっちだ』

シーサー『斑ト名乗ル者ト我トデハ太刀打チ出来ヌ故』

柊『おまえの力は制限されているのか』

シーサー『ウヌ。マグネタイトガ無ケレバ無力ニ等シイ』

柊『雷を起こしただろう』

シーサー『容易ク使エヌ』

夏目『 この地に御座す 祀られし者 その娘の 呪縛を解き放ち給え。 』

紬「・・・っ!」

シュウウゥウゥゥ

唯「ま、まぶしい!」

律「・・・」

澪「いや、光はないな・・・」

唯「あ、ほんとだ」

律「あのな・・・」

梓「・・・」

秀輝「先生・・・これで大丈夫?」

レイコ「おい、ヒノエ」

ヒノエ『くぅ・・・! レイコの声なのに中身は斑! この微妙加減が!』

レイコ「・・・まったく」

どろん

先生「おい、こら! ヒノエー!」

夏目「・・・っ」グラリ

多軌「夏目くん・・・!」ダキッ

律澪唯「「「 おぉ・・・! 」」」

夏目「タキ・・・ありがとう・・・」

多軌「だいじょうぶ?」

夏目「少し・・・めまいがするくらいだよ」

柊『相当な力を使ったようだ』

シーサー『用ハ済ンダナ』

シュッ

柊『・・・』
409 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:53:05.20 ID:MXG+k7zko

梓「むぎ先輩!」

先生「ネコ娘! まだ陣に入るでない!」

梓「な、なんで・・・?」

先生「娘もまだ出るなよ」

紬「・・・え?」

律「どういう事だよ?」

澪「・・・?」

夏目「せ、先生・・・?」

ヒノエ『夏目、もう一度だ』

夏目「え・・・?」

多軌「夏目くん・・・どうしたの・・・?」

ヒノエ『2重にかけてあるよ。厭らしいヤツだね、一回解いて安心するところをつけこんだ罠さ』

先生「まだ呪いは残っているのさ。相当ねちっこいヤツだ」

秀輝「うえ・・・。最悪だな・・・」

夏目「そうか・・・分かった」

多軌「な、夏目くん・・・」

夏目「だいじょうぶだよ、タキ・・・。一人で立てる・・・」

多軌「ふらふらしてるじゃない・・・」

夏目「おれがやりたいんだ。離れててくれ」

多軌「・・・うん」

夏目「秀輝・・・後は頼むな・・・」

秀輝「おう。担いで連れてくから倒れても気にすんな」

夏目「・・・琴吹さん。いきます」

紬「・・・うん。ありがとう」

夏目「・・・すぅ」

先生「・・・」

夏目「・・・はぁ」

紬「・・・」



 この地に御座す 祀られし者 その娘の 呪縛を解き放ち給え。


410 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:53:53.42 ID:MXG+k7zko

――・・・


夏目「・・・ぅん・・・?」

多軌「おはよう」

夏目「うわっ! 近っ!」

多軌「だいじょうぶ?」

夏目「あ、あぁ・・・え?」

律「ひゅーひゅー」

唯「おあついですな〜」

夏目「寝ていたのか・・・おれ・・・」

多軌「うん」

夏目「ごめん、起きるよ」

多軌「体は大丈夫なの?」

夏目「あぁ・・・、あれ・・・ここ厳島神社だな・・・」

多軌「うん」

律「おいー! 膝枕してもらえー!」

唯「そうだそうだー! 膝枕ー!」

夏目「ここでなにを・・・?」

澪「こらっ!」ゴスッ

律「いひゃい!」

唯「・・・」

澪「むぎはまだ寝ているんだからしずかにしろっ!」

律「・・・はい。またしても私だけ・・・」グスン

唯「りっちゃんってば・・・」
411 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:55:20.60 ID:MXG+k7zko

夏目「琴吹さんは・・・?」

名取「あっちで寝ているよ」

夏目「名取さんっ!?」

名取「お目覚めのようだね」

夏目「ど、どうして・・・!」

名取「心配してかけつけたんだけど、もう終わっていたみたいだ」

夏目「・・・びっくりした」

律「あなたはだれだー!」

唯「だれだー!」

名取「どうしてキミ達はそんなに離れているのかな・・・?」

律「胡散臭いぞー!」

唯「だれだー!」

澪「しずかにしろ」ゴゴゴ

律「・・・」

唯「・・・」

名取「ふふ、面白いね。彼女たち」

多軌「ふふっ」

夏目「・・・」

名取「よく頑張ったね、夏目」

夏目「いえ・・・。結局・・・助けられてばかりでした・・・」

名取「助けてもらうのも、君の力なんだ。それは疑わなくていい」

夏目「・・・はい」

名取「・・・彼女のために、彼女達のために、自分の力を使ってみてどうだったかな」

夏目「・・・・・・分からないです」

名取「そうか。君の旅はまだ終わっていないようだ」

夏目「・・・」

シュッ

柊『主様』

名取「力を貰ったか?」

柊『はい』

名取「では、帰るぞ」

柊『はい』

夏目「あ・・・」
412 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:56:29.83 ID:MXG+k7zko

名取「仕事があるから失礼するよ。じゃあ、また会おう。夏目」

夏目「・・・はい」

名取「そうそう、頑張ったご褒美といってはなんだけど、嫌じゃなかったらお好み焼きでも食べていってくれ」

夏目「え・・・?」

名取「柊の修行にもなったみたいだから、そのお礼だよ」キラキラ

夏目「・・・ありがとうございます」

律「私たちと行くのに余計なことするなー!」

唯「するなー!」

名取「もちろん、キミたちの分も用意してあるよ」キラキラ

律「あんたいいヤツだー!」

唯「いいヤツだー!」

澪「あ、ありがとうございます」

名取「いやいや、それじゃあね」キラキラ

律「なんで煌いているんだー!」

唯「・・・」

律「あれ・・・、唯・・・?」

唯「ん?」

律「続けよ」

名取「きらめいていてご免」キラキラキラ

夏目「・・・」

多軌「・・・」

唯「・・・」

澪「き、煌いてる」キラキラ

律「こっちもかい!」

柊『ではな、夏目』

夏目「あ、柊!」

柊『なんだ?』

夏目「とても助かったよ。今度お礼をさせてくれ」

柊『夏目は主様の期待に応えた、それだけで十分だ』

夏目「・・・ありがとう」

柊『あの娘たちには守護神がついている。気に入られたようだな』

シュッ

夏目「守護神・・・、シーサーか・・・?」
413 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:57:22.77 ID:MXG+k7zko

紬「夏目さん・・・」

夏目「・・・あ」

紬「ありがとうございました」

夏目「いえ・・・。元はといえば・・・」

律「ほら、梓もお礼を言えよ」

梓「え、えっと・・・」モジモジ

多軌「?」

夏目「中野・・・悪かったな・・・」

梓「え・・・?」

夏目「おれが『居た』から不安にさせてしまったんだ」

紬「・・・」

梓「・・・」

夏目「・・・すまない」

秀輝「・・・まだいうか」

スパーン

夏目「いたっ!?」

多軌「・・・」

紬「夏目さんが『居てくれた』からよ」

梓「うん・・・。嫌なこと言ってごめんっ」ササッ

紬「あらら」

唯「むぎちゃんに隠れちゃって〜」

梓「うぅ・・・」モジモジ

紬「うふふ」

多軌「ふふっ」

秀輝「・・・それで、呪いの方はどうなってんだよ」

夏目「・・・あぁ、ヒノエと先生に聞けば分かるけど・・・どこへ・・・?」

律「それがな、夏目が倒れてから居なくなったんだよ」

夏目「・・・え」

紬「私たちどのくらい寝てたの?」

梓「えっと・・・2時間くらいです・・・」

夏目「ちょっと探してくる」

多軌「私も行く」

夏目「多分、妖の姿になっているからおれだけで十分だよ」

タッタッタ

紬「走っても大丈夫なのかしら・・・」

梓「・・・」

唯「あずにゃん、どうして恥ずかしがってたの?」

梓「・・・色々と・・・ひどいことを言ってしまって・・・・・・合わせる顔が・・・」

多軌「・・・」
414 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 21:58:56.27 ID:MXG+k7zko


夏目「ここにいたのか、先生・・・」

斑「起きたか、夏目」

ヒノエ「ここで休んでいたのさ、力を取り戻す為にね」

夏目「・・・そうか」

斑「神の島と呼ばれるだけはある。力が漲ってくる」

ヒノエ「・・・」プフー

夏目「呪いは・・・どうなったんだ・・・?」

ヒノエ「・・・綺麗に取り去ったよ。あの娘はどうだい?」

夏目「・・・よかった。・・・ちょっと疲れている様子だけど、なんともないみたいだ」

斑「そうか・・・」

どろん

先生「それより、飯だ飯!」

ヒノエ「・・・」フゥ

夏目「行こう」

ヒノエ「夏目」

夏目「?」

ヒノエ「見たのかい?」

夏目「うん。・・・夢で見たよ」

夏目(あの妖と先生との間にある記憶)

415 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:02:27.28 ID:MXG+k7zko

先生「名取の小僧来ていたのか」

夏目「・・・あぁ、お好み焼きをご馳走してくれるんだって」

先生「遅すぎるわ!」プンスカ

ヒノエ『どこにいるんだい?』

夏目「名取さんは柊と一緒に帰ったよ。仕事だって」

先生「もう居ないのか、なにしにきたんだアイツは」

ヒノエ『・・・私も一緒に帰ればよかったかね』

先生「おまえと名取か、面白い組合わせだ」ニャフフ

夏目「・・・確かに」

秀輝「お、来たか・・・」

澪「そ、それで・・・」

唯「むぎちゃんは・・・?」

紬「・・・」

夏目「大丈夫です。綺麗に取り除くことができました」

梓「・・・よかったぁ」

多軌「・・・うん。よかったぁ・・・」

紬「ありがとう」

夏目「・・・!」

先生「・・・」

紬「先生さんも」

先生「私はアレの思い通りに事が進むのが嫌だっただけだ」フンッ

紬「あなたも・・・ですよね・・・」

夏目ヒノエ「『 え? 』」

先生「なぬ・・・」

梓「?」

ヒノエ『私が見えるのかい?』

紬「はい」ニコニコ

夏目「!」

先生「・・・」

律「大したもんだ、夏目!」バシバシッ

夏目「うっ・・・!」グラリ

澪「りつ!」

律「あ、わりぃわりぃ」アハハ

秀輝「名取さんって人が予約してある店に早く行こうぜ、閉まってしまう」

唯「それはいけないよ!」

律「行こう行こう!」

唯「レッツゴー!」

夏目「・・・」

先生「・・・」

ヒノエ『・・・』
416 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:03:52.89 ID:MXG+k7zko

―――――お好み焼き村


律「この店でいいのか?」

秀輝「名前はそうなんだけどな・・・。ちょっと聞いてくるよ」

唯「頼んだ!」

梓「・・・」

多軌「紬さんと夏目くんの足取りが重いです・・・。余程疲れているんでしょうね」

梓「・・・うん」

澪「梓、いいのか?」

梓「・・・う」

多軌「ほらほら、行ってきなさい」グイグイ

梓「お、押さないでタキ」

多軌「ふふっ」

梓「・・・ふぅ」

タッタッタ

唯「先に入っておこうか」

律「そうだな」

澪「・・・」




紬夏目「「 ・・・ふぅ 」」

先生「しゃきっとせんか」

紬「はい!」

夏目「・・・」

ヒノエ『やれやれ』

紬「ヒノエさんの衣装素敵ですね」

ヒノエ『そうかい。あまり妖に話かけんでないよ、喰われるよ」

紬「おぉー、あっちにも変なのがいるー!」

ヒノエ『聞いちゃいないね』

先生「順応性の高い娘だ」

夏目「・・・」

先生「そんなことより、お好み焼き広島風だ夏目!」ジタバタ

夏目「暴れるなよ先生!」

紬「うふふ」

梓「・・・な、夏目」

夏目「?」

梓「さ、さっきは・・・ごめん・・・なさい」

ヒノエ『・・・』
417 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:05:43.51 ID:MXG+k7zko

先生「嘘つき呼ばわりした件か」

夏目「せ、先生! って、寝てたのに聞いていたのか」

先生「伺っていたのだ。その時をな」

梓「・・・」

夏目「まぁ、その・・・気にしてないよ・・・」

梓「でも、顔が・・・青ざめてた・・・」

ヒノエ『元々こんな顔さ』

夏目「・・・」

紬「ヒノエさんが元々こんな顔だからって」

夏目「こ、琴吹さん・・・」

梓「そっか・・・」

紬「・・・ふふ」グラリ

梓「む、むぎ先輩!」

紬「だ、だいじょうぶ・・・よ〜・・・」

梓「むぎ先輩も青ざめているじゃないですか!」


多軌「夏目くーん! ここのお店だって〜!」


先生「先に行ってるぞ!」ピョン

テッテッテ

夏目「あ、こら!」

紬「うふふ〜」フラフラ

梓「千鳥足ですよ!」

ヒノエ『・・・』

夏目「・・・はぁ」

418 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:08:00.65 ID:MXG+k7zko

「なぁ、のっぼる〜」ギュウギュウ

昇「おいクー! くっつくなよ!」

クー「お好み焼きお好み焼きぃ〜!」

昇「今日はもうだめだぞ、透も先に戻ってるんだから。俺達だけで食べられないだろ」

クー「そんな〜・・・。・・・む?」

ヒノエ『・・・』

クー「・・・」

夏目「?」

昇「クー・・・?」

クー「なんでもない。それじゃあ明日絶対だぞぉ〜?」

昇「はいはい・・・。あの人がどうかした?」

クー「気にするな〜」ギュウギュウ

夏目「・・・?」

ヒノエ『分からないのか、夏目?』

夏目「え?」

ヒノエ『相当力が落ちているようだね。
    害はなさそうだが、取り憑いているわけでもなさそうだ』

夏目「ヒノエ・・・?」

ヒノエ『あの女と目が合っていたのは私なんだがね』

先生「にゃつめぇー」

夏目「先生、どうしたんだ・・・?」

先生「店員が中に入れてくれんのだ!」

夏目「ニャンコお断りだからだよ」

ヒノエ『レイコの姿になるのか! 嬉しいやら憎いやら! 微妙だねまったく!』

先生「おまえはここにいろ!」

どろん

レイコ「行くぞ!」
419 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:09:56.18 ID:MXG+k7zko

店員「いらっしゃいませー」

レイコ「・・・貴様」ジロ

店員「な、なんでしょう・・・」

夏目「なんでもないです!」

レイコ「・・・ふんっ」

夏目(あ・・・、乗客のみんなも来てたのか・・・)

店員「お二人様ですね、こちらへどうぞ〜」

夏目(先生が混じると色々ややっこしいから・・・他に座るか)

レイコ「ネコが同伴でもいいだろ」

店員「も、申し訳ありません・・・飲食店なのでNGです・・・」

多軌「夏目くん、こっちよ」グイッ

夏目「タ、タキ・・・」



紬「・・・っ」フラリ

澪「むぎ、辛かったら私にもたれていいよ」

紬「ありがとー」

澪「・・・うん」

紬「・・・ふぅ〜」

梓「澪先輩が疲れたらこっちにももたれていいですよ」

静花「どうなさいましたの?」

紬「ちょっと疲れちゃいまして・・・」

静花「・・・食べられますか?」

紬「はい。お腹は空いてますから」キラン

唯「むぎちゃんが疲れちゃうなんて余程のことなんだね〜」

多軌「さ、座って」

夏目「・・・あぁ」

レイコ「で、なにがおいしいんだ?」

菜々子「結構有名な店だからね。って、あなたはどちら様で?」

夏目(菜々子さんと先生は面識がなかったのか・・・)

レイコ「私のことはどうでもいい。もうなんでもいいから注文だ」

唯「空腹には勝てないんだね。私もだよ」

レイコ「はやく店員を呼べ」

律「みんな決まったかー?」

秋子「はい〜!」

風音「私も決まりました」

律「すいませーん!」

店員「はーい」
420 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:11:09.47 ID:MXG+k7zko

レイコ「・・・」

菜々子「どうしてイライラしてんのさ」

レイコ「昼から寝てばっかりで空腹なんだ」

菜々子「ふーん・・・。で、夏目の姉だよね?」

レイコ「コイツの先生だ」

菜々子「先生・・・?」

店員「ご注文をお伺いします」

律「えーっと・・・私はうどんで!」

澪「うどんをお願いします」

唯「うーん、両方食べてみたいんだよ」

多軌「それなら半分づつ分けませんか?」

唯「GOOD IDEA」

紬「発音いいのね〜・・・」

澪「むぎは?」

紬「えーっと・・・」

秀輝「・・・」キョロキョロ

律「秀輝はどうすんだよ?」

秀輝「え、あ・・・なにがあるんだ?」

律「焼きそば風と、うどん風のお好み焼き。どっちだ?」

秀輝「そ、そばで」

静花「私もうどんですわ」

紬「それじゃ・・・私も〜・・・」

梓「え!?」

紬「どうした・・・の?」

梓「焼きそば風お好み焼きなんですよ?」

紬「そうね〜・・・」

梓「えぇと、焼きそばを食べたがっていたから・・・」

紬「お祭りに行くって・・・、唯ちゃんと約束したの・・・」

唯「したよね! 仙台で!」

梓「あ、そうですか。その時に食べるんですね」

紬「そういう事・・・」キラン

静花「・・・それがいいですわね」

菜々子「あんたたちは、うどんとそばどっちにする?」

風音「私はそばで」

秋子「私も〜」

菜々子「梓は?」

梓「そばで・・・」
421 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:11:51.26 ID:HbxYVnAAO
>>1応援してます。
422 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:12:30.74 ID:MXG+k7zko

秀輝「北上さんはいないの・・・?」

風音「はい。列車へ戻ってしまいました」

秀輝「・・・ふーん」

律「・・・」ニヤリ

夏目「先生は?」

レイコ「無論、両方だ」

店員「以上でよろしいでしょうか?」

菜々子「はい」

店員「かしこまりました〜」

紬「・・・澪ちゃん・・・もうちょっとお願いね〜・・・」

澪「うん」

梓「ちょっ」

静花「・・・」

律「夏目は平気みたいだな」

夏目「・・・一応慣れていますから」

唯「壮絶なんだね・・・」

紬「あら、夏目さん・・・あの方は入ってこないのね」

夏目(ヒノエのことかな・・・)

澪「ん?」

夏目「はい。外で待っていると思います」

紬「そうなの・・・」

梓「?」

レイコ「あいつは人の子が嫌いだからな」

菜々子「人の子?」

律「あー! はやくこないかなぁー!」

唯「もうそろそろくるんじゃないかなぁー」

秋子「ど、どうしたんですかぁ〜?」

律唯「「 お腹空いているんです! 」」

風音「息ピッタリですね」クスクス

多軌「ほんとに」クスクス

紬「うふ・・・ふ〜・・・」

澪「む、むぎ・・・?」

紬「なぁに〜?」

梓「だ、だいじょうぶですか?」

紬「だいじょうぶ! ・・・よ〜・・・」

静花「あまり無理をしないように」

紬「はい〜・・・」

菜々子「・・・」

夏目(騒がしいけど、落ち着く・・・そんな場所なんだな・・・)
423 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:14:24.16 ID:MXG+k7zko

レイコ「・・・」

菜々子「律、後で感想聞かせなよ」

律「姉御が作ったヤツとこの店の比較ですな?」

菜々子「うん。どう違うのか」

澪「できるのか、そんな事」

律「できる! 味覚はHTTの中じゃ随一だぜ!」

唯「立派だよりっちゃん、熱いよりっちゃん!」

律「と、思いたい!」

唯「失望した!」ビシッ

梓「なんですかそれは」

レイコ「遅いな」

夏目「まだそんなに経ってないぞ」

多軌「夏目くんは広島までどうだった?」

夏目「列車の旅が?」

多軌「そう・・・。列車の旅が」

夏目「・・・そうだな」

紬「・・・聞き耳を立てましょう」

秋子「そうですね〜」

梓「・・・」

静花「普通に聞いても構わないでしょうに」

夏目「・・・楽しかったよ」

多軌「そっか・・・」

レイコ「・・・」
424 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:15:01.41 ID:MXG+k7zko

店員「おまたせしました〜」

風音「いい匂いですね」

夏目「ピノは?」

風音「匂いを嗅いで走り回っちゃいますから、置いてきました」

夏目「・・・なるほど」

多軌「どうして姉御と呼んでいるんですか?」

唯「京都でね、助けてもらったのですよ」

静花「・・・まぁ」

菜々子「なんだよ、その顔は・・・」

紬「そうだったのね・・・」

澪「ありがとうございます」

菜々子「あはは、いいってそんな」

律「なんで澪がお礼を・・・。まぁいいや、みんな揃ったなー?」

梓「はい」

多軌「揃ってまーす」

レイコ「もぐもぐ」

律「おぉ、フライング! いただきます!」

「「「 いただきまーす 」」」

紬「いただきますー・・・」

夏目「・・・いただきます」

秀輝「・・・」

律「どうしてそんな顔してるのかなー?」

秀輝「べ、別に?」

律「ふふーん」ニヤリ

夏目「?」
425 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:17:08.59 ID:MXG+k7zko

――・・・


秋子「ごちそうさまです、姉御さま!」

菜々子「いいってことよ」

風音「静花さん、ごちそうさまでした」

静花「お気になさらないで」

律「はぁーうんまかったー」

唯「うん、おいしかったね〜」

澪「名取さんに伝えておいてくれ」

紬「ごちそうさま〜」

夏目「はい」

梓「・・・」

レイコ「・・・ここにいたのか」

ヒノエ『少し話があるんだ、いいかい、斑』

レイコ「どうした?」

ヒノエ『ここじゃなんだから移動するよ』

夏目「ヒノエ、列車に戻ってこれるのか?」

ヒノエ『気にするでないよ。斑とは違うんだ』

レイコ「ふん。夏目の匂いで辿り着くさ。じゃあな」

夏目「あぁ・・・」

多軌「先生はどこへ?」

夏目「・・・分からない」

菜々子「女性一人で大丈夫かね?」

秀輝「大丈夫ですよ、先生は強いから」

菜々子「ふーん」

静花「・・・」

紬「・・・眠くなってきちゃった」

梓「ヴェガに戻りましょう」

紬「そうね・・・」

菜々子「静花、話がある」

静花「私にはございませんわ」

菜々子「大事な話だ」

静花「・・・」

紬「戻らないんですか・・・?」

菜々子「うん、そういうことだから、先に戻ってて」

静花「しょうがないですわね」

菜々子「秀輝、みんなをよろしくな」

秀輝「は、はい」

紬「わ、私も・・・」

菜々子「こんな時間だからさ、戻っててよ」
426 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:18:59.89 ID:MXG+k7zko

律「姉御・・・?」

菜々子「ケンカなんてしないよ。じゃあね」

静花「みなさん、よい夢を」

秋子「おやすみなさいです!」

風音「おやすみなさい」

夏目(菜々子さんも気付いたのかな・・・)

多軌「?」

紬「・・・どうしたのかな」

澪「むぎ、戻ろう」

紬「う、うん・・・」

律「私らも寝るかー」

唯「寝ちゃうの〜? もったいないよ〜」

澪「梓も最後まで行けるのか?」

梓「分かりません。・・・後で電話してみます」

紬「一緒に最終駅まで行けるといいわね〜・・・」

梓「・・・・・・はい」

秀輝「こら! ちゃんとついてきなさい!」

律「はいはい」

唯「引率の先生みたいだね」

多軌「明日どこへ行こうか、夏目くん」

夏目「・・・そうだな、弥山とかいいかもしれない」

多軌「ニャンコ先生が喜びそう」

秀輝「・・・くっ」

律「向こうにいるのって、緑じゃねえか?」

秀輝「え!?」

律「ウソだよ〜ん」

秀輝「・・・んだよ」

律「フハハ、ひっかかりおったわ!」

唯「なになに〜?」

秀輝「・・・シマッタ」

夏目「?」

梓「むぎ先輩、歩くの辛かったら私の肩を使ってもいいんですよ」

紬「だいじょうぶよ〜・・・」

梓「・・・そうですか」ガッカリ

澪「む、むぎ・・・」

紬「なぁに?」

澪「梓の厚意を・・・その・・・な・・・?」

紬「・・・うん?」

澪「・・・いや・・・なんでも」
427 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:20:06.11 ID:MXG+k7zko

―――――ヴェガ


秀輝「俺も部屋に戻るわ。おやすみ〜」

夏目「おやすみ」

唯「おやすみ〜」

律「明日に備えて寝ましょうかね」

唯「・・・」

澪「まだはやいけど、しょうがないな」

紬「ごめんね〜・・・」

梓「さ、掴まってください」

紬「だいじょうぶよ〜・・・」

梓「・・・」ションボリ

澪「む、むぎ・・・個室まで送ってもらうといいよ」

紬「・・・うん?」

梓「・・・」

紬「・・・お願いしてもいいかしら」

梓「もちろんです」パァァ

律「輝いたぞ!」

夏目(嬉しいのか・・・)
428 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:20:50.37 ID:MXG+k7zko

紬「それじゃみんな、明日ね」

律「おやすみ〜」

澪「おやすみ」

夏目「おやすみなさい」

多軌「おやすみなさ〜い」

梓「では」

スタスタ

律「しんどそうだな」

唯「・・・うん」

律「あ、そうだ。健康祈願のお守りがあった」

澪「愛さんの?」

律「そうだぞ。ご利益があるから渡してくる」

テッテッテ

唯「もったいなーい!」

多軌「な、なにがですか?」

唯「今がだよ〜!」

タッタッタ

澪「ん?」

律「夏目!」

夏目「はい・・・?」

律「ありがとな!」

タッタッタ

夏目「・・・」

澪「それじゃ私も部屋へ戻るよ。ありがとう、夏目」

唯「わたしも戻るよ〜。ありがとね、貴志くん!」

夏目「・・・!」

多軌「・・・」
429 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:21:48.13 ID:MXG+k7zko


夏目「おやすみ、タキ」

多軌「うん。おやすみ」

夏目「・・・」

多軌「・・・」

夏目「部屋に入らないのか?」

多軌「うん、唯さんの言うとおり、なんだかもったいないなぁって・・・」

夏目「・・・」

多軌「あ、なんでもない。おやすみ、夏目くん!」

ガチャ

バタン

夏目(もう少し起きていようかなと・・・)

ガチャ

夏目(思ったんだけど・・・気を使われたかな・・・)

バタン






6日目終了--------
430 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:28:11.78 ID:MXG+k7zko
>>421
本当にありがとうございます。励みになります

夏目の旅が新たに始まります

次に夏目とむぎに絡むキャラです
我が家のお稲荷さま。
http://s1.gazo.cc/up/s1_8186.jpg

月に一回は見ている動画です。参考にどうぞ。
(美咲が取り上げられているだけなので参考にならないと思いますが)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4650038
431 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:38:47.83 ID:llxXVcgSO
良いスレと思うがsage進行なのはなぜ?
432 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:55:12.64 ID:JvXcZAm0o
おつ!
タキが可愛過ぎてヤヴァイ
433 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage ]:2011/12/13(火) 03:26:55.80 ID:zNME6duso


最後でいいんで、各キャラどの作品のキャラか載せてください
434 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:43:53.65 ID:V8xt5WPio
vipで宣伝した割にはsage進行という、意味不明な心理ですね
特に意識していなかったです。上げます!

了解です。公式サイトのURLと一緒に最後に紹介しますね
435 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:44:34.37 ID:V8xt5WPio


8月13日




チュンチュン

夏目「ん・・・・・・あさ・・・か・・・」

チュンチュン

夏目「先生・・・タキのところにいるのか・・・。ヒノエも・・・?」

夏目「・・・」

夏目(自分の部屋じゃないから、名前を取り戻しに来る妖もいない・・・)

夏目「ここのところぐっすり眠れていたんだな・・・」

436 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/13(火) 18:45:21.83 ID:V8xt5WPio

ガチャ

夏目「・・・」

バタン

夏目(タキに迷惑をかけていなければいいけど・・・)

多軌「おはよう、夏目くん」

夏目「ちょうどよかった。タキ・・・」

多軌「なぁに?」

夏目「・・・」

多軌「・・・」

夏目「・・・先生は?」

多軌「ニャンコ先生? 知らないけど・・・」

夏目「え・・・!」

多軌「戻ってきてないの?」

夏目「・・・」サァー

多軌「うわ・・・。更に顔色が悪く・・・」

夏目(探しに行くか・・・? でも、どこへ?)

多軌「・・・」

夏目(帰ってくるのか――?)

多軌「・・・」

夏目(おれと先生は・・・人と妖――)

多軌「おーい、夏目くーん」

夏目「!」

多軌「とりあえず、朝食をとりに行きましょう」
437 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:46:55.62 ID:V8xt5WPio

―――――食堂車


紬「もぐもぐ」ジー

梓「・・・」モグモグ

澪「む、むぎ・・・?」

紬「な、なにかしら?」

澪「なにを『見て』いるんだ・・・?」

紬「ううん。なんでもないわ」

梓「・・・」

律「最後まで行くと決めたはいいけど、どうすっかな」

唯「今日はどこへ行こう〜」

夏目(琴吹さんの視線の先には・・・『居る』・・・)

多軌「夏目くん、なににする?」

夏目「えっと・・・」

店員「いつものでよろしいでしょうか?」

夏目「はい。おねがいします」

店員「かしこまりました〜!」

夏目「・・・」

多軌「ニャンコ先生のこと気になる?」

夏目「あぁ・・・。お腹がすいたら帰ってくるだろうと思ってたけど」

多軌「それじゃ探しに行こうか」

夏目「いいのか?」

多軌「うん。どうして?」

夏目「観光したいんじゃないのかと思って・・・」

多軌「観光がてら回りましょう」

夏目「・・・助かるよ」

多軌「それじゃ、食べ終わったらホームで待ち合わせね」

夏目「うん」
438 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:47:52.82 ID:V8xt5WPio

――・・・


多軌「おまたせ。やっぱり戻ってなかった?」

夏目「うん。どこへ行ったんだか・・・」

多軌「・・・」

夏目「・・・あ」

静花「あら・・・」

多軌「おはようございます」

静花「おはよう。いい朝ですわね」

多軌「はい。気持ちよく観光地に回れます」

静花「うふふ、いいですわね」

夏目(昨日の夜・・・菜々子さんとどんな話をしたんだろう・・・)

静花「貴志さん・・・なにか?」

夏目「い、いえ・・・」

紬「ここにいたんですね」

静花「・・・」

夏目「?」

439 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:48:54.54 ID:V8xt5WPio

―――――厳島神社


夏目「・・・」

多軌「みんな揃ってしまったね。記念撮影するみたいだけど・・・」


静花「どうしてあなたがいますの!?」

菜々子「行くっていっただろ!」

静花「はぁ・・・、あなた、ここがどこだか分かっていますの?」

菜々子「厳島神社だよ」

静花「源平合戦の本場ですのよ?」

紬「そうですね」ジー

『いい場所であります』

『あぁー、力が漲ってくるわぁ』

夏目(やっぱり・・・琴吹さんには『見えている』んだ・・・)

菜々子「だからなんだってんだよ!?」

静花「お忘れになられたのですか? 高校時代に撮った写真・・・」

菜々子「ぐっ・・・」

律「一体何がっ!?」

唯「なにがあったとですか!?」

秋子「なにがあったんですか〜!」

静花「思い出すだけでもおぞましい」

菜々子「・・・ふんっ」

静花「菜々子さんの写真にだけなぜかお化けが写っていましたの」

風音「そうなんですか」

澪「聞こえない聞こえない」ブルブル

紬「あらあら」

秋子「すごいです〜! 姉御さまー!」

菜々子「あることない事言ってんじゃないよ!」

静花「私たちを、紬さんを恐怖のズンドコへ落とすつもりですの!?」

梓「・・・」

ギャーギャー
440 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:50:30.31 ID:V8xt5WPio

多軌「昨日のところへ行ってみましょう」

夏目「・・・そうだな」

夏目(居ると思うんだけど・・・)

秀輝「おーい、夏目ー!」

夏目「秀輝?」

秀輝「おいー、映らないのかよ!?」

夏目「う、うん・・・」

多軌「ニャンコ先生探しに行くの」

秀輝「ん? 戻ってきてないのか?」

夏目「そうなんだ。ここに居ると思うんだけど・・・」

秀輝「ふーん・・・」


律「秀輝ー! はやくしろー!」

唯「カメラマンさーん!」


夏目「カメラマンなのか・・・」

秀輝「撮影終わったら俺も一緒に探すよ」

多軌「・・・あ、北上さんもいる」

秀輝「じゃあなっ!」

ダダダッ

多軌「素直な人だね」クスクス

夏目「?」
441 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:53:02.49 ID:V8xt5WPio


斑『夏目か・・・』

ヒノエ『おや・・・。どうしたんだい』

夏目「戻ってこないから心配したんだぞ」

斑『ここで一晩中休んでいただけだ』

ヒノエ『楽でいいからね』

多軌「ここに『居た』んだね」

夏目「ありがとう、タキ。見つかったよ」

多軌「ううん」

斑『友人帳目当てで絡んでくるヤツがいないからな、お守りから開放されたわ』

ヒノエ『よく言うよ』

夏目「・・・まったく」フゥ

多軌「ふふっ」

斑『おい、夏目』

夏目「なんだ?」

斑『あの娘、どうする気だ』

夏目「・・・」

ヒノエ『依代姿の斑の声が『聞こえる』のと、妖が『見える』とでは全然違うよ』

夏目「・・・あぁ」

多軌「?」

斑『・・・』

ヒノエ『解呪の時にこの土地の力が宿ってしまったんだね』

夏目「そうだったのか・・・」

多軌「・・・」

夏目「タキ・・・。琴吹さんは今、『見えている』んだ・・・」

多軌「・・・うん」

斑『おまえはどう思う、夏目』

夏目「・・・この景色は・・・『見えなくていい』と思う」

斑『そうか・・・』

どろん

先生「ヒノエならその力を奪えよう」

ヒノエ『しょうがないね』

夏目「・・・」

多軌「・・・」

先生「運よく見つけられれば、娘どもの常識を正常に戻してやれるんだがな・・・」

夏目「誰を見つけるんだ?」

ヒノエ『昨日すれ違ったヤツだよ』

先生「大妖怪がこの地に来ているらしい」

多軌「大妖怪・・・?」
442 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:55:44.39 ID:V8xt5WPio

クー「見ろ昇! 透! 鳥居だ! 鳥居があんなところにあるぞー! ひゃっほー!」

昇「待てって、クー!」

透「クーちゃーん!」

タッタッタ

「高上まではしゃいじゃって・・・」

「美咲様は行かれないのですか?」

美咲「え、あ・・・ええと・・・」モジモジ

静花「賑わってまいりましたわね」

菜々子「私は行くよ。じゃあね」

律「また後でー!」

秋子「私も失礼します〜!」

風音「私もこれで」

梓「うん。またあとで」

唯「ヴェガでね〜」フリフリ

澪「・・・」フゥ

緑「・・・じゃ」

秀輝「・・・うん」

律「・・・」ニヤリ

紬「私たちはどこへ行きましょう」

梓「昨日提案した弥山はどうでしょう」

唯「いいですな! ぜひ行きましょう!」

梓「どういう場所か知っているんですか?」

唯「知りませんな」フフン

梓「・・・行きましょう、先輩方」

紬「静花さんも行きましょう〜」

静花「いえ、私も失礼しますわ」

紬「ど、どちらへ・・・?」

静花「人と会いますの・・・。それでは・・・」

スタスタ

紬「あ・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

梓「・・・」

夏目「・・・」

先生「ちょうど集まっているな」

唯「・・・お、先生にゃん」

秀輝「先生にゃんって言いづらそうなんだけど・・・。って見つかったのか」

夏目「うん・・・」
443 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 18:58:20.30 ID:V8xt5WPio

先生「おい、小娘」

紬「は、はい?」

梓「こらぁー!」グググ

先生「ふぎゅぎゅ」ムググ

梓「むぎ先輩に小娘っていうな」ジロ

先生「むんっ」ピョン

梓「あ・・・!」

シュタッ

先生「いつまでもやられている私だと思うなよ」キリ

多軌「猫ちゃん〜!」ダキッ

先生「ふぉっ!?」

多軌「きゃ〜! ツルフカ〜!」スリスリ

先生「加減を覚えんか・・・!」ジタバタ

澪「やはりな」ウンウン

律「先生、むぎに用でもあんのか?」

先生「そうだぞ! とぉっ!」ピョン

多軌「あ・・・!」

シュタッ

先生「ふふん」

秀輝「その姿からは想像もつかない身のこなし!」

先生「うるさいわ、アホ!」

秀輝「アホいわれた・・・」

先生「アホー!」

律「やーい、アホー」

唯「りっちゃん・・・大人気ないよ」

律「・・・うん」

夏目「嫌なこと言うな!」ゴスッ

先生「ふぎゅ」

夏目「・・・まったく」

先生「」プシュー

「む、只ならぬ気配を感じます」

美咲「コウさん・・・?」

ヒノエ『おや、この娘も力を持っているようだね』

夏目「え!」

紬「まぁ・・・」

コウ「昇様に近寄らないように成敗致します。えいっ」パサー

ヒノエ『うわっ、なんて娘だい!』

先生「しょっぱいわ!」

唯「おぉ、先生にゃんに塩を撒いてるよ」
444 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:01:18.01 ID:V8xt5WPio

美咲「ちょっと、コウさん!」

コウ「えいっ」パサー

先生「ぺっ、ぺっ! やめんか小娘ぇー!」

コウ「本性を現しましたね」

澪「な、なんだこの巫女さんは・・・」

梓「先生を敵として捉えているようですね・・・『聞こえている』ようですし・・・」

美咲「た、高上ー! コウさんがー!」

コウ「み、美咲様・・・、昇様を危険に晒すわけには」オロオロ

先生「ぐぅー、話ができん!」

ヒノエ『いや、ちょうどよかったみたいだよ』

先生「ん?」

紬「ちょうどよかった・・・?」

夏目「?」

律「なんだこのカオス空間は・・・」

澪「さすが厳島神社。昨日でもう慣れっこだよ」アハハ

唯「混乱しております」

梓「・・・」

昇「どうした、佐倉?」

美咲「私にはコウさんを止めることができなくて・・・」

昇「コウが?」

コウ「このネコは取り憑かれています。近づかないでくださいませ」ススッ

昇「うわ、近いってコウ!」

美咲「」ガーン

クー「のっぼるー!」ダキッ

昇「う、うわっ、人の前でくっつくなよ、クー!」

美咲「」ガガーン

秀輝「なにこれ」

夏目「・・・さぁ」

クー「なぁなぁ、もみじまんじゅう買ってくれよぉ〜」スリスリ

先生「運がいいな、娘」

紬「?」

コウ「また喋りました、えいっ」パサー

先生「塩をまくでない!」

クー「・・・おまえは」ジロ

先生「久しいな、空幻狐・・・」ジロ

クー「まさか・・・」

先生「ふふん」
445 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:04:34.60 ID:V8xt5WPio

クー「誰だ?」

先生「私だ!」カチーン

どろん

斑『この姿に覚えがあるだろう』

美咲「ネコが消えた!?」

クー「ほぅ・・・。中々の大物」

コウ「ここまでの相手ですか・・・」

紬「おぉー・・・近くでみるとふさふさなのね」

律「なにがなんだかさっぱり分からん。ちょっと離れていようか」

唯「そうだね」

梓「ですね」

澪「・・・ふぅ」

多軌「・・・私も」

秀輝「俺も・・・。終わったら呼んでくれ、夏目」

夏目「あ、あぁ・・・」

美咲「どうしてこの人たちネコが消えても驚かないの〜」グルグル

昇「さ、佐倉!」ガシッ

美咲「はわ〜」グルグル

クー「昇は佐倉を介抱してやれ」

昇「わ、わかった・・・。戦うのか?」

コウ「護り女である私のやるべきこと。昇様を御守致します」グッ

斑『ほぅ、力が途端に上がったようだ。私と戦う気だな、面白い小娘!』

夏目「やめろっ!」ゴスッ

斑『ぐふっ』

どろん

先生「」プシュー

夏目「・・・まったく」

紬「そういうのはよくないですよ」メッ

夏目「・・・」

クー「おい、護り女」

コウ「はい」

クー「術を解け、こいつは昇に害をなすものではない」

コウ「かしこまりました」スゥ

ヒノエ『さっさと起きな、斑』

クー「斑・・・?」

先生「むぅー・・・」

夏目「この人たちも妖の姿の先生とヒノエが『見える』のか・・・」

紬「・・・まぁ」
446 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:07:14.29 ID:V8xt5WPio

先生「夏目、コヤツは人ではないぞ」

夏目「え・・・?」

クー「斑か・・・」

先生「ふん、やっと思い出したか」

コウ「知り合いでしたか」

クー「知らんな」

先生「かちーん!」

ヒノエ『話を進めないか、斑』

先生「ぐぬっ・・・! 高貴な私が覚えていて・・・こんなヤツが私を忘れているとは・・・」フルフル

コウ「天弧様に無礼を・・・えいっ」パサー

先生「塩を撒くなというとろうが!」

紬「あなたも先生さんの声が『聞こえる』のね」

コウ「?」

クー「護り女はそういう家系なのだ。力も当然受け継がれておる」

コウ「はい。あちらにいらっしゃる昇様と向こうにいらっしゃる透様の守護を任されております」

紬「・・・あの小さな子ね」

クー「そうだぞ」

夏目「あなたは・・・妖ですか?」

クー「『あやかし』か・・・まぁ、呼び方は違えど同じ類に属することになるな」

コウ「天弧空幻様であらせられます」

紬「てんこーくーげんさん・・・」

クー「ふふん」

先生「おまえ、人間に封じられたと噂に聞いていたが」

クー「解かれたんだよ。私もあの二人を護るようにいわれておる」

先生「人に封じられた妖が人を護るか・・・」

夏目「・・・」

クー「それはそれ、これはこれだ。私は楽しむことにしか興味が持てんのだ」

紬「素敵ですね」

クー「おまえ見所あるな」

紬「うふふ」

先生「空幻狐、おまえに頼みがある」

クー「なんだ?」

コウ「・・・」

夏目「先生が・・・頼み・・・?」

ヒノエ『娘』

紬「私ですか?」

ヒノエ『そうだ。ちょっとこっちへ来な』

紬「はい・・・」
447 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:08:58.97 ID:V8xt5WPio

クー「頼みとはなんだ?」

先生「おまえ、幻術が得意であったな」

クー「そうだが?」

先生「この娘、それから向こうにいる小娘どもに催眠術をかけてやってほしい」

夏目「催眠術!?」

ヒノエ『動くんでないよ』

紬「あの・・・?」

スゥゥゥ

紬「あ、あら・・・?」

ヒノエ『・・・』

夏目「ヒノエ・・・なにを・・・」

先生「この娘の力を吸い取っておる。おい、そこのおまえ」

コウ「なんでしょう」

先生「あっちにいる小娘どもを呼んで来い」

コウ「・・・」

クー「呼んできてくれないか」

コウ「かしこまりました」

先生「私には無反応か!」

クー「物の怪であるおまえの言葉に従えないだけさ」

先生「おまえも似たようなものではないか!」

クー「私は今、守り神だ」フフン

先生「私は用心棒だ!」ペシペシ

夏目「張り合うなよ、先生」

紬「ヒノエさんの姿が・・・霞んで・・・」

ヒノエ『おまえは『見えなくていい』んだよ・・・』

紬「ヒノエさん・・・!」

ヒノエ『元の世界へお帰り』

紬「ぁ・・・!」

クー「・・・」

先生「来たか」

律「なんだよ先生、用事って」

唯「なんですかな、先生にゃん」ツンツン

先生「つつくでないわ!」

ヒノエ『・・・どうだい』

紬「『見えない』・・・」

澪「むぎ・・・?」

梓「・・・?」

紬「そこに『居る』のに・・・『見えない』・・・」

多軌「・・・」
448 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:10:53.28 ID:V8xt5WPio

先生「本来、妖と人の子とは住む世界が違うのだ」

クー「・・・」

紬「で、でも・・・」

ヒノエ『私は人の子が嫌いだが、レイコのような強さを持ったものは好きだよ。・・・娘』

紬「ヒノエ・・・さん・・・」

夏目「・・・」

先生「まだ『聞こえる』か・・・。おい、空幻狐」

クー「しょうがない。この5人でいいんだな」

先生「うむ。常識レベル・・・。ネコの姿である私が喋るという事実を消してやってくれ」

律「なんだよそれ?」

唯「どういうこと〜?」

澪「事実を消す・・・?」

梓「常識レベルを京都以前に戻すという事・・・?」

先生「そういうことだ。おまえたちを『日常』へ帰してやる」

紬「そんな・・・!」

律「へ?」

唯「・・・ん?」

澪「?」

梓「先生の声が『聞こえなくなる』と・・・」

先生「そういうことだな。言葉を交わすことはもうないだろう」

紬「・・・言葉が・・・交わせない・・・のは・・・」

梓「むぎ先輩・・・」

紬「言葉で伝えられないのは・・・辛い・・・ですよ・・・」

先生「・・・」

夏目「・・・」

律「そうだぜ、やだぜそんなの」

唯「いやだよ・・・」

澪「・・・うん。嫌だ」

梓「・・・嫌です」

紬「・・・」

夏目「琴吹さんの為なんです」

紬「え・・・?」

律「?」

夏目「一時的ですが、力が備わってしまった為に妖が存在する世界を目の当たりにしました。
   その力を維持しておくのは危険なんです。琴吹さんが持っていていい力ではない。
   それがどういうことなのか、おれは痛いほど知っている」

多軌「夏目くん・・・」

梓「・・・」

夏目「みなさんにとっては『知らなくていい』世界なんです・・・」

ヒノエ『そういうことさ』
449 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:12:28.74 ID:V8xt5WPio

先生「空幻狐」

クー「・・・いいんだな」

先生「私に関することだけでいい、消してやってくれ」

クー「みんな、この手をみるんだ」

律「・・・?」

唯「手・・・?」

澪「?」

梓「・・・」

紬「・・・っ!」

先生「・・・やれやれ」

どろん

斑『手をみろ、小娘』

梓「む・・・?」

紬「・・・」

斑『おまえ達の記憶から、私が消えるだけだ。それは大したことじゃない。
  私は妖なんだからな』

紬「こんな一方的な・・・強制的な別れ・・・」

斑『出会いと別れなんて、こんなものだ』

紬「・・・!」

梓「・・・」

斑『さらばだ、娘・・・ネコ娘』

クー「斑という化け物は存在しな〜い」

グルグル

律「・・・」

唯「・・・」

クー「存在しな〜い・・・」

澪「・・・」

梓「・・・」

紬「・・・」

クー「存在しな〜い・・・・・・」

グルグル

450 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:15:49.69 ID:V8xt5WPio

――・・・


美咲「・・・はっ」

昇「起きた?」

美咲「た、高上!?」

昇「よかった・・・」

美咲「ど、どうして私高上の腕の中で!?」

律「おぉ、ロミオ・・・!」

澪「うるさいぞ、スザンヌ」

律「誰だよ! ジュリエットだよ!」

紬「そうね、二人はまるでシェイクスピアね」ウンウン

唯「即席の舞台を用意したくなる雰囲気だよね」

梓「どんな雰囲気ですか」

美咲「な、なに! この人たち・・・! もしかして高上の文通相手!?
   いえいえ、落ち着くのよ美咲・・・。高上がそんな見境なく文を送るわけないわ」

昇「あ、あの・・・佐倉さん?」

律「なにか呪文を唱えだしたぞ」

美咲「はっ! ・・・私を広島へ連れてきたのはそういうことだったの・・・!?
   『おれには文通相手がいるんだから、悪いな佐倉』ってこと・・・!?
   それに可愛い人揃い・・・! 私なんて引けにとりまくり・・・!
   そ、そりゃ・・・私だって、日々高上のために精進しているつもりだけど・・・  
   なんていうか、紅葉さんみたいな、みなさんとはレベルが違うっていうか次元が違うっていうか
   あぁー、ただでさえ天弧さんやコウさんと同棲している高上なのにー!
   また五人も参戦ってどういうことなのー!」

昇「あの・・・。商店街の福引で当たって・・・父さんの分を佐倉さんに・・・聞いてるかな・・・?」

多軌「様子はどう?」

美咲「増えた!?」ガーン

律「なんか元気そうだから行こうぜ」

紬「そうね」

唯「活舌がよすぎて逆に聞き取れなかったよ・・・」

澪「・・・あ、あの二人は・・・いい間柄だと思う・・・ぞ・・・」プシュー

梓「もう一度鳥居をくぐりませんか?」

紬「そうね、潮も引いているからちょうどいいわね!」

美咲「付いてきた私だって悪いけど・・・それは高上が誘ってくれたからで・・・
   そうよ、遠くに居る相手が文通相手なら、近くに居る私にだってできることがあるはず
   文字で言葉を伝えるから・・・。そう、交換日記! これで距離を縮めることができるはず
   頑張るのよ美咲・・・!」

昇「おーい、コウー!」
451 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:17:06.13 ID:V8xt5WPio


コウ「お呼びがかかりましたので、行ってまいります」

クー「うむ」

斑『・・・』

夏目「・・・」

ヒノエ『・・・』スゥ


紬「夏目さんも行きませんか〜!」


斑『行って来い』

ヒノエ『ここで待ってるよ』プフー

夏目「あぁ・・・」

クー「お礼になにをいただこうかな」ルンルン

斑『夏目に言え』

クー「やったぁ〜♪」ウキウキ

秀輝「先生・・・そこにいるの?」

斑『・・・』

クー「どうして返事をしてやらんのだ」

斑『・・・めんどくさいヤツだ』

どろん

先生「なんだ」

秀輝「俺の記憶は残っているんですけど・・・」

先生「おまえの記憶を消したらまた器が小さくなるではないか」

秀輝「・・・さ、さようですか」

452 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:19:39.02 ID:V8xt5WPio

多軌「みんなでくぐりましょう」

夏目「そうだな・・・」

律「あのさ、夏目のお姉さんっていつ降りたんだっけ?」

紬「挨拶してないわ」

澪「そういえば・・・」

梓「タキが乗ってきたのは大阪ですよ」

律「・・・じゃそこからか・・・?」

多軌「はい。みなさんによろしくって!」

紬「・・・」

唯「う〜ん、お姉さんにちゃんと別れの言葉を言いたかったよ」

澪「・・・そうだな」

夏目「満ちてくる前にくぐりましょう」

律「だな!」

澪「・・・うん!」

唯「くぐったら異次元に辿り着きそうだよ」

澪「ヒィッ」

多軌「今のはちょっと怖かったね・・・」

夏目「・・・あぁ、神隠しだな」

律「集団神隠しか・・・怖ぇ・・・」ブルッ


紬「・・・いつか」ボソッ

梓「むぎ先輩?」

紬「なぁに?」

梓「空を眺めて・・・どうしたんですか?」

紬「まだまだ知らない空の下、どこまでも続いているんだなぁって・・・」

梓「・・・そうですね」

紬「・・・」カシャッ

梓「? 写真に残すんですか?」

紬「――うん」

梓「・・・記録ですね」

紬「――あずさちゃん」

梓「なんですか?」

紬「――この空に想いを残せたら素敵ね」

453 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:22:07.09 ID:V8xt5WPio

―――――中央通り


クー「なんか悪いなぁ〜♪」ルンルン

昇「悪い、夏目・・・」

夏目「お礼だから気にしなくていいよ」

クー「さっそくいただきまーす」パクッ

透「クーちゃん、おいしい?」

クー「おいしいぞぉ〜、透も食え食え!」

透「夏目さん、いただきます」

夏目「どうぞ」

透「はむっ」

クー「どうだ? おいしいだろ、もみじまんじゅう」

透「おいしい〜」

律唯「「 かわいい〜 」」

澪「お礼って・・・?」

夏目「色々と・・・お世話になったので・・・」

澪「・・・そうか」

梓「そろそろ行きましょう」

紬「そうね、ヴェガは夕方に出発だから・・・。うん、余裕よ」キラン

唯「あ、わたしも行くよ〜」

澪「律は・・・?」

律「行くぞ・・・あ」

菜々子「みんな揃ってなにしてんの?」

律「姉御も一緒に弥山にいきましょうぜ」

菜々子「もう少しで仕事なんだ。遠慮しておくよ」

律「・・・そうですかぁ」

紬「りっちゃん、行きましょう〜」

律「あ、私はいいや・・・。みんなで行ってきてくれ」

唯「分かったよ」

澪「じゃあな」

梓「列車で」

律「むぎぃー・・・、誰も引き止めてくれねえー・・・」シクシク

紬「りっちゃんには私がいるわ」ヨシヨシ

律「む、むぎ・・・!」
454 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:23:06.87 ID:V8xt5WPio

梓「しょうがないですね」

唯「りっちゃんは甘えん坊だね」

澪「・・・そうだな」

律「み、みんな・・・!」

紬「一緒に行く?」

律「ううん、みんなで楽しんできてくれ」

唯澪梓「「「 それじゃ 」」」

紬「あとでね、りっちゃん」

律「あれー・・・、結束が固まったと思ったんだけどなー・・・」

菜々子「楽しそうだね」

秀輝「・・・夏目」

夏目「ん?」

秀輝「先生と多軌さんは?」

夏目「弥山へ・・・。みんなと鉢合わせするかも・・・」

秀輝「みんなそれぞれか・・・。じゃ、俺もここでな」

夏目「あぁ・・・」

秀輝「ちょっと一人で考えることがあるから・・・。列車で」

夏目「・・・」

律「秀輝も色々悩んでいる様子だなぁ」

菜々子「・・・」
455 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:24:17.12 ID:V8xt5WPio

クー「おいしい〜!」モグモグ

美咲「・・・」ジュルリ

コウ「美咲様・・・涎が・・・」

美咲「は、はしたないわっ私!」

昇「佐倉も食べよう」

美咲「優しいのね高上・・・。でもダメッ!
   旅館の豪勢なご飯をたくさん食べてしまったからダメーッ!」

昇「そうですか・・・」

美咲「たっ高上が悪いわけじゃなくてっ」アセアセ

透「お兄ちゃんたちはいつ帰るの?」

夏目「夕方・・・。昇とおなじ時刻だよ」

透「そうか〜。広島楽しかったね、にーちゃん」

昇「そうだな、楽しかった」

クー「食いもんもおいしかったしな!」

菜々子「そ、それじゃな、律・・・」

律「あ、姉御に聞きたいことが・・・」

菜々子「?」

夏目(えっと・・・どうしよう・・・)

律「むぎのことなんだけどさ・・・」

菜々子「歩きながら話そうか」

夏目「・・・」

クー「じゃっあな〜」

昇「見送りに行くよ」

夏目「あ、あぁ・・・」

456 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:28:51.82 ID:V8xt5WPio

―――――中央通り


律「昨日のお好み焼きの後・・・、静花さんから聞きました?」

菜々子「・・・なんのこと?」

律「むぎのこと」

夏目「・・・」

菜々子「聞き出そうと思ったんだけどさ、・・・踏み込めなかったよ」

律「・・・そうですかぁ」

夏目(呪いをかけた妖を介して琴吹さんと静花さんの夢を見たんだ、あれはきっと・・・過去の記憶)

菜々子「・・・」

夏目(二人は過去に会っている・・・はず・・・)

律「むぎがらしくない表情をするんですよ・・・」

菜々子「・・・うん」

律「・・・それは、どうしてかなって考えたとき」

夏目「・・・」

律「この旅で出会った人と別れた後、それが濃くなっているなと・・・思って」

菜々子「・・・そっか」

夏目(おれの口からは・・・二人が知り合いだということは絶対に言えない。
   妖を介してなんて、今の律さんには受け入れられないから)

律「・・・」

夏目「律さん、中野の心の・・・」

律「心の?」

夏目「あ、えっと・・・。琴吹さんのそういう表情って、中野も気づいて・・・?」

律「あぁ・・・。うん、気づいている。むぎと連鎖して梓も少しらしくない表情をする
  いや、してた・・・のかな・・・」

夏目(中野の心の隙はそれだったのか・・・)

菜々子「・・・」

律「菜々子さん、静花さんってどういう人ですか・・・?」

菜々子「高飛車で世間知らず・・・、口が悪くて性格も悪い。そういうヤツだから友達はゼロ」

律「・・・」

菜々子「私とアイツは波長が合わないっていうか、
    反発しあってる磁石のようなもので・・・お互いを引き付けない存在だよ」

夏目「・・・」

律「・・・嫌い?」

菜々子「当然。ことある毎にケンカしてんだ。これで仲がいいっていう人は分かっちゃいないね」

夏目「・・・」

菜々子「・・・でも、憎めない。そんなヤツだよ。鹿島静花って」

律「・・・なるほど」

夏目(仲がいいだけでは言えない事を平気で口に出せる間柄・・・とも受け取れる・・・かな)

菜々子「・・・」
457 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:30:59.75 ID:V8xt5WPio

秀輝「あ、あれ・・・?」

律「どうしたんだよ、こんなとこで」

菜々子「一人で観光か? 寂しいヤツだな」

夏目「・・・ほんとに」

秀輝「」グサッ

律「観光名所なだけあって、お土産店が多いな〜」

菜々子「お店を覗いてみても、売ってるのは大体同じなんだよな」

律「そうそう、それに同じ値段だから意味ないですよね」ウシシ

菜々子「あはは」

夏目「・・・なにか買っていこうかな」

秀輝「親に?」

夏目「・・・うん」

律「親孝行息子だなっ!」

菜々子「うん、優しい子を持ったな」

秀輝「大人しいから手もかからないんだろうな」

夏目「あ、・・・すいません・・・。今お世話になっている人は・・・本当の親じゃないんです」

律「え・・・?」

菜々子「・・・」

夏目「おれの両親は、小さい頃に亡くなって・・・。
   今は遠縁にあたる人たちの家にお世話になっているんです」

秀輝「・・・」

律「・・・そっか」

菜々子「・・・へぇ、苦労してんだね」

夏目「・・・いえ」

秀輝「夏目って苦労してそうなのに、曲がってないよなー・・・」

律「そうだなー。秀輝だったら曲がりくねって地面に刺さるだろうな」

菜々子「どういう意味さ」

律「夏目の木は太陽に向かってまっすぐ育っていくイメージ」

秀輝「なるほど。俺の木は育つにつれて地面に還ろうとしてんだな、曲がりすぎて」

律「なにを言っているんだ、大丈夫か?」

秀輝「言い出したの誰!?」

夏目「ぷっ・・・!」

菜々子「変な漫才してんじゃないっての」

夏目「あっはははははっ!」

秀輝「・・・」

律「笑われてやんの」ウシシ

夏目「ふふっ・・・くっ・・・すまんっ・・・秀輝っ・・・」

秀輝「謝られるのも違うけどな・・・」

菜々子「・・・」
458 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:32:54.09 ID:V8xt5WPio

律「最近のおまえはなんだか変だよな」

秀輝「・・・そうか?」

律「・・・どうでもいいけど」

夏目「ふっ・・・どうでもいいんだ・・・!」

秀輝「夏目笑いすぎ・・・。変なのかな・・・。どうですか?」

菜々子「私に聞いてんの?」

秀輝「・・・はい」

菜々子「・・・ごめん。どうでもいいや」アハハ

夏目「ぷっ・・・!」

秀輝「・・・なんだかなぁ」

夏目「よかったじゃないか・・・井の中から出てこれて」

秀輝「言いたい放題だな・・・。ちくしょう」

律「夏目にまで言われてやんの」ウシシ

菜々子「井の中の蛙?」

夏目「はい」

秀輝「おいこら、夏目ぇ!」

菜々子「・・・へぇ」

律「夏目と秀輝は仲がいいな」

夏目秀輝「「 いやいや 」」

菜々子「息もぴったりだ」

夏目「・・・」

秀輝「・・・」

菜々子「律と秀輝も仲がいいよな」

律秀輝「「 そんなバカ・・・な!? 」」

夏目「うん・・・。さすが旅仲間」

律「真似すんなよっ!」

秀輝「してねえ!」

菜々子「あっはっは!」

夏目(不思議な感じだな・・・。数日前までは存在さえ知らなかった相手なのに
   たった数日でこんな風に笑いあえているなんて・・・)

律「姉御〜、秀輝ってさぁー」ニヤニヤ

菜々子「秀輝が?」

秀輝「やめろっ!」

律「き〜た〜か〜」

秀輝「律、アイス食べる?」

律「いりませんな」

菜々子「なに?」

律「うしし」

夏目(旅の中にいるから・・・。お互いを必要以上に知らないままでいられるから、
   相手に気兼ねすることもなく、一緒に居られるんだろうな・・・)
459 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:35:04.78 ID:V8xt5WPio

律菜々子「「 ・・・あ 」」

秋子「あ〜!」キラキラ

秀輝「あ、秋子ちゃんじゃないか。どうしたんだい?」

秋子「オネーサマもここにいらしてたんですねぇ〜!」

秀輝「おっと・・・。眼中に無しか」

夏目「扱われ方が・・・アレだな・・・ふふっ・・・」

秀輝「・・・そうなんだよなぁ・・・軽く扱われてさぁ・・・。どうしてだ・・・」

秋子「中央通りで巡り会うなんて、これも運命なんですね〜!」

菜々子「あ、あぁ・・・そうだね」

秋子「宮島から一緒にこればよかったです〜!」

菜々子「う、うん」

律「姉御って呼ばないのかよ」

秋子「それはもういいんです! だって、私にとってのオネーサマですから」キラキラ

菜々子「・・・う」

律「・・・さいですか」

夏目「秋子さんは元気だな・・・」

秀輝「どこからエネルギーが沸いてくるんだろうな・・・」

秋子「それでは一緒に行きましょう〜!」

菜々子「わ、悪い! これから食堂車に行かなきゃならないんだよ!」

秋子「え〜!」

律「あらら・・・」

菜々子「ごめんね、秋子ちゃん」

秋子「残念です〜・・・」

律「私も戻ろうかなー・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・秀輝?」

秀輝「・・・」

夏目(なにを見ているんだ・・・?)

秀輝「・・・な、菜々子さん・・・あれ」

律「・・・静花さんか・・・?」

秋子「もう一人の女性の方は誰でしょう・・・か・・・」

菜々子「――え」
460 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:36:47.88 ID:V8xt5WPio

女「とっくに返済期限が切れているんですよ!」

静花「は、はい。申し訳ありません」

女「だから謝られても、貸したお金が戻ってくるわけじゃないんですよっ!」

ドンッ

静花「ッ!」




夏目(突き飛ばした――!)

律「なんだあいつっ!」

菜々子「待って律!」

律「でも、静花さんがっ!」

菜々子「今・・・行っても・・・」

律「え・・・?」

菜々子「私達には・・・」

秋子「オネーサマ・・・?」

秀輝「・・・」





女「以前は随分と高いところからモノを言われましたわぁ」

静花「・・・っ!」

女「あなたの・・・同僚・・・仲間・・・無能な上司にね」

静花「・・・ッ!」

女「立場が変わって。どうでしょうか、見下される気分というのは」

静花「・・・ッ!!」

女「気分がいいものですわね、この没落貴族がッ!」ドンッ

静花「っ!」

ドサッ




秀輝「ッ!」ダッ

ダダダッ

律「待て秀輝ッ!」ダッ

ダダダッ

秋子「わ、私達も行きましょう・・・!」

菜々子「・・・っ」

秋子「オネーサマ!」

夏目「・・・」

461 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:40:20.95 ID:V8xt5WPio

女「いつまで地べたに座ってますの? 誰も手を差し伸べてくれませんわよ
  あの時、あなた方が私たちにそうしてきたように、誰もね!!」

静花「――ッ!」

スッ

緑「立って」

静花「み、緑さん・・・!」

女「なんですか、あなたは・・・」

緑「ほら、立って」グイッ

静花「・・・」

女「・・・」

秀輝「き、北上さん・・・!」

律「・・・」

静花「え・・・?」

女「今大事な話をしているんです。席を外してくれませんか?」

緑「・・・」

秀輝「話をしている風じゃなかった」

律「あなたが楽しんでいただけだな」

女「・・・」

静花「・・・」

女「まぁ、いいでしょう。確かに、こちらも度が過ぎましたから・・・」

静花「・・・」

女「それでは、鹿島静花さん。
  期限が過ぎるようでしたら法的処置を取らせていただきますので」

静花「・・・はい」

女「・・・それでは」

スタスタ

緑「・・・」

秀輝「・・・」

律「・・・」

静花「・・・どうして・・・みなさんが・・・」

律「あ、いやー・・・。たまたま見かけてさー・・・」

秀輝「・・・うん。放っておいていい雰囲気じゃなかったっていうか」

緑「・・・」

静花「・・・そう・・・ですか」

律「・・・」

静花「ありが――」
462 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:42:21.89 ID:V8xt5WPio

緑「どうして『そこ』にいるの?」

静花「え・・・?」

秀輝「・・・?」

律「?」

緑「『こっち』にこないのね・・・、津山菜々子は」

静花「ななこ・・・さん・・・?」

菜々子「・・・」

静花「――!」

夏目「・・・」

秋子「お、オネーサマ・・・」

静花「ど、どうしてあなたがここに!?」

菜々子「・・・ごめん」

静花「――ッ!?」

律「な、菜々子さん・・・」

秀輝「・・・」

静花「どうして・・・謝るんですの・・・」

菜々子「・・・」

静花「無様だと・・・! 滑稽だと! 罵ればよいのですわっ!」

菜々子「・・・」

静花「あなたが嫌うこの私の最低な場面に出くわして! どうして沈んでいるんですか!」

菜々子「・・・」

静花「嘲りなさいなッ! 馬鹿になさいなッ!」

菜々子「・・・・・・ごめん」

静花「――ッ!」

律「し、静花さ」

秀輝「まて律」

律「な・・・」

緑「・・・」

静花「最低最悪ですわ・・・。あなたはどこまでも私を辱めますのね・・・」

菜々子「・・・」

静花「縁が切れて清々ですわ」

菜々子「・・・」

静花「――さようなら、菜々子さん」

菜々子「ッ!」

夏目「!」

秋子「静花さんっ!」

静花「・・・」

スタスタ

菜々子「・・・」
463 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:44:13.51 ID:V8xt5WPio

律「行ってしまいますよ・・・」

秀輝「・・・」

秋子「オネーサマ・・・」

夏目「・・・」

緑「・・・!」ブンッ

パァンッ

菜々子「・・・ッ!」

秀輝「み、緑・・・!」

律「緑・・・!」

緑「友達・・・なんでしょ・・・」

菜々子「・・・」

緑「あなたたち友達なんでしょ!」

菜々子「!」

秋子「オネーサマ、追いかけないと静花さんが降りてしまいますよ」

菜々子「・・・」

秀輝「仕事じゃないんですか?」

菜々子「・・・あ、・・・うん」

秀輝「ヴェガに戻った方がいいですよ」

律「秀輝!?」

緑「・・・」

秋子「静花さんを追いかけないんですか・・・?」

菜々子「・・・うん」

秋子「どうして・・・!」

菜々子「私では・・・」

緑「くだらないわね・・・」

スタスタ

律「緑・・・」

秀輝「秋子ちゃん、菜々子さんとヴェガへ戻ってて」

秋子「秀輝さんは・・・」

秀輝「探してくる」

律「・・・うん」

秋子「行きましょう、菜々子さん」

菜々子「・・・」

夏目(ショックなのだろうか・・・
   言葉が出なかった自分自身が
   友達だと人に諭されたことが・・・)
464 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:47:20.78 ID:V8xt5WPio


律「探すってどこを探すんだよ」

秀輝「適当にだ」

夏目「・・・」

律「ヴェガに戻ったかも知れないじゃんか」

秀輝「それだったら菜々子さんと会うだろ。戻っていないとしても、
   この時間だと荷物を纏めたり手続きなりで発車ギリギリになるから、少なく見ても次の駅までは時間あるさ」

律「・・・そこまで考えていたのか! 秀輝はアホじゃなかった!」

秀輝「失礼にもほどがあるだろ!」

夏目「・・・なぁ、どうして律さんを止めたんだ?」

律「・・・む?」

秀輝「・・・え?」

夏目「静花さんが、心の叫びっていうのかな・・・」

律「あの時か・・・」

秀輝「多分さ、静花さんは菜々子さんの言葉を待っていたんだよ
   いつも通りの言葉を・・・。そこからまた普通に戻りたいってさ・・・」

夏目「・・・そうか」

夏目(だから静花さんは傷ついた表情していたのか・・・)

律「・・・なんで秀輝が分かるんだよ」

秀輝「俺も何度か影を落としてしまって・・・。仲間に距離を取らせてしまいそうなとき
   先生に・・・自惚れるなって言われてさ・・・。自分を知ることができて、吹っ切れたって感じたことがある」

律「ふーん・・・。さわちゃんじゃねえよな。恩師かなにかか?」

秀輝「そんなとこ」

夏目(ニャンコ先生に言われた時・・・)

律「・・・どうすっかな」

秀輝「なにが?」

夏目(律さんは・・・ニャンコ先生を覚えていない・・・)

律「むぎのこと」

秀輝「・・・」

夏目「なぁ・・・あそこで絡まれているのって・・・」

秀輝「北上さん・・・」

律「はぁ・・・。次から次へと・・・」
465 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:48:25.82 ID:V8xt5WPio

「なぁなぁ、あんた今ヒマだろ〜?」

「オレラと遊び行こうぜ〜」

緑「・・・」スタスタ

「無視してんじゃねえよー!」ガシッ

緑「離して・・・ッ!」

秀輝「あぶなーい!」

ドンッ

「うわっ」

ゴロゴロゴロゴロ

ドンガラガッシャーン

「大丈夫か拓ー!」

拓「てめえっ!」

秀輝「逃げるよ北上さん!」グイッ

緑「ちょっと・・・!」

タッタッタ

拓「追うぞ栄吉ッ」

栄吉「自分栄作ッス! 広島をあいつの血で染めてやるぜー!」ヒャッハー

ダダダッ



夏目「・・・行ってしまった」

律「夏目、あっち探してみようぜ〜」

夏目(無かったことになってる・・・)
466 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:50:05.50 ID:V8xt5WPio

―――――広島駅


律「結局見つからなかったな。・・・ってことは、まだ降りてないってことでいいのかな」

夏目「・・・」

夏目(そろそろ発車時間だけど・・・タキたちも戻ってきているのかな・・・)

律「ヴェガに戻って・・・お」

唯「りっちゃーん!」

澪「りつー!」

梓「律せんぱーい!」

紬「りっちゃーん!」

律「はは、あんな大声で呼ばれたら照れるな」テレテレ

夏目「・・・」

唯「澪ちゃんの言うとおりだね!」

澪「意外と単純なんだ」

梓「意外でもないですけど」

律「・・・?」

紬「機嫌直った?」

律「ご機嫌取りかぁーー!!!」

唯「まぁまぁ、ほれアイスをどうぞ」

律「別に機嫌悪くしてたわけじゃないぞ・・・」バリッ

澪「輪から外れて寂しいかと思っていたんだけど・・・。一応食べるんだな」

律「寂しくなんてないですよ・・・はむっ」

梓「夏目と一緒だったんですね」

夏目「先・・・タキは居なかった?」

澪「せん・・・?」

梓「さっきまで一緒だったけど・・・」

紬「あら・・・? どこへ行ったのかしら・・・」

夏目(静花さんたちのこと・・・)チラッ

律「がりがり」フルフル

唯「アイコンタクトしたよっ!」

澪「な・・・!」

梓「へぇ・・・」

紬「まぁ・・・」

律「そんなんじゃねえやい」ガリガリ

唯「じゃあなにさっ! 今の合図は!」

澪「心で会話したのか。いつの間にそんな信頼を得た・・・律!」

梓「タキがいるくせに・・・」ボソッ

紬「うふふ」

夏目(なんだろう・・・このグッタリ感は・・・)
467 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:51:59.09 ID:V8xt5WPio

クー「おーっい! 見送りに来てやったぞ〜!」

透「夏目さ〜ん!」

律「透はかわいいな〜」ホンワカ

唯「そうですな〜」ホンワカ

昇「俺たちもヴェガが発車した後の列車で帰るんだ」

夏目「そうなのか・・・。わざわざありがとう」

昇「いいって、これくらい」

夏目(不思議な縁だな・・・)

美咲「楽しかったね、コウさん」キラキラ

コウ「はい」

梓「・・・」

澪「この一団はすごいな」

紬「そうね・・・!」

夏目(確かに・・・バラエティー溢れている・・・)

クー「おまえらは次どこへ行くんだ?」

唯「博多だよ〜」

クー「博多ねぇ〜。よく分からんが頑張れ」

律「なにを応援されたんだ」ガリガリ

透「ラーメンがおいしいんだよ、クーちゃん」

昇「あ、透!」

クー「ラーメンだって!?」キュピーン

昇「これから帰るんだからな」

クー「ここまで来たんだから博多にも行こうぞ〜昇ぅ〜」スリスリ

昇「父さんが待っているんだから帰らないと」

クー「・・・む、それはしょうがない」

紬「残念ね〜」

コウ「はい」

美咲「コウさんも行きたかったの!?」

コウ「はい」

昇「意外だ・・・」

澪「どうして巫女姿なんですか?」

コウ「お仕事ですので」

澪「神社のお仕事?」

昇「あ、いや気にしないで下さい」アセアセ

唯「一生懸命誤魔化そうとしてますな!」

律「そうですな! 気になりますな!」

夏目(物の怪から護るって言ってたな・・・)

梓「先輩方、そろそろ時間ですよ」

紬「分かったわ」
468 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:52:44.16 ID:V8xt5WPio

クー「どれに乗って帰るんだ?」

唯「こちらにございます」

律「丁寧だな」

クー「うむ、案内せい」

唯「さささ、どうぞ」

透「見てみたいな、コウちゃんも見に行こうよ」

コウ「・・・はい」

美咲「・・・」

昇「ふぅ・・・。色々と大変だ」

夏目「同じ景色が見るもの同士、大変だな」

昇「分かってくれるのか・・・」

美咲「?」

昇「でもさ・・・」

夏目「楽しい」

昇「うん」

美咲「た、楽しいんだ・・・! やっぱりそうよね、あんな美少女二人と同棲していたら人生楽しいわよね
   じゃあどうして私を今回の旅行で誘ってくれたの!? うぅ・・・高上の真意がみえないー!」

夏目「?」

昇「・・・あ」

斑『お前には見えるようだな』

昇「はい・・・まぁ・・・」

ヒノエ『力はそんなにないみたいだね』

昇「弟の透の方が強いんです」

美咲「誰と話をしてるの・・・?」

昇「え! あ・・・なんでもないよ!?」

美咲「???」
469 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:53:35.97 ID:V8xt5WPio

多軌「おまたせ夏目くん!」

夏目「先生のお守りありがとう、タキ」

多軌「いえいえ、・・・でも、どうして妖の姿になったんだろう・・・?」

斑『コイツの力を見たかっただけだ』

昇「・・・俺?」

多軌「?」

夏目「・・・」

斑『あの空幻狐が護るほどの力を見たのだ』

どろん

先生「・・・が、大したことはなかったな」

昇「あはは・・・」

夏目「・・・」

ヒノエ『護りたい理由は力だけじゃないみたいだね』

昇「・・・」

多軌「・・・よいしょ」ダキッ

先生「あ、こらっ!」

夏目「ぬいぐるみは大人しくしていなきゃダメだぞ」

先生「む・・・」

美咲「??????」
470 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:56:19.53 ID:V8xt5WPio

―――――ヴェガ


紬「あら・・・?」

梓「どうかしたんですか?」

紬「タキちゃんが持っているそれ・・・」

多軌「この人形がどうかしましたか?」

先生「・・・」

紬「どこかで見た覚えが・・・」

夏目「・・・」

ヒノエ『術は完璧のはずだね』

クー「無論だ。そう容易く解けないぞ」

梓「気のせいですよ。こんな顔しているんですから」

先生「・・・」

梓「見つけたら印象に絶対残るじゃないですか」

紬「そうね・・・。気のせいね!」

唯「変な人形〜!」

律「人の人形になんてこと言うんだ、唯・・・」

多軌「可愛いですよ」スリスリ

先生「・・・」

澪「・・・」

律「可愛いものに目がない澪が無反応ですな」

車掌「みなさん、出発しますよ」

唯「はいよー!」

紬「次は最後の都市ね」

梓「最後まで行けるなんて」キラキラ

律「嬉しそうだな、梓は」

澪「あれ、でもどうして乗り続けたんだ・・・?」

紬「あら・・・?」

唯「そういえば・・・」

律「えっと・・・あれ、なんでだっけ・・・?」

夏目(琴吹さんが妖に関わったから・・・だけど、その記憶は無い・・・)

ヒノエ『・・・』

クー「・・・」

多軌「・・・」ギュウ

先生「・・・」

梓「最後まで行かないのはもったいないからじゃないですか、もう二度とない時間ですよ?」

紬「そうね・・・」
471 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:57:51.63 ID:V8xt5WPio

車掌「そろそろ時間になります。乗り遅れないでくださいね」

律「あ、車掌さん」

車掌「なんでしょう?」

律「静花さんはまだ降りてませんよね?」

車掌「はい」

律「そっか・・・。よかった・・・」

唯「ん?」

律「いや、なんでも・・・。挨拶しようぜ」

澪「そうだな」

紬「クーさん、お元気で」

クー「あぁ、おまえたちは中々面白かったぞ」

紬「まぁ、嬉しいです」

澪「面白いのは律と唯だけです」

唯「わたしも!?」ガーン

梓「自覚してください」

律「喜んでいいのか・・・?」

透「お姉ちゃんたちもバイバイ」

唯「バイバーイ」

律「兄弟仲良くな」

透「うん!」

コウ「お元気で」ペコリ

梓「はい、そちらもお元気で」ペコリ

律「丁寧っ!」

美咲「不思議な縁でしたね」

澪「そうですね」

美咲「残りの旅路・・・頑張ってくださいね」

澪「ありがとう。あなたも、がん・・・ばっ・・・」カァァ

美咲「?」

クー「どうして顔が赤くなったのだ?」

澪「いえ・・・その・・・」プシュー

律「美咲、ソイツと仲良くな!」

昇「?」

美咲「えっ!?」ボフッ

澪「り、りつ・・・直球すぎるだろ・・・」プシュー

クー「なるほどな〜」

紬「うふふ」

昇「なんだろ?」

夏目「さぁ?」

先生「トウヘンボク共め」

多軌「ぷふっ」
472 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 19:59:07.99 ID:V8xt5WPio

紬「それでは、またどこかでお会いしましょう」

クー「あぁ、何度でも会ってやってもいいぞ。おまえたちならな」

紬「? それでは〜」

律「ほら、早く乗り込め〜!」

唯「はいよーっ!」

澪「しずかにしろ」ヤレヤレ

紬「うふふ」

梓「それでは」

美咲「バイバイ」フリフリ

コウ「ごきげんよう」

昇「じゃあね〜」

透「バイバーイ!」

クー「おい、斑」

先生「にゃんだ?」

夏目「?」

クー「曲者がおるな」

先生「なにを言っている?」

クー「じきに分かるさ。本当はもっと奢らせてようと思っていたのだぞ?」

先生「では、なぜたかってこなかった」

クー「あの連中は面白い、それでチャラになったのさ。・・・これだから人は嫌いになれんのだ♪」

先生「・・・」

クー「じゃっあな〜」

タッタッタ

先生「・・・ふん、思わせぶりなことをいいおって」

夏目「・・・」
473 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 20:00:02.83 ID:V8xt5WPio

多軌「乗らないの?」

夏目「秀輝を待ってるよ。あっちも気になるから」

多軌「分かった。夏目くんの部屋でいいのね?」

夏目「あ、あぁ・・・。鍵を」

多軌「うん。先に行ってるね」

夏目「・・・うん」

風音「夏目さん・・・?」

夏目「お帰り。ピノは一緒じゃないんだね」

風音「ただいま・・・。はい、今は部屋にいますよ」

夏目「・・・そうか・・・。あ、来た」

prrrrrrrrrrr

秀輝「乗り遅れる所だった〜」

風音「どうしたんですか?」

秀輝「ちょっとね。みんな乗った?」

夏目「・・・あぁ、北上さんは?」

秀輝「あっちから乗車してるでしょ」

夏目「あ、本当だ」

風音「出発ですよ」

秀輝「うん・・・。アディオース広島〜」

夏目「・・・」

プシュー

ガタンゴトン

ガタンゴトンガタンゴトン
474 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 20:01:05.58 ID:V8xt5WPio

夏目「いいことあったのか?」

秀輝「・・・え?」

夏目「なんか頬が緩んでるから」

風音「・・・そうですね、全体的に嬉しそうな表情してます」

秀輝「あー・・・」

夏目「・・・」

秀輝「お好み焼き食べてきた」

風音「昨日の夜はそんなに気に入っていたという感じではなかったですけど、
    ・・・実は好きになったんですね」

秀輝「・・・うん」

夏目「ふふっ」

秀輝「・・・なんだよ」

夏目「一緒に食べたからだろ?」

秀輝「う・・・」

風音「誰とですか?」

夏目「ヒントは同時に乗車した人」

風音「・・・あ」

秀輝「面白がってないか、夏目」

夏目「面白いよ。秀輝がうろたえているところとか」

秀輝「・・・ふんっ、じゃあな」

スタスタ

風音「ふふ、照れてますね」

夏目「・・・うん」

風音「ピノが気になるので戻りますね」

夏目「あぁ、ピノたちによろしく」

風音「は、はい」

夏目(小熊が乗っているなんて・・・変ではないか、妖も乗っているんだから)
475 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 20:02:30.63 ID:V8xt5WPio

ガチャ

先生「戻ったか」

ヒノエ「お帰り」

多軌「」スヤスヤ

夏目「タキ・・・?」

先生「あちこちではしゃいでいたから疲れているのだろう」

ヒノエ「寝かせてやりな」

夏目「・・・うん」

先生「おまえは帰らんのか」

ヒノエ「歩いて帰るのもいいが、夏目と一緒にいてやるさ」

夏目「・・・」

多軌「」スヤスヤ

夏目「じゃ、散歩してくるから・・・。タキをよろしくな、先生」

先生「む・・・そうか・・・ここから出られないのは辛いものがあるな・・・」

ヒノエ「大人しくしてな。その姿を見て、拍子に思い出されたら面倒だからね」

先生「分かっておるわ」

夏目(タキの人形ってことで誤魔化せているから、一緒に出ないといけない訳だ。先生は退屈そうだな)

先生「・・・どうしたものか」

夏目「観光ガイド買ってくるよ、待っててくれ」

先生「おぉ〜」

多軌「」スヤスヤ

ヒノエ「・・・」
476 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 20:03:34.34 ID:V8xt5WPio

店員「いらっしゃいませぇ」

夏目「博多の観光ガイドをください」

店員「はい、どうぞぉ」

夏目「・・・ありがとう」

ヒノエ『夏目、これはなんだい?』

夏目「これは・・・饅頭チップスですよね」

店員「はい、好まれるお客様がいらっしゃいますので仕入れているんですぅ」

ヒノエ『おいしいのかねぇ』

夏目「一つください」

店員「ありがとうございますぅ」

ヒノエ『おや、悪いね』

夏目「・・・」

紬「あ、夏目さん」

夏目「琴吹さん・・・」

ヒノエ『・・・』

紬「静花さんを見かけませんでしたか?」

夏目「・・・いえ、見ていないです」

紬「・・・そうですか・・・。うーん・・・」

夏目「なにか、用事でも・・・?」

紬「そういうんじゃないんです、ただ・・・、お喋りしたいなぁと」

夏目「・・・そうですか」

ヒノエ『・・・ふむ』

紬「それでは〜」
477 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 20:04:52.67 ID:V8xt5WPio

ガチャ

多軌「」スヤスヤ

先生「さぁ、よこせ!」

夏目「しずかにしないとダメだろ・・・」

先生「お、なんだそれは?」

ヒノエ「饅頭お菓子だそうだよ」

先生「それもよこせっ!」

夏目「しずかにしろ」ゴゴゴ

多軌「」スヤスヤ

先生「もぐもぐ」

ヒノエ「どれどれ、私もいただくよ」モグモグ

夏目「どう?」

先生「・・・」

ヒノエ「まぁまぁだね」

先生「本気で言ってるのか・・・。全部食っていいぞ」

ヒノエ「おや、饅頭同士で心が痛むのかい?」

先生「にゃんだとっ!」

夏目「しずかにしろ」グググ

先生「は、はにゃせ・・・」ムググ

多軌「」スヤスヤ

夏目「おれは客車に行ってるからな。観光ガイドでも読んで大人しくしててくれよ、先生」

先生「分かっておると何度も言わせるな」

夏目(琴吹さんに捕まったのは誰だよ・・・)ハァ

ガチャ

バタン
478 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:07:46.18 ID:V8xt5WPio


ガタンゴトン

夏目「部屋で大人しくしていないのか?」

ヒノエ『斑と一緒にいても退屈なだけさ』

夏目「・・・そうか」

ヒノエ『癖になる味だね』モグモグ

夏目「・・・なぁ」

ヒノエ『なんだい』モグモグ

夏目「・・・琴吹さんと話ができなくて・・・寂しくないか」

ヒノエ『どうしてだい』

夏目「おれやレイコさん以外の人と少しでも交じり会えたんだ・・・だから・・・」

ヒノエ『私は人の子が嫌いだよ。・・・寂しいなんて思うわけがないさ』モグモグ

夏目「・・・そうか」

ヒノエ『そんな顔をしてるのは、後悔なのかい?』

夏目「あの人たちは・・・知らなくていい世界なんだと思ってる。それは変わらないよ」

ヒノエ『だったら気にしなくていいさ』

夏目「・・・うん」

律「お、ここにいたか」

夏目「?」

律「どこにいたんだよ」

夏目「・・・個室にいたので」

律「そっか、むぎに聞いたら売店だって言っていたけど、いないから無駄に探したぜ」

夏目「・・・」

律「座るぜ、よっこらしょ」スト

ヒノエ『何しにきたんだいこの小娘は・・・。夏目との時間を奪うんでないよ』

夏目「・・・話ですか?」

律「うん。昨日の夜・・・というか、夕方にみんなで厳島神社へ行ったじゃん
  私らと夏目、タキ、秀輝・・・な?」

夏目「はい」

律「その後にお好み焼き屋に入ったのは理解できるんだけど、知らない人に奢られているのがすっきりしなくてさ」

ヒノエ『名取とかいう坊やだね』

夏目「・・・おれの知り合いですよ」

律「そう、夏目の知り合いに奢られる理由がさっぱりなんだよ」

ヒノエ『ややこしいね』

夏目「・・・」

律「それで、厳島で何をしたのかもハッキリしてなくてなー・・・」

夏目「・・・そうですか」

律「むぎも澪も唯も同じなんだよな、だから聞きにきたんだけど・・・」

夏目(妖のことも含め、呪いに関することを忘れさせられているから・・・)
479 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:09:41.57 ID:V8xt5WPio

ヒノエ『さて、困ったね』

夏目「・・・」コクリ

律「むー・・・?」

梓「また律先輩と一緒にいる」ジロ

夏目(なんで睨まれるんだ・・・)

律「梓も座れ、大事な話だ」

梓「なんですか?」スト

律「昨日厳島へ何しに行ったんだっけ、って話」

梓「私とむぎ先輩の提案だからですよ。ちょうど夕陽が綺麗な時刻でしたから」

律「そうだっけ?」

梓「そうですよ。律先輩観光会議に参加していませんでしたから、理由は知らないんです」

律「あり?」

ヒノエ『そこは問題解決のようだね。あとは名取の件だよ、夏目』

夏目「・・・」

律「じゃあ、夏目の知り合いにお好み焼きをご馳走になったのは?」

梓「・・・そういえば、どうしてでしょうね」

夏目「・・・それは」

ヒノエ『・・・げ』

秀輝「どうした、難しい顔を並べて」

律「なぁ、昨日のお好み焼きの件って何のための奢りだったんだ?」

秀輝「・・・それは・・・とりあえず座っていいか?」

夏目「あぁ・・・」

ヒノエ『ひぃぃぃいい! 夏目の隣は私の席だよ! どっか他所へ行きな!』シッシッ

梓「知っているんですか?」

秀輝「いいのか、夏目?」

夏目(策があるんだな・・・任せた)コクリ

律「なんで了解を得るんだよ」

秀輝「その知り合いの人って新人俳優だからだよ。慎重にならざるを得ないからだ」

梓「・・・そういうもんですかね」

ヒノエ『口が巧いねこの小僧は』

夏目「・・・そういうもんだよ」

律「で?」

秀輝「俺と夏目は知っていたんだけど、厳島神社で撮影があったんだよ」

律「ふーん」

秀輝「軽音部のみんなをさ、観光を楽しむエキストラとして映像に入れたらしいんだ」

律梓「「 えっ!? 」」

秀輝「うん、そういうリアクションになるだろうから・・・。悪いなぁ・・・って」

夏目「・・・ごめん」
480 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:10:39.93 ID:V8xt5WPio

律「いよいよお茶の間に流れるのか私たちは」フフン

梓「澪先輩にはどうしましょう・・・」

律「だいじょーぶ! 上手く誤魔化して放送当日にテレビの前に座らせてやるさ」

秀輝「・・・とりあえず、顔は判別できない距離だそうだから」

律「んだよ!」

梓「それなら平気ですね」

ヒノエ『ペテン師だね』

夏目(誰も傷つかないウソなのかな・・・)

律「仰るとおりですわね、私たち華の女子高生ですから、
  映像に映るとなったら色々と問題ですわ」ウフ

秀輝「あぁ・・・うん」

律「おいこら」

梓「似たような話ありましたね、HTTの新聞の件で」

律「あー、あったな」

夏目「・・・」

ヒノエ『一件落着ってところだね』

律「あ、さっきむぎが探してたぞ、梓のこと」

梓「失礼します」スッ

ササッ

ヒノエ『いい身のこなしじゃないか、ネコ娘なだけあるね』

律「ウソだけどな」

秀輝「なんでそんなウソを・・・」

夏目「?」

律「静花さんに会った?」

夏目「いえ・・・」

秀輝「いや・・・」

律「踏み込んでいい問題じゃないのは分かっているけどさ、なんか焦るんだよ」

秀輝「静花さんが次で降りるかもしれないからな・・・」

夏目「・・・」

律「それもあるけどさ、それとはちょっと違うんだ」

秀輝「どういうことだ?」

律「本来なら、私と唯は大阪で、澪と梓は広島で降りるはずだったんだ」

夏目「・・・はい」

律「ところが、全員最終駅まで乗り続けることに決まった」

秀輝「うん」

ヒノエ『何が言いたいんだい』

律「なにかがズレてしまったような気がしてな・・・」

秀輝「なんだよそれ」

律「うー・・・ん・・・、私はさ、むぎのことでちょっと不安なことがあったんだよ」
481 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:13:22.96 ID:V8xt5WPio

秀樹「さっき、菜々子さんに話したことだよな」

律「うん。むぎのことを菜々子さんに任せて、
  本来なら今頃、家の用事に付き合っているはずなんだ。唯も澪も梓もな」

夏目「・・・」

ヒノエ『何が言いたいのかいまいちつかめないね』

秀輝「何が言いたいのかいまいち伝わってこないぞ」

ヒノエ『ぎゃあああああああ』

夏目(同調したのがそんなに嫌なのか・・・)

律「私らが乗り続けたことで解決できたかもしれない問題が、ややこしくなってはいないかってこと」

秀輝「それが・・・琴吹さんと・・・静花さん・・・?」

律「・・・うん。絡まった糸を解そうとして余計絡ませている感じだ」

ヒノエ『・・・』

夏目「・・・」

秀輝「それは考えるだけ無駄だ」

律「・・・」

秀輝「ありもしない現実にこうなるかもしれない、ああなるかもしれない、と目を奪われるのは危険だ
   律たちが乗り続けた今のここが現実なんだから、これからどうしたいかを考えるべきだぞ」

律「・・・うん」

夏目「・・・」

秀輝「3人が乗車したんだ。琴吹さんと静花さんは出会って、静花さんと菜々子さんが再会する。これは変わらない」

律「だからさ、広島からはむぎは一人で最後の駅へ向かうはずだったんだ
  私ら4人が乗り続けることで奪われた時間が存在したんじゃないかって思うんだ」

秀輝「・・・」

律「私らが『居てもいい時間』なのかって・・・」

秀輝「いいに決まってるだろ」

律「・・・」

秀輝「さっき律が言った事の逆説だ。この時間が奪われることになるんだぞ」

律「あぁ・・・なるほど」

夏目「・・・」

ヒノエ『めんどくさいねぇ』

夏目(琴吹さんが妖を見えてしまったことで・・・それは変わってしまったのだろうか)
482 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:14:54.38 ID:V8xt5WPio

律「今の話でちょっと気になったことがあるんだ」

秀輝「・・・なに?」

夏目「・・・」

律「菜々子さん」

秀輝「・・・うん」

夏目「・・・?」

律「どうして、あの時動かなかったのかな・・・」

秀輝「まてまて、急ぎすぎだ。とりあえず、律は菜々子さんの様子を見てきてくれ」

律「・・・なんでだよ」

秀輝「焦りすぎだって・・・。急いで話を進めても碌なことにならないぞ」

律「・・・」

秀輝「あの場面に出くわしてしまった俺たちだけどさ、そんな俺たちだからできる事ってあるはずだろ」

律「どうするんだよ」

秀輝「俺と夏目で静花さんと話をしてくる」

夏目「え・・・」

秀輝「年下の男一人では頼りないだろ?」

夏目「二人になっても一緒じゃないのか・・・?」

秀輝「俺たちは琴吹さんとは遠い存在だから、HTTの誰かよりはマシだと思うんだ
   菜々子さんに頼りたいけど、・・・静花さんが拒絶してしまったから・・・な」

律「あぁ・・・」

夏目「・・・うん」

秀輝「とりあえず、博多まで乗っていてもらおう」

夏目「・・・できなかったら?」

秀輝「菜々子さんに頼む。降りてしまったら、もう・・・旅が終わるからな」

律「・・・おまえは誰のために動いているんだ?」

秀輝「自分のため・・・じゃダメかな・・・」

夏目「・・・」

律「・・・無事に終えることができたら見直してやる」ビシッ

秀輝「・・・うん」

ヒノエ『面白そうだね』
483 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:19:19.72 ID:V8xt5WPio

秀輝「本当はさ、怖かったんだよ」

夏目「え?」

秀輝「律たちが乗り続けた・・・この時間が無いほうがいい。と言われるのが」

夏目「・・・どうして?」

秀輝「5人の記憶の中から・・・先生は眠ってしまったわけだろ」

夏目「・・・うん」

秀輝「俺、友達いないからさ・・・誰かの心の中に、俺という存在が居ないんだろうなぁって思って
   それを考えたらさ、すごく寂しくなったんだよ」

夏目「・・・うん」

秀輝「ヴェガに乗らなかったら、この気持ちは知らないままだったんだろうな」

夏目「・・・」

秀輝「・・・ここか、静花さんの個室は」

夏目「・・・秀輝」

秀輝「ん?」

夏目「どうしてそう思うようになったんだ?」

秀輝「・・・多分」

夏目「・・・」

秀輝「ある人が、俺の中で大きくなっていたからかな。・・・それが嬉しいやら恥ずかしいやら」

夏目「・・・そうなのか」

秀輝「他人なんてどうでもいいと思ってたのが、ちょっともったいないって気づいた
   ヴェガに乗って、律に出会って、琴吹さんたちを見てて・・・」

夏目「・・・」

梓「・・・」

秀輝「うわ・・・いつからそこに・・・」

梓「今来たばかりですよ」

夏目(急に現れるな中野は・・・)

秀輝「・・・よかった、聞かれてなかったか」

梓「静花さんがどこにいるか知りませんか?」

秀輝「知らないけど?」

夏目「・・・」

梓「そうですか・・・。むぎ先輩が部屋に居なかったというので探していたんです」

秀輝「どうして探してるの?」

梓「展望車でお茶会を、と」

夏目「・・・」

梓「車掌さんに聞いてきます」

スタスタ

夏目「・・・」
484 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:21:14.71 ID:V8xt5WPio

秀輝「居ないのかな」

コンコン

ガチャ

静花「居ますわよ」

夏目「あれ・・・?」

静花「誰かと思ったら、秀輝さんですか・・・。
    人の個室の前でずっとお喋りをされても困りますわね」

秀輝「・・・すいません」

静花「なにかご用ですか?」

夏目「中野が探していました。琴吹さんが呼んでいるそうですよ」

静花「・・・どうしてですか?」

秀輝「展望車でお茶会を開くと・・・」

静花「・・・先ほどのノックは紬さんでしたのね」

夏目「・・・」

静花「電話をしていたので、対応できませんでしたの。・・・遠慮すると伝えてくださるかしら」

秀輝「・・・」

ヒノエ『やれやれ、ちっとも話が進展しないねぇ』

夏目「・・・」

静花「まだ、なにか・・・?」

秀輝「少し聞きたいことがあるんですけど・・・いいですか・・・?」

静花「・・・なんですの?」

秀輝「えっと・・・」

夏目「琴吹さんとは以前から知り合いなのではないでしょうか」

秀輝「・・・!」

静花「・・・」

夏目「・・・」

静花「仮にそうだとして、それがあなたたちとどんな関係があるのですか?」

夏目「!」

ヒノエ『本人同士の問題に首を突っ込んでいるだけだからねぇ』

秀輝「はっきり言ってしまえば関係ないですね」

静花「なら、関わらないでくれますか?」

夏目「・・・」

ヒノエ『どうすんだい、夏目』

秀輝「静花さん、勝負はどうするんですか?」

静花「・・・無効ですわ。どうでもいいことです」

夏目(勝負・・・?)
485 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:22:56.19 ID:V8xt5WPio

秀輝「そうですか。・・・では、もう一つだけ教えてください」

静花「・・・」

秀輝「どこで降りられるんですか」

静花「・・・次の小郡で降りますわ。用は済んでいますので、後はただの暇つぶしですから」

秀輝「それだと無関係ではいられないんです」

静花「どうしてでしょう?」

秀輝「俺は、みんなが無事に旅を終えてほしいと思っているんです」

ヒノエ『・・・』

秀輝「静花さんが降りてしまったら、そこで琴吹さんの旅は終わりを迎えられなくなってしまうんです」

静花「・・・」

夏目「・・・」

秀輝「・・・」

静花「そこまで紬さんにこだわる理由はなんですの?」

ヒノエ『そうだね、秀輝の小僧が拘るのはあの娘じゃないだろうに』

秀輝「今まで出会ってきた人との出会いを大切にしたいからです」

夏目「・・・うん」

静花「・・・」フゥ

ヒノエ『最後の一押しだよ、夏目』

夏目(そうは言ってもな・・・あ・・・そうか・・・)

夏目「笑っていてほしいからです」

秀輝「・・・爽やかに・・・・・・言ったよ・・・この子」

静花「・・・ふむ」

ヒノエ『やるね、夏目』

夏目「え・・・?」

梓「・・・」ジロ

夏目「な、中野・・・」

梓「タキがいるのに、悪い虫だ」ジト

夏目「っ!?」

梓「静花さん、展望車へ来てください」

夏目「・・・」

静花「後で参りますわ」

梓「それでは・・・」

ササッ

夏目(こういう役回りなのかな・・・)ハァ

静花「どうぞ、入ってくださいな」

秀輝夏目「「 え・・・? 」」

静花「私も聞きたいことがあります」
486 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:25:59.20 ID:GcZQ3nLgo
JRの小郡駅って名前が変わったんだよな
時代を感じる
487 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:26:26.61 ID:V8xt5WPio

静花「狭いでしょうが、我慢してくださいね」

秀輝「・・・はい」

夏目(人に聞かれたくない・・・よな・・・)

ヒノエ『秀輝の小僧が邪魔だねまったく!』プンスカ

静花「中央通りで私と一緒にいらした方は、とある会社の社長です」

秀輝「・・・」

静花「カーシグループという名をご存知でしょうか」

秀輝「・・・はい」

夏目「・・・いえ」

静花「秀輝さんは北海道出身でしたわね」

秀輝「母が市議会議員なもので・・・」

静花「なるほど、合点がいきましたわ。・・・建築の分野で関わりがあったのでしょう」

秀輝「・・・はい」

ヒノエ『私たちが暮らすところは田舎だからねぇ』

夏目「・・・」

静花「地方にまで名が届くくらいの財閥でしたが、それも昔の話。
   今では一人娘に融資のお願いに出す始末。落ちぶれたものですわ」

ヒノエ『つくづく面倒だね、人の子ってやつは』

夏目「・・・」

静花「貴志さんの言うとおり、私と紬さんは以前に出会っていたんです」

秀輝「・・・」

静花「紬さんが4歳の頃に出会って、最後に会ったのが7歳の時ですから
   覚えていないのが普通なんですわ」

夏目「・・・」

静花「・・・その頃から父が経営する会社が傾き始め、今に至ります」

秀輝「・・・」

ヒノエ『この娘は覚えていたんだね』

夏目「そう言えば、京都駅で琴吹さんと会った・・・いえ、再会した時に名を呼んでいましたね」

静花「・・・そうですわね。あの時は心臓が跳ね上がりましたわ」

秀輝「琴吹グループ・・・の・・・娘さんが・・・琴吹紬・・・」

静花「そうです」

夏目「・・・?」

秀輝「・・・」

ヒノエ『おや、小僧の顔色が変わったね』

静花「秀輝さんは気づきましたわね。それが私たちが会えなくなった理由であり、私が隠している理由ですわ」

秀輝「・・・で、でも」

静花「伏せておいてくださいね。昔の事より今が大事ですから」

秀輝「・・・っ」

静花「再会できて嬉しかったですわ」

夏目「・・・」
488 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:28:53.61 ID:V8xt5WPio

静花「このままがよろしいのです」

ヒノエ『よく分からないね』

夏目「どうしてそれがいいのか・・・よく分かりません・・・」

秀輝「な、夏目・・・」

静花「怖いのですわ」

夏目「・・・」

静花「私、生まれてから今まで友達らしい友達もいなくて・・・、心から信頼できる人はいませんでしたの」

夏目「!」

静花「紬さんは・・・初めて会ったあの時から、今のように少しも変わらずに私に接してきてくれましたわ」

秀輝「・・・」

静花「それが崩れてしまうのが怖いんです。カーシグループが今の状態になったのは
   琴吹グループが関わっているのですから」

夏目「ッ!」

ヒノエ『・・・』

静花「敵対する両家の一人娘同士ですから、疎遠になるのが自然なんでしょうね。
   空白の時間があったからこそ、私を忘れることができたのですわ。
   それなのに、私の事を思い出してしまえば、自ずと私の家の状況に辿り着いてしまうでしょう。
   その時、私に向けられるあの子の表情を想像すると、どうしても明かすことができませんの」

夏目「・・・っ!」

静花「せめて、今のままで・・・いさせてほしいのです・・・」

秀輝「な、菜々子さんは・・・知っているんですよね・・・」

静花「薄々気づいていらっしゃるようですが、今となってはどうでもいいこと」

ヒノエ『・・・』

夏目「・・・」

静花「・・・。先ほど、秀輝さんが仰いましたが・・・」

秀輝「え?」

静花「私が降りることで、紬さんは旅の終わりを迎えられなくなると」

秀輝「・・・はい」

静花「私が乗り続けていても同じですわね。あの子たちの旅が複雑なものになってしまいますわ」

秀輝「・・・」

ヒノエ『それは誰が決めることなのかねぇ』

夏目「それは・・・、誰が決めるのかな・・・・・・」

秀輝「・・・」

静花「他の誰でもない、紬さん自身ですわね」

夏目「・・・」

ヒノエ『代弁してくれたのかい、夏目』

秀輝「・・・」

静花「・・・」

夏目(おれたち三人は似ている・・・)
489 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:30:37.22 ID:V8xt5WPio

―――――展望車


唯「あずにゃんやい」

梓「なんですか?」

唯「そんなにおいしいのかい?」

梓「はい・・・。唯先輩はそれほどでもないんですか?」

唯「おいしいけど・・・。そこまでかなぁ・・・って」

梓「珍しいですね。なんでも食べるのに」

唯「雑食みたいな表現はおよしよ!」

梓「いらないならくれませんか?」

唯「いらないとも言ってないよ〜?」

梓「・・・そうですか」

紬「私の分食べる?」

梓「いえ、むぎ先輩の分までいただくわけには・・・」

唯「あれま・・・?」

律「唯のなら遠慮しないのな・・・」

澪「もぐもぐ・・・。おいしいな、もみじ饅頭」

緑「私の食べる?」

梓「・・・」

緑「・・・」

梓「・・・・・・」

緑「・・・・・・・・・」

律「なんだこの間はっ!?」

梓「遠慮しますっ!」

紬「苦渋の決断ね」

澪「私の半分でいいなら・・・」

梓「・・・」キラキラ

澪「・・・食べかけで悪いな」

梓「ありがとうございます・・・もぐもぐ」ゴクリ

唯「食べ終わったよ! あっという間だよ! そんなに好きならあげるよ! どうぞ!」

梓「気持ちだけで・・・。なんだか私が食いしん坊みたいじゃないですか」

唯「受け取ってもらえないよ! いただくけどいいんだね!?」

律「唯・・・自棄になるな・・・」

緑「・・・」モグモグ

澪「き、北上さんは・・・広島のどこを観光していらしていたんでしょうか?」

律「澪・・・緊張すんな・・・」
490 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:32:43.47 ID:V8xt5WPio

緑「新町通りを歩いていただけ・・・」

紬「散歩ですか?」

緑「・・・。昔・・・そこに・・・」

梓「住んでいた・・・とかですか?」

緑「・・・」

紬「お茶をどうぞ〜」

緑「・・・ありがと」

唯「もぐもぐ」ハムハム

律「お好み焼きで何の話をしたんだ?」

緑「・・・?」

律「秀輝とだよ」

梓「え・・・?」

紬「りっちゃん、どういうこと?」

律「緑と二人でお好み焼き食べたんだとさ」

澪「へ、へぇ・・・」

梓「私たちと食べなかったのにですか!」

律「何に対する怒りだよ・・・」

緑「・・・別に」

律「まぁ、どうでもいいけど・・・」ニヤニヤ

澪「・・・?」

紬「あ・・・!」

秀輝「律さん・・・? どうして知っているのかな?」

律「ん? 売店のちひろさんからだけど?」

秀輝「風音さん経由か・・・!」

夏目「あ、悪いおれが話したんだ」

秀輝「おまえかっ」

緑「どうでもいいでしょ」

唯「いいような、よくないような」

紬「さ、静花さんも座ってください〜」ニコニコ

静花「・・・失礼しますわね」

紬「夏目さんもどうぞ」

夏目「それじゃ、失礼して」

梓「・・・む」

律「しかし、緑と一緒にティータイムを味わえるなんてあれだな!」

緑「・・・別に。・・・ごちそうさま」スッ

澪「あ・・・」

紬「あら・・・」

唯「りっちゃんのアホっ!」

律「・・・マジか・・・私が悪いのか・・・」
491 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:34:01.91 ID:V8xt5WPio

秀輝「・・・」

律「いや、すまん・・・秀輝」

秀輝「どうして謝っているのか・・・・・・」ハァ

律「あからさまに落ち込んでいらっしゃるからです・・・」

唯「どゆこと?」

紬「唯ちゃん気がつかなかったのね・・・」

静花「あら、その言い方は気づいているみたいですわよ」

紬「もちろんです」キラン

夏目(確かに・・・態度があからさまだよな・・・)

秀輝「・・・」

澪「あれ、梓は?」

静花「先ほど席を外しましたが・・・」

紬「どこへ行ったのかな・・・?」

唯「ねぇねぇ、さっきのどういうこと?」

夏目「え・・・。おれに聞くんですか・・・」

秀輝「菜々子さんは?」ヒソヒソ

律「仕事中だってさ」ヒソヒソ

秀輝「・・・」

律「?」

秀輝「俺にも何か出来ることが残っているかも・・・。ちょっと行ってくる」

律「あ、あぁ・・・。どこへ?」

秀輝「食堂車」

律「うん・・・?」

紬「どうぞ、静・・・花さん」スッ

コト

静花「・・・ありがとう」

紬「いえいえ」ニコニコ

澪「むぎ、楽しそうだな」

紬「うふふ」

唯「もみじ饅頭をどうぞ」スッ

静花「まぁ、用意がいいですわね」

唯「むぎちゃんが買ったのですよ。なぜか二箱も」

紬「お茶請けにも合うと思ったの」

唯「お茶漬け?」

律「もみじ饅頭のお茶漬けってなんだよ・・・」

静花「ふふ」

夏目「!」

紬「うふふ」
492 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:35:40.53 ID:V8xt5WPio

静花「ふむ・・・。おいしいですわ」

紬「ありがとうございます」ニコニコ

澪「・・・おいしい」

多軌「こんにちは〜」

夏目「・・・あ」

多軌「呼んでほしかったなぁ・・・」

夏目「・・・悪い」

多軌「なんてね」

唯「いいですな・・・春はすぐそばにあったのです」

静花「もぐもぐ」

梓「・・・カップが足りませんね」

律「梓が連れてきたのか?」

梓「はい。タキ、夏目の隣に座って」

多軌「う、うん。失礼するね」

夏目「どうぞ」

梓「タキの分も借りてきますね」

澪「梓はなにを気遣っているんだ・・・?」

律「・・・さぁ」

紬「もみじ饅頭好きなんですか?」

静花「えぇ、この奇抜なデザイン、上品な甘み・・・。
   おいしい番茶ともみじまんじゅう。まさに、至福のひと時ですわ」

紬「そうですね」ウンウン

唯「異論はないよ」モグモグ

澪「え・・・」

夏目(確かに・・・)モグモグ

律「もぐもぐ」

梓「むぎ先輩、カップ借りてきました」

紬「ありがとう〜。早かったね」

梓「向かう途中で菜々子さんと会ったので・・・」

菜々子「秀輝がカップ持っていけってさ」

紬「あら、大村さんは?」

菜々子「私の変わりに皿洗いしてるよ」

紬「まぁ・・・。身代わりね」

静花「・・・」

律「アイツ・・・。要領いいのか悪いのか分からねえな」

紬「タキちゃんもどうぞ」スッ

コト

多軌「いただきます」
493 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:37:24.69 ID:V8xt5WPio

夏目(二人の間に溝を感じる)

菜々子「・・・」

静花「・・・」

紬「カップ借りてきてくれてありがとう〜」

梓「いえいえ、当然のことですよ」キラキラ

唯「嬉しさが止まらないね・・・」

律「・・・」

澪「どうした、りつ?」

律「え、あ・・・なんでも〜。むぎ、私にもおかわりお願いします」

紬「? は〜い」

梓「もぐもぐ」

唯「あずにゃんおいしそうだね」

梓「はい。むぎ先輩の美味しいお茶ともみじまんじゅうの絶妙なハーモニー・・・
  まさに、至福の一時です」

多軌唯律澪「「「「 同じこと言ってる・・・ 」」」」

梓「?」

静花「・・・」

紬「菜々子さんもどうぞ」

菜々子「さんきゅ。いただくよ」

唯「どうぞ、もみじ饅頭です!」スッ

菜々子「う、うん」

律「無駄に力強く勧めたな」

夏目(ヒノエは・・・うんざりして部屋に戻ってしまったけど・・・)

静花「・・・」

菜々子「・・・」

夏目「・・・」

律「み、みお〜、博多でどこ行くか決めたか〜?」

澪「スペースワールドだけど」

律「この世の理のような反応ですか!?」

梓「澪先輩は決まっていたんですね」

澪「みんなで行こうな」キラキラ

律「うわ・・・。長島スパーでは足りなかったのかぁ・・・」

菜々子「名古屋のスパーランドだよね」

澪「はい! とぉーーーーっても楽しかったです! な、梓!」

梓「は、はい。それはもう」

澪「な、唯!」

唯「うん、楽しかったね〜」

菜々子「DVDにあったね、そういや」

澪「あ!」ボフッ
494 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:38:36.28 ID:V8xt5WPio

多軌「澪さん・・・?」

律「自分のはしゃいだ姿に恥ずかしさを感じただけさ。後世まで残るんだからな」

澪「」プシュー

多軌「な、なるほど」

夏目「・・・」

紬「澪ちゃん、海の中道でイルカショーがやっているみたい」

澪「くっ!」

律「澪の中で葛藤が生まれました」

唯「イルカをとるか・・・。遊園地をとるか・・・。難しいね、あずにゃん」

梓「私はどちらでも」

紬「静・・・花さんはどちらへ行きますか?」

静花「・・・」

紬「しず・・・か・・・さん?」

夏目(降りてしまうのかな・・・)

菜々子「紬ちゃん、DVDで見たことなんだけどさ」

紬「はい・・・?」

菜々子「松本の・・・、えっと・・・場所はいいや、教師ごっこをしたでしょ?」

紬「はい」

梓「旧開智学校の教室でしたね」

菜々子「そこでお茶の話したよね」

紬「はい・・・。・・・?」

静花「?」

律「えーっと・・・。縁側にお茶がどうのこうの」

澪「面白い話だったのに、覚えてないのか」

唯「じゃじゃーん!」

梓「DVD、唯先輩が持っていたんですね」

夏目「それは・・・?」

多軌「なんですか?」

唯「私たちの旅の記憶ですよ。再生しまーす」

ウィーン

澪「あわわわ」

律「澪、諦めるのも肝心だぞ」

静花「・・・」

菜々子「・・・」

唯「スタート!」
495 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:40:42.35 ID:V8xt5WPio

唯『それでは教科書の34頁を開くザマス』キリ

律『普通に喋ってくれ』

唯『うん、分かった』

澪『切り替え早いな』

小麦『はい先生ー! 私たち教科書持ってませーん!』

唯『もぅ、みんなここに何しに来たの〜?』ブー

律『観光しにだよ』




多軌「みなさんはなにをしているんですか?」

律「学校の授業ごっこだよ。今は唯が先生で私たちが生徒な」

静花「・・・」

菜々子「・・・」

紬「懐かしい・・・!」

梓「・・・ここは飛ばしましょう」ピッピッ

唯「あ、あずにゃん・・・」シクシク




紬『それでは相対性理論について述べるザマス』

紬「は、恥ずかしいわ〜」テレテレ

梓「いえいえ、とても素晴らしい教師ですよ」キラキラ

唯「あずにゃん・・・」シクシク

律「・・・」

澪「・・・」

夏目(何を見せたいのかな・・・菜々子さん・・・)

静花「・・・」

菜々子「・・・あ、ここだね」

多軌「?」
496 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:42:49.22 ID:V8xt5WPio

紬『私が聞いた話によるとね、とある国ではお茶・・・飲み物が日本で言う縁側に用意されているの』

唯『お茶!?』

律『ティータイム!?』

さとみ『おかえり唯ちゃん、律さん』

愛『用意されている・・・? 家の主人が居なくても勝手に飲んでもいいのですか?』

紬『えぇ、急須のような入れ物に入ったお茶とコップとお茶請けのような食べ物もあるから、自由にお使い下さいって事ね』



静花「――ッ!」

菜々子「・・・」

紬「あら・・・?」

梓「どうしたんですか?」

紬「この話・・・どこで聞いたのか・・・思い出せそうなの」

澪「ネットで拾った情報じゃなかったのか」

紬「・・・うん。そうみたい」

菜々子「・・・誰かから聞いたことなんじゃないかな?」

紬「え・・・?」

静花「菜々子さんッ!」

菜々子「なんだよ」

静花「どこまで私をッ!」

菜々子「・・・」

紬「し、しず・・・か・・・さん、どうしたんですか?」

静花「わ、私これで失礼しますわ」

紬「え・・・?」

静花「それでは・・・。・・・さようなら」

紬「――ッ!」ドクン

夏目「っ!」

多軌「夏目くん・・・?」

菜々子「・・・」

夏目(行ってしまった・・・)

紬「ッ・・・!」

梓「む、むぎ先輩・・・?」

澪「むぎ?」

唯「むぎちゃん、どうしたの?」

紬「・・・大切な・・・なにかを・・・忘れている・・・!」

梓「え・・・」

菜々子「私も行くわ。ごちそうさま、紬ちゃん」

律「な、菜々子さん・・・」

菜々子「喧嘩してくるよ」

夏目「!」
497 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:44:31.14 ID:V8xt5WPio

ヒノエ『退屈だね〜』

静花「・・・」

ヒノエ『おや・・・』

菜々子「静花、待てって!」

静花「・・・もう、放っておいて下さい。あなたにも関わりたくないですわ」

菜々子「そうもいかないだろ」

静花「今さら、つむぎちゃんに親身になろうってことですの? むしがよすぎますわね」

菜々子「なんとでも言えばいい。けどな、私はもう逃げないよ」

静花「私だって、逃げていることを承知してますわ」

菜々子「あんたに当て付けで言ったわけじゃないよ」

静花「荷物をまとめますので、これで」

ガチャ

バタン

菜々子「・・・」

ヒノエ『・・・』
498 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:45:27.04 ID:V8xt5WPio

ガタンゴトン ガタン

ゴトン

プシュー

ヒノエ『到着だね』

車掌「津山さん、どうかなさいましたか?」

菜々子「静花のことで・・・」

車掌「・・・」

ヒノエ『夏目はどこにいるのかねぇ』

ガチャ

静花「・・・まだいましたのね」

菜々子「話が終わってないからな」

静花「いつまでもそこにいるといいですわ」

菜々子「そうもいかないんだよ」

ヒノエ『・・・』

静花「車掌さん、私ここで降りますので」

車掌「・・・」

静花「どうぞ、乗車証です」

車掌「・・・」

菜々子「ちょっとこい、静花」

静花「・・・話すことはないと」

菜々子「来いッ!」グイッ

静花「なっ!」

車掌「津山さんにお渡しください」

静花「!」

ヒノエ『夏目以外には興味ないんだけどねぇ。ちょうど退屈していたところだ、付き合ってみるとするかね』
499 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:46:56.79 ID:V8xt5WPio

静花「離しなさいッ!」バッ

菜々子「・・・」

静花「踏み込んでこなかったあなたに、そこまでされる義理はありませんわ!」

菜々子「私だってそんな義理を感じちゃいないよ!」

静花「なら、つむぎちゃんを利用して、自分のプライドを守ろうというのですわね」

菜々子「はぁ?」

静花「あなたは、自分の存在価値を高めたいだけですわ。哀れな私に手を差し伸べるつもりで
   つむぎちゃんと私を繋げることが出来たら、それが自分がここにいる意味になると!
   そんなつもりでいるんですわね!」

菜々子「あぁ、そうだよ!」

ヒノエ『・・・くだらないね』

静花「私とつむぎちゃんはあなたのために居るわけじゃありませんわ」

菜々子「当たり前だろ馬鹿ッ!」

静花「ッ!」

菜々子「私は私のためにやってんだよ!」

ヒノエ『・・・』

菜々子「あんたにどう思われようと知ったことじゃないよ。
    だけどね、このままあんたを降ろしてしまったら自分を許せなくなるんだよ!」

静花「・・・エゴですわ」

菜々子「そうだよ! 私は人のために動けるほど純粋じゃないんだよ!」

静花「なっ!」

菜々子「・・・紬ちゃんが離れていくことに、あんたがどれだけ恐れているのかは分からないよ」

静花「・・・」

菜々子「けど、この別れは意味をもたないじゃないか」

静花「・・・ッ!」

菜々子「・・・あんたが独りになったら・・・。私が笑ってやるよ」

静花「――ッ!」

ヒノエ『・・・』

菜々子「だから、ちゃんと再会を果たしなよ・・・静花」

静花「な・・・ッ!」


ヒノエ『夏目、そこにいたのかい』

夏目「・・・」

ヒノエ『・・・さて、どうするのかねぇ』

夏目「・・・」グィッ

ヒノエ『なんだい?』

夏目「・・・行こう」ボソッ

ヒノエ『ん? 聞こえなかったよ、もう一度言っとくれ夏目』

夏目(おれたちがこの場所にいちゃ、ダメだ)
500 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:47:41.69 ID:V8xt5WPio


静花「・・・本当ですか」

菜々子「なにが」

静花「私が独りになっても・・・笑ってくれますか・・・」

菜々子「あぁ。傍で笑っていてやるよ」

静花「ッ!」

菜々子「そんな顔すんなよ、らしくない」

静花「ッ・・・るさい・・・ですわ・・・よ・・・っ」ボロボロ

菜々子「へへっ、泣いてやんの」

静花「うるさ・・・いっ・・・」ボロボロ

菜々子「今なら分かるよ。静花、おまえは――」

静花「寂しかったんです・・・っ・・・。過去の想い出を支えに頑張ってきましたが・・・
   これからは本当の『独り』になってしまうことが・・・どうしようもなく寂しかったんです・・・!」グスッ

菜々子「・・・素直にならないからだろ」

静花「それはあなたにも・・・言えること・・・ですわ・・・っ」グスッ

菜々子「・・・うん」

501 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:48:42.61 ID:V8xt5WPio

唯「どうして降りちゃダメなの〜?」

夏目「そ、それはですね・・・!」

唯「外の空気を存分に吸いたいんだよ〜!」

夏目「ま、待ってください、・・・様子を・・・」チラッ

ヒノエ『やれやれ』

澪「な、なにかいるみたいな視線はやめてくれっ!」ブルブル

夏目「・・・」

多軌「・・・そっか」

澪「タキも納得しないでくれっ、怖い!」ガクガク

律「なにやってんだよ」

夏目「今降りてはダメなんです」

律「・・・分かった」

唯「りっちゃんとなっちゃんがまた心で会話したよ!」

梓「またですか」ジロ

夏目(中野になにをしたんだ、おれは・・・)

ヒノエ『部屋に戻ったみたいだよ』

夏目「・・・そうか。いいですよ、平沢さん」

唯「なにがあったの!? どうして許可が下りたの!?」

多軌「ほら、梓も降りよう〜」

梓「ま、まってむぎ先輩が!」

律「後で行くから、先に行ってろ」

多軌「ほらほら〜」グイグイ

梓「ちょっ」
502 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:50:25.69 ID:V8xt5WPio

紬「・・・だめ」

律「どしたー?」

紬「・・・大事なことを思い出せないの」

律「・・・そっか」

紬「お茶の淹れ方・・・を・・・教えて・・・くれた・・・・・・人」

律「・・・」

紬「・・・っ」

律「その想い出はさ、きっと優しい想い出なんだよ」

紬「・・・優しいのに・・・私は・・・」

律「人の記憶なんてさ、長い時間が過ぎればそれは曖昧なものになるんだ」

紬「・・・うん」

律「きっと、この旅もそうなる・・・。悲しいことにな」

紬「・・・」

律「だから、想い出が言うんだ『私がいなくなる代わりに、新しい記憶を残して』って」

紬「・・・」

律「今の・・・キッツいな・・・」カァァ

紬「・・・ううん」

律「・・・だからさ、むぎがそのお茶の淹れ方を学んでくれたおかげで、今の新しい記憶が刻まれたんだぜ」

紬「りっちゃん・・・」

律「おかげでヴェガに乗車した人たちとティータイムが過ごせたんだ。それも事実だ」

紬「うん・・・!」

律「思い出そうとして辛い顔されてたら、優しい想い出じゃなくなるぞ」

紬「うん。ありがとう、りっちゃん」

律「なんてな」

紬「うふふ」

律「へへっ」

澪「りつ、歌詞書いてみないか?」

律「おわぁっ!」

紬「歌詞?」

澪「いい歌詞が書けると思うんだ」キラキラ

律「聞いてたのかっ! 書かねえよ!」

紬「私からもお願い」

律「いやだっ!」

夏目(静花さんと琴吹さんの間にある記憶は・・・優しい想い出・・・)
503 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:52:08.36 ID:V8xt5WPio

多軌「綺麗な夕日」

唯「うん・・・」

梓「唯先輩、どこを見ているんですか」

唯「見て、あれ」スッ

多軌「・・・あ、月ですね」

梓「・・・月を見ていたんですね」

唯「白い月から黄金の月へ移っていくよ」

多軌「いい時ですね」

梓「・・・白い月ですか」

唯「インザ、黄昏スカイ」

多軌「・・・?」

梓「黄昏の空に輝く月ですね」

唯「綺麗だね〜」

多軌「・・・」

夏目「・・・?」

多軌「ほら、見て」

夏目「あぁ・・・、月を見ていたんだ・・・」

律「なーに見てんだ?」

唯「ただね〜、ボーっと眺めていただけだよ〜」

澪「・・・黄昏時だからな」

多軌「・・・黄昏時にたそがれる・・・私たち」

梓「・・・」

澪「ぷふっ」

律「え?」

紬「どうしたの、澪ちゃん?」ワクワク

夏目「なにか面白いことが・・・?」

澪「な、なんでも・・・ぷふっ」

唯「なになに? 気になるよ澪ちゃん!」

梓「・・・」
504 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:53:04.52 ID:V8xt5WPio

秀輝「よぉ、なんか楽しそうだな」

夏目「状況がつかめないけど・・・」

律「・・・どうだった」

秀輝「なんとか、大丈夫みたいだぜ。菜々子さんから話を聞いた限りではさ」

夏目「・・・よかった」

律「そっかそっか」

秀輝「少し時間をくれって静花さんから伝言」

夏目「・・・うん」

多軌「・・・」

夏目「じゃ、個室に戻るから」

秀輝「あぁ、後でな」

多軌「・・・」

夏目「先生一人だと退屈してるかもしらないからさ」

多軌「・・・うん。私、みなさんと一緒にいるね」

夏目「うん」

ヒノエ『・・・戻るとするかね』

夏目「・・・どう感じた?」

ヒノエ『あの二人かい?』

夏目「・・・あぁ」

ヒノエ『脆い子は好きじゃないね』

夏目「おれも・・・脆いんだよ。ヒノエ」
505 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:53:58.35 ID:V8xt5WPio

先生「・・・退屈だ」イライラ

ガチャ

先生「とうっ」ピョンッ

夏目「ニャンコせんせーお菓子をうぐッ」ガスッ

シュタッ

先生「暇だぞ夏目!」

ヒノエ「八つ当たりするんじゃないよ」

夏目「お菓子買ってきたけど・・・絶対にあげないからな」

先生「にゃぬ!?」

夏目「一人で食べてやる」バリッ

先生「おいこら!」

夏目「もぐもぐ。ヒノエもどうだ」

ヒノエ「いただくよ」

先生「よ、よこさんか!」

夏目「ダメだ」

先生「ぐぬー!」

ヒノエ「お茶でも欲しいね」

夏目「ほら」

ヒノエ「ありがとよ」

先生「まったりするでないわ!」

夏目「うるさいぞ、ニャンコ先生」モグモグ

先生「おいしそうに食べおって・・・!」
506 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:56:12.25 ID:V8xt5WPio

prrrrrrrrrrr

夏目「発車か・・・。色々あったな・・・」

先生「もぐもぐ」

プシュー

夏目「次に停車する博多でさ、海の中道という場所があるんだ。自然があっていいみたいだぞ」

ヒノエ「そうかい、退屈だったら行ってみるとするかね」

先生「もぐもぐ、酒はあるのか、もぐもぐ」

夏目「あるんじゃないかな、屋台のような・・・」

先生「そこへ連れてけ!」

夏目「また屋台でお酒を飲むつもりか、ダメだぞ」

先生「どうしてだ! 窮屈で退屈している私を労おうと思わんのか!」プンスカ

夏目「妖が人間社会で満喫しようとするなよ・・・」

ヒノエ「多軌の小娘に連れられて来たはいいが、いつ帰るかは分からないんだよねぇ」

夏目「あ・・・、えっと・・・。明後日の昼前に到着するよ」

ヒノエ「そうかい。それじゃもうちょっとの辛抱だね」

先生「私は行くぞ」

夏目「ダメだ」

先生「むむぅ」イライラ

夏目「お菓子全部食べたじゃないか」

先生「足らん!」

夏目「それじゃ、ガイドブックでも読んでてくれ」

先生「読みきったわ。新聞はないのか!」

夏目「しょうがないな・・・。分かったよ」
507 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:56:55.25 ID:V8xt5WPio

緑「・・・一つ」

店員「はい、ありがとうございますぅ」

緑「・・・どうも」

店員「いらっしゃいませ〜」

夏目「新聞ありますか?」

店員「申し訳ないですぅ。たった今売り切れてしまって」

夏目「あ・・・。そうですか・・・」

緑「読み終わったらあげるわ」

夏目「・・・あ、ありがとうございます」

夏目(他に読み物とかないかな・・・)

緑「・・・」

菜々子「あ、緑・・・」

緑「・・・」

夏目(昼の出来事で・・・。戸惑うな・・・)
508 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 21:58:47.35 ID:V8xt5WPio

―――――1号車


菜々子「どうして私を叩いたのか、聞かせてくれ」

緑「・・・別に」

夏目「・・・」

菜々子「その答え方だと理解できないんだよ。ちゃんと言ってくれないかな」

緑「・・・」

菜々子「・・・正直に言うと、私と静花は・・・友達じゃなかったんだよ」

夏目「!」

緑「・・・」

菜々子「あの時点まではさ・・・。だから動けなかった。見てはいけないものを『見てしまった』
    遠い場所にいる静花とどう接しればいいのか・・・って」

夏目(それは、今までのように関わってはいけないということ・・・)

菜々子「それでも、なにか理由があれば動けたかもしれない。
    紬ちゃんの為、律に頼まれたから・・・とか理由があれば」

緑「・・・」

菜々子「緑に叩かれて、諭された時・・・、頭が真っ白になった」

夏目「・・・」

菜々子「どうしようもなく嫌いなはずなのに、ケンカばかりしてるのに、
    どこかで繋がっていたことを知ったから」

緑「・・・」

菜々子「それが途切れてしまったことに、気づいたから」

夏目「・・・」

菜々子「でも、また・・・。なんとか・・・繋ぐことはできたかな」

緑「・・・そう」

菜々子「だからさ、あの一発はけっこう効いたんだよ」

夏目「・・・」

緑「・・・あの時のあなたが、苛立ったから」

菜々子「・・・」

緑「・・・それだけ」

菜々子「そっか。・・・分かった」

夏目(菜々子さんの表情が穏やかになった気がする)

緑「・・・静花さんは?」

菜々子「色々と考えてみるって、個室に篭ってるよ」

夏目「・・・」

菜々子「そんじゃ、仕事に戻るよ。付き合ってくれてサンキュ、夏目」

夏目「・・・いえ」

緑「・・・」ガサッ

夏目(話は終わったとばかりに・・・新聞を広げた・・・)

夏目「後で夕食をとりに食堂車へ行きます」

菜々子「待ってるよ。じゃあね」
509 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:00:22.01 ID:V8xt5WPio

緑「・・・」

夏目(・・・おれも戻ろうかな)

緑「・・・あなたはどこまで行くの?」

夏目「阿蘇駅で降ります」

緑「・・・そう」

夏目「北上さんはどちらまで・・・?」

緑「・・・次」

夏目「?」

緑「・・・」

夏目(博多まで・・・?)

秋子「あ〜! こちらにいらしてたんですね!」

夏目「え・・・?」

緑「・・・」ペラッ

秋子「私、次の駅で降りるのでご挨拶にきました」

夏目「あ・・・」

秋子「金沢からここまで、楽しく旅ができました〜! ありがとうございました!」

夏目「い、いえ・・・」

秋子「お姉さんにもよろしくお伝えください!」

夏目「は、はい」

秋子「北上さんも、ありがとうございました」

緑「・・・別に」

秋子「それでは〜!」

タッタッタ

夏目(そうか・・・。降りてしまうのか・・・)

緑「・・・」

夏目(この気持ちはなんだろう。寂しいのかな)

緑「はい、あげるわ」

夏目「あ、ありがとうございます」

緑「・・・どうしたの?」

夏目「秋子さんの挨拶で・・・旅の終わりが見えてきて、寂しいのかもしれない・・・です」

緑「・・・そう」

夏目(こんなことが言えてしまえるのは、おれがこの人に心を許しているからだろうか)

緑「人は、出会えば必ず別れるものよ」

夏目「・・・」

緑「必ずね。・・・それじゃ」

スタスタ

夏目(少し、悲しい言葉だと感じた)
510 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:02:24.63 ID:V8xt5WPio

紬「・・・そうなのかしら」

梓「なにがですか?」

紬「別れは寂しいけれど・・・。悲しいことではないと思うの」

梓「・・・はい」

紬「だからね、さっきの北上さんの言葉に違和感を感じたのよ」

梓「そうなんですか・・・」

夏目(個室に戻りたいのに捕まってしまった。先生、もうすこし待っててくれ)

紬「・・・うーん」

梓「なにか考えているんですか?」

紬「うん。あのね、あずさちゃんと私が別れて、幾つかの歳月が流れたとするでしょう?」

梓「・・・はい」

紬「その時間の流れの中で、あずさちゃんが私を忘れてしまったことは――」

梓「忘れるわけありません」キリ

紬「まぁ」ポッ

夏目(そろそろお暇させてもらおうかな)スッ

「グァア」

夏目「うわっ!」

紬「あら、ゴロウちゃん」

梓「あ・・・また抜け出してきたのかな」

夏目「く、熊!?」

梓「風音呼んできます」スッ

紬「お願いね〜」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

紬「本当は触らない方がいいと思うけど・・・よいしょ」スッ

ゴロウ「グァ・・・」

紬「ここに座っていてね」

ゴロウ「・・・」

夏目「な、慣れているんですね」

紬「何度か会っているのよ」

夏目「色んなことが起きて・・・。飽きさせませんね」

紬「うふふ、そうね〜」

ゴロウ「・・・グァ」

ピノ『ここにいたのね!』ピピッ

紬「あら、ピノちゃん」

ピノ『ご主人様を呼んで来るのだわ』ピピッ

夏目「どこにいるんだ?」

ピノ『食堂車ですわ』ピピッ

夏目(中野が向かったのは寝台車だから反対方向だな・・・)
511 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:03:16.14 ID:V8xt5WPio

ピノ『おしゃべりしている時ではないのだわ』

夏目「ピノはここにいてくれ、おれが呼んで来るよ」

ピノ『よろしいのかしら?』ピピッ

夏目「食堂車で匂いを嗅いで・・・」ハッ

紬「・・・」ジー

夏目「食堂車にいたらピノが走り回って料理長に怒られると思うなー」

紬「なちゅらるに会話していました」ジー

夏目(やばい! こんなことを積み重ねたらまた常識が上書きされてしまう!)

夏目「な、なんとなくですよ」アセアセ

紬「・・・そうですか」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

律「夏目とむぎか、ちょうど良かった。ゴロウを・・・ここにいたか!」

夏目「え・・・?」

紬「りっちゃんも探していたのね」

律「おう、むぎが保護してくれてたんだな。・・・呼んでくる」

テッテッテ

ピノ『ご主人様とゴロウの為に一生懸命探してくれていたんですのよ』ピピッ

夏目「・・・」

ゴロウ「・・・グァ」

梓「個室にいませんでした」

紬「今、りっちゃんが迎えにいったから平気よ〜」

梓「そうですか。律先輩も探していたんですね」

紬「うん」ニコニコ

ピノ『感謝するのだわ』ピピッ

夏目「・・・」

澪「か、可愛い・・・」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

澪「・・・な、撫でたい」

唯「ダメだよ澪ちゃん。風音ちゃん以外の人に慣れたら今後ゴロウちゃんが危険なんだよ」

澪「そ、そうだったな・・・。堪えろ私っ」グググ

梓「唯先輩も探していたんですね」

唯「うん。一大事だからね〜」

紬「そうね、事情を知らない人に見つかったら大変よね」

ゴロウ「グァ」

夏目(守られているんだな・・・)
512 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:05:24.76 ID:V8xt5WPio

ピノ『あ、ご主人様!』ピピッ

風音「す、すいません!」

紬「いいのよ。それより、はやく個室へ連れて行ったほうがいいと思うわ」

風音「は、はい。行くよ、ゴロウ」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

ピノ『ありがとうなのだわ』ピピッ

夏目「・・・」

風音「本当にありがとうございました。失礼します」ペコリ

紬「それでは〜」

律「無事解決だなー。夕飯食べに行こうぜ」

澪「いいけど、博多で食べないのか?」」

唯「博多到着が8時だからね、お店開いてるかな?」

紬「屋台が有名よね、おでん屋さんないかしら」

梓「博多の屋台でおでんですか・・・」

夏目(おれたちはどうしようかな・・・)

律「私はお腹空いているんですよ、今食べたいのですよ」

澪「そうか」

律「どーすんだー?」

紬「多数決にしましょう」

梓「それでは、博多で食べたい人挙手を」

紬「はい!」

澪「はい」

唯「はい」

梓「・・・律先輩すいません。私もです」

律「しょうがないなぁ、もぅ・・・」

唯「もみじ饅頭食べないからだよ」

律「食べたけどさ・・・一個だぞ」

唯「わたしは2つだよっ」チョキ

梓「・・・」パー

夏目「あの、屋台ってラーメンしかないんでしょうか」

紬「どうなのかしら、観光ガイドにも載っていないから分からないわ」

夏目「そうですよね・・・」

澪「夏目も一緒に行こう」

夏目「え?」

澪「夕食を一緒に、だ」

夏目(先生もいるから・・・断るしかないよな・・・)

多軌「私も行きたいです!」

夏目「タキ・・・」

澪「うん。みんなで行こう」
513 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:07:06.51 ID:V8xt5WPio

梓「決定ですね」

唯「それじゃ、秋子ちゃんと遊んでくるよ〜」

律「そうだな、博多まで時間無いからそうしようぜ。澪も行くぞ」

澪「うん。それじゃ二人とも、到着したらホームで待ち合わせだ」

多軌夏目「「 はい 」」

紬「ラーメン以外にもあるのかしら」

梓「おでん屋さんはありそうですね」

紬「たまごと白滝が食べたいわ」キラキラ

梓「のど越しがいいんですよね」

多軌「座っていい?」

夏目「どうぞ」

紬「夏目さんとタキちゃんははどこで降りるの?」

多軌「阿蘇駅です」

梓「最終駅の一歩手前だね」

夏目「・・・」

多軌「せっかくみなさんと仲良くなれたのに・・・」

紬「うん。さびしいわね」

梓「むぎ先輩、さっきの話の続きですけど」

紬「うん・・・?」

夏目「・・・」

梓「私がむぎ先輩を忘れない理由は、この旅で自分が変われたと自覚しているからです」

紬「・・・」

梓「変わった自分がそこにいるのなら、忘れたことにはならないと思います」

紬「・・・」

梓「変えてくれたのは、他ならぬ・・・むぎ先輩ですから」

紬「あずさちゃん!」ダキッ

梓「むぎせんぱいっ!?」

多軌「・・・」

夏目「・・・」

紬「ありがとう〜」

ギュウウ

梓「・・・い、いえ」

紬「変わった自分がいるのなら、人を紡ぐことができているのなら、忘れたことにはならないのね」

梓「はい!」

多軌「・・・」

夏目(そうか・・・。琴吹さんの心の中で静花さんは存在しているんだ・・・)
514 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:08:25.80 ID:V8xt5WPio

ガチャ

先生「とうっ!」ピョン

夏目「・・・」サッ

先生「かわされたッ!?」

バコーン

先生「ふぐっ!」

ヒノエ『哀れだね』

夏目「壁に突撃なんて、無謀すぎるな」

先生「」プシュー

多軌「よいしょ」ギュウ

夏目「もうすぐ博多に到着だけど、ヒノエはどうする?」

ヒノエ『ここにいるさ』

夏目「そうか、分かった」

ガタン ゴトン

多軌「あ、ホームに入ったよ」

夏目「・・・あぁ」
515 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:12:32.13 ID:V8xt5WPio

プシュー

多軌「よっと!」ピョン

夏目「博多、到着・・・と」

多軌「夏目くん」

夏目「ん?」

多軌「ほんの少しだったけど、とても楽しかったよ」

夏目「・・・うん」

多軌「お使いのつもりで来たけど、こんな風に楽しめるなんて思ってなかった」

夏目「それは、おれもだよ」

多軌「夏目くんって・・・紬さんのことどう思ってるの?」

夏目「え・・・?」

多軌「澪さんや梓とは違う雰囲気で接しているから」

夏目「そう・・・見えるのか・・・?」

多軌「うん」

夏目「そうか・・・」

多軌「・・・」

夏目「先生と同じなんだと思う」

多軌「ニャンコ先生?」

夏目「・・・あぁ。ニャンコ先生が傍にいてくれるから、妖との出会いを味わえてる」

多軌「・・・」

夏目「琴吹さんがいたから、人との出会いをかみ締めることが出来ている・・・んだと思う」

多軌「そっか・・・」

夏目「軽音部の人たちがそれを教えてくれていると、そう感じているよ」

多軌「うん・・・。 ――。」

夏目「?」

レイコ「なにをしているんだ、行くぞ」

夏目「ちょっと待ってくれ」

レイコ「どうした」

夏目「琴吹さんたちと待ち合わせしているんだ」

レイコ「くだらん」イライラ

菜々子「あれ、夏目のお姉さん?」

夏目「あ・・・菜々子さん」

レイコ「なんだ?」

菜々子「いや、降りたと思っていたから驚いた」

静花「貴志さんのお姉さんでしたわね」

夏目「は、はい」

静花「・・・瓜二つですわね」

多軌「うんうん」
516 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:15:30.87 ID:V8xt5WPio

レイコ「お、いいところに」

美弥「あら、お姉さん・・・来ていらしたんですね」

夏目「車掌さん、私服を着ているってことは・・・」

美弥「はい、明日の朝まで休暇をいただきましたので少し観光してこようかと」

レイコ「少し待ってろ」

タッタッタ

夏目「?」

菜々子「夏目たちも一緒に行かないか?」

多軌「どちらへですか?」

静花「夕食がてら博多の街を散策ですわ」

多軌「あ・・・、それでしたら紬さんたちも来るので・・・」

静花「・・・」

レイコ「待たせたな」

美弥「その瓶は・・・?」

レイコ「京都で醸成された酒だ、約束だったはずだぞ」

美弥「そうでしたね」クスクス

夏目「約束!?」

菜々子「・・・ほぅ」

静花「京都のお酒ですか。馴染み深い味ですわ」

夏目「せ、先生!」

レイコ「お前たちは遊んでろ、私はこいつらと飲んでくる」

菜々子「いいのかい?」

レイコ「構わん、行くぞ」

静花「大人の付き合いですわね」

美弥「うふふ、それでは」

多軌「は、はい・・・」

夏目「せ、せんせいっ!」

静花「大丈夫ですわ、私がいますから」

菜々子「上品ぶってるんじゃないよ、あんた酒弱いだろ」

静花「たしなむ程度ですわよ」

スタスタ
517 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:17:00.02 ID:V8xt5WPio

多軌「大人の世界だね」

夏目「先生・・・迷惑をかけないでくれよ・・・!」

紬「あら・・・? 静花さん・・・?」

律「夏目のお姉さんもいるな・・・?」

澪「帰ったはずじゃなかったか?」

夏目「あ、遊びにきたそうです!」

梓「夏目を置いて・・・」

夏目「!」ギクッ

唯「それじゃ、明日は一緒に遊べるね!」

律「そうだな!」

夏目(記憶は失くしても遊んでくれるのか・・・。嬉しいな・・・)

律「ラーメンを食べに中州まで行っくぞー!」

唯「おぉー!」

澪「おー」

多軌「おー!」

夏目「・・・・・・はい」

紬「・・・」

梓「むぎ先輩、行きましょう」

紬「う、うん・・・」
518 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:19:02.72 ID:V8xt5WPio

―――――中州


紬「回転屋台寿司?」

夏目「え・・・」

律「なんで屋台で寿司なんだよ・・・」

「お、いらっしゃ〜い。食べていきなよ、少年少女たち!」

澪「え、えぇと・・・」

唯「おぉ、お魚だよ! 仙台の塩釜魚市場以来だよ〜!」

梓「試食でお腹いっぱい食べたそうですね」

唯「うん、おいしかったんだよ〜」

多軌「屋台なのに回転寿司・・・」

「今はお皿回せないからね、ただの屋台寿司なんだけど」

律「屋台寿司ってなんだ・・・」

「もぅ〜、いいから座んなよ」

紬「はい」

梓「ちょっ、むぎ先輩! そんな怪しい屋台に座らないでください!!」

「怪しいとは失礼ね、ネコちゃん」

梓「だ、誰がネコですか」

唯「あずにゃんです」

「女が握る寿司は不安なのかい?」

梓「そこは問題じゃないんですけど・・・」

律「まぁいいや、面白そうだから食べていこうぜ」

澪「・・・うん」

夏目「・・・」

「お、少年! こんな可愛い子たちを1人占めなんて隅におけないね〜!」

唯「ね〜!」

梓「乗らないでください」

夏目(テンションが高い主人だなぁ)

「私の名前は九段下舞佳。よっろしく〜」

紬「舞佳さんですね」

舞佳「そうよん。二人でこの屋台を切り盛りしてんだけどねぇ」

澪「二人・・・?」

舞佳「そう。ダーリンとね♪」

澪多軌「「 ダ、ダーリン!? 」」

舞佳「そうよん、愛しいお人さ」

澪「」ボフッ

律「そんで、そのだーりんとやらはいないのかよ」

舞佳「今出払っててねぇ、そのせいで回転できないんだけど」

唯「そっかぁ・・・。残念だよ」

夏目(また・・・妙な縁が・・・)
519 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:21:03.12 ID:V8xt5WPio

舞佳「新鮮なネタだから味は保障するよん! ご注文をいただこうかね?」

紬「ひらめを!」

律澪夏目「「「 渋いっ! 」」」

梓「赤身魚より白身魚ですよね。私もひらめを!」

舞佳「はいよん!」

律「あ、じゃあ・・・私も」

澪「わ、私も」

多軌「私もひらめを・・・」

唯「マグロを!」

舞佳「はいよ〜。少年はどうする?」ニギニギ

夏目「えーっと・・・蛸を」

舞佳「はいよ。へい、おまち!」

紬「いただきます」パクッ

舞佳「へい、蛸おまち! いやぁ〜、可愛い子達に囲まれて幸せだね、少年」

夏目「・・・」

律「コメントしろよっ!」

紬「おいしいわ〜」

梓「おいしいですね。さっぱりしていて歯ごたえもあって・・・。
  シャリとネタの味わいがとてもいいです」

舞佳「あんがと!」

澪「もぐもぐ、おいしい」

律「お姉さん若いよね、よくこんな冒険染みたことできたな」

舞佳「若いからっていうのもあるけど・・・それだけじゃないんだよね〜」ニギニギ

唯「どーいうこと?」

舞佳「うへへ、ダーリンと一緒だからね〜♪」

多軌「・・・ごちそうさまです」

舞佳「お粗末さまです」

澪「し、幸せそうだ・・・」

舞佳「幸せよん!」

夏目「もぐもぐ」

秀輝「見慣れた後姿だと思ったら・・・夏目たちか」

律「お、一人で屋台に来た秀輝じゃねえか」

唯「悲しいお人ですねぇ」

秀輝「状況を説明しなくていいよ・・・。屋台で寿司ってすごいね」

舞佳「お、少年が増えたね」

秀輝「俺も晩御飯ここにしよ〜っと」

紬「緑さんをお食事に誘わなかったの?」

秀輝「なんでっ!?」
520 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:23:20.02 ID:V8xt5WPio

舞佳「はいよ、お茶。なにを握ろうかね」

秀輝「た、玉子を」

舞佳「はいよ!」

律「お子様か」

秀輝「みんなはひらめ食べてるのな・・・。渋い・・・」

紬「それで、緑さんは?」

秀輝「う・・・」

梓「誘わなかったんですか?」

多軌「どうなんですか?」

秀輝「・・・さ、誘ってない・・・です・・・よ」

澪「・・・」ハァ

秀輝「秋山さんからため息が聞こえた・・・」

律「秀輝をわざわざ誘わなかったのに・・・まったく・・・」

唯「ん? 秀輝くんは緑ちゃんが好きなの?」

秀輝「ダイレクトだね・・・」

夏目紬「「 どうなの? 」」

秀輝「・・・・・・うん」

舞佳「かぁ〜! 青春してるねぇ〜! はい、玉子おまち!」

唯「あ、私も玉子〜」

夏目「おれもお願いします」

舞佳「はいよ〜!」

秀輝「・・・恥ずかしい」プシュー

澪「大村さん、鮭あるよ」

秀輝「あぁ、北海道出身だから味比べさせようとしているんだね」

舞佳「へぇ〜、道産子なのね。私たちも暮らしたことあるよん。はい、おまち」

唯「た・ま・ご〜!」

梓「唯先輩、わさび入ってます?」

唯「ん〜! つーんってきたぁ!」ツーン

梓「・・・じゃ、いいや」ボソッ

多軌「わさび入りもおいしいよ?」

梓「・・・いい。いらないわさびは」

紬「〜っ!」ツーン

秀輝「北海道のどこですか?」

舞佳「旭川辺りだねぇ。そこでラーメンも作ってたのよん」ニギニギ

夏目「もぐもぐ」

秀輝「ラーメン作りの経験があるのに、わざわざ寿司を・・・?」

舞佳「うん。そうだね〜、話が少し長くなるけど、聞くかい?」

澪「だーりんさんも出てくる話ですか?」

律「なんだよ、だーりんさんって」
521 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:26:51.78 ID:V8xt5WPio

舞佳「うーん、それじゃ・・・その話もしちゃおうかね♪」

紬「ぜひ」キラキラ

律「・・・」キラキラ

唯「りっちゃんも!?」

澪「意外と乙女だったりするんだ・・・りつは」

秀輝「意外な律・・・!」

舞佳「だーりんと出会ったのが、今から・・・8年・・・いや、小学二年生の時だから・・・15年前かぁ」

夏目「15年・・・」

多軌「もぐもぐ」

舞佳「15年一緒に居たわけじゃなくてね、7年の空白があるのよん。
   彼、8歳の頃に引越ししていって高校入学とともに帰ってきたのさ」ニギニギ

梓「縁があったんですね」

舞佳「そういうことさ。へい、アナゴお待ち!」

澪「どうも」

舞佳「彼は勉学に勤しむ高校生で・・・、私はバイトで忙しくも順風満帆な日々を過ごしていたのさ」

紬「歳が離れているんですね」

舞佳「そうよん。私がお姉さんね」

律「それでそれで」

舞佳「私は宅配の仕事をしていてね、届けた先が彼の自宅だったのよ。
    あのころのダーリンは何度も通販頼んでたからね〜」

紬「運命ですね」キリ

舞佳「どうかなぁ、運命というより・・・偶然だったような気がするねぇ」

紬「あら・・・」

多軌「偶然が重なって運命・・・?」

舞佳「そうだね。彼が過ごした高校生活の中で、偶然出会った幾つかの場所が繋がったから運命だと思えるね」

秀輝「・・・」

舞佳「彼の通う高校・・・。私の母校でもあるんだけどね、一つの伝説があるのよん」

梓「伝説・・・?」

舞佳「学校の中庭に聳え立つ時計台、そこに取り付けられた鐘があるの」

紬「ふむふむ」

舞佳「卒業の日に告白して生まれたカップルがその鐘の音に祝福されると永遠に幸せになれる。という伝説」

紬「まぁ!」

澪「素敵だ!」

律「うん、素敵な伝説だ!」

舞佳「私が通っていた頃は鳴り響いていたんだけどね。いつしか鳴らなくなったのよ」

紬「鳴らなくなってしまったんですか・・・」

舞佳「そう。だから伝説になったのよね」

唯「鐘の音かぁ・・・」

舞佳「人が人を想う気持ち・・・、その想いが鐘を鳴らすと信じられていたのよね」

紬「人が人を想う・・・」
522 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:28:50.16 ID:V8xt5WPio

舞佳「彼が卒業する日にねぇ・・・。一人トボトボと歩いている姿をみて思ったのよ」

夏目「・・・」

舞佳「私と付き合うしかないな・・・と!」

律「あれ・・・。感動がなくなったぞ・・・」

舞佳「その鐘の音を私たち二人が聞いていたとしたら・・・?」

梓「おぉ・・・!」

秀輝「そ、それは凄い話だ」

夏目「・・・伝説は成就された」

舞佳「そういうこと〜♪」

澪「幸せそうだ!」

紬「まぁ〜・・・」ウットリ

舞佳「うへへ〜。いいリアクションしてくれるじゃない。ガリをサービスしとくよ」

律「ガリですかっ!」

澪「うん・・・いい話だったなぁ・・・」

唯「そうだね。玉子お願いしやす!」

舞佳「はいよぉ!」

「ただいま、手伝うよ」

舞佳「お帰り、ダーリン♪」

紬澪多軌「「「 この人が・・・ 」」」

「・・・?」

律「聞いたぜ、二人のなり染めをな」

「な・・・! また話したの舞佳さん!?」

舞佳「いいじゃないの、減るもんじゃないし」

「そりゃそうだけど・・・」

紬「お名前は?」

「岩瀬といいます・・・」

秀輝「伝説かぁ・・・」

夏目「・・・」ジー

多軌「なるほど」ジー

梓「伝説の恋人同士ですか・・・」ジー

岩瀬「・・・うぅ、好奇な目で見られてる気がする」

律「あやかりたいもんだな、秀輝!」

秀輝「まぁ・・・うん・・・」

舞佳「頑張りなよ、少年!」

秀輝「・・・はい」

夏目(誤魔化さずに・・・自分の感情を受け入れているんだな・・・)

岩瀬「・・・舞佳さん、最後まで言ってないでしょ」

舞佳「ぴぴぃ〜ぷ〜♪」シラー
523 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:31:43.80 ID:V8xt5WPio

紬「あずさちゃん、伝説の二人が目の前にいるわよ〜」

梓「伝説になるっていいですね」

澪「伝説だもんな」

律「あぁ、いい伝説だ」

唯「伝説に結ばれた二人だから信じていられるんだね!」

多軌「伝説・・・」

岩瀬「鐘が鳴らなくなったのは舞佳さんが壊したからなんだよ」

夏目「え・・・」

舞佳「へい、すずきお待ち!」

多軌「いただきます」

岩瀬「俺が卒業するその年に直したのは舞佳さん本人なんだけどね」

律「か、感動を返せー!!」

秀輝「おぉ・・・」

岩瀬「伝説といえばね、似たような話が隣町にもあったんだよ」

舞佳「へい、イカお待ち!」

梓「どうもです」

紬「どんな伝説ですか!?」

澪「聞きたい!」

岩瀬「高校の校庭にある一本の樹。その樹の下で卒業の日に、女の子からの告白で生まれたカップルは・・・ってね」

律「素敵じゃないか・・・!」キラキラ

舞佳「私は伝説の坂ってのも聞いたよ」ニギニギ

岩瀬「桜舞い散る中で愛を誓い合った二人は・・・だよね」

舞佳「うん♪」

夏目(とても幸せそうだな・・・)

多軌「ご馳走様です」

舞佳「お粗末さまです」

紬「うふふ」ホカホカ

梓「どうしてむぎ先輩が幸せそうなんですか!」

紬「だって、いいじゃない? 幸せそうな二人って・・・」ポッ

梓「ですよね!」

澪「あ、梓・・・」

秀輝「・・・」

多軌「なんだか、甘い雰囲気になってきたような・・・」

夏目「妙な気配がする・・・」

紬「あら、お姉さん・・・?」

レイコ「・・・」

夏目「うわっ!」
524 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:33:53.82 ID:V8xt5WPio

菜々子「お邪魔していいかな?」

律「どうぞどうぞ」

舞佳「先客万来だね〜♪」

岩瀬「いらっしゃいませ」

美弥「失礼しますね」

多軌「車掌さんたちも来ていたんですね」

夏目「せ、先生・・・?」

レイコ「お酒の持ち込みはダメだと言われた」

夏目「・・・そ、そうか」

菜々子「ったく! ほら入れって!」

紬「?」

静花「ちょ、ちょっと菜々子さん! ひっぱらないでくださいな!」

菜々子「ほら、隣に座んなよ!」

静花「・・・まったく」

紬「どうぞ〜」

静花「し、失礼しますわね」

紬「はい。うふふ」

梓「・・・」

菜々子「へぇ、珍しいね、屋台で寿司なんて」

舞佳「そうでしょ、海外で働いている時に閃いたんだよね〜」

澪「か、海外まで行っていたんですか・・・」

舞佳「ダーリンの男を磨き上げるためにね」

岩瀬「あはは・・・」

静花「つ、紬さんは何を食べまして?」

菜々子「なにを緊張してんだよ」

紬「ひらめとすずき、カンパチとカレイです」

舞佳「つむぎって名なのかい?」

紬「は、はい。琴吹紬といいます」

岩瀬「もう一つ伝説があったね、舞佳さん」

舞佳「そうだねぇ」

夏目「?」

美弥「伝説・・・?」

澪「高校卒業の日に告白をして、樹の下で結ばれた二人、鐘の音に祝福された二人
  桜舞い散る坂の上で愛を誓い合った二人、それぞれが永遠に幸せになれるという伝説です」

菜々子「へぇ・・・」

舞佳「それに加えて、新たに生まれた伝説があるのよん」

静花「・・・?」

紬「・・・?」
525 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:36:56.07 ID:V8xt5WPio

舞佳「つむぎの樹」

紬「・・・」

舞佳「どんなに離れていても二人の想いを紡ぎ合う願いの樹。そんな樹が存在するのよね」

梓「まるでむぎ先輩みたいですね」

静花「!」

夏目「・・・うん」

紬「まぁ・・・」

梓「む・・・」ジロ

夏目「出会った人を紡いでいくのが琴吹さんだと思ったんですよ!」

多軌「どうして焦っているの・・・?」

紬「そう・・・なのかしら?」

律「そうだな、ヴェガで出会った人たちを紡いだのはむぎ自身だもんな」

澪「うん。それは紛れも無い事実だよ」

唯「そうだね」

梓「・・・」

静花「・・・っ」

菜々子「静花・・・」

紬「・・・」

夏目「中野と静花さんにも言いましたけど。金沢からここ、博多まで・・・
   琴吹さんがいなければ紡がれない人たちがいました」

秀輝「・・・」

多軌「・・・」

夏目「先生とも紡がれなかった時間がある・・・」

レイコ「ん?」ゴクゴク

菜々子「一人で飲んでるね・・・」

夏目「中野が琴吹さんを尊敬する理由はそこなんじゃないかなって・・・思う」

梓「ちょっ!」

紬「まぁ」ポッ

多軌「・・・そうだったんだ」

夏目「うん」

舞佳「いいねぇ、青春だねぇ」

美弥「そうですね」

唯「なっちゃんの言うとおりだよ」モグモグ

レイコ「ほら、飲め」

トクトクトク

美弥「少しだけ・・・」

夏目「あれ、お酒持ち込んでもいいんですか?」

舞佳「構わないよ、ちゃんとお家へ帰ることが条件だけど」

夏目「・・・そうですか」
526 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:39:50.85 ID:V8xt5WPio

静花「・・・変わらないのですわね」

紬「しず・・・か・・・さん・・・?」

静花「な、なんでもないですわ」

紬「・・・」

静花「永遠に変わらないものは・・・とても綺麗で美しくて
   とても・・・愛おしいものですわね」

紬「・・・はい」

菜々子「・・・」

夏目「・・・」

秀輝「静花さん・・・」

律「秀輝も頑張れよ!」バシッ

秀輝「いつっ!」

美弥「・・・!」

菜々子「なにを頑張るって?」

律「実はですねぇ」ウシシ

澪「からかうな」

律「いいじゃんか、面白いネタだよな」

レイコ「お前も飲め」

トクトクトクトク

静花「ど、どうも」

夏目(まったく・・・。でも、一人占めしないなんて・・・)

多軌「私もイカをお願いします」

舞佳「はいよ〜♪」

菜々子「・・・楽しそうだ・・・憧れるなぁー」

唯「うまうま」モグモグ

梓「唯先輩は幸せそうですね」

唯「こんなにおいしいお寿司食べられるんだよ? 幸せだよ〜」ホカホカ

梓「なんだか私も幸せになれますね・・・。サーモンお願いします!」

岩瀬「はいよ」

舞佳「お、板についてきたね」

岩瀬「いつも隣で握っているから、身に付いたよ」

舞佳「そうかい♪」

秀輝「・・・くっ」
527 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:41:07.93 ID:V8xt5WPio

美弥「秀輝さん、ひょっとして・・・まだ知らないのですか?」

秀輝「なにがですか?」

美弥「北上緑さんは・・・」

紬「?」

夏目「?」

美弥「博多で、ヴェガを降りられましたよ」

秀輝「―――え」

夏目「!」

律「えっ!?」

紬「そ、そんな!」

美弥「ご存知なかったのですね・・・」

秀輝「―――え」

律「お、おい、しっかりしろ・・・」

秀輝「すいません。お金ここに置いておきます」

舞佳「う、うん。ありがとね」

秀輝「ごちそうさまです・・・。お先に失礼します」

トボトボ

夏目「ひ、秀輝・・・」

紬「緑さんが・・・」

美弥「はい。乗車証も受け取りましたので・・・」

菜々子「・・・秀輝に挨拶も無しか」

静花「・・・っ」

夏目「・・・」

レイコ「行け、夏目」

夏目「あ、あぁ!」ガタッ

タッタッタ

舞佳「・・・」

レイコ「・・・」ゴクゴク
528 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:42:55.33 ID:V8xt5WPio

夏目「秀輝!」

秀輝「うん? 夏目か・・・」

夏目「・・・」

秀輝「んー・・・。なんというか、莫迦だよな俺って」

夏目「・・・」

秀輝「時間があると思っていたんだよ。
   まだまだ一緒に居られるって・・・。安心していたんだよ」

夏目「・・・」

秀輝「それがこのザマだよ。なに一つ変わることが出来なかった」

夏目「・・・」

秀輝「俺さ、北上さんと出会って、自分の位置っていうのかな・・・
   そういうのがハッキリと分かったんだ」

夏目「位置・・・?」

秀輝「あぁ、自分が立っている位置な。それがハッキリしているから
   自分を知ることが出来た、自分の小さな世界観を知ることができた」

夏目「・・・」

秀輝「この人と一緒に居ることができれば、自分が・・・大村秀輝がどうあるべき人間なのか
   分かるような気がしていたんだ。隣を歩いてくれれば、しっかり歩いていけるって」

夏目「・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・秀輝の旅も・・・終わるのか・・・?」

秀輝「さぁ、分からないや・・・。告白して振られるならまだしも・・・、そのチャンスすら掴めなかったからなぁ」

夏目「・・・」

秀輝「今終えたら・・・中途半端になるな・・・」

夏目「・・・」

秀輝「だけど、終着駅に辿り着いたところで、得るものは・・・無い」

夏目「!」

秀輝「・・・少し、一人で考えさせてくれ」

夏目「・・・」

秀輝「・・・じゃあな、夏目」

夏目「降りたり・・・しないよな・・・」

秀輝「・・・おまえは屋台に戻れよ」

スタスタ

夏目「・・・」
529 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:44:47.50 ID:V8xt5WPio

舞佳「始まりがあれば終わりがあるように
    出会いもあれば別れもある。ってね」

静花「・・・」

紬「・・・」

梓「降りてしまったんですね・・・」

律「私ら、緑のことなんにも知らないんだよな・・・」

唯「うん・・・」

澪「・・・」

唯「・・・緑ちゃん・・・挨拶くらいしてくれてもいいのに」

紬「・・・うん」

律「・・・」

レイコ「出会いと別れなんて、そんなもんだ」

梓「・・・そうは思いませんけど」

レイコ「・・・ふん」

菜々子「降りなきゃいけない理由があったんだよ。
    それを律たちが思い悩んでいても仕方ないんじゃないかな」

律「・・・うん」

静花「あら、知った口をききますわね」

菜々子「沈んだ空気を浮かそうとしているのに、茶々を入れんじゃないよ」

静花「まぁ、人として成長しましたわね。そんな気遣いができるようになるなんて」

菜々子「おかげさまでね。だけどね、あんたのせいでその気遣いが無駄になったよ」

静花「自分の不甲斐なさを人に押し付けるなんて、やはり成長していませんでしたわね」

菜々子「うるさいよ、毒舌女狐!」

静花「なんですか、この女ターザン!」

多軌「お二人とも・・・」アセアセ

美弥「決められた別れは、ある意味特別なのかもしれませんね」

梓「・・・」

舞佳「お姉さんたちが重い空気を吹き飛ばしてくれて、少し楽になったよ」

静花「それは言わない約束。・・・ですわ」

菜々子「これ・・・京都で?」

レイコ「うむ。うまいだろ」

岩瀬「日本縦断の列車ですか」

梓「はい、北海道からここまで来ました。縦断中なのはむぎ先輩と大村さんだけですが」

紬「・・・」

澪「む、むぎ・・・」

静花「ほら、前を向きなさい」

紬「・・・はい」

静花「彼女は彼女の道を進みましたのよ。あなたがそんな顔していてはいけませんわ」

紬「はい」

静花「・・・」
530 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:48:55.96 ID:V8xt5WPio

唯「前を向かなきゃいけないんだね・・・。よぉし、サーモンを!」

律「また食べるのかよ!」

舞佳「は〜いよ♪」

唯「だって、おいしいんだよ〜とろ〜りしてて」ムフフ

梓「さすが唯先輩、切り替えというか、乗り越えがはやい・・・」

多軌「マグロをわさびアリで」

舞佳「はいよ〜♪」

梓「わざわざ言わなくてもいいのに」

多軌「乗り越えてみようよ」

梓「食べろって言ってるの? 拒否をする」

美弥「わさびは刺激と同時に食物の殺菌効果、消化、吸収を促進する効果もありますよ」

梓「・・・鼻にくる刺激がいらないと思います。ガリにも同じ作用があると聞きますので
  ガリだけでいいですよ」ガリガリ

律「頑なだな・・・。そこまで嫌か」

岩瀬「舞佳さんと世界を歩いていてさ、色々な土地、様々な人と出会ったんだ」

紬「・・・」

岩瀬「そこで暮らしてみてもいいなと思える場所はいくつもあった」

静花「・・・」

岩瀬「結果的にここに居るわけだから、その場所とは別れてきたんだけどね」

紬「・・・そうですね」

岩瀬「でも、また新しい場所に出会えた。それを繰り返しているんだよね。ありがたいことに」

紬「あ・・・」

静花「二人だから、とも聞こえますが・・・」

岩瀬「あはは」

静花「京都に続いて・・・ここも熱いですわね・・・」

紬「京都?」

静花「えぇ、絵に描いたような大和撫子がいましたのよ。私の次にね」

菜々子「はいはい。さり気に自分を持ち上げるなよな」

舞佳「なになに?」

岩瀬「なんでもないですよ」

舞佳「まぁいいや、へいお待ち!」

唯「来た来た〜! むぎちゃんサーモンどうぞ」

紬「・・・うん。ありがとう」

舞佳「へっへへ〜」

菜々子「楽しそうだね、憧れるよホントに」

舞佳「楽しいよん!」

唯紬「「 きく〜! 」」ツーン

梓「涙目になってるじゃないですか」
531 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:52:03.47 ID:V8xt5WPio

岩瀬「はい、お待ちどうさま」

多軌「ほら、梓もどう?」

梓「・・・いいって」 

紬「ネタとシャリと山葵の交響曲ね〜♪」

唯「三重奏だよ〜♪」

梓「・・・」ゴクリ

多軌「ん〜っ、おいしい〜」

梓「タ、タキ・・・ひとつ」

多軌「どうぞ・・・っ」ツーン

律「どれどれ」ヒョイ

梓「・・・あ」

律「うまいな!」

岩瀬「ありがと」

梓「す、すいません。マグロを・・・」

舞佳「はいよ!」


夏目「・・・」

レイコ「どうだ?」

夏目「とても落ち込んでた・・・」

レイコ「どうなろうと、今更変わらないだろう」

美弥「驕りがある言い方になりますが」

夏目「?」

美弥「秀輝さんは、変わられましたよ」

菜々子「秀輝が・・・」

静花「・・・羨ましいですわね」

菜々子「静花、あんたはどうするんだい」

夏目(琴吹さんに・・・?)

静花「私を思い出すその時まで、今のままでいさせてください」

菜々子「・・・」

静花「その時がどんな結果になろうと、受け入れる覚悟がつきました。
   今は、彼女の旅を見守りたいですわ。後ろ向きな意味ではなく・・・」

菜々子「そうか・・・」

レイコ「おい夏目、これはなんだ」

夏目「ん・・・? それは・・・ソーマだな・・・使ってなかったのか先生」

レイコ「お酒と一緒に貯蔵してあったんだ」

夏目「ヴェガのどこに隠していたんだよ」

美弥「お姉さんのお部屋にですね」

レイコ「そういうことだ」

夏目「・・・まったく」
532 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:55:26.43 ID:V8xt5WPio

舞佳「へい、おまち!」

梓「来ましたね・・・」ゴクリ

紬「そんなに睨み付けるなんて・・・どうしたの?」

梓「試練なんです」

紬「山葵と対決なのね」

澪「頑張れ、梓。カツオください」

律「意気込みすぎじゃないのか・・・。私もカツオ〜」

舞佳「はいよ〜」

梓「いざっ」パクッ

唯「真剣勝負なんだよ・・・」

梓「もぐもぐ」

紬「どう・・・?」

梓「あ、私イケる口ですね。食わず嫌いしていたみたいです」

多軌「・・・あっさりだね」

舞佳「ん? わさび入れてもよかったのかい?」

梓「え・・・」

紬「あら」

舞佳「ネコちゃんはわさび抜きだと思ってたよ」アハハ

梓「・・・」

紬「あら、勘違い・・・」

岩瀬「はい、カツオおまちどうさま」

澪「はむ・・・もぐもぐ」

律「もぐもぐ」

澪律「「 っ〜! 」」ツーン

梓「律先輩いただきますね!」パクッ

唯「勇猛果敢だね」

梓「にゃふっ!?」

岩瀬「・・・少し多めに入れてしまいました」

澪「食べ終えた時の爽やかさはクセになるな」

律「そこまでじゃないけどな」

梓「・・・ぅぅ」シクシク

レイコ「ネコに刺激物はいかんぞ」

夏目「語るなよ・・・」

梓「うっ・・・ひっく・・・」シクシク

多軌「ご、ごめんね強く勧めちゃって・・・」

舞佳「ごめんね〜、はい、ガリ」
533 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:56:35.15 ID:V8xt5WPio

梓「・・・ぅ・・・っ・・・ひっく・・・」シクシク

唯「あずにゃん・・・」ウルウル

律「わさびだ、わさびが涙腺を刺激しているんだ。唯はなんでだ」

唯「もらい泣きだよ・・・」シクシク

紬「あずさちゃん、動かないでね」

梓「?」シクシク

紬「うふふ」フキフキ

梓「あ・・・」

紬「・・・これでよし、ね」

梓「ありがとう・・・ございます」

紬「そろそろ戻りましょうか」

澪「そうだな」

夏目「あ、みなさんに飲んで欲しいものがあるんです」

澪「ん?」

レイコ「これだ、ソーマという」

律「ソーマ・・・?」

夏目「旅の疲れを癒す栄養補給みたいなもので・・・」

唯「え〜、私たちまだ若いから要らないよ?」

夏目「・・・それもそうですね」

澪「私はいただくかな」

律「なんで?」

澪「明日のためにだ。くれないか、夏目」

夏目「ど、どうぞ」

紬「明日存分に遊べるのね・・・」フムフム

澪「・・・ごくり」

律「じゃ、私も」

紬「いただくわね」

澪「・・・ふむ。苦くも無く渋みも無く味すら無い・・・」

律「・・・効くのか、これ?」

夏目「はい」

レイコ「・・・ふぅ〜」

美弥「ほろ酔いといったところでしょうか」

静花「そうですわね、体がポカポカしてきましたわ」

菜々子「夏だけどな。おいしかったよ、ごちそうさま」

美弥「ごちそうさまでした」

レイコ「うむ。ただ酒だから気にするな」

舞佳「そろそろ帰るのかい? デザートをサービスしちゃうからもう少し待っててねん!」

唯「デザート!?」キラン
534 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 22:59:12.53 ID:V8xt5WPio

梓「すいません、最後に山葵リベンジさせてください」

舞佳「いいけど・・・。なににする?」

梓「締めですから・・・ひらめを」キリ

レイコ「わさびでムキになるとはな・・・」

梓「む・・・」カチーン

夏目「先生も山葵嫌いだろ・・・」

多軌「・・・そうなの?」

夏目「うん・・・。ネコ化しているから」

多軌「あぁ・・・なるほど」クスクス

律「ソーマとやらを飲んでも、大して変化はみられないな・・・」

澪「・・・うん」

紬「そうね・・・。少し体が重く感じたくらいかしら」

澪「っ!」ギクッ

舞佳「へい、ラストオーダーおまち!」

梓「どうもです。・・・どうぞ、先生も一貫食べてください」

レイコ「・・・いらん」

梓「澄ましている割りに臆病なんですね」

レイコ「なんだとぉ・・・?」ピキピキ

夏目「・・・ハァ」

レイコ「いいだろう・・・。ネコ娘に舐められていては高貴な私の品位が損なわれる」

梓「ネコ娘っていうな!」

多軌「・・・」

律「どうして敵意をむき出しにしているんだ・・・?」

菜々子「相性が悪いのかねぇ・・・」

静花「それとは違う気がしますが」

美弥「・・・そうですね」

紬「?」

舞佳「どうぞ、召し上がれ♪」   

梓レイコ「「 はむっ 」」

舞佳「アイスにメロン、プリンにゼリー♪」

唯「おぉ、デザートがベルトコンベアに乗せられて行くよ!」

梓レイコ「「 っ〜! 」」ツーン

律「どうやったらコンベアが動く仕組みなの?」

舞佳「あっちに自発用自転車があるから、それを漕ぐと回る仕組みなんだよ」

澪「すごく凝っている!」

レイコ「・・・ふぅ、大したことないな」

夏目「いや、涙目だぞ・・・先生・・・」

梓「乗り越えられましたよ、むぎ先輩」ウルウル

紬「それは・・・感動の涙なのかしら・・・?」
535 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 23:00:35.35 ID:V8xt5WPio

唯「りっちゃん」

律「ん?」

唯「涙の数だけ優しくなれるんだよ」フッ

律「・・・あ、ながれぼしだー☆」

唯「り、りっちゃん・・・無視はヤだよ・・・」シクシク

舞佳「いいよー!」

岩瀬「わっせわっせ」コキコキ

ウィーン

唯「おぉ、動いた動いた!」

夏目「ゼリーをいただきます」スッ

多軌「プリンを」スッ

紬「メロンを」スッ

澪「桃・・・を」スッ

律「あー、ゼリー取られたか・・・。じゃあミルフィーユを」スッ

唯「残っててよかった、アイス〜♪」スッ

菜々子「ヨーグルトだね」スッ

静花「ひよこ饅頭ですか・・・通ですわね」スッ

美弥「・・・イチゴを」スッ

レイコ「たい焼きか・・・」スッ

紬「あ・・・」

澪「梓のためにスルーしたのに・・・」

レイコ「・・・と、白玉ぜんざい」スッ

梓「ちょっ! 二つも取らないでください!」

レイコ「なんだ?」

梓「なんだじゃないですよっ! 私の分が流れてこないじゃないですか!」

レイコ「うるさいやつめ・・・」

梓「ぐっ・・・!」

夏目「誰がどうみても先生が悪いんだけど」
536 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 23:01:47.22 ID:V8xt5WPio

紬「あずさちゃん、メロン半分こしましょう」

唯「アイス半分どうぞ」

律「ミルフィーユ食べるか? 食べかけで悪いけど」

澪「桃もどう?」

梓「あ、ありがとうです・・・」

美弥「食べ終えたら戻りましょう、いい時間です」

静花「そうですわね」

菜々子「もうこんな時間か・・・あっという間だったなぁ」

舞佳「満足してくれたみたいだね、嬉しいよん♪」

ウィーン

紬「あずさちゃん、ベルトコンベアに乗せるわね」

梓「その手間はいらないと思いますけど・・・」

紬「それ」

ウィーン

レイコ「・・・」

梓「・・・それを取ったら本気で怒りますよ?」

レイコ「・・・そうか」

律「まだ漕いでるのか・・・大変だな」

紬「・・・うん」

澪「二人で屋台をしているって・・・いいな」

舞佳「いつからか私の胸の中にいて、どれだけの時間が流れてもね、私を支え続けてくれるの」

紬「・・・」

岩瀬「わっせわっせ」コキコキ

舞佳「頑張ってダーリン! 愛しちゃってるから!」

紬「っ!」ボフッ

澪「っ!!」ボフッ

律「っ!!!」ボフッ

唯「おぉ、三人の頭から蒸気が・・・!」

ウィーン

梓「来た来た・・・!」

多軌「おいしかった〜」

夏目「・・・」
537 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 23:01:48.35 ID:8e7KsyISO
色んなキャラが出てきて意味ワカメだわ
538 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 23:02:28.30 ID:V8xt5WPio

―――――ヴェガ


夏目「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

夏目(車掌さんはああいったけど・・・)

『秀輝さんは、変わられましたよ』

夏目(降りてしまうのかな・・・)

ヒノエ「浮かない顔をしているね」

夏目「・・・この列車の旅が終わりを迎えているから・・・かな」

ヒノエ「そうかい」

夏目「おやすみ」




7日目終了--------
539 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 23:15:53.86 ID:H5xgFCBAO
>>1乙です。
540 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 23:18:59.11 ID:V8xt5WPio
今日はここまでになります
読んでくださった方ありがとうございました!

残りは今日投下した量ですね。
終わりが見えてきました

>>537
ですよね

今回出てきた 九段下舞佳
http://s1.gazo.cc/up/s1_8263.jpg

次回出てくる エリサ・D・成瀬
http://s1.gazo.cc/up/s1_8264.jpg

上がときメモ2で下が4
エリサで最後です


おやすみなさいませ
541 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/13(火) 23:30:21.25 ID:f0FPHejbo
おつ
タキが相変わらず可愛い
542 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 09:27:49.33 ID:21hAZvaAO
乙です
けいおん推しすなあ…まあ楽しいから良いか
543 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage ]:2011/12/14(水) 10:50:42.54 ID:DcW5z8G+o
お嬢様特急わからない人はニコニコ動画いってこい
無いものはないってくらい充実してるから
車掌さん私服や店員さん達は必見だぞ
544 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 11:05:06.27 ID:eAtPkjQIO
                ハ        _
    ___         ‖ヾ     ハ
  /     ヽ      ‖::::|l    ‖:||.
 / 聞 え  |     ||:::::::||    ||:::||
 |  こ ?  |     |{:::::‖.  . .||:::||
 |  え      |     _」ゝ/'--―- 、|{::ノ!
 |  な 何   |  /   __      `'〈
 |  い ?   ! /´   /´ ●    __  ヽ
 ヽ      / /     ゝ....ノ   /´●   i
  ` ー―< {           ゝ- ′ |
        厶-―    r  l>        |
      ∠ヽ ゝ-―     `r-ト、_,)      |
      レ^ヾ ヽ>' ̄     LL/  、   /
      .l   ヾ:ヽ ` 、_      \\ '
     l    ヾ:ヽ   ト`ー-r-;;y‐T^
      |    ヾ `ニニ「〈〉フ /‖. j
545 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 13:46:15.34 ID:856Uca4DO
これいつものグダグダの人?
546 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 21:56:35.70 ID:8K9q6e8So
>>544
やめてください
どうでもいい話ですけが、リアルタイムで大倉都子(ときメモ4)を攻略していたので、ウサギのaaに身がすくみました
コワイヨコワイ。ウサギサントイッショ(ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm11907056

>>543
ニコニコのお嬢様は凄いですよね。見たことの無いイベントが結構あって驚きました

>>542
できるだけバランスよくしたつもりだったんですけど・・・。夏目チームは大人しくなってしまいます


今日中には終わると思いますので、もうしばらくお付き合いくださいませ
547 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 21:58:05.91 ID:8K9q6e8So

8月14日



紬「永遠に続く二人の関係・・・」

梓「それはどんなに幸せなことでしょう・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

唯「ふぁあ〜・・・」

紬「そういう人を見つけられたらいいわね〜」

梓「そうですね〜」

澪「さて、そろそろ移動したいんだけど・・・」

律「あれ、むぎと梓の会話に乗らないのか?」

澪「・・・そういうのは卒業したんだ」

律「ウソ吐くなよ」

澪「ウ、ウソじゃないぞ」

律「澪も憧れているんだろ」

澪「・・・ふんっ」

多軌「おはようございます」

澪「おはよう、ゆっくり眠れた?」

多軌「はい、ぐっすりと眠れました。澪さんはどうですか?」

澪「昨日夏目から貰った薬・・・なのかな、アレを飲んだおかげか体が軽くなったよ」

律「ソーマな。効き目バツグンだなー」

唯「・・・そなの?」

多軌「唯さんは眠たそうですね」

唯「うん・・・」ネムネム

澪「タキ、夏目は?」

多軌「そろそろ降りてくると思うんですけど」

律「えーっと、今日の予定は、とりあえず海の中道でイルカショーを見て」

澪「宇宙テーマパーク! スペースワールドだっ!」

律「今からそんなテンションで大丈夫かよ・・・」

澪「最後の観光都市なんだぞ!」

律「はいはい。むぎと梓はまだ語り合ってんのか・・・?」

多軌「?」

唯「愛についてだよ」
548 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 21:59:56.69 ID:8K9q6e8So

梓「比翼連理ですか・・・」

紬「言葉そのものといった感じだったわ」

梓「どういう意味を持っているんですか?」

紬「雄雌それぞれ目と翼が一つづつなのね」

澪「ヒィッ!」

紬「怖い話じゃないのよ、澪ちゃん」

澪「そ、そうなのか・・・?」

紬「えぇ。常に一体となって、お互いの翼で飛ぶ空想上の生き物なの。
  男女の仲が睦まじい例えよ」

澪「・・・おぉ」

梓「ふむふむ」

多軌「昨晩に出会った二人のことですね」

紬「そうなの」

多軌「憧れますよね」

律「タキは素直だな」ウンウン

澪「・・・」

律「それはそうと、どうして駅前に集合なんだよ?」

多軌「あ、えーっと・・・。待ち合わせみたいでいいかなぁと・・・」

律「またホームに戻るから二度手間なんだけども」

多軌「す、すいません・・・」

澪「?」

律「まぁ、待ち合わせって点ではいいかもな」キラン

澪「なにか企んでいるな・・・」

唯「あ、貴志くん来たよ〜」

夏目「・・・お待たせしました」

律「今来たところだから、気になさらないで」

夏目「? そうですか」

律「さ、行きましょう」ウフフ

夏目「え、えっと・・・?」

レイコ「・・・わざわざ姿を変えなくてもいいだろう」ブツブツ

多軌「ニャンコ姿では色々と・・・」

レイコ「ふぅ・・・めんどうだな・・・」

律「まぁ! 夏目さんその人は誰よ!」

レイコ「む?」

夏目「?」

律「私というものがありながら・・・!」

梓「律先輩はなにをしているんですか?」

澪「小芝居だ。ヒマなんだろう」

紬「・・・なるほど」
549 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:01:02.02 ID:8K9q6e8So

律「夏目さんは私のものよ!」

夏目「・・・」

澪「よく顔を見ろ、姉弟以外にどう映るというんだ」

唯「貴志くん・・・」ポロッ

バサッ

梓「唯先輩までこの小芝居に・・・」

紬「観光ガイド落としたわ」ヒョイ

律「新たな女ね! どういうこと!?」

唯「どういうことなの!?」

夏目「今日も夏の空が高くて爽やかなので・・・」

澪「回答がおかしい」

律「なんてこと・・・!」

唯「夏だからってそんな・・・!」

レイコ「んー・・・!」ノビノビ

唯「今すぐ決めて欲しいよ! この三人の中から誰を選ぶの!?」

律「・・・飽きたな」

唯「そうだよ! 飽きる前に・・・え?」

律「すまん、ここからどういう展開に持っていけばいいのか分からん・・・」

唯「えー・・・」

梓「唯先輩、色々と損をしましたね」

澪「・・・」ハァ

紬「まぁ、そうなの」ニコニコ

風音「はい。楽しかったですよ」

ピノ「ピピッ」

梓「風音も揃いましたね」

澪「あとは・・・」

律「そーだ、アイツにも同じようにやってみようぜ」

唯「今度は途中で止めたらダメだよー?」

律「というか、誰を選ぶかまでだな」

唯「おっけ〜」
550 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:01:45.90 ID:8K9q6e8So

レイコ「・・・」

夏目(・・・あ、来た)

秀輝「お待たせ〜」

律「お気になさらないで」ウフフ

秀輝「・・・」

唯「秀輝くん・・・! おでこの広いその人は誰なの・・・?」ポロッ

バサッ

多軌「・・・」ヒョイ

秀輝「行こうぜ、夏目」

夏目「あぁ・・・」

律唯「「 負けたっ!? 」」

澪「小芝居だと気づいた上でスルーだ」

梓「さすがですね・・・」

紬「うふふ」

澪「似合わないぞ、律」

律「今更そのツッコミですか!!」
551 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:02:43.13 ID:8K9q6e8So

―――――海の中道・マリンワールド


レイコ「帰らないのか?」

秀輝「うん。・・・最終駅に着いてなにがあるわけでもないけど
   これだけは途中で降りちゃいけない気がする」

レイコ「・・・」

秀輝「ありがとな、夏目」

夏目「え?」

秀輝「誘ってくれなかったら、今日は一人でブラブラしているだけだった
   文字通り一人ぼっちだ」

夏目「・・・そうか」

秀輝「北上さんは降りてしまったけど、俺の結末は中途半端になりそうだけど、
   ここで帰るのはやっぱ違うからな」

夏目「・・・うん」

チャーララチャラ♪

レイコ「なんだ?」

秀輝「イルカショーの始まり〜」

夏目「みんな、前の席に座っているけど・・・。先生は行かないのか?」

レイコ「・・・行くか、ガキじゃあるまいし」フンッ

552 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:04:02.23 ID:8K9q6e8So

紬「わくわく」

『みなさんこんにちは〜!』

律唯紬「「「 こんにちはー! 」」」

『うふふ、最前列のお姉さん達は元気いっぱいですね〜!』

律「あはは、いやいや〜」テレテレ

唯「元気だよ〜」テレテレ

紬「元気で〜す」テレテレ

アハハハハ

澪「・・・っ」カァァ

梓「せ、先輩方・・・注目を集めてます・・・」カァァ

多軌「う・・・っ」カァァ

風音「・・・始まるんですね」ウキウキ

紬「風音さんも楽しみなのね」ウキウキ

ピノ「ピッ」

風音「はいっ! 家は木に囲まれた山でしたので、とても新鮮です!」

多軌「あっ、目の前の台にイルカが!」

梓「うわっ!」

唯「お、おぉ! 大きいよ!」

律「すっげえ」

イルカ「キュキュイ」

『みなさん、応援よろしくお願いしま〜す!』

紬「頑張れ〜」パチパチパチ

唯「ふぁいと〜」パチパチパチ

梓「華麗に泳ぎますね」

律「見ろっ! あっちにいたと思ったらもうあっちにいる!」

澪「あっ・・・! うわ!」

多軌「凄いジャンプ力・・・!」

唯「ふぉぉ・・・!」

風音「気持ちよさそう・・・!」

ピノ「ピピッ」
553 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:04:52.84 ID:8K9q6e8So

レイコ「あんなにはしゃげるか」

夏目「・・・そうだよな」

秀輝「あはは」

レイコ「・・・」

夏目「すごいな、水の中を泳ぐスピード」

秀輝「広大な海の中を泳ぐと気持ちがいいだろうな」

レイコ「皮肉か?」

秀輝「いえいえ、ここにいるイルカはみんなから応援されて、飼育員のお姉さんから愛されてる。
   羨ましいだけですよ」

レイコ「クク、つまらなくなったなおまえ」

秀輝「・・・そうですか」

夏目(そういいながら面白がっているじゃないか・・・先生・・・)
554 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:05:56.91 ID:8K9q6e8So

――・・・


梓「海へ行きましょう」

律「なにを言い出した、この子」

多軌「どうして?」

梓「泳ぎたいから!」キラキラ

澪「ダ、ダメだぞ梓っ!」

梓「今なら・・・! こう! スイスイ泳げそうなんですよ!」

唯「気のせいだよ、あずにゃん」ポン

多軌「イルカに魅せられた少女・・・」

風音「それでは、私はこれで・・・」

ピノ『失礼しますわ』ピピッ

紬「残念ね・・・」

風音「誘ってくれてありがとうございました」ペコリ

紬「・・・うん。ゴロウちゃんによろしくね」

風音「はい」

夏目「・・・」
555 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:07:43.28 ID:8K9q6e8So

―――――スペースワールド


澪「おぉ・・・! おぉー!!!」キラキラキラキラ

律「さて、海に行くか」

梓「なにを言っているんですか、ここまできて」

律「・・・こんにゃろ!」グリグリ

梓「いたたた!」

唯「わたし達ね、東京の後楽園と、名古屋のスパーランドにも行ったんだよ〜」

多軌「・・・そ、そうですか」

紬「あら、タキちゃん・・・もしかして」

多軌「な、なんでしょう・・・?」

澪「遊園地に来たの初めてなのか!?」キラキラ

多軌「は、はい」

秀輝「へぇー、それじゃ新鮮な体験ができて楽しめるね」

律「なんだこのポジティブは」

秀輝「今の俺はポジティブでいなくちゃいけないんだよ」

律「・・・そうだな」

秀輝「しんみりさすな」

夏目(もちろんおれも初めてなんだけど・・・)

夏目「先生は来たことある・・・わけ無いよな」

レイコ「興味ない」フンッ

多軌「ちょっと・・・ドキドキするな・・・」ドキドキ

澪「か、かわいい」キュルルルリン

梓「さ、行きましょう」

律「あっちに案内板があるぞ」

唯「楽しみだよ〜」ルンルン

スタスタ

紬「・・・」キョロキョロ

秀輝「琴吹さん?」

紬「は、はい?」

秀輝「どうしたの? もうみんな行ってしまったけど」

紬「静花さんたちはまだ来ないのかなって・・・」

秀輝「昼過ぎに合流だから、まだ来ないと思うよ」

紬「・・・そうよね」

秀輝「あのさ・・・」

紬「うん・・・?」

秀輝「その・・・、えっと・・・」

夏目(秀輝・・・?)

紬「?」
556 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:09:22.44 ID:8K9q6e8So

秀輝「俺と琴吹さんは稚内から乗ってるでしょ?
    もうそろそろこの旅も終わりを迎えるわけで・・・」

紬「・・・うん」

秀輝「どう・・・思っているのかなって・・・」

紬「どう・・・?」

秀輝「この旅の轍を振り返って・・・さ」

紬「・・・」

夏目(琴吹さんと秀輝の二人だけなんだ・・・。この長い旅をしてきたのは)

秀輝「・・・」

紬「まだ、分からないわ」

秀輝「・・・そっか」

紬「大村さんは?」

秀輝「正直、俺も同じ」

紬「うふふ」

秀輝「あはは、ごめんね、変なこと聞いて」

紬「ううん。・・・でもね」

秀輝「?」

紬「りっちゃんが教えてくれたことがあるの」

秀輝「律が・・・?」

紬「『ヴェガに乗車した人たちとティータイムが過ごせたんだ』って」

夏目(それは中野も言っていたこと・・・)

紬「私、紅茶の淹れ方を教えてくれた人を忘れてしまったの」

秀輝「・・・」

紬「その人のおかげで、この旅をより深く楽しめることができて
  より一層輝かしい想い出にしてくれたの」

夏目「・・・」

紬「小さい頃の想い出だけど、とても大切なのに私は忘れてしまっているの・・・。
  それはとても悲しいことだと思っていた」
557 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:10:42.85 ID:8K9q6e8So

秀輝「思っていた・・・んだ・・・」

紬「うん。あずさちゃんが言ってくれたの
  『変わった自分がそこにいるのなら、忘れたことにはならない』」

夏目(今ならその言葉の意味が分かるかもしれない)

紬「思い出せなくて、胸を少し痛めるけど・・・。
  この旅の中で過ごした時間はかけがえの無いものには変わりないの。
  だから・・・。その宝物を大事に持っていれば、きっといつか・・・その人と出会える気がする」

秀輝「!」

紬「ちゃんと終わりまで前を向いていきたいの。
  だから、もう少しだけよろしくね、大村さん」

秀輝「・・・うん」

紬「うふふ」

夏目(敵わないな・・・)

梓「どうしたんですか?」

紬「なんでもないの、なにに乗るか決まった?」

梓「それが・・・、唯先輩と澪先輩が対立してしまって」

紬「あらあら」

梓「むぎ先輩も加わってください」

紬「うん!」

テッテッテ

秀輝「・・・」

夏目「・・・なぁ、秀輝」

秀輝「・・・ん?」

夏目「琴吹さんにそれを教えたのって・・・」

秀輝「態度で分かるよな・・・」

夏目秀輝「「 静花さんだ 」」
558 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:12:10.93 ID:8K9q6e8So

唯「ギャラクシーシアターだよっ!」

澪「ヴィーナスGPも捨てがたいんだっ!」

唯「それは後回しにしようよ!」

澪「待ち時間がもったいないんだ!」

律「じゃあ中間をとって、エイリアンパニックエボリューションにしようぜ」

澪「映画なんて後でいいじゃないか!」

唯「ジェットコースターも後でいいよ!」

律「無視すんなよ!」

梓「こうなっているんです」

紬「まぁ・・・」

多軌「スペース・アイっていいなぁ」

澪唯「「 観覧車だぞ(だよ)! 」」

多軌「ッ!」ビクッ

律「脅すなよ」

唯「あずにゃん行こう!」グイッ

梓「え!?」

澪「行くぞ、むぎ!」グイッ

紬「あら!?」

唯「りっちゃんも行くよ!」グイグイ

梓「むぎせんぱ〜い!!」ズルズル

律「へいへい」

澪「りつ!?」

律「いや、どっちかっていうと・・・な」アハハ

澪「りつ・・・!」

レイコ「・・・」

多軌「えっと・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

澪「みんな、ワガママを言って場を乱してしまった・・・ごめん・・・」ションボリ

紬「わ、私は澪ちゃんと一緒にヴィーナスを選ぶわ!」

多軌「わ、私も!」

澪「・・・う、うん!」

秀輝「俺は平沢さんに伝えてくるから、また後でここに集合な」

夏目「あ、あぁ・・・」

秀輝「俺もシアター行って来る!」

タッタッタ

澪「夏目は?」

夏目「あ、えっと・・・一緒に行きます」

澪「そ、そうか・・・」

レイコ「・・・」
559 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:15:11.15 ID:8K9q6e8So

夏目「おれも遊園地は初めてなので・・・」

澪「最初に絶叫系に乗っても大丈夫かな?」

夏目「・・・どうでしょう」

多軌「・・・」ドキドキ

レイコ「・・・ふぁ」

紬「お姉さんは緊張していないみたいね」

レイコ「所詮人間が作ったものだ、たかが知れてる」

澪「おぉ・・・」

紬「た、たしかに・・・」

夏目(また危ない台詞を・・・!)

「次の列の方どうぞー!」

夏目「ちょっと緊張してきた・・・」

澪「スリルも楽しまなきゃ損だぞ!」

夏目「は、はい」

多軌「・・・ッ!」ドキドキドキドキ

レイコ「・・・」

紬「・・・この緊張感がいいのよね」ゴクリ

「それでは安全バーを降ろしまーす!」

シュー

レイコ「なんだこれは」

夏目「これで体を固定するんだな・・・」

多軌「心臓が・・・っ!」バクバク

プルルルルルルル

澪「発車だ!」キラキラ

ガシャンガシャン

レイコ「なんだ、この程度の高さか」

澪「え!?」

夏目(先生は空を翔けることが出きるからな・・・。けど、スピードは慣れていないはず・・・)ゴクリ

紬「タ、タキちゃん・・・大丈夫?」

ガシャンガシャン

多軌「こ、怖いです・・・!」バクバクバクバク

紬「怖かったら隣にいる夏目さんに頼っていいのよ!」

夏目「え!?」

澪「落ちるぞ!」ワクワクキラキラ

ゴォォォォオオオオオオオオオオオ

560 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:17:58.61 ID:8K9q6e8So

「ありがとうございましたぁー」

澪「楽しかったぁ」キラキラ

レイコ「ふむ。こんなものか」

多軌「ご、ごめんね・・・夏目くん・・・」

夏目「い、いや・・・」

紬「録画」ジー

多軌「手・・・痛くなかった?」

夏目「大丈夫だけど・・・握力あるな、タキは」

澪「デリカシーに欠けてるぞ夏目!」バシッ

夏目「いつっ!」

澪「爽快感がクセになるな・・・。夏目はどうだった?」キラキラ

夏目「えっと・・・」

秀輝「おーい!」

梓「むぎせんぱ〜い!」

紬「あ・・・」

唯「・・・」

澪「唯・・・」

唯「ごめんね・・・澪ちゃん・・・」

澪「私もムキになって・・・悪かった・・・」

律「楽しかったみたいだな、そっちは」

レイコ「大したものじゃなかったけどな」

律「お姉さんはそんな感想か・・・」

紬「りっちゃんたちはどうだった?」

律「普通だった・・・」

唯「・・・うん。普通だったよ」

秀輝「普通だな」

梓「楽しんでいたの私だけですか!?」

夏目「よかったじゃないか」

梓「まぁ・・・うん・・・。それはそうと、タキの様子が変だけど・・・?」

多軌「・・・え、えっと」
561 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:18:47.98 ID:8K9q6e8So

律「夏目はどうだったんだよ、楽しかったか?」

夏目「初めてのアトラクションだったけど、平気みたいです」

律「ふーん・・・。つまらない感想だな」

夏目「」ガーン

秀輝「初めての感想がそれじゃあな・・・」

澪「次は唯が決めてくれ」

唯「いえいえ、澪さんがお決めなさってくだせえ」

澪「いやいや」

唯「いえいえ」

律「それじゃ、エイリアンパニック」

澪「むぎが決めてくれ」

唯「そうだね」

律「無視すんなってば!!」

紬「いい時間だからお昼とらない?」

レイコ「よし、そうしよう」
562 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:20:29.93 ID:8K9q6e8So

唯「おいしぃね」

澪「うん。もぐもぐ」

梓「さっきからタキの様子が変なんですけど、余程怖かったんでしょうか?」

紬「そういうのじゃないのよ、あずさちゃん」キラン

律「どういうのなんだ・・・?」

多軌「・・・」モソモソ

秀輝「・・・」

レイコ「ずるずるっ」

夏目「周りの目を気にしてくれ先生・・・」

梓「えっ!? 夏目とタキが手を」フガッ

紬「あずさちゃん! 声が大きいわ!」

梓「ふぐぐ」

律「ほほぅ」キラン

秀輝「・・・くっ」

律「秀輝・・・元気出せ・・・」シクシク

秀輝「優しさって残酷だよな・・・失恋した心が痛いよ」シクシク

律「知っててやってんだよ」

秀輝「鬼かおまえは」

律「へへっ」

秀輝「まぁ・・・楽ではあるけどさ」

夏目「?」
563 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:23:04.85 ID:8K9q6e8So

多軌「・・・」チラッ

夏目「もぐもぐ」

梓「いい感じで意識していますね」ウキウキ

紬「そうね」ワクワク

レイコ「食堂車ほどではないが、うまいな」

澪「はい、おいしいですね」モグモグ

律「早く食べ終えてアトラクションに乗ろうと真面目に食べてるな澪は・・・」

紬「なんだか、焦れったいわね・・・」

梓「そうですね! どうしましょう!」

「梓弓 引かばまにまに依らめども 後の心を知りかてぬかも――」

紬「?」

「エリサ・・・それ高校の時にも言っていたよね」

エリサ「おめさ、覚えているっちゃ!?」

「・・・う、うん。懐かしいけど、どうしたのいきなり」

エリサ「そっちにいる二人さ見てたら急に思い出したっちゃ。は、恥ずかしいべ」カァァ

「?」

紬「すいません、今の和歌ですよね。二人とはもしかして」チラッ

多軌「・・・」モソモソ

夏目「・・・」モグモグ

レイコ「ん?」

紬「・・・ですよね?」キラン

エリサ「そうだっちゃ。きっといい関係にちがいね」

梓「むぎ先輩、今の訳を教えてくれませんか?」

紬「えっと・・弓を引くように・・・・」

エリサ「今訳をしてはいけないっちゃ!」アセアセ

紬「?」

「エリサ・・・?」

エリサ「な、なんでもね。時間さもったいねえから、次行くべ」

「う、うん・・・」

エリサ「私たちはこれで、失礼するな」

紬「は、はい」
564 :エリサの出番オワリ [sage]:2011/12/14(水) 22:25:59.12 ID:8K9q6e8So

梓「・・・金髪で訛りがあり、和歌を詠むなんてとても輝いてますね」

唯「あの方言は仙台弁だね」

夏目「どうして知っているんですか・・・?」

唯「仙台で聞いたんだよ〜」

秀輝「あの人は、なんだか心が大和撫子って感じだ」

律「うむ。カップルか、昨晩の二人を彷彿させるな」

澪「・・・うん」

多軌「伝説かぁ・・・」

夏目「今の訳ってなんですか・・・?」

紬「タキちゃん、りぴーとあふたーみー」

多軌「は、はい・・・?」

澪「夏目は心して聞くように」

夏目「?」

紬「――。」ゴニョゴニョ

多軌「梓弓 引かばまにまに依らめども 後の心を知りかてぬかも――」


  弓を引くように、本気で私を引っ張ったなら、お誘いのままに靡きましょうけれど、

  一度許したのち、あなたの心はどうなるか、私には判りかねます。
565 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:27:43.82 ID:8K9q6e8So

秀輝「――という万葉集の和歌だ」

夏目「それとタキとどう関係があるんだ・・・?」

秀輝「トウヘンボクめ・・・!!」

夏目「・・・」

秀輝「おっと、馬に蹴られてなんとやらだな。・・・なんでもない」

夏目「・・・?」

紬「静花さん! こっちです!」

律「姉御ー!」

静花「待たせてしまいましたか?」

紬「いえいえ、アトラクションに乗って遊んでいましたから気になりませんでした」

菜々子「お待たせ、楽しんでる?」

律「もちです。これからも楽しむんですぜ!」

多軌「・・・」

梓「タキ、どうかしたの?」

多軌「え? どうして?」

梓「言葉数が少なくなっているから・・・」

多軌「そ、そうかな・・・」

梓「・・・うん」

多軌「な、なんでもないよ」

梓「相談してくれない・・・・・・!」

紬「あずさちゃん、焦りは禁物よ」

梓「そうですね」

レイコ「どうでもいいが、次はなにに乗るんだ?」

夏目「楽しんでるのか、先生!?」
566 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:32:10.09 ID:8K9q6e8So

――・・・


静花「久しぶりに遊び通せることができて楽しかったですわ」

紬「私も楽しかったです」

静花「そうですか、それはよかったです」

紬「うふふ」

夏目「・・・」

秀輝「思い出しているような気がするけど・・・」

律「どうだろうな・・・」

夏目「律さんも気づいていたんですか?」

律「まぁな・・・。静花さんとむぎを見ていると、むぎと梓の間にあるものを連想してしまうんだ」

秀輝「・・・」

律「だから、あの二人が繋がっていると確信しているんだけど・・・」

夏目「・・・」

梓「伝説を創りましょう」

唯「なにを言い出すの、あずにゃん」

澪「これから大観覧車に乗るんだけど・・・」

律「そろそろ私たちの番なんだけど・・・」

菜々子「もうすぐ日没になるんだけど、この状況で伝説を創るって?」

梓「そうです。今がとてもいい時間帯なので創造するにはうってつけです」キリ

紬「いいわね」キリ

律「楽しそうだけど、その心意気はなんなんだよ」

レイコ「もぐもぐ」

夏目「先生、ゴミをそのまま捨てないでくれよ」

唯「・・・ふぁあ」

澪「唯、疲れたか?」

唯「うん〜・・・、ちょっとだけ・・・」
567 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:33:49.06 ID:8K9q6e8So

梓「大観覧車の頂上にさしかかったその時、二人を包む夕陽の中、
  告白して生まれたカップルは〜ってどうですか?」

静花「どうですかって・・・言われましても・・・」

紬「採用です」

梓「ありがとうございます」

澪「たった今、伝説が生まれたのか」

律「こんなインスタント風でいいのかよ・・・」

秀輝「もっとこう・・・なんていうか・・・」

「次の方どうぞ〜」

唯「はいよ〜! 行くよあずにゃん!」グイッ

梓「ちょっ! 待ってください!」

タッタッタ

澪「私も一緒に乗ってくる。むぎ、頼むな」

紬「任せて」キラン

秀輝「なるほどね」

「次の方どうぞー」

秀輝「先生、俺と乗りましょう」

レイコ「ん?」

律「待ておまえ! 失恋中だろ!」

秀輝「それを大声で言うな!」

レイコ「まぁいいだろう」

紬「まぁ・・・! 予想外の展開!」

「次の方〜」

紬「はーい。行きましょう静花さん、菜々子さん」

静花「・・・邪魔ですわね」ジロ

菜々子「・・・おまえがな」ジロ

律「私を置いてくなよ〜!」

タッタッタ

多軌「あはは、大丈夫かな」

夏目「あれ? 後はおれたちだけ・・・だな」

多軌「え・・・! ほ、ほんとうだ・・・!」

「次の方どうぞ〜」

568 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:38:59.08 ID:8K9q6e8So

――

梓「よし、うまくいった!」グッ

澪「・・・」

梓「大村さんが先生と一緒に乗ってくれて助かった」シメシメ

澪「・・・なぁ、梓」

梓「は、はい」

澪「どうしてそんなに夏目とタキを・・・?」

梓「そ、それは・・・」

澪「?」

梓「どうしてでしょうね・・・?」

澪「応援したいだけじゃないの?」

梓「あ、あれ・・・。どうしてだろう」ハテサテ

唯「」スヤスヤ




――

秀輝「話を聞いた限りじゃ、つり橋効果っぽいけど・・・ま、いいか」

レイコ「・・・」

秀輝「ヒノエって妖は来ていないんですか?」

レイコ「あぁ・・・。ヤツは列車で大人しくしているさ」

秀輝「・・・一人で」

レイコ「・・・ふん」

どろん

先生「このまま降りたらどうなるか」ニャフフ

秀輝「夏目が怒ると思う」




――

静花「手を握っていたんですか?」

紬「はい。バッチリと」キラン

菜々子「へぇ〜、夏目とタキちゃんがねぇ」

律「それがきっかけになるんなら・・・いいのかな」

569 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:40:50.86 ID:8K9q6e8So

――


夏目「タキ・・・?」

多軌「な、なにかな?」

夏目「落ち着かない様子だから・・・」

多軌「え、えぇと・・・」

夏目「・・・」

多軌「・・・」アセアセ

夏目「綺麗だな」

多軌「え、あ・・・夕陽ね・・・。うん、綺麗」

夏目「・・・」フゥ

多軌「どうしたの?」

夏目「なんていうか、色々振り回されてて・・・。少し大変だ」

多軌「軽音部のみんなに、だよね・・・?」

夏目「うん・・・」

多軌「・・・」

夏目(この大変さに慣れてしまったら・・・)

多軌「ねぇ、夏目くん」

夏目「?」

多軌「どうして大村さんの記憶はそのままなの?」

夏目「先生が妖だってこと?」

多軌「・・・うん」

夏目「秀輝はそれを誰かに言うことはないからだよ。
   第三者の陰口とか、噂話には一切興味を持たないんだ」

多軌「・・・」

夏目「相手がどういう人なのかを自分で判断しているから、そう思える」

多軌「もう、親友みたいだね」

夏目「・・・どうかな。おれと秀輝が似ているからだと思う」

多軌「?」

夏目(『見えない』なにかに怯えていたんだ、おれも秀輝も)
570 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:46:50.66 ID:8K9q6e8So

多軌「・・・」

夏目「・・・」

多軌「・・・太陽が沈み始めたね」

夏目「一日が終わるんだな」

多軌「ふふっ、初めての遊園地だけど、とても楽しかった」

夏目「・・・うん」

多軌「最初に乗った絶叫マシンが印象強いけど、ウォーターアトラクションも楽しかったね」

夏目「あぁ、惑星アクアだっけ。定員が10名だから秀輝がじゃんけんに負けて乗れなかったヤツ」

多軌「そうそう。ニャンコ先生が一番楽しんでいたからみなさん驚いてて」クスクス

夏目「人間社会に溶け込んでいたよな」

多軌「水も少しかかって」

夏目「夏だから、ちょうどよかったよな」

多軌「・・・・・・うん」

夏目「・・・」

多軌「そろそろ太陽が見えなくなるね・・・・・・」

夏目「・・・・・・あぁ」

夏目(明日のこの夕陽を見る頃には・・・)

多軌「ここが頂上なんだね」

夏目「結構高いんだな」

多軌「・・・うん。遠くまで見渡せる」

夏目「あぁ・・・遠くまで・・・」

多軌「ちょっと大人になったみたい」

夏目「え?」

多軌「夏目くんが・・・。遠くを見つめる目に期待と力強さが宿っていた・・・気がする」

夏目「・・・」

多軌「だ、だから・・・そんな・・・夏目くんが・・・」ドキドキ

夏目「・・・」ジー

多軌「あ、あれ・・・? わ、私ったらなにを・・・言おうとしていたんだろう」ドキドキ

夏目「タキ・・・」ジー

多軌「な、なに!?」

夏目「あれ・・・ニャンコ先生だよな・・・」

多軌「・・・え?」
571 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:47:39.39 ID:8K9q6e8So

――

先生「おぉーい、にゃつめぇー」フリフリ

秀輝「この角度なら上のゴンドラにいる琴吹さんたちには見られないよな」ハラハラ

先生「二人ともびっくりしておるわ」ニャフフ

秀輝「いや、・・・夏目の形相が・・・やばい」



――

夏目「せんせい・・・!」ゴゴゴゴゴ

多軌「・・・」フゥ

572 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:49:26.79 ID:8K9q6e8So


ガチャ

「ありがとうございました、足元に気をつけてお降りください」

梓「どうもです」

唯「どうして起こしてくれなかったの〜」シクシク

澪「・・・悪かった」

梓「ちょうどタキたちのゴンドラが頂上に差し掛かった時が伝説の時でぴったりです!」

唯「なに言ってるか分からないよ」シクシク

澪「・・・ほら、通行の邪魔だから」



ガチャ

「ありが――」

レイコ「・・・大したこと無いな」

「――とうございました」ガーン

秀輝「お、俺は楽しかったですよ、このアトラクション」

「またどうぞー!」

秀輝「なんでフォローしているんだろう」



ガチャ

「ありが――」

菜々子「お前が凝視しているからタキちゃんと目が合ったんだよ!」

静花「まぁ! 自分のことは棚に上げてよくもそんなことが言えますわね!」

紬「まぁまぁまぁまぁまぁ」

律「あはは・・・」

「ございましたー・・・」



ガチャ

「ありがとうございました」

夏目「どうも」

多軌「・・・」ペコリ

「・・・くっ」

「おいこら、新入り真面目にやれ」

新「今日で何組目のカップル誕生っすか!」

「それは後で聞いてやるから、な?」

新「うぅ」シクシク

「あの二人は丁度いい時間帯だったな」

新「こんなに効き目があるジンクスなんすね」

「雰囲気に流されそうになるんだと。いいから仕事しろ!」
573 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:50:38.72 ID:8K9q6e8So

澪律「「 タキ! 」」

紬「おいでおいで」

梓「・・・」ニンマリ

多軌「?」

タッタッタ

唯「ん〜・・・、変な夢見ちゃったよ」

秀輝「どんな?」

唯「どんぶらこと川に流される夢だよ」

秀輝「それは変だね・・・」

夏目「静花さんたちがこっちを見ていたから助かったものを・・・!」

レイコ「見られていないならそれでいいではないか」フンッ

静花「ごらんなさい、菜々子さん。あの星があなたの明日を悪い方へ導いてしまうのですわ」

菜々子「あぁそうかい、それじゃあ今すぐ砕かないとねぇ」

秀輝「なにかを、ごまかしてます?」
574 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:52:58.87 ID:8K9q6e8So

律「どうなった?」ワクワク

澪「うんうん」キラキラ

紬「うふふ」

多軌「なにが・・・ですか?」

梓「伝説は成就された?」

多軌「伝説ってなに?」

梓「・・・・・・・・・・・・あれ」

律「おい、中野・・・。タキに話していないんじゃないのか・・・」

梓「あ・・・・・・」タラタラ

紬「冷や汗かいてるわ・・・。そうなのね」

梓「・・・はい。忘れていました」

律「うわ、伝説を創った意味がねえ・・・」

澪「もう一回乗ろうか」

律「もう日が沈んだぞ」

多軌「???」

梓「輝く星空の下〜ってのはどうですか?」

紬「採用です」

律「伝説の安売りすんな!」

澪「はぁー・・・」

多軌「伝説って・・・もしかして、私と夏目くんがそういう雰囲気になると・・・?」

紬「そうです」

多軌「・・・だから私たちを見ていたんですね・・・?」

律「ぴぃ〜ぷぅ〜」

紬「えっと、あの星の位置関係からすると・・・明日の運勢は悪くないわね」

澪「いつから占星術が使えたんだ、むぎ・・・」

多軌「・・・」
575 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 22:55:24.34 ID:8K9q6e8So

紬「で、でもゴンドラ内の雰囲気は悪くなかったわ」

律「そうだそうだ!」

梓「開き直りましたね」

多軌「私と夏目くんは・・・友達ですよ?」

梓「な・・・」

澪「・・・なんですと」

多軌「私はただ、夏目くんの力になりたいだけなので・・・」

紬「力?」

多軌「あ、えっと・・・。地元では色々と大変なんです。だからその手助けになりたくて」

梓「・・・」

律「・・・マジか」

多軌「・・・はい。今はそういう関係にはならないとハッキリしました」

紬「ほほぅ」キラン

澪「そうか・・・」

律「そんなら、これ以上とやかく言う権利はないな」

梓「支えていると思うよ」

多軌「え・・・?」

紬「ヴェガに戻りましょうか」

梓「そうですね。充分遊びましたことですし」

律「さぁーてと、夕ご飯はどこで食べるべさー」

澪「そういえば、結局ラーメン食べてないな・・・」

紬「屋台でラーメンね」キラン

梓「いいですね! こってりラーメン希望です!」

多軌「梓・・・ひょっとして・・・」

梓「なに?」

多軌「・・・ううん、なんでもない」
576 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:30:58.02 ID:8K9q6e8So

―――――中州


「はいよっ、お待ち!」

律「うんましょー」ジュルリ

澪「しょー、だって」プクク

律「な、なんだよー」

澪「いや、相当お腹空いているんだと思ってな」

律「ふんっ」

静花「つむぎさん、お箸を・・・」

紬「はい、どうぞ」

静花「これは爪楊枝ですわ」

紬「・・・」ションボリ

静花「え・・・?」

菜々子「ひねりのないツッコミ入れてんじゃないよ」

秀輝「まったくですよ」

梓「どうぞ」

秀輝「これお箸だよね・・・」

梓「・・・」

律「ひねりがないな・・・、見損なったぜ秀輝・・・」

秀輝「敢えてボケろと・・・!」グサッ

紬「りっちゃん、爪楊枝よ」

律「頼んでねえぞ」

紬「そうよね・・・」ションボリ

梓「逃げましたよ、律先輩!」

律「うるさーい」

唯「お箸が回ってこないよ」シクシク

澪「唯、サービスでいただいたよ、もやし」

唯「お箸がないとつかめないんだよ」シクシク

レイコ「ずるずるっ」

夏目「もぐもぐ」

多軌「我関せずの二人なのね・・・」
577 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:42:19.53 ID:uqDg/LbSO
このSSって

夏目×(けいおん×ヴェガ)×その他もろもろ

に、なるんか?
578 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:42:35.62 ID:8K9q6e8So

紬「おいしかったぁ〜」

律「4つ星認定だな」

澪「はいはい」

唯「おいしかったね、あずにゃん」

梓「はい、こってりしていて・・・、
  唯先輩元気ないですね、眠りたいんですか?」

唯「うーん・・・。旅の疲れかなぁ・・・?」

菜々子「それじゃヴェガに戻ろうか」

静花「そうですわね。いい頃合ですわ」

律「ソーマ飲まないからだぞ、唯!」

唯「うぅー・・・飲めばよかったよ〜」

律「ソーマってなんだ?」

澪「昨日飲んだ薬みたいなものだ。名前の由来なら知らないぞ」

律「ソーマ・・・ソーマ・・・?」

澪「?」

レイコ「ふぁ・・・」

夏目「先生も疲れたのか?」

レイコ「まぁな・・・」

夏目「色んなアトラクションに乗っていたからな」

多軌「楽しかったね」

レイコ「どれも大したことなかったがな」

夏目「それでも乗り続けていたじゃないか」

レイコ「ふんっ」

多軌「クスクス」
579 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:44:36.17 ID:8K9q6e8So

―――――ヴェガ


秀輝「こんなとこでなにしてんだ?」

夏目「律さんが、『秀輝が来たら展望車につれて来い』って」

秀輝「ふーん・・・。で、多軌さんと先生は?」

夏目「先生を部屋で休ませるために連れて行った」

秀輝「なるほど、ネコの姿にならないといけないからな。行こうぜ」

夏目「うん」

秀輝「いよいよ明日で終わりかー・・・」

夏目「一人で散歩してなにを考えていたんだ?」

秀輝「うーん・・・。それを聞くか普通・・・」

夏目「わ、悪い・・・」

秀輝「いいけど。俺は『見えない』だろ?
   だから『あやかし』が隣を歩いていたりするのかなーって考えてた」

夏目「・・・」

秀輝「そう考えても、『見えない』から・・・夏目と別れたらそう意識することもなくなって、
   常識が戻っていくんだろうなぁってさ」

夏目「・・・それがいいんだ」

秀輝「夏目」

夏目「?」

秀輝「『律! むぎさんを陣の外へ!』」

夏目「――ッ!!!」

秀輝「あっははっは! 一生忘れないよ!」

夏目「わ、忘れてくれ!」

秀輝「無理無理っ、今の夏目の顔のおかげでずっと残ってしまう!」

夏目「うわぁー・・・ヤなやつ・・・」

秀輝「まぁ、封印する時は必死だったからな。しょうがない」ウンウン

梓「なにを封印するんですか?」

夏目「うわっ!」

秀輝「な、なんでもないよ?!」

梓「・・・」
580 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:46:18.49 ID:8K9q6e8So

律「待たせすぎだぞ、夏目!」

澪「待たせたのおまえだぞ、律!」

唯「はやく展望車おいでよ〜」

紬「あら、タキちゃんは?」

梓「先生もいませんね・・・」

夏目「あ、先生は・・・帰りました・・・」

唯「え?」

夏目「家に・・・です・・・」

唯「お姉さんが!?」

澪「あ、挨拶してないぞ!?」

律「勝手に帰らせるなよ!」

紬「そうなの・・・」

梓「身勝手な人だから大丈夫ですよ、行きましょう」

秀輝「・・・」

多軌「展望車に誰も居ないと思ったらここに居たんですね」

風音「私もお呼ばれしてもいいんですか?」

紬「もちろん〜」

静花「菜々子さんは仕事に戻りなさいな」

菜々子「ぐっ・・・!」

秀輝「あはは」

夏目(明日、終わるんだな
   『今』を刻みつけよう )

律「うっしゃー! 前夜祭だー!」

紬「おぉー!」

澪梓唯「「 おぉー! 」」」

多軌風音「「 お、おー! 」」

静花「うふふ」

菜々子「へへっ」

秀輝「はは・・・」

夏目「・・・」
581 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:48:08.32 ID:8K9q6e8So


   時を越えてまたいつか

   あの日を誇れるように
   
   左回りの時計をひとつもって



8日目終了--------

582 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/14(水) 23:52:09.60 ID:8K9q6e8So
>>577
そうです。
妖関連の作品と恋愛関連の作品をクロスさせてみました

あと少しで終わりです
583 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:02:37.96 ID:91X8TfqXo

8月15日


ガタン ゴトン

ガタンゴトン

夏目「ん・・・」

ヒノエ「おや、起きたね夏目」

夏目「あ、あぁ・・・。おはよう、ヒノエ」

ヒノエ「ひどい顔してるね」

夏目「結構遅くまで遊んでいたからな・・・ふぁあ・・・」

先生「とうっ」

シュッ

夏目「・・・」サッ

先生「ぬ、やるではないか、夏目」

夏目「そう何度もくらわないよ」

先生「腹が減ったぞ! 朝飯を持って来い!」

夏目「はいはい」
584 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:03:28.78 ID:91X8TfqXo

ガチャ

夏目(おっと・・・)

澪「・・・ふぅ」

夏目「おはようございます、秋山さん」

澪「おはよう、夏目」

夏目「どうしたんですか、ため息なんかついて」

澪「うん・・・。話は食堂車でしないか?」

夏目「あ、えっと・・・」

澪「ふふ、タキも声をかけようか」

夏目「あ、・・・はい」
585 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:04:01.66 ID:91X8TfqXo

夏目「1号車・・・」

澪「ん?」

夏目「なんとなく、目に焼き付けておこうと思って」

多軌「それじゃ私も・・・」ジー

澪「・・・そうだな」
586 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:04:55.03 ID:91X8TfqXo

夏目「2号車・・・」

梓「・・・ふぅ。・・・あ」

多軌「仲間発見。朝ごはん食べに食堂車行こうよ」

梓「う、うん」

澪「ここでなにをしていたんだ?」

梓「散歩していたんです」

587 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:05:26.20 ID:91X8TfqXo

夏目「3号車・・・」

律「・・・ふぅ。お、なんだ? ロールプレイングゲームか?」

澪「違うぞ」

律「わーかってるよー。そんなすぐに否定すんなよな」

多軌「律さんも食堂車行きましょう」

律「もちろん!」

梓「この流れだと次は・・・」
588 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:06:01.49 ID:91X8TfqXo

夏目「4号車・・・」

梓「いませんね・・・」

澪「誰を探しているんだ?」

梓「唯先輩がいると思っていたんですけど・・・」

多軌「見つけた、座席に座っているよ」

律「唯〜?」

唯「・・・ふぅ」

梓「ど、どうしたんですか? 胸を押さえて」

唯「苦しいんだよ、切ないんだよ」

澪梓律「「「 あ、一緒だ 」」」

多軌「?」
589 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:07:09.72 ID:91X8TfqXo

店員「いらっしゃいませ〜!」

唯「けさみちゃんはいつも元気だね〜」

けさみ「当然ですよ〜、いつもの席へどうぞ〜!」

唯「はいよ〜」

梓「さっきまで切なそうにしていた人とは思えませんね・・・」

澪「・・・だな」

律「あり・・・、むぎは?」

梓「先に向かっていると思っていました」

多軌「私呼んできますね」

澪「タキ、声をかけたからすぐ来るよ」

多軌「そうですか」

菜々子「いらっしゃーい、早く席に着きな」

夏目「・・・はい」
590 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:07:52.39 ID:91X8TfqXo

律「その子さん、いつものやつを」キリ

その子「かしこまりました」ニコニコ

澪「最後もいつも頼んでいるやつにするのか・・・うん。それもいいかもしれないな」

梓「私もいつものやつで」

唯「いつもの〜」

多軌「わ、わたしも」

その子「はい、かしこまりました」

夏目「おれはフルーツセットを・・・あ」

律「秀輝のヤツ・・・一人できやがったな」ウシシ

澪「むぎと静花さんも一緒だぞ」

梓「ということは、私と大村さんを入れ替えすればいいんですね」

唯「どういうこと?」

夏目「じゃあ、おれが向こうへ行きます」スッ

梓「・・・」
591 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:08:35.28 ID:91X8TfqXo

夏目「おはようございます」

紬「おはよう〜」

静花「みなさん揃っていますのね」

秀輝「ふぁ・・・ねむ・・・」

菜々子「ほら、座んな」

紬「よいしょ」

夏目「あれ?」

紬「どうしたの?」

夏目「いえ、琴吹さんが座れるように席を空けたつもりなんです・・・」

紬「風音さんも来るから、そこに座ってもらいましょう」ニコニコ

夏目(それだと、中野に睨まれそうなんだけどな・・・やっぱり)

梓「・・・」ジロ

592 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:10:43.28 ID:91X8TfqXo

唯「なんかね、胸が締め付けられるんだよ」

澪「分かるぞ」モグモグ

梓「やはり朝はご飯に納豆、味噌汁海苔玉子ですね」

風音「そうですね、日本らしい食文化が彩られています」

律「風音も梓と同じこだわりをもっているのか」モグモグ

多軌「・・・」モグモグ

唯「ため息がこぼれちゃうんだ」

澪「そうだな」モグモグ

律「本来なら私ら家に居るはずだからなー」

梓「そうですね。家にいたらこんな気分にならなかったはずです」

多軌「そのせいで胸が締め付けられるんですか?」

唯「そうなのかな・・・」

風音「私も一緒かもしれません。ゴロウとの別れがそこまで来ていますから」

澪「あ・・・」

律「決めたのか・・・?」

風音「はい。阿蘇山で私たちは・・・別れます」

唯「!」

風音「だから、栄養をちゃんと取らなきゃいけませんね」モグモグ

多軌「そうだね・・・」

律「・・・」

澪「ほら、律もちゃんと食べないと」

律「あ、あぁ・・・そうだな・・・」

唯「・・・っ」

梓「唯先輩・・・」

多軌「みなさん、乗っていなかったらどうしていると思います?」

律「ん?」モグモグ

澪「今頃は・・・起きて朝食かな・・・?」

唯「そうだね、そして勉強・・・しないでギー太と練習してるよ」

梓「ちょっと複雑ですね・・・。勉強もしてほしいですけど、練習しているから・・・うーん」

律「悩むなよ。・・・私はまだ寝てるかなー・・・」

澪「起きろ、律」

律「もしもの私を起こすなよ」

風音「クスクス」

唯「帰ったらみんなで図書館に行こうよ」

梓「私も行っていいですか?」

唯「モチのオッケーだよ。和ちゃんも誘おう」

澪「そうだな」

律「めんどうだなー・・・」

澪「面倒なのか、しょうがないな・・・」

多軌「そんな時間が存在していたんですね」
593 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:12:14.75 ID:91X8TfqXo

菜々子「隣の席は賑やかだね〜。はい、お待たせ」

静花「どうも、ウェイターさん」

菜々子「いつまでそれ言ってるつもりだよ、あんた」

紬「いただきまーす」

秀輝「いただきます」

夏目(しまった、先生の事すっかり忘れてた。今戻ったら変だよな・・・)

秀輝「どうした」モグモグ

夏目「なんでもない・・・。いただきます」

静花「しっかり食べなくてはいけませんわ」

紬「そうですよ」

夏目「・・・・・・はい」

静花「貴志さんのお姉さんが帰られたのは、今朝ですの?」

夏目「は、はい」

静花「そうですか・・・」

秀輝「どうしてそんなことを聞いたんですか?」モグモグ

静花「いえ、少し・・・気がかりといいますか・・・」

夏目(なんだろう・・・、変なところをみられたのかな)

紬「気がかりですか?」

静花「なにか引っかかっていまして・・・さほど重要な部分ではありませんのでお気になさらず」

秀輝「・・・」モグモグ

夏目(なんだろう、気になる)

紬「夏目さんは荷物まとめました?」

夏目「はい。大体は」

紬「・・・そうですか」

静花「どうしてがっかりしてますの?」

紬「手伝おうかと思っていたんです」

夏目「!」ギクッ

静花「そうですわね、時間もありませんし」

夏目「い、いえっ! 大丈夫ですよ!」

紬「どうしてそんなに慌てているの?」

秀輝「いやいや、夏目はこんな顔していても男ですから。女性に手伝わせるのは如何なものかと」

静花「あ、そうでしたわね」

紬「あ、そうですね」

夏目「ちょっ」

秀輝「今思い出したみたいだぞ、夏目が男だって」

夏目(なんだか複雑だなー・・・)ハァ
594 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:13:32.78 ID:91X8TfqXo

ガチャ

夏目「あれ、先生・・・?」

先生「遅いわ夏目ぇ!」トウッ

ドカッ

夏目「いつッ!?」

ヒノエ「後ろから狙うなんて卑怯だね、斑」

先生「私の朝ごはんを持ってこないこやつが悪いわ!」プンスカ

夏目「いてて、壁に張り付いていたのか・・・」ヒリヒリ

ヒノエ「待っている間、必死に踏ん張っていたんだがね」

夏目「ふふっ」

先生「笑うなっ! はやく飯を出さんか!」ペシペシ

夏目「・・・はいはい」

コンコン

夏目「!」ギクッ

『夏目くーん』

夏目「なんだ、タキか・・・びっくりした」

ヒノエ「誰だと思ったんだい」

夏目「いや・・・別に」

ガチャ

夏目「どうしたんだ、タキ?」

多軌「静花さんが展望車に来てくれって」
595 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:14:38.65 ID:91X8TfqXo

多軌「あ、しのぶさん」

しのぶ「多軌さん・・・。今日も遊んでいかれますか?」

多軌「今は用事があって、また後で来ます。挨拶もその時に・・・」

しのぶ「そうですか・・・、それでは後ほど。失礼します」

夏目「・・・」

多軌「夏目くん?」

夏目「娯楽車の店員さんと仲がいいんだな」

多軌「うん。いつも遊んでいたから声をかけてくれたの」

夏目(タキはタキで自分なりに楽しんでいたんだな)
596 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:16:11.33 ID:91X8TfqXo

ポン ポン ポン ポン

多軌「・・・紬さんかな?」

夏目「静花さんだ・・・」

静花「!」

多軌「?」

静花「ビックリしましたわ・・・。つむぎちゃんかと・・・」フゥ

夏目「・・・」

多軌「・・・」

静花「タキさんは知っていますか? 私とつむぎちゃんが知り合いだったということを」

多軌「・・・いえ、知りませんでした」

静花「そうですか。この事をハッキリと知っているのは数人だと思います。
   軽音部のみなさんの中で知っている方は?」

夏目「律さんだけだと思います」

静花「・・・」

多軌「・・・」

静花「つむぎちゃんとは、このままでいいと思っていました」

夏目「!」

静花「私を忘れているならそれでいい、あの子の旅をこんなことで潰してはいけない、と」

夏目「・・・」

静花「ですが、少し・・・。冒険をしてみようと思います」

多軌「・・・」

静花「最終駅で、打ち明けますわ」

夏目「!」

静花「『会いたかった』と一言伝えたいのです」

夏目「ッ!」

静花「正直、怖くて仕方がありませんの。・・・逃げていた分の重みでしょうか」

ポロンポロポロロン

多軌「・・・弾けるんですね」

静花「うふふ、もう随分と触れていませんでしたから、指が動きませんけど」

ポロンポロロロン
597 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:17:08.89 ID:91X8TfqXo

夏目「・・・どうしておれに・・・?」

静花「この『音』をつむぎちゃんに聞かせたいのですが・・・」

ポンポロロンポロポロロン

多軌「?」

夏目「どうしてですか?」

静花「昔、あの子と二人で作った『音』です。意味は『安らげる場所』と名づけました。
   リズムもメロディもないただの『音』」

夏目「・・・」

静花「この『音』を――」

菜々子「あーぁ、バーカだね〜」

静花「む・・・!」

菜々子「あんたが弾かないと意味ないじゃないか。夏目かタキちゃんに弾かせようって発想がダメなんだよ」

静花「しょ、承知していますわよ!」

菜々子「はぁ・・・」ヤレヤレ

多軌「すいません、静花さん・・・」

夏目「おれもピアノは弾けない・・・」

静花「ですわよね〜!」

菜々子「あーぁ、テンパってるよ・・・情けない・・・」

夏目「琴吹さんを探してきます」

静花「あ、え、えっと・・・」オロオロ

菜々子「試してみろって」
598 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:17:45.05 ID:91X8TfqXo

―――――売店車


店員「いらっしゃいませ〜」

夏目「買い物じゃなくて、挨拶にきました」

店員「あ・・・、そうですねぇ。次で降りられてしまうんですよねぇ」

夏目「・・・はい。楽しい旅が出来ました、ありがとうございました」

店員「・・・」

夏目「・・・」

店員「はい。そう言ってくださるととても嬉しいです」ニコニコ

夏目(いつも変わらない笑顔で接してくれたから・・・いつも気持ちが上を向けた・・・)

紬「ちひろさん、いつもの茶葉をお願いします」

ちひろ「は〜い」

夏目「あ、いた・・・」

紬「?」
599 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:19:08.14 ID:91X8TfqXo

―――――展望車


菜々子「おい、こら」

静花「なんですの?」

菜々子「あんたが座るのはこっちじゃなくて、ピアノの椅子だろ!」

静花「紬さんが弾いているじゃないですか。それに・・・落ち着く時間も必要ですわ」

菜々子「・・・あぁ、そうかい」ハァ

多軌「・・・」

ポンポロロンポロポロロン

夏目「・・・?」

静花「・・・今の『音』」



唯「むぎちゃん、今のは?」

紬「うふふ、出鱈目に弾いてみたの。だから特に意味なんてないのよ」

唯「なんだ、出鱈目かぁ〜」

律「そんじゃ最後の演奏よろしくな〜」

澪「私たちも座ろう」

梓「・・・ヴェガで過ごす最後のティータイムなんですね」

紬「あずさちゃん・・・」

梓「・・・」

紬「あずさちゃん、この旅は終わってしまうけど、私たちが一緒に過ごす時間はまだ終わらないわ」

梓「・・・はい」

紬「今のこの時間、この場所でしか楽しめないことがある」

梓「そうですね・・・!」

紬「よぉーし」フンス!
600 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:21:10.07 ID:91X8TfqXo

ポン ポロロ ポロ ポロ ポン ポロ ポロロン

律「〜♪」

唯「アラベスクっていいね」

澪「・・・」

静花「・・・あの頃と・・・少しも変わっていませんわね」

夏目「・・・」

秀輝「最初に聞いたのもこの曲だったような・・・」

梓「そうです。私が唯先輩のギー太を弾いてセッションしたんです」

唯「そうだったね〜、随分前のような気がするよ〜」

多軌「聞いてみたかったな・・・」

菜々子「そうだね・・・」

静花「・・・」

律「むぎが松本でやった教師ごっこだけどさ、あれの風習ってどこなんだろうな?」

澪「なんだ、いきなり」

律「なんとなく気になってな。
  お茶とお菓子があってくつろげる場所ってさ、部室でもあるじゃん?」

澪「・・・うん」

唯「むぎちゃんが作り上げる空間ってことだね?」

梓「・・・そうですね」

菜々子「私は人づてに聞いた話だから、詳しくは知らないんだよねぇ・・・」チラッ

静花「・・・」

菜々子「縁側にお茶が用意されていて、家の主人がいなくても勝手に飲んでいい・・・」

唯「お茶をお菓子を食べながらおしゃべりして、暑い時間を過ごそうという南国のお話だね」

律「・・・」

静花「沖縄ですわ」

菜々子「・・・」

唯「沖縄の話なの?」

静花「えぇ、まだ私が幼かった頃になりますが、そういう話を見つけたことがあります。 
   とても優しくて美しい時間だと幼心ながら感じ取ったものです」

律「・・・そうですか」

澪「・・・」

唯「沖縄か〜・・・。そこまで線路が続いていたら行けたのにね〜」

澪「それはまた壮大な話だな」

多軌「クスクス」
601 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:22:46.54 ID:91X8TfqXo

ポロロロロン

律「あ、終わった」

梓「シーサーも沖縄の守り神だったような・・・」

澪「?」

秀輝「・・・やっぱり」

多軌「・・・」

律「よかったぜー、むぎ」

唯「ブラボーだよ」

紬「うふふ、ありがとう」

静花「素敵な演奏でしたわ」

紬「あ・・・、はい・・・!」

夏目(嬉しそうな・・・表情するんだな・・・)

唯「貴志くんは荷物の整理終わった?」

夏目「は、はい」

唯「そっか、偉いね」

梓「それが普通なんですよ、唯先輩」

唯「えへへ〜」

多軌「?」

律「私たちも手伝ったんだよ、唯の部屋の片づけをな」

多軌「な、なるほど・・・」

夏目(・・・時間が流れていく)

秀輝「律こそ荷物大丈夫なのか」

律「当たり前のこと聞くなよ」

澪「・・・」

律「な、なんだよその目は」

澪「別に・・・」

秀輝「・・・う」グサッ

唯「どうしたの、秀輝くん?」

秀輝「な、なんでもないよ・・・」

律「傷口が染みるんだよな! あはは!」

秀輝「その傷口に塩を塗っているのはあなたですけどね!」

律「んー、ひよこ饅頭うめえな〜」モグモグ

多軌「どうしてひよこなんでしょうね」モグモグ

風音「そうですね、もみじ饅頭は枯葉を饅頭に象っていますから面白いですけど」モグモグ

ピノ『おいしそうです、ご主人様』ピピッ

夏目「いつの間に・・・」
602 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:25:03.52 ID:91X8TfqXo

ピョン

多軌「あ・・・、夏目くんの肩に・・・」

梓「ピノっ! こっちにもおいで!」ポンポン

ピノ『お世話になりましたわ』ピピッ

夏目「なにもできなかったけど・・・」

ピノ『そんなことないですわ。ご主人様もみなさんのおかげで前を向けたと仰っていました』

夏目(どんな形でも、大切な思い出との別れは悲しいからな・・・)

ピノ『みなさんに挨拶するのだわ』

ピョン

紬「あら・・・?」

ピノ『お世話になりました』ピピッ

紬「うふふ」

梓「ピ、ピノ?」

律「がっつくと来るものも来なくなるぞ」モグモグ

菜々子「そうだね。肩の力を抜いたほうがいいかもしれないね、梓は」

梓「そ、そうですか・・・」

多軌「ピノちゃんおいで」

ピョン

ピノ『永遠のライバルですわ』ピピッ

多軌「元気でね」

ピノ『あなたも、末永くお幸せに』ピッ

風音「みなさんに遊んでもらって楽しそうです」

夏目「・・・そうだな」

梓「ピノ、おいで」サワヤカ

紬「今のあずさちゃんの声透き通っていたわ」

律「無駄にな・・・」

ピョン

秀輝「ん? こっちに来ちゃったか」

梓「そんな・・・っ」

多軌「落ち着いて落ち着いて」

梓「・・・落ち着け、私」フゥ

静花「菜々子さん、分かっていますわね」

菜々子「あぁ・・・負けられないね」

澪「なにを始めるんですか?」

静花「ピノさんが私と菜々子さんのどちらの手に乗るのか・・・という勝負ですわ」

菜々子「動物は本能で敵か味方かを判断するんだよな、風音」

風音「は、はい・・・」
603 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:26:52.80 ID:91X8TfqXo

夏目「・・・」

静花「やはり、自然界で暮らす菜々子さんに分があるというものでしょうか」ゴクリ

菜々子「ぐっ・・・! 腹が立つ!」

唯「秀輝くん、ピノちゃんをテーブルへ座らせておくんな」

秀輝「はいよ。元気でな、ピノ」

ピノ『あなたもお元気で』ピピッ

風音「・・・」

静花「さ、心優しき私の掌にお乗りなさいな」スッ

菜々子「ピノ」スッ

梓「・・・」スッ

澪「参戦してる・・・」

ピノ『確かに優しそうな匂いがします』クンクン

紬「静花さんに近づいた・・・!」

静花「・・・!」

ピノ『あなたもいい匂いがしますわ』クンクン

律「おっとぉー、姉御に近づいたー!」

菜々子「・・・!」

ピョン

梓「あ・・・!」

静花菜々子「「 な・・・! 」」

ピノ『気まぐれなのだわ』ピピッ

梓「お・・・ぉ・・・!」フルフル

紬「感激しているのね・・・」

律「ただ予想外の展開についていけないだけじゃないのか?」

多軌「しっかり、梓!」

梓「こんな重さだったんだ・・・!」

秀輝「実感して分かる命の重さ・・・みたいな」

風音「・・・」

梓「元気でね・・・」

ピノ『あなたは何も知らない子どもですわ』ピピッ

夏目「・・・」

ピノ『ご主人様のように、ゆっくりと大人になってくださいな』ピッ

梓「・・・」

ピョン

風音「みなさん、私はここでお別れします」

紬「え・・・?」

風音「一人で降りて、ちゃんと自分自身でゴロウとの別れを迎えたいと思います」

夏目「・・・」

風音「・・・長い間、とても楽しかったです。いつまでもお元気で、さようなら」ペコリ
604 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:27:32.78 ID:91X8TfqXo

紬「・・・」

夏目(振り返ることなく・・・行ってしまった・・・)

澪「・・・」

律「・・・」

唯「・・・っ」

梓「・・・」

多軌「夏目くん、そろそろ・・・」

夏目「・・・うん。おれたちも準備してきます」

静花「えぇ、ホームで待っていますわ」

菜々子「それじゃ、後でな」

夏目「はい」

秀輝「・・・」
605 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:28:36.52 ID:91X8TfqXo

ガチャ

夏目「あ、タキ・・・先生を渡すから待っててくれ」

多軌「うん」

秀輝「・・・」

バタン

バコーン

多軌「?」

秀輝「なんの音だ・・・?」

多軌「なにかぶつかったような音だったけど・・・」

ガチャ

先生「」プシュー

夏目「お願いな」

多軌「う、うん・・・」

秀輝「どうして先生がダメージを受けているんだ?」

夏目「壁に突撃したんだよ」

多軌「そ、そうなんだ・・・」

先生「いつつ・・・ヒノエめ裏切りおった・・・」ヒリヒリ

夏目「じゃ、停車したらホームに降りてるから」

多軌「うん」

バタン

秀輝「先生、『聞こえる』?」

先生「なんだ?」ヒリヒリ

多軌「・・・」

秀輝「大したことじゃないんだけどさ・・・」

606 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:30:02.22 ID:91X8TfqXo

ヒノエ「あの小僧はどうしたんだい?」

夏目「先生に話があるんだって」ガサゴソ

ヒノエ「そうかい」

夏目「・・・よいしょっと」

夏目(これで・・・降りる仕度は済んだな・・・)

ヒノエ「やっと帰れるねぇ」

夏目「・・・そうだな」

ガタンゴトン

夏目(今、ホームに入った・・・。終わりが・・・来たんだ・・・)

夏目「・・・」

ヒノエ「・・・」

ガタンゴトン

ガタン

ヒノエ「どうした、夏目」

夏目「・・・いや、なんでも・・・」

ガタン ゴトン

ヒノエ「怖いのかい?」

夏目「!」

ヒノエ「やれやれ」

夏目「・・・」

ガタン

プシュー

夏目(着いた・・・)

ヒノエ「降りないかい、夏目」

夏目「・・・」
607 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:30:53.33 ID:91X8TfqXo

ガチャ

多軌「あ・・・」

先生「遅いではないか、なにをチンタラしている」

夏目「・・・悪い」

ヒノエ『・・・』

多軌「・・・」

夏目「・・・秀輝は?」

多軌「風音さんを見送りにいったよ」

夏目「・・・そうか」

多軌「・・・うん」

夏目「・・・」

先生「・・・やれやれ」

ヒノエ『・・・』

車掌「どうかしたんですか?」

夏目「あ・・・車掌さん・・・」

多軌「・・・これ、乗車証です」

車掌「はい、確かに」

夏目「・・・」

車掌「ホームに降りましょう」

夏目「はい」

先生「・・・」
608 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:31:52.72 ID:91X8TfqXo

―――――阿蘇駅


夏目「乗車証、お返しします」

車掌「・・・さて、どうしましょう」

夏目「・・・え?」

多軌「?」

車掌「規定違反になるので、私には判断しかねます・・・」

夏目「???」

車掌「貴志さんの判断に委ねてよろしいでしょうか?」

夏目「え? え???」

ヒノエ『なにを言っているんだい』

先生「ふむ、なにかと不思議が多いな・・・」

多軌「・・・」

車掌「うふふ、あちらをご覧ください」

夏目「―――え?」

多軌「あ・・・!」

先生「あの小娘はたしか、夏目の看病をしたやつだな」

ヒノエ『あぁ、あの時の小娘』

夏目「北上さん!」

ダダダッ

多軌「な、夏目くん!」

先生「・・・くだらん」
609 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:33:12.21 ID:91X8TfqXo

夏目「ど、どうしてここに!?」

緑「・・・見送り」

夏目「だ、誰を・・・?」

緑「あなた以外いないでしょ・・・」

夏目「・・・それだけじゃない・・・と思う・・・」

緑「えぇ・・・。その・・・」

夏目「・・・」

緑「・・・乗ってる?」

夏目「え・・・?」

緑「――・・・は・・・乗っているのか聞いているの」

夏目「???」

緑「・・・っ」

夏目「・・・」

緑「秀輝くんは・・・乗っているのかって・・・聞いて・・・!」

夏目「は、はい。います。そうか・・・車掌さんはこれを・・・」

緑「・・・そう。・・・それじゃ」

夏目「会わないんですか?」

緑「彼に・・・酷いことをして・・・約束を破ったから・・・」

夏目「秀輝は会いたがっています」

緑「・・・いいの。・・・・・・降りてしまったんじゃないか・・・気になってただけ」

夏目「・・・」

緑「・・・」

夏目「この乗車証使ってください」

緑「・・・え・・・?」

夏目「車掌さんがそうしろと・・・」

緑「・・・」

夏目「おれの代わりに最終駅まで乗ってください」

緑「・・・・・・うん」

夏目「・・・よかった」

緑「・・・・・・ありがとう」

夏目「北上さんには助けられましたから」
610 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:33:54.96 ID:91X8TfqXo

律「おいこらー! 夏目ー!」

夏目「あ・・・」

律「風音はもう行ってしまっ・・・のわぁっ! み、緑!?」

緑「・・・」プイッ

律「ななななんで!?」

夏目「・・・それが」

緑「言わないで」

律「びっくりした・・・・・・けど、なるほど。まぁいいや、緑ちょっと来い」グイッ

緑「なに?」

律「サプライズだ・・・。実際私もビビったから本人はもっと驚くだろ」ウシシ

夏目「・・・」

律「夏目は早くむぎんとこ行け、みんな待ってるぞ」

夏目「は、はい」

律「乗車証は夏目のか?」

緑「・・・えぇ」

律「列車の中で待機だな」

夏目(秀輝ビックリするだろうな)
611 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:36:01.37 ID:91X8TfqXo

紬「夏目さ〜ん!」

夏目「・・・待たせてしまって、すいません」

秀輝「どこ行ってたんだよ」

夏目「・・・悪い」

澪「今度は律がいない・・・」

唯「もぉ〜・・・」

梓「風音がよろしくって」

夏目「・・・うん」

秀輝「まったく、最後の挨拶がないと寂しいものなんだぞ」

夏目「そ、そうだな」

車掌「・・・」ニコニコ

多軌「・・・」ニコニコ

先生「・・・」

静花「貴志さんのお姉さんがいると思っていましたが・・・」

菜々子「なんでだよ」

静花「うーん・・・。常に一緒に居る感覚といいますか・・・」

菜々子「はぁ?」

静花「梓さんの言動がそう思わせましたの」

梓「私ですか?」

静花「えぇ、仲がいい割には別れに対してあっさりとしていましたから」

梓「な、仲がいいなんて誤解ですよ」

先生「そうだぞ」

夏目(喋るなよっ!)

静花「繋がりが見えた。・・・それだけですわ」

紬「ふむふむ」

先生「さっさと小娘どもに別れを言え、帰るぞ夏目」

夏目「・・・」

梓「タキ、そのぬいぐるみをちょっと貸してほしい」

多軌「う、うん」

ガシッ

先生「おいこら! ぞんざいに掴むな!!」

梓「すぐ戻ります!」

テッテッテ

梓「あずにゃんどうしたの?」

澪「最後に抱きしめたいならこの場所でいいはずだよな」

秀輝「・・・・・・なるほど、俺と中野さんは同じだったか」

紬「?」

夏目「?」
612 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:37:35.07 ID:91X8TfqXo

梓「ここなら大丈夫かな・・・」

先生「まさか・・・」

梓「むぎ先輩に小娘って言うなって何度も言ってるでしょぉおお」グググ

先生「ふぎゅぎゅ」ムググ

梓「・・・ほら、はやくレイコさんに変身してよ」

先生「なんで私の声が『聞こえる』のだ」ヒリヒリ

梓「催眠術にかかっていないからだよ。時間が無いから急いで」

先生「ぬ・・・」

どろん

レイコ「曲者とはお前のことだったのか」

梓「曲者?」

レイコ「聞かせろ。どうしてかかっていない」

梓「あの人の手を見なかったから。・・・それで回避できたんだと思う」

レイコ「そうじゃない」

梓「・・・あの時、私は夏目に酷いことを言ったから」

レイコ「・・・」

梓「それは、絶対に言ってはいけない言葉だと思う」

レイコ「それを根に持つほど、アイツは小さい人間ではないぞ」

梓「夏目が忘れても、私は忘れていいことじゃないと思ったから。記憶を残す選択をしただけ」

レイコ「・・・」

梓「むぎ先輩たちが待っているから、行こう」

レイコ「・・・なるほど、面白い」

梓「?」
613 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:39:41.63 ID:91X8TfqXo

律「どこ行ってたんだ、梓」

梓「せ、先生を見つけてきましたよ」

紬「あ、あら・・・?」

レイコ「しょうがないから来てやったぞ」

澪「・・・よかった」

唯「ちゃんとお姉さんに挨拶ができるよ〜」

菜々子「静花が言っていたことは間違っていなかったのか・・・?」

静花「・・・」

律「なんで、梓が夏目のお姉さんを『先生』と呼んでいるんだよ」

澪「うん、私も気になっていた」

梓「え、えっと・・・いいじゃないですか」アセアセ

秀輝「『知っている』からだよな・・・」

多軌「うん・・・。『聞こえている』から」

夏目「・・・え!?」

梓「・・・」

律「よく分からないな・・・。ま、いいや・・・夏目」

夏目「は、はい」

律「ありがとな、とても楽しかったぜ」

夏目「!」

唯「楽しかったよ・・・」

夏目「・・・は、はい」

菜々子「タキちゃんも元気でね」

多軌「は、はい・・・っ」

レイコ「・・・」

秀輝「先生、ありがとうございました」

レイコ「ふん、変わってしまったおまえはつまらなくなってしまったがな」

秀輝「あはは」

律「よし、今がいいタイミングかも」

テッテッテ

澪「りつ・・・?」
614 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:41:19.29 ID:91X8TfqXo

紬「タキちゃん・・・。楽しかったわ」スッ

ギュ

多軌「はい・・・私も・・・楽しかったです」

紬「・・・」

多軌「・・・」

紬「夏目さんと仲よくね」

多軌「ふふっ・・・はい」

梓「タキは夏目を支えているよ、ずっと見てきたんだから、分かる」

多軌「うん。ありがとう、梓」

レイコ「・・・」

秀輝「夏目のことよろしくね」

多軌「はい。色々と楽しく過ごせました。ありがとうございました」

秀輝「おれはなにもしてないよ。してもらったことが多すぎて・・・」

多軌「ふふっ、後ろ見てください」

夏目「・・・」

秀輝「うしろ・・・?」

紬「あっ!」

菜々子「あれっ、あんた!」

静花「しずかになさい、ムードを壊してしまいますわ」

緑「・・・」

秀輝「緑・・・」

律「うしし、呆気に取られてやんの」ウシシ

緑「べ、別に・・・」

律「なにがだ」

澪「ど・・・で・・・?」

律「どうしてかって? 秀輝に会いに来たんじゃないかね」

秀輝「・・・」

緑「私も・・・最後まで行けることになったから・・・」

秀輝「・・・うん」

レイコ「後はおまえ次第だぞ」

秀輝「あ、・・・うん」

唯「ビックリだけど、よかったよー!」

澪「あぁ・・・!」

夏目「・・・」
615 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:42:34.69 ID:91X8TfqXo

澪「夏目、別れの挨拶だ」スッ

夏目「・・・!」

澪「握手で別れよう」

夏目「・・・っ」

レイコ「・・・」スッ

ギュ

澪「ん?」

レイコ「私では不服か?」

澪「い、いえ・・・」ビクビク

梓「脅さないでください」

レイコ「じゃあな」

澪「はい、お元気で。姉弟仲良く」

レイコ「ん?」

梓「ブフッ」

紬「あずさちゃん?」

梓「な、なんでもないですよ」

律「お姉さん、私も握手だ」スッ

ギュ

レイコ「うむ、じゃあな。でこ娘」

律「は、初めて言われた・・・」

唯「・・・さようならだね」スッ

ギュ

レイコ「うむ、じゃあな。小娘」

唯「・・・うん。元気でね」

梓「しまった・・・唯先輩たちにまで言ってる・・・」

夏目「・・・っ」

多軌「夏目くん・・・」

ヒノエ『前を向きな、夏目。ちゃんと別れないと後悔するよ』

夏目「!」

夏目(レイコさんとヒノエは・・・!)

レイコ「じゃあな、娘」

ギュ

紬「うふふ、お元気で」

レイコ「うむ」
616 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:44:04.07 ID:91X8TfqXo

梓「色々とお世話になり――」スッ

バシッ

梓「あいたっ!?」

レイコ「ふん、おまえとは別れの言葉などいらん。ネコ娘」

梓「誰がネコ娘ですか!」フカー!

紬「本当に仲がいいのね〜」ニコニコ

多軌「はい」ニコニコ

菜々子「弟さんと仲良くな」スッ

ギュ

レイコ「気が向いたらな」

静花「ごきげんよう」スッ

ギュ

レイコ「そんなに弱い相手ではないぞ」

静花「えぇ、承知しておりますわ」

紬「・・・」

夏目「・・・」

緑「夏目くん」

夏目「・・・」

緑「ここへ来られたのはあなたのおかげ・・・」

夏目「?」

緑「秀輝くんと約束をしていたんだけど、・・・怖くて逃げたの・・・私」

夏目「・・・!」

緑「合わせる顔もないから、帰ろうと思ったとき・・・あなたがここで降りることを思い出した」

夏目「・・・」

緑「ここであなたにお別れを言うことで、私の旅を終わらせようと思っていた」

夏目「!」

緑「些細な繋がりだったけど・・・来て・・・よかった。・・・ありがとう」

夏目「――ッ!」
617 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:44:38.55 ID:91X8TfqXo

車掌「夏目貴志さん、多軌透さん、当特急ヴェガへのご乗車誠にありがとうございました」

多軌「お世話になりました」

夏目「・・・っ」ペコリ

車掌「お姉さんも、ありがとうございました」

レイコ「なかなか楽しかったぞ」

車掌「これ以上無いお言葉です」ニコ
618 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:46:22.04 ID:91X8TfqXo

ポタッ

ホーム内に雨が振っている

それは違うと分かっている。これはおれの涙だと分かっている

泣いているから恥ずかしくて前を向けない

別れが寂しいと感じることはいくつもあったんだ

だから今回も平気だと思っていたんだ

だけど――


『あなたが泣いているのは悲しいわ』

夏目「え――」

紬「動かないでね」

夏目「あ・・・! ごめんなさい!」

紬「ほら、動かないで」フキフキ

夏目「・・・!」

紬「これでよし・・・ね」

夏目「寂しい別れが・・・かけがえのないものだと、知っていたんです」

紬「・・・」

夏目「だけど、言葉でしか知らなかったみたいです・・・っ」グスッ

紬「夏目さん・・・」

夏目「おれ、色々あって・・・人に礼を言わることなくて・・・」ボロボロ

多軌「・・・!」

夏目「そんな人と別れたことは・・・今までなかったんです・・・っ」ボロボロ

レイコ「・・・」

夏目「だからっ・・・!」グスッ

紬「・・・」

夏目「とても、胸が痛い・・・っ・・・」

紬「うん。その痛みはきっとあなたを強くしてくれるわ」フキフキ

夏目「!」

紬「その分、あなたの周りの人を紡いでいってね」

夏目「・・・はい」

紬「・・・!」

夏目「琴吹さん・・・?」

紬「・・・大事なことを、思い出せた・・・」

夏目「・・・」

紬「・・・ありがとう。あなたに出会えてよかった」

夏目「・・・っ!」
619 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:47:46.89 ID:91X8TfqXo

唯「貴志くんっ!」ダキッ

梓「あっちです」ドン

唯「ぬおっ」

ガバッ

多軌「ゆ、唯さん・・・!」

秀輝「方向修正か」

律「そういうのやめろよなー。こっちにも移るっての」グスッ

紬「うふふ」

律「ほら、夏目」スッ

夏目「・・・!」

律「ハイタッチで別れようぜ」

夏目「・・・はい!」

パァン

律「元気でな!」

夏目「律さんも、お元気で」

唯「タキちゃーん」ギュウウ

多軌「唯さん〜!」

澪「じゃあな、夏目」スッ

夏目「とても、楽しかったです」スッ

パァン

澪「忘れないよ、この出会いを」

夏目「おれもです」

菜々子「それじゃついでに私も」スッ

夏目「高いっ!」スッ

パァン

梓「末永くお幸せに」スッ

夏目「よく分からないけど、先生の事どうして・・・?」

梓「律先輩と唯先輩、澪先輩はむぎ先輩のために、
  むぎ先輩は夏目のことを考えて幻術にかかった・・・」

夏目「・・・」

梓「私は、あの出来事を忘れない。忘れてはいけないから」

夏目「・・・うん」スッ

梓「元気で」

パァン
620 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:49:30.80 ID:91X8TfqXo

prrrrrrrrrrrrr

車掌「みなさん、最後の運行になります」

紬「はい!」

静花「それではお元気で」スッ

夏目「はい。さようなら」スッ

パァン

静花「それでは乗りますわよ、みなさん」

菜々子「じゃあな!」

澪「バイバイ!」

律「じゃあなー!」

唯「おぉ、なっちゃん!」スッ

夏目「ふふ」スッ

パァン

唯「じゃあね!」

緑「・・・じゃ」

夏目「はい、お元気で」

秀輝「じゃあな、夏目!」スッ

夏目「あぁ! 最後まで頑張れよ秀輝!」スッ

コツン

レイコ「・・・」

ヒノエ『・・・』
621 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:51:02.69 ID:91X8TfqXo

静花「紬さん、急いで!」

紬「すぐ行きます! しずねえさま!」

夏目「ッ!?」

紬「それじゃあ、いつかまた、どこか遠い空の下で」スッ

夏目「は、はい」スッ

パァン

律「走れむぎー!」

澪「時間が!」

唯「むぎちゃーん!」

梓「手に掴まってください!」スッ

ギュウ

紬「うふふ」

梓唯澪律「「「「 よいしょー! 」」」」 

多軌「みなさんさようならー!」

紬「また会いましょう」フリフリ

レイコ「じゃあな、ネコ娘」

梓「ネコ娘って言う――」

プシュー

梓「」フカー!

ガタン

ゴトン


ガタンゴトン
622 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:52:41.40 ID:91X8TfqXo


ガタンゴトンガタンゴトン


夏目(後少しだけ・・・ヴェガの旅は続くんだな・・・)

『ふーん。最終駅の一歩手前か・・・。なんかもったいないな』

夏目「確かに・・・。もったいなく感じるよ、秀輝」

多軌「ぅっ・・・」ボロボロ

ヒノエ『悪くなかったね』

レイコ「行くぞ」

多軌「っ・・・ぅっ」ボロボロ

夏目「タキ・・・」

ギュ

多軌「!」

夏目「帰ろう」

多軌「うん!」


話したいことがたくさん出来た

今までは伏せなくてはいけないことが多すぎて、

ちゃんと伝えられなかったかもしれない

だけど、この旅の話は余すことなく伝えられそうな気がする

塔子さんと滋さんに伝わるだろうか

今のこの気持ちを

胸に宿った大きな暖かさと小さな胸の痛みを

いつまでも大切に残していきたいと、心から願う


なにから話そう



                 End


お嬢様特急 エンディング

いつかみた空の下で
http://www.youtube.com/watch?v=F2w-s8LUUFs
623 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 00:56:05.16 ID:91X8TfqXo
これで夏目の旅は終わりです
秀輝と緑の最後は小説版へ辿りつきます
色々と引用させてもらいました。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
624 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 01:10:16.02 ID:JSEl8/mQo

キャラ多すぎだけど珍しいクロスで面白かった
625 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 01:43:54.09 ID:SZGEBzNko
面白かった乙!
タキかわいすぎる

秀輝ってなんの作品からなの?
夏目とけいおん!を少ししかしらんから教えてくれたらうれしいな
626 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage ]:2011/12/15(木) 03:22:06.17 ID:WxOhdtboo
乙!
楽しかったよ、次のヴェガSS期待してます。

前作で澪が北海道いるなら姫子行かせて風雨来記でもどうですか?




>>625
小説版お嬢様特急3巻の主人公
627 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 03:53:19.18 ID:SZGEBzNko
>>626
ありがとう
628 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 10:00:18.78 ID:UkjGOUmAO
乙です。エピローグもしくは、>>1の次回作に期待。
629 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:15:55.92 ID:91X8TfqXo

ガラガラガラッ


夏目「ただいま帰りましたー」

パタパタ

塔子「お帰りなさい、貴志くん」

夏目「ただいまです、塔子さん」

塔子「・・・」

夏目「?」

塔子「今ね、たい焼きを焼いているの。よかったらどう?」

夏目「はい、いただきます」

塔子「荷物を置いたら降りてきてね」ニコニコ

夏目「・・・」
630 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:16:59.42 ID:91X8TfqXo

『ようやく帰ってきたでありますか』

夏目「留守番ありがとな、ちょび」

ちょび『チンケな用心棒はどうしたでありますか』

夏目「先生はすぐに遊びにいったよ」

ちょび『左様でありますか。わたしもこれで失礼するであります』

夏目「この家を守ってくれてありがとう。今度お礼をさせてくれ」

ちょび『時間を持て余していたのでわたしはいいであります。三篠殿に言うであります』

スゥゥゥ

夏目「三篠も守ってくれていたのか・・・ちゃんと礼を言わないとな・・・」

「貴志くーん」

夏目「はーい! 今行きまーす!」

『友人帳をもつ夏目様でございますね』

夏目「さっそく来たか・・・。悪いが夜に出直してきてくれないか」

『・・・』

夏目「これから出かけたいんだ。本当に悪い!」

『分かりました・・・。それでは今晩参ります・・・』

スゥゥゥ

夏目「・・・ふぅ」

夏目(日常に・・・戻ってきたんだな・・・)
631 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:17:42.45 ID:91X8TfqXo

塔子「座って座って〜」

夏目「はい」

塔子「さ、どうぞ〜」

夏目「・・・」

塔子「お茶でいいかしら」

夏目「は、はい」

塔子「〜♪」

コポコポコポ

夏目(数日空けただけなのに・・・。とても懐かしくて落ち着く・・・)

塔子「どうぞ」

夏目「いただきます」ハムッ

塔子「・・・」ニコニコ

夏目「?」モグモグ

塔子「楽しかった?」

夏目「・・・・・・はい」

塔子「良かったら話を聞かせてくれないかしら?」ニコニコ

夏目「そうですね・・・。列車の最後尾に展望車があるんです」

塔子「うんうん」

夏目「ちょっとしたラウンジのようで、ピアノもあって・・・のんびりと過ごすにはいい場所なんです」

塔子「・・・」

夏目「ある人が、そこでお茶会を開くんです。人が集まってきてみんなでおしゃべりしたりして」

塔子「まぁ、いいわね〜」

夏目「最初は戸惑いましたけど、会を重ねるうちに、僕も自然と参加するようになっていて・・・」

塔子「うふふ」

夏目「その人が淹れてくれるお茶が輪をつくるんです。それがとても・・・」

塔子「・・・うん。楽しかったみたいね」

夏目「え・・・?」

塔子「貴志くんの顔を見ていたら、それが伝わってくるわ」

夏目「・・・そ、そうですか」モグモグ

塔子「それでそれで?」

夏目「――。」
632 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:18:36.41 ID:91X8TfqXo


塔子「あら、いけない。もうこんな時間なのね。お買い物にいかなくちゃ」

夏目「・・・」

塔子「今晩の夕食時にでも続きを聞かせてくれないかしら」

夏目「・・・はい。滋さんにも聞いて欲しいです」

塔子「本当に・・・」ニコニコ

夏目「?」

633 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:19:42.25 ID:91X8TfqXo

夏目「よいしょ」

塔子「これからどこへ行くの?」

夏目「友人たちに会いに行こうと思って」

塔子「・・・」

夏目「今、独りでは居たくないんです」

塔子「・・・そう」

夏目「それじゃ、先に出ますね」

塔子「・・・えぇ。晩御飯は豪勢にするから、お腹すかせてきてね」ニコニコ

夏目「ふふ・・・。はい」

塔子「いってらっしゃい」

夏目「―――行ってきます」



                 終
634 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:25:29.27 ID:91X8TfqXo

感想ありがとうございます。とても嬉しいです。(ホッ)


あとはどうでもいいあとがき

今作でこのシリーズはお終わりです(長すぎた・・・)
最初から読んでくださった方、本当に頭が下がります。ありがとうございました


夏目はニャンコ先生と一緒じゃなければ、誰かに恋をしていたかもしれませんね
梓が危惧していた理由はそこにあります


美希のいう特別な人はPではなく律子です
律子とむぎは縁の下の力持ちという意味でそっくりなので、美希と梓は似ていると思いました(勝手なイメージ)

他にも出したい作品がありました
リトバスのクドとか、P4の鳴上悠・菜々子とか、
むぎ、梓、律がタイムリープしてるような箇所があるのでシュタゲも考えました
さすがにアレなんで自重した次第です


愚痴
上達しない自分の文章力・構成力にガッカリです


パラレルであり、独自の世界を行く物語
夏目と出会ったことでむぎの声が失われることはありません

梓はこれから相馬轍と出会いますが興味はもたれません。ですから衝突もなければ学ぶこともありません。
代わりにニャンコ先生との出会いで補っています
むぎの手を振り払う行為、夏目に言ってはいけない言葉を吐いたことが梓の旅の始まりになりました

9月には玉恵、夏と冬、樹と出会っていきます。
そして5年後のウィンタージャーニーへ収束していく物語ですね


紬「超特急ヴェガ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1301931951/

紬「いつかみた、あの大好きな、空の下で」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314870947/

紬「ウィンタージャーニー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1322729683/
635 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:26:14.66 ID:DK6I6TTXo
旅は良いよね
そして帰ってきた時の安堵感も良い
前のやつも読み返したくなる
乙乙
636 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:34:59.51 ID:91X8TfqXo

むぎの人を繋ぐという役目は
タマというコンチェルトノートに出てくるキャラがベースになっています
(エロゲ注意!! http://www.applique-soft.com/concerto/cha03.html
不幸の淵にある主人公・進矢に笑っていて欲しいタマ(神霊)が人と人を繋いでいく物語です。
タマは運を操作して人を繋ぎます(意図的ではないですが)。むぎは紅茶が媒体になっていますね
人格を失い、崩れた未来しかなかったヒロイン・莉都とそれを取り払った進矢との間にある絆
それを描いてみたいと思っていました。

むぎと梓がその役割になっていましたね。最初はむぎと澪だったんです。
紬「超特急ヴェガ?」で梓の成長がみられなかったので、紬「いつかみた〜」へ繋げたのです
それがむぎと梓の絆の物語へ変化していました。

次はそのコンチェルトノートの学生寮、月光館での共同生活を考えていたんですが、
またむぎと梓の構想になってしまったので止めました
けいおん部の行動がパターン化してしまってます


姫子と澪の北海道旅行も面白そうですが、いかんせんネタがないので難しいですね

ちなみに鳥羽修治はお嬢様特急2巻の主人公です。(星奈のヒロイン?)


長々々々と続いてきた物語(シリーズ)もようやく終わりです
総まとめとなる今回は好き勝手にやろうと思って描いたssでした
こんな稚拙な文章でしたが、付き合ってくださったみなさん、本当にありがとうございました
心から感謝です



夏目「超特急ヴェガ?」紬「超特急ヴェガです」

夏目友人帳 × けいおん × お嬢様特急 +α 
CHAOS;head noah(ガルガリ君ソーダ味)
GA 芸術科アートデザインクラス(ナミコ、キョージュ、ノダミキ、トモカネ、キサラギ)
ひだまりスケッチ(ゆの、宮子、沙英、ヒロ、夏目)
アイドルマスター(律子、美希、あずさ、真美、春香、やよい、伊織)
葛葉ライドウ (ライドウ、ゴウト、守護神の方々)
センチメンタルグラフティ(綾崎若菜)
風雨来記(島田光、滝沢玉恵)
我が家のお稲荷さま(天孤空幻、コウ、佐倉美咲、高上昇・透)
ときめきメモリアル2(九段下舞佳)
ときめきメモリアル4(エリサ・D・鳴瀬)
637 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:35:54.72 ID:SZGEBzNko
>>634
これって全部繋がってんの?
638 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 22:49:09.61 ID:91X8TfqXo
>>637
繋がってますよ。孤立させたつもりだったんですが、そうでもないみたいです(泣)
紬「いつかみた〜」は根気がいります。自分で書いておいてなんですが(涙

キャンプ経験があればもっと幅が広がっただろうに・・・悔しいっ
639 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage ]:2011/12/15(木) 22:54:19.90 ID:bVMIMfEUo
お疲れ様です。これで終わりなんですね



最後に教えてください
世の中、色々なアニメ、ラノベ、ビジュアルノベル、美少女ゲームが出ていますが
10年以上前の作品である
お嬢様特急をクロスさせようとおもったのですか?


640 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 23:10:11.24 ID:91X8TfqXo
>>639
単純に好きな作品だからですね

13年という時間が流れても作品に登場したキャラクターが生きているような感じといいましょうか……
小説版お嬢様特急3巻のあとがきに著作者:花田十輝が述べている言葉があります

『数年後あなたがこの本をなんの感情も持たずにゴミ箱を捨てる日が来ると思います。
 どうして買ったのだろう?と疑問を持って投げた瞬間、この作品に登場した彼女達が一瞬でも思い出されたのなら
 その時の為に彼女達は生まれてきたのです』

うろ覚えなので、ちょいニュアンスが違うと思いますが 
その言葉が印象的で忘れられない作品になっています

その花田十輝が脚本でけいおんに携わっているというので、けいおんを視聴したのが始まりです

風雨来記も同じくらい好きです。(3早く来い!)
641 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 23:12:41.20 ID:UkjGOUmAO
乙。

確かに文章力や場面構成に若干の薄さと不安定感が見受けられるが、執筆速度と書き続ける根気の良さが凄いと思った。

……と今後の>>1の活躍を期待し、マジレスしてみた。
642 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/15(木) 23:12:56.69 ID:SZGEBzNko
そうなのか
全部読んでみるよ、乙!
643 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/16(金) 08:50:47.74 ID:LOKbWKs0o
ようやく読み終わった更新早いと読むの大変だな

次また何かの作品であうの期待してる
644 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/17(土) 04:19:30.65 ID:w51SOcF1o
新作きていたことにhtml化依頼で気づいた
これから読むが、とりあえず乙
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