幼女魔王N「小さなお城で甘えたい」 母性巫女「晴れ渡る雨の新世界」

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192 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 21:02:10.32 ID:RTxEFThOo



トイーン トイーン……


母性巫女 (真っ暗……)

母性巫女 「……あ」


ポワ


母性巫女 (下の方に、ぽつんと明かりが……)


トイーン トイーン

トイーン……


幼女魔王の塔
隠された客室Y


……トイーン トイーン

スタ

テク テク テク


母性巫女 (……ここは、どこかの部屋?)

母性巫女 (穴の底というより、森の中にあるみたいだわ)


??? 「…………」


母性巫女 (窓辺に誰かいる)

母性巫女 (窓の外は、星空……)


??? 「…………」

生き人形 「…………」


母性巫女 (髪の長い……女の子?)


193 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 21:11:59.24 ID:RTxEFThOo


母性巫女 (揺れる夜の湖面みたいな髪の色)

母性巫女 (塔にいる子たちとは全然違う姿)

母性巫女 「あの……」


生き人形 「…………」


プイッ


母性巫女 「あ……」

母性巫女 (近づこうとしたら、そっぽ向かれた)

母性巫女 (拗ねているみたい)


生き人形 「…………」


ポソポソポソ


母性巫女 (何か話しているみたいだけれど、聞こえない)

母性巫女 「……もしかして、夜の風さん?」


生き人形 「………!」


母性巫女 「……?」

母性巫女 (固まった?)


生き人形 「〜〜〜〜……っ」


カアアア


母性巫女 (あっという間に顔が真っ赤に!)


194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/13(金) 22:14:02.71 ID:YoNOSrHWO
こっちでも微妙になんかこう黒花さんは黒花さんなんやね…
それにしても母性巫女強いな
195 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 22:53:49.18 ID:RTxEFThOo


母性巫女 (どうしよう)

母性巫女 (とりあえず抱きしめてみようか……)


生き人形 「…………」


ピョン タ タ タ タ


母性巫女 (逃げ出した)

母性巫女 「あ、待っ……」


生き人形 「…………」


タ タ タ タ


母性巫女 「……わっ」

母性巫女 (女の子の逃げた先の壁に……)


骨の仮面
美少年の仮面
黒花の仮面
馬の仮面
美女の仮面
正体の仮面
姫の仮面
魔王の仮面
妖精の仮面
角の仮面


母性巫女 (たくさんの仮面がかかっている)


196 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 23:00:11.90 ID:RTxEFThOo


生き人形 「…………」


生き人形 の 風乗り!
ふわりと浮いた!


ヒョイ スチャ


生き人形 は 黒花の仮面 を装備した!


生き人形 「…………」


母性巫女 (黒い花飾りをつけた仮面)

母性巫女 (まるで生きているみたい)


生き人形 「…………」


ギュ


母性巫女 (骨の仮面を抱きしめている)


生き人形 「…………あなた」

生き人形 「嫌い」


母性巫女 「えっ!」


197 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 00:27:44.08 ID:PQc19xido


母性巫女 (呼びつけられて、いきなり嫌われるなんて)

母性巫女 「あの……」


生き人形 「…………」


プイ


母性巫女 (すごく嫌われている)

母性巫女 (ここまで嫌われるほどのことをしちゃったのかしら……)

母性巫女 「あの、私、何か……」


生き人形 「…………」


ツーン


母性巫女 「……ご」

母性巫女 「ごめんなさい?」


生き人形 「…………」

生き人形 「……ハァ」

生き人形 「ようこそ。ここは塔の客室」

生き人形 「私は幼女魔王Y」

生き人形 「幼女魔王の中の、幼女魔王でない者」


母性巫女 (何かを諦められた)


198 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 00:37:26.21 ID:PQc19xido


生き人形 「あなたが幼女魔王会議の場で見た私は、私の仮面のひとつ」

幼女魔王Y 「あなたの前にいる私もまた、仮面にすぎない」

幼女魔王Y 「私には名前も、正体もない」

幼女魔王Y 「なぜなら私でさえも知らないから」

幼女魔王Y 「それは、どうでも良い話」

幼女魔王Y 「大事なことは、私が、本来ならばこの塔にいるはずがないということ」

幼女魔王Y 「ここが、客室であるということ」


母性巫女 (客室……本来ならいない……)


幼女魔王Y 「どのように大事かを感じるには」

幼女魔王Y 「ここが何であるのかを知らなければならない」





199 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 00:50:48.28 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「幼女魔王の塔とはすなわち何か」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (たくさんのあの子がいる、あの子の名前の塔)

母性巫女 (分からないけど、まるで)

母性巫女 「あの子そのもの……?」


幼女魔王Y 「幼女魔王そのもの」

幼女魔王Y 「その通り」

幼女魔王Y 「ここは幼女魔王という個人」

幼女魔王Y 「幼女魔王という、ひとつの世界」



200 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 01:01:54.77 ID:PQc19xido


母性巫女 「世界……」


幼女魔王Y 「個と個の境界線」

幼女魔王Y 「世界と世界の境界線」

幼女魔王Y 「個は、ひとつの世界そのもの」


母性巫女 「……ここは、あの子の中なんでしょうか?」


幼女魔王Y 「知らない」


プイ


母性巫女 「えー……」


幼女魔王Y 「幼女魔王という存在であることは間違いない」

幼女魔王Y 「中にいるのかは知らない」

幼女魔王Y 「あなたが幼女魔王を抱き上げることと、ここにこうしていることは」

幼女魔王Y 「あまり違いが無いことなのかもしれない」


母性巫女 「…………?」





201 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 01:47:02.77 ID:PQc19xido



母性巫女 「…………」

母性巫女 「とにかく、ここはあの子そのものなんですね」


幼女魔王Y 「…………それで良い」

幼女魔王Y 「それが分かれば、この塔について気づくこともある」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (……入り組んだ回廊、ところどころに空いた穴)

母性巫女 (たくさんのあの子。出席者はあの子だらけなのに、まとまらない会議)

母性巫女 (いなくなった子。崩れ落ちた子……)

母性巫女 (地下牢……棺、男の人の声、あの笑い声……)


幼女魔王Y 「ここにある物すべてが、幼女魔王という存在に不可欠のもの」

幼女魔王Y 「というよりも、ここにある物によって、幼女魔王という存在は組みあがっている」


母性巫女 「は、はあ……」


幼女魔王Y 「塔という入れ物と、その中でうごめく幼女魔王たち」

幼女魔王Y 「そのうごめくものたちの中で異質なもの」

幼女魔王Y 「私と、私と同じように客室にいる者たち、そしてあなた」


母性巫女 「異質……」


幼女魔王Y 「幼女魔王の中で、幼女魔王になりきれないもの」

幼女魔王Y 「幼女魔王が客として扱わざるを得ないもの」


母性巫女 「うーん……?」


幼女魔王Y 「あなたは、幼女魔王では無いでしょう?」


母性巫女 「はい……」


幼女魔王Y 「それを自覚できるのに、ここにいる」

幼女魔王Y 「それは、ここではとても不自然なことなのよ」

幼女魔王Y 「まるまる幼女魔王という存在であるべきなのに、そうでない」

202 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 03:49:03.36 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「この塔に私やあなたがいる限り、幼女魔王は、幼女魔王でありながらそうでないことになる」

幼女魔王Y 「自分でありながら自分でない」

幼女魔王Y 「それがどれほど大きな負担になるか、あなたは想像できる?」


母性巫女 「それは、いいえ……」


幼女魔王Y 「なのに幼女魔王の塔にはいくつも客室がある」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在は、いくつかの異なる存在を抱えながら」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在であり続けている」


母性巫女 (あの子であり続けている……)

母性巫女 「そうでしょうか。塔はぼろぼろだし、あの子と会ったとき、とても問題が無いようには見えませんでした」


幼女魔王Y 「これでも、ましになった方なのよ」


母性巫女 「え……」


幼女魔王Y 「私がここに来たとき、すでに広場より下は誰も住めないところになっていたけれど」

幼女魔王Y 「上もまた、塔と呼べるようなものではなかった」

幼女魔王Y 「壁は穴の方が大きくて、つくりかけのようでもあったし、なおしかけのようでもあった」

幼女魔王Y 「幼女魔王たちは眠っているのか死んでいるのか分からないくらい、とにかくあまり動くことが無かった」


母性巫女 (一度滅んだ塔……)


幼女魔王Y 「けれど、日に日に壁の穴は小さくなり、それにつれて幼女魔王たちの動く時間が増えていった」

幼女魔王Y 「そして誰が何をしたのかも分からないままに、ここは幼女魔王の塔と呼べるまでになった」


203 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 04:01:53.52 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「自分というものは、周囲によって形づくられる部分もあるけれど」

幼女魔王Y 「幼女魔王の場合、それがほとんどだった」

幼女魔王Y 「自分で形づくる部分が、まったく無かったと言っても過言では無いと思う」

幼女魔王Y 「誰かから無理矢理、幼女魔王という形にさせられている」

幼女魔王Y 「そんな印象を受けた」


母性巫女 「誰かから……」


幼女魔王Y 「それは正しいことだったのかもしれない」

幼女魔王Y 「あのままでは、今もここは瓦礫の山だったかもしれないし」

幼女魔王Y 「もしかしたら、もっとひどいことになっていたかもしれない」


母性巫女 「いったい、あの子に何が……」


幼女魔王Y 「さあ?」

幼女魔王Y 「ただ、このところ崩れだした今の塔でも」

幼女魔王Y 「あの頃よりは遥かにましということは確かよ」


204 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 04:24:28.38 ID:PQc19xido


母性巫女 「……あなたは、この塔についてどれくらい知っているんですか」


幼女魔王Y 「知らない」


プイ


母性巫女 (かわいい)


幼女魔王Y 「この塔の全容が分からないから、私がどれくらい知っているかも分からない」

幼女魔王Y 「ただ、思うこと、考えることはやめていない……」


ギュ……


母性巫女 (骨の仮面……大事なものなのかしら)


幼女魔王Y 「私からこぼれた私がここにいる意味」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在」

幼女魔王Y 「思って、考えて、確かめながら、ここでじっとしている」


母性巫女 「じっと……」


幼女魔王Y 「私は、あくまで客」

幼女魔王Y 「この塔の主人は、幼女魔王」

幼女魔王Y 「塔の主人が私のもてなし方を決めるまで、無闇に出歩くことはしない」

幼女魔王Y 「もてなしを待って、もうずい分たつけれど」


母性巫女 「……会議に現れたのは?」


幼女魔王Y 「あなたがいたから」


母性巫女 「私が?」


幼女魔王Y 「私と同じだから」

幼女魔王Y 「そして、私と違うから」

幼女魔王Y 「あなたは、私とは違う方法でここに来た」

幼女魔王Y 「とても危険なことだと思ったから」



205 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 05:26:18.80 ID:PQc19xido


母性巫女 「危険……」


幼女魔王Y 「そんな気がしただけ」

幼女魔王Y 「あなたがこの塔そのものを、崩してしまいそうな」


母性巫女 「私、そんなつもりありませんよ」


幼女魔王Y 「だから、危険だと思ったのよ」

幼女魔王Y 「そのつもりが無くても、そうしてしまう」

幼女魔王Y 「これほど厄介なことは無い」


母性巫女 「でも、私は……あ」

母性巫女 (そのつもりが無くても、そうしてしまう)

母性巫女 (この子に嫌われるつもりがないのに、嫌われてしまった)

母性巫女 (記録魔にも、そんなつもり無いのに嫌われた……)

母性巫女 (……もしかして、私ってすごく悪い人なのかしら)


幼女魔王Y 「自覚はあるようね」



206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/14(土) 12:54:14.42 ID:jXY46BY+o
更新乙
207 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 15:05:25.41 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「ここは幼女魔王そのもの」

幼女魔王Y 「何が、彼女に深刻な変化をもたらすか分からない」

幼女魔王Y 「いつの間にか、幼女魔王の塔があなたの塔とか私の塔になってしまっているかもしれない」

幼女魔王Y 「本当なら、塔の幼女魔王たちとはなるべく接触しない方が良いのだけれど」


母性巫女 「気をつけます……」

母性巫女 「あの、もしかして、この塔の床が崩れだしたのは、私がここに来て、あの子たちと会ったからでしょうか」


幼女魔王Y 「関係ないとは言えないけれど」

幼女魔王Y 「崩れだしたのは、あなたの来るずっと前からよ」


208 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 15:26:57.93 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「瓦礫の山が塔になった頃から」

幼女魔王Y 「幼女魔王たちは活発に動くようになり、幼女魔王の塔、幼女魔王そのものは」

幼女魔王Y 「個としての存在を確立できるようになった」

幼女魔王Y 「地下の棺が確認されたのもその頃」

幼女魔王Y 「しかし、やがて幼女魔王たちは、塔に疑問を持つようになった」

幼女魔王Y 「自分たちの名を冠する塔が、自分たちの知らない間に造られたことに、初めて違和感をおぼえた」

幼女魔王Y 「彼女たちは会議を重ねたが、結局どうすることもできなかった」

幼女魔王Y 「塔の造り方など分からないし、崩すわけにもいかない」

幼女魔王Y 「地下に巣食う棺を越えることもできない」


母性巫女 「あの棺は、何なんでしょう」

母性巫女 「あれも、あの子なんでしょうか」


幼女魔王Y 「知らない」


母性巫女 「あの子たちは、三つの怖いものに数えていましたけど……」


幼女魔王Y 「怖いもの」

幼女魔王Y 「幼女魔王の恐怖」

幼女魔王Y 「得体の知れないもの」

幼女魔王Y 「未知のものほど恐ろしい」


母性巫女 「未知……知らない」


幼女魔王Y 「あれもまた、私やあなたと同じ、客」

幼女魔王Y 「幼女魔王がもてなすことのできない、招かざる客」




209 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 15:47:01.03 ID:PQc19xido


母性巫女 「あれが、私たちと同じ……」


幼女魔王Y 「男の声と毛玉は、新しい」

幼女魔王Y 「二つとも、ほぼ同じころに現れた」

幼女魔王Y 「そして、幼女魔王Kがいなくなったのは、そのころ」


母性巫女 「K……本物の?」


幼女魔王Y 「そう。幼女魔王Kは、あなたではない」

幼女魔王Y 「Kは、最も短命だった」

幼女魔王Y 「彼女が生まれたすぐあとに男の声が生まれ」

幼女魔王Y 「彼女が消えたすぐあとに毛玉が生まれた」

幼女魔王Y 「不思議なことに、幼女魔王たちはそのことを、Kという存在そのものを忘れている」


母性巫女 「…………」


幼女魔王Y 「なのに彼女があなたに幼女魔王Kという名前をつけたのは」

幼女魔王Y 「あなたにその面影を求めたからなのか」


母性巫女 「私に?」


幼女魔王Y 「幼女魔王Kに心当たりは?」


母性巫女 「いえ、全く……」


幼女魔王Y 「Kのいるわずかの間、塔には幸せがあった」

幼女魔王Y 「失くしたことを忘れなくてはならないほど」

幼女魔王Y 「彼女にとって、それは大きな幸せだった」

幼女魔王Y 「では、彼女にとっての大きな不幸せとは何か」


母性巫女 「…………」

母性巫女 「ひとりぼっち」


幼女魔王Y 「孤独」

幼女魔王Y 「彼女が知ることのできる、未知とは違う恐怖」


210 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 20:28:11.37 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「塔がKを失くしたとき」

幼女魔王Y 「塔の何かが変わった」

幼女魔王Y 「何か大きなものが目覚め、いなくなった」


母性巫女 「何か?」


幼女魔王Y 「そう、何か」

幼女魔王Y 「塔の地下深くに眠っていた、何か」

幼女魔王Y 「私は塔に来て少し後から、それを感じていた」

幼女魔王Y 「たぶん、幼女魔王たちは、塔のできる前から感じていたのだと思う」

幼女魔王Y 「感じて、おそれていたのだと思う」


母性巫女 「その何かって、何なんでしょう」


幼女魔王Y 「知らない」

幼女魔王Y 「けれど、想像することはできる」


母性巫女 「はあ……」


幼女魔王Y 「…………」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (考えろということかしら)


幼女魔王Y 「……想像することはできる」


母性巫女 「……聞かせてもらえますか?」


211 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 20:33:15.26 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「塔の地下深く」

幼女魔王Y 「棺のいる地下牢より、もっと深いところにいた何か」

幼女魔王Y 「それこそが、幼女魔王」

幼女魔王Y 「真の彼女」


母性巫女 「え……」

母性巫女 (一度滅んだ塔……じゃあ、滅ぶ前の……?)


幼女魔王Y 「幼女魔王たちがそれをおそれていたのは」

幼女魔王Y 「それが本物だから」

幼女魔王Y 「自分たちが、偽物だから」


212 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 20:49:13.83 ID:PQc19xido



母性巫女 「あの子が、にせもの……」


幼女魔王Y 「あのとき失ったのは、塔の本当の主」

幼女魔王Y 「つまり失われたのは、この塔の方」

幼女魔王Y 「この塔は抜け殻」


母性巫女 「抜け殻……」


幼女魔王Y 「なぜ、何かはこの塔を取り戻すのではなく捨てたのか」

幼女魔王Y 「それは知らない」

幼女魔王Y 「あるいは、誰かによって連れ去られたのかもしれない」

幼女魔王Y 「とにかく、この塔は抜け殻となり」

幼女魔王Y 「そして、完全に個となるために動き始めることとなった」


母性巫女 「完全に……?」


幼女魔王Y 「抜け殻のまま、朽ちていくことができなかった」

幼女魔王Y 「なぜか?」

幼女魔王Y 「滅んだ塔の上、誰かによって造られた仮初の塔」

幼女魔王Y 「ここがなぜ、今も存在し続けられるのか」

幼女魔王Y 「理由は知らない」


213 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 21:31:26.77 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「真の主を失くしてもこの塔が崩壊しなかったのは」

幼女魔王Y 「私がここに来た理由と関係があるのかもしれない」

幼女魔王Y 「この塔を造ったものが関係しているのかもしれない」

幼女魔王Y 「彼女が強い存在だったから? 誰かと出会ったから?」

幼女魔王Y 「それとも一度魂の入った人形は」

幼女魔王Y 「生きていると言って良いの……?」


ギュ……


骨の仮面


母性巫女 「…………」

母性巫女 (そうだ。出会ったころのあの子は……)


幼女魔王Y 「崩壊を始めたのは、あなたの来る少し前」

幼女魔王Y 「Nが姿を消してから」


母性巫女 (N……)

母性巫女 「じゃあ、やっぱり、Nを見つけ出さなくちゃいけないということでしょうか」


幼女魔王Y 「どうかしら」


母性巫女 「会議をまとめていたのはNだと言っていました」

母性巫女 「あの子がいなくなって、塔が崩れだしたなら、そういうことじゃないんでしょうか」


幼女魔王Y 「……知らない」

幼女魔王Y 「幼女魔王Nとは何か」

幼女魔王Y 「それを、彼女たちは知らない」

214 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 00:21:46.55 ID:mYSuAd2go


幼女魔王Y 「あなたの来るずっと前に、塔は崩れだしていた」

幼女魔王Y 「あなたの来る少し前に、塔は崩れだしていた」


母性巫女 (……ん?)


幼女魔王Y 「この違いに、彼女たちは気づかない」

幼女魔王Y 「塔は、常に崩壊と再生を繰り返すもの」

幼女魔王Y 「常にどこかが崩れ、直し、少しずつ姿を変えていく」

幼女魔王Y 「Nが姿を消して始まった致命的な崩壊と、常にある崩壊の違いに気づけない」


母性巫女 「……つまり、やっぱりNを見つけないと」


幼女魔王Y 「だから、いけない」


母性巫女 「え……」


幼女魔王Y 「どちらの崩壊も、あなたがここに来たから起きているわけではない」

幼女魔王Y 「ならば、なおすのは彼女たちにやらせるべき」

幼女魔王Y 「そしてあなたは幼女魔王Nを探してはいけない」

幼女魔王Y 「見つけるのは、幼女魔王たちでなくてはならない」


母性巫女 「でも……」


幼女魔王Y 「でも?」


母性巫女 「放っておくなんて、そんなこと、できません」


幼女魔王Y 「できないといけない。ここはそういう場所」

幼女魔王Y 「もし、あなたが彼女たちと一緒に幼女魔王Nを探し続ければ」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在が大きく歪んでしまうかもしれない」


母性巫女 「そんなこと……やってみないと」


幼女魔王Y 「あなたが彼女を抱きかかえることと、ここにこうしていることは変わらないかもしれないと言ったでしょう」

幼女魔王Y 「ここでは、あなたの常識は通じないの」

幼女魔王Y 「助けるつもりが、傷つけることになりかねない」


215 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 00:36:47.27 ID:mYSuAd2go


母性巫女 「このまま塔が崩れていったら、どうなるんですか」


幼女魔王Y 「塔は滅ぶ」

幼女魔王Y 「つまり、幼女魔王という存在が崩壊する」


母性巫女 「だったら、私やあなたもNを探した方が……」


幼女魔王Y 「いけないと言っている」

幼女魔王Y 「これは幼女魔王自身の問題」

幼女魔王Y 「結果がどうなろうとも、私たちは見守らなければならない」


母性巫女 「そんな……」


幼女魔王Y 「見守ってあげるのも、優しさ」


母性巫女 「でも、それであの子が取り返しのつかない大きな傷を負ってしまったら」


幼女魔王Y 「それは、仕方ないことよ」

幼女魔王Y 「彼女がその程度でしかなかったということよ」

幼女魔王Y 「生きていくだけの力が無かったということ」


母性巫女 「仕方ない……?」


216 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 02:43:25.84 ID:mYSuAd2go


幼女魔王Y 「そう、切ない言い方だけれど、仕方な……」


母性巫女 「仕方ないで済ませられるわけ、ありません」

母性巫女 「だって、だってあの子は」

母性巫女 (あんなにか弱くて、心がやわらかくて……)


幼女魔王Y 「彼女が、何だというの。……あなたは、幼女魔王の何なの」


母性巫女 「私は……」

母性巫女 「私は……」


幼女魔王Y 「なぜ、あなたはここに来たの」


母性巫女 「なぜ……」

母性巫女 (波魔法少女の力を借りて、私の過去と交差するために……)

母性巫女 (それが理由だったはずだけれど)

母性巫女 (じゃあ、どうしてこの塔に来たの……?)


幼女魔王Y 「自分という存在について答えられない」

幼女魔王Y 「なのに、他の存在のために何かをしてやろうというの」


母性巫女 「そんなつもりは……」


幼女魔王Y 「そうしようとしていたじゃない」


母性巫女 「…………」


幼女魔王Y 「彼女たちとともに探し物をするべきではないの」

幼女魔王Y 「あなたはあなた。幼女魔王ではないし、幼女魔王にはなれない」

幼女魔王Y 「この塔にいるのなら、手を差し伸べるのではなく、見守りなさい」


母性巫女 「…………」



217 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 03:12:31.01 ID:mYSuAd2go


母性巫女 「あの子が崩れていくのを、黙って見ているなんて」

母性巫女 「そんなの、耐えられません……」


幼女魔王Y 「…………」

幼女魔王Y 「……分からずや」



カタ カタタタ……



母性巫女 「……!」


壁の仮面たち が あやしげに震えだした……


幼女魔王Y 「だったら、ずっと、この部屋にいなさい」


フワリ


母性巫女 (浮いた……)


幼女魔王Y 「すべてが落ち着くまで」


フワ フワ

キイイイ


幼女魔王Yの姿が かわっていく!


幼女魔王Y 「私は血のひとしずく。私からはがされた仮面」

幼女魔王Y 「無限の顔を持つ湖のエルフォ、そのひとかけら」

幼女魔王Y 「けれど心はかけらにして、私そのもの」

幼女魔王Y 「私は百の顔を持つ、心ある魔力」

百面エルフ 「幼女魔王のもてなしを待つ一人、腐敗の力の主」


百面エルフ が 現れた!
仮面の群れ が 現れた!



カタ カタタタ


骨の仮面


母性巫女 (Yの抱いていた仮面が……)


骨仮面の剣士 「…………」


母性巫女 (人の姿に……)


骨仮面の剣士 が 現れた!




218 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/15(日) 04:01:25.90 ID:58gucKu1o
更新乙
219 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 05:22:41.20 ID:mYSuAd2go



淫魔幼女の攻略メモ



■異界の仮面

 種族 : 魔法
 落とすもの : 仮面のかけら(1/4)
          ひみつの蜜(1/512)

 通常攻撃と低威力の攻撃魔法を使ってくる。
 能力は低いものの、一緒に現れるボスの回復魔法が厄介なので
 必ず一度の攻撃で倒してしまいたいところ。 
 ボスへの範囲攻撃に巻き込んでしまうのも有効だ。



■百面エルフ(ボス)

 種族 : ??? / エルフ
 半減 : 火・水・土・腐敗・魔法
 無効 : 死・状態異常
 吸収 : 風・闇 
 弱点 : 性・無・武器
 特殊体質 : 血の呪い・魔法の化身・一途
 落とす物 : エルフ草(1/1)
         東王の紋章(1/4)
         葉巻のレシピ(1/8)
         流体の杖(1/32)
         ひみつの肖像画(1/4096)


ターン開始ごとに、「腐敗の風」でこちら側の全ユニットの能力を大幅に低下させてくる。
二回行動と高威力の範囲攻撃魔法を持っているが、味方の強化や回復を優先するため、
こちらに攻撃してくることはほとんど無い。

一緒に現れる骨仮面を先に倒すと防御力が0になるが、「腐敗の風」が自分以外の全ユニットに大ダメージをあたえる
「魔王の風」に変化し、攻撃魔法を連発するようになってしまうので注意。

ときどき骨仮面の剣士を攻撃するが、理由は不明。
 


■骨仮面の剣士(ボス)

 種族 : ???/人間? 
 無効 : 死・状態異常 
 特殊体質 : 天恵・殺人狂・ハルピュイアの加護・黒花の騎士
 落とす物 : 黒い羽根(1/1)
         西姫の紋章(1/4)
         黒い首巻き(1/16)       
         勇者ごろしの剣(1/64)
         えびドリアのレシピ(1/512)


属性半減や吸収を持たないが、防御力と回避力が高く、HPは百面エルフの三倍もある。 
百面エルフが優先的に強化する対象となっており、このマップ最大の敵として立ちはだかる。

攻撃のクリティカル率が高く、さらに特殊体質によりこちらの耐性が実質無効化されてしまうため、
思わぬ大ダメージに気をつけよう。厄介なカウンターと三回行動を持っているので、攻撃を受ける回数を減らすため
なるべく離れて戦うと良いだろう。

百面エルフを先に倒すと瞬時にHPが全回復し、クリティカル率と攻撃力が大きく上昇、
行動回数も五回が増え、強力な全範囲攻撃を連発してくる。
 
こちらを先に倒して同じターンに百面のエルフへ総攻撃をかけるか、二体とも同時に倒してしまいたい。  

 

…………          

ラスボスを凌ぐ終盤屈指の強敵が、二体も出現するこのマップ。
出撃可能ユニットは母性巫女のみ。

彼女の出撃するマップで苦戦することは無かったはずだが、このマップでは油断するとあっという間に敗北してしまうかもしれない。
強化魔法や、直前に習得した、行動回数をランダムに増やす「多段跳び」を駆使して辛抱強く戦おう。
特殊体質「母乳」をおぼえておくと、回復の手段が増えてぐっと戦闘が楽になるぞ。

実はこれまでの行動によって、戦闘そのものを回避することができる。
しかしその場合「ひみつの肖像画」は絶対に手に入らなくなるので注意。


220 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 05:45:42.03 ID:mYSuAd2go
<お詫び>
>>219 にて 誤りがありました。


正)



淫魔幼女の攻略メモ


■異界の仮面

 種族 : 魔法
 落とすもの : 仮面のかけら(1/4)
          ひみつの蜜(1/512)

 通常攻撃と低威力の攻撃魔法を使ってくる。

 能力は低いものの、一緒に現れるボスの回復魔法が厄介なので
 必ず一度の攻撃で倒してしまいたいところ。 
 ボスへの範囲攻撃に巻き込んでしまうのも有効だ。



■百面エルフ(ボス)

 種族 : ??? / エルフ
 半減 : 火・水・土・腐敗・魔法
 無効 : 死・状態異常
 吸収 : 風・闇 
 弱点 : 性・無・武器
 特殊体質 : 血の呪い・魔法の化身・一途
 落とす物 : エルフ草(1/1)
         東王の紋章(1/4)
         葉巻のレシピ(1/8)
         流体の杖(1/32)
         ひみつの肖像画(1/8192)

ターン開始ごとに、「腐敗の風」でこちら側の全ユニットの能力を大幅に低下させてくる。
二回行動と高威力の範囲攻撃魔法を持っているが、味方の強化や回復を優先するため、
こちらに攻撃してくることはほとんど無い。

一緒に現れる骨仮面を先に倒すと防御力が0になるが、「腐敗の風」が自分以外の全ユニットに大ダメージをあたえる
「無情の風」に変化し、攻撃魔法を連発するようになってしまうので注意。

ときどき骨仮面の剣士を攻撃するが、理由は不明。
 


■骨仮面の剣士(ボス)

 種族 : ???/人間? 
 無効 : 死・状態異常 
 特殊体質 : 天恵・殺人狂・ハルピュイアの加護・黒花の騎士
 落とす物 : 黒い羽根(1/1)
         西姫の紋章(1/4)
         黒い首巻き(1/16)       
         勇者ごろしの剣(1/64)
         えびドリアのレシピ(1/512)

属性半減や吸収を持たないが、防御力と回避力が高く、HPは百面エルフの三倍もある。 
百面エルフが優先的に強化する対象となっており、このマップ最大の敵として立ちはだかる。

攻撃のクリティカル率が高く、さらに特殊体質によりこちらの耐性が実質無効化されてしまうため、
思わぬ大ダメージに気をつけよう。厄介なカウンターと三回行動を持っているので、攻撃を受ける回数を減らすため
なるべく離れて戦うと良いだろう。

百面エルフを先に倒すと瞬時にHPが全回復し、クリティカル率と攻撃力が大きく上昇、
行動回数が八回に増え、強力な全範囲攻撃を連発してくる。
 
こちらを先に倒して同じターンに百面エルフへ総攻撃をかけるか、二体とも同時に倒してしまいたい。    


…………          

ラスボスを凌ぐ終盤屈指の強敵が、二体も出現するこのマップ。
出撃可能ユニットは母性巫女のみ。

これまで彼女の出撃する戦闘で苦戦することは無かったはずだが、このマップでは油断するとあっという間に敗北してしまうかもしれない。
強化魔法や、直前に習得した、行動回数をランダムに増やす「多段跳び」を駆使して辛抱強く戦おう。
特殊体質「母乳」をおぼえておくと、回復の手段が増えてぐっと楽になるぞ。

実はこれまでの行動によって、戦闘そのものを回避することができる。
しかしその場合「ひみつの肖像画」は絶対に手に入らなくなるので注意。
221 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 05:59:34.57 ID:mYSuAd2go




仮面の群れ 「…………」


フヨ フヨ フヨ


百面エルフ 「…………」


フワン フワン


骨仮面の剣士 「…………」




母性巫女 「…………」

母性巫女 「あの子たちのところへ帰ります」


百面エルフ 「どうぞ、ご勝手に」

百面エルフ 「私を越えて行けるのなら……」


ヒュオオオ


百面エルフの 腐敗の風!
母性巫女は 笑いをこらえた!
母性巫女の全能力が がくっと下がった! 


母性巫女 「………っ」

母性巫女 (身体の力が抜けていく)

母性巫女 (……頑張らなきゃ)


母性巫女は 頑張った!
母性巫女の全能力が ぐーんと上がった!
なんと 母性巫女のバストサイズが 少し上がった!


母性巫女 (……よし)

母性巫女 (何か変なことが起きた気がするけど)

母性巫女 (よし)


222 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 06:20:20.09 ID:mYSuAd2go


仮面の群れ 「…………」


ヒュン ヒュン ヒュン


母性巫女 (仮面がすごい勢いでこちらにやってくる)

母性巫女 「えいっ!」


母性巫女の 攻撃!
急所に あたった!
仮面の群れ に 7000の ダメージ!


パリン パリン パリン


母性巫女 (良かった。脆い……)

母性巫女 「!」


骨仮面の剣士 「…………」


母性巫女 (いつの間に……)


骨仮面の剣士 「……!」


ヒュオン


骨仮面の剣士 の 不意打ち攻撃!
冷徹な斬撃が おそいかかる!


母性巫女 「うっ……!」


ピョン


母性巫女の 多段跳び!
そこそこできた!
行動回数が 三回増えた!


母性巫女 (かわせた……危なかっ……)


骨仮面の剣士 「…………」


タンッ ヒュオ


母性巫女 「え……」

母性巫女 (速っ……)


223 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 06:28:17.93 ID:mYSuAd2go



骨仮面の剣士 「……!」


ザン


母性巫女 「きゃっ……!」


ヒラリ スパッ

スタ


母性巫女 (……何とかかわせた)

母性巫女 (でも、服が……)


ハラリ


母性巫女 (やだ、下着が見えちゃう。恥ずかしい)

母性巫女 (服の面積が小さくて下着もつけなかったら、こんなに恥ずかしくないのに……)

母性巫女 (あっ……いけない、戦いの途中でこんなこと考えちゃ……!)


骨仮面の剣士 「…………!」


母性巫女 (距離をとったのに、もう目の前に……!)

母性巫女 (こうなったら、ドラゴンの足を全部骨折させちゃうキックを使うしか……)


百面エルフの 魔法攻撃!
謎の一撃が おそいかかる!
骨仮面の剣士に 700の ダメージ!


骨仮面の剣士 「!?」


母性巫女 「!?」


 

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/15(日) 14:14:54.63 ID:oq9kfJQ00
ひみつの肖像画の確率めっちゃ下がっとるwwww
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/15(日) 14:46:57.54 ID:x7XOg8NrO
ひみつの肖像画って王子の爽やか笑顔だろうか、それともお見合い写真の方だろうか
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 15:01:27.67 ID:u42GSW/hO
ドラゴンの足全部骨折させるキックってなんだよ怖いよ
227 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 02:15:24.90 ID:u4SxDi1eo


骨仮面の剣士 「!?」


骨仮面の剣士は 混乱している!


百面エルフ 「…………」


プイ


母性巫女 (何が起きたの)

母性巫女 (同士討ち……?)


骨仮面の剣士 「…………」

骨仮面の剣士 「…………」


バッ


母性巫女 「!!」

母性巫女 (片手を突き出してきた)

母性巫女 (魔法……!?)


骨仮面の剣士 「…………」


母性巫女 「…………?」

母性巫女 (動かない?)


骨仮面の剣士 「…………」


骨仮面の剣士 は 一時停戦を 申し出ている!


母性巫女 (……もしかして、ちょっと待ってってこと?)

母性巫女 「ど、どうぞ?」


骨仮面の剣士 「…………」


ペコリ

スタスタスタ


母性巫女 (仮面の女の子の方へ歩いていく……)



228 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 02:22:49.35 ID:u4SxDi1eo


スタスタスタ


骨仮面の剣士 「…………」


百面エルフ 「…………」


プイ


骨仮面の剣士 「…………」


百面エルフ 「…………」


ツーン



母性巫女 (何かもめているみたい)

母性巫女 (今のうちに、服をどうにかしよう)

母性巫女 (まずは下着をとって……)


ガサ ゴソ

ポヨン


母性巫女 は ぺたんこブラを 外した


母性巫女 (胸元の破れた服は……そうだわ、後ろ前にしちゃおう)

母性巫女 (下着はポケットに入れて……)


ガサ ゴ……

キイイイ


母性巫女 「……?」

母性巫女 (熱い? ポケットの中……)


ガサ ゴソ


釜のかけら が 輝いている……


母性巫女 「……これは」


229 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 02:46:22.09 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 (たしか、いつだったか青白い顔のメイドの人に貰った、釜のかけら)

母性巫女 (すっかり忘れてた……)


釜のかけらは 母性巫女を 持ち主と 認めた!
釜のかけらは 世界を越える力を 帯びた!


キイン キイン キイン


母性巫女 (小さなかけらから、不思議な力を感じる)

母性巫女 (軽いのにとても重たくて、やわらかくて、あたたかい……)

母性巫女 (メイドの人は、世界を越えることが出来ると言っていたっけ)

母性巫女 (どうして今、光りだしたんだろう)

母性巫女 (……服を後ろ前に着たから?)


キイン キイン


釜のかけらが 母性巫女の記憶を 読み取った!
釜のかけらが いくつかの行き場所を 示す……
▼幼女魔王の塔
  幼女魔王の城
  精霊の森
  死神の裏道
  淫獣霊の胎
 

母性巫女 (これで世界を渡る……)

母性巫女 (ここから抜け出せる?)



230 :J分岐点くらい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 02:51:19.48 ID:u4SxDi1eo


>>231


どこへ渡る?

▼幼女魔王の塔
  幼女魔王の城
  精霊の森
  死神の裏道
  淫獣霊の胎



231 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 02:56:07.67 ID:u4SxDi1eo


幼女魔王の塔


  


232 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 03:07:27.16 ID:u4SxDi1eo



キイン キイン


母性巫女 (釜のかけらを使えば、違う世界へ行けるなら)

母性巫女 (どこへ行こう……)

母性巫女 (お城に戻る?)

母性巫女 (戻る……? 私の戻る場所は……)


キイン キイン


母性巫女 (…………ああ)

母性巫女 (そうだ、あの子たちと約束していたんだった)

母性巫女 (まずは、そこへ行かなくちゃ……)


キイン キイン

パキンッ


母性巫女 「!」

母性巫女 (何か割れる音……)


ピシ ピシ ピシ


母性巫女 (目の前……何も無いところにヒビが走っていく)


バリン


越界の門が 開いた!


母性巫女 「目の前の空気が割れた…………?」

母性巫女 (ここに飛び込めということ?)



233 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 03:08:51.98 ID:u4SxDi1eo


ヨン ヨン ヨン ヨン


母性巫女 (毒々しい暗い光が混ざり合っているけど)

母性巫女 (大丈夫かしら。病気になったりしないのかしら……)



百面のエルフ 「行かせない……!」


キイイイ


骨仮面の剣士 「…………!」


タンッ…… 



母性巫女 (仮面の二人に気づかれた!)

母性巫女 (今まで気づかなかったんだ……)

母性巫女 「……ええいっ」


ピョン


母性巫女は 世界を渡った!


ヨン ヨン ヨン ヨン……

234 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 03:17:49.81 ID:u4SxDi1eo


ヨン ヨン ヨン ヨン

ポイッ 

ドサ


母性巫女 「ぁんッ……」

母性巫女 「うーん……」

母性巫女 (尻餅ついちゃった)

母性巫女 (飛び込まない方が良かったのかしら)


キイン キイン 

ピシ ピシ ピシ


越界の門は 閉じてしまった…… 



母性巫女 「ここは……」




幼女魔王の塔



母性巫女 「戻れたみたいね……」





235 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 05:32:53.53 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 (世界を渡るって、変な感じ)

母性巫女 (馬車や船での移動とは全然違う)

母性巫女 (何と言うか、剥がれるような……)


シイン


母性巫女 (……ここは塔のどのあたりなのかしら)

母性巫女 (AとMの近くに出られていたら良いけれど……)


……ザザア ン ザザア ン


母性巫女 「……波の音?」


ザザア

ザザア


母性巫女 (近くに海があるのかしら)

母性巫女 (気持ちの良い音。何だか、眠たくなってくる……)

母性巫女 (…………)


ザザア ン

ザザア ン

…………



236 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 05:41:46.37 ID:u4SxDi1eo


…………


チュブ ブジュルル


母性巫女 「…………!」

母性巫女 (……私、眠っていた?)


異形の大男 「フーッ、フーッ……」


チウ チウ


母性巫女 「……ッ、あ、う……」


ビクン


母性巫女 (そうだ、階段で男の人の呼び声に答えて)

母性巫女 (そうしたら身体の力が抜けて、動けなくなって)


異形の大男 「ひひっ……ひひひ……」


ハミュ カジカジカジ


母性巫女 「ひぅっ……ひっ、ぃん……」

母性巫女 (かけ上がってきた、大猿と人間が混ざったようなモンスターに捕まったんだ……)



237 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 05:56:05.82 ID:u4SxDi1eo


異形の大男 「カハァ」


ベロン レロレロレロ

モニュ モニュ モニュ


母性巫女 「ひゃっ」

母性巫女 「ゃめ……ぁっ……ぁ、あっ……!」

母性巫女 (私、よだれ垂らしてる。拭かなきゃ……)

母性巫女 (……すごいにおい。嫌なのに、頭がポーッと気持ちよくてくらくらして、どうにかなりそう……)

母性巫女 (ここはどこなの。どこに連れ込まれたの。暗い)

母性巫女 (そういえば捕まる前、女の子の声が聞こえたけど)

母性巫女 (もしかしたら、あのとき返事するのがもう少し遅かったら、今頃……)


グニィイイ


母性巫女 「ぃひいぃ!?」


ビクン ビクン


異形の大男 「フフヒッ……お前、乳牛……」

異形の大男 「毎日、交尾と乳搾り、いっぱいしつけてやる……」


モニュ モニュ モニュ

チウウウウ


母性巫女 「は、ぁは……ぃ、ぃや、あ……」



ザザア ン

ザザア ン


238 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 06:09:11.95 ID:u4SxDi1eo


ザザア ン


幼女魔王A 「……まま!」


母性巫女 「………っ」

母性巫女 「え……?」


幼女魔王A 「どうしたの、まま」


母性巫女 「あれ……今、私……」

母性巫女 (Yの誘いを素通りして、しばらく塔の調査を続けたあと、広間に帰って……)


幼女魔王A 「……まま?」


母性巫女 (晩御飯を終えて、Aを寝かしつけるために絵本を読むところ……よね?)

母性巫女 「あ、ごめんなさい」


幼女魔王A 「グール×ハンターは嫌? 別のご本にする?」


母性巫女 「い、いえ。じゃあ読みましょうね」

母性巫女 「コホン……」

母性巫女 「大地を踏みしめて……」


ザザア ン ザザア ン


239 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 06:21:06.03 ID:u4SxDi1eo
   

ザザア ン ザザア ン


母性巫女 「…………!」

母性巫女 「あれ? ここは……」



幼女魔王の塔 地下牢



母性巫女 「釜のかけらが光って、客室から脱出して」

母性巫女 「塔の廊下に戻ったはずだけど」

母性巫女 「地下牢……?」


シイン


母性巫女 「地下牢よね。私が最初に来た」

母性巫女 「……何だか、綺麗になっているような」


頑丈な牢屋


母性巫女 「ついさっき完成したみたい。来たときは荒れ放題だったのに」


カツ カツ カツ


母性巫女 「ええと、階段はあっちだったっけ……」


ズズ……


母性巫女 「…………」

母性巫女 (かたいものを引きずる音)

母性巫女 (あの棺かしら……)


240 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 07:44:29.33 ID:u4SxDi1eo


ズズ ズズズ


母性巫女 (近づいてくる。逃げなきゃ)


ズズ カツン ズズズ カツン


母性巫女 「……?」

母性巫女 (引きずる音だけじゃない。足音も聞こえる)

母性巫女 (棺じゃない?)

母性巫女 (どうしよう。留まって確かめてみるべきかしら)


ズズ ズズズ


母性巫女 (どこかに隠れる場所……)


グ


鍵が かかっている……


母性巫女 (格子扉はびくともしない)



???の声 「良いのかい?」

???の声 「これで君は、未来の殆どを失うのだよ」


241 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 08:02:35.19 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 (声が響く)

母性巫女 (子供の声みたい。子供が棺をひいている……?)


ズズ ズズズ


???の声 「考えられないよ」

???の声 「未来とはつまり、この先ずっとだ」

???の声 「こんなことのために、君はこの先ずっと、誰かの思惑通りに動かなくちゃいけないんだ……」


母性巫女 (……声が遠ざかる)


カツン カツン カツン

ズ ズ ズ


母性巫女 (足音は近づいてくる)

母性巫女 (あ、隠れる場所探さなきゃ……)


サアア 


母性巫女 (あら………)

母性巫女 (霧が立ちこめてきた?)


242 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 08:08:44.32 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 (塔の中なのに、霧)

母性巫女 (毒の霧……ではないみたい)


カツン カツン カツン

ズ ズ ズ


人影1 「…………」


人影2 「…………」


母性巫女 (霧の中に人影)

母性巫女 (片方は子供みたい)


人影2 「かわろうか?」


母性巫女 (男の人の声。階段で聞いた声じゃ無い)


人影1 「……これは、おれの仕事だ」


ズ ズ ズ


母性巫女 (女の子の声。さっき響いた声では無いみたいだけど)

母性巫女 (聞き覚えがある気がする……)


243 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 08:26:58.59 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 (何とか、見えないかしら……)


人影2 「何でも背負い込みたがるね」

人影2 「そのあたり、君は子供だな」


母性巫女 (帽子を被っているみたい……)


人影1 「うるさい……」


母性巫女 (子供の方は、何だかもっさりしてよく分からない)

母性巫女 (でも、なんとなく見たことある感じ……)


人影1 「嫌味を言うために、わざわざ着いてきたのか」


人影2 「そんなわけないだろう」

人影2 「子供一人をこんな場所に行かせられるか」


人影1 「おれ一人でじゅうぶんだ」


人影2 「そうは思えんね」

人影2 「現にお前は、あそこにいる女性に気がついていない」


244 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 08:33:54.65 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 「……!」


人影2 「やあ! 黒い髪のお嬢さん。黒い瞳が神秘的だね」

人影2 「こんなところでどうしたのかな」


母性巫女 (見えている?)

母性巫女 「…………」


バフ


母性巫女 「!!」


人影2 「散歩の途中で迷い込んだのかな」

詐欺商人 「黒髪のお嬢さん」


詐欺商人が あらわれた! 



245 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 08:42:28.17 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 (足音も聞こえなかった……)


詐欺商人 「まあ、迷い込めるような場所じゃない」

詐欺商人 「となると……敵か味方か」

詐欺商人 「敵はいなくなったはずだが、さて?」


母性巫女 「……あの」


人影1 「魔法少女か?」


ズ ズ ズ


母性巫女 「え?」


人影1 「貴様は魔法少女かと聞いている」


母性巫女 (魔法少女……)


246 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 09:09:12.26 ID:u4SxDi1eo


詐欺商人 「違うと答えなさい」


母性巫女 「え……はあ」

母性巫女 (本当に違うんだけど……)

母性巫女 「ええと……」

母性巫女 「違いまあす!」


マアス マアス マアス……


母性巫女 「…………」


人影1 「……では何だ」


母性巫女 「何って……」


詐欺商人 「……やめろ、棺持ち!」


ゾゾゾゾゾゾゾ


母性巫女 「!!」


奇襲!
謎の攻撃が襲いかかる!


詐欺商人 「ええい……!」


詐欺商人の ???攻撃……


母性巫女 「っ……」


タン


母性巫女の 多段跳び!
謎の攻撃を かわした!
多段跳びのレベルが 上がった!


詐欺商人 「おおっ」


母性巫女 (何? 不吉な影が床を這ってきた……)

母性巫女 (敵……?)


チラ


詐欺商人 「失礼、手違いだ。あなたのような美女に見つめられるのは嬉しいが、そんな目をしないでいただきたい」

詐欺商人 「……おい、何てことするんだ。このお嬢さんじゃなければ、死んでいたぞ!」


ズ ズ ズ ズ


人影1 「……かまわない」

淫魔幼女 「敵か味方か分からないなら、殺してから確認すれば良い」


247 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 10:33:04.15 ID:u4SxDi1eo


淫魔幼女 「敵でも味方でも」

淫魔幼女 「この場所にいる者が、危険でないわけがない」

淫魔幼女 「今生きていられる者が、危険でないわけがない」


母性巫女 (この子、あのとき故郷の森にいた……!)

母性巫女 「!!」





母性巫女 「棺……」

母性巫女 (この子がひいている棺)

母性巫女 (牢屋で暴れていた棺と同じ)

母性巫女 (……ような気がする)

母性巫女 (いいえ、それよりも……)


詐欺商人 「だからと言って、質問ふっかけといていきなり攻撃はないでしょうが」


淫魔幼女 「奴らは問いかけもなく襲ってくる……」

淫魔幼女 「!!」


母性巫女 「…………」


淫魔幼女 「……魔王姫様」


詐欺商人 「どうした、棺持ち?」


母性巫女 「…………」


ツカ ツカ ツカ


淫魔幼女 「なぜ……いや、いても不思議は……」


母性巫女の お母さんチョップ こうげき!


ドゴオォオオオン


淫魔幼女 「なぶぅ!?」


淫魔幼女のHPが 1 になった!


248 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 19:16:56.14 ID:yItCiX9SO
相変わらずエゲツない強さですね
249 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 19:21:39.10 ID:u4SxDi1eo


ォオオオ……


淫魔幼女 「…………」


詐欺商人 「おいおい……」


母性巫女 「……いきなり」

母性巫女 「あんなことしちゃ駄目でしょう!」


淫魔幼女 「…………」


母性巫女 「死んじゃったら、どうするんですか」

母性巫女 「子供だからって、ごめんなさいじゃすまないことなんですからね!」


淫魔幼女 「……敵だ」

淫魔幼女 「こいつは敵だ……!」


詐欺商人 「落ち着け。彼女の言うとおり、非はお前にある」

詐欺商人 「そしてよく見ろ。彼女は魔法少女ギルドの者でもなければ、お姫様でもない」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「貴様は誰だ。なぜここにいる」


母性巫女 (……森で見たときよりも、険しい顔をしている)


250 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 19:36:32.40 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 「私は母性巫女です」

母性巫女 「ここに来たのは……」

母性巫女 (どう言ったら良いんだろう……)


淫魔幼女 「言えないのか?」


詐欺商人 「待て待て、ちゃんと名乗ってくれた」

詐欺商人 「彼女らとは違うだろう」


淫魔幼女 「偽名ということもある」


詐欺商人 「彼女らは名を偽らないものだろう?」


淫魔幼女 「お前の知っているのとは違うのだ、奴らは」

淫魔幼女 「それよりもここに来た理由だ」


詐欺商人 「たしかに、それは知りたいね」

詐欺商人 「ここは散歩の途中で迷い込むようなところじゃ無い」


母性巫女 「ええと……」


251 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 21:31:51.37 ID:u4SxDi1eo


…………



詐欺商人 「……自分の過去と交差しようとして、ね」

詐欺商人 「じゃあ、どうしてここにいるんだ」


母性巫女 「さあ、それが私にもよく分からなくて」


詐欺商人 「失敗ってことか? しかし何者なんだ、君をここへ送りこんだ奴は」

詐欺商人 「時間と空間をどうにかしようなんて」

詐欺商人 「世界を渡るどころの話じゃ無いぞ」


母性巫女 (そうなんだ……)

母性巫女 「ごめんなさい。それも、よく分からなくて……」


淫魔幼女 「隠すとためにならんぞ。その無駄に膨らんだ乳を道具入れにしてやろうか」


母性巫女 「もう、そんな言い方しちゃ駄目ですよ」


詐欺商人 「……まさか」

詐欺商人 「ここが君の過去なんてことは無いよな」


母性巫女 「まさか……」

252 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 21:57:29.58 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 「あ、でも」

母性巫女 「ここが何なのか分からない以上、関係ないとも言えないのかしら……?」


詐欺商人 「……はっはっは。なんとも、本当に迷子のようなお嬢さんだな」


母性巫女 「あはは、ええ、本当に……」

母性巫女 (この人、どこかで会ったような気がする)


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「黒い髪……黒い瞳……」

淫魔幼女 「魔王姫さまとの関係は」


母性巫女 (魔王姫……サンマ?)

母性巫女 (外套に口を埋めて話しているから、ちょっと聞き取りにくい)

母性巫女 (口元を隠したい事情があるのかしら。それとなく注意してみるべきかしら)


詐欺商人 「たまたまそうと言うだけで、似ても似つかないだろう」

詐欺商人 「おれはあまり会うことは無かったが、すぐに分かるぞ」


淫魔幼女 「ここでは姿など、意味が無い」


詐欺商人 「まあ、たしかに」


母性巫女 「……あの」



253 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 22:05:24.42 ID:u4SxDi1eo


母性巫女 「いろいろ事情が分からないんですが」

母性巫女 「あなたたちは……?」


詐欺商人 「ああ、失礼。名前しか名乗っていなかったな」

詐欺商人 「おれたちは……」


淫魔幼女 「…………」


詐欺商人 「言って構わんね?」


淫魔幼女 「…………」


プイ


母性巫女 (可愛い)


詐欺商人 「さて、どう話そうかな」


254 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 22:42:47.20 ID:u4SxDi1eo


詐欺商人 「世界を渡ることについては、分かっているんだったな」


母性巫女 「ええ」

母性巫女 「知ったのは、最近で、分からないことも多いんですけど」


詐欺商人 「じゅうぶんだ」

詐欺商人 「では、ここがある人物そのものの別のかたちだということは?」


母性巫女 「別のかたち……」

母性巫女 「ここがN……幼女魔王の塔で」

母性巫女 「彼女という存在そのもの? ということを何となく聞いたような……」


詐欺商人 「!!」


淫魔幼女 「!!」

淫魔幼女 「貴様、その名をどこで知った……!」


ゾゾゾゾゾゾゾゾゾ


淫魔幼女は 力を ためている……


母性巫女 「えっ……」


淫魔幼女 「答えかたによっては命は……」


淫魔幼女のHPが 1 に なった!


淫魔幼女 「無ぶぅ!?」


255 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/19(木) 23:06:51.10 ID:tbduW14so
無茶しやがって…
256 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 23:12:32.52 ID:u4SxDi1eo


淫魔幼女 「…………」 


母性巫女 「そういうことしちゃ駄目って言ったでしょう」


淫魔幼女 「…………」


母性巫女 「……もう。次やったら、お尻ぺんぺんですからね」


淫魔幼女 「おし……」

淫魔幼女 「…………」


プイ


詐欺商人 「いやー……滅茶苦茶なお嬢さんだ」

詐欺商人 「魔王級の化物と渡り合うこいつを一発で黙らせるとは」

詐欺商人 「まさか、深い方の人なのかな」


母性巫女 「不快砲?」


詐欺商人 「これも知らないか……」

詐欺商人 「で」

詐欺商人 「なぜここの名前を知っているのかな?」


母性巫女 「…………っ」

母性巫女 (この人……)


詐欺商人 「答えかたによっては……」


詐欺商人は 耳かきを 装備した!


詐欺商人 「こいつの威力を味わうことになるぜ?」


母性巫女 「……はい?」


257 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/19(木) 23:25:17.99 ID:u4SxDi1eo


詐欺商人 「その名前は限られた者しか知らないはずだ」

詐欺商人 「君は、あの戦いの中にいたのか? おれの記憶には無いが」


母性巫女 「戦い?」


詐欺商人 「金狐の城にいたのかと聞いているんだ」


母性巫女 「金狐の城……?」

母性巫女 「ごめんなさい、何のことだかさっぱり」


詐欺商人 「では、なぜ知っているのかな」

詐欺商人 「ここの名前を」


母性巫女 「なぜって……」

母性巫女 「N……幼女魔王本人から聞きました」


淫魔幼女 「ばかな……」


詐欺商人 「…………」

詐欺商人 「嘘では無いのだな?」


母性巫女 「ええ」


258 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 00:19:51.07 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「……君、故郷の世界はおぼえているのかな」


母性巫女 「いま暮らしている世界なら分かりますけど」

母性巫女 「故郷については、あまり……」

母性巫女 「暮らしていたのは、世界がたくさんあることとか、世界を渡ることとか、知る前だったので」


詐欺商人 「紋章については知っているかな」


母性巫女 「少し……」

母性巫女 「身分証になる……とか」


詐欺商人 「自分の紋章については?」


母性巫女 「いえ……まだ……」


詐欺商人 「ふむ」

詐欺商人 「手のひらを見せていただいても?」


母性巫女 「はあ……」





詐欺商人 「うかつなお嬢さんだ」

詐欺商人 「男に手のひらを見せるとは」


259 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 00:33:17.95 ID:0u8dmEjro


ニギ


母性巫女 「……っ」

母性巫女 (手を握られた。反応できなかった……)


詐欺商人 「あれだけの力を持っていたら、そうもなるか」

詐欺商人 「だが男には気をつけるべきだ」

詐欺商人 「失礼、もう良いぞ」


母性巫女 「……はい」


詐欺商人 「ほら、君の紋章だ」


白蝶貝の紋章


ヒイン ヒイイン


母性巫女 (詐欺商人の手の上に、光が浮いている)


詐欺商人 「ちなみに、複製でない紋章を他人の手に握られるのは」

詐欺商人 「命を握られることに等しい」



260 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 00:55:19.42 ID:0u8dmEjro


母性巫女 「えっ」


詐欺商人 「一般にギルドなどに提示する紋章は、専用のコインなどに焼き付けた複製のわけだが」

詐欺商人 「これは複製か本物か、どちらだと思う?」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (紋章って、複製なんてできるんだ……あんなに簡単に?)


詐欺商人 「これからは気をつけろということだな」

詐欺商人 「下品な者に紋章を握られたらそれこそ悲惨だぞ」

詐欺商人 「……見えない精霊の世界……座標は……」


淫魔幼女 「第三大世界だ。外れあたりか……?」


母性巫女 (この人たちは、色んなことを、私よりずっと深く知っているのね)

母性巫女 (……なんだか、裸を見られているみたいで恥ずかしい)

母性巫女 (紋章を見られるというのは、そういうことなのかしら)


261 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 01:17:27.15 ID:0u8dmEjro


淫魔幼女 「その紋章をよこせ」

淫魔幼女 「そいつを使ってそいつを生き餌にして希少人飼い花釣りに使う」


詐欺商人 「はいよ……」

詐欺商人 「ありがとう、返すぞ」


ヒイイ


母性巫女 「ぁ……」


ピクンッ


母性巫女 (紋章が、胸の中に……)


詐欺商人 「答えは本物だ」

詐欺商人 「複製はいただいたけどな」


白蝶貝の紙


母性巫女 「あの……」


詐欺商人 「大丈夫、悪用はしない」

詐欺商人 「こう見えて良心的な商人で通っている」


母性巫女 「商人……ですか」


262 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 01:53:19.41 ID:0u8dmEjro


淫魔幼女 「おかげで職業レベルは低いままだがな」


詐欺商人 「はっはっは」


母性巫女 「……あの」


詐欺商人 「本当に、あの戦いとは関係なかったようだが」

詐欺商人 「では、君がここの名前を聞いたのは、どこかな」


母性巫女 「故郷ですけど」


詐欺商人 「そのときの状況を、教えてもらえるかな」


母性巫女 「ええ……」

母性巫女 「森を歩いていたら、あの子が倒れていて……」


詐欺商人 「倒れていた?」


母性巫女 「はい」

母性巫女 「それで、家に連れて帰って」

母性巫女 「……名前を教えてもらったのは、あの子が目を覚ましてからしばらくしてからでした」


淫魔幼女 「ありえない」


母性巫女 「本当のことです」


淫魔幼女 「!」


ササ


淫魔幼女の 守りをかためている!


母性巫女 「……な、何もしませんよ」



263 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 02:15:00.87 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「彼女が目を覚ました……?」


母性巫女 「……おかしいことですか?」


詐欺商人 「ああ」

詐欺商人 「起きているわけは無いし、出歩くこともできないはずだ」


母性巫女 「え……」


詐欺商人 「ほかにも、何か彼女について教えてもらえないか」


母性巫女 「ええと……」


詐欺商人 「何でもいい」


母性巫女 「……肉より野菜が好きです。とくに、スープとかグラタンとか」

母性巫女 「お風呂はあんまり好きじゃないみたいでしたけど、自分から入るようになりました」

母性巫女 「眠っているとき、毛布にもぐりこんで指をくわえるくせがあって……」

母性巫女 「あ、あと、魔動画の漫画を見るのが好きみたいです」

母性巫女 「それから……」


詐欺商人 「……あ、ありがとう。いったん、そこまでで大丈夫だ」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「誰の話をしているのだ、貴様は」

淫魔幼女 「胸に脳みそを吸われて馬鹿になったのか」


母性巫女 「もう、またそんな言い方して」


淫魔幼女 「!」


ササ


淫魔幼女の守りが さらにかたまった!


母性巫女 (警戒されている)

母性巫女 「あの、大丈夫ですよ。怖くないですよ」

母性巫女 「さっきは危ないことをしたから怒っただけで……」


264 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 02:35:41.22 ID:0u8dmEjro


淫魔幼女 「怖い? ……おれをなめるな」


母性巫女 「は、はあ……」


詐欺商人 「ううむ……」

詐欺商人 「彼女の下位……外見の特徴を教えてもらえないか」


母性巫女 「色白で、髪がピンク色で、背はこのくらい……」

母性巫女 「ツリ目のような少しタレ目で、瞳もピンク色」

母性巫女 「眉はハの字で、優しいような自信ないような、口は小さめ……」


詐欺商人 「……こんな顔かな? 彼女の似顔絵だが」


魔法の似顔絵S


母性巫女 「いえ……まったく」


詐欺商人 「おっと、失礼、間違えた」

詐欺商人 「こっちだ」


魔法の似顔絵N


母性巫女 「あ、そっくり」

母性巫女 「もう少し、髪は伸びていますけど」


詐欺商人 「なるほど……」



265 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 03:15:20.57 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「……本当のことを言っている」

詐欺商人 「本当に、姫を知っている……」


淫魔幼女 「そんなはずは無い」


詐欺商人 「そうだとも。だが現に、彼女が語るのは、まさにそのものじゃないか」


淫魔幼女 「どこが」


詐欺商人 「外見の話だ」

詐欺商人 「姫の新しい名前も知っている」


母性巫女 (姫……)


淫魔幼女 「……何が起きている」


詐欺商人 「さて、な」


淫魔幼女 「これも呪いのせいなのか」


詐欺商人 「その可能性はある」

詐欺商人 「……お嬢さん」


母性巫女 「はい」


詐欺商人 「君は、幼女魔王の味方かい?」


母性巫女 「…………」


266 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 03:34:21.97 ID:0u8dmEjro


母性巫女 「……あなたたちは、ここで何をしているんですか」


詐欺商人 「それを教えたら、答えてくれるのかな」


母性巫女 「…………」

母性巫女 「味方です」

母性巫女 「味方だと、思っていました」

母性巫女 「けれど、あの子のこと、知らないことばかりで……」


淫魔幼女 「…………」


詐欺商人 「知らない?」

詐欺商人 「君は、おれたちの知らないあの子を知っているようだが」


母性巫女 「知らないんです」

母性巫女 「あの子が来る前のことも、一緒に暮らしていたときも……」


淫魔幼女 「暮らしていた……?」


母性巫女 「それで良いと思っていました」

母性巫女 「でも……」


詐欺商人 「知りたいかい?」

詐欺商人 「知ると、どうにかなるとでも?」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (本当。知って、どうするの)

母性巫女 (何のために……)


詐欺商人 「敵になる、とか?」


母性巫女 「…………」


267 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 03:50:55.64 ID:0u8dmEjro


母性巫女 「……あなたは、知っているんですか」

母性巫女 「あの子のこと」


詐欺商人 「ああ」

詐欺商人 「と、言いたいところだがね」


母性巫女 「…………」


詐欺商人 「知らんことだらけなのだよ」

詐欺商人 「だからこうしてここを探検し……」

詐欺商人 「何が起きたのか、だいぶ分かってきたつもりになっているわけだが」


母性巫女 (探検……)

母性巫女 「もしかして、地下から?」


詐欺商人 「地下……?」


母性巫女 「ここより下から、来たんですか?」


詐欺商人 「ここより上があるような言い方じゃないか」


母性巫女 「? ええ……」



268 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 03:58:03.60 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「本当に言っているのか?」


母性巫女 「はい」


淫魔幼女 「ここより上がある……?」

淫魔幼女 「何を言っている」

淫魔幼女 「何があるというんだ」


母性巫女 「ええと、ここをずっと行ったところに長い階段があって」

母性巫女 「のぼりきると、広間になっていて」

母性巫女 「そこからさらにいくつかののぼり廊下が……」


詐欺商人 「…………」


淫魔幼女 「…………」


母性巫女 (変なものを見るような目……)

母性巫女 「……あの、本当ですよ?」



…………



269 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 04:21:07.11 ID:0u8dmEjro


…………


カツン カツン カツン

カツン


母性巫女 (階段のあるところまで、二人を案内することにした)

母性巫女 (けれど……)

母性巫女 「……そんな」





母性巫女 「行き止まり?」


詐欺商人 「……ここに、あったのか」


母性巫女 「はい」

母性巫女 「まだらな色の土の階段が、ずっと伸びて……」


詐欺商人 「そこには……のぼった先の、広間には何があった?」


母性巫女 「あったというか」

母性巫女 「たくさんの、あの子がいました」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「何なんだ、貴様は」


母性巫女 「え……」


淫魔幼女 「とぼけた顔をして」

淫魔幼女 「何をどこまで知っている」


母性巫女 「私は……」


淫魔幼女 「何をしに来ている……!」


ゾ ゾ ゾ ゾ


詐欺商人 「棺持ち」

詐欺商人 「本当に彼女は何も知らないのかもしれない」


淫魔幼女 「ではなぜ、この女は知っている」

淫魔幼女 「おれたちの……」


詐欺商人 「見てきたからだとしたら」



270 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 04:28:34.49 ID:0u8dmEjro


母性巫女 「?」

母性巫女 (この人たち、さっきから変に通じ合って、何を話しているかよく分からない)


淫魔幼女 「見てきた?」


詐欺商人 「お嬢さん」


母性巫女 「あ、はい」


詐欺商人 「ここは、地下なんだな」


母性巫女 「はい」


詐欺商人 「ここは塔の最上階だ」


母性巫女 「え……?」


271 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 04:48:11.61 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「無いはずなんだ。ここより上なんて」


母性巫女 「でも、本当に……」


詐欺商人 「この塔の階層とは、時間だ」


母性巫女 「時間?」

母性巫女 「この塔は、あの子そのものでは無いんですか」


詐欺商人 「そうだ」

詐欺商人 「幼女魔王という世界そのものだ」


母性巫女 「世界……?」


詐欺商人 「彼女個人をひとつの世界としてとらえた姿のひとつが」

詐欺商人 「この塔だ」


母性巫女 「あの子が、世界……?」


詐欺商人 「大きな世界の中で、小さな世界が行き交う」

詐欺商人 「小さな世界の中で、様々な存在が行き交う」

詐欺商人 「その存在ひとつひとつを、世界に見立てるんだ」

詐欺商人 「想像できるかな?」


母性巫女 (できない)

母性巫女 「な、なんとなく」

母性巫女 「できるかなあ……?」


淫魔幼女 「……国の中にも、たくさんの村がある」

淫魔幼女 「村にはたくさんの村人がいる」

淫魔幼女 「では村人の中にも、たくさんの何かがあっても不思議ではない」

淫魔幼女 「国、村、村人、何か……呼び方の違うそれらを、世界ということにする」



母性巫女 (分かった気がするような気がしないような気がするけど)

母性巫女 (とりあえず……)

母性巫女 「ありがとうございます!」


スッ


淫魔幼女 「……!」


母性巫女の なでなで!
淫魔幼女の 回避!
ああっ 失敗!
淫魔幼女は なでなでされた!


272 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 05:13:00.07 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「君のいた世界では、時間の流れを見ることはできるか?」


母性巫女 「…………」

母性巫女 「小じわ?」


淫魔幼女 「なんかこいつ馬鹿だな」


詐欺商人 「この世界では、いろいろと勝手が違う」

詐欺商人 「大世界とか小さな世界とかいったものとは、そもそも違う場所にある」


母性巫女 「……あの子を抱き上げることと、ここにこうしているのは」

母性巫女 「変わらないことなのかもしれない……」


詐欺商人 「ほう?」


母性巫女 「よく分からないけれど、そう聞きました」


詐欺商人 「まあ、そういうことだ」

詐欺商人 「おれたちが当たり前に行うことが」

詐欺商人 「おれたちが知る結果をもたらすとは限らない場所だ」

詐欺商人 「ここでは、時間は階層という形をとる」


母性巫女 「階層……」


詐欺商人 「塔は上へ伸びていく」

詐欺商人 「つまり地下とは過去を意味し」

詐欺商人 「最上階は今を意味する」


母性巫女 「……じゃあ」


詐欺商人 「それより上から来たのだとすれば」

詐欺商人 「君は未来から来たことになる」


273 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 05:44:52.42 ID:0u8dmEjro


母性巫女 「未来……!?」


淫魔幼女 「……何が起きるか分からん場所とは言え」

淫魔幼女 「それは……」


詐欺商人 「過去へ歩いて行ける世界だ」

詐欺商人 「ありえないとは言えないのでは?」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「膨大な魔力と知識を贄とする術、それに匹敵する何か……」

淫魔幼女 「もしくは……」


耳かき




淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「に類するアイテムを使わない限り、できることではないぞ」


詐欺商人 「世界は広く深いのだ」

詐欺商人 「おれたちの知らんお手軽な何かがあるかもしれんぞ?」

詐欺商人 「今だって、ある世界では他の世界を認識すらできないのに」

詐欺商人 「別のある世界では、誰もが飛行船で他の世界へ気軽に旅行できている」

詐欺商人 「おれたちが色々なものを犠牲にして得られるものが」

詐欺商人 「ある世界では、誰でも簡単に買える馴染みの菓子のようなものかもしれない」


淫魔幼女 「…………」


チラ


母性巫女 「……?」


ニコリ


淫魔幼女 「……平和ボケのアホ女にしか見えん」


母性巫女 「んまっ……」


274 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 06:24:31.74 ID:0u8dmEjro


淫魔幼女 「企む脳みそも無いだろう」

淫魔幼女 「馬鹿力だけだ。陰謀を警戒することもないか……」


母性巫女 (この子ったらどうしてこんなに乱暴な言い方をするのかしら)

母性巫女 (そういうお年頃なのかしら……)

母性巫女 「まったく……」


ダキ


淫魔幼女 「!?」


母性巫女 「どうしてそんなひどい言い方ばっかりするんですか」


淫魔幼女 「貴様……!!」


母性巫女 「それに、ずっとしかめっ面で……」


ナデ ナデ


淫魔幼女 「!!」


母性巫女 「せっかくこんなに可愛いんですから……」

母性巫女 「たまには笑ったほうが良いですよ」


ナデ ナデ


淫魔幼女 「やめろ……」

淫魔幼女 「やめろ貴様……やめろ!」

淫魔幼女 「やめろ!」


母性巫女 「はいはい」

母性巫女 「でもあんまりひどいと、今度は頬っぺたすりすりですからね」


淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「……フン」


母性巫女 (お尻ぺんぺんよりも、そっちの方が効果あることもあるのよね)


詐欺商人 「はっはっは……」


275 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 06:36:10.06 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「よし……」

詐欺商人 「確かめてみるか」


母性巫女 「?」


淫魔幼女 「何をするつもりだ」


詐欺商人 「近々やろうとしていたことだよ」

詐欺商人 「……っと」


詐欺商人の 紋章パンチ!


バコン


母性巫女 (壁を砕いた……!)


ガラガラガラ


詐欺商人 「さて……と」


淫魔幼女 「…………」


母性巫女 (牢屋の壁の向こうに……)


土壁


詐欺商人 「……ふむ、まだら色だな」


276 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 06:45:21.26 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「これで、お嬢さんの言っていることの信憑性が上がったな」


淫魔幼女 「…………」


母性巫女 「この土の色……」

母性巫女 「そうだわ、やっぱり、ここに階段が」


詐欺商人 「これから出来るんだ」


母性巫女 「え……」


詐欺商人 「ありがとう。君のおかげで、かなり早く進められそうだ」


母性巫女 「あなたたちは、何を……」



277 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 07:04:52.29 ID:0u8dmEjro


母性巫女 「しているんですか?」

母性巫女 「何をしようとしているんですか?」

母性巫女 「……あなたたちは、あの子の味方なんですか?」


詐欺商人 「そういえば」

詐欺商人 「おれがした同じ質問に対する君の、最終的な答えは曖昧なままだったな」


母性巫女 「…………」


詐欺商人 「…………」

詐欺商人 「……味方だ」

詐欺商人 「味方だと、信じたい」


母性巫女 「信じたい?」


詐欺商人 「その人のためだと思ってしたことが、その人を苦しめることだってある」

詐欺商人 「おれたちのやろうとしていることが、彼女にとって良い結果につながるとは限らない」

詐欺商人 「とくに、今いるのはこんな世界だ」


淫魔幼女 「…………」


母性巫女 (その人のためを思ってやったことが、違う結果に……)

母性巫女 (Nが私をしもべにしたことも……)


詐欺商人 「君の知るあの子は、幸せなのか?」


母性巫女 「え……」


詐欺商人 「すまない。忘れてくれ」

詐欺商人 「君の来し方がおれの言ったとおりなら、聞くべきではないのだろう」



278 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 07:19:19.63 ID:0u8dmEjro


母性巫女 「…………」



詐欺商人 「……思ったよりやわらかい土だな」


淫魔幼女 「これなら、探索に割く時間も多く取れそうか……」


詐欺商人 「この土はあの子の……耳垢だったりしてな」


淫魔幼女 「姫を侮辱するな」


詐欺商人 「おや、もう違うのだろ?」


淫魔幼女 「まだだ。完全にそうなったわけではない」

淫魔幼女 「だから、おれたちがここにいるのだ」


詐欺商人 「やれやれ、剣で戦うよりもかなり頑張らなくてはな」

詐欺商人 「……彼女に、おれたちのことをもう少し話しても?」


淫魔幼女 「…………」



母性巫女 (私は、あの子の……)

母性巫女 「……あの」


詐欺商人 「うん?」


母性巫女 「私の答え、なんですけど……」



…………

……


279 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 07:52:57.98 ID:0u8dmEjro


幼女魔王の塔 最上階?



…………



母性巫女 「……塔を捨てる?」


詐欺商人 「ああ」


母性巫女 「それは、あの子の過去を捨てるということじゃ……」


詐欺商人 「そうなるな」


母性巫女 「そんな、あっさり」


詐欺商人 「まあ待て。まったくその通りというわけでもないんだ」

詐欺商人 「まず、君の知るあの子と、おれの言うあの子は、おそらく違う存在だ」


母性巫女 「………?」

母性巫女 「まあ、こんなときに。ウフフ……」


詐欺商人 「待て待て、小粋なジョークとかそんなんじゃ無い」


淫魔幼女 「やはりこの女」

淫魔幼女 「馬鹿だな」



280 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/20(金) 08:30:58.92 ID:0u8dmEjro


詐欺商人 「というか、意味が分からない話をとりあえず冗談として片付けようとしなかったか?」


母性巫女 「い、いえ、そんな……」

母性巫女 「それで、あの子があの子じゃ無いというのは……?」


詐欺商人 「どう説明したものかな……」

詐欺商人 「この塔は、一度滅んでしまったんだ」


母性巫女 「滅んだ……」

母性巫女 (仮面の人も、そう言っていた)


詐欺商人 「つまりあの子は、一度死んでしまったということだ」


母性巫女 「死……」


詐欺商人 「身体は何とか助かったが、心は駄目だった」

詐欺商人 「念入りに破られた紙のように粉々だ」


母性巫女 「そんな」

母性巫女 「いったいあの子に何が……」


詐欺商人 「それは……」


淫魔幼女 「……呪いだ」


281 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 16:17:47.83 ID:3cXwNnfQo
更新乙
282 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/21(土) 07:27:43.02 ID:hlkE+rHLo


淫魔幼女 「つま先から頭頂まで細かく刻み込むように、数々のおぞましい呪いを受けた」

淫魔幼女 「心が、それに耐えきれなかったのだろう」


母性巫女 「おぞましい呪い」

母性巫女 (私も、故郷の世界に居た頃、胸から変な音がする呪いをかけられていたっけ)

母性巫女 (あの呪いのせいで、魔王を倒して以降、森で孤独に暮らすことに……)


詐欺商人 「おれたちは何度もこの塔に潜り、あの子の心の欠片を探し集め」

詐欺商人 「修復を試みたが……」

詐欺商人 「どうも元通りにはならんらしい」


母性巫女 (心を、修復?)


淫魔幼女 「同じ材料を使っているのに、同じ物をつくることはできなかった」


詐欺商人 「そうなるとは思っていたがな」

詐欺商人 「精神的な蘇生は、物理的な蘇生よりも難しい」



283 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/21(土) 07:38:29.44 ID:hlkE+rHLo


詐欺商人 「何とか、こんな塔としておれたちの領域に引きずり落としても」

詐欺商人 「もとのあの子とは似ても似つかない形の心しか作れなかった」

詐欺商人 「それに合わせて、姿も多少変わってしまったのは誤算だったが」


母性巫女 「……どうして、あの子がそんな目に」


淫魔幼女 「…………」


詐欺商人 「悪いがそれは、教えることはできないな」


母性巫女 「…………」

母性巫女 「教えることのできない、そんな大きなことなんですか」


詐欺商人 「……君の知るあの子が体験したことじゃなくて」

詐欺商人 「壊れる前のあの子が体験したことだからさ」



284 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/21(土) 07:58:22.95 ID:hlkE+rHLo


淫魔幼女 「まったく別の存在なのだ」

淫魔幼女 「ひとつの塔ではあるが、ここより下と、ここより上は」


母性巫女 「別……」


詐欺商人 「ろうそくに火を灯したとして」

詐欺商人 「火の一瞬一瞬の形は違うだろう」


母性巫女 「え、ええ……はあ」


詐欺商人 「心とは、その人の内側だけで作られるわけではないのだろう」

詐欺商人 「外から様々な影響を受けながら、ゆらめく火のように刻一刻と形をかえていく」

詐欺商人 「……おれたちにできたのは、ただ火を灯すことだけだったのだ」

詐欺商人 「もととまったく同じようにゆらめきかたをする火を作ることはできなかった」

詐欺商人 「あの子の心を元に戻せなかったのはそういうことなのだと、おれは捉えている」


285 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/21(土) 08:07:09.93 ID:hlkE+rHLo

>>284 訂正ごめんなさい




淫魔幼女 「まったく別の存在なのだ」

淫魔幼女 「ひとつの塔ではあるが、ここより下と、ここより上は」


母性巫女 「別……」


詐欺商人 「ろうそくに火を灯したとして」

詐欺商人 「火の一瞬一瞬の形は違うだろう」


母性巫女 「え、ええ……はあ」


詐欺商人 「心とは、その人の内側だけで作られるわけではないのだろう」

詐欺商人 「外から様々な影響を受けながら、ゆらめく火のように刻一刻と形をかえていく」

詐欺商人 「……おれたちは倒れて火の消えたろうそくを立たせ、再び火を灯すことはできたが」

詐欺商人 「それだけだった」

詐欺商人 「以前とまったく同じゆらめきかたをする火を作らなければならなかったのに、できなかった」

詐欺商人 「ろうの雫を同じように垂らすこともできなかった」

詐欺商人 「あの子の心を元に戻せなかったのはそういうことなのだと、おれは捉えている」


286 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/21(土) 08:20:04.41 ID:hlkE+rHLo


母性巫女 「はあ……なるほど」


淫魔幼女 「一度焼き上げたクッキーが粉々に砕けたとして」

淫魔幼女 「それを使って、元と全く同じクッキーを作ろうとしたら難しいだろう」


母性巫女 「なるほど」

母性巫女 「焼きあがったあとだと、ほとんど無理でしょうね」


淫魔幼女 「感謝しろ」

淫魔幼女 「菓子の焼き方しか興味ないようなおめでたい馬鹿女にも分かるように説明してやった……」


母性巫女 「えいっ」


ギュ ムニュ

スリスリ


淫魔幼女 「ぅ、ぐ……がぁああ……」


詐欺商人 「お前も学習しなさいよ」


287 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/21(土) 08:37:04.06 ID:hlkE+rHLo


母性巫女 「次はチューしちゃいますからね」


スリ スリ


淫魔幼女 「ぬぐぅ、う……この……おれが……」


詐欺商人 「お嬢さん、そんなにくっつくと危ないぞ」

詐欺商人 「そう見えても、今のところ心は立派な男だ」


母性巫女 「え?」


詐欺商人 「冗談だ」


淫魔幼女 「本当だ」

淫魔幼女 「馴れ馴れしくするな乳の化物」

淫魔幼女 「お前みたいな無知で独善的な馬鹿は一番嫌いな種類の存在だ」


母性巫女 「もう、意地悪な言い方ばっかりして」


ナデ ナデ


淫魔幼女 「やめろぶち殺すぞ貴様やめろ薬漬けで淫獣の胎にぶち込むぞ雌豚牛めがやめろ」


ナデ ナデ


詐欺商人 「まったく、羨ましいことだな相棒」

詐欺商人 「お前の商売については話さないでおいてやるよ」


淫魔幼女 「ふざけるな、何とかしろぽんこつ詐欺師めが」


288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 12:13:38.19 ID:KDhyxWWso
おおー、大量に来てる
どこまで話せるのかなぁ
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 03:53:00.29 ID:dRn9zIOy0
待ってた!更新乙
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/26(木) 08:06:27.29 ID:FkVKXg9do
やはり解答編はいいものだ
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/17(金) 08:34:53.57 ID:OYWw36Ho0
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