363: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:20:16.19 ID:bASNl0Z+O
 『なになに? お嬢ちゃん、猫ちゃんを探してるのかな?』 
  
 軽薄そうな男が立ち上がり、切彦の後ろに回り込む。 
 真九郎の作戦通り、か弱そうな女性に反応したようだ。 
 筋肉質な男が顔を上げる。 
364: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:20:42.63 ID:bASNl0Z+O
 その手慣れた所作に真九郎は虫唾が走るが、ここは我慢だ。 
 切彦は男に肩を抱かれたまま動けずにいるが、怖がっているわけではなく自分の腕が革ジャンの内ポケット――カッターナイフに向かないように堪えているからだ。 
 切彦が我慢しているのに、自分が台無しにするわけにもいかない。 
  
 「今のところ順調だよ。そのまま連中に合わせて」 
365: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:21:09.06 ID:bASNl0Z+O
  
 という切彦の疑問に「確かに切彦ちゃんじゃ難しいかな。夕乃さんあたりに頼もうか」と返すと俄然やる気を出していたし。 
 麻理子には、確信犯ね、などと睨まれたが真九郎は気づかないふりで通している。 
 切彦も一応、紅相談事務所の一員であるし、給料を出しているからには多少は仕事にやる気を出してもらわなければ。 
 一年前の件で暗殺者も廃業すると宣言していたし、揉め事処理屋として育てるのも悪くない。 
366: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:21:37.32 ID:bASNl0Z+O
 滑舌悪く声をあげたのは部屋のど真ん中で今にもパンツを下ろそうとしている男。 
 目の前には全裸の女性が3人横たわっており、その視線は虚ろで半笑いを浮かべている。 
 周囲には全裸の男、ガラスパイプを咥えている男、そして女性たちと同じように転がっている男が合わせて14人。 
  
 「揉め事処理屋です」 
367: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:22:04.04 ID:bASNl0Z+O
 大の男を意識のある状態で簀巻きにできるようなスキルを真九郎は持ち合わせていない。 
 とりあえず気絶してもらい、それから拘束したのだった。 
 男は興奮と怒りで目が血走り、唾を飛ばして汚い言葉を吐き出している。 
 自慢の筋肉が細身の切彦に通用しないのがよほど悔しいらしい。 
 対する切彦は涼しい顔で挑発を返している。 
368: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:22:30.10 ID:bASNl0Z+O
 今度は驚愕と混乱に目を丸くする男。 
  
 「ま、待ってくれ……ください。そんなことの為に、俺たちをこんな目に……?」 
  
 「そうだよ。とは言っても、以前に何度か注意したんだけどね」 
369: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:22:59.69 ID:bASNl0Z+O
 誓約書には署名欄、件のコンビニには近づかない、もし近づけば下の罰則を履行するという誓約のみが書かれている。 
 罰則の欄には何も書かれておらず、つまりはいくらでも後付けできるということだ。 
  
 「……これで全員だ」 
  
370: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:23:25.31 ID:bASNl0Z+O
 「(――だからこそ許せない)」 
  
 唆されたのか脅されたのか、ともかくこの若者を手足にドラッグをばら撒いている組織があるのは確実。 
 元はどこにでもある、社会に反骨心を抱いただけの若者のグループだったはずなのに。 
 それを裏世界に引きずり込んで食い物にしている連中がいる。 
371: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:23:51.66 ID:bASNl0Z+O
 驚愕したのは、またもや男の方だった。 
 見開いた瞳に映る相手の姿が、あまりにも衝撃だったのだ。 
 真九郎は防御すらしていなかった。 
 先ほどまでと全く同じ姿勢で、微動だにしなかった。 
 空中でバランスを崩し、受け身も碌に取れずに床に落下する男。 
372: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:24:18.80 ID:bASNl0Z+O
  
 機械的な作りで、一目で義肢とわかる。 
 装着者自身の肌と同じ様にしか見えない星?製とは全く異なる作りだ。 
  
 「……何が言いたいの、紅くん?」 
373: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/17(月) 23:24:45.01 ID:bASNl0Z+O
 真九郎の背中越しに顔を覗かせた切彦が口をはさむ。 
 瞼が眠たそうに半開きになっており、真九郎の背中に圧し掛かるようにして立っている。 
 ちなみに本人は胸を押し付けているつもりだが、真九郎は全く気付いていない。 
  
 「……あんまり紅くんに近づかないでくれる? アンタが全身に仕込んでる刃物が刺さったら《九鳳院》と《崩月》が黙ってないわよ?」 
507Res/213.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20