72:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 01:01:39.80 ID:tRPk/B7zO
  
 彼の家族は身を寄せ合った。 
  
 祈りはしなかった。ただ、待っていた。 
  
73:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 01:03:27.89 ID:tRPk/B7zO
  
 だが、彼は来ない。 
  
 現れたのは、最も怖れていたモノ。 
  
74:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 01:05:33.86 ID:tRPk/B7zO
  
 しかし、何もかもが遅かった。 
  
 オークの鉤爪が母親の服を引き裂き、背中の肉を抉る。 
  
75:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 01:07:42.98 ID:tRPk/B7zO
  
 兄は涙をぐっと堪え、泣き出す妹の手を握り走り出した。 
  
 オークを抑え込んでいる父も、穏やかな顔で笑っている。 
  
76:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 01:10:31.18 ID:tRPk/B7zO
  
 少年は歯を食いしばった。 
  
 両親が道を開いてくれたのに、このままでは自分も妹も殺されてしまう。 
  
77:名無しNIPPER
2016/11/26(土) 01:11:43.09 ID:tRPk/B7zO
 また明日 
78:名無しNIPPER[sage]
2016/11/26(土) 01:19:07.46 ID:ttGbVCZ/O
 乙 
79:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 00:02:30.73 ID:FHyQmHZuO
   
  少年はぎゅっと瞼を閉じて、背後から迫る死を覚悟した。  
    
  自分達二人をまとめて押し潰す大型の棍棒が、風を切って迫っているのが分かる。  
    
80:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 00:03:19.89 ID:FHyQmHZuO
  
 それが、堪らなく情けなかった。 
  
 この涙を止めるのは、この小さな手を引いて走るのは、妹を守るのは、兄である自分の役目だ。 
  
81:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 00:05:06.13 ID:FHyQmHZuO
  
 父のように母のように。 
  
 或いは、妹が慕う青年。 
  
82:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 00:07:06.20 ID:FHyQmHZuO
  
 喚き散らす化け物に対し、応答はない。 
  
 次の瞬間、雪積もる地面の上に、何かが倒れる音がした。 
  
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