美玲「To give you」ありす「Answer」
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5: ◆S6NKsUHavA[saga]
2017/05/30(火) 23:49:09.43 ID:McTk8PE80
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「ほんで友紀はん、安請け合いしはったんどすか」
「安請け合いって……まぁ、結果的にそうなんだけど」

 四人掛けのブースに向かい合わせに座ってほうじ茶ラテをすする小早川紗枝に呆れたと言わんばかりの言葉をかけられて、友紀は目の前のコーヒーをスプーンでかき混ぜながら萎んだ声を垂れ流した。
 小梅との打ち合わせの帰りに偶然同僚の紗枝と鉢合わせた友紀は、少し話を聞いてもらおうとおごりを条件に彼女を喫茶店に誘った。人を探すなら、なるべく多くの人に声をかけた方が良い。そう思って紗枝に事情を話した結果が、さっきの一言だ。
 ちょっと人選を間違えたかな、と友紀が若干の後悔を感じ始めたところで、紗枝が軽く天井を振り仰ぐようにして話し始めた。

「結局、美玲はんが求めるパートナー言うんは、自分の中にある課題を乗り越えたいー言う気持ちを持ってはる人、いうことでええんやろか」
「うーん、ちょっと違うかなぁ。課題って言うか、自分の中にあるこだわりって言うか……」

 言語化出来ないことにもどかしさを感じながらも、友紀は紗枝の言葉をやんわりと否定する。

「美玲ちゃんは、幸子ちゃんやあたしだとダメって言ったんだけど、それって多分あたし達がもう既に自分たちの『答え』を持ってるからだと思うんだよね」
「『答え』って?」

 友紀の発言に、小首を傾げる紗枝。ミルクを入れてほんのりまろやかになったコーヒーの苦味を堪能しながら、友紀は続きを話した。

「例えば、幸子ちゃんは自分を絶対的にカワイイって思ってて、それがもう武器になってるでしょ? あたしも、野球が好きって気持ちは誰にも負けないし、それでお仕事ももらってるし」

 なんとか伝えようと身近な例をひねり出した友紀の努力が報われたものか、紗枝はぽんと手を打って答えた。

「はぁー、なるほどなぁ。自分らのこだわりが武器になるー言うトコまで持っていきはった人は、自分の『答え』を見つけた人、いうことなんやね」
「そうそう、そんな感じ!」

 我が意を得たりと言った満足顔で頷く友紀に、紗枝は困ったような表情をしながら続ける。

「でも、それは難儀やなぁ。自分らのこだわりを武器にしてはるアイドルはぎょーさんおるやろけど、これから何を武器にしていこう、いうて悩んでる人は……」
「あんまりいないよねぇ……」

 言葉を継いでぼやく友紀。そもそも、美玲にしても元々自分のこだわりを持っていて、それを武器に活動していたはずだ。眼帯を外すことを『カラを破る』と表現していたが、実際のライブではやはり眼帯を付けている。じゃあ一体、彼女の言う『答え』の本当の意味とはなんだろう?
 そんなことを考える友紀の視界に、影が落ちた。




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