五年と少しの歳月に
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3: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/13(火) 23:58:23.94 ID:5NDUzJbF0
 マフラーを巻いて薄いコートを羽織り、手袋を嵌めて玄関を出る。

 外気は驚くほど澄んでいた。扉に鍵をかけて神社に向かう。息を吸い込む度に、ウイスキーのお陰でほどほどに温まった身体の内側へ冷気が流れ込むのが心地よかった。
 人気の少ない道路をひたすら歩いて目的地を目指す。幼かった頃は夜中に外を出歩くことなんてなくて、二年参りは俺にとって一年に一度の特別な行事だった。

 過去のことを思い出しながら暗夜を歩く。

 やがて、俺の歩く先に立っている電信柱に、誰かが背を預けていることに気付いた。
 街灯にさらされてぼんやりと浮かぶシルエットは、どうやら女性のようだった。

 誰かと待ち合わせでもしているのだろうか、じっと立ちすくむ彼女は、手袋を嵌めていない両手を顔の前に持っていき、吐息で温めているらしかった。


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