五年と少しの歳月に
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8: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:05:24.30 ID:bk9mFZZ70
 「……久しぶり、だね」

 「ああ、久しぶり」

 お互いに、相手の出方を探るようにして立っている。
以下略 AAS



9: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:06:05.83 ID:bk9mFZZ70
 「よかった。すごく懐かしいね。何年ぶりかな」

 「高校から別だから、五年と少しになるかな」

 俺に声をかけてきたのは、俺の幼馴染だった。彼女とは実家が近く、子供の頃はよく遊ぶ仲だった。
以下略 AAS



10: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:07:07.01 ID:bk9mFZZ70
 「どうしたの? ぼーっとしてるけど」

 彼女が心配そうに顔を覗き込んでくる。
 ああいや、と言いながら首を振る。

以下略 AAS



11: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:08:15.90 ID:bk9mFZZ70
 「そうだよ。前はけっこう短かったのに」

 「うん。実は伸ばしてたの。ばれちゃったかあ」

 おどけたように彼女が笑う。その様子につられて、俺も笑ってしまう。
以下略 AAS



12: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:09:42.09 ID:bk9mFZZ70
 「もしかして、お前も初詣に?」

 「え、うん。そうだよ」

 「じゃあ、よかったら一緒に行かないか」
以下略 AAS



13: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:10:18.37 ID:bk9mFZZ70
 「君は大学生……進学してるよね?」

 「ああ」

 「もう二十歳も越えちゃってるし」
以下略 AAS



14: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:11:22.99 ID:bk9mFZZ70
 「二十歳といえばお前、覚えてるか、あの約束」

 そう言うと、暫く考え込む素振りを見せてから彼女が答えた。

 「ああ、小学生くらいの時の、大人になったら結婚しようねってやつ?」
以下略 AAS



15: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:13:15.41 ID:bk9mFZZ70
 これまで境内に足を踏み入れたことはなかったが、神社の前を通ったことはあった。
 奥行きがないため、割とせせこましい印象を受けたことがある。その中を人がごった返していた。

 「すごいな、これみんな初詣なのか」

以下略 AAS



16: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:16:28.30 ID:bk9mFZZ70
 「そういやお前は甘酒嫌いだったよな」

 「うん、生姜が苦手なの」

 「惜しいなあ、こんなにうまいのに」
以下略 AAS



17: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:17:18.31 ID:bk9mFZZ70

 「ねえ」

 「うん」

以下略 AAS



18: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:18:14.33 ID:bk9mFZZ70
 「会ってない間、元気にしてた?」

 最後に辿り着いた公園のベンチに腰かけて彼女が尋ねてくる。

 「ああ。そっちこそ、会ってない間は一体なにしてたんだ」
以下略 AAS



19: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:19:49.87 ID:bk9mFZZ70
 「でしょ? 一度行ってみたかったんだよね。いい機会だったから」

 「だからって、制覇してしまうこともなかっただろうに」

 思わず苦笑してしまう。
以下略 AAS



20: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:20:55.15 ID:bk9mFZZ70
 「……まだやり残したことは、あるのか?」

 寝入りかけの猫を撫でるように、慎重に尋ねた。


以下略 AAS



21: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:21:41.17 ID:bk9mFZZ70
 一度、空を仰ぎみれば東の彼方は既に白み始めている。ふたりだけの世界がゆっくりと、確実に剥がされていくのがわかる。
 ふと薄青い空の中に、小さく瞬く星が浮かんでいるのに気付いた。ふたりを閉じ込めていた世界が取り払われている。

 「そろそろ行かなきゃ」

以下略 AAS



22: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:23:05.16 ID:bk9mFZZ70
 「今度実家に帰ったときは、会いに行くから」

 「うん、待ってる」

 「供え物はなにがいい?」
以下略 AAS



23: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:24:27.36 ID:bk9mFZZ70
 「初日の出なんて、初めて見た」

 目を細めて朝日を拝んだあと、彼女の方に視線を戻すと、もうそこには誰もいなかった。


以下略 AAS



24: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:25:21.28 ID:bk9mFZZ70
以上になります

ありがとうございました!


25:名無しNIPPER[sage]
2017/06/14(水) 01:09:58.01 ID:w6kHC4gto
乙です
一回目読んで最後の「供え物」でん?となって見事術中に嵌ったようです(笑)
確かに読み返してみると所々で分かりますね
短編であるからこその面白さだと思います

以下略 AAS



26:名無しNIPPER
2017/06/14(水) 02:17:18.08 ID:6AXp2Iqm0

雰囲気よかったよ


27:名無しNIPPER[sage]
2017/09/22(金) 19:07:05.71 ID:58xNn9/pO

よかった


28:名無しNIPPER
2018/10/31(水) 08:45:37.87 ID:F8E3D7i70



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