188: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/25(水) 01:05:50.78 ID:EYk+M2QI0
 王国軍の諜報部隊は一般人に扮しているという。 
 兵がよく利用する鍛冶屋や勇者行きつけの料理店、防塁再建の土木現場。 
 あらゆる場所に潜伏し、聞き耳を立てているのだ。 
  
 間諜「勇者さんも、窓全開にしてちゃダメでしょ。殺してくださいと言っているようなもんですよ。もうちょい気をつけて」 
189: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/29(日) 00:46:17.20 ID:A18IrNem0
 大皿に盛ったプロフが勇者の前に置かれた。ほかほかと立ち昇る湯気には、微かに唐辛子のスパイスが混ざっている。 
  
 間諜「完成です! 唐辛子がピリッと効いたプロフ(ピラフ)! 食べると体がポカポカしてきますよ」 
  
 間諜はベッドの縁に腰かけると、木の匙で米をすくい勇者の口元まで運んだ。 
190:名無しNIPPER[sage]
2018/04/29(日) 01:08:20.57 ID:4el66EfDO
 乙 
191: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/01(火) 01:12:26.72 ID:nkQwmkls0
 間諜「どうかしました?」 
  
 勇者「いや、なんでもない」 
  
 間諜「ちょっと、変なこと考えてたでしょ! 隠しっこなしです。言わないとご飯食べさせてあげません」 
192: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/01(火) 01:14:39.53 ID:nkQwmkls0
 静寂が部屋を包んだ。 
 暫し間諜はうつむいていたが、何かを振り切るように立ち上がった。 
 両手を腰に当て、説教するように捲し立てる。 
  
 間諜「い、いいですか勇者さん! 私達は強大な国家を相手取っているのです! たとえ多くの同胞を獲得しても、その犠牲は計り知れないでしょう」 
193:名無しNIPPER[sage]
2018/05/01(火) 03:01:08.32 ID:7Yc7+KCDO
 乙 
194: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/02(水) 19:25:38.48 ID:WBIQqYWr0
 身体が嘘のように軽い。眩暈もすっかり収まった。 
 数日ぶりの外は暗く、冷え込んでいた。 
 家の周りを一周だけ走った後、共同井戸の水を汲み上げて飲んだ。 
 身体中の眠気が吹き飛んでいく。 
  
195: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/10(木) 21:32:17.97 ID:IVh+ZABj0
 声が降ってきた。 
 屋根の上に魔女が座っている。 
 荷物は何も持たず、どこか散歩へ出かけるような姿だ。 
 険しい鉄門街道を通るに相応しい恰好ではない。 
  
196: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:09:06.13 ID:QmyZmny70
 空気が熱く、乾いていた。喉がひりひり痛む。 
 竹筒の水はもう半分まで減っている。日照りが強く、歩くだけでも水分が汗となって流れ落ちる。 
 鉄門街道という険しい山道ならなおさらだ。 
  
 額にじっとり滲んだ汗を拭い、勇者は溜息を吐いた。休みたい。 
197: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:17:32.41 ID:QmyZmny70
 勇者「おい、あれ……人が住んでるんじゃないか?」 
  
 崖の下に、集落が見えた。 
 煙突のような形をした、筒状の家が連なって建っている。 
 どれも漆喰で塗り固められた、原始的な家屋だった。 
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