198: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:19:04.86 ID:QmyZmny70
 二人は慎重に崖を降り、ハザラ族の集落へ足を踏み入れた。 
 ハザラ族の家は崖上から見るよりも、予想以上に大きかった。 
 バルフの町でよく見かけた、祆教の拝火殿に似ている。 
 一回の小窓から中を覗くと吹き抜けになっており、螺旋状の階段が上まで続いていた。 
  
199: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:20:02.16 ID:QmyZmny70
 急な螺旋階段を上り、三階の客室に案内された。 
 がらんとした殺風景な部屋に、寝具と思しき毛布が二つ敷いてある。 
  
 奥の壁には、四角い小窓がひとつ。 
 窓と言っても穴を開けただけなので、冷たい風はもちろん吹き込むし、雨の日に立てば身体が濡れてしまう。 
200: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:20:52.18 ID:QmyZmny70
 宿屋の主人「今日は良い風が吹いている。お前ら、オラの合図に合わせるんだぞ」 
  
 三人は牛に踏まれた麦の山を囲んで立った。 
 俄かに、木々がざわざわと揺れはじめた。砂塵が舞い上がる。川面が波打つ。 
 ごう、と一際強い風が吹き荒れた。その時だった。 
201:名無しNIPPER[sage]
2018/05/11(金) 01:41:35.77 ID:YgGgMHCDO
 乙 
 待ってた 
202: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/12(土) 19:29:28.05 ID:Qg3um/TT0
 宿屋の主人「このくらいで良いだろう。おめぇら、休んでいいぞ。オラは他の仕事がある。陽が沈んだら帰る」 
  
 二人が去った後、主人はその場にしゃがみ込んで選別した麦の状態を見た。 
 本当に良質な麦か確かめるためだ。すると、麦山の奥から姿を表した影がある。 
 蒼い絹服に身を包んだ上級官員だ。 
203: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 00:34:12.44 ID:hJN7I0W/0
 隊商宿を出て麦山を横目に少し歩くと、卵型の大きな建物が見えた。 
 外壁も床も、なんとすべすべした大理石でできている。 
 ハザラ族が建てたものとは、到底思えない。 
 しかし、勇者は首を横に振る。 
  
204:名無しNIPPER[sage]
2018/05/15(火) 02:19:33.72 ID:eNSzG1cDO
 乙 
205: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 23:24:06.67 ID:hJN7I0W/0
 しばらく二人は無言で焼石から立ち上る蒸気を眺めた。 
  
 勇者「……間諜が命懸けで道を切り開いているのに、俺達だけサウナでのんびりしていいのかな」 
  
 魔女「平和だよね、この村」 
206: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 23:27:32.93 ID:hJN7I0W/0
 勇者「俺達の他に? まさか、変なこと言うなよ」 
  
 魔女「キミ、そんな隅にいて寂しくないかい。ボク達のところへ来てくれないか。ハザラ族の民謡に興味があるんだ」 
  
 返事はなかった。物が動く気配すら感じられない。 
207:名無しNIPPER[sage]
2018/05/16(水) 00:32:52.53 ID:hkyQ6MQDO
 乙 
208: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/18(金) 23:27:15.26 ID:w/kGJFk40
 その日の夜は、宿屋の主人と当たり障りのないことを話して終わった。  
  大道芸人になった経緯や、カーブルでドワーフ族に披露した芸についてだ。  
  一応、この村では大道芸人として通っている。  
  勇者であることが宿屋の主人に知れたら、こちらの動きが最悪の場合、国王にまで知られてしまう。  
    
256Res/223.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20