【モバマス】琥珀色のモラトリアム
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43:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:47:53.14 ID:vBuyWfgt0
「俺もさ、考えてみたんだ。大人になるっていうのはきっと、自分の弱さに素直になれる事なんじゃないかな」

「己の無力さを受け入れるということかい?」

「いや、少し違うかな……自分が非力だと理解して、それでも捨てられない何かを抱いて前を向く、それが大人なんだと、俺は思う」
以下略 AAS



44:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:48:54.12 ID:vBuyWfgt0
「…………ボクにはまだ、理解らないな」

その感覚に心当たりがない訳ではない。雨に打たれ、己の愚かさを嘆いたあの日。世界はカッコつかないことばかりだと、失敗から学んだあの日。きっとボクと蘭子は、ひとつ大人の階段を登ることができたのだろう。
それでもボクにはまだ、全ての弱さを認めてしまう勇気は無かった。

以下略 AAS



45:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:49:36.33 ID:vBuyWfgt0
お前は甘えるのが下手だからな、などと言いながら、彼はわしわしとボクの頭を乱雑に撫でた。その手はもう、先刻ほど冷たくはなかった。

「……子供扱いは遠慮願うよ」

「おっと失礼……それで、お役には立てたかな?」
以下略 AAS



46:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:50:06.56 ID:vBuyWfgt0
今度はボクがカップを置き、震えそうになる唇を引き締めて、努めて、努めて平静を保ったまま、率直に、思いの丈を告げる。
ーー嗚呼、こんなにも、素直になるというのは難しくて、むず痒いことだったのか。

「ボクは……ボク自身の力で、『キミの特別』になりたいと思った」


47:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:51:13.50 ID:vBuyWfgt0
再びカップに口を付けていたプロデューサーは、ボクの言葉を聞くと突然噎せ返った。そして、目を丸くしてこちらを見る。

「ええっと……それは、その……飛鳥さん?」

「ボクだってもう18歳だよ。いつまでも14歳の少女じゃあないんだ。それに……」
以下略 AAS



48:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:51:46.60 ID:vBuyWfgt0
理解り切っていたことだった。
長々と綴られた題目のような証明の、その結末は実に単純なもので。
ボクが定義するのを恐れていただけで、この感情は随分と昔から存在していたのだ。
ボクは彼と真に並び立つことを欲していたのだ。アイドルとプロデューサーという関係だけでなく、相棒として、パートナーとして。
退屈だったセカイに色を与えてくれた彼に、ボクが特別であると認めて欲しかったのだ。


49:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:52:23.39 ID:vBuyWfgt0
「えーーっと…………」

「優柔不断だね。相変わらずそこはキミの……」

返答に窮して唸っている彼をボクが咎めようとした時、部屋のドアがバタンと大きな音を立てて開き、誰かが飛び込んできた。
以下略 AAS



50:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:53:24.29 ID:vBuyWfgt0
「志希か……全くキミは、狙ったかのようなタイミングで……それでプロデューサー、これは?」

「そういえばまだちゃんと言っていなかったな。志希や蘭子たちにパーティの準備を進めてもらっていたんだよ……誕生日おめでとう、飛鳥。これからもよろしくな」

「……ありがとう、プロデューサー。忘れられているのかと思っていたよ」
以下略 AAS



51:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:53:52.76 ID:vBuyWfgt0
会場には響子や葵が指揮を執ったらしい料理の数々の中央に、立派なホールケーキが陣取っていた。

『ハッピーバースデー飛鳥(ちゃん)!』

大きな祝福の声とクラッカーに揉みくちゃにされながら、ボクは饗宴へ身を投じる。
以下略 AAS



52:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:54:20.55 ID:vBuyWfgt0
宴のあと、ボクは例によって事務所の屋上の特等席に佇んでいた。空には微かに雲がかかり星の光を遮っているが、それでも構わないと言うように白の絵の具をひと雫落としたような月が己の存在を主張している。

「フフッ、やれば出来るじゃないか」

天上の演出家も時には空気を読むらしい。そんな傲慢な批評家を気取りたくなるくらいには、この朧月夜は美しく見えた。


53:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:55:02.23 ID:vBuyWfgt0
「やっぱり此処にいたか」

うわ寒いな、と言いながら扉を開き寒空とボクの世界に入って来たのは、言うまでもなくプロデューサーだ。彼はまだ雪の残滓が僅かに残る凍り付いた屋上をしゃくしゃくと踏みしめながら、真っ直ぐにボクの隣へと並んだ。

「それで、どうしてキミは態々こんな所を訪ねてきたんだい」
以下略 AAS



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