317: ◆Kg/mN/l4wC1M
2020/06/12(金) 01:33:22.69 ID:Bg3Eqo0s0
  
 『ねぇ、甘えてみてもいい? 
  この恋が本当だと伝えてみたいの』 
  
 たくさんの温かなステージライトが、このみを照らした。 
 サイリウムの色が段々と変わって、客席は鮮やかな桃色へと染まっていく。 
 詞を紡ぐたびに、桃色の光は優しく揺れた。 
  
 『優しく ギュッと抱きしめて──』 
  
 このみが前に手を伸ばすと、腕の先にサイリウムの景色があった。 
 そしてその向こう側には、このみのステージを見つめるファンたちの顔が見えた。 
 このみの指先と、桃色の光が重なった。 
 腕に巻いた赤いリボンが目に入って、まるでこのみの指先から届けたい相手まで、線が伸びて繋がったみたいだった。 
 このみはもう、ひとりでステージに立っているわけではなかった。 
  
 やっと見つけた私の新しい場所で、新しい歌を、大切な貴方に届けよう。 
 私が誇れる、大切な貴方に。貴方が誇れる、最高の私で──。 
 きっとこれが、『アイドル』馬場このみの──私の、恋焦がれた夢なんだ。 
321Res/210.41 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20