魔王「魔物使い、貴様はどのような世界を望む?」魔物使い「ほえ?」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:03:01.70 ID:Yz/20wypO
「お母さん、お母さん」
「どうしたの?」
「僕はどうして独りなの?」

我が子が抱く、素朴な疑問に、母は答えた。

「お母さんとお父さんがいるよ」

だから独りではないよと、母がそう諭すと。

「でも、他には誰もいない」

がらんとした広い洞窟に子供の声が響いた。
洞窟内はおろか、周囲も静まり返っている。
母子が暮らすこの大穴には誰も近づかない。

それもその筈、ここはドラゴンの巣である。
とはいえ主のドラゴンはこの場にはおらず。
洞窟には彼の妻と子がお留守番をしていた。

ドラゴンとは、人々に恐れられる竜の王だ。
故にこの洞窟には何人たりとも近づけない。
だから人間達は知らない。気づいていない。
竜の妻が人間で、その子供が、ハーフとは。
まさか、よもや、夢にも、思わないだろう。

その事実を知ったとしても、無意味である。
むしろ余計に忌避されることは明白だった。
故にドラゴンの妻となった人間とその子供。
人間と竜の特徴を備えた忌子は独りぽっち。

その孤独を、ひたすらに耐え、生きていた。

「寂しい?」
「うん……すごく寂しい」
「じゃあ、おいで」

寂しそうに俯く我が子を、母が抱きしめる。
すると、寂しさが薄れて睡魔がやってきた。
うとうとし始めた子供は、日課をせがんだ。

「寝る前に、いつものお話を聞かせて」
「続きから? それとも、最初から?」
「最初から!」

愛する我が子にねだられて人間の母は語る。
愛する夫が妻に語った、はるか昔の物語を。
それは人間の魔物使いを愛した魔王の物語。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:04:39.34 ID:Yz/20wypO
昔々、太古の昔。

その世界には人間と魔物が存在しており、凶暴な魔物は人間に危害を与え、駆除されていた。
もっとも凶暴とはいえ、野生動物である為、人間の知恵を持ってすれば倒せないことはない。
身体を鍛え、修行し、鍛錬に明け暮れて、人間は着実に強くなり、魔物は食肉となっていた。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:06:08.43 ID:Yz/20wypO
ある日のこと。

「その魔物は危険だ。一刻も早く駆除せねば」
「はい?」

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:08:15.32 ID:Yz/20wypO
「とにかく、その魔物をこちらに引き渡せ」
「はあ? 何を仰っているのかわかりません」
「いいから、早くこちらへ寄越すのだ!」
「嫌ですね」

以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:11:31.55 ID:Yz/20wypO
「よもや育ての親を躊躇なく食らうとは……!」

バリバリ、ボリボリ、むしゃむしゃと。
魔王は魔物使いに、牙を突き立てて。
肉を咀嚼し、血を嚥下し、骨まで平らげた。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:13:01.17 ID:Yz/20wypO
「魔王様、ご報告します!」
「なんだ?」
「森の中で怪しい人間を見つけました!」

長い時が流れ、魔王は己の軍勢を作りあげた。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:15:31.85 ID:Yz/20wypO
「貴様は我を恐れんのか?」
「恐ろしくて、小便を漏らしました」
「汚らしい人間め。汚した床を掃除しろ!」
「へぶっ!?」

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:18:14.89 ID:Yz/20wypO
「こほんっ……とりあえず、魔物使いよ」
「なんですか?」
「ひとまず服を着替えよ」
「はい! ですが、うーん……困りました」

以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:19:29.89 ID:Yz/20wypO
「み、見えてなどおらん!」
「では、どうやって明かりも持たずにこの闇の中を真っ直ぐに歩いて来られたのですか?」
「……か、勘だ!」
「ほほう。なるほど、魔王様は勘が鋭いと」
「と、当然だ! 我は魔王なのだからな!」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:22:04.88 ID:Yz/20wypO
「これでよいか?」
「ご配慮感謝します、魔王様」
「何度も言うが、我は貴様の裸体になど全く興味はないからな。肝に銘じておけよ」
「ボロン!」
「ッ……!?」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:26:02.24 ID:Yz/20wypO
「次は食事だ」

ようやく着替え終えた魔物使いに魔王は食事の膳を差し出した。彼はワクワクして尋ねた。

「良い匂いですねぇ。これは何ですか?」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:28:45.09 ID:Yz/20wypO
「魔物使い、貴様はどのような世界を望む?」
「ほえ?」

あくる日も、あくる日も、魔王は牢へ赴いた。
取り留めもない会話をして彼と共に過ごした。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:30:46.19 ID:Yz/20wypO
「貴様はゴミではない」

魔王は居ても立っても居られずに抱きしめた。

「貴様は我の所有物だ」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:32:52.58 ID:Yz/20wypO
「……魔王様」
「なんだ?」
「今のって、もしかして……?」

しばらく呆然としていた魔物使いが、確かめるように魔王の宣言の意味を尋ねた。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:36:02.76 ID:Yz/20wypO
「魔王様、ご報告します!」
「なんだ?」
「魔物使いを処分いたしました!」

終わりの時は、突然訪れた。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:39:02.92 ID:Yz/20wypO
「ふむ……貴様が魔王か」
「だったら、どうした」

城内の配下の魔物を全て平らげて、魔王は森の中をしらみつぶしに徘徊していた。
生息する魔物を見つけては食い、見つけては食い、そして一頭のドラゴンと出会った。
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/18(木) 23:41:15.78 ID:Yz/20wypO
「はい、おしまい」

長い物語を語り終え、母は一息ついた。
子供は眠気に負けて、既に眠っている。
結局、最後まで起きて結末を聞いたことはなく、またお話してくれとせがむだろう。
以下略 AAS



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