魔物使い「汚らしい! ボクに触れるなっ!」竜の子「汚らしいのは、お前だっ!!」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:00:14.37 ID:jtQcW+hGO
「よっしゃ! 経験値ゲットだぜ!」
「よーし! 今日はもう帰ろうぜ!」

魔女の行方を追う竜の子と生贄娘は現在、精霊使いのお漏らし姫から教えられた世界を闇に陥れる巨悪が潜伏するという高い山々が連なる山脈へ辿り着き、岩陰に隠れて息を潜めていた。

「……行った、みたいだね」
「はい。そのようですね」

武装した冒険者らしき男達が遠ざかるのを見送り、竜の子は深々と、安堵の溜息を吐いた。
岩陰から出て、彼らが経験値を獲得するべく駆除した魔物の死骸へと歩み寄る。無残だった。

「あの人達は、狩った魔物を食べないんだね」
「彼らは経験値稼ぎが目的なので食べません」
「……経験値」

竜の子は悲しそうな顔で、反芻する。
彼らにとって、魔物は経験値稼ぎの道具。
生物としてではなく道具、もしくはイベント。
そのように捉えて、容易く命を刈り取る。

「……僕は、冒険者さんを、好きにはなれない」
「ええ……私も全く、若様と同感です」

もちろん、彼らとて生活がかかっている。
生きる為に、経験値を稼いで、強くなる。
でなければ、お金を稼ぐことが出来ない。

それを理解しても尚、理不尽だとそう感じた。

「とても、2人で食べ切れる量じゃないね」
「はい。残念ながら……糧には出来ません」

竜の子は未だ子供で、憐れな魔物の死骸を丸呑みにすることは出来ない。生贄娘とて同じだ。
だから2人は地面を掘り、魔物の死骸を埋めた。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:03:12.27 ID:jtQcW+hGO
「魔女さんが戦っているのも冒険者なの?」
「わかりません。言葉を濁されましたので」

岩山を登りながらふと浮かんだ疑問を口にする竜の子に生贄娘は正直にわからないと答えた。
姫君は巨悪としか口にしておらず、具体的な素性を教えてはくれなかった。それは、何故か。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:06:06.99 ID:jtQcW+hGO
「しかし、視界が悪いですねぇ」

魔女の戦いに目を凝らすも、雷雨によって見通しのきかない状況で敵影の視認は困難だった。
しかし人間よりも眼が良い竜の子は気づいた。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:09:04.92 ID:jtQcW+hGO
「魔女さんっ!?」

もはや、限界だった。とても見て居られない。
竜の爪で深々と肩口を切られ、鮮血が飛び散るその様を見過ごせずに、竜の子が飛び出した。

以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:11:10.48 ID:jtQcW+hGO
「魔女さん、しっかりして!?」
「……どうして、若が、ここに……?」
「お友達だからだよ!」

出血する魔女の傷口を抑え止血しつつ、理由を問われた竜の子は、当たり前のことを叫んだ。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:14:03.35 ID:jtQcW+hGO
「……ごめん。ごめんね……若」
「僕の方こそ、嘘に気づけなくて……ごめん」
「……違う。若は、優しい……私が、悪い」
「魔女さん……」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:17:03.35 ID:jtQcW+hGO
「生贄娘! 大丈夫!?」

あれから魔女はすぐに治癒の魔法で自らの傷を治し、生贄娘の安否が気になる竜の子と共に、再び戦場へと戻った。とはいえ全快ではない。
いかに神秘の魔法とはいえ、裂傷によって失われた血液までは取り戻せないようで、顔色は悪いまま、足元はふらつき、再戦は困難だった。

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:20:08.15 ID:jtQcW+hGO
「……たしかに、違和感はあった」

魔女は独白する。戦闘中に感じた、違和感を。

「……あの子は、何かに怯えているようだった」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:23:04.16 ID:jtQcW+hGO
「若様に対して、よくもそんな暴言を!」
「……全言を、撤回するべき」
「……ボクの父親は頭がおかしい人でさ」

憤る生贄娘と魔女の文句を聞き流す魔物使いは脈絡なく、自らが飼う混ざり物の出自を語る。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:25:03.62 ID:jtQcW+hGO
「頭のいかれた糞親父は満足げだったが、孕まされたドラゴンの方は気が狂い、ぶっ壊れた」

歪な笑みを浮かべ魔物使いは当時を振り返る。

「慟哭ってのはまさにあのことだった。ドラゴンって奴らは、さぞプライドが高いんだろうな。与えられたエサも食わず死のうとして、それでも死に切れず、忌まわしい妹を産んでからそのまま力尽きた。全く、余計なことを……」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:28:15.77 ID:jtQcW+hGO
「何なんだ、お前は!」
「……ごめんなさい」
「何の為に生まれた!」
「……ごめんなさい」
「何の為に生きてる!」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:31:05.01 ID:jtQcW+hGO
「……そんなことは、今はどうでもいい」
「つまり、後先は考えていないと?」
「ボクはただ! この世界を壊したいだけだ!」
「はあ……付き合ってられませんねぇ」

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:34:08.50 ID:jtQcW+hGO
「ぐぇっ!? おぇっ!?」
「苦しいですか?」

静かに尋ねながら、何度も何度も腹部を殴る。

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:34:47.81 ID:jtQcW+hGO
「フハッ!」

あまりのことに呆気に取られた一同の頭上で、何者かが高らかに愉悦を漏らして、哄笑した。

「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:37:02.61 ID:jtQcW+hGO
「仲睦まじいようで、良かったですねぇ」
「それはまあ……良いんだけど、連絡もしてないのに、どうしてこの場所がわかったのかな?」
「……若の危機を、察知して?」
「いえ、恐らくはあの姫君の根回しでしょう」

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:40:04.90 ID:jtQcW+hGO
「ですが、若様……あれをご覧くださいませ」
「えっ?」

生贄娘が指を差した方向を見ると、そこには。

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:42:54.84 ID:jtQcW+hGO
「……僕も、手伝うよ」
「……私も、手伝う」

その歪であっても決して見捨てられぬ愛を目の当たりにして、竜の子と魔女は揃って手伝う。
嫌という程、孤独を味わってきた2人には、見て見ぬ振りや傍観など出来なかった。故に掘る。
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:45:06.20 ID:jtQcW+hGO
「な、なんだ……ボクは、いったい……?」
「お姉ちゃん! 良かった……良かったよぉ!」
「なんで、お前……どうして、お前が……?」
「お姉ちゃんのことを、助け、たくて……!」
「汚らしい! ボクに触れるなっ!」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:48:05.75 ID:jtQcW+hGO
「……ボクは、間違って、いたのか……?」

竜の子の咆哮で魔物使いは正気を取り戻した。

「ああ、そうだ。お前は間違っていた」
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:49:38.08 ID:jtQcW+hGO
「これにて、一件落着ですね」
「……流石は若。見事な名裁き」
「ううっ……からかわないでよぅ」

わだかまりは残りつつも、それでもほんの少しだけ前向きになれた姉妹達を、山頂に残して。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/27(土) 22:50:10.26 ID:jtQcW+hGO
これにて、ひとまず【魔物使いシリーズ】は完結となりましたので、まとめてHTML化依頼の方を出してきますね

最後までお読み頂きありがとうございました!


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