2:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 16:46:04.36 ID:W5lmC8VA0
『はいはい、それではね、いいフレちゃん? 次の質問行って』
『うん、いいよー!』
『ありがと。じゃあ続いての質問は……おっ、京都の人からや』
『え、ひょっとしてシューコちゃんのゴリョーシン?』
『あたしのご両親にはこの番組なんてチェックすんなって言ってるから大丈夫。
3:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 16:49:47.33 ID:W5lmC8VA0
『だって、キリンさんって首も長いけど脚もすっごく長いでしょ?
何か落とし物とかしちゃったら、ウッカリ踏んじゃったりしないかな?』
『あー、高さ的な意味で足元がよく見えない的な』
『そうそう!』
『あたしもさー、コンタクト落としたりするとすっごい焦るよね。
4:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 16:52:31.14 ID:W5lmC8VA0
「こういうものが、世間のアイドルファンなる人種には喜ばれるのですか」
後部座席で、私の隣に座る千夜ちゃんを見ると、怪訝そうな顔をしている。
「千夜には、今のところこういう仕事をさせる予定は無いよ。心配はいらない」
5:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 16:54:55.17 ID:W5lmC8VA0
今日はお仕事だった。
と言っても、私のではなく、千夜ちゃんのグラビア撮影に同行しただけ。
車の中ではあれだけむくれていたけれど、さっきのカメラの前では別人のように、千夜ちゃんはポーズだけでなく表情もしっかりキメていた。
本人曰く、「やれと言われた事をやるだけです」とのこと。
6:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 16:57:18.57 ID:W5lmC8VA0
元はと言えば、私がスカウトされたのがきっかけだった。
街中で、私を探していたみたい。
おかしな人。知りもしないものを探すだなんて。
7:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 16:59:25.44 ID:W5lmC8VA0
「そうか……」
返事をしながらも、まだこの人は納得がいっていないみたい。
「俺は、ちとせはまだまだ、こんな所で終わる器じゃないと思っている。
8:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:00:54.33 ID:W5lmC8VA0
「嘘をついても、しょうがないもの」
私は、それでもいいの。
たとえ結果を残せなかったとしても。
9:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:02:51.85 ID:W5lmC8VA0
「…………」
魔法使いさんは、否定しなかった。
きっと彼は、いずれ私がこういう事を言うって、薄々覚悟していたんだと思う。
10:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:05:50.15 ID:W5lmC8VA0
「正気なの?」
私は首を傾げた。
前からおかしな人だと思っていたけれど――。
11:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:07:21.88 ID:W5lmC8VA0
たとえばお医者さんには怪我や病気を治す使命があり、消防士さんには火事を消すという使命がある。
学校の先生は子供達に教養と道徳心を与え、警察官は悪い人を捕まえる。
およそ全ての人々は、形はどうあれ、何だかんだで何かしらの社会貢献に繋がる使命を持っているみたい。
12:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 17:10:03.80 ID:W5lmC8VA0
強いて私にも、使命があったとすれば、千夜ちゃん。
きっかけを与えられたことで、ようやくあの子は生きがいを得た。
黒埼の従者という呪いから解き放たれ、アイドルの世界で、自由に輝く太陽になれた。
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