1: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:47:32.83 ID:dze2zfkn0
アイドルマスターミリオンライブ!のSSです。
殆ど地の文で、かつそこそこの長さなので予めご了承ください。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:48:32.61 ID:dze2zfkn0
【1】
島原エレナとは。
太陽のように笑顔が明るい、ダンスが大好きなブラジルハーフの女の子である。
3: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:49:16.80 ID:dze2zfkn0
そんな765プロダクションにとって太陽と月のような存在である彼女たちの、現在の姿をご覧頂こう。
「イヤだぁ〜‼ もう帰るぅ〜‼」
「島原エレナ…、どうか私を置いて行かないでください…」
4: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:49:58.72 ID:dze2zfkn0
ズルズル。ズズズ。
ズズ。
いつもなら麺を啜(すす)る音に聞こえるだろう。
5: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:51:05.41 ID:dze2zfkn0
【2】
「エ〜‼ ワタシ怖いのヤダヨ〜‼」
6: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:51:56.93 ID:dze2zfkn0
「プロデューサー、ワタシがお化け苦手なの知ってるよネ? どうしてイジワルするの?」
とある一般プロデューサーの名誉のために弁明しておくが、彼は決して可愛いエレナに意地悪をするためにこのオファーを告げたわけではない。
確かに今の彼女はただでさえ柔らかい頬が持ち上げられて寄り上がりプニップニな状態に仕上がっているだけではなく、
7: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:53:43.05 ID:dze2zfkn0
プロデューサーは決して島原エレナに意地悪することを生業としているのではなく、
あくまでアイドルとして仕事の依頼を受けたため、本人に告げたに過ぎないのである。
故に、例え過去に765プロ劇場のみんなでホテルに肝試しに行ったときにエレナがお化けに怯えている姿を知っていたとしても致し方ないことなのである。
これは不可抗力なのである。
8: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:54:33.93 ID:dze2zfkn0
「アッ‼ じゃあせめて、コトハとメグミと一緒に行かせてヨ‼ 二人と一緒ならまだ何とかなるかもしれないし…」
「お生憎様。その二人は当日別の仕事が入ってしまっているんだ」
「えっと、じゃあミヤとか…」
「美也も外に出ちゃってるなぁ」
9: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:55:44.15 ID:dze2zfkn0
「ごきげんよう」
「タカネ‼ おはよー♪」
「エレナ、おはようございます」
「あ」
10: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:56:41.15 ID:dze2zfkn0
そのまま「そうだ」と分かりやすく両の手をポンと叩いた。
急なテンションの変化に彼自身の喉が驚き、おかしなタイミングで声が裏返っていた。
「たかネがアいてるみタい」
11: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:57:42.53 ID:dze2zfkn0
「プロデューサー…?」と尋ねた貴音の顔色と声色からは何も感じ取ることが出来なかった。
ただ、何かをプロデューサーに尋ねていることだけが伝わった。
エレナの顔は頼れる同僚を見つけた喜びで満ち溢れている。
12: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:58:37.14 ID:dze2zfkn0
「プロデューサー…」
貴音は再度呟いだ。
二度目の言霊(ことだま)には葛藤と懇願が込められていた。
13: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 07:59:27.18 ID:dze2zfkn0
プロデューサーは四条貴音が怖いものを苦手だということを知っていた。
つまり、怖がっているリアクションを求められる肝試しの撮影においては適任と言える。
そして、プロデューサーは島原エレナがそのことを知らないことも知っていた。
14: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:01:16.01 ID:dze2zfkn0
【3】
ズルズル。ズズズ。
ズズ。
15: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:02:12.02 ID:dze2zfkn0
まだ時間は午後三時。
外では太陽は燦燦(さんさん)と降り注ぎ、風通しの良い室内に居ても首元はジンワリと汗ばむくらいだ。
明るく爽やかな陽気であり、このあと肝試しが控えているとはまったく考えられない天候だった。
16: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:03:13.87 ID:dze2zfkn0
今回のロケ地は山深くに佇む廃病院。
呼吸器系の患者の療養を目的として空気の綺麗な環境に立てられた病院であった。
しかし、まるで患者を閉じ込めるかのような陸の孤島となっていたことと、特殊な症例の患者を多く受け入れていたことで良からぬウワサが流れ始めてしまった。
このウワサをどこからか聞きつけた患者が脱走を試みたり、治療に対して抵抗したり、非常にヒステリックな環境となってしまった。
17: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:04:07.74 ID:dze2zfkn0
「今回は、その看護師が残したという手記を見つけてきてもらいます。五階の当直室に残されているというウワサですが…」
「そ」
貴音が声を発した。
18: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:04:49.28 ID:dze2zfkn0
「そうですか…」
しかし、銀髪の女王は縋っていた法が助けてくれないことに落胆するばかりで、細事を気に留める余裕は無いようだった。
エレナは口を真一文字に結んだままで難しそうな顔をしている。
19: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:05:52.63 ID:dze2zfkn0
【4】
夜が更け、周りを照らすものは車のヘッドライトだけとなっていた。
周囲を鬱蒼(うっそう)とした森に囲まれた廃病院は、星々のか細い光に縁取られて異様な存在感を放っていた。
20: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:06:37.63 ID:dze2zfkn0
「アー、えーっと、島原エレナだヨー」
エレナは元気が足りなくて中途半端な中国人のようになっていた。
「四条貴音です…。四条貴音です…」
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