2: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/08(火) 21:25:28.84 ID:REk/3TwAO
 その建物の姿が俺の網膜に映ったとき、時計の針が急速に逆行したような錯覚にとらわれた。 
  
 目の前に広がる建造物の名前を、俺はまだ覚えている。『総武高校』、俺の母校だ。 
  
 休日の昼間という学生が学校にいるのに最も相応しくない時期というのもあって、辺りに学生の姿は見られないが、微かに校庭の方から運動部の声が風に乗って流れてくる。生徒が誰もいないということではないらしい。 
  
 この場所に、俺は三年間通っていた。 
  
 今の俺にとって三年という月日はそこまで長い時間ではない。注意せずに日々を生きていれば気づかぬ間に過ぎ去ってしまうくらいだ。 
  
 そんな今の三年と、あの三年が同じ時間の長さを示しているとは到底思えない。どこか時空が歪んでいるんじゃないかとすら思ってしまう。きっとそれだけ歳をとってしまったということだろう。 
  
 「……懐かしいな」 
  
 感傷じみたセリフが口から漏れ出す。かつての日々が脳裏によみがえり、憧憬する。 
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