35: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:01:15.84 ID:P7mZ3r8kO
 「それで苦しい思いをしてたのはお兄ちゃんだけじゃないんだよ? わかってる?」 
 「ああ、わかってる」 
  
  今は、という言葉は意味がないから口にしない。あの頃にそれが理解できていたなら、きっとあんな結末には至らなかったはずだ。 
   
 「むしろ、ずっとその環境にい続けなきゃいけなかった雪乃さんの方が、ずっと辛かったはずだよ」 
  
  まるで答え合わせのようだ。そんなことがぼんやりと頭の中に浮かんだ。 
   
  自分は何を間違えたのかを考え続けてきた。その中で得た結論は、小町の口によって語られる内容と今のところ一致している。 
  
 「雪乃はそんなことを意に介さないと俺は思っていた。勝手に言わせておけって、同じ考えだって思い上がっていた」 
 「でも、雪乃さんはお兄ちゃんのために動いた。ううん、もしかしたら自分のためだったのかもしれないけど」 
 「そうだ。それで……」 
  
  その先を口にするのが躊躇われる。 
  あまりにも愚かなかつての自分を自白するに等しい行為だ。 
   
  だが、それは小町の口から言わせるのは違う。いい加減、過去の自分と向き合わなければならない。 
   
 「……俺は、雪乃に失望した」 
  
  本当に、自分勝手な話だ。 
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