36: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/10/03(土) 18:01:53.82 ID:P7mZ3r8kO
 ―― 
   
 ―――― 
  
 「いただきます」 
  
  今晩の夕食は彼が作ったカレーだ。いつか初めて私に作ってくれた料理もカレーだった。そんな他愛もないことを思い出して、妙に可笑しくなる。 
  そしてそれが遠い昔のことのように思えてしまう自分が、悲しくなる。 
   
 「……いただき、ます」 
  
  そして食事の時に二人の間に流れる沈黙。しかしそれは、一ヶ月前のそれとは全く異質のものになってしまっていた。 
   
  ――もう、限界かもしれない。 
   
  そう、強く思った。 
   
  ただ、それを口にする勇気が、この時間を終わらせる覚悟が、私にはなかった。 
   
  ふいに、彼がスプーンを皿の上に置く。 
   
 「……どうしたの?」 
  
  彼がひとつ、深呼吸をする。 
   
  その瞬間に、彼が次に何を言おうとするか、わかってしまった。 
  
 「……なぁ」 
 「何かしら……?」 
  
 「……もう、別れよう」 
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