27:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:56:22.67 ID:66ORp3Ez0
 兵士「言わねえ。[ピーーー]ならとっとと殺せ。」 
  
 勇者「命は取りません、安心してください。」 
  
 兵士「信用できねえな。」 
28:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:57:37.32 ID:66ORp3Ez0
 勇者「それでも、僕は理解したいと思っています。教えてください。あなたの親しい人が、あなたのしたことを知ったらどう思うと思いますか。」 
  
 兵士「うるせえな。親しい奴なんていねえよ。[ピーーー]ならさっさと殺せ。いつまでもくだらない質問してんじゃねえよ。」 
  
 勇者「僕はあなたに危害は加えません。」 
29:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:58:27.35 ID:66ORp3Ez0
 「まだやってたのかよ。そろそろずらかるぞ。」 
  
 戦士が戻ってきて、そう声をかけた。 
  
 勇者「ああ、そうだね。出ようか。」 
30:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 22:59:15.79 ID:66ORp3Ez0
 塔を出ると、ちょうど朝日が昇り始めていた。憂鬱な自分の心とは対照的に、透き通るように爽やかな光景が広がっている。背中で眠っている彼女にこの光景を見せられないことが残念だった。 
  
 勇者「綺麗だなあ」 
  
 戦士「そうだな。」 
31:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:00:23.42 ID:66ORp3Ez0
 戦士「お、起きたみたいだぞ。」 
  
 焚火を囲んで朝食を食べているときに戦士が言った。 
 魔法使いが目を覚ましたようだ。魔翌力を封じる薬は、彼女が眠っていたため飲ませられなかった。 
 しかしもうとっくに日は昇りきっているにもかかわらず、魔翌力が暴走する様子は見えなかった。どうやら杞憂だったようだ。安心させようと、彼女の手を握る。 
32:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:01:44.13 ID:66ORp3Ez0
 魔法使い「ありがとう。でも今はちょっと、人に食べさせられたくないの。手に持たせてくれない?」 
  
 口を開けて、と書こうとしたら彼女が困ったような顔で言った。確かに監禁されていたときは無理やり口に押し込まれていてもおかしくない。配慮が足りなかったな、と反省して彼女のもう片方の手に焼き魚を持たせる。 
 『熱いから気を付けて』 
  
33:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:03:11.85 ID:66ORp3Ez0
 『もう少し準備をしたら、君に呪いをかけた人に会ってくるよ。』 
  
 魔法使い「私も連れて行って。絶対足手まといにはならないから。お願い。」 
  
 戦士「おいおい、そりゃ無茶だろ。」 
34:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:04:21.52 ID:66ORp3Ez0
 勇者「そうだよな・・・仕方ない、正式に被害を訴えよう。この件にどのくらい上の人間が関わってるのか分からないけど、あんな事を国が容認しているとは思えないし、ちゃんと話せば何とかなるよ、多分」。 
  
 戦士「もし、上手くいかなかったら?」 
  
 勇者「その時は二人で何とか切り抜けよう。」 
35:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:05:14.12 ID:66ORp3Ez0
 魔法使い「私を監禁していた兵士たちはどうなったの?」 
  
 先ほどの笑顔が消え、暗い表情で彼女が尋ねる。 
  
 『殺してはいない。まだあの塔にいると思うけど、また君を捕まえに来るようなことはないから安心してくれ。』 
36:名無しNIPPER
2020/09/19(土) 23:06:03.10 ID:66ORp3Ez0
 戦士「殺しておかなかったのが、結果的に功を奏したな。最初の予定通り城の呪術師を脅して呪いを解かせるなら、殺して口を封じておいた方が後々楽になっただろうが、正面切って文句を言いに行くなら証人として生かしておいた方が都合がいい。」 
  
 戦士が吐き捨てるようにそう言った。なんだか少し声に不機嫌さが滲んでいる。 
  
 勇者「どうかした?なんだか、殺しておきたかったと思ってるように聞こえるよ。君は戦いが好きなだけで、無意味な殺しはしないんじゃなかった?」 
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