高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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11:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:33:37.52 ID:eE/KPeRw0
「加蓮ちゃん。加蓮ちゃん、いまいいですか?」

 ハッとなって振り返ると、藍子が大きく手を振っていた。玄関に業者さんが来ていて、他のスタッフさんも食材入りのコンテナを運び入れている。
 トラックの音も、ベルの音も気付かなかった。考え込みすぎちゃってた。メニューを大げさに閉じて藍子の元へ。

 ……頭の片隅にしがみ続ける疑問は、ちょっとでも意識した途端に思考を占めてしまう。今すぐに藍子の両肩を掴んであの件はどうするのって言いたくなって……でもそんなことをしたら、藍子は絶対に困った顔になる。もし藍子が決断していたなら、カフェの準備中なんて状態は関係なく私に話してくれるだろうから。
 だから今は我慢の時。少しくらい不自然な笑顔になってもいい。
 裏方って立場に甘えさせてもらいながら、スタッフさんに混じってコンテナを運び始めた。

 その後は当日のシミュレーションも兼ねて、藍子が実際にキッチンに立ち、調理し、それをスタッフさん――当日はこの場にいないスタッフさん含め数人が店員となり残りが裏方へと回る。例のギザギザヘアーな、当日は店員となるスタッフさんが荒い性格とは裏腹に、あるいは見た目通りに丁寧に運んでいって、お客さん役のアオタケさん(仮)へお出しする。それを何度か試し、メニューごとにかかる時間が想定と少しズレていたことに気がついてからは、全員でスケジュールブックを持ち合わせて再確認。そうこうしているうちに日が暮れて、夜が来て、今日はおしまいってことになった。

 日が変わって開店前日。もう1回だけシミュレーションをして、時間のズレや接客態度、導線とトラブル対処まで確認する。
 企画当初からPさんと打ち合わせし、ある程度のノウハウを引用したこともあって、どこも引っかかる部分はなかった。

「これならもう大丈夫ですねっ。あとは明日からです。お客さんが笑顔になれるように、頑張りましょう!」

 藍子の号令にみんなが声を揃えた。歓声と安堵と、中にはちょっと間延びした声も。どうも不安が拭いきれないというか、当日が近づくこと、シミュレーションに伴う現実感に、むしろ藍子以上に緊張してしまっているらしい。
 もちろんそれは、今日もギザギザヘアーさんに肩組みをされている竹の男の子だった。
 ……なんか、ダメ出しされそうなあだ名になっちゃってない? こんなことで相談するのも馬鹿みたいだから、別にいっか。

 竹の子くんが埋め直されているのは放っておくとして、佇まいがお淑やかなお姉さまは連絡中。ってことで、私は藍子のところに行こうっと。



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