高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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12:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:34:07.40 ID:eE/KPeRw0
「ねえ、藍子――」

 名前を呼んだ。

 反応が返ってきたのは、随分と遅れてからだった。

 その間の藍子は……ずっと、店内を見つめていた。

 すごく嬉しそうに微笑んでいる。

 ――期間限定とはいえ、藍子は自分のカフェができあがることにすっごく喜んでた。
 打ち合わせの間も何度笑顔を見たことか。スタッフさんの笑顔を見飽きたというのは、藍子から伝播する機会が何度もあったからという意味でもある。
 藍子のカフェ好きな部分、一度語りだすとゆるふわを置き去りにして聞き馴染む熱弁を振るい出すこと、何よりも理想の実現――みんなに笑顔を、癒やされる時間を。藍子の信念に最も沿う形が作られていくことの嬉しさは、私でも想像きれないほどだと思う。

 そんな膨大な感情を、優しい微笑に乗せていた。

 しばらくが経って、ゆっくりと振り返る。
 私はただ、どうでもいいことが喋りたくてテキトーに話しかけただけ。
 今の藍子の顔を見ると……もっと、本音の部分を出したくなってしまう。

 それは、今言うべきではないこと。

 ……もしかしたら、藍子が話すまで待ち続けた方がいいことなのかもしれない。

 口を閉ざしかけた。
 でも喋ることをやめることをやめた。
 だってさ、こういう時に自分の気持ちに従って、相手のことを思いやるなんて独善的な考えを捨ててしまうのが、いつもの私達でしょ?


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