高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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16:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:36:37.76 ID:eE/KPeRw0
 ちりん、とベルが鳴る。


 最初のお客さんが来た!


 季節柄のジャケットと真っ白なベルトが特徴的な人と……2人連れのもう1人は影になっててよく見えない。スポーツシューズっぽいのは目に映ったんだけど……。
 お客さん達は藍子の姿を見て、ぴたりと立ち止まる。

 ほんものだ……

 誰かの笑い声がした。キッチンの近くにいるスタッフさんだった。彼女は途端に背筋を伸ばし、全力で左を向き、顔を思いっきり顰めた。
 だけど咎める声はどこからも上がらなかった。近くのスタッフさん、例のギザギザヘアーさんがつられて人懐っこく笑い、藍子も頬を緩める。藍子に笑いかけられることで、2人組も破顔する。さらに藍子がおどけて、本物ですよ〜、と手を肩より少し下の高さで振ってあげると、お客さんはいよいよバツが悪そうに舌を出した。お互いにくるぶしで蹴り、お腹をどつきあう。ひとしきり笑い声が収まったところで、藍子が両手を行儀の良い前揃えから、可愛らしい後ろ揃えへと変えた。

「いらっしゃいませ♪ 『あいこカフェ』へ、ようこそっ」

 途端に上ずった声を吐き出してしまう2人。あーあ、顔を真っ赤にしちゃった。藍子もサービス旺盛なんだから。

 だけど、始まる前の緊張感はもうとっくに消え去っていた。私の下半身を蝕む病熱も、斜め下で上腕二頭筋の汗でシャツを蒸すスタッフさんも、口の中に溜まった息を深く吐く。最初に"やらかした"スタッフさんも2人組が席に着くのを見計らってお冷とおしぼりを置く。立ち去ってからこっそりと、もう1つのおしぼりで額を拭いている姿はあったけど、これなら大丈夫みたい。


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