高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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38:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:52:37.21 ID:eE/KPeRw0
 最後のお客さんを藍子が送り出し、そのままドアの表側まで回る。表札を「準備中」へ、手癖で変えようとするも……寂しそうに一笑し、チェーン部分を手に表札ごと外してしまった。店内へ戻った藍子は、もう1度両手を前へ揃える。

「みなさん、ありがとうございました……『あいこカフェ』は、ただいまをもちまして閉店です!」

 そう言うと、店内にたくさんの拍手が巻き起こった。1日目、2日目、3日目に見た店員さんよりずっと多い数の、これだけの人達が藍子の為に頑張ってくれた。暖かな気持ちを受け止め、もう1度お礼を言う。

「せっかくだから……片付けてしまう前に、みなさんで写真を撮りませんか?」

 その提案に飛びついたのは、相変わらず元気いっぱいなギザギザヘアーのスタッフさん。3日の店員業に、青色の竹がちょっとくらい緑づいたかも? と思っちゃうタケさん(仮)の肩を強引に組んでいる反対側で、藍子のボディーガードを務めていたスタッフさんはこっそりとスマフォをチェックし、何かメッセージを打っているようだった。さてさて、誰に連絡していることやら。今回だけだよ?
 店員役だったスタッフさんを筆頭に左右へ並び、真ん中はもちろん主役の藍子。セルフタイマーを長めにセットし、ゆっくりと歩いてくる途中に――人差し指で、涙を拭って――シャッターの合図は、「ありがとうございましたっ」だった。最後にお礼の言葉を揃えて、終わったんだと実感する顔がたくさんあった。

 それからの後片付けはあっという間に進んでいく。手馴れた片付けと言えど昨日と一昨日よりも大規模なんだ。なにせ内装に家具、キッチンもすべて取り外してしまわないといけない。藍子は、自分だって疲れているのに汗をかいているスタッフさんへお水を持っていってあげたり、軽い運搬を手伝ったりしていた。
 その時にたくさんの人たちが藍子へ話しかけていた。話題は次のLIVEのことやメイクに関する情報、レギュラー番組の打ち合わせとも言えない程度の雑談。気が早い人なんかは次回『あいこカフェ』の話とか、今度は違う期間限定の何かを持ちかけている。
 藍子はそれらを軽く流してゆく。どこか困った顔なのは仕方がない。選択肢が突きつけられていることは、ほとんどの人が知らないままなのだから。


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