高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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39:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:53:06.20 ID:eE/KPeRw0
 1つ1つのカフェだった物が運ばれてゆく度に、藍子はちらりと時計を見てしまう。もうちょっと、この時間が続けばいいのに――たった3日ながら、もう1つの家とも言えてしまう居心地の良さも、昨晩藍子と一緒に寝転がったくつろぎスペースも、なんの情緒もなく片されてしまう。――目を伏せる藍子はだけど、私が肩を叩くと、大丈夫だよと首を横に振った。

「……加蓮ちゃん、覚えていますか?」
「なにを?」
「カフェがカフェと呼べるために必要な物は、店員さんと、それからお客さんです」

 これにて閉店、というフレーズの真意が込められた、重たい一言だった。

「……そうだね。そうだったね。じゃあもう、ここはカフェじゃないんだ」
「はい。それに……楽しかった思い出までもが、片付けられてしまう訳ではありません。私はみなさんから、たくさんの笑顔と時間をもらいましたから、もう大丈夫っ。寂しくても、へっちゃらです。……加蓮ちゃん、あっちも手伝いに行きましょう!」
「うん、行こっか」

 それからの藍子は、私が近くに来た時のほんの一瞬を除いて寂しい表情を浮かべることはなかった。



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