8:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:36:43.44 ID:u50g9+A20
  
  
  夕暮れ時。 
  
  並び立つビルを彩るのは、刺々しいスポットライトやLEDの装飾された看板の数々。どれもこれも自己主張が強くて、統一感なんてまるでない凸凹な都会の風景。 
  
  それらを一枚の絵にまとめ上げていたのは、薄暗い雲に雨の音色だった。 
  
  窓枠で縁どられた景色。 
  
  事務所内にいくつもある休憩スペースの一つから、その作品に目を向けていた。 
  
  テーブルの上では、傍の自販機で買った微炭酸のペットボトル。半分程減った中身で、小さな泡が中央に渦巻く様に生まれては消えていった。 
  
  
 「雨、やみそうにありませんね」 
  
  
  私の視線に釣られたのか、向かいの席では私と同じように文香が窓の外に目を向けていた。 
  
  
 「天気予報だと、夕方には止むって言ってたのにね」 
  
 「この調子では……」 
  
 「ほんと、そうね」 
  
  
  
  その日も、レッスン終わりだった。 
  
  
  
  
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