9:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 20:38:08.83 ID:u50g9+A20
  二人っきりのダンスレッスン。基礎的な振り付けをひたすら繰り返すような日だった。 
  
  運動には、多少の自信はあったけど、ダンスレッスンは想像以上にハードだった。 
   
  疲れた体に、程よい炭酸の甘さと冷たさが良く沁みた。 
  
  私と同じようなレッスンをこなした文香は憂いたような表情をしている。 
  
  それは、体の疲れのせいだけじゃないのだろう。 
  
  
 「文香って、意外と体力あるよね」 
  
 「そうかもしれません。持久走などは、昔から苦手ではなかったので」 
  
 「持久走以外は?」 
  
  
  目を伏せて、少し頬が赤くなった。 
  
  文香は体力に関しては、もしかしたら私以上にあるかもしれない。ただ、純粋な運動神経は、別のようだ。 
  
  
  ダンスレッスン中の文香は、整備されていない機械時計の踊り子だ。 
  
  時間が来ると、メロディと共に踊りだすが、油の刺していないせいでぎくしゃくしていて、その上、音もなんだかずれている。 
  
  踊るだけでも苦労して、体力も私よりはるかに消耗しているようだった。 
  
  レッスン終わり、文香はいつも汗だくになっていた。 
  
  
 「ダンスは、体育では特に苦手でしたけど……もしかしたら、出来るかと思ったんですが」 
  
 「ファンタジーの主役みたいに、上手くは行かないみたいね」 
  
 「本当に」 
  
  
  肩だけでため息をついた。文香にしても、予想以上に不出来なようだ。落ち込んだ様子の文香は、申し訳ないがちょっと可笑しかった。 
  
  中学の頃苦手だったことが、いきなり得意になるとは思えないのだけど。 
  
  
  
  
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