異説 ひのきの棒と50G
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20: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:51:58.21 ID:VN/U1bqQ0

「悪いが、剣や槍は既に枯れた。だが、代わりになるものを用意した」

 領主が、テーブルナイフを握り俺の眉間に向ける。
 思わずギョッとするが、向けられているのは俺の頭の先だ。

 振り返り、テーブルナイフの先に視線を送る。
 無造作に置かれた樽から、長柄が幾本も伸びている。
 槍―――ではない。

 長柄の先についているのは、スコップでありフォークであり鍬の刃だ。
 領主の言葉通り、剣や槍の代用品。そこにあるのは、古びた農具ばかりであった。

「くそったれ」

 思わずついた悪態に、領主は眉一つ動かさなかった。
 ジョッキを握る手が震える。
 どうしてこうなった。どこで道を間違えた。
 自分自身に問いかけるが答えは返ってこない。



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