28: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 13:58:16.49 ID:VN/U1bqQ0
  
 「善人ぶりやがって、てめえも盗人じゃねえか。その剣はどこで拾った!?」 
  
 「この剣は、お館様から預かったものだ!」 
  
29: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 14:00:16.59 ID:VN/U1bqQ0
  
 「僕に、その剣は重すぎる。父の形見なんです。大事に使ってください」 
  
  ガキは、そう言うと腰に刺さったままの空の鞘を自ら俺に寄越してきた。 
  俺は、それを受け取り剣を納める。 
30:今日はここまで ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/09(火) 14:00:55.50 ID:VN/U1bqQ0
   
  流れ者の命を使って、街を守るつもりだろうが。 
  俺には、この街の為に命を捨てるつもりはねえ。 
  
  だが―――この剣があれば俺はまた戦える。 
31:名無しNIPPER[sage]
2024/04/09(火) 17:09:52.93 ID:DoDPT2rOO
 乙 
 面白い。期待 
32: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 07:59:38.46 ID:Q62ZZ+a30
 ♦  
    
   あの盗賊は正しかった。  
    
   僕は、この目で見た。  
33: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:00:56.21 ID:Q62ZZ+a30
   
  幸いにも多くの魔物は、その巨体のせいか俊敏とは言えない。 
  ならば壁を背に、地面を背に、魔物の攻撃を誘い、躱し、その間隙を打つだけだ。 
  それも、ひたすらに急所のみを狙って。 
  
34: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:02:11.59 ID:Q62ZZ+a30
  
  正門は既に破られ、多くの魔物が門に殺到してきている。 
  当初、大通りには街の衛兵や騎士で構成された本隊が陣取り、僕を含む流民の即席戦士団は道の両脇、並ぶ建屋の路地に配置されていた。 
  魔物の勢いを正規兵が受け止め、その横っ腹を僕たちが突くという作戦だ。 
  
35: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:02:50.41 ID:Q62ZZ+a30
  
  門を破った一つ目の巨人が、勢いそのままに僕の棍棒の何十倍もある丸太を振るったのだ。 
  その一薙ぎは、大通りを塞いでいた本隊前衛を文字通りひき潰してみせた。 
  魔物の前衛を食い止めるはずだった、その大半の兵を、一薙ぎで。 
  あまりの光景に、僕はごくりと唾を呑みこんだ。 
36:今日はここまで ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/15(月) 08:03:23.80 ID:Q62ZZ+a30
  
  十分に、魔物を引き入れてから鳴るはずだった突撃のラッパが響き渡る。 
  魔物の前進を止めることはできない。本隊の指揮官は、そう判断したのだろう。 
  もしかすると本隊を一度退かせるために、僕達を魔物にけしかけたのかもしれない。 
  
37: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/16(火) 20:59:24.80 ID:neaYQz3o0
 ♦ 
  
  あいつを倒せば、まだ本隊を建て直せるかもしれない。 
  淡い希望を胸に、僕は一つ目の巨人に向かって駆け出した。 
  
38: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/16(火) 21:00:19.35 ID:neaYQz3o0
  
  一つ目の巨人の大きな瞳が、天上に達した月を映し出している。 
  魔物の急所が、人間と同じとは限らないが人の形をしているのだ、潰れぬ目があるはずもない。 
  しかし、巨人の背丈は建屋の屋根程もある。 
  明らかな弱点ではあるが、あの大きな目玉に僕の棍棒は届かない。 
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