288:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/02/05(土) 02:14:16.14 ID:K6nTd4fDo
「現状がどうしたって無理なのは目に見えてるだろ。オマエらは飼い殺されて終わりだ。
たとえ俺がやらなくたって、どうせ『アイツ』がやるだろうさ。その時オマエはどうするんだよ」
垣根の足はゆっくりと、しかし一歩一歩確実に麦野に近付いてくる。
彼の顔からは笑顔が消えていた。真剣な、ともすれば殺意さえ纏っていそうな気配に麦野は思わずたじろぎそうになる。
だが麦野は退けない。逃げられない。
だからといって垣根に攻撃する事もできないでいた。
(――なんだよその顔)
麦野はただその場に立ち尽くし、垣根を見詰め返すしかなかった。
その表情はどこか怯えているようで――。
(オマエ、意外と可愛いじゃねぇか)
場の空気と乖離した思考を頭の隅で呟く。
距離をおいていては見えなかった。近付いてみてようやく分かる。
近付かなければ分からなかった。
それは知らずにいた方が良かったのか、悪かったのか。
ただ一つ分かる事は。
「だったら――」
だったら――笑顔もきっと素敵だろうと。
彼女たちのそんな顔を見てみたいと思ってしまった。
余りに場違いな高望み。身の程を弁えない欲求。
きっとこれが致命的となる。そんな予感がした。
でも、だとしても。
手を伸ばし、麦野の手首を掴み上げ、引き寄せる。
その仕草はまるで彼女を奈落から引き摺り上げるようで。
「――賭けろよ、麦野。俺に賭けろ」
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