過去ログ - 紬「アイスの棒で?」
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57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/02/03(木) 04:04:59.16 ID:ApuBWSEk0
 爪先を浮かせるようにして、私はそのまま個室へと連れられた。目の前の扉が閉まり、入れ替わるようにして誰かが入ってきた。

「ありゃ? ここじゃなかったか」

 憂の言うとおり、純の声だった。
 私達を探しに来たのだろうか。何て寂しがり屋なんだろう……ちっとも可愛くないけどね。
 それよりも私は現状に心臓が口から出そうな気持ちだった。
 
 憂と二人きり。
 しかも、トイレの個室で。
 別にやましい意味も他意も憂には無いのだろうけど。でもやっぱりドキドキする。
 唇に当たる憂のたおやかな指。思わず、はむっと甘がみしそうになって慌てて憂の腕の中から逃げ出した。

「あ、ごめんね梓ちゃん」

「べ、べつにいいよ。それより、なにも隠れる必要は無かったんじゃない?」

 必死に冷静な自分を演出しているのだが、結果はどうだろうか。非常に自信がない。っていうか、ニヤけたりして。
 
「……純ちゃんには知られたくないから」

「えっ……そ、そうだね」

「それで、梓ちゃん。どう? 今日、部活お休みできない?」

「……憂がどうしてもって言うなら、私は構わないよ」

「いいの?」

「うん。そんな心配そうな顔をしてる友達を放っておくほど、私は人でなしじゃないしさ」

「ありがとう、梓ちゃん」

 束の間の幸せな時間は終わり、私達はそのまま教室へ戻った。
 
 ……。

 律先輩に訳を話し、私は部活をサボる。そして、約束通り、憂の家へ招かれた。

「お邪魔します」

「私、お茶でも持ってくるから梓ちゃん、先に部屋で待ってて」

 勝手知ったる人の家、とはいかないまでも、憂の部屋がどこにあるかぐらいはわかる。
 大人しく、言われたとおり憂の部屋に向かった。
 意味も無く心臓が高鳴り、不謹慎な自分を呪う。 
 今日の目的を忘れないように、と歯を食いしばって頬を両手でパチンと叩いた。


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