9:アスカ「私なりの愛ってやつよ」
2011/04/13(水) 23:32:51.57 ID:nYXsbXrS0
流石にお腹が減っている。食べたものと言えば先ほどのカステラとソーセージ一本だけだ。
食べざかりの中学生にはとても足りない。
見知らぬうちに何か湧いてこないかという祈りを込めて冷蔵庫を開いてみても、あるものといえば
ミネラルウォーター数本のみだった。砂糖もミルクもない苦い珈琲を無理やり流し込んで、空腹をごまかした。
○
約二日目にして、食糧が完全に底をついた。
冷蔵庫にある水も飲みきって、残っているものといえばカステラの食べカスばかりとなった。
こうなると冷静な振りなどしていられない。一刻も早く自室から脱出しなければ、待っているものは死だ。
人知れずこの部屋で餓死し、朽ち果てる自分の姿をちらと想像し、全身から冷や汗が噴き出た。
僕はおもむろに立ち上がり、本棚やら押入れやら机やらを、めちゃめちゃにひっくり返し始めた。
何でもいい。何か食べるものが残っていないだろうか。
まずは押入れを念入りに調べた。
中学生男子といえば不潔。不潔といえばキノコだ。
押入れの隅にキノコの一本や二本生えていれば、それを調理して食べよう。
そう思ったものの、押し入れは乾燥していてとてもキノコが繁殖するような環境ではなかった。
畳をゆでで食べるというのも考えた。
しかし繊維質が多すぎる。お腹を下して死期を早めるだけだろう。
本棚と机の間を漁ってみて、僕は埃の積もったビンを見つけた。
埃を払ってラベルを見ると、栄養補助食品と銘打ったビタミンの錠剤だった。
半年ほど前、風邪を引いた時に買ってきて、あまりのまずさに飲みきれず放置したものだ。
食糧不足の昨今、いかにまずいとはいえビタミン剤も貴重な栄養源だ。
水がないので、唾液で何とか飲み込むしかないだろう。
ほかにも机の棚から、食べかけのチョコレートを見つけた。
山で遭難した時に、生き残る命綱だったという逸話もある。
これは大きな収穫だと思ったけれど、箱に入っていたのはほんのひとかけらだった。
部屋の中を散々ひっくり返した挙げ句、見つけたのはビタミン剤とチョコレートひとかけらだった。
水も尽きている。
改めて自分の置かれている状況の切迫度を再認識し、僕は発狂しそうになったがぐっと堪えた。
太陽の光が見られないから、今が昼なのか夜なのか分からない。
だから一日一日と区切ってはいても、それが正確な区切りである保証もない。
そして、起きた時から感じるこの違和感。
水中をふわふわ漂う、何か空虚な感じは未だに続いていた。
カーテンを閉めてドアを閉じれば普段通りの景色だから、今にもアスカがドアを蹴り破って、
厄介な揉め事を持ち込んできそうだ。
しかし現実は、いくら待てどもそんな気配はない。嗚呼、僕は一体どうしたらいいんだ。
○
僕が部屋にこもって生活しだしたのは、10月の終わりごろだった。
あらゆる外界との連絡をシャットアウトして、ひきこもり生活を満喫していた。
そもそもの発端は父への反発心から生まれた行動で、ヱヴァに乗らない事で皆を
困らせてやろうと思ったんだ。
41Res/78.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。