過去ログ - まどか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇
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◆ySV3bQLdI.
[saga sage]
2011/04/22(金) 00:53:35.51 ID:Nr8ofJqko
「あぁぁあああああああ!!」
杏子は叫んで柵に駆け寄った。
まさかとは思ったが、男は屋上から飛び降りてしまった。これで死んだら寝覚めが悪過ぎる。
小さなビルと言っても20mはある。とても生身の人間が落ちて無事な高さとは思えない。
潰れてやしないかと、杏子はおそるおそる覗き込み――それが杞憂だったと知る。
眼下に銀色の光が見えた。男の背中にあった双剣の紋章だ。
更に目を凝らすと、ゆっくり遠ざかる黒のコートの輪郭が浮かぶ。
壁面には所々に雨樋や出っ張りがある。そこに足を掛けて速度を殺しつつ、降下したのだろう。
それでも落ちてから駆け寄るまでの時間を考えても、かなりの速度。取っ掛かりも数えるほどしかない。
足を掛けたのは一瞬で、5〜6mは一足飛びで降りたに違いない。
あれが本当に人間なのだとしたら、生身の人間の底力を見せつけられた気分だった。
ただの人間でも鍛えればあそこまで行ける、魔法少女にも匹敵し得るのだろうか。
「はぁ〜〜〜〜」
杏子は長く大きな溜め息を吐いて座り込んだ。もう追う気にもなれなかった。
酷い徒労感。
下らない。馬鹿馬鹿しい。
何で自分があんな奴の心配をしなければならないのだろう。
「何やってんだ、あたしは……」
気力が萎えて何もする気になれない。
座っているのも億劫だったので、大の字に寝そべって月夜を仰ぐ。
今日はもう店仕舞いだ。
最近グリーフシードのストックが少し心もとなくなってきたので、ここいらで補給したかったのだが。
それも、もうどうでもよかったのだが、魔力を消費した分、ソウルジェムには少し穢れが溜まっていた。
「ああ……くそっ、無駄な魔力使っちまった。早めに掃除しとくかぁ……」
寝転んだまま、ポケットから取り出した黒い宝石、《グリーフシード》と、指輪から変化した赤く輝くルビーのような宝石をくっつける。
すると宝石――ソウルジェムの表面に付着していた黒い染みがグリーフシードに吸着された。
これで安心と、杏子はまた大の字になって物思う。思い浮かぶのは、あの謎の男。
ゼロと呼ばれた男だった。
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