過去ログ - ほむら「ごめんなさい,マミさん」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:10:58.14 ID:T7zCsBzF0
ひとつ深く息を吐いて,私は移動をはじめる。向かう先は,さっきまであの少女がいたマンションの一室。
ここからは空中回廊でつながっているけど,私は一度階段を降り,向かいのマンションにエントランスホー
ルから入り直す。なんとなく,それが礼儀な気がしたから。あの人ならきっとそう言うから。

魔法でエントランスのセキュリティを突破する。まるで遊園地の入園ゲートをくぐる時のように,期待に胸
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:12:16.73 ID:T7zCsBzF0

ずっと秘密にしていること。はじめは,友江さんだと思っていた。学校は休んでばかりだったから,巴とい
う字を知らなかった。今でも,漢字は嫌い。私たちが口に出せるのは,ひらがなだけだから。私の心を掻き
むしるのは,巴マミっていう三つの文字じゃなくて,ともえまみっていう五つの音だから。

以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:16:49.69 ID:T7zCsBzF0

リビングに入り,少し目を細める。ガラスのテーブルには数冊の紅茶の本と一冊のキャンパスノートが置かれ,
その脇にはティーセットが散乱していた。お気に入りのフォションの茶葉,それを計量する小さな木匙。可憐
な花柄で統一されたポットとカップとソーサー。少しだけ自慢げだった,ヴェネチアン・グラスのティースプ
ーン。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:17:46.60 ID:T7zCsBzF0

ティーセットをまとめて,流しに持って行く。本を本棚に戻す。栞はそのままにしておいた。キッチンから
布巾を取り,ガラステーブルに点々とついた紅茶の飛沫を拭き取っていく。

ぽたり,ぽたりと新しい水滴がテーブルに落ちて,いつまで拭いても終わらない。自分が汚したものくらい
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2011/05/31(火) 00:18:16.36 ID:VaCi1s+Fo
こういうのを待ってた


7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:18:30.32 ID:T7zCsBzF0

必死に口元を抑えて嗚咽をかみ[ピーーー]。乱暴に瞼をこすり,洟をすすり,頬を叩く。カチューシャを引きちぎ
るように抜き取り,滅茶苦茶に髪を掻きむしる。ああきっといま,私ひどい顔してる。

女の子がそんな顔しちゃダメよ,もっと可愛く笑いなさいな。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:19:45.17 ID:T7zCsBzF0

あの人は,私のループが始まる時点ですでに魔法少女になってしまっている。だから,どうしても,どう
やっても,救うことができない。何度も何度もあの人を救う道を探した。でもその度に,私の希望ははか
なく打ち砕かれてしまった。

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:21:18.94 ID:T7zCsBzF0

先輩。ずっと学校に行けなかった私の,はじめての先輩。やさしくて,少しお姉さんで,面倒見がよくて,
時々お茶目で,頼りがいがあって。真っ白な病室で夢見ていた,少女漫画に出てくるような理想の先輩。
人を頼るのがすごく下手だった私が,はじめて心から信頼することのできた人。

以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:22:12.53 ID:T7zCsBzF0

リビングの茜色は少しずつ褪せていく。いつしか涙も涸れてしまった。もう一度テーブルを拭いて,布巾を
キッチンに返す。バルコニーへと続くガラス戸に,私の姿が映り込む。予想通りとても不細工な顔。そして
どこか,はじめてあの人と会ったときの私に戻ったみたい。

以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)
2011/05/31(火) 00:22:55.27 ID:T7zCsBzF0

紅茶の香りを胸一杯に吸い込んで,もう一度大声をあげる。さあ,おしまい。戻れなくなる前に。カーテン
を閉め,茜色の光線をかき消す。

大丈夫。私はまだ,戦える。
以下略



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